JP2013227633A - 転がり疲労寿命に優れた鋼 - Google Patents
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Abstract
【課題】 鋼中の酸素含有量と硫黄含有量を規制するとともに超音波探傷法により鋼中の非金属介在物を大体積で検出し、その個数を制限することにより、転がり疲労寿命に優れた機械用部品および装置におよび装置に使用される鋼を提供する。
【解決手段】表面硬さを58HRC以上とする機械部品および装置に用いられる鋼であって、鋼中の酸素含有量が質量割合で8ppm以下で、硫黄含有量が0.008質量%以下であり、超音波探傷法により鋼材の体積1000mm3当たりに検出される介在物径が20μm以上で100μm未満である非金属介在物の個数が3.5個以下であり、超音波探傷法により鋼材重量2.5kg当たりに検出される介在物径が100μm以上である非金属介在物の個数が1.5個以下である、転がり疲労寿命に優れた鋼。
【選択図】 なし
【解決手段】表面硬さを58HRC以上とする機械部品および装置に用いられる鋼であって、鋼中の酸素含有量が質量割合で8ppm以下で、硫黄含有量が0.008質量%以下であり、超音波探傷法により鋼材の体積1000mm3当たりに検出される介在物径が20μm以上で100μm未満である非金属介在物の個数が3.5個以下であり、超音波探傷法により鋼材重量2.5kg当たりに検出される介在物径が100μm以上である非金属介在物の個数が1.5個以下である、転がり疲労寿命に優れた鋼。
【選択図】 なし
Description
本発明は、軸受、ギア、ハブユニット、トロイダル型CVT装置、等速ジョイント、クランクピンなどの優れた転がり疲労寿命が要求される、表面硬さを58HRC以上に硬化させて使用される機械部品や装置として適用される鋼に関するものである。
近年、各種機械装置の高性能化にともない、転がり疲労寿命が求められる機械部品や装置の使用環境は過酷化している。そこで、これらの部品や装置の寿命向上ならびに信頼性向上に対する要求も高まっている。このような要求に対し、鋼材面からの対策としては、鋼成分の適正化や転がり疲労寿命に有害な不純物元素の低減が行われ、寿命の向上ならびに信頼性の向上がはかられている。
例えば、不純物元素のうち、酸素はアルミナなどの酸化物系介在物を構成し、破損の起点となるため、特に有害性が高い酸素に関しては、ppmオーダーでの低減が行われている。さらに高い信頼性が求められる場合には、VAR、ESRなどの特殊溶解による酸素量の低減も行われている。また、他の不純物元素に関しても、その含有量を0.01%オーダーまで低減することにより、それらの悪影響を防止する対策がとられている。
鋼中の酸素量が少ない高清浄度鋼は種々提案されているが、これらの提案の中で、鋼中酸素含有量が10ppm未満であり、かつ、電子ビーム溶融法により浮上させ、凝集させた酸化物系介在物の表面露出面積が1グラム当たり20μm2以下であることを特徴とする高清浄度軸受用鋼が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。さらに、精錬のプロセス制約を受けず、製造コストの増加を招くことなく、汎用の長寿命の鋼が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。さらに、疲労強度が要求される部品設計の際に必要となる、所定体積中に存在が予測される最大介在物の大きさを保証した鋼が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。また、最大介在物径が略100μm以下の介在物については極値統計法を適用し、略100μm以上の介在物については探傷周波数を5〜25MHzとした超音波探傷法を適用するなどの両手法を併用した評価方法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。また、さらに100μm以下の介在物について探傷周波数を20〜125MHzとした超音波探傷法により評価することにより、転がり疲労寿命に優れた鋼としての介在物の個数と大きさを規定した鋼が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
