JP2013169291A - 表皮組織シミュレーション装置及び表皮組織シミュレーション方法 - Google Patents

表皮組織シミュレーション装置及び表皮組織シミュレーション方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2013169291A
JP2013169291A JP2012034246A JP2012034246A JP2013169291A JP 2013169291 A JP2013169291 A JP 2013169291A JP 2012034246 A JP2012034246 A JP 2012034246A JP 2012034246 A JP2012034246 A JP 2012034246A JP 2013169291 A JP2013169291 A JP 2013169291A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
model
keratinocyte
cell
cells
layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012034246A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5651617B2 (ja
Inventor
Katsuya Nagayama
勝也 永山
Kyoko Amano
恭子 天野
Masanori Tanahashi
昌則 棚橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kao Corp
Original Assignee
Kao Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kao Corp filed Critical Kao Corp
Priority to JP2012034246A priority Critical patent/JP5651617B2/ja
Publication of JP2013169291A publication Critical patent/JP2013169291A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5651617B2 publication Critical patent/JP5651617B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Measuring And Recording Apparatus For Diagnosis (AREA)
  • Management, Administration, Business Operations System, And Electronic Commerce (AREA)

Abstract

【課題】表皮組織の挙動を年齢などの実態に即して模擬する技術を提供する。
【解決手段】表皮組織シミュレーション装置は、取得された任意の分裂速度に応じて、有棘細胞を示す新たな角化細胞モデルを順次生成し、各角化細胞モデルの厚みを、各角化細胞モデルの細胞種別に応じた細胞厚の減少速度と各角化細胞モデルが生成されてからの経過時間とに応じてそれぞれ変化させ、各角化細胞モデルの厚み、又は、各角化細胞モデルの経過時間に基づいて、各角化細胞モデルの細胞種別を、有棘細胞、顆粒細胞、角層細胞の順にそれぞれ変化させ、角化細胞モデルのバリア性能の高さを示すバリア指数を角層細胞を示す全角化細胞モデルについて合計して得られるバリア指数総和が所定閾値を超えるか否かを判定し、対象の角化細胞モデルに関し細胞モデル情報記憶部に格納される情報を表皮組織から剥離された状態に設定する剥離設定部と、を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、表皮組織の挙動をシミュレーションする技術に関する。
表皮は、表面から真皮方向(内側)に向かって、角層、顆粒層、有棘層、基底層に区分けされる。表皮の一番底の層である基底層では、細胞分裂により順次角化細胞(ケラチノサイト)が生まれる。角化細胞は、新たな角化細胞により表面方向に徐々に押し上げられ、皮膚表面(角層の一番上)に到達し、垢やフケとして剥がれ落ちる。このような現象は、角化やターンオーバ(新陳代謝)と呼ばれる。ターンオーバにより移動する角化細胞は、その位置に応じて、基底細胞、有棘細胞、顆粒細胞、角層細胞とも呼ばれる。
このような表皮組織に関する特性をコンピュータで解析する様々な手法が提案されている。下記非特許文献1は、皮膚組織内の光の伝搬状況をシミュレーションする方法として、モンテカルロシミュレーション法を提案する。この手法では、皮膚組織を光伝搬特性の差異に基づく9層の多層構造モデルで定義し、各層に光学・幾何パラメータ値が設定され、メラニンの強調画像、ヘモグロビンの強調画像等が生成される。
下記非特許文献2は、コンピュータでシミュレーションされる表皮角化細胞に関する細胞分化プログラムにおいて、1つのパラメータ(TA細胞(Transit Amplifying cells)の分裂可能時間(τ))を変更することにより、健康な表皮を乾癬表皮の4つの主要な特性を持つものに変えることができることを示している。
相津佳永、「皮膚組織多層構造モデリングと光伝搬シミュレーション」、日本機械学会誌、2011.7、Vol.114、No.1112、page39 Niels Grabe and Karsten Neuber,"Simulating psoriasis by altering transit amplifying cells", BIOINFORMATICS, DISCOVERY NOTE, Vol.23 no.11, 2007, pages 1309-1312
しかしながら、上述の各文献で開示されるシミュレーション手法では、表皮組織の挙動が、年齢などの実態に即して模擬されていない。
上記非特許文献1で提案されているシミュレーション法は、表皮組織を形成する角化細胞の挙動を模擬しているわけではない。上記非特許文献2で提案されているシミュレーション法は、健康な表皮から乾癬表皮への変化を模擬しているものの、表皮組織の挙動を年齢などの実態に即した形で模擬できているわけではない。
表皮には、例えば、加齢に伴い、表皮自体がゆるやかに薄くなる、ターンオーバ速度が遅くなるといった実態がある。上述の各手法は、このような実態に即して、表皮組織の状態変化をシミュレートできていない。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、表皮組織の挙動を年齢などの実態に即して模擬する技術を提供する。
本発明の各態様では、上述した課題を解決するために、それぞれ以下の構成を採用する。
第1の態様は、角化細胞を表す角化細胞モデルを用いて表皮組織の挙動を模擬する表皮組織シミュレーション装置に関する。第1態様に係る表皮組織シミュレーション装置は、角化細胞の任意の分裂速度の情報を取得する速度取得部と、この速度取得部により取得された分裂速度に応じて、有棘細胞を示す新たな角化細胞モデルを順次生成する細胞モデル生成部と、この細胞モデル生成部により生成された各角化細胞モデルに関し、皮膚表面方向の厚み、生成されてからの経過時間、細胞種別及び位置をそれぞれ格納する細胞モデル情報記憶部と、細胞モデル情報記憶部に格納される各角化細胞モデルの厚みを、各角化細胞モデルの細胞種別に応じた細胞厚の減少速度と各角化細胞モデルが生成されてからの経過時間とに応じてそれぞれ変化させる形状変化部と、形状変化部により設定された各角化細胞モデルの厚み、又は、各角化細胞モデルの経過時間に基づいて、各角化細胞モデルの細胞種別を、有棘細胞、顆粒細胞、角層細胞の順にそれぞれ変化させる細胞種別設定部と、角化細胞モデルの厚みと負の相関を持ちかつ角化細胞モデルのバリア性能の高さを示すバリア指数を角層細胞を示す全角化細胞モデルについて合計して得られるバリア指数総和が所定閾値を超えるか否かを判定し、所定閾値を超えたと判定される場合に、発生からの経過時間が最も長い、又は、最上層にある角化細胞モデルに関し細胞モデル情報記憶部に格納される情報を表皮組織から剥離された状態に設定する剥離設定部と、を有する。
第2の態様は、角化細胞を表す角化細胞モデルを用いて表皮組織の挙動を模擬する表皮組織シミュレーション方法に関する。第2態様に係る表皮組織シミュレーション方法は、コンピュータが、角化細胞の任意の分裂速度の情報を取得し、取得された分裂速度に応じて、有棘細胞を示す新たな角化細胞モデルを順次生成し、生成された各角化細胞モデルに関し、皮膚表面方向の厚み、生成されてからの経過時間、細胞種別及び位置を細胞モデル情報記憶部にそれぞれ格納し、細胞モデル情報記憶部に格納される各角化細胞モデルの厚みを、各角化細胞モデルの細胞種別に応じた細胞厚の減少速度と各角化細胞モデルが生成されてからの経過時間とに応じてそれぞれ変化させ、設定された各角化細胞モデルの厚み、又は、各角化細胞モデルの経過時間に基づいて、各角化細胞モデルの細胞種別を、有棘細胞、顆粒細胞、角層細胞の順にそれぞれ変化させ、角化細胞モデルの厚みと負の相関を持ちかつ角化細胞モデルのバリア性能の高さを示すバリア指数を角層細胞を示す全角化細胞モデルについて合計して得られるバリア指数総和が所定閾値を超えるか否かを判定し、所定閾値を超えたと判定される場合に、発生からの経過時間が最も長い、又は、最上層にある角化細胞モデルに関し細胞モデル情報記憶部に格納される情報を前記表皮組織から剥離された状態に設定することを含む。
なお、本発明の他の態様として、上記第1態様に係る各構成をコンピュータに実現させるコンピュータプログラムであってもよいし、このようなプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体であってもよい。この記憶媒体は、非一時的な有形の媒体を含む。
上記各態様によれば、表皮組織の挙動を年齢などの実態に即して模擬する技術を提供することができる。
第1実施形態における表皮組織シミュレーション装置(シミュレータ)のハードウェア構成例を概念的に示す図である。 第1実施形態における表皮組織シミュレーション装置(シミュレータ)の処理構成例を概念的に示す図である。 表皮組織の解析モデルを示す図である。 メラニンの受け渡し範囲の例を示す図である。 第1実施形態における表皮組織シミュレーション装置(シミュレータ)の動作例を示すフローチャートである。 図5における各角化細胞モデルの遷移演算(S65)の詳細を示すフローチャートである。 第2実施形態における表皮組織シミュレーション装置(シミュレータ)の動作例を示すフローチャートである。 第3実施形態における表皮組織シミュレーション装置(シミュレータ)の処理構成例を概念的に示す図である。 第3実施形態における表皮組織シミュレーション装置(シミュレータ)の動作例を示すフローチャートである。 分裂速度の各サンプル値に対応する各層における角化細胞のパラメータ値の例を示す表である。 図10の例に対応する各層の目標値関数の例を示す図である。 肌色シミュレーションで用いられた解析領域を概念的に示す図である。 肌色シミュレーションの結果を示す皮膚表面画像を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に挙げる実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態の構成に限定されない。
