JP2014012201A - 統合された白内障手術のための方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】白内障手術のための技術、装置及びシステムを提供する。
【解決手段】開示する技術、装置及びシステムの実施例は、白内障の眼の手術のための方法を提供し、この方法は、眼の水晶体600内の手術標的領域を判定するステップと、統合された手術処置内で、水晶体の嚢胞605上に切込み655を形成する前に、レーザパルスを適用して、判定された標的領域の一部を光破壊するステップとを有する。レーザパルスは、眼の角膜上に切込み665を形成する前に適用できる。幾つかのケースでは、標的領域は、水晶体の核を含む。統合された手術処置は、同じパルスレーザ光源610を使用して、標的領域を光破壊し、水晶体の嚢胞上に切込みを形成し、眼の角膜上に切込みを形成する3つの機能を実行することを伴う。
【選択図】図6
【解決手段】開示する技術、装置及びシステムの実施例は、白内障の眼の手術のための方法を提供し、この方法は、眼の水晶体600内の手術標的領域を判定するステップと、統合された手術処置内で、水晶体の嚢胞605上に切込み655を形成する前に、レーザパルスを適用して、判定された標的領域の一部を光破壊するステップとを有する。レーザパルスは、眼の角膜上に切込み665を形成する前に適用できる。幾つかのケースでは、標的領域は、水晶体の核を含む。統合された手術処置は、同じパルスレーザ光源610を使用して、標的領域を光破壊し、水晶体の嚢胞上に切込みを形成し、眼の角膜上に切込みを形成する3つの機能を実行することを伴う。
【選択図】図6
Description
優先権及び関連出願
本出願は、2007年9月18日に出願された米国特許出願番号第60/971,177号、発明の名称、「Methods and Apparatus for Integrated Cataract Surgery」の優先権を主張し、この文献は、引用によって、その全体が本願の一部として援用される。
本出願は、2007年9月18日に出願された米国特許出願番号第60/971,177号、発明の名称、「Methods and Apparatus for Integrated Cataract Surgery」の優先権を主張し、この文献は、引用によって、その全体が本願の一部として援用される。
背景
本発明は、白内障手術のための技術、装置及びシステムに関する。
本発明は、白内障手術のための技術、装置及びシステムに関する。
白内障手術は、最も一般的に行われている眼科手術の1つである。白内障手術の主な目的は、欠陥がある水晶体の除去及び欠陥がある水晶体の光学的特性の幾つかを回復する人工水晶体又は眼内レンズ(intraocular lens:IOL)による置換である。一般的には、IOLは、光の透過を改善することができ、散乱、吸収又はこれらの両方を低減する。
広く行われている白内障手術の形式は、超音波を用いた超音波乳化吸引術(ultrasound-based phacoemulsification)を含む。このタイプの手術では、切込みを介して、眼の水晶体に超音波プローブ(phaco-probe)が挿入される。このプローブは、水晶体を小さな断片に分解する超音波を生成し、乳化を導く。なお、この施術は、過去20年間、大きく変更されていない。超音波乳化吸引術に基づく白内障手術は、以下のような一連の個々の手術手順を含む。(1)角膜の切込み及び穿刺。(2)前眼房の全体的な構造を維持し、その陥没を防止する粘弾性物質の注入。(3)前嚢の切込み。(4)前嚢切開の作成。(5)水晶体核のハイドロダイセクション。(6)機械的方法及び超音波を用いた方法による水晶体核の断片化。(7)水晶体核の吸引。(8)水晶体の嚢胞への粘弾性物質の注入。(9)水晶体の皮質物質の吸引。(10)眼内水晶体の挿入及び位置決め。(11)粘弾性物質の除去。(12)角膜の傷の完全性、可能な縫合配置の検査。これらのステップの幾つかは、眼の手術の間、眼が開けられ、水晶体を分解し、除去するために、器具が物理的に挿入されるために必要とされる。
このようにして行われる白内障手術は、外科医の高い技能を必要とし、特別な設備及び備品を必要とし、これらの多くは、器械出し看護師を必要とする。各ステップは、互いから独立しているため、施術の間に、ステップを互いに最適に連携させることは、難しいことがある。
本発明は、特に、白内障手術のための技術、装置及びシステムを開示する。開示する技術、装置及びシステムの実施例は、白内障の眼の手術のための方法を提供し、この方法は、眼の水晶体内の手術標的領域を判定するステップと、統合された手術処置内で、水晶体の嚢胞上に切込みを形成する前に、レーザパルスを適用して、判定された標的領域の一部を光破壊するステップとを有する。
実施例は、眼の角膜上に切込みを形成する前にレーザパルスを適用するステップを含む。幾つかのケースでは、標的領域は、水晶体の核を含む。
一実施例においては、統合された手術処置は、パルスレーザ光源を使用して標的領域を光破壊するステップと、同じパルスレーザ光源を使用して、水晶体の嚢胞上に切込みを形成するステップと、同じパルスレーザ光源を使用して、眼の角膜上に切込みを形成するステップとを有する。切込みは、多平面の切込み(multi-plane incision)、弁状の切込み(valved incision)、自己封止する切込み(self-sealing incision)、部分的な切込み(partial incision)及び全厚に亘る切込み(full-thickness incision)であってもよい。
嚢包の切込みは、実質的に閉じた気泡の輪を生成して嚢包の蓋(capsular lid)を定義するステップと、輪に沿って間隔を空けて気泡を配置し、嚢包の蓋の除去を容易にするステップとによって形成できる。
統合された手術処置は、嚢包の切込み及び角膜の切込みを介して、光破壊された物質を除去するステップを有していてもよい。
また、統合された手術処置は、更に、形成されている角膜の切込み及び嚢包の切込みを介して、水晶体の嚢胞に眼内レンズを挿入するステップを有していてもよい。
統合された手術処置は、更に、眼内レンズの挿入の間、水晶体の嚢胞を膨張させるステップと、眼内レンズのオプティック部分の心合わせ及び前後の位置決めの少なくとも1つを最適化するように眼内レンズのハプティック部分を配置するステップとを有していてもよい。
幾つかのケースでは、統合された手術処置は、水晶体の嚢胞を収縮させ、眼内レンズの挿入に続いて、制御された手法で、嚢包の前部及び後部を眼内レンズに近付け、眼内レンズの心合わせ及び前後の位置決めを最適化するステップを有する。
光破壊は、標的領域の境界を判定するステップと、標的領域の後部領域にレーザパルスを集光するステップと、標的領域の後部領域より前の領域にレーザパルスを集光するステップとを含むことができる。
幾つかの実施の形態では、角膜の切込み及び嚢包の切込みにトロカールを挿入する。
トロカールは、角膜及び嚢包の少なくとも1つと実質的に水密接触を形成するように挿入することができる。
統合された手術処置は、トロカールを介して手術器具を挿入するステップと、トロカールを介して、処置の間、眼の体液を管理するステップと、トロカールを介して、嚢包に眼内レンズを挿入するステップとを含んでいてもよい。
幾つかのケースでは、統合された手術処置は、眼の容積体に生理的に適切な粘弾性流体を注入することによって、眼の一部の形状を維持するステップを有する。
眼の一部の形状は、嚢包の切込みを介する光破壊された核の除去に関連して、水晶体に粘弾性流体を注入することによって維持される。
また、統合された手術処置は、傾斜ミラーを介して、水晶体の周辺領域に光学的にアクセスするステップを更に有ことができる。
幾つかの実施の形態においては、白内障手術方法は、眼の上に物理的な切込みを形成する前に、統合された手術デバイスによって、レーザパルスからなるビームを方向付け、除去される水晶体の一部を断片化するステップと、統合された手術のデバイスが、断片化された水晶体の一部にアクセスするための部分的又は完全な厚さの嚢包の切込みを形成するステップと、切込みを介して、断片化された水晶体の一部を眼から除去するステップと、眼内の除去された断片化された水晶体の一部の位置に、切込みを介して、眼内レンズを挿入するステップとを有していてもよい。
幾つかの具体例では、方法は、角膜の切込み及び嚢包の切込みを横断して、実質的に水密を維持する取出可能なトロカールを配置するステップを更に有する。
ある実施の形態においては、眼科手術デバイスは、眼の水晶体に方向付けられ、眼の上に物理的な切込みを形成する前に、水晶体の一部を断片化し、断片化された水晶体の一部にアクセスするための角膜の切込み及び嚢包の切込みを形成するように構成された多目的パルスレーザと、角膜の切込み及び嚢包の切込みを介して、断片化された水晶体の一部を眼から除去するように構成された吸引デバイスとを備える。
更に他の実施例では、白内障手術を実行するための方法は、レーザパルスからなるビームを方向付けて、眼の上に物理的な切込みを形成する前に、水晶体の一部を断片化するステップと、断片化された水晶体の一部にアクセスするための部分的又は完全な厚さの嚢包の切込みを形成するステップと、切込みを介して、断片化された水晶体の一部を眼から除去するステップと、眼内の除去された断片化された水晶体の一部の位置に、切込みを介して、眼内レンズを挿入するステップとを有していてもよい。また、この方法は、角膜の切込み及び嚢包の切込みを横断して、実質的に水密を維持し、取出可能なトロカールを配置し、これによって、生理学的により好ましい眼の前眼房及び嚢包の状態を維持するステップを更に有していてもよい。
これらの及びこの他の実施例は、図面、詳細な説明及び特許請求の範囲に更に詳細に開示されている。
図1は、眼1の全体的な構造を示している。入射光は、角膜140、瞳孔160を含み、虹彩165、水晶体100及び硝子体によって定義される光路を介して伝播される。これらの光学的要素は、光を網膜170上に案内する。
図2は、水晶体200を更に詳細に示している。水晶体200は、その約90%が、タンパク質であるα−クリスタリン、β−クリスタリン及びγ−クリスタリンから構成されているため、水晶体(crystalline lens)と呼ばれる。水晶体は、眼の動的な焦点調節能力を含む眼内の複数の光学的機能を有する。水晶体は、妊娠、出産後及び生涯に亘ってサイズが成長し続けるという点で、人体の特有の組織である。水晶体は、水晶体赤道部に位置する胚中心から開始して、新たな水晶体線維細胞を分化することによって発育する。水晶体線維は、通常、直径が4〜7ミクロン、長さが最大12mmの長く、薄く、透明な細胞である。最も古い水晶体線維は、水晶体内に中心に位置し、核を形成する。核201は、更に、胚期、胎児期及び成人期の核ゾーンに細分化することができる。核201の周りの新たな成長物は、皮質203と呼ばれ、同心楕円状の層、領域又はゾーンに発育する。核201及び皮質203は、人間の発育の異なる段階で形成されるため、これらの光学的特性は、異なっている。水晶体は、時間の経過に伴って直径が大きくなるが、収縮することもあり、したがって、核201及び周囲の皮質203の特性は、更に異なるものになることがある(「Freel et al BMC Ophthalmology 2003, vol. 3, p. 1」参照)。
この複雑な成長過程の結果、典型的な水晶体200は、軸方向の長さが約2mmのより硬い核201と、この周囲を取り囲む、軸方向の幅が1〜2mmのより柔らかい皮質203と、これを収容する、典型的な幅が約20ミクロンのより薄い嚢包205とを含む。これらの値は、個人差が大きい。水晶体線維細胞では、時間の経過に伴って、細胞質要素の進行性消失が起こる。水晶体には、その内部の領域に静脈もリンパ管も通っていないので、年齢が高くなると、水晶体の光学的透明性、柔軟性及び他の機能的な特性が劣化することがある。図2は、長期に亘る紫外線への曝露、一般的な放射への曝露、水晶体タンパク質の変性、疾患、例えば、糖尿病の合併症、高血圧及び老化等の幾つかの条件によって、核201の領域が、透明度が低下した領域207になることがあることを示している。透明度が低下した領域207は、通常、水晶体の中心に位置する領域である(「Sweeney et al Exp Eye res, 1998, vol. 67, p. 587-95」参照)。透明度のこの進行性消失は、多くの場合、同じ領域における最も一般的な種類の白内障の進行及び水晶体の硬度の増加に関連する。このプロセスは、加齢と共に、水晶体の周辺部分から中心部分に向かって、徐々に進むことがある(「Heys et al Molecular Vision 2004, vol. 10, p. 956-63」参照)。このような変化の結果の1つは、老眼及び白内障の進行であり、これらは、年齢と共に、症状が重くなり、罹病率が高くなる。
透明度が低下した白内障領域を有するこの不透明な領域の除去が白内障手術の目的である。多くの場合、これは、水晶体の嚢胞のみを残して、水晶体の内部全体を除去する必要がある。
超音波乳化吸引術に基づく白内障手術は、様々な制約を受けることがある。例えば、このような超音波を用いた手術は、寸法、形状及び位置がよく制御されていない切込みを角膜に生成することがあり、この結果、傷の自己封止(self-sealing)が行われないことがある。制御されない切込みを処置するには、縫合が必要となることがある。また、超音波乳化吸引術では、最大7mmの大きな切込みが嚢包に形成されることができる。この施術は、結果として、意図されない大幅な変化を生じることがあり、例えば、治療された眼は、強い遠視(extensive stigmatism)及び残余屈折又は二次屈折又は他の異常を示すことがある。このような屈折異常が生じた場合、フォローアップのための屈折矯正又は他の手術又はデバイスが必要になることが多い。またプローブによって虹彩組織が引き裂かれることがあり、又はこの施術によって、虹彩組織が傷内に脱出することがある。分離された水晶体物質には、アクセスが困難な場合があり、IOLの移植も難易度が高い。また、超音波を用いた手術は、眼の排液チャネルを遮蔽する残りの粘弾性物質のために、望ましくない高い眼圧を引き起こすことがある。更に、これらの施術によって、中心、形状又は寸法が最適化されていない嚢包の開口が形成されることがあり、このために水晶体物質の除去が複雑になり、及び/又は眼内のIOLの位置決め及び配置の精度が制約されることがある。
