JP2013173130A - オレフィン二量化触媒、シクロブタン化合物の製造方法及びオレフィン化合物の二量化実行方法 - Google Patents

オレフィン二量化触媒、シクロブタン化合物の製造方法及びオレフィン化合物の二量化実行方法 Download PDF

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Abstract

【課題】有機化合物を結晶化させる工程を必要とせずともオレフィン化合物の光二量化反応を効率良く進行させることのできるオレフィン二量化触媒、並びにその触媒を使用したシクロブタン化合物の製造方法及びオレフィン化合物の二量化反応実行方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ランタノイドのアクア錯体からなり、水素原子に対して水素結合可能な置換基を備えたオレフィン化合物同士を紫外線の照射下で光二量化させるオレフィン二量化触媒を使用する。
【選択図】図2

Description

本発明は、オレフィン二量化触媒、並びにそれを利用したシクロブタン化合物の製造方法及びオレフィン化合物の二量化実行方法に関する。
近年、分子構造の解析技術や分子モデリング技術の発達に伴い、標的となる分子や受容体等へ特異的に結合することのできる新規な有機化合物の設計が盛んに行われている。このような有機化合物は、疾病の治療を初めとして、様々な分野に新たな可能性を提供するものであり、数多くのものが提案されている(例えば、特許文献1等を参照)。
分子モデリング技術によって設計された分子は、様々な有機化学的手法を駆使して合成されることになる。これまでに積み上げられてきた化学反応に関する数多くの知見や、合成化学に携わる多くの科学者の努力により、数多くの合成手法が提案されているのは周知の通りである。
ところで、これらの合成手法において最も困難なものの一つに、シクロブタン環の構築がある。シクロブタン環とは4個の炭素原子が単結合により環状に結合した構造である。炭素原子の単結合における結合角は、通常109.5°程度であるが、シクロブタン環ではこれが90°付近となるように強制される。このため、シクロブタン環は、大きなひずみを有する不安定な構造ということができる。シクロブタン環の構築が難しい要因は、こうした構造の不安定さにあると考えられる。
分子にシクロブタン環を導入する方法として一般的に採用されるものの一つに、二重結合を有する化合物(オレフィン化合物)に対して紫外線を照射する光二量化反応が挙げられる。光二量化反応とは、紫外線の照射下で、オレフィン化合物中に存在する二重結合C=Cの両端の炭素原子C及びCが、別の分子中に存在する二重結合C’=C’の両端の炭素原子C’及びC’との間にそれぞれ単結合を生成する反応であり、対となる炭素原子の二組(例えば、C及びC’と、C及びC’)が同時に隣り合う状態(すなわち、C及びC’が隣り合うのと同時に、C及びC’が隣り合う状態)になり、二重結合同士がπ−π相互作用を形成したときのみに生じる化学反応である。このため、分子が自由に運動(移動)している溶液内では、光二量化反応の生じる確率は極めて低いものであり、一般には、分子の移動が制限された結晶中にて、対となる炭素原子の二組が同時に隣り合った状態をつくり出し、その結晶に紫外線を照射することで光二量化反応を行うものとされている(例えば、非特許文献1を参照)。
特許第3300365号公報
Yoriko Sonoda,Molecules,2011,16,119−148
しかしながら、有機化合物の結晶を作製するのは容易なことでなく、上記のように結晶中で光二量化反応を実行するのはコストや作業工程等といった観点から工業的には課題の多い方法である。工業的に効率良く二量化反応を実行するためには、溶液中で反応を行ったり、粉体である有機化合物同士を混合させて反応を行ったりといったように、有機化合物を結晶化させる工程を必要とせずとも効率良く反応させることのできるプロセスを採用することが理想的だが、そのようなプロセスはこれまで実現できていないのが現状である。
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、有機化合物を結晶化させる工程を必要とせずともオレフィン化合物の光二量化反応を効率良く進行させることのできるオレフィン二量化触媒、並びにその触媒を使用したシクロブタン化合物の製造方法及びオレフィン化合物の二量化反応実行方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、水素原子に対して水素結合可能な置換基を備えたオレフィン化合物に対してランタノイドのアクア錯体を添加すると、このオレフィン化合物がアクア錯体に含まれる水分子に対して水素結合を形成し、その結果、アクア錯体に対して水素結合した2つのオレフィン化合物がπ−πスタックを形成した状態で固定され、その状態で紫外線を照射するとπ−πスタックを形成したオレフィン化合物同士で光二量化反応が生じることを見出した。このπ−πスタックは、結晶化により2つのオレフィン化合物が立体的に固定されて生じたものではなく、アクア錯体に対する水素結合により2つのオレフィン化合物が立体的に固定されて生じたものである。したがって、この方法によれば、有機化合物を結晶化させる工程を経ずともオレフィン化合物の二量化反応を実行することが可能になる。本発明は、以上のような知見に基づいてなされたものであり、以下のようなものを提供する。
