JP2013155167A - 虚血性脳血管障害に伴う脳出血を予防する薬剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】虚血性脳血管障害に伴う脳出血を予防する医薬を提供する。
【解決手段】一般式(I)(R1は水素原子又は水酸基を示す)で表される化合物若しくはその酸付加塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含み、虚血性脳血管障害に伴う脳出血を予防するための医薬。

【選択図】なし

Description

本発明は、虚血性脳血管障害に伴う脳出血を予防するための医薬に関する。
脳梗塞は脳動脈の閉塞又は狭窄のため脳虚血が引き起こされて脳組織が壊死を起こす、あるいは壊死に近い状態になり、片麻痺、意識障害、失語などの症状を呈する疾患である。脳梗塞は、脳梗塞急性期及び脳梗塞慢性期に大別されるが、脳梗塞急性期は血管が閉塞する機序によって血栓性脳梗塞、塞栓性脳梗塞、及び血行力学性脳梗塞の3種類に分類され、臨床分類としてアテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓、ラクナ梗塞、及びその他の脳梗塞の4種類に分類される(NINDS: National Institute of Neurological Disorders and Stroke米国国立神経疾患・脳卒中研究所による分類)。一方、脳出血は頭蓋内で生じた出血であり、頭蓋内出血と呼ばれることもある。脳出血は脳の血管又は血液の異常が引き金になって現れる障害であり、くも膜下出血、硬膜下出血、又は脳梗塞に伴う脳出血等に分類される。
血栓性脳梗塞や心原性塞栓性脳梗塞において塞栓子が融解や遠位側へ移動することによって壊死組織に血流が再開通することがあるが(再灌流)、再灌流によって梗塞部に大量の血液が流れ込むと、壊死組織において梗塞により脆くなった血管壁から出血を生じる場合がある。脳塞栓症では高率(30%以上)に脳出血を発症するとされているが、これは閉塞後の血管の再開通によって梗塞部に大量の血液が流れ込んで血管が破綻することが理由である。また、脳梗塞発症後2〜5日において側副血行路により血液供給が行われる時期や、側副血行路となる血管が新しく作られる時期(発症後2週目以降など)に脳出血を生じることもある。さらには出血を誘起又は助長する薬理作用を持つ治療薬の投与後に脳出血を生じることもある。脳梗塞急性期の脳出血(「出血性脳梗塞」と呼ばれることもある)は脳浮腫や炎症等の原因となることから脳梗塞発症後の予後不良因子の一つとされている。
アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓、又はラクナ梗塞等の脳梗塞急性期(急性期虚血性脳血管障害発症)の治療としては、主に組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA、又はrt-PA、アルテプラーゼと表記、日本での商品名はグルトパ注)に代表される血栓溶解剤、アスピリン、オザグレル等の抗血小板薬、アルガトロバン、ヘパリン等の抗凝固薬、グリセロール、マンニトール等の抗浮腫薬及びエダラボン等の脳保護薬が用いられている。また、脳梗塞慢性期においては、再発防止のため抗血小板薬及び抗凝固薬等が用いられている。しかしながら、これらの治療剤には脳梗塞に伴う脳出血を予防する効果はなく、逆に脳梗塞急性期に投与される血栓溶解剤、抗血小板薬、及び抗凝固剤は脳出血のリスクを高めてしまう。特に血栓溶解剤を用いる場合には脳出血のリスクが高い。t-PAは、急性期虚血性脳血管障害発症後3時間以上たってからの投与ではその出血のリスクが増大することが明らかになっており、本邦では急性期虚血性脳血管障害発症後3時間以内の使用に制限されている。
