以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る台車110の側面図を示す。この台車110の上に座席、利用者の上半身を支持するアーム、かごなどを搭載することにより、四輪歩行車、歩行器、車椅子、ショッピングカート、配膳台車などを構成することができる。図5は、その一例として、台車110の上に座席を設置した車椅子133の側面図を示す。図6は、車椅子133を斜め後ろから見た斜視図である。
台車110は、高い剛性を有するシャーシ111を備える。台車110には、図4のx軸正方向を前方として、前輪113と後輪112とが取り付けられる。図4は、2つの前輪と2つの後輪を備える台車111を左側から見た図であるが、車輪の構成はこれと異なるものでもよい。
まず、前輪部について説明する。前輪部は、左右方向に並んで配置された一対のキャスターからなる前輪113を備える。前輪部は更に、その一対のキャスターを支持するそり状の部材である板ばね115を備える。板ばね115は、台車110が正面方向に移動して段差106に乗り上げる際に衝撃を吸収する方向である緩衝方向119に弾性変形する。板ばね115は、表面の摩擦係数が小さく、且つ摩耗の小さい樹脂などの材料によって形成されることが望ましい。そのような材料として、炭素繊維強化プラスチックが例示される。
板ばね115は、細長い板材を略円弧形状に曲げ、台車111が前方に動いたときに段差に最初にその表面が当たる向きに取り付けられる。すなわち、細長い板状の部材の幅方向が、台車111の幅方向(左右方向、図のy軸方向)となるように取り付けられる。板ばね115のzx断面は、例えば中心115−1を中心とする半径Rの円弧を形成する。しかしながら、前輪113よりも前側において滑らかな、そり状の形状であれば、円弧でなくてもよい。
台車111の前端付近の下面側に、一対の板状部材が取り付けられる。一対の板状部材と、板ばね115の前端部とが、以下のような支持構造によって接続される。すなわち、一対の板状部材の対向面が、板ばね115の前端部を挟む。一対の板状部材の接続部116に、幅方向(y軸方向)に延長する棒状部材が取り付けられる。板ばね115の前端部に形成されたy軸方向に延長する孔に、この棒状部材が通されることにより、板ばね115の前端部が支持される。接続部116は、前輪113の回転軸である前輪軸113−1よりも高い位置に設けられる。
板ばね115の後端部は、リンク122のリンク前部123に設けられた接続部124に接続される。板ばね115とリンク122も、接続部124において、板ばね115の前端部と同様の支持構造によって接続される。但し、板ばね115の後端部は接続部124において幅方向(y軸方向)に延長する回転軸を中心に回転可能に取り付けられる回転支持であるのに対して、板ばね115の前端部は接続部116において回転できないように取り付けられる固定支持である。
前輪部は、板ばね115に取り付けられる前輪カバー114を備える。前輪カバー114は、鉛直方向下向きに開口を有する、かご状(前輪113の形状に沿って上部に向かって断面が小さくなる樽形状)の部材である。前輪カバー114は、前部が前板ばね115の前部115F(前方側板ばね)を介して接続部116に接続され、後部が前板ばね115の後部115R(後方側板ばね)を介して接続部124に接続されることによって支持される。
前輪カバー114は、その下端部(開口部)において、前板ばね115に接続する。前輪カバー114と前板ばね115とは一体的に形成された部材であることが好ましい。前輪カバー114の下側の開口から、前輪113の下端の一部が露出する。その結果、平坦な地面132においては、前輪113が地面132に接地する。
前輪カバー114の上面に、前輪113のキャスターが取り付けられる。前輪113は、鉛直方向のキャスター軸118を中心として自在にその進行方向を変えることができる。前輪113は更に、前輪軸113−1を中心にして回転することにより、地面132を走行することができる。
次に、リンク122(リンク部材)について説明する。シャーシ111の前輪113と後輪112との間の位置の下面側に、接続部材120が取り付けられる。接続部材120の接続部121に、リンク122が取り付けられる。リンク122は、シャーシに対して支点(接続部121)を中心として上下方向に回転可能に支持される。
リンク122は、リンク前部123とリンク後部125とを有する。リンク前部123の前端部は、接続部124において前輪部の板ばね115に取り付けられる。リンク後部125の後端部は、接続部126において後輪部の板ばね127に取り付けられる。
リンク122は、接続部121において、台車110の幅方向(y軸方向)に延長する回転軸を中心としてシャーシ111に対して回転可能に接続される。台車110がフリーな状態(水平な地面132の上に置かれ、且つ台車の自重以外の外力が加わっていない状態)において、リンク122の接続部121まわりの角度は、板ばね115、112に支持されることによって決定される。
リンク122は、下向きV字形状をしている。すなわち、台車110がフリーな状態において、リンク前部123は前に向かって下がり、リンク後部125は後ろに向かって下がる形状をしている。このような形状により、リンク122の接続部121まわりの回転角度の変化量が向上する。
次に、後輪部について説明する。後輪部は、後板ばね127(後輪側板ばね)を備える。後輪112は、後板ばね127を介してシャーシ111に支持される。後板ばね127の前端部は、リンク後部125の接続部126に接続される。接続部126も、接続部116(板ばね115の前端部)と同様の支持構造を備える。板ばね127の後端部は、シャーシ111の後端部付近の下面に取り付けられる一対の板状部材に対して、接続部116と同様の支持構造によって接続される。板ばね127は、例えばそのzx断面が下向きに凸の円弧である。板ばね127の前端部も後端部も、前輪部の後端の接続部124と同様に、回転可能に接続される。
後輪部の板ばね127によって、後輪112の車軸が支持される。すなわち、板ばね127が弾性変形すると、その弾性変形に応じて、車軸がシャーシ111に対して上下方向に変位する。後輪112は、その車軸によって規定される後輪軸129を中心にして回転することにより、地面132を走行する。