(1)本発明は、ランタノイドのアクア錯体からなり、水素原子に対して水素結合可能な置換基を備えたオレフィン化合物同士を紫外線の照射下で光二量化させるオレフィン二量化触媒である。
(2)前記オレフィン化合物は、水素原子に対して水素結合可能な置換基を2以上備えたものであることが好ましい。
(3)前記2以上の水素結合可能な置換基のうちの少なくとも2つの置換基の間となる位置にオレフィン化合物の二重結合が存在し、これら2つの置換基はオレフィン化合物の外方に向けて水素結合可能であることが好ましい。
(4)また、本発明は、ランタノイドのアクア錯体と、水素原子に対して水素結合可能な置換基を備えたオレフィン化合物と、を含む溶液又は混合物に紫外線を照射し、前記溶液又は混合物中で前記オレフィン化合物同士を光二量化させてシクロブタン環を形成させることを特徴とするシクロブタン化合物の製造方法でもある。
(5)前記オレフィン化合物は、前記水素結合可能な置換基を2以上備え、2以上の前記アクア錯体を水素結合で橋掛けすることにより超分子錯体を形成でき、かつ、前記超分子錯体に含まれる二分子の前記オレフィン化合物を一対としたときに、これら一対のオレフィン化合物に含まれる一対の二重結合がπ−πスタックを形成可能となるように前記置換基を備えることが好ましい。
(6)また、本発明は、ランタノイドのアクア錯体と、水素原子に対して水素結合可能な置換基を備えたオレフィン化合物と、を含む溶液又は混合物に紫外線を照射し、前記溶液又は混合物中で前記オレフィン化合物同士を光二量化させてシクロブタン環を形成させることを特徴とするオレフィン化合物の二量化反応実行方法でもある。
(7)前記オレフィン化合物は、前記水素結合可能な置換基を2以上備え、2以上の前記アクア錯体を水素結合で橋掛けすることにより超分子錯体を形成でき、かつ、前記超分子錯体に含まれる二分子の前記オレフィン化合物を一対としたときに、これら一対のオレフィン化合物に含まれる一対の二重結合がπ−πスタックを形成可能となるように前記置換基を備えることが好ましい。
本発明によれば、有機化合物を結晶化させる工程を必要とせずともオレフィン化合物の光二量化反応を効率良く進行させることのできるオレフィン二量化触媒、並びにその触媒を使用したシクロブタン化合物の製造方法及びオレフィン化合物の二量化反応実行方法が提供される。
図1(a)は、ランタノイドのアクア錯体とオレフィン化合物とが水素結合した状態を示す模式図であり、図1(b)は、遷移金属元素のアクア錯体とオレフィン化合物とが水素結合した状態を示す模式図である。 図2は、水素原子に対して水素結合可能な置換基であるピリジル基を2個備えたオレフィン化合物となるビス(4−ピリジル)エチレン(4,4’−bpe)が、イッテルビウム(Yb)のアクア錯体[Yb(OH3+に対して水素結合することで超分子錯体を形成する様子を示す分子構造図である。 図3は、実施例1における単結晶Bにおける分子構造図である。 図4は、実施例1における単結晶Aの紫外線照射前後でのCDCN溶液におけるH−NMRの測定結果である。 図5は、Yb(CFSO・xHO及びtrans−4,4’−bpeのDO:CDCN=1:1(v/v)溶液に紫外線を照射した際の時間経過に対する各生成物の存在割合を示すグラフであり、横軸が紫外線の照射時間を表し、縦軸が各生成物の存在割合を表す。 図6は、Yb(CFSO・xHO、trans−4,4’−bpe及び水(HO)の混合物に紫外線を照射した際の紫外線照射時間に対するrctt−4,4’−tpcbの生成量を示すグラフであり、横軸が紫外線の照射時間を表し、縦軸がrctt−4,4’−tpcbの生成比率(%)を表す。
以下、本発明のオレフィン二量化触媒、シクロブタン化合物の製造方法及びオレフィン化合物の二量化反応実行方法のそれぞれについての一実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲において適宜変更して実施することができる。
[オレフィン二量化触媒]
本発明のオレフィン二量化触媒は、ランタノイドのアクア錯体である。ランタノイドは、原子番号が57から71までの原子の総称であり、その中には、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)が含まれる。本発明では、これらの元素のうちのいずれかのアクア錯体が使用される。なお、アクア錯体とは、上記ランタノイドのイオンに水分子(HO)が配位してなる錯イオンである。ランタノイドのイオンに配位する水分子の数は、ランタノイドの種類によって異なるが、通常の遷移金属元素のアクア錯体における数(多くて6個である。)よりも多く、例えばYb3+であれば8個である。この場合、Yb(OH 3+という錯イオンが形成される。