本実施形態に係る表皮組織シミュレーション装置は、次のような構成により、角化細胞を表す角化細胞モデルを用いて表皮組織の挙動を模擬する。即ち、表皮組織シミュレーション装置は、角化細胞の任意の分裂速度の情報を取得する速度取得部と、この速度取得部により取得された分裂速度に応じて、有棘細胞を示す新たな角化細胞モデルを順次生成する細胞モデル生成部と、この細胞モデル生成部により生成された各角化細胞モデルに関し、皮膚表面方向の厚み、生成されてからの経過時間、細胞種別及び位置をそれぞれ格納する細胞モデル情報記憶部と、細胞モデル情報記憶部に格納される各角化細胞モデルの厚みを、各角化細胞モデルの細胞種別に応じた細胞厚の減少速度と各角化細胞モデルが生成されてからの経過時間とに応じてそれぞれ変化させる形状変化部と、形状変化部により設定された各角化細胞モデルの厚み、又は、各角化細胞モデルの経過時間に基づいて、各角化細胞モデルの細胞種別を、有棘細胞、顆粒細胞、角層細胞の順にそれぞれ変化させる細胞種別設定部と、角化細胞モデルの厚みと負の相関を持ちかつ角化細胞モデルのバリア性能の高さを示すバリア指数を角層細胞を示す全角化細胞モデルについて合計して得られるバリア指数総和が所定閾値を超えるか否かを判定し、所定閾値を超えたと判定される場合に、発生からの経過時間が最も長い、又は、最上層にある角化細胞モデルに関し細胞モデル情報記憶部に格納される情報を表皮組織から剥離された状態に設定する剥離設定部と、を有する。
また、本実施形態に係る表皮組織シミュレーション方法は、コンピュータにより実行される次のようなステップを含む。即ち、本表皮組織シミュレーション方法は、角化細胞の任意の分裂速度の情報を取得し、取得された分裂速度に応じて、有棘細胞を示す新たな角化細胞モデルを順次生成し、生成された各角化細胞モデルに関し、皮膚表面方向の厚み、生成されてからの経過時間、細胞種別及び位置を細胞モデル情報記憶部にそれぞれ格納し、細胞モデル情報記憶部に格納される各角化細胞モデルの厚みを、各角化細胞モデルの細胞種別に応じた細胞厚の減少速度と各角化細胞モデルが生成されてからの経過時間とに応じてそれぞれ変化させ、設定された各角化細胞モデルの厚み、又は、各角化細胞モデルの経過時間に基づいて、各角化細胞モデルの細胞種別を、有棘細胞、顆粒細胞、角層細胞の順にそれぞれ変化させ、角化細胞モデルの厚みと負の相関を持ちかつ角化細胞モデルのバリア性能の高さを示すバリア指数を角層細胞を示す全角化細胞モデルについて合計して得られるバリア指数総和が所定閾値を超えるか否かを判定し、所定閾値を超えたと判定される場合に、発生からの経過時間が最も長い、又は、最上層にある角化細胞モデルに関し細胞モデル情報記憶部に格納される情報を前記表皮組織から剥離された状態に設定することを含む。
ここで、角化細胞モデルとは、角化細胞を表すソフトウェアオブジェクトであり、このオブジェクトは、少なくとも、細胞種別、角化細胞の厚み(皮膚表面方向)、生成されてからの経過時間、角化細胞の表皮内位置といった情報を持つ。各オブジェクトは、オブジェクト指向ソフトウェアにおけるインスタンスとして生成されてもよいし、構造体により生成されてもよい。本実施形態は、このような角化細胞モデルのソフトウェアオブジェクト化の具体的手法を制限しない。
本実施形態では、角化細胞の任意の分裂速度に応じて、上述のような角化細胞モデルが順次生成される。このとき、生成される角化細胞モデルの細胞種別には有棘細胞を示す情報が設定される。ここで、ターンオーバ速度は加齢に応じて減少すること(参考文献1及び2参照)、表皮厚は加齢に応じて減少すること(参考文献3参照)が知られている。
参考文献1:Journal of Gerontologty, 38, pages 137-142, 1983
参考文献2:日皮会誌, 99, pages 999-1006, 1989
参考文献3:特開2006−385号公報
本実施形態では、このような表皮に関する既知の実態に対応するために、角化細胞の分裂速度(分裂頻度)というパラメータが設けられた。そして、本実施形態では、速度取得部及び細胞モデル生成部により、この分裂速度が加齢に伴い変化することを模擬可能とする。
角化細胞は、ターンオーバによる移動に伴い、その形が変化する。具体的には、角化細胞は、略球形で生まれ、表面方向に移動するに従って扁平化し、角層で薄い膜状となる。そこで、本実施形態では、形状変化部により、生成された角化細胞モデルの厚みが、当該経過時間と細胞種別に応じた減少速度とに応じて変えられ、細胞種別設定部により、角化細胞モデルの細胞種別が、その厚み、又は、経過時間に基づいて、有棘細胞、顆粒細胞、角層細胞の順に設定される。つまり、本実施形態においても、実態に即して、角化細胞モデルは、経過時間に伴って扁平化し、有棘細胞、顆粒細胞、角層細胞の順に遷移する。
角層には、角層細胞間を埋める細胞間脂質がある。角層は、この細胞間脂質などにより、皮膚表面からほこりや菌などの外部刺激が体内に入るのを防ぎ、体内の水分が体外に過剰に蒸散するのを防ぐ機能(以降、バリア機能、バリア性能などと表記する)を実現する。ところで、角層が持つこのバリア性能は、年齢に関わらず保たれる必要がある。一方、角層細胞の面積は加齢に伴い増大すること、表皮厚は加齢に伴い薄くなること(上記参考文献3参照)が知られているが、角層の層数は、年齢によらず不変であるとされている(上記参考文献1、下記参考文献4参照)。
参考文献4:Arch Dermatol Res, 291, pages 555-559, 1999
このような知見から、発明者らは、健常な皮膚においては、角層が持つバリア性能が、異なる条件下(角層細胞面積、細胞厚、細胞数など)においても一定に保たれていると想定し、このような角層が持つバリア性能の大きさを示すパラメータとしてバリア指数総和を設けた。本実施形態は、このような角層の実態を模擬するために、年齢に関わらずこのバリア指数総和を一定に保つように角化現象を模擬する。
具体的には、本実施形態では、角層細胞を示す全角化細胞モデルに基づいて角層における上記バリア指数総和が算出され、このバリア指数総和が所定閾値を超えた場合に、発生からの経過時間が最も長い、又は、最上層にある角化細胞モデルが表皮組織から剥離された状態に設定される。
ここで、上述における角層細胞面積、角層細胞の厚み、及び、角層の層数の知見から、角層の一の層に含まれる角層細胞の数、及び、各角層細胞面積と負の相関を持つとされる角層細胞の厚み(細胞間脂質を含む)は、加齢に伴い減少すると考えられる。一方で、バリア指数総和は一定である。これにより、各角層細胞が持つバリア性能が加齢に伴い増加すると考えられるため、本実施形態では、角層細胞を示す各角化細胞モデルにバリア性能の大きさを示すバリア指数をそれぞれ持たせ、このバリア指数が各角層細胞の厚み(細胞間脂質を含む)と負の相関を持つものと定義した。これにより、加齢に伴い角層細胞の面積が変化しても角層細胞1個あたりが持つバリア性能が向上することによって、角層全体のバリア機能が一定に保たれるという角層の実態を模擬することができる。
更に、本実施形態では、角層細胞を示す全角化細胞モデルのバリア指数の合計がバリア指数総和として算出される。
このように、本実施形態によれば、上述の角層に関する実態に即した角化現象を模擬することができる。一方、本実施形態のように角化現象を模擬しない場合、角化細胞の分裂速度が2倍になれば、角層厚は2倍になり、皮膚の実態に即さなくなる。それに対し、本実施形態によれば、角層のバリア指数総和を一定に保つように角化現象が模擬されるため、分裂速度が2倍になったとしても、角層厚は2倍にはならず、皮膚の実態に即した表皮組織の挙動を模擬することができる。
以下、上述の実施形態について更に詳細を説明する。
[第1実施形態]
〔装置構成〕
図1は、第1実施形態における表皮組織シミュレーション装置(以降、単にシミュレータとも表記する)10のハードウェア構成例を概念的に示す図である。第1実施形態におけるシミュレータ10は、いわゆるコンピュータであり、例えば、バス5で相互に接続される、CPU(Central Processing Unit)2、メモリ3、入出力インタフェース(I/F)4等を有する。メモリ3は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク、可搬型記憶媒体等である。
入出力I/F4は、入力部7、出力部9、ネットワーク(図示せず)を介して他のコンピュータと通信を行う通信装置等と接続される。入力部7は、キーボード、マウス等のようなユーザ操作の入力を受け付ける装置である。出力部9は、ディスプレイ装置やプリンタ等のようなユーザに情報を提供する装置である。なお、シミュレータ10のハードウェア構成は制限されない。
図2は、第1実施形態におけるシミュレータ10の処理構成例を概念的に示す図である。第1実施形態におけるシミュレータ10は、速度取得部20、初期形状生成部30、遷移演算部40、細胞モデル情報記憶部55、表皮組織描画部60、メラニン積算部64、肌色算出部66、肌色描画部68等を有する。これら各処理部は、例えば、CPU2によりメモリ3に格納されるプログラムが実行されることにより実現される。また、当該プログラムは、例えば、CD(Compact Disc)、メモリカード等のような可搬型記録媒体やネットワーク上の他のコンピュータから入出力I/F4を介してインストールされ、メモリ3に格納されてもよい。
速度取得部20は、角化細胞の分裂速度の情報を取得する。分裂速度の情報は、入力画面等に基づいて入力部7をユーザが操作することにより入力された情報であってもよいし、可搬型記録媒体、他のコンピュータ等から入出力I/F4を経由して取得された情報であってもよい。
初期形状生成部30は、計算空間生成部32、基底層生成部34等を有し、これら処理部の動作により解析モデルの初期状態を生成する。
計算空間生成部32は、解析モデルの計算空間を生成する。図3は、表皮組織の解析モデル70を示す図である。計算空間は、図3に示されるように、外側計算境界71及びモデル境界72で囲まれた空間である。なお、図3の例では、図3の紙面上方の境界が設けられていないが、紙面上方の境界が設けられてもよい。外側計算境界71は、真皮組織の表面形状(凹凸形状)を模擬する。
更に、計算空間生成部32は、境界条件を設定する。境界条件とは、後述する位置更新部45の処理により、角化細胞モデル(粒子)の位置が、外側計算境界71又はモデル境界72付近にある場合における、その角化細胞モデルの扱い方を意味する。具体的には、境界条件の一例として、外側計算境界71に位置する角化細胞モデルに対して、外側計算境界71の法線方向の外向きの荷重成分を打ち消す、又は、内向きに反転する旨、規定される。これにより、角化細胞モデルが外側計算境界71を超えて計算空間外に飛び出すことがなくなる。また、計算空間外に角化細胞モデルが飛び出すことを許容して、外側計算境界71を越えた角化細胞モデルは削除されるような境界条件が設定されてもよい。