後輪部は更に、電動のモータ130を備える。モータ130は、板ばね127によって支持される。従って、その上下方向の位置は、板ばね127の弾性変形に伴って変位する。但し、モータ130の水平面内の位置(xy平面内の位置)は、板ばね127の弾性変形と独立に、シャーシ111に対して一定の位置に保持される。そのために、モータ130はモータ支持部材131によって、上下移動可能に、且つシャーシ111に対してxy方向に一定位置に支持される。
このような構成を備えた車椅子の動作について、以下に説明する。図7は、車椅子133が段差106に接近したときの前輪部を示す側面図である。車椅子133が走行し、段差106に接近すると、前輪113に先立って前板ばね115が段差106に当たる。前板ばね115の下面が段差106の角と、段差106の上側の面に対する摺動面となって、前輪部が段差106の上に乗り上げる。
前板ばね115の仮想車輪径R(段差106に当たる箇所における曲率半径)は前輪113の半径rよりも大きい。そのため、段差106が半径r程度以上の場合であっても、前板ばね115がそりとして機能することにより、前輪部が段差106に乗り上げることができる。
前板ばね115の摺動面(下面)の向きは固定されている。従って、図3で説明したように段差106に斜めに当たった前輪113が横向きになるという問題が無い。
前板ばね115の前方側の固定端は、接続部116において回転できないように固定されている。そのため前板ばね115は、段差106に当たったときに、接続部116においてへたれることなく弾性変形することができる。更に、前板ばね115の後方側の可動端は、リンク122と回転可能な支点で接続されている。そのため、回転不可能な場合に比べて、より小さい力で弾性変形することができ、衝撃吸収能力が向上する。
このように、段差106を乗り上げるための前輪部のそり形状の部材が、衝撃を吸収するための板ばねによって形成されていることにより、簡素な構造によって段差106をスムーズに乗り上げることができる。段差106を乗り上げた後は、段差106の上の面に前輪113が接地して走行する。
図8は、車椅子133の前輪部が段差106に当たったときの側面図である。車椅子133が段差106に当たると、前板ばね115が弾性変形し、前輪部がシャーシ111に対して上向きに変位する。その結果、リンク前部123が前板ばね115に押されて上向きに変位する。前板ばね115とリンク122との接続部124が回転可能であるため、前板ばね115の上向きの力が高効率でリンク122に伝達される。リンク前部123が上がることにより、リンク後部125が下がる。その結果、後板ばね127が下がり、後輪112がシャーシ111に対して下方に変位する。
前輪部が段差106に乗り上げると、車椅子133は後方に傾く。しかしながら、シャーシ111に対して前輪113が上がり、後輪112が下がることにより、その傾きが緩和され、座134がより水平に近い状態で段差106の上の面に乗り上げることができる。
本実施形態によれば、前後の板ばねと、それらを接続するリンクという比較的単純でメンテナンスの楽な機械部品によって、車椅子133などの台車110の段差106を乗り上げる能力を向上することができる。
更に、前輪カバー114があるため、図3に示したように前輪104が段差106に斜めに当たって横を向くという現象を避けることができ、安全性が向上する。
図9は、本実施形態の変形例を示す。この変形例においては、前輪部と後輪部にそれぞれコイルスプリングS1、S2が追加される。コイルスプリングS1、S2は、それぞれシャーシ111に固定される。コイルスプリングS1、S2の弾性変形の方向は、車椅子133が水平な地面132に置かれたときの鉛直方向である。コイルスプリングS1は、前輪113又は前輪カバー114を支持する。コイルスプリングS2は、後輪112又はモータ130を支持する。このような構成の場合、前板ばね115の前方端の接続部116と後板ばね127の後方端の接続部128を固定支持ではなく、幅方向を回転軸として回転可能な回転支持としてもよい。
このようなコイルスプリングS1、S2により、以下の効果が得られる。コイルスプリングS1、S2は、ダンパ機能により、走行時の衝撃をやわらげることができる。更に、前板ばね115、後板ばね127のそれぞれの捩じれを抑えることができる。
また一般的に、前板ばね115が段差106に乗り上げたときなどの板ばねを用いた走行時の乗り心地を良くするためには、板ばねの剛性を小さくすることが有効である。しかしながら、板ばねのみで車輪を支持すると、足回りがふにゃふにゃとなり、却って乗り心地が悪くなる恐れがある。コイルスプリングS1、S2を追加することにより、剛性の小さい板ばねを用いた場合でも、足回りを良好に保つことができる。また、前板ばね115にキャスター(前輪113)を取り付け、後板ばね127に駆動輪(モータ130に駆動される後輪112)を取り付けていることにより、これらの板ばねが捩じれやすくなることが考えられる。その捩じれ防止としても、コイルスプリングS1、S2は機能する。
前輪カバー114がこのような役割を果たすためには、前輪カバー114の左右方向の外側に面した部分だけで十分である。図10は、内側を切り落とした前輪カバー114を示す。車椅子133の利用者から見て右側の前輪部の前輪カバー114が示されている。左側の前輪カバー114の場合は、zx面について対称な形状となる。この前輪カバー114においては、かご状の部材のうち利用者の座134の側の部分が、zx平面に平行な切断面140において切り落とされている。もちろん製造方法としては、かご状の部材を切断するのではなく、図10に示された形状の部材を一体成型することによって製造してもよい。
このような前輪カバー114によっても、前輪104が段差106に斜めに当たることを防ぐ機能を十分に果たすことができる。且つ、利用者の座134の側への前輪カバー114の張り出しが無いため、利用者の前足付近のスペースを広くすることができる。
本実施形態における台車110は更に、台車110に支持される上部部材(車椅子の座や、ショッピングカートのかごなど)の左右方向の姿勢を制御する機能も備える。図11は、その構成を示す背面図である。車椅子133は、台車111の幅方向の傾斜を検出し、その検出値を出力するセンサ135(ジャイロセンサ)を備える。座134は、シャーシ111に対して幅方向に傾斜できるようにピボットで連結される。その傾斜角は、姿勢制御部136の電動モータによって駆動されるウォームギア・ホイルによって制御される。姿勢制御部136は、センサ135によって得られた傾斜角の検出値に基づいて、座134の幅方向の傾斜角が台車110よりも小さくなるように制御する。このような構成により、地面132が傾斜している場合でも、座134を水平に近く維持することができる。センサ135は、座134に設けてもよい。その場合、姿勢制御部136は、センサ135が出力する座134の傾きを示す信号に基づいて、座134の幅方向の傾きがより水平に近づくように、台車111に対する座134の相対的な傾きを制御する。
