本出願書類で提供される発明は、検体の検出または分析用バイオフォトニックセンサーに関する。非周期的なフォトニック構造を備えるセンサーは、国際特許出願PCT/US2010/22701に基づいた、国際公開公報WO2010/088585 A1(「Chemical/Biological Sensor Employing Scattered Chromatic Components in Nano‐Patterned Aperiodic Surfaces」)に記載される。
本発明は、感度が改良されたバイオセンサー、および、生体分子(例えば検体)の検出における使用に特に適した実施形態を提供する。本発明によるバイオフォトニックセンサーは基板を備える。基板は、決定論的な、非周期的パターンに応じて配置されたナノ構造および当該基板上の当該ナノ構造間に位置する絹材料(例えば絹フィブロイン)を含む生物学的界面を有する。バイオフォトニックセンサーは、光源を照射すると、分光的特徴を生成することができるので、検体の存在または検体の変化を指し示すことができる。
本発明のバイオフォトニックセンサーは以下のように特徴付けられる。センサーは基板を備えてもよい。基板は、固体支持体を提供するための任意の適切な材料から成ってもよい。適切な材料の非限定的な例には、例えば、半導体材料または金属が挙げられる。いくつかの実施形態では、基板は、低指数および/または高指数の誘電性プラットフォームを備えてよい。いくつかの実施形態では、基板は水晶を含んでよい。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの非周期的パターンにしたがって、構造を基板の表面上に配置してよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの非周期的な、決定論的パターンにしたがって、構造を配置してよい。いくつかの実施形態では、構造は基板の表面からの突出部であってよい。例示的な構造としては、ナノピラー、付着させた粒子、および/またはナノホールが挙げられてよい。当該構造は任意の形状、例えば、円形、円筒状、楕円形、四角形、三角形の形状を有してよい。いくつかの実施形態では、当該構造は、任意の材料から形成されてよい。例えば、当該構造は、金などの金属で形成されてもよい。他の例において、当該構造はクロムから形成されてよい。いくつかの実施形態では、異なる構造は異なる材料から形成されてよい。
いくつかの実施形態では、隣接構造間の距離(例えば、構造間の距離)は約50nmから約500nmであってよい。隣接構造間の距離は約100nmから約300nmであってよい。隣接構造間の距離は約300nmから約400nmであってよい。いくつかの実施形態では、当該距離は、当該構造の中心から測定してよい。当該距離は、当該構造の境界から測定してよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのナノ構造の高さは、他の値を用いてもよいが、約40nmであってよい。ナノ構造の半径は、他の値を用いてもよいが、約100nmであってよい。絹は、本明細書に記載されるように、当該構造の間、および/または、当該構造の上部に付着(deposited)されてよい。
センサーは、電子ビームリソグラフィー、イオンビームミリングまたはナノインプリントリソグラフィーなどの任意の製造技術にしたがって製造してよい。当該製造は、大きな表面積の上で複製させてよい。いくつかの実施形態では、センサーは、薄膜などの、ポリジメチルシロキサン(PDMS)またはポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の透明なソフトポリマー上で複製させてよい。室温のナノインプリンティングを複製に用いてよい。いくつかの実施形態では、センサーの寸法(例えば、直径、へり(edge))は約1mm以下であってよい。
構造の非周期的パターンは、周期性を示さない任意のパターンであってよい。いくつかの実施形態では、非周期的パターンは並進周期性を示さない。非周期的パターンは、直交方向の両方に沿った、1Dの決定論的で非周期的な膨張ルール(inflation rules)(例えばフィボナッチルール)の、交互性に基づいた、簡易な決定論的アルゴリズムにしたがって構造を配置することによって生成させてよい。いくつかの実施形態では、非周期的構造を、自動化させた大域最適化法(global optimization techniques)を用いて決定してよい。
非周期的パターンは、フィボナッチ、スー・モースおよび/またはルーディン・シャピロ数列;ペンローズ格子(例えばペンローズ・タイル)、素数配列、および/またはLシステムに基づいてよいが、他の数系を使用してもよい。非周期的パターンは、例えば、互いに素の関数(co−prime function)、ガウス素数、アインシュタイン素数、ガロア体(Galois fields)、原子根、平方剰余数列、リーマンゼータ(Riemann’s zeta)およびL関数などの数論的関数に基づいて生成させてもよい。例えば、スー・モース配列(array)は、非周期的な膨張(aperiodic inflation):A‐>AB,B‐>BA(ここでAとBは構造の存在または不在を表す)の2Dの一般化(generalization)により生成させてよい。ルーディン・シャピロ数列(array)は、以下の2文字の膨張(inflation):AA−>AAAB,AB−>AABA,BA−>BBAB,BB−>BBBAの反復により生成させてよい。
いくつかの実施形態では、センサーは暗箱で囲ってよい。箱は小型であってよい。箱は、センサーを照射するための光を受け取るためのアパーチャを備えてよい。箱は、センサーにより散乱される光を受け取るためのアパーチャを備えてよい。いくつかの実施形態では、いずれかのアパーチャは拡大鏡を備えてよい。
光源は、箱のアパーチャに連結させてよい。光源でセンサーを照射してよい(例えば、光をセンサー上に投射する)。いくつかの実施形態では、光源を用いて光をセンサーの表面上に投射してよい。光線は、センサーの表面に垂直に向けられてよい。いくつかの実施形態では、光源は、センサーの表面に対して、グレージング入射で光を投射してよい。光線は表面に並行に向けられてよい。
いくつかの実施形態では、光源は任意の角度でセンサー上に投射されてよい。光源は、異なる角度で光を投射するために調節可能であってよい。光がセンサー上に投射されてよい角度は、例として、センサーの様式(例えば、非周期的パターン、材料)、センサー上に投射する光の波長、および/または、検出する検体に基づいて決定してよい。いくつかの実施形態では、光源はピボット(pivot)上に配置されてよい。光源とピボットはコンピューターに連結されてよい。コンピューターは、センサーの様式、検出される検体、および/または任意の他の要因に基づいて、光が投射されてよい角度を決定してよい。コンピューターは、決定した角度にまでピボットが回転するように作動してよい。
光源は任意の波長の光を投射してよい。いくつかの実施形態では、光源は白色光を投射してよい。いくつかの実施形態では、光源は広帯域スペクトル光を投射してよい。光源からの光は、干渉性または非干渉性であってよい。いくつかの実施形態では、光源は、スーパーコンティニウムの電磁放射線源であってよい。光源は、レーザー(例えば、固体レーザー、フォトニック結晶レーザー、半導体レーザー)であってよい。
センサーは光源からの光を散乱させてよい。いくつかの実施形態では、センサーは、暗視野の顕微鏡内で光を散乱させてよい。散乱は、光のパターンを形成させてよい。カメラ(例えば、電荷結合素子カメラ、すなわちCCDカメラ)は、センサーによって散乱される光のパターンを受け取ってよい。カメラは、光のパターンを処理して信号(例えば、散光の画像)を生成してよい。コンピュータープロセッサは、カメラからの信号を受け取って、信号を分析することにより、検体の存在を決定してもよい。
非周期的なパターン化ナノ構造を有するセンサーは、例として、回析および/または反射を介して光を散乱させてよい。散光は、センサーと関連付けられた分光的特徴を示してよい。分光的特徴の特性は、センサーの表面上の少なくとも1つの検体の存在で変化してよい。
いくつかの例においては、理論により拘束されることを意図しないが、センサーの表面での屈折率(単数または複数)は、センサーの分光的特徴に影響を与え得る。センサー上(例えば、構造の上または構造の間(in between))に存在する検体は、表面の屈折率を変化させ得る。屈折率の変化により、センサーによって散乱される光は異なる分光的特徴を示してよい。
いくつかの例においては、理論により拘束されることを意図しないが、非周期的パターンの構造に閉じ込められる準定常波が、センサー内で、いくつかの長さスケールでの多重散乱により形成されてよい。センサー上に投射される光の入射角と光周波数が、準定常波との効率的なカップリングを達成する場合、センサーの分光的特徴の周波数成分は、広帯域の共鳴特性(resonance features)を示し得る。検体は、電磁放射線間の相互作用に干渉し得るので、センサーにより散乱される光は異なる分光的特徴を示し得る。
いくつかの例においては、理論により拘束されることを意図しないが、センサーは臨界モード(critical modes)(例えば、高Q臨界モード)を示してよい。いくつかの実施形態では、センサーの分光的特徴としては、臨界モードの励起を伴うフォトニックバンドギャップ内のピークを挙げてもよい。非周期的パターンを有するセンサーの臨界モードは、センサーの表面上の屈折率(単数または複数)の変化に敏感であってよい。したがって、検体が屈折率を変化させる場合、センサーによって散乱される光は、異なる分光的特徴を示し得る(例えば、少なくとも1つの周波数シフトを示し得る)。
当該特徴は測色的(colorimetric)であってよい。分光的特徴の色は、センサーによる光の多重散乱により共鳴的に誘導されてよい。いくつかの実施形態では、当該特徴は、広帯域での散乱の指標であってよい。分光的特徴の特性は、いずれかの周波数で生じてよい。例えば、特性は、電磁放射線の可視領域で生じてよい。特性は、電磁放射線の赤外領域で生じてよい。当該特徴は、角度的に、スペクトル的に、および/または、空間的に分解されてよい。当該特徴としては、散光の不均一な角度分布を挙げてもよい。当該特徴および/または当該特徴の特性は局在化してよい。例えば、当該特徴は空間的に局在化してよい。
非周期的なパターン化ナノ構造を有するセンサーの表面を、試料と接触させてよく、接触後のセンサーの分光的特徴を、少なくとも1つの検体が試料中に存在するかどうかを決定するために分析してよい。いくつかの実施形態では、試料は溶液に溶解した物質(例えば、水溶液)であってよい。センサーを溶液中に浸漬してもよい。1または複数の溶液の液滴をセンサーの表面上に適用してもよい。例えば、センサーの表面上に1または複数の溶液の液滴を適用するために、スポイトを使用してもよい。当該表面上に所定の量の溶液を適用するために、ピペットを使用してもよい。いくつかの実施形態では、試料は固体であってよい。固体の粒子をセンサーの表面上に直接配置してもよい。いくつかの実施形態では、付着性を有する材料(例えば、粘着性のある材料)中に固体を懸濁してもよい。一定量の材料をセンサー上に塗布してもよい。
検体の存在を、分光的特徴の1または複数の光学パラメーターの変化に基づいて決定してもよい。例えば、検体の存在を、センサーの分光的特徴の空間的色分布の変化に基づいて決定してもよい。いくつかの実施形態では、検体がセンサー上に存在する場合、検体はセンサー表面の屈折率を変化させる。検体とセンサーの組み合わせは、センサーにより散乱される光の波長が単独で作用するのとは異なる波長で光を吸収し、および/または、散乱させ得る。いくつかの実施形態では、センサーの使用者は、センサーおよび検体によって散乱される可視光に関して、1または複数の変色(色調変化)を感知する。例えば、センサーは、その表面上に検体が存在しない場合、青色光を散乱してもよい(例えば、センサー用参照データ)。検体が存在する場合、検体とセンサーは赤色光を散乱してもよい。いくつかの実施形態では、センサーの使用者は、散光の波長に関して空間的パターンの1または複数の変化を感知する。例えば、センサーは、その表面上に検体が存在しない場合、第1のパターンにしたがって青色光を散乱してもよい。検体が存在する場合、検体とセンサーは第2のパターンにしたがって青色光を散乱してもよい。
いくつかの実施形態では、センサーの分光的特徴はピークを示してよい。ピークは、センサーの1または複数の共鳴反応(resonant responses)を伴ってよい。共鳴ピークは、後方散乱を伴ってよい。共鳴ピークは、センサーに関する散乱断面積と関連付けされていてよい。共鳴ピークは、センサーの後方反射の共鳴(back‐reflection resonance)を伴ってよい。本明細書に記載の共鳴ピークのいずれもが狭い線幅を有してよい。いくつかの実施形態では、検体の存在を、分光的特徴の共鳴スペクトルの特性の変化に基づいて検出してもよい。いくつかの例において、本明細書に記載の共鳴ピークのいずれかの周波数シフトは、検体の存在を示し得る。いくつかの例において、センサーの臨界モードの励起を伴うピークの周波数シフトは、検体の存在を示し得る。いくつかの例において、周波数シフトの規模は、存在する検体量に対応し得る。
いくつかの実施形態において、検体の存在を、センサーの空間的特徴の強度分布の変化に応じて決定してもよい。強度分布の変化は相関に基づいて決定してよい。当該変化は2D自己相関に基づいて決定してよい。いくつかの実施形態では、画像自己相関関数(image autocorrelation function)(ACF)を決定してよい。例えば、アレイ面(array plane)での点(x、y)における電界強度(field intensity)値を別の点(x’、y’)における電界強度と比較して、2点間の距離の関数としてマッピングしてもよい。強度分布関数の変動における分散を決定してもよい。いくつかの実施形態では、分散は、側方変位がゼロの極限において適切に正規化された離散的な(discrete)ACF値であってよい。
当該分散のパーセント変化は検体の存在を示してよい。いくつかの例において、パーセント変化は、検体が存在することを決定するための閾値を超えなければならない。例えば、分光的特徴の強度分布の分散は、ヘモグロビンが存在することを示すために、少なくとも4%増加する必要があり得る。分光的特徴の強度分布の分散は、グルコースが存在することを示すために、少なくとも8%増加する必要があり得る。いくつかの例において、検体が存在することを示すために、パーセント変化は所定の範囲内に収まらなければならない。分散が4%から7%まで変化する場合、ヘモグロビンは存在し得る。分散が7%を超える場合、分光的特徴の変化は異なる検体に起因すると考えられ得る。別の例において、分散が8%から12%まで変化する場合、変化はグルコースの存在に起因すると考えられ得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の変化を任意の組み合わせに用いて、検体の存在を決定してもよい。例えば、グルコースの存在は、グルコースおよびセンサーによって散乱される光の空間的パターンを変化させ得る。単独で作用するとセンサーは青色光を散乱させ得る一方で、グルコースとセンサーは、相俟って、青色光の代わりに赤色光を散乱させ得る。グルコースの存在は、分光的特徴の強度分布の分散を9%変化させ得る。したがって、本システムの使用者は、本明細書に記載の変化の任意の組み合わせに基づいて、グルコースが存在することを決定してよい。
