JP2014048082A - 母乳中サイトカイン/ケモカイン値に基づく乳児アトピー性皮膚炎の発症予測 - Google Patents

母乳中サイトカイン/ケモカイン値に基づく乳児アトピー性皮膚炎の発症予測 Download PDF

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Abstract

【課題】母乳中に含まれる多様なサイトカイン/ケモカインのレベルと、アトピー性皮膚炎の発症との関連性を明らかにし、これに基づき、母乳中サイトカイン/ケモカイン値に基づく乳児アトピー性皮膚炎の発症予測方法及びそれに使用する診断薬、並びに乳児アトピー性皮膚炎の発症を予防するための組成物を提供すること。
【解決手段】乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定する方法であって、(1)当該乳児が摂取する成熟乳中のエオタキシンの濃度を測定すること、及び(2)(1)において測定したエオタキシンの濃度と、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとを相関付けることを含む、方法;抗ヒトエオタキシン抗体を含む乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクの判定用診断薬;エオタキシンの産生を阻害する化合物を含む、乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを低減させる組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、母乳中サイトカイン/ケモカイン値に基づく乳児アトピー性皮膚炎の発症予測方法、及びそれに使用する診断薬、並びに乳児アトピー性皮膚炎の発症防止のための組成物等に関する。より詳しくは本発明は、成熟乳中のエオタキシン濃度に基づく乳児アトピー性皮膚炎の発症予測方法、及びそれに使用する診断薬、並びに乳児アトピー性皮膚炎の発症予防のための組成物等に関する。
母乳栄養は、乳児におけるアトピー性皮膚炎(AD)等の多くのアレルギー性疾患の発症に関連する1つの因子である。2001年における17の過去の研究のメタ解析は、生後3カ月間の母乳栄養が、アトピー性皮膚炎の成立に対して防御的な効果を有することを示している(非特許文献1)。しかしながら、1つの報告は、母乳栄養は防御的効果がないことを報告しており(非特許文献2)、他の報告はアトピー性皮膚炎を発症するリスクを増加させることを示唆している(非特許文献3及び4)。従って、母乳栄養がアトピー性皮膚炎の発症から乳児を予防したことを示した研究は1つもない。母乳栄養はアトピー性皮膚炎を予防するかもしれないが、母乳栄養とアトピー性皮膚炎の発症との間の関係が確証されているとはいえない。アトピー性皮膚炎及び他のアレルギー性疾患に関連する母乳栄養の効果についての研究が結論を見ていない理由の1つは、母乳の構成因子の複雑さ、及び乳児における腸環境と免疫系との間の相互作用の複雑さにある。
ヒト母乳は、多様なサイトカイン/ケモカインを含有する(非特許文献5)。それらのレベルは、母親のアレルギー状態等によって、個々の女性の間で大きく異なっている(非特許文献6〜11)。特に重要なのは、ヒト母乳中に存在するいくつかのサイトカインは、胃において消化されず、むしろ乳児の消化管においてその生物学的な活性を維持するという事実である(非特許文献5及び12)。母乳を介して免疫調節作用を発揮するかもしれない多くの炎症性及び抗炎症性サイトカインが母乳中に含有されていることを考えると、母乳に含まれる幾つかのサイトカイン/ケモカインは乳児のアトピー性皮膚炎の発症を予防するように作用すると考えられているが、他のサイトカイン/ケモカインは、逆に作用するかもしれない。
近年、多くの研究者が母乳栄養のアレルギー関連効果を明らかにするため、母乳サイトカインを調べている。何人かの研究者が、母乳中に含有される特定のサイトカインがアレルギー疾患の成立に関連している可能性を示している(非特許文献13〜15)。しかしながら、これらの研究の結果は明確なものではない。また、過去の研究は異なる時期に採取した母乳を使用している。アトピー性皮膚炎に関連する初乳及び成熟乳の双方におけるサイトカイン/ケモカインを調べた研究はほとんどない。
Gdalevich M, Mimouni D, David M, Mimouni M. Breast-feeding and the onset of atopic dermatitis in childhood: a systematic review and meta-analysis of prospective studies. J Am Acad Dermatol. 2001;45(4):520-527. Ludvigsson JF, Mostrom M, Ludvigsson J, Duchen K. Exclusive breastfeeding and risk of atopic dermatitis in some 8300 infants. Pediatr Allergy Immunol. 2005;16(3):201-208. Benn CS, Wohlfahrt J, Aaby P, Westergaard T, Benfeldt E, Michaelsen KF, et al. Breastfeeding and risk of atopic dermatitis, by parental history of allergy, during the first 18 months of life. Am J Epidemiol. 2004;160(3):217-223. Pesonen M, Kallio MJ, Ranki A, Siimes MA. Prolonged exclusive breastfeeding is associated with increased atopic dermatitis: a prospective follow-up study of unselected healthy newborns from birth to age 20 years. Clin Exp Allergy. 2006;36(8):1011-1018. Field CJ. The immunological components of human milk and their effect on immune development in infants. J Nutr. 2005;135(1):1-4. Bottcher MF, Jenmalm MC, Bjorksten B, Garofalo RP. Chemoattractant factors in breast milk from allergic and nonallergic mothers. Pediatr Res. 2000;47(5):592-597. Bottcher MF, Jenmalm MC, Garofalo RP, Bjorksten B. Cytokines in breast milk from allergic and nonallergic mothers. Pediatr Res. 2000;47(1):157-162. Laiho K, Lampi AM, Hamalainen M, Moilanen E, Piironen V, Arvola T, et al. Breast milk fatty acids, eicosanoids, and cytokines in mothers with and without allergic disease. Pediatr Res. 2003;53(4):642-647. Prokesova L, Lodinova-Zadnikova R, Zizka J, Kocourkova I, Novotna O, Petraskova P, et al. Cytokine levels in healthy and allergic mothers and their children during the first year of life. Pediatr Allergy Immunol. 2006;17(3):175-183. Rigotti E, Piacentini GL, Ress M, Pigozzi R, Boner AL, Peroni DG. Transforming growth factor-beta and interleukin-10 in breast milk and development of atopic diseases in infants. Clin Exp Allergy. 2006;36(5):614-618. Marek A, Zagierski M, Liberek A, Aleksandrowicz E, Korzon M, Krzykowski G, et al. TGF-beta(1), IL-10 and IL-4 in colostrum of allergic and nonallergic mothers. Acta Biochim Pol. 2009;56(3):411-414. Calhoun DA, Lunoe M, Du Y, Staba SL, Christensen RD. Concentrations of granulocyte colony-stimulating factor in human milk after in vitro simulations of digestion. Pediatr Res. 1999;46(6):767-771. Kalliomaki M, Ouwehand A, Arvilommi H, Kero P, Isolauri E. Transforming growth factor-beta in breast milk: a potential regulator of atopic disease at an early age. J Allergy Clin Immunol. 1999;104(6):1251-1257. Oddy WH, Halonen M, Martinez FD, Lohman IC, Stern DA, Kurzius-Spencer M, et al. TGF-beta in human milk is associated with wheeze in infancy. J Allergy Clin Immunol. 2003;112(4):723-728. Snijders BEP, Damoiseaux JGMC, Penders J, Kummeling I, Stelma FF, Van Ree R, et al. Cytokines and soluble CD14 in breast milk in relation with atopic manifestations in mother and infant (KOALA Study). Clin Exp Allergy. 2006;36(12):1609-1615.
