JP2013163191A - 製造プロセスの操業支援装置、方法及びプログラム - Google Patents

製造プロセスの操業支援装置、方法及びプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】連続する製造物が連続的に流れる製造プロセスを離散モデリングし、その離散モデルを利用して製造プロセスの操業を支援できるようにする。
【解決手段】連続鋳造プロセスを製造物の流れ方向に複数のステージに分け、ステージ毎に製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、各ステージ内での影響関係を定義して離散モデリングする。可到達木作成部12は、その離散モデルに基づいて、入力装置16で入力、指定された危機状態により特定されるステージ及び製造物の属性に限定したかたちで、初期状態から当該危機状態に至るまでの経路を表わす状態遷移図である可到達木を作成する。そして、リスクマトリクス作成部13は、可到達木作成部12により作成した可到達木を用いて、発生確度と危険度との関係を表わすリスクマトリクスを作成する。
【選択図】図27

Description

本発明は、例えば連続鋳造プロセスのように、連続する製造物が連続的に流れる製造プロセスの操業を支援するのに好適な操業支援装置、方法及びプログラムに関する。
連続鋳造の安定操業を実現するためには、操業者が常に適切なオペレーションを判断、選択する必要があり、そのためには、設備や製品の状態を精度良く予測することが重要である。
上記予測のために、操業者、特に熟練者は、連続鋳造プロセスにおける鋼の状態に関する断片的な情報を因果関係により統合することにより、連続鋳造プロセスの認知モデルを構築している。そして、操業者は、頭の中に連続鋳造プロセスの認知モデルを知識として持つため、鋼の状態を推定し、将来状態を予測し、適切なオペレーションを実施することによってトラブルを回避してきた。
一方で、近年では、熟練者の減少による生産性低下、操業トラブル発生等が増加しており、熟練者でなくても適切なオペレーションを実施できるように支援することが求められている。
上記のような熟練者減少への対応として、物理現象を統計解析手法により表現した数値モデルを用いたシミュレーションを行うことで操業状態を予測する方法がある。例えば特許文献1には、主成分分析、独立成分分析、Wavelet解析のいずれかの手法を応用することで作成した数値モデルを用いて操業状態を予測している。様々な操業因子をモデルに組み込むことができるため複雑なプロセスであっても数値モデルを作成することができる。
さらに、時系列データベースから過去の操業状態の類似事例を検索し、操業状態の将来予測する方法もある。例えば特許文献2には、類似事例の検索の前処理として、時系列データのノイズを削減することで、時間スケールに対して周期の短い操業因子が多数含まれるような複雑なプロセスであっても、実用上十分な予測精度を得ることができるとされている。
特開2010−214417号公報 特開2009−76037号公報
村田 忠夫:ペトリネットの解析と応用、近代科学社(1992)
しかしながら、一般に、連続系プロセスには、製品の物質としての状態が温度や成分によって様々な形態をとる、その状態が時間や設備の操業次第で変化する、製品の状態が設備の状態を変化させ、それがまた製品の状態に影響を及ぼす、等複雑な相互干渉が存在する。特許文献1や特許文献2に開示の技術は、簡便な方法で操業状態を予測することを狙ったものであるが、上述のような設備や製品の状態が複雑に干渉する現象のモデルを精度高く構築することは難しい。
そこで、熟練者の頭の中の認知モデルが、上述のような設備や製品の状態の複雑な相互干渉をも考慮したものであることに注目して、これまでは熟練者の頭の中にあった連続鋳造プロセスの認知モデルを客観的にする、すなわち鋼の状態遷移における因果関係をモデリングして、操業トラブル回避や操業トラブル発生時のアクションをガイダンスできるようにすることが求められている。
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、連続する製造物が連続的に流れる製造プロセスを離散モデリングし、その離散モデルを利用して製造プロセスの操業を支援できるようにすることを目的とする。
本発明の製造プロセスの操業支援装置は、連続する製造物が連続的に流れる製造プロセスの操業を支援するための操業支援装置であって、前記製造プロセスを製造物の流れ方向に複数のステージに分け、ステージ毎に製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、各ステージ内での製造物の属性の状態と設備の状態との間の影響関係を定義して作成した離散モデルを格納する格納手段と、ステージ及び製造物の属性の状態を特定して定義され、前記製造プロセスのトラブル発生の恐れが高い状態である危機状態を指定する指定手段と、前記離散モデルに基づいて、前記指定手段で指定された危機状態により特定されるステージ及び製造物の属性に限定したかたちで、初期状態から前記危機状態に至るまでの経路を表わす状態遷移図を作成する状態遷移図作成手段とを備えたことを特徴とする。
また、本発明の製造プロセスの操業支援装置の他の特徴とするところは、前記状態遷移図作成手段により作成した状態遷移図を用いて、前記状態遷移図を構成する各状態の発生確度と危険度との関係を表わすリスクマトリクスを作成するリスクマトリクス作成手段を備えた点にある。
また、本発明の製造プロセスの操業支援装置の他の特徴とするところは、前記状態遷移図作成手段により作成した一の危機状態に至るまでの経路を表わす状態遷移図と、他の危機状態に至るまでの経路を表わす状態遷移図とに基づいて、前記一の危機状態に至るまでの経路において、前記製造プロセスに対するあるオペレーションを実施した場合、当該オペレーションが前記他の危機状態に至るまでの経路に対して影響を与えるかどうかを判定する判定手段を備えた点にある。この場合、前記判定手段は、前記オペレーションを実施して前記一の危機状態に至るまでの経路に含まれる製造物の属性の状態が変化することにより、前記他の危機状態に至るまでの経路に含まれる製造物の属性の状態が変化するかどうかを、前記離散モデルに基づいて判定し、前記他の危機状態に至るまでの経路に含まれる製造物の属性の状態が変化する場合、前記オペレーションが前記他の危機状態に至るまでの経路に対して影響を与えると判定する。
また、本発明の製造プロセスの操業支援装置の他の特徴とするところは、前記状態遷移図作成手段により作成した複数の危機状態についての状態遷移図において前記初期状態から前記各危機状態に至るまでの最短経路をそれぞれ抽出し、列挙する俯瞰情報作成手段を備えた点にある。
また、本発明の製造プロセスの操業支援装置の他の特徴とするところは、前記離散モデルでは、同時刻に別ステージに存在する製造物から受ける影響である、ステージ間での製造物の属性間の影響関係を更に定義している点にある。
また、本発明の製造プロセスの操業支援装置の他の特徴とするところは、前記離散モデルでは、上流側のステージでの製造物の属性の状態が、製造物の移動に伴って下流側のステージに受け渡される関係を更に定義している点にある。
本発明の製造プロセスの操業支援方法は、連続する製造物が連続的に流れる製造プロセスの操業を支援するための操業支援方法であって、ステージ及び製造物の属性の状態を特定して定義され、前記製造プロセスのトラブル発生の恐れが高い状態である危機状態を指定する指定ステップと、前記製造プロセスを製造物の流れ方向に複数のステージに分け、ステージ毎に製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、各ステージ内での製造物の属性の状態と設備の状態との間の影響関係を定義して作成した離散モデルに基づいて、前記指定ステップで指定された危機状態により特定されるステージ及び製造物の属性に限定したかたちで、初期状態から前記危機状態に至るまでの経路を表わす状態遷移図を作成する状態遷移図作成ステップとを有することを特徴とする。
本発明のプログラムは、連続する製造物が連続的に流れる製造プロセスの操業を支援するためのプログラムであって、前記製造プロセスを製造物の流れ方向に複数のステージに分け、ステージ毎に製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、各ステージ内での製造物の属性の状態と設備の状態との間の影響関係を定義して作成した離散モデルを格納する格納手段と、ステージ及び製造物の属性の状態を特定して定義され、前記製造プロセスのトラブル発生の恐れが高い状態である危機状態を指定する指定手段と、前記離散モデルに基づいて、前記指定手段で指定された危機状態により特定されるステージ及び製造物の属性に限定したかたちで、初期状態から前記危機状態に至るまでの経路を表わす状態遷移図を作成する状態遷移図作成手段としてコンピュータを機能させる。
本発明によれば、計算量を抑えながら、初期状態から危機状態に至るまでの経路を表わす状態遷移図を作成できるとともに、操業者にとって必要な、危機状態に関係のある情報だけを抽出して危機状態に至るまでの経路を提示することができ、製造プロセスの操業を支援することができる。
