JP2014028913A - 熱蛍光体板状体とそれを用いてなる画像読取装置 - Google Patents

熱蛍光体板状体とそれを用いてなる画像読取装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 汎用性があり、取扱が容易で、感度が高い熱蛍光体板状体とそれを用いてなる画像読取装置を提供すること。
【解決手段】 発熱体11を有し、TL素子と硝子とを、TL素子100重量部に対して硝子0〜120重量部で配合してなる混合物を所定温度で焼成してなる熱蛍光体板状体12aが基板12bに固着されてなる画像提供物12、並びに画像提供物を設置するサンプルシート設置部10と、サンプルシート設置部10から所定距離を空けて設置された画像検出部20と、サンプルシート設置部10及び画像検出部20の間に設けられ、発熱体11の熱が画像検出部に伝達されないように熱を遮断する断熱部30とからなる画像読取装置1。
【選択図】図1

Description

本発明は、放射線線量計に用いることができる熱蛍光体板状体とそれを用いてなる画像読取装置に関し、さらに詳細には、汎用性があり、取扱が容易で、感度が高い熱蛍光体板状体とそれを用いてなる画像読取装置に関する。
放射線線量計は、種々のものが提案されており、皮膚吸収線量を測定対象とした熱蛍光シート(テフロン(登録商標)に組織等価型の熱蛍光体を埋め込んだもの、特許文献8参照)や、人体の吸収線量を測定対象とした熱蛍光体板状体(エポキシ樹脂に組織等価型の熱蛍光体を埋め込んだもの、特許文献4参照)、ガラス管に熱蛍光体を封入したものが利用されている。
福島原発事故による放射性の汚染物質の飛散により、植物や建物、土、瓦礫等をはじめとするあらゆる物質が汚染の対象となっている。この汚染物質の除染作業は効果的・効率的に進めなければならないが、汚染物質も均一に汚染されているわけではなく、部位によって汚染の度合いは異なっている。汚染の度合いに応じた除染処理を行うことは廃棄物を減らす点からも重要である。そのためには、汚染物質ごとに汚染部位を特定することが重要となる。この汚染物質の汚染箇所を特定するには、イメージングプレート(IP)を利用したオートラジオグラフィー等種々の提案(特許文献6及び7)がなされている。
このような観点から種々の線量計が提案されており、たとえば特許文献1には、放射線の積算吸収線量を測定する、平板状蛍光ガラス線量計が提案されている。特許文献2には、軽量で、全方向から飛来する中性子に対する正確な評価が可能な積算型中性子線量当量測定器が提案されている。特許文献3には、蛍光特性を大きく損なう事無く、又、ガンマ線補償用蛍光ガラス素子に対する影響を与える事無く、一般的に使われている熱ルミネセンス線量計と同等の熱中性子感度を持つ新たな蛍光ガラス線量計用ガラスが提案されている。特許文献4には、熱蛍光板状体を利用した、放射線の3次元線量分布を取得することができる線量計が提案されている。特許文献5には、アルミニウム(III)含有の熱蛍光板状体が提案されている。
特許文献6及び7には、それぞれイメージングプレートを用いたオートラジオグラフィーに関して提案されている。
特開2006−47009号公報
特開2010−276406号公報
特開2010−210336号公報
特開2010−127930号公報
特開2011−052179号公報
特開2002−49110号公報
特開2000−230902号公報
特開2004−317136号公報
しかし、上述の従来提案されている蛍光体ではいまだ十分な実用性がなかった。たとえば、特許文献1,2及び3の提案では、光励起直後の極めて短い時間に発光する蛍光を利用するため、励起光と蛍光の分離操作が必要となり、測定システムが熱蛍光体と比較して複雑で高価となる。また、ガラスの厚さに応じたボケが生じるため解像度の点でも不十分であった。
特許文献4,5及び8の提案では、人体の吸収線量のみを目的として設計されたものであり、汎用性が十分でなく、また感度が不十分であった。
特許文献5および8の提案では、使用時に機能する温度レンジが狭く取り扱いに注意が必要であり、長期にわたる安定性に問題があった。
