JP2013181783A - 測定装置および測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】出力装置と受信装置とを含む対象系のインパルス応答の測定結果の精度を向上させること。
【解決手段】実施形態によれば、供給された、周波数を掃引する第1の測定用信号に応じた出力信号を出力する出力装置と、出力信号を受信することによって、第1の受信信号を出力する受信装置とを含む対象系であって、第1の受信信号の振幅スペクトルの特性の傾向が既知である対象系を用いてインパルス応答を測定する測定装置は、第1の測定用信号に振幅スペクトルの特性の傾向の逆特性を有する重みを乗じた信号の特性を有する第2の測定用信号を出力装置に供給する出力手段と、第2の測定用信号を出力手段から出力装置に供給した場合に、受信装置から出力された第2の受信信号を受信する受信手段と、第2の受信信号と第2の測定用信号の逆特性を有する逆測定用信号とに対して畳み込み演算を行うことによって、インパルス応答を演算する演算手段とを具備する。
【選択図】 図3
【解決手段】実施形態によれば、供給された、周波数を掃引する第1の測定用信号に応じた出力信号を出力する出力装置と、出力信号を受信することによって、第1の受信信号を出力する受信装置とを含む対象系であって、第1の受信信号の振幅スペクトルの特性の傾向が既知である対象系を用いてインパルス応答を測定する測定装置は、第1の測定用信号に振幅スペクトルの特性の傾向の逆特性を有する重みを乗じた信号の特性を有する第2の測定用信号を出力装置に供給する出力手段と、第2の測定用信号を出力手段から出力装置に供給した場合に、受信装置から出力された第2の受信信号を受信する受信手段と、第2の受信信号と第2の測定用信号の逆特性を有する逆測定用信号とに対して畳み込み演算を行うことによって、インパルス応答を演算する演算手段とを具備する。
【選択図】 図3
Description
本発明の実施形態は、出力装置と受信装置とを含む対象系のインパルス応答を測定する測定装置および測定方法に関する。
インパルス応答や周波数特性を計測するための測定用信号として、時間と共に周波数が連続的に変化する正弦波掃引信号がよく用いられる。TSP(Time Stretched Pulse)信号は、正弦波掃引信号の代表であり、周波数全体にわたり、最大振幅の時間信号を用いて測定ができる特徴がある。その結果、概ね平坦な周波数特性を持つ対象系(スピーカ等)などには適した測定用信号であるが、周波数特性が平坦でない対象系(イヤフォンを直接マイクで測定する等)の場合、利得の低い帯域が雑音に埋もれやすく、測定結果の精度が低かった。また、測定用信号の出力電力を上げたり、受信部の増幅率を上げるなど、大きな音で測定したりしようとすると、利得の高い帯域が受信レベルの最大値を超えることによって信号がひずみ、信号を正しく測定できないことがあった。
出力装置(密閉型イヤフォン)と受信装置(マイクロフォン)とを含み、受信信号の周波数特性が平坦でない対象系の場合、周波数全体にわたり、最大振幅の時間信号を有するTSP信号を用いて、対象系のインパルス応答の測定を行うと、測定結果の精度が低いことがあった。
本発明の目的は、出力装置と受信装置とを含む対象系のインパルス応答の測定結果の精度を向上させることが可能な測定装置および測定方法を提供することにある。
実施形態によれば、測定装置は、供給された、周波数を掃引する第1の測定用信号に応じた第1の出力信号を出力する出力装置と、前記第1の出力信号を受信することによって、第1の受信信号を出力する受信装置とを含む対象系であって、前記第1の受信信号の振幅スペクトルの特性の傾向が既知である対象系を用いてインパルス応答を測定する。測定装置は、出力手段と、受信手段と、インパルス応答演算手段とを具備する。出力手段は、前記第1の測定用信号に前記振幅スペクトルの特性の傾向の逆特性を有する重みを乗じた信号の特性を有する第2の測定用信号を前記出力装置に供給する。受信手段は、前記第2の測定用信号を前記出力手段から前記出力装置に供給した場合に、前記受信装置から出力された第2の受信信号を受信する。インパルス応答演算手段は、前記第2の受信信号と前記第2の測定用信号の逆特性を有する逆測定用信号とに対して畳み込み演算を行うことによって、前記インパルス応答を演算する。
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、図1および図2を参照して、測定装置(再生装置)の構成を説明する。本実施形態の測定装置(再生装置)は、例えば、ノートブック型の携帯型パーソナルコンピュータ10から実現されている。