連続鋳造プロセスの概要を示す図である。 連続鋳造プロセスの離散モデリングの手順を示すフローチャートである。 各ステージの製造物の属性を説明する図である。 ペトリネットを説明する図である。 TDステージでの製造物の属性の状態遷移モデル及び設備の状態遷移モデルを示す図である。 鋳型ステージでの製造物の温度及び湯面レベルの状態遷移モデルと、垂直領域ステージでの製造物のバルジングの状態遷移モデルを示す図である。 ノズルステージでの製造物の流量の状態遷移モデルと、鋳型ステージでの製造物の湯面レベルの状態遷移モデルを示す図である。 操業支援1を行うのに好適な連続鋳造プロセスの操業支援装置の構成例を示す図である。 操業支援装置による操業支援1の手順を示すフローチャートである。 TDステージの状態遷移モデルから作成した可到達木を示す図である。 鋳型ステージでの製造物の温度及び湯面レベルの状態遷移モデルから作成した可到達木と、垂直領域ステージでの製造物のバルジングの状態遷移モデルから作成した可到達木とを示す図である。 図6に対応する鋳型ステージ及び垂直領域ステージの可到達木を示す図である。 鋳型ステージでの製造物の温度及び湯面レベルの状態遷移モデルと、垂直領域ステージでの製造物のバルジングの状態遷移モデルを示す図である。 図13に対応する鋳型ステージ及び垂直領域ステージの可到達木を示す図である。 リスクマトリクスの例を示す図である。 リスクマトリクスの例を示す図である。 製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを分離して作成した可到達木を示す模式図である。 ある危機状態が指定された場合の可到達木を示す模式図である。 ある危機状態が指定された場合のリスクマトリクスを示す模式図である。 2つの危機状態についてのリスクマトリクスを示す模式図である。 一の危機状態に至るまでの経路を表わす可到達木のリスクマトリクスを示す模式図であり、オペレーションにより「状態」が遷移する様子を示す図である。 連続鋳造プロセスの離散モデルにおける製造物の属性間の関係を示す図である。 他の危機状態に至るまでの経路を表わす可到達木のリスクマトリクスを示す模式図である。 俯瞰情報を示す模式図である。 俯瞰情報において、ある危機状態を回避するためのオペレーションを実施する際に、他のどの危機状態に至るまでの経路が影響を受けるかを説明するための図である。 製造物の属性の状態を減らす変換を説明するための図である。 操業支援2を行うのに好適な連続鋳造プロセスの操業支援装置の構成例を示す図である。 操業支援装置が出力装置に表示する画面の例を示す図である。 操業支援装置が出力装置に表示する画面の例を示す図である。 事例1の俯瞰情報を示す図である。 事例2の俯瞰情報を示す図である。 事例3の俯瞰情報を示す図である。 事例3の俯瞰情報を示す図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
[連続鋳造プロセスの概要]
連続鋳造プロセスでは、図1に示すように、不図示の転炉で作られた溶鋼が二次精錬を経て取鍋100に入れられ、連続鋳造設備の最上部に運ばれる。溶鋼は、取鍋100の底部から下のタンディッシュ200へ注がれる。そして、タンディッシュ200に注がれた溶鋼は、タンディッシュ200の底部からノズル300を介して鋳型400へと注がれる。鋳型400に接触した溶鋼は精密に調整されながら冷やされて凝固して鋼片となり、不図示のロールで運ばれながら、ロール列末端にある不図示のガス切断機で適度な長さに切断される。
[連続鋳造プロセスの離散モデリング]
まず、図1に示したような連続鋳造プロセスの離散モデリングについて説明する。連続鋳造プロセスでは、連続する(物理的に繋がっている)製造物(溶鋼、鋼片)が連続的に流れる(移動する)。このように「連続」という特徴を持つ連続鋳造プロセスを離散モデリングすることは、「連続」の中に認知される因果関係を抽出し、それを離散モデルとして定義することに相当する。そこで、製造物の状態をステージ毎に定義し、離散化することとしている。
図2に、連続鋳造プロセスの離散モデリングの手順を示す。最初に、連続鋳造プロセスを、製造物が流れる方向に複数のステージに分ける(ステップS101)。本実施形態では、図3に示すように、上流側からタンディッシュステージ(TDステージ)、ノズルステージ、鋳型ステージ、及び垂直領域ステージでの4つに分けている。
次に、ステージ毎に、製造物の属性及びその状態を定義する(ステップS102)。例えば、図3に示すように、TDステージでの製造物の属性及びその状態として、温度(高・普・低)、粘性(高・普)を定義している。また、ノズルステージでの製造物の属性及びその状態として、温度(高・普・低)、流量(適切・少)、流れ(整流・偏流)を定義している。また、鋳型ステージでの製造物の属性及びその状態として、温度(高・普・低)、温度均一性(均一・不均一)、シェル厚(適切・薄)、シェル均一性(均一・不均一)、介在物(有り・無し)、表面引張応力(強い・弱い)、湯面レベル(適切・低)を定義している。また、垂直領域ステージでの製造物の属性及びその状態として、温度(高・普・低)、シェル厚(適切・薄)、バルジング有無(有り・無し)を定義している。なお、ここで挙げた製造物の属性及びその状態は一例であり、これに限定されるものではない。
次に、ステージ毎に、製造物の属性の状態の遷移経路を定義する(ステップS103)。例えば各ステージにおいて、製造物の温度については、温度高と温度低との間の移動は、必ず温度普を経てから移動する等の遷移経路を定義する。
次に、ステージ毎に、製造物の属性の状態遷移モデルM1を作成する(ステップS104)。本実施形態では、製造物の属性の状態遷移モデルM1をペトリネットで作成する。ペトリネットは並列非同期同時進行する複数のプロセスからなる離散事象システムを表現するグラフィカルで実行可能な数学モデルであり、図4に示すように、状態をプレースP、遷移をトランジションTとして記述し、トランジションTの発火によりトークンが入力側のプレースP1、P2から出力側のプレースP3に移動することで、対象の振る舞いを表現する。なお、ペトリネットについては非特許文献1等に詳しく記述されている。
図5には、TDステージでの製造物の属性の状態遷移モデルTD−M1を示す。温度について、温度高のプレース、温度普のプレース及び温度低のプレースがトランジションT9〜T12を介して接続する。温度低のプレースにトークンがある場合、トランジションT11が発火可能であり、発火するとトークンが温度普のプレースに移動する。また、温度普のプレースにトークンがある場合、トランジションT9が発火可能であり、発火するとトークンが温度高のプレースに移動する。また、温度高のプレースにトークンがある場合、トランジションT10が発火可能であり、発火するとトークンが温度普のプレースに移動する。また、温度普のプレースにトークンがある場合、トランジションT12が発火可能であり、発火するとトークンが温度低のプレースに移動する。
また、粘性について、粘性高のプレース及び粘性普のプレースがトランジションT13及びT14を介して接続する。粘性高のプレースにトークンがある場合、トランジションT14が発火可能であり、発火するとトークンが粘性普のプレースに移動する。また、粘性普のプレースにトークンがある場合、トランジションT13が発火可能であり、発火するとトークンが粘性(高)のプレースに移動する。
なお、ここではTDステージでの製造物の属性の状態遷移モデルTD−M1について詳述したが、ノズルステージ、鋳型ステージ、及び垂直領域ステージについても、それぞれ製造物の属性の状態遷移モデルNOZ−M1、MD−M1、V−M1を作成する。
全ステージについて製造物の属性の状態遷移モデルM1を作成したならば(ステップS105)、ステージ毎に、設備及びその状態を定義する(ステップS106)。本実施形態では、TDステージでの設備及びその状態として、プラズマ加熱装置(ON・OFF・故障)、バブリング(ON・OFF・故障)を定義している。また、ノズルステージでの設備及びその状態として、ノズル(定常用(不詰)・非定常用・故障(偏詰)・故障(詰))、スライド(定常用・非定常用(広)・故障)を定義している。また、鋳型ステージでの設備及びその状態として、パウダー投入機(定常用・非定常用(別パタン)・故障)、スプリンクラー(定常用・非定常用(強)・故障)、ローラー(定常用・非定常用(引抜速度遅)・故障)を定義している。なお、ここで挙げた設備及びその状態は一例であり、これに限定されるものではない。
次に、ステージ毎に、設備の状態の遷移経路を定義する(ステップS107)。例えばTDステージにおいて、プラズマ加熱装置(ON・OFF・故障)については、プラズマ加熱装置(故障)には必ずプラズマ加熱装置(OFF)から移動する等の遷移経路を定義する。
次に、ステージ毎に、設備の状態遷移モデルM2を作成する(ステップS108)。本実施形態では、設備の状態遷移モデルM2もペトリネットで作成する。
図5には、TDステージでの設備の状態遷移モデルTD−M2を示す。プラズマ加熱装置について、ONのプレース、OFFのプレース及び故障のプレースがトランジションT1〜T3を介して接続する。OFFのプレースにトークンがある場合、トランジションT1が発火可能であり、発火するとトークンが故障のプレースに移動する。また、OFFのプレースにトークンがある場合、トランジションT3が発火可能であり、発火するとトークンがONのプレースに移動する。また、ONのプレースにトークンがある場合、トランジションT2が発火可能であり、発火するとトークンがOFFのプレースに移動する。
また、バブリングについて、ONのプレース、OFFのプレース及び故障のプレースがトランジションT5〜T7を介して接続する。OFFのプレースにトークンがある場合、トランジションT5が発火可能であり、発火するとトークンが故障のプレースに移動する。また、OFFのプレースにトークンがある場合、トランジションT7が発火可能であり、発火するとトークンがONのプレースに移動する。また、ONのプレースにトークンがある場合、トランジションT6が発火可能であり、発火するとトークンがOFFのプレースに移動する。
なお、ここではTDステージでの設備の状態遷移モデルTD−M2について詳述したが、ノズルステージ、鋳型ステージ、及び垂直領域ステージについても、それぞれ設備の状態遷移モデルNOZ−M2、MD−M2、V−M2を作成する。
全ステージについて設備の状態遷移モデルM2を作成したならば(ステップS109)、ステージ毎に、ステージ内での影響関係を定義する(ステップS110)。表1には、TDステージ内での設備の状態と製造物の属性の状態との影響関係を定義した内容を示す。表1に示すように、プラズマ加熱装置がONであるとき、製造物の属性のうち温度が、温度低の状態であれば温度普に、温度普の状態であれば温度高に遷移することを定義している。また、バブリングがONであるとき、製造物の属性のうち温度が、温度高の状態であれば温度普に、温度普の状態であれば温度低に遷移することを定義している。
Figure 2013163191