母乳中の多様なサイトカイン/ケモカインの存在と、母乳を摂取した乳児におけるアトピー性皮膚炎の発症との間の可能性のある関連性は、非常に興味深い。幾つかのサイトカインやケモカインがネットワークにおいて機能し、乳児免疫系の異常な活性化を統合することにより、アトピー性皮膚炎に関連するかもしれない。なぜなら、多様なサイトカイン/ケモカインがアトピー性皮膚炎の病態に寄与しているので、アトピー性皮膚炎の成立に影響を与える母乳中の個々のサイトカインやケモカインをバラバラに評価するのは効率的でない。従って、多くの種類の母乳サイトカイン/ケモカインの量を同時に評価することは価値あることである。
本発明の課題は、母乳中に含まれる多様なサイトカイン/ケモカインのレベルと、アトピー性皮膚炎の発症との関連性を明らかにし、これに基づき、母乳中サイトカイン/ケモカイン値に基づく乳児アトピー性皮膚炎の発症予測方法及びそれに使用する診断薬、並びに乳児アトピー性皮膚炎の発症を予防するための組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討したところ、6ヶ月齢において、アトピー性皮膚炎を発症している乳児が摂取した母乳と、発症していないコントロール乳児が摂取した母乳との間には、初乳中のインターロイキン(IL)−1β及びIL−12p40の濃度、並びに1ヶ月乳中のエオタキシン、IL−4、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロン(IFN)−α2、及びマクロファージ炎症タンパク質(MIP)−1αの濃度に有意差があることを見出した。このように、母乳中のこれらケモカイン/サイトカインは、乳児のアトピー性皮膚炎の発症と関連すると考えることができる。初乳と1ヶ月乳では、乳児のアトピー性皮膚炎発症に関連するサイトカイン/ケモカインが異なるが、1ヶ月乳で当該疾患の発症に関わるサイトカイン/ケモカインは初乳でも検出されていることから、1ヶ月乳でのこれらサイトカイン/ケモカインの継続的な高レベルが当該疾患の発症に関わっていると考えることができる。
更に、成熟乳中の高レベルのエオタキシンは、乳児ADの発症にとってリスク因子であることが、ロジスティック回帰分析により示された。エオタキシンは、乳児のアトピー性皮膚炎の発症と関連するケモカイン/サイトカインと考えられ、また、ほとんど全ての検体で測定可能であったことから、乳児AD発症予測マーカーとして特に有用である。
これらの知見に基づき、更に検討を重ねた結果、本発明を完成した。
即ち、本発明は以下に関する。
[1]乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定する方法であって、
(1)当該乳児が摂取する成熟乳中のエオタキシンの濃度を測定すること;及び
(2)(1)において測定したエオタキシンの濃度と、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとを相関付けること、
を含む、方法。
[2]乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定する方法であって、
(1)当該乳児が摂取する成熟乳中のエオタキシンの濃度を測定すること;及び
(2)(1)において測定したエオタキシンの濃度と、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとを相関付けること、を含み、更に
(3)該乳児が摂取する成熟乳中のIL−4、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2、及びMIP−1α、並びに初乳中のIL−1β及びIL−12p40からなる群から選択される少なくとも1つのサイトカイン/ケモカインの濃度を測定すること;及び
(4)(3)において測定したサイトカイン又はケモカインの濃度と、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとを相関付けること、
を含む、方法。
[3]前記(3)で測定するサイトカイン/ケモカインの濃度が、IFN−α2及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカイン/ケモカインの濃度である、上記[2]の乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定する方法。
[4]成熟乳が産後1ヵ月の母乳である、上記[1]から[3]のいずれか1の乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定する方法。
[5]乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクの判定用診断薬であって、当該乳児が摂取する成熟乳中のエオタキシン濃度を測定するための抗ヒトエオタキシン抗体を含む診断薬。
[6]乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクの判定用診断薬であって、当該乳児が摂取する成熟乳中のエオタキシン濃度を測定するための抗ヒトエオタキシン抗体を含み、更に抗ヒトIL−4抗体、抗ヒトG−CSF抗体、抗ヒトGM−CSF抗体、抗ヒトIFN−α2抗体、抗ヒトMIP−1α抗体、抗ヒトIL−1β抗体、及び抗ヒトIL−12p40抗体からなる群から選択される少なくとも1つの抗体を含む、診断薬。
[7]エオタキシンの産生を阻害する化合物を含む、乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを低減させる組成物。
[8]エオタキシンの産生を阻害する化合物に加え、IL−4の産生を阻害する化合物、G−CSFの産生を阻害する化合物、GM−CSFの産生を阻害する化合物、IFN−α2の産生を阻害する化合物、及びMIP−1αの産生を阻害する化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を更に含む、上記[7]の、乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを低減させる組成物。
[9]エオタキシンの産生を阻害する化合物が、
大豆イソフラボン、カスチシン(Casticin)、フラクトオリゴ糖、フィコビリタンパク質(Phycobili protein)、コーヒー酸フェネチルエステル(カフェイン酸フェネチルエステル;Caffeic phenethl ester)及びトラニラストからなる群より選ばれるいずれか1つ又は2つ以上である、上記[7]又は[8]の、乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを低減させる組成物。
本発明によれば、母乳中サイトカイン/ケモカイン値、特に成熟乳中のエオタキシン濃度に基づき、乳児アトピー性皮膚炎の発症リスクを高い精度で評価することが可能である。また、本発明によれば、乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを低減させる組成物を提供することが可能である。
1.乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定する方法
本発明は、乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定する方法であって、
(1)当該乳児が摂取する成熟乳中のエオタキシンの濃度を測定すること;及び
(2)(1)において測定したエオタキシンの濃度と、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとを相関付けること
を含む、方法を提供するものである。
本発明はまた、成熟乳中のエオタキシンの濃度を測定すること、及び該エオタキシンの濃度と該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとを相関付けることに加え、
(3)成熟乳中のエオタキシンの濃度を測定することに加え、該乳児が摂取する成熟乳中のIL−4、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2、及びMIP−1α、並びに初乳中のIL−1β及びIL−12p40からなる群から選択される少なくとも1つのサイトカイン/ケモカインの濃度を測定すること;及び
