JP2013212460A - 無動力式循環型酸化還元方法およびその装置 - Google Patents

無動力式循環型酸化還元方法およびその装置 Download PDF

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Abstract

【課題】可視光下において無動力で動作することができる溶質の酸化還元方法およびそれに使用する装置の提供を目的とする。
【解決課題】本発明は、溶液中から液面上まで伸延する貫通孔を有する孔質体を有し、前記貫通孔の内壁は、可視光反応型光触媒成分により被覆された無動力式循環型酸化還元反応容器内により前記溶液中の溶質を酸化還元する方法であって、
溶液が液面より高い位置まで前記貫通孔内に侵入した状態で前記無動力式循環型酸化還元反応容器に可視光を照射して、前記触媒成分により前記溶質が酸化または還元される工程と、
酸化または還元された溶質は液面下に移動し、かつ溶液中の溶質は前記貫通孔内に侵入するという循環を連続的に繰り返し酸化または還元された溶質の量が増加する工程と、
を有することを特徴とする、溶質の無動力式循環型酸化還元方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、溶質の無動力式循環型酸化還元方法およびそれに使用する装置である。
種々の化学反応、限られた資源や材料のリサイクルを有効に実現するために、優れた機能を有する触媒が必要とされている。特に、有害物質を無害化して生活環境を守る環境触媒技術の分野では、ガソリン乗用車の排ガス中に含まれるCO、炭化水素、NOxの3成分を主に浄化対象とする自動車触媒や、太陽光に含まれる微弱な紫外光(太陽光の3〜4%)の照射で有害物質を無害化する光触媒などが近年注目されている。
このような有害物質を分解して無害化する技術としては、例えば特許文献1が挙げられる。当該特許文献1では、難分解性の有機化合物の水溶液が圧入供給されて層流となると共に、紫外線照射手段が対向配設されており、かつ、紫外線照射面以外の流路形成面に、光触媒がコートされた構成のマイクロリアクターが開示されている。これにより、流路内を通過する難分解性の有機化合物は、紫外線照射手段による光触媒への紫外線照射により、前記光触媒との界面において酸化、還元反応により分解され、無害化されるとしている。
一方、現在の世界情勢に目を向けると、アフリカでは3億人以上の人が安全で衛生的な飲料水が得られず、また、何千万人もの人が毎年水による感染症などが原因で死亡していると世界保健機構(WHO)から報告されている。さらに、地球温暖化の影響により大規模な自然災害が増加傾向にあり、このような自然災害発生時においては、飲料水の確保が重要な課題の一つとなる。そのため、環境調和的に水質浄化ができる環境触媒を用いた水質浄化装置が広く求められている。かかる環境触媒を用いた水質浄化装置としては、例えば特許文献2が挙げられる。
当該特許文献2には、濁水内の微生物をエアポンプによるエアとともに光触媒ユニットの浄化容器内に供給する浄水装置が開示されており、これにより、浄化容器内で光触媒による微生物の分解反応が行われる際に、エア中の酸素が十分に供給されるので、光触媒による分解を効率よく活発に反応させることができるとしている。
特開2010−99625号公報 特開2011−25103号公報
特許文献1に記載のマイクロリアクターの発明は、特許文献1の図1の(2)および図2に示すように、難分解性有機化合物を含む溶液が流れる蛇行状のマイクロ流路の表面には光触媒が被覆されており、当該マイクロ流路の上部には紫外線照射手段が設置されている。また、難分解性有機化合物を含む溶液は、供給路からポンプによりマイクロ流路に供給されている構成である。そのため、特許文献1の装置では、平常時は問題なく難分解性の有機化合物を還元・無害化することができるが、例えば自然災害時に使用する場合、前記マイクロリアクターの動力であるポンプを働かせる電気を必要とするため、電気供給が遮断された災害現場の環境下では使用できなくなるという問題がある。また、特許文献1に記載の発明では、紫外線照射手段により難分解性有機化合物を酸化還元により分解しているため、当該紫外線照射手段としての水銀灯、ブラックライト、LEDなどにも電気を必要とする。
さらに、特許文献2に記載の発明では、使用する光源について太陽光(紫外線)とだけ開示されているため詳細は不明であるが、少なくとも当該特許文献2に必須な曝気ユニットを構成するエアポンプを作動させる必要があるため、上記の特許文献1と同様に電気供給が遮断された災害現場の環境下では使用できなくなるという問題がある。
そこで、かかる問題を解決するため、可視光下において無動力で動作することができる溶質の酸化還元方法およびそれに使用する装置の提供を目的とする。
本発明の他の目的としては、対象とする溶質や使用する溶媒および触媒成分の種類によって、対象とする溶質を酸化もしくは還元して他の化合物に合成する方法を提供する。
本発明者らは上記課題に鑑み、溶質の酸化還元方法を鋭意検討した結果、溶液中から液面上まで伸延する貫通孔を有する孔質体を有し、前記貫通孔の内壁は、可視光反応型光触媒成分により被覆された無動力式循環型酸化還元反応容器内により前記溶液中の溶質を酸化還元する方法であって、溶液が液面より高い位置まで前記貫通孔内に侵入した状態で前記無動力式循環型酸化還元反応容器に可視光を照射して、前記触媒成分により前記溶質が酸化または還元される工程と、酸化または還元された溶質は液面下に移動し、かつ溶液中の溶質は前記貫通孔内に侵入するという循環を連続的に繰り返し酸化または還元された溶質の量が増加する工程と、を有することを特徴とする、溶質の無動力式循環型酸化還元方法により、本発明の目的を達成する。