解析モデル70の左右のモデル境界72は角化細胞モデルの流入及び流出を表す境界であり、表皮組織の境界ではない。そこで、モデル境界72に関する境界条件には、モデル境界72の左右一方を通過して計算空間外に至った角化細胞モデルは演算から削除せず、同形状および同サイズの条件で他方のモデル境界72から計算空間内に再配置することが規定される。これにより、広がりのある大きな皮膚のシミュレーションを、小さな計算空間および少ない粒子モデルで実現することができる。なお、モデル境界72に至った粒子に適用する境界条件を、外側計算境界71と共通としてもよい。
このような境界条件は予めメモリ3に格納されていてもよいし、入力部7から入力されてもよいし、他の装置から取得されてもよい。また、図3の例における解析モデル70では、真皮組織が下方、皮膚表面が上方に配置されている。以降の説明では、この解析モデル70に応じて、皮膚表面方向を上方、真皮組織方向を下方と表記する。なお、解析モデル70の方向は、このような方向に制限されない。
基底層生成部34は、外側計算境界71、即ち、真皮組織の表面に、基底細胞を示す角化細胞モデル(以降、基底細胞モデルとも表記する)、及び、色素細胞(メラノサイト)を示す色素細胞モデルを所定数配置する。具体的には、基底層生成部34は、基底細胞モデル及び色素細胞モデルに対応するソフトウェアオブジェクトを所定数生成する。これにより、生成された各基底細胞モデル及び各色素細胞モデルに対応するメモリ領域が細胞モデル情報記憶部55にそれぞれ確保される。なお、上述のとおり、細胞モデルのソフトウェアオブジェクト化の具体的手法はこのような手法に制限されない。図3の例によれば、基底細胞モデルは符号81で示され、色素細胞モデルは符号80で示される。
ここで、基底細胞モデルの細胞種別には、基底細胞を示す値が設定され、その形状及びサイズには、所定の半径又は所定の直径を有する球形を示す値(図3の符号90)が設定され、その位置には、外側計算境界71の表面を示す情報が設定される。同様に、色素細胞モデルの細胞種別には、色素細胞を示す値が設定される。なお、基底細胞モデルの数及び配置、並びに、色素細胞モデルの数及び配置は、予めメモリ3に格納されていてもよいし、入力部7から入力されてもよいし、他の装置から取得されてもよい。
細胞モデル情報記憶部55は、各角化細胞モデルに関し、細胞種別、重心位置、サイズ、形状、生成されてからの経過時間、メラニン情報等を格納する。細胞種別には、色素細胞、基底細胞、有棘細胞、顆粒細胞、角層細胞のいずれか1つを示す値が設定される。サイズには、角化細胞モデルの上下方向の厚みが少なくとも設定される。メラニン情報には、色素細胞モデルから付与されたメラニン量を示す値が設定される。
遷移演算部40は、細胞モデル情報記憶部55に格納される各角化細胞モデルの情報を更新することにより、各角化細胞モデルの状態遷移をそれぞれ模擬する。遷移演算部40は、角化細胞モデル生成部41、メラニン付与部42、メラニン量制御部43、形状変化部44、位置更新部45、目標値取得部46、細胞種別設定部47、経過時間計測部48、剥離設定部49等を有し、これら各処理部により、各角化細胞モデルの状態遷移を演算する。
角化細胞モデル生成部41は、速度取得部20により取得された分裂速度に応じて、有棘細胞を示す新たな角化細胞モデル(以降、有棘細胞モデルとも表記する)を順次生成する。新たに生成される有棘細胞モデルの数は、基底細胞モデルの数に所定分裂速度を掛け算して得られる値に決定される。例えば、所定分裂速度が1であれば、一定時間の間に基底細胞モデルから1回、有棘細胞モデルが新たに生成され、所定分裂速度が3であれば、一定時間の間に基底細胞モデルから3回、有棘細胞モデルが新たに生成される。この所定分裂速度は、予めメモリ3に格納されていてもよいし、入力部7から入力されてもよいし、他の装置から取得されてもよい。
このように、角化細胞モデル生成部41は、分裂元の基底細胞モデルと対応付けながら有棘細胞モデルを生成する。具体的には、角化細胞モデル生成部41は、細胞モデル情報記憶部55に、新たな有棘細胞モデルのための領域(レコード)を確保し、そのレコードの各フィールドに、産まれた直後の角化細胞に対応する初期値をそれぞれ設定する。初期値として、細胞種別には有棘細胞を示す値が設定され、重心位置には、有棘層の最下部でかつ分裂元となる基底細胞モデルに対して所定距離を示す値が設定され、形状及びサイズには、基底細胞モデルと同様の値(所定の半径又は所定の直径を有する球形を示す値)が設定され、経過時間には0(ゼロ)が設定され、メラニン情報には、分裂元の基底細胞モデルのメラニン情報に対応した値が設定される。角化細胞モデル生成部41は、メラニン情報の初期値として、分裂元の基底細胞モデルのメラニン量を2分割して得られる値を設定すると共に、分裂元の基底細胞モデルのメラニン情報をその新たな有棘細胞モデルに設定されたメラニン量を減算した値に更新する。
メラニン付与部42は、色素細胞モデルから角化細胞モデルへのメラニンの受け渡しを模擬するための処理を行う。具体的には、メラニン付与部42は、細胞モデル情報記憶部55を参照することにより、色素細胞モデルから所定のメラニン受け渡し範囲内に存在する角化細胞モデルを抽出し、抽出された各角化細胞モデルのメラニン情報に、所定量のメラニンを示す値をそれぞれ設定する。所定のメラニン受け渡し範囲、受け渡される所定メラニン量、及び、メラニン付与部42によるこの処理の周期は、予めメモリ3に格納されていてもよいし、入力部7から入力されてもよいし、他の装置から取得されてもよい。
図4は、メラニンの受け渡し範囲の例を示す図である。図4の例では、受け渡し範囲として、所定範囲101及び102が示される。この例では、所定範囲101又は102内に重心位置のある全角化細胞モデル(基底細胞モデル81及び有棘細胞モデル82)に所定メラニン量が設定される。また、所定範囲101又は102内に重心位置のある全角化細胞モデルのうちの基底細胞モデル81のみに所定メラニン量が設定されると規定されてもよい。メラノサイトは図4のように基底細胞に置き換わるものとして配置してもよいし、一様に配置されている基底細胞の間隙に存在すると設計してもよい。
所定メラニン量及び受け渡し周期は、例えば、一定時間あたり5ミリグラム(mg)/ミリリットル(ml)、25mg/mlなどに設定される。また、受け渡されるメラニン量は、上述の所定受け渡し範囲に該当する角化細胞モデルに均一とされてもよいし、色素細胞モデルからその重心位置までの距離に応じて異なる量とされてもよい。後者の場合には、例えば、距離に応じて受け渡されるメラニン量を算出する関数を用いて、受け渡されるメラニン量が決定されてもよい。
一方で、角化細胞は、角化中に、取り込まれたメラノソームを消化分解することが知られている。角化細胞中のメラニン量は、基底層で最大であり、表皮上層に移行するにしたがって分解されて減少するため、角層では少量のみが残存している。従って、本実施形態では、このようなメラニン分解の実態を模擬すべく、メラニン量制御部43が、有棘細胞及び顆粒細胞を示す各角化細胞モデルに設定されたメラニン量を各角化細胞モデルの経過時間に応じて減少させ、角層ではメラニン量を変化させない。
なお、メラニン量の減少速度については、例えば、1角化細胞あたりのメラニン量の時間の変化を示す関数を生成しておき、メラニン量制御部43が、この関数に経過時間を代入することにより、各角化細胞モデルのメラニン情報をそれぞれ算出するようにすればよい。
角化細胞は、図3に示されるように変形及び遷移することが知られている。即ち、有棘細胞82は、直径10μmから15μm程度の略球形の状態から円柱形(図3の符号91)に、下層から上層に向かって徐々に扁平化しながら、有棘層から顆粒層へ遷移する。顆粒細胞83は、図3の符号92に示されるような円柱形に更に扁平化される。最終的に、角層細胞84は、直径30μm〜40μm程度、厚み0.15μm〜0.25μm程度の円盤状又は五から六角形の板状になる。
形状変化部44は、角化細胞モデル生成部41により生成された角化細胞モデルの形状及びサイズを上述のような角化細胞の実態に即するように変形させる。具体的には、形状変化部44は、各有棘細胞モデル及び各顆粒細胞モデルの上下方向の厚みを、生成されてからの経過時間とその細胞種別に応じた減少速度とに応じてそれぞれ変化させる。形状変化部44は、細胞種別毎の細胞厚の減少速度のデータを予め保持している。顆粒層での厚みの減少速度のほうが、有棘層でのそれよりも大きいことが知られているため、この知見に基づいて、有棘層及び顆粒層での各減少速度がそれぞれ決められ、形状変化部44により予め保持される。
本実施形態では、各角化細胞モデルの形状については、有棘細胞及び顆粒細胞は円柱形又は楕円体に固定的に設定され、角層細胞は円柱形又は楕円体又は六角形の板状に固定的に設定される。また、各角化細胞モデルの面積(底面及び上面)は、体積を不変として、変更された厚みに応じて算出されるようにしてもよいし、分裂速度に対応する値に固定的に設定されるようにしてもよい。
一方、角層細胞は脱核した死細胞であるため、本実施形態では、角層細胞に変化した後の厚みは経過日数によらず一定であると定めた。これにより、形状変化部44は、角層細胞を示す角化細胞モデル(以降、角層細胞モデルとも表記する)の形状を所定の形状(例えば、六角形の板状)に設定すると共に、後述する角層のバリア指数目標値からその細胞厚を決定する。なお、角層細胞モデルの厚み以外のサイズについては、分裂速度に対応した固定値が設定されてもよい。
位置更新部45は、各角化細胞モデルの重心位置を、古い角化細胞モデルが新しい角化細胞モデルにより上方向に押し上げられるように、順次変更する。具体的には、位置更新部45は、他の角化細胞モデルの形状、サイズ及び重心位置に基づいて、当該他の角化細胞モデルと対象の角化細胞モデルとの上下方向の間隔が所定距離(0も含む)となるように、対象の角化細胞モデルの重心位置を変更する。位置更新部45による位置変更は、上下方向成分のみについて行われるようにしてもよい。
また、位置更新部45は、各角化細胞モデルを仮想的な粒子に見立てた粒子モデルを設定し、いわゆる粒子法により、各角化細胞モデルの位置を更新するようにしてもよい。この場合、位置更新部45は、例えば、次のように角化細胞モデルの位置を更新する。位置更新部45は、対象の角化細胞モデルと近接する他の角化細胞モデルとの重心間距離(粒子間距離)を算出し、この粒子間距離から求まるバネ力と体積力の係数を算出する。位置更新部45は、その粒子間距離とその係数とに基づいて対象の角化細胞モデルに作用する粒子間力を算出し、その粒子間力と運動方程式に基づいて、角化細胞モデルの変位(差分)を算出し、その変位に基づいて角化細胞モデルの位置を更新する。この粒子法による角化細胞モデルの位置更新手法については、以下の参考文献5に記載される手法と同様であるため、ここでは、説明を簡略化している。
参考文献5:特願2011−1605号
目標値取得部46は、速度取得部20により取得された分裂速度に応じた有棘層、顆粒層及び角層の各バリア指数目標値をそれぞれ取得する。バリア指数目標値とは、各層において角化細胞モデルが最終的に有するバリア指数を意味する。本実施形態は、上述のバリア指数について、生成直後を最小値(例えば初期値(1))とし、その後徐々に増大し、角層において最大値となる値として設定した。具体的には、本実施形態は、各角化細胞モデルのバリア指数を以下のように設定する。
