JP2014025892A - 破断判定装置、破断判定方法、及び破断判定プログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】破断判定装置4は、相互に重ねられた複数の板材を接合する接合部に作用する応力テンソルを特定する応力テンソル特定部6と、応力テンソル特定部6により特定された応力テンソルと、接合部の破断応力とに基づき、接合部の破断リスクを算出する破断リスク算出部8と、破断リスク算出部8によって算出された破断リスクに基づき、接合部の破断を判定する破断判定部10と、を有する。
【選択図】図1
Description
例えば、自動車工学の分野においては、車両衝突時における車体の変形や構成部材の破壊をシミュレーションすることにより、車両の衝突安全性能の向上を図ることが行われている。特に近年では、車体の軽量化への要求から、車体を構成する金属板の薄板化が進んでおり、金属板同士を接合するスポット溶接部周辺への応力集中が一層発生しやすくなっていることから、さらなる衝突安全性能の向上のため、スポット溶接部の破断をより高精度に予測することが求められている。
しかしながら、上述した特許文献1の方法では、ナゲットをモデル化したビーム要素と金属板をモデル化したシェル要素とを1点で結合しているため、シェル要素のメッシュサイズが実際のナゲット径よりも小さい場合には、ビーム要素との結合点の周辺において、実際の現象とは異なる局所的な歪みが発生し、解析精度が低下する可能性がある。
また、ビーム要素によりナゲットをモデル化する場合、ビーム要素の破断は、このビーム要素に作用する引張荷重とせん断荷重とモーメントによって評価されるに過ぎないため、引張とせん断の複合モードによる破断を高精度に予測することが困難な場合がある。
このように構成された本発明においては、ビーム要素により接合部をモデル化する場合と比較して、局所的な歪み発生を防止することができ、解析精度の低下を防止することができる。
このように構成された本発明においては、計算負荷の増大を抑制しつつ、相互に重ねられた複数の金属板を接合するスポット溶接部の破断を高精度に判定することができる。
まず、図1により、本発明の実施形態による破断判定装置の構成を説明する。図1は、本発明の実施形態による破断判定装置を備える衝突シミュレーション装置の電気的構成を示すブロック図である。
車体解析部2は、車体を構成する各種部材の形状や物性値、スポット溶接部の位置、数、ナゲット径等を表現する車体モデルと、解析の境界条件(衝突時の初速度や衝突させる物体の形状等)とを取得し、これらの車体モデル及び境界条件に基づき、有限要素法により、車体モデルを構成する各要素に作用する荷重や変位等を計算する。この計算過程において、車体解析部2は、車体を構成する金属板とスポット溶接部との節点の変形量を計算し、破断判定装置4に出力する。
特に、応力テンソル特定部6は、車体解析部2から入力された金属板とスポット溶接部との節点の変形量に基づき、スポット溶接部に作用する応力テンソルを特定する。また、破断判定部10は、スポット溶接部の破断の判定結果を車体解析部2に出力する。
これらの各構成要素は、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのROMやRAMの如き内部メモリを備えるコンピュータにより構成される。
この図2に示すようなモデルが、各スポット溶接部毎に車体モデルに組み込まれ、衝突シミュレーションが実行される。
なお、車体解析部2が実行するステップS3の処理と、破断判定装置4が実行するステップS4乃至S6の処理とは、並行して実行される。
一方、ステップS7において、所定の終了条件を満たすと判定した場合、車体解析部2は衝突シミュレーション処理を終了する。
図4は、スポット溶接部の破断モードを示す斜視図である。スポット溶接部の破断モードには、図4(a)に示す引張せん断(TSS)、図4(b)に示す十字引張(CTS)、及び図4(c)に示すピール(LTS)の3モードがある。さらに、スポット溶接の破断形態には、母材破断(金属板が破断)、及び界面破断(ナゲットが破断)の2種類の形態が存在する。そこで、破断リスク算出部8は、3つの破断モードと2つの破断形態を組み合わせた6つの条件について、それぞれの破断リスクを算出する。
従って、スポット溶接部に作用する応力の状態を、これらの応力テンソルの関数f(σx、σy、τzx、τzy、σz、τxz、τyz)として表現し、予め実験的に導出された破断応力と比較することにより、スポット溶接部の破断リスクを算出することができると考えられる。
