JP2013201980A - 新規嫌気性セルロース分解菌及びこれを用いたセルロース分解処理方法 - Google Patents

新規嫌気性セルロース分解菌及びこれを用いたセルロース分解処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の嫌気性セルロース分解菌よりも高いセルロース分解処理能力を発揮することのできる新規な嫌気性セルロース分解菌を取得する。新規な嫌気性セルロース分解菌を利用して高効率にセルロース分解処理を行う。
【解決手段】寄託番号FERM P−22178で寄託されている高温性の嫌気性セルロース分解菌であるクロストリジウム クラリフラバム(Clostridium clariflavum)CL−1株を取得した。そして、このCL−1株にセルロースまたはセルロース含有物を接触させてセルロース分解処理を行うようにした。さらに、CL−1株と高温性のメタン生成菌とを主体とする微生物群にセルロースまたはセルロース含有物を接触させてセルロース分解処理を高効率で行うようにした。
【選択図】図6

Description

本発明は、新規嫌気性セルロース分解菌及びこれを用いたセルロース分解処理方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、セルロース分解処理に用いて好適な新規嫌気性セルロース分解菌と、この新規嫌気性セルロース分解菌を利用してセルロース分解処理を高効率に実施するのに好適な方法に関する。
嫌気性セルロース分解菌としては、例えば以下の高温性の嫌気性セルロース分解菌が知られている。
・Clostridium caenicola NBRC 102590株(非特許文献1を参照)
・Clostridium clariflavum NBRC 101661株(非特許文献1を参照)
・Clostridium thermocellum NBRC 103400株(非特許文献2を参照)
・Clostridium straminisolvens NBRC 103399株(非特許文献3を参照)
嫌気性のセルロース分解菌を利用してセルロース系廃棄物の分解処理を行う場合、培養環境を好気性に維持するためのエアレーション設備を必要としないことから、好気性のセルロース分解菌を利用する場合と比較してランニングコストの面で有利である。
Shiratori H, et al.:Int J Syst Evol Microbiol. 59: 1764−1770 (2010) Viljoen JA, et al.:J Agric Sci. 16: 1−17 (1926) Kato S, et al.:Int J Syst Evol Microbiol. 54: 2043−2047 (2004)
しかしながら、現在知られている嫌気性セルロース分解菌は、セルロース分解処理能力がそれほど高いものとは言えず、より高いセルロース分解処理能力を有する嫌気性セルロース分解菌の探索・単離が望まれていた。
そこで、本発明は、従来の嫌気性セルロース分解菌よりも高いセルロース分解処理能力を発揮することのできる新規な嫌気性セルロース分解菌を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記新規な嫌気性セルロース分解菌を利用したセルロース分解処理方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、上記新規な嫌気性セルロース分解菌を利用したセルロース分解処理用組成物を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、本願発明者等が鋭意探索を行った結果、安定したガス生成が見られる通電型高温メタン発酵槽にて採取した汚泥(沼の底泥由来)から、従来の高温性の嫌気性セルロース分解菌よりもセルロース分解処理能力が顕著に高い新規な高温性の嫌気性セルロース分解菌(クロストリジウム クラリフラバム(Clostridium clariflavum)CL−1株)の単離に成功した。そして、本願発明者等は、この新規な高温性の嫌気性セルロース分解菌(以下、単にCL−1株と呼ぶこともある)を用いることによって、従来の高温性の嫌気性セルロース分解菌を用いた場合よりも、セルロース分解処理を効率よく行うことが可能であることを確認した。
さらに、本願発明者等は、CL−1株のセルロース分解処理能力をさらに向上させるべく、鋭意研究を重ねた。その結果、CL−1株を高温性の水素資化性メタン生成菌と共に培養しながらセルロース分解処理を行うことで、CL−1株を単独で培養しながらセルロース分解処理を行う場合と比較して、セルロース分解処理速度を大幅に高められることを知見するに至った。しかも、この場合には、水素資化性メタン生成菌のメタン生成能力が発揮されて、セルロースをメタンガスに変換して回収できることを知見するに至った。つまり、処分に苦慮しているセルロース系廃棄物をメタンガスという有用なエネルギーに変換して回収できることを知見するに至った。
本願発明者等は、上記知見に基づき、さらに種々検討を重ね、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の新規嫌気性セルロース分解菌は、寄託番号FERM P−22178で寄託されている高温性の嫌気性セルロース分解菌であるクロストリジウム クラリフラバム(Clostridium clariflavum)CL−1株である。
次に、本発明の第一のセルロース分解処理方法は、45℃〜65℃の嫌気環境下で、上記CL−1株にセルロースまたはセルロース含有物を接触させるようにしている。