脳梗塞急性期の脳出血の予防剤としては、血小板の活性亢進又は血液凝固経路の亢進作用を持つ止血剤、例えば活性型凝固第VII因子、血小板、又はプロトロンビン複合体の応用が考えられるが、さらに血栓が生じて梗塞部位を拡大させる危険性がある。脳梗塞急性期においては虚血による脳壊死を回避することが治療方針として優先されるべきであることから、血栓溶解剤、抗凝固剤、又は抗血小板剤を用いて血管閉塞又は塞栓を除去する治療を主として行う。脳梗塞急性期においては、梗塞を拡大する可能性のある上記の脳出血予防剤を投与することは困難である。このような状況から、脳梗塞に伴う脳出血を安全かつ有効に予防できる医薬の提供が望まれており、特に脳梗塞急性期における脳出血の予防、例えば虚血−再灌流障害による脳出血又は脳梗塞治療薬の投与後の脳出血を安全かつ有効に予防できる医薬の提供が切望されている。
特に、t-PAは脳梗塞の原因となった血栓を溶解し、血流を回復する非常に有用な治療薬である。しかし前述の通り、その出血のリスクから急性期虚血性脳血管障害の発症後3時間以内の使用に制限されている。急性期虚血性脳血管障害の発症から3時間以内の脳梗塞患者に対するt-PAの臨床治験では、症候性頭蓋内出血(出血性脳梗塞、脳出血)の頻度を有意に増加させたものの、3カ月後の死亡数に有意差はなく、転帰良好群を有意に増加させている(非特許文献1)。症候性頭蓋内出血に関して、t-PAの添付文書では、その発生率は、出血性脳梗塞(31.1%)及び脳出血(5.8%)であった(非特許文献2)。このように現状の3時間以内の使用においても脳出血のリスクは高く、このt-PAの脳出血を抑制するための医薬が切望されている。
急性期虚血性脳血管障害の発症から3時間以内にt-PA投与を開始するためには、病院での臨床検査、神経学的診察、CT診断及びインフォームドコンセント等を考えると患者は発症後2時間以内に病院を受診しなくてはならない(非特許文献3)。このような制限では、t-PAを使用できる病院は限られてくるため、その使用率は脳梗塞全体のうち2.5%にしかすぎない(非特許文献4)。このような状況から、t-PAの使用時間延長が望まれている。The Cochrane Stroke Groupのメタアナリシスによると、発症3時間以内のt-PAの投与に比べ、3〜6時間での投与では、症候性頭蓋内出血の頻度が3倍増加しいている(非特許文献5)。一方、海外での治験のメタアナリシスでは、t-PAの使用開始が、急性期虚血性脳血管障害の発症後4.5時間以内であれば、ベネフィットがリスク(脳出血)を上回り、4.5時間を超えるとリスクがベネフィットを上回ることが報告されている(非特許文献6)。また、自家血塞栓性脳虚血モデルラットを用いた実験では、虚血2時間後にt-PA 10 mg/kgを投与すると、脳梗塞体積の減少が認められたが、6時間後に投与すると、脳梗塞の減少は認められず、脳出血の増加が認められている(非特許文献7)。このことから、t-PAの動物モデルと臨床における有効性と脳出血のリスクの時間的推移に大きな違いがないことが理解される。このような状況から、近年アメリカ脳卒中学会が、急性期虚血性脳血管障害の発症から4.5時間以内の使用を推奨する発表をしている。このようにt-PAの使用時間延長の可能性はあるが、時間延長は脳出血のリスクを高めることは確実であることから、t-PA投与による脳出血を阻止又は抑制できる医薬の必要性は依然として極めて高い。
一方、下記の一般式(I) (式中、R1は水素原子又は水酸基を示す)で表される化合物は、Rhoキナーゼ、ミオシン軽鎖リン酸化酵素、プロテインキナーゼCなどに対するキナーゼ阻害活性を有しており、血管平滑筋弛緩作用、血流増加作用、血圧低下作用、脳機能改善作用、心臓保護作用等を示し、血管拡張剤(特に狭心症治療剤)、高血圧治療剤、脳機能改善作用、心臓保護剤、及び動脈硬化症治療剤等として有用な物質であることが知られている(例えば特許文献1〜9、又は非特許文献8〜12参照)。
特許文献3には、上記化合物の脳機能改善作用について、脳出血、脳血栓、脳梗塞、クモ膜下出血、一過性脳虚血発作、高血圧性脳症、脳動脈硬化症、硬膜下血腫、硬膜外血腫、脳低酸素症、脳浮腫、脳炎、脳腫瘍、頭部外傷、精神病、代謝中毒、薬物中毒、一過性の呼吸停止、手術時の深麻酔、物理学的障害等による精神症状、神経症状の改善薬と記載されている。上記刊行物には、この化合物が脳出血の発生後に生じる麻痺等の神経症状の悪化を改善する作用を有することが説明されているが、脳出血の発生そのものを予防する作用を有することは示唆ないし教示されていない。
