JP2014014487A - 医科歯科用材料の製造方法および保存キット - Google Patents

医科歯科用材料の製造方法および保存キット Download PDF

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Abstract

【課題】骨伝導性に優れる医科歯科用材料を簡便な手法で提供すること。
【解決手段】本発明により、骨伝導性に優れる医科歯科用材料を製造する方法が提供される。この製造方法は、医科歯科用材料を用意する工程と、前記医科歯科用材料の表面の水接触角を10°未満に調整することが可能なイオン濃度を有する水接触角調整液を用意する工程と、前記医科歯科用材料の表面を前記水接触角調整液に接触させて、該接触した状態で保持する工程と、を包含する。
【選択図】図12

Description

本発明は、骨伝導性表面を有する医科歯科用材料(医科用材料および/または歯科用材料)の製造方法および該医科歯科用材料の保存キットに関する。より詳しくは、骨折等の治療目的でインプラントとして用いられる医科用材料の製造方法、また、デンタルインプラントその他の歯科用材料の製造方法に関する。また、これら医科用材料、歯科用材料を保存するために用いられる保存キットに関する。
世界的規模で急速な高齢化が進むなか、医科的(典型的には整形外科的)、歯科的な骨に関する疾病が年々増加している。かかる疾病を治療するため、金属やセラミックスなど種々の医科歯科用材料(典型的にはインプラント材料)が提案されており、使用に供されている。このような医科歯科用材料には、骨固定の観点、固定部位のゆるみ等を防止する観点から、その表面に骨芽細胞を積極的に生成する性質に優れること、すなわち骨伝導性に優れることが求められている。
ところで、上記材料表面の親水性を向上させる手法として、水熱処理や紫外線照射、大気圧プラズマ等の表面処理が知られている。しかし、かかる処理によって表面の親水性を向上させても、例えば空気中の無極性成分が吸着するなどして、該表面の親水性は経時的に低下してしまう。そのようなことから、医科歯科用材料に対して表面処理を行った後、その高い親水性を維持する試みが提案されている。例えば、非特許文献1は、サンドブラスト処理を行い、さらに酸エッチング処理を施した直後に、窒素雰囲気下でチタンをpH4〜6の生理食塩水に浸漬することを提案しており、これによって、該チタンの表面エネルギーを高いレベル(すなわち高親水性)に維持するとしている。非特許文献2は、サンドブラスト処理を行ったチタンの表面を210℃の硫酸クロム溶液で処理することにより、該表面の動的接触角を0°に保持することを提案している。非特許文献3にも、非特許文献2と類似の処理を行うことによりチタンやチタン酸化物表面の動的接触角を10°未満とする技術が開示されている。非特許文献4では、酸エッチング処理を行ったチタンの表面を4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)で被覆することにより、一定期間保存した後もチタン表面は高い親水性を保持し、タンパク質吸着、骨芽細胞の付着を実現し得ることが報告されている。また、非特許文献5には、生体材料に吸着したタンパク質に細胞が付着すること、タンパク質の吸着は、生体材料表面の化学組成、電荷、生体材料表面の疎水性/親水性のバランス等の特性の影響を受けることが記載されている。
A. Molenberg et al. Mat.-wiss. u. Werkstofftech. 40: No.1-2, 2009 H. P. Jennissen Mat.-wiss. u. Werkstofftech. 41: No.12, 2010 D. Lattner et al. Mat.-wiss. u. Werkstofftech. 40: No.1-2, 2009 T. Suzuki et al. Biomaterials 31: 4818-4828, 2010 R. Nakaoka et al. JOURNAL OF BIOMEDICAL MATERIALS RESEARCH A VOL94A, ISSUE 2, AUG 2010
しかしながら、上記従来の報告は、材料表面の如何なる特性が骨伝導性に対して高い相関を示すかについての検討がなされておらず、材料の種類等を変更した場合の適用性の面において、さらなる検討を要するものと思料される。また、上記従来の手法は、窒素雰囲気下での処理を要する、被覆層を形成する工程を有する等、実用面での課題を残している。骨伝導性と高い相関を示す表面特性を特定することができれば、より簡便な手法で、骨伝導性に優れた医科歯科用材料を提供することができ、有益である。
本発明は上記従来の問題に鑑みて創出されたものであり、骨伝導性に優れる医科歯科用材料を簡便な手法で提供することを目的とする。また、そのような医科歯科用材料を所望のタイミングで提供することが可能な保存キットを提供することを他の目的とする。
上記目的を実現するべく、本発明により、骨伝導性に優れる医科歯科用材料を製造する方法が提供される。この製造方法は、医科歯科用材料を用意する工程と、前記医科歯科用材料の表面の水接触角を10°未満に調整することが可能なイオン濃度を有する水接触角調整液を用意する工程と、前記医科歯科用材料の表面を前記水接触角調整液に接触させて、該接触した状態で保持する工程と、を包含する。