また、本発明の第二のセルロース分解処理方法は、45℃〜65℃の嫌気環境下で、上記CL−1株と高温性のメタン生成菌とを主体とする微生物群にセルロースまたはセルロース含有物を接触させるようにしている。この場合、高温性のメタン生成菌は、高温性の水素資化性メタン生成菌であることが好ましい。
さらに、本発明のバイオガス回収方法は、本発明の第二のセルロース分解処理方法を実施することにより発生するメタンガス含有バイオガスを回収するようにしている。
次に、本発明の第一のセルロース分解処理用組成物は、上記CL−1株を主体として含むものとしている。
また、本発明の第二のセルロース分解処理用組成物は、上記CL−1株と高温性のメタン生成菌とを主体として含むものとしている。この場合、高温性のメタン生成菌は、高温性の水素資化性メタン生成菌であることが好ましい。
本発明の新規嫌気性セルロース分解菌であるCL−1株によれば、従来の高温性の嫌気性セルロース分解菌と比較して、顕著に優れたセルロース分解処理能力を発揮することができる。
また、本発明の第一のセルロース分解処理方法によれば、45℃〜65℃の嫌気環境下で、CL−1株にセルロースまたはセルロース含有物を接触させるようにしているので、CL−1株のセルロース分解処理能力を発揮させて、セルロースまたはセルロースを含む食品廃棄物や農作物非食用部等といったセルロース含有物を効率よく分解処理することが可能となる。
さらに、本発明の第二のセルロース分解処理方法によれば、45℃〜65℃の嫌気環境下で、CL−1株と高温性のメタン生成菌とを主体とする微生物群にセルロースまたはセルロース含有物を接触させるようにしているので、第一のセルロース分解処理方法よりも、CL−1株によるセルロース分解処理能力を向上させて、セルロースまたはセルロースを含む食品廃棄物や農作物非食用部等といったセルロース含有物をさらに効率よく分解処理することが可能となる。
また、本発明のバイオガス回収方法によれば、本発明の第二のセルロース分解処理方法を実施することにより発生するメタンガス含有バイオガスを回収するようにしているので、セルロースまたはセルロースを含む食品廃棄物や農作物非食用部等といったセルロース含有物をメタンガスという有用なエネルギーに変換して回収することができる。したがって、処分に苦慮しているセルロース系廃棄物等を資源として有効利用することが可能となる。
次に、本発明の第一のセルロース分解処理用組成物によれば、上記CL−1株を主体として含むものとしているので、これを45℃〜65℃の嫌気環境下で、セルロースまたはセルロース含有物と接触させることで、セルロースまたはセルロース含有物を効率よく分解処理することが可能となる。
また、本発明の第二のセルロース分解処理用組成物によれば、上記CL−1株と高温性のメタン生成菌とを主体として含むものとしているので、これを45℃〜65℃の嫌気環境下で、セルロースまたはセルロース含有物と接触させることで、第一のセルロース分解処理用組成物よりもセルロースまたはセルロース含有物をさらに効率よく分解処理することが可能となる。
種々のセルロース系有機物を用いた際のCL−1株の菌数の経時変化を示す図である。 種々の高温性の嫌気性セルロース分解菌を用いた際の菌数の経時変化を示す図である。 種々の高温性の嫌気性セルロース分解菌を用いた際の懸濁物質量(SS)の経時変化を示す図である。 実施例において使用した培養装置の概略図である。 共培養した場合と単菌培養した場合のCL−1株とMt株の菌体密度の変遷を示す図である。 SS除去率について、共培養した場合と単菌培養した場合の結果を比較した図である。 発生ガス量と組成について、共培養した場合と単菌培養した場合の結果を比較した図である。 S−TOCについて、共培養した場合と単菌培養した場合の結果を比較した図である。 VFAsについて、共培養した場合と単菌培養した場合の結果を比較した図である。 嫌気性セルロース分解菌の推定される代謝経路を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
<新規嫌気性セルロース分解菌>
本発明の新規嫌気性セルロース分解菌は、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、2011年10月4日付けで、寄託番号FERM P−22178として寄託されているクロストリジウム クラリフラバム(Clostridium clariflavum)CL−1株である。
CL−1株は、0.7〜0.9μm×3.0〜10μmの桿菌であり、グラム陰性菌であり、芽胞形成能を有し、コロニー色調が淡黄色であるという形態学的特徴を有している。
また、CL−1株の16S rRNA遺伝子の塩基配列(配列表の配列番号1を参照)は、Clostridium clariflavum EBR45株(DSM19732株)の16S rRNA遺伝子の塩基配列と、99.9%の相同性を示したものの、Clostridium clariflavum EBR45株(DSM19732株)とオリジナルの株が同一であるClostridium clariflavum NBRC 101661株(非特許文献1)と比較して、圧倒的に優れた増殖能力及びセルロース分解処理能力を有していることが本願発明者等の実験により確認されている。つまり、CL−1株は、16S rRNA遺伝子の塩基配列については従来の嫌気性セルロース分解菌と近似したものであるが、増殖能力とセルロース分解能力から見れば全く異なるものである。つまり、CL−1株は、16S rRNA遺伝子の塩基配列からは計れない従来菌との大きな機能的差異を有している。
CL−1株は、具体的には、以下に示す増殖能力及びセルロース分解処理能力を有している。
・比増殖速度 :1.28/日以上(標品セルロース使用)
・最大到達菌体濃度 :2.67×10cells/mL(標品セルロース使用)
・セルロース分解速度:7.17×10−10g/L/cells/日以上