本発明は、可視光下(太陽光を含む)において無動力で溶質を酸化還元することができる。
本発明に係る無動力式循環型酸化還元反応容器の一形態を示す模式図である。 本発明に係る無動力式循環型酸化還元反応容器の他の形態を示す模式図である。 本発明の実施例に示される実験結果である。 本発明の実施例に示される実験結果である。 本発明の実施例に示される実験結果である。 本発明の実施例に示される実験結果である。 本発明の実施例に示される実験結果である。 本発明の実施例に示される実験結果である。
本発明の第一は、溶液中から液面上まで伸延する貫通孔を有する孔質体を有し、前記貫通孔の内壁は、可視光(太陽光を含む。以下同様)反応型光触媒成分により被覆された無動力式循環型酸化還元反応容器内により前記溶液中の溶質を酸化還元する方法であって、溶液が液面より高い位置まで前記貫通孔内に侵入した状態で前記無動力式循環型酸化還元反応容器に可視光を照射して、前記触媒成分により前記溶質が酸化または還元される工程(以下、工程1と称する)と、酸化または還元された溶質は液面下に移動し、かつ溶液中の溶質は前記貫通孔内に侵入するという循環を連続的に繰り返し酸化または還元された溶質の量が増加する工程(以下、工程2と称する)と、を有することを特徴とする、溶質の無動力式循環型酸化還元方法である。
これにより、可視光下において無動力で溶質を酸化または還元することができる。
本明細書における用語「可視光」とは、360〜800nmの波長の電磁波を含む電磁波をいい、太陽光も含む。そのため、本発明に係る「可視光」は、360〜800nmの波長の電磁波だけであっても、太陽光のように360〜800nmの波長の電磁波を含むものであってもよく、本発明に係る無動力式循環型酸化還元反応容器や溶質の無動力式循環型酸化還元方法は、360〜800nmの波長の電磁波からなるものであっても、太陽光でもその効果を奏することができる。
本明細書において、まず無動力式循環型酸化還元反応容器を以下に説明した後に、当該反応容器を用いた溶質の無動力式循環型酸化還元方法を工程ごとに詳説する。
(無動力式循環型酸化還元反応容器)
本発明に係る無動力式循環型酸化還元反応容器は、溶液の液面上を浮遊するように設けられた浮体と、前記浮体に取り付けられ、前記溶液中から液面上まで伸延する貫通孔を有する孔質体と、を有し、前記貫通孔の内壁は、可視光反応型光触媒成分により被覆されていることが好ましい。
当該反応容器には貫通孔が形成されているため、溶液中にかかる反応容器を溶液に埋没しないように浸すと、毛管現象により溶液が貫通孔内部に侵入する。また貫通孔内部には可視光反応型光触媒成分が被覆されているため、当該触媒成分に可視光があたると、光励起により正孔と電子とが生成されて、これらの正孔や電子が光触媒表面にある溶質を酸化または還元したりする。それ以外にも正孔は水溶液中の水に含まれるOHを酸化してヒドロキシラジカル(OHラジカル)を、伝導帯電子は溶存Oを還元してO (スーパーオキサイドアニオン)などの活性酸素種を生成する。また、水以外の溶媒、例えばエタノールなどのアルコールを使用する場合は、エタノールラジカルや溶媒ラジカルなどの活性酸素種を生成すると言われており、現在はっきりとしたことはわかっていないが、これらの活性酸素種の反応により溶液中の溶質を酸化または還元することができると考えられている。
そのため、可視光下においてポンプなどの動力を使用することなく無動力で、溶液中の有害物質の酸化・還元による無毒化、溶液中の有機物質の分解、溶液中の有機物質を酸化または還元させることができると考えられる。
以下、図面を参照して本発明に係る無動力式循環型酸化還元反応容器を説明する。図1Aは、孔質体がハニカム形状の無動力式循環型酸化還元反応容器の模式図であり、図1Bは、孔質体が複数の管状体を束ねた無動力式循環型酸化還元反応容器の模式図である。
なお、「ハニカム形状」とは、狭義には「蜂の巣」から転じて、工業材料等で使用される六角形の小部屋(セル)の集合体を意味するが、本明細書では、広義に解し、六角セル以外でも同一形状(円、楕円、略楕円、多角形)のセルの集合体を総称してハニカム形状としている。図1Aでは、円状のセルの集合体を例示している。
本発明に係る無動力式循環型酸化還元反応容器10は、図1Aおよび図1Bに示すように少なくとも1つの貫通孔2が形成された孔質体1に溶液上を浮遊できる浮体3が取り付けられたものであり、孔質体1の一部が溶液の液面4下に存在し、かつ当該孔質体1のその他の部分が液面4上に存在しており、さらに当該孔質体1に形成されている貫通孔2の一つの端部5が溶液の液面下に、他の端部6が溶液の液面4上に位置している。このような形状としては、例えば、図1Aに示すハニカム状の孔質体および図1Bに示す管状体を複数束ねた孔質体以外に、多孔質体(多孔質ゼオライトなどのように、多数の孔が内部に形成し、かつ当該孔が連通したもの)、または管状体であるキャピラリー単体など挙げられる。
また、無動力式循環型酸化還元反応容器は、少なくとも1つの貫通孔が形成された孔質体と、溶液の液面上を浮遊するように設けられた浮体とを構成要素とするが、当該キャピラリーを複数束ねた孔質体の場合は、キャピラリーを束ねるために使用される条体(テープや紐)または接着剤に溶液の液面上を浮遊する機能を持たせてもよく、その場合の浮体は、条体(テープや紐)または接着剤になる。
さらに、本発明に係る孔質体が多孔質体の場合は、複数の孔が連通して貫通孔を形成しているため、貫通孔の形状がいわゆる分岐型であり、当該貫通孔の端部が2つ以上有する場合もある。
なお、孔質体とは、微細な孔(穴)が空いている部材をいい、本明細書では当該微細な孔に貫通孔が含まれるものをいう。