まず、図1および図2を参照して、測定装置(再生装置)の構成を説明する。本実施形態の測定装置(再生装置)は、例えば、ノートブック型の携帯型パーソナルコンピュータ10から実現されている。
図1はコンピュータ10のディスプレイユニットを開いた状態における斜視図である。本コンピュータ10は、コンピュータ本体11と、ディスプレイユニット12とから構成されている。ディスプレイユニット12には、液晶パネルを有する表示パネル17が組み込まれている。ディスプレイユニット12内には、マイクロフォンが設けられている。ディスプレイユニット12には、マイクロフォンが効率よく集音できるようにするためにマイク穴19が設けられている。
ディスプレイユニット12は、コンピュータ本体11に対し、コンピュータ本体11の上面が露出される開放位置とコンピュータ本体11の上面を覆う閉塞位置との間を回動自在に取り付けられている。コンピュータ本体11は薄い箱形の筐体を有しており、その上面にはキーボード13、本コンピュータ10をパワーオン/パワーオフするためのパワーボタン14、タッチパッド16、およびスピーカ18A,18Bなどが配置されている。
次に、図2を参照して、本コンピュータ10のシステム構成について説明する。
本コンピュータ10は、図2に示されているように、CPU101、ノースブリッジ102、主メモリ103、サウスブリッジ104、グラフィクスプロセッシングユニット(GPU)105、ビデオメモリ(VRAM)105A、サウンドコントローラ106、BIOS−ROM109、LANコントローラ110、ハードディスクドライブ(HDD)111、DVDドライブ112、およびエンベデッドコントローラ/キーボードコントローラIC(EC/KBC)116等を備えている。
本コンピュータ10は、図2に示されているように、CPU101、ノースブリッジ102、主メモリ103、サウスブリッジ104、グラフィクスプロセッシングユニット(GPU)105、ビデオメモリ(VRAM)105A、サウンドコントローラ106、BIOS−ROM109、LANコントローラ110、ハードディスクドライブ(HDD)111、DVDドライブ112、およびエンベデッドコントローラ/キーボードコントローラIC(EC/KBC)116等を備えている。
CPU101は本コンピュータ10の動作を制御するプロセッサであり、ハードディスクドライブ(HDD)111から主メモリ103にロードされる、オペレーティングシステム(OS)121、およびメディアプレーヤ122のような各種アプリケーションプログラムを実行する。メディアプレーヤ122は、動画(映像)や音声のファイルを再生するためのアプリケーションソフトウェアである。また、CPU101は、BIOS−ROM109に格納されたBIOS(Basic Input Output System)も実行する。BIOSはハードウェア制御のためのプログラムである。
ノースブリッジ102はCPU101のローカルバスとサウスブリッジ104との間を接続するブリッジデバイスである。ノースブリッジ102には、主メモリ103をアクセス制御するメモリコントローラも内蔵されている。また、ノースブリッジ102は、PCI EXPRESS規格のシリアルバスなどを介してGPU105との通信を実行する機能も有している。
GPU105は、本コンピュータ10のディスプレイモニタとして使用される液晶パネル171を制御する表示コントローラである。GPU105は、VRAM105Aをワークメモリとして使用する。このGPU105によって生成される映像信号は液晶パネル171に送られる。
サウスブリッジ104は、LPC(Low Pin Count)バス上の各デバイス、およびPCI(Peripheral Component Interconnect)バス上の各デバイスを制御する。また、サウスブリッジ104は、ハードディスクドライブ(HDD)111およびDVDドライブ112を制御するためのIDE(Integrated Drive Electronics)コントローラを内蔵している。さらに、サウスブリッジ104は、サウンドコントローラ106との通信を実行する機能も有している。サウンドコントローラ106は音源デバイスであり、再生対象のオーディオデータをスピーカ18A,18Bまたに出力するために、デジタル信号を電気信号に変換するD/Aコンバータ、電気信号を増幅するアンプリファイア等の回路を有する。また、サウンドコントローラ106は、マイクロフォン113から入力された電気信号を増幅するマイクアンプリファイア、増幅された電気信号をデジタル信号に変換するためのA/Dコンバータ等の回路を有する。