このように、CL−1株は、従来の高温性の嫌気性セルロース分解菌と比較して、圧倒的に優れた増殖能力及びセルロース分解処理能力を有している。さらには、セロビオース、濾紙、稲藁、植物残渣を対象とした分解処理試験においても、良好な分解処理能力を発揮することが本願発明者等の実験により確かめられている。このことから、セルロース単体の分解処理は勿論のこと、稲藁等の藁や植物残渣等の農作物非食用部、生ごみなどの食品廃棄物、紙ごみ、廃木材等といったセルロース含有物全般の分解処理に極めて好適且つ有用な微生物である。尚、我が国においては、農作物非食用部が未利用バイオマスとして多量に残存している状況にあり、今後も増え続けるものと考えられる。CL−1株は、セルロースを多く含むこのような未利用バイオマスを効率よく分解処理するために極めて好適且つ有用な微生物である。
CL−1株は、以下に説明する第一の実施形態にかかるセルロース分解処理方法に利用することによって、セルロースまたはセルロース含有物を効率よく分解処理することができる。また、第二の実施形態にかかるセルロース分解処理方法に利用することによって、セルロースまたはセルロース含有物をさらに効率よく分解処理することができる。
<第一の実施形態>
第一の実施形態にかかるセルロース分解処理方法は、CL−1株にセルロースまたはセルロース含有物を接触させることによって、セルロースまたはセルロース含有物を分解処理するようにしている。
CL−1株にセルロースまたはセルロース含有物を接触させる方法としては、例えば、高温性の嫌気性セルロース分解菌に必要な栄養源、微量元素、ビタミン類等を含む培養液中でCL−1株を培養し、セルロースまたはセルロース含有物を培養液に懸濁させて処理する方法が挙げられる。この場合、セルロースまたはセルロース含有物を培養液に懸濁させて処理することができ、セルロースまたはセルロース含有物とCL−1株とを接触させ易いという利点がある。但し、CL−1株にセルロースまたはセルロース含有物を接触させる方法は、CL−1株のセルロース分解処理能力を阻害しない限り、特に限定されるものではない。例えば寒天培地等の固体培地や汚泥等を用いてCL−1株を培養し、この固体培地や汚泥等とセルロースまたはセルロース含有物とを接触させるようにしてもよい。また、CL−1株を含む培養液をセルロースまたはセルロース含有物に散布して含浸等させることにより、セルロース分解処理を行うようにしてもよい。
また、CL−1株にセルロースまたはセルロース含有物を接触させる環境は、45℃〜65℃の嫌気性環境とすることが好ましい。これにより、CL−1株のセルロース分解処理能力を発揮させることができる。また、セルロース含有物に室温程度の温度では固化してしまうような油脂等が含まれている場合に、これを溶解させて、セルロースとCL−1株との接触面積を高めることができ、セルロースをより効率よく分解することが可能となる。ここで、CL−1株にセルロースまたはセルロース含有物を接触させる環境の温度は、50℃〜60℃とすることがより好適であり、53℃〜57℃とすることがさらに好適であり、55℃とすることが最も好適である。この場合には、CL−1株のセルロース分解処理能力をさらに発揮させやすいものとできる。また、嫌気性環境の形成方法は特に限定されるものではなく、例えば環境中に二酸化炭素や水素、不活性ガス等を一種以上導入して形成するようにしてもよいし、環境を外部から遮蔽して密閉して好気性微生物等に酸素を消費させることによって形成するようにしてもよい。
<第二の実施形態>
第二の実施形態にかかるセルロース分解処理方法は、CL−1株と高温性のメタン生成菌とを主体とする微生物群にセルロースまたはセルロース含有物を接触させることによって、セルロースまたはセルロース含有物を分解処理するようにしている。
第二の実施形態にかかるセルロース分解処理方法における、「CL−1株と高温性のメタン生成菌とを主体とする微生物群」とは、最も好ましくは、CL−1株と高温性のメタン生成菌のみからなる微生物群であるが、CL−1株のセルロース分解能力と高温性のメタン生成菌のメタン生成能力を実質的に阻害することのない範囲で他の微生物を一種または二種以上含む微生物群としても構わない。
また、CL−1株とメタン生成菌の菌数比については、複数の菌を同時に培養する際の常識的な菌数比とすればよく、例えば、一方の菌の菌数が他方の菌の菌数の100倍以下、好適には10倍以下、より好適には同じ桁数とすればよいが、これらに限定されるものではない。
高温性のメタン生成菌としては、水素資化能を有し、45℃〜65℃の嫌気環境下にてメタン生成能力を発揮することのできる公知または新規の水素資化性メタン生成菌、または、酢酸等の資化能を有し、45℃〜65℃の嫌気環境下にてメタン生成能力を発揮することのできる公知または新規の酢酸資化性メタン生成菌等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、メタン生成菌は、一種のみならず二種以上を併用するようにしてもよい。例えば、二種以上の水素資化性メタン生成菌を併用するようにしてもよいし、二種以上の酢酸資化性メタン生成菌を併用するようにしてもよい。また、一種以上の水素資化性メタン生成菌と一種以上の酢酸資化性メタン生成菌とを併用するようにしてもよい。
高温性のメタン生成菌を具体的に例示すると、高温性の水素資化性メタン生成菌であるメタノサーモバクター(Methanothermobacter)属の微生物、高温性の酢酸資化性メタン生成菌であるメタノサルシナ(Methanosarcina)属の微生物等が挙げられ、特に高温性の水素資化性メタン生成菌の使用が好適であり、メタノサーモバクター サームオートトロフィカス(Methanothermobacter thermautotrophicus)の使用がより好適であるが、これらに限定されるものではない。