しかしながら、引用文献1〜3に記載の鋼では、転がり疲労寿命に優れた鋼{例えば、スラスト型転がり疲労試験にて、最大ヘルツ応力Pmax=5.5GPaでL10寿命(同一ロットの試験片を同じ条件で試験した場合に、そのうちの90%の試験片がはく離することなく回転するcycle数)>8.0×106cycleが得られる鋼}を安定して提供する際に、20μmを超える非金属介在物の発生は極めて偶発的、かつ、低い確率で発生するので、それらの発生の検出は非常に困難である。また、従来技術では、被検面積が小さいために鋼材の大体積を検査しようとすると多大な時間を要するため、鋼材の良否を判断することができない。また、引用文献1に記載の鋼では、介在物の融解および凝集が起こるため、正確な介在物径や個数を評価することができない。
また、引用文献4に記載の方法では、最大介在物径が100μm未満である非金属介在物については極値統計法を適用し、100μm以上である非金属介在物については探傷周波数を5〜25MHzとした超音波探傷法を適用するなどの併用による評価方法を提案している。極値統計法は上述と同様に被検面積が小さく、20μm以上、かつ、100μm未満である非金属介在物について見た場合の鋼材の良否を十分に判断できるとは言い難い。また、探傷周波数を5〜25MHzとした超音波探傷法で検出している介在物径が100μm以上であるため、20μm以上で100μm未満の介在物についての評価が出来ていないことから、L10寿命>8.0×106cycleが得られる鋼を安定して提供できる評価方法とはいい難い。
また、引用文献5に記載の方法では、硫黄含有量が0.008質量%以下で、かつ、超音波探傷法により鋼材体積300mm3当たりに検出される介在物径が20μm以上である非金属介在物の個数を300mm3当たりに12個以下であるように規定した、転がり疲労寿命に優れた鋼(スラスト型転がり疲労試験にて、最大ヘルツ応力Pmax=5.3GPaでL10寿命>1.0×107cycleが得られる鋼)およびその評価方法を提案している。ただし、使用中の軸受が計算寿命より極めて早期にアクシデンタルに破損することに対する信頼性を評価していないため、早期破損に対する信頼性の目安となるL1寿命(同一ロットの試験片を同じ条件で試験した場合に、そのうちの99%の試験片がはく離することなく回転するcycle数)が、例えば、最大ヘルツ応力Pmax=5.5GPaでL1寿命>5.5×106cycleが得られる鋼を安定して提供できる鋼ではない。
そこでL10寿命だけでなく、アクシデンタルな早期破損に対する信頼性の目安とするL1寿命に関して、さらに転がり疲労寿命を向上させることについて検討を行った。超音波探傷法による鋼中の非金属介在物の検出に関し、非金属介在物のうち、酸化物は冷間から熱間のいずれの加工温度域においても、母相の鋼より著しく硬質な介在物であり、圧延や鍛造時に母相に追従して変形しにくいために、加工後に母相と密着していない部分を有する場合があり、そのため、超音波探傷法にて比較的容易に検出することが可能である。
一方で、発明者らは、非金属介在物のうちで、硫化物は、熱間や冷間での圧延や鍛造時において、比較的母相の鋼と良く追従して変形しやすい軟質の介在物であり、この母相との密着性が良好な特徴により、硫化物は酸化物に比べて超音波探傷法では検出しにくい介在物であることを見出している。そして、実際には鋼中に存在しているものの超音波探傷法により検出できない一部の硫化物系介在物の存在が、転がり疲労寿命を低下させる場合があることが分かった。