本発明に係る無動力式循環型酸化還元反応容器の貫通孔の数は特に制限されることはなく、酸化還元する対象の溶液の種類や量によって適宜選択されるものである。
本発明に係る無動力式循環型酸化還元反応容器の貫通孔は、溶液中から液面上まで伸延するよう設けられているため、当該貫通孔の一つの端部が溶液の液面下に、他の端部が溶液の液面上に位置している。当該貫通孔の直径が所定の範囲であるため、溶液の液面下に存在する貫通孔の一つの端部から毛細管現象により溶液が侵入し、当該貫通孔の他の端部に向かって浸透する。当該貫通孔の他の端部まで浸透した溶液に可視光があたると、可視光が照射された領域において、上述したように溶液の溶質が酸化または還元されて、当該溶質が分解等するため、この可視光が照射された領域における当該溶質の濃度が局所的に減少する。そのため、酸化または還元された溶質は濃度勾配よる拡散によって溶液の液面下に移動し、かつ溶液中の溶質も濃度の不均一さを解消するため濃度勾配よる拡散によって当該溶質の濃度が減少した方向に移動するという濃度勾配による拡散により物質置換が行われると考えられる。本発明では、この濃度勾配による拡散の物質置換によってポンプなどの動力を使用することなく無動力で、かつ対象物である溶質が循環されて酸化または還元をすることができると考えられる。また、さらに当該貫通孔の内壁には光触媒成分が被覆しているため超親水化現象により溶液が貫通孔内を浸透しやすくなると考えられる。
本発明に係る孔質体における貫通孔の形状は、特に制限されることは無く、多角角錐状、多角柱状、円柱状、円錐状、略円柱状、略円錐状、枝状(分岐状)、曲線状、蛇行状、または不定形状など挙げられ、枝状(分岐状)、曲線状、多角柱状、または円柱状が好ましい。また、孔質体における貫通孔の位置も特に制限されることは無いが、孔質体の長手方向に沿って貫通孔が形成されていることが好ましい。
そのため、本発明に係る孔質体は、軸直角断面の形状が多角形、円形、または楕円形のいずれかの管状体がより好ましい。
前記貫通孔の大きさは、軸直角断面の平均直径(または平均内径)が0.5〜3mmであることが好ましく、1〜1.4mmであることがより好ましい。
後述する実施例の管径依存性の実験(図2)で示すように、貫通孔の径依存性の実験データから貫通孔の内径の範囲は、0.1〜5mmが好ましく、0.5〜3mmがより好ましく、1〜1.4mmがさらに好ましい。
なお、貫通孔の大きさの平均内径の測定方法は、特に制限されず、本発明では孔質体が管状体やハニカム状の場合は、例えば、X線による画像測定であるガラス管内部計測装置(株式会社シグマ社製)を用いて測定しており、多孔質体の場合は、水銀ポロシメータで測定した平均細孔径を軸直角断面の平均直径としている。
前記貫通孔の長手方向の長さは、20〜300mmであることが好ましく、30〜150mmであることがより好ましく、30〜100mmであることがさらに好ましい。
上記最適な平均内径における吸引高さが20〜30mmであることからそれ以上の長さがあることが望ましく、装置全体の浮遊安定性の観点から300mm以下であることが好ましい。
また、本発明に係る孔質が管状体である場合、軸直角断面の最大直径(外径)は、内径などにより適宜変更されるものであり特に制限されるものではない。
さらに、本発明に係る孔質が管状体である場合、長手方向の最大長さは、30〜300mmであることが好ましい。
本発明に係る孔質体が管状体であって、かつ複数束ねる場合は、使用する溶液の体積にも依存するが、酸化還元の対象となる溶液の全体積が1〜1000mlに対して、貫通孔の内壁の全表面積が0.1〜100cm形成された孔質体になるよう適宜所定の本数を束ねることができる。
また、キャピラリーなどの管状体を束ねるために使用される条体(テープや紐)または接着剤は、公知の方法および手段を用いることができるため特に制限されることは無い。
本発明に係る貫通孔の内壁には可視光反応型光触媒成分が被覆されており、その被覆割合は当該内壁の全面積の80〜100%が好ましく、95〜100%がより好ましい。
本発明に係る貫通孔の内壁に形成された可視光反応型光触媒成分の厚さは、1〜10μmがより好ましい。
本発明に係る可視光反応型光触媒成分としては、可視光を照射して光触媒活性を発揮する触媒であれば特に制限されることは無く、バンドギャップエネルギーが好ましくは1.2〜3.1eV、より好ましくは1.5〜2.9eV、更に好ましくは1.5〜2.8eVである。当該バンドギャップエネルギーが1.2eV未満であると、光照射による酸化、還元反応を起こす能力が非常に弱く好ましくない。また、バンドギャップエネルギーが3.1eVより大きいと、正孔と電子を生成させるのに必要な光のエネルギーが非常に大きくなるため好ましくない。
当該光触媒成分としては、酸化タングステン、酸化チタン、窒素ドープ酸化チタン(Siと共にドープするものも含む)、硫黄ドープ酸化チタン、遷移金属ドープ酸化チタン(遷移金属、クロム、鉄、バナジウム)など種々の可視光反応型光触媒成分が挙げられ、具体例としては、TiO、ZnO、SrTiO、BaTiO、BaTiO、BaTi、KNbO、Nb、Fe、Ta、KTaSi、WO、SnO、Bi、BiVO、NiO、CuO、RuO、CeO等、さらにはTi、Nb、Ta、V、Fe、Cr、または遷移金属から選ばれた少なくとも1種の元素を有する層状酸化物(例えば特開昭62−74452号公報、特開平2−172535号公報、特開平7−24329号公報、特開平8−89799号公報、特開平8−89800号公報、特開平8−89804号公報、特開平8−198061号公報、特開平9−248465号公報、特開平10−99694号公報、特開平10−244165号公報等参照)、TaON、LaTiON、CaNbON、LaTaON、CaTaON等のオキシナイトライド化合物(例えば特