CL−1株と高温性のメタン生成菌とを主体とする微生物群にセルロースまたはセルロース含有物を接触させる方法としては、例えば、高温性の嫌気性セルロース分解菌と高温性のメタン生成菌に必要な栄養源、微量元素、ビタミン類等を含む培養液中でCL−1株と高温性のメタン生成菌とを培養し、セルロースまたはセルロース含有物を培養液に懸濁させて処理する方法が挙げられる。この場合、セルロースまたはセルロース含有物を培養液に懸濁させて処理することができ、セルロースまたはセルロース含有物とCL−1株とを接触させ易いものとできると共に、CL−1株によるセルロースまたはセルロース含有物の分解物(水素、低級脂肪酸類(例えば酢酸)等)と高温性のメタン生成菌とを接触させ易いものとできる。但し、CL−1株と高温性のメタン生成菌とを主体とする微生物群にセルロースまたはセルロース含有物を接触させる方法は、CL−1株のセルロース分解処理能力及び高温性のメタン生成菌のメタン生成能力を阻害しない限り、特に限定されるものではない。例えば寒天培地等の固体培地や汚泥等を用いてCL−1株と高温性のメタン生成菌とを培養し、この固体培地や汚泥等とセルロースまたはセルロース含有物とを接触させるようにしてもよい。また、CL−1株と高温性のメタン生成菌とを含む培養液をセルロースまたはセルロース含有物に散布して含浸等させることにより、セルロース分解処理を行うようにしてもよい。さらに、CL−1株を含む環境や処理設備に高温性のメタン生成菌を添加して、CL−1株と高温性のメタン生成菌を主体とする微生物群の培養環境を形成するようにしてもよいし、高温性のメタン生成菌を含む環境や処理設備にCL−1株を添加して、CL−1株と高温性のメタン生成菌とを主体とする微生物群の培養環境を形成するようにしてもよい。これらの場合にも、CL−1株を含む環境や処理設備、高温性のメタン生成菌を含む環境や処理設備に、優れたセルロース分解処理能力を付与して、効率よくセルロースまたはセルロース含有物を分解処理することが可能となる。
また、CL−1株と高温性のメタン生成菌とを主体とする微生物群にセルロースまたはセルロース含有物を接触させる環境は、45℃〜65℃の嫌気性環境とすることが好ましい。これにより、CL−1株のセルロース分解処理能力を発揮させることができると共に、高温性のメタン生成菌のメタン生成能力を発揮させることができる。また、セルロース含有物に室温程度の温度では固化してしまうような油脂等が含まれている場合に、これを溶解させて、セルロースとCL−1株との接触面積を高めることができ、セルロースをより効率よく分解することが可能となる。ここで、高温性のメタン生成菌として高温性の水素資化性メタン生成菌であるメタノサーモバクター サームオートトロフィカス(Methanothermobacter thermautotrophicus)を用いる場合には、CL−1株とメタノサーモバクター サームオートトロフィカス(Methanothermobacter thermautotrophicus)とを主体とする微生物群にセルロースまたはセルロース含有物を接触させる環境の温度は、50℃〜60℃とすることがより好適であり、53℃〜57℃とすることがさらに好適であり、55℃とすることが最も好適である。この場合には、CL−1株のセルロース分解処理能力をさらに発揮させ易いものとできると共に、メタノサーモバクター サームオートトロフィカス(Methanothermobacter thermautotrophicus)のメタン生成能力をさらに発揮させ易いものとできる。また、嫌気性環境の形成方法は特に限定されるものではなく、例えば環境中に二酸化炭素や水素、不活性ガス等を一種以上導入して形成するようにしてもよいし、環境を外部から遮蔽して密閉して好気性微生物等に酸素を消費させることによって形成するようにしてもよい。
尚、本発明の第二のセルロース分解処理方法においては、高温性のメタン生成菌を用いていることから、CL−1株によりセルロースが分解された結果として生じる水素、酢酸等の低級脂肪酸類を高温性のメタン生成菌が消費(資化)して、メタンガス含有バイオガスが生成される。したがって、セルロースをメタンガスに変換してエネルギーとして回収することが可能となる。
<第三の実施形態>
上述した第一の実施形態にかかるセルロース分解処理方法及び第二の実施形態にかかるセルロース分解処理方法は、例えば以下に説明するセルロース分解処理用組成物を用いることで、容易に実施することができる。
本発明の第一のセルロース分解処理用組成物は、CL−1株を主体として含むものであり、その形態は特に限定されない。例えば、生育に必要な栄養源や微量元素、ビタミン類等を含む培養液等に、CL−1株が添加された溶剤、凍結保存品、フリーズドライ品等、種々の形態にて本発明の第一のセルロース分解処理用組成物を提供することができる。尚、本発明の第一のセルロース分解処理用組成物においては、含有微生物を全てCL−1株とすることが好適であるが、CL−1株のセルロース分解処理能力を阻害しない範囲で、他の微生物を一種または二種以上含むものとしても構わない。
本発明の第一のセルロース分解処理用組成物を、セルロースまたはセルロース含有物を分解処理するための環境に投入したり、あるいはセルロースまたはセルロース含有物に直接散布することで、本発明の第一のセルロース分解処理方法を実施して、セルロースまたはセルロース含有物を効率よく分解処理することができる。