(4)(3)において測定したサイトカイン又はケモカインの濃度と、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとを相関付けること
を更に含む方法を提供する。
本明細書において乳児とは、新生児期以後1年までの小児を意味する。本発明の方法により、通常、生後12ヶ月まで、好ましくは、生後6ヶ月までに、乳児がアトピー性皮膚炎を発症するリスクを判定することができる。
本発明の判定方法の対象者は、通常、母乳育児を受けたヒト乳児である。
本明細書において成熟乳とは、一般的には分娩から3週間以上後、好ましくは4週間以上後に母体より分泌される乳汁を意味する。本発明において用いられる成熟乳としては、好ましくは分娩2ヶ月以内に、更に好ましくは分娩1ヶ月後に母体より分泌される成熟乳である。
初乳とは、分娩後、長くとも7日間以内、好ましくは5日以内に母体より分泌される乳汁を意味する。一態様において、本発明には、分娩4〜5日後に母体より分泌される初乳が用いられる。
本発明の方法においては、対象乳児が摂取する成熟乳中のエオタキシンの濃度を測定する。成熟乳中の高レベルのエオタキシンは、乳児ADの発症にとってリスク因子であることが、後述する実施例に示すようにロジスティック回帰分析により明らかにされた。エオタキシンは、乳児のアトピー性皮膚炎の発症と関連するケモカイン/サイトカインと考えられ、また、ほとんど全ての検体で測定可能であったことから、乳児AD発症予測マーカーとして特に有用である。
本発明の方法においては、成熟乳中のエオタキシンの濃度を測定することに加え、該乳児が摂取する成熟乳中のIL−4、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2、及びMIP−1α、並びに初乳中のIL−1β及びIL−12p40からなる群から選択される少なくとも1つ(好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上)のサイトカイン/ケモカインの濃度を測定することにより、より精度の高いアトピー性皮膚炎の発症リスクの判定が実施できる。これらケモカイン/サイトカインの中で、多くの検体で測定可能であった成熟乳中のIFN−α2及びMIP−1αなる群から選択される1つ又は2つの濃度を、エオタキシンの濃度に加えて、測定することが好ましい。
エオタキシン、IL−4、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2、MIP−1α、IL−1β、及びIL−12p40は、いずれも周知のサイトカイン又はケモカインである。ヒト由来のこれらのサイトカイン又はケモカインの代表的なアミノ酸配列及びそのNCBIアクセッション番号は以下の通りである。
エオタキシン:NP_002977.1 region 24..97(配列番号1)
IL−4:NP_000580.1 region 25..153(配列番号2)
G−CSF:NP_000750.1 region 31..207(配列番号3)
GM−CSF:NP_000749.2 region 18..144(配列番号4)
IFN−α2:NP_000596.2 region 24..188(配列番号5)
MIP−1α:NP_002974.1 region 24..92(配列番号6)
IL−1β:NP_000567.1 region 117..269(配列番号7)
IL−12p40:NP_002178.2 region 23..328(配列番号8)
母乳中の各サイトカイン又はケモカインの濃度は、各サイトカイン又はケモカインを特異的に認識する抗体を用いて、免疫学的手法により測定することができる。免疫学的手法としては、抗体アレイ、フローサイトメトリー解析、放射性同位元素免疫測定法(RIA法)、ELISA法(Methods in Enzymol. 70: 419-439 (1980))、ウェスタンブロッティング、免疫組織染色等を挙げることができる。
母乳は脂質が豊富なため、サイトカイン又はケモカイン濃度の免疫学的測定に際しては、あらかじめ遠心分離をし、脂質層を除去することにより得られる非脂肪ホエイを用いることが好ましい。
抗体による抗原Xの「特異的な認識」とは、抗原抗体反応における、抗体の抗原Xに対するアフィニティが、抗原X以外の抗原に対するアフィニティよりも強いことを意味する。本明細書において、抗原Xを特異的に認識する抗体を「抗X抗体」と略記する。
各サイトカイン又はケモカインを特異的に認識する抗体は、該サイトカイン又はケモカインやその抗原性を有する部分ペプチドを免疫原として用い、既存の一般的な製造方法によって製造することができる。或いは、サイトカイン又はケモカインを特異的に認識する市販の抗体を入手して使用することができる。本明細書において、抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)等の天然型抗体、遺伝子組換技術を用いて製造され得るキメラ抗体、ヒト化抗体や一本鎖抗体、及びこれらの結合性断片が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又はこれらの結合性断片である。結合性断片とは、特異的結合活性を有する前述の抗体の一部分の領域を意味し、具体的には例えばF(ab’)、Fab’、Fab、Fv、sFv、dsFv、sdAb等が挙げられる(Exp. Opin. Ther. Patents, Vol.6, No.5, p.441-456, 1996)。抗体のクラスは、特に限定されず、イムノグロブリン(Ig)G、IgM、IgA、IgDあるいはIgE等のいずれのアイソタイプを有する抗体をも包含する。好ましくは、IgG又はIgMであり、精製の容易性等を考慮するとより好ましくはIgGである。
また、抗体は、適当な標識剤、例えば、放射性同位元素(例:125I、131I、H、14C、32P、33P、35S等)、酵素(例:β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)、ビオチン等で標識されていてもよい。
上述の各サイトカイン又はケモカインを特異的に認識する抗体を、適切な支持体の上に結合して、抗体アレイとして提供してもよい。支持体としては、当該分野で通常用いられている支持体であれば特に限定されず、例えば、メンブレン(例えば、ナイロン膜)、ビーズ、ガラス、プラスチック、金属等を挙げることができる。
次に、測定した成熟乳及び/又は初乳中の各サイトカイン又はケモカイン濃度と、乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとを相関付ける。例えば、測定された成熟乳及び/又は初乳中の各サイトカイン又はケモカイン濃度を、アトピー性皮膚炎を発症した乳児が摂取した成熟乳及び/又は初乳中の対応するサイトカイン又はケモカイン濃度、及びアトピー性皮膚炎を発症しない乳児が摂取した成熟乳及び/又は初乳中の対応するサイトカイン又はケモカイン濃度と比較する。あるいは、測定された成熟乳及び/又は初乳中の各サイトカイン又はケモカイン濃度を、あらかじめ求めておいた、アトピー性皮膚炎を発症した多数個体の乳児についての成熟乳及び/又は初乳中の対応するサイトカイン又はケモカイン濃度の平均値、アトピー性皮膚炎を発症していない多数個体の乳児についての成熟乳及び/又は初乳中の対応するサイトカイン又はケモカイン濃度の平均値、アトピー性皮膚炎を発症した多数個体の乳児及び発症していない多数個体の乳児についての成熟乳及び/又は初乳中の対応するサイトカイン又はケモカイン濃度の分布図等と比較してもよい。各サイトカイン又はケモカイン濃度の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行われる。
後述の実施例に示すように、アトピー性皮膚炎を発症した乳児が摂取する成熟乳中のエオタキシン、IL−4、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2及びMIP−1α、並びに初乳中のIL−1β及びIL−12p40の各サイトカイン又はケモカインの濃度は、アトピー性皮膚炎を発症しない乳児が摂取する初乳又は成熟乳中のそれと比較して有意に高かった。即ち、成熟乳及び/又は初乳中に含まれる上述の各サイトカイン又はケモカインの濃度と、当該成熟乳及び/又は初乳を摂取する乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとの間の正の相関に基づき、乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定することができる。