ここで、σTSSは引張せん断による母材破断時の破断応力であり、σCTSは十字引張による母材破断時の破断応力であり、σLTSはピールによる母材破断時の破断応力である。これらの破断応力は、破断試験の結果に基づいて導出される。また、添え字を付した応力テンソルの各成分は、それぞれの添え字に対応する破断モードによる母材破断時の境界条件に基づき算出された、応力テンソル各成分の算出値である。
しかしながら、式(1)において未知数である係数がA、B1、B2、及びCの4つ存在するのに対し、未知数を決定するための方程式は式(2)乃至(4)の3式しかないため、このままでは係数A、B1、B2、及びCを決定することができない。そこで、破断リスクの算出精度への影響が小さい項(τxz+τyz)を式(1)から省略し、次式のように変更する。
従って、式(2)乃至(4)を以下のように変更できる。
これらの式(6)乃至(8)から、式(5)の係数A、B、Cを決定することができる。
同様に、十字引張による母材破断リスクBFRCTS、及びピールによる母材破断リスクBFRLTSは、以下のように算出できる。
上述した実施形態においては、破断判定装置4が、相互に重ねられた複数の金属板を接合する接合部であるスポット溶接部の破断を判定する場合について説明したが、これとは異なる接合部の破断を判定するようにしてもよい。例えば、相互に重ねられた複数の金属板を接合する線溶接部や、相互に重ねられた複数の樹脂板やガラス板を接合するボルト、あるいは接着剤等の破断を判定するようにしてもよい。
2 車体解析部
4 破断判定装置
6 応力テンソル特定部
8 破断リスク算出部
10 破断判定部
Claims (6)
- 相互に重ねられた複数の板材を接合する接合部の破断を判定する破断判定装置であって、
上記接合部に作用する応力テンソルを特定する応力テンソル特定手段と、
上記応力テンソル特定手段により特定された上記応力テンソルと、上記接合部の破断応力とに基づき、上記接合部の破断リスクを算出する破断リスク算出手段と、
上記破断リスク算出手段によって算出された破断リスクに基づき、上記接合部の破断を判定する破断判定手段と、を有し、
上記破断リスク算出手段は、上記板材の法線方向を直交座標系のz軸とする上記応力テンソルを(σx、σy、σz、τzy、τzx)、上記破断応力を(σT)、重み付け係数を(A、B、C)とした場合、以下の式により上記破断リスク(FR)を算出することを特徴とする破断判定装置。
- 上記応力テンソル特定手段は、上記接合部の大きさにほぼ等しい単一ソリッド要素としてモデル化された上記接合部に作用する応力テンソルを特定する、請求項1に記載の破断判定装置。
- 相互に重ねられた複数の金属板を接合するスポット溶接部の破断を判定する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の破断判定装置。
- 相互に重ねられた複数の板材を接合する接合部の破断を判定する破断判定方法であって、
上記接合部に作用する応力テンソルを特定するステップと、
上記特定された上記応力テンソルと、上記接合部の破断応力とに基づき、上記接合部の破断リスクを算出するステップと、
上記算出された破断リスクに基づき、上記接合部の破断を判定するステップと、を有し、
上記破断リスクを算出するステップにおいて、上記板材の法線方向を直交座標系のz軸とする上記応力テンソルを(σx、σy、σz、τzy、τzx)、上記破断応力を(σT)、重み付け係数を(A、B、C)とした場合、以下の式により上記破断リスク(FR)を算出することを特徴とする破断判定方法。
- 相互に重ねられた複数の板材を接合する接合部の破断をコンピュータに判定させるための破断判定プログラムであって、コンピュータに、
上記接合部に作用する応力テンソルを特定するステップと、
上記特定された上記応力テンソルと、上記接合部の破断応力とに基づき、上記接合部の破断リスクを算出するステップと、
上記算出された破断リスクに基づき、上記接合部の破断を判定するステップと、を実行させ、
上記破断リスクを算出するステップにおいて、上記板材の法線方向を直交座標系のz軸とする上記応力テンソルを(σx、σy、σz、τzy、τzx)、上記破断応力を(σT)、重み付け係数を(A、B、C)とした場合、以下の式により上記破断リスク(FR)を算出させることを特徴とする破断判定プログラム。
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