以上に説明した実施形態における台車110は、車椅子133以外にも、四輪歩行車、歩行器、ショッピングカート、配膳台車などに用いることができる。以下に、台車110の用途の一例として、図12〜図19を参照して、歩行補助椅子の実施形態について説明する。
本実施形態における歩行補助椅子は、歩行補助椅子本体とコントローラとを備えている。その歩行補助椅子本体1は、図12に示されているように、車両部分2を備えている。車両部分2は、図4の台車110に相当する。車両部分2は、床を移動可能に構成され、車両フレーム5と複数の前輪6−1〜6−2と複数の後輪7−1〜7−2とを備えている。車両フレーム5は、シャーシ111に相当する。複数の前輪6−1〜6−2と複数の後輪7−1〜7−2とは、車両フレーム5が床に接触しないように、車両フレーム5を支持している。複数の前輪6−1〜6−2は、それぞれ、いわゆる自在式キャスターであり、車輪に形成され、回転軸を中心に回転可能に車両フレーム5に支持されている。その回転軸は、鉛直方向に垂直であり、鉛直方向に平行である他の回転軸を中心に回転可能である。複数の後輪7−1〜7−2は、それぞれ、車輪に形成され、回転軸を中心に回転可能に車両フレーム5に支持されている。その回転軸は、鉛直方向に垂直であり、かつ、進行方向10に垂直である。このとき、車両部分2は、複数の前輪6−1〜6−2と複数の後輪7−1〜7−2との車輪が回転することにより、床上を移動することができる。
このような歩行補助椅子の複数の前輪6−1〜6−2、複数の後輪7−1〜7−2に替えて、図4〜図11で説明した台車110を用いることによって、段差106を乗り上げる能力を向上することができる。
歩行補助椅子本体1は、さらに、手押しバー8を備えている。手押しバー8は、車両フレーム5に固定されている。ユーザや介護者は、手押しバー8を押すことにより、歩行補助椅子本体1を床上で自在に移動させることができる。
歩行補助椅子本体1は、さらに、昇降フレーム12と座面14と背もたれ15と複数のアームレスト16−1〜16−2と掴まりバー17と複数のフートステップ11−1〜11−2とを備えている。昇降フレーム12は、鉛直方向に平行移動可能に、車両フレーム5に支持されている。座面14は、板状に形成され、本実施形態による歩行補助椅子を車椅子として利用するユーザが座る座面に形成されている。座面14は、昇降フレーム12に支持されている。
背もたれ15は、板状に形成され、ユーザが座面14に着席したときに、ユーザの背中が接触するように、配置されている。背もたれ15は、回転軸を中心に回転可能に、昇降フレーム12に支持されている。その回転軸は、鉛直方向に垂直であり、かつ、進行方向10に垂直である。背もたれ15は、さらに、図示されていないレバーとリクライニング機構とを備えている。そのリクライニング機構は、そのレバーがユーザにより引かれているときに、ユーザの操作により背もたれ15が回転することができるように、背もたれ15を昇降フレーム12に支持する。そのリクライニング機構は、そのレバーからユーザの手が離れているときに、背もたれ15がその回転軸を中心に回転しないように、背もたれ15を昇降フレーム12に固定する。
複数のフートステップ11−1〜11−2は、それぞれ、板状に形成され、足置き面が形成されている。複数のフートステップ11−1〜11−2は、それぞれ、複数の姿のいずれかの姿勢に配置されることができるように、回転軸を中心に回転可能にフレームに支持されている。その複数の姿勢は、車椅子用姿勢と歩行器用姿勢とを含んでいる。複数のフートステップ11−1〜11−2は、その車椅子用姿勢に配置されているときに、その足置き面が鉛直上側を向くように、すなわち、座面14に着席したユーザの足がその足置き面に置かれることができるように、配置されている。複数のフートステップ11−1〜11−2は、その歩行器用姿勢に配置されているときに、その足置き面が水平方向を向くように、すなわち、座面14に着席したユーザの足が複数のフートステップ11−1〜11−2にぶつからないで床に置かれることができるように、配置されている。
複数のアームレスト16−1〜16−2は、座面14に着席したユーザの肘を掛けることができるように、配置され、昇降フレーム12に支持されている。
掴まりバー17は、棒状に形成されている。掴まりバー17は、座面14に着席したユーザの前方を横切るように、配置され、取り外し可能に、複数のアームレスト16−1〜16−2に支持されている。
歩行補助椅子本体1は、さらに、ジョイスティック22と操作パネル23とを備えている。ジョイスティック22は、座面14に座るユーザの右手が届くように、右側アームレスト16−2に固定されている。ジョイスティック22は、ユーザに操作されることにより、複数の情報のうちの1つの情報を作成する。その複数の情報は、移動情報とブレーキ情報とブレーキ解放情報とを含んでいる。その移動情報は、方向と速さとを示している。操作パネル23は、座面14に座るユーザの左手が届くように、左側アームレスト16−1に固定されている。操作パネル23は、ユーザに操作されることにより、複数の情報のうちの1つを示す情報を作成する。その複数の情報は、立ち上がり補助と着席補助とを含んでいる。なお、ジョイスティック22と操作パネル23とは、左右入れ替えて複数のアームレスト16−1〜16−2に取り付けられることもできる。
座面14は、昇降座面18と複数の退避座面19−1〜19−2とを備えている。昇降座面18は、進行方向10に長い概ね矩形状に形成され、座面14の中央の部分に形成されている。昇降座面18は、昇降フレーム12に固定されている。すなわち、昇降座面18は、昇降フレーム12が昇降することにより、複数の位置に配置されることができる。その複数の位置は、車椅子位置と歩行器位置とを含んでいる。その車椅子位置は、その複数の位置のうちの最も鉛直下側の位置である。その歩行器位置は、その複数の位置のうちのその車椅子位置より鉛直上側の位置であり、ユーザの体格に基づいて設定されたユーザに適した位置である。