アトピー性皮膚炎を発症した乳児が摂取する成熟乳や初乳中で濃度の上昇が認められたサイトカイン/ケモカインの中で、特に成熟乳中の高レベルのエオタキシンは、乳児ADの発症にとってリスク因子であることがロジスティック回帰分析により明らかになった。したがって、成熟乳中のエオタキシンの濃度が相対的に高い場合には、当該成熟乳を摂取する乳児はアトピー性皮膚炎を発症する可能性が高いと判定することができる。エオタキシンの濃度が高いことに加えて、成熟乳中のIL−4、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2及びMIP−1α、並びに初乳中のIL−1β及びIL−12p40の各サイトカイン又はケモカインのうち少なくとも1つの濃度が相対的に高い場合には、当該成熟乳又は初乳を摂取する乳児はアトピー性皮膚炎を発症する可能性が高いと、より高い精度で判定することができる。
また、成熟乳及び/又は初乳中の各サイトカイン又はケモカイン濃度のカットオフ値をあらかじめ設定しておき、測定された成熟乳及び/又は初乳中の各サイトカイン又はケモカイン濃度とこのカットオフ値とを比較することによって乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定することもできる。例えば、成熟乳中のエオタキシンの濃度が前記カットオフ値以上である場合には、当該成熟乳を摂取する乳児はアトピー性皮膚炎を発症する可能性が高いと判定することができる。エオタキシンの濃度がカットオフ値以上であることに加えて、成熟乳中のIL−4、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2及びMIP−1α、並びに初乳中のIL−1β及びIL−12p40の各サイトカイン又はケモカインのうち少なくとも1つの濃度がそのカットオフ値以上である場合には、当該成熟乳又は初乳を摂取する乳児はアトピー性皮膚炎を発症する可能性が高いと、より高い精度で判定することができる。
「カットオフ値」は、その値を基準として疾患の判定をした場合に、高い診断感度(有病正診率)及び高い診断特異度(無病正診率)の両方を満足できる値である。例えば、アトピー性皮膚炎を発症した乳児で高い陽性率を示し、かつ、アトピー性皮膚炎を発症していない乳児で高い陰性率を示す、成熟乳又は初乳中の各サイトカイン又はケモカイン濃度をカットオフ値として設定することが出来る。
カットオフ値の算出方法は、この分野において周知である。例えば、アトピー性皮膚炎を発症した乳児及びアトピー性皮膚炎を発症していない乳児が摂取した、成熟乳及び/又は初乳中の上述サイトカイン又はケモカイン濃度を測定し、測定された値における診断感度及び診断特異度を求め、これらの値に基づき、市販の解析ソフトを使用してROC(Receiver Operating Characteristic)曲線を作成する。そして、診断感度と診断特異度が可能な限り100%に近いときの値を求めて、その値をカットオフ値とすることができる。また、例えば、検出された値における診断効率(全症例数に対する、有病正診症例と無病正診症例の合計数の割合)を求め、最も高い診断効率が算出される値をカットオフ値とすることができる。
或いは、アトピー性皮膚炎を発症した乳児及びアトピー性皮膚炎を発症していない乳児が摂取した、成熟乳中の上記サイトカイン/ケモカインの濃度又は初乳中のサイトカイン/ケモカインの濃度を測定し、多変量ロジスティック回帰解析を実施する。すなわち、母乳サイトカイン/ケモカインの濃度のデータを、市販の解析ソフトを使用して、三分位値又は中央値にカテゴライズし、数種類の独立した変数、例えば母親のAD及びアレルギー疾患の発症歴、母親のチリダニ及び/又はスギ花粉に特異的なIgEレベル、母親の総IgEレベル、並びに母乳サイトカイン/ケモカインを含めて多変量ロジスティック回帰解析を行う。多変量ロジスティック回帰解析において有意差が認められた場合、該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクがあると評価することができる。
好ましい態様において、成熟乳中の、好ましくは分娩1ヶ月後に母体より分泌される成熟乳中の、エオタキシンの濃度が測定される。より好ましくはエオタキシンに加え、成熟乳中の、好ましくは分娩1ヶ月後に母体より分泌される成熟乳中の、IL−4、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインの濃度、更に好ましくはIFN−α2及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインの濃度が測定される。エオタキシンはほぼ全ての検体で検出されるために検出の漏れがなく、乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクのマーカーとして有用である。また、IFN−α2、及びMIP−1αも同様に、多くの検体で検出されるため、検出の漏れが少ない。これら特定のサイトカイン又はケモカイン濃度を組み合わせることにより、より精度の高いアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定できる。かかる測定に加えて、当該乳児が摂取する初乳中のIL−1β及びIL−12p40からなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインを更に測定することにより、より精度の高いアトピー性皮膚炎の発症リスクの判定が実施できる。
2.診断薬
本発明は、乳児が摂取する成熟乳及び/又は初乳中のサイトカイン/ケモカインの濃度に基づく、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクの判定用診断薬を提供するものである。
本発明に係る診断薬は、好ましくは、抗ヒトエオタキシン抗体を含む、乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクの判定用診断薬である。より好ましくは、本発明は、抗ヒトエオタキシン抗体に加え、抗ヒトIL−1β抗体、抗ヒトIL−12p40抗体、抗ヒトIL−4抗体、抗ヒトG−CSF抗体、抗ヒトGM−CSF抗体、抗ヒトIFN−α2抗体、及び抗ヒトMIP−1α抗体からなる群から選択される少なくとも1つの抗体を更に含む、乳児アトピー性皮膚炎の発症リスクの判定用診断薬を提供する。更に好ましくは、本発明は、抗ヒトエオタキシン抗体に加え、抗ヒトIFN−α2抗体、及び抗ヒトMIP−1α抗体からなる群から選択される少なくとも1つの抗体を更に含む、乳児アトピー性皮膚炎の発症リスクの判定用診断薬を提供する。
「抗体」の定義及び態様は、上記1の項で記載した通りである。
本発明の診断薬が、乳児が摂取する成熟乳中のサイトカイン又はケモカイン濃度に基づき、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定するための診断薬である場合、該診断薬は、抗ヒトエオタキシン抗体、抗ヒトIL−4抗体、抗ヒトG−CSF抗体、抗ヒトGM−CSF抗体、抗ヒトIFN−α2抗体及び抗ヒトMIP−1α抗体からなる群から選択される少なくとも1つ(好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上)の抗体を含む。この場合、一態様において、本発明の診断薬は、抗ヒトエオタキシン抗体、抗ヒトIFN−α2抗体及び抗ヒトMIP−1α抗体を含む抗体の組み合わせを含む。上記本発明の方法により、かかる態様の診断薬を用いて、成熟乳中のエオタキシン、IFN−α2及びMIP−1α濃度を測定することにより、高い精度で当該成熟乳を摂取する乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定することができる。
本発明の診断薬が、乳児が摂取する初乳中のサイトカイン又はケモカイン濃度に基づき、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定するための診断薬である場合、該診断薬は、抗ヒトIL−1β抗体及び/又は抗ヒトIL−12p40抗体を含む。上記本発明の方法により、かかる態様の診断薬を用いて、初乳中のIL−1β及び/又はIL−12p40を濃度を測定することにより、高い精度で当該初乳を摂取する乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定することができる。