本発明者らは鋭意検討を行った結果、医科歯科用材料表面の水接触角が該表面への骨伝導性と高い相関を示すことを知得した。また、該表面の水接触角が10°未満の材料は、他の特性(例えば、表面粗さ、表面の化学組成等)にかかわらず、骨伝導性に優れることを発見した。この発見に基づき、さらに検討を進めた結果、医科歯科用材料の表面を所定の水接触角調整液に接触した状態で保持することにより、該表面の水接触角を10°未満に保持できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の製造方法によると、簡便な手法で医科歯科用材料表面の水接触角が10°未満に調整されるため、骨伝導性に優れる医科歯科用材料を容易に得ることができる。ここで、本明細書において「骨伝導性」とは、医科歯科用材料を生体内に埋植したときに、該材料の表面に骨(典型的には硬組織)が生成され得る性質をいう。また、水接触角調整液の「調整」は、該液に接触する前に水接触角が10°以上であったものを10°未満に調整することのみならず、水接触角が10°未満のものを水接触角が10°未満の状態に保持すること、を包含し得る。したがって、特に限定されないが、本発明の製造方法によると、医科歯科用材料表面の水接触角を長期に亘って10°未満に保持することが可能となる。かかる方法(製造方法、保存方法)によると、骨伝導性に優れる医科歯科用材料を所望のタイミングで提供することができ、有益である。
本発明に係る水接触角調整液は、非特許文献1で開示されている水溶液とは異なるものである。この水溶液は、イオン濃度が低いため、水接触角を10°未満に調整することは困難である。また、上記水接触角調整液に接触した医科歯科用材料の表面は、かかる接触によってコーティング(層形成)がなされるわけでもない。したがって、非特許文献2〜4に開示された技術とも本質的に異なる。本発明は、上述のコーティングを排除するものではないが、かかるコーティング(典型的には、高い骨伝導性を有する物質のコーティング)をしなくても、骨伝導性に優れる表面を得ることができる点で有利である。さらに、非特許文献5では、比較的大きい水接触角に基づいて疎水性/親水性のバランスが言及されており、上記のバランスは、骨芽細胞の付着(あるいは増殖)に関しては生体材料表面の化学組成よりも重要性は低いと結論付けられている。これらの開示は、医科歯科用材料表面の水接触角と該表面への骨伝導性との高い相関がこれまで知られていなかったことを支持しているといえる。
ここで開示される製造方法の好適な一態様では、前記水接触角調整液は、生理食塩水の2倍以上の塩濃度を有する。上記水接触角調整液による水接触角低減作用は、水接触角調整液が所定量以上のイオン(例えばNa、Cl)を含有することによって実現される。換言すれば、上記水接触角調整液のイオン濃度を所定以上とすることで、医科歯科用材料表面の水接触角を10°未満に調整することができる。水接触角調整液の塩濃度を生理食塩水の2倍以上とすることによって、医科歯科用材料の表面の水接触角を10°未満に調整することが可能なイオン濃度を好適に実現することができる。なお、本明細書において「生理食塩水」とは、NaClを0.9質量%程度含有する水溶液(溶媒として蒸留水を使用)と定義される。
ここで開示される製造方法の好適な一態様では、前記医科歯科用材料は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、それらを含む合金、またはそれらの酸化物、を主体として構成されている。これらは医科歯科用材料として好適に用いられ得る材料であり、本発明による表面水接触角調整は、これらの材料のいずれに対しても好ましく適用できる。
ここで開示される製造方法の好適な一態様では、前記保持工程における保持時間は、少なくとも1時間である。保持時間を1時間以上とすることで、医科歯科用材料の表面の水接触角が10°以上であったとしても、10°未満に調整することが可能となる。なお、保持時間の上限は特に限定されず、使用するまでの期間(例えば、数時間、数日間、数ヵ月間あるいは数年間)、医科歯科用材料を骨伝導性に優れた状態のまま保存することができる。
ここで開示される製造方法の好適な一態様では、前記医科歯科用材料の表面粗さRaは0.1μm未満である。医科歯科用材料(特にTi、Zr、Nb、Ta等の金属含有材料、典型的にはTi含有材料)は、その表面が平滑であるほど骨伝導性に優れる。そして、上述のイオン濃度を有する水接触角調整液を該平滑な表面に接触させることにより、骨伝導性をさらに向上させることができる。したがって、本発明の製造方法は、表面粗さRaが0.1μm未満の医科歯科用材料の製造方法として特に好適であるといえる。
ここで開示される製造方法の好適な一態様では、前記水接触角調整液のpHは4〜8である。pHを4以上とすることにより、金属腐食を抑制しつつ、水接触角を所定の範囲に調整することを好適に実現できる。また、pHを8以下とすることにより、医科歯科用材料表面の水接触角が小さくなる傾向がある。
