JP2013159560A - 高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物の経口投与用製剤 - Google Patents

高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物の経口投与用製剤 Download PDF

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Abstract

【課題】高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物を活性成分として含む経口投与用製剤の提供。
【解決手段】高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物が、一般式(I)PEG−CNR(I)(式中、PEGはポリ(エチレングリコール)を含むセグメントであり、CNRは、少なくとも1つのイミノ基を有する連結基を介してポリマー主鎖に結合する環状ニトロキシドラジカルをペンダント基の一部として含む反復単位を含むポリマーセグメントである)で表される製剤。環状ニトロキシドラジカルは、o−もしくはp−フェニレン−C1−6アルキレン−NH−(C1−6アルキレン)q−(ここで、qは0または1である)の連結基を介してポリマー主鎖に結合している。
【選択図】図2

Description

本発明は、高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物を活性成分として含む経口投与用、経口投与による血流中への当該化合物のデリバリー用、または経口投与による炎症の予防または治療用の製剤に関する。
近年、不規則な生活習慣・老化・社会的ストレスなどによっても生体内で過剰に活性酸素種(ROS)が産生し、さまざまな慢性疾病(動脈硬化症や糖尿病など)や難治性疾患(アルツハイマーやパーキンソン病など)をもたらすことが明らかとなっている。また、ROSは、通常、生体内では酸化−抗酸化(レドックス)のバランスを厳密に調節しているが、このROSが過剰に生成されると、酸化−抗酸化因子のバランスが酸化の方向に傾く。この状態のことを「酸化ストレス」といい、上記の疾患を含む様々な疾患の原因または誘因になることも知られている。これまでに各種抗酸化剤を用いた慢性疾患の予防について検討がなされてきたものの、低分子抗酸化剤の例では、それらの高濃度の投与は、ミトコンドリアの電子伝達系などの生体に必須な反応をも阻害するほか、腎排出や代謝のため有効濃度が低く、また全身へ拡散し、全身副反応を惹起するなど、問題があった。また、低分子抗酸化剤を用いた酸化ストレス疾患治療・予防が行われてきたものの著しい効果が見られなかった。
実際に、体内の酸化ストレスが増加すると、アルツハイマーやパーキンソン病などの神経難病、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全、糖尿病、癌など、さまざまな病気を発症することが明らかとなっている。このため、酸化ストレス障害を効率よく治療できる薬剤または投与系の提供が求められている。
このような事情を考慮し、本発明者等は触媒的に機能するROS消去剤ニトロキシドラジカルを封入した自己組織化ナノ粒子(Nitroxide radical−containing nanoparticle:RNP)を用い、必要なところでROSを消去する新しいナノ治療法を開発してきた(特許文献1参照)。このRNPは静脈投与後、ナノ粒子を形成したまま、血管を長期間滞留し、酸化ストレスの生じている組織で崩壊することで、脳梗塞、心筋梗塞・急性腎不全に対して高い治療効果を示すことが明らかとなっている(特許文献1、特許文献2)。
WO2009/133647 特願2010−260471
しかし、上述した多種多様な障害または疾患の予防または治療に供することを考慮すると、かような高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物が経口投与によりその血中濃度を高めることができ、所望の器官または臓器にデリバリーでき、かつ、ROS消去作用を発揮できれば、当該技術分野に大きく貢献できるであろう。
したがって、本発明の目的は、高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物を活性成分として含む経口投与用製剤を提供することにある。
本発明者は、特許文献1に記載の高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物の中、水性媒体中で自己組織化ナノ粒子(環状ニトロキシドラジカルを内包する高分子ミセル)を形成するが、酸性pH条件下でかような高分子ミセルが崩壊し、ラジカルが周囲環境下に放出される化合物を、経口投与したとき、一万を越えるよう分子量を有するにもかかわらず、血流中に移行でき、しかも、血流中に長期間滞留できることを見出した。ちなみに、構造類似の高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物であるが、ペンダント基としての環状ニトロキシドラジカルがイミノ基を介するのでなく、エーテル結合を介して高分子化されたpH応答性を示さない化合物は経口投与したとき血流中に移行しないことが観察されていることを考慮すると、pH応答性の上記化合物の作用乃至効果は極めてユニークで、かつ、興味深いものである。