本発明の診断薬に含まれる抗体は、通常、各々別個に(あるいは可能であれば混合した状態で)水もしくは適当な緩衝液(例:TEバッファー、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)等)中に適当な濃度となるように溶解されるか、あるいは凍結乾燥された状態で、適切な容器内に収容されて提供される。
或いは、抗体を適切な支持体の上に結合して、抗体アレイとして提供してもよい。支持体としては、当該分野で通常用いられている支持体であれば特に限定されず、例えば、メンブレン(例えば、ナイロン膜)、ビーズ、ガラス、プラスチック、金属等が挙げられる。
本発明の診断薬は、免疫学的測定方法の種類に応じて、当該方法の実施に必要な他の成分を構成として含む診断用キットとして提供することもできる。かかる診断用キットは、例えば、標識二次抗体、発色基質、ブロッキング液、洗浄緩衝液、ELISAプレート、ブロッティング膜等を更に含むことができる。
また、本発明の診断薬は、検量線作成のため、測定対象のサイトカイン又はケモカインを既知量含むサイトカイン又はケモカイン溶液を構成として含む診断用キットとして提供することもできる。この検量線作成用のサイトカイン又はケモカイン溶液は、好ましくは、測定対象のサイトカイン又はケモカインのヒト母乳(又はそのホエイ)中の溶液である。本発明に係る診断薬が、乳児が摂取する成熟乳中のサイトカイン又はケモカイン濃度に基づき、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定するための診断薬である場合、該診断薬は、測定対象のサイトカイン又はケモカインのヒト成熟乳(又はそのホエイ)中の溶液を検量線作成用として含み得る。本発明の診断薬が、乳児が摂取する初乳中のサイトカイン又はケモカイン濃度に基づき、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定するための診断薬である場合、該診断薬は、測定対象のサイトカイン又はケモカインのヒト初乳(又はそのホエイ)中の溶液を検量線作成用として含み得る。
これらの各構成要素は、各々別個に(あるいは可能であれば混合した状態で)水もしくは適当な緩衝液(例:TEバッファー、PBS等)中に適当な濃度となるように溶解されるか、あるいは凍結乾燥された状態で、適切な容器内に収容されて提供される。
本発明の診断薬を用いれば、上記本発明の方法により、容易に乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定することが可能となる。
3.組成物
本発明は、乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを低減させる組成物を提供する。本発明に係る乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを低減させる組成物は、乳児のアトピー性皮膚炎の発症を予防するための組成物として提供することができる。
本発明に係る組成物は、母乳中のエオタキシンの濃度を低減させる効果を有する化合物を有効成分として含む。このような化合物として、エオタキシンの産生阻害剤を挙げることができる。「エオタキシンの産生阻害剤」とは、エオタキシンの産生を阻害する効果を有する化合物を意味する。エオタキシンの濃度を低減させる効果を有する化合物としてエオタキシンの産生を阻害する効果を有することが知られている公知の化合物を使用でき、具体的には、G−CSF、大豆イソフラボン、カスチシン(Casticin)、フラクトオリゴ糖、フィコビリタンパク質(Phycobiliprotein)、ハンゲショウ(Saururus chinensis)抽出物、コーヒー酸フェネチルエステル(カフェイン酸フェネチルエステル;Caffeic phenethl ester)、リコリスフラボノイド(Licorice flavonoid)、パイパーベトル(Piper betle)、及びトラニラスト等を例示できる(Queto T, Vasconcelos ZF, Luz RA, Anselmo C, Guine AA, e Silva PM, Farache J, Cunha JM, Bonomo AC, Gaspar-Elsas MI, Xavier-Elsas P. G-CSF suppresses allergic pulmonary inflammation, downmodulating cytokine, chemokine and eosinophil production. Life Sci. 2011;88(19-20):830-8.;Bao ZS, Hong L, Guan Y, Dong XW, Zheng HS, Tan GL, Xie QM. Inhibition of airway inflammation, hyperresponsiveness and remodeling by soy isoflavone in a murine model of allergic asthma. Int Immunopharmacol. 2011;11(8):899-906.;Koh DJ, Ahn HS, Chung HS, Lee H, Kim Y, Lee JY, Kim DG, Hong M, Shin M, Bae H. Inhibitory effects of casticin on migration of eosinophil and expression of chemokines and adhesion molecules in A549 lung epithelial cells via NF-κB inactivation. J Ethnopharmacol. 2011;136(3):399-405.;Yasuda A, Inoue KI, Sanbongi C, Yanagisawa R, Ichinose T, Yoshikawa T, Takano H. Dietary supplementation with fructooligosaccharides attenuates airway inflammation related to house dust mite allergen in mice. Int J Immunopathol Pharmacol.;23(3):727-35.;Chang CJ, Yang YH, Liang YC, Chiu CJ, Chu KH, Chou HN, Chiang BL. A novel phycobiliprotein alleviates allergic airway inflammation by modulating immune responses. Am J Respir Crit Care Med. 2011;183(1):15-25.;Quan Z, Lee YJ, Yang JH, Lu Y, Li Y, Lee YK, Jin M, Kim JY, Choi JH, Son JK, Chang HW. Ethanol extracts of Saururus chinensis suppress ovalbumin-sensitization airway inflammation. J Ethnopharmacol. 2010;132(1):143-9.;Liao YR, Hsu JY, Chu JJ, Fu LS. Caffeic acid phenethyl ester suppresses the induction of eotaxin in human lung fibroblast cells. J Asthma. 2010;47(3):233-7.;Jayaprakasam B, Doddaga S, Wang R, Holmes D, Goldfarb J, Li XM. Licorice flavonoids inhibit eotaxin-1 secretion by human fetal lung fibroblasts in vitro. J Agric Food Chem. 2009;57(3):820-5.;Wirotesangthong M, Inagaki N, Tanaka H, Thanakijcharoenpath W, Nagai H. Inhibitory effects of Piper betle on production of allergic mediators by bone marrow-derived mast cells and lung epithelial cells. Int Immunopharmacol. 2008;8(3):453-7.;Hida RY, Takano Y, Okada N, Dogru M, Satake Y, Fukagawa K, Fujishima H. Suppressive effects of tranilast on eotaxin-1 production from cultured conjunctival fibroblasts. Curr Eye Res. 2008 Jan;33(1):19-22.)。