複数の退避座面19−1〜19−2は、それぞれ、板状に形成されている。複数の退避座面19−1〜19−2のうちの左側退避座面19−1は、座面14の左側の部分に形成されている。複数の退避座面19−1〜19−2のうちの右側退避座面19−2は、座面14の右側の部分に形成されている。すなわち、座面14は、昇降座面18が複数の退避座面19−1〜19−2に挟まれるように配置されることにより、形成される。
複数の退避座面19−1〜19−2は、さらに、昇降フレーム12に固定されている回転軸21を中心に回転可能に、昇降フレーム12に支持されている。回転軸21は、鉛直方向に垂直であり、進行方向10に垂直であり、座面14の進行方向10の反対側に配置されている。
複数の退避座面19−1〜19−2は、このように構成されていることにより、図13に示されているように、昇降座面18より鉛直下側に配置されることができる。
歩行補助椅子本体1は、図13に示されているように、さらに、座面昇降装置24を備えている。座面昇降装置24は、アクチュエータ25とパンタグラフ26とを備えている。
図14は、パンタグラフ26を示している。パンタグラフ26は、複数の部材31〜39を備えている。部材31は、車両フレーム5に固定されている。部材32は、部材31に固定されている回転軸40を中心に回転可能に、部材31に支持されている。回転軸40は、鉛直方向に垂直であり、かつ、進行方向10に垂直である。部材33は、部材31に固定されている回転軸41を中心に回転可能に、部材31に支持されている。回転軸41は、回転軸40に平行であり、回転軸40から進行方向10に所定の距離だけ離れるように、配置されている。
部材34は、部材32に固定されている回転軸42を中心に回転可能に、部材32に支持されている。回転軸42は、回転軸40に平行である。部材35は、部材33に固定されている回転軸43を中心に回転可能に、部材33に支持されている。回転軸43は、回転軸41に平行である。このとき、部材33は、回転軸41から回転軸43までの距離が回転軸40から回転軸42までの距離に等しくなるように、形成されている。部材36は、部材34に固定されている回転軸44を中心に回転可能に、部材34に支持され、部材35に固定されている回転軸45を中心に回転可能に、部材35に支持されている。回転軸44は、回転軸42に平行である。回転軸45は、回転軸43に平行である。このとき、部材35は、回転軸43から回転軸45までの距離が回転軸42から回転軸44までの距離に等しくなるように、形成されている。
部材37は、部材32に固定されている回転軸46を中心に回転可能に、部材32に支持されている。回転軸46は、回転軸40に平行である。このとき、部材32は、回転軸40から回転軸46までの距離が回転軸40から回転軸42までの距離より長くなるように、形成されている。部材38は、部材33に固定されている回転軸47を中心に回転可能に、部材33に支持されている。回転軸47は、回転軸41に平行である。このとき、部材33は、回転軸41から回転軸47までの距離が回転軸40から回転軸46までの距離に等しくなるように、形成されている。
部材39は、昇降フレーム12に固定されている。部材39は、さらに、部材37に固定されている回転軸48を中心に回転可能に、部材37に支持され、部材38に固定されている回転軸49を中心に回転可能に、部材38に支持されている。回転軸48は、回転軸46に平行である。回転軸49は、回転軸47に平行である。このとき、部材38は、回転軸47から回転軸49までの距離が回転軸46から回転軸48までの距離に等しくなるように、形成されている。
パンタグラフ26は、このように形成されることにより、部材36が鉛直方向に平行に所定の距離だけ移動されたときに、部材39を鉛直方向に、その所定の距離より長い距離移動させることができる。
アクチュエータ25は、そのコントローラに制御されることにより、車両フレーム5に対して部材36を鉛直方向に平行に移動させる。
パンタグラフ26は、このように形成されることにより、アクチュエータ25により、部材36が鉛直上方に所定の距離だけ移動したときに、図15に示されているように、その所定の距離よりも長い距離だけ部材39が鉛直上方に移動する。このとき、部材39が移動した距離は、部材36が移動した距離に1対1に対応し、たとえば、部材36が移動した距離に正比例する。このため、アクチュエータ25は、部材36を移動させた量を測定することにより、間接的に昇降座面18の位置を測定することができる。アクチュエータ25は、そのコントローラに制御されることにより、昇降座面18の位置を測定し、その位置をそのコントローラに出力する。
歩行補助椅子本体1は、さらに、図16に示されているように、座面退避装置51を備えている。座面退避装置51は、車52と椅子座ベース53とを備えている。椅子座ベース53は、左側退避座面19−1に固定されている。椅子座ベース53は、ガイドレール55が形成されている。車52は、ガイドレール55に接触するように、配置されている。車52は、車両フレーム5に固定されている回転軸54を中心に回転可能に、車両フレーム5に支持されている。回転軸54は、回転軸21に平行である。
車52は、図17に示されているように、昇降フレーム12が車両フレーム5に対して鉛直上方に移動したときに、ガイドレール55に沿って移動する。椅子座ベース53は、車52がガイドレール55に沿って移動することにより、左側退避座面19−1が昇降座面18より鉛直下側に配置されるように、回転軸21を中心に回転する。
歩行補助椅子本体1は、さらに、図示されていない他の座面退避装置を備えている。その座面退避装置は、座面退避装置51と同様にして、車両フレーム5に対して鉛直方向に昇降フレーム12が移動することにリンクして、回転軸21を中心に右側退避座面19−2を回転させる。
歩行補助椅子本体1は、さらに、図18に示されているように、バッテリー61と複数のモータ62−1〜62−2と受信機63とフートステップセンサ64と障害物センサ65と掴まりバーセンサ66とユーザ動きセンサ67とを備えている。複数のモータ62−1〜62−2と受信機63とフートステップセンサ64と障害物センサ65と掴まりバーセンサ66とユーザ動きセンサ67とは、それぞれ、情報伝達可能にそのコントローラ60に接続されている。
バッテリー61は、二次電池から形成され、車両フレーム5または昇降フレーム12に支持されている。バッテリー61は、昇降装置24と複数のモータ62−1〜62−2とコントローラ60とに電力供給可能に接続されている。このとき、昇降装置24のアクチュエータ25は、バッテリー61により供給される電力を用いて、部材36を移動させる。バッテリー61は、充電器71に電気的に接続されることにより、充電される。
