JP2013240899A - 針葉樹原木から旋削されたベニヤ単板の脱水装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】針葉樹原木から旋削されたベニヤ単板の厚み減りを可及的に回避しつつ、良好な脱水処理を行い得る、針葉樹原木から旋削されたベニヤ単板の脱水装置を提供する。
【解決手段】ベニヤ単板の厚さTよりも著しく狭い間隔Sを隔てて対設した、一対のロール1・2の間にベニヤ単板4を通して、搬送しつつ圧縮して脱水する脱水装置であって、一対のロール1・2の内の上ロール2には、金属製の軸部2aの外周に適宜の厚さVと適宜の硬度とを有する硬質の弾性体2bを円筒状に被覆し、且つ、該弾性体2bの部分に、適宜の幅Hと適宜の深さUとを有して円周方向に連なる溝3を、ロールの軸芯方向に対して適宜間隔Pを隔てて、多数条形成して成る溝付複合体ロールを用いて成り、而も、前記溝3が、ロールの軸芯方向と平行方向の半截断面に於て、ロールの軸芯方向に対して適宜角度θを以って斜めに交わる向きに傾いていることを特徴とする脱水装置。
【選択図】図3
【解決手段】ベニヤ単板の厚さTよりも著しく狭い間隔Sを隔てて対設した、一対のロール1・2の間にベニヤ単板4を通して、搬送しつつ圧縮して脱水する脱水装置であって、一対のロール1・2の内の上ロール2には、金属製の軸部2aの外周に適宜の厚さVと適宜の硬度とを有する硬質の弾性体2bを円筒状に被覆し、且つ、該弾性体2bの部分に、適宜の幅Hと適宜の深さUとを有して円周方向に連なる溝3を、ロールの軸芯方向に対して適宜間隔Pを隔てて、多数条形成して成る溝付複合体ロールを用いて成り、而も、前記溝3が、ロールの軸芯方向と平行方向の半截断面に於て、ロールの軸芯方向に対して適宜角度θを以って斜めに交わる向きに傾いていることを特徴とする脱水装置。
【選択図】図3
Description
本発明は、針葉樹原木から旋削されたベニヤ単板の脱水装置に関するものである。
従来、合板・単板積層材等の製造に使用されるベニヤ単板(以下、単に単板と称す)を乾燥するに際し、比較的厚い単板については、当初から、種々の加熱手段を用いて、単板を加熱乾燥することに主眼を置くと、膨大な加熱用エネルギが必要となり、コスト高となることから、例えば特許文献1・特許文献2等に開示される如く、脱水装置を用いて、単板の含有水分を機械的に脱水する技術が多数提案されているが、既知の脱水装置は、適宜態様の一対のロールを、単板の厚さよりも著しく狭い間隔を隔てて対設すると共に、一対のロールの少なくとも片方を駆動回転可能に備えて成り、該一対のロールの間に単板を通して、搬送しつつ圧縮して脱水する形式が主流であり、基本的に、一対のロールの周面を活用して、単板を、主として表裏面に対して垂直な方向に圧縮する構成を採っている。
而して、公知の通り、単板は、顕著な組織構造の異方性を有する極めて特異な材料であるから、述上の如く、単板に脱水処理を施す為に、一対のロールの間に単板を通す際の態様としては、幅方向(繊維方向と直交方向)に通す態様に比べて、長さ方向(繊維方向と同方向)に通す態様の方が、細胞組織の配列性からして、脱水に適しているのは当然であり、また、一対のロールによって、所要の脱水作用を奏させる為には、一対のロールの間隔を、単板の厚さに比べて著しく狭くすることが肝要で、単板の厚さの70%以下でなければ、脱水作用が不十分であって、単板の厚さの60%以下とするのが実用的であり、単板の厚さの50%以下なら脱水作用が一段と促進されることが、過去の実績によって明らかにされており、本発明の開発過程に於ける実験でも再確認された。