本発明に係る組成物は、母乳中のエオタキシンの濃度を低減させる効果を有する化合物のほかに、母乳中のIIL−4、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2、又はMIP−1αの濃度を低減させる効果を有する化合物を含むことができる。このような化合物として、これら各サイトカイン/ケモカインの産生阻害剤を挙げることができる。「サイトカイン/ケモカインの産生阻害剤」とは、サイトカイン/ケモカインの産生を阻害する効果を有する化合物を意味する。上記各サイトカイン/ケモカインの濃度を低減させる効果を有する化合物として、上記各サイトカイン/ケモカインの産生を阻害する効果を有することが知られている公知の化合物を使用でき、具体的には、G−CSF、大豆イソフラボン、カスチシン(Casticin)、フラクトオリゴ糖、フィコビリタンパク質(Phycobiliprotein)、ハンゲショウ(Saururus chinensis)抽出物、コーヒー酸フェネチルエステル(カフェイン酸フェネチルエステル;Caffeic phenethl ester)、リコリスフラボノイド(Licorice flavonoid)、パイパーベトル(Piper betle)、及びトラニラスト等を例示できる。一態様において、本発明に係る組成物は、母乳中のエオタキシンの濃度を低減させる効果を有する化合物に加え、母乳中のIFN−α2の濃度を低減させる効果を有する化合物及び/又は母乳中のMIP−1αの濃度を低減させる効果を有する化合物を含む。
エオタキシンやMIP−1α等のケモカインは強い炎症性応答の誘導に寄与する可能性がある。エオタキシンは好酸球の化学走化性及び活性化を促進し、ADにおいて主要な役割を果たす(Akdis CA, Akdis M, Bieber T, Bindslev-Jensen C, Boguniewicz M, Eigenmann P, et al. Diagnosis and treatment of atopic dermatitis in children and adults: European Academy of Allergology and Clinical Immunology/American Academy of Allergy, Asthma and Immunology/PRACTALL Consensus Report. Allergy. 2006;61(8):969-987.)。IL−4やGM−CSF等のTヘルパー2(Th2)サイトカインと共同して作用することにより、活性化した好酸球数を増加させ、また同様に激しい炎症を引き起こす可能性があり、それはアレルギー疾患の基本的特徴である。MIP−1αもまた炎症性細胞を動員することによりこの応答に寄与する可能性がある。IL−4やGM−CSF等のTh2サイトカインは乳児の腸管及び免疫系の両方と相互作用することにより乳児のTh2応答の増幅に寄与すると考えることができる。
IL−1βは炎症誘発性サイトカインの代表的なものであり、母乳細胞がこのサイトカインを自発的に産生することが見出されている(Playford RJ, Macdonald CE, Johnson WS. Colostrum and milk-derived peptide growth factors for the treatment of gastrointestinal disorders. Am J Clin Nutr. 2000;72(1):5-14.;Hawkes JS, Bryan DL, Gibson RA. Cytokine production by human milk cells and peripheral blood mononuclear cells from the same mothers. J Clin Immunol. 2002;22(6):338-344.;Niers L, Stasse-Wolthuis M, Rombouts FM, Rijkers GT. Nutritional support for the infant's immune system. Nutr Rev. 2007;65(8 Pt 1):347-360.;Garofalo R. Cytokines in human milk. J Pediatr. 2010;156(2 Suppl):S36-40.)同様に、IL−12がもう1つの炎症誘発性サイトカインであり、母乳中で見出されたことは良く知られている(Niers L, Stasse-Wolthuis M, Rombouts FM, Rijkers GT. Nutritional support for the infant's immune system. Nutr Rev. 2007;65(8 Pt 1):347-360.;Bryan DL, Hawkes JS, Gibson RA. Interleukin-12 in human milk. Pediatr Res. 1999;45(6):858-859.)。IL−12p40はIL−12の構成成分であり、IL−12とIL−23の間で共有されている。IL−12p40がIL−12又はIL−23を反映するものかどうかはっきりしていないが、母乳中の炎症誘発性サイトカインが乳児の免疫系における炎症の拡大に寄与しているかもしれない。
IFN−α2は、どのようにADの発症を促進するのかはっきりしていないが、何らかの機序で乳児の免疫系における炎症の拡大に寄与していると考えることができる。
エオタキシン、IL−4、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2、及びMIP−1αは、コントロール群の初乳中でも検出されるが、コントロール群の成熟乳中ではその濃度が著しく低減している。一方、これらサイトカイン/ケモカインは、AD群の初乳中で検出され、成熟乳中でもその濃度がほぼ維持されている。母乳サイトカインレベルが母乳の成熟に伴って減少することは広く知られているが、本発明において見出されたこの現象は、従来の知見とは全く逆の現象である。このことから、母乳でのこれらサイトカイン/ケモカインの継続的な過度の分泌が乳児のAD発症に関与すると考えることができる。したがって、これらサイトカイン/ケモカインの母乳中の濃度を低減させる効果を有する化合物は、乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを低減することができ、その発症予防に有用である。
本発明に係る組成物は、医薬として製剤化することにより、乳児のアトピー性皮膚炎を予防するために、母体に適用される医薬組成物とすることができる。或いは、乳児のアトピー性皮膚炎を予防するために、母体が摂取するための食品組成物とすることもできる。食品組成物は、2種以上の食品原料や食品素材を組み合わせて調製される組成物をいい、健康食品や栄養組成物を含む意味で用いられる。
本発明に係る医薬組成物の調製において、医薬組成物中に含まれる有効成分の量は、広範囲から適宜選択されるが、通常約0.1〜99.9重量%、好ましくは0.1〜99重量%程度の範囲である。
本発明に係る医薬組成物の摂取経路は特に限定されないが、経口摂取がより好ましい。経口摂取するときの形態は、例えば、錠剤、被覆錠、カプセル剤、顆粒剤、散剤、溶液、シロップ剤、乳液又は分散性粉末による経口摂取を挙げることができる。これらの各種製剤は、常法に従って有効成分に賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤等の医薬の製剤技術分野において通常使用し得る既知の補助剤を用いて製剤化することができる。