非特許文献5には一般式(I)で表される化合物が梗塞巣面積拡大の抑制作用を有することが開示されている。脳梗塞に伴って形成される梗塞巣は虚血により細胞死又は細胞脱落が生じた部位であり、動物実験では活動しているミトコンドリアを染色するトリフェニルテトラゾリウムクロライドを用いて染色されない部分の面積を測定することによって梗塞巣面積を計測することができる。一方、脳梗塞に伴う脳出血は虚血によってダメージを受けた血管からの血液の流出であり、一般的には梗塞巣の内部だけでなく、周辺の正常組織においても観察される。動物実験では出血痕の面積を測定するか、又は出血程度のスコア化により脳出血量を定量化することができ、これは脳梗塞巣面積とは明確に区別される。従って、一般式(I)で表される化合物が脳梗塞に伴う脳出血の予防に有効性を示すことは非特許文献5及びその他の刊行物には示唆ないし教示されていない。
なお、一般式(I)で表される化合物においてR1が水素原子である化合物[1-(5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン(以下[ファスジル]と呼ぶ場合がある)]の塩酸塩・1/2水和物を有効成分として含む医薬(「エリル」(登録商標);旭化成ファーマ株式会社)が「くも膜下出血術後の脳血管攣縮及びこれに伴う脳虚血症状の改善」等を目的として臨床適用されているが(例えば「エリル(登録商標)点滴静注液30mg」など」)、上記医薬の添付文書においては頭蓋内出血(すなわち脳出血)を伴う患者への投与は禁忌とされている(非特許文献13)。また、この化合物については血小板凝集に影響を与えないことが知られている(非特許文献14)。
特開昭61-152658号公報 特開昭61-227581号公報 特開平2-256617号公報 特開平4-264030号公報 特開平6-056668号公報 特開平6-080569号公報 特開平7-080854号公報 特開平9-227381号公報 国際公開WO98/06433 国際公開WO00/03746
N Engl J Med 1995; 333, 1581-1587 グルトパ注(t-PA)の添付文書 島克志、日薬理誌、127、489−493(2006) 寺崎修司、他、脳卒中データバンク2009、中山書店、2009、p94-95 Cochrane Database Syst Rev 2003; CD000213 The Lancet 2010; 375, 1695-1703 グルトパ注(t-PA)の申請資料CTD2.6 p8-9 Br. J. Pharmacol., 98, 1091 (1989) J. Pharmacol. Exp. Ther., 259, 738 (1991) Circulation, 96, 4357 (1997) Cardiovasc. Res., 43, 1029 (1999) Brain. Res., 1193, 102 (2008) エリル(登録商標) 点滴静注液30mg、添付文書 薬理と治療, 24, 799 (1996)
本発明の課題は、急性期虚血性脳血管障害発症に伴う脳出血を予防する医薬を提供することにある。特にt-PAに代表される血栓溶解剤の脳出血リスクを減らし、血栓溶解剤の使用可能時間を延長することができる医薬を提供することが本発明の課題である。
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の一般式(I)で表される化合物若しくはその酸付加塩、又はそれらの水和物が虚血性脳血管障害に伴う脳出血の予防に有効であることを見出した。より具体的には、薬理と治療, 24, 799 (1996)の記載に記載されているとおり下記の一般式(I)で表される化合物は血小板凝集に影響を与えないことが知られているが、本願発明者等は、本願明細書の実施例1及び実施例2から分かるように、下記の一般式(I)で表される化合物が血液凝固及び通常の出血にも影響を及ぼさないこと、及びこの作用に基づいて虚血性脳血管障害に伴う脳出血を予防することができることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
すなわち、本発明により、
(1)下記一般式(I):
(式中、R1は水素原子又は水酸基を示す)で表される化合物若しくはその酸付加塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含み、虚血性脳血管障害に伴う脳出血を予防するための医薬が提供される。