また、本発明によると、骨伝導性表面を有する医科歯科用材料のための保存キットが提供される。この保存キットは、前記医科歯科用材料の表面の水接触角を10°未満に調整することが可能なイオン濃度を有する水接触角調整液の原料と、前記水接触角調整液を収容する容器と、を備える。かかる構成によると、上記原料を用いて作製した水接触角調整液と医科歯科用材料とを容器に収容することにより、水接触角調整液中にて医科歯科用材料表面の水接触角は10°未満に保持されるので、骨伝導性に優れる医科歯科用材料を所望のタイミングで提供することができる。なお、本明細書において「骨伝導性表面を有する医科歯科用材料」とは、医科歯科用材料を生体内に埋植したときに、該材料の表面に骨(典型的には硬組織)が生成され得る性質を有する医科歯科用材料のことをいう。
ここで開示される保存キットの好適な一態様では、前記水接触角調整液は、生理食塩水の2倍以上の塩濃度を有することが好ましい。また、前記水接触角調整液のpHは4〜8であることが好ましい。
水熱処理装置を説明する模式断面図である。 水中熱基板装置を説明する模式断面図である。 カソード電解法(陰極電解法)を説明する模式断面図である。 一実施形態に係る保存キットを示す概略斜視図である。 試験1(大気中保存試験)の結果を示すグラフである。 試験2(蒸留水中保存試験)の結果を示すグラフである。 試験3(保存形態比較試験)の結果を示すグラフである。 試験4(水溶液検討試験)の結果を示すグラフである。 試験5(材料検討試験)の結果を示すグラフである。 試験6(動物埋植試験)で使用したRB−1評価用切片の光学顕微鏡写真である。 図10の拡大写真であって、RB−1評価用切片の一辺を示す光学顕微鏡写真である。 医科歯科用材料表面の水接触角(°)と骨−インプラント接触率RB−1(%)との関係を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書および図面に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここに開示される製造方法は、医科歯科用材料を用意する工程を含む。医科歯科用材料は特に限定されず、従来から医科用材料、歯科用材料として用いられている材料(例えば金属や該金属の合金、該金属の酸化物)を適宜用いることができる。例えば、Ti、Zr、Nb、Ta等の金属材料や、該金属材料を含む合金、該金属材料の酸化物、を主体として構成されているものが好適例として挙げられる。ここで「主体として構成されている」とは、医科歯科用材料に占める割合が50質量%以上であることを意味するものとする。Ti、Zr、NbもしくはTa、それらを含む合金、またはそれらの酸化物の医科歯科用材料に占める割合は、80質量%以上(例えば95質量%以上、典型的には99質量%以上)であることが好ましい。また、医科歯科用材料は、実質的にTi、Zr、NbもしくはTa、それらを含む合金、またはそれらの酸化物のみから構成されているものであってもよい。
上記金属材料を含む合金としては、Ti、Zr、NbおよびTaの1種または2種以上を含む合金が挙げられる。好適例としては、Ti−Nb−Ta−Zr合金等のTi含有合金が挙げられる。また合金は、クロム、スズ、アルミニウム、バナジウム等を含むものであってもよい。上記金属材料の酸化物としては、例えば、TiO、Na(HTiO等のチタン酸化物、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル等が挙げられる。
また、上記医科歯科用材料(典型的には金属材料)の表面は、骨伝導性を向上させるため、酸化処理が施されていることが好ましい。上記酸化処理の手法としては、陽極酸化、気相中高温酸化、酸化性水溶液浸漬等が挙げられる。なかでも、陽極酸化が好ましい。酸化処理(好ましくは陽極酸化)によって形成される金属酸化物膜の厚さは特に限定されないが、典型的には0.05〜0.3μm程度の厚さを有するものであり得る。上記金属酸化物膜の厚さは、医科歯科用材料を切断し、該切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより測定することができる。
上記陽極酸化の方法は従来公知の手法を適宜採用すればよく、特に限定されない。医科歯科用材料に好適な陽極酸化方法としては、例えば、医科歯科用材料を0.01〜1mol程度のHSO水溶液、NaOH水溶液、HNO水溶液またはNaNO水溶液の液中(液温0〜60℃程度)で0.01〜0.5V/sの速度で電圧を上昇させながら所定の電圧(凡そ10V〜200V)まで印加する方法が挙げられる。上記水溶液として、0.1〜9mol程度のカルボキシル基含有有機酸(例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸)を含む水溶液を用いてもよい。なお、Zr、Nbは陽極酸化を行っても、水接触角が低下しにくい。しかし、後述する水接触角調整液は、Zr、Nb、それらの合金の骨伝導性を比較的容易に向上させることができるため、それらの材料を主体として構成されている医科歯科用材料に対して好適な方法であるいえる。
