JP2013172689A - 脳梗塞後運動機能障害モデル動物及びその使用並びに運動機能回復に対する新規治療法の有効性のスクリーニング方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】脳梗塞後運動機能障害の治療法の確立、薬剤の効果判定や有効性の評価に必須のツールである脳梗塞後運動機能障害モデル動物を提供する。
【解決手段】CB-17マウスにおいて、中大脳動脈から分岐する線条体動脈の一部が閉塞されるように中大脳動脈を結紮する。結紮箇所は、中大脳動脈における嗅索との交差部である。この脳梗塞後運動機能障害モデル動物に、神経幹細胞並びに血管形成能、血管保護能及び炎症抑制作用を有する細胞からなる群から選ばれる1種以上の細胞を移植、あるいは薬剤を投与し、運動機能障害発症後の運動機能の回復に対する有効性をスクリーニングすることができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、脳梗塞後の運動機能障害に関して、長期生存率を有すると共に、慢性期までの運動機能障害を有し、更には良好な再現性を有する脳梗塞後運動機能障害モデル動物、及び、その使用方法に関する。また、運動機能回復に対する新規治療法の有効性のスクリーニング方法に関する。
脳梗塞は、脳血管障害の約7割を占めており、脳血管の閉塞により、血液を通じて脳細胞に酸素やグルコース等を運ぶことができなくなるため、脳が損傷を受ける病気である。脳梗塞の症状には、運動機能障害、感覚障害、言語障害、嚥下障害、失行、失認等の様々な症状があるが、このうち最も頻度の高いのが運動機能障害であり、しかもこの運動機能障害は日常生活動作(ADL)及び生活の質(QOL)に深刻な影響を与える。
脳梗塞後の運動機能障害に対する治療には、主として脳梗塞によって失われた機能の回復を図るためのリハビリテーションがあるが、このリハビリテーションは長期にわたり継続して行う必要があり、更には長期間にわたる周囲のサポートも必要となるため、日常生活の自立及び早期社会復帰は簡単なものではない。そのため、脳梗塞後の運動機能障害に対する有効な治療法及び予防法の開発が切望されるが、まずはその前提として、脳梗塞後運動機能障害の治療法の確立、薬剤の効果判定や有効性の評価等に必須のツールである脳梗塞後運動機能障害モデル動物の開発が必要不可欠となる。
例えば、犬、猫、豚等の大動物、猿等の霊長類等を使った脳梗塞モデル動物が提案されているが、これらの動物では、実験が大がかりになりがちであるだけではなく、脳梗塞作成による運動麻痺の程度も個体間のバラつきが大きいため、新規治療法や候補薬剤の一次評価には不適である。
マウスやラット、砂ネズミ等の齧歯類動物は扱いやすい実験動物であり、例えばクリップ等でラットの中大脳動脈を閉塞するいわゆる田村モデルでは、梗塞範囲に一定の再現性があるとされている。しかしながら、動物が長期間生存することができず継続性に問題があり、薬剤の慢性期に与える効果につき有効な実験を継続して行うことが難しい。
SCID(Severe Combined Immunodeficient)マウスは、その名が示すように液性免疫と細胞性免疫の機能的不全が見られるマウスである。SCIDマウスは、メルビン(Melvin Bosma)らによって1980年にCB-17系統マウスで発見された自然発症の突然変異体で、定染色体劣性の遺伝様式をとっているとされている。このマウスは梢血中の機能的なT細胞及びB細胞が欠失し、血清中には免疫グロブリンはほとんど見出されず、重度複合免疫不全を呈する。従って、異種細胞、組織の移植に対する拒絶が少なく、ヒトの正常造血細胞ですら移植可能であることが報告されている。
特許文献1には、SCIDマウスにおいて、中大脳動脈が嗅索を通過した後の部位を結紮する脳梗塞モデルマウスが記載されており、良好な再現性のみならず、長期生存をも可能としている。また、非特許文献1にも良好な再現性及び長期生存を可能とする脳梗塞モデルCB-17マウスが記載されている。これらの脳梗塞モデルマウスによれば、脳梗塞に対する薬剤の有効性試験を再現性よく長期継続して行うことが可能となる。
特許4481706号
Taguchi et al. J. Exp. Stroke Transl. Med. (2010) 3: 28-3 Taguchi et al. J. Clin. Invest. (2004) 114:330-338 Saino et al. J. Neurosci. Res. (2010) 88:2385-2397.