ランタノイドでは、4f軌道が閉殻となっておらず、原子番号の増加とともに4f軌道に電子が一つずつ詰まっていく。そのため、ランタノイドは、その化学的な性質が4f軌道の存在に依存しており、3d軌道が閉殻となっていない遷移金属元素よりも大きな原子半径を有している。本発明では、ランタノイドがこのように大きな原子半径を備えることが重要なポイントとなる。
ランタノイドの4f軌道は、酸素原子と高い親和性を有するとされており、酸素原子を有する水分子と容易に錯体(アクア錯体)を形成する。このとき、水分子(H−O−H)は、2つの水素原子を外側に向けた状態で酸素原子の非共有電子対(いわゆるローンペア)によりランタノイドに配位する。上記のように、ランタノイドは大きな原子半径を有するので、そのアクア錯体では、結合した水分子同士が互いに比較的離れた位置となるように配置される。これに対して、ランタノイドよりも原子半径の小さな遷移金属元素では、ランタノイドと同様に2つの水素原子が外側を向いたアクア錯体を形成するものの、そのアクア錯体では、結合した水分子同士が互いに接近した位置となるように配置される。
アクア錯体において外側を向いた2つの水素原子は、水素原子に対して水素結合可能な化合物、すなわち非共有電子対を有する原子を備えた化合物と水素結合をして、超分子錯体を形成することが可能である。このとき、水素結合した化合物は、アクア錯体の外側に配置されることになる。
ここで、アクア錯体に水素結合した化合物が、二重結合を有する化合物、すなわちオレフィン化合物である場合を考える。このようなオレフィン化合物としては、水素原子に対して水素結合可能な置換基を備えたオレフィン化合物が挙げられる。ランタノイド及び遷移金属のアクア錯体は、いずれも複数の水分子を有するので、1つのアクア錯体で複数のオレフィン化合物と水素結合をすることが可能である。ここでは、説明を簡単にするために、1つのアクア錯体に2つのオレフィン化合物が水素結合により結合した場合を想定し、図1(a)及び(b)を参照しながら説明する。図1(a)は、ランタノイドのアクア錯体とオレフィン化合物とが水素結合した状態を示す模式図であり、図1(b)は、遷移金属元素のアクア錯体とオレフィン化合物とが水素結合した状態を示す模式図である。
図1(a)に示すように、水分子2は酸素原子を介してランタノイド1aに結合し、オレフィン化合物3は自身が備える水素結合可能な置換基31により水分子2に水素結合する。図1(a)では、一例として、オレフィン化合物3の末端に水素結合可能な置換基31が存在することとしている。このとき、ランタノイド1aの原子半径が大きいため、2個の水分子2,2は互いに十分に離れており両者の間に特段の反発はない。そのため、2個の水分子2,2に結合した2個のオレフィン化合物3,3は、互いに平行になるような配置となって、それぞれが有する二重結合同士でπ−πスタック4を形成させることが可能である。この状態で2個のオレフィン化合物3,3に紫外線が照射されると、π−πスタック4を形成している二重結合同士の間で環状構造(シクロブタン環)が形成され、オレフィン化合物3,3の間で光二量化反応が起こる。
これに対して、図1(b)に示す遷移金属元素1bのアクア錯体では、遷移金属元素1bの原子半径が小さいために、遷移金属元素1bに結合した2個の水分子2,2が互いに近接しており両者の間に反発が生じる。そのため、2個の水分子2,2に結合した2個のオレフィン化合物3,3は、互いに平行になることができず、それぞれが有する二重結合同士でπ−πスタックを形成させることができない。そのため、2個のオレフィン化合物3,3に紫外線が照射されたとしても、両者の間では光二量化反応は起きない。なお、図1(b)においても、水分子2は酸素原子を介して遷移金属元素1bに結合し、オレフィン化合物3は自身が備える水素結合可能な置換基31により水分子2に水素結合している。
後述の実施例でも示すが、図2は、水素原子に対して水素結合可能な置換基であるピリジル基を2個備えたオレフィン化合物となるビス(4−ピリジル)エチレン(4,4’−bpe)が、イッテルビウム(Yb)のアクア錯体[Yb(OH3+に対して水素結合することで超分子錯体を形成する様子を示す分子構造図(ORTEP)である。図2は、Ybのアクア錯体と4,4’−bpeとから単結晶を作製し、その単結晶についてX線結晶構造解析を実施した結果に基づくものである。図2(a)は、a軸に沿ってYbのアクア錯体及び4,4’−bpeのピリジル環及びその隣接部分を観察した分子構造図であり、図2(b)は、単位格子の(0 1−1)面に存在する分子を表した分子構造図である。
図2(a)及び(b)を参照すると、Ybのアクア錯体に対して水素結合している4,4’−bpeが、その分子中央に位置するC=C結合同士でπ−πスタックを形成するように組(すなわち一対)となって、a軸方向に重なっていることがわかる。このように、ランタノイドであるYbのアクア錯体に水素結合したオレフィン化合物がπ−πスタックを形成できるのは、上述のように、ランタノイドが大きな原子半径を有するためである。この状態で、オレフィン化合物に紫外線が照射されれば、組(すなわち一対)となったオレフィン化合物が光二量化する。