次に、本発明の第二のセルロース分解処理用組成物は、CL−1株と高温性のメタン生成菌とを主体として含むものであり、その形態は特に限定されない。例えば、生育に必要な栄養源や微量元素、ビタミン類等を含む培養液等に、CL−1株と高温性のメタン生成菌とが添加された溶剤、凍結保存品、フリーズドライ品等、種々の形態にて本発明の第二のセルロース分解処理用組成物を提供することができる。尚、本発明の第二のセルロース分解処理用組成物においては、含有微生物を全てCL−1株及び高温性のメタン生成菌とすることが好適であるが、CL−1株のセルロース分解処理能力及び高温性のメタン生成菌のメタン生成能力を阻害しない範囲で、他の微生物を一種または二種以上含むものとしても構わない。
本発明の第二のセルロース分解処理用組成物を、セルロースまたはセルロース含有物を分解処理するための環境に投入したり、あるいはセルロースまたはセルロース含有物に直接散布することで、本発明の第二のセルロース分解処理方法を実施して、セルロースまたはセルロース含有物を効率よく分解処理しながら、メタンガス含有バイオガスを生成させることが可能となる。
上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本発明においては、CL−1株と高温性のメタン生成菌の他に、これらの能力を実質的に阻害しない範囲で、他の微生物を添加して、セルロース分解能力以外の他の能力を付加するようにしてもよい。例えば、セルロース系廃棄物に含まれ得るセルロース以外の物質を良好に分解ないしは変換処理し得る他の微生物を一種または二種以上添加するようにしてもよい。
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限られるものではない。
(実施例1)
本願発明者等が取得した新規嫌気性セルロース分解菌について、そのセルロース分解処理能力について検討した。
(1)新規嫌気性セルロース分解菌
本願発明者等は、通電型高温メタン発酵槽の汚泥(沼の汚泥由来)から高温性の嫌気性セルロース分解菌を新規に単離・取得した。尚、通電型高温メタン発酵槽とは、作用極、対極及び参照電極をメタン発酵液に浸漬し、作用極の電位を3電極方式で還元電位に制御しながら55℃で運転しているメタン発酵槽である。
尚、本願発明者等が新規に単離・取得したこの新規微生物の16S rRNA遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号1に示す。相同性検索の結果、この新規微生物は、Clostridium clariflavum EBR45株(DSM19732株)と99.9%の相同性を示した。このことから、この新規微生物をClostridium clariflavumと同定し、CL−1株と名付けた。尚、塩基配列解析及び相同性検索については、以下の参考文献1及び2に記載された手法に基づき、GenBank/EMBL/DDBJのデータベースを用いてBLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi)により実施した(参考文献1:Lane, D. J.: 16S/23S rRNA sequencing. p.115−175. In Stackebrandt, E. and Goodfellow, M. (eds.), Nucleic acid techniques in bacterial systematics. John Wiley & Sons, New York (1991).、参考文献2:Takai, K. and Horikoshi, K.: Rapid detection and quatification of members of archaeal community by quantitative PCR using fluorogenic probes. Appl. Environ. Microbiol., 66, 5066−5072 (2000).)。
CL−1株は、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに2011年10月4日付けで寄託番号FERM P−22178として寄託されている。
尚、CL−1株は、以下の形態学的特徴を有していた。
<CL−1株の形態学的特徴>
・培養至適温度 :55℃
・細胞形態 :桿菌(0.7〜0.9μm×3.0〜10μm)
・グラム染色 :陰性
・芽胞形成 :あり
・コロニー色調 :淡黄色
(2)CL−1株のセルロース分解処理能力についての検証
まず、種々のセルロース系有機物を用いた際のCL−1株の菌数の経時変化について検討した。
10g/Lの種々の有機物を加えた表1に示す組成の液体培地10mLを20mL容のガラスバイアル瓶に収容し、CL−1株を7.5×10cells/mLとなるように添加して、55℃で嫌気的(N:CO=80:20)に7日間の回分培養を行い、経時的に試料を採取して菌数計測を実施した。菌数計測は、サンプリングした培養液を顕微鏡観察(×400、ニコン)により実施した。尚、表1中、DMSZとはDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturenの略である。
添加した有機物は、以下の通りとした。
<セルロース系有機物>
・標品セルロース(微結晶品、アルファエイサー)
・標品セロビオース(D(+)−セロビオース、Wako)
・ろ紙(アドバンテック、type5A、20mm×20mm)
・稲わら
・トマト残渣(トマトの葉と茎を乾燥したもの)
<その他の有機物>
・酵母エキス(Bacto)
・グルコース(D(+)−グルコース、Wako)
結果を図1に示す。セルロース系有機物ではない酵母エキス及びグルコースを用いた場合には、菌数の増加は見られなかったが、セルロース系有機物である標品セルロース、標品セロビオース、ろ紙、稲わら、トマト残渣を用いた場合には、時間と共に菌数の増加が見られた。尚、標品セルロース、標品セロビオース、ろ紙、稲わらを用いた場合の最終到達菌数は7.3×10〜9.7×10cells/mLであった。トマト残渣を用いた場合には、1.0×10cells/mLと若干低下したものの、CL−1株がセルロース系有機物を利用して良好に増殖することが判明した。