また、医科歯科用材料(特にTi、Zr、Nb、Ta等の金属含有材料、典型的にはTi含有材料)は、その表面が平滑であるほど骨伝導性が優れる。そして、平滑な表面を有する医科歯科用材料に、該表面の水接触角を10°未満に調整することが可能なイオン濃度を有する水接触角調整液を接触、保持させることにより、該表面の骨伝導性をさらに向上させることができる。そのような観点から、上記医科歯科用材料の表面粗さRaは1μm未満であることが好ましく、0.5μm未満(例えば0.1μm以下、典型的には0.1μm未満)であることがさらに好ましい。なお、本明細書における「表面粗さRa」は、JIS B0601:2001(ISO4287:1997)に準じて測定される算術平均粗さRaであり、測定範囲は150μm×112μmとする。
上記医科歯科用材料、すなわち水接触角調整液に接触する前の医科歯科用材料表面の水接触角は特に限定されないが、最終的に水接触角を10°未満にすることから、30°以下であることが好ましく、20°以下であることがより好ましく、15°以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書における「水接触角」とは、温度20℃の条件下で、対象とする材料表面にマイクロシリンジで水滴(2μLの純水)を滴下して30秒後に接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定した水接触角とする。
また、上記材料表面の水接触角を10°未満の状態に保存する目的で水接触角調整液を使用する場合、水接触角調整液に接触する前の材料表面の水接触角は10°未満となる。そのような水接触角の低い表面を有する医科歯科用材料を用いる場合、水接触角調整液に接触させる前の上記医科歯科用材料の表面に対し、予め水接触角低減処理を施しておくことが好ましい。
この事前の水接触角低減処理は、医科歯科用材料の水接触角を30°以下(好ましくは20°以下、より好ましくは10°未満)に低減する処理であり得る。上記のような水接触角とする処理方法は特に限定されず、従来公知の水接触角低減処理を適宜採用することができる。例えば、水熱処理や紫外線照射、大気圧ブラズマ照射等を採用することができる。金属、合金に対しては、水中熱基板法やカソード電解(陰極電解)を採用してもよい。これらは単独でまたは2以上の手段を組み合わせて用いることができる。
水熱処理は、例えば、図1に示すような水熱処理装置100を用いて実行することができる。水熱装置100は、ガス注入口110、ガス排出口111、圧力計112、熱電対113、ヒーター114を備えたオートクレーブ101であり、このオートクレーブ101内に、サンプルSおよび蒸留水Wを収容した容器Cを載置し、サンプルSを加圧条件下において高温水(例えば150℃以上、典型的には凡そ180℃)に所定時間(例えば1〜10時間、典型的には3時間程度)曝すというものである。これによって、医科歯科用材料表面の水接触角を低下させることができる。
水中熱基板法は、例えば、図2に示すような水中熱基板装置200を用いて実行することができる。水中熱基板装置200は、パイレックスビーカー201と、該パイレックスビーカー201内に鉛直に配置された2本の銅製ロッド210を備える。2本の銅製ロッド210は所定の間隔で平行するように配置されており、ともに外部の電力源220と電気的に接続している。銅製ロッド210はエポキシ樹脂でコートされたものであり得る。また、2本の銅製ロッド210を取り囲むように冷却管230が配置されており、冷却管230内の冷却剤231が循環することによって、通電加熱時の溶液240の気化を防ぐように構成されている。電力源220には変圧器221、電流計222が備え付けられている。また、サンプルS近傍の温度を測定するために熱電対225がサポート部材226に支持されることによってパイレックスビーカー201内に配置されている。熱電対225は外部に配置された検温器227に接続されている。水中熱基板法は、次のようにして実行される。2本の銅製ロッド210を連結するようにサンプルSをセットし、Ca2+とPO 3−を含む溶液240をパイレックスビーカー201内に収容して、サンプルSを通電加熱する。すると、ヒドロキシアパタイト(HAp:Ca10(PO(OH))溶解度の温度逆進性により、サンプルSの表面にHApが析出する。これによって、医科歯科用材料の表面の水接触角を低下させることができる。この方法においては、溶液のpHは8前後に調整されていることが好ましい。なお、サンプルSは、図示されるようなロッド状(典型的には直径2mm×長さ5mm程度のロッド)であってもよく、図2の下方に示されるような板状(厚さが約0.2mmの板)であってもよい。
カソード電解(陰極電解)法は、例えば、図3に示すような装置300を用いて実行することができる。装置300は、Ca2+とPO 3−を含む溶液311を収容した容器301と、KCl溶液312を収容した容器302とを備えている。容器301には、作用極(WE)と対電極(CE)とが配置され、作用極(WE)には、サンプルSがセットされている。また、容器302には参照極(RE)が配置されており、溶液311と溶液312とは塩橋(SB)によって導通している。カソード電解法は、装置300を用いて、上述の水中熱基板法と同様の原理によりサンプルSの表面にHApを析出させるという手法である。なお、カソード電解法と、上述の水中熱基板法は、オートクレーブ等の特殊な装置を使用しない点で、上記水熱処理よりも有利であるといえる。