しかし、上述の脳梗塞モデルマウスでは、非特許文献2及び非特許文献3に記載されているように、脳梗塞後の運動機能障害が観察されない。これでは脳梗塞後運動機能障害の治療法の確立等のツールとしてのモデル動物として使用できない。モデル動物における脳梗塞後の運動機能障害の残存は、食物摂取不良による衰弱・易感染性を容易に惹起し、そのため長期生存率を著しく損なうことが知られており、“慢性期までの運動機能障害の残存”と“長期生存”とは互いに相反する2つの要素であるといえる。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、従来のモデル動物にはなかった長期生存率、慢性期までの運動機能障害残存、及び良好な再現性の全ての要素を充足し、脳梗塞後運動機能障害の治療法の確立、薬剤の効果判定や有効性の評価に必須のツールである脳梗塞後運動機能障害モデル動物、及びその使用を提供することを目的とする。また、運動機能回復に対する新規治療法の有効性のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
本発明にかかる脳梗塞後運動機能障害モデル動物は、CB-17マウスにおいて、中大脳動脈から分岐する線条体動脈の一部が閉塞されるように前記中大脳動脈を結紮してなる。
また、本発明にかかる脳梗塞後運動機能障害モデル動物は、SCIDマウスにおいて、中大脳動脈から分岐する線条体動脈の一部が閉塞されるように前記中大脳動脈を結紮してなる。
また、本発明は、中大脳動脈における嗅索との交差部を結紮してなるCB-17マウスの脳梗塞後運動機能障害モデル動物としての使用に関する。
また、本発明は、中大脳動脈における嗅索との交差部を結紮してなるSCIDマウスの脳梗塞後運動機能障害モデル動物としての使用に関する。
また、本発明にかかるスクリーニング方法は、上記の脳梗後運動機能障害モデル動物に、運動機能障害発症後に神経幹細胞並びに血管形成能、血管保護能及び炎症抑制作用を有する細胞からなる群から選ばれる1種以上の細胞を移植し、当該移植による運動機能障害発症後の運動機能の回復に対する有効性をスクリーニングする。
また、本発明にかかるスクリーニング方法は、上記の脳梗後運動機能障害モデル動物に、運動機能障害発症後に神経幹細胞並びに血管形成能、血管保護能及び炎症抑制作用を有する細胞からなる群から選ばれる1種以上の細胞及び薬剤を移植及び投与し、当該移植及び投与による運動機能障害発症後の運動機能の回復に対する有効性をスクリーニングする。
また、本発明にかかるスクリーニング方法は、上記の脳梗後運動機能障害モデル動物に、運動機能障害発症後に1種以上の薬剤を投与し、当該投与による運動機能障害発症後の運動機能の回復に対する有効性をスクリーニングする。
本発明によれば、良好な再現性のみならず、長期生存率及び慢性期までの運動機能障害残存の要素を充足した脳梗塞後運動機能障害モデル動物が得られる。そのため、脳梗塞後運動機能障害の治療法の確立、薬剤の効果判定や有効性の評価に使用できるツールが得られる。本発明は、運動機能障害のメカニズムの解明手段に適しているだけでなく、薬剤(脳保護薬、抗血小板剤、抗浮腫剤、脳循環改善剤、高脂血症治療薬、高血圧治療薬、痴呆治療薬等、脳血管障害及び血管性痴呆の治療、脳血管保護を目的に使用される薬剤)の評価系としても極めて有効である。本発明の脳梗塞後運動機能障害モデル動物を用いることにより、脳梗塞後運動機能障害の治療薬だけでなく、脳梗塞後の脳機能の回復に有効な薬剤を簡便にスクリーニングすることが可能となる。更に、本発明の脳梗塞後運動機能障害モデル動物は、脳神経機能再生のメカニズムの解明手段に適しており、脳神経機能再生に必要な神経幹細胞や血管形成細胞等の成熟脳における動態を解明することも可能となるだけでなく、これらの細胞の移植による有効性を簡便にスクリーニングすることができる。本発明の脳梗塞後運動機能障害モデル動物を用いることにより、脳梗塞に関連する各種の研究や開発において、使用される実験動物の数を最小限にとどめることができ、動物愛護の観点からも推奨される実験モデル動物である。脳梗塞後運動機能障害からの早期社会復帰は決して簡単ではない。だからこそ、脳梗塞後運動機能障害の治療法の確立の前提となるモデル動物が切望されているのであり、本発明によれば、このモデル動物を使用して脳梗塞後運動機能障害の治療法の確立及び薬剤の効果判定が可能となるので、早期社会復帰、重症化予防及び個別化医療が実現され、患者のQOLを大きく向上させることができる。また患者自身のみならず患者家族に対しても肉体的・精神的・経済的負担を軽減させ、本発明により得られる社会的利益は計り知れない。