エンベデッドコントローラ/キーボードコントローラIC(EC/KBC)116は、電力管理のためのエンベデッドコントローラと、キーボード(KB)13およびタッチパッド16を制御するためのキーボードコントローラとが集積された1チップマイクロコンピュータである。このエンベデッドコントローラ/キーボードコントローラIC(EC/KBC)116は、ユーザによるパワーボタン14の操作に応じて本コンピュータ10をパワーオン/パワーオフする機能を有している。
次に、メディアプレーヤ122の機能について説明する。メディアプレーヤ122は、密閉型イヤフォンから出力される音のインパルス応答および周波数特性を測定する機能を有する。周波数特性を測定するための構成について図3を参照して説明する。
メディアプレーヤ122は、測定用信号出力部231、インパルス応答演算部233、および周波数特性演算部234等を有する。
測定用信号出力部231は、例えばHDD111に格納されているTSP信号データをD/Aコンバータ221に出力する。
また、サウンドコントローラ106は、D/Aコンバータ(デジタル-アナログ変換回路)221、アンプリファイア222、マイクアンプリファイア223、およびA/Dコンバータ(アナログ-デジタル変換回路)224等を有する。
測定用信号出力部231は、デジタルデータのTSP信号データ241をD/Aコンバータ221に出力する。D/Aコンバータ221は、TSP信号241をアナログ測定用信号に変換する。変換されたアナログ測定用信号はアンプリファイア222によって増幅され、増幅されたアナログ測定用信号が密閉型イヤフォン200に供給される。イヤフォン200は、供給された測定用信号に応じた音を出力する。イヤフォン200から出力された音は、マイクロフォン113によって受信される。マイクロフォン113は、受信した音を電気的な測定信号(受信信号)に変換し、測定信号をマイクアンプリファイア223に供給する。マイクアンプリファイア223は、供給された測定信号を増幅し、増幅された測定信号をA/Dコンバータ224に供給する。A/Dコンバータ224は、測定信号をデジタルデータに変換し、変換された測定信号をインパルス応答演算部233に出力する。インパルス応答演算部233は、測定信号に逆TSP信号データ235を畳み込む(測定信号と逆TSP信号データ235とに対して畳み込み演算を行う)ことでインパルス応答を演算する。畳み込み演算は、測定信号と逆TSP信号データ235のフーリエ変換との積として計算することでインパルス応答の演算量が下げられる場合があることは良く知られている。なお、逆TSP信号データ235は、例えばHDD111に格納されている。
インパルス応答演算部233は、演算されたインパルス応答を周波数測定演算部234に供給する。周波数測定演算部234は、インパルス応答をフーリエ変換することで、周波数振幅スペクトルを演算する。図4に、イヤフォン200から出力されマイクロフォン113で取得された音の周波数特性を示す。
なお、再生側のアンプリファイア222は、イヤフォン200に対して適切な音量になるように調整され、受信側のマイクアンプリファイア223は測定信号のダイナミックレンジをできるだけ広く使えるように調節するのが精度の高い測定を行うには必要である。
TSP信号は、周波数を掃引するために時間と共に周波数が連続的に変化する信号であり、音響機器の特性を測定する場合によく用いられる。TSP信号には様々な改良型が存在するが、例として標準的なTSP信号と、周波数掃引が低域ほど遅くなるような対数掃引のLog−TSP信号は、周波数領域でそれぞれ以下のように定義される。
ここで、NはTSPまたはLog−TSPの信号長、mはパルス幅を決定するパラメータ、kは周波数を決定するパラメータ、上付きの*は複素共役を示す。
また、逆TSP信号は周波数領域でTSP信号の複素共役として定義される。測定に使うにはHTSP(k)をフーリエ逆変換することによって、時間をパラメータとする信号に変換し、変換された信号を再生して用いる。
図5にHTSP(k)をフーリエ逆変換した波形の模式図を示す。このようにTSP信号は振幅が一定で周波数が連続的に変化する正弦波によって構成されている。図5では簡便のため振幅値は最大値100%の例を示しているが、実際には演算誤差等の関係から若干低めに設定した方が安全である。この測定用信号を測定対象(イヤフォン)に入力し、その出力を観察することで受信信号を得る。