本発明に係る食品組成物の調製においては、有効成分を固形物重量に対して0.1〜70重量%含むように調製することが好ましい。
食品組成物として使用する場合、具体的には、妊産婦・授乳婦用栄養組成物、例えば妊産婦・授乳婦用粉乳や妊産婦・授乳婦用食品等に有効成分を配合して調製したものを使用できる。
本明細書中で挙げられた特許及び特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
患者及び方法
コホート及び試験対象者
2007年1月から2008年5月にかけて、川鉄千葉病院において500人の新生児の前向き誕生コホート(prospective birth cohort)をセットアップした。すべての参加者は、その乳児が生まれる前にアンケートを受けた。親のアレルギー疾患及び多様な曝露についてのデータを取得した。親は、湿疹に関する症状に主に焦点をあてたアンケートに答えた。乳児が6カ月齢のときに、少なくとも2ヶ月間にわたり痒い湿疹を有する乳児をアトピー性皮膚炎と定義した。6カ月アンケートに対する完全回答率は73%であった。6カ月齢においてアトピー性皮膚炎(AD)を発症した乳児は51人で、そこから49人のAD陽性対象者を選択した。母乳の欠失のため、51人のADの乳児のうちの2人は研究対象から除いた。49人のAD陰性対象を、AD及び他のアレルギー疾患(喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、及び花粉症)の母体歴に関する差異がないように、ランダムに選択した。全ての乳児は、生後6カ月まで、母乳栄養だけか混合栄養であった。49人のAD陽性乳児のうちの20人、及び49人のAD陰性乳児のうちの20人は、1カ月齢まで主に母乳栄養であり、他の乳児は、混合栄養であった。母乳の凍結ストックを多重サイトカインアッセイに付した。妊娠の経過は全ての女性において正常であった。アレルギー疾患の履歴を除き、母体は他の医学的問題を有していなかった。AD陽性乳児とAD陰性乳児との間、及び2群の母体間に背景の有意な差はなかった(表1)。全ての参加者は、研究に参加することの書面によるインフォームドコンセントを提供した。本研究は、千葉大学大学院医学研究院の倫理委員会により許可されたものである。
Figure 2014048082
表1は、母体及び乳児の特徴を示す。母体の年齢、出産歴、妊娠前のBMI、妊娠中のBMI、妊娠期間及び出生時体重をスチューデントのt検定(Student’s t−test)により解析した。他の特徴は、ピアソンのカイ二乗検定(Pearson’s chi−square test)により解析した。
母乳のサンプリング及び保存
母乳試料を生後4〜5日及び分娩1カ月後に採集し、長期保存のために−80℃にて凍結した。母乳試料を試験する前に素早く融解し、10000×gにて10分間遠心分離した。脂質層の除去後、非脂肪ホエイをピペットで抽出した。
多重解析
母乳中のサイトカイン及びケモカインを、26個のサイトカイン及びケモカインのそれぞれに対する抗体で被覆されたポリスチレンビーズを含有する、ミリポアから購入した多重キットのついたBio−Plex懸濁アレイシステム(Bio−Radラボラトリー)により測定した。この技術が有利な点は、試料中の100検体にものぼる同時測定のためにわずか25μlの試料しか必要ないことである。26サイトカイン[IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−10、IL−12p40、IL−12p70、IL−13、IL−15、IL−17、IFN−α2、IFN−γ、腫瘍壊死因子(TNF)−α、TNF−β、エオタキシン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージ炎症タンパク質(MIP)−1α、MIP−1β、単球走化性タンパク質(MCP)−1、及びインターフェロンガンマ誘導性タンパク質10(IP−10)]についての多重解析を、初乳及び成熟乳について行った。母乳試料を室温にて融解し、96穴フィルター底プレートにデュプリケート(duplicate)で加えた。ビーズをウェルに加えて、プレートシェーカー上で室温にて1時間インキュベーションした。ウェルを、フィルター底を通してバキュームすることにより洗浄後、抗体コンジュゲートを加え、更に1時間撹拌を続けた。ストレプトアビジン−フィコエリスリンをウェルに加え、最終撹拌インキュベーションを行った。プレートを前述の様に洗浄し、100μlのシース液をウェルに加え、ウェルを読んだ。全ての解析対象についての標準曲線及び品質コントロールをプレート上で行った。サイトカインが結合したビーズの中間値蛍光強度を、5パラメーター論理的モデルを使用して、濃度(pg/ml)に変換した。全てのサイトカイン及びケモカインについて、キットの検出限界は、3.2pg/mlであり、キットの最大検出限界は、10000pg/mlであった。
母親の血清中の総IgEレベル及び特異的IgEレベルの測定
母親が入院しているときに、血液検体を98検体採集し、そして血清を長期保存のために−80℃にて凍結した。総IgE、並びにチリダニ及びスギ花粉に対する特異的IgEを、ImmunoCAP(Phadia AB)により測定した。
統計学的解析
ベースライン変数のために、簡易統計を組み、カテゴリーデータに関して頻度と割合を、そして連続変数に関して平均と標準偏差を用いた。患者の特徴の比較は、カテゴリー結果に関してフィッシャーの直接確率検定(Fisher’s exact test)を用い、連続変数に関してt検定を用いた。母乳サイトカイン/ケモカインの検出比率及び濃度の違いの有意性を測定するために、フィッシャーの直接確率検定及びノンパラメトリック検定を用い、ボンフェローニの補正(Bonferroni correction)の後に多変量比較のために有意のP値を表した。AD発症に関連するベースライン変数及び臨床的変数を特定するために、ステップワイズ選択法(step−wise selection procedure)を備えたロジスティック回帰モデル(logistic regression model)を用いて、多変量解析を行った。ステップワイズ法は、インクルージョンについては0.05の閾値に、そしてエクスクルージョンについては0.05の閾値にセットした。加えて、アカイケ情報基準(Akaike Information Criterion;AIC)を適用し、試験した中の最良モデルを決定した。全ての統計学的解析は、SPSSプログラム(v.19.0,SPSS Inc.)を用いて行った。
結果
AD群及びコントロール群における、母乳中サイトカイン/ケモカインのプロファイルとそれらのレベル
母乳サイトカイン/ケモカイン濃度は非常に多様であったが、AD発症歴のある母親と無い母親との間に母乳中のサイトカイン/ケモカイン濃度に関する著しい差異は検出されなかった。また、母乳サイトカイン/ケモカインと、母親の、チリダニ及び/又はスギ花粉に特異的なIgEレベル並びに総IgEレベルとの相関は認められなかった。
母乳中サイトカイン/ケモカインのレベルと、6か月齢におけるADの発症との間の関係を調べるため、6カ月齢のときにADを発症した乳児が摂取した母乳中のサイトカイン/ケモカインレベルと、その時点でADを発症していない乳児が摂取した母乳中のサイトカイン/ケモカインレベルを比較した(以下、それぞれ、AD群及びコントロール群と呼ぶ)。
初乳においては、AD群におけるIL−1β及びIL−12p40値陽性の頻度は、コントロール群におけるIL−1β及びIL−12p40値陽性の頻度よりも大きかった(フィッシャーの直接確率検定、それぞれ、P<0.001及び<0.001、表2)。
また、初乳において、母乳サイトカイン/ケモカインの中央値濃度の重要な差異は、以下の通りであった(表2):AD群の乳児が摂取した初乳において、IL−1β及びIL−12p40の濃度が、コントロール群と比較して高かった(マン−ホイットニー検定(Mann−Whitney test)、それぞれP<0.001及び<0.001)。
Figure 2014048082
表2は初乳中のサイトカイン/ケモカインのプロファイル及びレベルを示す。検出限界を超えたサイトカイン濃度を陽性と判定した。2群間の陽性サイトカイン値の出現可能性は、フィッシャーの直接確率検定により検討した。結果は、ボンフェローニの補正の後にP<0.0022のとき有意差があると判断し、表中では”a”で示した。初乳中のサイトカイン及びケモカインのレベルをAD群及びコントロール群の間で比較した。検出限界以下の濃度のサンプルは1.6pg/mlと表示した。結果は、ボンフェローニの補正の後にP<0.0022のとき有意差があると判断し、表中では”b”で示した。