特許文献6及び7の提案では、放射線の汚染分布の測定は可能であるものの、輝尽性蛍光体を使用しているため、測定前に光を照射させることができず、位置確認に必要な画像を取得することができない。また、試料を載せたまま測定することもできないため、測定後に位置確認に必要な画像を取得することもできない。そのため汚染位置の特定まで可能になるものではない。既存のガラス管に封入された熱蛍光体やペレット状のものはポイント測定のみで、2次元の測定には用いることができず、汎用性に乏しい。
要するに、熱蛍光体を用いた線量計は有用と考えられるものの、取り扱いが容易で、かつ2次元の高感度線量計として用いることができる熱蛍光体はいまだ提案されていないのが現状であり、そのような熱蛍光体及び当該熱蛍光体を用いた放射線線量計の開発が要望されているのが現状である。
したがって本発明の目的は、汎用性があり、取扱が容易で、感度が高い熱蛍光体板状体とそれを用いてなる画像読取装置を提供することにある。
本発明者は上記課題を解消するために鋭意検討した結果、特定の熱蛍光素子(以下、「TL素子」という場合もある)と特定の硝子とを混合した場合に上記課題を解消しうることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の各発明を提供するものである。
1.熱蛍光素子と硝子とを、熱蛍光素子100重量部に対する硝子の配合割合が0〜120重量部で配合してなる混合物を所定温度で焼成してなる熱蛍光体板状体。
2.上記熱蛍光素子が、硫酸カルシウムと希土類とを構成成分とする素子であることを特徴とする1記載の熱蛍光体板状体。
3.上記硝子がホウ酸含有硝子の紛体であり、そのホウ酸含量が硝子全体に対して5重量%以上であり、上記硝子の配合割合が80〜120重量部であることを特徴とする2記載の熱蛍光体板状体。
4.上記熱蛍光素子がホウ酸リチウム系化合物からなる熱蛍光体であり、上記硝子の配合割合が0〜120重量部であることを特徴とする1記載の熱蛍光体板状体。
5.上記混合物はさらに混和剤を含有し、該混和剤が、水、又はエタノールであることを特徴とする1記載の熱蛍光体板状体。
6.1記載の熱蛍光体板状体が基板上に固着されてなる画像提供物。
7.発熱体を有し、画像提供物を設置するサンプルシート設置部と、
該サンプルシート設置部から所定距離を空けて設置された画像検出部と、
該サンプルシート設置部及び該画像検出部の間に設けられ、上記発熱体の熱が画像検出部に伝達されないように熱を遮断する断熱部とからなり、
画像提供物が1記載の板状体である画像読取装置。
本発明の熱蛍光体板状体は、汎用性があり、取扱が容易で、感度が高いものである。
また、本発明の画像読み取り装置は、簡単な操作で物質の放射線量を高感度且つ高精度に測定することができるものである。
図1は本発明の画像読取装置の概要を示す模式図である。 図2は、図1に示す画像提供物の拡大斜視図である。 図3は、図1に示す断熱部の要部を示す拡大図であり、(a)は斜視図、(b)はb−b断面図である。 図4は図1に示す画像読み取り装置の使用形態を示す模式図であり、(a)及び(b)は具体的な使用過程を示す模式図であり、(c)及び(d)は撮影した写真の状態を模式的に示す平面図である。 図5は、図4(c)及び(d)に示す写真を重ね合せた状態を模式的に示す平面図である。 図6は耐圧収納容器を示す図であり、(a)は側面図、(b)は断面図である。 図7は収納容器を示す斜視図である。 図8は、収納容器の他の実施形態を示す全体図である。 図9は、図8のI−I断面図である。 図10は、図8のII−II断面図である。 図11は、図8に示す収納容器の樹脂フィルム被覆前の本体および先端部の分解斜視図である。 図12は電卓を用いた画像形成の要部を示す模式図である。 図13は実際に電卓を用いて画像提供物に形成された画像の写真(図面に代えて提出する画像提供物に形成された画像を示す写真)である。 図14は実際にマウスを用いて画像提供物に形成された画像の写真(図面に代えて提出する画像提供物に形成された画像を示す写真)である。
1 画像読取装置、10 サンプルシート設置部、11 発熱体、12 画像提供物、20 CCDカメラ、30 断熱部、A 被測定物
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の熱蛍光体板状体は、熱蛍光素子と硝子とを特定の配合割合で配合してなる混合物を所定温度で焼成してなるものである。
