JP2014047294A - エチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物 - Google Patents

エチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物 Download PDF

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和幸 市野
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Abstract

【課題】高い柔軟性と高い耐熱性および高周波ウェルダー融着性を保有するエチレン酢酸ビニルコポリマー系熱可塑性エラストマー樹脂組成物と、これを使用した成形体を提供する。
【解決手段】(X)(Y)の合計100重量部基準で、エチレン−酢酸ビニル系重合体(X)50〜90重量部とプロピレン系樹脂組成物(Y)10〜50重量部を含有する樹脂組成物であって、プロピレン系樹脂組成物(Y)は、下記(i)〜(iv)を満たすことを特徴とするエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
(i)プロピレン単独重合体又はエチレン含量が7wt%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)95〜30wt%と、αオレフィン含量が成分(A)のエチレン含量よりも3〜20wt%多いプロピレン−αオレフィンランダム共重合体成分(B)5〜70wt%(成分(A)と成分(B)の合計は100wt%)からなる。
(ii)MFR(230℃、2.16kg)が0.5〜100g/10分
(iii)融解ピーク温度(Tm)が110〜170℃
(iv)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜7の範囲にある。
【選択図】なし

Description

本発明は、エチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物に関し、詳しくは、高い柔軟性と高い耐熱性及び高周波ウェルダー融着性を保有するエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物に関する。
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)又はこれらの混合物を含有する熱可塑性樹脂組成物は、一般に融点が100℃以下のものが多く、特に、コポリマー変性量が多くなると100℃以下の温度で熱変形を引き起こしてしまう。
特に、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を含有する熱可塑性樹脂組成物の場合、熱による変形が大きく、これらの樹脂を用いて高温での耐熱性を維持することは非常に難しく、高温での耐熱性を必要とする材料にエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を使用することが不可能とされ、EVAの特徴である柔軟性を維持しながら、耐熱性を改良することが課題であった。
EVAの耐熱性を改良する方法としては、アイソタクチックPPを混合する方法(特許文献1)やプロピレン・αオレフィン共重合体を混合する方法(特許文献2)が提案されているが、これらの方法では、柔軟性が不足し、柔軟性を維持しながら耐熱性を改良する方法としては十分な効果が得られない。
また、高周波ウェルダー適性や柔軟性を維持しながら耐熱性を改良する方法として、特定の重合体を1種又は2種混合する方法が提案されている(特許文献3、特許文献4)が、十分な耐熱性の改良効果は得られていない。
特開2003−041070号公報 特開2008−273031号公報 特開2003−176387号公報 特開2008−088418号公報
本発明の目的は、上記課題を解決し、高い柔軟性と高い耐熱性及び高周波ウェルダー融着性を保有するエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のプロピレン系樹脂組成物を併用することにより、エチレン−酢酸ビニル系重合体の高周波ウェルダー融着性を保持しつつ、柔軟性および耐熱性を両立させることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下のエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物を提供する。
[1](X)(Y)の合計100重量部基準で、エチレン−酢酸ビニル系重合体(X)50〜90重量部とプロピレン系樹脂組成物(Y)10〜50重量部を含有する樹脂組成物であって、プロピレン系樹脂組成物(Y)は、下記(i)〜(iv)を満たすことを特徴とするエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
(i)プロピレン単独重合体又はエチレン含量が7wt%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)95〜30wt%と、αオレフィン含量が成分(A)のエチレン含量よりも3〜20wt%多いプロピレン−αオレフィンランダム共重合体成分(B)5〜70wt%(成分(A)と成分(B)の合計は100wt%)からなる。
(ii)MFR(230℃、2.16kg)が0.5〜100g/10分の範囲にある。
(iii)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が110〜170℃の範囲にある。
(iv)GPC法により測定された分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜7の範囲にある。
[2]JIS K7127−1999に準拠し、100℃、荷重100g下、10分でのクリープ試験においても、破断を起こさないことを特徴とする上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3]JIS K7127−1999に準拠し23℃で測定した引張弾性率が150MPa以下であることを特徴とする上記[1]または[2]に記載の樹脂組成物。[4]シートの高周波ウェルダー融着が可能である上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
本発明のエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、柔軟性、耐熱性及び高周波ウェルダー融着性の高い樹脂組成物であり、これを成形して得られる成形品は、その優れた物性バランスにより、シート、包装袋、ホース、チューブ、フレキシブルコンテナ、バッグ、筆記具、グリップ、保存瓶、食品保存容器用シールパッキン、キャップおよび蓋材のシール材、ならびに様々な容器のシール材の用途に極めて好適に使用できる。
TREFによる成分(A)および成分(B)の溶出量及び溶出量積算を示す図である。 実施例の製造例1で使用した重合装置のフローシート図である。
本発明のエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、(X)(Y)の合計100重量部基準で、エチレン−酢酸ビニル系重合体(X)50〜90重量部とプロピレン系樹脂組成物(Y)10〜50重量部を含有する樹脂組成物であって、プロピレン系樹脂組成物(Y)は、下記(i)〜(iv)を満たすことを特徴とする。
(i)プロピレン単独重合体成分又はエチレン含量が7wt%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)95〜30wt%と、αオレフィン含量が成分(A)のエチレン含量よりも3〜20wt%多いプロピレン−αオレフィンランダム共重合体成分(B)5〜70wt%(成分(A)と成分(B)の合計は100wt%)からなる。
(ii)MFR(230℃、2.16kg)が0.5〜100g/10分の範囲にある。
(iii)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が110〜170℃の範囲にある。
(iv)GPC法により測定された分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜7の範囲にある。
以下、本発明のエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー組成物を構成する成分、樹脂組成物の製造方法、成形体について詳細に説明する。
[1]エチレン−酢酸ビニル系重合体(X)
エチレン−酢酸ビニル系重合体(X)は、エチレンに由来する構成単位と、酢酸ビニルに由来する構成単位とを含む共重合体である。
エチレン−酢酸ビニル系重合体(X)のMFRは、好ましくは0.1〜100g/10分であり、より好ましくはその下限値は1g/10分であり、さらに好ましくは5g/10分である。0.1g/10分を下回ると、プロピレン系樹脂組成物(Y)との分散性が低下するために溶着が不十分となる。上限値はより好ましくは50g/10分であり、更に好ましくは20g/10分である。100g/10分を超えると機械的強度の低下や、押出成形時の成形不良等の不都合が生じる。
なお、MFRは、JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定する値である。
エチレン−酢酸ビニル系重合体(X)の酢酸ビニルに由来する構成単位の含量は、好ましくは15wt%以上40wt%以下であり、よりに好ましくは20wt%以上40wt%以下であり、さらに好ましくは25wt%以上40wt%以下である。15wt%を下回るとエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物の高周波ウェルダー融着性が不十分となりやすく、40wt%を超えると押出成形時の成形不良等の不都合が生じやすい。
[2]プロピレン系樹脂組成物(Y)