複数のモータ62−1〜62−2は、それぞれ、車両フレーム5に固定されている。複数のモータ62−1〜62−2のうちの左側モータ62−1は、コントローラ60に制御されることにより、バッテリー61から供給される電力を用いて、複数の後輪7−1〜7−2のうちの左後輪7−1を所定の回転速度で回転させ、または、左後輪7−1の回転を停止させる。複数のモータ62−1〜62−2のうちの右側モータ62−2は、コントローラ60に制御されることにより、バッテリー61から供給される電力を用いて、複数の後輪7−1〜7−2のうちの右後輪7−2を所定の回転速度で回転させ、または、右後輪7−2の回転を停止させる。
このとき、歩行補助椅子本体1は、複数のモータ62−1〜62−2が左後輪7−1と右後輪7−2とを同じ向きに同じ速さで回転させることにより、進行方向10に平行に移動することができる。歩行補助椅子本体1は、さらに、複数のモータ62−1〜62−2が左後輪7−1と右後輪7−2とを異なる回転速度で回転させることにより、回転したり、カーブを描いて移動したりことができる。
受信機63は、車両フレーム5または昇降フレーム12に支持されている。受信機63は、コントローラ60に制御されることにより、送信機72から発信された電波を受信し、その電波が示す情報をコントローラ60に出力する。送信機72は、ユーザに操作されることにより、複数の情報のうちの1つの情報を示す電波を発信する。その複数の情報は、移動情報と充電情報とを含んでいる。その移動情報は、方向と速さとを示している。なお、その電波は、その情報を伝送することができる他の情報伝送媒体に置換されることができる。その情報伝送媒体としては、赤外線が例示される。
フートステップセンサ64は、車両フレーム5に支持されている。フートステップセンサ64は、コントローラ60に制御されることにより、複数のフートステップ11−1〜11−2の姿勢を測定し、その姿勢をコントローラ60に出力する。
障害物センサ65は、車両フレーム5に支持されている。障害物センサ65は、コントローラ60に制御されることにより、赤外線を発信し、その赤外線の反射波を受信することにより歩行補助椅子本体1の移動を阻害する障害物の有無を測定し、その有無をコントローラ60に出力する。なお、その赤外線は、その障害物の有無を検出することができる他の媒体に置換されることができる。その媒体としては、超音波が例示される。
掴まりバーセンサ66は、複数のアームレスト16−1〜16−2に支持されている。掴まりバーセンサ66は、コントローラ60に制御されることにより、掴まりバー17の開閉状態を測定し、その開閉状態をコントローラ60に出力する。その開閉状態は、掴まりバー17が複数のアームレスト16−1〜16−2に固定されているかどうかを示している。
ユーザ動きセンサ67は、車両フレーム5に支持されている。ユーザ動きセンサ67は、コントローラ60に制御されることにより、歩行補助椅子本体1を歩行器として利用しているユーザの足に赤外線を照射し、その赤外線の反射波を受信することによりその足の動きを測定し、その動きをコントローラ60に出力する。このことに依って、歩行補助椅子本体1の動きを追随させる。なお、ユーザ動きセンサ67は、そのユーザの足と異なる他の部位の動きを測定する他のユーザ動きセンサに置換されることもできる。その部位としては、そのユーザの上体が例示される。このとき、そのユーザ動きセンサは、そのユーザを昇降座面18または背もたれ15に拘束するシートベルトの動きに基づいてその上体の動きを測定することもできる。
図19は、コントローラ60を示している。コントローラ60は、コンピュータであり、図示されていないCPUと記憶装置とインターフェースとを備え、バッテリー61から供給される電力を用いて動作する。そのCPUは、そのコンピュータにインストールされているコンピュータプログラムを実行することにより、その記憶装置とそのインターフェースとを制御する。その記憶装置は、そのコンピュータプログラムを記録し、そのCPUにより作成される情報を一時的に記録する。
そのインターフェースは、そのコンピュータに接続されている外部機器により生成される情報をそのCPUに出力したり、そのCPUにより生成された情報をその外部機器に出力したりする。その外部機器としては、入力装置、出力装置、通信装置、リムーバルメモリドライブが例示される。その入力装置は、ユーザに操作されることにより情報を作成し、その情報をそのCPUに出力する。その入力装置としては、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネルが例示される。その出力装置は、そのCPUにより生成される情報をユーザに認識可能に出力する。その出力装置としては、ディスプレイ、タッチパネルが例示される。その通信装置は、通信ネットワークを介してそのCPUにより作成された情報を他のコンピュータに送信し、その通信ネットワークを介して他のコンピュータから受信された情報をそのCPUに出力する。その通信装置は、さらに、そのコンピュータにインストールされるコンピュータプログラムを他のコンピュータからダウンロードすることに利用される。そのリムーバルメモリドライブは、記録媒体が挿入されたときに、その記録媒体に記録されているデータを読み出すことに利用される。そのリムーバルメモリドライブは、さらに、コンピュータプログラムが記録されている記録媒体が挿入されたときに、そのコンピュータプログラムをそのコンピュータにインストールするときに利用される。その記録媒体としては、磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスク)、光ディスク(CD、DVD)、フラッシュメモリが例示される。
コントローラ60は、そのインターフェースを介して、ジョイスティック22と操作パネル23と受信機63とに接続されている。コントローラ60は、さらに、そのインターフェースを介して、フートステップセンサ64と障害物センサ65と掴まりバーセンサ66とユーザ動きセンサ67とに接続されている。コントローラ60は、さらに、そのインターフェースを介して、昇降装置24と複数のモータ62−1〜62−2とに接続されている。
コントローラ60にインストールされるコンピュータプログラムは、コントローラ60に複数の機能をそれぞれ実現させる複数のコンピュータプログラムから形成されている。その複数の機能は、車椅子制御部81と立ち上がり補助部82と歩行補助部83と着席補助部84と遠隔制御部85とを含んでいる。