ここに開示される製造方法は、上述の医科歯科用材料の表面の水接触角を10°未満に調整することが可能なイオン濃度を有する水接触角調整液を用意する工程を含む。この水接触角調整液は、上記のイオン濃度を有するものであればよく、溶質、溶媒の種類は特に限定されず、溶液に限定されるものでもない。骨伝導性向上の観点から、水接触角調整液は、上記医科歯科用材料の表面の水接触角を10°未満(例えば、8°未満、典型的には5°未満)に調整することが可能なイオン濃度を有することが好ましい。
また、ここに開示される水接触角調整液は、生理食塩水の2倍以上の塩濃度を有することが好ましい。これによって、医科歯科用材料の表面の水接触角を10°未満に調整することが可能なイオン濃度を好適に実現することができる。上記塩濃度は、生理食塩水の3倍以上が好ましく、4倍以上がより好ましく、5倍以上が特に好ましい。上記塩濃度の上限は特に限定されないが、生理食塩水の塩濃度の10倍未満(例えば8倍未満)程度とすることが適当である。
上記水接触角調整液の典型例としては、Naおよび/またはClを凡そ300mmol/L以上(例えば300〜1500mmol/L、典型的には500〜1000mmol/L)含有する水溶液、リン酸を凡そ20mmol/L以上(典型的には40〜100mmol/L)含有する水溶液、Kを凡そ10mmol/L以上(典型的には10〜30mmol/L)含有する水溶液等が挙げられる。上記所定量のNa、Cl、PO、Kをすべて含有する水溶液であってもよい。そのような水接触角調整液の典型例として、NaCl、KCl、NaHPOおよびKHPOを含有する水溶液が挙げられる。
また、ここに開示される水接触角調整液のpHは特に限定されないが、水接触角を低下させる観点からpH8以下(例えば8未満、典型的には7.5以下)に調整されていることが好ましい。また、医科歯科用材料の腐食を抑制する観点から、水接触角調整液のpHは3以上(例えば4以上、典型的には5以上)とすることが好ましい。医科歯科用材料として金属や合金を用いる場合、pHは6〜8の範囲内であることが特に好ましい。
ここに開示される製造方法は、医科歯科用材料の表面を水接触角調整液に接触させて、該接触した状態で保持する工程を含む。医科歯科用材料の表面と水接触角調整液とを接触させる手法は特に限定されない。また、その接触した状態を保持する手法も特に限定されない。例えば、容器(典型的には公知の滅菌容器)に収容した水接触角調整液に、医科歯科用材料を浸漬させることにより、医科歯科用材料の表面と水接触角調整液とを接触させて、かつその状態に保持することができる。
上記保持工程における保持時間は特に限定されるものではないが、保持時間が短すぎると水接触角を10°未満に調整しにくい傾向がある。そこで、上記保持時間は少なくとも0.5時間とすることが好ましい。上記保持時間は1時間以上とすることがより好ましく、3時間以上とすることがさらに好ましく、6時間以上(例えば10時間以上、典型的には24時間以上)とすることが特に好ましい。また、上記保持時間の上限は特に限定されない。上記水接触角調整液は、使用するまでの期間(例えば、数日間、数ヵ月間あるいは数年間)、医科歯科用材料を骨伝導性に優れた状態のまま保存することができる。
次に、骨伝導性表面を有する医科歯科用材料のための保存キットについて説明する。この保存キットは、少なくとも、上記医科歯科用材料の表面の水接触角を10°未満に調整することが可能なイオン濃度を有する水接触角調整液の原料と、上記水接触角調整液を収容する容器と、を備える。ここで、本明細書において「キット」とは、2以上の構成部材からなる物を意味する。したがって、本明細書における「保存キット」は、水接触角調整液の原料(水接触角調整液であり得る)と、前記水接触角調整液を収容する容器とを備えるものであれば特に限定されず、必要に応じてさらに予備の容器、取扱説明書、操作に好適な器具等を備えるものであり得る。
ここで開示される水接触角調整液の原料について説明する。上記原料は、水接触角調整液そのものであってもよく、水接触角調整液の濃縮液であってもよく、水接触角調整液を構成する成分(例えば塩)の固形物(例えば、タブレット状や粉末状の固形物)であり得る。上記原料として、水接触角調整液を用いる場合、水接触角調整液は、例えば、開封可能なプラスチック袋内に密封された状態、あるいは水接触角調整液を収容するガラス容器内にて蓋等によって密封された状態であり得る。また、水接触角調整液は滅菌処理されたものであることが好ましい。水接触角調整液の濃縮液についても、例えば、上記プラスチック袋あるいはガラス製の小型容器内に収容された状態であり得る。該濃縮液は、使用する際に水(例えば脱イオン水、滅菌処理を施したものが好ましい)で所望の濃度に希釈して用いればよい。上記原料として、水接触角調整液を構成する成分の固形物を用いる場合には、上記固形物を水(例えば脱イオン水、滅菌処理を施したものが好ましい)中に公知の撹拌装置等により溶解し、所定の濃度を有する水接触角調整液を調製して用いればよい。