本発明の熱蛍光体板状体の大きさは特に制限されず、被測定物の大きさにより任意である。また、厚みは、堅牢性や測定時の操作性、加熱して発光させる際の効率の観点から1〜2.5mmとするのが好ましい。
以下、さらに詳細に説明する。
<熱蛍光素子>
本発明において用いられる上記熱蛍光素子は、BaSO4、LiF、BeO、CaF、Li247、CaSO等からなる群より選択される化合物と希土類や遷移元素等とを構成成分とする混合物から得られる素子である。該化合物としては、硫酸カルシウムを特に好ましく用いることができ、その中でもナトリウムを含まない硫酸カルシウムを特に好ましく用いることができる。また、硫酸カルシウムを用いる場合には、炭酸カルシウムと硫酸とを用いて上記混合物を調製することも可能である。
本発明において用いられる硫酸カルシウムは、ナトリウムを含まないことが重要である。ここで「ナトリウムを含まない」とは、ナトリウム含有量が全硫酸カルシウム重量中0.001重量%以下であることを意味する。
希土類は、(Sc)スカンジウム、(Y)イットリウム、(La)ランタン、(Ce)セリウム、(Nd)ネオジム、(Pr)プラセオジム、(Pm)プロメチウム、(Sm)サマリウム、(Eu)ユウロピウム、(Gd)ガドリニウム、(Tb)テルビウム、(Dy)ジスプロシウム、(Ho)ホルミウム、(Er)エルビウム、(Tm)ツリウム、(Yb)イッテルビウム、又は(Lu)ルテチウムであれば特に制限されないが、本発明においては特にTm,Dy,Eu,Smが熱蛍光体の放射線に対する感度が良好になる点で好ましく用いられる。
希土類の含有形態は、希土類原子そのものを含有していればよく、原子そのものとして配合されていても何らかの化合物として配合されていてもよい。化合物として配合される際、好ましく用いられる化合物としては、希土類酸化物(上記希土類の酸化物)等を挙げることができる。
上記硫酸カルシウムに対する上記希土類の配合割合は、硫酸カルシウム1モルに対して希土類0.05〜0.2モルとするのが、感度の点で好ましい。
上記熱蛍光素子には、上記硫酸カルシウム及び上記希土類以外に本発明の所望の効果を損なわない範囲で他の成分を配合することができる。
上記熱蛍光素子は、高純度CaCOにHSOと希土類とを上記配合割合を満足するように混合し、加熱溶解して蒸発乾固させ、その後500〜1000℃で1〜5時間加熱処理を行うなどして得ることができる。
また、上記熱蛍光素子としては、ホウ酸リチウム系化合物からなる熱蛍光体(以下、この熱蛍光体を単に「ホウ酸リチウム系化合物」ということもある)を用いることもできる。
上記ホウ酸リチウム系化合物からなる熱蛍光体としては、LiやLi12等を添加物と混合した後焼成してなる蛍光体を用いることができる。
また、BやLiには、一般的に利用されている11BやLiだけでなく中性子捕獲断面積の大きい同位体10BやLiを用いることもでき、これにより中性子線の吸収率を高めることができる。これらの同位体の含有量は、中性子線測定用にする場合には多ければ多いほどよい。
熱蛍光体素子としてホウ酸リチウム系化合物を用いると、熱蛍光体自身がバインダーとしても機能するため、熱蛍光体ではない硝子をバインダーとして用いる必要がなくなり、さらに高感度でかつ高分解能な熱蛍光体板状体を得ることができる。
さらには、ホウ酸リチウム系化合物は生体等価性が高く、密度を制御したセラミックスを基板に用いることによって、ほぼ生体等価で、さらには肝臓等価、骨等価などの各臓器等等価な熱蛍光体板状体、ひいては放射線線量計を得ることができる。このような上記セラミックスとしては、市販のイソライト工業株式会社製、商品名「イソプラトン軽量セッター」等を用いることができる。
上記ホウ酸リチウム系化合物からなる熱蛍光体、例えばLi247は、以下のようにして得ることができる。
一つは市販のLi247を使用して、添加物と混合して焼成する方法、他方はLiCOとBとを900℃−1000℃で3(2〜4)時間程度加熱してLi247を合成し、得られたLi247と添加物とを混合して焼成する方法。
この際用いられる添加物としては、Cu(NOまたはCuOを挙げることができ、使用量はLi247100重量部に対して0.1〜2.0重量部とするのが好ましい。そして混合して得られた混合物は850℃−1000℃で焼結させる。