本発明で用いられるプロピレン系樹脂組成物(Y)は、(i)プロピレン単独重合体又はエチレン含量が7wt%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)(以下、成分(A)ともいう。)を30〜95wt%と、αオレフィン含量が成分(A)(以下、成分(B)ともいう。)のエチレン含量よりも3〜20wt%多いプロピレン−αオレフィンランダム共重合体成分(B)を70〜5wt%から成るプロピレン系樹脂組成物であり、下記(ii)〜(iv)の条件を満たす。
(ii)MFR(230℃、2.16kg)が0.5〜100g/10分
(iii)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が110〜170℃
(iv)GPC法により測定された分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜7
プロピレン単独重合体又はエチレン含量が7wt%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)は、本発明のエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物の耐熱性を発現させるための成分である。結晶性を有することが好ましいため、プロピレン単独重合体又はエチレン含量が7wt%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体である必要がある。エチレンコモノマーの含有量は、0wt%、すなわちプロピレンホモポリマーであってもよく、多くても7wt%以下である。7wt%を超えると熱可塑性エラストマー樹脂組成物の柔軟性は向上するものの耐熱性が極端に悪くなる。エチレンの含有量は、好ましくは5wt%以下であり、より好ましくは3wt%未満以下、更には2wt%以下である。
成分(A)を得るために用いられる触媒は、チーグラーナッタ触媒またはメタロセン触媒であり、好ましくはメタロセン触媒である。メタロセン触媒としては、特に制限はなく、公知のものが使用できる。メタロセン触媒の好ましいものについては、後述する。
成分(A)を得るために用いられる重合プロセスは、特に限定されるものではなく、公知の重合プロセスが使用可能である。例えば、スラリー重合法、バルク重合法、気相重合法等が使用できる。
もう一方の成分であるプロピレン単独重合体又はプロピレン系αオレフィンランダム共重合体成分(B)は、エチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物の柔軟性を付与すると共に、エチレン−酢酸ビニル系重合体との親和性を高め成形体の透明感を発現させるための成分であり、αオレフィン含量が、成分(A)のエチレン含量よりも3〜20wt%多いプロピレン−αオレフィンランダム共重合体である。成分(B)は、柔軟性と透明性を保持する為、αオレフィン含有量をこのような範囲とする。
α−オレフィンとしては、エチレンまたは炭素数4〜12のα−オレフィンが好ましく、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン等を好ましく例示することができる。共重合用のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが特に好ましい。
成分(B)のαオレフィン含有量は、成分(A)との相溶性を上げるためには、成分(A)のエチレン含有量に近いほど好ましいが、あまりに高すぎると、成分(A)と成分(B)とが相分離してしまい、組成物全体が均一かつ微細な分散体とはならなくなってしまうため、柔軟性などの機械物性、透明性などが大幅に低下する恐れがある。
そのため、成分(B)のαオレフィン含有量の範囲は、成分(A)のエチレン含有量より、3〜20wt%大きいことが必要で、6〜18wt%、更には8〜16wt%大きいことが好ましい。
3wt%未満しか多くない場合、成分(A)との相溶化効果が充分でなく、また、20wt%を超えて多くなると成分(A)との相溶性が悪くなり、組成物全体が不均一な分散体となってしまう結果、柔軟性や引張伸びなどの機械物性が大幅に低下するとともに透明性も悪化する恐れがある。
プロピレン−αオレフィンランダム共重合体成分(B)を得るために用いられる触媒は、チーグラーナッタ触媒またはメタロセン触媒であり、好ましくはメタロセン触媒である。メタロセン触媒としては、特に制限はなく、前記と同様、公知のものが使用できる。メタロセン触媒の好ましいものについては、後述する。
成分(B)を得るために用いられる重合プロセスは、特に限定されるものではなく、公知の重合プロセスが使用可能である。例えば、スラリー重合法、バルク重合法、気相重合法等が使用できる。
プロピレン−αオレフィンランダム共重合体成分(B)としては、市販のものも使用でき、エクソンモービル社製の商品名「ビスタマックス」シリーズ、三井化学社製の商品名「ノティオ」シリーズ、住友化学社製の商品名「タフセレン」シリーズ、ダウ・ケミカル日本社製の商品名「バーシファイ」シリーズ等が例示できる。
プロピレン系樹脂組成物(Y)は、成分(A)95〜30wt%と成分(B)5〜70wt%を含む。成分(A)の割合が、30wt%未満であると、耐熱性を維持する成分が不足するためにエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物を高温で使用することが不可能となる。他方、成分(A)の割合が95wt%を越えると柔軟性を得るための成分が不足し、エチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物の柔軟性が低下する。
成分(B)は、柔軟性の観点から5wt%以上であり、一方で耐熱性維持の観点から70wt%以下である。好ましい組成としては、成分(A)80〜40wt%と成分(B)20〜60wt%、より好ましくは、成分(A)70〜50wt%と成分(B)30〜50wt%である。
(ii)メルトフローレート(MFR)
本発明で使用されるプロピレン系樹脂組成物(Y)のメルトフローレート(MFR)は、0.5〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分、更に好ましくは2〜35g/10分である。MFRが0.5g/10分未満では成形が困難になり、100g/10分を超えると耐衝撃性が期待できなくなる。
(iii)融解ピーク温度(Tm)
本発明で使用されるプロピレン系樹脂組成物(Y)の示差走査熱量計(DSC)により測定された融解ピーク温度(Tm)は、110〜170℃の範囲である必要があり、120〜150℃であるのが好ましい。Tmが110℃未満の場合には、組成物が溶融状態から冷却固化する際の速度を遅らせ、成形性を悪化させる恐れがあるため好ましくない。一方、170℃を超えると溶融速度を遅らせ成型性を悪化させる恐れがあるため好ましくない。
(iv)分子量分布(Mw/Mn)
本発明で使用されるプロピレン系樹脂組成物(Y)のゲルパーミエーション(GPC)法により測定された分子量分布(Mw/Mn)は、1.5〜7の範囲である必要があり、1.5以上5.5未満であることが好ましく、1.8以上、3未満であることが更に好ましい。Mw/Mnが1.5未満のものや7を超えるものは成形加工に用いることが難しい。
(溶融ブレンド)
本発明のシール材に用いるポリプロピレン樹脂材料は、成分(A)と成分(B)を溶融ブレンドすることによっても製造することができる。
溶融ブレンドによる製造方法に制限はなく、公知の方法を広く採用できる。具体例を挙げると、本発明に係る成分(A)と成分(B)、並びに必要に応じて配合されるその他の成分を、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸又は二軸スクリュー押出機、コニーダー等を使用して溶融混練する方法等が挙げられる。
プロピレン系樹脂組成物(Y)の製造方法は、上記溶融ブレンドでも構わないが、物性バランスの点から成分(A)と成分(B)とを逐次重合、すなわち、プロピレン系樹脂組成物(Y)は、第1重合工程でプロピレン単独重合体又はプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)を重合し、第2重合工程でプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)を重合する逐次重合により得られることが好ましく、またメタロセン触媒を用いて製造することが好ましい。
以下、プロピレン系樹脂組成物(Y)を、成分(A)と成分(B)の逐次重合により製造することを中心に、詳細に説明する。
(i)プロピレン系樹脂組成物(Y)の構成要素について
・成分(A)中のエチレン含量:[E]A
上記したように、成分(A)は、エチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物の耐熱性を発現させるための成分であり、結晶性を有することが好ましいため、エチレン含量が7wt%以下である必要がある。
・成分(B)中のαオレフィン含量:[E]B
また、成分(B)は、エチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物の柔軟性を付与すると共に、エチレン−酢酸ビニル系重合体との親和性を高め成形体の透明感を発現させるための成分であるので、熱可塑性エラストマー樹脂組成物の柔軟性を上げるためには、成分(B)中のαオレフィン含量[E]Bが高いほど好ましいが、逐次重合の場合、[E]Bがあまりに高すぎると、プロピレン系樹脂組成物(Y)の中で、成分(A)と成分(B)とが相分離してしまい、その結果、熱可塑性エラストマー樹脂組成物全体が均一かつ微細な分散体とはならなくなってしまうため、機械物性、透明性などが大幅に低下するため好ましくない。
そのような課題に対応するため、プロピレン系樹脂組成物(Y)を逐次重合により得る場合は、成分(B)のエチレン含量の範囲は、成分(A)のエチレン含量との差:[E]B−[E]A (以下、[E]gapともいう。)によって規定される[E]gapが3〜20wt%の範囲であることが必要であり、好ましくは6〜18wt%、更に好ましくは8〜16wt%である。
[E]gapが20wt%を超えると、第1重合工程で製造される成分(A)との相溶性が悪くなり、組成物全体が不均一な分散体となってしまう結果、耐衝撃性や引張伸びなどの機械物性が大幅に低下するとともに透明性も悪化するため好ましくない。
・成分(A)の割合:W(A)及び成分(B)の割合:W(B)