上述した困難性及び複雑性の一対の原因は、(1)眼自体を開くことによって、及び(2)多くの個別のステップにおいて、水晶体分解が実行されるためであり、各ステップは、器具の挿入又は除去を必要とし、これらのステップの間、眼を開いたままにする必要がある。
超音波乳化吸引術を用いる白内障手術におけるこれの及びこの他の制約及び関連するリスクのために、眼に切込み形成することなく白内障を治療する施術の開発が開発されている。例えば、米国特許第6,726,679号は、眼の不透明な部分に超短レーザパルスを方向付けることによって、水晶体混濁を取り除く方法を開示している。しかしながら、この以前の方法では、手術の処理の制御に伴う幾つかの困難が解決されていない。更に、眼の状態が水晶体の混濁以外の問題によって引き起こされているケースでは、この方法の有効性に限界があった。例えば、屈折障害が併発している場合、別の施術が必要であった。
本発明の実施例は、上述した一対の問題を克服する白内障手術を実行する方法及び装置を開示する。すなわち、実施例は、(1)眼を開くことなく、(2)単一の統合された施術で、水晶体破壊を行う。更に、実施例は、手術処置の良好な制御を提供し、障害の可能性を低減し、更なる技術的支援の必要性を最小化し、手術の有効性を向上させる。本出願に開示されている白内障手術のための方法及び装置を実施して、眼の水晶体を除去し、水晶体の除去を他の手術ステップに統合し、連携された効率的な手法で全体の施術を実行することができる。
眼への物理的な侵入は、例えば、短パルスレーザを利用する光破壊を適用することによって回避することができる。眼の手術用レーザのオペレータは、断片化のために目標設定された水晶体領域に、レーザビームを高い精度で供給することができる。光破壊に基づく水晶体断片化は、例えば、米国特許第4,538,608号、第5,246,435号及び第5,439,462号に開示されている様々な構成によって実施できる。ここに説明する方法及び装置を用いることによって、これらの及びこの他の光破壊に基づく水晶体断片化法は、眼及び/又は嚢包を開くステップ、断片化された水晶体物質を除去するステップ、断片化された水晶体の除去によって残された空隙に人工水晶体を挿入するステップを含む白内障手術に必要な他の手術のステップと連携して実行することができ、及びこれらのステップに統合することができる。
図3及び図4は、この方法の実施例300において、白内障を除去する手術のステップが、以下のようなステップを含むことを示している。
ステップ310は、眼内の手術標的領域を判定することを伴っていてもよい。ここに説明する幾つかの実施の形態では、標的領域は、白内障が進行した核又は核に関連する領域であってもよい。他の実施の形態では、他の領域を標的にしてもよい。
図4Aは、ステップ310の幾つかの側面では、手術標的領域を判定することは、核の境界402等の標的領域の境界を判定することを伴うことを示している。この判定は、レーザパルスによって水晶体内に一組のプローブ気泡404を生成し、これらの成長又は動きを観測することを含んでいてもよい。プローブ気泡は、より柔らかい皮質領域内で成長がより速く、逆に、核は、より硬いので、プローブ気泡は、核内では、成長が遅い。プローブ気泡404の観測、例えば、超音波攪拌及びこれに対する応答の測定から核境界402を推定する他の手法を実践してもよい。プローブ気泡404の観測された成長又は動きから、周囲の物質の硬度を推定でき、これは、より柔らかい皮質からより硬い核を区別し、したがって、核の境界を特定するのに適した手法である。
ステップ320aは、眼の上に切込みを形成することなく標的領域を破壊することを含んでいてもよい。これは、統合された施術において、レーザパルスを標的領域に適用することによって達成される。
ステップ320aが統合された施術と呼ばれる理由の1つは、ステップ320aが、以下のように、上述した超音波を用いた手術の5つのステップの効果と同等な効果を達成するためである。
(1)角膜の切込み及び穿刺。(3)前嚢の切込み。(4)前嚢切開の作成。(5)水晶体核のハイドロダイセクション。(6)機械的方法及び超音波を用いた方法による水晶体核の断片化。
ステップ320aの側面は、以下を含む。(i)水晶体の破壊のために眼が開けられることがないので、光路は、妨害されず、レーザビームを高精度に制御して、標的領域に高精度に衝突させることができる。(ii)また、物理的物体が眼の切込みに挿入されることはないので、物理的物体の挿入及び抜き取りによって、制御困難な状態で切込みが更に裂けることはない。(iii)眼が開いていれば、眼内の体液が滲出し、超音波を用いた手術のステップ(2)のように、粘性流体の注入による補給が必要になるが、破壊処理の間、眼は開いていないので、外科医は、眼内の体液を管理する必要はない。
レーザ誘起水晶体断片化処理において、レーザパルスは、標的領域内の分子の一部をイオン化する。これによって、「プラズマ閾値」を超える二次イオン化プロセスの雪崩現象が生じることがある。多くの手術処置では、短いバーストで大きなエネルギが標的領域に伝えられる。これらの集中化されたエネルギパルスは、イオン化領域を気化させ、キャビテーション気泡を生じさせる。これらの気泡は、数ミクロンの直径で形成され、超音速で50〜100ミクロンに膨張することがある。気泡の膨張が亜音速に低下すると、気泡は、周囲の組織内に衝撃波を誘起し、二次分離を引き起こす。
気泡自体及び誘起された衝撃波の両方は、ステップ320aの目的を達成し、すなわち、嚢包205上に切込みを形成することなく、標的である硬い水晶体領域209の破壊、断片化又は乳化を引き起こす。
但し、光破壊は、影響を受ける領域の透明度を減少させる。レーザパルスの適用を、水晶体の前又は前方の領域に集光することから開始し、次に、焦点を後方の領域に向けてより深く移動させた場合、キャビテーション気泡及びこれに伴って透明度が低下する組織が、後続するレーザパルスの光路内に存在し、これらのレーザパルスを遮蔽、減衰又は散乱させる。これによって、後のレーザパルスの適用の精度及び制御が劣化し、水晶体のより深い後方の領域に実際に供給されるパルスエネルギが減少する。したがって、先のレーザパルスによって生成された気泡が後のレーザパルスの光路を遮蔽しない方法によって、レーザを用いた眼の手術処置の効率を高めることができる。
先に生成された気泡が後に適用されるレーザパルスの光路を遮ることを回避する1つの可能な手法は、まず、水晶体の最後部の領域にパルスを適用し、そして、水晶体の前方の領域に向かって焦点を移動させることである。
これに関連する処理に関して、皮質は、硬度が低く、粘性が高いために、皮質内で生成された気泡が制御不能に広がることを含む様々な課題がある。したがって、皮質の後部の部分がある水晶体の背後にレーザを適用すると、広い領域に亘って急速に、制御不能に広がる気泡が生成され、光路が遮られる可能性が高くなる。
ステップ320bは、ステップ320aを実行するための改善された手法を示しており、すなわち、核401の最後部の領域に手術用レーザパルスを集光し、核401内で前方の方向に焦点を移動させる。
図4Bは、この方法の実施の形態が、ステップ310によって判定された核401の境界402に関する概略的な知識を利用することを示している。ステップ320bでは、まず、核401の最後部の領域420−1にパルス412−1を適用することによって、先に生成された気泡が、(例えば、制御不能に皮質403内に膨張することによって)後に適用されるレーザパルスの光路を遮ることを回避する。次に、レーザパルス412−1が先に適用されている領域420−1より前方にある核401内の領域420−2に後のレーザパルス412−2を適用する。
換言すれば、レーザパルス412の焦点は、核401の後方領域から前方領域に移動される。
ステップ320a及びステップ320bの側面は、水晶体の所望の光破壊を達成するために十分であるが、網膜等の他の領域に破壊又は他の損傷を引き起こす程は強くないレーザパルスを適用することである。更に、気泡は、所望の光破壊を引き起こすために十分近いが、生成された気泡が合体して、制御不能に成長し、広がることがある大きい気泡が形成される程は近すぎないように、配置される。破壊を達成するパワー閾値を「破壊閾値」と呼び、気泡の望ましくない広がりを引き起こすパワー閾値を「広がり閾値」と呼ぶことができる。
上述した上下の閾値は、レーザパルスのパラメータ、例えば、それらのパワー及び分離に制約を課す。また、レーザパルスの継続時間も、同様の破壊閾値及び広がり閾値を有することができる。幾つかの実施例では、継続時間は、0.01ピコ秒〜50ピコ秒の範囲で変更してもよい。何人かの患者については、100フェムト秒〜2ピコ秒のパルス期間の範囲で特定の結果が達成された。幾つかの実施例では、1パルスあたりのレーザエネルギは、1μJ及び25μJの閾値の間で変更することができる。レーザパルスの繰返し率は、10kHz及び100MHzの閾値の間で変更することができる。
また、レーザパルスのエネルギ、標的分離、継続時間及び繰返し周波数は、水晶体の光学的又は構造的な特性の術前測定に基づいて選択することもできる。これに代えて、レーザエネルギ及び標的分離の選択は、全体的な水晶体の寸法の術前測定、及び年齢に依存するアルゴリズム計算、死体測定又はデータベースの使用に基づいて行ってもよい。
なお、角膜等の眼の他の領域のために開発されたレーザ破壊技術は、実質的な変更を行わなければ、水晶体に対しては適用できない。この理由の1つは、角膜は、階層性が高い構造を有し、気泡の広がり及び移動を非常に効率的に阻止するためである。したがって、核自体を含む水晶体のより柔らかい層に比べて、角膜では、その性質のために、気泡の広がりによって生じる問題は小さい。
また、図5Aも、ステップ320a〜320bを示している。類似する符号を用いて説明すると、レーザビーム512は、気泡520を生成することによって水晶体500内で核501の破壊を引き起こし、ここで、レーザビーム512は、破壊閾値と広がり閾値との間のレーザパラメータを用いて、後方から前方の方向に焦点を移動させて適用される。
ステップ330は、角膜の上及び嚢包の上に切込みを形成することを伴っていてもよい。これらの切込みは、少なくとも2つの目的に役立ち、すなわち、破壊された核及び他の水晶体物質の除去のため、及び後のIOLの挿入のための経路を開設する。
図5B〜図5Cは、水晶体500の嚢包505上に切込みを形成することを示し、これは、切嚢術(capsulotomy)と呼ばれることもある。ステップ330では、生成される「切嚢術用気泡(capsulotomy-bubbles)」550が嚢包505を破壊し、実際に穴を開けるために十分となるように、嚢包の表面にレーザビーム512を集光することができる。図5Bは、嚢包の切込み555を定義する「切嚢術用気泡」550の輪が形成された後の眼の側面図を示しており、図5Cは、水晶体500の正面図を示している。幾つかの実施例では、これらの気泡550の完全な円が形成され、嚢包の円盤状の蓋(disc-shaped lid)、すなわち、嚢包の切込み555が単に除去される。他の実施例では、嚢包505上に不完全な円が形成され、蓋は、嚢包に一部が接続されたまま残り、施術の最後に、蓋が元の位置に回復してもよい。
切嚢術用気泡550による穿孔によって定義される円盤状の嚢包の切込み555は、次に、後のステップにおいて、手術器具によって、穿孔されている嚢包組織505からの最小量の抵抗に打ち勝って、持ち上げて除去することができる。
図5D〜図5Eは、角膜540上の切込みの形成を示している。レーザビーム512を適用して、角膜540に亘る切込みを生成する一連の気泡を生成することができる。この切込みは完全な円ではなく、蓋又は、施術の最後に再び閉じることができるフラップのみであってもよい。
ここでも、手術用レーザビームの適用によって、角膜が有効に穿孔され、角膜蓋(cornea-lid)が定義され、これにより、後のステップでは、角膜蓋を角膜の残りの部分から容易に分離し、持ち上げ、眼への物理的な侵入が可能になる。
幾つかの実施例では、図5E(実際の縮尺には対応していない。)の側面図に示すように、角膜の切込みは、多平面(multi-plane)又は「弁状」の切込みであってもよい。このような切込みは、自己封止(self-sealing)するものであってもよく、この場合、手術処置が完了した後に眼内の体液がより良好に維持される。更に、このような切込みは、角膜組織との重なりがより大きければ、裂孔に対処することによって治癒が妨げられず、より良好に、より強く回復する。
これらの図5A〜図5Eは、超音波を用いた手術における切込みと、ここに説明する光破壊手術の切込みとの間の違いを明瞭に示している。
超音波を用いた手術における切込みは、鉗子によって、標的組織、例えば、角膜及び嚢包を機械的に引き裂くことによって形成され、これは、環状切嚢術(curvilinear capsulorhexis technique)と呼ばれる。更に、超音波を用いた手術における切込みの側部は、様々な機械的器具の侵入及び退出の動きによって、繰り返し衝撃を受ける。これらの理由のために、切込みの輪郭は、良好に制御できず、切込みは、上述した自己封止的な手法で形成することができない。このように、超音波を用いた方法は、寸法制御に劣り、多平面の切込みの自己封止の側面が欠けているが、これらは、光破壊治療では実現可能である。
これについては、両方の施術によって公称5mmの開口を作成する実験的な施術を行うことによって確認した。機械的な切り裂きによって形成された切込みは、直径が5.88mmであり、分散が0.73mmであった。一方、ここに説明する光破壊法では、0.04mmの分散で直径5.02mmの開口が達成された。
これらの実験結果は、光破壊法の精度が質的により高いことを示している。例えば、乱視矯正のための角膜切開が10〜20%のみずれただけで、意図していた効果が打ち消され、又は症状が逆に悪化することもあり、フォローアップ手術が必要となることもあるという事実からも、この違いの重要度がわかる。
更に、超音波を用いた方法において、切込みによって角膜が開けられた場合、「前眼房の房水」、すなわち眼内の流体の内容物が、流出し始め、この流体が眼から滴下する。房水は、水風船の中の水のように、眼を補強することによって、眼の構造的完全性を支える重要な役割を担ってため、この体液の損失は、好ましくない結果を生じる。