次に、以下に示す公知の高温性の嫌気性セルロース分解菌と、CL−1株の能力を比較する試験を実施した。具体的には、10g/Lの標品セルロースを加えた表1に示す液体培地を10mL入れた20mL容のバイアル瓶に、以下に示す4種の標準株と、CL−1株を7.5×10cells/mLとなるようにそれぞれ添加して、55℃で嫌気的(N:CO=80:20)に30日間の回分培養を行った。経時的に試料を採取して、菌数計測と液体培地中の懸濁物質量(SS)測定を実施した。
<標準株>
・Clostridium caenicola NBRC 102590株
・Clostridium clariflavum NBRC 101661株
・Clostridium thermocellum NBRC 103400株
・Clostridium straminisolvens NBRC 103399株
菌数の経時変化を図2に示す。いずれの菌株においても、最初は時間の経過に伴って菌数が増加し、10日目以降はほぼ一定値となった。30日後の菌数を比較すると、CL−1株では4.9×10cells/mL、Clostridium straminisolvens NBRC 103399株では2.2×10cells/mLであったが、他の菌株では、1.7×10〜4.3×10cells/mLと菌数が一桁少なかった。これらの結果から、CL−1株とClostridium straminisolvens NBRC 103399株では、他の高温性の嫌気性セルロース分解菌と比較して、良好な増殖を示すことが明らかとなった。
次に、固形性セルロース濃度と相関を持つSS濃度の経時変化を図3に示す。Clostridium caenicola NBRC 102590株、Clostridium clariflavum NBRC 101661株、Clostridium thermocellum NBRC 103400株では、30日後のSS除去率は5.7〜17.4%と低く、Clostridium straminisolvens NBRC 103399株では66.6%であったが、CL−1株については95.9%と際だって高い値となった。また、菌数の増加傾向とSS除去率の傾向は一致していた。
以上の結果から、CL−1株は、従来の高温性の嫌気性セルロース分解菌と比較して際立って優れたセルロース分解能力を有していることが明らかとなった。
(実施例2)
CL−1株のセルロース分解処理能力について、高温性のメタン生成菌との共培養環境下において検討を行った。
1.培養試験方法
(1)高温性のメタン生成菌
本実施例では、高温性のメタン生成菌として、高温性の水素資化性メタン生成菌であるメタノサーモバクター サームオートトロフィカス(Methanothermobacter thermautotrophicus)(以下、Mt株と呼ぶ)を用いた。Mt株は、文部科学省の国際バイオリソースプロジェクトを通じて独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンターから入手した(JCM10044)。
(2)培地
CL−1株の単菌培養、及びCL−1株とMt株の共培養には、以下に示す組成を有する液体培地を用いた。尚、ろ紙は、20mm×20mmにカットして使用した。
<液体培地の組成(蒸留水1L中の組成)>
・KHPO:0.4g
・KHPO:0.35g
・MgCl・6HO :0.1g
・CaCl・2HO :0.1g
・NHCl :1.0g
・NaCl :0.2g
・酵母エキス(Bacto) :2.0g
・ろ紙(アドバンテック、type5A) :10g
・レザズリン :1.0mg
・微量元素溶液(DSMZ 141 medium) :10mL
・ビタミン溶液(DSMZ 141 medium) :1mL
・NaHCO:6g
・システイン−HCl・HO :0.5g
・NaS・9HO: 0.5g
pH 7.8
※DMSZ:Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen
(3)培養装置
培養試験に使用した培養装置を図4に示す。図4に示す培養装置1は、大まかには、培養容器2、培養容器2の蓋3、撹拌子4、ORP電極5、ガスバッグ(アルミニウムガスバッグ、GLサイエンス、1.0L)6により構成した。培養容器2には、培養容器2内に収容される培養液7をサンプリングするためのサンプリングポート8を設けた。また、蓋3の上部はシリコーンゴム3aで構成した。ORP電極5はその先端が培養液に浸されるように、シリコーンゴム3aに突き刺して配置した。また、ガスバッグ6の管6aは、培養容器2内のヘッドスペースに滞留するガスが管6aを介してガスバッグ6に導かれるように、シリコーンゴム3aに突き刺して配置した。このように構成することで、培養容器2のヘッドスペース内に発生・滞留するガスを漏れ出させることなくガスバッグ6に回収できるようにした。尚、培養装置1を構成する各部材は滅菌処理してから用いた。また、培養容器2への培養液7(微生物を含む液体培地)の収容、及び各部材の組み付け作業は、嫌気性で無菌のN−CO混合ガス(N:CO=80:20)のバブリング環境下にあるクリーンベンチ内にて実施し、培養試験開始時の培養容器2内のヘッドスペースのガス雰囲気を、N:CO=80:20とした。培養液7の温度と撹拌子4の回転は、加熱マグネチックスターラー(RT 15 Power、IKA(登録商標)Japan K.K.)を用いて55℃、100rpmに制御した。
(4)培養試験
CL−1株とMt株の共培養試験、及び比較試験としてCL−1株の単菌培養試験を三連で実施した。尚、菌株の初期添加量はそれぞれ以下の通りとした。