車椅子制御部81は、昇降座面18が配置されている位置が測定されるように、アクチュエータ25を制御する。車椅子制御部81は、昇降座面18がその車椅子位置に配置されているときに、ジョイスティック22を介してユーザにより入力された情報を収集するように、ジョイスティック22を制御する。車椅子制御部81は、その情報が移動情報を示すときに、歩行補助椅子本体1の周辺に配置された障害物の有無が測定されるように、障害物センサ65を制御する。車椅子制御部81は、歩行補助椅子本体1の周辺に障害物がないときに、歩行補助椅子本体1がその移動情報が示す方向にその移動情報が示す速さで移動するように、複数のモータ62−1〜62−2を制御する。車椅子制御部81は、歩行補助椅子本体1の周辺に障害物があるときに、歩行補助椅子本体1が移動しないように、複数のモータ62−1〜62−2を制御する。
車椅子制御部81は、その情報がブレーキ情報を示すときに、複数の後輪7−1〜7−2が回転しないように、すなわち、歩行補助椅子本体1が移動しないように、複数のモータ62−1〜62−2を制御する。車椅子制御部81は、その情報がブレーキ解放情報を示すときに、複数の後輪7−1〜7−2が自由に回転するように、すなわち、手押しバー8を押すことにより歩行補助椅子本体1が移動することができるように、複数のモータ62−1〜62−2を制御する。
立ち上がり補助部82は、操作パネル23を介して入力された情報が立ち上がり補助を示すときに、左側フートステップ11−1の姿勢と右側フートステップ11−2の姿勢とが測定されるように、フートステップセンサ64を制御する。立ち上がり補助部82は、掴まりバー17の開閉状態が測定されるように、掴まりバーセンサ66を制御する。立ち上がり補助部82は、複数のフートステップ11−1〜11−2がそれぞれ歩行器用姿勢に配置されているときに、かつ、掴まりバー17が複数のアームレスト16−1〜16−2に固定されているときに、昇降座面18が上昇するように、アクチュエータ25を制御する。立ち上がり補助部82は、昇降座面18が配置される位置が測定されるように、アクチュエータ25を制御する。立ち上がり補助部82は、昇降座面18がその歩行器位置に配置されたときに、昇降座面18がその歩行器位置に固定されるように、アクチュエータ25を制御する。
歩行補助部83は、昇降座面18が配置される位置が測定されるように、アクチュエータ25を制御する。歩行補助部83は、掴まりバー17が複数のアームレスト16−1〜16−2に固定されているかどうかが測定されるように、掴まりバーセンサ66を制御する。歩行補助部83は、歩行補助椅子本体1の周辺に配置される障害物の有無が測定されるように、障害物センサ65を制御する。歩行補助部83は、ユーザの足の動きが測定されるように、ユーザ動きセンサ67を制御する。歩行補助部83は、その動きに基づいて方向と速さとを算出する。
歩行補助部83は、昇降座面18がその歩行器位置に配置されているときに、かつ、掴まりバー17が複数のアームレスト16−1〜16−2に固定されているときに、かつ、歩行補助椅子本体1の周辺に障害物がないときに、歩行補助椅子本体1がその方向にその速さで移動するように、複数のモータ62−1〜62−2を制御する。
着席補助部84は、操作パネル23を介して入力された情報が着席補助を示すときに、掴まりバー17が複数のアームレスト16−1〜16−2に固定されているかどうかが測定されるように、掴まりバーセンサ66を制御する。着席補助部84は、掴まりバー17が複数のアームレスト16−1〜16−2に固定されているときに、歩行補助椅子本体1が移動しないように、複数のモータ62−1〜62−2を制御する。着席補助部84は、掴まりバー17が複数のアームレスト16−1〜16−2に固定されているときに、さらに、昇降座面18が下降するように、アクチュエータ25を制御する。
遠隔制御部85は、送信機72から発信される信号を受信するように、受信機63を制御する。遠隔制御部85は、送信機72から発信される信号が移動情報を示すときに、その移動情報が示す方向にその移動情報が示す速度で歩行補助椅子本体1が移動するように、複数のモータ62−1〜62−2を制御する。遠隔制御部85は、送信機72から発信される信号が充電情報を示すときに、充電器71が配置される位置が測定されるように、障害物センサ65を制御する。遠隔制御部85は、充電器71が歩行補助椅子本体1の周辺に配置されているときに、歩行補助椅子本体1が移動することによりバッテリー61が充電器71に電気的に接続されるように、すなわち、バッテリー61が充電されるように、複数のモータ62−1〜62−2を制御する。
本実施形態による歩行補助椅子により実行される動作は、車椅子動作と立ち上がり補助動作と歩行補助動作と着席補助動作と遠隔制御動作とを含んでいる。
その車椅子動作は、ユーザによりジョイスティック22が操作されたときに実行される。コントローラ60は、ユーザによりジョイスティック22が操作されたときに、アクチュエータ25を制御することにより、昇降座面18が配置されている位置を測定する。コントローラ60は、昇降座面18がその車椅子位置に配置されているときに、ジョイスティック22を介してユーザにより入力された情報を収集する。コントローラ60は、その情報が移動情報を示しているときに、障害物センサ65を制御することにより、歩行補助椅子本体1の周辺に配置された障害物の有無を測定する。コントローラ60は、歩行補助椅子本体1の周辺に障害物がないときに、複数のモータ62−1〜62−2を制御することにより、その移動情報が示す方向にその移動情報が示す速さで歩行補助椅子本体1を移動させる。コントローラ60は、歩行補助椅子本体1の周辺に障害物があるときに、複数のモータ62−1〜62−2を制御することにより、歩行補助椅子本体1が移動しないように歩行補助椅子本体1を停止させる。
さらに、コントローラ60は、ジョイスティック22を介して入力された情報がブレーキ情報を示すときに、複数のモータ62−1〜62−2を制御することにより、歩行補助椅子本体1が移動しないように、複数の後輪7−1〜7−2の回転を停止させる。コントローラ60は、ジョイスティック22を介して入力された情報がブレーキ解放情報を示すときに、複数のモータ62−1〜62−2を制御することにより、手押しバー8を押すことにより歩行補助椅子本体1が移動することができるように、複数の後輪7−1〜7−2が自由に回転するようにする。