開2002−66333号公報参照)やSmTi等のオキシサルファイド化合物(例えば特開2002−233770号公報参照)、CaIn、SrIn、ZnGa、NaSb等のd10電子状態の金属イオンを含む酸化物(例えば特開2002−59008号公報参照)、アンモニアや尿素等の窒素含有化合物存在下でチタン酸化物前駆体(オキシ硫酸チタン、塩化チタン、アルコキシチタン等)や高表面酸化チタンを焼成して得られる窒素ドープ酸化チタン(例えば特開2002−29750号公報、特開2002−87818号公報、特開2002−154823号公報、特開2001−207082号公報参照)、特開2011−031139号公報に記載の光触媒、チオ尿素等の硫黄化合物存在下にチタン酸化物前駆体(オキシ硫酸チタン、塩化チタン、アルコキシチタン等)を焼成して得られる硫黄ドープ酸化チタン、酸化チタンを水素プラズマ処理したり真空下で加熱処理したりすることによって得られる酸素欠陥型の酸化チタン(例えば特開2001−98219号公報参照)、さらには光触媒粒子をハロゲン化白金化合物で処理したり(例えば特開2002−239353号公報参照)、タングステンアルコキシドで処理(特開2001−286755号公報参照)することによって得られる表面処理光触媒等を好適に挙げることができる。
本発明において好適に使用できるオキシナイトライド化合物は、遷移金属を含むオキシナイトライドであり、光触媒活性が大きいものとして、好ましくは遷移金属がTa、Nb、Ti、Zr、Wからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とするオキシナイトライドであり、より好ましくは、アルカリ、アルカリ土類及びIIIB族の金属からなる群から選択される少なくとも1つの元素を更に含むことを特徴とするオキシナイトライドであり、更に好ましくはCa、Sr、Ba、Rb、La、Ndからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属元素を更に含むことを特徴とするオキシナイトライドである。
上記遷移金属を含むオキシナイトライドの例としては、LaTiON、LaCaTiON(v+w=3)、LaCaTaON(v+w=3)、LaTaON、CaTaON、SrTaON、BaTaON、CaNbON、CaWON、SrWO2N等の一般式AMOxNy(A=アルカリ金属、アルカリ土類金属、IIIB族金属;M=Ta、Nb、Ti、Zr、W;x+y=3)で表される化合物やTaON、NbON、WON、LiLaTaN等を挙げることができる。これらの中で、LaTiON、LaCaTiON(v+w=3)、LaCaTaON(v+w=3)、TaONが可視光での光触媒活性が非常に大きいため好ましい。
さらに、上記遷移金属を含むオキシサルファイドの例としては、SmTi、NdTi、LaTi、PrTi、SmNbS等を挙げることができる。これらの中で、SmTi、NdTiが可視光での光触媒活性が非常に大きいため非常に好ましい。更に、上述した光触媒は、好適にPt、Rh、Ru、Nb、Cu、Sn、Ni、Feなどの金属及び/又はこれらの酸化物を添加又は固定化したり、シリカや多孔質リン酸カルシウム等で被覆したり(例えば特開平10−244166号公報参照)して使用することもできる。
これらのうち、酸化チタン系および酸化タングステン系が、基材である孔質体への被覆性の観点で好ましい。
なお、酸化チタンとしては、アナターゼ、ルチル、ブルッカイトのいずれも使用できる。
本発明で用いる可視光反応型光触媒成分の形状は特に制限されることはなく、フィラー状、粒子状など挙げられ、粒子状のものが好ましい。粒子状の可視光反応型光触媒成分の平均粒子径(一次粒子)は、10〜100nmが好ましい。
また、可視光反応型光触媒成分の平均粒子径の測定方法は、公知の方法(電子顕微鏡観察による相加平均)や光散乱など種々の方法で行うことができるが、本発明では動的光散乱法により計測している。この光散乱法は、公知の方法であり、溶液中でブラウン運動している粒子にレーザー光を照射することで、当該粒子それぞれのブラウン運動の速度に対応した揺らぎが散乱光として光子検出器で観測され、光子相関法により自己相関関数を求め、キュムラント法およびヒストグラム法解析を用いることで、ブラウン運動速度を示す拡散係数、粒子径、または粒子径分布が求められるものである。また、当該平均粒子径は、数平均粒子径として算出している。
本発明に係る無動力式循環型酸化還元反応容器の孔質体の材料は、特に制限されることはなく、公知の有機材料または無機材料を使用することができ、具体的には、ガラス、石英、シリコン、シリカ、多孔質シリカ、ゼオライト、アルミナ、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル樹脂〔但し、(メタ)アクリルとはアクリル、或いはメタクリルを意味する。〕、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系高分子(代表的にはノルボルネン系樹脂等があるが、例えば、日本ゼオン株式会社製の製品名「ゼオノア」、JSR株式会社製の「アートン」等がある)等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、セルロース系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。
なお、上記孔質体への可視光反応型光触媒成分の被覆方法は、公知の方法(蒸着法や浸漬法)を使用することができ、例えば、当該光触媒成分やこれらの前駆体を含む溶液に浸漬し、その後必要により焼成や乾燥して被覆する方法が挙げられる。