プロピレン系樹脂組成物(Y)を構成する成分(A)の割合であるW(A)および成分(B)の割合であるW(B)の含有量比は、W(A)が30〜95wt%でありW(B)が70〜5wt%の範囲にあるように調整する必要がある
以下、プロピレン系樹脂組成物(Y)を逐次重合により得た場合の各成分の分析方法について詳しく説明する。
・[E]Aと[E]B及び各成分量W(A)とW(B)の特定
成分(A)、(B)の各エチレン含量及び量は、製造時の物質収支(マテリアルバランス)によって特定することも可能であるが、より正確にこれらを特定するためには、以下の分析を用いることが望ましい。
・・温度昇温溶離分別(TREF)による各成分量W(A)とW(B)の特定
プロピレン−エチレンランダム共重合体の結晶性分布をTREFにより評価する手法は、当業者によく知られるものであり、例えば、次の文献などで詳細な測定法が示されている。
G.Glockner,J.Appl.Polym.Sci.:Appl.Polym.Symp.;45,1−24(1990)
L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1−47(1990)
J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polymer;36,8,1639−1654(1995)
プロピレン系樹脂組成物(Y)は、成分(A)と成分(B)各々の結晶性に大きな違いがあり、また、好ましくはメタロセン触媒を用いて製造されることで各々の結晶性分布が狭くなっていることから双方の中間的な成分は極めて少なく、双方をTREFにより精度良く判別することが可能である。
具体的な方法を、図1のTREFによる溶出量及び溶出量積算を示す図を用いて、説明する。
TREF溶出曲線(温度に対する溶出量のプロット)において、成分(A)と成分(B)は結晶性の違いにより各々T(A)とT(B)にその溶出ピークを示し、その差は十分大きいため、中間の温度T(C)(={T(A)+T(B)}/2)においてほぼ分離が可能である。
また、TREF測定温度の下限は、本測定に用いた装置では−15℃であるが、成分(B)の結晶性が非常に低いあるいは非晶性成分の場合には本測定方法において、測定温度範囲内にピークを示さない場合がある。この場合には、測定温度下限(すなわち−15℃)において溶媒に溶解した成分(B)の濃度は検出される。
このとき、T(B)は測定温度下限以下に存在するものと考えられるが、その値を測定することが出来ないため、このような場合にはT(B)を測定温度下限である−15℃と定義する。
ここで、T(C)までに溶出する成分の積算量をW(B)wt%、T(C)以上で溶出する部分の積算量をW(A)wt%と定義すると、W(B)は結晶性が低いあるいは非晶性の成分(B)の量とほとんど対応しており、T(C)以上で溶出する成分の積算量W(A)は結晶性が比較的高い成分(A)の量とほぼ対応している。TREFによって得られる溶出量曲線と、そこから求められる上記の各種の温度や量の算出の方法は、図1に例示するように行う。
・・TREF測定方法
TREFの測定は、具体的には以下のように測定を行う。
試料を140℃でo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後、8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒であるo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
・・・各成分中のエチレン含量[E]Aと[E]Bの特定
・・・・成分(A)と成分(B)の分離
先のTREF測定により求めたT(C)を基に、分取型分別装置を用い昇温カラム分別法により、T(C)にける可溶成分(B)とT(C)における不溶成分(A)とに分別し、NMRにより各成分のエチレン含量を求める。
昇温カラム分別法とは、例えば、Macromolecules、21 314〜319(1988)に開示されたような測定方法をいう。具体的には、本発明において以下の方法を用いた。
・・・・分別条件
直径50mm、高さ500mmの円筒状カラムにガラスビーズ担体(80〜100メッシュ)を充填し、140℃に保持する。次に、140℃で溶解したサンプルのo−ジクロロベンゼン溶液(10mg/mL)200mLを前記カラムに導入する。その後、該カラムの温度を0℃まで10℃/時間の降温速度で冷却する。0℃で1時間保持後、10℃/時間の昇温速度でカラム温度をT(C)まで加熱し、1時間保持する。なお、一連の操作を通じてのカラムの温度制御精度は±1℃とする。
次いで、カラム温度をT(C)に保持したまま、T(C)のo−ジクロロベンゼンを20mL/分の流速で800mL流すことにより、カラム内に存在するT(C)で可溶な成分を溶出させ回収する。
次いで10℃/分の昇温速度で当該カラム温度を140℃まで上げ、140℃で1時間静置後、140℃の溶媒(o−ジクロロベンゼン)を20mL/分の流速で800mL流すことにより、T(C)で不溶な成分を溶出させ回収する。
分別によって得られたポリマーを含む溶液は、エバポレーターを用いて20mLまで濃縮された後、5倍量のメタノール中に析出される。析出ポリマーをろ過して回収後、真空乾燥器により一晩乾燥する。
・・13C−NMRによるエチレン含量の測定
上記分別により得られた成分(A)と成分(B)それぞれについてのエチレン含有量は、プロトン完全デカップリング法により以下の条件に従って測定した13C−NMRスペクトルを解析することにより求める。
機種:日本電子(株)製GSX−400または同等の装置(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒:o−ジクロロベンゼン/重ベンゼン=4/1(体積比)
濃度:100mg/mL
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えばMacromolecules,17 1950 (1984)等を参考に行えばよい。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は下表の通りである。表中Sαα等の記号はCarmanら(Macromolecules,10 536(1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
Figure 2014047294
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中にはPPP、PPE、EPE、PEP、PEE、およびEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules,15 1150 (1982)などに記されているように、これらトリアッドの濃度と、スペクトルのピーク強度とは、以下の(1)〜(6)の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(Tββ)・・・(1)
[PPE]=k×I(Tβδ)・・・(2)
[EPE]=k×I(Tδδ)・・・(3)
[PEP]=k×I(Sββ)・・・(4)
[PEE]=k×I(Sβδ)・・・(5)
[EEE]=k×[I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4}・・・(6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。従って、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1・(7) である。また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えばI(Tββ)はTββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。
上記(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、プロピレンランダム共重合体には少量のプロピレン異種結合(2,1−結合及び/または1,3−結合)が含まれ、それにより、以下の微小なピークを生じる。
Figure 2014047294
正確なエチレン含有量を求めるにはこれら異種結合に由来するピークも考慮して計算に含める必要があるが、異種結合由来のピークの完全な分離・同定が困難であり、また異種結合量が少量であることから、本発明においてエチレン含有量は実質的に異種結合を含まないチーグラー触媒で製造された共重合体の解析と同じく(1)〜(7)の関係式を用いて求めることとする。
エチレン含有量のモル%からwt%への換算は以下の式を用いて行う。
エチレン含有量(wt%)=
(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
ここでXは、モル%表示でのエチレン含有量である。
また、プロピレン系樹脂組成物(Y)全体のエチレン含量[E]Wは、上記より測定された成分(A)と成分(B)それぞれのエチレン含量[E]Aと[E]B及びTREFより算出される各成分の重量比率W(A)とW(B)wt%から、以下の式により算出される。
[E]W={[E]A×W(A)+[E]B×W(B)}/100 (wt%)
(ii)メルトフローレート(MFR)
前述したように、プロピレン系樹脂組成物(Y)のメルトフローレート(MFR)は、0.5〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分、更に好ましくは2〜35g/10分である。
メルトフローレート(MFR)の調整方法は周知であり、プロピレン系樹脂組成物の重合条件である温度や圧力を調節したり、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する水素添加量の制御により、容易に調整を行なうことができる。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠し、加熱温度230℃、荷重21.2Nで測定する値である。
(iii)融解ピーク温度(Tm)
前述したように、プロピレン系樹脂組成物(Y)の示差走査熱量計(DSC)により測定された融解ピーク温度(Tm)は、110〜170℃の範囲である。