したがって、かなりの労力を払って、眼から流出する体液を継続的に補給する必要がある。超音波を用いた手術では、複雑な、コンピュータ制御されたシステムがこの流体管理を監視及び監督する。但し、このタスクには、外科医本人にもかなりの技能が必要である。
本発明の方法の実施例は、眼を開けないで光破壊を達成する。このため、この方法の実施例では、水晶体の光破壊の間に流体管理を行わなくてもよく、したがって、外科医に技能は要求されず、設備の複雑性も低減できる。
再び、図3を参照して説明すると、ステップ330は、断片化され、破壊され、乳化され、又は他の手法で変質された核及び他の水晶体物質、例えば、より流体的な皮質等の除去を含む。この除去は、典型的には、角膜及び嚢包の切込みを介して、吸引プローブを挿入し、物質を吸引することによって行われる。
図5Fは、ステップ340が、水晶体の嚢胞505に眼内レンズ(intra ocular lens:IOL)530を挿入し、破壊された元の水晶体と置換することを含んでもよいことを示している。先に作成されている角膜及び嚢包の切込みは、IOL挿入のための入口として機能できる。この方法300では、切込みは、超音波プローブを受け入れるように形成する必要はない。したがって、切込みの位置、それらの中心及び角度は、IOL530の挿入のために最適化できる。切嚢術用気泡550及び角膜の切込み555は、全て、IOL530の挿入を最適化するために配置することができる。そして、IOL530を挿入でき、角膜の開口は、再び閉じ、又は自己封止させることができる。水晶体の嚢胞505は、多くの介在なしで、IOL530を包み込み、これを収容する。嚢包の切込みが大きいケースでは、多くの場合、その切込みについて、中心の位置が選択される。後述する図6のケースのように、嚢包の切込みが小さいケースでは、中心がずらされた切込みを用いてもよい。
図5Gに示すように、眼内レンズ530は、実質的にはレンズである「オプティック(optic)」部分530−1と、オプティック部分530−1を嚢包505内で所望の位置に保持する機能を有する様々なデバイス又は構成を有することができる「ハプティック(haptic)」部分530−2とを含むことができる。幾つかの実施例では、オプティック部分530−1は、嚢包505の直径よりかなり小さい場合があり、このような支持部分となる「ハプティック」部分が必要である。図5Gは、ハプティック部分530−2が2つの渦巻き状のアームを含んでいる実施の形態を示している。
このシステムの幾つかの実施の形態では、オプティック−ハプティック接合部は、前嚢内に1つ以上の切込みを形成することによって、係合される。
幾つかの実施例では、ハプティック部分530−2を最適に配置できるように、IOLの挿入の間、水晶体の嚢胞505を膨張させる。例えば、ハプティック部分530−2を嚢包505の最縁端の窪みに配置して、オプティック部分530−1の心合わせ及び前後の位置決めを最適化することができる。
幾つかの実施例では、IOLの挿入に続いて、水晶体の嚢胞505を収縮させて、嚢包505の前後の部分を制御された手法で共に近付け、オプティック部分530−1の心合わせ及び前後の位置決めを最適化することができる。
上述した眼の手術の幾つかの実施例では、水晶体の周辺領域は、傾斜ミラーを介して、光学的にアクセスされる。
幾つかのケースでは、水晶体600の辺縁領域には、光学的にアクセスできないことがある。この方法の幾つかの実施例では、超音波、加熱された水又は吸引を含む光破壊以外の手段によって、これらの領域を断片化又は分解することができる。
図6は、図3〜図5Fと多くの要素を共有する実施例を示しており、各要素については、類似した符号を付し、説明は繰り返さない。更に、この実施例は、トロカール(套管針)680を含む。実質的には適切に形成されたシリンダであるトロカール680は、角膜の切込み665を介して、更に嚢包の切込み655を介して、水晶体の嚢胞605に挿入できる。幾つかの場合、トロカールの直径は、約1mmであり、他の場合、0.1〜2mmの範囲であってもよい。
このトロカール680は、上述した光破壊処理の様々な段階における制御を改善する。トロカール680は、流体を出入りさせる制御されたチャネルを形成するので、トロカール680を流体管理に使用することができる。幾つかの実施の形態では、トロカール680は、実質的に水密を保って、角膜の切込み665及び嚢包の切込み655に配備することができる。これらの実施の形態では、トロカール680の外への浸出が最小であり、したがって、トロカール680の外で体液を管理する必要性も最小である。
更に、トロカール680を介して、より制御された安全な手法で、器具を出し入れすることができる。また、光破壊された核及び他の水晶体物質を、よく制御された手法でより安全に除去することができる。幾つかのIOLは、最大寸法が2mm以下となるように折り畳むことができるので、最終的に、トロカール680を介して、IOLを挿入できる。これらのIOLは、折り畳まれたIOLの直径より僅かに大きい内径を有するトロカール680を介して送り込むことができる。IOLは、一旦、適切な位置に配置されると、水晶体600の嚢包605内で広げられ又はアンパックされる。また、IOLが水晶体600の嚢包605内で中心に位置し、好ましくない傾斜がないように、IOLを適切に整列させることもできる。更に、超音波乳化吸引術で用いられる7mm程度の切込みに比べて、トロカールを用いた手術処置では、2mm程度のかなり小さい切込みを形成すればよい。
実際の動作では、トロカール680は、部分的又は完全に隔離され及び制御された手術空間を維持する。一旦、手術が終了すると、トロカール680が取り外され、自己封止する角膜の切込み665は、有効且つ安全に治癒される。この方法を用いることによって、光破壊処理は、可能な限り最大限に患者の視力を回復させることができる。
要約すれば、上述した光破壊方法の実施の形態は、(i)眼に開口を形成することなく、及び(ii)異なるデバイス及び高い技能を有する外科医によって行われる多くのステップを必要とすることに代えて、単一の統合された処理で、眼の水晶体の核、又は他の何らかの標的領域の光破壊のステップを実行でき、及び構成できる。
白内障手術のための装置の1つの実施例は、粘弾性物質の必要性を排除又は低減することによって、眼の体積を維持でき、膨張され、妨害が最小化された嚢包において、IOLのより容易な配置を提供でき、最適に心合わせされ、傾斜していない位置におけるIOLの配置及び維持を最適化することができる。この処理は、処置後の眼の光学的な及び/又は屈折に関する予測性及び機能を向上させることができる。また、この処理は、手術の補助の必要性を低減し、手術効率化の機会を提供し、例えば、施術を、異なる殺菌レベルの下で実行できる2つの部分に分割し、これらを異なる環境で行うことができ、又は異なる時点で行うこともできる。
例えば、レーザ施術は、第1の時点において、諸経費が低い、非殺菌環境で実行でき、水晶体除去及びIOL配置は、後に、例えば、手術室等の伝統的な無菌環境で実行できる。これに代えて、光破壊の使用のために、水晶体除去及びIOL配置のために必要な技術及び補助のレベルが低減されるので、手術が行われる現場への要求のレベルも低減され、これによって、コスト及び時間が節約され、利便性(例えば、レーシック(LASIK)手術と同様のセッティングの施術室において施術を実行する能力)が向上する。
図7〜図26は、上述した光破壊レーザ治療に関連するレーザ手術システムの実施の形態を示している。
レーザ手術の1つの重要な側面は、レーザビームの精密な制御及び照準、例えば、ビーム位置決め及びビーム集光である。レーザ手術システムは、レーザパルスを組織内の特定の標的に目標設定するレーザ制御及び照準ツールを含むように設計することができる。様々なナノ秒光破壊レーザ手術システム、例えば、Nd:YAGレーザシステムでは、目標設定精度の必要なレベルは、比較的低い。この理由の1つは、使用されるレーザエネルギが比較的高く、したがって、影響を受ける組織領域も比較的大きく、衝撃を受ける領域が数百ミクロンの寸法に亘ってカバーされることが多いためである。このようなシステムにおけるレーザパルス間の時間は、長い傾向があり、手動制御の目標設定が可能であり、一般的に用いられている。このような手動の目標設定メカニズムの一具体例は、標的組織を可視化する生体顕微鏡と、照準ビームとして使用される二次レーザ光源との組合せである。外科医は、通常、ジョイスティックコントローラを用いて、顕微鏡を介する画像と(オフセットの有無にかかわらず)同焦点であるレーザ集光レンズの集光を手動で移動させ、手術用ビーム又は照準ビームを意図された標的上に最良に集光する。
繰返し率が低いレーザ手術システムと共に使用するように設計されたこのような技術は、1秒あたり数千ショットで動作し、1パルスあたりのエネルギが比較的低い、高繰返し率のレーザと共に使用することは困難である場合がある。繰返し率が高いレーザを用いる手術では、個々のレーザパルスの効果が小さいために、遙かに高い精度が必要となることがあり、及び何千ものパルスを新たな治療領域に非常に速やかに供給する必要性のために、遙かに高い位置決め速度が必要となることがある。
レーザ手術システムのための繰返し率が高いパルスレーザの具体例は、1秒あたり数千ショット又はこれ以上のパルス繰返し率を有し、1パルスあたりのエネルギが比較的低いパルスレーザを含む。このようなレーザは、1パルスあたりのエネルギが比較的低く、組織の影響を局所化し、レーザ誘起光破壊によって引き起こされる、例えば、光破壊によって衝撃を受ける組織領域を数ミクロン又は数十ミクロン程度にする。このように組織の影響を局所化することによって、レーザ手術の精度を改善でき、これは、レーザ眼科手術等のある手術において、望ましい場合がある。このような手術の一具体例においては、連続する、略々連続する又は既知の間隔だけ分離された、数百、数千乃至数百万のパルスを用いて、ある所望の手術効果、例えば組織の切開、分離又は断片化等を達成することができる。
レーザパルス幅が短く、繰返し率が高い光破壊レーザ手術システムを用いる様々な手術は、標的組織上の標的部位に関する絶対的位置、及び先行するパルスに関する相対的位置の両方において、手術下の標的組織における各パルスの位置決めに高い精度を要求することがある。例えば、幾つかの場合、レーザパルスは、数マイクロ秒程度であることもあるパルス間の時間内に、数ミクロンの精度で互いに隣り合うように供給する必要があることがある。この場合、2つの連続するパルス間の間隔は短く、パルス整列に関する精度要求は高いので、繰返し率が低いパルスレーザシステムで用いられる手動の目標設定は、不適切又は不可能である。
レーザパルスを組織に供給するための精密な高速位置決め要求を実現及び制御する1つの技術は、透明材料、例えば、組織に接触する予め定義された接触面を有するガラスから形成された圧平プレート(applanation plate)を取り付け、圧平プレートの接触面が組織とのよく定義された光インタフェースを形成するようにすることである。このよく定義されたインタフェースは、組織へのレーザ光線の透過及び集光を補助し、眼内の角膜の前面にある空気/組織インタフェースにおいて最も重大な、光学収差又は変動(例えば、特定の眼の光学的特性又は表面の乾燥によって生じる変化に起因する。)を制御又は減少させることができる。様々な用途、並びに眼及び他の組織内の標的について、使い捨てのもの及び再使用可能なものを含むコンタクトレンズを設計することができる。標的組織の表面上のコンタクトガラス又は圧平プレートは、参照プレート(reference plate)として用いることができ、これに対して、レーザパルスは、レーザ供給システム内の集光要素の調整によって集光される。このようにコンタクトガラス又は圧平プレートを使用することによって、組織表面の光学品質をより良好に制御することができ、この結果、レーザパルスの光学的歪みを小さく抑えながら、圧平参照プレートに対する標的組織内の所望の位置(相互作用点)にレーザパルスを速やかに正確に配置することができる。
眼の上で圧平プレートを使用する一手法は、眼内の標的組織にレーザパルスを供給するための位置参照を提供する圧平プレートを用いることである。このような圧平プレートの位置参照としての使用は、標的内のレーザパルスを出射する前に十分な精度で特定されたレーザパルス集光の既知の所望の位置に基づくことができ、参照プレートと個々の内部の組織標的との相対的位置は、レーザ出射の間、一定のままである必要がある。更に、この方法は、異なる眼の間で又は同じ眼内の異なる領域の間で、予測可能で再現可能な所望の位置へのレーザパルスの集光を必要とすることがある。実際のシステムでは、上述した条件が満たされない場合があるため、実際のシステムでは、位置参照として圧平プレートを用いて、レーザパルスを眼内で正確に局所化することが困難であることがある。
例えば、手術標的が水晶体である場合、眼の表面にある参照プレートから標的への正確な距離は、角膜自体、前眼房、虹彩等の伸縮可能な構造(collapsible structures)の存在のために、変化する傾向がある。異なる個々の眼の間で、圧平された角膜と水晶体との間の距離の変化がかなり大きいだけではなく、同じ眼内においても、外科医が使用する特定の手術及び圧平技術によって、変化があることもある。更に、手術の効果を達成するために必要な数千個のレーザパルスを出射している間に、圧平された表面に対して、目標設定された水晶体組織が移動することもあり、これによって、パルスの正確な供給が更に複雑になる。更に、眼内の構造は、キャビテーション気泡等の光破壊副産物の形成を原因として動くことがある。例えば、水晶体に供給されたレーザパルスによって、水晶体嚢胞が前方に膨らむことがあり、この場合、その後のレーザパルスの配置のために、この組織に目標設定する調整が必要である。更に、コンピュータモデル及びシミュレーションを使用して、圧平プレートを取り除いた後に、標的組織の実際の位置を十分な精度で予測すること、及び圧平なしで、レーザパルスの配置を調整して、所望の局所化を達成することは、困難である場合があり、この理由の一部は、圧平効果は、個々の角膜又は眼、並びに外科医が使用する特定の手術及び圧平技術に固有の因子に依存することがあるので、非常に変化しやすい性質を有するためである。