また、本発明の好ましい態様により、
(2)脳出血が急性期虚血性脳血管障害発症後に生じる出血である前記(1)に記載の医薬;
(3)脳出血が急性期虚血性脳血管障害発症後の再灌流障害に起因する出血である前記(1)に記載の医薬;
(4)脳出血が脳梗塞治療薬の投与後に生じる出血である前記(1)に記載の医薬;
(5)脳出血が血栓溶解剤の投与後に生じる出血である前記(1)に記載の医薬;
(6)血栓溶解剤の使用可能時間範囲を延長できる前記(1)に記載の医薬;
(7)脳出血が組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の投与後に生じる出血である前記(1)に記載の医薬;
(8)組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を延長するために用いる前記(1)に記載の医薬;
(9)組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後4時間まで延長するために用いる前記(1)に記載の医薬;
(10) 急性期虚血性脳血管障害発症後3時間までである組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後4時間にまで延長するために用いる前記(1)に記載の医薬;
(11)組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後6時間まで延長するために用いる前記(1)に記載の医薬;
(12) 急性期虚血性脳血管障害発症後3時間までである組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後6時間にまで延長するために用いる前記(1)に記載の医薬;
(13) 急性期虚血性脳血管障害発症後4.5時間までである組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後6時間にまで延長するために用いる前記(1)に記載の医薬;
(14)組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を延長するための前記(1)に記載の医薬の使用;
(15)組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後4時間まで延長するための前記(1)に記載の医薬の使用;
(16) 急性期虚血性脳血管障害発症後3時間までである組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後4時間にまで延長するための前記(1)に記載の医薬の使用;
(17)組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後6時間まで延長するための前記(1)に記載の医薬の使用;
(18) 急性期虚血性脳血管障害発症後3時間までである組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後6時間にまで延長するための前記(1)に記載の医薬の使用;
(19) 急性期虚血性脳血管障害発症後4.5時間までである組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後6時間にまで延長するための前記(1)に記載の医薬の使用;
(20)脳出血が抗血小板剤の投与後に生じる出血である前記(1)に記載の医薬;
(21)脳出血が抗凝固剤の投与後に生じる出血である前記(1)に記載の医薬;
に記載の医薬;
(22)脳出血が脳保護剤の投与後に生じる出血である前記(1)に記載の医薬;
(23)脳出血が脳浮腫改善薬の投与後に生じる出血である前記(1)に記載の医薬;
(24)脳出血が血液希釈療法後に生じる出血である前記(1)に記載の医薬;
(25)脳出血が外科的な治療後に生じる出血である前記(1)に記載の医薬;及び
(26)脳出血が前記(4)、(5)、(7)、(20)ないし(25)のいずれかに記載の薬剤投与又は治療方法を2つ以上組み合わせた処置の後に生じる脳出血である前記(1)に記載の医薬;