いくつかの実施形態では、「スマートスライド」検出プラットフォームを、フォトニック技術とバイオポリマーエンジニアリングを組み合わせることにより、すなわち、ナノスケールの絹層の制御可能な付着を伴った、ナノパターン化非周期的表面と、決定論的な光散乱の特徴を組み合わせることにより、生成させた。
バイオフォトニックセンサーの表面上に向けられた入射光は、偏光を有するかまたは有しない任意の波長での電磁波であり得る。いくつかの実施形態では、光源は白色光である。
生物学的界面の表面トポロジーの変化を伴う分光的特徴は、利用勝手のよい操作可能な波長を提供する可視領域で検出可能である。例えば、分光的特徴の検出は、暗視野の顕微鏡を採用し得る。
いくつかの実施形態では、分光的特徴は、比色分析による空間分布パターンである。
生物学的界面は、基板上のナノ構造のパターンの間に位置する(例えば、蒸着させた(deposited))タンパク質などの生物材料を含む。ナノ構造パターンに関する構成要素の高さおよび入射光の波長に応じて、タンパク質層(例えば、絹材料)は、約1nmから10nm、または、約2nmから5nm(境界値を含む)の範囲にある、極薄であってよい。
いくつかの実施形態では、優れた光学的特性を有する任意の生体適合性および/または生分解性のポリマーを使用してよい。いくつかの実施形態では、可視スペクトルにおける透過(transmission)が90%を超える任意のポリマーを使用してよい。いくつかの実施形態では、光学的透明性が絹材料の透明性に匹敵し得る任意のポリマーを使用してよい。優れた光学的特性を有する例示的なバイオポリマーとしては、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、キチン、ポリヒドロキシアルカノエート、プルラン(pullan)、デンプン(アミロース、アミロペクチン)、セルロース、アルギン酸塩、フィブロネクチン、ケラチン、ヒアルロン酸、ペクチン、ポリアスパラギン酸、ポリリシン、ペクチン、デキストラン、および関連バイオポリマー、またはそれらの組み合わせが挙げられる。例示的なバイオポリマーとしては、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン、ポリフマル酸、ポリ無水物、および/または関連するコポリマーが挙げられる。
いくつかの実施形態では、生体適合性および/または生分解性ポリマーを絹フィブロイン溶液と混合させて、センサーの基板上に付着させてもよい。バイオポリマーを水中で加工するか、および/または、絹フィブロインと混合させてもよい。
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の非周期的なナノ構造間に付着される絹材料の厚みは、約0.5nm、約1.0nm、約2.0nm、約3.0nm、約4.0nm、約5.0nm、約6.0nm、約7.0nm、約8.0nm、約9.0nm、約10nm、約11nm、約12nmまたはそれ以上である。絹材料などのタンパク質層の界面は、単一のタンパク質層(例えば、絹フィブロイン単層)、または、タンパク質(単数)もしくは、同一タンパク質であってもなくてもよいタンパク質(複数)の多層を含むことが可能である。タンパク質層は、基板上のナノ構造パターン上に制御された態様で付着させ得;そして、多種のタンパク質の単層を付着させる場合、タンパク質層の厚みは、各回、ナノメートルの増分で、増大可能である。
本発明は、絹タンパク質の使用により、決定論的で非周期的パターンとマルチスペクトルな比色の特徴に基づいた機能化されたナノ構造の製造が可能になるという発見に少なくとも基づいている。絹繊維から抽出した精製した絹が、最近、フォトニックス用バイオポリマー材料プラットフォームとして紹介され(Amsden et al.,22 Adv.Mater.1−4(2010))、ナノフォトニックスおよびオプトエレクトロニクス装置と相互作用することが示された。それらは、絹の有する、優れた機械的性質、光学的透明度、および、単一のタンパク質の単層の形態を変化させることを含む、材料の特徴を制御する能力のためである(Adato et al., 2009;Amsden et al.,2010;Amsden et al.,17 Opt.Express Adv.Mater.21271−279(2009);Lawrence et al., 9 Biomacromolecules 1214−20(2008);Omenetto & Kaplan, 2 Nat. Photon. 641−43(2008);Jiang et al.,17 Adv.Funct.Mater. 2229−37(2007);Schroeder,"Number Theory in Science & Communication,"Springer−Verlag (1985))。ナノ粒子の格子(lattice)上に薄層の精製した絹を付着させる(例えば、スピンコーティングする)ことにより、これらの特性をスマートスライドアセンブリ中に組み入れることができる。
本明細書中で使用する場合、用語「絹フィブロイン」は、カイコのフィブロイン、および昆虫またはクモの絹タンパク質を含む。例えば、Lucas et al、13 Adv.Protein Chem.,107(1958)を参照せよ。例えば、本発明に有用な絹フィブロインは、限定はされないが、Antheraea mylitta; Antheraea pernyi; Antheraea yamamai; Galleria mellonella; Bombyx mori; Bombyx mandarina; Galleria mellonella; Nephila clavipes; Nephila senegalensis; Gasteracantha mammosa; Argiope aurantia; Araneus diadematus; Latrodectus geometricus; Araneus bicentenarius; Tetragnatha versicolor; Araneus ventricosus; Dolomedes tenebrosus; Euagrus chisoseus; Plectreurys tristis; Argiope trifasciata;およびNephila madagascariensisを含む、多数の種によって産生されたものであってよい。
一般に、本発明で用いる絹を、任意のかかる生物によって産生してよく、または、人工的方法、例えば、絹タンパク質を産生するための細胞または生物の遺伝子操作および/または化学合成が含まれる、によって調製してよい。本発明のいくつかの実施形態では、絹はカイコ(Bombyx mori)によって産生される。
当該技術分野で公知のように、絹は、より短い(約100アミノ酸)末端ドメイン(N末端およびC末端)に隣接した巨大な内部反復を有するモジュラー設計である。絹は高分子量(200〜350kDa以上)であり、転写物は10,000塩基対以上であり、アミノ酸は3000超である(Omenatto and Kaplan(2010)Science 329:528−531に概説)。カイコ絹の場合、より大きなモジュラードメインに、疎水性電荷基を有する比較的短いスペーサーが介在している。N末端およびC末端は、絹のアセンブリ(組み立て)およびプロセシング(アセンブリのpH調節が含まれる)に関与する。N末端およびC末端は、内部モジュールと比較してそのサイズが比較的小さいにもかかわらず、高度に保存されている。
以下の表1は、絹産生種および絹タンパク質の例示的なリストを提供する。
表1:絹産生種および絹タンパク質の例示的なリスト(Bini et al、(2003)、J.Mol.Biol.335(1):27−40から抜粋)。
フィブロインは、絹を産生する特定のクモおよび昆虫種によって産生される構造タンパク質の1形態である。カイコ(Bombyx mori)によって産生される繭絹は、安価で大量生産され、多数の商業的応用(織物など)に適切であるので、特に興味深い。
カイコ繭絹は、2つの構造タンパク質(フィブロイン重鎖(約350kDa)およびフィブロイン軽鎖(約25kDa))を含み、これらはセリシンと呼ばれる非構造タンパク質ファミリーと会合しており、セリシンがフィブロインと接着して繭を形成している。フィブロインの重鎖および軽鎖は、2つのサブユニットのC末端でジスルフィド結合している(Takei.F,Kikuchi,Y.,Kikuchi,A.,Mizuno,S.and Shimura,K.(1987)J.Cell Biol.,105,175−180;Tanaka,K.,Mori,K.and Mizuno,S.(1993)J.Biochem.(Tokyo),114,1−4;Tanaka,K.,Kajiyama,N.,Ishikura,K.,Waga,S.,Kikuchi,A.,Ohtomo,K.,Takagi,T.and Mizuno,S.(1999)Biochim.Biophys.Acta,1432,92−103;Y Kikuchi,K Mori,S Suzuki,K Yamaguchi and S Mizuno,Structure of the Bombyx mori fibroin light−chain−encoding gene:upstream sequence elements common to the light and heavy chain,Gene 110(1992),pp.151−158)。セリシンは、材料に粘着性を与える絹の高分子量の可溶性糖タンパク質成分である。これらの糖タンパク質は親水性であり、水中で沸騰させることによって繭から容易に除去することができる。
本明細書中で使用する場合、用語「絹フィブロイン」は、カイコ、クモ、または他の昆虫によって産生されるか、そうでなければ生成されるかどうかに関わらず、絹フィブロインタンパク質を指す(Lucas et al.,Adv.Protein Chem.,13:107−242(1958))。いくつかの実施形態では、絹フィブロインを、溶解したカイコ絹またはクモの糸を含む溶液から得る。例えば、いくつかの実施形態では、カイコ絹フィブロインを、Bombyx moriの繭から得る。いくつかの実施形態では、クモ絹フィブロインを、例えば、Nephila clavipesから得る。別のいくつかの実施形態では、本発明での使用に適切な絹フィブロインを、細菌、酵母、哺乳動物の細胞、トランスジェニック動物、またはトランスジェニック植物から採取した遺伝子操作した絹を含む溶液から得る。例えば、WO97/08315号および米国特許第5,245,012号(それぞれの全体が本明細書中で参照により援用される)を参照のこと。
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の組成物を構築するために使用する絹溶液は、フィブロインタンパク質を含み、本質的にセリシンを含まない。いくつかの実施形態では、種々の本発明の組成物を構築するために使用する絹溶液は、フィブロインの重鎖を含むが、本質的に他のタンパク質を含まない。他の実施形態では、種々の本発明の組成物を構築するために使用する絹溶液は、フィブロインの重鎖および軽鎖の両方を含むが、本質的に他のタンパク質を含まない。特定の実施形態では、種々の本発明の組成物を構築するために使用する絹溶液は、絹フィブロインの重鎖および軽鎖の両方を含み、いくつかのかかる実施形態では、絹フィブロインの重鎖および軽鎖は、少なくとも1つのジスルフィド結合を介して連結している。フィブロインの重鎖および軽鎖が存在するいくつかの実施形態では、これらは1つ、2つ、3つ、またはそれを超えるジスルフィド結合を介して連結している。
異なる絹産生種生物および異なる絹型が異なるアミノ酸組成を有するにもかかわらず、種々のフィブロインタンパク質は特定の構造的特徴を共有する。絹フィブロイン構造の一般的な傾向は、通常はグリシンとアラニンが交互に並ぶかアラニンのみによって特徴づけられるアミノ酸配列である。かかる立体配置により、フィブロイン分子がβシート高次構造に自己アセンブリされる。これらの「Alaリッチ」疎水性ブロックは、典型的には、嵩高い側鎖基を有するアミノ酸のセグメント(例えば、親水性スペーサー)によって隔てられている。
いくつかの実施形態では、フィブロインの疎水性ブロックのコア反復配列を、以下のアミノ酸配列および/または式によって示す:(GAGAGS)5〜15(配列番号1);(GX)5〜15(X=V、I、A)(配列番号2);GAAS(配列番号3);(S1〜2A11〜13)(配列番号4);GX1〜4 GGX(配列番号5);GGGX(X=A、S、Y、R、D、V、W、R、D)(配列番号6);(S1〜2A1〜4)1〜2(配列番号7);GLGGLG(配列番号8);GXGGXG(X=L、I、V、P)(配列番号9);GPX(X=L、Y、I);(GP(GGX)1〜4Y)n(X=Y、V、S、A)(配列番号10);GRGGAn(配列番号11);GGXn(X=A、T、V、S);GAG(A)6〜7GGA(配列番号12);およびGGX GX GXX(X=Q、Y、L、A、S、R)(配列番号13)。
いくつかの実施形態では、フィブロインペプチドは、ペプチド内に複数の疎水性ブロック(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20個の疎水性ブロック)を含む。いくつかの実施形態では、フィブロインペプチドは、4〜17個の疎水性ブロックを含む。
本発明のいくつかの実施形態では、フィブロインペプチドは、約4〜50アミノ酸長である少なくとも1つの親水性スペーサー配列(「親水性ブロック」)を含む。親水性スペーサー配列の非限定的な例には、以下が含まれる:TGSSGFGPYVNGGYSG(配列番号14);YEYAWSSE(配列番号15);SDFGTGS(配列番号16);RRAGYDR(配列番号17);EVIVIDDR(配列番号18);TTIIEDLDITIDGADGPI(配列番号19)、およびTISEELTI(配列番号20)。
特定の実施形態では、フィブロインペプチドは、上記で列挙した代表的スペーサー配列のいずれか1つに由来する親水性スペーサー配列を含む。かかる誘導体は、親水性スペーサー配列のうちのいずれか1つと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一である。
いくつかの実施形態では、本発明に適切なフィブロインペプチドはスペーサーを含まない。
述べたように、絹は繊維性タンパク質であり、モジュラーユニットが相互に連結して高分子量の高度に反復したタンパク質を形成することを特徴とする。これらのモジュラーユニットまたはドメイン(それぞれ、特定のアミノ酸配列および化学的性質を有する)は、特定の機能を提供すると考えられる。例えば、ポリアラニン(ポリA)およびポリアラニン−グリシン(ポリAG)などの配列モチーフは、βシートを形成する傾向があり、GXXモチーフは31へリックス形成に寄与し、GXGモチーフは剛性を付与し、GPGXX(配列番号22)はβらせん形成に寄与する。これらは、種々の絹構造体中の重要成分の例であり、これらの成分の配置および配列が絹ベース材料の最終的な材料の性質と深く関連している(Omenetto and Kaplan(2010)Science 329:528−531に概説)。