Tmを調整するには、重合反応系へ供給するエチレンの量を制御することにより容易に調整することができる。
本発明において、Tmの具体的測定は、示差走査熱量計(DSC)を用い、サンプル量5mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、更に10℃/分の昇温速度で融解させたときに描かれる曲線のピーク位置を、融解ピーク温度Tm(℃)とする。
(iv)分子量分布(Mw/Mn)
前述したように、プロピレン系樹脂組成物(Y)のゲルパーミエーション(GPC)法により測定された分子量分布(Mw/Mn)は、1.5〜7の範囲である必要がある。
プロピレン系樹脂組成物(Y)の分子量分布を調整する方法は、狭くする場合は、後述のメタロセン系触媒を用いたり、プロピレン系樹脂組成物(Y)を重合後、有機過酸化物を使用し溶融混練することにより調整することができる。広くする場合は、2種以上の触媒成分を併用させた触媒系や2種以上の錯体を併用した触媒系を用いて重合する方法や複数の重合層を用いて多段重合することにより調整することができる。
ここで、分子量分布は、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)で求められ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定して得られるものとする。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mlとなるようにo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2ml注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する、粘度式の[η]=K×Mα は以下の数値を用いる。
PS : K=1.38×10−4 α=0.7
PP : K=1.03×10−4 α=0.78
なお、GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:WATERS社製 GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料はo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)を用いて1mg/mlの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
(v)tanδ曲線のピークによる規定
本発明においてプロピレン系樹脂組成物(Y)を逐次重合で得る場合には、透明感を得るためにはプロピレン系樹脂組成物(Y)を構成する成分(A)と成分(B)とが相分離していないことが重要である。相分離の条件は、エチレン含量のみならず、分子量や組成によっても影響を受けるため、上記のエチレン含量に関する規定に加えて、固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線のピークに関する規定が必要となる。
プロピレン系樹脂組成物(Y)が相分離構造を取る場合には、成分(A)に含まれる非晶部のガラス転移温度と成分(B)に含まれる非晶部のガラス転移温度が各々異なるため、ピークは複数となる。逆に相溶性である場合には、両成分は分子のオーダーで混合しており、両成分のガラス転移温度の中間的な温度に単一のピークを有する。すなわち、相分離構造を取っているかどうかは、固体粘弾性測定における温度−tanδ曲線において判別可能であり、透明性を維持するためには、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有することが好ましい。
固体粘弾性測定とは、具体的には、短冊状の試料片に特定周波数の正弦歪みを与え、発生する応力を検知することで行う。ここでは、周波数は1Hzを用い測定温度は−60℃から段階状に昇温し、サンプルが融解して測定不能になるまで行う。また、歪みの大きさは0.1〜0.5%程度が推奨される。得られた応力から、公知の方法によって貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”を求め、これの比で定義される損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)を温度に対してプロットすると、0℃以下の温度領域で鋭いピークを示す。一般に0℃以下でのtanδ曲線のピークは非晶部のガラス転移を観測するものであり、ここでは本ピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)として定義する。
[3]プロピレン系樹脂組成物(Y)の製造方法
本発明に用いられるプロピレン系樹脂組成物(Y)を製造する方法は、特に限定されるものではないが、メタロセン系触媒を使用することが好ましい。
・メタロセン系触媒
メタロセン系触媒の種類は、本発明の性能を有する共重合体を生成できる限りは、特に限定はされるものではないが、本発明の要件を満たすために、例えば、下記に示すような触媒成分(a)、(b)、及び必要に応じて使用する触媒成分(c)からなるメタロセン系触媒を用いることが好ましい。
成分(a):下記の一般式で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物
成分(b):下記(b−1)〜(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分
(b−1)有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体、
(b−2)成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体
(b−3)固体酸微粒子
(b−4)イオン交換性層状珪酸塩
成分(c):有機アルミニウム化合物
・・触媒成分(a)
成分(a)としては、下記一般式で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物を使用することができる。
Q(C4−a)(C4−b)MeXY
[ここで、Qは2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を示し、Meはチタン、ジルコニウム、ハフニウムから選ばれる金属原子を示し、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示し、XおよびYは、それぞれ独立に、同一でも異なっていてもよい。R、Rは水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基を示す。a及びbは置換基の数である。]
詳しくは、Qは2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を表し、例えば、2価の炭化水素基、シリレン基ないしオリゴシリレン基、炭化水素基を置換基として有するシリレン基あるいはオリゴシリレン基、又は炭化水素基を置換基として有するゲルミレン基などが例示される。この中でも好ましいものは2価の炭化水素基と炭化水素基を置換基として有するシリレン基である。
X及びYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を示し、このうちで好ましいものとしては、水素、塩素、メチル、イソブチル、フェニル、ジメチルアミド、ジエチルアミド基などを例示することができる。X及びYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよい。
とRは、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基を表す。炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基、ブテニル基、ブタジエニル基などが例示される。また、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシリル基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピラゾリル基、インドリル基、ジメチルフォスフィノ基、ジフェニルフォスフィノ基、ジフェニルホウ素基、ジメトキシホウ素基などを典型的な例として例示できる。これらの中で、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることが特に好ましい。ところで、隣接したRとRは、結合して環を形成してもよく、この環上に炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基からなる置換基を有していてもよい。
Meは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの中から選ばれる金属原子であり、好ましくはジルコニウム、ハフニウムである。
以上において記載した成分(a)の中で、本発明に用いられるプロピレン系樹脂組成物(Y)の製造に好ましいものは、炭化水素置換基を有するシリレン基、ゲルミレン基あるいはアルキレン基で架橋された置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、置換フルオレニル基、置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物であり、特に好ましくは、炭化水素置換基を有するシリレン基、あるいはゲルミレン基で架橋された2,4−位置換インデニル基、2,4−位置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物である。