中性子線測定用に10Bの含有率を上げる場合は、たとえば市販のステラケミファ株式会社の10B96重量%濃縮ホウ酸を加熱して得られた10と、LiCOを上記方法で加熱してLi247を得、これを上記添加物と混合して焼成すればよい。
<硝子>
上記硝子は、ホウ酸含有硝子の紛体であり、そのホウ酸含量が硝子全体に対して5重量%以上であるのが、板状体への成形性と後述する基板への接着性との点で好ましく、10重量%以上であるのがさらに好ましく、20重量%以上であるのが最も好ましい。また、上限は30重量%以下であるのが板状体への成形性と後述する基板への接着性との点で好ましく、27重量%以下であるのがさらに好ましい。
上記のホウ酸含有硝子は、一般にホウケイ酸塩ガラスと呼ばれているものであり、ガラス構造内のホウ素イオン(B3+)が周囲の状態により3配位か4配位の酸素イオンをとる([BO3]、[BO4])硝子である。
本発明においては、上記ホウ酸含有硝子の好ましい組成は、酸化バリウム30〜50重量%、酸化ホウ素20〜27重量%、酸化亜鉛5〜25重量%、酸化アルミニウム1〜10重量%、酸化チタン1〜10重量%、二酸化ケイ素5〜25重量%、酸化ジルコニウム1〜10重量%である。上記ホウ酸含有硝子としては、商品名「ASF1898」旭硝子製、等の市販品を用いることができる。
また、上記硝子は、上記熱蛍光素子とは反応しない、化学的に安定であることが望ましい。また、熱安定性に優れることも必要で融点が400℃以上であるのが望ましい。また、融点が高すぎると熱蛍光素子と加熱により溶融させて混合させる際に熱蛍光素子が分解するので、融点は600℃以下であるのが好ましい。
<配合割合>
上記熱蛍光素子と上記硝子との配合割合は、上記熱蛍光素子100重量部に対して上記硝子0〜120重量部であり、上記熱蛍光素子が、硫酸カルシウムと希土類とを構成成分とする素子である場合には、上記硝子の配合割合が80〜120重量部であるのが好ましく、90〜110重量部であるのが更に好ましい。また、上記熱蛍光素子がホウ酸リチウム系化合物からなる熱蛍光体である場合には、上記硝子の配合割合が0〜120であるのが好ましく、上記硝子の配合割合を0とすることも好ましい。
<第3成分>
また、本発明においては上記熱蛍光素子及び上記硝子以外に本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々成分を添加することができる。
たとえば、Li、10B等を含む中性子捕獲材や、Cd等を含む中性子コンバータ、γ線の捕獲剤として高原子番号のPbやBa等を用いることができる。
<製法>
本発明の熱蛍光体板状体は、基板に固着されてなる画像提供物として使用される。そして、本発明の熱蛍光体板状体を製造する際には、以下の本発明の画像提供物の製造を行うことにより、基板と一体化された本発明の熱蛍光体板状体を得ることができる。
画像提供物は、上記熱蛍光素子と上記硝子とを混合し、均塗布剤としての混和剤に分散して粘土状の混合物を得、得られた混合物を基板上に所望の厚さとなるように板状に塗工し成形した後、焼成することにより得ることができる。
この際上記混和剤としては、水、エタノールなどのアルコール類等の熱蛍光素子と反応しないものを好ましく用いることができる。特に硫酸カルシウムを用いる場合には水、エタノールを好ましく用いることができる。
上記混和剤の使用量は、上記熱蛍光素子と上記硝子との混合物100重量部に対して5〜30重量部とするのが成形性の観点から好ましい。
用いられる基板の形成材料は、酸化アルミニウムやジルコニアなどのセラミックス、パイレックス(登録商標)や石英などの硝子、陶器等の熱的に安定なものを用いることができる。上記基板の大きさ及び厚さは特に制限されず、撮影する用途に応じて任意である。
また焼成は多段階に温度を制御して行うのが好ましく、例えば600〜800℃で30分〜2時間焼成する第1段階、400℃〜600℃(第1段階とは異なる温度)で1時間〜4時間焼成する第2段階と順次行うなどして焼成することができる。
<構造、効果>
本発明の熱蛍光体板状体は、組織非等価性であるのが好ましい。ここで組織等価とは、生体等価(水等価)であることを意味し、実効原子番号が水の7.42に近いことを意味し、組織非等価とは、実効原子番号が水の7.42よりも大きいものを意味する。組織非等価であることにより、放射線の吸収量が大きく、感度が高いことになる。