ところで、述上の如く、単板を、元の厚さの70%以下(好ましくは60%以下)にまで圧縮して、脱水処理する際の問題点の一つは、単板の厚み減りであって、脱水処理した後に加熱乾燥処理を施して乾燥した単板の見かけ上の厚み減りは勿論のこと、合板・単板積層材等の製品に加工する諸工程に於ける、種々の加圧処理に伴う二次的な厚み減りをも含めた、最終的な単板の厚み減りが、過大であると、折角、乾燥に要する加熱用エネルギを低減させたメリットが、材積の低減によって相殺される虞が生じるのに対し、近時、単板の旋削に供される原木として、杉・檜・唐松・ラジアータ松等の針葉樹が多用されるに至り、針葉樹原木から旋削した単板を、既知の脱水装置で脱水処理すると、実用的に支障となる厚み減りを誘発し易い弱点があることが、本発明の開発過程に於て判明した。
即ち、公知の通り、針葉樹を構成する木材組織の主体は、断面が略角筒状の仮道管であり、形成層にある仮道管が、年毎に半径方向と円周方向とに細胞分裂を繰り返して、樹を肥大成長させる故に、針葉樹原木から単板を旋削すると、図7(イ)に例示する如く、単板4を構成する木材組織の主体を成す仮道管4aの大半は、単板4の木口面に於て、概ね平積み状(樹の円周方向に倣って対向する二辺の細胞壁が、単板の表裏面に対して略平行状であり、樹の半径方向に倣って対向する二辺の細胞壁が、単板の表裏面に対して略直交状である状態)に並ぶ形態となるのに対して、先述の如く、基本的に、一対のロールの周面を活用して、単板を、主として表裏面に対して垂直な方向に圧縮する構成を採る既知の脱水装置によって、図7(ロ)に例示する如く、単板4を、元の厚さに比べて著しく薄い厚さにまで圧縮すると、各仮道管4aを形成する細胞壁の内で、単板4の表裏面に対して略直交状である細胞壁に、塑性変形を伴う座屈や亀裂が発生し易いので(併せて、単板の表裏面に対して略平行状である細胞壁にも、亀裂等が発生することがあるので)、圧縮が開放された後や、後工程に於て加熱乾燥処理が施された後であっても、仮道管の形状が、容易に元通りには復元し難く、また、仮に、見かけ上では、ほぼ元通りに復元したとしても、仮道管の細胞壁(特に、単板の表裏面に対して略直交状である細胞壁)が弱体化しているので、後工程に於て加圧処理される際に、同様の座屈が再発し易くなっており、結果的に、単板の厚み減りを誘発し易い弱点があった。
また、図示は省略したが、一対のロールに於ける少なくともいずれか片方のロールの周面に、適宜形状(楔状・角錐状・断面が三角形のリング状等)の金属製の突起体を、適宜の態様(分散状又は軸芯方向の適宜間隔毎に周長方向に連なる複数の列状又は不連続なネジ山状等)を以って凸設することにより、突起体が突刺される近辺の仮道管(針葉樹製単板の木材組織)を、副次的に、細胞壁に対して幾分斜めに圧縮し得るように構成した脱水装置も提案されてはいるが、仮道管を、細胞壁に対して幾分斜めに圧縮する作用の及ぶ範囲が、突起体が突刺される近辺の局部に限定されることから、仮道管(特に、単板の表裏面に対して略直交状である細胞壁)の座屈・亀裂等が軽減される程度も極めて限定的であり、然程有効な成果を挙げるには至っていない。
本発明は、斯様な既知の脱水装置の弱点を改善すべく開発したものであって、具体的には、先述の如く、単板の厚さよりも著しく狭い間隔を隔てて対設した一対のロールの間に単板を通して、搬送しつつ圧縮して脱水する脱水装置であって、一対のロールの少なくとも片方には、金属製の軸部の外周に適宜の厚さと適宜の硬度とを有する硬質の弾性体を円筒状に被覆し、且つ、該弾性体の部分に、適宜の幅と適宜の深さとを有して円周方向に連なる溝を、ロールの軸芯方向に対して適宜間隔を隔てて、多数条形成して成る溝付複合体ロールを用いて成り、而も、前記溝が、ロールの軸芯方向と平行方向の半截断面に於て、ロールの軸芯方向に対して適宜角度を以って斜めに交わる向きに傾いていることを特徴とする単板の脱水装置(請求項1)を基本的な発明として提案する。