バリア指数B=有棘細胞モデルの厚みの初期値/細胞厚
なお、バリア指数Bの初期値は1であることに限定されず、上記算出式の分子は、有棘細胞モデルの厚みの初期値でなくともよい。
各層におけるバリア指数目標値は、分裂速度と負の相関を持ち、分裂速度に応じて変わる。そこで、本実施形態では、分裂速度からバリア指数目標値を出力する目標値関数を各層についてそれぞれ生成し、各層のための各目標値関数をそれぞれ目標値取得部46に予め保持させる。各目標値関数は、表皮組織に関する様々な知見に基づいて、分裂速度の各サンプル値と、各サンプル値に対応する各層におけるバリア指数目標値をそれぞれ決め、それらを用いて回帰分析を行うことにより生成される。各層におけるバリア指数目標値は、各層における最終的な細胞厚を決めることで算出するようにしてもよい。各目標値関数の具体的生成手法については、後述する。
細胞種別設定部47は、細胞モデル情報記憶部55に格納される各角化細胞モデルの細胞厚から算出される各角化細胞モデルのバリア指数と目標値取得部46により取得された各バリア指数目標値との比較により、各角化細胞モデルの細胞種別を、有棘細胞、顆粒細胞及び角層細胞のいずれか1つにそれぞれ設定する。上述したように、角化細胞モデルの細胞種別は、角化細胞モデル生成部41により新たに生成された直後は、有棘細胞を示す値に設定される。細胞種別設定部47は、角化細胞モデルのバリア指数が有棘層のバリア指数目標値を超えた場合には、その角化細胞モデルの細胞種別を顆粒細胞を示す値に設定し、当該バリア指数が顆粒層のバリア指数目標値を超えた場合には、当該細胞種別を角層細胞を示す値に設定する。
経過時間計測部48は、細胞モデル情報記憶部55に格納される各角化細胞モデルに関する産まれてからの経過時間をそれぞれ更新する。細胞モデル情報記憶部55には各角化細胞モデルの生成時間(タイミング)が格納されており、経過時間計測部48は、この生成時間と現時間との差から、各角化細胞モデルの経過時間を算出する。このとき、現実の時間軸と本シミュレータ10で模擬される時間軸(以降、シミュレーション用時間軸と表記する)とは異なる。これにより、シミュレータ10は、表皮組織の角化現象を短時間で模擬することを可能とする。よって、経過時間計測部48は、現実の時間軸における生成時間と現時間との差をシミュレーション用時間軸で変換することにより、各角化細胞モデルの経過時間を算出する。例えば、経過時間計測部48は、現実の時間軸における当該時間差30秒を、1日の経過時間に変換する。このような時間の変換割合は、予めメモリ3に格納されていてもよいし、入力部7から入力されてもよいし、他の装置から取得されてもよい。
剥離設定部49は、所定条件を満たした角化細胞モデルを表皮組織から剥離された状態に設定する。これは、細胞モデル情報記憶部55における該当角化細胞モデルのレコードに、表皮組織から剥離された状態を示す値を設定することで実現されてもよいし、細胞モデル情報記憶部55の該当角化細胞モデルのレコード(メモリ領域)を削除(解放)することで実現されてもよい。
剥離設定部49は、全角層細胞モデルのバリア指数を合計することにより上述のバリア指数総和を算出し、このバリア指数総和が所定閾値を超えるか否かを判定し、所定閾値を超えたと判定される場合に、上記設定処理を実行する。また、剥離設定部49は、発生からの経過時間が最も長い角層細胞モデル、又は、最上層に位置する角層細胞モデルを上記設定対象の角化細胞モデルとして決定する。所定閾値は、角層細胞面積の知見(上記参考文献2参照)、角層の層数が年齢によらず不変であるとの知見(上記参考文献1、上記参考文献4参照)から、或る年齢(或る分裂速度)における計算空間内の角層に存在し得る角層細胞数と、或る年齢における角層細胞厚とを決め、その角層細胞数と当該角層細胞厚から得られる1角層細胞当たりのバリア指数との積により求めることができる。この所定閾値は剥離設定部49により予め保持される。
表皮組織描画部60は、計算空間生成部32により生成された解析モデル70の形状と、基底層生成部34により生成された基底細胞モデル及び色素細胞モデルの形状と、遷移演算部40により繰り返し演算される各角化細胞モデルの形状とから、表皮組織の挙動を表示するための描画データを生成する。この描画データは、入出力I/F4を介して出力部9に送られ、出力部9で表示される。これにより、例えば、図3に示すような表皮組織の断面を示す画像が出力部9に表示される。この場合、遷移演算部40により逐次更新される角化細胞モデルの位置及び形状並びにサイズが反映された画像が出力部9に順次表示されれば、細胞レベルの挙動として表皮組織の角化現象を描画することができる。なお、具体的な描画方法は特に限定されない。
メラニン積算部64は、細胞モデル情報記憶部55から、各角化細胞モデルの位置及びメラニン情報を取得し、取得された情報に基づいて、皮膚表面の部位毎のメラニン蓄積量を計算する。具体的には、メラニン積算部64は、皮膚表面が区切られた各部位に関し、当該上下方向と直交する平面座標におけるその部位の中心点と同じ座標位置及びその座標位置から所定距離内に重心位置がある角化細胞モデルを細胞モデル情報記憶部55から抽出し、抽出された角化細胞モデルのメラニン情報が示すメラニン量を合計して、メラニン蓄積量を算出する。
また、角化細胞モデル内のメラニンを粒子として表現することで、角化細胞モデルの扁平化に伴ったメラニン粒子分布の変化を模擬することもできる。即ち、メラニン情報により表わされるメラニンをそのメラニン量に応じた数のメラニン粒子として捉え、各メラニン粒子の角化細胞モデル内の分布位置がその角化細胞モデルの形状及びサイズに応じてそれぞれ決められる。これにより、メラニン積算部64は、各メラニン粒子の分布位置に基づいて皮膚表面の各部位の下層に存在するメラニン粒子を選択し、選択されたメラニン粒子のメラニン量を足し合わせることにより、皮膚表面の部位毎のメラニン蓄積量を算出する。
肌色算出部66は、メラニン積算部64により算出されたメラニン蓄積量と、予め保持されている換算データとに基づき、皮膚表面の部位毎の皮膚濃度の数値を取得する。皮膚濃度は、肌の白さ、明るさ、黒ずみの度合い等の見た目の濃淡を定量化した値である。当該換算データは、メラニン色素の散乱、吸収特性に基づいて、例えばモンテカルロシミュレーション、Kubelka−Munkの法則、Lambert−Beerの法則、修正Lambert−Beerの法則等を用いて設定された関数又はテーブルである。この他、当該換算データは、実際の動物の表皮や、表皮細胞とメラニン細胞を含む三次元組織培養などの方法で作成したモデル皮膚を用いて、皮膚濃度とメラニン量実測値とを対応づけた関数又はテーブルであってもよい。
肌色描画部68は、肌色算出部66により算出された皮膚表面の部位毎の皮膚濃度値に対応する色を有する皮膚表面画像を表示するための描画データを生成する。この描画データは、入出力I/F4を介して出力部9に送られ、出力部9で表示される。これにより、肌表面の見た目の濃淡を表示する画面が表示される。なお、皮膚濃度値に対応する色は、皮膚濃度値と所定の色データとを加算合成して取得するようにしてもよい。この所定の色データとして、例えば肌色から算出したヘモグロビン色素情報、ヘモグロビン色素の分光反射データや、血管を含む真皮組織の色データを用いることによって、より実際の肌色に近い色で表示することができる。血管を含む真皮組織の色データは、実際に動物の表皮を剥離した皮膚や、白斑病変部の皮膚を測色すること等で得ることができる。
また、肌色描画部68は、肌色算出部66により算出された皮膚表面の部位毎の皮膚濃度値を数値のリストとして描画するための描画データを生成するようにしてもよい。
メラニン量制御部43、形状変化部44、位置更新部45、細胞種別設定部47、経過時間計測部48及び剥離設定部49における各処理周期は、任意であるが、表皮組織描画部60及び肌色描画部68の描画データ生成周期と一致することが望ましい。これにより、表皮組織の挙動を細かい精度で表示することができる。上記各処理部の処理周期は、予めメモリ3に格納されていてもよいし、入力部7から入力されてもよいし、他の装置から取得されてもよい。また、描画データ生成タイミングは、ユーザの操作に応じて入力部7から入力されるタイミングとされてもよい。
〔動作例〕
以下、第1実施形態における表皮組織シミュレーション方法について説明する。図5は、第1実施形態における表皮組織シミュレーション装置の動作例を示すフローチャートである。
第1実施形態におけるシミュレータ10は、表皮組織シミュレーションを開始するにあたり、角化細胞の分裂速度に関する情報を取得する(S61)。更に、シミュレータ10は、図3に示されるような解析モデル70の計算空間を生成する(S62)。このとき、当該計算空間の境界条件が設定される。
続いて、シミュレータ10は、生成された計算空間において基底層を生成する(S63)。即ち、シミュレータ10は、外側計算境界71(真皮組織の表面)に、基底細胞モデル及び色素細胞モデルを所定数配置する。基底細胞モデル及び色素細胞モデルに関する情報は、細胞モデル情報記憶部55に格納される。
次に、シミュレータ10は、(S61)で取得された分裂速度に応じた有棘層、顆粒層及び角層の各層におけるバリア指数目標値をそれぞれ取得する(S64)。
以降、上述の各処理により得られた情報を用いて、各角化細胞モデルの遷移演算(S65)、表皮組織の描画データの生成(S66)、皮膚表面の描画データの生成(S67、S68、S69)が実行される。なお、表皮組織の描画データの生成、及び、皮膚表面の描画データの生成については、ユーザにより所望される一方のみが実行されてもよい。
各角化細胞モデルの遷移演算(S65)では、細胞モデル情報記憶部55に格納されるデータが更新されることにより、有棘細胞として産まれてから表皮表面から剥離されるまでの間の各角化細胞の角化現象がデータ上模擬される。この各角化細胞モデルの遷移演算(S65)の詳細については後述する。
表皮組織の描画データの生成(S66)では、シミュレータ10は、解析モデル70の形状と、細胞モデル情報記憶部55に格納されるデータから得られる各角化細胞モデル(色素細胞モデルを含む)の形状が反映され、表皮組織の挙動を細胞単位で表示するための描画データを生成する。この描画データにより、出力部9に解析モデル70の表皮組織を細胞単位で表す画面が表示される。
皮膚表面の描画データの生成では、シミュレータ10は、まず、細胞モデル情報記憶部55に格納される各角化細胞モデルの位置及びメラニン情報に基づいて、皮膚表面の部位毎のメラニン蓄積量を算出する(S67)。次に、シミュレータ10は、(S67)で算出されたメラニン蓄積量と、予め保持されている換算データとに基づき、皮膚表面の部位毎の皮膚濃度値を算出する(S68)。最終的に、シミュレータ10は、(S68)で算出された皮膚表面の部位毎の皮膚濃度値に対応する色を有する皮膚表面画像を表示するための描画データを生成する(S69)。この描画データにより、出力部9に解析モデル70の皮膚表面の見た目を表す画面が表示される。
図6は、図5における各角化細胞モデルの遷移演算(S65)の詳細を示すフローチャートである。