次に、ステップS110において定義した、設備の状態と製造物の属性の状態との影響関係を状態遷移モデル(製造物の属性の状態遷移モデルM1及び設備の状態遷移モデルM2)に組み込む(ステップS111)。図5に示すように、プラズマ加熱装置の状態遷移モデルにおいてONのプレースにトークンがあるとき、条件アークを介してトランジションT4が発火する。その結果、温度の状態遷移モデルにおいて温度低のプレースにトークンがある場合、トランジションT4と許可同期アークで結ばれたトランジションT11が発火して、トークンが温度普のプレースに移動する。また、温度普のプレースにトークンがある場合、トランジションT4と許可同期アークで結ばれたトランジションT9が発火して、トークンが温度高のプレースに移動する。また、バブリングの状態遷移モデルにおいてONのプレースにトークンがあるとき、条件アークを介してトランジションT8が発火する。その結果、温度の状態遷移モデルにおいて温度高のプレースにトークンがある場合、トランジションT8と許可同期アークで結ばれたトランジションT10が発火して、トークンが温度普のプレースに移動する。また、温度普のプレースにトークンがある場合、トランジションT8と許可同期アークで結ばれたトランジションT12が発火して、トークンが温度高のプレースに移動する。なお、許可同期アークとは、始点のトランジションが発火すると終点のトランジションが必ず発火することを表わす。また、条件アークとは、始端プレースにトークンが存在するときに発火可能であることを表わす。
なお、ここではTDステージ内での製造物の属性の状態遷移モデルTD−M1及び設備の状態遷移モデルTD−M2について詳述したが、ノズルステージ、鋳型ステージ、及び垂直領域ステージについても、それぞれステージ内での設備の状態と製造物の属性の状態との影響関係を状態遷移モデル(製造物の属性の状態遷移モデルM1及び設備の状態遷移モデルM2)に組み込む。
また、ここではステージ内での設備の状態と製造物の属性の状態との影響関係について説明したが、例えばステージ内での製造物の属性間の影響関係を定義するようにしてもよい。例えば鋳型ステージ内で温度均一性はシェル均一性に影響するので(温度均一であればシェル均一、温度不均一であればシェル不均一)、その影響関係を状態遷移モデル(製造物の属性の状態遷移モデルM1)に組み込むようにしてもよい。
全ステージについてステージ内での影響関係を取り込んだならば(ステップS112)、ステージ間での製造物の属性間の影響関係を定義する(ステップS113)。ステージ間での製造物の属性間の影響関係とは、略同時刻に別ステージに存在する製造物から受ける影響である。例えば垂直領域でバルジングが生じると、略同時刻に、その上流側の鋳型で湯面振動が生じ、湯面レベルに影響を与えることがわかっている。したがって、図3の破線の矢印31に示すように、垂直領域ステージでのバルジング有無は、その上流側の鋳型ステージでの湯面レベルに影響を与えると定義している。すなわち、垂直領域ステージでのバルジングが有りの場合、鋳型ステージでの湯面レベルが適切であれば低に遷移することを定義している。また、垂直領域ステージでのバルジングが無しの場合、鋳型ステージでの湯面レベルが低であれば適切に遷移することを定義している。
次に、ステップS113において定義した、ステージ間での製造物の属性間の影響関係(図3の矢印31)を状態遷移モデル(製造物の属性の状態遷移モデルM1及び設備の状態遷移モデルM2)に組み込む(ステップS114)。図6には、鋳型ステージでの製造物の属性の状態遷移モデルMD−M1の一部(温度及び湯面レベル)と、垂直領域ステージでの製造物の属性の状態遷移モデルV−M1の一部(バルジング)を示す。これら状態遷移モデルM1はステップS104において作成されたものである。鋳型ステージでの温度については、温度低のプレースにトークンがある場合、トランジションT301が発火可能であり、発火するとトークンが温度高のプレースに移動する。また、温度高のプレースにトークンがある場合、トランジションT302が発火可能であり、発火するとトークンが温度低のプレースに移動する。なお、温度の状態として(高・普・低)を定義していると説明したが、図6では説明を簡単にするために(高・低)の状態だけを図示する。鋳型ステージでの湯面レベルについては、適切のプレースにトークンがある場合、トランジションT303が発火可能であり、発火するとトークンが低のプレースに移動する。また、低のプレースにトークンがある場合、トランジションT304が発火可能であり、発火するとトークンが適切のプレースに移動する。垂直領域ステージでのバルジングについては、バルジング無しのプレースにトークンがある場合、トランジションT401が発火可能であり、発火するとトークンがバルジング有りのプレースに移動する。また、有りのプレースにトークンがある場合、トランジションT402が発火可能であり、発火するとトークンが無しのプレースに移動する。
そして、図6に示すように、垂直領域ステージでのバルジングの状態遷移モデルにおいて有りのプレースにトークンがあるとき、条件アークを介してトランジションT501が発火する。その結果、鋳型ステージでの湯面レベルの状態遷移モデルにおいて適切のプレースにトークンがある場合、トランジションT501と許可同期アークで結ばれたトランジションT303が発火して、トークンが低のプレースに移動する。また、垂直領域ステージでのバルジングの状態遷移モデルにおいて無しのプレースにトークンがあるとき、条件アークを介してトランジションT502が発火する。その結果、鋳型ステージでの湯面レベルの状態遷移モデルにおいて低のプレースにトークンがある場合、トランジションT501と許可同期アークで結ばれたトランジションT304が発火して、トークンが適切のプレースに移動する。
なお、本実施形態では、下流側のステージでの製造物の属性が上流側のステージでの製造物の属性に影響を与える例を説明したが、その逆、すなわち上流側のステージでの製造物の属性が下流側のステージでの製造物の属性に影響を与えることもありうる。
次に、上流側のステージでの製造物の属性の状態が、製造物の移動に伴って下流側のステージに受け渡される関係を定義する(ステップS115)。図3の実線の矢印32に示すように、例えばTDステージでの温度は、その下流側のノズルステージでの温度に受け渡されると定義している。すなわち、TDステージでの温度が高くなれば、その下流側のノズルステージでの温度も高くなり、TDステージでの温度が普通になれば、その下流側のノズルステージでの温度も普通になり、TDステージでの温度が低くなれば、その下流側のノズルステージでの温度も低くなる。以下同様に、ノズルステージでの温度は鋳型ステージでの温度に受け渡され、鋳型ステージでの温度は垂直領域ステージでの温度に受け渡されると定義している。
また、ノズルステージでの流量は、その下流側の鋳型ステージでの湯面レベルに受け渡されると定義している。すなわち、ノズルステージでの流量が適切になれば、その下流側の鋳型ステージでの湯面レベルも適切になり、ノズルステージでの流量が少なくなれば、その下流側の鋳型ステージでの湯面レベルも低くなる。
また、ノズルステージでの流れは、その下流側の鋳型ステージでの温度均一性に受け渡されると定義している。すなわち、ノズルステージでの流れが整流になれば、その下流側の鋳型ステージでの温度均一性も均一になり、ノズルステージでの流れが偏流になれば、その下流側の鋳型ステージでの温度均一性も不均一になる。
次に、ステップS115において定義した、上流側のステージでの製造物の属性の状態が、製造物の移動に伴って下流側のステージに受け渡される関係(図3の矢印32)を状態遷移モデル(属性の状態遷移モデルM1及び設備の状態遷移モデルM2)に組み込む(ステップS116)。図7には、ノズルステージでの製造物の属性の状態遷移モデルNOZ−M1の一部(流量)と、鋳型ステージでの製造物の属性の状態遷移モデルMD−M1の一部(湯面レベル)を示す。これら状態遷移モデルM1はステップS104において作成されたものである。ノズルステージでの流量については、適切のプレースにトークンがある場合、トランジションT201が発火可能であり、発火するとトークンが少のプレースに移動する。また、少のプレースにトークンがある場合、トランジションT202が発火可能であり、発火するとトークンが適切のプレースに移動する。鋳型ステージでの湯面レベルについては、図6で説明したとおりである。
そして、図7に示すように、ノズルステージでの流量の状態遷移モデルの適切のプレースと、その下流側の鋳型ステージでの湯面レベルの状態遷移モデルの適切のプレースとがトランジションT601を介して接続し、また、ノズルステージでの流量の状態遷移モデルの少のプレースと、その下流側の鋳型ステージでの湯面レベルの状態遷移モデルの低のプレースとがトランジションT602を介して接続する。以下、ステップS116において定義するトランジションを受け渡しトランジションと称する。ノズルステージでの流量の状態遷移モデルの適切のプレースにトークンがある場合、受け渡しトランジション601が発火可能であり、発火するとその下流側の鋳型ステージでの湯面レベルの状態遷移モデルの適切のプレースにトークンが移動する。また、ノズルステージでの流量の状態遷移モデルの少のプレースにトークンがある場合、受け渡しトランジション602が発火可能であり、発火するとその下流側の鋳型ステージでの湯面レベルの状態遷移モデルの低のプレースにトークンが移動する。
なお、更にその下流のステージにつながるときは、対応するプレースが受け渡しトランジションを介して接続する。図7の例では、湯面レベルはその下流側のステージにつながらないので、出側にプレースが接続しない受け渡しトランジションT603、T604を定義しておく。
ステップS116において定義する受け渡しトランジション(図7の例では受け渡しトランジションT601〜T604)は、単独で発火することはなく、いずれかのステージで製造物の属性の状態が変化したとき、全てが同時に発火する。例えば図7に示す状態(ノズルステージでの流量の状態遷移モデルの適切のプレースにトークンがあり、鋳型ステージでの湯面レベルの状態遷移モデルの適切のプレースにトークンがある状態)で、ノズルステージの流量が少なくなると(流量の少のプレースにトークンが移動すると)、全ての受け渡しトランジションが同時に発火する。その結果、受け渡しトランジションT602の発火により流量の少のプレースのトークンが湯面レベルの低のプレースに移動するとともに、受け渡しトランジションT603の発火により湯面レベルの適切のプレースのトークンが消えることになる。再度、いずれかのステージで製造物の属性が変化したとき、全ての受け渡しトランジションが同時に発火する。
また、例えば図7に示す状態で、いずれかのステージの製造物の温度が変化すると、全ての受け渡しトランジションが同時に発火する。その結果、受け渡しトランジションT601の発火により流量の適切のプレースのトークンが湯面レベルの適切のプレースに移動するとともに、受け渡しトランジションT603の発火により湯面レベルの適切のプレースのトークンが消えることになるが、この配置では、ノズルステージの流量や鋳型ステージの湯面レベルの状態は温度の変化には影響を受けず、それまでの状態と変わることはない。