フィブロインタンパク質のβシートが積み重なって結晶を形成するのに対して、他のセグメントが無定形ドメインを形成することが認められている。これにより固い結晶セグメントと張りのある弾性半無定形領域との間に相互関係が生じ、絹に並はずれた性質を付与している。種々の絹産生種由来の反復配列およびスペーサー配列の非限定的な例を、以下の表2に示す。
表2:フィブロイン配列の疎水性成分および親水性成分(Bini et al、(2003),J.Mol.Biol.335(1):27−40から抜粋)
本明細書中で明確に例示した特定の絹材料を、典型的には、カイコ(B.Mori)によって紡ぎ出された材料から調製した。典型的には、繭を0.02M Na2CO3水溶液中で約30分間ボイルし、次いで、水で完全にリンスして接着剤様セリシンタンパク質を抽出する。次いで、抽出された絹を、室温のLiBr(9.3Mなど)溶液に溶解し、20%(重量)溶液を得る。次いで、得られた絹フィブロイン溶液を、本明細書中のいずれかの場所に記載の種々の用途のためにさらに処理することができる。当業者は、利用可能な他の供給源を理解しており、これらの供給源は十分に適切であり得る(上記表に例示の供給源など)。
Bombyx moriフィブロイン遺伝子の完全な配列は決定されている(C−Z Zhou,F Confalonieri,N Medina,Y Zivanovic,C Esnault and T Yangら、Fine organization of Bombyx mori fibroin heavy chain gene,Nucl.Acids Res.28(2000),pp.2413−2419)。フィブロインコード配列は、非反復性の5’末端および3’末端に隣接した、高度に反復し、且つGリッチな(約45%)コアを有する壮観な機構を示す。この反復コアは、12個の反復ドメインと11個の無定形ドメインが交互に並ぶアレイから構成される。無定形ドメインの配列は進化的に保存されており、反復ドメインは約208bpのサブドメインの種々の縦列反復によって相互に長さが異なる。
カイコフィブロインタンパク質は逆平行βシート層からなり、その一次構造は主に反復性アミノ酸配列(Gly−Ser−Gly−Ala−Gly−Ala)n(配列番号21)からなる。フィブロインのβ−シート構造は、材料の引張り強度を主に担い、引張強度はこれらの領域中に形成される水素結合に起因する。ケブラーより強いことに加えて、フィブロインは高弾性であることが公知である。歴史的に、これらの特質により、いくつかの領域(織物業が含まれる)でこの材料が適用されている。
フィブロインは、高分子レベルで3つの構造(絹I、絹II、および絹IIIと命名される)によってそれ自身が配列されていることが公知であり、最初の2つは天然で認められる一次構造である。絹II構造は、一般に、フィブロインのβシート高次構造をいう。絹フィブロインの他の主な結晶構造である絹Iは水和構造であり、絹フィブロイン分子の組織化前または整列前に必要な中間体であると見なされている。自然界では、絹I構造は、紡ぎ出された後に絹II構造に変換される。例えば、絹Iは、Bombyx mori絹腺から排出される天然形態のフィブロインである。絹IIは、絹紡糸中のフィブロイン分子の配列をいい、これはより高い強度を有し、しばしば商業的にさまざまに応用されている。前述のように、フィブロインのβシート形成結晶領域のアミノ酸配列は、疎水性配列が多数を占めている。絹繊維形成は、腺内でのフィブロイン溶液(30%wt/volまで)に作用する剪断および伸張応力が関与し、それにより、溶液中のフィブロインが結晶化する。この工程は、リオトロピック液晶相を含み、これは、紡ぎ出し(すなわち、液晶紡糸工程1)中にゲルからゾル状態に変換される。伸長流(elongation flow)からフィブロイン鎖が出来、液体はフィラメントに変換される。
絹IIIは、新規に発見されたフィブロイン構造である(Valluzzi,Regina;Gido,Samuel P.;Muller,Wayne;Kaplan,David L.(1999)."Orientation of silk III at the air−water interface".International Journal of Biological Macromelcules 24:237−242)。絹IIIは、主にフィブロイン溶液の界面(すなわち、空気−水界面、水−油界面など)で形成される。
絹は、結晶構造にアセンブリし、実際に、自己アセンブリすることができる。絹フィブロインを、所望の形状および高次構造(絹ヒドロゲル(WO2005/012606号;PCT/US08/65076)、極薄フィルム(WO2007/016524号)、厚膜、絶縁保護コーティング(WO2005/000483号;WO2005/123114号)、フォーム(foams)(WO2005/012606号)、エレクトロスパンマット(WO2004/000915号)、ミクロスフィア(PCT/US2007/020789)、3D多孔質マトリクス(WO2004/062697号)、固体ブロック(WO2003/056297号)、マイクロ流体装置(PCT/US07/83646;PCT/US07/83634)、電気光学装置(PCT/US07/83639)、および直径がナノスケール(WO2004/000915号)から数センチ(米国特許第6,902,932号)の範囲の繊維など)に構築することができる。上記出願および特許は、その全体が本明細書中で参照により援用される。例えば、絹フィブロインを薄くて機械的頑強なフィルムに処理することができ、このフィルムは優れた表面の品質および光透過性を有し、それにより、先端技術材料のための機械的支持体として作用する理想的な基板(金属薄膜およびコンタクト、半導体フィルム、誘電紛体、およびナノ粒子など)を提供する。
絹の固有の生理化学的性質により、本明細書に記載の用途などの多様な用途において使用することが可能となる。例えば、絹は、安定性、柔軟性および耐久性がある。さらに、有用な絹材料を、室温および水ベースで実施できる工程を通じて調製することができる。したがって、興味のある生体分子を絹材料中に容易に組み入れて、興味のある検体用アッセイのために「餌(bait)」として使用可能である。
さらに、絹ベースの材料を、分子レベルで滑らかおよび/または接着性を示すように調製することができる。いくつかの実施形態では、本発明によって提供され、そして/または本発明で利用される絹ベースの材料は、分子レベルで滑らか且つ接着性の両方を示す。分子レベルの平滑度および/または接着性を示す絹ベースの材料は、他の材料を使用しても不可能な特定の用途を可能とする。平滑度/粗さは、どのようにして実物体がその環境と相互作用するのかを決定する場合に重要な役割を果たす。一定の実施形態では、本発明によって提供され、および/または本発明で利用される絹ベースの材料は、生物学的表面(例えば、細胞および軟組織)に親和性を示す。さらに、本発明の一定の実施形態によって提供され、および/または本発明の一定の実施形態で利用される絹ベースの材料は、導電性材料(金属など)への優れた接着性を示す。本発明は、一定の絹材料が生物学的エレメントと非生物学的エレメント(例えば、フォトニックセンサーエレメント)との間の界面として作用することができるという認識を含む。
本発明の一定の実施形態によれば、いくつかの提供した絹ベースの材料を、湿潤時に粘着性(例えば、粘着能)を示すように調製することができる。この性質は、特に本明細書中に記載の表面平滑度と組み合わせた場合に、一定の絹材料を他のマトリクスで不可能な方法で非生物学的構成要素(例えば、フォトニックセンサー基板)を生物学的表面に付着させるナノスケールおよび/またはミクロスケールの粘着剤(例えば、接着剤)としての機能を果たすのに固有に適切にすることが可能である。
上記に例示したものなどの多くの種類の絹フィブロインを請求項に係る発明を実施するために使用してもよいが、Bombyx moriなどの蚕により産生される絹フィブロインが、最も普及されており、地球に優しく、再生可能な資源である。例えば、絹フィブロインは、B.moriの繭由来のセリシンから抽出することによって得てもよい。有機飼育の蚕繭もまた市販されている。しかしながら、クモの糸(例えば、Nephila clavipesから得る)、トランスジェニック絹、遺伝子操作した絹、例えば、細菌、酵母、哺乳細胞、トランスジェニック動物、またはトランスジェニック植物など由来の絹(例えば、WO97/08315号;米国特許第5,245,012号を参照されたい)、およびそれらのバリアントを含む、使用し得る多くの異なる絹が存在する。
既に述べたように、絹フィブロイン水溶液は、当該技術分野で公知の技術を用いて調製してよい。絹フィブロイン溶液を調製するための適切な方法は、例えば、米国特許出願第11/247,358号;WO2005/012606号;およびWO2008/127401号に開示される。次いで、絹水溶液は、絹フィルム、コンフォーマルコーティングもしくはコンフォーマル層、または3次元スキャホールド、またはエレクトロスパン繊維などの絹材料に加工することが可能である。ここでは、微量濾過工程を用いてもよい。例えば、調製された絹フィブロイン溶液を、遠心分離およびシリンジベースの微量濾過によってさらに処理した後に、さらに絹材料へと加工してもよい。この工程により、優れた光学的品質および安定性を有する絹フィブロイン溶液を生成可能である。微量濾過工程は、高品質の光学的なフィルムまたは単層の生成に望ましいであろう。
他の生体適合性および生分解性ポリマーを、絹タンパク質層中にブレンドしてよい。例えば、キトサンなどの、さらなるバイオポリマーは望ましい機械的性質を示し、水中で処理し、絹フィブロインとブレンドし、一般に光学的適用のための透明なフィルム、コンフォーマルコーティングまたはコンフォーマル層を形成することができる。他のバイオポリマー、例えば、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、キチン、ポリヒドロキシアルカノアート、プルラン(pullan)、デンプン(アミロース、アミロペクチン)、セルロース、アルギン酸塩、フィブロネクチン、ケラチン、ヒアルロン酸、ペクチン、ポリアスパラギン酸、ポリリシン、ペクチン、デキストラン、および関連バイオポリマー、またはそれらの組み合わせなど、を、特定の用途に利用することができ、合成生分解性ポリマー、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリオルソエステル、ポリカプロラクトン、ポリフマラート、ポリ酸無水物、および関連コポリマーなど、も選択的に使用することができる。絹タンパク質層にブレンドするために本明細書において選択されるポリマーは、絹タンパク質層の光学的品質または安定性に悪影響を及ぼすべきではない。
本発明によれば、絹ベースのバイオフォトニックセンサーは、興味のある検体の検出において感度の増大を提供する。いくつかの実施形態では、検体の量または濃度の決定は、分光的特徴の変化に基づいて定性的または定量的にモニターされてよい。検体の量または濃度の検出におけるバイオフォトニックセンサーの感度は、例えば、約10−9mol/L、約10−10mol/L、約10−11mol/L、約10−12mol/L、約10−13mol/L、約10−14mol/L、約10−15mol/L、約10−16mol/L、約10−17mol/L、および約10−18mol/Lと同じぐらい低くすることができる。
バイオフォトニックセンサーの絹界面(interface)は、本明細書に開示されるように、活性因子(active agent)を含んでもよく、または、活性基で官能化(機能化)することも可能である。この点に関して、活性因子または機能化した(functionalized)絹タンパク質は、バイオフォトニックセンサー上に適用される検体のための「受容体」として機能してよく、ここで、「受容体」と検体との間の相互作用は、バイオフォトニックセンサーの分光的特徴の変化をモニターすることによって検出および分析することが可能である。これらの変化を測定するのに用いられる光学的パラメーターは本明細書のいずれかにおいて記載される。
本発明によれば、上述したように、少なくとも1つの因子(agent)が、バイオフォトニックセンサーの上に付着させようとする絹材料中に添加されてよい。このような因子を添加することで、特定の用途に求められる任意の所定の分析情報を提供してよい。いくつかの実施形態では、求められる分析情報は、テスト試料中の1または複数の検体の存在または不在の決定(例えば、検出)である。いくつかの実施形態では、分析情報は、テスト試料中の1または複数の検体の相対的な量/レベルを提供する。いくつかの実施形態では、1または複数の検体に生じる、構造的および/または立体配座の変化に関する情報もまた得ることが可能である。
このような因子は、絹フィブロイン溶液を処理して絹タンパク質層にする前および/または間に、当該絹フィブロイン溶液中に添加してよい。付加的にまたは代替的に、絹材料をセンサーの表面上に付着させた後に、活性因子を当該絹材料の表面に結合させてもよい。例えば、1または複数の因子を、本明細書に記載される装置のナノ構造間に付着される絹材料に化学的に連結させてもよい。いくつかの実施形態では、本発明のバイオフォトニックセンサーを製造するために使用される絹材料は、1または複数の汎用的な補足モイエティおよび/またはタグ、例えば、アビジン、フラグ(flag)、His6、HAタグなどを取り込んでよい。次いで、かかるモイエティ/タグと特異的に相互作用する、任意の所望の「餌(bait)」分子を基板に添加して、所望の用途に適切な、ユーザー固有のアッセイ系を作製することができる。
活性因子(active agent)は、絹材料中に埋め込まれるか、または絹材料に連結/結合されることが可能な任意の材料であってよい。例えば、当該剤は、治療剤または生物材料、例えば、細胞(幹細胞を含む)、タンパク質、ペプチド、核酸(例えば、DNA、RNA、siRNA)、核酸アナログ、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、アプタマー、抗体またはその断片もしくは部分(例えば、パラトープまたは相補性決定領域)、抗原またはエピトープ、ホルモン、ホルモン拮抗剤、増殖因子または組換え増殖因子およびその断片およびバリアント、細胞接着メディエーター(RGDなど)、サイトカイン、細胞毒素、酵素、低分子、薬(drugs)、染料、アミノ酸、ビタミン、抗酸化剤、抗生物質または抗菌性化合物、抗炎症剤、抗真菌剤、ウイルス、高ウイルス剤、毒素、プロドラッグ、化学療法剤、またはそれらの組み合わせであってよい(例えば、PCT/US09/44117;PCT/US10/41615を参照のこと)。当該剤は、前述した剤の任意の組み合わせであってもよい。治療剤または生物材料のいずれか、またはそれらの組み合わせを封入することは望ましく、それは、封入した産物は、非常に多くの生物医学の目的に使用可能だからである。さらに、活性因子としては、神経伝達物質、ホルモン、細胞内シグナル伝達因子、薬学的に活性な因子、毒物、農薬、化学的毒素、生物学的毒素、微生物、および動物細胞、例えばニューロン、肝臓細胞、および免疫系細胞など、を挙げてよい。活性因子には、治療化合物、例えば薬理学的物質、ビタミン、鎮静剤、睡眠薬、プロスタグランジン、および放射性医薬品なども含まれ得る。