本発明の熱蛍光体板状体は、上記熱蛍光素子と上記硝子とを必須の構成成分とするので、以下のような種々効果を奏するものである。
・サイバーナイフの管理に用いることができ、しかもアニーリングすることにより再利用可能であるためランニングコストがほとんどかからない。このためビーム軸の位置管理が容易になり、線量の相対的な評価も可能になる。
・上記X線だけでなく焼結時に中性子捕獲材を混入させた場合には、中性子用のイメージングデバイスとしても利用できる。また、板状でダイナミックレンジが広いため、フィルタを設置しやすく、フィルタの種類や板の厚さを変えることにより種々の放射線測定用途に対応することができる。すなわち、通常の2次元線量計のIPは、遮光しなければ読み出しの値に大きな誤差が生じるため、カセッテに入れる必要があるが、本発明の熱蛍光体板状体はカセッテが不要で種々のフィルタを容易に設置することが可能であるため、多種の放射線混在場で簡易的に放射線の種類とエネルギー(相対的な測定により)を検出できる。また、小さいものから大きいものまで、また形も長方形、四角形、三角形、円形等種々の線量計を作成できるため、個人被曝線量計をはじめとした多くの利用法が可能である。
・従来の2次元の熱蛍光体線量計は、感度が低く、また、テフロン(登録商標)やエポキシ樹脂を使用しているため、熱に弱く、加熱して測定を行う場合に取り扱いに注意が必要で、感度劣化等のリスクがある。しかし、本発明の熱蛍光体板状体は硝子化により扱いが極めて容易で、形状も種々形状を採りうる。熱的に安定であり、熱による変形や劣化を考慮せずに測定を行うことができることも含めて高感度である。
・通常の組織等価性の熱蛍光体は、既知でないエネルギー分布中でも生体の吸収線量を測定できるが、感度が悪い。本発明の熱蛍光体は非組織等価性であり、エネルギーが既知である場合は生体の吸収線量への変換が容易に可能で感度が高い。
<使用法(本発明の画像読取装置)>
ついで本発明の画像読取装置について説明する。
本実施形態の画像読取装置1は、図1に示すように、シート状の発熱体11を有し、画像提供物12を設置するサンプルシート設置部10と、サンプルシート設置部10から所定距離を空けて設置された画像検出部としてのCCDカメラ20と、サンプルシート設置部10及びCCDカメラ20の間に設けられ、発熱体11の熱がCCDカメラ20に伝達されないように熱を遮断する断熱部30とからなり、画像提供物12が本発明の熱蛍光体板状体である。
なお、画像検出部としては、CCDカメラに代えて熱蛍光の強度に応じてCIDやPDA,MOS等の固体撮像素子を用いることもできる。
以下詳述する。
サンプルシート設置部10は板状であり、発熱体11はサンプルシート設置部10の下部に設けられており、サンプルシート設置部と同形状で且つシート状である。
画像提供物12について図2を参照して説明すると、画像提供物12は、基板12bと基板12b上に固着された本発明の熱蛍光体板状体12aとからなる。図2からも明らかなように両者は特に接着層を設けることなく接着されており、厚みは異なるが同じ形状となされている。
CCDカメラ20は、サンプルシート設置部から10cm〜1mの距離を置いて設けられており、図示しないがカメラの高さ位置を自在に変更できる公知の治具を用いて所望の高さに固定されている。
断熱部30について図3を参照して説明すると、断熱部30は、直方体であり、図3(a)に示すように、その中央部分に円筒形状の透視部31が設けられており、透視部31の周囲が断熱構造部33となされている。透視部31は、図3(b)に示すように、2枚のガラス板32により形成されており、両ガラス板32の間に中空部34が形成されている。また断熱構造部33は金属板により形成された箱体であり、その内部にはグラスウールが充填されている。ガラス板32の形成材料は、可視光を吸収しないガラスたとえば石英ガラスやパイレックス(登録商標)等を用いることができる。また、断熱部30はサンプルシート設置部とCCDカメラのほぼ中間に位置するように設けられている。
また、特に図示していないが、装置全体を覆うようにハウジングを設けられている。
本実施形態の画像読取装置1は、図4(a)に示すように、サンプルシート設置部10上に画像提供物12を設置し、さらに画像提供物12上に被測定物A(図では葉)を載置してCCDカメラで撮影を行う。これにより図4(c)に示す被測定物Aの画像を得ることができる。