以上述べた離散モデリングは、離散モデリングのアルゴリズムを実行可能としたコンピュータ装置を利用して行うことができる。すなわち、オペレータが、ステージの分け方、ステージ毎の製造物の属性及びその状態、製造物の属性の状態の遷移経路を介して入力すると(ステップS101〜ステップS103)、コンピュータ装置が自動的にステージ毎の製造物の属性の状態遷移モデルを作成する(ステップS104)。同様に、オペレータが、ステージ毎の設備及びその状態、設備の状態の遷移経路を入力すると(ステップS106〜ステップS107)、コンピュータ装置が自動的にステージ毎の設備の状態遷移モデルを作成する(ステップS108)。また、オペレータが、ステージ内での影響関係を入力すると(ステップS110)、コンピュータ装置が自動的にその影響関係を状態遷移モデルに組み込む(ステップS111)。また、オペレータが、ステージ間での製造物の属性間の影響関係を入力すると(ステップS113)、コンピュータ装置が自動的にその影響関係を状態遷移モデルに組み込む(ステップS114)。また、オペレータが、上流側のステージでの製造物の属性の状態が、製造物の移動に伴って下流側のステージに受け渡される関係を入力すると(ステップS115)、コンピュータ装置が自動的にその関係を状態遷移モデルに組み込む(ステップS116)。
なお、本実施形態ではペトリネットを説明したが、離散事象システムをモデル化するものであればそれに限定されるものではなく、その他のグラフモデル、例えば有向グラフや無向グラフに本発明を適用することも可能である。例えば有向グラフでは、ペトリネットモデルにおけるプレースは点で表現され、トランジションは矢印付きの線で表現される。矢印付きの線は、点から点へ製品すなわちトークンを移動させる移動操作端であり、移動路の役目をする。また、矢印は、線から点、或いは点から線へトークンが移動する方向を示すものである。このような特徴を有するグラフモデルに本発明を適用する場合も、一連の動作は上述したペトリネットモデルにおける動作と同様であり、詳細な説明は省略する。
[離散モデリングにより作成した離散モデルを利用した操業支援1]
図8は、操業支援1を行うのに好適な連続鋳造プロセスの操業支援装置の構成例を示す図である。1は離散モデリング部であり、上述したように連続鋳造プロセスを製造物の流れ方向に複数のステージに分け、ステージ毎に製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、各ステージ内での影響関係を定義して作成した離散モデルを作成し、格納する。また、必要に応じて、同時刻に別ステージに存在する製造物から受ける影響である、ステージ間での製造物の属性間の影響関係(図3の矢印31)、上流側のステージでの前記製造物の属性の状態が、前記製造物の移動に伴って下流側のステージに受け渡される関係(図3の矢印32)を定義する。
2は可到達木作成部であり、離散モデリング部1で作成した離散モデルを用いて、ステージ毎に初期状態を設定し、当該初期状態から到達可能な状態を示す各ステージの状態遷移図である可到達木を作成する。3は全体可到達木作成部であり、可到達木作成部2により作成した全ステージの可到達木を用いて、連続鋳造プロセス全体の状態遷移図である可到達木を作成する。
4はリスクマトリクス作成部であり、全体可到達木作成部3により作成した連続鋳造プロセス全体の可到達木を用いて、発生確度と危険度との関係を表わすリスクアセスメントマトリクス(本願では単にリスクマトリクスと称する)を作成する。5は入力装置であり、例えば離散モデリング部1が離散モデルを作成する際の各種定義を入力、設定したり、可到達木作成部2が可到達木を作成する際の初期状態を入力、設定したりする。6は出力装置であり、例えばリスクマトリクス作成部4により作成したリスクマトリクスを画面表示する表示装置が該当する。
なお、図8では1台の装置として図示したが、例えば離散モデリングは別の装置で実行し、操業支援装置では作成済みの離散モデルを格納している等、複数台の装置が協働して図8に示す機能構成が実現されるようにしてもよい。
図9に、操業支援装置による操業支援1の手順を示す。まず、上述した離散モデリングにより離散モデルを作成し、格納する(ステップS201)。本例の場合、近い将来に起こり得るリスクを、起こりうる可能性の低いリスクも含めて詳細に提示することを目的としているため、遠い将来すなわち製造物の移動に伴って発生するリスクは考えない。つまり、図2のステップS101〜S114にて離散モデルを作成し、図2のステップS115、S116は行わず、すなわち上流側のステージでの製造物の属性の状態が、製造物の移動に伴って下流側のステージに受け渡される関係(図3の矢印32)を組み込まないで離散モデルを作成する。
次に、ステップS201において作成した離散モデルを用いて、ステージ毎に初期状態、例えば各ステージの現在の状態を設定し、その初期状態から遷移可能(到達可能)な可到達木を作成する(ステップS202)。可到達木は、図10に示すように、「状態」(状態を記述した楕円)を、「遷移(オペレーションの内容に相当する)」(ドットを付した楕円)を介して接続した構成される。図10には、TDステージの状態遷移モデル(図5を参照)から作成した可到達木を示す。ここでは、初期状態が「温度低、粘性高、プラズマ加熱装置OFF、バブリング故障」であり、その次に到達できる「状態」は、トランジションT1が発火したときの「温度低、粘性高、プラズマ加熱装置故障、バブリング故障」か、トランジションT3が発火(それに伴ってトランジションT4、T11も発火)したときの「温度普、粘性高、プラズマ加熱装置ON、バブリング故障」である。このようにして、次に到達できる「状態」を順次求めていき、可到達木を作成する。
なお、ここではTDステージでの可到達木について詳述したが、ノズルステージ、鋳型ステージ、及び垂直領域ステージについても、それぞれ初期状態を設定し、可到達木を作成する。図11には、鋳型ステージでの製造物の温度及び湯面レベルの状態遷移モデル(図6を参照)から作成した可到達木と、垂直領域ステージでの製造物のバルジングの状態遷移モデル(図6を参照)から作成した可到達木とを示す。鋳型ステージにおいて、初期状態が「温度低、湯面レベル適切」である場合、その次に到達できる「状態」は、トランジションT301が発火したときの「温度高、湯面レベル適切」か、トランジションT303が発火したときの「温度低、湯面レベル低」である。また、垂直領域ステージにおいて、初期状態が「バルジング無し」である場合、その次に到達できる「状態」は、トランジションT401が発火したときの「バルジング有り」である。このようにして、次に到達できる「状態」を順次求めていき、可到達木を作成する。
ところで、図10のTDステージの可到達木では、一方向のみに状態が遷移する(元の状態に戻れない)状態遷移図となっているのに対して、図11の鋳型ステージや垂直領域ステージの可到達木では、自由に元に状態に戻れる状態遷移図となっている。これは、TDステージでは「バブリング故障」を初期状態としているので、トランジションT11の発火によって状態が遷移してもトランジションT12が発火できず、一方向のみに遷移する状態遷移図となったものである。このように、可到達木は初期状態の与え方によって異なるものとなる。
次に、ステップS202において作成した全ステージの可到達木を用いて、連続鋳造プロセス全体の可到達木(一つの可到達木)を作成する(ステップS203)。
ここで、ステージ間によっては、ステージ間での製造物の属性間の影響関係(図3の矢印31)を定義している場合と、定義していない場合とがある。まず、図11を参照して、ステージ間での製造物の属性間の影響関係を定義している場合の、両ステージの可到達木の作成の仕方について説明する。図11は、鋳型ステージでの製造物の温度及び湯面レベルの状態遷移モデルから作成した可到達木と、垂直領域ステージでの製造物のバルジングの状態遷移モデルから作成した可到達木とを用いて、両ステージの可到達木を作成する様子を示す。
図6を参照して既述したが、垂直領域ステージでのバルジングの状態遷移モデルにおいて有りのプレースにトークンがあるとき、条件アークを介してトランジションT501が発火する。その結果、鋳型ステージでの湯面レベルの状態遷移モデルにおいて適切のプレースにトークンがある場合、トランジションT501と許可同期アークで結ばれたトランジションT303が発火して、トークンが低のプレースに移動する。また、垂直領域ステージでのバルジングの状態遷移モデルにおいて無しのプレースにトークンがあるとき、条件アークを介してトランジションT502が発火する。その結果、鋳型ステージでの湯面レベルの状態遷移モデルにおいて低のプレースにトークンがある場合、トランジションT501と許可同期アークで結ばれたトランジションT304が発火して、トークンが適切のプレースに移動する。
この場合、図11に示すように、鋳型ステージ及び垂直領域ステージの「状態」をプレース、「遷移」をトランジションに見立てるとともに、ステージ間をつなげるトランジションT501、T502を、トランジションT700〜T703に見立てた「遷移」と、プレースP701、P702で表わす。バルジング「有り」のときのみ湯面レベルが「適切」から「低」に遷移し、バルジング「無し」のときのみ湯面レベルが「低」から「適切」に遷移する『切り替え』をモデル化している。この例では存在しないが、例えばバルジングが「有り」から「無し」以外の他の状態(例えば「やや有り」等)に遷移しただけでは、湯面レベルは「低」から「適切」には遷移しない。湯面レベル「適切」に遷移させるためには、必ずバルジングの状態が「無し」に遷移しなければならない。このようなことを表現するために図11のようなモデル化を行う。トランジションT501はバルジング有りにトークンが存在するときは常に発火するトランジションであり、トランジションT502はバルジング無しにトークンが存在するときは常に発火するトランジションである。プレースP701はトランジションT700を発火するための条件となるプレース、プレースP702はトランジションT701を発火するための条件となるプレースである。また、トランジションT700はプレースP701にトークンが存在するときに常に発火するトランジション、トランジションT701はプレースP702にトークンが存在するときに常に発火するトランジションである。また、プレースP701にトークンがあるとき、条件アークを介してトランジションT702が発火して、その結果、トランジションT702と許可同期アークで結ばれたトランジションT304が発火する。また、プレースP702にトークンがあるとき、条件アークを介してトランジションT703が発火して、その結果、トランジションT703と許可同期アークで結ばれたトランジションT303が発火する。