なお、図2(a)及び(b)は単結晶のX線結晶構造解析の結果を示すものだが、後述のように、Ybのアクア錯体は、溶液中や粉末中でも、紫外線照射下で4,4’−bpeを効率良く光二量化させる。よって、図2(a)及び(b)で示されるような4,4’−bpeのπ−πスタックは、結晶中のみならず、溶液中や粉末中でも生じていると考えられる。このことは、ランタノイドのアクア錯体が、どのような環境においても、水素原子に対して水素結合可能な置換基を備えたオレフィン化合物同士をπ−πスタックさせ、これらが光二量化するのを助ける作用を有することを意味する。本発明は、ランタノイドのアクア錯体の備えるこうした新規な特性を発見したことに基づくものであり、ランタノイドのアクア錯体からなるオレフィン二量化触媒を提供する。
ランタノイドのアクア錯体は、上述の通り、ランタノイドのイオンに水分子(HO)が配位してなる錯イオンである。ランタノイドは、水分子と極めて錯体を形成しやすい性質がある。そのため、ランタノイドのアクア錯体は、ランタノイドの塩に水分を接触させるだけで容易に調製される。
こうした調製に使用されるランタノイドの塩としては、特に限定されないが、一例として、ランタノイドの塩化物、トリフルオロ亜硫酸(CFSO)塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。例えば、ランタノイドとしてYbを用いるならば、その塩としてはYbCl、Yb(CFSO等が例示される。
ランタノイドの塩に水分を接触させる方法は、特に限定されない。このような方法の一例として、ランタノイドの塩(粉末状態、結晶状態を問わない。以下、同様である。)を水又は水を含んだ溶媒に溶解又は混合させる方法、ランタノイドの塩に微量の水分を添加して混合させる方法、水分(湿気)を含んだ空気のもとでランタノイドの塩を貯蔵する方法等が挙げられるが、特に限定されない。
調製されたランタノイドのアクア錯体は、水素原子に対して水素結合可能な置換基を備えたオレフィン化合物を光二量化させる、オレフィン二量化触媒となる。
次に、水素原子に対して水素結合可能な置換基(以下、単に「水素結合可能な置換基」とも呼ぶ。)を備えたオレフィン化合物(以下、単に「オレフィン化合物」と呼ぶこともある。)について説明する。この化合物は、水素結合可能な置換基を備えており、当該置換基によりランタノイドのアクア錯体に含まれる水分子(H−O−H)の水素原子に水素結合できる。既に説明したように、オレフィン化合物は、こうした水素結合を通じてランタノイドのアクア錯体に結合し、他のオレフィン化合物とπ−πスタックを形成させる。なお、オレフィン化合物は、1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物を組み合わせたものであってもよい。
オレフィン化合物が備える水素結合可能な置換基としては、非共有電子対(いわゆるローンペア)を有する、窒素、酸素、硫黄、リン等の原子を備えた置換基が挙げられる。このような置換基の例としては、ピリジル基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、アミド基、リン酸基、スルホ基等が挙げられるが、特に限定されない。また、オレフィン化合物の構造中で、水素結合可能な置換基の占める位置は特に限定されない。
オレフィン化合物は、水素結合可能な置換基を2以上備えることが好ましい。オレフィン化合物が水素結合可能な置換基を2以上備えることにより、オレフィン化合物は、2以上のランタノイドのアクア錯体と水素結合することが可能となり、2以上のランタノイドのアクア錯体との間で橋掛け構造を形成させることができるようになる(図2(b)を参照)。このような橋掛け構造が形成されると、オレフィン化合物は、橋掛け構造の中での位置の固定化が進み、他のオレフィン化合物との間でπ−πスタックをより形成させやすくなる。このことは、オレフィン化合物の光二量化反応がよりスムースに生じるようになることを意味している。
また、オレフィン化合物が水素結合可能な置換基を2以上備える場合、これらの置換基のうち少なくとも2つの置換基の間となる位置にオレフィン化合物の二重結合が存在し、これら2つの置換基はオレフィン化合物の外方に向けて水素結合可能であることが好ましい。つまり、オレフィン化合物における二重結合が、2つの水素結合可能な置換基に挟まれた構造となっており、これらの置換基が外部に向けて水素結合可能であることが好ましい。このようなオレフィン化合物であれば、上記の橋掛け構造をより形成しやすくなるので、光二量化反応がスムースに生じるようになる。
このような化合物の一例としては、上述の4,4’−bpeを挙げることができる。4,4’−bpeは、下記構造式で示すように、水素結合可能な置換基である2つのピリジル基の間に二重結合が挟まれた構造となっている。また、これら2つのピリジル基は、いずれも4,4’−bpe分子の外方に向けて水素結合可能である。なお、下記構造式で示される4,4’−bpeは、上記好ましい態様を説明するための一例であり、本発明のオレフィン二量化触媒の対象が4,4’−bpeに限定されるものでないことは言うまでもない。
Figure 2013173130
[シクロブタン化合物の製造方法]