中大脳動脈と嗅索との交差部の近傍を説明する模式図である。 中大脳動脈と嗅索との交差部における結紮箇所を説明する模式図である。 中大脳動脈と嗅索との交差部から心臓近位側における結紮箇所を説明する模式図である。 マウス頭蓋骨脳底部に穴を開けて硬膜を除去する施術を説明する模式図である。 マウス頭蓋骨脳底部近傍の解剖学的な概略図である。
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
本発明者らは、鋭意研究の結果、CB-17マウス及びSCIDマウスにおいて、中大脳動脈から分岐する線条体動脈の一部が閉塞されるように中大脳動脈を結紮することにより、良好な再現性のみならず、長期生存率及び慢性期までの運動機能障害残存の要素を充足した脳梗塞後運動機能障害モデル動物が得られることを見いだし、この新知見に基づいて本発明を完成させた。ここで長期生存率とは、脳梗塞発症から60日後において生存率50%以上の場合を意味する。また、慢性期までの運動機能障害残存とは、脳梗塞発症から60日後において運動機能障害の発生が50%以上の場合を意味する。また、良好な再現性とは、脳梗塞発症により50%以上運動機能障害が発生する場合を意味する。
図1は、中大脳動脈と嗅索との交差部の近傍の模式図である。図1に示されるように、中大脳動脈から分岐する線条体動脈は、中大脳動脈から分岐して線条体へ血流を送る複数の動脈であり、線条体を潅流する穿通枝小血管群である。線条体動脈は主として3本の動脈からなり、図示されていないが、これら以外にも複数の微細な血管を有する。
図2は、中大脳動脈と嗅索との交差部における結紮箇所を示す模式図である。図2に示されるように、本実施形態においては、中大脳動脈における嗅索との交差部を結紮する。これにより、中大脳動脈から分岐する線条体動脈の一部が閉塞される。
CB17マウス及びSCIDマウスの脳の血管を結紮する手法としては、脳梗塞が発症できる閉塞方法で有れば特に制限はなく、例えば、クリップ法、血管の凝固・切断法、血管内栓子法等の各種の手法を使用することができる。虚血を一過性にするか、永久的にするかにより、結紮方法を選定することも必要である。例えば、凝固用ピンセットにて電気凝固後に切断する永久結紮法、動脈瑠結紮用クリップを用いた一過性閉塞法等が挙げられる。
具体的な結紮方法としては、例えば、ハロセン等でマウスを麻酔し、マウスの左頬骨を切除し、頭蓋底を露出させ、中大脳動脈走行部位に直径1〜1.5mm程度の骨窓を歯科用ドリルで作成し、硬膜、クモ膜を剥離し、中大脳動脈を分離して結紮を行うことができる。
SCIDマウスとしては、末梢血中の機能的なT細胞及びB細胞が欠失し、血清中には免疫グロブリンはほとんど見出されない重度の複合免疫不全を呈するマウスであればよく、現在市販されている(例えば、FOX Chase Cancer Center等参照のこと)SCIDマウスであってもよいし、また、この改良型のマウスであってもよい。
図3は、中大脳動脈と嗅索との交差部から心臓近位側における結紮箇所を示す模式図である。図3に示されるように、中大脳動脈における嗅索との交差部から0.5mm以内の心臓近位側を結紮することも可能であり、これによっても中大脳動脈から分岐する線条体動脈の一部が閉塞される。
本発明の脳梗塞後運動機能障害モデル動物は、CB17マウス及びSCIDマウスにおいて前述のように中大脳動脈を結紮させることにより、一過性又は永久的モデルとして製造することができる。
また、本実施形態においては、脳梗塞後運動機能障害が生じたCB17マウス及びSCIDマウスを、脳梗塞後運動機能障害モデル動物として使用する方法が提供され、具体的には、脳梗塞運動機能障害のモデル動物として薬剤のスクリーニング、治療や予防方法の開発、また脳梗塞後の脳機能の回復方法の開発等のために使用することができる。