上記水接触角調整液を収容する容器についても、使用する医科歯科用材料の形状、サイズに応じて適切な形状、サイズを設計すればよく、何らの制限があるわけではない。典型例としては従来公知の円筒形状の蓋付き透明ガラス製の滅菌容器が挙げられる。そのような保存キットの一典型例として、図4に模式的に示す保存キット1が挙げられる。この保存キット1は、上部が開口した有底円筒形状のガラス製容器10と、該容器10内に収容された水接触角調整液12とを備える。容器10の開口は、蓋15によって開放可能に密閉されている。また、水接触角調整液12を含む容器10内は滅菌処理が施されている。保存キット1は、紙製の箱、樹脂製の袋等の包装容器5に収容された状態で販売され得る。このような保存キットを用いることにより、典型的には、水接触角調整液12を含む容器10内に医科歯科用材料を収容することにより、医科歯科用材料の表面は、水接触角調整液中にて水接触角が10°未満に保持される。上記医科歯科用材料を水接触角調整液中にて保存しておくことにより、使用に供する所望のタイミングで、骨伝導性に優れる材料が提供され得る。
また、本発明によると、医科歯科用材料の骨伝導性評価方法が提供される。この評価方法は、医科歯科用材料の表面の水接触角を測定する工程と、前記測定した水接触角に基づき、前記医科歯科用材料を使用するか否かを判定する工程と、を包含する。本発明者らは、鋭意検討の結果、医科歯科用材料表面の水接触角が該表面への骨伝導性と高い相関を示すことを発見した。この発見に基づいて創出された上記の評価方法によると、手間と負担の大きい骨伝導性評価試験(典型的にはin vivo試験)を行うことなく、医科歯科用材料の水接触角を測定するだけで医科歯科用材料としての適否を判断することが可能となる。上記評価方法は、骨伝導性に優れることが望ましい医科歯科用材料(例えばインプラント、デンタルインプラント等の骨内埋植材料)に対してだけでなく、ステント(血管狭窄部拡張用具)等の骨誘導忌避材料等の内科系の医科用材料に対しても好ましく適用することができる。
また、上記評価方法における判定工程は、前記測定した水接触角が15°未満(好適には10°未満)を満たす医科歯科用材料を合格と判定する工程であることが好ましい。上記表面の水接触角が15°未満(例えば10°未満)の材料は、他の特性(例えば、表面粗さ、表面の化学組成等)にかかわらず、骨伝導性に優れる。この工程によって、骨伝導性に優れる医科歯科用材料を容易に選別することが可能となる。あるいは、例えばステントのような骨誘導忌避材料を評価対象とする場合には、当該材料の表面の水接触角が骨形成を忌避するのに好ましい角度、典型的には50°〜60°である材料を良好と判定することができる。
また、上記評価方法は、表面の水接触角を測定すべき医科歯科用材料に対し、水接触角低減処理を施しておくことが好ましい。これによって、例えば水熱処理、紫外線照射、大気プラズマ照射、水中熱基板法、カソード電解等の水接触角低減処理が、目的とする表面水接触角が得られる程度に実行されたか否かを容易に判定することができる。
さらに、上記評価方法は、医科歯科用材料の表面粗さRaを測定する工程を含むことが好ましい。これによって、医科歯科用材料として好適な表面粗さRaと水接触角とを備える表面を有する材料を選別することができる。上記の表面粗さRa測定工程は、上記表面粗さRaが0.5μm未満、好ましくは0.3μm未満(例えば0.1μm以下、典型的には0.1μm未満)を満たす医科歯科用材料を合格と判定する工程であることが好ましい。
また、本発明によると、医科歯科用材料の骨伝導性評価装置が提供される。この評価装置は、上記医科歯科用材料の表面の水接触角を測定する水接触角測定部と、上記医科歯科用材料の表面粗さRaを測定する表面粗さRa測定部とを併せ持つ。かかる構成によると、医科歯科用材料として好適な表面(典型的には、水接触角が10°未満、かつ表面粗さRaが0.1μm未満を満たす表面)を有する材料を容易に選別することが可能である。上記水接触角が10°未満、かつ表面粗さRaが0.1μm未満を満たす表面特性を有する医科歯科用材料は、骨伝導性が特に優れる。したがって、ここで開示される評価装置は、骨伝導性が特に優れる医科歯科用材料を容易に選別できる装置として、有益である。なお、上記水接触角測定部は、従来公知の水接触角測定デバイスを適宜採用することができ、上記表面粗さRa測定部は、従来公知の表面粗さRa測定デバイスを適宜採用することができる。
次に、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
<試験1>
(大気中保存試験)
医科歯科用材料を大気中で保存(放置)したときの水接触角の経時変化について検討した。医科歯科用材料としてディスク状のTi単体金属を用意し、湿式研磨を施した後、室温にて0.1molのHSO水溶液中において0.1V/sで電圧を上昇させながら100Vまで印加した。このような陽極酸化を行うことにより、膜厚約120nmかつ表面粗さRa<0.1μmの酸化チタン膜が形成されたTi材料からなるサンプルを得た。このサンプルを複数用意し、各サンプルに対して異なる親水化処理(水熱処理、紫外線照射、大気圧プラズマ照射)を施した。水熱処理は、図1に示すような水熱処理装置100を用いて、180℃の蒸留水中に3時間浸漬させることにより行った。また親水化処理を行わなかったサンプル(陽極酸化まま)も用意し、これらのサンプルをそれぞれ大気中に放置し、親水化処理直後(0時間)、6、12、24、48、72、96、120、144、168時間後の水接触角を測定した。結果を図5に示す。