これにより、図12に示すように、初期状態を「温度低、湯面レベル適切、バルジング無し」とした両ステージの可到達木が作成される。
次に、図13、図14を参照して、ステージ間での製造物の属性間の影響関係を定義していない場合の、両ステージの可到達木の作成の仕方について説明する。ここでは、対比の意味も含めて、図13に示すように、鋳型ステージと垂直領域ステージとの間で製造物の属性間の影響関係を定義していないものとして、両ステージの可到達木を作成する場合を説明する。この場合、鋳型ステージの「状態」と垂直領域ステージの「状態」との全組み合わせをそれぞれ「状態」として可到達木を作成する。すなわち、図14の例の場合、鋳型ステージの4つの「状態」と垂直領域ステージの2つの「状態」の全組み合わせである8つの「状態」を有する可到達木が作成される。これにより、図14に示すように、初期状態を「温度低、湯面レベル適切、バルジング無し」とした両ステージの可到達木が作成される。
図12に示したようにステージ間での製造物の属性間の影響関係を定義している場合、鋳型ステージの「状態」と垂直領域ステージの「状態」との全組み合わせのうち、遷移可能な「状態」だけが選ばれることになる。すなわち、「状態」の組み合わせに制限がかかり、図14に示したようにステージ間での製造物の属性間の影響関係を定義しない場合に比べて、「状態」の数は減ることになる。
以上のアルゴリズムに従って、全ステージの可到達木を用いて、連続鋳造プロセス全体の可到達木を作成する。この一つの可到達木は、連続鋳造プロセス全体の製造物と装置が、ある初期状態から遷移しうる状態の集合を意味する。
次に、ステップS203において作成した連続鋳造プロセス全体の可到達木を用いて、発生確度と危険度との関係を表わすリスクマトリクスを作成する(ステップS204)。図15に、リスクマトリクスの例を示す。なお、図示例では、説明の簡略化のため、鋳型ステージと垂直領域ステージの可到達木を用いてリスクマトリクスを作成した例を示すが、実際は、連続鋳造プロセス全体の可到達木を用いてリスクマトリクスを作成する。
リスクマトリクスの横軸は発生確度を、縦軸は危険度を表わし、連続鋳造プロセス全体の可到達木(図15の例は鋳型ステージと垂直領域ステージの可到達木)の「状態」を並び替えたものである。横軸方向では、まず初期状態が位置し、次に初期状態から到達しうる「状態」が位置する。初期状態から各「状態」まで到達するのに必要な最小の遷移の実行回数を「初期状態」から各「状態」までの「距離」と定義し、この「距離」が小さいほど発生確度が低くなるように位置する。なお、ここでは初期状態からの遷移の実行回数を「距離」と定義したが、各「遷移」が実行される確率(発火する確率)等を考慮して初期状態からの各「状態」までの距離を規定するようにしてもよい。
図12の初期状態と各「状態」を繋ぐ遷移のうち、最小の距離の遷移以外の遷移を除去し、初期状態からの「距離」が小さいほど「状態」を発生確度が低くなるように位置する。
また、製造物の属性毎に予め危険度が定められており、その組み合わせに応じて危険度が定められる。ここでは、「温度高、湯面レベル適切、バルジング無し」という「状態」は操業上最も安全な状態であるのに対して、「温度低、湯面レベル低、バルジング有り」という「状態」は操業上最も危険度の高い状態となる。
このようなリスクマトリクスを画面表示して提示することにより、トラブル発生の推定等、操業者の意思決定において有効な情報を提示することができる。リスクマトリクスにマップされた可到達木においては、「発生確度が高く、かつ、危険度も低い状態」や「発生確度が低く、かつ、危険度も低い状態」等が示され、任意の「状態」に至るまでの経路が網羅的に可視化されるので、トラブル要因を俯瞰することが容易となっている。例えばリスクマトリクスの左下に位置する「状態」ほど、「発生確度が高く、かつ、危険度も高い状態」であり、そこに至る経路と合わせて注意すべきと認識することができる。逆にいえば、初期状態「温度低、湯面レベル適切、バルジング無し」から危険度が低くなる「遷移」が実施すべきオペレーションを意味している。
リスクマトリクスを画面表示するに際して、例えば最も「発生確度が高く、かつ、危険度も高い状態」を目立つように表示するようにしてもよい。また、図15の囲み1501に示すように、危険な状態に至るまでの経路(シナリオ)を囲んで表示するようにしてもよい。或いは、逆に安全な状態に至るまでの経路(シナリオ)を囲んで表示するようにしてもよい。
なお、上述したように「状態」の数は多くなるものの、ステージ間での製造物の属性間の影響関係(図3の矢印31)を定義しなくても、連続鋳造プロセス全体の可到達木を作成することができる。すなわち、図2のステップS101〜S112だけで作成した離散モデルに基づいて、各ステージの可到達木を作成し、それらを用いて連続鋳造プロセス全体の可到達木を作成して、リスクマトリクスを作成するようにしてもよい。参考として、図16には、ステージ間での製造物の属性間の影響関係を定義していない場合の、鋳型ステージと垂直領域ステージの可到達木を用いてリスクマトリクスを作成した例を示す。
ここまでは、図10に示すように、製造物と設備を分けずに可到達木を作成し、製造物の属性の状態と設備の状態の両方を「状態」として表わすことを説明した。しかしながら、危険或いは安全な状態に至るまでの経路(シナリオ)を提示するという目的を満たすには製造物の属性の状態遷移の情報が必要であり、製造物の属性の状態が必要である一方、設備の状態は「製造物の属性の状態遷移の原因」として必要とされる。可到達木では、状態に関する情報は「状態」が、状態遷移に関する情報は「遷移」が持つのが一般的であり、設備の状態は「遷移」に持たせるべきである。すなわち、製造物の属性の状態遷移モデルM1を用いて可到達木を計算し、可到達木における「状態」が持つ情報を製造物の属性の状態とするのが望ましい。
そこで、製造物の属性の状態遷移モデルM1を用いて可到達木を計算し、可到達木における「状態」が持つ情報を製造物の属性の状態とする。そのために、各ステージにおいて製造物の属性の状態遷移モデルM1と設備の状態遷移モデルM2とを分離して、製造物の属性の状態遷移モデルM1からステージ毎の製造物の属性の可到達木を作成する。次にそれぞれのステージの可到達木をつなぎ、連続鋳造プロセス全体の可到達木を作成する。なお、可到達木の作成手法そのものは、図9のステップS202、S203で説明したものと同様である。
一方で、分離した設備の状態遷移モデルM2を用いて、この製造物の属性の状態遷移モデルM1から作成した連続鋳造プロセス全体の可到達木において、製造物の属性の状態遷移の原因と設備との対応付けする必要がある。この連続鋳造プロセス全体の可到達木において「遷移」にその情報を持たせる必要があるため、図17に示すように、連続鋳造プロセス全体の可到達木の「遷移」と設備の状態遷移モデルM2とをネットワークでつなぐ。これにより、作成した可到達木から、製造物の属性の状態遷移の情報を与えることができるようになる。
[離散モデリングにより作成した離散モデルを利用した操業支援2]
上述した操業支援1では、初期状態から到達可能な状態遷移を示す可到達木を網羅的な計算により作成し、リスクマトリクスとして提示する例を説明した。しかしながら、実際には、製造物の属性及びその状態の数が増えると、網羅的な計算により計算量が膨大なものになるだけでなく、操業者にとって必要でない、トラブルに関係のないステージ及び製造物の属性の情報も含まれる。したがって、計算量を抑えながら、操業者にとって必要な情報だけを抽出して提示できるようにすることが望まれる。
そこで、操業支援2では、製造物の属性の状態の組み合わせの中でトラブルに直結する、すなわち製造プロセスのトラブル発生の恐れが高い状態であるものとして定義される危機状態という認識を導入する。そして、初期状態から危機状態に至るまでの経路を表わす状態遷移図、具体的には危機状態に至るまでに遷移しうる「状態」を表わす可到達木を作成することによって、その危機状態で表わされるトラブルに至るまでの経路(シナリオ)を提示するようにした。
危機状態は、ステージ及び製造物の属性の状態を特定して定義される。すなわち、1つの危機状態を設定するためには、どのステージのどの製造物の属性の状態に異常がみられるかを定義する。例えばTDステージでの粘性高、ノズルステージでの温度低及び流量少という状態の組み合わせを「ノズル詰まり1」として定義する。また、同じノズル詰まりでも別の状態の組み合わせによって引き起こされることも考えられ、TDステージでの温度低、ノズルステージでの温度低及び偏流という状態の組み合わせを「ノズル詰まり2」として定義する。表2に、危機状態毎に特定されたステージ及び製造物の属性の状態の組み合わせの例を示す。危機状態は、現場の作業マニュアルにおいて操業停止基準を参考に設定したり、熟練の操業者が感覚的に持っているトラブル時の鋼の状態の組み合わせを抽出して設定したり、トラブル事例集からトラブル時の鋼の状態の組み合わせを抽出して設定したりすればよい。
Figure 2013163191
このような危機状態という概念を導入することによって、ある危機状態について考える際に、考慮するステージを限定することができる。例えばノズル詰まり1、2では、TDステージとノズルステージという2つのステージに限定することができる。
また、ある危機状態について考える際に、考慮する製造物の属性も限定することができる。例えばノズル詰まり1では、TDステージでの粘性、ノズルステージでの温度及び流量という3つの属性に限定することができる。
これら2つの特徴により、可到達木の計算量が軽減されるとともに、危機状態に至るまでの経路において、その危機状態で表わされるトラブルに関係のないステージ及び製造物の属性の情報が含まれなくなるというメリットが得られる。
(初期状態から危機状態に至るまでの経路の提示)