また、本実施形態にかかる脳梗塞後運動機能障害モデル動物に、脳梗塞発症後に神経幹細胞並びに血管形成能、血管保護能及び炎症抑制作用を有する細胞からなる群から選ばれる1種以上の細胞を移植し、当該移植による脳梗塞発症後の脳機能の回復に対する有効性をスクリーニングすることが可能である。スクリーニング方法としては、例えば、本発明の脳梗塞後運動機能障害モデル動物に神経幹細胞を移植し、カーボンブラック灌流法、脳の大きさの測定、MRI等による機器分析等により脳梗塞の病巣部の大きさや容積の変化、形態学的検討(左右大脳皮質幅の比、TUNEL染色によるアポトーシスの程度、BrdU標識による再生神経や再生血管内皮細胞数)、行動テスト(three-point modified scaleテスト、オープンフィールドテストや驚愕反射)等を測定し、これを対照群と比較して梗塞病巣部の拡大の阻止、運動機能の回復等の程度を評価し、移植すべき神経幹細胞の種類や移植部位や移植手法をスクリーニングする方法が挙げられる。
スクリーニング方法において使用される神経幹細胞としては、胎児脳由来の神経幹細胞、成熟脳由来の神経幹細胞、成熟脳の脳室下帯組織(subventricular zone;SVZ)由来の神経幹細胞、骨髄成体多能性幹細胞(multipotent adult progenitor cell:MAPC)、ES/iPS由来神経幹細胞等が挙げられる。また、血管形成能を有する細胞としては、血管内皮前駆細胞(EPC)等が挙げられる。更に、血管保護能を有する細胞として、骨髄単核球細胞、CD34陽性細胞、造血系幹細胞等が挙げられる。炎症抑制作用を有する細胞として、間葉系幹細胞等が挙げられる。
このような神経幹細胞や血管形成能、血管保護能、炎症抑制作用を有する細胞の移植は、これらの中の1種であってもよいし、2種以上を移植してもよく、またこれらの細胞はマウス由来のものであってもよいが、ヒト由来のものであっても良い。とりわけ、本発明の脳梗塞後運動機能障害モデル動物は免疫不全のマウスを含むものであることから、移植に対する拒絶反応が少なく、ヒト由来の神経幹細胞の移植による作用効果を評価するスクリーニング方法に適している。
〈実施例1〉
実施例1では、CB-17マウスを用いて、(i)嗅索との交差部より0.5mm近位側、(ii)嗅索との交差部、(iii)嗅索を通過した直後(嗅索交差部の遠位側)、における左中大脳動脈を閉塞し、中大脳動脈閉塞30日後、60日後及び180日後における生存率を検証した。なお、各群では10匹の実験動物を用い、30日以内に死亡した個体においては組織学的検討を行った。閉塞部位及び閉塞方法の詳細は以下のとおりである。
図4は、マウス頭蓋骨脳底部に穴を開けて硬膜を除去する施術を説明する図である。図4に示すように1.5%ハロセンの吸入麻酔下で、半右側臥位にマウスを固定した。左耳と左目の間の皮膚を切開後、左頬骨を切除し、頭蓋骨脳底部を露出させ、歯科用ドリルを用いて2mm程度の穴を頭蓋骨脳底部に開け、硬膜を慎重に除去した。そして、(i)嗅索との交差部より0.5mm近位側、(ii)嗅索との交差部、(iii)嗅索を通過した直後(嗅索交差部の遠位側)、においてそれぞれ左中大脳動脈を結紮した。解剖学的な概略は図5に示すとおりであり、図5は図4の四角で囲んだ部分を拡大して説明するものである。各群において中大脳動脈の結紮は、バイポーラ電気メスにより焼灼させた。その結果、各群における生存率は下記表1のとおりであった。
いずれの部位の閉塞においても、脳梗塞発症から60日後のみならず180日後においても生存率が50%以上であり、長期生存率を備えていることが確認された。なお、組織学的検討において、30日以前に死亡した個体では、脳梗塞の範囲が左中大脳動脈皮質枝の灌流する大脳皮質、及び左中大脳動脈穿通枝が灌流する線条体体積の過半に及んでおり、脳梗塞領域が大きすぎることにより、死亡したと考えられた。
〈実施例2〉
実施例2では、CB-17マウスを用いて、(i)嗅索との交差部より0.5mm近位側、(ii)嗅索との交差部、(iii)嗅索を通過した直後(嗅索交差部の遠位側)における左中大脳動脈を結紮し、中大脳動脈閉塞30日後、60日後及び180日後における運動機能を検証した。運動機能の評価は、three-point modified scaleテスト(非特許文献2,3)に基づいた。各群では10匹の実験動物を用いた。その結果、各群における運動機能の評価結果は下記表2のとおりであった。