本発明に係る浮体は、貫通孔の端部の一つを液面下に位置させ、かつ当該貫通孔の他の端部を液面上に位置させるように孔質体を溶液上に浮遊させる機能を発揮できるものであれば特に制限されることはなく、例えば、気体を密封することができる袋状の浮体や中空容器状の浮体、発泡スチロールなどの比重が低い素材で形成された浮体、またはボート状に形成された浮体などを挙げることができる。
本発明に係る溶液に使用される溶媒は、水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ヘキサン、シクロヘキサンなど、溶質に応じて溶媒が選択されるのが好ましい。また、活性酸素種が溶液中を発生させて、溶質を酸化還元により分解する場合は、水やアルコール系統などがより好ましく、一方、実施例6などで記載しているように表面反応を利用する場合には、通常の有機反応で用いられるアセトニトリルやヘキサンなどがより好ましい。
(溶質の無動力式循環型酸化還元方法)
以下に、無動力式循環型酸化還元反応容器を用いた溶質の無動力式循環型酸化還元方法を各工程について説明する。
(工程1)
本発明の溶質の無動力式循環型酸化還元方法は、溶液が液面より高い位置まで前記貫通孔内に侵入した状態で前記無動力式循環型酸化還元反応容器に可視光を照射して、前記触媒成分により前記溶質が酸化または還元される工程を有する。
上記で説明した無動力式循環型酸化還元反応容器を所望の溶液に置くと、孔質体の一部が溶液の液面下に浸り、かつ当該孔質体のその他の部分が液面上に浮く。また、当該孔質体に形成されている貫通孔の一つの端部が溶液の液面下に、他の端部が溶液の液面上に位置するように設計されており、かつ当該貫通孔の直径が所定の範囲であるため、溶液の液面下に存在する貫通孔の一つの端部から毛細管現象により溶液が侵入し、当該貫通孔の他の端部に向かって浸透する。毛細管現象により溶液が液面より高い位置まで前記貫通孔内に侵入した状態で、好ましくは、溶液の全体積が100〜1000mlに対して、液面上の孔質体の全体(液面を基準として0〜100mm離れた領域)に、360〜800nmの可視光(太陽光を含む)を3〜24時間の条件で照射すると、光触媒表面での反応および活性酸素種による反応により溶質が反応して、当該溶質を酸化または還元する。
さらに、溶液の全体積が1〜1000mlに対して、貫通孔の内壁の全表面積が0.1〜100cm形成された孔質体を有する無動力式循環型酸化還元反応容器を可視光下(太陽光を含む)で0.5〜10時間使用することが好ましく、貫通孔の内壁の全表面積が5〜50cm形成された孔質体を有する無動力式循環型酸化還元反応容器を可視光下(太陽光を含む)で2〜5時間使用することがより好ましい。
本発明の方法において、溶液中に含まれる溶質の酸化または還元は、主に使用される光触媒および使用される溶質と溶媒の種類によって決定されるものであり、後述の実施例でも説明しているが、溶質として例えばテトラクロロエチレン(水溶媒)、トリクロロエチレン(水溶媒)などの汚染物質を選択する場合は、光触媒として酸化タングステンを選択すると、これらの汚染物質が酸化分解され無害化される。また、溶質として、メチレンブルー(水溶媒)、ローダミン6G(水溶媒)などの色素を選択する場合は、光触媒として酸化タングステンを選択すると、これらの色素が酸化分解され分解される(実施例参照)。さらに、溶質として、トルエン(水溶媒、光触媒酸化チタン系)、ベンズアルデヒド(水溶媒、光触媒酸化チタン系)を選択すると酸化分解され、ニトロベンゼン(エタノール溶媒、光触媒酸化タングステン)を選択すると、これらの有機化合物が酸化分解される(実施例参照)。一方、同じ溶質としてニトロベンゼンを使用した場合でも、溶媒をシクロヘキサンに変えるとニトロベンゼンが還元されてアニリンが合成されることを確認している。
本発明に係る無動力式循環型酸化還元方法において用いられる溶質としては、溶媒に混合されうる物質であれば特に制限されることは無く、例えば、細菌類、ウィルス類、寄生虫類、化学物質が挙げられる。例えば化学物質としては、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化二窒素、三酸化二窒素、五酸化二窒素、アンモニア等などの窒素化合物や、ベンゼン、アセトアルデヒド、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ニトロベンゼン、ベンズアルデヒド、ローダミン6G、メチレンブルー、メチレンオレンジ、アゾ系染料等の有機化合物、ダイオキシン、トリハロメタンなどの有機ハロゲン化物、一酸化硫黄、三酸化二硫黄、二酸化硫黄、三酸化硫黄、七酸化二硫黄、四酸化硫黄、硫化水素等の硫黄化合物などが挙げられる。当該細菌類としては、枯草菌、カビの胞子等、大腸菌、ブドウ球菌、レジオネラ菌、サルモネラ菌、赤痢菌、結核菌等の細菌が挙げられる。また、当該ウィルス類としては、SARSウィルス、インフルエンザウィルス、HIV、肝炎ウィルス、ノロウィルス等が挙げられる。当該寄生虫類としては、アメーバ―赤痢、エキノコックスなどが挙げられる。
これにより、本発明に係る無動力式循環型酸化還元反応容器は、可視光下において無動力で動作する水質浄化装置(いわゆる浄水器)としても使用することができる。特に、本発明に係る態様では、従来の浄水装置のように大掛かりな設備を必要とすることがないため、携帯用の浄水器として使用することができる。
また、上述したように、本発明に係る無動力式循環型酸化還元反応容器によって、色素を分解したり、有機化合物を分解することができるため、本発明に係る無動力式循環型酸化還元反応容器は、可視光下において無動力で動作する有機化合物分解装置として使用することができる。