まず、初期状態である現在の状態から危機状態に至るまでの経路を考える。ある危機状態が指定された場合、図18に示すように、その危機状態により特定されるステージ及び製造物の属性に限定したかたちで可到達木を作成する。これは現在の状態から危機状態に至るまでにどのような「状態」を経由するかを示しており、現在の状態から危機状態に至るまでの経路ということができる。この可到達木は、操業支援1で述べたように網羅的な計算により作成したものと異なり、危機状態に直接的に関係する製造物の属性の情報だけを抽出して提示する。
このようにして作成した危機状態に至るまでの経路を表わす可到達木において、操業者が各製造物の属性の状態の起こりやすさ、及び危険度を一目でわかるようにするために、図19に示すように、操業支援1で説明したのと同様、発生確度と危険度との関係を表わすリスクマトリクスを作成する。このリスクマトリクスにおいて、現在の状態から下、すなわち危険度が高い方向に状態遷移が起こる場合、それは現在の状態からより危機状態に近づくことになり、そのトラブルが起こる可能性が高まっていると理解することができる。一方で、現在の状態から上、すなわち危険度が低い方向に状態遷移が起こる場合、それは現在の状態に比べて危機状態から遠ざかることになり、そのトラブルが起こる可能性が低く安全な状態になると理解することができる。また、現在の状態から右に行くほど、必要な状態遷移の回数が増えることになり、その製造物の属性の状態には至りにくくなると考えられる。
(一の危機状態に至るまでの経路において実施するオペレーションが、他の危機状態に至るまでの経路に対して影響を与えるかどうかの提示)
次に、一の危機状態に至るまでの経路において実施するオペレーションが、他の危機状態に至るまでの経路に対してどのような影響を与えるかを考える。一つだけの危機状態を想定し、それを回避するための対策を講じることは比較的容易であるが、現実は多種多様な危機状態を想定し、ある危機状態を回避するために行ったオペレーションが別の危機状態を誘発するかを考慮することが極めて重要である。
そこで、図20に示すように、一の危機状態(図示例では「ノズル詰まり1」)に至るまでの経路を表わす可到達木のリスクマトリクスと、他の危機状態(図示例では「ブレークアウト2」)に至るまでの経路を表わす可到達木のリスクマトリクスとを作成する。
そして、これら2つの危機状態に至るまでの経路に関して、一の危機状態を回避するために実施するオペレーションが、他の危機状態に至る経路に対して与える影響を考える。現在の状況として、ノズルステージでの温度が低くてノズル詰まりの危険があるため、その温度を高くするプラズマ加熱というオペレーションを実施することを検討しているとする。プラズマ加熱により、図21に示すように、危機状態「ノズル詰まり1」に至るまでの経路では、ノズルステージでの温度が高くなることでノズル詰まりが起こりにくくなる、つまり危機状態からより遠い、危険度の低い「状態」に遷移する。
この場合に、ノズルステージでの温度が高くなることで、危機状態「ブレークアウト2」に至るまでの経路にはどのような影響を与えるかを考えるために、連続鋳造プロセスの離散モデルに基づいて、「ノズル詰まり1」で考慮している製造物の属性の状態と、「ブレークアウト2」で考慮している製造物の属性の状態との関係を考える。図22に示すように、連続鋳造プロセスの離散モデルにおいて、ノズルステージでの温度(高・普・低)が、垂直領域ステージでのシェル厚(厚・普・薄)がそれぞれ定義されており、ノズルステージでの温度が、製造物の移動に伴って下流側の垂直領域ステージでのシェル厚に受け渡されると定義されているとする。この場合、ノズルステージでの温度が高くなり、その鋼が下流の垂直領域ステージに流れることで、垂直領域ステージでのシェル厚が薄くなるという影響を受けるという関係がある。
そこで、危機状態「ブレークアウト2」に至るまでの経路において、プラズマ加熱の影響を受けて、垂直領域ステージでのシェル厚が薄くなった「状態」はどこに位置するのかを考える。図23は、危機状態「ブレークアウト2」に至るまでの経路を表わす可到達木のリスクマトリクスを示す模式図であり、垂直領域ステージでのシェル厚が薄くなった「状態」を丸で囲んで示す。現在の状態は特に異常な製造物の属性の状態のない安定状態であったため、図23に丸で囲んで示すように、プラズマ加熱の影響を受けて、現在の状態からより危機状態に近い「状態」に遷移することがわかる。なお、プラズマ加熱の影響を受ける「状態」が複数あるのは、プラズマ加熱の影響を受けて垂直領域ステージでのシェル厚は薄くなるが、他の2つの製造物の属性(鋳型ステージでの湯面レベル、垂直領域ステージでのバルジング)は影響を受けずに任意の状態を取るためである。
操業者は、これらプラズマ加熱の影響を受ける「状態」が危機状態にどれだけ近いかを見ることで、プラズマ加熱というオペレーションによってブレークアウトというトラブルがどれだけ起こりやすくなるかを把握することができる。これらプラズマ加熱の影響を受ける「状態」が危機状態に近いならば、プラズマ加熱によってノズル詰まりは回避できるが、ブレークアウトを誘発する可能性が高まるため、そのオペレーションは安易にすべきではないといえる。一方で、これらプラズマ加熱の影響を受ける「状態」が安定状態である初期状態に近いままであれば、プラズマ加熱によってノズル詰まりを回避でき、しかもブレークアウトの誘発の可能性も高まらないため、そのオペレーションは推奨されるということができる。
また、これらプラズマ加熱の影響を受ける「状態」が示す製造物の属性の状態を比較することで、プラズマ加熱というオペレーションを実施する際にブレークアウトを誘発しないようにするために着目すべき製造物の属性を抽出することができる。例えば、危機状態に特に近い「状態」には「鋳型ステージでの湯面レベル低」が共通して含まれており、危機状態から比較的遠い「状態」にはそれが含まれていないとする。この鋳型ステージでの湯面レベルという属性は、プラズマ加熱の影響を直接は受けない。すなわち、危機状態「ブレークアウト2」に至るまでの経路では、プラズマ加熱の影響によって垂直領域ステージでのシェル厚が薄くなり、現在の状態から危機状態に近づいた「状態」に遷移することになるが、鋳型ステージでの湯面レベルが低くならないよう注意して操業を行うことで、プラズマ加熱の影響を受けてもそれほど危機状態「ブレークアウト2」に近づかないようにすることができる。
以上述べたように、2つの危機状態により特定される製造物の属性間の関係により、一の危機状態の対策としてオペレーションを実施した際に、他の危機状態に至るまでの経路でどのような状態遷移が起こるかを把握することができる。また、遷移する可能性のある「状態」から共通要素を抽出することで、オペレーションを実施する際に他の危機状態を誘発しないようにするために着目すべき製造物の属性の状態の情報を得ることができる。これらを操業者が理解しやすい形で提示することで、オペレーションの実施に関する操業支援の情報生成をすることができる。
(俯瞰情報の提示)
次に、現在の状態と複数の危機状態に至るまでの経路との関係性を俯瞰することを考える。例えば複数の危機状態1〜4について、各危機状態に至るまでの経路を表わす可到達木を作成する。そして、図24に示すように、各可到達木において危機状態に至るまでの最短経路をそれぞれ抽出し、列挙する。この場合の初期状態は、各危機状態についての可到達木の初期状態をまとめたものとなる。これにより、現在の状態から最も起こりやすい(距離の短い)危機状態を判断することができる。図24の例でいえば、危機状態1が現在の状態から最も起こりやすい(距離の短い)危機状態であるといえる。
現在の状態から最も起こりやすい危機状態を判断したならば、その危機状態を回避するためのオペレーションを実施することを検討する。その際に、上述したように2つの危機状態に至るまでの経路間の関係を詳細に見ることで、実施しようとしているオペレーションの影響を受けて起こりやすくなると考えられる危機状態を判断し、当該オペレーションの良否を判定する。
列挙した各危機状態の中から着目する危機状態を選定し、それを回避するために実施することを検討するオペレーションを決定したならば、そのオペレーションによって他の危機状態がどの程度起こりやすくなるのかを俯瞰する。そのために、上述したように、最も起こりやすい危機状態1と、その他の各危機状態2〜4との2つの危機状態で考慮している状態変数の関係性をそれぞれ見ることで、各危機状態について抽出した最短経路における状態遷移のうちオペレーションの影響を受けて起こる可能性があるものを提示する。
例えば図25に示すように、危機状態1を回避するためのオペレーションを検討しているとする。一方、危機状態2、4では、検討しているオペレーションの影響を受ける状態遷移は含まれていないが、危機状態3では、検討しているオペレーションの影響を受ける状態遷移が2つ含まれている(図中の丸で囲んだ状態遷移)。危機状態3では、現在の状態から最短で4回の状態遷移によって危機状態3に至るが、検討しているオペレーションを実行した際には、2回の状態遷移で危機状態3に至る可能性があることになる。
このように、各危機状態に至るまでの最短経路の中に、オペレーションによって起こる可能性がある状態遷移が多く含まれているほど、オペレーションの影響を強く受けてその危機状態に陥りやすくなることとなる。すなわち、各危機状態に至るまでの最短経路においてオペレーションによって起こる可能性がある状態遷移の数を比較することで、どの危機状態が誘発されやすいかという情報を生成することができる。
(製造物の属性の状態の粒度)
危機状態によって考慮するステージ及び製造物の属性が限定されることは上述したが、製造物の属性の状態の粒度は、危機状態によって異なると考えられる。ここで粒度とは、温度という属性の状態を定義する際に「高」、「普通」、「低」の3段階とするより、更に「非常に高い」、「非常に低い」等の状態を加えて5段階として記述するほうが粒度が細かいとする。例えばノズル詰まりとブレークアウトという2つの危機状態において、温度という属性の状態を考えるとき、ノズル詰まりでは温度の細かな違いがトラブル発生に影響を与えるのに対して、ブレークアウトではそれほど細かく捉える必要はない。すなわち、ノズル詰まりでの温度は粒度を細かくする必要があるのに対して、ブレークアウトでの温度の粒度はもっと粗くてもよいということになる。
そこで、連続鋳造プロセスの離散モデルを最も詳細な粒度で記述しておき、危機状態に至るまでの可到達木を作成する際に、危機状態に応じて必要な粒度に変換するようにしてもよい。例えば各ステージでの温度という属性の状態として「高」、「普通」、「低」の3段階を説明したが、更に「非常に高い」、「非常に低い」等の状態まで細かく分けて記述する。