図6に受信信号の例を示す。図6に示す例では、中央付近の波形の振幅が小さくなっているが、その他の領域では再生信号と同じ100%の振幅が得られている。この受信信号に逆TSP信号を畳み込むことでインパルス応答を得ることができる。また、インパルス応答をフーリエ変換することで図7に示すような周波数振幅スペクトルを得ることもできる。
図7では、入力と同じレベルで観測された周波数を0dBとして示している。図7に示す受信信号では、図6の受信信号の中央付近のくぼみに対応する周波数のスペクトルの振幅が0dBより下がって観測される。
例えばイヤフォンの周波数特性を測定したい場合、図5に示す測定用信号をオーディオプレーヤで再生し、イヤフォンから出力される音をマイクロフォンで取得し、その信号に逆TSP信号を畳み込むことでイヤフォンのインパルス応答や周波数特性を得ることができる。
ところで、密閉型イヤフォン200にマイクロフォン113を近づけて、イヤフォン200の出力音を測定するような場合、低域になるほど音が小さく観測される。これは、密閉型イヤフォン200は耳にはめて密閉状態での共鳴等を考慮して設計されているために、開放状態で測定すると低音が聞こえにくくなるという物理現象のためである。ここではこのような系をハイパス系と呼ぶことにする。
ハイパス系から出力される音をマイクロフォン113によって受信した受信信号は図8に示す波形になる。図8に示すように、低い周波数域の振幅は、高い周波数域振幅に比べて極端に小さく観測される。図8に示す周波数振幅スペクトルに逆TSP信号を畳み込むことによってインパルス応答を生成する。生成されたインパルス応答の周波数振幅スペクトルを図9に示す。高い周波数域では、測定用信号と同じレベルの0dB付近の音量が得られている。周波数数が下がるにつれて振幅も小さくなっていく。振幅があまりにも小さくなると、ノイズに埋もれて正しい測定値が得られなくなる。受信信号のレベルを上げようとして、アンプリファイア222によって再生信号の音量を上げたり、マイクアンプリファイア223の増幅率を上げると、受信信号は図10に示すような波形となる。高い周波数域では、振幅の上限値を超えてひずんでしまう問題が生じる。これらの問題を解決するため、本実施形態ではTSP信号の周波数成分に重みを付けた信号を測定用信号として用いる。具体的には、(3)式のように周波数重みW(k)を(1)式または(2)式のH(k)に乗じた測定用信号M(k)を用いる。
重みは前述のTSP信号、Log−TSP信号以外のTSP信号に対しても同様に適応可能である。
重みの決め方は、実験的に決めるのが実用的である。受信信号の振幅のパターンを幾つかの測定対象に対して観測し、振幅の大きい周波数成分にW(k)<1なる重みを設定する。理想的には、対象系の平均周波数振幅スペクトルの逆特性をW(k)として設定することで、受信信号を概ね振幅の偏りのない信号とすることができる。
図11に示す測定用信号は、ハイパス系に対してW(k)を設計して作成した振幅重み付きTSP信号である。対象系の利得が高い高域ほど小さな値のW(k)を用いることで測定用信号の振幅を抑圧している。
図12は図11に示したTSP信号を作成する場合に用いた重み係数W(k)と、その逆TSP信号を作成する場合に用いた1/W(k)を示した図である。対象系が高周波数域上がりの系であることが既知である場合、図12に示す重みW(k)のように、これと逆特性の高域下がりの重みをTSPに施すことにより、低周波数域から高周波数域まで精度よく測定することができる。なお、逆TSPに施す重み1/W(k)は0dBに対して重みW(k)と対称になるように設計される。
このTSP信号をハイパス系から出力して、図13のような振幅に偏りのない受信信号が得られる。ただし、再生音量レベル、受信音量レベルは従来法と同じ場合である。低周波数域に関しては測定用信号の重みW(k)が1に近いため、従来と同様の振幅の小さい波形が観測される。高周波数域に関して測定用信号がW(k)により振幅が抑えられているため、そのまま小さい波形が観測される。このままでは、全帯域がノイズに埋もれ意味がないが、再生音量、または受信音量を上げることで図14のような観測波形となり低周波数域、高周波数域によらず高い利得で測定が可能となる。逆TSP処理を行った後、周波数振幅スペクトルを求めると、周波数振幅スペクトルは図15に示す波形になる。低周波数域の信号は音量を上げたため対象系で利得が下がってもそれを補うだけ音量を上げてあるため、0dB付近の値となっている。高周波数域の信号は予め振幅を小さくしてあるため、対象系の高周波数域の利得が高くても受信信号の最大振幅を超えることはない。また、再生信号よりも受信信号が大きく観測されるため0dBよりも高い周波数振幅特性が得られる。このように、対象系の性質に合わせて事前にTSP信号の振幅値を加工しておくことで、受信信号のダイナミックレンジを有効に活用し、従来なら受信レベルが低くてノイズに埋もれてしまう帯域の信号も十分な音量で測定することが可能となる。