シミュレータ10は、取得された分裂速度に応じて新たな角化細胞モデルを順次生成し、有棘細胞モデルとして配置する(S70)。このとき、新たに生成される有棘細胞モデルの数は、例えば、基底細胞モデルの数と所定分裂速度とにより得られる値に設定される。
一方で、シミュレータ10は、所定の受け渡し周期に応じて、色素細胞モデルから角化細胞モデルへのメラニンの受け渡しを模擬するための処理を行う(S71)。即ち、シミュレータ10は、細胞モデル情報記憶部55を参照することにより、色素細胞モデルから所定のメラニン受け渡し範囲内に存在する角化細胞モデルを抽出し、抽出された各角化細胞モデルのメラニン情報に、所定量のメラニンを示す値をそれぞれ設定する。
以上の処理(S70)及び(S71)は、分裂速度又は所定の受け渡し周期によりそれぞれ繰り返し実行される。図6に示される(S72)以降の処理は、(S70)及び(S71)とは非同期に実行される。
シミュレータ10は、各角化細胞モデルに関し、細胞モデル情報記憶部55に格納される経過時間をそれぞれ更新する(S72)。このとき、シミュレータ10は、角化細胞モデルが生成された実時間と現時間との差を求め、この差をシミュレーション用時間軸で変換することにより当該経過時間(模擬される時間)を算出する。
更に、シミュレータ10は、各角化細胞モデルに関し、細胞モデル情報記憶部55に格納される重心位置をそれぞれ更新する(S73)。この位置更新は、サイズ及び形状に基づいて、各角化細胞モデルが互いに重ならず、古い角化細胞モデルが新しい角化細胞モデルにより上方向に押し上げられるように、上下方向の成分の更新のみで単純に実現されてもよいし、粒子法に基づく粒子間力と運動方程式を用いて実現されてもよい。
更に、シミュレータ10は、各角化細胞モデルに関し、細胞モデル情報記憶部55に格納される形状及びサイズをそれぞれ変更する(S74)。このとき、シミュレータ10は、各有棘細胞モデル及び各顆粒細胞モデルの上下方向の厚みを、経過時間と細胞種別に応じた減少速度とに応じてそれぞれ変更する。また、シミュレータ10は、角層細胞モデルの厚みを図5の(S64)で取得された角層のバリア指数目標値から算出される値に固定的に設定する。なお、形状については、細胞種別に応じて固定的に円柱状、楕円体又は六角形の板状のいずれかに設定されてもよい。
更に、シミュレータ10は、有棘細胞モデル及び顆粒細胞モデルに関し、細胞モデル情報記憶部55に格納されるメラニン情報を、その経過時間に応じて更新する(S75)。これにより、有棘細胞モデル及び顆粒細胞モデルのメラニン量は、経過時間に応じて減らされる。但し、角層細胞モデルのメラニン量は一定に保たれる。
シミュレータ10は、図5の(S64)で取得された各層におけるバリア指数目標値に基づいて、更新対象となる各角化細胞モデルに関し、細胞モデル情報記憶部55に格納される細胞種別をそれぞれ更新する(S76)。具体的には、シミュレータ10は、細胞厚から得られる角化細胞モデルのバリア指数が、有棘層のバリア指数目標値を超えた場合には、その角化細胞モデルの細胞種別を顆粒細胞を示す値に設定し、当該バリア指数が顆粒層のバリア指数目標値を超えた場合には、当該細胞種別を角層細胞を示す値に設定する。
続いて、シミュレータ10は、全角層細胞モデルのバリア指数を合計することによりバリア指数総和を算出する(S77)。各角層細胞モデルのバリア指数は、細胞モデル情報記憶部55に格納される各角層細胞モデルの細胞厚(サイズ)から算出される。
シミュレータ10は、算出されたバリア指数総和が所定閾値を超えるか否かを判定する(S78)。バリア指数総和が所定閾値を超える場合(S78;YES)、シミュレータ10は、剥離対象となる角化細胞モデルとして、発生からの経過時間が最も長い角層細胞モデル、又は、最上層に位置する角層細胞モデルを選択する(S79)。そして、シミュレータ10は、選択された角層細胞モデルを表皮組織から剥離された状態に設定する(S80)。なお、バリア指数総和が所定閾値を超えないと判定された場合(S78;NO)、このような角層細胞モデルの剥離設定処理は行われない。
シミュレータ10は、このような(S72)から(S80)の各処理を任意のタイミング(任意の周期)で繰り返す。
〔第1実施形態の作用及び効果〕
上述のように、第1実施形態では、基底層に所定割合で固定的に配置される色素細胞モデルが生成され、所定の受け渡し周期で、所定範囲内に位置(重心位置)がある各角化細胞モデルのメラニン情報(メラニン量)が増やされる。このとき、色素細胞モデルから重心位置までの距離に応じて異なるメラニン量が付与される。一方で、生成された各角化細胞モデルの位置が古い角化細胞モデルが新しい角化細胞モデルにより皮膚表面方向に押し上げられるように順次変更される。
これにより、第1実施形態によれば、高速の分裂速度が取得されると、各角化細胞モデルの所定周期の移動距離(移動速度)が平均的に長くなるため、各角化細胞モデルに受け渡されるメラニン量は減少する。結果として、第1実施形態によれば、分裂速度に応じて、表皮組織全体のメラニン量が変わる現象を模擬することができる。これは、表皮ターンオーバ時間の変化によって肌色が変化するという表皮の実態に即したものである。
更に、第1実施形態では、有棘細胞モデル及び顆粒細胞モデルに設定されたメラニン量が所定の減少速度に応じて減らされ、角層細胞モデルのメラニン量は一定に保たれる。これにより、第1実施形態によれば、メラニン分解の実態を模擬することができる。
このように、第1実施形態によれば、表皮組織内のメラニンの状態変化を実態に即して模擬することができる。
更に、第1実施形態では、角化細胞の分裂速度に応じた、各層のバリア指数目標値がそれぞれ取得され、取得された各層のバリア指数目標値を用いて、各角化細胞モデルの挙動が模擬される。その1つとして、角層のバリア指数目標値により、角層細胞モデルの細胞厚が固定的に設定される。加えて、有棘層及び顆粒層の各バリア指数目標値により、有棘層から顆粒層への遷移及び顆粒層から角層への遷移が判定されると共に、有棘層及び顆粒層に関しそれぞれ決められた各細胞厚減少速度に応じて、有棘細胞モデル及び顆粒細胞モデルの細胞厚が変更される。
これにより、第1実施形態によれば、ターンオーバによる角化細胞の移動に伴う、角化細胞の形状及びサイズの変化を現実に近い形で模擬することができると共に、その角化細胞の変化速度がターンオーバの変化(分裂速度の変化)により変わるという実態を模擬することができる。
更に、第1実施形態では、各角化細胞モデルの位置及びメラニン情報に基づいて皮膚表面の部位毎のメラニン蓄積量が算出され、このメラニン蓄積量から皮膚表面の部位毎の皮膚濃度値が取得され、この皮膚濃度値に対応する色を有する皮膚表面画面を表示するための描画データが生成される。
これにより、年齢等の実態に即した各角化細胞の挙動を模擬すると共に、それら角化細胞等から形成される皮膚表面の見た目を模擬することができる。即ち、第1実施形態によれば、ターンオーバの違いに伴うメラニン分布の違いを皮膚表面の見た目としても表すことができる。ひいては、美白化粧料や美白施術を施すことが特に有効な皮膚表面部位をユーザは知得したり、美白剤や表皮ターンオーバ改善剤などの肌に対する効果の大きさを推測したりすることができる。
[第2実施形態]
上述の第1実施形態では、分裂速度に対応する各層のバリア指数目標値が取得され、各バリア指数目標値により、各層への遷移や、角層細胞モデルの細胞厚が決定された。しかしながら、上述の通りバリア指数は細胞厚から取得可能であるため、各バリア指数目標値の代わりに各目標細胞厚を用いてもよい。そこで、第2実施形態のシミュレータ10は、各層におけるバリア指数目標値の代わりに各層における目標細胞厚を用いる点で第1実施形態と異なる。以下、第2実施形態におけるシミュレータ10について第1実施形態と異なる内容を中心に説明し、第1実施形態と同じ内容については適宜省略する。
〔装置構成〕
第2実施形態におけるシミュレータ10のハードウェア構成及び処理構成は第1実施形態と同様であり、以下に示す各処理部の処理内容が第1実施形態と異なる。
目標値取得部46は、速度取得部20により取得された分裂速度に応じた有棘層、顆粒層及び角層の各目標細胞厚をそれぞれ取得する。目標細胞厚とは、各層において角化細胞モデルが最終的に有する上下方向の厚みを意味する。各層における目標細胞厚は、分裂速度と正の相関を持ち、分裂速度に応じて変わる。そこで、第2実施形態では、目標値取得部46により予め保持される各層のための各目標値関数が、分裂速度から目標細胞厚を出力する関数として生成される。なお、各目標値関数の生成手法については上述した通りである。
形状変化部44は、角層細胞モデルの厚みを角層の目標細胞厚に固定的に設定する。
細胞種別設定部47は、細胞モデル情報記憶部55に格納される各角化細胞モデルの細胞厚と目標値取得部46により取得された各目標細胞厚との比較により、各角化細胞モデルの細胞種別を、有棘細胞、顆粒細胞及び角層細胞のいずれか1つにそれぞれ設定する。具体的には、細胞種別設定部47は、角化細胞モデルの厚みが有棘層の目標細胞厚を超えた場合には、その角化細胞モデルの細胞種別を顆粒細胞を示す値に設定し、当該厚みが顆粒層の目標細胞厚を超えた場合には、当該細胞種別を角層細胞を示す値に設定する。
〔動作例〕
以下、第2実施形態における表皮組織シミュレーション方法について説明する。図7は、第2実施形態における表皮組織シミュレーション装置の動作例を示すフローチャートである。第2実施形態では、図5で示される(S64)の処理が各層における目標細胞厚を取得する処理(S81)に代わり、図5で示される(S65)及び図6で示される各角化細胞モデルの遷移演算で、バリア指数目標値の代わりに目標細胞厚が用いられる点で第1実施形態と異なり、他の処理については第1実施形態と同様である。
〔第2実施形態における作用及び効果〕
第2実施形態によれば、各有棘細胞モデル及び各顆粒細胞モデルにおいて細胞厚からバリア指数を得る処理を省くことができるため、第1実施形態と比較して、処理負荷を軽減することができる。
[第3実施形態]
第3実施形態におけるシミュレータ10は、各層におけるバリア指数目標値及び目標細胞厚の代わりに、有棘層及び顆粒層の最大滞在日数を用いて、各層への遷移を判断する。以下、このような、第1実施形態と第2実施形態とは異なる内容が、第1実施形態に組み込まれた形態を第3実施形態として説明する。以下、第3実施形態におけるシミュレータ10について第1実施形態と異なる内容を中心に説明し、第1実施形態と同じ内容については適宜省略する。
〔装置構成〕
図8は、第3実施形態におけるシミュレータ10の処理構成例を概念的に示す図である。なお、第3実施形態におけるシミュレータ10のハードウェア構成は第1実施形態と同様である。第3実施形態におけるシミュレータ10は、第1実施形態の構成に加えて、滞在日数算出部110を更に有する。滞在日数算出部110についても、他の処理部と同様に、例えば、CPU2によりメモリ3に格納されるプログラムが実行されることにより実現される。