(27)少なくとも下記の有効成分(a)と有効成分(b)との組み合わせを含む虚血性脳血管障害に伴う脳出血を予防するための医薬組成物:
(a)上記一般式(I)(式中、R1は水素原子又は水酸基を示す)で表される化合物若しくはその酸付加塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物;
(b)脳保護薬及び脳浮腫治療薬からなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の医薬に含まれる有効成分。
また、本発明は以下に関する。
(28)治療に有効な量の組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)と、治療に有効な量の上記一般式(I)で表される化合物若しくはその酸付加塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物との組み合わせを含み、急性期虚血性脳血管障害発症後3時間以上が経過し、かつ急性期虚血性脳血管障害発症後6時間以内である患者の虚血性脳血管障害に伴う脳出血を予防するための医薬;
(29) 急性期虚血性脳血管障害発症後4.5時間以上が経過し、かつ急性期虚血性脳血管障害発症後6時間以内である患者の虚血性脳血管障害に伴う脳出血を予防するための上記(28)に記載の医薬;
(30) 急性期虚血性脳血管障害発症後3時間以上が経過し、かつ急性期虚血性脳血管障害発症後4時間以内である患者の虚血性脳血管障害に伴う脳出血を予防するための上記(28)に記載の医薬;
(31)治療に有効な量の組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)と、治療に有効な量の上記一般式(I)で表される化合物若しくはその酸付加塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物とを組み合わせて投与することを特徴とする、急性期虚血性脳血管障害発症後3時間以上が経過し、かつ急性期虚血性脳血管障害発症後6時間以内である患者の虚血性脳血管障害に伴う脳出血の予防方法;
(32) 急性期虚血性脳血管障害発症後4.5時間以上が経過し、かつ急性期虚血性脳血管障害発症後6時間以内である患者の虚血性脳血管障害に伴う脳出血の予防方法である上記(31)に記載の予防方法;
(33) 急性期虚血性脳血管障害発症後3時間以上が経過し、かつ急性期虚血性脳血管障害発症後4時間以内である患者の虚血性脳血管障害に伴う脳出血の予防方法である上記(31)に記載の予防方法。
本発明の別の観点からは、虚血性脳血管障害に伴う脳出血を予防するための上記医薬の製造に使用する上記一般式(I)で表される化合物若しくはその酸付加塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物が提供される。
さらに本発明の別の観点からは、虚血性脳血管障害に伴う脳出血を予防する方法であって、脳梗塞を発症したヒトを含む哺乳類動物に上記一般式(I)で表される化合物若しくはその酸付加塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の予防有効量を投与する工程を含む方法が提供される。
本発明の医薬は、実施例1及び実施例2に示されているように、血小板凝集、血液凝固、及び通常の出血には影響を及ぼさずに虚血性脳血管障害に伴う脳出血を予防することができる。本発明の医薬のうちR1が水素原子である医薬はすでに臨床で使用されており、本発明の医薬は高い安全性を有している。従って、本発明の医薬は従来は予防手段が提供されていなかった虚血性脳血管障害に伴う脳出血の予防のために極めて有効な医薬として利用できる。
脳虚血・再灌流モデル(虚血4時間後に再灌流)での脳出血(脳出血面積)に対するt-PAと本発明の医薬の併用効果を示した図である。 脳虚血・再灌流モデル(虚血6時間後に再灌流)での脳出血(ヘモグロビン量)に対するt-PAと本発明の医薬の併用効果を示した図である。 脳虚血・再灌流モデル(虚血6時間後に再灌流)での生存率に対するt-PAと本発明の医薬の併用効果を示した図である。 脳虚血・再灌流モデル(虚血6時間後に再灌流)での自発運動量に対するt-PAと本発明の医薬の併用効果を示した図である。