・共培養:CL−1株:Mt株=3:1
(7.2×10cells/mL:2.4×10cells/mL)
・単菌培養:CL−1株=7.2×10cells/mL
尚、培養液(液体培地)量は250mL、培養温度は55℃、マグネチックスターラー4の回転数は100rpmとした。培養試験は60時間実施し、12時間毎に培養液をサンプリングポート8からサンプリングして各種解析に供した。
2.培養試験結果
(1)菌体密度の変遷
12時間毎にサンプリングした培養液の全菌数を顕微鏡観察(×400、ニコン)してカウントし、単菌培養試験については、その結果からCL−1株の菌体密度を算出した。共培養試験については、蛍光顕微鏡(オリンパス、model BX60F−3)を用いて、コエンザイムF420からの自己蛍光と4’、6−ジアミノ−2−フェニルインドールによって染色された細胞からの蛍光の比からMt株の菌数を決定し、全菌数とMt株の菌数から、CL−1株の菌数(菌体密度)を算出した。これらの結果をプロットして培養試験中の菌体密度の変遷について検討した。結果を図5に示す。
また、60時間後の各菌株の菌体密度を以下に示す。
<共培養試験>
・CL−1株:2.1×10cells/mL
・Mt株 :5.1×10cells/mL
<単菌培養試験>
・CL−1株:7.9×10cells/mL
CL−1株の増殖傾向は、24時間後までは共培養及び単菌培養ともに同様であったが、その後の増殖傾向には大きな差が見られた。60時間後で比較すると、共培養した場合の菌体密度は、単菌培養した場合の菌体密度より約2.7倍大きかった。
一方、Mt株については、CL−1株のような増殖挙動は示さなかった。
これらの結果から、高温性の嫌気性セルロース分解菌であるCL−1株と高温性の水素資化性メタン生成菌であるMt株とを共培養することによって、CL−1株の増殖を促進できることが明らかとなった。
(2)SS(懸濁物質)測定によるセルロース分解量の比較
60時間後にサンプリングした培養液のSS濃度から、セルロース分解(ろ紙分解)の割合を算出した。具体的には、サンプリングした培養液(懸濁液)をガラス繊維フィルター(0.45μm)で濾過した後、105℃で120分間乾燥し、SSの乾燥重量を測定して懸濁液のSS濃度を算出し、この算出結果とイニシャルの懸濁液濃度(10g/L)から、SS除去率を算出した。結果を図6に示す。
SS除去率は、共培養で73.0%、単菌培養で28.1%となった。このことから、高温性の嫌気性セルロース分解菌であるCL−1株と高温性の水素資化性メタン生成菌であるMt株とを共培養することによって、CL−1株によるセルロース分解を促進できることが明らかとなった。
(3)発生したガス量と組成の比較
60時間後のガスバッグ内のガス量と組成を測定し、共培養試験と単菌培養試験における差異を比較検討した。ガスバッグ内のガス量は水上置換法により測定した(25℃)。ガス組成(CH、CO、H)は、熱伝導率検出器を備えたガスクロマトグラフ(GC390B、GLサイエンス)と活性炭が充填されたステンレス鋼カラム(30/60メッシュ、GLサイエンス)を用いて測定した。尚、CH、CO、Hのイニシャル量は、0mL/L、13mL/L、0mL/Lであったことから、COに関しては、最終的な発生量からイニシャル量を差し引いた。結果を図7に示す。
セルロースの分解量と相関があると考えられるCOの量は、共培養時に増加した。また、共培養の場合にのみ、高温性の水素資化性メタン生成菌であるMt株の存在によって、CHの発生が確認された。これらのことから、高温性の嫌気性セルロース分解菌であるCL−1株と高温性の水素資化性メタン生成菌であるMt株とを共培養することによって、CL−1株によるセルロース分解を促進できると共に、分解産物の一部をメタンガスとして回収できることが明らかとなった。
(4)TOCとVFAs濃度の変遷
12時間後、36時間後及び60時間後にサンプリングした培養液のS−TOC(可溶性全炭素量)とVFAs(揮発性低級脂肪酸)の濃度を測定し、培養試験中におけるこれらの濃度の変遷について検討した。S−TOCはTOCアナライザー(TNC−6000、東レ)により測定した。VFAはTSKgel OApak−AとOApak−P(東ソー)を用いた高速液体クロマトグラフィー(GL−7400、GLサイエンス)により測定した。尚、S−TOCのイニシャル濃度は746mg−C/Lであり、VFAsのイニシャル濃度は0mMであった。S−TOCの測定結果を図8に示し、VFAsの測定結果を図9に示す。
また、60時間後のS−TOC濃度とVFAs濃度を以下に示す。
<S−TOC>
・共培養 :3734mg−C/L
・単菌培養:2041mg−C/L
<VFAs>
・共培養 :44.4mM
・単菌培養:20.6mM
36時間後及び60時間後において、S−TOC濃度とVFAs濃度ともに、共培養時の方が増加した。S−TOCとVFAsはCL−1によるセルロース分解の産物であることから、この結果は、上記(1)〜(3)の結果と一致するリーズナブルなものであった。
(5)炭素収支の検討
60時間後の共培養、単菌培養における炭素収支を算出した。結果を表2に示す。
表2において、不溶性炭素量は、SS濃度にろ紙の炭素量(44%)を掛けることで算出した。
表2に示される結果から、炭素収支はほぼ100%であることが確認でき、本実施例における試験の妥当性が確認できた。
(6)共培養によるセルロース分解の高効率化の機構に関する検討
表3に、60時間後にサンプリングした培養液のVFAs(酢酸、乳酸、プロピオン酸)の濃度と、エタノール濃度を示す。エタノール濃度は、エタノールアッセイ F−キット(ロシュ)を用いて決定した。
表3に示される結果から、共培養を行うことで単菌培養よりもエタノール濃度が有意に減少し、酢酸濃度が有意に増加することが明らかとなった(p<0.05)。