非限定的な具体例としては、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチルベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−イソプロピル−4−(3,5−ジイソプロピルフェニル)インデニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−プロピル−4−フェナントリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−イソプロピル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロビフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−t−ブチル−3−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。これらの具体例の化合物のシリレン基をゲルミレン基に、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物も好適な化合物として例示される。
なお、触媒成分は本発明の重要要素ではないので、煩雑な列記を避け、代表的な例示に限定しているが、これにより本発明の有効範囲が制限されることが無いのは自明のことである。
・・触媒成分(b)
成分(b)としては、上述した成分(b−1)〜成分(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は公知のものであり、公知技術の中から適宜選択して使用することができる。その具体的な例示や製造方法については、特開2002−284808公報、特開2002−53609号公報、特開2002−69116号公報、特開2003−105015号公報などに詳細な例示がある。
ここで、成分(b−1)、成分(b−2)に用いられる微粒子状担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、シリカアルミナ、シリカマグネシアなどの無機酸化物、塩化マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ランタンなどの無機ハロゲン化物、さらには、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンセン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機担体を挙げることができる。
また、成分(B)の非限定的な具体例としては、成分(b−1)として、メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン、ブチルボロン酸アルミニウムテトライソブチルなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−2)として、トリフェニルボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−3)として、アルミナ、シリカアルミナ、塩化マグネシウムなどを、成分(b−4)として、モンモリロナイト、ザコウナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族などが挙げられる。これらは、混合層を形成しているものでもよい。
上記成分(b)の中で特に好ましいものは、成分(b−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、さらに好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
・・触媒成分(c)
必要に応じて成分(c)として用いられる有機アルミニウム化合物の例は、
一般式: AlR3−a
(式中、Rは、炭素数1から20の炭化水素基、Pは水素、ハロゲン、アルコキシ基、aは0<a≦3の数)で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム又はジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。
またこの他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。これらのうち、特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
・・触媒の形成
上記触媒成分(a)と成分(b)および必要に応じて成分(c)を接触させて触媒とする。その接触方法は特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時又はオレフィンの重合時に行ってもよい。
1)成分(a)と成分(b)を接触させる
2)成分(a)と成分(b)を接触させた後に成分(c)を添加する
3)成分(a)と成分(c)を接触させた後に成分(b)を添加する
4)成分(b)と成分(c)を接触させた後に成分(a)を添加する
また、その他、三成分を同時に接触させてもよい。
使用する触媒成分(a)と(b)及び(c)の使用量は任意である。例えば、成分(b)に対する成分(a)の使用量は、成分(b)1gに対して、好ましくは0.1μmol〜1,000μmol、特に好ましくは0.5μmol〜500μmolの範囲である。成分(b)に対する成分(c)の使用量は、成分(b)1gに対し、好ましくは遷移金属の量が0.001〜100μmol、特に好ましくは0.005〜50μmolの範囲である。したがって、成分(a)に対する成分(c)の量は、遷移金属のモル比で、好ましくは10−5〜50、特に好ましくは10−4〜5の範囲内である。
プロピレン系樹脂組成物(Y)の製造で使用される触媒は、予めオレフィンを接触させて少量重合することからなる予備重合処理に付すことが好ましい。
予備重合に使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にプロピレンを使用することが好ましい。オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
予備重合温度と時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が成分(b)に対し、好ましくは0.01〜100、さらに好ましくは0.1〜50である。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行うことも可能である。
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
・重合方法
・・逐次重合
前述したように、プロピレン系樹脂組成物(Y)を製造するには、成分(A)と成分(B)を逐次重合することが好ましい。第1重合工程と第2重合工程で得られるプロピレン−エチレン共重合体成分のバランスを充分に配慮することにより、柔軟性、耐衝撃性および透明性をバランス良く向上させることができる。
そこで、本発明において、プロピレン系樹脂組成物(Y)を逐次重合で得る場合には、第1重合工程と第2重合工程でエチレン含量が異なる成分を逐次重合したものが透明性と柔軟性・耐衝撃性、耐熱性全てをバランスさせるために有効である。
また、本発明では、成分(B)として分子量が低く単独ではべたつきやすい共重合体を用いる場合があるので、反応器への付着等の問題を防止するために、成分(A)を重合した後で成分(B)を重合する方法を用いることが好ましい。
逐次重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。
バッチ法の場合には時間と共に重合条件を変化させることにより単一の反応器を用いて成分(A)と成分(B)を個別に重合することが可能である。本発明の効果を阻害しない限り、複数の反応器を並列に接続して用いても良い。
連続法の場合には、成分(A)と成分(B)を個別に重合する必要から2個以上の反応器を直列に接続した製造設備を用いるが、成分(A)と成分(B)のそれぞれについて複数の反応器を直列及び/又は並列に接続して用いてもよい。
・・重合プロセス
重合プロセスは、スラリー法、バルク法、気相法など任意の重合方法を用いることができる。バルク法と気相法の中間的な条件として超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。
成分(B)は炭化水素等の有機溶媒や液化プロピレンに溶けやすいため、成分(B)の製造に際しては気相法を用いることが望ましい。
成分(A)の製造は、どのプロセスを用いても特に問題はないが、比較的結晶性の低い成分(A)を製造する場合には、付着等の問題を避けるために気相法を用いることが望ましい。
従って、連続法を用いて、まず成分(A)をバルク法もしくは気相法にて重合し、引き続き成分(B)を気相法にて重合することが最も望ましい。
・・その他の重合条件
重合温度は、通常使用されている温度範囲であれば特に問題なく適用することができる。具体的には、0℃〜200℃、より好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0より大きく200MPaまで、より好ましくは0.1MPa〜50MPaの範囲を用いることができる。この際窒素などの不活性ガスを共存させてもよい。
第1工程で成分(A)、第2工程で成分(B)の逐次重合を行う場合、第2工程にて系中に重合抑制剤を添加することが望ましい。プロピレン系樹脂組成物(Y)を逐次重合で製造する場合には、第2工程のプロピレン−αオレフィンランダム共重合を行う反応器に重合抑制剤を添加すると、得られるパウダーの粒子性状(流動性など)やゲルなどの製品品質を改良することができる。この手法については各種の方法が提案されており、一例として特公昭63−54296号、特開平7−25960号、特開2003−2939号に記載の方法などを例示することができ、当該手法を適用することが望ましい。
[4]逐次重合の場合のプロピレン系樹脂組成物(Y)の構成要素の好ましい制御方法
本発明に用いられるプロピレン系樹脂組成物(Y)は、好ましくは逐次重合により製造されるが、その際の各要素は、好ましくは以下のように制御される。
・成分(A)
成分(A)については、エチレン含量[E]Aと溶出ピーク温度T(A)を制御する。
本発明では、[E]Aを所定の範囲に制御するためには、第1工程における重合槽に供給するプロピレンとエチレンの量比を、適宜調整すればよい。供給比率と得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体中のエチレン含量の関係は、用いるメタロセン触媒の種類によって異なるが、供給比率の調整により必要とするエチレン含量[E]Aを有する成分(A)を製造することができる。