図5に示されるように、陽極酸化を行ったTi表面の水接触角は約20°であった。さらに、水熱処理、紫外線照射または大気圧プラズマ照射を行うことにより、表面の水接触角は15°未満となった。しかし、このように低水接触角が得られたサンプルであっても、大気中に放置した場合、親水化処理手段にかかわらず、経時的に水接触角が上昇する傾向が認められた。大気中への放置を開始してから72時間後には、すべてのサンプルで表面の水接触角は30°を超え、120時間後には40°を超えた。この結果から、大気中に放置した場合、低水接触角を維持することは困難であることがわかる。
<試験2>
(蒸留水中保存試験)
医科歯科用材料を蒸留水中で保存したときの水接触角の経時変化について検討した。大気中への放置を蒸留水中での保存に代えた他は試験1と同様にして、各サンプルについて親水化処理直後(0時間)、6、12、24,72、168時間後の水接触角を測定した。結果を図6に示す。
図6に示されるように、各サンプルを蒸留水で保存した場合、大気中に放置する場合と比べて低い水接触角を維持できる傾向が認められた。しかし、親水化処理を行ったサンプルでも、保存開始から24時間後には表面の水接触角は凡そ15°程度まで増大した。また、親水化処理を行わなかったサンプル(陽極酸化まま)では、保存開始から24時間後には表面の水接触角は25°を超えた。これらの結果から、蒸留水中保存では材料表面の水接触角を10°未満に保持することは困難であることがわかる。
<試験3>
(保存形態比較試験)
医科歯科用材料の保存形態による水接触角の経時変化について検討した。試験1と同様にして水熱処理を施したサンプル(陽極酸化+水熱処理を施したTi)を複数用意し、各サンプルに対して異なる保存方法(大気中保存、蒸留水中保存、水溶液A中保存、水溶液B中保存)を行い、水熱処理直後(0時間)、6、12、24,48(大気中のみ)、72時間後の水接触角を測定した。結果を図7に示す。使用した水溶液Aおよび水溶液Bは、蒸留水に表1に示す成分を溶解した水溶液である。水溶液Aは生理食塩水の凡そ5倍の塩濃度を有し、水溶液Bは生理食塩水の凡そ1倍の塩濃度を有する。
<試験4>
(水溶液検討試験)
異なる組成の水溶液を用意し、それら水溶液の低水接触角保持性能について検討した。蒸留水中に表2に示す成分を溶解することにより水溶液C〜Fを用意した。試験1と同様にして水熱処理を施したサンプル(陽極酸化+水熱処理を施したTi)を複数用意し、各サンプルをそれぞれ溶液C〜F中に24時間保存し、表面の水接触角を測定した。結果を図8に示す。なお、水溶液Cの総ナトリウム量は、上記水溶液Aの総ナトリウム量と同じに設定されており、水溶液Dの総塩素量は上記水溶液Aの総塩素量と同じに設定されており、水溶液Eの総リン酸量は上記水溶液Aの総リン酸量と同じに設定されており、水溶液Fの総カリウム量は上記水溶液Aの総カリウム量と同じに設定されている。
図7に示されるように、水溶液Aまたは水溶液B中での保存は、蒸留水中保存と比べて、低水接触角を維持する効果に優れていた。特に水溶液A中で保存した場合、サンプル表面の水接触角は5°未満まで下がり、その後も5°未満に保持された。
また、図8に示されるように、水溶液C〜Fは、いずれも上記水溶液Aの場合と同様、サンプル表面の水接触角を5°未満まで低下させ、その後も5°未満に保持することができた。これらの結果から、水接触角調整液は、所定量のイオンを含有することにより、換言すれば所定のイオン濃度を有することにより、低水接触角調整性能を発揮することがわかる。
<試験5>
(材料検討試験)
医科歯科用材料の種類を変えて水接触角の経時変化について検討した。医科歯科用材料として、Ti、Nb、Ta、Zr、Ti−Nb−Ta−Zr合金を用意し、これらのサンプルそれぞれに対して試験1と同様の湿式研磨と水熱処理を施した。各サンプルに対して異なる保存方法(大気中保存、蒸留水中保存、水溶液A中保存、水溶液B中保存)を行い、水熱処理直後(0時間)、24,48、72時間後の水接触角を測定した。結果を図9に示す。
図9に示されるように、上記イオン濃度を有する水接触角調整液中で保存することにより、金属種にかかわらず、サンプル表面の水接触角を低下させ、かつ低水接触角を保持できることがわかる。また、Tiについての結果から、表面に酸化物膜を形成しなくても、上記水接触角調整液は、医科歯科用材料の低水接触角を保持し得ることがわかる。
<試験6>
(動物埋植試験)
水接触角調整液で保存した医科歯科用材料について、in vivo評価を行った。湿式研磨を施した円柱型Ti(直径2mm、長さ5mm)を複数用意した。これらに対し、陽極酸化、親水化処理、保存の条件を変更することで、表面の水接触角が異なる複数のインプラントサンプルを得た。また、湿式研磨を施した円柱型(直径2mm、長さ5mm)のTi、Nb、Ta、Zr、Ti−Nb−Ta−Zr合金を用意し、それぞれに対して試験1と同様の水熱処理を施し、水溶液A中で24時間保存することで材料種の異なるインプラントサンプルを得た。さらに、上記湿式研磨を施したTi、Nb、Ta、Zr、Ti−Nb−Ta−Zr合金のインプラントサンプル(水熱処理なし、水溶液A中保存なし)を用意した。各インプラントサンプルにはオートクレーブ滅菌(121℃、20分)が施されている。また、これらのインプラントサンプルの表面粗さRaは0.1μm未満である。埋植試験直前に表面の水接触角を測定した後、各インプラントサンプルをSD(Sprague-Dawley)系ラット(10週齢、雄性、体重約350g)の脛骨上端部に埋植し、埋植してから14日経過後のインプラントサンプルの骨−インプラント接触率RB−1(%)を評価した。