また、厚さが、25mm〜40mmであり、硬度が、ショアD硬度で60度〜75度である弾性体を被覆した溝付複合体ロールを用いて成る請求項1記載の単板の脱水装置(請求項2)と、幅が、2mm〜6mmであり、深さが、15mm〜30mmである溝を、ロールの軸芯方向に対して30mm〜45mmの間隔を隔てて、ロールの軸芯方向に対して82度〜87度の角度を以って斜めに交わる向きに傾けて形成した溝付複合体ロールを用いて成る請求項1又は請求項2記載の単板の脱水装置(請求項3)と、溝付複合体ロールに対設する他方のロールとして、溝付複合体ロールと同様に、金属製の軸部の外周に硬質の弾性体を円筒状に被覆し、且つ、該弾性体の部分に、ロールの軸芯方向に対して適宜間隔を隔てて、多数条の斜めに傾いた適宜の幅を有する溝を形成して成る別の溝付複合体ロールを用いると共に、該別の溝付複合体ロールに形成された斜めの溝が、単板の通路を対称軸として、前記溝付複合体ロールとは非対称的な向きに傾くように、別の溝付複合体ロールを、前記溝付複合体ロールに対設して成る請求項1又は請求項2記載又は請求項3の単板の脱水装置(請求項4)とを、一段と具体的・有効的な発明として提案する。
本発明の請求項1に係る脱水装置に於ける一対のロールの間に単板を通して、搬送しつつ圧縮すると、溝付複合体ロールの弾性体は、単板の圧縮に伴う反力を受けて、硬度に対応して若干弾性変形することになるが、当該弾性変形の方向は、ロールの軸芯方向と直交方向のみならず、溝が、ロールの軸芯方向に対して斜めに傾いていることに起因して、溝が傾いている方向へも倒れ込むように弾性変形するので、単板は、あたかも表裏面に対して幾分斜めに傾いた方向に圧縮されることになり、当然ながら、大半の仮道管も、細胞壁に対して幾分斜めに圧縮され、単板の表裏面に対して略直交状である細胞壁が、同じ向きへ斜めに倒される状態となって、結果的に、大半の仮道管の断面が、略菱形筒状となるように変形するから、いずれの細胞壁にも、塑性変形を伴う座屈や亀裂が発生し難くなる。従って、圧縮が開放されれば、大半の仮道管の断面形状が、元通りに復元し易いのは勿論のこと、いずれの細胞壁にも、座屈や亀裂が発生し難いので、後工程の加圧処理に伴う座屈の再発も抑制することができ、二次的な厚み減りをも含めた、最終的な単板の厚み減りが、従来に比べて低減でき有益である。
而して、弾性体の態様について言及すると、弾性体の厚さが過小であれば、斜め方向への弾性変形に不向きとなる反面、過大であると、弾性体自体の変形量が多くなるので、単板の圧縮に不向きとなり、また、弾性体の硬度が過小であっても、弾性体自体の変形量が多くなって、単板の圧縮に不向きとなるので、比較的硬い方が好ましいことから、請求項2に開示する如く、弾性体の厚さは、25mm〜40mm程度が適当であり、弾性体の硬度は、ショアD硬度で60度〜75度程度が適当である。