[E]Aを7wt%未満に制御する場合には、プロピレンに対するエチレンの供給重量比を0.3以下の範囲、好ましくは0.2以下の範囲とすればよい。
このとき、成分(A)は結晶性分布が狭く、T(A)は[E]Aの増加に伴い低下する。そこで、T(A)が本発明の範囲を満たすようにするためには、[E]Aとこれらの関係を把握し、目標とする範囲を取るよう調整する。
・成分(B)
成分(B)については、エチレン含量[E]Bと溶出ピーク温度T(B)を制御する。
本発明では、[E]Bを所定の範囲に制御するためには、[E]Aと同様に、第2工程におけるプロピレンに対するエチレンの供給量比を制御すればよい。例えば、[E]Bを3〜27wt%に制御する場合には、プロピレンに対するエチレンの供給重量比を0.005〜6の範囲、好ましくは0.01〜3の範囲とすればよい。
このとき、成分(B)もエチレン含量の増加に伴い若干結晶性分布の増加が見られるものの、成分(A)と同様に、T(B)は[E]Bの増加に伴い低下する。そこで、T(B)が本発明の範囲を満たすようにするためには、[E]BとT(B)との関係を把握し、[E]Bを所定の範囲になるように制御すればよい。
・W(A)とW(B)
成分(A)の量W(A)と成分(B)の量W(B)は、成分(A)を製造する第1工程の製造量と成分(B)の製造量の比を変化させることにより制御することができる。例えば、W(A)を増やしてW(B)を減らすためには、第1工程の製造量を維持したまま第2工程の製造量を減らせばよく、それは、第2工程の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたり、重合抑制剤の量を増やしたりすることにより容易に制御することができる。その逆も又同様である。
実際に条件を設定する際には、活性減衰を考慮する必要がある。すなわち、本発明にて実施するエチレン含有量[E]A及び[E]Bの範囲においては、一般にエチレン含有量を高くするためにプロピレンに対するエチレン供給量比を高くすると重合活性が高くなり、同時に活性減衰が大きくなる傾向にある。したがって、第2工程の活性を維持するために第1工程の重合活性を抑制する必要があり、具体的には、第1工程にてエチレン含有量[E]Aを下げ、生産量W(A)を下げ、必要に応じて、重合温度を下げる及び/又は重合時間(滞留時間)を短くする、あるいは第2工程にてエチレン含有量[E]Bを上げ、生産量W(B)を上げ、必要に応じて、重合温度を上げる及び/又は重合時間(滞留時間)を長くするような方法で条件を設定すればよい。
・tanδ曲線の単一ピーク
本発明で用いられるプロピレン系樹脂組成物(Y)は、固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において求められるtanδ曲線がピークを示す温度であるガラス転移温度Tgが、0℃以下で単一のピークを持つことが好ましい。Tgが単一のピークを持つためには、成分(A)中のエチレン含有量[E]Aと成分(B)中のエチレン含有量[E]Bの差の[E]gap(=[E]B−[E]A)を20wt%以下、好ましくは16wt%以下にし、実際の測定においてTgが単一のピークとなる範囲まで[E]gapを小さくすればよい。
成分(A)中のエチレン含有量[E]Aに応じて、成分(B)中のエチレン含量[E]Bを適正範囲に入るよう、成分(B)の重合時のプロピレンに対するエチレンの供給重量比を設定することで、所定の[E]gapを有するプロピレン系樹脂組成物(Y)を得ることができる。
また、本発明に用いられるのに好ましい相分離構造を取らない逐次重合で得られたプロピレン系樹脂組成物(Y)のTgは、成分(A)中のエチレン含有量[E]Aと成分(B)中のエチレン含有量[E]B、及び両成分の量比の影響を受ける。本発明においては、成分(B)の量は5〜70wt%であるが、この範囲においてTgは成分(B)中のエチレン含有量[E]Bの影響をより強く受ける。
すなわち、Tgは非晶部のガラス転移を反映するものであるが、本発明に用いられるプロピレン系樹脂組成物(Y)において、成分(A)は結晶性を持ち比較的非晶部が少ないのに対し、成分(B)は低結晶性あるいは非晶性であり、そのほとんどが非晶部であるためである。したがって、Tgの値は、ほぼ[E]Bによって制御され、[E]Bの制御法は前述したとおりである。
[5]エチレン−酢酸ビニル系重合体(X)とプロピレン系樹脂組成物(Y)の割合
エチレン−酢酸ビニル系重合体(X)とプロピレン系樹脂組成物(Y)の配合量は、両者の合計100重量部で、エチレン−酢酸ビニル系重合体(X)50重量部以上90重量部以下、プロピレン系樹脂組成物(Y)10重量部以上50重量部以下であり、プロピレン系樹脂組成物(Y)は、好ましくは20重量部以上40重量部以下である。
プロピレン系樹脂組成物(Y)の含有量が少なすぎると、耐熱性の向上効果が低く、製品を高温条件下で使用した際に変形する。50重量部より多くなると、高周波ウェルダー特性が低下し製品への加工性が低下すること、また柔軟性が低下するためシール材等に用いた場合、シール性の低下が起きやすい。
[6]添加剤
本発明においては、プロピレン系重合体の安定剤などとして使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、造核剤、中和剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を配合することができる。
具体的には、酸化防止剤としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ジ−ステアリル−ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト等のリン系酸化防止剤、
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系酸化防止剤、
ジ−ステアリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ラウリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート等のチオ系酸化防止剤等が挙げられる。
造核剤の具体例としては、公知の造核剤が使用できる。例えばソルビトール系透明化核剤、アミド系造核剤、有機リン酸塩系透明化核剤、芳香族リン酸エステル類系透明化核剤、タルクなど既知の造核剤を使用する事ができる。
中和剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムなどの金属脂肪酸塩、ハイドロタルサイト(商品名、協和化学工業社製、下記一般式(1)で表されるマグネシウムアルミニウム複合水酸化物塩)、ミズカラック(商品名、水澤化学社製、下記一般式(2)で表されるリチウムアルミニウム複合水酸化物塩)などが挙げられる。
Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHO・・・(1)
[式中、xは、0<x≦0.5であり、mは3以下の数である。]
[AlLi(OH)X・mHO ・・・(2)
[式中、Xは、無機または有機のアニオンであり、nはアニオン(X)の価数であり、mは3以下である。]
滑剤としては、既知の滑剤が挙げられ、具体的には、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸ブチル、シリコーンオイル等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
光安定剤としては、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル−2−(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジル)エタノール縮合物、ポリ{[6−〔(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ〕−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル]〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕}、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等の光安定剤を挙げることができる。
さらに、下記式(3)や下記一般式(4)で表されるアミン系酸化防止剤、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジ−メチル−フェニル)−3H−ベンゾフラン−2−ワン等のラクトン系酸化防止剤、下記式(5)等のビタミンE系酸化防止剤を挙げることができる。
Figure 2014047294
Figure 2014047294
[式中のRとRは、炭素数14〜22のアルキル基]
Figure 2014047294
さらに、その他に、帯電防止剤、脂肪酸金属塩等の分散剤、ポリエチレン、オレフィン系エラストマー等を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
本発明のエチレン−酢酸ビニル系重合体(X)と、プロピレン系樹脂組成物(Y)からなるエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、この組成物の特性を最大限維持しながら、他の特性または機能を付与する為に、それ以外の重合体、共重合体、エラストマーを任意にブレンドすることができる。具体的には、エチレン−アクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体エラストマー、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマー、エチレン−ブテン共重合体エラストマー、エチレン−ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン−オクテン共重合体エラストマー、プロピレン−エチレン共重合体エラストマーまたはプラストマー、天然ゴム、ジエン系ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、多糖類、天然樹脂などの、各種樹脂、エラストマー、またはプラストマーをエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物100重量部に対して、1〜30重量部程度任意にブレンドすることが可能である。