したがって、上記の課題を解決すべき手段として、高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物を活性成分として含む経口投与用製剤であって、当該高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物が、一般式(I)
PEG−CNR (I)
(式中、PEGはポリ(エチレングリコール)を含むセグメントであり、
CNRは、少なくとも1つのイミノ基を有する連結基を介してポリマー主鎖に結合する環状ニトロキシドラジカルをペンダント基の一部として含む反復単位を含むポリマーセグメントである)
で表される、経口投与用製剤が、今ここに、提供される。
さらに、上記一般式(I)で表される高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物を活性成分として含む経口投与による血流中へのニトロキシドラジカルのデリバリー用または炎症を予防または治療用の製薬学的製剤が提供される。
上記高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物としては、環状ニトロキシドラジカルが、o−もしくはp−フェニレン−C1−6アルキレン−NH−(C1−6アルキレン)−(ここで、qは0または1である)の連結基を介してポリマー主鎖に結合しており、かつ、環状ニトロキシドラジカルが、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル及び2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれ、
ここで、ポリマー主鎖が重合性不飽和二重結合に由来し、当該主鎖にフェニレンの未結合末端が結合している、ものが好ましい。
本発明で使用するのに、さらに好ましい、高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物としては、一般式(II)
式中、
Aは、非置換または置換C−C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基、式RCH−(ここで、R及びRは独立して、C−CアルコキシまたはRとRは一緒になって−OCHCHO−、−O(CHO−もしくは−O(CHO−を表す。)の基を表し、
は、単結合、−(CHS−、−CO(CHS−、からなる群より選ばれ、ここでcは1ないし52の整数であり、
は、−C1−6アルキレン−NH−(C1−6アルキレン)−であり、ここでqは整数0または1であり、そして
Rは、独立して、Rの総数nの少なくとも、50%、好ましくは70%、より好ましくは90%、特に好ましくは95%が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル及び2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
mは、20〜5,000の整数であり、そして
nは、独立して、3〜1,000の整数である、
で表される、化合物を挙げることできる。
さらに、上記一般式(II)で表される化合物は、Rが、次式
式中、R’はメチル基である、
で表される基から選ばれ、Rの総数nの少なくとも80%を前記式で表される基が占める、
ものが、本発明で、特に好ましく使用できる。
<発明の詳細な説明>
本発明の理解を容易にするために、本発明で使用する典型的な化合物を例に、図1に示す概念図を参照しながら説明する。本発明者等が、水性媒体(水、緩衝化した水、等)中でpHの変化に応答して崩壊するナノ粒子と崩壊しないナノ粒子を設計し、この2つのナノ粒子を経口投与すると、図1に示すようにpHで崩壊しないナノ粒子(O−RNP)は全く血中に取り込まれないものの、pH崩壊型ナノ粒子(N−RNP)は効果的に血中に取り込まれ、数十時間にわたって滞留することが観察できた。これは、理論により拘束されるものではないが、胃の酸性環境で一度N−RNPが崩壊し、腸管近傍で濃縮化され、分子量一万程度の高分子ドラックであっても腸管を経由し血中に取り込まれ、血中でアルブミンなどの血清タンパク質との複合化により、長期血中滞留したものと考えられる。このように、経口から投与された高分子ドラックが消化管疾病部位や血中を通して疾患部位にデリバリーできることを記載した報告例は、本発明者等の知る限り存在していない。
本発明にいう、ペンダント基は、当該技術分野で一般に認識されているとおりの、ある官能基を持った側鎖を意味する。具体的には、上記一般式(II)の−フェニレン−C1−6アルキレン−NH−(C1−6アルキレン)−Rで表される側鎖を参照することによりペンダント基をより明瞭に理解できるであろう。このようなペンダント基が結合する主鎖としては、限定されるものではないが、好ましくは、重合性不飽和二重結合を有する、例えば、置換エチレンのような不飽和二重結合を有する重合性モノマーのラジカル重合により形成される主鎖を意味する。このような主鎖の具体的なものとしては、上記特許文献1に記載ものを参照できる。
