JP2013248062A - 多孔質インプラント素材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】気孔率の異なる複数の金属体4,5が接合界面Fを介して接合されるとともに、気孔率が高い金属体4は、連続した骨格により形成される複数の気孔が連通した三次元網目状構造を有する多孔質金属体であって、気孔率が60%〜98%であり、気孔率が低い金属体5は、気孔率が0%〜50%の緻密金属体であり、かつ軸心方向に直交する方向の断面における緻密金属体の面積占有率が5%〜50%であり、接合界面Fは、複数連続して屈曲又は湾曲して形成されるとともに、その間隔が6mm〜30mm、振れ幅が0.3mm〜3mmであり、軸心方向と平行な方向に圧縮したときの全体の縦弾性率が5GPa〜35GPaである。
【選択図】 図1
Description
特許文献1記載のインプラント(椎間スペーサー)は、椎間板を除去した後の椎体の間に挿入配置して使用されるもので、その挿入を容易にするとともに、抜け難くする等のために、スペーサー本体の上面及び下面が特殊な形状をしている。
特許文献2記載のインプラント(人工歯根)は、チタン又はチタン合金からなる中実柱状の芯材と、芯材の側面に配置されてチタン又はチタン合金から成り焼結により結合した多数の球状粒子と該球状粒子の間に形成された多数の連通孔とから成る多孔層とから構成されており、その多数の球状粒子はさらに金チタン合金からなる表面層を備え、該表面層により隣接する球状粒子が相互に結合されている。寸法が小さく且つ顎骨との結合強度が高い人工歯根として提案されている。
したがって、これらインプラントを人骨に近い強度とすることが求められるが、人間の骨は、六方晶系の結晶構造を持つ生体アパタイトとコラーゲン繊維の組み合わさった構造で、C軸方向に優先的に配向する強度特性を有している。このため、これら特許文献記載のように単純に複合構造とするだけでは、人骨に近いインプラントとすることは難しい。
この場合、特許文献4記載のインプラントのように、単純に配向性を付与するだけでは、想定外の荷重を受けたときの強度にばらつきが生じ、破壊等が生じるおそれがある。
そして、このような気孔率の両金属体の接合界面の少なくとも一部を軸心方向と直交する方向の断面において屈曲又は湾曲して形成し、その断面における気孔率の低い緻密金属体の面積占有率を5%〜50%として、軸心方向の圧縮荷重に対する縦弾性率を5GPa〜35GPaと人の皮骨質と同程度に設定したことにより、ストレスシールディング現象の発生を有効に防止することができる。
また、複数の金属体を接合していることにより、種々のブロック状のものを容易に作製することができる。
なお、このように構成した素材をインプラントとして用いる場合に、必要に応じて前記一の方向に平行な方向とは異なる方向の接合界面によって接合した多孔質金属体又は緻密金属体を加えてもよい。また、気孔率の低い緻密金属体には、パンチングメタルやエキスパンドメタルのような溶製材に孔や空間部を形成したものも用いることができ、気孔率とは、これら孔や空間部を含む金属体全体の体積に占める孔や空間部の体積の比率とする。気孔率が0%のものは孔等を有しない板状等の溶製材であり、チタン板等の無垢材が用いられる。
屈曲又は湾曲の連続周期の間隔が6mmより細かいもの、あるいは振れ幅が3mmを超えるものは製造が難しい。また、生体内に埋め込まれるインプラント素材として想定される製品寸法を考えると、周期が30mmを超えるほどに長すぎる、あるいは振れ幅が0.3mm未満であると、斜め方向からの圧縮荷重に対して安定した強度を維持することが難しい。
発泡金属は、連続した骨格と気孔による三次元網目状構造を容易に形成することができるとともに、発泡剤の発泡によって気孔率を広い範囲で調整することができ、用いられる部位に合わせて適切に使用することができる。
本実施形態の多孔質インプラント素材1は、連続した骨格2により形成される複数の気孔3が連通した三次元網目状構造を有する発泡金属からなる板状の多孔質金属体4と、パンチングメタル、エキスパンドメタル等の溶製材、又は通常の焼結金属、発泡度の低い低気孔率の発泡金属からなる緻密金属体5とが一の方向に平行な接合界面Fを介して複数枚積層され、これらの接合界面Fが、その接合界面Fに直交する方向の断面において屈曲して形成されている。図示例では、多孔質金属体4と緻密金属体5とは交互に積層されている。また、各多孔質金属体4等を構成する発泡金属は、後述するように、金属粉末と発泡剤等を含有する発泡性スラリーをシート状に成形して発泡させることにより形成したものであり、気孔3が表裏面及び側面に開口している。