同様に、フィラーとして、アルミナ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、シリカ、石膏、タルク、マイカ、カオリン、クレー、酸化チタン、アルミナのような各種無機質フィラーを、エチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物100重量部に対して、1〜30重量部、好ましくは、1〜10重量部を任意に添加することもできる。
[7]エチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物の製造方法
本発明のエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、エチレン−酢酸ビニル系重合体(X)と、プロピレン系樹脂組成物(Y)、および必要に応じて用いる他の添加剤等とを、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー等に投入して混合(ドライブレンド)することにより得ることができる。あるいは、ドライブレンドされた後、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、プラベンダー、ロール等で180〜280℃程度の温度範囲でさらに溶融混練(メルトブレンド)することにより得ることもできる。さらには、エチレン−酢酸ビニル系重合体(X)、プロピレン系樹脂組成物(Y)のそれぞれに対して必要な添加剤等を加えてドライブレンドとメルトブレンドとを個別に行った後、各重合体をドライブレンドすることにより得ることもできる。
[8]成形体
本発明のエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、例えば、押出成形(例えば、射出成形または吹き込み成形)、または熱成形等のあらゆる方法による物品の製造に使用することができる。物品の例としては、シート、包装袋、ホース、チューブ、フレキシブルコンテナ、バッグ、筆記具、グリップ、保存瓶、食品保存容器用シールパッキン、キャップおよび蓋材のシール材、ならびに様々な容器のシール材の用途が挙げられる。
また、本発明のエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、JIS K7127−1999に準拠し23℃で測定した引張弾性率が、好ましくは150MPa以下であり、柔軟性に優れる。引張弾性率が、好ましくは130MPa以下であり、好ましい下限は50MPa以上である。
弾性率は、上記のとおり、JIS K7127−1999「プラスチック−引張特性の試験方法」に準拠して23℃で測定される。
本発明のエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、好ましくは、JIS K7127−1999に準拠し、100℃、荷重100g下、10分でのクリープ試験においても、破断を起こさないという優れた耐熱性を示す。例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体単独では、100℃で殆ど伸びずに破断してしまう。ところが、本発明のエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、ある程度は伸びるが、破断しなくなるという特徴を有する。
ここで、クリープ試験は、JIS K7127−1999「プラスチック−引張特性の試験方法」に準拠して試験片タイプ5を作成し、100℃雰囲気下にて荷重100gのクリープ試験を行い、10分後の伸びを測定し、10分後も破断を起こさないかどうかにて判定される。
さらに、本発明のエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物をシートにしたものは、高周波ウェルダー融着が可能であり、良好な封止性を達成することができる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの記載により何ら限定されるものではない。
なお、各実施例及び比較例において、用いた物性測定は以下の方法で行い、エチレン−酢酸ビニル系重合体(X)、プロピレン系樹脂組成物(Y)、および他の添加剤としては以下のものを使用した。
1.測定法
(1)TREF
TREF測定方法は前述した通りであり、装置と条件は以下の通りである。
[装置]
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ × 150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm 表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー製デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ 4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル
光路長1.5mm
窓形状2φ×4mm長丸、合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
[測定条件]
溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速:1mL/分
(2)固体粘弾性測定
試料は、東芝機械製IS100GN射出成形機により、成形温度200℃、金型温度20℃において成形した、縦100mm、横100mm、厚さ2mmのシートから、10mm幅×18mm長×2mm厚の短冊状に切り出したものを用いた。装置はレオメトリック・サイエンティフィック社製のARESを用いた。周波数は1Hzである。測定温度は−60℃から段階状に昇温し、試料が融解して測定不能になるまで測定を行った。歪みは0.1〜0.5%の範囲で行った。
(3)各成分量の算出
TREFを用いて、前述した方法によって算出した。
(4)エチレン含有量の算出
13C−NMRにより組成を検定したプロピレン−エチレンランダムコポリマーを基準物質として733cm−1の特性吸収体を用いる赤外分光法により、ランダムコポリマー中のエチレン含量を測定した。試験片は、ペレットをプレス成形により約500ミクロンの厚さのフィルムとしたものを用いた。
(5)tanδ曲線のピーク
固有粘弾性測定により測定した。
(6)MFR
JIS K7210に準拠して温度230℃、荷重21.2Nにて測定した。ただし、ポリエチレン系重合体に関しては測定温度を190℃とした。
(7)融解ピーク温度
DSC試験機としてセイコーインスツルメント社製RDC220Uを用い、サンプル5.0mgを採り、200℃で5分間保持後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度を測定した。
(8)分子量分布
前述の方法で測定した。
(9)密度
JIS K7112−1980「プラスチックの密度と比重の測定方法」に準拠して、密度勾配管法にて測定した。
2.使用材料
(1)エチレン−酢酸ビニル系重合体(X)
以下のエチレン−酢酸ビニル系重合体を使用した。
・NOVATEC EVA LV440
日本ポリエチレン社製商品名
酢酸ビニル含有率15wt%
MFR:2.0g/10分[190℃,2.16kg荷重]
・NOVATEC EVA LV541
日本ポリエチレン社製商品名
酢酸ビニル含有率20wt%
MFR:2.5g/10分[190℃,2.16kg荷重]
・NOVATEC EVA LV640
日本ポリエチレン社製商品名
酢酸ビニル含有率25wt%
MFR:2.0g/10分[190℃,2.16kg荷重]
(2)プロピレン系樹脂組成物(Y):
プロピレン系樹脂組成物(Y)として、下記の製造例1により製造されたプロピレン系樹脂組成物(PP−1)を用いた。
(製造例1:プロピレン系樹脂組成物(PP−1)の製造)
・触媒の製造
・・珪酸塩の化学処理:
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製商品名、ベンクレイSL;平均粒径=50μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を越えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。
・・触媒の調製:
内容積3リットルの撹拌翼のついたガラス製反応器に上記で得た乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で撹拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2.0lに調製した。次に、調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。並行して、〔(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム〕(合成は特開平10−226712号公報に記載の実施例に従って実施した。)2180mg(3mmol)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)を33.1ml加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間撹拌した。
・・予備重合:
続いて、窒素で十分置換を行った内容積10リットルの撹拌式オートクレーブに、ノルマルヘプタン2.1リットルを導入し、40℃に保持した。そこに先に調製した珪酸塩/メタロセン錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄み約3リットルをデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液9.5ml、さらに混合ヘプタンを5.6リットル添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5.6リットル除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。