ある手術的処置において、内部組織構造の局所化に対して不均衡に影響する圧平の物理的な効果に加えて、目標設定システムは、パルス継続時間が短いレーザを使用するときに生じる可能性がある光破壊の非線型特性を予測又は考慮することが望ましいことがある。光破壊は、組織物質における非線形の光学プロセスであり、ビーム整列及びビーム目標設定を複雑にすることがある。例えば、光破壊の間にレーザパルスと相互作用する際の組織物質における非線形の光学的効果の1つとして、レーザパルスが受ける組織物質の屈折率が一定ではなくなり、光の強度によって変化するようになる。レーザパルスの光強度は、パルスレーザビームの伝播方向に沿う方向及びこの伝播方向を横切る方向に亘ってパルスレーザビーム内で空間的に変化するので、組織物質の屈折率も空間的に変化する。この非線形の屈折率の1つの結果は、組織内でパルスレーザビームの実際の集光を変化させ、及び集光の位置をシフトさせる組織物質の自己収束(self-focusing)又は自己発散(self-defocusing)である。したがって、標的組織内の各標的組織位置へのパルスレーザビームの正確な整列では、レーザビームに対する組織物質の非線形の光学的効果を考慮する必要がある場合がある。更に、異なる物理的特徴、例えば硬度等のために又は特定の領域に伝播するレーザパルス光の吸収又は拡散等の光学的な要件のために、各パルス内のエネルギを調整して、標的内の異なる領域に同じ物理的な効果を提供する必要があることもある。このような場合、エネルギ値が異なるパルス間の非線形集光効果の差も、手術用パルスのレーザ整列及びレーザ目標設定に影響することがある。
したがって、非表層の構造(non superficial structure)が標的になる手術では、圧平プレートが提供する位置参照に基づく表層の圧平プレート(superficial applanation plate)の使用は、内部の組織標的におけるレーザパルスの正確な局所化を達成するには、不十分であることがある。レーザ供給を誘導するための参照として圧平プレートを使用する場合、公称値からの偏りが、深さ精度誤差に直接影響するので、圧平プレートの厚さ及びプレート位置を高精度で測定する必要があることがある。高精密圧平レンズは、特に一回だけしか使用できない使い捨ての圧平プレートの場合、高価であることがある。
本明細書に開示する技術、装置及びシステムを実施することによって、レーザパルスを出射する前に、標的内のレーザパルス焦点の所望の位置を十分な精度で知る必要なく、及びレーザ出射の間に、参照プレートと個々の内部の組織標的の相対的位置を一定のままにする必要なく、圧平プレートを介して、眼内の所望の局所に、高精度且つ高速に短いレーザパルスを供給する目標設定メカニズムを提供することができる。すなわち、この技術、装置及びシステムは、手術下の標的組織の物理的条件が変化する傾向があり、制御することが困難であり、圧平レンズの寸法がレンズ毎に異なる傾向がある様々な手術のために用いることができる。また、この技術、装置及びシステムは、構造の表面に対する手術標的の歪み又は動きが存在し、又は非線形の光学的効果が正確な目標設定を難しくする他の手術標的にも使用することができる。このような手術標的の具体例としては、眼以外に、心臓、皮膚の深部組織等が含まれる。
この技術、装置及びシステムは、圧平された表面の内部構造に光破壊の正確な局所化を提供しながら、例えば、表面形状及び水和(hydration)の制御、並びに光学的歪みの低減を含む圧平プレートによって提供される利益を維持するように実施することができる。これは、統合されたイメージングデバイスを使用して、供給システムの集光光学素子に対して、標的組織を局所化することによって達成できる。イメージングデバイス及び方法の正確なタイプは、標的の特定の性質及び精度の必要なレベルに応じて異なっていてもよい。
圧平レンズは、眼の並進運動及び回転運動を防止するように眼を固定する他のメカニズムによっても実現できる。このような固定デバイスの具体例は、吸気リング(suction ring)の使用を含む。また、このような固定メカニズムによっても、手術標的の望ましくない歪み又は動きが生じることがある。本発明の技術、装置及びシステムを実施することによって、非表層の手術標的のために圧平プレート及び/又は固定手段を利用する高繰返し率レーザ手術システムに、手術標的のこのような歪み及び動きを監視する手術時のイメージングを提供する目標設定メカニズムを提供することができる。
以下、光イメージングモジュールを用いて、標的組織の画像を捕捉し、例えば、手術前及び手術中に標的組織の位置決め情報を得るレーザ手術技術、装置及びシステムの特定の具体例を説明する。このようにして得られた位置決め情報を用いて、高繰返し率レーザシステムにおいて、標的組織における手術用レーザビームの位置決め及び集光を制御し、手術用レーザパルスの配置を正確に制御することができる。一具体例では、手術中に、光イメージングモジュールによって得られた画像を用いて、手術用レーザビームの位置及び集光を動的に制御することができる。更に、エネルギが小さい短いレーザパルスは、光学的歪みに対して敏感である傾向があり、このようなレーザ手術システムは、標的組織に取り付けられた平坦な又は曲面のインタフェースを有する圧平プレートによって、標的組織及び手術用レーザシステムとの間に、制御された安定した光インタフェースを提供し、組織表面において、光学収差を緩和及び制御することができる。
具体例として、図7は、光イメージング及び圧平に基づくレーザ手術システムを示している。このシステムは、レーザパルスからなる手術用レーザビーム1012を生成するパルスレーザ1010と、手術用レーザビーム1012を受光し、集光し、集光された手術用レーザビーム1022を、例えば眼である標的組織1001に方向付け、標的組織1001内に光破壊を引き起こす光学モジュール1020とを含む。標的組織1001に接触するように圧平プレートを設け、標的組織1001へのレーザパルス及び標的組織1001からの光を透過させるインタフェースを形成してもよい。なお、ここでは、標的組織画像1050を搬送する光1050又は標的組織1001からのイメージング情報を捕捉して、標的組織1001の画像を生成する光イメージングデバイス1030を設けている。イメージングデバイス1030からのイメージング信号1032は、システム制御モジュール1040に供給される。システム制御モジュール1040は、イメージングデバイス1030からの捕捉された画像を処理し、捕捉された画像からの情報に基づいて、光学モジュール1020を制御して、標的組織1001における手術用レーザビーム1022の位置及び集光を調整するように動作する。光学モジュール1020は、1つ以上のレンズを含むことができ、更に、1つ以上の反射板を含んでいてもよい。光学モジュール1020は、システム制御モジュール1040からのビーム制御信号1044に応じて、集光及びビーム方向を調整する制御アクチュエータを含んでいてもよい。また、制御モジュール1040は、レーザ制御信号1042によって、パルスレーザ1010も制御できる。
光イメージングデバイス1030は、標的組織1001を精査する(probe)ための、手術用レーザビーム1022とは別の光イメージングビームを生成してもよく、光イメージングデバイス1030は、この光イメージングビームの戻り光を捕捉して、標的組織1001の画像を得る。このような光イメージングデバイス1030の一具体例は、一方が圧平プレートを介して標的組織1001に方向付けられるプローブビームであり、他方が参照光路内の参照ビームである2つのイメージングビームを用いて、これらを互いに光学的に干渉させて、標的組織1001の画像を得る光干渉断層法(optical coherence tomography:OCT)イメージングモジュールである。他の実施例では、光イメージングデバイス1030は、専用の光イメージングビームを標的組織1001に供給することなく、標的組織1001から散乱又は反射された光を用いて、画像を捕捉する。例えば、イメージングデバイス1030は、例えば、CCD又はCMSセンサ等の感知素子のセンサアレイであってもよい。例えば、手術用レーザビーム1022によって生成された光破壊副産物の画像は、手術用レーザビーム1022の集光及び位置決めを制御するために、光イメージングデバイス1030によって捕捉することができる。光イメージングデバイス1030が、光破壊副産物の画像を用いて、手術用レーザビーム整列を誘導するように設計されている場合、光イメージングデバイス1030は、光破壊副産物、例えば、レーザによって誘起された気泡又は空洞等の画像を捕捉する。また、イメージングデバイス1030は、超音波画像(acoustic image)に基づいて画像を捕捉する超音波イメージングデバイスであってもよい。
システム制御モジュール1040は、標的組織1001内の標的組織位置からの光破壊副産物の位置オフセット情報を含むイメージングデバイス1030からの画像データを処理する。画像から得られた情報に基づいて、ビーム制御信号1044が生成され、レーザビーム1022を調整する光学モジュール1020が制御される。システム制御モジュール1040は、レーザ整列のために様々なデータ処理を実行するデジタル処理ユニットに含ませることができる。
上述した技術及びシステムを用いて、高繰返し率レーザパルスを、切断又は体積分解の用途に必要とされる連続的なパルス配置に必要な精度で、表面下の標的に供給することができる。これは、標的の表面上の参照源の使用の有無にかかわらず行うことができ、及び圧平の後の又はレーザパルスの配置の間の標的の動きを考慮に入れることができる。
このシステムの圧平プレートは、レーザパルスを組織に供給するための、正確且つ高速な位置決め要求を補助及び制御するために設けられている。このような圧平プレートは、組織に接触する予め定義された接触面を有する透明材料、例えば、ガラスから作製することができ、圧平プレートの接触面は、よく定義された、組織との光インタフェースを形成する。このよく定義されたインタフェースは、組織へのレーザ光線の透過及び集光を補助し、眼内の角膜の前面にある空気/組織インタフェースにおいて最も重大な、光学収差又は変動(例えば、特定の眼の光学的特性又は表面の乾燥によって生じる変化に起因する。)を制御又は減少させることができる。様々な用途、並びに眼及び他の組織内の標的のために多くのコンタクトレンズが設計されており、これらには、使い捨てのものと再使用可能なものとが含まれる。標的組織の表面上のコンタクトガラス又は圧平プレートは、参照プレート(reference plate)として用いられ、これに対して、レーザパルスは、レーザ供給システム内の集光要素の調整によって集光される。このような手法は、組織表面の光学品質の制御を含む、コンタクトガラス又は圧平プレートによって提供される上述したような更なる利点を生来的に有する。したがって、レーザパルスの光学的歪みを小さく抑えながら、圧平参照プレートに対する標的組織内の所望の位置(相互作用点)にレーザパルスを速やかに正確に配置することができる。
図7の光イメージングデバイス1030は、圧平プレートを介して標的組織1001の画像を捕捉する。制御モジュール1040は、捕捉された画像を処理し、捕捉された画像から位置情報を抽出し、抽出された位置情報を位置参照又はガイドとして用いて、手術用レーザビーム1022の位置及び集光を制御する。上述したように、圧平プレートの位置は、様々な要因のために変化する傾向があるので、この画像誘導レーザ手術は、位置参照としての圧平プレートに依存することなく行うことができる。すなわち、圧平プレートは、手術用レーザビームが標的組織に入り、及び標的組織の画像を捕捉するための望ましい光インタフェースを提供するが、手術用レーザビームの位置及び集光を整列及び制御してレーザパルスを正確に供給するための位置基準として圧平プレートを使用することは、難しい場合がある。イメージングデバイス1030及び制御モジュール1040に基づく手術用レーザビームの位置及び集光の画像誘導制御によって、位置参照を提供するために圧平プレートを使用することなく、標的組織1001の画像、例えば、眼の内側の構造の画像を位置参照として使用することができる。
ある手術的処置において、内部組織構造の局所化に不均衡に影響する圧平の物理的な効果に加えて、目標設定システムは、パルス継続時間が短いレーザを使用するときに生じる可能性がある光破壊の非線型特性を予測又は考慮することが望ましいことがある。光破壊は、ビーム整列及びビーム目標設定を複雑にすることがある。例えば、光破壊の間にレーザパルスと相互作用する際の組織物質における非線形の光学的効果の1つとして、レーザパルスが受ける組織物質の屈折率が一定ではなくなり、光の強度によって変化するようになる。レーザパルスの光強度は、パルスレーザビームの伝播方向に沿う方向及びこの伝播方向を横切る方向に亘ってパルスレーザビーム内で空間的に変化するので、組織物質の屈折率も空間的に変化する。この非線形の屈折率の1つの結果は、組織内でパルスレーザビームの実際の集光を変化させ、及び集光の位置をシフトさせる組織物質の自己収束(self-focusing)又は自己発散(self-defocusing)である。したがって、標的組織内の各標的組織位置へのパルスレーザビームの正確な整列では、レーザビームに対する組織物質の非線形の光学的効果を考慮する必要がある場合がある。異なる物理的特徴、例えば硬度等のために又は特定の領域に伝播するレーザパルス光の吸収又は拡散等の光学的な要件のために、各パルス内のエネルギを調整して、標的内の異なる領域に同じ物理的な効果を提供してもよい。このような場合、エネルギ値が異なるパルス間の非線形集光効果の差も、手術用パルスのレーザ整列及びレーザ目標設定に影響することがある。これに関して、イメージングデバイス1030によって標的組織から取得された直接画像を用いて、標的組織内の非線形の光学的効果の組み合わされた効果を反映する手術用レーザビーム1022の実際の位置を監視し、ビーム位置及びビーム集光の制御のための位置参照を提供することができる。
ここに開示する技術、装置及びシステムを圧平プレートと組み合わせて使用することによって、表面形状及び水和の制御を提供し、光学的歪みを低減し、圧平された表面を介して、内部構造に光破壊の精密な局所化を提供することができる。ここに開示するビーム位置及び集光の画像誘導制御は、圧平プレート以外の眼を固定する手段を用いる手術システム及び施術に適用でき、これらには、吸気リングの使用が含まれ、これによって、手術標的の歪み又は動きが生じることがある。