緻密金属体5には、溶製材からなるもの、及び通常の焼結金属からなるものには機械加工等によって複数の孔6が形成され、また、低気孔率の発泡金属からなるものにも多数の気孔(多孔質金属体4の気孔3と区別するため、緻密金属体5の気孔も孔6と称する)が形成されているので、これら孔6を介して多孔質金属体4の気孔3が連通状態となっている。緻密金属体5の気孔率は、緻密金属体5全体の体積に対する孔6の占有率であり、0%というのは、孔6を有しない無垢材を示す。緻密金属体5の厚さとしては0.1mm〜2mm程度がよい。
なお、図1等では多孔質金属体4と緻密金属体5とをハッチングを変えることにより区別して表示している。図2では緻密金属体5の孔6は空間として記載しているが、両面に配置される多孔質金属体4の一部又は全部が孔6内に入り込んだ状態となる場合もある。
そして、この多孔質インプラント素材1全体としては、40%〜85%の気孔率に設定される。
また、その接合界面Fは、軸心方向Cに直交する方向の断面において、一定周期で屈曲する波状に形成されている。具体的には凸型屈曲部11と凹型屈曲部12とを交互に連続させており、これら凸型屈曲部11と凹型屈曲部12とによる最大振れ幅Wが0.3mm〜3mmとされ、周期間隔Lが6mm〜30mmとされている。
そして、これら多孔質金属体4及び緻密金属体5の接合体としては、軸心方向Cと平行な方向に圧縮したときの縦弾性率が、5GPa〜35GPaとされている。
この多孔質インプラント素材1を構成する多孔質金属体4は、金属粉末、発泡剤等を含有する発泡性スラリーをドクターブレード法等によりシート状に成形し発泡・乾燥させることによりスポンジ状のグリーンシートを形成し、このグリーンシートを脱脂、焼結することにより、製造される。
発泡性スラリーは、金属粉末、バインダ、可塑剤、界面活性剤、発泡剤を溶媒の水とともに混練して得られる。
この成形装置20は、ドクターブレード法を用いてシートを形成する装置であり、発泡性スラリーSが貯留されるホッパ21、ホッパ21から供給された発泡性スラリーSを移送するキャリヤシート22、キャリヤシート22を支持するローラ23、キャリヤシート22上の発泡性スラリーSを所定厚さに成形するブレード(ドクターブレード)24、発泡性スラリーSを発泡させる恒温・高湿度槽25、および発泡したスラリーを乾燥させる乾燥槽26を備えている。なお、キャリヤシート22の下面は、支持プレート27によって支えられている。
成形装置20においては、まず、発泡性スラリーSをホッパ21に投入しておき、このホッパ21から発泡性スラリーSをキャリヤシート22上に供給する。キャリヤシート22は図の右方向へ回転するローラ23および支持プレートPによって支持されており、その上面が図の右方向へと移動している。キャリヤシート22上に供給された発泡性スラリーSは、キャリヤシート22とともに移動しながらブレード24によって板状に成形される。
このようにして得られたグリーンシートGを図4(a)に示すように複数枚積層した状態で脱脂・焼結することにより、比較的厚肉の焼結体を形成する。具体的には、例えば真空中、温度550℃〜650℃、25分〜35分の条件下でグリーンシートG中のバインダ(水溶性樹脂結合剤)を除去(脱脂)した後、さらに真空中、温度700℃〜1300℃、60分〜120分の条件下で焼結する。
得られた焼結体をワイヤーカット等により、図4(b)に示すように凸型屈曲部11及び凹型屈曲部12が交互に連続した波板状に加工する。そして、この波板状の多孔質金属体4と、別に作製した波板状の緻密金属体5とを交互に積層する。この気孔率の低い緻密金属体5も、多孔質金属体4と同様、純チタン、チタン合金、ステンレス鋼、コバルトクロム合金、タンタル、ニオブ等、が用いられる。
図5はこの拡散接合のための治具の例を示している。図5(a)に示す治具では、一対の敷き板15と重し16、スペーサ17とを備えている。敷き板15の上に積層体Qを載置し、その上に敷き板15を介して重し16を載せる。熱処理後の厚さ寸法を想定して、敷き板15間にスペーサ17を介在ざせておき、例えば真空中で1000℃×3時間の熱処理を施す。
前述したように、多孔質金属体4及び緻密金属体5は予め波板状に加工しておいたが、平板状のまま図5(b)に示す治具を用いて、成形しながら拡散接合するようにしてもよい。この図5(b)に示す治具では、敷き板18の対向面が凹凸面に形成されており、平板状の多孔質金属体4と緻密金属体5とを重ね合わせた積層体Qを、敷き板18の凹凸面で挟み込むことにより、積層体Qに凸側屈曲部と凹型屈曲部とを形成するものである。
なお、緻密金属体5を低気孔率の発泡金属から形成する場合は、同様に三次元網目状構造を有する。
次に、この多孔質金属体4と緻密金属体5との積層体を所望の外形に切断するのであるが、その際に、接合界面Fに沿う一の方向を軸心方向Cとし、その軸心方向Cに直交する方向の横断面において、緻密金属体5の占有面積が全体の5%〜50%となるように切断する。