いくつかの実施形態では、生物学的指標として機能する因子は絹材料とともに使用することができ、その存在は、本明細書のいずれかに記載の1または複数のパラメーターによって検出および/または測定することができる。付加的にまたは代替的に、本明細書に記載されるように、本明細書に記載のバイオフォトニックセンサーを製造するために使用される絹材料は、活性化させて、それ自身または共同的にのいずれかにより、分析情報を提供する指標として機能させてよい。いくつかの実施形態では、本発明のバイオフォトニックセンサーの使用により測定または決定しようとする指標には、多種多様な生物学的、物理化学的および微生物学的指標が含まれる。これらには、限定はされないが、pH、pK、pI、イオン強度、ガス含有量、糖含有量、タンパク質含有量、従属栄養細菌数(HPC)、全大腸菌数(TC)、糞便性大腸菌数(FC)、糞便性連鎖球菌数(FS)、亜硫酸塩還元クロストリジウム(SRC)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびサルモネラ菌(Salmonella spp)、アンモニア、生物学的酸素要求量(BOD);化学的酵素要求量(COD)、塩化物、伝導性;懸濁溶解した固体および全固体;脂肪;硝酸塩、亜硝酸塩および全窒素;pH;リン酸塩およびリン、全量のリン、全量(TP)および可溶(SP)のタンパク質含量が挙げられる。これらの指標は、水などの試料の環境汚染物をモニターするのに特に適している。例えば、排水処理の有効性は、本発明のバイオフォトニックセンサーの使用により、上記に示したものなどの特定の汚染物の存在を決定することによりモニターしてよい。
さらに、本発明は、毒素および/または生物テロ剤の存在を検出するために使用してもよい。例示的な生物テロ剤には、限定はされないが、炭疽菌(Bacillus anthracis)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)の毒素、ペスト菌(Yersinia pestis)、大痘瘡(Variola major)、野兎病菌(Francisella tularensis)、アレナウイルス(Lassa、Machupo)、ブニヤウイルス(Congo−Crimean、Rift Valley)、糸状ウイルス(エボラ、マールブルク)ブルセラ菌種(Brucella species)、コクシエラ・バーネッティ、クラミジア・シッタシ、リケッチア・プロワツェキイ、サルモネラ菌、赤痢菌、大腸菌O157:H7、鼻疽菌(Burkholderia mallei)、類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)、クリプトスポリジウム・パルバム、コレラ菌(Vibrio cholerae)、トウゴマ(Ricinus communis)由来のリシン毒素、東部ウマ脳炎(Eastern equine encephalitis)、西武ウマ脳炎(Western equine encephalitis)、およびベネズエラウマ脳炎(Venezuelan equine encephalitis)が挙げられる。
いくつかの実施形態では、特には診断的用途の文脈において、本発明に有用な生物学的指標としては、特定の診断的指標に関連付けられる分子が挙げられる。例えば、感染病には、感染を引き起こすことが知られる微生物などの、対象から回収した生物試料において発見される感染性病原体の存在が関与する。いくつかの実施形態では、感染性因子は、真菌、植物、動物、細菌またはウイルス(バクテリオファージを含む)などの生物であってもよい。同様に、癌を検出または診断するために、特定の腫瘍関連タンパク質および/または抗体のレベルの上昇が当該技術分野において知られている。したがって、これらの癌関連または腫瘍関連要因は、疾病の指標として機能を果たし得る。他に多くの疾病および疾患もまた、特定の組合せのタンパク質、ホルモン、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、抗原、抗体、免疫細胞の型などの異常なレベルと関係することが知られており、それらの各々は、それ自身により、または、組み合わさって、疾病または疾患の兆候または高まる危険性を伝えるように機能し得る。したがって、本明細書に記載の発明は、患者の診断および/または病気の進行について補助するために、適切な試料中のこれらの指標のいずれかを検出および/またはモニターするために使用可能である。
本明細書において使用に適切な例示的な細胞としては、前駆細胞または幹細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、上皮細胞、内皮細胞、尿路上皮細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、口腔細胞(oscular cell)、軟骨細胞、軟骨芽細胞、骨芽細胞、破骨細胞、角化細胞、腎尿細管細胞、腎基底膜細胞、外皮細胞、骨髄細胞、肝細胞、胆管細胞、膵島細胞、甲状腺細胞、副甲状腺細胞、副腎細胞、視床下部細胞、下垂体細胞、卵巣細胞、精巣細胞、唾液腺細胞、脂肪細胞、および前駆細胞を挙げることができるが、それらに限定されるわけではない。また、活性因子は、上記に列挙した細胞のいずれかの組合せであってもよい。WO2008/106485号;PCT/US2009/059547号;WO2007/103442号も参照されたい。
絹フィブロインに組み込むことのできる例示的な抗体としては、アブシキマブ、アダリムマブ、アレムツズマブ、バシリキシマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、セルトリズマブ・ペゴル、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、ゲムツズマブ、イブリツモマブ・ティウキセタン、インフリキシマブ、ムロモナブ−CD3、ナタリズマブ、オファツムマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、アルツモマブペンテテート(altumomab pentetate)、アルシツモマブ、アトリズマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベシレソマブ、ビシロマブ、カナキヌマブ、カプロマブペンデチド、カツマキソマブ、デノスマブ、エドレコロマブ、エフングマブ(efungumab)、エルツマキソマブ(ertumaxomab)、エタラシズマブ、ファノレソマブ(fanolesomab)、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴリムマブ、イゴボマブ(igovomab)、イミシロマブ(imciromab)、ラベツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、ニモツズマブ(nimotuzumab)、ノフェツモマブメルペンタン(nofetumomab merpentan)、オレゴボマブ、ペムツモマブ(pemtumomab)、ペルツズマブ、ロベリズマブ(rovelizumab)、ルプリズマブ(ruplizumab)、スレソマブ(sulesomab)、タカツズマブテトラキセタン、テフィバズマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ビジリズマブ、ボツムマブ(votumumab)、ザルツムバブ、およびザノリムマブが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。また、活性因子は、上記に列挙した抗体のいずれかの組合せであってもよい。
例示的な抗生物質としては、アクチノマイシン;アミノグリコシド(例えば、ネオマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン);β−ラクタマーゼ阻害剤(例えば、クラブラン酸、スルバクタム);グリコペプチド(例えば、バンコマイシン、テイコプラニン、ポリミキシン);アンサマイシン;バシトラシン;カルバセフェム;カルバペネム;セファロスポリン(例えば、セファゾリン、セファクロル、セフジトレン、セフトビプロール、セフロキシム、セフォタキシム、セフェピム、セファドロキシル、セフォキシチン、セフプロジル、セフジニル);グラミシジン;イソニアジド;リネゾリド;マクロライド(例えば、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン);ムピロシン;ペニシリン(例えば、アモキシシリン、アンピシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、オキサシリン、ピペラシリン);オキソリン酸;ポリペプチド(例えば、バシトラシン、ポリミキシンB);キノロン(例えば、シプロフロキサシン、ナリジクス酸、エノキサシン、ガチフロキサシン、レバキン、オフロキサシン、など);スルホンアミド(例えば、スルファサラジン、トリメトプリム、トリメトプリム−スルファメトキサゾール(コ−トリモキサゾール)、スルファジアジン);テトラサイクリン(例えば、ドキシサイクリン(doxycyline)、ミノサイクリン、テトラサイクリンなど);アズトレオナムなどのモノバクタム;クロラムフェニコール;リンコマイシン;クリンダマイシン;エタンブトール;ムピロシン;メトロニダゾール;ペフロキサシン;ピラジンアミド;チアンフェニコール;リファンピシン;チアンフェニコール;ダプソン;クロファジミン;キヌプリスチン;メトロニダゾール;リネゾリド;イソニアジド;ピラシル(piracil);ノボビオシン;トリメトプリム;ホスホマイシン;フシジン酸;またはその他の局所用抗生物質が挙げられが、それらに限定されるわけではない。場合により、抗生剤は、抗菌ペプチド、例えばデフェンシン、マゲイニンおよびナイシンなど;または溶菌性バクテリオファージであってもよい。また、抗生剤は、上記に列挙した剤のいずれかの組合せであってもよい。PCT/US2010/026190も参照されたい。
例示的な酵素としては、ペルオキシダーゼ、リパーゼ、アミロース、有機リン酸デヒドロゲナーゼ、リガーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ラッカーゼ、および同類のものが挙げられるが、それに限定されるわけではない。また、成分間の相互作用を用いて、例えば、アビジンとビオチンとの間の特定の相互作用によって絹フィブロインを官能化してもよい。また、活性因子は、上記に列挙した酵素のいずれかの組合せであってもよい。治療剤または生物材料を絹フィブロイン層中に導入する場合、当技術分野において公知のその他の材料を該因子に添加してもよい。例として、該因子の成長(生物材料に関して)を促進する、それが絹層から放出された後に該因子の機能性を促進する、またはそれが絹に埋め込まれている期間の間、該因子が残存するかまたはその有効性を保持する能力を増加させる材料を添加することが望ましいであろう。挙げることのできる細胞増殖を促進するとして公知の材料としては、細胞増殖培地、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ウシ胎児血清(FBS)、非必須アミノ酸および抗生物質、ならびに成長因子および形態形成因子、例えば線維芽細胞成長因子(FGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、上皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF−I)、骨形態形成成長因子(BMP)、神経成長因子、および関連タンパク質などを使用してよい。成長因子は、当技術分野において公知である。例えば、Rosen&Thies,CELLULAR&MOLECULAR BASIS BONE FORMATION&REPAIR(R.G.Landes Co.,Austin,TX,1995)を参照されたい。絹による送達のためのさらなる選択肢としては、DNA、siRNA、アンチセンス、プラスミド、リポソームおよび遺伝物質の送達のための関連系;細胞のシグナル伝達カスケードを活性化するペプチドおよびタンパク質;ミネラル化または細胞由来の関連事象を促進するペプチドおよびタンパク質;フィルム−組織界面を改善する接着ペプチドおよびタンパク質;抗菌ペプチド;ならびにタンパク質および関連化合物が挙げられる。
あるいは、絹フィブロインをヒドロキシアパタイト粒子と混合してもよい(例えば、PCT/US08/82487号を参照されたい)。本明細書において述べたように、絹フィブロインは組換え起源であってよく、それは繊維状タンパク質ドメインおよびミネラル化ドメインを含む融合ポリペプチドの封入などの絹のさらなる修飾をもたらし、有機−無機複合材料を形成するために使用される。これらの有機−無機複合材料は、使用する繊維状タンパク質融合ドメインのサイズに応じて、ナノスケールからマクロスケールまで構築することができる(例えば、WO2006/076711号を参照されたい)。また、米国特許出願第12/192,588号も参照されたい。
絹フィブロインを、例えば、ジアゾニウムまたはカルボジイミドカップリング反応、アビジン−ビオチン(biodin)相互作用、または遺伝子改変などによって、溶液中または絹層の表面上で活性因子で化学修飾して、絹タンパク質の物理的性質および機能性を変化させることができる。例えば、PCT/US09/64673;PCT/US10/41615;PCT/US10/42502;米国特許出願第12/192,588号を参照されたい。
活性因子または生物材料を含むバイオフォトニックセンサーの絹タンパク質層は、細胞および/または活性因子の長期保存および安定化に適しうる。細胞および/または活性因子は、絹タンパク質に組み込まると、室温にて(すなわち22℃〜25℃)および体温(37℃)で少なくとも30日間安定している(すなわち少なくとも50%の残効性を維持する)ことができる。それ故に、温度感受性活性因子、例えば一部の抗生物質または酵素などは、冷凍することなく絹タンパク質層中に保存することができる。重要なことには、温度感受性生物活性因子は、絹光学的成分中で体内に(例えば、注射により)送達されて、これまでに想像されたよりも長い期間活性を維持することができる。例えば、PCT/US2010/026190号を参照されたい。
平面的で、決定論的で、非周期的な、ナノ構造パターンは、直交方向の両方に沿った、1Dの決定論的で非周期的な膨張ルール(例えばフィボナッチルール)の、交互性に基づいた、簡易な決定論的アルゴリズムにしたがって単位格子(unit cells)を配置することによって生成させてよい。あるいは、広帯域の散乱特性を有する非周期的構造は、自動化させた大域最適化法を用いて設計してよい。単位格子は、具体的な用途の必要性に応じて、任意の形状の、例えば、円筒、楕円形、四角形、三角形などの、ナノピラー、付着させた粒子またナノホールであってよい。