ここで、各スコアにおいて、「スコア0:運動麻痺なし」、「スコアI:右足を完全に伸ばす
ことができない」、「スコアII:旋回運動をする」、「スコアIII:歩けない」である。
運動機能障害に関する検討より、(i)嗅索との交差部より0.5mm近位側、及び、(ii)嗅索との交差部において、脳梗塞発症から60日後のみならず180日においても、運動機能障害の発生が50%以上観察され、慢性期までの運動機能障害の残存がみられた。
また、(i)嗅索との交差部より0.5mm近位側、及び、(ii)嗅索との交差部において、脳梗塞発症により50%以上運動機能障害が発生しており、良好な再現性が確認された。(i)嗅索との交差部より0.5mm近位側では、30日後において、スコアIは2匹であり、スコアIIは3匹である。また、60日後において、スコアIは3匹であり、スコアIIは2匹である。一方、(ii)嗅索との交差部では、30日後において、スコアIは6匹であり、スコアIIは0匹である。また、60日後において、スコアIは6匹であり、スコアIIは0匹である。このように、(i)嗅索との交差部より0.5mm近位側よりも(ii)嗅索との交差部の方が、運動機能障害の態様のばらつきが少なく、(ii)嗅索との交差部は、(i)嗅索との交差部より0.5mm近位側よりも、運動機能障害の発現態様においても再現性が優れていることが示された。
また、(iii)嗅索を通過した直後(嗅索交差部の遠位側)では、30日後、60日後及び180日後においてスコア0が9匹であり、CB-17マウスにおいて脳血管閉塞30日後及び60日後において50%以上の運動麻痺モデルを得るためには、非特許文献1,3で示された“嗅索を通過した後の中大脳動脈閉塞”では不可能であり、より近位部の閉塞が必要であることが示された。
〈実施例3〉
実施例3では、SCIDマウスを用いて、(i)嗅索との交差部より0.5mm近位側、(ii)嗅索との交差部、(iii)嗅索を通過した直後(嗅索交差部の遠位側)、における左中大脳動脈を閉塞し、中大脳動脈閉塞30日後及び60日後における生存率を検証した。なお、各群では10匹の実験動物を用い、30日以内に死亡した個体においては組織学的検討を行った。閉塞部位及び閉塞方法の詳細は、上述の実施例1と同様に行った。その結果、各群における生存率は下記表3のとおりであった。
いずれの部位の閉塞においても、脳梗塞発症から60日後においても生存率が50%以上であり、長期生存率を備えていることが確認された。なお、組織学的検討において、30日以前に死亡した個体では、脳梗塞の範囲が左中大脳動脈皮質枝の灌流する大脳皮質、及び左中大脳動脈穿通枝が灌流する線条体体積の過半に及んでおり、脳梗塞領域が大きすぎることにより、死亡したと考えられた。
〈実施例4〉
実施例4では、SCIDマウスを用いて、(i)嗅索との交差部より0.5mm近位側、(ii)嗅索との交差部、(iii)嗅索を通過した直後(嗅索交差部の遠位側)における左中大脳動脈を結紮し、中大脳動脈閉塞30日後及び60日後における運動機能を検証した。運動機能の評価は、three-point modified scaleテストに基づいた。各群では10匹の実験動物を用いた。その結果、各群における運動機能の評価結果は下記表4のとおりであった。
運動機能障害に関する検討より、(i)嗅索との交差部より0.5mm近位側、及び、(ii)嗅索との交差部において、脳梗塞発症から60日後にて運動機能障害の発生が50%以上観察され、慢性期までの運動機能障害の残存がみられた。
また、(i)嗅索との交差部より0.5mm近位側、及び、(ii)嗅索との交差部において、脳梗塞発症により50%以上運動機能障害が発生しており、良好な再現性が確認された。
また、(iii)嗅索を通過した直後(嗅索交差部の遠位側)では、30日後及び60日後において全てがスコア0に該当し、SCIDマウスにおいても運動麻痺モデルを得るためには、“嗅索を通過した後の中大脳動脈閉塞”では不可能であることが示された。
〈実施例5〉