次に、図4(b)に示すように、被測定物Aを除去した状態で、発熱体による画像検出部の加熱を行い、発光させた状態で再度CCDカメラによる撮影を行う。これにより、図4(d)に示すように放射性物質で汚染された場所Bの色が変化した状態の画像を得ることができる。
そして、図5に示すようにこの2枚の写真(画像)を重ね合せることにより、被測定物のどの部位で放射線が検出されるかを正確に測定することができる。
本発明の画像読取装置は上記の本発明の熱蛍光体板状体を用いているので、IPを用いたオートラジオグラフィーシステムでは試料の位置と汚染箇所の特定が困難であったが、本発明においては同じ画角で比較できるので容易に画像を重ね合わせることできる。
次に、図6を参照して本発明の熱蛍光体板状体の使用方法の1形態について説明する。
図6に示す形態の使用方法では、熱蛍光体板状体101を収容して海中などの圧力がかかる場所に設置し、当該環境下の放射線量モニタリングを可能にする耐圧収納容器100を用いる。
耐圧収納容器100は、図6(a)及び(b)に示すように、円筒状の本体110と、本体110の両端部開口を封止する円錐状の先端部120及び断面T字状の基端部130とからなる。先端部120と基端部130とはいずれも本体と螺合可能にねじ山部121,131が形成されている。本体110の両端にはこれらのねじ山部121,131に対応して螺合部111,112が形成されている。
先端部120はねじ山部121の先端に収容した熱蛍光体板状体がぶつかっても破損しないようにゴム製の緩衝部122が形成されている。また、ねじ山部121の基端には封止状態をより良好なものとするためにО−リング123が設けられている。
基端部130におけるねじ山部131の先端にも収容した熱蛍光体板状体がぶつかっても破損しないようにゴム製の緩衝部132が形成されている。また、また、基端部130の外面には使用時に取り外しを容易にするためのつまみ部133が設けられている。
本体110、先端部120及び基端部130の形成材料は、通常耐圧製品の形成に用いられている材料であれば特に制限なく用いることができ、軽さと取扱いの容易さとから硬質プラスチックなどを好ましく用いることができる。
そして、使用時には先端部120を本体110に螺合した後、本体の基端部側の開口から熱蛍光体板状体を挿入し、最終に基端部130を本体に螺合させて全体を封止する。その後、所望の設置場所、例えば海中等の圧力のかかる場所、河川から海洋にかけて目的の場所に設置し、1〜3カ月間程度放置した後、上述の画像読取装置により測定画像を得ることで測定を行うことができる。これにより、従来は測定が不可能であった場所についても放射線線量の測定を行うことができ、放射性物質の流動経路の特定や汚染状況のモニタリングが可能である。
次に図7を参照して別の使用方法について説明する。
図7に示す形態の使用方法では、熱蛍光体板状体201を収容して土中や樹木中に設置し、当該環境下の放射線量モニタリングを可能にする収納容器200を用いる。
収納容器200は、断面三角形状で先端が尖っている先端部210と熱蛍光体板状体201を3枚収納可能となされた容器本体220とからなる。本実施形態において先端部210は本体220の先端部に接着されている。また、本体220は、その側面部分に蝶番部(図示せず)により開閉自在となされた蓋部221が形成されており、熱蛍光体板状体201を容易に収納及び取り出しできるようになされている。蓋部221は特に図示しないが嵌合して一応の防水性は発揮するようになされている。
本体220、先端部210の形成材料は、通常容器に用いられる材料であれば特に制限なく用いることができ、軽さと取扱いの容易さとからプラスチックなどを好ましく用いることができる。
そして、使用時には蓋部221を開放して熱蛍光体板状体201を1〜3枚収納した後、蓋部を閉じて密閉する。ついで、所望の設置場所、例えば田や畑の土中や樹木中に設置し数週間放置した後、上述の画像読取装置により測定画像を得ることで測定を行うことができる。これにより、田畑からサンプルを採取することなく、各地点の地表から深部方向への線量分布を簡易的に測定することができる。
図8〜11を参照して本発明の熱蛍光体板状体の他の使用方法について説明する。
図8〜11に示す形態の使用方法では、熱蛍光体板状体301を収容して樹木や土の中などに埋め込んで設置し、当該環境下の放射線量モニタリングを可能にする収納容器300を用いる。