以下では、まず、イメージング機能を、システムのレーザ制御部分に様々な度合いで統合した、自動化された画像誘導レーザ手術のための技術、装置及びシステムの具体例を説明する。光学式又は他の様式のイメージングモジュール、例えば、OCTイメージングモジュールを用いて、プローブ光又は他の種類のビームを方向付け、標的組織、例えば、眼内の構造の画像を捕捉することができる。レーザパルス、例えば、フェムト秒レーザパルス又はピコ秒レーザパルスからなる手術用レーザビームは、捕捉された画像の位置情報によって誘導でき、手術中に、手術用レーザビームの集光及び位置決めを制御することができる。手術用レーザビーム及びプローブ光ビームの両方は、捕捉された画像に基づいて手術用レーザビームを制御でき、手術を精密且つ正確に行うことが確実となるように、手術中に、標的組織に順次的に方向付けてもよく、同時に方向付けてもよい。
このような画像誘導レーザ手術では、ビーム制御は、手術用パルスの供給の直前又は略々同時の圧平又は標的組織の固定の後の標的組織の画像に基づいているので、手術中の手術用レーザビームの正確で精密な集光と位置決めを提供することができる。なお、標的組織、例えば、眼について手術前に測定された何らかのパラメータは、様々な要因、例えば、標的組織の準備(例えば、眼を圧平レンズに固定すること)手術的措置による標的組織の変質等のために、手術中に変化することがある。したがって、このような要因及び/又は手術前に測定された標的組織のパラメータは、手術中には、標的組織の物理的状態を反映しなくなる。本発明の画像誘導レーザ手術は、手術前及び手術中の手術用レーザビームの集光及び位置決めについてのこのような変化に関する技術的問題を緩和できる。
この画像誘導レーザ手術は、標的組織内の正確な手術のために効果的に用いることができる。例えば、眼内でレーザ手術を実行する場合、レーザ光線は、眼内に集光され、目標設定された組織の光学的な破壊が行われ、このような光学的相互作用は、眼の内部構造を変化させることがある。例えば、水晶体は、事前の測定と手術との間だけではなく、手術中にも、遠近調節によって位置、形状、厚さ及び直径が変化する。機械的手段によって手術器具を眼に取り付けることによって、眼の形状がよく定義されていない状態に変化することもあり、この変化した状態が、例えば、患者の動き等の様々な要因のために、手術中に更に変化することもある。取付手段は、吸気リングによって眼を固定すること、及び平坦な又は曲面のレンズによって眼を圧平することを含む。これらの変化は、数ミリメートルに達することもある。眼内で精密なレーザ顕微手術を実行する場合、例えば、角膜又は角膜縁の前面等の眼の表面を機械的に参照及び固定することは、うまく機能しない。
この画像誘導レーザ手術では、準備後又は略々同時のイメージングを用いて、手術前及び手術中に変化が生じる環境内で、眼の内部の特徴と手術器具との間で3次元的な位置基準を確立することができる。眼の圧平及び/又は固定の前又は実際の手術の最中にイメージングによって提供される位置基準情報は、眼における変化の効果を反映し、したがって、手術用レーザビームの集光及び位置決めを正確に誘導することができる。本発明の画像誘導レーザ手術に基づくシステムは、構造を単純に構成でき、コスト効率にも優れている。例えば、手術用レーザビームの誘導に関連する光部品の一部は、標的組織をイメージングするためにプローブ光ビームを誘導する光部品と共有でき、デバイス構造並びにイメージング光ビーム及び手術用光ビームの光学的整列及び較正が簡素化される。
以下に説明する画像誘導レーザ手術システムは、イメージングデバイスの具体例としてOCTイメージングを使用し、また、手術中に手術用レーザを制御するための画像を捕捉するために、他の非OCTイメージングデバイスを用いてもよい。以下の具体例に示すように、イメージングサブシステム及び手術サブシステムの統合は、様々な度合いで実現できる。ハードウェアを統合しない最も簡単な形式では、イメージングサブシステム及びレーザ手術サブシステムは、分離され、インタフェースを介して互いに通信を行うことができる。このような設計によって、2つのサブシステムの設計が柔軟になる。例えば、患者インタフェース等の幾つかのハードウェアコンポーネントによって、2つのサブシステムを統合することにより、手術領域をハードウェアコンポーネントにより良好に位置合わせでき、機能性が拡張され、より正確な較正が実現し、ワークフローを改善できる。2つのサブシステム間の統合の度合いを高めるにつれて、システムは、よりコスト効率が高まり、小型化され、システム較正が簡素化され、時間に伴ってより安定する。図8〜図16は、様々な度合いで統合された画像誘導レーザシステムの具体例を示している。
本発明の画像誘導レーザ手術システムの1つの実施例は、例えば、手術下の標的組織に外科的な変化を引き起こす手術用レーザパルスからなる手術用レーザビームを生成する手術用レーザと、患者インタフェースを標的組織に接触するように係合させ、標的組織を所定の位置に保持する患者インタフェースマウントと、手術用レーザと患者インタフェースとの間に位置し、患者インタフェースを介して手術用レーザビームを標的組織に方向付けるように構成されたレーザビーム供給モジュールとを含む。このレーザビーム供給モジュールは、所定の手術パターンに沿って、標的組織内で手術用レーザビームを走査するように動作できる。このシステムは、更に、手術用レーザの動作を制御し、及びレーザビーム供給モジュールを制御して、所定の手術パターンを生成するレーザ制御モジュールと、患者インタフェースに対して位置決めされ、患者インタフェース及び患者インタフェースに固定された標的組織に関して既知の空間的関係を有するOCTモジュールとを含む。OCTモジュールは、手術用レーザビームが標的組織に方向付けられ、手術が実行されている間、光プローブビームを標的組織に方向付け、標的組織から、光プローブビームの戻りプローブ光(returned probe light)を受光し、標的組織のOCT画像を捕捉するように構成されており、これにより、光プローブビーム及び手術用レーザビームは、標的組織内に同時に存在する。OCTモジュールは、レーザ制御モジュールと通信し、捕捉されたOCT画像の情報をレーザ制御モジュールに送信する。
更に、この特定のシステムのレーザ制御モジュールは、捕捉されたOCT画像の情報に応じて、レーザビーム供給モジュールを操作して、手術用レーザビームを集光及び走査し、捕捉されたOCT画像内の位置決め情報に基づいて、標的組織における手術用レーザビームの集光及び走査を調整する。
幾つかの実施例では、標的と手術器具とを位置合わせするためには、標的組織の完全な画像を取得する必要はなく、標的組織の一部、例えば、生来的な又は人工的な目印である手術領域からの幾つかの点を取得するだけで十分な場合もある。例えば、剛体は、3次元空間内で6の自由度を有し、剛体を定義するためには、独立した6個の点だけで十分である。手術領域の正確な寸法が未知である場合は、位置参照を提供するために更なる点が必要である。これに関して、幾つかの点を用いることによって、通常、個人差がある人間の眼の水晶体の前面及び後面の位置及び曲率、並びに厚さ及び直径を判定することができる。これらのデータに基づき、所定のパラメータを有する楕円体の2つの片半分から構成される体積体によって、水晶体を近似させ、実用的な目的のために可視化することができる。他の実施例では、捕捉された画像からの情報を他のソースからの情報、例えば、コントローラへの入力として用いられる水晶体の厚さの手術前測定の測定値に結合してもよい。
図8は、分離されたレーザ手術システム2100及びイメージングシステム2200を備える画像誘導レーザ手術システムの一具体例を示している。レーザ手術システム2100は、手術用レーザパルスからなる手術用レーザビーム2160を生成する手術用レーザを有するレーザエンジン2130を含む。レーザビーム供給モジュール2140は、患者インタフェース2150を介して、レーザエンジン2130から標的組織1001に手術用レーザビーム2160を方向付け、所定の手術パターンに沿って、標的組織1001内で手術用レーザビーム2160を走査するように動作できる。レーザ制御モジュール2120は、通信チャネル2121を介して、レーザエンジン2130内の手術用レーザの動作を制御し、及びコントロールは、通信チャネル2122を介して、レーザビーム供給モジュール2140を制御して、所定の手術パターンを生成する。更に、患者インタフェース2150を標的組織1001に接触するように係合させ、標的組織1001を所定の位置に保持する患者インタフェースマウントを設けている。患者インタフェース2150は、眼の前面の形状に従って係合し、所定の位置に眼を保持する、平坦な又は曲面の表面を有するコンタクトレンズ又は圧平レンズを含むように実現することができる。
図8のイメージングシステム2200は、手術システム2100の患者インタフェース2150に対して位置決めされたOCTモジュールであってもよく、これは、患者インタフェース2150及び患者インタフェース2150に固定されている標的組織1001に対して既知の空間的関係を有するように位置決めされている。このOCTモジュール2200は、標的組織1001とインタラクトするOCTモジュール2200自体の患者インタフェース2240を有するように構成してもよい。イメージングシステム2200は、イメージング制御モジュール2220及びイメージングサブシステム2230を含む。サブシステム2230は、標的1001をイメージングするためのイメージングビーム2250を生成する光源と、光プローブビーム又はイメージングビーム2250を標的組織1001に方向付け、標的組織1001から、光イメージングビーム2250の戻りプローブ光2260を受光し、標的組織1001のOCT画像を捕捉するイメージングビーム供給モジュールとを含む。光イメージングビーム2250及び手術用ビーム2160は、標的組織1001に同時に方向付けることができ、これによって、イメージング及び手術を順次的又は同時に行うことができる。
図8に示すように、レーザ手術システム2100とイメージングシステム2200の両方に通信インタフェース2110、2210を設け、レーザ制御モジュール2120によるレーザ制御とイメージングシステム2200によるイメージングとの間で通信を可能にしており、これによって、OCTモジュール2200は、捕捉されたOCT画像の情報をレーザ制御モジュール2120に送信することができる。このシステムのレーザ制御モジュール2120は、捕捉されたOCT画像の情報に応じて、手術用レーザビーム2160を集光及び走査させるようレーザビーム供給モジュール2140を動作させ、及び捕捉されたOCT画像内の位置決め情報に基づいて、標的組織1001における手術用レーザビーム2160の集光及び走査を動的に調整する。レーザ手術システム2100とイメージングシステム2200との間の統合は、主に、通信インタフェース2110、2210の間の通信を介してソフトウェアレベルで実現される。
また、この具体例及び他の具体例において、様々なサブシステム又はデバイスを統合することもできる。例えば、ある診断器具、例えば、波面収差計(wavefront aberrometer)、角膜トポグラフィー測定デバイス(corneal topography measuring device)等をシステム内に含ませてもよく、又はこれらのデバイスからの手術前情報を利用して、手術時のイメージング(intra-operative imaging)を補強してもよい。
図9は、更なる統合特徴を有する画像誘導レーザ手術システムの具体例を示している。このイメージング及び手術システムは、図8に示す2つの別々の患者インタフェースとは異なり、標的組織1001(例えば、眼)を固定する共通の患者インタフェース3300を共有する。手術用ビーム3210及びイメージングビーム3220は、患者インタフェース3330において結合され、共通の患者インタフェース3300によって、標的1001に方向付けられる。更に、イメージングサブシステム2230及び手術部分(レーザエンジン2130及びビーム供給システム2140)の両方を制御するための共通の制御モジュール3100が設けられている。イメージング部分と手術部分の間の統合の度合いを高めることによって、2つのサブシステムの正確な較正、並びに患者及び手術体積体(surgical volume)の位置の安定性が実現する。手術サブシステム及びイメージングサブシステムの両方は、共通のハウジング3400に収容されている。2つのシステムが共通のハウジング内に統合されない場合、共通の患者インタフェース3300は、イメージングサブシステム及び手術サブシステムの何れかの一部であってもよい。
図10は、レーザ手術システム及びイメージングシステムが、共通のビーム供給モジュール4100及び共通の患者インタフェース4200の両方を共有する画像誘導レーザ手術システムの具体例を示している。この統合によって、システム構造及びシステム制御機能が更に簡素化される。
一実施例においては、上述及び他の具体例におけるイメージングシステムは、光コンピュータ断層撮影(optical computed tomography:OCT)システムであってもよく、レーザ手術システムは、フェムト秒レーザ又はピコ秒レーザを用いる眼科手術システムであってもよい。OCTでは、低コヒーレンスの広帯域光源、例えば、スーパールミネッセントダイオードからの光が、別々の参照ビーム及び信号ビームに分割される。信号ビームは、手術標的に供給されるイメージングビームであり、イメージングビームの戻り光は、回収され、参照ビームにコヒーレントに再結合され、干渉計が形成される。光学トレインの光軸又は光の伝播方向に垂直に信号ビームを走査すると、x−y方向に空間分解能が提供され、一方、深さ分解能は、干渉計の参照アームの光路長と、戻り信号ビームの信号アームの光路長との間の差分の抽出に由来する。異なるOCT実施例のx−yスキャナは、本質的には同じであるが、光路長の比較及びz−スキャン情報の取得は、異なる手法で行われることがある。例えば、時間領域OCTとも呼ばれる一実施例においては、参照アームは、その光路長を継続的に変化させ、一方、フォトディテクタは、再結合されたビームの強度から干渉変調を検出する。異なる実施例では、参照アームは、実質的に固定されており、干渉を調べるために結合光のスペクトルが解析される。結合ビームのスペクトルをフーリエ変換することによって、サンプルの内部からの拡散に関する空間情報が得られる。この方法は、スペクトル領域又はフーリエOCT法として知られている。周波数掃引OCT(frequency swept OCT)(S. R. Chinn, et.al.Opt.Lett.22 (1997))として知られている異なる実施例では、スペクトル範囲に亘って周波数が高速に掃引される狭帯域光源が使用される。参照アームと信号アームとの間の干渉は、高速検出器及び動的信号解析器によって検出される。これらの具体例では、この目的のために開発された外部共振器調整ダイオードレーザ又は周波数が調整された(Frequency tuned of)周波数領域モード同期(frequency domain mode-locked:FDML)レーザ(R. Huber et.al.Opt.Express, 13, 2005)(S. H. Yun, IEEE J. of Sel.Q. El.3(4) p. 1087-1096, 1997)を光源として使用することができる。OCTシステムの光源として使用されるフェムト秒レーザは、十分な帯域幅を有することができ、及び信号対雑音比を向上させる更なる利点を提供する。