実施例5では、SCIDマウスを用いて、嗅索との交差部における左中大脳動脈を結紮し、既に大脳皮質機能における機能回復促進効果が示されている骨髄幹細胞(骨髄単核球細胞)を中大脳動脈閉塞2日後に尾静脈より投与した。脳梗塞30日後及び60日後における生存率及び運動機能障害回復作用を検証した。なお、コントロール投与群としてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)投与群を設定した。運動機能の評価はthree-point modified scaleテストに基づき、下記の評価を行った。各群では20匹の実験動物を用いた。その結果、各群における運動機能の評価結果は下記のとおりであった。表5は生存率を示し、表6は運動機能について示す。
骨髄幹細胞投与群においては、60日後の運動機能評価において、70%以上という高い生存率が示された。各群間の治療効果の差異を統計学的手法(カイ2乗検定)で行ったところ、有意差は0.01未満であった。本発明にかかる脳梗塞後運動機能障害モデル動物を使うことにより、高い精度で骨髄幹細胞投与による運動機能障害の改善効果の証明が可能であることが示された。
脳梗塞後運動機能障害に対して有効な治療・予防又は発症後の速やかな脳機能の回復方法を開発するための極めて有効なツールが提供されるので、製薬産業を始めとする各種の医療関連産業において有用である。

Claims (11)

  1. CB-17マウスにおいて、中大脳動脈から分岐する線条体動脈の一部が閉塞されるように前記中大脳動脈を結紮してなる脳梗塞後運動機能障害モデル動物。
  2. 前記結紮は、前記中大脳動脈における嗅索との交差部から0.5mm以内の心臓近位側の結紮である請求項1記載の脳梗塞後運動機能障害モデル動物。
  3. 前記結紮は、前記中大脳動脈における嗅索との交差部の結紮である請求項1又は2記載の脳梗塞後運動機能障害モデル動物。
  4. SCIDマウスにおいて、中大脳動脈から分岐する線条体動脈の一部が閉塞されるように前記中大脳動脈を結紮してなる脳梗塞後運動機能障害モデル動物。
  5. 前記結紮は、前記中大脳動脈における嗅索との交差部から0.5mm以内の心臓近位側の結紮である請求項4記載の脳梗塞後運動機能障害モデル動物。
  6. 前記結紮は、前記中大脳動脈における嗅索との交差部の結紮である請求項4又は5記載の脳梗塞後運動機能障害モデル動物。
  7. 中大脳動脈における嗅索との交差部を結紮してなるCB-17マウスの脳梗塞後運動機能障害モデル動物としての使用。
  8. 中大脳動脈における嗅索との交差部を結紮してなるSCIDマウスの脳梗塞後運動機能障害モデル動物としての使用。
  9. 請求項1乃至6の何れか1項に記載の脳梗後運動機能障害モデル動物に、運動機能障害発症後に神経幹細胞並びに血管形成能、血管保護能及び炎症抑制作用を有する細胞からなる群から選ばれる1種以上の細胞を移植し、当該移植による運動機能障害発症後の運動機能の回復に対する有効性をスクリーニングする方法。
  10. 請求項1乃至6の何れか1項に記載の脳梗後運動機能障害モデル動物に、運動機能障害発症後に神経幹細胞並びに血管形成能、血管保護能及び炎症抑制作用を有する細胞からなる群から選ばれる1種以上の細胞及び薬剤を移植及び投与し、当該移植及び投与による運動機能障害発症後の運動機能の回復に対する有効性をスクリーニングする方法。
  11. 請求項1乃至6の何れか1項に記載の脳梗後運動機能障害モデル動物に、運動機能障害発症後に1種以上の薬剤を投与し、当該投与による運動機能障害発症後の運動機能の回復に対する有効性をスクリーニングする方法。
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WO2021140773A1 (ja) * 2020-01-08 2021-07-15 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 身体機能回復促進剤

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CN112889746A (zh) * 2021-01-15 2021-06-04 首都医科大学宣武医院 一种多窦联合的脑静脉血栓动物模型及其构建方法
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