ところで、アンプリファイア222によって再生音量を大きくすることが許されるのであれば、本手法を用いずとも受信側のレベルを下げて受信信号がオーバーフローしないように調整することはできる。そうすれば対象系で重畳する雑音は下げられるので、低域の受信信号が微弱でも、SN比を上げられそうである。しかし、現実には、受信後に載る回路ノイズや、量子化歪の問題などがあり十分な性能が得られない。したがって、本方法を用いて受信信号の段階で十分な振幅を確保することは効果がある。また、パソコンやスマートフォンのような計測機器でない装置では、マイクロホンのレベルが自由に変えられない場合が少なくない。このような場合は再生信号のレベルで調整をする必要があり、この場合も本手法は効果的である。
次に、イヤフォン200から出力される音の周波数特性を用いたメディアプレーヤの再生機能について説明する。メディアプレーヤの再生機能は、測定されたイヤフォン200の周波数特性に基づいて、イヤフォン200から出力される音が目標の周波数特性を有するようにする補正機能を有する。次に、図16を参照して、メディアプレーヤの補正機能の構成を説明する。
図16に示すように、メディアプレーヤは、測定特性取得部401、目標特性取得部402、補正フィルタ設計部404、デコード部406、補正部407等を備えている。
測定特性取得部401は、周波数特性演算部234によって生成された周波数特性データ234を取得する。目標特性取得部402は、イヤフォン200から出力され、鼓膜に届く音の目標とする周波数特性(以下、目標特性)を示す目標特性データを目標特性格納部403から取得する。目標特性格納部403には、例えば複数の目標特性データが格納されている。複数の目標特性データの一つは、例えば理想的な周波数特性を示している。また、別の複数の目標特性データは、複数の音楽のジャンルに対応する。図17に、目標特性データが示す周波数特性の一例を示す。目標特性取得部402は、目標特性格納部403に格納されている複数の目標特性データの内からユーザによって選択された一つの目標特性データを取得する。
補正フィルタ設計部404は、目標特性データと周波数特性データとに基づいて、イヤフォン200から出力され、鼓膜に届く音を目標特性に近づけるための補正フィルタ(補正データ)405を設計する。補正フィルタ405が示す周波数特性を図18に示す。補正フィルタ405は例えば一般的なパラメトリックイコライザで用いられるパラメータを有する。パラメトリックイコライザで用いられるパラメータは、中心となる周波数、調整する帯域の幅、および音量である。
デコード部406は、MP3等の圧縮フォーマットで符号化されたデータをデコードすることによってオーディオデータを生成する。補正部407は、補正フィルタ設計部404によって作成された補正フィルタに基づいてオーディオデータに対して補正を行う。補正されたオーディオデータは、D/Aコンバータに入力される。D/Aコンバータは、オーディオデータを電気信号に変換し、変換された電気信号をアンプリファイアに出力する。アンプリファイアは電気信号を増幅し、増幅された電気信号をイヤフォン200に出力する。図19にイヤフォン200から出力された音の周波数特性(補正特性)を示す。図19に示すように、補正特性は、目標特性にほぼ一致していることが分かる。
次に、図20のフローチャートを参照して、イヤフォン200から出力された音の周波数特性を測定し、測定された周波数特性に基づいてイヤフォン200から出力される音を補正する手順を説明する。
測定用信号出力部231は、サウンドコントローラ106に測定用信号を出力することによってイヤフォン200から測定用音を出力する(ステップ501)。イヤフォン200から出力された音をマイクロフォン113によって受信する(ステップ502)。取得された受信信号は、インパルス応答演算部233に供給される。インパルス応答演算部233は、測定信号に逆TSP信号データ235を畳み込むことでインパルス応答を演算する(ステップB503)。インパルス応答演算部233は、演算されたインパルス応答を周波数測定演算部234に供給する。周波数測定演算部234は、インパルス応答をフーリエ変換することで、周波数振幅スペクトルを演算する(ステップB504)。