骨−インプラント接触率RB−1(%)は、下記の方法により求めた。
埋植したインプラントサンプルと骨とを含むRB−1評価用切片(厚さ20μm)を切り出し、トルイジンブルーで海綿骨を染色した後(図10)、RB−1評価用切片の一辺を光学顕微鏡写真により拡大観察し(図11)、サンプルの長さ(TL)と、サンプルと硬組織とが接している長さの合計(CL)とを求め、式:
B−1(%)=CL/TL×100
に代入することにより、骨−インプラント接触率RB−1(%)を求めた。
骨−インプラント接触率RB−1(%)とサンプル表面の水接触角(°)との関係を図12に示す。
図12中、A、B、C、D、Eはそれぞれ、湿式研磨を施したTi、Nb、Ta、Zr、Ti−Nb−Ta−Zr合金に水熱処理を施し、水溶液A中で24時間保存したインプラントサンプルの結果である。また、同図中、A’、B’、C’、D’、E’はそれぞれ、湿式研磨のみを施したTi、Nb、Ta、Zr、Ti−Nb−Ta−Zr合金をインプラントサンプルとして用いた結果である。
図12に示されるように、水溶液A中で所定時間の保存を行った図中A〜Eで示すサンプルはいずれも、表面の水接触角が10°未満であった。また、材料種にかかわらず骨−インプラント接触率RB−1は凡そ50%またはそれ以上という高い値を示した。一方、水溶液A中での保存を行わなかった図中A’〜E’で示すサンプルはいずれも、表面の水接触角が65°を超え、骨−インプラント接触率RB−1は凡そ35%以下であった。
また、図12に示されるように、金属種、陽極酸化、親水化処理、保存条件等の違いにもかかわらず、医科歯科用材料の表面の水接触角(°)と骨−インプラント接触率RB−1(%)は、高い相関を示した。特に水接触角60°以下では、水接触角(°)と骨−インプラント接触率RB−1(%)は、明確な負の比例関係を示した。特に示さないが、本発明者らは、表面粗さRa>0.1μmの表面を有する医科歯科用材料や、TiO、Na(HTiO等のセラミックスにおいても上記と同様の傾向を示すことを確認している。これらの結果から、医科歯科用材料の水接触角を測定することにより、骨−インプラント接触率RB−1をその都度測定することなく、医科歯科用材料の骨伝導性を予測できることがわかる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。ここで開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれ得る。
1 保存キット
5 包装容器
10 容器
12 水接触角調整液
15 蓋

Claims (9)

  1. 医科歯科用材料を用意する工程と、
    前記医科歯科用材料の表面の水接触角を10°未満に調整することが可能なイオン濃度を有する水接触角調整液を用意する工程と、
    前記医科歯科用材料の表面を前記水接触角調整液に接触させて、該接触した状態で保持する工程と、
    を包含する、骨伝導性表面を有する医科歯科用材料の製造方法。
  2. 前記水接触角調整液は、生理食塩水の2倍以上の塩濃度を有する、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記医科歯科用材料は、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、それらを含む合金、またはそれらの酸化物、を主体として構成されている、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記保持工程における保持時間は、少なくとも1時間である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記医科歯科用材料の表面粗さRaは0.1μm未満である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記水接触角調整液のpHは4〜8である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 骨伝導性表面を有する医科歯科用材料のための保存キットであって、
    前記医科歯科用材料の表面の水接触角を10°未満に調整することが可能なイオン濃度を有する水接触角調整液の原料と、
    前記水接触角調整液を収容する容器と、を備える、医科歯科用材料保存キット。
  8. 前記水接触角調整液は、生理食塩水の2倍以上の塩濃度を有する、請求項7に記載の保存キット。
  9. 前記水接触角調整液のpHは4〜8である、請求項7または8に記載の保存キット。
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