基板の決定論的な非周期的アレイは、数論およびLシステムに基づいて設計可能である。Williamsによって編集された「Symbolic Dynamics and Its Applications」;Am.Math.Soc.Publ.Providence,Rhode Island(2004);Macia,69 Rep.Prog.Phys.397−441(2006);Boriskina et al.,16 Opt.Express 18813−826(2008)。このような幾何学は、電磁放射線を複雑な比色パターン(例えば臨界モード)へと再分布させて、位相に敏感な構造色および「乱れ誘起(disorder‐induced)」の局在化を生じさせるので、それらの独特な能力について最近関心がもたれている。Boriskina et al.,2008;Lu et al.,10 Biomacromolecules 1032−42(2009)。これらの構造は、より高次元の面内散乱過程(in−plane scattering process)および系における臨界共鳴を励起することができる、多くの空間周波数を有する。
非周期的ナノパターン化基板は、限定はされないが、フィボナッチ、スー・モースおよびルーディン・シャピロ、ペンローズ格子、素数配列、Lシステムを含む、決定論的な非周期性に基づいて、様々な方法で設計可能である。さらに、新規な非周期的パターンを、互いに素の関数(co−prime function)、ガウス素数、アインシュタイン素数、ウラムの螺旋、ガロア体、原子根、平方剰余数列、リーマンゼータおよびL関数などの数論的関数によって生成可能である。
いくつかの実施形態では、ナノ粒子の非周期的アレイは、ガウス素数の分布に基づく(Williams,2004)。この構造は、位相に敏感な多重散乱過程を増進する、空間周波数の広がった背景放射(diffused background)に取り入れられる高密度のはっきりとした反射面(ブラッグピーク)を示す、際立った(singular)フーリエスペクトルを有する。
バイオフォトニックセンサーの決定論的な非周期的ナノパターン化基板は、限定はされないが、電子ビームリソグラフィー、イオンビームミリング、レーザーマイクロマシニング、およびプラズマエッチングを含む、当業者に既知のナノファブリケーション技術によって製造可能である。決定論的な非周期的ナノパターンは、標準的なナノインプリントリソグラフィーによる大きな面積上で複製可能である。基板は、限定はされないが、半導体、金属、低指数および高指数の誘導プラットフォーム、ガラス、プラスチック、エポキシ樹脂またはそれらの組み合わせを含む、ナノファブリケーション工程に適切な任意の材料を含み得る。
バイオフォトニックセンサーの絹材料は、絹フィブロイン含有水溶液を非周期的ナノパターン基板上に付着させ、当該絹フィブロイン溶液を乾燥させて薄層とすることによって調製してよい。この点に関して、絹フィブロインベースの溶液でコーティングされた基板を、例えば12時間などの一定時間、空気中に暴露してよい。絹フィブロイン溶液の付着は、例えば、スピンコーティング方法を用いて実施可能であり、ここで、絹フィブロイン溶液を基板上にスピンコーティングすることで、高さが不均一な薄膜の製造が可能となる。
いくつかの実施形態では、スマートスライドは以下の工程で調製し得る。非周期的な配列(geometries)で配置されるクロムナノ粒子(例えば直径200nm)を、電子ビームリソグラフィーを用いて水晶基板上で製造した。図1Cは、非周期的格子の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。次いで、構造を、Crナノ粒子間に絹層を付加することで完成させた。
いくつかの実施形態では、バイオフォトニックセンサーを、異なる生物医学機器の適用用に、マイクロタイタープレート、マイクロアレイスライド、試験管、ペトリ皿、およびマイクロ流体チャネルなどの液体試料用機器中に結合させてよい。
本発明の別の態様は、検体、例えば、標的の検出または分析方法に関する。当該方法は、決定論的な非周期的ナノ構造パターンを有する基板と、当該基板上のナノ構造パターン間に位置する絹材料を含む生物学的界面とを備える、バイオフォトニックセンサーの表面から散乱される第1の分光的特徴を得る工程;バイオフォトニックセンサーを検体に暴露する工程;バイオフォトニックセンサーの表面から散乱される第2の分光的特徴を得る工程;および、第2および第1の分光的特徴間の相違を決定して、検体を検出または分析する工程を含む。
当該方法は、さらに、検体の変化に応じて、バイオフォトニックセンサーの表面から散乱される分光的特徴の変化をモニターする工程を含んでよい。分光的特徴は、光源を用いてバイオフォトニックセンサーを照射する工程;光源を照射した場合にバイオフォトニックセンサーから散乱される分光的特徴を検出する工程;場合により、検出される分光的特徴を対応するカラー画像に変換する工程;および、場合により、分光的特徴に関するパターン認識または分析を実施して、バイオフォトニックセンサーの表面上の検体の存在または変化を検出する工程により得ることができる。
いくつかの実施形態では、バイオフォトニックセンサーを用いて環境をモニターしてもよい。バイオフォトニックセンサーを周囲環境中に単に配置して、バイオフォトニックセンサーの分光的特徴の変化をモニターすることで、環境特性の存在または変化をモニターすることができ、ここで、検体は、特定の活性因子または化学物質、活性因子または化学物質の変化、pH、水分レベル、レドックス状態、金属、光、ストレスのレベル、抗原結合、プリオン、その他の標的などの環境特性である。
いくつかの実施形態では、検出しようとする検体は、限定はされないが、血液、血漿、血清、消化管分泌物、組織または腫瘍のホモジネート、髄液、糞便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊髄液、腹水、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙、および前立腺液を含む、生物試料中に存在する。検出または分析しようとする検体を、バイオフォトニックセンサーに直接適用してもよい。あるいは、検体は媒体中に含まれていてよい。媒体を、次いで、バイオフォトニックセンサーに適用してもよい。媒体は、水溶液、液体、または使用者に便利な任意の溶媒であり得る。いくつかの実施形態では、媒体は絹フィブロイン溶液またはゲルであり得る。いくつかの実施形態では、検体または検体を含む媒体をさらに乾燥させて、薄層または単層としてもよい。
いくつかの実施形態では、検体の検出または分析方法は、バイオフォトニックセンサーの局所的屈折率の変動に応答する、バイオフォトニックセンサーの表面から散乱される光の周波数シフトによってモニターされる。
いくつかの実施形態では、ナノパターン化スマートスライド上の検体の存在の検出には、可視スペクトル領域における従来的な散乱顕微鏡を用いてよい。例えば、スマートスライドを暗視野顕微鏡下に配置してよく、集光装置(condenser)由来の白色光を次いで散乱させて、(「ナノキルト」と称される)構造色パターン(structural color pattern)へとスペクトル的に再配置させて、次いで、顕微鏡の像平面で構造色パターンを捉え得る。周期的回析格子の構造と異なり、非周期的ナノパターン化表面の散乱応答は、複雑でかつ決定論的な比色フィンガープリント(colorimetric fingerprint)を示し(図2)、それは、白色光照射下で、ガウス素数格子(GPL)(Williams,2004)から獲得される暗視野像を示す。
暗視野像は、2nmの解像度を有し、450nmから720nmの範囲をカバーして、非周期的格子の分光的応答マップを提供する、マルチスペクトルCCDカメラ(例えば、NuanceTM、CRi、Woburn、MA)を用いて得ることができる。
ナノスケールでの色の再分布は、構造によって誘導される複雑な散乱によって決定され得、比色検出用の多周波のスペクトルのベースラインを確立し得る。個々のスペクトル成分は非周期的アレイの表面上の異なる空間的パターンに応じてオーガナイズされるので、散乱過程には豊富な情報がある。例えば、図2および図2Cは、同一のGPL中のスペクトル分布および非周期的格子の特定の位置の約600x600nmの領域に対応するスペクトル応答の詳細を示す。
バイオフォトニックセンサーの非周期的多重散乱の状態は、乱れ誘起による光局在化効果(disorder‐induced light localization effects)の発生により、プラズモンまたはフォトニック結晶ベースのセンサーに匹敵する感度を達成可能である。表面トポグラフィーが乱されるので、格子の散乱特性が変化し、それに応じて、格子の表面上の異なるスペクトル成分の分布が変化する。全体的な散乱応答が、その結果、変化し、かかるスペクトルパターンの再分布により生じる明確な構造色変化がもたらされる。例えば、絹バイオフォトニックスライド上に追加の絹層を付着させることで、さらに、かかる光局在化効果を明らかにし得る。
いくつかの実施形態では、タンパク質の希釈用液を装置上にスピンコーティングすることにより、絹の薄層を絹スマートスライド装置(機器)上に付着させた。かかる工程により、タンパク質の厚みが30Å増加し、これは、タンパク質の単層に相当する。表面トポグラフィーを、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、スピンコーティングの前後で、表面を測定することにより定量化した(図3)。かかる絹の追加の層は、スマートスライドの表面上に既に含められた絹の層のように、スマートスライドの基板上のナノ構造間(例えば、クロムナノ粒子間)に位置する。
次いで、スマートスライドを、同一の照射条件を維持して、顕微鏡下に配置した。ベースライン像と比較しての全体的な変色を観察し、リアルタイムでの、無標識の態様での、タンパク質の単層の変動に応答する当該手法の有効性を明らかにした。図3Aおよび図3Bは、後処理なしの初めに検出された変色を示し、図3Cから図3Dは、画像を後処理して、520nmと590nmを中心とする散乱応答を表示させた、対応する変色を示す。いずれのケース(後処理の有無)においても、絹の単層の存在による比色のシフト(colorimetric shift)は明らかである。かかる極薄のタンパク質単層の検出は無標識である。
さらに、ナノキルトにコード化される決定論的な多重成分(角スペクトル、散乱強度、相関パターン)を情報源として使用して、可視スペクトル領域にある生物試料のリアルタイムなナノスケールの検出用の、多重パラメーター検出プラットフォームを定義可能である。
さらに、絹フィルムまたは絹層の、変化しやすい(labile)生化学的ドーパント用記憶行列(storage matrix)としての能力(Lu et al.,2009)により、スマートスライドアセンブリ上に生物学的に活性な基板を組み入れることで、読み出しの簡易さと感度が増加したアッセイを提供することが可能である。例えば、図3の推移(3Aから3Bと3Cから3D)に描かれる構造色変化は、1アトモル未満の表面タンパク質濃度の推定変化に対応する(Adato et al.,2009)。非周期的表面の工学的な多重スペクトルの散乱応答を活用することで、機能化した(functionalized)絹と組み合わせた、決定論的な非周期的格子を使用して、ナノスケールの感受性を、簡便で費用効果が高い、マイクロ流体構造用アプローチ、生物学的アッセイ、および、生物材料および動力学(dynamics)の無標識検出での、局所的な屈折率の変動に与えることが可能となる。
本発明の別の態様は、バイオフォトニックスライド;バイオフォトニックスライドを照射する光源;光源を照射した場合にバイオフォトニックスライドから散乱される分光的特徴を受け取り、場合により、受け取った分光的特徴を対応するカラー画像に変換する、検出器;および場合により、分光的特徴を認識または分析することで、バイオフォトニックスライドの表面上の検体の存在または変化を検出する画像処理回路を備える装置に関する。バイオフォトニックスライドは、決定論的な非周期的ナノ構造のパターンを有する基板と、当該基板上のナノ構造のパターン間に位置する絹フィブロイン単層を含む生物学的界面を備える。
いくつかの実施形態では、当該装置は、2次元的な、ナノスケールの、決定論的非周期的構造を有するバイオフォトニックスライド、白色光源、構造色パターンを受け取る従来的な暗視野のマイクロスペクトロスコピーを備える。このような装置は、空間相関画像分析(Petersen et al.,65 Biophys.J.1135‐46(1993)と組み合わせて、無標識のバイオセンシング装置として使用して、可視スペクトル領域にある、数十オングストロームの厚みを有するタンパク質層を検出する。
したがって、本明細書に記載のバイオフォトニックセンサーは、診断アッセイおよび環境モニタリングを含む、多種多様な応用において有用な手段を提供する。したがって、本発明は、試料を分析するための関連方法も含む。企図される方法では、本明細書中でより詳細に記載されるように、非周期的ナノ構造の突起を有するパターン化表面と、当該パターン化表面の突起間に付着された絹材料とを備える、バイオフォトニックセンサーユニットが提供される。本明細書に記載されるように、個々のこのような表面が、照射されたときに決定論的な(例えば、予測可能な)光散乱パターンを生成する。この「特徴的(signature)」パターンは、比較可能なテスト信号に関する参照として機能する。バイオフォトニックセンサーユニットを、分析しようとする試料と接触させる。バイオフォトニックセンサーユニットに適切な光源を用いて照射すると、分子間相互作用が生じて、テスト信号が生成される。当該方法における多様な工程のいずれかにおいて、固体支持体上で補足されない材料は、場合により、支持体から(および、したがって、任意の、支持体に結合した材料から)、分離されている。
センサーの構成要素(例えば、シルクベースの材料)と試料中に存在する検体との間に生産的結合(productive binding)(例えば、分子間相互作用)が存在する場合、参照の特徴に対して、結果として生じる光散乱パターンはシフトする。したがって、分光的特徴の変化は、センサー上の照射部位での分子変化の指標となる。特定の理論に拘束されることはないが、このようなシフトは、信号の増強効果に貢献する、絹の独特な光学的特性により少なくとも部分的に生じると考えられる。
結果として生じる信号(例えば、光散乱パターンおよびその変化)の分析は、ピークの位置の変化などの、少なくとも1つの光学的パラメーターに基づき、データは、(検体または他の任意の適切な対照群なしで得られた)参照と比較することができ、ここで、データ間の相違はテスト試料に関する分析情報を提供する。いくつかの実施形態では、光散乱パターンの測定変化は、特定の検体が試料中に存在するかまたは不在であることを示す分析情報を提供する。いくつかの実施形態では、光散乱パターンの測定変化は、特定の検体が、対照群の試料と比較して、増加または減少したレベルで試料中に存在することを示す分析情報を提供する。いくつかの実施形態では、光散乱パターンの測定変化は、検体の構造的または立体配座的な変化が存在することを示す分析情報を提供する。
企図されるプラットフォームおよび方法は、各試料の2または複数の分析のみならず、2または複数の試料の同時処理を可能とする、ハイスループットのマルチプレックスシステムに容易に適合できる。絹材料を含む、複数の非周期的ナノ構造のセンサーユニットが、多種多様なマルチプレックスシステム用途用チップ(例えばマイクロチップ)上で製造し得る。典型的には、複数のバイオフォトニックセンサーユニットを、チップ上の適切なアレイ(例えばマイクロアレイなど)に配置させる。当業者は、本明細書中に提供される記載にしたがって、最先端技術に照らし、それらの適切な応用および製造方法を容易に理解するであろう。