さらに、特定の溶媒と特定の溶質との組み合わせで、可視光下において無動力で動作する有機化合物酸化還元反応装置として無動力式循環型酸化還元反応容器を使用することができる。
(工程2)
本発明の溶質の無動力式循環型酸化還元方法は、工程1の後、酸化または還元された溶質は液面下に移動し、かつ溶液中の溶質は前記貫通孔内に侵入するという循環を連続的に繰り返し酸化または還元された溶質の量が増加する工程を含む。
工程1で説明したように、貫通孔の他の端部まで浸透した溶液に可視光があたると、可視光が照射された領域において、光触媒表面での直接反応および活性酸素種の反応により溶液の溶質が酸化または還元されて、当該溶質が分解等する。これにより、この可視光が照射された領域における当該溶質の濃度が局所的に減少するため、溶液中の溶質は濃度の不均一さを解消するため濃度勾配による拡散によって当該溶質の濃度が減少した方向に移動する。一方、酸化または還元された溶質は、貫通孔内より溶液中の濃度の方が低いため、この濃度勾配よる拡散によって溶液の液面下の方向に移動する。そのため、溶質および酸化または還元した溶質が系内を循環し、溶質の濃度勾配による拡散と、酸化または還元した溶質の濃度勾配による拡散とが同時に起こりうる。さらに、少なくとも可視光で照射されている間は、活性酸素種が生成するため、繰り返して、溶質の濃度勾配による拡散と、酸化または還元した溶質の濃度勾配による拡散とが起こりそれぞれの物質置換がされると考えられる。
これにより、本発明の方法は、濃度勾配による拡散の物質置換によってポンプなどの動力を使用することなく無動力で、かつ対象物である溶質が循環されて酸化または還元をすることができると考えられる。また、現状はっきりと判っていないが、当該貫通孔の内壁には光触媒成分が被覆しているため超親水化現象により溶液が貫通孔内を浸透しやすくなると考えられる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例のみに限定されることはない。以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
(1)酸化タングステン被覆キャピラリーの作製
キャピラリーは、Hirschmann社製、Ringcaps microcapillary pipets ガラス製の寸法1(外径:0.66mm、内径:0.53mm、長さ:6cm)、および寸法2(外径:1.3mm、内径:1.05mm、長さ:12.5cm)を使用した。
NaOH(5M)水溶液で上記寸法1および2のキャピラリー内部を毛管力によって吸引したのち、逆側の開放端から溶液を排出することにより3回洗浄した。その後、同様の操作で、純水で6回上記寸法1および2のキャピラリー内部を洗浄した。次いで、Nガスをボンベから直接吹き付けることで寸法1および2のキャピラリー内部の水分を取り除いた。
ビーカー内に酸化タングステンゾル水溶液(東芝マテリアル製 SJ9003−1 5wt% 以下同様)を用意して、上記寸法1および2のキャピラリーの一方の端部を当該水溶液に浸漬させることで、キャピラリー内部を毛管力によって吸引したのち、逆側の開放端から酸化タングステンゾル溶液を排出する操作を3回行った。なお、使用したゾル溶液は50〜100μLであった。
次いで、酸化タングステンゾル溶液が内部に被覆されたキャピラリーにNガスをボンベから直接吹き付けることで内部の水分を取り除いた後。一晩デシケータ内で25℃の条件で乾燥して酸化タングステン被覆キャピラリーを作製した。
(2)酸化チタン被覆キャピラリーの作製
キャピラリーは、上記と同一の寸法1(外径:0.66mm、内径:0.53mm、長さ:6cm)、および寸法2(外径:1.3mm、内径:1.05mm、長さ:12.5cm)を使用した。
NaOH(5M)水溶液で上記寸法1および2のキャピラリー内部を毛管力によって吸引したのち、逆側の開放端から溶液を排出することにより3回洗浄した。その後、同様の操作で、純水で6回上記寸法1および2のキャピラリー内部を洗浄した。次いで、Nガスをボンベから直接により吹き付けることで寸法1および2のキャピラリー内部の水分を取り除いた。
ビーカー内に酸化チタンゾル水溶液(多木化学社製タイノック CZL−523番、原液50〜100μL 以下同様)を用意して、上記寸法1および2のキャピラリーの一方の端部を当該水溶液に浸漬させることで、キャピラリー内部を毛管力によって吸引したのち、逆側の開放端から酸化チタンゾル溶液を排出する操作を3回行った。
次いで、酸化チタンゾル溶液が内部に被覆されたキャピラリーにNガスをボンベから直接吹き付けることで内部の水分を取り除いた後。一晩デシケータ内で25℃の条件で乾燥して酸化チタン被覆キャピラリーを作製した。
(3)管径依存性の評価
キャピラリーは、寸法1(外径:0.66mm、内径:0.53mm、長さ:7cm)、寸法2(外径:0.35mm、内径:0.25mm、長さ:7cm)、および寸法3(外径:0.20mm、内径:0.10mm、長さ:7cm)は、Hirschmann社製、Ringcaps microcapillary pipets ガラス製を使用し、寸法4(外径:1.30mm、内径:0.72mm、長さ:12.5cm)、寸法5(外径:1.30mm、内径:1.05mm、長さ:12.5cm)、および寸法6(外径:1.80mm、内径:1.40mm、長さ:12.5cm)は、ジーエルサイエンス株式会社 不活性シリカキャピラリーチューブ、石英ガラス製を使用した。寸法7(外径:4.0mm、内径:3.0mm、長さ:15cm)、寸法8(外径:6.0mm、内径:5.0mm、長さ:15cm)は、通常のガラス管を用いた。 NaOH(5M)水溶液で上記寸法1〜8のキャピラリー内部を毛管力によって吸引したのち、逆側の開放端から溶液を排出することにより3回洗浄した。その後、同様の操作で、純水で6回上記寸法1〜8のキャピラリー内部を洗浄した。次いで、Nガスをボンベから直接により吹き付けることで寸法1〜8のキャピラリー内部の水分を取り除いた。