このような車椅子制御動作によれば、ユーザは、歩行補助椅子本体1を車椅子として利用するときに、昇降座面18と複数の退避座面19−1〜19−2とから形成される比較的大きい座面にゆったりと座ることができ、より長時間着席することができる。このような車椅子制御動作によれば、ユーザは、さらに、ジョイスティック22を操作することにより、より快適に移動することができる。このような車椅子制御動作によれば、ユーザは、さらに、ジョイスティック22を誤って操作した場合でも、障害物にぶつかることが防止され、より快適に移動することができる。このような車椅子制御動作によれば、ジョイスティック22を介してブレーキ解放情報が入力されたときに、座面14に座るユーザ(被介護者)を介護する介護者は、手押しバー8を押すことにより、歩行補助椅子本体1を床上で自在に移動させることができ、歩行補助椅子本体1をいわゆる車椅子として利用することができる。
その立ち上がり補助動作は、ユーザにより操作パネル23を介して立ち上がり補助が入力されたときに実行される。コントローラ60は、操作パネル23を介して入力された情報が立ち上がり補助を示すときに、フートステップセンサ64を制御することにより、左側フートステップ11−1の姿勢と右側フートステップ11−2の姿勢とを測定する。コントローラ60は、さらに、掴まりバーセンサ66を制御することにより、掴まりバー17の開閉状態を測定する。コントローラ60は、複数のフートステップ11−1〜11−2がそれぞれ歩行器用姿勢に配置されているときに、かつ、掴まりバー17が複数のアームレスト16−1〜16−2に固定されているときに、アクチュエータ25を制御することにより、昇降座面18を上昇させる。このとき、複数の退避座面19−1〜19−2は、座面退避装置51により、昇降座面18より鉛直下側に配置されるように、移動する。コントローラ60は、アクチュエータ25を制御することにより、昇降座面18が配置される位置を測定する。コントローラ60は、昇降座面18がその歩行器位置に配置されたときに、アクチュエータ25を制御することにより、昇降座面18をその歩行器位置に固定する。
このような立ち上がり補助動作によれば、ユーザは、その車椅子位置に配置された昇降座面18に座った状態から立ち上がるときに、そのユーザの臀部を昇降座面18に押し上げられ、より小さい力で立ち上がることができ、より容易に立ち上がることができる。すなわち、本実施形態による歩行補助椅子は、そのユーザがより小さい力で立ち上がることができるように、ユーザの立ち上がりを補助することができる。このような立ち上がり補助動作によれば、本実施形態による歩行補助椅子は、さらに、複数のフートステップ11−1〜11−2にユーザが足を乗せた状態でそのユーザの臀部を昇降座面18で押し上げられることを防止し、足が床に着いた状態でユーザが立ち上がることを誘導することができ、ユーザの立ち上がりをより適切に補助することができる。このような立ち上がり補助動作によれば、本実施形態による歩行補助椅子は、さらに、ユーザが立ち上がるときに歩行補助椅子本体1が移動することが防止され、ユーザの立ち上がりをより適切に補助することができる。
その歩行補助動作は、昇降座面18がその歩行器位置に配置されているときに実行される。すなわち、コントローラ60は、アクチュエータ25を制御することにより、昇降座面18が配置される位置を測定する。コントローラ60は、さらに、掴まりバーセンサ66を制御することにより、掴まりバー17が複数のアームレスト16−1〜16−2に固定されているかどうかを測定する。コントローラ60は、障害物センサ65を制御することにより、歩行補助椅子本体1の周辺に配置される障害物の有無を測定する。コントローラ60は、ユーザ動きセンサ67を制御することにより、歩行補助椅子本体1を歩行器として利用しているユーザの足の動きを測定する。
コントローラ60は、その動きに基づいて方向と速さとを算出する。コントローラ60は、昇降座面18がその歩行器位置に配置されているときに、かつ、掴まりバー17が複数のアームレスト16−1〜16−2に固定されているときに、かつ、歩行補助椅子本体1の周辺に障害物がないときに、複数のモータ62−1〜62−2を制御することにより、その方向にその速さで歩行補助椅子本体1を移動させる。
このような歩行補助動作によれば、ユーザは、歩行補助椅子本体1を歩行器として利用しているときに、少し腰を落とすだけで昇降座面に座ることができ、または、昇降座面18に体重をかけながら歩行することができる。このため、このような歩行補助椅子は、ユーザの立ち作業を補助することに利用されることもできる。このような歩行補助椅子は、歩行器として利用されているときに、さらに、車椅子として利用されるときに形成される車椅子用座面より小さくなるようにその昇降座面を形成することができ、ユーザの歩行を阻害する部分を低減することができる。このため、このような歩行補助椅子は、ユーザが歩行することをより適切に補助することができる。このような歩行補助動作によれば、本実施形態による歩行補助椅子は、ユーザが誤った方向に歩行した場合でも、障害物にぶつかることを防止し、ユーザの歩行をより適切に補助することができる。
その着席補助動作は、操作パネル23を介して着席補助が入力されたときに実行される。コントローラ60は、操作パネル23を介して入力された情報が着席補助を示すときに、掴まりバーセンサ66を制御することにより、掴まりバー17が複数のアームレスト16−1〜16−2に固定されているかどうかを測定する。コントローラ60は、掴まりバー17が複数のアームレスト16−1〜16−2に固定されているときに、複数のモータ62−1〜62−2を制御することにより、複数の後輪7−1〜7−2が回転しないように停止させ、歩行補助椅子本体1が移動しないようにする。コントローラ60は、掴まりバー17が複数のアームレスト16−1〜16−2に固定されているときに、アクチュエータ25を制御することにより、昇降座面18を下降させる。このとき、座面退避装置51は、昇降座面18が下降しているときに、複数の退避座面19−11〜19−2を回転させ、昇降座面18が車椅子位置に配置されたときに、複数の退避座面19−11〜19−2が昇降座面18を挟むように配置されるように、すなわち、座面14が形成されるように、複数の退避座面19−11〜19−2を固定する。
このような着席補助動作によれば、ユーザは、その歩行器位置に配置された昇降座面18に座った状態からさらに座るときに、そのユーザの臀部を昇降座面18によりゆっくり下ろされ、より小さい力で座ることができ、より容易に座ることができる。すなわち、本実施形態による歩行補助椅子は、そのユーザがより小さい力で座ることができるように、ユーザの着席を補助することができる。このような立ち上がり補助動作によれば、本実施形態による歩行補助椅子は、さらに、ユーザが座るときに歩行補助椅子本体1が移動することが防止され、ユーザの着席をより適切に補助することができる。