上述したとおり、本発明で好ましく使用できる高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物では、環状ニトロキシドラジカルが、o−もしくはp−フェニレン−C1−6アルキレン−NH−(C1−6アルキレン)−(ここで、qは0または1である)、好ましくはp−フェニレン−C1−6アルキレン−NH−(C1−6アルキレン)−(ここで、qは0である)の連結基を介してポリマー主鎖に結合しており、かつ、環状ニトロキシドラジカルが、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル及び2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれる。なお、本明細書において、結合という場合、他に特記しない限り、共有結合を意味する。
本発明でさらに好ましく使用できる、高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物は、一般式(II)
で表され、
Aは、非置換または置換C−C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基、式RCH−(ここで、R及びRは独立して、C−CアルコキシまたはRとRは一緒になって−OCHCHO−、−O(CHO−もしくは−O(CHO−を表す。)の基を表し、
は、単結合、−(CHS−、および−CO(CHS−からなる群より選ばれ、ここでcは整数1ないし5、好ましくは2であり、
は、−C1−6アルキレン、−NH−(C1−6アルキレン)−であり、ここでqは整数0または1、好ましくは0であり、そして
Rは、独立して、Rの総数nの少なくとも、50%、好ましくは70%、より好ましくは85%、特に好ましくは95%が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル及び2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
mは、20〜5,000、好ましくは、20〜1,000、より好ましくは20〜500の整数であり、そして
nは、独立して、3〜1,000、好ましくは、3〜500、より好ましくは3〜100の整数である、
で表される。
−C12アルコキシまたはC−Cアルコキシ中のアルキル基は、直鎖または分岐鎖であることができ、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、デシル、オクチル、ウンデシルであることができる。
1−6アルキレンは、限定されるものではないが、メチレン、1,2−プロパンジイル、1,3−プロパンジイル、1,4−ブタンジイル、等の対応するアルキルのジイル基を挙げることができる。
R基の環状ニトロキシドラジカルまたは環状ニトロキドラジカル化合物の残基は、好ましくは、次式
式中、R’はメチル基である、
で表される基を挙げることができる。
このような高分子環状ニトロキシドラジカル化合物は、上記特許文献1に記載されてい
るか、記載されている方法により製造できる。また、特許文献1に記載されているとおり、かような高分子環状ニトロキシドラジカル化合物は水性媒体中で、親水性のPEGセグメントで表層を形成し、CNRセグメントコアを形成する、所謂、コア−シェル型高分子ミセルを形成するものと理解されている。
本発明の製剤では、剤形により、高分子環状ニトロキシドラジカル化合物は、例えば、水性媒体中では、上記のような自己組織化した高分子ミセルの形態で存在することができ、また、固体製剤では、如何なる状態の当該化合物を含むこともできるが、水性媒体中で一旦、高分子ミセルを形成した後、凍結乾燥等により乾燥したものを含めるのが好ましい。
経口投与用製剤は、本発明の目的に沿う限り、当該技術分野で周知の経口製剤に含めることのできる希釈剤、賦形剤、添加剤を含めることができるが、上記凍結乾燥物それ自体であることもできる。本発明の経口投与用製剤が、固形である場合、高分子環状ニトロキシドラジカル化合物を、ショ糖、乳糖、マンニトール、セルロール、トレハロース、マルチトール、デキストラン、デンプン、寒天、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、グリセリド等から選ばれる1種以上の組み合わせで含むことができる。さらに、他の不活性希釈剤、ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤、パラベン、ソルビン酸、α−トコフェロールのような保存剤、システインのような抗酸化剤、崩壊剤、結合剤、緩衝剤、甘味料、なども含めることができる。
経口投与用液体製剤は、生理学的に許容される、乳剤、シロップ、エリキシル剤、懸濁剤お予備溶液製剤を包含する。これらの製剤は、一般に使用されている、不活性希釈剤、例えば、水を含むことができる。このような水溶液には、上述した、糖類や分子量200〜100,000程度のポリエチレングリコールを含めることもできる。