収納容器300は、円柱状の本体310と、本体310の先端に螺合される長手方向断面がコの字状の先端部320とを具備する。
本体310の先端部側の端部は、先端部320の螺合部321に対応するねじ山部311が形成されている。
本体310の基端部312は、断面くの字状となっており、後述する樹脂フィルム340で本体全体を包んで熱収縮させた際に基端部312が完全に熱収縮された樹脂フィルムで封止されるように形成されている。
本体310はその側面を本体310の長手方向に沿って長方形状に切り欠いて形成された切り欠き部315が設けられている。
切り欠き部315は、熱蛍光体板状体301及び封止具330が嵌合され装着されるように、長方体形状の凹部とされており、その上方両端に嵌合された熱蛍光体板状体301及び封止具330を離脱しないように押さえるための突起部316が設けられている。
本体310及び先端部320の形成材料は、通常の材料を特に制限なく用いることができ、軽さと取扱いの容易さ及び耐候性から硬質プラスチックなどを好ましく用いることができる。
本体310は、樹脂フィルム340で被覆されている。樹脂フィルム340としては、通常の防水性を有する樹脂などからなる熱収縮チューブを用いることができ、具体的には、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、難燃性ポリオレフィン樹脂、テフロン(登録商標)などの熱収縮樹脂からなる熱収縮チューブを用いるのが好ましい。樹脂フィルム340の色は、遮光性の観点から、黒色であるのが好ましい。
また、樹脂フィルム340の厚さは、水中における137Csβ線の最大飛程1.62mm以下とすることによりγ線だけでなくβ線も検出でき、且つ検出効率が高く分布も明瞭になるため好ましく、薄ければ薄いほどこれらの特性が向上し好ましいが、防水性および遮光性の観点から100μm〜200μmであるのがさらに好ましい。
樹脂フィルム340として黒色で筒状の熱収縮樹脂を用いる場合、筒状の熱収縮樹脂に本体310を入れ、樹脂に熱を加え収縮させることで本体310をその全体を密封した状態で被覆する。これにより、容易かつ良好に本体310を被覆することができ、防水性及び遮光性が高くなる。
収納容器300の使用は、本体310の切り欠き部315に熱蛍光体板状体301を嵌合し装着し、さらに封止具330を熱蛍光体板状体301と先端部320との間の切り欠き部315に嵌合し装着した後先端部320を本体に取り付け、その後樹脂フィルム340で本体310を被覆して、少なくとも熱蛍光体板状体301の存在する部位全体を樹脂フィルムで覆って封止する。
その後、所望の設置場所、例えば樹木や土の中などに埋め込んで設置し、1〜3カ月間程度放置した後、上述の画像読取装置により測定画像を得ることで測定を行うことができる。
この構成により、サンプルを採取することなく、また、従来は測定が不可能であった場所についても放射線線量の測定を行うことができ、放射性物質の流動経路の特定や汚染状況のモニタリングが可能である。
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
〔実施例1〕
高純度CaCOにHSOと希土類として酸化ツリウム0.1mol%(混合物全体のモル分率)とを混合した後250℃に加熱してこれらの溶質すべてを溶解させ、さらに加熱した状態を保持することにより完全に蒸発乾固させた。その後、さらに700℃で2時間の加熱処理を行い、熱蛍光素子を得た。得られた素子は粉砕し200μm以下とした。
次に、得られた熱蛍光素子とガラス粉(旭硝子社製、商品名「ASF1898」)とを重量比100:100で混合し、そこに水を均塗布剤(混和剤)として加えて粘土状とした。得られた粘土状の混合物を基板のセラミックスに均一に塗布し、図1に示す画像提供物のように板状とし、さらに700℃で1時間焼成後530℃に温度を下げて2時間焼成を行い、本発明の熱蛍光体板状体が固着された本発明の画像提供物を得た。
得られた板状体は、大きさ5cm×5cm、厚さ0.25cmであった。
他の希土類についても同様に形成できることを確認した(蛍光させる際の色は異なるが同様に機能した)。
得られた熱蛍光体板状体が画像提供物として機能するか否か電卓を用いて確認した。