発明者らの鋭意研究によれば、転がり疲労寿命の優れた鋼(例えば、最大ヘルツ応力Pmax=5.5GPaで、L10寿命>8.0×106cycleおよびL1寿命>5.5×106cycle)とするためには、鋼中の硫黄含有量は0.008質量%以下に規制する必要があり、かつ、硫黄含有量を下げると同時に、酸化物系介在物の悪影響をさらに軽減する必要があることから、酸素含有量は8ppm以下とし、探触子周波数25〜125MHzの超音波探傷法により、鋼材体積1000mm3当たりの介在物径が20μm以上で100μm未満である非金属介在物の個数を3.5個以下に規制するとともに、介在物径が100μm以上である非金属介在物の個数を1.5個以下に規制すれば良いことが分かった。さらに鋼中の硫黄含有量は0.003質量%以下に規制し、同時に酸素含有量は6ppm以下とし、探触子周波数25〜125MHzの超音波探傷法により、鋼材体積1000mm3当たりの介在物径が20μm以上で100μm未満である非金属介在物の個数を3.0個以下に規制するとともに、介在物径が100μm以上である非金属介在物の個数を1.0個以下に規制すればさらに優れた転がり疲労寿命(例えば、最大ヘルツ応力Pmax=5.5GPaでL10寿命>1.2×107cycleおよびL1寿命>6.4×106cycle)が得られることが分かった。
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、鋼中の酸素含有量と硫黄含有量を規制するとともに超音波探傷法により鋼中の非金属介在物を大体積で検出し、その個数を制限することにより、転がり疲労寿命に優れた機械用部品に使用される鋼を提供することである。
上記の課題を解決するための本発明の手段は、第1の手段では、表面硬さを58HRC以上とする機械部品に用いる鋼であって、鋼中の酸素含有量が質量割合で8ppm以下、硫黄含有量が0.008質量%以下であり、超音波探傷法により鋼材体積1000mm3当たりに検出される介在物径が20μm以上である非金属介在物の個数が3.5個以下であり、かつ、超音波探傷法により鋼材重量2.5kg当たりに検出される介在物径が100μm以上である非金属介在物の個数が1.5個以下である、転がり疲労寿命に優れた鋼である。
第2の手段では、表面硬さを58HRC以上とする機械部品に用いる鋼であって、鋼中の酸素含有量が質量割合で6ppm以下、硫黄含有量が0.003質量%以下であり、超音波探傷法により鋼材体積1000mm3当たりに検出される介在物径が20μm以上で100μm未満である非金属介在物の個数が3.0個以下であり、かつ、超音波探傷法により鋼材重量2.5kg当たりに検出される介在物径が100μm以上である非金属介在物の個数が1.0個以下である、転がり疲労寿命に優れた鋼である。
第3の手段では、表面硬さを58HRC以上とする機械部品に用いる鋼であって、鋼中の酸素含有量が質量割合で8ppm以下、硫黄含有量が0.008質量%以下であり、超音波探傷法により鋼材体積1000mm3当たりに検出される介在物径が20μm以上である非金属介在物の個数が3.5個以下であり、かつ、超音波探傷法により鋼材重量2.5kg当たりに検出される介在物径が100μm以上である非金属介在物の個数が1.5個以下であり、前記、介在物径が20μm以上で100μm未満である非金属介在物の個数は、超音波探傷法により総体積1500mm3以上を探傷することにより評価されたものであり、かつ、前記の介在物径が100μm以上である非金属介在物の個数は、超音波探傷法により総重量3.0kg以上を探傷することにより評価されたものである、転がり疲労寿命に優れた鋼である。
第4の手段では、表面硬さを58HRC以上とする機械部品に用いる鋼であって、鋼中の酸素含有量が質量割合で6ppm以下、硫黄含有量が0.003質量%以下であり、超音波探傷法により鋼材体積1000mm3当たりに検出される介在物径が20μm以上である非金属介在物の個数が3.0個以下であり、かつ、超音波探傷法により鋼材重量2.5kg当たりに検出される介在物径が100μm以上である非金属介在物の個数が1.0個以下であり、前記、介在物径が20μm以上で100μm未満である非金属介在物の個数は、超音波探傷法により総体積1500mm3以上を探傷することにより評価されたものであり、かつ、前記の介在物径が100μm以上である非金属介在物の個数は、超音波探傷法により総重量3.0kg以上を探傷することにより評価されたものである、転がり疲労寿命に優れた鋼である。
本発明の転がり疲労寿命に優れた鋼では、鋼中の酸素含有量と硫黄含有量の規制とともに、超音波探傷法により鋼中の非金属介在物を大体積で検出し、非金属介在物の個数が制限された鋼とすることにより、転がり疲労寿命に優れた機械用部品に使用される鋼を提供することが可能となる。