かような製剤は、哺乳類特に、ヒトへの経口投与により、速やかに血中に移行し、かつ、長時間血流中に滞留できる。こうして、がん、炎症部位、酸化ストレス障害部位にデリバリされ、病巣または患部に存在する活性酸素または酸化ストレスを抑制または低減できる。したがって、活性酸素が媒介し得る障害または疾患の発症を予防し、また、発症した当該疾患を治療できる。このような障害または疾患には、限定されるものではないが、
動脈硬化、糖尿病、がん、関節炎、敗血症、アルツハイマー、パーキンソン病等が含まれる。
本発明で使用する高分子化ニトロキシドラジカル化合物が形成するナノ粒子の概念図。 N−RNPとO−RNPを経口投与後の血中ESRシグナル強度を示すグラフ。 放射線同位体を標識化したN−RNPとO−RNPを用いた経口投与後の体内動態を示すグラフ。 関節炎モデルマウスの後肢の厚さ(炎症マーカー)の測定結果を示すグラフ。 関節炎モデルマウスの熱的刺激に対する逃避反射テストの結果を示すグラフ。 関節炎モデルマウスの好中球の活性化の結果を示すグラフ。 アルツハイマーモデルマウスの物体認識試験の結果を示すグラフ。 アルツハイマーモデルマウスの海馬依存性学習・記憶テストの結果を示すグラフ。 アルツハイマーモデルマウスの脳内過酸化脂質の測定結果を示すグラフ。 N−RNP経口投与後の毒性の影響を調べた結果を示すグラフ。 N−RNP経口投与による動脈硬化治療効果を示す図に変わる写真。
<発明を実施するための具体例>
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明をこれらの態様に限定することを意図するものではない。なお、説明を簡潔にするため、高分子化ニトロキシドラジカル化合物としては、上記特許文献1(引用することにより、開示事項は、本明細書の内容となる)の製造例4で調整されたPEG−b−PCMS−N−TEMPOによるナノ粒子(以下、N−RNPともいう)を用いた例を中心に説明する。
試験例1:ラジカル含有ナノ粒子の経口投与後の血中移行性
pH応答性ナノ粒子(N−RNP)とpH非応答性ナノ粒子(O−RNP)を1200mg/kgの濃度で経口投与した後、各時間ごとに採血を行い、その電子スピン共鳴(ESR)スペクトルの測定を行った。この2つのナノ粒子を経口投与すると、図2に示すようにpHで崩壊しないナノ粒子は全く血中に取り込まれないものの、pH崩壊型ナノ粒子は効果的に血中に取り込まれ、数時間にわたって滞留することを見いだした。
試験例2:放射性同位体標識ラジカル含有ナノ粒子の体内動態評価
放射性同位体125Iを用いてナノ粒子を放射線同位体標識した後、経口投与を行った。一定時間ごとに胃、小腸、盲腸、大腸、肝臓、血液を摘出し、その放射線量をガンマカウンターによって測定した結果を図3に示す。
図2と同様にpHで崩壊しないナノ粒子(O−RNP)は全く血中に取り込まれないものの、pH崩壊型ナノ粒子(N−RNP)は効果的に血中に取り込まれていることが明らかとなった。
試験例3:関節炎治療
N−RNP(100mg/kg)の経口投与を行った。1日後、1% カラギーナン(carrageenan)懸濁液を後肢に投与し、関節炎モデルを作製し、その障害マーカーを測定した。
炎症の指標として、カラギーナンを投与した後肢の厚さを測定したところ、N−RNPの経口投与は低分子化合物TEMPOLよりも高い保護効果を示した(図4)。
マウスの後肢に熱的刺激を加え逃避反射の潜時を測定したところ、N−RNPが優れた保護効果を示すことが明らかとなった(図5)。
マウスの後肢の好中球の活性化(炎症の指標)を調べるために、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)を測定したところ、N−RNPが炎症を抑制していることが明らかとなった(図6)。
試験例4:アルツハイマー治療
アルツハイマーモデルマウス SAMP8 10週齢(老化促進モデルマウス;学習・記憶障害を自然発症するモデルマウス)を用いて、アルツハイマー予防への検討を行った。このモデルマウスに対して、28日間N−RNPをゾンデで経口投与(300mg/kg/day)行い、投与後アルツハイマーの程度の測定を行った。
物体認識試験を行ったところ、N−RNPと低分子化合物TEMPOLともに改善が見られたものの、N−RNPは、低分子化合物TEMPOLに比べ、非常に高い物体認識能力を示した。一方、TEMPOが結合されていないナノ粒子(micelle)に関して
は、改善が見られなかった(図7)。
海馬依存性学習と記憶をテストするために行動学的評価であるモリス水迷路を行ったところ、N−RNPのみにおいて改善の傾向が観察され、低分子化合物TEMPOL及びTEMPOが導入されていないナノ粒子(micelle)は改善の傾向が見られなかった(図8)。
脳内の酸化ストレスの指標として、TBARS法を用いて過酸化脂質量を評価したところ、N−RNPのみにおいて過酸化脂質量の抑制が観察され、低分子化合物TEMPOL及びTEMPOが導入されていないナノ粒子(micelle)は、有意に抑制されなかった(図9)。
試験例5:動脈硬化治療
高脂血症・動脈硬化モデルLDLR欠損マウス雄8週齢に12週間ウエスタンダイエット(WTD)負荷とともに3.125mg/mL N−RNPを飲水ボトルにより自由飲水にて投与した。投与から12週間後に血中パラメータ、血圧、動脈硬化病変の形成を評価した。