いくつかの実施形態では、チップは複数のセンサーユニットを備え、それらのそれぞれが、所定の分析情報を提供するように設計される。例えば、各センサーユニットは、感染症、免疫学的疾患、癌などの特定の臨床状態に関する指標を組み込まれた絹材料を含んでよい。例として、チップは複数のセンサーユニットを備えてよく、それらのそれぞれが、多様な感染性因子(例えば病原体または微生物)に反応するように設計される。感染症を有することが疑われる対象から回収した単一の生物試料を、このようなチップ上で同時に分析してもよい。1または複数の光学的パラメーターによって測定される、光散乱パターンのシフトは、どの感染性因子が試料中で検出され得るかに関して分析情報を提供し得る。他の例を挙げるならば、疾病や疾患に関連することが知られている生物学的分子(タンパク質、ホルモン、サイトカインなど)に結合する、たくさん並んだ因子(an array of agents)を含むように、チップを構成してもよい。テストしようとする対象から回収した生物試料をチップと接触させて、得られる光学読み出しパターンは、単独または集合的のいずれかで、疾病/疾患の診断、疾病/疾患の進行、治療効果のモニタリングのために、分析情報を提供してよい。
すでに論じたように、いくつかの実施形態では、分析情報を提供するのに使用される適切な光学的パラメーターには、周波数、振幅、相関、自己相関、2次元の自己相関、正規化された相関、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
企図したアッセイから回収してもよい生データには、限定はされないが、分光的特徴のピークの位置;信号の色変化;相関関数を信号へ適用することにより生成される2次データの分散;自己相関関数を信号へ適用することにより生成される2次データの分散;2次元の、正規化された自己相関関数を信号へ適用することにより生成される2次データの分散、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
本発明は本明細書中に記載の特定の方法論、プロトコール、および試薬などに制限されず、それ自体変化し得る。本明細書中で使用される専門用語は、特定の実施形態の説明のみを目的とし、特許請求の範囲のみによって規定される、本発明の範囲を制限することを意図しない。
文脈上明白に他の意味を示す場合を除き、本明細書中および特許請求の範囲中で使用される場合、単数形は、複数形への参照を包含し、逆も真である。実施例以外において、または他に指定のない限り、本明細書で使用される成分の量または反応条件を示す全ての数値は、全ての場合において、用語「約」で修飾されるものと理解すべきである。
特定した全ての特許および他の刊行物は、例えば、本発明と併せて使用することができるかかる刊行物に記載の方法論を説明および開示するために、本明細書中で参照により明確に援用される。これらの刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示のみを目的として提供される。これに関して、本発明者らが、先行発明または任意の他の理由によってかかる開示に先行する権利を持たないことを自認するとして解釈すべきではない。これらの書類の内容に関する日付または表示に関する全ての記述は、出願人が入手可能な情報に基づいており、これらの書類の日付または内容が正確であるという何らの自認をも構成しない。
他で定義しない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明に属する当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。任意の公知の方法、装置、および材料を本発明の実施または試験で使用することができるが、この点に関して、方法、装置、および材料を本明細書中に記載する。
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態および態様を例示する。関連分野の当業者にとって、本発明の精神または範囲を変更させることなく、様々な改変、付加、置換等が実施でき、かかる改変および変化は、後述する特許請求の範囲に規定される本発明の範囲内に包含されることは明らかである。以下の実施例は何ら本発明を制限はしない。
実施例1:回析格子の製造
周期的および非周期的ナノ粒子アレイを、電子ビームリソグラフィー(EBL)を利用して水晶基板上で製造した。製造プロセスフローは以下の通りである:180nmのPMMA950(ポリメチルメタクリレート)を水晶基板の上面でスピンコーティングし、当該基板を180℃で90秒間、ホットプレート上で穏やかに焼いた。次いで、10nmの薄さの連続的金フィルムを、レジストの上面でスパッタリングして、EBL書込み(writing)用の電子伝導を促進させた。ナノパターン形成用のRaith beam blanker(Raith,Dortmund,Germany)およびNanometer Pattern Generation System(NPGS)を装着したZeiss SUPRATM 40 VP SEM(Zeiss,Oberkochen,Germany)を用いて、ナノパターンを規定した。次いで、レジストを生成させて、40nmのCr薄膜を電子ビーム蒸着によって被覆させた。アセトン溶液を用いてリフトオフした後に、Crナノ粒子を有するアレイを得た。ナノパターン化アレイの、得られた特徴を、図9に示す。原子間力顕微鏡(AFM)により測定したところ、およそ40nmの高さと100nmの半径を有している。
実施例2:絹材料の製造
絹フィブロイン溶液の製造は既に記載されている(Perry et al.,2008;McCarthy et al.,54 J.Biomed.Mats.Res.139(2001))。簡潔には、未加工の(raw)フィブロインフィラメントに結合した水溶性糖タンパク質である、セリシンを、30〜60分間、0.02M Na2CO3水溶液中でB.moriの繭を煮沸することにより、絹糸(silk strands)から取り除いた。その後、残存する絹フィブロイン束を精製水で十分に注いで、糊状のセリシンタンパク質を抽出し、一晩乾燥させた。続いて、乾燥フィブロイン束を9.3MのLiBr水溶液に室温で溶解させるか、60℃で加熱して、20重量%溶液を得た。次いで、Slide−A−Lyzer(登録商標)3.5K MWCO透析カセット(Pierce社,Rockford,IL)を用いた水ベースの透析プロセスにより、48時間以上かけて、LiBr塩を溶液から抽出した。残存粒状物をいずれも遠心分離とシリンジベースのマイクロフィルトレーション(孔径5μm、Millipore社,Bedford,MA)にかけて除去した。この方法によって、光学的応用のために最小限の汚染物質を含み、散乱が減少した、8%〜10%(w/v)の絹フィブロイン溶液を得ることができる。
絹溶液は、所望により、希釈して低濃度にしてもよく、または、例えば約30%(w/v)に、濃縮してよい。例えば、WO2005/012606を参照されたい。簡単に説明すると、より低い濃度の絹フィブロイン溶液は、所望の濃度とするのに十分な時間にわたり、PEG、アミロースまたはセリシンなどの吸湿性ポリマーに対して透析してよい。さらに、絹フィブロイン溶液は、本明細書に記載されるように、1または複数の生体適合性ポリマー、例えばポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、コラーゲン、フィブロネクチン、ケラチン、ポリアスパラギン酸、ポリリシン、アルギネート、キトサン、キチン、ヒアルロン酸など;または、1または複数の活性因子、例えば細胞、酵素、タンパク質、核酸、抗体などと組み合わせることができる。例えば、WO04/062697およびWO05/012606を参照されたい。絹フィブロインはまた、絹タンパク質の物理的性質および機能性を変えるために、例えばジアゾニウムもしくはカルボジイミドカップリング反応、アビジン−ビオチン相互作用、または遺伝子改変などを介して、その溶液中で活性因子を用いて、化学的に修飾することもできる。例えば、PCT/US09/64673;PCT/US10/41615;PCT/US10/42502;米国特許出願第12/192,588号を参照されたい。
絹フィブロイン溶液の調製後、続いて、溶液をナノパターン化水晶基板上に注ぎ、層流フード中で空気乾燥させた。その後、すべての溶媒が蒸発して、固体のフィブロインタンパク質の絹のフィルムまたは構造層(conformational layers)が生じるまで、溶液を24から48時間放置して乾燥させた。基板上に成型した絹フィブロイン溶液の濃度および/または体積を調整することにより、2nmから1mmの厚みの、絹の、フィルムまたは構造層を生じさせることができる。あるいは、絹フィブロイン溶液を、様々な濃度およびスピン速度を使用して、基板上にスピンコーティングさせることで、1nmから100μmのフィルムまたは層を生成させることができる。これらの絹フィブロインフィルムは、優れた表面品質および光学的透明性を有する。
さらに、絹のフィルムまたは層は、例えば、ポリエチレングリコールにより活性化させてもよく(例えば、PCT/US09/64673を参照されたい)、および/または、均一または勾配のある態様で、活性因子が搭載されて、生物とともに培養させてもよい。例えば、WO2004/0000915;WO2005/123114;米国特許出願公報第2007/0212730号を参照のこと。他の添加剤、例えばポリエチレングリコール、PEOまたはグリセロールもまた絹層に搭載して、絹層の特徴、例えば、形態、安定性、柔軟性など、を変化させてもよい。例えば、PCT/US09/060135を参照のこと。例えば、酵素的重合によって、さらなる機能性を絹層に付与してよく、導電性ポリマーを、絹層と当該絹層を支持する基板との間に生成し、それによって電気活性絹マトリクスを作製し、電気光学装置を得ることが可能である。例えば、WO2008/140562号を参照されたい。
実施例3:暗視野散乱のセットアップおよび画像の獲得
図4B〜4Dおよび図5Fは、50x対物(開口数=0.5)でセットアップした後方散乱顕微鏡およびCCDデジタルカメラ(Media Cybernetics Evolution VF)を用いて、白色光照射下、暗視野で収集した。照射入射角は、図4Eに示されるように、アレイ面に対して約15℃であった。暗視野像および波長スペクトルを、開口数が0.8〜0.92を有する暗視野集光装置を用いて、透過形態(transmission configuration)においても測定した。透過光を(開口数が0.1まで減少する)1mmのアイリスにより、10x対物を用いて収集し、スペクトル画像を、オリンパス社のIX71顕微鏡に接続した高性能分光用(hyperspectreal)CCD(CRi Nuance FX)カメラを用いて得た(図6、図7、図8)。
実施例4:周期的回析格子の比色フィンガープリント
水晶基板上に被覆させたCrナノ粒子の周期的アレイの比色応答を手短に確認した。
各種格子定数の(図9に示される)100nmの半径と40nmの高さを有するCrナノディスクの2次元的周期回析格子を、EBLを用いて水晶基板上で製造した(例えば、実施例1の手順を参照されたい)。代表的な回析格子構造の走査型電子顕微鏡写真を図4Aに示す。図4Eに概略を記載した暗視野散乱の機構を用いて、アレイ表面へのグレージング角入射(θinc=75度)での非干渉性白色光源を用いて、アレイを照射し、顕微鏡の対物レンズを用いて、アレイ面に垂直な散乱線(scattered radiation)を収集した(例えば、実施例3の実験セットアップを参照されたい)。回析格子周期の増加により、図4Aに示されるように、比色応答(散乱波長)のレッドシフトの進展が生じた。周期的回析格子のこれらの比色応答は、古典的なBragg式によって適切に記載できる:
式中、Λは格子定数であり、λは入射光の波長であり、θincおよびθdifは、入射角および回析角であり(回析格子表面へ垂直に測定)、mは回折次数であり、n1およびn2は、それぞれ、回析格子および周囲の媒体の屈折率である。異なる格子定数(500nm〜800nm)に対応する計算した比色応答は、回析角の関数として変化した。さらに、スペクトル応答を、図4Eで記載するように、青色領域での結像レンズの限定角度収集効率(finite angular collection efficiency)によって決定した。特定の検体の存在によって摂動された(perturbed)周期的回析格子により散乱される放射(radiation)の独特の波長シフトは、比色分析による光学検出における伝達信号として伝統的に利用されている(Cunningham et al.,2002;Lin et al.,2002;Lee&Fauchet,2007;Xiao&Mortensen,2006;Morhard et al.,1997)。
実施例5:非周期的回析格子の比色フィンガープリント
並進不変対称性(translational invariance symmetry)を欠いた(それらは非周期的である)、決定論的な非周期的ナノパターン化フォトニック装置は、しかしながら、特定の光学的特性を有し、かつ、簡便な構成的法則によって作られた(Dal Negro et al.,10 J.Opt.A Pure Appl.Opt.064013(2008);Gopinath et al.,8 Nano.Lett.2423−31(2008))。従来的なリソグラフィー技術を用いて製造可能なこのような構造は、周期系と不規則系との間の中間的な形態であるが、予測理論に従う数学的法則に従っても設計される。(小体積の欠陥状態で光を効率的に捕捉する)従来のフォトニック回析格子またはフォトニック結晶センサーとは対照的に、非周期的フォトニックセンサーは、より広い表面積に対して局在化する特徴的な共鳴を持続させる。特に、ナノスケールの非周期的構造は、(「臨界モード」と呼ばれる)非常に複雑な構造共鳴の、高密度のスペクトルを有し、それにより、より高次元の多重散乱過程を通じた効率的な光子の捕獲および表面相互作用がもたらされて、屈折率の変化に対する感度が増大される(Boriskina&Dal Negro,16 Opt.Express 12511−522(2008);Boriskina et al.,16 Opt.Express 18813−826(2008))。これらの構造における臨界モードの複雑な空間的パターン(spatial patterns)により、(「比色フィンガープリント」と称される、)多重波で空間的に局在化したパターンを有する構造色検出が設計可能である。
周期的回析格子の構造と異なり、非周期的ナノパターン化表面の散乱応答は、図4B〜4Dに示されるように、非常に複雑な比色フィンガープリントを特徴とした。さまざまな程度の構造無秩序性を有する、主に3つの型の、決定論的な非周期的構造を使用した。具体的には、最小中心間距離間隔が300nmおよび400nmを有するCrナノ粒子のスー・モース(Dal Negro et al.,2008;Gopinath et al.,2008;Boriskina&Dal Negro, 2008;Boriskina et al.,2008;Moretti&Mocella,15 Opt.Express 15314−323(2007))(図4B)、ルーディン・シャピロ(Dal Negro et al.,2008;Gopinath et al.,2008;Boriskina & Dal Negro,2008;Boriskina et al.,2008;Dulea et al.,45 Phys.Rev.B 105−14(1992))(図4C)、およびガウス素数(Schroeder,"Number theory in science and communication,"Springer−Verlag,New York(1985))(図4D)アレイを、ナノ構造の非周期的パターンにおいて使用した。