次に、溝の態様について言及すると、溝の幅が過小であれば、形成が困難化し、逆に、過大であると、単板の非圧縮域が増えて、脱水機能が劣化する虞があり、また、溝の深さが、過小であると、弾性体の斜め方向への弾性変形に不向きとなる反面、過大であると、弾性体の斜め方向への弾性変形も過大となって、単板の圧縮が不足し易くなる。また、溝同士の間隔が過小であっても、弾性体の斜め方向への弾性変形が過大となって、単板の圧縮が不足し易い反面、溝同士の間隔が過大であると、弾性体の斜め方向への弾性変形に不向きとなり、更に、溝の傾きが過小であっても、弾性体の斜め方向への弾性変形に不向きとなる反面、過大であると、弾性体の斜め方向への弾性変形も過大となって、単板の圧縮が不足し易くなることから、請求項3に開示する如く、溝の幅は、2mm〜6mm程度が適当であり、溝の深さは、15mm〜30mm程度が適当であり、溝同士の間隔は、30mm〜45mm程度が適当であり、溝の傾きは、82度〜87度程度が適当である。
更に、溝付複合体ロールに対設する他方のロールの態様について言及すると、その態様については、特に制約はなく、例えば周面に凹凸を有しない金属製のロールや、適宜形状の金属製の突起体を、適宜の態様を以って、周面に凸設して成る金属製のロール、或は、例えば金属製の軸部の外周に、単に硬質の弾性体を円筒状に被覆して成る複合体ロール、更には、金属製の軸部の外周に、硬質の弾性体を円筒状に被覆すると共に、該弾性体の部分に、ロールの軸芯方向と直交する溝を、ロールの軸芯方向に対して適宜間隔を隔てて、多数条形成して成る単純な複合体ロール等々、従来公知の様々な形態のロールを用いて差支えないが、請求項4に開示する如く、溝付複合体ロールと同様の態様とすると共に、溝が、逆の斜めの向きに傾くように対設して用いれば、一層有効である。
即ち、溝付複合体ロールに対設する他方のロールとして、溝付複合体ロールと同様に、金属製の軸部の外周に硬質の弾性体を円筒状に被覆し、且つ、該弾性体の部分に、ロールの軸芯方向に対して適宜間隔を隔てて、多数条の斜めに傾いた適宜の幅を有する溝を形成して成る別の溝付複合体ロールを用い、而も、該別の溝付複合体ロールに形成された斜めの溝が、単板の通路を対称軸として、前記溝付複合体ロールとは非対称的な向きに傾くように、別の溝付複合体ロールを、前記溝付複合体ロールに対設する構成を採れば、各溝付複合体ロールの溝が、単板の通路を対称軸として、非対称的な向きに傾いていることにより、各溝付複合体ロールの弾性体が、単板の圧縮に伴う反力を受けて、夫々逆の向きに斜めに倒れ込むように変形し、それに伴って、単板も、表裏面に対して一層確実に斜めに傾いた方向に圧縮される結果、大半の仮道管の断面が、一層容易に略菱形筒状となるように変形するから、単板の表裏面に対して略直交状である細胞壁に、塑性変形を伴う座屈や亀裂が発生する確率も、一段と低下することとなり、一層有効である。
以下、本発明を図面に例示した実施の一例と共に更に詳述するが、本発明に係る単板の脱水装置の運転に拘わる制御機器については、格別特殊なものを用いる必要はなく、従来公知の平凡な制御機器で差支えないので、図を見易くする便宜上、制御系統(回路図)を含めて、図示を省略した。
図1は、本発明に係る単板の脱水装置の概略側面説明図であり、図2は、本発明に係る単板の脱水装置の部分正面説明図であり、図3は、図1・図2に例示した単板の脱水装置の一部破断拡大正面説明図である。図中、1は、周面に凹凸を有しない金属製の下ロールであって、軸受(図示省略)を介して、回転可能に脱水装置の機枠(図示省略)に係止すると共に、減速機付電動機等の適宜の駆動源(図示省略)を介して、適宜の駆動速度を以って、図示矢印方向へ回転駆動させるべく備える。
2は、金属製の軸部2aの外周に、適宜の厚さVを有する硬質の弾性体2bを円筒状に被覆して成り、而も、該弾性体2bの部分に、適宜の幅Hと適宜の深さUとを有する溝3を、適宜の間隔Pを隔てて、多数条設けて成る溝付複合体状の上ロールであって、単板4の厚さTよりも著しく狭い間隔Sを隔てて、前記下ロール1に対設すべく、軸受(図示省略)を介して、回転可能に脱水装置の機枠(図示省略)に係止すると共に、必要に応じては、前記下ロール1用の駆動源を共用するか、又は図示しない別の駆動源を介して、適宜の駆動速度を以って、図示矢印方向へ回転駆動させるべく備える。