目標特性取得部402は目標特性格納部403から目標特性データを取得する(ステップ505)。補正フィルタ設計部404は、周波数特性データ234と目標特性データとに基づいて補正フィルタ405を設計する(ステップ506)。
デコード部406が、圧縮符号化されている音楽データをデコードする(ステップ507)。補正部407は、補正フィルタ405に基づいてデコードされた音楽データを補正する(ステップ508)。補正部407は、補正された音楽データをサウンドコントローラ106に出力する。サウンドコントローラ106は、音楽データを音楽信号に変換し、変換された音楽信号を増幅し、増幅された音楽信号をイヤフォン200に出力する(ステップ509)。
ステップ501からステップ506までを行い、設計された補正フィルタのパラメータを保存しておき、音楽再生時にこのパラメータを読み取りステップ506から処理を行う構成にすることも可能である。イヤフォンの特性は大きく変動するものではないので、前半のステップを一度行い、補正フィルタのパラメータを求めておけば、それ以降はそのパラメータを使うこと測定の手間を省くことができる。
本実施形態によれば、イヤフォン200で聞くと理想的なイヤフォン200に近い音に聞こえるため、例えば音楽を再生する場合、高音質な音楽を楽しむことができる。また、低価格で特性の良くないイヤフォン200でも、ユーザーが自分でイヤフォン200の特性を簡単に補正することができる。
なお、測定されたイヤフォンの周波数特性を理想的なイヤフォンの特性と比較して補正フィルタの係数を設計している。これは2つのイヤフォンの特性の差を埋めるフィルタを設計していることになる。従って2つの特性に同一の変動が加わった場合、差にはその変動が現れないことになる。
(変形例)
図21は、図10に示したTSP信号の振幅制御を低周波数域と高周波数域の所定の範囲で平坦化したものである。低周波数域のレベルをあまり大きくし過ぎると、再生信号の歪が大きくなる問題があり、あるレベルに平坦化することは効果的である。高周波数域側の信号があまりにも小さくなりすぎると、量子化歪が大きくなり、再生信号の精度が落ちる問題があり、測定信号の振幅の下限を設けることは効果的である。どちらか片方の処理をする方法だけでも効果はある。
図21は、図10に示したTSP信号の振幅制御を低周波数域と高周波数域の所定の範囲で平坦化したものである。低周波数域のレベルをあまり大きくし過ぎると、再生信号の歪が大きくなる問題があり、あるレベルに平坦化することは効果的である。高周波数域側の信号があまりにも小さくなりすぎると、量子化歪が大きくなり、再生信号の精度が落ちる問題があり、測定信号の振幅の下限を設けることは効果的である。どちらか片方の処理をする方法だけでも効果はある。
図22は図21のTSP信号を作成する場合に用いた重み係数W(k)と、その逆TSP信号を作成する場合に用いた1/W(k)を示した図である。図11の場合と比べて、低域と高域の振幅を制限することで、過大または過小な測定信号にならないよう工夫している。
前記重みW(k)は、第1の周波数より低い周波数域(〜Log(k1))では第1の値C1を示し、第1の周波数と前記第1の周波数より高い第2の周波数との間の周波数域(Log(k1)〜Log(k2))では、第1の値C1から第1の値C1より低い第2の値C2までの値を示し、第2の周波数(Log(k2)〜)より高い周波数域では第2の値C2を示す。
なお、逆TSPに施す重み1/W(k)は0dBに対して重みW(k)と対称になるように設計される。
本実施形態のインパルス応答の演算、周波数特性の演算、再生機能の処理の手順はプログラムによって実現することができるので、このプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を通じてこのソフトウェアを通常のコンピュータにインストールして実行することにより、本実施形態と同様の効果を容易に実現することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
231…測定用信号出力部,233…周波数特性データ生成部,234…周波数特性データ,312…吸音材,401…測定特性取得部,402…目標特性取得部,403…目標特性格納部,404…補正フィルタ設計部,405…補正フィルタ,406…デコード部,407…補正部,410…サーバ,411…測定特性取得部。
Claims (11)
- 供給された、周波数を掃引する第1の測定用信号に応じた第1の出力信号を出力する出力装置と、前記第1の出力信号を受信することによって、第1の受信信号を出力する受信装置とを含む対象系であって、前記第1の受信信号の振幅スペクトルの特性の傾向が既知である対象系を用いてインパルス応答を測定する測定装置であって、