次に、本発明のシクロブタン化合物の製造方法の一実施態様について説明する。本発明のシクロブタン化合物の製造方法は、上述のオレフィン二量化触媒(すなわち、ランタノイドのアクア錯体)を使用して、水素原子に対して水素結合可能な置換基を備えたオレフィン化合物同士を光二量化させ、シクロブタン環を形成させることを特徴とする。なお、本発明のシクロブタン化合物の製造方法で使用されるオレフィン二量化触媒、及び水素原子に対して水素結合可能な置換基を備えたオレフィン化合物(上記のように、適宜「オレフィン化合物」と省略する。)については既に説明した通りであるので、ここでの説明を省略する。
本発明のシクロブタン化合物の製造方法では、ランタノイドのアクア錯体と、オレフィン化合物と、を含む溶液又は混合物に紫外線を照射する。すると、下記反応式(1)のように、2分子のオレフィン化合物が光二量化反応によりシクロブタン化合物に変換される。下記反応式(1)におけるR〜Rはそれぞれ独立に1価の置換基であるが、原料であるオレフィン化合物におけるR〜Rの立体関係が、生成物であるシクロブタン化合物でもそのまま引き継がれる(すなわち、立体関係が保存される)ことも本発明の製造方法における特徴の一つである。なお、既に述べたように、オレフィン化合物はランタノイドのアクア錯体に対して水素結合可能であることが必要なので、下記反応式(1)において、R及びRの少なくとも1つは水素原子に対して水素結合可能な置換基を備え、R及びRの少なくとも1つは水素原子に対して水素結合可能な置換基を備える。
Figure 2013173130
(上記反応式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に1価の置換基である。)
ランタノイドのアクア錯体と、オレフィン化合物と、を含む溶液又は混合物を調製する方法は特に限定されない。この溶液又は混合物の内部では、ランタノイドのアクア錯体とオレフィン化合物との間で水素結合による超分子錯体が形成される。このような方法の一例として、(1)溶液法、(2)粉末混合法、及び(3)静置法を挙げて説明する。なお、「ランタノイドのアクア錯体と、オレフィン化合物と、を含む混合物」との用語には、ランタノイドとオレフィン化合物とを含む結晶(又は単結晶)との意味も含まれる。
(1)溶液法
溶液法は、アクア錯体の形成に必要な水分を含む溶媒中に、ランタノイドの塩及びオレフィン化合物を溶解又は分散させる方法である。ランタノイドの塩は、溶媒に含まれる水分によってアクア錯体となり、次いでこの溶液中で、アクア錯体とオレフィン化合物との間で水素結合による超分子錯体が形成される。
溶液を調製するための溶媒としては、特に限定されず、水そのものであってもよいし、水と混和性のある有機溶媒であってもよいし、水と混和性のない有機溶媒であってもよい。溶媒として有機溶媒を使用する場合、当該有機溶媒に水を添加して使用する。このとき、水と混和性のない有機溶媒を使用すると添加された水が分離するが、有機溶媒と水との混合物を常に撹拌しておけば支障はない。
上記のように調製された水分を含む溶媒に、ランタノイドの塩及びオレフィン化合物を溶解又は分散させる。すると、既に説明したように、ランタノイドのアクア錯体とオレフィン化合物との間で超分子錯体が形成される。なお、ランタノイドの塩については既に説明した通りであるので、ここでの説明を省略する。
溶液中におけるランタノイドの塩及びオレフィン化合物のモル比は、特に限定されないが、一例として、ランタノイドの塩:オレフィン化合物の比として1:2から1:20程度を挙げることができる。ただし、後述するように、ランタノイドのアクア錯体からなるオレフィン二量化触媒はオレフィン化合物を触媒的に光二量化させるので、ランタノイドの塩及びオレフィン化合物のモル比は任意でよい。
(2)粉末混合法
粉末混合法は、ランタノイドの塩及びオレフィン化合物の固体を、少量の水分の存在下で混合する方法である。ランタノイドの塩は、混合物に含まれる少量の水分によってアクア錯体となり、次いでこの混合物中で、アクア錯体とオレフィン化合物との間で水素結合による超分子錯体が形成される。
混合物に添加する水分の量は、アクア錯体に含まれることになる水分子の個数に基づいて、必要とされる当量数以上であればよい。例えば、Yb3+の塩を使用する場合、8個の水分子がYb3+に結合して[Yb(OH3+というアクア錯体を形成することになるので、1モルのYb3+に対して8モルの水を添加すればよいことになる。
ランタノイドの塩及びオレフィン化合物を混合させる方法としては、公知の方法を特に制限なく使用することができる。このような方法の一例としては、ランタノイドの塩、オレフィン化合物及び少量の水分を乳鉢に入れ、これらをすり潰して混合させる方法が挙げられる。ランタノイドの塩は、混合される過程で、混合物に含まれる水分によってアクア錯体となり、次いでこの混合物中で、アクア錯体とオレフィン化合物との間で水素結合による超分子錯体が形成される。なお、ランタノイドの塩については既に説明した通りであるので、ここでの説明を省略する。
混合物中におけるランタノイドの塩及びオレフィン化合物のモル比は、特に限定されないが、一例としてランタノイドの塩:オレフィン化合物の比として1:2から1:20程度を挙げることができる。