そして而も、前記多数条の各溝3は、図3からも明らかな如く、上ロール2の軸芯方向と平行方向の半截断面に於て、上ロール2の軸芯方向に対して適宜角度θを以って斜めに交わる向きに傾くように設けて成ることを特徴とする。
そして而も、前記多数条の各溝3は、図3からも明らかな如く、上ロール2の軸芯方向と平行方向の半截断面に於て、上ロール2の軸芯方向に対して適宜角度θを以って斜めに交わる向きに傾くように設けて成ることを特徴とする。
本発明に係る単板の脱水装置は、例えば述上の如く構成するものであって、斯様に構成した脱水装置に、単板を長さ方向に通すと、図4に例示する如く、厚さTを有する単板4は、上下一対のロール1・2の最接近箇所に於て、一時的に先記間隔Sに近い厚さにまで圧縮されることになり、それに伴って、上ロール2の弾性体2bも若干弾性変形することになるが、多数条の溝3が、上ロール2の軸芯方向に対して斜めに傾くように設けてあることによって、単板4に当接する前には、点線で示す状態であった弾性体2bが、実線で示す状態、つまり、溝が傾いている方向へ倒れ込むように弾性変形することになる。
そこで、単板4についても、図5(ロ)に矢印で示す如く、あたかも表裏面に対して幾分斜めに傾いた方向に圧縮されることになり、図5(イ)に例示する如く、単板4の木口面に於て、概ね平積み状であった大半の各仮道管4aが、図5(ロ)に例示する如く、細胞壁に対して幾分斜めに圧縮され、単板4の表裏面に対して略直交状である細胞壁が、同じ向きへ斜めに倒される状態となって、大半の仮道管4aの断面が、略菱形筒状となるように変形するから、いずれの細胞壁にも、塑性変形を伴う座屈や亀裂が発生し難くなる。従って、圧縮が開放されれば、大半の仮道管4aの断面形状が、元通りに復元し易いのは勿論のこと、いずれの細胞壁にも、座屈や亀裂が発生し難いので、後工程の加圧処理に伴う座屈の再発も抑制することができ、二次的な厚み減りをも含めた、最終的な単板の厚み減りが、従来に比べて低減でき有益である。
而して、前記上ロール2の弾性体2bの態様について言及すると、弾性体の厚さが過小であれば、斜め方向への弾性変形に不向きとなる反面、過大であると、弾性体自体の変形量が多くなるので、単板の圧縮に不向きとなり、また、弾性体の硬度が過小であっても、弾性体自体の変形量が多くなって、単板の圧縮に不向きとなるので、比較的硬い方が好ましいことから、請求項2に開示する如く、弾性体の厚さは、25mm〜40mm程度が適当であり、弾性体の硬度は、ショアD硬度で60度〜75度程度が適当である。
次に、前記上ロール2の弾性体2bに設ける溝3の態様について言及すると、溝の幅が過小であれば、形成が困難化し、逆に、過大であると、単板の非圧縮域が増えて、脱水機能が劣化する虞があり、また、溝の深さが、過小であると、弾性体の斜め方向への弾性変形に不向きとなる反面、過大であると、弾性体の斜め方向への弾性変形も過大となって、単板の圧縮が不足し易くなる。また、溝同士の間隔が過小であっても、弾性体の斜め方向への弾性変形が過大となって、単板の圧縮が不足し易い反面、溝同士の間隔が過大であると、弾性体の斜め方向への弾性変形に不向きとなり、更に、溝の傾きが過小であっても、弾性体の斜め方向への弾性変形に不向きとなる反面、過大であると、弾性体の斜め方向への弾性変形も過大となって、単板の圧縮が不足し易くなることから、請求項3に開示する如く、溝の幅Hは、2mm〜6mm程度が適当であり、溝の深さUは、15mm〜30mm程度が適当であり、溝同士の間隔Pは、30mm〜45mm程度が適当であり、溝の傾きの角度θは、82度〜87度程度が適当である。