本発明の実施の形態である転がり疲労寿命に優れた鋼について、以下に詳細に説明をする。
本発明の実施の形態である転がり疲労寿命に優れた鋼は、表面硬さを58HRC以上とする機械部品に用いる軸受用鋼であって、鋼中の酸素含有量が質量割合で8ppm以下、硫黄含有量が0.008質量%以下で、かつ、超音波探傷法により鋼材体積1000mm3当たりに検出される介在物径が20μm以上で100μm未満である非金属介在物の個数が3.5個以下であり、かつ、超音波探傷法により鋼材重量2.5kg当たりに検出される介在物径が100μm以上である非金属介在物の個数が1.5個以下である鋼である。
また、本発明の他の実施の形態の転がり疲労寿命に優れた鋼は、表面硬さを58HRC以上とする機械部品に用いる軸受用鋼であって、鋼中の酸素含有量が6ppm以下、硫黄含有量が0.003質量%以下で、かつ、超音波探傷法により鋼材体積1000mm3当たりに検出される介在物径が20μm以上で100μm未満である非金属介在物の個数が3.0個以下であり、かつ、超音波探傷法により鋼材重量2.5kg当たりに検出される介在物径が100μm以上である非金属介在物の個数が1.0個以下である鋼である。
軸受の転がり疲労においては、鋼からある大きさ以上の非金属介在物を少なくすることが重要である。軸受の転走面下に大きな非金属介在物が存在すれば、はく離を発生させることから、軸受の転走面下の危険部位に出現する非金属介在物の大きさを小さくすることが軸受の寿命向上に対して特に重要であることが分かっている。
軸受の転がり疲労において、計算寿命に達することなく、早期にはく離を発生させる非金属介在物の介在物径としては、20μm以上で100μm未満であり、さらに頻度がまれなアクシデンタルな短寿命はく離の原因となる非金属介在物の介在物径としては、100μm以上であることから、介在物径が20μm以上で100μm未満である介在物であるとともに、介在物径が100μm以上である介在物の存在する頻度を極めて少なく、かつ、それが評価保証された鋼を用いれば、軸受の転走面下の危険部位に介在物が存在する確率を極めて低くすることが可能である。
請求項1に係る発明の本実施の形態の転がり疲労寿命に優れた鋼では、その特性を保証する評価方法として、超音波探傷法が適用され、超音波探傷法により鋼材の体積1000mm3当たりに検出される介在物径が20μm以上で100μm未満である非金属介在物の個数が3.5個以下であり、かつ、超音波探傷により鋼材の重量2.5kg当たりに検出される介在物径が100μm以上である非金属介在物の個数が1.5個以下に規制されている。
請求項2に係る発明の本実施の形態の転がり疲労寿命に優れた鋼では、その特性を保証する評価方法として、超音波探傷が適用され、超音波探傷法により鋼材の体積1000mm3当たりに検出される介在物径が20μm以上で100μm未満である非金属介在物の個数が3.0個以下であり、かつ、超音波探傷により鋼材の重量2.5kg当たりに検出される介在物径が100μm以上である非金属介在物の個数が1.0個以下に規制されている。
また、本実施の形態の介在物径が20μm以上で100μm未満である非金属介在物の個数は、超音波探傷法により総体積1500mm3以上を探傷することにより評価されたものであり、かつ、本実施の形態の介在物径が100μm以上の非金属介在物の個数は、超音波探傷法により総重量3.0kg以上を探傷することにより評価されたものである。
この超音波探傷法においては、既に様々な種類の超音波探傷装置や探触子が市販されており、本発明ではこれらのものを利用することができる。好ましい探触子としては、焦点型高周波探触子などが挙げられる。フラット型探触子の検出能は1/2波長といわれているが、焦点型探触子では1/4波長であり、精度の良い評価に対しては焦点型探触子が好適である。なお、本実施の形態の介在物径が20μm以上で100μm未満の介在物については、探触子の周波数は25〜125MHz程度が好ましい。特に、好ましくは30〜100MHz程度である。また、本実施の形態の介在物径が100μm以上の介在物については、探触子の周波数は5〜25MHz程度が好ましい。