(3)静置法
静置法は、水分を含んだ空気の存在下で、ランタノイドの塩及びオレフィン化合物の粉末混合物を保管する方法である。ランタノイドの塩は、空気に含まれる水分によって徐々にアクア錯体となり、次いで粉末混合物中で、アクア錯体とオレフィン化合物との間で水素結合による超分子錯体が形成される。
このような方法の一例としては、密閉可能な容器の内部にランタノイドの塩及びオレフィン化合物の粉末混合物を加え、次いで当該容器の内部に、水分を含んだ空気を加えて密閉放置する方法が挙げられる。なお、放置中に、密閉容器を振とうすることにより内部を混合させてもよい。
粉末混合物に含まれるランタノイドの塩は、放置されている間に、空気中に含まれる水分によってアクア錯体となり、次いでこの粉末混合物中で、アクア錯体とオレフィン化合物との間で水素結合による超分子錯体が形成される。なお、ランタノイドの塩については既に説明した通りであるので、ここでの説明を省略する。
粉末混合物中におけるランタノイドの塩及びオレフィン化合物のモル比は、特に限定されないが、一例として、ランタノイドの塩:オレフィン化合物の比として1:2から1:20程度を挙げることができる。
上記のような手順で調製された溶液又は混合物の内部では、ランタノイドのアクア錯体とオレフィン化合物との間で水素結合による超分子錯体が形成される。こうして形成された超分子錯体に紫外線を照射することにより、オレフィン化合物同士が光二量化してシクロブタン化合物となる。照射する紫外線の波長は、オレフィン化合物が吸収することのできるものであることが必要であるので、オレフィン化合物の種類に合わせて適宜選択すればよい。このような紫外線の波長の一例としては254nmや365nm等が挙げられる。また、紫外線を照射する時間については、残留するオレフィン化合物の有無をH−NMR等の測定手段により監視しながら適宜決定すればよいが、一例として、30秒〜30分間程度を挙げることができる。
既に説明したように、形成された超分子錯体の内部ではオレフィン化合物同士がπ−πスタックを形成し、このπ−πスタックを形成した一対のオレフィン化合物に紫外線が照射されることにより光二量化反応が生じる。そして、この超分子錯体は、オレフィン化合物が水素結合可能な置換基を2以上備えることにより、オレフィン化合物による橋掛け構造を有することとなる。こうした橋掛け構造は、オレフィン化合物同士のπ−πスタックの形成を助けるものである。また、オレフィン化合物は、そのような橋掛け構造が形成されたときに、図2(a)及び(b)に示すように、オレフィン化合物同士のπ−πスタックが形成されるような位置に二重結合が配置されるべく、水素結合可能な置換基を適切な位置に備えるものであることが望ましい。
このような観点からは、本発明のシクロブタン化合物の製造方法においては、オレフィン化合物が、水素結合可能な置換基を2以上備え、2以上のアクア錯体と水素結合で橋掛けすることにより超分子錯体を形成でき、かつ、当該超分子錯体に含まれる2以上のオレフィン化合物を一対としたときに、これら一対のオレフィン化合物に含まれる一対の二重結合がπ−πスタックを形成可能となるように、水素結合可能な置換基を備えることが好ましい。
なお、上述で例示した4,4’−bpeのように対称な構造を備えたオレフィン化合物は、水素結合可能な置換基を適切な位置に備えたオレフィン化合物の一形態といえる。
[オレフィン化合物の二量化反応実行方法]
ランタノイドのアクア錯体と、水素原子に対して水素結合可能な置換基を備えたオレフィン化合物と、を含む溶液又は混合物に紫外線を照射し、当該溶液又は混合物中で上記オレフィン化合物同士を光二量化させてシクロブタン環を形成させることを特徴とするオレフィン化合物の二量化反応実行方法も本発明の一つである。これについては、上述のオレフィン二量化触媒及びシクロブタン化合物の製造方法にて既に説明したので、ここでの説明を割愛する。
上記オレフィン化合物の二量化反応実行方法において、上記オレフィン化合物は、水素結合可能な置換基を2以上備え、2以上のアクア錯体を水素結合で橋掛けすることにより超分子錯体を形成でき、かつ、当該超分子錯体に含まれる二分子のオレフィン化合物を一対としたときに、これら一対のオレフィン化合物に含まれる一対の二重結合がπ−πスタックを形成可能となるように上記置換基を備えることが好ましい。これについても、上述のオレフィン二量化触媒及びシクロブタン化合物の製造方法にて既に説明したので、ここでの説明を割愛する。
以下、実施例を示すことにより、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものでない。
[実施例1]結晶中におけるオレフィンの光二量化反応
Yb(CFSO(35.5mg,57.2μmol)を溶解させた10mLの蒸留水をガラス製の筒状容器(直径25mm)に加え、その液面に、アセトニトリル1mL、及びtrans−4,4’−bpeを溶解させたアセトニトリル:水=1:1(v/v)溶液10mLをこの順で静かに加え、層を形成させた。その後、容器を室温で2週間放置したところ、容器の壁面に無色の柱状晶である単結晶Aが析出したのでこれを回収した。得られた単結晶AのX線結晶構造解析を行った結果、図2(a)及び(b)に示す分子構造図を得た。得られた分子構造図から、Ybイオンに8個の水分子が酸素原子を介して配位して[Yb(OH3+錯イオンが形成され、trans−4,4’−bpeが錯イオン同士を架橋するように配位して超分子錯体を形成していることがわかった。