滞在日数算出部110は、目標値取得部46により取得された有棘層及び顆粒層のバリア指数目標値と、各角化細胞モデルの細胞種別に応じた細胞厚の減少速度とを用いて、有棘層及び顆粒層の各々における最大滞在日数をそれぞれ算出する。具体的には、滞在日数算出部110は、有棘層のバリア指数目標値から有棘層の目標細胞厚を取得し、有棘層の目標細胞厚から細胞厚の初期値(生まれた直後の細胞厚)を減算した値を、有棘層の細胞厚の減少速度で除算することにより、有棘層の最大滞在日数とする。滞在日数算出部110は、顆粒層のバリア指数目標値から顆粒層の目標細胞厚を取得し、顆粒層の目標細胞厚から、上述のように得られた有棘層の細胞厚を減算した値を、顆粒層の細胞厚の減少速度で除算することにより、顆粒層の最大滞在日数とする。各層における細胞厚の減少速度は、形状変化部44により保持されるものと同様である。
細胞種別設定部47は、細胞モデル情報記憶部55に格納される各角化細胞モデルの経過時間と、滞在日数算出部110により算出された有棘層及び顆粒層の各最大滞在日数との比較により、各角化細胞モデルの細胞種別を、有棘細胞、顆粒細胞及び角層細胞のいずれか1つにそれぞれ設定する。具体的には、細胞種別設定部47は、経過時間が有棘層の最大滞在日数を超えた場合には、その角化細胞モデルの細胞種別を顆粒細胞を示す値に設定し、当該経過時間が有棘層の最大滞在日数と顆粒層の最大滞在日数との合計日数を超えた場合には、当該細胞種別を角層細胞を示す値に設定する。
〔動作例〕
以下、第3実施形態における表皮組織シミュレーション方法について説明する。図9は、第3実施形態における表皮組織シミュレーション装置の動作例を示すフローチャートである。図9に示されるように、第3実施形態では、図5で示される(S64)の後に、上述のように有棘層及び顆粒層の各最大滞在日数を取得する処理(S101)が追加され、図6に示される(S76)で、バリア指数目標値の代わりに最大滞在日数が用いられる点で第1実施形態と異なり、他の処理については第1実施形態と同様である。
〔第3実施形態における作用及び効果〕
第3実施形態では、各角化細胞モデルの経過時間により各層への遷移が判定されるが、第1実施形態と略同様の効果を得ることが出来る。
以下に各実施例を挙げ、上述の各実施形態を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の各実施例から何ら限定を受けない。
図10は、分裂速度の各サンプル値に対応する各層における角化細胞のパラメータ値の例を示す表である。発明者らは、各種知見に基づいて以下のような方法により、各層におけるバリア指数目標値、有棘層及び顆粒層の細胞厚の減少速度を設定し、図10のような表を完成させた。
発明者らは、上記参考文献1を参考に、角層細胞面積の中心値を800μm周辺に定め、その中心値に対して加齢変化等を考慮して、加齢変化に応じた角層細胞面積の取り得る幅を設定した(574μm〜1291μm)。
更に、発明者らは、下記参考文献6及び7を参考に、有棘層及び顆粒層の合計滞在時間の中心値を4週間と定めた。加えて、発明者らは、顆粒層が表皮厚によらず1〜数層であるという知見(下記参考文献6参照)から顆粒層における滞在日数はターンオーバ時間によらず一定と定め、これに対して加齢変化等を考慮して、加齢変化に応じた有棘層の滞在日数及び顆粒層の滞在日数を設定した(有棘層の滞在日数:11〜36日、顆粒層の滞在日数:7日)。
参考文献6:上野賢一,皮膚科学第7版、2002年
参考文献7:化粧品事典,日本化粧品技術者会編,丸善出版,2003年12月発行
また、発明者らは、年齢に応じた表皮全体の厚さとターンオーバ時間との知見(上記参考文献3参照)から、表皮の厚みを保つための角化細胞の発生頻度、即ち、年齢に応じた角化細胞の分裂速度を設定した。図10の例によれば、分裂速度0.263及び0.197は、30代から40代の年齢に対応し、分裂速度0.132は、60代の年齢に対応し、0.395は、若年齢に対応し、0.789は、アトピー等の何らかの異常を有する肌に対応付けられた。
加えて、発明者らは、知見から、産まれた直後の有棘細胞の形状及びサイズを直径(細胞厚の初期値)10μmの球形と定めた。これにより、バリア指数の計算式を次のように定めた。
バリア指数B=10/細胞厚
また、発明者らは、基底細胞は有棘層に移るときに円柱状になるとの知見から、有棘層以降の細胞体積を加齢によらず一定の約785μm(直径10μm、高さ10μmの円柱体積)であると決め、角層へ遷移するまで細胞体積は一定と定めた。角層細胞の厚さの目安は、角層細胞体積を角層細胞面積で割ることにより算出された。このように算出された角層細胞の厚さの目安まで、角化細胞の初期の厚さ10μmから減少すること、有棘層と顆粒層の細胞層数の比がおよそ3対1であること、顆粒層での厚さの減少速度が有棘層のそれに比べて速いことから、有棘層の厚さの減少速度(0.03μm/日)と、顆粒層の厚さの減少速度(0.9μm/日)が決められた。
これにより、上記各減少速度と、角化細胞の初期の厚み10μmと、滞在日数とから、有棘層及び顆粒層での最終的な細胞厚(目標細胞厚)がそれぞれ算出され、各目標細胞厚から、有棘層及び顆粒層でのバリア指数目標値が算出された。
発明者らは、角層細胞は脱核した死細胞であるので、角層細胞に変化した後の細胞厚は経過日数によらず一定であると決めた。更に、発明者らは、顆粒層の目標細胞厚と、上述の角層細胞の体積(約785μm)から算出された角層細胞の厚さの目安とから、顆粒層から角層へ移行する際に、一律、2(μm)減少することと決めた。これにより、顆粒層の目標細胞厚から、各分裂速度に対応する角層細胞の厚さがそれぞれ算出された。
最終的に、各分裂速度に対応する角層細胞の厚さから、各分裂速度に対応する角層におけるバリア指数目標値が算出された。
このように決められた各分裂速度と各層におけるバリア指数目標値との対応付けサンプルを回帰分析を行うことにより、目標値取得部46により保持される各層の目標値関数を生成することができる。同様に、各分裂速度と各層における目標細胞厚との対応付けサンプルを回帰分析することにより、第2実施形態における目標値取得部46により保持される各層の目標値関数を生成することができる。
図11は、図10の例に対応する各層の目標値関数の例を示す図である。なお、図11には、分裂速度からバリア指数目標値を出力する目標値関数の例が示される。
また、上述のように決められた角層細胞のパラメータ値を用いることにより、剥離設定部49が保持する所定閾値が決められる。具体的には、当該所定閾値は、上述した通り、或る分裂速度における計算空間内の角層に存在し得る角層細胞数と、或る分裂速度における角層におけるバリア指数目標値との積により求めることができる。ここで、計算空間内の皮膚表面の面積を125000μmとし、図10の例における分裂速度0.263の対象分裂速度として選んだ場合、当該所定閾値は次のように算出される。
角層1層当たりの角層細胞の数=125000/785≒159.236
角層細胞数=159.236×10(層)=1592.36
分裂速度0.263における角層のバリア指数目標値=9.346
所定閾値=角層細胞数×角層のバリア指数目標値=1592.36×9.346≒14882
実施例2では、上述のシミュレータ10を用いて実施された肌色シミュレーションについて説明する。
図12は、肌色シミュレーションで用いられた解析領域を概念的に示す図である。本肌色シミュレーションでは、250μm×500μmの解析領域に基底細胞が配置され、基底細胞と基底細胞の間隙にメラノサイトが基底細胞5細胞につき1個配置され、その解析領域の所定部分領域(図12の白点線(符号150)の内部)においてはメラノサイトが基底細胞3細胞につき1個配置された。
基底細胞分裂速度には、0.15回/日、0.2回/日、0.3回/日の3段階が設定され、どの条件においても解析領域中のすべてのメラノサイトについて、基底細胞へのメラニン受け渡し速度は一定とされた。
シミュレーション開始から144日後の皮膚表面(上から視認)の部位(10μm×10μm)毎のメラニン蓄積量が算出され(メラニン積算部64)、そのメラニン蓄積量とヘモグロビン肌色から算出されたヘモグロビン色素情報とを組み合わせことで、皮膚表面の部位毎の皮膚濃度が算出され(肌色算出部66)、その算出結果を示す肌色画像(肌表面の見た目の濃淡を表示する画像)が表示された。
図13は、肌色シミュレーションの結果を示す皮膚表面画像を示す図である。図13に示されるように、上述のシミュレータ10によれば、メラノサイトの配置割合が多い領域(上記所定部分領域(図12の符号150の内部))とそれ以外の領域とでは、皮膚濃度に差が出ることを正確に模擬することができている。また、特に、その所定部分領域(図12の符号150の内部)に相当する部分を比較すれば分かるように、基底細胞分裂速度が速くなるにつれて皮膚全体の明度が上昇し、色むらが薄くなることを模擬することができている。
[変形例]
上述の各実施形態及び各実施例において、健常な表皮組織の挙動と、健常とは異なる特殊な表皮組織の挙動とを区別して模擬することも可能である。特殊な表皮組織として、例えば、アトピーや乾癬等のような疾患を持つ表皮組織や、老人性色素斑等が存在する。このような特殊な表皮組織においては、表皮肥厚、角層厚の増加、ターンオーバ速度の増加又は低下といった実態が認められている。このような実態は、細胞あたりのバリア指数が正常に増加しないことによって、必要なバリア性能を満たすために、健常な表皮組織のそれよりも多くの細胞が必要となると想定することにより、模擬可能である。また、上記実態は、分裂速度からバリア指数目標値を出力する目標値関数を、上記実施例中で設定したような正常皮膚とは異なる関数を設定し、正常皮膚と同一の分裂速度によっても異なるターンオーバ日数が得られるように設定することによって、模擬可能である。
従って、特殊な表皮形態の挙動の実態を模擬するために、角化細胞モデルのバリア指数は、表皮肥厚、角層厚の増加を模擬する場合は健常な表皮組織の場合と異なる次のような手法により算出されるようにすればよい。
特殊な表皮組織のバリア指数B=有棘細胞モデルの厚みの初期値/(細胞厚×所定係数(正の値))
このようにすれば、特殊な表皮組織の角層細胞のバリア指数は、健常な表皮組織のものと較べて、低く設定することができ、ひいては、角層において必要なバリア性能を満たすためにより多くの細胞が必要となり、表皮肥厚や角層厚の増加を引き起こす実態を模擬することが出来る。
なお、上述の説明で用いた複数のフローチャートでは、複数のステップ(処理)が順番に記載されているが、本実施形態で実行される処理ステップの実行順序は、その記載の順番に制限されない。本実施形態では、図示される処理ステップの順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。
2 CPU
3 メモリ
4 入出力I/F
7 入力部
9 出力部
10 表皮組織シミュレーション装置(シミュレータ)
20 速度取得部
30 初期形状生成部
32 計算空間生成部
34 基底層生成部
40 遷移演算部
41 角化細胞モデル生成部
42 メラニン付与部
43 メラニン量制御部
44 形状変化部
45 位置更新部
46 目標値取得部
47 細胞種別設定部
48 経過時間計測部
49 剥離設定部
55 細胞モデル情報記憶部
60 表皮組織描画部
64 メラニン積算部
66 肌色算出部
68 肌色描画部
110 滞在日数算出部