脳出血とは頭蓋内で生じる出血であり、脳の血管又は血液の異常が引き金になって生じる障害である。脳出血はくも膜下出血、硬膜下出血、又は虚血性脳血管障害に伴う脳出血等に分類されるが、本発明の医薬は虚血性脳血管障害に伴う脳出血を対象としている。
虚血性脳血管障害は一般的には脳梗塞としての病態を呈する疾患であるが、一過性の脳虚血血管障害により生じる一過性脳虚血発作などの疾患も包含される。脳梗塞は発症後の時間及び治療法の選択で、脳梗塞急性期と脳梗塞慢性期に分類される。脳梗塞急性期は脳梗塞発症から症状改善の治療を行い症状の落ち着くまでの期間、一般的には発症から2週間ぐらいの期間を意味している。脳梗塞慢性期は症状が落ち着いて脳梗塞の再発予防やリハビリ治療が中心となる時期より後を意味しており、一般的には発症から1ヶ月程経った時期以降のことである。
脳梗塞急性期での再灌流障害とは、脳血管の閉塞又は狭窄などで脳虚血状態にある脳組織において、治療によって又は自然に血液再灌流が生じた場合に組織や細胞などに対して悪影響を起こす様々な物質が産生され、その結果として脳組織傷害が引き起こされることを意味している。脳梗塞急性期の脳出血の主たる原因は再灌流障害によって脳血管が傷害を受けて脆弱化したことにあることから、本発明の医薬は脳梗塞急性期に投与することが望ましく、とりわけ脳梗塞急性期において生じる再灌流障害に起因する脳出血を予防できる時期に投与することが大変に望ましい。
血栓溶解剤、抗血小板剤、又は抗凝固剤等の脳梗塞治療薬は、その薬理作用から、脳出血のリスクを増加し、あるいは脳出血を助長することが知られている。特にt-PAなどの血栓溶解剤は脳梗塞における閉塞や塞栓の除去に対する治療効果は高いものの、脳出血のリスクも高い。従って、血栓溶解剤、抗血小板剤、又は抗凝固剤等の脳出血を生じうる脳梗塞治療薬の1種又は2種以上を投与するに際して、これらの薬剤の投与前に、又は投与と同時に、あるいはその投与の後に本発明の医薬を投与することも好ましい態様である。
脳出血を生じうる血栓溶解剤としては、t-PA又はウロキナーゼ等が挙げられるが、t-PAが特にその可能性が高い薬剤として挙げられる。t-PAとしては組織型プラスミノーゲン活性化因子として臨床で使用されているものであれば特にその種類は限定されない。同様にウロキナーゼの種類も臨床で使用されているものであれば特に限定されることはない。血栓溶解剤は2種以上使用されていてもよい。
脳出血を生じうる抗血小板薬としては、例えば、アスピリン、オザグレル、チクロピジン、シロスタゾール、又はジピリダモール等が挙げられ、アスピリン又はオザグレルが特にその可能性が高い薬剤として挙げられる。作用機序の観点からは、例えば、サイクロオキシゲナーゼ阻害薬、フォスフォジエステラーゼ阻害薬、トロンボキサンA2(TXA2)合成阻害薬、プロスタサイクリン(PGI2)とその誘導体、グリコプロテインIIb/IIIa阻害薬、又はセロトニン受容体阻害薬等が挙げられる。抗血小板薬は2種以上使用されていてもよい。
脳出血を生じうる抗凝固薬としては、例えば、アルガトロバン、ヘパリン、低分子ヘパリン、又はワーファリン等が挙げられ、アルガトロバン又はヘパリンが特にその可能性の高い薬剤として挙げられる。抗凝固薬は2種以上使用されていてもよい。
また、一般的に脳出血のリスクを伴わない脳梗塞治療としては、例えば、エダラボン等の脳保護薬、グリセロール若しくはマンニトール等の脳浮腫改善薬、デキストラン40やアルブミン等の血漿増量薬などを挙げることができるが、これらの薬剤の投与にあたっても自然発生的な脳出血のリスクを低減するために本発明の医薬を予防的に投与することができる。脳保護薬、脳浮腫改善薬、血漿増量薬はそれぞれ2種以上使用されていてもよく、脳保護薬、脳浮腫改善薬、又は血漿増量薬は2種以上組み合わせて使用されていてもよい。
本発明の医薬の適用対象となる虚血性脳血管障害に伴う脳出血としては、自然発症する脳出血や1又は2以上の薬剤の投与に起因する脳出血のほか、脳梗塞に対する外科的(観血的又は非観血的)治療に起因する脳出血も包含される。このような外科的治療に起因する脳出血としては、例えば、マイクロカテーテルを用いて閉塞又は塞栓部の血管内にウロキナーゼなどを投与する脳血管形成術のほか、バルーンカテーテルによる閉塞血管の再開通術や狭窄血管の拡張術などを挙げることができる。