得られた超分子錯体の単結晶Aに室温で紫外線(365nm)を照射して光二量化反応を実施した。この際、30秒間の紫外線の照射後、結晶のひずみを解消するための緩和時間として30分間放置することを繰り返し行ったところ、3分間の紫外線の照射により、単結晶Aが透明性を維持したまま赤橙色に変化した。この操作で得られた単結晶を単結晶Bとした。単結晶BのX線結晶構造解析を行った結果、図3に示す分子構造図を得た。図3に示すように、2分子のtrans−4,4’−bpeが光二量化反応によりシクロブタン環を形成し、テトラキス(4−ピリジル)シクロブタン(4,4’−tpcb)のrctt異性体が単結晶Bの中に形成されていた。
H−NMRの測定により、上記光二量化反応を定量的な側面から検証した。図4は、単結晶Aの紫外線照射前後でのCDCN溶液におけるH−NMRの測定結果である。単結晶Aでは、図4のaに示すように、trans−4,4’−bpeのピリジン環に由来する2本のピーク(δ=8.49ppm(d,4H)及び7.56ppm(d,4H))と、オレフィンプロトンに由来する1本のピーク(δ=7.41ppm(s,2H))との合計3つのピークのみが観察された。次に、単結晶Aを乳鉢ですり潰して結晶の表面積を大きくした後にこれを撹拌しながら紫外線(365nm)を5分間照射し、H−NMRを測定した。その結果、図4のbに示すように、4,4’−tpcbのシクロブチル環プロトンに由来するピークがδ=4.64ppmに観察され、ピリジン環に由来するピークがδ=8.25ppm及び7.19ppmに観察された。図4における各ピークの積分値の比から、H+H/H+H/H+Hを算出したところ、2:2:1との結果が得られた。このことから、光二量化反応において生成された副生成物は、皆無か極微量であることがわかった。
[実施例2]溶液中におけるオレフィンの光二量化反応
Yb(CFSO・xHO及びtrans−4,4’−bpeをモル比1:8(2.40μmol:19.2μmol)にて9mLのスクリュー管に量り取り、これらをDO:CDCN=1:1(v/v)の混合重溶媒0.4mLに溶解させた後、得られた溶液を基準物質(2,5−ヘキサンジオン)とともにNMRチューブに入れた。その後、溶液の入ったNMRチューブを遮光かつ温度が室温に保たれたインキュベーター内に収容し、紫外線(365nm)を連続照射した。そして、紫外線照射開始から0、30、80、120、240、360、420、480及び550分後にH−NMRを測定し、生成物の定量を行った。その結果を図5に示す。図5は、Yb(CFSO・xHO及びtrans−4,4’−bpeのDO:CDCN=1:1(v/v)溶液に紫外線を照射した際の時間経過に対する各生成物の存在割合を示すグラフであり、横軸が紫外線の照射時間を表し、縦軸が各生成物の存在割合を表す。
上記溶液中には水分(重水)が含まれるので、添加されたYb(CFSO・xHOは、速やかにYbのアクア錯体に転化されていると考えられる。図5を参照すると、紫外線照射開始前(すなわち0分)では原料として添加されたtrans−4,4’−bpeの存在率が100%だったものの、紫外線の照射時間が増加するとともに、trans−4,4’−bpeが減少し、生成物であるrctt−4,4’−tpcbが増加していることがわかる。溶液中にYbのアクア錯体が存在しない場合にはこのようなtrans−4,4’−tpcbの速やかな増加が観察されないので、Ybのアクア錯体がtrans−4,4’−bpeの光二量化を促進していることがわかった。なお、図5では、紫外線の照射時間が増加するのに伴って、原料であるtrans−4,4’−bpeの立体異性体であるcis−4,4’−bpeが増加しているが、trans−4,4’−bpeのみの溶液に紫外線を照射してもcis体への異性化が観察されなかったことから、これは紫外線照射によるtrans−4,4’−bpeのcis体への異性化ではなく、生成したrctt−4,4’−tpcbのシクロブチル環がメタセシス反応により熱的に開裂して生成したと考えられる。つまり、紫外線の照射時間の増加とともに増加しているcis−4,4’−bpeは、目的の生成物であるrctt−4,4’−tpcbとして合算することが可能といえる。なお、生成したcis−4,4’−bpeは、二重結合を有する化合物であるが、光二量化反応を生じなかった。これは、cis−4,4’−bpeが、立体障害のためにYbのアクア錯体の適切な位置に結合することができないためと推察される。