ビーカー内に酸化タングステンゾル水溶液を用意して、上記寸法1〜8のキャピラリーの一方の端部を当該水溶液に浸漬させることで、キャピラリー内部を毛管力によって吸引したのち、逆側の開放端から酸化タングステンゾル溶液を排出する操作を3回行った。
次いで、酸化タングステンゾル溶液が内部に被覆されたキャピラリーにNガスをボンベから直接吹き付けることで内部の水分を取り除いた後、一晩デシケータ内で25℃の条件で乾燥して上記寸法1〜8の酸化タングステン被覆キャピラリーをそれぞれ作製した。
その後、上記寸法1〜8ごとに5本をセロハンテープで束ねて固定した。次いで、メチレンブルー濃度が10μMである水溶液(試験溶液1)1mLを含む試験管を5つ用意し、それぞれ上記寸法1〜8ごとに作製したキャピラリー束をそれぞれの試験管に入れて、光源としてハロゲンランプ(パトライト・PCS−HRX,300W)を試料位置で直径5cm程度になるよう1.5時間照射した。この際、管を束にした底面積が一定として測定し、照射前と照射後の吸光光度計(HITACHI U−2900)による吸収スペクトルを測定した。その結果を図2に示す。図2の縦軸は、吸光度(Abs)であって、かつ「−log10(透過光強度/入射光強度)」で計算されており、横軸は照射した光の波長(nm)である。
図2の実験データにおいて、「ハロゲンランプ照射前(Before Irradiation)」の波形が、反応前の試料の吸収スペクトルであり(いわゆるコントロール)、それ以外は1.5時間照射後の吸収スペクトルである。また、吸収が減少しているものは色素が分解されていることを意味するものである。
以上のことから貫通孔の平均内径の範囲は、0.1〜5mmが好ましく、0.5〜3mmがより好ましく、1〜1.4mmがさらに好ましい。
理由は不明であるが、図2で示す管径依存性の実験結果から、孔質体の内径でもある管径が小さくなるまたは大きくなるに対応して、最大吸光度が低下する(すなわち色素の分解能が増加する)という単純な相関でなく、特定の内径範囲であると色素の分解能が著しく増加することが確認された。すなわち、例えば図2の実験データにおいて、寸法7(内径3mm)と、寸法1(内径0.53mm)や寸法4(内径0.72mm)の最大吸光度を比較すると、内径が3mmより小さくなると吸光度が増大する傾向である。一方、寸法7(内径3mm)と、寸法5(内径1.4mm)の最大吸光度を比較すると、内径が3mmより小さくなっているにもかかわらず、寸法4などの場合とは逆に、最大吸光度が減少し、色素の分解能が増加していることが確認された。
以上のことから、管径依存性の評価の実験で得られた図2を元に、孔質体が特定範囲の内径であると、著しく色素の分解能が増大することも見出し、かかる特定範囲の内径のキャピラリーを本発明に使用することにした。
特に、吸光度の効果に加え、管の入手しやすさ等を考慮した場合、1mm程度が実用上好ましいと考える。
なお、本実施例では可視光として、太陽光のスペクトルに近いハロゲンランプおよびUV−LED(波長365nm)を用いたが、太陽光でも同様な結果が得られることはもちろんである。
(4)キャピラリーを用いた水質浄化
(4−1)酸化タングステン被覆キャピラリー色素の分解
メチレンブルー濃度が10μMである水溶液(試験溶液1)2mLを試験管に注入した後、蒸発を防ぐために蓋をした。次いで、上記(1)の欄で作製したそれぞれの径ごとの酸化タングステン被覆キャピラリー10本をセロハンテープで束ねて固定し、当該試験管に当該束ねたキャピラリーを入れて蓋をした後、光源としてハロゲンランプ(パトライト・PCS−HRX,300W)を試料位置で直径5cm程度になるよう3時間照射した。ハロゲンランプ照射前と照射後の結果を図3の上側に示す。
(4−2)酸化チタン被覆キャピラリーによる色素の分解
ローダミン6G濃度が10μMである水溶液(試験溶液2)2mLを試験管に注入した後、蒸発を防ぐために蓋をした。次いで、上記(2)の欄で作製したそれぞれの径ごとの酸化チタン被覆キャピラリー10本をセロハンテープで束ねて固定し、当該試験管に当該束ねたキャピラリーを入れて蓋をした後、光源としてハロゲンランプ(パトライト・PCS−HRX,300W)を試料位置で直径5cm程度になるよう3時間照射した。ハロゲンランプ照射前と照射後の結果を図3の下側に示す。
(5)キャピラリーを用いた分解反応
(トルエンの分解)
トルエン濃度が5mMである水溶液(試料溶液2)10mLを試験管に注入した後、蒸発を防ぐために蓋をした。次いで、上記(1)の欄で作製した内径530μmの酸化タングステン被覆キャピラリー5本をセロハンテープで束ねて固定し、当該試験管に当該束ねたキャピラリーを入れて蓋をした後、光源としてハロゲンランプを試料位置で直径5cm程度になるよう3時間照射した。その後、試料溶液2にシクロヘキサンを等量加えて、震とう機にて5分間撹拌し、シクロヘキサン相に抽出したのち、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析した。
その結果を図4に示す。当該図4において、上側のHPLCチャートは照射前のチャートであり、このチャートにおいて、t=3.617はトルエン、t=4.392はシクロヘキサンにそれぞれ対応するピークである。一方、下側のHPLCチャートは照射後のチャートであり、このチャートにおいて、t=3.617がトルエンのピーク、t=4.383はシクロヘキサンに対応するピークである。図4に示す結果から、トルエンのピークが減少していることからも、キャピラリーによりトルエンが分解されていることが確認された。