Claims (10)

  1. 角化細胞を表す角化細胞モデルを用いて表皮組織の挙動を模擬する表皮組織シミュレーション装置において、
    角化細胞の任意の分裂速度の情報を取得する速度取得部と、
    前記速度取得部により取得された分裂速度に応じて、有棘細胞を示す新たな角化細胞モデルを順次生成する細胞モデル生成部と、
    前記細胞モデル生成部により生成された各角化細胞モデルに関し、皮膚表面方向の厚み、生成されてからの経過時間、細胞種別及び位置をそれぞれ格納する細胞モデル情報記憶部と、
    前記細胞モデル情報記憶部に格納される各角化細胞モデルの厚みを、各角化細胞モデルの細胞種別に応じた細胞厚の減少速度と各角化細胞モデルが生成されてからの経過時間とに応じてそれぞれ変化させる形状変化部と、
    前記形状変化部により設定された各角化細胞モデルの厚み、又は、各角化細胞モデルの経過時間に基づいて、前記各角化細胞モデルの細胞種別を、有棘細胞、顆粒細胞、角層細胞の順にそれぞれ変化させる細胞種別設定部と、
    角化細胞モデルの厚みと負の相関を持ちかつ角化細胞モデルのバリア性能の高さを示すバリア指数を角層細胞を示す全角化細胞モデルについて合計して得られるバリア指数総和が所定閾値を超えるか否かを判定し、該所定閾値を超えたと判定される場合に、発生からの経過時間が最も長い、又は、最上層にある角化細胞モデルに関し前記細胞モデル情報記憶部に格納される情報を前記表皮組織から剥離された状態に設定する剥離設定部と、
    を備える表皮組織シミュレーション装置。
  2. 前記細胞モデル情報記憶部に格納される各角化細胞モデルの位置を、古い角化細胞モデルが新しい角化細胞モデルにより前記皮膚表面方向に押し上げられるように、順次変更する位置更新部と、
    色素細胞を表す色素細胞モデルの数及び位置を決定する色素細胞配置部と、
    前記色素細胞モデルの位置から所定範囲内に存在する前記各角化細胞モデルに対して所定量のメラニンを表すメラニン情報を所定周期で設定するメラニン付与部と、
    有棘細胞及び顆粒細胞を示す各角化細胞モデルに設定されたメラニン量を前記各角化細胞モデルの経過時間に応じて減少させるメラニン量制御部と、
    を更に備え、
    前記細胞モデル情報記憶部は、前記各角化細胞モデルに関し、前記メラニン情報を更に格納する、
    請求項1に記載の表皮組織シミュレーション装置。
  3. 前記メラニン付与部は、前記色素細胞モデルからの距離に応じて異なるメラニン量を前記各角化細胞モデルに対してそれぞれ付与する、
    請求項2に記載の表皮組織シミュレーション装置。
  4. 前記細胞モデル情報記憶部に格納される各角化細胞モデルの位置に基づいて前記皮膚表面の各部位の下層に存在する角化細胞モデルを選択し、前記細胞モデル情報記憶部に格納される該選択された角化細胞モデルのメラニン情報が示すメラニン量を足し合わせることにより、前記皮膚表面の部位毎のメラニン蓄積量を算出するメラニン積算部と、
    前記メラニン積算部により算出されたメラニン蓄積量から、前記皮膚表面の見た目の濃淡を示す皮膚濃度値を前記皮膚表面の部位毎に取得する肌色算出部と、
    前記肌色算出部により取得された前記皮膚表面の部位毎の皮膚濃度値に対応する色を有する皮膚表面画面を表示するための描画データを生成する肌色描画部と、
    を更に備える請求項2又は3に記載の表皮組織シミュレーション装置。
  5. 前記細胞モデル情報記憶部に格納されるメラニン情報には、メラニン量に対応する数のメラニン粒子の各々に関する角化細胞モデル内の分布位置がそれぞれ含まれており、
    前記メラニン積算部は、前記細胞モデル情報記憶部に格納される各メラニン粒子の分布位置に基づいて前記皮膚表面の各部位の下層に存在する前記メラニン粒子を選択し、該選択されたメラニン粒子のメラニン量を足し合わせることにより、前記皮膚表面の部位毎のメラニン蓄積量を算出する、
    請求項4に記載の表皮組織シミュレーション装置。
  6. 前記分裂速度と正の相関を持ち、有棘層、顆粒層及び角層の各層における角化細胞の最終的な厚みを表す目標細胞厚を該各層に関しそれぞれ取得する目標値取得部、
    を更に備え、
    前記形状変化部は、角層細胞を示す各角化細胞モデルの厚みを、前記目標取得部により取得された角層の目標細胞厚に設定し、
    前記細胞種別設定部は、前記形状変化部により設定された各角化細胞モデルの厚みと、前記有棘層及び前記顆粒層の各目標細胞厚との比較により、前記各角化細胞モデルの細胞種別を、有棘細胞、顆粒細胞及び角層細胞のいずれか1つにそれぞれ設定する、
    請求項1から5のいずれか1項に記載の表皮組織シミュレーション装置。
  7. 前記分裂速度と負の相関を持ち、有棘層、顆粒層及び角層の各層における前記バリア指数の目標値となるバリア指数目標値を該各層に関しそれぞれ取得する目標値取得部、
    を更に備え、
    前記形状変化部は、角層細胞を示す各角化細胞モデルの厚みを、前記角層のバリア指数目標値に基づいて設定し、
    前記細胞種別設定部は、前記形状変化部により設定された各角化細胞モデルの厚みから算出される各角化細胞モデルのバリア指数と前記有棘層及び前記顆粒層の各バリア指数目標値との比較により、前記各角化細胞モデルの細胞種別を、有棘細胞、顆粒細胞及び角層細胞のいずれか1つにそれぞれ設定する、
    請求項1から5のいずれか1項に記載の表皮組織シミュレーション装置。
  8. 前記分裂速度と負の相関を持ち、有棘層、顆粒層及び角層の各層における前記バリア指数の目標値となるバリア指数目標値、又は、前記分裂速度と正の相関を持ち、有棘層、顆粒層及び角層の各層における角化細胞の最終的な厚みを表す目標細胞厚を該各層に関しそれぞれ取得する目標値取得部と、
    前記目標値取得部により取得された有棘層及び顆粒層のバリア指数目標値又は目標細胞厚と、各角化細胞モデルの細胞種別に応じた減少速度とを用いて、有棘層及び顆粒層の各々における最大滞在日数をそれぞれ算出する滞在日数算出部と、
    を更に備え、
    前記形状変化部は、角層細胞を示す各角化細胞モデルの厚みを、前記角層のバリア指数目標値又は目標細胞厚に基づいて設定し、
    前記細胞種別設定部は、前記各角化細胞モデルの発生からの経過時間と、前記有棘層及び前記顆粒層の各最大滞在日数との比較により、前記各角化細胞モデルの細胞種別を、有棘細胞、顆粒細胞及び角層細胞のいずれか1つにそれぞれ設定する、
    請求項1から5のいずれか1項に記載の表皮組織シミュレーション装置。
  9. 角化細胞を表す角化細胞モデルを用いて表皮組織の挙動を模擬する表皮組織シミュレーション方法において、
    コンピュータが、
    角化細胞の任意の分裂速度の情報を取得し、
    前記取得された分裂速度に応じて、有棘細胞を示す新たな角化細胞モデルを順次生成し、
    前記生成された各角化細胞モデルに関し、皮膚表面方向の厚み、生成されてからの経過時間、細胞種別及び位置を細胞モデル情報記憶部にそれぞれ格納し、
    前記細胞モデル情報記憶部に格納される各角化細胞モデルの厚みを、各角化細胞モデルの細胞種別に応じた細胞厚の減少速度と各角化細胞モデルが生成されてからの経過時間とに応じてそれぞれ変化させ、
    前記設定された各角化細胞モデルの厚み、又は、各角化細胞モデルの経過時間に基づいて、前記各角化細胞モデルの細胞種別を、有棘細胞、顆粒細胞、角層細胞の順にそれぞれ変化させ、
    角化細胞モデルの厚みと負の相関を持ちかつ角化細胞モデルのバリア性能の高さを示すバリア指数を角層細胞を示す全角化細胞モデルについて合計して得られるバリア指数総和が所定閾値を超えるか否かを判定し、
    前記所定閾値を超えたと判定される場合に、発生からの経過時間が最も長い、又は、最上層にある角化細胞モデルに関し前記細胞モデル情報記憶部に格納される情報を前記表皮組織から剥離された状態に設定する、
    ことを含む表皮組織シミュレーション方法。
  10. コンピュータに角化細胞を表す角化細胞モデルを用いて表皮組織の挙動を模擬させるプログラムにおいて、
    角化細胞の任意の分裂速度の情報を取得する速度取得部と、
    前記速度取得部により取得された分裂速度に応じて、有棘細胞を示す新たな角化細胞モデルを順次生成する細胞モデル生成部と、
    前記細胞モデル生成部により生成された各角化細胞モデルに関し、皮膚表面方向の厚み、生成されてからの経過時間、細胞種別及び位置をそれぞれ格納する細胞モデル情報記憶部と、
    前記細胞モデル情報記憶部に格納される各角化細胞モデルの厚みを、各角化細胞モデルの細胞種別に応じた細胞厚の減少速度と各角化細胞モデルが生成されてからの経過時間とに応じてそれぞれ変化させる形状変化部と、
    前記形状変化部により設定された各角化細胞モデルの厚み、又は、各角化細胞モデルの経過時間に基づいて、前記各角化細胞モデルの細胞種別を、有棘細胞、顆粒細胞、角層細胞の順にそれぞれ変化させる細胞種別設定部と、
    角化細胞モデルの厚みと負の相関を持ちかつ角化細胞モデルのバリア性能の高さを示すバリア指数を角層細胞を示す全角化細胞モデルについて合計して得られるバリア指数総和が所定閾値を超えるか否かを判定し、該所定閾値を超えたと判定される場合に、発生からの経過時間が最も長い、又は、最上層にある角化細胞モデルに関し前記細胞モデル情報記憶部に格納される情報を前記表皮組織から剥離された状態に設定する剥離設定部と、
    を前記コンピュータに実現させるプログラム。
JP2012034246A 2012-02-20 2012-02-20 表皮組織シミュレーション装置及び表皮組織シミュレーション方法 Active JP5651617B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012034246A JP5651617B2 (ja) 2012-02-20 2012-02-20 表皮組織シミュレーション装置及び表皮組織シミュレーション方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012034246A JP5651617B2 (ja) 2012-02-20 2012-02-20 表皮組織シミュレーション装置及び表皮組織シミュレーション方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013169291A true JP2013169291A (ja) 2013-09-02
JP5651617B2 JP5651617B2 (ja) 2015-01-14