得られた熱蛍光体板状体を有する画像提供物上に、被測定物としての電卓を載置し、その状態で図12に示すようにX線を照射した。そして、被測定物としての電卓を載置した状態で図1に示す装置に設置し、CCDカメラで写真を撮影した後、被測定物を除去し、発熱シートを270℃に加熱して蛍光体を発光させてCCDカメラで撮影を行った。その結果得られた写真を図13に示す。
図13では、X線照射によりX線を透過する量が場所によって異なり、その異なる放射線の量に応じた熱蛍光が撮影されている。熱蛍光体板状体においてX線の吸収量及び位置を明瞭に把握することができるため、放射線イメージングデバイスとして有用であることがわかる。
〔実施例2〕
以下のようにして棒状の熱蛍光体板状体を得た。
大きさを1.5cm×15cm、厚さ0.25cmとした以外は実施例1と同様にして棒状の熱蛍光体板状体を得た。137Cs370kBqの密封小線源を直接密着させて配置し、15分照射した後、270℃に加熱して蛍光体を発光させてCCDカメラで撮影を行った。その結果、137Csは、主に514keVのβ線662keVのγ線を放出するため、137Csからのβ線とγ線の合わさった分布が明瞭に形成された。収容容器200に熱蛍光体板状体を挿入し、β線を遮断して測定を行ったときよりも感度が高かったことから、β線、γ線どちらにも感度を有することが確かめられた。このことから環境放射線の汚染分布測定にも利用できることがわかる。
〔実施例3〕
Li100重量部に0.2重量部のCuOを少量のエタノールを用いて混合した後、乾燥させ、得られた混合体を915℃で1時間加熱して熱蛍光体を得た。得られた熱蛍光体を粉砕し、200μm以下とした後、エタノールに分散させて塗工液を調製し、イソライト工業株式会社 商品名「イソプラトン軽量セッターE3セラミックス」に均一に塗布し、その後再び、915℃で30分加熱して8cm×8cm×厚さ0.25cmの熱蛍光体板状体を得た。
次に、得られた熱蛍光体板状体にマウスを載せ、X線を照射した後、270℃に加熱して蛍光体を発光させてCCDカメラで撮影を行った。その結果得られた写真を図14に示す。図14に示すように、X線照射によりX線を透過する量が場所によって異なり、その異なる放射線の量に応じた熱蛍光が得られていることがわかる。このように熱蛍光体板状体においてX線の吸収量及び位置を明瞭に把握することができるため、放射線イメージングデバイスとして有用であることがわかる。
また、この熱蛍光体板状体は人体軟組織等価性が高いので、人体軟組織等価ファントムとしても利用できる。そのため、複数枚を重ねて使用して、照射した後、これまでと同様にCCDカメラで撮影を行い、それぞれの高さごとの画像を組み合わせると、3次元の線量分布を取得できる。これは、高精度放射線治療の治療計画を検証するための有用な手段として利用できる。

Claims (7)

  1. 熱蛍光素子と硝子とを、熱蛍光素子100重量部に対する硝子の配合割合が0〜120重量部で配合してなる混合物を所定温度で焼成してなる熱蛍光体板状体。
  2. 上記熱蛍光素子が、硫酸カルシウムと希土類とを構成成分とする素子であることを特徴とする請求項1記載の熱蛍光体板状体。
  3. 上記硝子がホウ酸含有硝子の紛体であり、そのホウ酸含量が硝子全体に対して5重量%以上であり、上記硝子の配合割合が80〜120重量部であることを特徴とする請求項2記載の熱蛍光体板状体。
  4. 上記熱蛍光素子がホウ酸リチウム系化合物からなる熱蛍光体であり、上記硝子の配合割合が0〜120重量部であることを特徴とする請求項1記載の熱蛍光体板状体。
  5. 上記混合物はさらに混和剤を含有し、該混和剤が、水、又はエタノールであることを特徴とする請求項1記載の熱蛍光体板状体。
  6. 請求項1記載の熱蛍光体板状体が基板上に固着されてなる画像提供物。
  7. 発熱体を有し、画像提供物を設置するサンプルシート設置部と、
    該サンプルシート設置部から所定距離を空けて設置された画像検出部と、
    該サンプルシート設置部及び該画像検出部の間に設けられ、上記発熱体の熱が画像検出部に伝達されないように熱を遮断する断熱部とからなり、
    画像提供物が請求項1記載の板状体である画像読取装置。
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