本明細書に開示するシステムにおけるOCTイメージングデバイスは、様々なイメージング機能を実行するために使用することができる。例えば、OCTを用いて、システムの光学的構成又は圧平プレートの存在から生じる複素共役を抑制し、標的組織内の選択された部分のOCT画像を捕捉して、標的組織内における手術用レーザビームの集光及び走査を制御するための3次元的な位置決め情報を提供し、若しくは、標的組織の表面上又は圧平プレート上の選択された部分のOCT画像を捕捉して、直立から仰向け等、標的の位置の変化によって生じる向きの変化を制御するための位置合わせを提供することができる。OCTは、標的の1つの向きにおけるマーク又はマーカの配置に基づく位置合わせ処理によって較正でき、OCTモジュールは、標的が他の向きにあるとき、これらのマーク又はマーカを検出できる。他の実施例では、OCTイメージングシステムを用いて、眼の内部構造に関する情報を光学的に収集するために偏光されたプローブ光ビームを生成する。レーザビーム及びプローブ光ビームは、異なる偏光方向に偏光してもよい。OCTは、上述した光断層法のために用いられるプローブ光を制御して、プローブ光が眼に向かって伝播する際、プローブ光を1つの偏光方向に偏光し、プローブ光が眼から戻る方向に伝播する際、プローブ光を他の異なる偏光方向に偏光する偏光制御メカニズムを含むことができる。偏光制御メカニズムは、例えば、波長板又はファラデー回転子を含んでいてもよい。
図10のシステムは、スペクトルOCT構成として示されており、手術システムとイメージングシステムとの間で、ビーム供給モジュールの集光光学素子部分を共有するように構成できる。この光学素子のための主な要求は、動作波長、画質、解像度、歪み等に関連する。レーザ手術システムは、例えば、約2〜3マイクロメータ等、回折限界の焦点サイズを達成するように設計された高開口数システムを含むフェムト秒レーザシステムであってもよい。様々な眼科手術用のフェムト秒レーザが、様々な波長、例えば、約1.05マイクロメータの波長で動作できる。イメージングデバイスの動作波長は、レーザ波長に近い波長に選択でき、これにより、光学素子は、両方の波長について、色収差を補償(chromatically compensated)できる。このようなシステムは、第3の光チャネル、例えば、標的組織の画像を捕捉するための更なるイメージングデバイスを提供する手術用顕微鏡等の視覚的観察チャネル(visual observation channel)を含むことができる。この第3の光チャネルのための光路が、手術用レーザビーム及びOCTイメージングデバイスの光と光学素子を共有する場合、共有された光学素子は、第3の光チャネルのための可視スペクトル帯域と、手術用レーザビーム及びOCTイメージングビームのためのスペクトル帯域とにおける色収差を補償するように構成できる。
図11は、図9の設計の特定の具体例を示しており、ここでは、手術用レーザビームを走査するためのスキャナ5100及び手術用レーザビームを調整(コリメート及び集光)するためのビーム調整器5200は、OCTのためにイメージングビームを制御するためのOCTイメージングモジュール5300内の光学素子から独立している。手術システム及びイメージングシステムは、対物レンズ5600モジュール及び患者インタフェース3300を共有している。対物レンズ5600は、手術用レーザビーム及びイメージングビームの両方を患者インタフェース3300に方向付け及び集光し、その集光は、制御モジュール3100によって制御されている。手術ビーム及びイメージングビームを方向付けるために、2つのビームスプリッタ5410、5420が設けられている。また、ビームスプリッタ5420は、戻りのイメージングビームをOCTイメージングモジュール5300に戻すように方向付けるためにも使用される。また、2つのビームスプリッタ5410、5420は、標的1001から視覚的観察光学ユニット5500に光を方向付け、標的1001のダイレクトビュー又は画像を提供する。ユニット5500は、外科医が標的1001を見るためのレンズイメージングシステムであってもよく、標的1001の画像又は映像を捕捉するカメラであってもよい。例えば、ダイクロイックビームスプリッタ及び偏光ビームスプリッタ、光学格子、ホログラムビームスプリッタ(holographic beam splitter)、又はこれらの組合せ等の様々なビームスプリッタを用いることができる。
幾つかの実施例では、光ビームの光路の複数の表面からのグレアを低減するために、手術用波長及びOCT波長の両方について、光部品を反射防止コーティングによって適切にコーティングしてもよい。このようなコーティングを行わず、反射がある場合、OCTイメージングユニット内の背景光を増加させることによって、システムのスループットが低下し、及び信号対雑音比が低下する。OCTにおけるグレアを低減させる1つの手法は、標的組織の近くに配置されたファラデーアイソレータの波長板によって、サンプルからの戻り光の偏光方向を回転させ、OCT検出器の正面の偏光子が、サンプルから戻る光を優先的に検出し、光部品から散乱された光を抑制するように向けることである。
レーザ手術システムでは、手術用レーザ及びOCTシステムのそれぞれが、標的組織内の同じ手術領域をカバーするようにビームスキャナを有することができる。したがって、手術用レーザビームのためのビーム走査及びイメージングビームのためのビーム走査は、共通の走査デバイスを共有するように統合できる。
図12は、このようなシステムの具体例を詳細に示している。この実施例では、x−yスキャナ6410及びzスキャナ6420は、両方のサブシステムによって共有されている。手術動作及びイメージング動作の両方のシステム動作を制御するために、共通のコントローラ6100が設けられている。OCTサブシステムは、イメージング光を生成するOCT光源6200を含み、イメージング光は、ビームスプリッタ6210によって、イメージングビーム及び参照ビームに分離される。イメージングビームは、ビームスプリッタ6310において手術用ビームに結合され、標的1001に到達する共通の光路に沿って伝播する。スキャナ6410、6420及びビーム調整ユニット6430は、ビームスプリッタ6310からのダウンストリーム側に配設されている。ビームスプリッタ6440は、イメージングビーム及び手術用ビームを対物レンズ5600及び患者インタフェース3300に方向付けるために使用される。
OCTサブシステムでは、参照ビームが、ビームスプリッタ6210を介して、光遅延デバイス6220に供給され、反射ミラー6230によって反射される。標的1001から戻るイメージングビームは、ビームスプリッタ6310に戻るように方向付けられ、ビームスプリッタ6310は、戻りのイメージングビームの少なくとも一部をビームスプリッタ6210に反射し、ここで、反射した参照ビーム及び戻りのイメージングビームが重なり、互いに干渉する。分光検出器6240は、干渉を検出し、標的1001のOCT画像を生成するために使用される。OCT画像情報は、手術用レーザエンジン2130、スキャナ6410、6420及び対物レンズ5600を制御して手術用レーザビームを制御するために、制御システム6100に送信される。一実施例では、光遅延デバイス6220は、標的組織1001内の様々な深さを検出するように、光遅延を変化させることができる。
OCTシステムが時間領域システムである場合、2つのサブシステムは、2つの異なるzスキャナを使用する。これは、2つのスキャナの動作が異なるためである。この具体例では、手術システムのzスキャナは、手術用ビーム光路内のビームの光路長を変化させることなく、ビーム調整ユニットにおいて、手術用ビームの拡がり角を変更することによって動作する。一方、時間領域OCTは、可変遅延によって、又は参照ビーム反射ミラーの位置を移動させることによって、ビーム光路を物理的に変更することにより、z−方向の走査を行う。較正の後に、2つのzスキャナは、レーザ制御モジュールによって同期させることができる。2つの動きの間の関係は、制御モジュールが処理できる一次式又は多項式に従属するように簡素化でき、又はこれに代えて、較正点によってルックアップテーブルを定義して、適切なスケーリングを提供してもよい。スペクトル/フーリエ領域及び周波数掃引光源OCTデバイスは、zスキャナを有しておらず、参照アームの長さは固定である。コストを削減できることに加えて、2つのシステムの相互の較正は、比較的簡単である。集光光学素子及び2つのシステムのスキャナは、共有されているので、集光光学素子の画像歪み又は2つのシステムのスキャナの差分から生じる差分を補償する必要はない。
手術システムの実用的な実施例では、集光対物レンズ5600は、ベースに摺動可能又は移動可能に取り付けられ、対物レンズの重量は、患者の眼に加わる力を制限するようにバランスがとられる。患者インタフェース3300は、患者インタフェースマウントに取り付けられた圧平レンズを含んでいてもよい。患者インタフェースマウントは、集光対物レンズを保持する取付ユニットに取り付けられている。この取付ユニットは、患者に避けられない動きがあった場合に、患者インタフェースとシステムとの間の安定した接続を確実にし、及び眼への負担がより軽くなるように患者インタフェースを眼に連結するように設計されている。集光対物レンズについては、様々な実施例を用いることができ、一具体例は、Hsuehに付与されている米国特許第5,336,215号に開示されている。可調整集光対物レンズを設けることによって、OCTサブシステムのための光干渉計の一部として、光プローブ光の光路長を変更することができる。対物レンズ5600及び患者インタフェース3300の動きによって、OCTの参照ビームとイメージング信号ビームとの間の光路長の差分が制御不能に変化し、これによって、OCTによって検出されるOCT深さ情報が劣化することがある。これは時間領域OCTシステムのみではなく、スペクトル/フーリエ領域及び周波数掃引OCTシステムにおいても生じることがある。
図13及び図14は、可調整集光対物レンズに関連する技術的課題を解決する例示的な画像誘導レーザ手術システムを示している。
図13のシステムは、可動集光対物レンズ7100に連結された位置感知デバイス7110を備え、位置感知デバイス7110は、摺動可能マウント上の対物レンズ7100の位置を測定し、測定した位置をOCTシステムの制御モジュール7200に伝える。制御システム6100は、対物レンズ7100の位置を制御し、移動させて、OCT動作のためにイメージング信号ビームが伝播する光路長を調整することができ、レンズ7100の位置は、位置エンコーダ7110によって測定及び監視され、この情報は、OCT制御モジュール7200に直接供給される。OCTシステムの制御モジュール7200は、OCTデータの処理において3次元画像を構築する際、患者インタフェース3300に対する集光対物レンズ7100の動きによって生じた、OCT内の干渉計の参照アームと信号アームとの間の差分を補償するアルゴリズムを適用する。OCT制御モジュール7200によって算出されたレンズ7100の位置の変化の適切な量は、制御モジュール6100に伝えられ、制御モジュールは、レンズ7100を制御して、その位置を変更する。
図14は、OCTシステムの干渉計の参照アーム内の反射ミラー6230又はOCTシステムの光路長遅延アセンブリ内の少なくとも1つの一部が、可動集光対物レンズ7100に固定的に取り付けられており、対物レンズ7100が移動すると、信号アーム及び参照アームの光路長が同じ量だけ変化する他の例示的なシステムを示している。この場合、スライド上で対物レンズ7100が動いた場合、OCTシステムの光路長差分が自動的に補償され、更に演算によって補償を行う必要はない。
画像誘導レーザ手術システムの上述の具体例では、レーザ手術システム及びOCTシステムは、異なる光源を使用している。レーザ手術システムとOCTシステムとを更に完全に統合した具体例では、手術用レーザビームのための光源としての手術用フェムト秒レーザが、OCTシステムのための光源としても使用される。
図15は、光モジュール9100内のフェムト秒パルスレーザが、手術のための手術用レーザビーム及びOCTイメージングのためのプローブ光ビームの両方を生成するために使用される具体例を示している。ビームスプリッタ9300は、レーザビームを、手術用レーザビーム及びOCTのための信号ビームの両方としての第1のビームと、OCTのための参照ビームとしての第2のビームとに分割する。第1のビームは、第1のビームの伝播方向に垂直なx方向及びy方向にビームを走査するx−yスキャナ6410と、ビームの拡がり角を変更して、標的組織1001における第1のビームの集光を調整する第2のスキャナ(zスキャナ)6420とを介して方向付けられる。この第1のビームは、標的組織1001において手術を実行し、この第1のビームの一部は、患者インタフェースに後方散乱し、対物レンズによって、OCTシステムの光干渉計の信号アームのための信号ビームとして回収される。この戻り光は、参照アーム内の反射ミラー6230によって反射され、時間領域OCTのための可調整光遅延要素6220によって遅延された第2のビームに結合され、標的組織1001の異なる深さをイメージングする際に、信号ビームと参照ビームとの間の光路差が制御される。制御システム9200は、システム動作を制御する。