最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23ミリモル/L、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液17.0ml添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。この操作により触媒1g当たりポリプロピレンが2.1gを含む予備重合触媒が得られた。
・重合
・・第1重合工程
図2に示すフローシートの重合装置を用いた。
攪拌羽根を有する横型重合器1(L/D=3.7、内容積100L)に、あらかじめ35kgのシーズポリマーを導入後、窒素ガスを3時間流通させた。その後、プロピレン、エチレンおよび水素を導入しながら65℃まで昇温した。反応器の圧力を2.2MPaGとし、ガス中のエチレン/プロピレン(モル比)=0.06、水素/プロピレン(モル比)=0.0002となるように条件調整をした後、上記予備重合触媒を0.9g/hr(予備重合されたポリマーも含んだ量)、有機アルミ化合物としてトリイソブチルアルミニウムを15mmol/hr一定となるように供給した。反応温度65℃、反応圧力2.2MPaG、上記のエチレン/プロピレン、水素/プロピレンの条件を維持するようにして、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)の製造を実施した。
反応熱は、配管3から供給される原料プロピレンの気化熱により除去した。重合器から排出される未反応ガスは、配管4を通して反応器系外で冷却、凝縮させて重合器1に還流した。本重合で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)は、重合体の保有レベルが反応容積の65容積%となる様に配管5を通して重合器1から間欠的に抜き出し第2重合工程の重合器10に供給した。このとき、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)の生産量は7kg/hrであった。配管5からプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)の一部を抜き出して分析用サンプルとした。
・・第2重合工程
攪拌羽根を有する横型重合器10(L/D=3.7、内容積100L)に第1重合工程からのプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)を間欠的に供給し、プロピレンとエチレンの共重合を行った。反応条件は攪拌速度18rpm、反応温度70℃、反応圧力2.1MPaGであり、ガスのエチレン/プロピレン(モル比)=0.43、水素/プロピレン+エチレン(モル比)=0.0003となるように調整した。プロピレン−エチレンランダム共重合体(B)の重合量を調整するための重合活性抑制剤として酸素ガスを配管7より供給した。
反応熱は配管6から供給される原料プロピレンの気化熱により除去した。重合器から排出される未反応ガスは配管8を通して反応器系外で冷却、凝縮させて重合器10に還流した。第2重合工程で生成されたプロピレン系樹脂組成物(PP−1)は、重合体の保有レベルが反応容積の50容積%となる様に配管9を通して重合器10から間欠的に抜き出した。
・プロピレン系樹脂組成物(PP−1)の分析結果
上記で得られたプロピレン系樹脂組成物(PP−1)のMFRは6g/10分、Tmは130℃、成分(A)の含有量は56wt%、成分(B)の含有量は44wt%、成分(A)のMFRは6g/10分、エチレン含量は2.2wt%、成分(B)中のエチレン含有量は11wt%であった。
製造条件とPP−1の分析結果を、まとめて表3に示す。
Figure 2014047294
(3)プロピレン−エチレンランダム共重合体
本発明のプロピレン系樹脂組成物(Y)に該当しないものとして、以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体を比較例に使用した。
NOVATEC PP EG6D(日本ポリプロ(株)社製、商品名)
エチレン含量:3.4wt%
MFR:1.9g/10分
融解ピーク温度(Tm):140℃
(4)その他添加剤
(酸化防止剤A)ヒンダードフェノール系酸化防止剤:
チバ社製商品名「イルガノックス1010」(IR1010)
テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシルフェニル)プロピオネート]メタン
(酸化防止剤B)リン系酸化防止剤:
チバ社製商品名「イルガフォス168」(IF168)
トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)フォスファイト
(実施例1〜6、比較例1〜5)
上記したエチレン−酢酸ビニル系重合体、プロピレン系樹脂組成物(PP−1)及び酸化防止剤を、表4に記載の配合割合(重量部)で準備し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、25ミリ径の2軸押出機を用いて溶融混練した。ダイ出口部温度200℃でダイから押し出しペレット化した。
得られたペレットを使用して、引張弾性率及び耐熱性の評価としてクリープ試験を以下の方法で行った。
[引張弾性率]
JIS K7127−1999「プラスチック−引張特性の試験方法」に準拠して23℃で測定した。この値はプラスチックの固さもしくは柔軟性の指標である。
[クリープ試験]
JIS K7127−1999「プラスチック−引張特性の試験方法」に準拠して試験片タイプ5を作成し、100℃雰囲気下にて荷重100gのクリープ試験を行い、10分後の伸びを測定した。この値をプラスチックの耐熱性の指標とした。
また、得られたペレットを、230℃に加熱されたスクリュー径40mmの単軸の押出シート成形機にて、幅750mm、ダイリップ間隔0.8mmのコートハンガーダイから水平方向に押出し、70℃の水が内部で循環しているロール直径300mmの金属ロール表面に、60℃の水が内部で循環しているロール直径300mmの金属ロールにて押さえつけ冷却固化することにより、厚み0.5mmのシートを製造した。
高周波ウェルダー特性の評価として、以下の方法でウェルダー溶着時間を測定した。
[ウェルダー溶着時間]
押出シート成形により作成した厚さ0.5mmのシート状試験片を重ねあわせ、山本ビニター社製ハイブリット高周波ウェルダー「YPO−5」を使用し、陽極電流値を0.35Aに設定したときのシートの溶着に要する時間(単位:sec)を計測した。
以上の評価結果を、表4に示す。
Figure 2014047294
実施例1〜6では特定のプロピレン系樹脂組成物(PP−1)を用いることにより、100℃のクリープ試験において高い耐熱性が得られており、かつウェルダー溶着性も良好である。
これに対して、比較例1〜3ではプロピレン系樹脂組成物(PP−1)が配合されていないために、100℃のクリープ試験において変形が著しく破断した。比較例4では、プロピレン系樹脂組成物(PP−1)の代わりにEG6Dを使用したために柔軟性が著しく低下した。比較例5ではプロピレン系樹脂組成物(PP−1)の割合が高いためウェルダー溶着が不可能であった。
本発明のエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物およびその成形体は、高い柔軟性と高い耐熱性及び高周波ウェルダー融着性を保有し、かつ公知の成形方法によって成形品を提供することができる。また、本発明のエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー組成物(X)およびその成形品は、その優れた物性バランスにより、シート、包装袋、ホース、チューブ、フレキシブルコンテナ、ターポリン、バッグ、筆記具、グリップ、保存瓶、食品保存容器用シールパッキン、キャップおよび蓋材のシール材、ならびに様々な容器のシール材の用途に極めて好適である。

Claims (4)

  1. (X)(Y)の合計100重量部基準で、エチレン−酢酸ビニル系重合体(X)50〜90重量部とプロピレン系樹脂組成物(Y)10〜50重量部を含有する樹脂組成物であって、プロピレン系樹脂組成物(Y)は、下記(i)〜(iv)を満たすことを特徴とするエチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
    (i)プロピレン単独重合体又はエチレン含量が7wt%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)95〜30wt%と、αオレフィン含量が成分(A)のエチレン含量よりも3〜20wt%多いプロピレン−αオレフィンランダム共重合体成分(B)5〜70wt%(成分(A)と成分(B)の合計は100wt%)からなる。
    (ii)MFR(230℃、2.16kg)が0.5〜100g/10分の範囲にある。
    (iii)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が110〜170℃の範囲にある。
    (iv)GPC法により測定された分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜7の範囲にある。
  2. JIS K7127−1999に準拠し、100℃、荷重100g下、10分でのクリープ試験においても、破断を起こさないことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. JIS K7127−1999に準拠し23℃で測定した引張弾性率が150MPa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. シートの高周波ウェルダー融着が可能である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
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