本実施の形態の転がり疲労寿命に優れた鋼においては、介在物径が20μm以上で100μm未満の介在物については、超音波探傷法により総体積1500mm3以上を探傷し、介在物径が100μm以上の介在物については、超音波探傷法により総重量3.0kg以上を探傷し、それぞれ非金属介在物を検出することが好ましい。
超音波探傷において、介在物径が20μm以上で100μm未満の介在物について介在物個数を確認するための総体積を1500mm3以上とし、介在物径が100μm以上の介在物について介在物個数を確認するための総重量を3.0kg以上としたのは、安定した転がり疲労寿命が得られる鋼を提供する上で、評価精度の点から満足できる評価結果を得るために必要なためである。なおかつ、本実施の形態の超音波探傷法における評価体積および評価重量は、従来の顕微鏡観察を主体とする評価方法では、処理時間が膨大となるので、現実的には評価不可能なものである。超音波探傷を行なうにあたっては、試験片の表面から探触子の周波数に応じた深さまでの不感帯領域を評価体積から除外し、必要に応じて熱処理等による組織異常や超音波探傷における測定ノイズの影響を受けやすい試験片の端部を焦点位置での超音波ビームの探傷範囲から除外した上で、探触子の周波数、性能に応じた水中焦点距離範囲に基づいて超音波探傷における評価体積を1500mm3以上(介在物径が20μm以上で100μm未満の介在物の個数を確認する場合)、ならびに超音波探傷における評価重量を3.0kg以上(介在物径が100μm以上の介在物の個数を確認する場合)を確保する必要がある。
以上、説明したように本実施の形態の転がり疲労寿命に優れた鋼によれば、鋼中の酸素含有量と硫黄含有量を規制するとともに、超音波探傷法により鋼中の非金属介在物を大体積で検出し、その個数を制限することにより、転がり疲労寿命に優れた機械用部品に使用される鋼を提供することが可能となる。
次に、実施例を挙げて、本発明の転がり疲労寿命に優れた鋼をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
表1に供試材の成分組成を示す。表1の供試材1〜14および供試材19〜27については高炭素クロム軸受鋼であるJISのSUJ2鋼を、供試材15および28についてはJISのSCr420鋼を、供試材16についてはJISのSNCM420鋼を、供試材17についてはJISのS53C鋼を、供試材18、供試材29および供試材30についてはJISのSCM420鋼を用いた。供試材1〜3、供試材8〜11、供試材15〜17、供試材19〜23および供試材28については、アーク溶解炉で溶製し、続いて取鍋精錬し、さらに真空脱ガス装置で脱ガスを行い連続鋳造により鋳塊を製造した。
供試材4〜6、供試材12、供試材13、供試材24〜27については、アーク溶解炉で溶製し、続いて取鍋精錬し、さらに真空脱ガス装置で脱ガスを行いインゴットにより鋳塊を製造したものである。残りの供試材7、供試材14、供試材18、供試材29、供試材30については、100kg真空溶解炉により溶製して鋳塊を製造したものである。
上記で得られた鋳塊に、熱間加工を施してφ65の鋼材とした。
(スラスト型転がり疲労試験)
供試材1〜14と供試材19〜27の鋼材は800℃にて球状化焼鈍を施し、鋼材の長手方向に対し垂直に、φ60×φ20×5.8mmの円盤からなる試験片を作製した。この試験片を835℃で20分保持した後、油冷により焼入れし、次いで170℃で90分の焼戻し処理を行い、所望の58HRC以上の硬さを得た後に、表面研磨を行ってスラスト型転がり疲労試験を行った。供試材15、供試材16、供試材18、供試材28〜30の鋼材は、925℃にて焼ならしを施し、鋼材の長手方向に対し垂直にφ60×φ20×8.3mmの円盤からなる試験片を作製した。この試験片を930℃で浸炭処理した後、油冷により焼入れし、次いで180℃で90分の焼戻し処理を行い、所望の58HRC以上の硬さを得た後に、表面研磨を行ってスラスト型転がり疲労試験を行った。供試材17の鋼材は870℃で焼ならしを施し、鋼材長手方向に対し垂直にφ60×φ20×8.3mmの円盤からなる試験片を作製した。この試験片を高周波焼入れした後、次いで180℃で90分の焼戻し処理を行い、所望の58HRC以上の硬さを得た後に、表面研磨を行ってスラスト型転がり疲労試験を行った。スラスト型転がり疲労試験は最大ヘルツ応力Pmax:5.5GPaで行った。なお、特にL1寿命を求める場合においては1.5×107サイクル程度での打ち切り試験とし、試験評価時間の短縮を図った。