更に、前記上ロール2(溝付複合体ロール)に対設する下ロール1(他方のロール)の態様について言及すると、その態様については、特に制約はなく、先記図1〜図3に例示する如き、周面に凹凸を有しない金属製のロールの他に、図示は省略したが、適宜形状の金属製の突起体を、適宜の態様を以って、周面に凸設して成る金属製のロール、或は、例えば金属製の軸部の外周に、単に硬質の弾性体を円筒状に被覆して成る複合体ロール、更には、金属製の軸部の外周に、硬質の弾性体を円筒状に被覆すると共に、該弾性体の部分に、ロールの軸芯方向と直交する溝を、ロールの軸芯方向に対して適宜間隔を隔てて、多数条形成して成る単純な複合体ロール等々、従来公知の様々な形態のロールを用いて差支えないが、後述する如く、溝付複合体ロールと同様の態様とすると共に、溝が、逆の斜めの向きに傾くように対設して用いれば、一層有効である。
即ち、前記上ロール2に対設する下ロールとして、図6に例示する如く、金属製の軸部2aの外周に硬質の弾性体2bを円筒状に被覆し、且つ、該弾性体2bの部分に、ロールの軸芯方向に対して適宜間隔Pを隔てて、多数条の斜めに傾いた適宜の幅Hを有する溝3を形成して成る下ロール2Aを用い、而も、該下ロール2Aに形成された斜めの溝3が、単板4の通路を対称軸として、上ロール2とは非対称的な向きに傾くように、下ロール2Aを、上ロール2に対設する構成を採れば、各ロール2・2Aの溝3が、単板4の通路を対称軸として、非対称的な向きに傾いていることにより、各ロール2・2Aの弾性体2bが、単板4の圧縮に伴う反力を受けて、夫々逆の向きに斜めに倒れ込むように変形し、それに伴って、単板4も、表裏面に対して一層確実に斜めに傾いた方向に圧縮される結果、大半の仮道管4aの断面が、一層容易に略菱形筒状となるように変形するから、単板4の表裏面に対して略直交状である細胞壁に、塑性変形を伴う座屈や亀裂が発生する確率も、一段と低下することとなり、一層有効である。
因に、単板4の圧縮の均等化などからして、各ロール2・2Aの溝3の位置は、図示する如く、上下で異なるように設けるのが好ましいが、たとえ同じ位置であっても、実用的には格別差支えない。
尚、図示実施例の溝付複合体ロールは、金属製の軸部の態様について、全体が完全な一体状の軸部である構成を採ったが、必要に応じては、比較的細い軸芯部と、該軸芯部に嵌装すると共に、キー・締め付けネジ等の係止手段によって、前記軸芯部に固定する、適宜の幅を有する複数個の嵌装部材との組み合わせから成る、組み付け式の軸部とする構成を採っても差支えなく、個々の嵌装部材の夫々に、弾性体を被覆するようにすれば、仮に、一部の弾性体が損傷した場合には、該当する部位の嵌装部材のみを、弾性体共々交換すれば足りるから、保守管理が簡略化できる。
また、述上の如き組み付け式の軸部とする構成を採れば、必要に応じては、適宜部分にある隣合う嵌装部材同士の間に、軸受部材を介在(軸芯部に嵌装)させると共に、所望幅の隙間を設けるようにすれば、該隙間の部分に、中間用の撓み受け部材を介入させることが可能となり、幅広のロールを用いる場合の撓みを大幅に減少させることができる。
また、溝付複合体ロールと他のロールとの上下関係にも格別の制約はなく、図示実施例とは上下が逆であっても差支えない。