そして、危機状態に至るまでの経路を表わす可到達木を作成するために、危機状態に応じて特定される製造物の属性を離散モデルから抽出する際に、離散モデルに記述された製造物の属性の状態の数を減らすことで、危機状態毎に設定された粒度に変換する。例えば連続鋳造プロセスの離散モデルでは、温度の状態が「非常に高い」、「高」、「普通」、「低」、「非常に低い」の5段階で記述されているとする。この場合、危機状態に至るまでの経路を表わす可到達木を作成する際に、危機状態「ノズル詰まり1、2」での温度の状態はそのまま5段階とするのに対して、危機状態「ブレークアウト1」での温度の状態は3段階に減らすといったことを行う。図26に示すように、粒度の小さいものと粒度の大きなものの対応関係の基準は製造物の属性毎に設定しておく。例えば図26において、「小さい粒度の方の上2つのプレースにトークンが入っている場合は大きな粒度の方の上のプレースにトークンを入れ、小さい粒度の方の下2つのプレースにトークンが入っている場合は大きな粒度の方の下のプレースにトークンを入れる」等の基準を設定しておく。
(連続鋳造プロセスの操業支援装置の構成)
ここまでで、操業支援2の概要を説明した。図27は、操業支援2を行うのに好適な連続鋳造プロセスの操業支援装置の構成例を示す図である。11は離散モデリング部であり、上述したように連続鋳造プロセスを製造物の流れ方向に複数のステージに分け、ステージ毎に製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、各ステージ内での影響関係を定義して作成した離散モデルを作成し、格納する。また、必要に応じて、同時刻に別ステージに存在する製造物から受ける影響である、ステージ間での製造物の属性間の影響関係(図3の矢印31)、上流側のステージでの前記製造物の属性の状態が、前記製造物の移動に伴って下流側のステージに受け渡される関係(図3の矢印32)を定義する。
12は状態遷移図作成手段である可到達木作成部であり、離散モデリング部1で作成した離散モデルに基づいて、入力装置16で入力、指定された危機状態により特定されるステージ及び製造物の属性に限定したかたちで、図18に示したように、初期状態から当該危機状態に至るまでの経路を表わす状態遷移図である可到達木を作成する。
13はリスクマトリクス作成部であり、可到達木作成部12により作成した可到達木を用いて、図19に示したように、発生確度と危険度との関係を表わすリスクマトリクスを作成する。
14は判定部であり、図20〜図23に示したように、2つの危機状態に至るまでの経路に関して、一の危機状態を回避するために実施するオペレーションが他の危機状態に至る経路に対して影響を与えるかどうかを判定する。判定部14は、オペレーションを実施して一の危機状態に至るまでの経路に含まれる製造物の属性の状態が変化することにより、他の危機状態に至るまでの経路に含まれる製造物の属性の状態が変化するかどうかを、離散モデルに基づいて判定する。その結果、他の危機状態に至るまでの経路に含まれる製造物の属性の状態が変化する場合、当該オペレーションが他の危機状態に至るまでの経路に対して影響を与えると判定する。
15は俯瞰情報作成部であり、図24に示したように、複数の危機状態についての可到達木を用いて、初期状態から各危機状態に至るまでの最短経路をそれぞれ抽出し、列挙する。
16は入力装置であり、例えば離散モデリング部11が離散モデルを作成する際の各種定義を入力、設定したり、可到達木作成部12が可到達木を作成する際の危機状態や初期状態を入力、設定したりする。
17は出力装置であり、例えば可到達木作成部12により作成した可到達木やリスクマトリクス作成部4により作成したリスクマトリクスを画面表示したり、判定部14での判定結果を画面表示したり、俯瞰情報作成部15で作成した俯瞰情報を画面表示したりする表示装置が該当する。
なお、図27では1台の装置として図示したが、例えば離散モデリングは別の装置で実行し、操業支援装置では作成済みの離散モデルを格納している等、複数台の装置が協働して図27に示す機能構成が実現されるようにしてもよい。
図28に、操業支援装置が出力装置17に表示する画面の例を示す。図28に示す画面は、可到達木作成部12が作成した可到達木、リスクマトリクス作成部13が作成したリスクマトリクスを表示する画面の例である。2801は鋼の状態欄であり、操業支援装置が上位のプロセスコンピュータから取得する等した現在の鋼の状態が表示される。この鋼の状態欄2801では、連続鋳造プロセスの離散モデルに合わせて、TDステージ、ノズルステージ、鋳型ステージ、及び垂直領域ステージの4つに区分され、ステージ毎に定義された製造物の属性及びその状態が表示される。
2802は危機状態指定欄であり、操業者が入力装置16を介して危機状態を入力、指定する。この危機状態入力欄2802で指定された危機状態について、可到達木作成部12は初期状態から当該危機状態に至るまでの経路を表わす可到達木を作成し、リスクマトリクス作成部13はリスクマトリクスを作成する。
2803は「状態」表示部であり、危機状態入力欄2802で指定された危機状態についてのリスクマトリクスに基づいて、各「状態」の危険度及びその内容が表示される。「状態」の危険度は、図19に示した縦軸の値であり、例えば最も安全な側から危険度0、危険度1、・・・のように表示される。また、「状態」の内容は、「状態」に含まれる製造物の属性の状態であり、例えば危機状態「ノズル詰まり2」の場合は「TD温度低、ノズル温度普、ノズル整流」のように表示される。
最上段の項目「初期状態」には、初期状態の危険度及びその内容が表示される。2段目の項目「1ステップ」には、初期状態から遷移可能な「状態」の危険度及びその内容が表示される。図19の例でいえば、初期状態につながる3つの「状態」、すなわち発生確度が左から2番目の3つの「状態」の危険度及びその内容が列挙される。以下同様に、項目「2ステップ」には、1ステップ目の「状態」につながる4つの「状態」の危険度及びその内容が列挙される。項目「3ステップ」(図28では図示省略)には、2ステップ目の「状態」につながる3つの「状態」の危険度及びその内容が列挙される。項目「4ステップ」(図28では図示省略)には、3ステップ目の「状態」につながる3つの「状態」の危険度及びその内容が列挙される。
2804は可到達木表示欄であり、危機状態入力欄2802で指定された危機状態についての可到達木やリスクマトリクスが表示される。この場合に、可到達木やリスクマトリクスの全体が表示されるようにしてもよいし、その一部だけが表示されるようにしてもよい。例えば「状態」表示部2803において所望の「状態」が選択可能となっており、その選択された「状態」を中心にそれにつながる前後の「状態」が可到達木表示欄2804に表示されるようにしてもよい。
図29に、操業支援装置が出力装置17に表示する画面の例を示す。図29に示す画面は、俯瞰情報作成部15が作成した俯瞰情報を表示する画面の例である。各項目2901には、俯瞰情報を作成するのに用いられた複数の危機状態がそれぞれ表示される。図24の例でいえば、各項目2901に「危機状態1」、「危機状態2」、「危機状態3」、「危機状態4」のように表示される。
また、各表示欄2902には、初期状態から危機状態に至るまでの距離、すなわち状態遷移数が表示される。図24の例でいえば、「危機状態1」に至るまでの初期状態からの状態遷移数が2であるので、「距離:2状態遷移」のように表示される。また、その状態遷移の内容が表示される。例えば「距離:2状態遷移」の場合に、初期状態から次の「状態」への状態遷移がノズル温度普からノズル温度低への変化であり、当該次の「状態」から危機状態への状態遷移がノズル偏流無(整流)からノズル偏流有への変化であれば、「(ノズル温度:普→低)、(ノズル:整流→偏流)」のように表示される。
また、図29の画面において、図示は省略するが、危機状態を選定し、それを回避するためのオペレーションを決定できるようになっている。危機状態を選定し、オペレーションを決定すると、判定部14は、この選定された危機状態に対するオペレーションが、他の各危機状態に至るまでの経路に対して影響を与えるかどうかを判定する。そして、各表示欄2902には、当該オペレーション後の距離及び状態遷移の内容が表示される。図25の例でいえば、「危機状態1」に対するオペレーションを実施すると、そのオペレーションの影響を受けて、「危機状態3」には4回の状態遷移であったものが2回の状態遷移で至るようになる。この場合、図29に示すように、「危機状態3」の表示欄2902では、「距離:4状態遷移」から「距離:2状態遷移」に短縮したことが表示されることになる。したがって、操業者は、「危機状態1」に対する当該オペレーションを実施すると、「危機状態3」が誘発されやすくなることを知ることができる。
以下、図30〜図33を参照して、表2に示した危機状態のうち「ノズル詰まり1」、「ノズル詰まり2」、「ブレークアウト1」及び「オーバーフロー」の4つを対象として俯瞰情報を作成した事例を説明する。なお、図3の説明ではノズルステージでの流量(適切・少)、鋳型(MD)ステージでの湯面レベル(適切・低)のように定義する例を挙げたが、以下の事例では、より詳細にノズルステージでの流量(多・普・少)、鋳型ステージでの湯面レベル(高・普・低)を定義しているものとする。
また、連続鋳造プロセスの離散モデルにおいて、TDステージでの温度が、その下流側のノズルステージでの温度に受け渡され、以下同様に、ノズルステージでの温度は鋳型ステージでの温度に受け渡され、鋳型ステージでの温度は垂直領域ステージでの温度に受け渡されると定義しているものとする。また、ノズルステージでの温度が、その下流側の鋳型ステージでのシェル厚に受け渡されると定義しているものとする。また、ノズルステージでの流量が、その下流側の鋳型ステージでの湯面レベルに受け渡されると定義しているものとする。
なお、以下の説明では、どのステージでのどの製造物の属性のどういった状態であるかを、ステージ+製造物の属性{状態}で表記する。
図30に示す事例1は、取鍋100からタンディッシュ200へ温度の低い溶鋼が注がれた状況を想定したものであり、初期状態である現在の状態が「TD温度{低}、他は正常」となっている。他は正常とは、詳細に述べれば、TD粘性{普}、ノズル温度{普}、ノズル流量{普}、ノズル偏流{無(整流)}、MD温度{普}、MDシェル厚{普(適切)}、MDシェル均一性{均一}、MD湯面レベル{普}である。