図5に示すように、原料であるtrans−4,4’−bpeの残量が20%を下回ったとき(420分経過時)に8当量のtrans−4,4’−bpeを追加した。すると、再びtrans−4,4’−bpeからrctt−4,4’−tpcbへの転化が促進された。このことは、Ybのアクア錯体が触媒的にtrans−4,4’−bpeからrctt−4,4’−tpcbへの光二量化反応を助けていることを示している。具体的には、Ybのアクア錯体に結合したtrans−4,4’−bpeが光二量化反応によってrctt−4,4’−tpcbに転化された後、生成したrctt−4,4’−tpcbがYbのアクア錯体から遊離し、再び、別のtrans−4,4’−bpeがYbのアクア錯体に結合して光二量化反応を受けていると考えられる。
以上の結果から、Ybのアクア錯体が4,4’−bpeの光二量化反応において溶液中での触媒作用を備えると理解できる。
[実施例3]粉末中におけるオレフィンの光二量化反応
メノウ乳鉢を用いて、Yb(CFSO・xHO(0.05mmol)を1分間すり潰した後、これにtrans−4,4’−bpe(0.375mmol)を加えて1分間すり潰し、その後さらにHOを50μL加えて3分間すり潰した。得られた混合物に紫外線(365nm)を照射し、trans−4,4’−bpeの光二量化反応生成物であるrctt−4,4’−tpcbの紫外線照射時間の増加に伴う生成量の変化をH−NMR測定により求めた。その結果を図6に示す。図6は、Yb(CFSO・xHO、trans−4,4’−bpe及び水(HO)の粉末混合物に紫外線を照射した際の紫外線照射時間に対するrctt−4,4’−tpcbの生成量を示すグラフであり、横軸が紫外線の照射時間を表し、縦軸がrctt−4,4’−tpcbの生成比率(%)を表す。なお、「rctt−4,4’−tpcbの生成比率(%)」とは、最初に添加したtrans−4,4’−bpeの量を100%としたときに、そのうちの何%のtrans−4,4’−bpeが反応して生成物となったのかを表すものである。
図6に示すように、粉末である混合物に紫外線を照射すると、紫外線の照射時間の増加とともに当該混合物中におけるrctt−4,4’−tpcbの量が増加した。rctt−4,4’−tpcbはtrans−4,4’−bpeの光二量化生成物であるので、粉末中であっても、Ybのアクア錯体とtrans−4,4’−bpeとの超分子錯体が形成され、trans−4,4’−bpeの光二量化反応が促進されたことがわかった。
以上の結果から、本発明のオレフィン二量化触媒を使用することにより、結晶中のみならず、溶液中や粉末中であってもオレフィン化合物の光二量化反応を促進できることがわかる。なお、本発明のオレフィン二量化触媒は、溶液中や粉末中であってもオレフィンの光二量化反応を促進させるものであるが、オレフィン化合物とともに単結晶又は結晶を調製し、その単結晶又は結晶中でオレフィン化合物を光二量化反応させることに用いてもよい。
1a ランタノイド
1b 遷移金属元素
2 水分子
3 水素原子に対して水素結合可能な置換基を備えたオレフィン化合物
31 水素原子に対して水素結合可能な置換基
4 π−πスタック

Claims (7)

  1. ランタノイドのアクア錯体からなり、水素原子に対して水素結合可能な置換基を備えたオレフィン化合物同士を紫外線の照射下で光二量化させるオレフィン二量化触媒。
  2. 前記オレフィン化合物が、水素原子に対して水素結合可能な置換基を2以上備えたものであることを特徴とする請求項1記載のオレフィン二量化触媒。
  3. 前記2以上の水素結合可能な置換基のうちの少なくとも2つの置換基の間となる位置にオレフィン化合物の二重結合が存在し、これら2つの置換基はオレフィン化合物の外方に向けて水素結合可能であることを特徴とする請求項2記載のオレフィン二量化触媒。
  4. ランタノイドのアクア錯体と、水素原子に対して水素結合可能な置換基を備えたオレフィン化合物と、を含む溶液又は混合物に紫外線を照射し、前記溶液又は混合物中で前記オレフィン化合物同士を光二量化させてシクロブタン環を形成させることを特徴とするシクロブタン化合物の製造方法。
  5. 前記オレフィン化合物は、前記水素結合可能な置換基を2以上備え、2以上の前記アクア錯体を水素結合で橋掛けすることにより超分子錯体を形成でき、かつ、前記超分子錯体に含まれる二分子の前記オレフィン化合物を一対としたときに、これら一対のオレフィン化合物に含まれる一対の二重結合がπ−πスタックを形成可能となるように前記置換基を備えることを特徴とする、請求項4記載のシクロブタン化合物の製造方法。
  6. ランタノイドのアクア錯体と、水素原子に対して水素結合可能な置換基を備えたオレフィン化合物と、を含む溶液又は混合物に紫外線を照射し、前記溶液又は混合物中で前記オレフィン化合物同士を光二量化させてシクロブタン環を形成させることを特徴とするオレフィン化合物の二量化反応実行方法。
  7. 前記オレフィン化合物は、前記水素結合可能な置換基を2以上備え、2以上の前記アクア錯体を水素結合で橋掛けすることにより超分子錯体を形成でき、かつ、前記超分子錯体に含まれる二分子の前記オレフィン化合物を一対としたときに、これら一対のオレフィン化合物に含まれる一対の二重結合がπ−πスタックを形成可能となるように前記置換基を備えることを特徴とする、請求項6記載のオレフィン化合物の二量化反応実行方法。
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