(6)の検討により得られた結果と、(1)〜(5)の検討により得られた結果から総合的に推察され得る事項について、図10に基づいて以下に説明する。
まず、培養液中のセルロースは、CL−1株によって産生される細胞外セルラーゼによってセロビオースに分解されているものと考えられる(参考文献3:Demain, A. L., Newcomb, M., Wu, and J. H.: Cellulase, clostridia, and ethanol, Microbiol. Mol. Biol. Rev., 69, 124−154 (2006)、参考文献4:Shiratori, H., Sasaya, K., Ohiwa, H., Ikeno, H., Ayame, S., Kataoka, N., Miya, A., Beppu, T., and Ueda, K.: Clostridium clariflavum sp. nov. and Clostridium caenicola sp. nov., moderately thermophilic, cellulose−/cellobiose−digesting bacteria isolated from methanogenic sludge, Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 59, 1764−1770 (2009))。続いて、セロビオースは細胞内に輸送され、グルコースに分解される。グルコースはさらに分解され、数種の発酵がCL−1株内で進行するものと考えられる。ここで、乳酸生産経路、コハク酸を経由するプロピオン酸生産経路、及びエタノール生産経路においては、還元型のピリジンヌクレオチド類(NADH及びNADPH)とフラビン−アデニンジヌクレオチド(FADH)の再酸化が必要とされる。一方で、図10中、黒塗り矢印で示した酢酸生産経路においては、このような再酸化は必要とされない。仮に、Hを生産する微生物中に存在するヒドロゲナーゼが、低分圧H下において、還元型ピリジンヌクレオチド類の還元力からのH生成を触媒する場合には、発酵経路のシフトが起こり得ると考えられる。したがって、共培養における水素資化性メタン生成菌によるHの消費によって、乳酸、プロピオン酸及びエタノールの生産経路における反応を減退させ、その結果としてATP生産に関与する酢酸生産経路における反応が相対的に促進されたものと考えられる。
実際に、表3に示される結果からも、共培養を行うことで単菌培養よりもエタノール濃度が有意に減少し、酢酸濃度が有意に増加することが明らかとなっている。したがって、共培養によるCL−1株の増殖の向上及びセルロース分解速度の向上は、ATP生産の促進によって引き起こされているものと考えられる。
尚、この現象は、水素資化性メタン生成菌以外のメタン生成菌、例えば酢酸資化性メタン生成菌を共培養に用いた場合にも、酢酸生産経路の最終生成物である酢酸の消費を促進して、酢酸生産経路における反応を促進し、ATP生産が促されて、水素資化性メタン生成菌を用いた場合と同様の効果が奏され得るものと考えられる。
尚、実施例1に示す実験結果から、CL−1株の能力を具体的に数値で示すと以下のようになる。
<比増殖速度>
1.28/日(図2の24〜48時間の菌数の差から算出、48〜72時間の場合の比増殖速度は2.30/日)
<最大到達菌体密度>
2.67×10cells/mL(図2の72時間後の値)
<セルロース分解速度>
1.94×10−9g/L/cells/日(図3の0〜18日目のSS濃度の減少速度。但し、0〜9日目で計算すると2.00×10−9g/L/cells/日、9〜18日目で計算すると7.17×10−10g/L/cells/日)
したがって、CL−1株以外の嫌気性セルロース分解菌を用いた場合であっても、その比増殖速度が1.28/日以上であり、最大到達菌体密度が2.67×10cells/mL以上であり、セルロース分解速度が7.17×10−10g/L/cells/日以上(より好適には1.94×10−9g/L/cells/日以上)である嫌気性セルロース分解菌を、メタン生成菌と併用することによって、CL−1株を用いた場合と同等ないしはそれ以上の優れたセルロース分解処理能力が得られるものと考えられる。

Claims (8)

  1. 寄託番号FERM P−22178で寄託されている高温性の嫌気性セルロース分解菌であるクロストリジウム クラリフラバム(Clostridium clariflavum)CL−1株。
  2. 45℃〜65℃の嫌気環境下で、請求項1に記載のCL−1株にセルロースまたはセルロース含有物を接触させることを特徴とするセルロース分解処理方法。
  3. 請求項1に記載のCL−1株を主体として含むことを特徴とするセルロース分解処理用組成物。
  4. 45℃〜65℃の嫌気環境下で、請求項1に記載のCL−1株と高温性のメタン生成菌とを主体とする微生物群にセルロースまたはセルロース含有物を接触させることを特徴とするセルロース分解処理方法。
  5. 前記高温性のメタン生成菌は、高温性の水素資化性メタン生成菌である請求項4に記載のセルロース分解処理方法。
  6. 請求項4または5に記載の方法を実施することにより発生するメタンガス含有バイオガスを回収することを特徴とするバイオガス回収方法。
  7. 請求項1に記載のCL−1株と高温性のメタン生成菌とを主体として含むことを特徴とするセルロース分解処理用組成物。
  8. 前記高温性のメタン生成菌は、高温性の水素資化性メタン生成菌である請求項7に記載のセルロース分解処理用組成物。
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