成熟乳においては、AD群におけるIL−4、GM−CSF及びMIP−1α値陽性の頻度は、コントロール群のそれよりも大きかった(フィッシャーの直接確率検定、それぞれ、P<0.001、<0.001、及び<0.001、表3)。ほとんどの初乳試料でIL−8、MCP−1及びIP−10の濃度は、検出限度を超えており、幾つかの成熟乳サンプルにおけるMCP−1及びIP−10濃度が検出限度を超えていた。持ち越し母乳の量の欠失のため、これらの試料のほとんどについて再測定をすることができなかったので、更なる解析から除外した。これらのケモカインについての統計学的解析は行わなかった。
また、成熟乳における、母乳サイトカイン及びケモカインの中央値濃度の有意な差異は、以下の通りである(表3):AD群の乳児が摂取した成熟乳中のIL−4、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2、及びMIP−1αの濃度が、コントロール群のそれと比較して高かった(マン−ホイットニー検定、それぞれ、P<0.001)。
Figure 2014048082
表3は成熟乳中のサイトカイン/ケモカインのプロファイル及びレベルを示す。検出限界を超えたサイトカイン濃度を陽性と判定した。2群間の陽性サイトカイン値の出現可能性は、フィッシャーの直接確率検定により検討した。結果は、ボンフェローニの補正の後にP<0.0022のとき有意差があると判断し、表中では”a”で示した。成熟乳中のサイトカイン及びケモカインのレベルをAD群及びコントロール群の間で比較した。検出限界以下の濃度のサンプルは1.6pg/mlと表示した。結果は、ボンフェローニの補正の後にP<0.0022のとき有意差があると判断し、表中では”b”で示した。
母乳サイトカイン/ケモカインの多変量ロジスティック回帰解析
サイトカイン/ケモカイン間の相関関係の観点から、母乳サイトカイン/ケモカインのレベルと乳児のAD予後との間の相関性を明らかにするために、多重解析を行い、その結果を表4に示した。
母乳サイトカイン/ケモカインのデータは三分位に分類された。母乳の分析は、数種類の独立した変数、例えば母親のAD及びアレルギー疾患の発症歴、母親のチリダニ及び/又はスギ花粉に特異的なIgEレベル、母親の総IgEレベル、並びに1つの母乳サイトカイン又はケモカインを含めて実施した。初乳の分析によればIl−1β及びIL−12p40はADのリスクを高めないことが示された。一方、成熟乳のサイトカイン/ケモカインの分析により、乳児のAD発症のリスクはエオタキシンのレベルと関連することが示された。乳児のAD発症のリスクは高レベルのエオタキシンで低レベルのカテゴリーと比較して増加し、そのオッズ比(OR)は3.298であり、そして信頼区間(CI)は1.164−9.338であった(表4)。成熟乳中のサイトカイン/ケモカインであってAD群でコントロール群と比較して有意に濃度が高かった6種類のサイトカイン/ケモカインの中で、エオタキシンを用いたロジスティック回帰分析がAD発症に関する最も良い予測モデルを示した。
Figure 2014048082
表4は、成熟乳中のエオタキシンについてロジスティック回帰解析を行った結果を示す。表4中、ORは、母親のAD及び他のアレルギー疾患の発症歴、母親の総IgEレベル、スギ花粉及びヤケヒョウダニに対する特異的IgEで調節したオッズ比を示し、CIは、信頼区間を示す。エオタキシンの連続データは三分位に分割し、それから最も低いカテゴリーに基づいてORを算出した。p<0.05のとき、有意な結果であると判断した。
本発明によれば、母乳中サイトカイン/ケモカイン値、特に成熟乳中のエオタキシンの濃度に基づき、乳児アトピー性皮膚炎の発症リスクを高い精度で評価することが可能である。また、本発明によれば、乳児のアトピー性皮膚炎の発症を予防する組成物を提供できる。

Claims (9)

  1. 乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定する方法であって、
    (1)当該乳児が摂取する成熟乳中のエオタキシンの濃度を測定すること;及び
    (2)(1)において測定したエオタキシンの濃度と、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとを相関付けること、
    を含む、方法。
  2. 乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定する方法であって、
    (1)当該乳児が摂取する成熟乳中のエオタキシンの濃度を測定すること;及び
    (2)(1)において測定したエオタキシンの濃度と、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとを相関付けること、を含み、更に
    (3)該乳児が摂取する成熟乳中のIL−4、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2、及びMIP−1α、並びに初乳中のIL−1β及びIL−12p40からなる群から選択される少なくとも1つのサイトカイン/ケモカインの濃度を測定すること;及び
    (4)(3)において測定したサイトカイン又はケモカインの濃度と、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとを相関付けること、
    を含む、方法。
  3. 前記(3)で測定するサイトカイン/ケモカインの濃度が、IFN−α2及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカイン/ケモカインの濃度である、請求項2に記載の乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定する方法。
  4. 成熟乳が産後1ヵ月の母乳である、請求項1から3のいずれか1項に記載の乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定する方法。
  5. 乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクの判定用診断薬であって、当該乳児が摂取する成熟乳中のエオタキシン濃度を測定するための抗ヒトエオタキシン抗体を含む診断薬。
  6. 乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクの判定用診断薬であって、当該乳児が摂取する成熟乳中のエオタキシン濃度を測定するための抗ヒトエオタキシン抗体を含み、更に抗ヒトIL−4抗体、抗ヒトG−CSF抗体、抗ヒトGM−CSF抗体、抗ヒトIFN−α2抗体、抗ヒトMIP−1α抗体、及び抗ヒトIL−1β抗体、抗ヒトIL−12p40抗体からなる群から選択される少なくとも1つの抗体を含む、診断薬。
  7. エオタキシンの産生を阻害する化合物を含む、乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを低減させる組成物。
  8. エオタキシンの産生を阻害する化合物に加え、IL−4の産生を阻害する化合物、G−CSFの産生を阻害する化合物、GM−CSFの産生を阻害する化合物、IFN−α2の産生を阻害する化合物、及びMIP−1αの産生を阻害する化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を更に含む、請求項7に記載の乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを低減させる組成物。
  9. エオタキシンの産生を阻害する化合物が、
    大豆イソフラボン、カスチシン(Casticin)、フラクトオリゴ糖、フィコビリタンパク質(Phycobili protein)、コーヒー酸フェネチルエステル(カフェイン酸フェネチルエステル;Caffeic phenethl ester)及びトラニラストからなる群より選ばれるいずれか1つ又は2つ以上である、請求項7又は請求項8に記載の、乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを低減させる組成物。
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