ウエスタンダイエット負荷時におけるN−RNPの投与の有無により、ほとんどのパラメータについては影響が認められなかったことから、N−RNPの経口投与による毒性がないことが示される(図10)。
ウエスタンダイエット負荷時におけるN−RNPの投与の有無により、ほとんどのパラメータについては影響は認められなかったが、大動脈全長、および大動脈起始部の切片どちらにおいても、N−RNPの投与で動脈硬化病変の形成が抑制される傾向が得られた(図11)。

Claims (7)

  1. 高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物を活性成分として含む経口投与用製剤であって、当該高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物が、一般式(I)
    PEG−CNR (I)
    式中、PEGはポリ(エチレングリコール)を含むセグメントであり、
    CNRは、少なくとも1つのイミノ基を有する連結基を介してポリマー主鎖に結合する環状ニトロキシドラジカルをペンダント基の一部として含む反復単位を含むポリマーセグメントである、
    で表される、経口投与用製剤。
  2. 高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物を活性成分として含む経口投与により血流中へニトロキシドラジカルをデリバリーするための製薬学的製剤であって、
    当該高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物が、一般式(I)
    PEG−CNR (I)
    式中、PEGはポリ(エチレングリコール)を含むセグメントであり、
    CNRは、少なくとも1つのイミノ基を有する連結基を介してポリマー主鎖に結合する環状ニトロキシドラジカルをペンダント基の一部として含む反復単位を含むポリマーセグメントである、
    で表される、製薬学的製剤。
  3. 高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物を活性成分として含む経口投与により炎症を予防または治療するための製薬学的製剤であって、
    当該高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物が、一般式(I)
    PEG−CNR (I)
    式中、PEGはポリ(エチレングリコール)を含むセグメントであり、
    CNRは、少なくとも1つのイミノ基を有する連結基を介してポリマー主鎖に結合する環状ニトロキシドラジカルをペンダント基の一部として含む反復単位を含むポリマーセグメントである、
    で表される、製薬学的製剤。
  4. 環状ニトロキシドラジカルが、o−もしくはp−フェニレン−C1−6アルキレン−NH−(C1−6アルキレン)−(ここで、qは0または1である)の連結基を介してポリマー主鎖に結合しており、かつ、環状ニトロキシドラジカルが、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル及び2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれ、ここで、ポリマー主鎖が重合性不飽和二重結合に由来し、当該主鎖にフェニレンの未結合末端が結合している、請求項1〜3のいずれかに記載の製剤。
  5. 高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物が、一般式(II)
    式中、
    Aは、非置換または置換C−C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基、式RCH−(ここで、R及びRは独立して、C−CアルコキシまたはRとRは一緒になって−OCHCHO−、−O(CHO−もしくは−O(CHO−を表す。)の基を表し、
    は、単結合、−(CHS−、−CO(CHS−、からなる群より選ばれ、ここでcは1ないし5の整数であり、
    は、−C1−6アルキレン−NH−(C1−6アルキレン)−であり、ここでqは0または1であり、そして
    Rは、独立して、Rの総数nの少なくとも50%が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル及び2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
    mは、20〜5,000の整数であり、そして
    nは、独立して、3〜1,000の整数である、
    で表される、請求項4記載の製剤。
  6. Rが、次式
    式中、R’はメチル基である、
    で表される基から選ばれ、Rの総数nの少なくとも80%を前記式で表される基が占める、
    請求項5記載の製剤。
  7. 炎症が、動脈硬化、関節炎またはアルツハイマーである、請求項3記載の製剤。
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