(ベンズアルデヒドの分解)
ベンズアルデヒド濃度が5mMである水溶液(試料溶液3)10mLを試験管に注入した後、蒸発を防ぐために蓋をした。次いで、上記(1)の欄で作製した内径530μmの酸化タングステン被覆キャピラリー5本をセロハンテープで束ねて固定し、当該試験管に当該束ねたキャピラリーを入れて蓋をした後、光源としてハロゲンランプを試料位置で直径5cm程度になるよう3時間照射した。その後、試料溶液2にシクロヘキサンを等量加えて、震とう機にて5分間撹拌し、シクロヘキサン相に抽出したのち、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析した。
その結果を図5に示す。当該図5において、上側のHPLCチャートは照射前のチャートであり、このチャートにおいて、t=3.133はベンズアルデヒドである。一方、下側のHPLCチャートは照射後のチャートであり、このチャートにおいて、t=3.133のベンズアルデヒドのピークが2割減少していることからも、キャピラリーによりベンズアルデヒドが分解されていることが確認された。
(ニトロベンゼンの分解)
ニトロベンゼン濃度が15mMとなるようにエタノールに添加して作製したニトロベンゼン含有エタノール溶液(試料溶液4)10mLを試験管に注入した後、蒸発を防ぐために蓋をした。次いで、上記(2)の欄で作製した内径530μmの酸化チタン被覆キャピラリー5本をセロハンテープで束ねて固定し、当該試験管に当該束ねたキャピラリーを入れて蓋をした後、光源としてLED光(波長365nm)を試料位置で直径5cm程度になるよう3時間照射した。その後、試料溶液2にシクロヘキサンを等量加えて、震とう機にて5分間撹拌し、シクロヘキサン相に抽出したのち、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析した。
その結果を図6に示す。当該図6において、上側のHPLCチャートは照射前のチャートであり、このチャートにおいて、t=3.17はニトロベンゼンである。一方、下側のHPLCチャートは照射後のチャートであり、このチャートにおいて、t=3.17のニトロベンゼンのピークが減少していることからも、キャピラリーによりニトロベンゼンが分解されていることが確認された。
(5)キャピラリーを用いた合成反応
ニトロベンゼン濃度が15mMとなるように溶媒であるシクロヘキサンに添加して作製したニトロベンゼン含有エタノール溶液(試料溶液4)10mLを試験管に注入した後、蒸発を防ぐために蓋をした。次いで、上記(2)の欄で作製した内径530μmの酸化チタン被覆キャピラリー5本をセロハンテープで束ねて固定し、当該試験管に当該束ねたキャピラリーを入れて蓋をした後、光源としてUV−LED光(波長365nm)を試料位置で直径5cm程度になるよう3時間照射した。その後、試料溶液2にシクロヘキサンを等量加えて、震とう機にて5分間撹拌し、シクロヘキサン相に抽出したのち、シクロヘキサン抽出相を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析した。
HPLCの結果を図7に示す。当該図7において、上側のHPLCチャートは照射前のチャートであり、このチャートにおいて、t=3.27はニトロベンゼンである。一方、下側のHPLCチャートは照射後のチャートであり、このチャートにおいて、t=2.92のピークが観測された。純粋なアニリンの保持時間からこのピークがアニリン対応するものと確認された。そのため、t=2.92はアニリンに対応するピークであり、t=3.27はニトロベンゼンである。この実験結果から、ニトロベンゼンが還元されてアニリンが生成していることが確認された。
1 孔質体
2 貫通孔
3 浮体
4 液面
5 端部
6 他の端部
10 無動力式循環型酸化還元反応容器

Claims (4)

  1. 溶液中から液面上まで伸延する貫通孔を有する孔質体を有し、前記貫通孔の内壁は、可視光反応型光触媒成分により被覆された無動力式循環型酸化還元反応容器内により前記溶液中の溶質を酸化還元する方法であって、
    溶液が液面より高い位置まで前記貫通孔内に侵入した状態で前記無動力式循環型酸化還元反応容器に可視光を照射して、前記触媒成分により前記溶質が酸化または還元される工程と、
    酸化または還元された溶質は液面下に移動し、かつ溶液中の溶質は前記貫通孔内に侵入するという循環を連続的に繰り返し酸化または還元された溶質の量が増加する工程と、
    を有することを特徴とする、溶質の無動力式循環型酸化還元方法。
  2. 前記貫通孔の平均直径は、0.1〜5mmである、請求項1に記載の溶質の無動力式循環型酸化還元方法。
  3. 前記光触媒は、酸化タングステン、酸化チタン、窒素ドープ酸化チタン(Siと共にドープするものも含む)、硫黄ドープ酸化チタン、および遷移金属ドープ酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の溶質の無動力式循環型酸化還元方法。
  4. 溶液の液面上を浮遊するように設けられた浮体と、
    前記浮体に取り付けられ、前記溶液中から液面上まで伸延する貫通孔を有する孔質体と、を有し、前記貫通孔の内壁は、可視光反応型光触媒成分により被覆されたことを特徴とする、無動力式循環型酸化還元反応容器。
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JP2018082655A (ja) * 2016-11-23 2018-05-31 株式会社デュプラス 観賞魚用水槽の環境改善方法及び器具

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