また、接合界面Fが屈曲しているので、接合界面Fの面積を広く確保することができ、接合強度の高い多孔質インプラント素材1が得られる。
このように、各ブロック素材32は、複数の金属体4,5を接合していることにより、種々のブロック状のものを容易に作製することができ、これらを組み合わせることにより、任意の形状、構造のインプラント素材とすることができる。この場合、各ブロック素材32は、多孔質金属体4と緻密金属体5との気孔率の組み合わせが同一のものを複数用いてもよいし、軸心方向に直交する方向の断面における緻密金属体5の面積占有率が5%〜50%となる範囲で、異なる気孔率の組み合わせからなるブロック素材を用いてもよい。
また、緻密金属体としては、JIS T7401−1:2002のチタンII種に適合するインプラント用チタンを使用した。実施例2及び比較例1の金属体はパンチングメタルを使用し、実施例3の金属体は発泡金属を使用した。
実施例3では、多孔質金属体と緻密金属体とを、かさ高さが24mmとなるまで積層し、図5(b)に示す装置により拡散接合した。スペーサの高さは20mmとした。
そして、20mm×20mm×10mmのブロック状に切り出し、各試料とも10個ずつ用意した。
単純圧縮試験はJIS H7902:2008(ポーラス金属の圧縮試験方法)に準じた。各試料につき5個ずつ測定して平均値を求めた。
圧縮せん断試験は、ASTM F2077−3(脊椎椎間体癒合器具のキャラクタライゼーションおよび疲労の圧縮せん断試験)に準じた。各試料につき15個ずつ測定して、平均値と平均値からのずれを評価した。
この場合、単純圧縮試験は、図7に示す荷重試験機により矢印Aで示すように軸方向と平行に圧縮し、圧縮せん断試験は矢印Bで示すように軸方向に対して斜め45°の角度で圧縮した。
例えば、気孔率が高い多孔質金属体と気孔率が低い緻密金属体との二種類の気孔率の金属体を接合した例としたが、三種類以上の気孔率の金属体を接合してもよい。
また、接合界面に、平面どうしが交差して形成される凸型屈曲部及び凹型屈曲部を形成したが、湾曲面による凸型湾曲部及び凹型湾曲部を形成してもよい。さらに、屈曲又は湾曲している接合界面を有していれば、一部に平面状の接合界面を有しているものも含むものとする。例えば、波板状に屈曲した緻密金属体と、平板状の緻密金属体とを多孔質金属体を挟んで組み合わせたものとしてもよい。
また、図1に示す例では、直方体状として、6面を平坦面に形成したが、生体との固定性をさらに高めるために、これらの表面に凹凸や局部的な突起を形成してもよい。その場合、気孔率の低い金属体の端面に凹凸や突起を形成すると効果的である。
また、スラリーをドクターブレード法によってシート状に成形する場合、図7に示すように、ホッパを複数並べて、発泡剤の混入量の異なる発泡性スラリーを積層状態に供給して、積層状態のグリーンシートを成形するようにしてもよい。
2 骨格
3 気孔
4 多孔質金属体
5 緻密金属体
6 孔
11 凸型屈曲部
12 凹型屈曲部
15 敷き板
16 重し
17 スペーサ
18 敷き板
20 成形装置
21 ホッパ
22 キャリヤシート
23 ローラ
24 ブレード
25 高湿度槽
26 乾燥槽
27 支持プレート
31 インプラント素材
32 ブロック素材
C 軸心方向
F 接合界面
G グリーンシート
Q 積層体
L 周期間隔
W 振れ幅
Claims (3)
- 気孔率の異なる複数の金属体が一の方向に平行な接合界面を介して接合されるとともに、気孔率が高い金属体は、連続した骨格により形成される複数の気孔が連通した三次元網目状構造を有する多孔質金属体であって、気孔率が60%〜98%であり、気孔率が低い金属体は、気孔率が0%〜50%の緻密金属体であり、かつ前記接合界面に沿う一の方向を軸心方向としたときに、該軸心方向に直交する方向の断面における前記緻密金属体の面積占有率が5%〜50%であり、前記接合界面のうちの少なくとも一部は、前記断面において屈曲又は湾曲して形成されており、前記軸心方向と平行な方向に圧縮したときの全体の縦弾性率が5GPa〜35GPaであることを特徴とする多孔質インプラント素材。
- 前記接合界面は、前記屈曲又は湾曲が複数連続しており、その連続周期の間隔が6mm〜30mmであり、前記屈曲又は湾曲の振れ幅が0.3mm〜3mmであることを特徴とする請求項1記載の多孔質インプラント素材。
- 前記気孔率が高い多孔質金属体は、金属粉末と発泡剤を含有する発泡性スラリーを成形して発泡及び焼結させてなる発泡金属であることを特徴とする請求項1又は2記載の多孔質インプラント素材。
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