これらの非周期的構造の空間的複雑性は、これらの空間的フーリエスペクトルの分光的特性によって記述可能であり、それは、単純な周期的構造とは対照的に、特徴的なフラクタル特性を有する逆格子空間を高密度に埋める(Schroeder,1985;Janot,"Quasicrystals:a Primer,"Oxford University Press,New York(1997);Ryu et al.,46 Phys. Rev.B 5162−68(1992);Macia,60 Phys. Rev.B 10032−036(1999))。特に、ガウス素数格子は、明確に定義された逆格子ベクトルを有する非周期的フーリエスペクトルを特徴とする一方で(ブラッグピーク)(Schroeder,1985)、より複雑なスー・モースおよびルーディン・シャピロ構造は、特異的(singular)連続かつ絶対的連続なフーリエスペクトルをそれぞれ示す(Dal Negro et al.,2008;Gopinath et al.,2008;Boriskina & Dal Negro,2008;Boriskina et al.,2008;Moretti & Mocella,2007;Dulea et al.,1992)。これらすべての非周期的表面が、より高次元の面内場散乱過程に貢献し、系の臨界共鳴を励起することが可能な、多くの空間周波数を有する。
これらの非周期的構造に白色光源を照射すると、それらは、図4に示されるように、高度にオーガナイズされた構造色パターンを生成した。(異なる決定論的な非周期的アレイから得られる追加のパターンを図10に示す。)
実験的に観察される比色フィンガープリントの原点(origin)は、3空間次元でのモデル構造に関する、厳密(rigorous)多重散乱理論を用いて説明可能である。
非周期的系は、典型的には、AndersonとBlochモードとの間の形質中間体(traits intermediate)を伴う、独特なフラクタルスケーリングと空間的局在特性を特徴とする、臨界モードの高密度のスペクトルを有する(Boriskina et al.,2008;Janot,1997;Ryu et al.,1992)。これらのモードが励起されると、非周期系の表面上に光子が効率的に捕捉可能であり、それにより、従来の光学的モードを用いて達成され得るものと比較して、表面の相互作用の増大が可能となる。Boriskina & Dal Negro,2008。
サブ波長粒子の非周期的アレイの、実験的に観察される比色フィンガープリントの原点を、周期的および非周期的2次元格子に配置されるCrナノ粒子からなるモデル構造に関して、3次元の光散乱シミュレーションを実行して分析した。これらの構造を、アレイ面に対してグレージング角(θinc=75度‐実験条件と整合する)での平面波入射により照射した。厳密GMT手法を利用して、散乱電場のアレイ面での遠視野散乱特性および強度分布を計算した。Mackowski,1994;Palik,"Handbook of optical constants of solids,"Academic Press,London(1998)。
かかる特徴的な多重スペクトル応答の形成は、例えば、ガウス素数アレイの場合、図5A〜5Dにおいて描写され得る。平面波を照射したガウス素数アレイの散乱スペクトルを計算することにより(図5E)、波長の関数としての、アレイの散乱効率の変動(粒子の全体積に対する散乱断面積の比、Gopinath et al.,2008)が明らかとなった。さらに、アレイ面での散乱強度パターンを計算することにより、異なる波長に対応する臨界モードの異なる空間分布が特徴付けられた(図5A〜5C)。赤−緑−青(RGB)という色の主要成分(波長630nm、520nm、および470nm)の比色(colorimetric)パターンをアレイ面で混ぜ合わせると(図5D)、図5Fに示されるように、白色光照射下で収集した、実験的に測定したデータに定性的に一致して、複雑な構造色パターン(比色フィンガープリント)が形成された。かかる複雑なパターンの形成は、ナノ構造化表面上の、個々の周波数成分の空間的局在化の可能性を示す。構造の非周期性を理由に、入射放射場(incoming radiation field)強度は、各所定の周波数において、多数の空間的方向へと再分布された。個々のスペクトル成分のモードに関連付けられた散乱場(scattered fields)を重ね合わせることにより、表面形状(surface geometry)によって決定される空間的比色パターン −多重スペクトルフィンガープリントを生成した。
決定論的な非周期的ナノ構造における構造色局在化を伴う多重スペクトルのフィンガープリントの形成により、散乱場でコード化されるスペクトルおよび空間情報のいずれもがブラッグ散乱以上の高感度な光学的検出用に読み出し可能な光学的装置を設計するための機構が提供される。
実施例6:タンパク質単層に対する非周期的構造の感度
非周期的ナノパターン化表面の、複雑で情報に富んだ比色フィンガープリント(例えば、「特徴(signature)」)を伝達信号として用いて、高感度な無標識散乱センサーを設計することが可能である。
非周期的ナノパターン化基板上のタンパク質単層(例えば、絹フィブロイン)の付着に応答して、非周期的ナノパターン化構造の比色フィンガープリント(Omenetto & Kaplan,2 Nat.Photonics 641‐43(2008))を実験的に調べた。バイオフォトニックセンサー用の生物学的界面として、絹を用いて、フォトニック格子上に単層を形成させた。これは、絹には、2nmから数ミクロンまでの制御可能な厚みを有する高度に均一な層を作成する能力があるためである。
周囲屈折率の変動に対する、様々な非周期的ナノパターンを有する基板上で形成される比色フィンガープリントの感度を、GMTシミュレーションを利用して比較した(図11および12を参照されたい)。シミュレーションの結果により、粗面散乱に適用される線形応答理論の全般的な原理と一致する、環境変化に対する、ガウス素数およびルーディン・シャピロアレイのフィンガープリントの高感度が明らかになった。
例えば、可視スペクトル領域において放射(radiation)を強く散乱させる、ガウス素数アレイ上で分析を行った(例えば、図11を参照されたい)。ガウス素数アレイの比色フィンガープリントおよび散乱スペクトルの両方において、いくつかの単層の増加で厚みが変化したタンパク質層の存在により誘導された、特徴的な変化を、図6で実験的に実証した。タンパク質層の存在下で測定される散乱スペクトルのシフト(図6E)を、タンパク質層の厚みに対してプロットしたピーク波長シフト(PWS)の傾きにより推定することによって定量化した。
図6Fで示された実験データのLinear Fitは、タンパク質単層(約20オングストローム)あたり約1.5nmの装置感度を示した。この値は、フォトニック結晶構造および表面プラズモンバイオセンサーに関して報告された値と同程度であった(Lee & Fauchet,2007;Adato et al.,2009;Willets & Van Duyne,58 Annu.Rev.Phys.Chem. 267−97(2007))。絹タンパク質の最小検出体積は、A(t)(D/M)として推定され、ここで、Aは、ガウス素数ナノパターン化アレイの総表面積であり(48.2x48.2μm2)、tはフィルムの厚みであり(2nm)、Dはタンパク質密度であり(1.4g/cm3)(Warwicker,7 Acta.Crystallogr.565‐71(1954))、Mはタンパク質の分子量である(375kDa)(Sashina et al.,79 Russ.J.Appl.Chem+869‐76(2006))。約17アトモルのタンパク質分子は、スペクトルピークの特徴的なシフトと比色パターン変化に寄与することが推定された。かかる検出限界は、ナノパターン化表面のサイズを最小化することにより改善され得る。
典型的には、ガウス素数アレイとして同一スペクトル領域で最適化されたブラッグ散乱効率を有する周期的回析格子を使用した場合、2〜5nmの厚み範囲では、タンパク質の検出は観察されないであろう。図7に示されるように、同一の実験形状(experimental geometry)で励起された周期的回析格子センサーは、試料の表面上の2〜5nmの厚みのタンパク質層の付着に反応しての何らのスペクトルシフトも示さなかった。20nmの厚みの層を周期的回析格子上に付着させたときに、散乱スペクトルのピークの小さなシフトに対応する、小さな比色応答が検出された(図7C)。周期的回析格子を用いた感度の増大は、後方散乱の強度を増加させて測定するか、または、構造的欠陥を導入して特定波長でのフォトニック結晶空洞(cavities)を形成させることによってのみ達成され得る(Cunningham et al.,2002;Lee & Fauchet,2007)。
他方、改変された比色フィンガープリントを有する非周期的表面は、絹ナノ層の場合、図8A〜8Dに示されたように、従来の暗視野顕微鏡を用いて、散乱放射場の個々のスペクトル成分の空間分布の特徴的な構造的変化を観察することによって、タンパク質単層を検出することができる。この検出機構は、ナノスケールのタンパク質層の存在によって摂動される構造共鳴のフィンガープリントを利用した。それ故、非周期的構造の場合、散乱放射のピーク波長シフトのみならず特徴的な比色フィンガープリントの空間構造の両方が、ナノスケールのタンパク質層の存在を検出するために利用可能である。
非周期的表面の構造色フィンガープリントの空間的変化は、露出面によって、および、絹被覆表面によって散乱される放射強度に関して実行される画像自己相関分析によって容易に定量可能である(Wiseman & Petersen,76 Biophys.J.963−77(1999);Bliznyuk et al.,167 Macromolecular Symposia 89−100(2001))。比色フィンガープリントG(ξ,η)の2次元的な画像自己相関関数(ACF)を、
(ここで、s(x,y)は変動空間信号であり、山括弧<>は空間領域に対する平均化(積分)を示す。)
として、適切な正規化による散乱データから得た。露出面および絹被覆表面から得た非周期的表面の構造色フィンガープリントの正規化ACFを次いで計算し、フィンガープリントの空間的変化を、側方変位がゼロの極限におけるACFの正規化(Wiseman & Petersen,1999;Bliznyuk et al.,2001):
を評価することによって容易に得ることができる、それらの分散を比較することによって定量化した。
散乱放射の主要なRGBスペクトル成分で実施したかかる分析により、非周期系の屈折率の摂動と関連する、有意な構造色変化が明らかになり得る。
かかる効果は、図8Eおよび8Fに示されるように、ガウス素数表面の散乱スペクトルのピーク波長(622nm)で自己相関分析を実行することによって実証した。図8Eでは、タンパク質層の異なる厚みに関する2次元的な強度の自己相関関数から抽出した1次元のACFプロファイルをプロットした。ACFの初期減衰は、非周期的構造における局所的な短距離(short‐range)自己相関を反映した一方で、強度パターンの長距離自己相関は、ACFの周期的振動をもたらした(Bliznyuk et al.,2001)。タンパク質の薄層の存在により誘導される(興味のある任意の所定の波長での)構造色パターンの変化は、散乱場の強度変動の分散を計算することによって定量化可能である。図8の実験結果は、摂動された比色フィンガープリントの正規化ACF分散と(長距離振動を反映する)ACF振動挙動にコード化されるその複雑な空間構造の両方における実質的な変化を示す。これらの結果は、従来の暗視野顕微鏡を用いた、可視スペクトル領域における、タンパク質単層を検出するための非周期的ナノパターン化フォトニックセンサーの能力を実証した。
要すれば、臨界モードパターンは、タンパク質単層の形態変化に対して感受性を有するバイオフォトニックセンサー用に、表面検出構成要素として使用した。決定論的な非周期的次元を有するナノパターン化表面において比色フィンガープリントの周波数分解(resolved)空間分析を利用することにより、可視スペクトル領域において、分光的におよび空間的に、ナノスケール表面の変動を単一のタンパク質単層(20オングストローム)まで区別する能力をセンサーは実証した。センサーは本質的に従来のもの(Boriskina & Dal Negro,2008)と比較して局所的な屈折率の変化に、より高感度であったが、これは、多重光散乱形態において典型的である、位相の小さな変動の増大に基づく(Tsang et al.,2000;Maradudin,2007)。その感度の高さは、フォトニック結晶および表面プラズモンバイオセンサーと同程度である。水晶基板上のクロム(Cr)ナノ粒子の非周期的アレイにおける構造色局在化の原点は、暗視野散乱マイクロスペクトロスコピーとGeneralized Mie(ミー)理論(GMT)に基づく厳密な計算を組み合わせることによって説明された(Mackowski,11 J.Opt.Soc.Am.A 2851〜61(1994))。
さらに、ナノ構造の非周期的表面での臨界モードの複雑な空間パターンは、可視スペクトル領域において、画像自己相関分析により分析可能であり、構造色の分光的および空間的分布の両方でコード化される情報が同時に利用可能である大きなダイナミックレンジ、感度およびマルチプレックス能力を有する変換メカニズムが提供される。検出スキームは、従来の暗視野顕微鏡および標準的な画像自己相関分析を利用し、専用の機構を必要としなかった。他の様々なタイプの非周期的ナノパターンを用いて一貫して得られ得るこれらの結果は、非周期的ナノパターン化センサーが、従来の顕微鏡技術を用いて、可視スペクトル領域で、安価でリアルタイムな検体の検出に利用可能であることを示す。
実施例7:理論および分析
多粒子のGeneralized Mie理論。厳密GMT手法(多重極展開の厳密理論とも呼ばれる;Mackowski, 11 J.Opt.Soc.Am.A 2851−61(1994);Quinten & Kreibig,32 Appl. Opt.6173−82(1993);Xu, 34 Appl.Opt.4573−88(1995);Kreibig & Vollme,"Optical Properties of Metal Clusters,"Springer−Verlag,Berlin (1995);Bohren & Huffman,"Absorption and Scattering of Light by Small Particles,"John−Wiley & Sons, New York(1998))を用いて、実験データを解釈した。