角膜に対する実際の手術例によって、良好な手術結果を得るためには、数百フェムト秒のパルス幅で十分である場合があり、一方、十分な深さ分解能のOCTのためには、より短いパルス、例えば、数十フェムト秒以下のパルスによって生成されるより広いスペクトル帯域幅が必要であることがわかった。この文脈においては、OCTデバイスの設計が手術用フェムト秒レーザからのパルスの継続時間を決定する。
図16は、単一のパルスレーザ9100を用いて、手術用ビーム及びイメージングビームを生成する他の画像誘導システムを示している。フェムト秒パルスレーザの出力光路内には、例えば、白色光生成又はスペクトル広帯域化等の光学非線形プロセスを用いて、通常、手術で用いられる数百フェムト秒の比較的長いパルスのレーザ光源からのパルスのスペクトル帯域幅を広げる非線形スペクトル広帯域化媒体9400が配設されている。媒体9400は、例えば、光ファイバ材料であってもよい。2つのシステムの光強度要求は、異なり、ビーム強度を調整するメカニズムは、2つのシステムにおけるこのような要求を満たすように実現できる。例えば、ビームステアリングミラー、ビームシャッタ又は減衰器を2つのシステムの光路に配設して、OCT画像を取得する際、又は手術を実行する際、患者及び敏感な器具を過度の光強度から保護するために、ビームの存在及び強度を適切に制御することができる。
実際の動作では、図8〜図16の上述の具体例を用いて、画像誘導レーザ手術を実行することができる。図17は、画像誘導レーザ手術システムを用いてレーザ手術を実行する方法の一具体例を示している。この方法では、システム内の患者インタフェースを用いて、手術下の標的組織に係合させ、標的組織を所定の位置に保持し、システム内のレーザからのレーザパルスからなる手術用レーザビーム及びシステム内のOCTモジュールからの光プローブビームを、患者インタフェースを介して標的組織に同時に方向付ける。そして、手術用レーザビームを制御して標的組織においてレーザ手術を実行し、OCTモジュールを動作させて、標的組織から戻る光プローブビームの光から標的組織内のOCT画像を取得する。取得されたOCT画像内の位置情報は、手術前又は手術中に、標的組織における手術用レーザビームの集光及び走査を調整するために、手術用レーザビームの集光及び走査に適用される。
図18は、眼のOCT画像の具体例を示している。患者インタフェース内の圧平レンズの接触面は、圧平の際に眼に加わる圧力に起因する角膜における歪み又は折り曲がりを最小化する曲率を有するように構成できる。患者インタフェースにおいて、眼の圧平が成功すると、OCT画像を取得することができる。図18に示すように、水晶体と角膜の曲率、及び水晶体及び角膜との間の距離は、OCT画像において特定可能である。上皮−角膜界面等の、より微細な特徴も検出可能である。これらの特定可能な特徴は、眼に対するレーザ座標の内部参照として使用してもよい。角膜及び水晶体の座標は、例えば、エッジ又はブロブ検出等の実績のあるコンピュータビジョンアルゴリズムを用いてデジタル化できる。一旦、水晶体の座標が確立されると、これらを用いて、手術のために、手術用レーザビームの集光及び位置決めを制御することができる。
これに代えて、較正サンプル材料を用いて、既知の位置座標の位置に参照マークの3次元アレイを形成してもよい。較正サンプル材料のOCT画像を取得して、参照マークの既知の位置座標と、取得されたOCT画像内の参照マークのOCT画像との間でマッピング関係を確立することができる。このマッピング関係は、デジタル較正データとして保存され、手術中に取得された標的組織のOCT画像に基づいて、標的組織の手術中に、手術用レーザビームの集光及び走査を制御する際に適用される。なお、OCTイメージングシステムは、例示的なものであり、この較正は、他のイメージング技術を介して取得された画像にも適用できる。
ここに開示する画像誘導レーザ手術システムでは、手術用レーザは、高開口数集光の下で、眼の内部(すなわち、角膜及び水晶体の内部)に強光子場/多光子イオン化を引き起こすために十分な比較的高いピークパワーを生成できる。これらの条件下では、手術用レーザからの1つのパルスは、焦点体積内(focal volume)にプラズマを生成する。プラズマの冷却の結果、よく定義されたダメージゾーン又は「気泡」が生じ、これは、参照点として用いることができる。以下では、手術用レーザによって生成されたダメージゾーンを用いて、OCTベースのイメージングシステムに対して手術用レーザを較正する較正処理について説明する。
OCTは、手術用レーザに対して較正され、標的組織において、OCTによって取得された標的組織のOCT画像内の画像に関連する位置に対して、手術用レーザを所定の位置で制御できるように、相対的な位置関係が確立された後、手術が実行できるようになる。この較正を実行するための1つの手法では、レーザによってダメージを与えることができ、及びOCTによってイメージングできる予め較正された標的又は「ファントム(phantom)」を使用する。ファントムは、材料が手術用レーザによって生成された光ダメージを永久的に記録できるように、例えば、ガラス又は硬化プラスチック(例えば、PMMA)等の様々な材料から形成することができる。また、ファントムは、手術標的と同様の光学的特性又は他の特性(例えば、含水率)を有するように選択できる。
ファントムは、例えば、少なくとも10mmの直径(又は供給システムの走査の直径)と、眼の上皮から水晶体への距離に亘る、又は手術システムの走査深度と同じ長さである少なくとも10mmの高さとを有する筒状材料であってもよい。ファントムの上面は、患者インタフェースに隙間なく一致するような曲面であってもよく、又はファントム材料は、完全な圧平を許容するように圧縮可能であってもよい。ファントムは、レーザ位置(x及びy)及び集光(z)の両方、並びにOCT画像を、ファントムに対して参照できるように3次元グリッドを有していてもよい。
図19のA〜Dは、ファントムの2つの例示的な構成を示している。図19のAは、薄いディスクにセグメント化されたファントムを示している。図19のBは、ファントムに亘ってレーザ位置を判定するための参照(すなわち、x座標及びy座標)としての参照マークのグリッドを有するようにパターン化された単一のディスクを示している。z−座標(深さ)は、スタックから個々のディスクを取り出し、共焦点顕微鏡下でこれをイメージングすることによって判定できる。
図19のCは、2つの片半分に分離することができるファントムを示している。図19のAのセグメント化されたファントムと同様に、このファントムは、x座標及びy座標においてレーザ位置を判定するために参照される参照マークのグリッドを含むように構造化されている。深さ情報は、ファントムを2つの片半分に分離し、ダメージゾーン間の距離を測定することによって抽出することができる。これらの情報を組み合わせて、画像誘導手術のためのパラメータを提供できる。
図20は、画像誘導レーザ手術システムの手術システム部分を示している。このシステムは、例えば、検流計又はボイスコイル等のアクチュエータによって駆動されるステアリングミラーと、対物レンズと、使い捨ての患者インタフェースとを含む。手術用レーザビームは、ステアリングミラーから対物レンズを介して反射される。対物レンズは、患者インタフェースの直後にビームを集光する。x座標及びy座標における走査は、対物レンズに対してビームの角度を変更することによって実行される。z−平面での走査は、ステアリングミラーのアップストリーム側のレンズのシステムを用いて、入射ビームの拡がり角を変更することによって達成される。
この具体例では、使い捨ての患者インタフェースの円錐部分は、空気によって区切られていても、中実であってもよく、患者に接触する部分は、曲面を有するコンタクトレンズを含む。曲面を有するコンタクトレンズは、溶融シリカ又は電離放射線による放射の際に色中心が形成されることを防ぐ他の材料から作製できる。曲率半径は、眼と互換性がある上限、例えば、約10mmに設定する。
較正処理の第1のステップは、患者インタフェースをファントムに連結することである。ファントムの曲率は、患者インタフェースの曲率に一致する。連結の後、処理の次のステップは、ファントムの内部に光ダメージを作成して、参照マークを生成することを伴う。
図21は、フェムト秒レーザによってガラス内に作成された実際のダメージゾーンの具体例を示している。ダメージゾーン間の間隔は、平均的に8μmである(パルスエネルギは、半値全幅で580fsの継続時間で2.2μJである)。図21に示す光ダメージから、フェムト秒レーザによって作成されたダメージゾーンは、よく定義されており、離散的であることがわかる。ここに示す具体例では、ダメージゾーンは、約2.5μmの直径を有する。図20に示すものと同様の光ダメージゾーンは、様々な深さでファントム内に作成され、参照マークの3次元アレイが形成される。これらのダメージゾーンは、適切なディスクを抽出し、共焦点顕微鏡下でこれをイメージングする(図19のA)ことによって又はファントムを2つの片半分に分割して、マイクロメータを用いて深さを測定する(図19のC)ことによって、較正されたファントムに対して参照される。x座標及びy座標は、予め較正されたグリッドから確立することができる。
手術用レーザによってファントムにダメージを作成をした後に、ファントムに対してOCTが実行される。OCTイメージングシステムは、OCT座標系とファントムとの間の関係を確立するファントムの3Dレンダリングを提供する。ダメージゾーンは、イメージングシステムによって検出可能である。OCT及びレーザは、ファントムの内部基準を用いて、相互較正してもよい。OCT及びレーザが互いに参照された後、ファントムを取り除くことができる。
手術前に、較正を検証してもよい。この検証ステップは、第2のファントムの内部の様々な位置に光ダメージを作成することを伴う。OCTによって、円形パターンを形成する複数のダメージゾーンをイメージングできるように、光ダメージは、十分に鮮明である必要がある。パターンが作成された後、第2のファントムは、OCTによってイメージングされる。手術前にOCT画像をレーザ座標と比較することによって、システム較正の最終的なチェックが行われる。
一旦、レーザに座標が提供されると、眼内でレーザ手術を実行できる。これは、レーザを用いた水晶体の光乳化(photo-emulsification)及びこの他の眼のレーザ治療を含む。手術は、いつでも停止することができ、前眼部(図17)を再イメージングして、手術の進行を監視することができ、更に、眼内レンズ(intraocular lens:IOL)を挿入した後に、(光によって又は圧平なしで)IOLをイメージングすることによって、眼内のIOLの位置に関する情報が得られる。医師は、この情報を利用して、IOLの位置の精度を高めることができる。
図22は、較正処理及び較正後の手術の具体例を示している。この具体例に示す画像誘導レーザ手術システムを用いてレーザ手術を実行する方法は、手術下の標的組織に係合(engage)し、標的組織を所定の位置に保持するシステム内の患者インタフェースを用いて、手術を実行する前の較正処理の間、較正サンプル材料を保持するステップと、システム内のレーザからのレーザパルスからなる手術用レーザビームを、患者インタフェースを介して、較正サンプル材料に方向付け、選択された3次元参照位置において、参照マークを焼付けるステップと、システム内の光干渉断層法(OCT)モジュールからの光プローブビームを、患者インタフェースを介して較正サンプル材料に方向付け、焼付けられた参照マークのOCT画像を捕捉するステップと、OCTモジュールと焼付けられた参照マークの位置座標間の関係を確立するステップとを有することが可能である。関係を確立した後、システム内の患者インタフェースを手術下の標的組織に係合(engage)させ、標的組織を所定の位置に保持する。レーザパルスからなる手術用レーザビーム及び光プローブビームは、患者インタフェースを介して標的組織に方向付けられる。手術用レーザビームは、標的組織内でレーザ手術を実行するように制御される。OCTモジュールは、標的組織から戻る光プローブビームの光から標的組織内のOCT画像を取得し、取得されたOCT画像内の位置情報及び確立された関係を手術用レーザビームの集光及び走査に適用して、手術中に、標的組織における手術用レーザビームの集光及び走査を調整するように動作する。このような較正は、レーザ手術の直前に行うことができるが、これらの較正は、手術の前に様々な間隔をあけて行い、この間隔の間に、較正のドリフト又は変化がないことを確かめる較正検証(calibration validation)を行ってもよい。
以下の具体例は、手術用レーザビームの整列のためにレーザ誘起光破壊副産物の画像を用いる画像誘導レーザ手術技術及びシステムを説明する。
図23A及び図23Bは、この技術の他の実施例を示しており、ここでは、標的組織内の実際の光破壊副産物を用いて、更なるレーザ配置を誘導している。例えば、フェムト秒レーザ又はピコ秒レーザであるパルスレーザ1710は、レーザパルスを含むレーザビーム1712を生成し、標的組織1001に光破壊を引き起こす。標的組織1001は、患者の体の一部1700であってもよく、例えば、一方の眼の水晶体の一部であってもよい。レーザビーム1712は、ある手術の効果を達成するために、レーザ1710のための光学モジュールによって、標的組織1001の標的組織位置に集光及び方向付けされる。標的表面は、レーザ波長及び標的組織からの画像波長を透過する圧平プレート1730によって光学的にレーザ光学モジュールに連結されている。圧平プレート1730は、圧平レンズであってもよい。イメージングデバイス1720は、圧平プレートが適用される前又は後(若しくはその両方)に、標的組織1001から反射又は散乱した光又は音波を回収し、標的組織1001の画像を捕捉する。そして、レーザシステム制御モジュールが捕捉された画像データを処理し、所望の標的組織位置を判定する。レーザシステム制御モジュールは、標準の光学モデルに基づいて、光学要素又はレーザ要素を移動又は調整して、光破壊副産物1702の中心が標的組織位置に重なることを確実にする。これは、手術の過程の間に光破壊副産物1702と標的組織1001の画像を継続的に監視し、各標的組織位置においてレーザビームが適切に配設されていることを確実にする動的な整列処理であってもよい。