前記第1の測定用信号に前記振幅スペクトルの特性の傾向の逆特性を有する重みを乗じた信号の特性を有する第2の測定用信号を前記出力装置に供給する出力手段と、
前記第2の測定用信号を前記出力手段から前記出力装置に供給した場合に、前記受信装置から出力された第2の受信信号を受信する受信手段と、
前記第2の受信信号と前記第2の測定用信号の逆特性を有する逆測定用信号とに対して畳み込み演算を行うことによって、前記インパルス応答を演算するインパルス応答演算手段と
を具備する測定装置。 - 前記第1の測定用信号は、時間と共に周波数が連続的に変化する正弦波掃引信号である請求項1に記載の測定装置。
- 前記正弦波掃引信号は、TSP(Time Stretched Pulse)信号である請求項2に記載の測定装置。
- 前記振幅スペクトルの特性の傾向は、周波数が低くなるほど振幅が小さくなることであり、
前記重みは、周波数が高いほど値が小さくなる
請求項1〜3の何れか1項に記載の測定装置。 - 前記出力装置は密閉型イヤフォンを含み、
前記受信装置は、前記密閉型イヤフォンに接近して、前記出力装置から出力された出力信号を受信するマイクロフォンとを含む、
請求項4に記載の測定装置。 - 前記重みは、第1の周波数より低い周波数域では第1の値を示し、第1の周波数と前記第1の周波数より高い第2の周波数との間の周波数域では、前記第1の値と前記第1の値より低い第2の値との間の値を示し、前記第2の周波数より高い周波数域では前記第2の値を示す、
請求項4、5の何れか1項に記載の測定装置。 - 前記インパルス応答に基づいて、前記第2の測定用信号を前記出力手段から前記出力装置に供給した場合に前記出力装置から出力された第2の出力信号の周波数特性を演算する周波数特性演算手段を
更に具備する請求項1〜6の何れか1項に記載の測定装置。 - 前記インパルス応答演算手段は、前記第2の受信信号と前記逆測定用信号のフーリエ変換との積を演算する請求項1〜7の何れか1項に記載の測定装置。
- 予め計算された前記第2の測定用信号を示す測定用信号データを格納する格納部を更に具備する請求項1〜8の何れか1項に記載の測定装置。
- 供給された、周波数を掃引する第1の測定用信号に応じた出力信号を出力する出力装置と、前記出力信号を受信することによって、第1の受信信号を出力する受信装置とを含む対象系であって、前記第1の受信信号の振幅スペクトルの特性の傾向が既知である対象系を用いてインパルス応答を測定する測定方法であって、
周波数を掃引する第2の測定用信号を前記出力装置に供給し、
前記第2の測定用信号を前記測定用信号出力手段から前記出力装置に供給した場合に、前記受信装置から出力された第2の受信信号を受信し、
前記第2の受信信号と前記第2の測定用信号の逆特性を有する逆測定用信号とに対して畳み込み演算を行うことによって、前記インパルス応答を演算し、
前記第2の測定用信号は、前記第1の測定用信号に前記振幅スペクトルの特性の傾向の逆特性を乗じた信号の特性を有する
測定方法。 - 供給された、周波数を掃引する第1の測定用信号に応じた出力信号を出力するイヤフォンと、前記イヤフォンに接近して、前記出力信号を受信することによって、第1の受信信号を出力するマイクロフォンとを含む対象系であって、前記第1の受信信号の振幅スペクトルの特性の傾向が既知である対象系を用いてインパルス応答を測定する測定装置であって、
前記第1の測定用信号に前記振幅スペクトルの特性の傾向の逆特性を有する重みを乗じた信号の特性を有する第2の測定用信号を前記イヤフォンに供給する出力手段と、
前記第2の測定用信号を前記出力手段から前記イヤフォンに供給した場合に、前記マイクロフォンから出力された第2の受信信号を受信する受信手段と、
前記第2の受信信号と前記第2の測定用信号の逆特性を有する逆測定用信号とに対して畳み込み演算を行うことによって、前記インパルス応答を演算するインパルス応答演算手段と、
前記インパルス応答に基づいて前記第2の受信信号の周波数特性を示す周波数特性データを演算する周波数特性演算手段と、
前記周波数特性データと目標周波数特性を示す目標周波数特性データとに基づいて、前記周波数特性を補正するための補正データを生成する補正データ生成手段と、
オーディオデータを前記補正データに基づいて補正する補正手段と、
前記補正されたオーディオデータに基づいたオーディオ信号を前記ヘッドフォンに出力するオーディオ信号出力手段と
を具備する再生装置。
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