また、図示は省略したが、必要に応じては、単板の入口側の表面及び/又は裏面に搾り出された水分が、前記弾性体に設けられた溝を介して、単板の出口側の表面及び/又は裏面に流入することを防止する手段として、圧縮空気の噴射ノズルを、単板の出口側の各溝に臨む位置に備え、単板の脱水作業中に於ては、前記噴射ノズルを介して、単板の出口側の各溝から、単板の入口側に向けて、圧縮空気を噴射する構成を採っても差支えない。
以上明らかな如く、本発明に係る単板の脱水装置は、針葉樹原木から旋削された単板の組織構造に着目して、木材組織の主体を成す仮道管の細胞壁の損傷を可及的に防ぎつつ、脱水処理を行うものであるから、二次的な厚み減りをも含めた、最終的な単板の厚み減りが、従来に比べて低減でき有益であり、斯界に於ける本発明の実施効果は甚だ大きい。
1 :下ロール
2 :上ロール
2a :軸部
2b :弾性体
3 :溝
4 :単板
4a :仮道管
H :溝の幅
P :溝と溝の間隔
S :下ロールと上ロールの間隔
T :単板の厚さ
U :溝の深さ
V :弾性体の厚さ
θ :溝の傾きの角度
2 :上ロール
2a :軸部
2b :弾性体
3 :溝
4 :単板
4a :仮道管
H :溝の幅
P :溝と溝の間隔
S :下ロールと上ロールの間隔
T :単板の厚さ
U :溝の深さ
V :弾性体の厚さ
θ :溝の傾きの角度
Claims (4)
- 一対のロールを、ベニヤ単板の厚さよりも著しく狭い間隔を隔てて対設すると共に、一対のロールの少なくとも片方を駆動回転可能に備えて成り、該一対のロールの間にベニヤ単板を通して、搬送しつつ圧縮して脱水する脱水装置であって、一対のロールの少なくとも片方には、金属製の軸部の外周に適宜の厚さと適宜の硬度とを有する硬質の弾性体を円筒状に被覆し、且つ、該弾性体の部分に、適宜の幅と適宜の深さとを有して円周方向に連なる溝を、ロールの軸芯方向に対して適宜間隔を隔てて、多数条形成して成る溝付複合体ロールを用いて成り、而も、前記溝が、ロールの軸芯方向と平行方向の半截断面に於て、ロールの軸芯方向に対して適宜角度を以って斜めに交わる向きに傾いていることを特徴とする針葉樹原木から旋削されたベニヤ単板の脱水装置。
- 厚さが、25mm〜40mmであり、硬度が、ショアD硬度で60度〜75度である弾性体を被覆した溝付複合体ロールを用いて成る請求項1記載の針葉樹原木から旋削されたベニヤ単板の脱水装置。
- 幅が、2mm〜6mmであり、深さが、15mm〜30mmである溝を、ロールの軸芯方向に対して30mm〜45mmの間隔を隔てて、ロールの軸芯方向に対して82度〜87度の角度を以って斜めに交わる向きに傾けて形成した溝付複合体ロールを用いて成る請求項1又は請求項2記載の針葉樹原木から旋削されたベニヤ単板の脱水装置。
- 溝付複合体ロールに対設する他方のロールとして、溝付複合体ロールと同様に、金属製の軸部の外周に硬質の弾性体を円筒状に被覆し、且つ、該弾性体の部分に、ロールの軸芯方向に対して適宜間隔を隔てて、多数条の斜めに傾いた適宜の幅を有する溝を形成して成る別の溝付複合体ロールを用いると共に、該別の溝付複合体ロールに形成された斜めの溝が、ベニヤ単板の通路を対称軸として、前記溝付複合体ロールとは非対称的な向きに傾くように、別の溝付複合体ロールを、前記溝付複合体ロールに対設して成る請求項1又は請求項2記載又は請求項3の針葉樹原木から旋削されたベニヤ単板の脱水装置。
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- 2012-05-18 JP JP2012114600A patent/JP2013240899A/ja active Pending
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