一具体例では、レーザシステムは、2つのモードで動作させることができる。まず、診断モードでは、レーザビーム1712は、整列レーザパルスを用いて、初期的に整列され、整列のための光破壊副産物1702を生成し、次に、手術モードでは、実際の手術を実行するための手術用レーザパルスが生成される。両方のモードにおいて、ビーム整列を制御するために光破壊副産物1702及び標的組織1001の画像が監視される。図17Aは、レーザビーム1712内の整列レーザパルスを、手術用レーザパルスのエネルギレベルとは異なるエネルギレベルに設定できる診断モードを示している。例えば、イメージングデバイス1720によって光破壊副産物1702を捕捉するために組織内に顕著な光破壊を引き起こすために十分であれば、整列レーザパルスは、手術用レーザパルスよりエネルギが小さくてもよい。所望の手術の効果を提供するためには、この粗い目標設定の分解能が十分ではないことがある。捕捉された画像に基づいて、レーザビーム1712を適切に整列することができる。この初期の整列の後、レーザ1710を制御して、より高いエネルギレベルで手術用レーザパルスを生成して、手術を実行することができる。手術用レーザパルスは、整列レーザパルスとは異なるエネルギレベルを有するので、光破壊における組織物質の非線形効果によって、レーザビーム1712が診断モードの間のビーム位置とは異なる位置に集光されることがある。したがって、診断モードの間に行われた整列は、粗い整列であり、手術用レーザパルスが実際の手術を実行する手術モードの間に、各手術用レーザパルスをより精密に位置決めする更なる整列を実行してもよい。図17Aに示すように、イメージングデバイス1720は、手術モードの間に標的組織1001から画像を捕捉し、レーザ制御モジュールは、レーザビーム1712を調整して、レーザビーム1712の集光位置1714を標的組織1001内の所望の標的組織位置に配置する。この処理は、各標的組織位置毎に実行される。
図24は、まず、標的組織において、概略的にレーザビームの照準を合わせ、次に、光破壊副産物の画像を捕捉し、これを用いて、レーザビームを整列するレーザ整列の1つの実施例を示している。標的組織としての体の一部の標的組織の画像及びその体の一部の参照用の画像は、標的組織においてパルスレーザビームの照準を合わせるために監視される。光破壊副産物及び標的組織の画像は、パルスレーザビームを調整して、光破壊副産物の位置を標的組織に重ね合わせるために使用される。
図25は、レーザ手術における標的組織内の光破壊副産物のイメージングに基づくレーザ整列方法の1つの実施例を示している。この方法では、パルスレーザビームは、標的組織内の標的組織位置に照準を合わされ、初期の整列レーザパルスのシーケンスが標的組織位置に供給される。標的組織位置及び初期の整列レーザパルスによって生じた光破壊副産物の画像は、監視され、標的組織位置に対する光破壊副産物の位置が取得される。初期の整列レーザパルスとは異なる手術用パルスエネルギレベルを有する手術用レーザパルスによって生じた光破壊副産物の位置は、手術用レーザパルスのパルスレーザビームが標的組織位置に配置された際に判定される。パルスレーザビームは、手術用パルスエネルギレベルで手術用レーザパルスを供給するように制御される。パルスレーザビームの位置は、手術用パルスエネルギレベルにおいて、光破壊副産物の位置を、判定された位置に配置するように調整される。標的組織及び光破壊副産物の画像を監視しながら、手術用パルスエネルギレベルのパルスレーザビームの位置は、標的組織内の新たな標的組織位置にパルスレーザビームを動かす際、光破壊副産物の位置を、各判定された位置に配置するように調整される。
図26は、光破壊副産物の画像を用いるレーザ整列に基づく例示的なレーザ手術システムを示している。光学モジュール2010は、レーザビームを標的組織1700に集光し、方向付ける。光学モジュール2010は、1個以上のレンズを含んでいてもよく、更に1個以上の反射鏡を含んでいてもよい。光学モジュール2010内には、ビーム制御信号に応じて集光及びビーム方向を調整する制御アクチュエータが含まれている。システム制御モジュール2020は、レーザ制御信号を介してパルスレーザ1010を制御し、及びビーム制御信号を介して光学モジュール2010を制御する。システム制御モジュール2020は、標的組織1700内の標的組織位置からの光破壊副産物1702の位置オフセット情報を含む、イメージングデバイス2030からの画像データを処理する。画像から得られた情報に基づいて、レーザビームを調整する光学モジュール2010を制御するビーム制御信号が生成される。システム制御モジュール2020には、レーザ整列のための様々なデータ処理を実行するデジタル処理ユニットが含まれている。
イメージングデバイス2030は、光干渉断層法(OCT)デバイスを含む様々な形式で実現することができる。また、超音波イメージングデバイスを用いてもよい。レーザ焦点の位置は、イメージングデバイスの分解能で、焦点が標的に概略的に配置されるように動かされる。標的へのレーザ焦点の参照における誤差及び可能性がある非線形光学効果、例えば、自己収束によって、レーザ焦点の位置及び後の光破壊イベントを正確に予測することが困難になる。物質内でのレーザの集光を予測するモデルシステム又はソフトウェアプログラムの使用を含む様々な較正法を用いて、イメージングされた組織内でのレーザの粗い目標設定を行うことができる。標的のイメージングは、光破壊の前及び後の両方で行うことができる。標的に対する光破壊副産物の位置を用いて、レーザの焦点を移動させ、標的において又は標的に対して、レーザ集光及び光破壊プロセスをより良好に局所化させる。このように、実際の光破壊イベントは、後の手術用パルスの配置のために精密な目標設定を提供するために使用される。
診断モードの間の光破壊のための目標設定は、システムの手術モードにおける後の手術処理のために必要なエネルギレベルと比べて、より低い、より高い、又は同じエネルギレベルで実行できる。光学パルスエネルギレベルは、光破壊イベントの正確な位置に影響を与えることがあるので、診断モードにおいて異なるエネルギで実行される光破壊イベントの局所化を、手術のエネルギにおいて予測される局所化と関連付ける較正を行ってもよい。一旦、この初期の局所化及び整列を実行した後、この位置決めに対して複数のレーザパルス(又は単一のパルス)のボリューム又はパターンを供給することができる。更なるレーザパルスを供給する間に、更なるサンプリング画像を生成して、レーザの適切な局所化を確実にしてもよい(サンプリング画像は、より低い、より高い又は同じエネルギパルスを用いて取得してもよい)。一具体例では、超音波デバイスを用いて、キャビテーション気泡又は衝撃波、若しくは他の光破壊副産物を検出する。そして、この局所化は、超音波又は他の様式によって取得された標的の画像に関連付けることができる。他の実施の形態においては、イメージングデバイスは、単なる生体顕微鏡であってもよく、光干渉断層法等、オペレータによる光破壊イベントの他の光学的可視化であってもよい。初期の観察では、レーザ焦点は、所望の標的位置に動かされ、この後、この最初の位置に対して、パルスのパターン又はボリュームが供給される。
特定の具体例として、精密な表面下光破壊のためのレーザシステムは、1秒あたり百〜十億パルスの繰返し率で光破壊を生成することができるレーザパルスを生成するための手段と、標的の画像及びその画像へのレーザ集光の較正を用いて、手術の効果を生成することなく、表面下の標的にレーザパルスを粗く集光する手段と、表面下を検出又は可視化して、標的、標的の周りの隣接する空間又は物質、及び標的の近傍に粗く局所化された少なくとも1つの光破壊イベントの副産物の画像又は可視情報を提供する手段と、光破壊の副産物の位置を表面下の標的の位置に少なくとも一回関連付け、レーザパルスの焦点を移動させ、光破壊の副産物を表面下の標的に又は標的に対する相対的位置に位置決めする手段と、少なくとも1つの更なるレーザパルスの後続するトレインを、光破壊の副産物の表面化の標的の位置への上述した精密な関連付けによって示される位置に対するパターンで供給する手段と、後のパルスのトレインの配置の間、光破壊イベントの監視を継続し、イメージングされている同じ又は改訂された標的に対して、後続するレーザパルスの位置を微調整する手段とを含むことができる。
上述した技術及びシステムを用いて、高繰返し率レーザパルスを、切断又は体積分解の用途に必要とされる連続的なパルス配置に必要な精度で、表面下の標的に供給することができる。これは、標的の表面上の参照源の使用の有無にかかわらず行うことができ、及び圧平の後の又はレーザパルスの配置の間の標的の動きを考慮に入れることができる。
本明細書は、多くの詳細を含んでいるが、これらは、如何なる特許請求の範囲又は特許請求可能な範囲を制限するものではなく、特定の実施の形態の特定の特徴の記述として解釈される。本明細書において、別個の実施の形態の文脈で開示した幾つかの特徴を組み合わせて、単一の実施の形態として実施してもよい。逆に、単一の実施の形態の文脈で開示した様々な特徴は、複数の実施の形態として別個に実施してもよく、適切な如何なる部分的組合せとして実施してもよい。更に、以上では、幾つかの特徴を、ある組合せで機能するものと説明しているが、初期的には、そのように特許請求している場合であっても、特許請求された組合せからの1つ以上の特徴は、幾つかの場合、組合せから除外でき、特許請求された組合せは、部分的組合せ又は部分的な組合せの変形に変更してもよい。
Claims (20)
- 白内障の眼の手術のための方法において、
前記眼の水晶体内の手術標的領域を判定するステップと、
統合された手術処置内で、水晶体の嚢胞上に切込みを形成する前に、レーザパルスを適用して、前記判定された標的領域の一部を光破壊するステップとを有する方法。 - 前記レーザパルスを適用するステップは、前記眼の角膜上に切込みを形成する前に実行される請求項1記載の方法。
- 前記標的領域は、水晶体の核を含む請求項1記載の方法。
- 前記統合された手術処置は、
パルスレーザ光源を使用して前記標的領域を光破壊するステップと、
前記パルスレーザ光源を使用して、前記水晶体の嚢胞上に切込みを形成するステップと、
前記パルスレーザ光源を使用して、前記眼の角膜上に切込みを形成するステップとを有する請求項1記載の方法。 - 前記切込みは、多平面の切込み、弁状の切込み、自己封止する切込み、部分的な切込み及び全厚に亘る切込みのうちの1つである請求項4記載の方法。
- 前記嚢包の切込みの形成は、
実質的に閉じた気泡の輪を生成して嚢包の蓋を定義するステップと、
前記輪に沿って間隔を空けて気泡を配置し、前記嚢包の蓋の除去を容易にするステップとを有する請求項4記載の方法。 - 前記統合された手術処置は、
前記嚢包の切込み及び前記角膜の切込みを介して、光破壊された物質を除去するステップを有する請求項4記載の方法。 - 前記統合された手術処置は、
前記形成されている前記角膜の切込み及び前記嚢包の切込みを介して、前記水晶体の嚢胞に眼内レンズを挿入するステップを有する請求項4記載の方法。 - 前記統合された手術処置は、
前記眼内レンズの挿入の間、前記水晶体の嚢胞を膨張させるステップと、
前記眼内レンズのオプティック部分の心合わせ及び前後の位置決めの少なくとも1つを最適化するように前記眼内レンズのハプティック部分を配置するステップとを有する請求項8記載の方法。 - 前記統合された手術処置は、
前記水晶体の嚢胞を収縮させ、前記眼内レンズの挿入に続いて、制御された手法で、前記嚢包の前部及び後部を前記眼内レンズに近付け、前記眼内レンズの心合わせ及び前後の位置決めを最適化するステップを有する請求項8記載の方法。 - 前記光破壊は、
標的領域の境界を判定するステップと、
前記標的領域の後部領域に前記レーザパルスを集光するステップと、
前記標的領域の後部領域より前の領域に前記レーザパルスを集光するステップとを有する請求項1記載の方法。 - 前記角膜の切込み及び前記嚢包の切込みにトロカールを挿入するステップを更に有する請求項1記載の方法。
- 前記トロカールは、前記角膜及び前記嚢包の少なくとも1つと実質的に水密接触を形成するように挿入される請求項12記載の方法。
- 前記統合された手術処置は、
前記トロカールを介して手術器具を挿入するステップと、
前記トロカールを介して、処置の間、前記眼の体液を管理するステップと、
前記トロカールを介して、前記嚢包に眼内レンズを挿入するステップとのうちの少なくとも1つを含む請求項12記載の方法。 - 前記統合された手術処置は、
前記眼の容積体に生理的に適切な粘弾性流体を注入することによって、前記眼の一部の形状を維持するステップを有する請求項1記載の方法。 - 前記眼の一部の形状を維持するステップは、
前記嚢包の切込みを介する光破壊された核の除去に関連して、前記水晶体に粘弾性流体を注入するステップを有する請求項15記載の方法。 - 前記統合された手術処置は、
傾斜ミラーを介して、前記水晶体の周辺領域に光学的にアクセスするステップを更に有する請求項1記載の方法。 - 白内障手術を実行するための方法において、
眼の上に物理的な切込みを形成する前に、統合された手術デバイスによって、レーザパルスからなるビームを方向付け、除去される水晶体の一部を断片化するステップと、
前記統合された手術のデバイスが前記断片化された水晶体の一部にアクセスするための部分的又は完全な厚さの嚢包の切込みを形成するステップと、
前記切込みを介して、前記断片化された水晶体の一部を前記眼から除去するステップと、
前記眼内の前記除去された断片化された水晶体の一部の位置に、前記切込みを介して、眼内レンズを挿入するステップとを有する方法。 - 角膜の切込み及び前記嚢包の切込みを横断して、実質的に水密を維持する取出可能なトロカールを配置するステップを更に有する請求項18記載の方法。
- 眼の水晶体に方向付けられ、眼の上に物理的な切込みを形成する前に、水晶体の一部を断片化し、前記断片化された水晶体の一部にアクセスするための角膜の切込み及び嚢包の切込みを形成するように構成された多目的パルスレーザと、
前記角膜の切込み及び嚢包の切込みを介して、前記断片化された水晶体の一部を前記眼から除去するように構成された吸引デバイスとを備える眼科手術デバイス。
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