供試材1〜14と供試材19〜27の鋼材は800℃にて球状化焼鈍を施し、鋼材の長手方向に対し垂直に、φ60×φ20×5.8mmの円盤からなる試験片を作製した。この試験片を835℃で20分保持した後、油冷により焼入れし、次いで170℃で90分の焼戻し処理を行い、所望の58HRC以上の硬さを得た後に、表面研磨を行ってスラスト型転がり疲労試験を行った。供試材15、供試材16、供試材18、供試材28〜30の鋼材は、925℃にて焼ならしを施し、鋼材の長手方向に対し垂直にφ60×φ20×8.3mmの円盤からなる試験片を作製した。この試験片を930℃で浸炭処理した後、油冷により焼入れし、次いで180℃で90分の焼戻し処理を行い、所望の58HRC以上の硬さを得た後に、表面研磨を行ってスラスト型転がり疲労試験を行った。供試材17の鋼材は870℃で焼ならしを施し、鋼材長手方向に対し垂直にφ60×φ20×8.3mmの円盤からなる試験片を作製した。この試験片を高周波焼入れした後、次いで180℃で90分の焼戻し処理を行い、所望の58HRC以上の硬さを得た後に、表面研磨を行ってスラスト型転がり疲労試験を行った。スラスト型転がり疲労試験は最大ヘルツ応力Pmax:5.5GPaで行った。なお、特にL1寿命を求める場合においては1.5×107サイクル程度での打ち切り試験とし、試験評価時間の短縮を図った。
(超音波試験)
介在物径が20μm以上で100μm未満である非金属介在物を評価するに当たり、供試材1〜14、供試材19〜27の鋼材については800℃にて球状化焼鈍を施し、L断面試験片を切り出し、供試材15、供試材16、供試材18、供試材28〜30の鋼材については925℃にて焼ならしを施し、L断面試験片を切り出した後、供試材17の鋼材については870℃にて焼ならしを施し、L断面試験片を切り出した後、これらの供試材に焼入焼戻し処理を行った上で超音波の伝達損失を軽減する目的でいずれも平面研磨を行った。平面研磨により、いずれも厚さ10mmに仕上げて、超音波探傷試験を行った。超音波探傷には、焦点型高周波探触子(50MHz)を備えた超音波探傷装置を用いた。また、超音波探傷体積は3000mm3とした。得られた介在物による反射波のデータから、鋼材の体積1000mm3当たりの20μm以上で100μm未満の介在物の検出個数を求めた。
介在物径が20μm以上で100μm未満である非金属介在物を評価するに当たり、供試材1〜14、供試材19〜27の鋼材については800℃にて球状化焼鈍を施し、L断面試験片を切り出し、供試材15、供試材16、供試材18、供試材28〜30の鋼材については925℃にて焼ならしを施し、L断面試験片を切り出した後、供試材17の鋼材については870℃にて焼ならしを施し、L断面試験片を切り出した後、これらの供試材に焼入焼戻し処理を行った上で超音波の伝達損失を軽減する目的でいずれも平面研磨を行った。平面研磨により、いずれも厚さ10mmに仕上げて、超音波探傷試験を行った。超音波探傷には、焦点型高周波探触子(50MHz)を備えた超音波探傷装置を用いた。また、超音波探傷体積は3000mm3とした。得られた介在物による反射波のデータから、鋼材の体積1000mm3当たりの20μm以上で100μm未満の介在物の検出個数を求めた。
また、介在物径が100μm以上である非金属介在物を評価するに当たり、供試材1〜14、供試材19〜27の鋼材については、800℃にて球状化焼鈍を施し、L断面試験片を切り出し、供試材15、供試材16、供試材18、供試材28〜30の鋼材については925℃にて焼ならしを施し、L断面試験片を切り出した後、供試材17の鋼材については870℃にて焼ならしを施し、L断面試験片を切り出した後、いずれも平面研磨を行って厚さ45mmに仕上げて、超音波探傷試験を行った。超音波探傷には、焦点型高周波探触子(10MHz)を備えた超音波探傷装置を用いた。また、超音波探傷重量は10.0kgとした。得られた介在物による反射波のデータから、鋼材の重量2.5kg当たりの100μm以上の介在物検出個数を求めた。