GMTのアプリケーションドメイン(application domain)は球形散乱体に制限され得るが、それは、散乱問題の解析解(analytical solution)をもたらすので、非常に効率的なアルゴリズムが得られ得る。GMT手法の枠組みでは、Lナノ粒子のフォトニック構造での電磁場は、各粒子から散乱される部分場の重ね合わせとして構成されてよい。これらの部分的な散乱場のみならず入射場および内部場(internal fields)は、個々の粒子と関連する局所的座標系(coordinate systems)で表されるベクトル球面調和関数に直交的に展開された:
ベクトル球面調和関数に関する強力な追加(並進)原理の利用により、第l番目の(l−th)粒子の部分場の、アレイの任意の他の粒子と関連する局所的座標系での展開へと、級数展開の変換(並進)が可能になる。Lorenz−Mie多重極散乱係数(almn、blmn)に関する一般行列方程式は、電磁場の接線成分に電磁境界条件を適用し、無限級数展開を最大多重極次数(maximum multipolar order)Nに切り捨てる(truncating)ことにより得ることが可能である。
ここで、Ajlmnμν、Bjlmnμνは、原点(origin)lから原点jまでの並進の距離および方向に依存する、並進行列であり(Mackowski,1994;Quinten & Kreibig,1993;Xu,1995;Kreibig & Vollme, 1995)、
は、自由空間における第l番目の球のMie散乱係数であり(Bohren & Huffman,1998);および、plmn、qlmnは、入射場の展開係数である。切断行列方程式5を散乱係数のために求めたら、散乱、減衰および吸収断面のみならず散乱場の分布を、精度を、任意の所定のレベルで、正確に計算可能である。方程式5の数値解法は、十分に高度な多重極次数で行列方程式を切り捨てる場合、機械で正確に(machine precision)得ることができる。
比色フィンガープリントの画像自己相関分析。ナノ粒子アレイの比色フィンガープリントを描写する変動空間信号s(x)の自己相関関数(ACF)G(ξ)は次のとおりに定義された:
ここで、山括弧<>は空間領域に対する平均化(積分)を示す。定量的情報を適切に抽出するために、以下の量を規定することにより空間信号を正確に正規化した(Wiseman & Petersen,1999):
これは、正規化したACF:
の適切な規定を可能とする。
2空間次元、s(x,y)の比色フィンガープリントに関して、同様に、2Dの正規化ACFは次のとおりに定義された:
比色フィンガープリントがNxMピクセルを有する画像からなる場合、空間的に平均化されたACFの離散実行(discrete implementation)は
として容易に得ることができる。
正規化ACFのかかる定義により、ξとηとが両方消滅する場合の極限での自己相関関数の単純評価によって、比色フィンガープリントの空間的変動の分散を得ることができる:
ACFの計算をより効率的に実行するために、フーリエ変換関係(Wiseman & Petersen,1999,Petersen et al.,1993)を使用した:
G(ξ,η)を方程式12から得た後に、正規化ACFを、方程式9を使用して計算した。1空間次元の正規化ACFプロファイル(図8を参照されたい)を、画像の中心線(x軸)に沿って、2Dの正規化ACFから抽出し、画像のx方向に沿って、アレイのサイズに対して正規化した。
線形応答理論の全般的な原理。連続空間のフーリエスペクトルを有する非周期的構造の比色フィンガープリントは屈折率の小さな摂動に非常に高感度であることを結果は実証した。完全ベクトルの解析的なMie理論を利用して本明細書で証明されたかかる事実は、定常ランダム信号に関する線形応答理論の全般的な原理に基づいて、より全般的に理解可能である。この理論は、線形光学形態における粗表面による散乱特性を理解するための全般的な理論的根拠を提供し得る。空間信号(散乱表面)に関する定常仮説は、大きな試料の限界で明らかとなる。事実、系の応答が線形である限り、(粗表面散乱において散乱平均場変動に対応する)系の出力関数E[y2]の平均二乗値を以下のように表現可能である(Newland,"An introduction to random vibrations,spectral and wavelet analysis,"3rd edition,Dover Publications, New York (2005)):
ここで、H(ω)は、系の線形光学伝達関数(周波数応答)であり、Sx(ω)は、ナノ構造の表面のスペクトル密度(その自己相関関数のフーリエ変換によって定義される)であり、ωは、空間周波数の2次元のベクトルである。方程式13に示されるように、非周期的アレイの分光的特徴、特にはスペクトル密度の平坦性は、散乱場での変動(fluctuations)の強度を直接決定する。これらの変動は、「拡散」またはフラットな(flat)フーリエスペクトル、例えば、ルーディン・シャピロやガウス素数格子などを有する非周期的アレイではより強くなり得る。したがって、非周期的アレイのフーリエ空間エンジニアリングは、決定論的な非周期的表面の散乱応答の最適化のための簡便なツールを提供し得、特定用途の必要性とマッチする適切な非周期的ナノ構造のバイオフォトニックセンサーの選択を可能とする。
実施例8:センサーにより散乱される光の捕捉および/または測定
図13は、表面1303上の非周期的パターンに配置されるナノ構造を有する比色センサー1301を示す。図13では、光1305がほぼグレージング入射(x−y面)でセンサー上に投射される。センサー1305は光を散乱させ得、散光1310はz軸に沿って垂直に検出してよい。非周期的に配置されたナノ構造は、色に関して空間的にオーガナイズされた、および/または、局在化された分光的特徴1315を生成し得る。検体が表面の屈折率を局所的に変化させると、それに応じて分光的特徴は変化し得る。
図13に示されるとおり、センサー1301は、非周期的パターンで配置されるナノ構造である表面1303を含んでよい。センサー1301は、光1305がほぼグレージング入射で投射される光源によって照射可能である。散光および/または空間的比色パターン1315は上面から収集した光に現れ得る。センサー1301は、1つは光源を介した照射用であり、1つは散光の収集用である、2つのアパーチャを有する小型の暗箱中で封入体によって包装され得る。収集アパーチャでの拡大された対象物は比色パターンの観察を可能にする。
小型(<1mm)とした場合、そのような表面は、マス(mass)センサーとして利用可能な、超小型で、低重量の比色装置を可能とし得る。当該表面は、例示として、変色を介したリアルタイムでの生化学物質を検出するセンサーをも可能とし得る。本明細書に記載のセンサーは、非周期的パターン化ナノ構造を有する表面における多重散乱によって共鳴的に誘導された色の、角度のある、および/または、空間分解のプロファイルに応じて光を散乱させ得る。パターン構造によって誘導される表面の屈折率の局所変化は、空間的に、および/または、角度のある、局在化した散乱場の形態での構造化された比色特徴を誘導し得る。
センサーは、表面に応じた多重光散乱によって生成され得る。散乱は、装置の各着色した領域が別々に対処可能である、平行検出に適切な多色の回折格子と関連する「フィンガープリント」として作用してよい。散光の強度分布の変化の定量化は相関技術を介して生じさせてよい。
実施例9:非周期的パターン化センサーの製造
非周期的パターンで配置される構造を有するセンサーは、大きな領域(例えば、1mm2)上での電子ビームリソグラフィーによって製造され得る。当該パターンは、例示として、室温でのナノインプリンティングによるPDMSおよびPMMAの透明なソフトポリマーで複製させてよい。ここで、図14を参照して、パターン転写方法を利用するPDMS薄膜上の非周期的パターン化ナノ構造を有するセンサーの複製が示され、記載される。突起1410を有するマスターパターン1405を製造してよい。PDMSをマスターパターン1405上に成型させてよい。いくつかの実施形態では、PDMS溶液をマスターパターン1405上に成型させてよい。溶液を乾燥させて、PDMSを突起1405の形状に一致させてよい。いくつかの実施形態では、PDMSフィルム1415をマスターパターン1405と接触させてよい。マスターパターン1405とPDMSフィルム1415との間に圧力を適用してよい。圧力に応じて、PDMSフィルム1415を突起1410の形状に一致させてよい。PDMSをマスターパターン1405から除去した場合、PDMS1415は、突起1410の配置に応じたパターンを示してよい。
ここで、図15を参照して、ハードマスクのナノ製造に使用可能なプロセスフローの概要を示し、記載する。ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などのフォトレジストを、透明な水晶などの基板上にスピンコーティングしてよい。例示として、電子ビームリソグラフィーにより、フォトレジスト上でナノ構造を製造してよい(工程1505)。フォトレジストを生成させて(developed)よい(工程1510)。当該センサーを金で金属化させてよい(工程1515)。例えば、金を被覆させてよく、フォトレジストを基板から除去してよい。当該センサーを、クロムなどの硬質金属で金属化してよい(工程1520)。例えば、クロムを基板上に被覆してよい。反応性イオンエッチングおよびリフトオフにより、基板材料上にパターンを転写してよい(工程1525)。
実施例10:非周期的パターン
ここで、図16を参照して、ナノ構造を有するPDMS表面の倍率を変化させての、走査型電子顕微鏡(SEM)像(a)、(b)、(c)および(d)を示し、記載する。PDMS表面は、ルーディン・シャピロをインプリンティングした非周期的格子を含んでよい。PDMS表面上のナノ構造の特徴は約50nmの小ささであってよい。ナノ構造の例示的な特徴は、円柱構造の半径または直径などの、ナノ構造の次元であってよい。
ここで、図17を参照して、スー・モースとルーディン・シャピロの2Dのフォトニック構造の空間格子、および、それらの対応する逆空間表現(格子のフーリエスペクトル)を示し、記載する。図5(a)および(b)は、スー・モースフォトニック構造の空間格子および対応する逆空間表現を記載する。図5(c)および(d)は、ルーディン・シャピロの2Dのフォトニック構造の空間格子および対応する逆空間表現を記載する。
ここで、図18を参照して、非周期的パターン化構造を有するセンサーに関しての、比色特性の例示的な暗視野像を示し、記載する。図18の画像(a)は、ガウス素数格子に関する分光的特徴を記載する。図18の画像(b)は、ペンローズ格子に関する分光的特徴を記載する。図18の画像(c)は、ルーディン・シャピロ格子に関する分光的特徴を記載する。これらの画像に関して、グレージング入射で白色光により当該センサーを照射し、垂直方向で分光的特徴を得た。暗視野顕微鏡において、白色光による照射を利用してCCDカメラにより画像を得た。当該画像は、非周期的パターン化構造を有するセンサーに関して、構造化された色の局在化を実証する。図18の画像(a)、(b)および(c)は、このようにして、センサーに関して非周期的パターン化表面が、色に関して空間的に局在化され、高度にオーガナイズされた、散光パターンをもたらし得ることを実証する。このようにして、当該パターンを、空間および周波数の特性に関して分析してよい。
ここで、図19を参照して、ガウス素数ベースのパターンに応じて配置されたクロムナノ粒子(直径が200nmであり、隣接する球の中心間距離が300nm)を有するセンサーに関する例示的な比色特徴を示し、記載する。これらの特徴のために、垂直に対して75度で当該センサーを照射してよい。当該特徴は、異なる波長での散光に対応してよい。画像(b)は約470nm(青色)の波長での光についての比色特徴であってよい。画像(c)は約520nm(緑色)の波長での光についての比色特徴であってよい。画像(d)は約640nm(赤色)の波長での光についての比色特徴であってよい。画像(e)は約470nm(青色)、520nm(緑色)および640nm(赤色)の波長での光についての比色特徴であってよい。画像(f)は白色光に関する比色特徴であってよい。
ここで、図20を参照して、ルーディン・シャピロパターンに応じて配置されたナノ構造を有するセンサーの遠視野の比色特徴を示す。当該特徴に用いるセンサーは200nmの直径を有するナノ粒子を含む。図20の画像(c)はルーディン・シャピロのアレイを描く。図20の画像(d)はルーディン・シャピロのアレイに対応する、格子のフーリエ変換を描く。
実施例11:検体に反応するセンサーの分光的特徴の変化
ここで、図21を参照して、ガウス素数ベースのパターンに応じて配置された金ナノ粒子(例えば、ナノスフェア)を有するセンサーの分光的特徴2105を示す。センサーを検体に暴露しない場合、分光的特徴はセンサーが示す特徴(signature)(例えば、参照特徴)である。分光的特徴は500nmの低い波長(例えば、約520nm)でピークを示し得る。
ここで、図22を参照して、種々の濃度のグルコース溶液に浸漬した同一センサーの分光的特徴を示し、記載する。グルコース溶液の濃度が増加すると、センサー表面上の屈折率の変化が増加する。グルコース溶液の濃度が増加すると、共鳴ピークと関連する周波数シフトもまた増加する。例えば、センサーを10%グルコース溶液中に浸漬すると、共鳴ピーク2210は、約520nmから520nmと530nmとの間にシフトし得る。センサーを20%グルコース溶液中に浸漬すると、共鳴ピーク2215は、約520nmから530nmと540nmとの間にシフトし得る。センサーを30%グルコース溶液中に浸漬すると、共鳴ピーク2220は約520nmから約540nmにシフトし得る。
ここで、図23および図24を参照して、ガウス素数ベースのパターンにしたがって配置された金のナノ粒子(例えばナノスフェア)を有するセンサーに関しての散光パターンを示し、記載する。グルコースに接触する前のセンサーについての散光パターンを図23に描写し得る。図23の黒矢印2305は、当該パターンの角度散乱分布内での光の角度位置を示し得る。当該センサーはグルコース溶液に暴露してよい。かかる暴露後、グルコースとセンサーとの組み合わせと関連した光のパターンは、図24の黒矢印2405で示されるように、異なる角度で光を散乱させてよい。
実施例12:検体を検出するための強度分布の分散の計算
センサーにより散乱される光の強度分布の変化は、検体の存在を示し得る。パターン変化の定量化は、画像相関技術を用いて達成してよい。いくつかの実施形態では、2D画像自己相関分析は、センサー表面上の生物材料の存在により、センサーによって散乱される光の強度分布の変化を明らかにし得る。画像自己相関関数(ACF)を構築するために、センサーのアレイ面での点(x,y)での場の強度の値を別の点(x’,y’)での場の強度と比較してよい。当該値は2点間での距離の関数としてマッピングしてよい。
ここで、図25を参照して、散光パターンの強度分布の変動の分散2505を、センサー上の分子層の厚みの関数としてプロットしてよい。散光パターンはガウス素数ベースのパターンに配置されたナノ構造を有するセンサーに対応してよい。当該分散は、側方変位がゼロの極限において適切に正規化された離散的なACF値であってよい。センサー表面上の2.5nmの薄さの低指数の誘電(n=1.5)層の吸収により、強度パターン分散の絶対値において6.6%の変化がもたらされる。このようにして、当該センサーは、ナノメートルおよび/またはサブナノメートルの範囲での厚み変化を検出し得る。