この事例1では、「ノズル詰まり2」が現在の状態から最も起こりやすい(距離の短い)危機状態である。過去のトラブル事例と比較しても、同じ状態でプラズマ加熱を行わずに鋳造を続けると、ノズル詰まりが発生した事例があり、起こりやすいトラブルとの整合性が確認された。
そこで、「ノズル詰まり2」を回避すべくプラズマ加熱を検討する。プラズマ加熱を実施すると、ノズル温度が{普}から{高}に遷移し、その影響を受けてMDシェル厚が{普}から{薄}に、MD温度が{普}から{高}に遷移する。そのため、「ブレークアウト1」において状態遷移a、bが起こり、3回の状態遷移であったものが、あと1回の状態遷移で「ブレークアウト1」が誘発されるおそれがあることがわかる。
この場合に、危機状態「ブレークアウト1」では、その危機状態に近い「状態」には「MDシェル均一性{不均一}」が含まれるが、比較的遠い安全側の「状態」にはそれが含まれていない。すなわち、鋳型ステージでのシェル均一性が不均一とならないよう注意して操業を行うことで、プラズマ加熱の影響を受けてもそれほど危機状態「ブレークアウト1」に近づかないようにすることができることがわかる。
図31に示す事例2は、ノズルが詰まりかけて流量が少なくなっている状況を想定したものであり、初期状態である現在の状態が「ノズル流量{少}、他は正常」となっている。他は正常とは、詳細に述べれば、TD粘性{普}、ノズル温度{普}、TD温度{普}、ノズル偏流{無(整流)}、MD温度{普}、MDシェル厚{普(適切)}、MDシェル均一性{均一}、MD湯面レベル{普}である。
この事例2では、「ノズル詰まり1」が現在の状態から最も起こりやすい(距離の短い)危機状態である。
そこで、「ノズル詰まり1」を回避すべくノズルつつきを検討する。ノズルつつきを実施すると、ノズル流量が{少}から{普}、更には{多}に遷移し、その影響を受けてMD湯面レベルが{普}から{高}に遷移する。そのため、「オーバーフロー」において状態遷移a、b、cが起こり、4回の状態遷移であったものが、あと1回の状態遷移で「オーバーフロー」が誘発されるおそれがあることがわかる。
この場合に、危機状態「オーバーフロー」では、その危機状態に近い「状態」には「ノズル偏流{有}」が含まれるが、比較的遠い安全側の「状態」にはそれが含まれていない。すなわち、ノズルステージでの流れが偏流とならないよう注意して操業を行うことで、ノズルつつきの影響を受けてもそれほど危機状態「オーバーフロー」に近づかないようにすることができることがわかる。過去のトラブル事例と比較しても、同じ状態で、ノズルステージで偏流があるにもかかわらずノズルつつきを実施すると、オーバーフローが発生した事例があり、起こりやすいトラブルとの整合性が確認された。
図32、図33に示す事例3は、ノズル詰まりとブレークアウトの2つの徴候がみられる状況を想定したものであり、初期状態である現在の状態が「ノズル偏流(有)、MDシェル均一性{不均一}、他は正常」となっている。他は正常とは、詳細に述べれば、TD粘性{普}、ノズル温度{普}、ノズル流量{普}、TD温度{普}、MD温度{普}、MDシェル厚{普(適切)}、MD湯面レベル{普}である。
そこで、図32に示すように、「ノズル詰まり2」を回避すべくプラズマ加熱を検討する。プラズマ加熱を実施すると、ノズル温度が{普}から{高}に遷移し、その影響を受けてMD温度が{普}から{高}に、MDシェル厚が{普}から{薄}に遷移する。そのため、「ブレークアウト1」において状態遷移a、bが起こり、「ブレークアウト1」が誘発されるおそれがあることがわかる。
また、図33に示すように、「ブレークアウト1」を回避すべくタンディッシュ200における鋼の温度を下げるバブリングを検討する。バブリングを実施すると、TD温度が{普}から{低}に遷移し、その影響を受けてノズル温度が{普}から{低}に遷移する。そのため、「ノズル詰まり1」において状態遷移aが起こり、3回の状態遷移であったものが、あと1回の状態遷移で「ノズル詰まり1」が誘発されるおそれがあることがわかる。また、「ノズル詰まり2」において状態遷移b、cが起こり、「ノズル詰まり2」が誘発されるおそれがあることがわかる。
このように複数のオペレーションが検討される場合には、それぞれのオペレーションを別々に行う際に注意すべき状態遷移の情報を抽出することができた。
以上述べたように、原因毎に取るべきアクションとその結果起こる現象を予測したり、アクションを取らなかった場合に起こる現象を予測したりすることが可能になり、操業トラブル回避や操業トラブル発生時のアクションをガイダンスする等、連続鋳造プロセスの操業を支援することができる。
本発明は、本発明の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。
上記実施形態では連続鋳造プロセスを例に説明したが、本発明は、連続する製造物が連続的に流れる製造プロセスであれば適用可能で、例えば熱間圧延(鋼板が連続して流れる)や石油プラント(液体が連続して流れる)にも適用可能である。
11:離散モデリング部
12:可到達木作成部
13:リスクマトリクス作成部
14:判定部
15:俯瞰情報作成部
16:入力装置
17:出力装置

Claims (9)

  1. 連続する製造物が連続的に流れる製造プロセスの操業を支援するための操業支援装置であって、
    前記製造プロセスを製造物の流れ方向に複数のステージに分け、ステージ毎に製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、各ステージ内での製造物の属性の状態と設備の状態との間の影響関係を定義して作成した離散モデルを格納する格納手段と、
    ステージ及び製造物の属性の状態を特定して定義され、前記製造プロセスのトラブル発生の恐れが高い状態である危機状態を指定する指定手段と、
    前記離散モデルに基づいて、前記指定手段で指定された危機状態により特定されるステージ及び製造物の属性に限定したかたちで、初期状態から前記危機状態に至るまでの経路を表わす状態遷移図を作成する状態遷移図作成手段とを備えたことを特徴とする製造プロセスの操業支援装置。
  2. 前記状態遷移図作成手段により作成した状態遷移図を用いて、前記状態遷移図を構成する各状態の発生確度と危険度との関係を表わすリスクマトリクスを作成するリスクマトリクス作成手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の製造プロセスの操業支援装置。
  3. 前記状態遷移図作成手段により作成した一の危機状態に至るまでの経路を表わす状態遷移図と、他の危機状態に至るまでの経路を表わす状態遷移図とに基づいて、前記一の危機状態に至るまでの経路において、前記製造プロセスに対するあるオペレーションを実施した場合、当該オペレーションが前記他の危機状態に至るまでの経路に対して影響を与えるかどうかを判定する判定手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造プロセスの操業支援装置。
  4. 前記判定手段は、
    前記オペレーションを実施して前記一の危機状態に至るまでの経路に含まれる製造物の属性の状態が変化することにより、前記他の危機状態に至るまでの経路に含まれる製造物の属性の状態が変化するかどうかを、前記離散モデルに基づいて判定し、
    前記他の危機状態に至るまでの経路に含まれる製造物の属性の状態が変化する場合、前記オペレーションが前記他の危機状態に至るまでの経路に対して影響を与えると判定することを特徴とする請求項3に記載の製造プロセスの操業支援装置。
  5. 前記状態遷移図作成手段により作成した複数の危機状態についての状態遷移図において前記初期状態から前記各危機状態に至るまでの最短経路をそれぞれ抽出し、列挙する俯瞰情報作成手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の製造プロセスの操業支援装置。
  6. 前記離散モデルでは、同時刻に別ステージに存在する製造物から受ける影響である、ステージ間での製造物の属性間の影響関係を更に定義していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の製造プロセスの操業支援装置。
  7. 前記離散モデルでは、上流側のステージでの製造物の属性の状態が、製造物の移動に伴って下流側のステージに受け渡される関係を更に定義していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の製造プロセスの操業支援装置。
  8. 連続する製造物が連続的に流れる製造プロセスの操業を支援するための操業支援方法であって、
    ステージ及び製造物の属性の状態を特定して定義され、前記製造プロセスのトラブル発生の恐れが高い状態である危機状態を指定する指定ステップと、
    前記製造プロセスを製造物の流れ方向に複数のステージに分け、ステージ毎に製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、各ステージ内での製造物の属性の状態と設備の状態との間の影響関係を定義して作成した離散モデルに基づいて、前記指定ステップで指定された危機状態により特定されるステージ及び製造物の属性に限定したかたちで、初期状態から前記危機状態に至るまでの経路を表わす状態遷移図を作成する状態遷移図作成ステップとを有することを特徴とする製造プロセスの操業支援方法。
  9. 連続する製造物が連続的に流れる製造プロセスの操業を支援するためのプログラムであって、
    前記製造プロセスを製造物の流れ方向に複数のステージに分け、ステージ毎に製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、各ステージ内での製造物の属性の状態と設備の状態との間の影響関係を定義して作成した離散モデルを格納する格納手段と、
    ステージ及び製造物の属性の状態を特定して定義され、前記製造プロセスのトラブル発生の恐れが高い状態である危機状態を指定する指定手段と、
    前記離散モデルに基づいて、前記指定手段で指定された危機状態により特定されるステージ及び製造物の属性に限定したかたちで、初期状態から前記危機状態に至るまでの経路を表わす状態遷移図を作成する状態遷移図作成手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
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