これらの供試材の各試験片について、表面硬さ、50MHzの焦点型高周波探触子で評価した超音波探傷による鋼材の体積1000mm3当たりの介在物検出個数、10MHzの焦点型高周波探触子で評価した超音波探傷による鋼材の重量2.5kg当たりの介在物検出数およびスラスト型転がり疲労試験によるL10寿命、L1 寿命を表2に示す。
表2において、実施例の供試材1〜7、供試材15〜17は本発明を満足するものであり、L10寿命が最低のものでも、供試材7の8.2×106cycleであり、L1寿命が最低のものでも、供試材7の5.6×106cycleである。
この場合の鋼中の酸素含有量は質量割合で8ppm以下、硫黄含有量は0.008質量%以下であり、超音波探傷法により鋼材体積1000mm3当たりに検出される介在物径が20μm以上で100μm未満である非金属介在物の個数は3.5個以下であり、かつ、鋼材重量2.5kg当たりに検出される介在物径が100μm以上である非金属介在物の個数は1.5個以下であり、本発明の請求項1および請求項3の発明を満足するものである。
また、鋼中の酸素含有量が質量割合で6ppm以下、硫黄含有量が0.003質量%以下であり、超音波探傷法により鋼材の体積1000mm3当たりに検出される介在物径が20μm以上で100μm未満である非金属介在物の個数が3.0個以下であり、かつ、鋼材重量2.5kg当たりに検出される介在物径が100μm以上である非金属介在物の個数が1.0個以下である実施例の供試材8〜14、供試材18は、本発明の請求項2および請求項3の発明を満足するものであり、L10寿命が最低のものでも供試材12の12.3×106cycleであり、L1寿命が最低のものでも供試材8の6.5×106cycleであり、転がり疲労寿命にいっそう優れた鋼となっている。
これに対し、比較例の供試材19〜30は鋼材体積1000mm3当たりに検出される20μm以上で100μm未満である非金属介在物の個数が3.5個を超え、かつ、鋼材重量2.5kg当たりに検出される100μm以上である非金属介在物の個数が1.5個を超えているもので、本発明の範囲外のものである。これら比較例の供試材19〜30は、L10寿命が最大のものでも供試材20の7.6×106cycleであり、L1寿命が最大のものでも供試材19の5.0×106cycleと本実施例のものに比して劣っている。
Claims (3)
- 表面硬さを58HRC以上とする機械部品に用いる鋼であって、鋼中の酸素含有量が質量割合で8ppm以下、硫黄含有量が0.008質量%以下であり、超音波探傷法により鋼材の体積1000mm3当たりに検出される介在物径が20μm以上で100μm未満である非金属介在物の個数が3.5個以下であり、かつ、超音波探傷法により鋼材重量2.5kg当たりに検出される介在物径が100μm以上である非金属介在物の個数が1.5個以下であることを特徴とする転がり疲労寿命に優れた鋼。
- 表面硬さを58HRC以上とする機械部品に用いる鋼であって、鋼中の酸素含有量が質量割合で6ppm以下、硫黄含有量が0.003質量%以下であり、超音波探傷法により鋼材体積1000mm3当たりに検出される介在物径が20μm以上で100μm未満である非金属介在物の個数が3.0個以下であり、かつ、超音波探傷法により鋼材重量2.5kg当たりに検出される介在物径が100μm以上である非金属介在物の個数が1.0個以下であることを特徴とする転がり疲労寿命に優れた鋼。
- 介在物径が20μm以上で100μm未満である非金属介在物の個数は、超音波探傷法により総体積1500mm3以上を探傷することにより評価されたものであり、かつ、介在物径が100μm以上である非金属介在物の個数は、超音波探傷法により総重量3.0kg以上を探傷することにより評価されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の転がり疲労寿命に優れた鋼。
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