Family

ID=49263664

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012034246A Active JP5651617B2 (ja) 2012-02-20 2012-02-20 表皮組織シミュレーション装置及び表皮組織シミュレーション方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5651617B2 (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015165367A (ja) * 2014-03-03 2015-09-17 国立大学法人九州工業大学 生体組織シミュレーション方法及びその装置
WO2015159767A1 (ja) * 2014-04-18 2015-10-22 ソニー株式会社 情報処理装置、情報処理方法、及び、プログラム
US10490298B2 (en) 2015-09-11 2019-11-26 Korea Institute Of Science And Technology Information Simulation apparatus and method for intracellular responses
CN117153251A (zh) * 2023-08-26 2023-12-01 浙江深华生物科技有限公司 一种淋巴瘤微小残留病灶监控位点筛选方法及系统
JP7521996B2 (ja) 2020-10-13 2024-07-24 株式会社 資生堂 シミュレーション画像生成方法、コンピュータ、およびプログラム

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005230314A (ja) * 2004-02-20 2005-09-02 Shiseido Co Ltd 表皮ターンオーバーの測定方法
JP2006087913A (ja) * 2004-08-25 2006-04-06 Matsushita Electric Works Ltd 体内成分の定量分析用検量線の作成方法、および同検量線を用いた定量分析装置
JP2012145988A (ja) * 2011-01-07 2012-08-02 Kao Corp 生体組織のシミュレーション方法

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005230314A (ja) * 2004-02-20 2005-09-02 Shiseido Co Ltd 表皮ターンオーバーの測定方法
JP2006087913A (ja) * 2004-08-25 2006-04-06 Matsushita Electric Works Ltd 体内成分の定量分析用検量線の作成方法、および同検量線を用いた定量分析装置
JP2012145988A (ja) * 2011-01-07 2012-08-02 Kao Corp 生体組織のシミュレーション方法

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6014044794; 長山雅晴,坂井昭彦,中田聡,北畑裕之,傳田光洋: '角層形成の数理モデル' 計算工学講演会論文集 CD-ROM Vol.16, 201105, 計算工学会 *

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015165367A (ja) * 2014-03-03 2015-09-17 国立大学法人九州工業大学 生体組織シミュレーション方法及びその装置
WO2015159767A1 (ja) * 2014-04-18 2015-10-22 ソニー株式会社 情報処理装置、情報処理方法、及び、プログラム
JPWO2015159767A1 (ja) * 2014-04-18 2017-04-13 ソニー株式会社 情報処理装置、情報処理方法、及び、プログラム
US11324438B2 (en) 2014-04-18 2022-05-10 Sony Corporation Information processing apparatus, information processing method, and non-transitory computer-readable medium for acquiring and displaying a skin condition analysis result based on an epidermis image
US10490298B2 (en) 2015-09-11 2019-11-26 Korea Institute Of Science And Technology Information Simulation apparatus and method for intracellular responses
JP7521996B2 (ja) 2020-10-13 2024-07-24 株式会社 資生堂 シミュレーション画像生成方法、コンピュータ、およびプログラム
CN117153251A (zh) * 2023-08-26 2023-12-01 浙江深华生物科技有限公司 一种淋巴瘤微小残留病灶监控位点筛选方法及系统

Also Published As

Publication number Publication date
JP5651617B2 (ja) 2015-01-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Costabal et al. Machine learning in drug development: Characterizing the effect of 30 drugs on the QT interval using Gaussian process regression, sensitivity analysis, and uncertainty quantification
Sütterlin et al. A 3D self-organizing multicellular epidermis model of barrier formation and hydration with realistic cell morphology based on EPISIM
JP5651617B2 (ja) 表皮組織シミュレーション装置及び表皮組織シミュレーション方法
Roux et al. The interaction between central and peripheral processes in handwriting production
Flynn et al. Simulating the wrinkling and aging of skin with a multi-layer finite element model
Zhao et al. A multi-layered model of human skin elucidates mechanisms of wrinkling in the forehead
Van Logtestijn et al. Resistance to water diffusion in the stratum corneum is depth-dependent
Alimohammadi et al. Development of a patient-specific multi-scale model to understand atherosclerosis and calcification locations: comparison with in vivo data in an aortic dissection
Saarikallio et al. Dance moves reflect current affective state illustrative of approach–avoidance motivation.
Zhao et al. A multi-layered computational model for wrinkling of human skin predicts aging effects
Schwartz et al. Grounding stop place systems in the perceptuo-motor substance of speech: On the universality of the labial–coronal–velar stop series
EP2074548A2 (en) Method and apparatus for modeling atherosclerosis
Sigal An applet to estimate the IOP-induced stress and strain within the optic nerve head
Kobayashi et al. Mathematical model for calcium-assisted epidermal homeostasis
Wang et al. GPU acceleration of volumetric lattice Boltzmann method for patient-specific computational hemodynamics
Mazza et al. 3D mechanical modeling of facial soft tissue for surgery simulation
Zanca et al. Push or pull? Cell proliferation and migration during wound healing
Ricardez et al. SutureHap: Use of a physics engine to enable force feedback generation on deformable surfaces simulations
Jin et al. Hybrid simulation of brain–skull growth
Janiš et al. Comparison of metrological techniques for evaluation of the impact of a cosmetic product containing hyaluronic acid on the properties of skin surface
Celikoyar et al. Three-dimensional (3D) area and volume measurements for rhinoplasty
JP5635420B2 (ja) 生体組織のシミュレーション方法
Desouky et al. Patient-specific air puff-induced loading using machine learning
Dzwinel et al. Continuous and discrete models of melanoma progression simulated in multi-GPU environment
JP2011258084A (ja) 生体内シミュレーション装置、生体内シミュレーション方法、および、プログラム

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20131209

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20140917

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20141028

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20141117

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5651617

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250