その遠隔制御動作は、送信機72から発信される信号を受信したときに実行される。コントローラ60は、送信機72から発信される信号が移動情報を示すときに、複数のモータ62−1〜62−2を制御することにより、その移動情報が示す方向にその移動情報が示す速度で歩行補助椅子本体1を移動させる。コントローラ60は、送信機72から発信される信号が充電情報を示すときに、障害物センサ65を制御することにより、充電器71が配置される位置を測定する。コントローラ60は、充電器71が歩行補助椅子本体1の周辺に配置されているときに、複数のモータ62−1〜62−2を制御することにより、歩行補助椅子本体1が移動することによりバッテリー61が充電器71に電気的に接続されるように、すなわち、バッテリー61が充電されるように、歩行補助椅子本体1を移動させる。
このような遠隔制御動作によれば、ユーザは、ユーザが歩行補助椅子本体1から降りたときにも、送信機72を操作することにより、歩行補助椅子本体1を自在に移動させることができる。
なお、座面退避装置51は、昇降フレーム12の移動にリンクしないで、複数の退避座面19−1〜19−2を回転させる他の座面退避装置に置換されることができる。その座面退避装置は、コントローラ60に制御されることにより、座面退避装置51と同様にして、複数の退避座面19−1〜19−2を移動させる。本実施形態による歩行補助椅子は、このような座面退避装置が適用されたときも、既述の実施の形態における歩行補助椅子と同様にして、ユーザの歩行をより適切に補助することができる。
複数の退避座面19−1〜19−2は、回転軸21と異なる他の回転軸を中心に回転可能に支持されることもできる。その回転軸としては、進行方向10に平行であり、昇降座面18の両脇に配置される回転軸が例示される。複数の退避座面19−1〜19−2は、回転移動以外の移動により、歩行補助椅子本体1が歩行器として用いられるときに、ユーザの歩行を阻害しない他の位置に移動する他の複数の退避座面に置換されることができる。その移動としては、平行移動、平行移動と回転移動の組み合わせが例示される。その位置としては、昇降座面18の進行方向10の反対側が例示される。本実施形態による歩行補助椅子は、このような複数の退避座面が適用されたときも、既述の実施の形態における歩行補助椅子と同様にして、ユーザの歩行をより適切に補助することができる。
なお、座面昇降装置24は、椅子ダンパに置換されることもできる。その椅子ダンパは、レバーを備え、そのレバーが引かれているときに、ユーザが昇降座面18に体重をかけることにより昇降座面18を下降させ、ユーザが昇降座面18から腰を浮かせることにより昇降座面18を上昇させる。本実施形態による歩行補助椅子は、このような椅子ダンパが適用されたときも、既述の実施の形態における歩行補助椅子と同様にして、ユーザの歩行をより適切に補助することができる。
なお、歩行補助椅子本体1は、コントローラ60と複数のモータ62−1〜62−2と受信機63とフートステップセンサ64と障害物センサ65と掴まりバーセンサ66とユーザ動きセンサ67とのうちのいずれかの部品を省略することもできる。本実施形態による歩行補助椅子は、その部品が省略されたときに、その部品を利用した動作ができないが、既述の実施の形態における歩行補助椅子と同様にして、ユーザの歩行をより適切に補助することができる。
台車110は、高い剛性を有するシャーシ111を備える。台車110には、図4のx軸正方向を前方として、前輪113と後輪112とが取り付けられる。図4は、2つの前輪と2つの後輪を備える台車110を左側から見た図であるが、車輪の構成はこれと異なるものでもよい。
リンク122は、接続部121において、台車110の幅方向(y軸方向)に延長する回転軸を中心としてシャーシ111に対して回転可能に接続される。台車110がフリーな状態(水平な地面132の上に置かれ、且つ台車の自重以外の外力が加わっていない状態)において、リンク122の接続部121まわりの角度は、板ばね115、127に支持されることによって決定される。
本実施形態における台車110は更に、台車110に支持される上部部材(車椅子の座や、ショッピングカートのかごなど)の左右方向の姿勢を制御する機能も備える。図11は、その構成を示す背面図である。車椅子133は、台車110の幅方向の傾斜を検出し、その検出値を出力するセンサ135(ジャイロセンサ)を備える。座134は、シャーシ111に対して幅方向に傾斜できるようにピボットで連結される。その傾斜角は、姿勢制御部136の電動モータによって駆動されるウォームギア・ホイルによって制御される。姿勢制御部136は、センサ135によって得られた傾斜角の検出値に基づいて、座134の幅方向の傾斜角が台車110よりも小さくなるように制御する。このような構成により、地面132が傾斜している場合でも、座134を水平に近く維持することができる。センサ135は、座134に設けてもよい。その場合、姿勢制御部136は、センサ135が出力する座134の傾きを示す信号に基づいて、座134の幅方向の傾きがより水平に近づくように、台車110に対する座134の相対的な傾きを制御する。
その着席補助動作は、操作パネル23を介して着席補助が入力されたときに実行される。コントローラ60は、操作パネル23を介して入力された情報が着席補助を示すときに、掴まりバーセンサ66を制御することにより、掴まりバー17が複数のアームレスト16−1〜16−2に固定されているかどうかを測定する。コントローラ60は、掴まりバー17が複数のアームレスト16−1〜16−2に固定されているときに、複数のモータ62−1〜62−2を制御することにより、複数の後輪7−1〜7−2が回転しないように停止させ、歩行補助椅子本体1が移動しないようにする。コントローラ60は、掴まりバー17が複数のアームレスト16−1〜16−2に固定されているときに、アクチュエータ25を制御することにより、昇降座面18を下降させる。このとき、座面退避装置51は、昇降座面18が下降しているときに、複数の退避座面19−1〜19−2を回転させ、昇降座面18が車椅子位置に配置されたときに、複数の退避座面19−1〜19−2が昇降座面18を挟むように配置されるように、すなわち、座面14が形成されるように、複数の退避座面19−1〜19−2を固定する。