本発明の医薬は上記の脳梗塞治療薬と組み合わせて投与することが好ましい。組み合わせる脳梗塞の治療薬は特に限定されないが、例えば、脳出血のリスクを伴わない薬剤又は脳出血を助長しない薬剤である脳保護薬、好ましくはエダラボンのほか、又はグリセオールなどの脳浮腫改善薬が望ましい。別の好ましい態様としては、投与後に脳出血を生じうる脳梗塞治療薬、例えば血栓溶解剤、抗血小板剤、及び抗凝固剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上の医薬の各々の投与量を低減させて本発明の医薬との組み合わせ投与を行う場合が挙げられる。組み合わせに際しては、単一投与形態の合剤として投与することもできるが、別々の単位投与形態の製剤を用いて、組み合わせ的に投与することも可能である。
なお、脳梗塞に伴う脳出血の予防剤として血小板の活性亢進又は血液凝固経路の亢進作用を持つ止血剤を使用することは新たな血栓を形成して梗塞を拡大する可能性があることから望ましくない。
本発明の医薬の有効成分は血小板凝集に影響を与えないことが知られている(薬理と治療, 24, 799 (1996))。また、上記一般式(I)で表される化合物が抗凝固系に影響するか否かはヒトより採取した血漿を用いて確認できる。例えば、ヒト血漿に化合物を添加した後、コアギュロメーターにて器械的測定原理による血液凝固時間の測定を行い、活性化部分トロンボプラスチン時間及びプロトロンビン時間を測定することで血液凝固系に対する作用を判断することができる。
本発明の医薬の有効成分が通常の出血に影響するかは、例えば、ラットの尾からの出血を観察することによって確認できる。上記一般式(I)で表される化合物をラットに投与した後、尾の先端を切断し、尾からの出血を観察して止血までの時間を測定することにより、通常の出血に対する作用を判断することができる。
本発明の医薬の有効成分が虚血性脳血管障害に伴う脳出血の予防のために有用であることは、例えば、動物を用いた脳梗塞急性期の脳出血モデル[脳虚血(脳血管閉塞)・再灌流モデル)]等を用いて確認することができる。上記一般式(I)で表される化合物を0.1−1,000 mg/kg、好ましくは0.1−100 mg/kgの投与量でモデル動物に静脈内、腹腔内、又は経口で単回又は反復投与した後に脳を取り出し、傷害側の出血痕の定量化(面積又は体積)、重症度での分類化、又はアルブミン等の血漿蛋白の脳実質内への漏出の定量化をすることにより虚血性脳血管障害に伴う脳出血に対する予防効果を確認することができる。
本発明の医薬の有効成分が脳梗塞発症後の脳梗塞治療薬の投与に起因する脳出血の予防のために有用であることは、例えば、動物を用いた脳梗塞急性期の脳出血モデル[脳虚血(脳血管閉塞)・再灌流モデル)]等を用いて確認できる。脳梗塞治療薬、例えば脳血栓溶解剤、抗血小板剤、又は抗凝固剤を再灌流を行う前又は後に投与しておき、上記一般式(I)で表される化合物を0.1−1,000 mg/kg、好ましくは0.1−100 mg/kgの投与量で脳梗塞治療薬が投与されたモデル動物に静脈内、腹腔内、又は経口で単回又は反復投与し、脳を取り出して傷害側の出血痕の定量化(面積又は体積)、重症度での分類化、又はアルブミン等の血漿蛋白の脳実質内への漏出の定量化をすることにより虚血性脳血管障害に伴う脳出血に対する予防効果を確認することができる。
本発明の医薬の有効成分が脳梗塞発症後から、脳血栓溶解剤、特にt-PA投与開始までの時間(使用可能時間)を延長させるために有用であることは、例えば、動物を用いた脳梗塞急性期の脳出血モデル[脳虚血(脳血管閉塞)・再灌流モデル)]等を用いて確認できる。例えば、虚血から再灌流までの時間が延長させ、脳出血の増加を確認し、その増加に対する併用投与効果を検討することによって確認できる。例えば脳血栓溶解剤、特にt-PAを、再灌流を行う前又は後に投与しておき、上記一般式(I)で表される化合物を0.1−1,000 mg/kg、好ましくは0.1−100 mg/kgの投与量で脳梗塞治療薬が投与されたモデル動物に静脈内、腹腔内、又は経口で単回又は反復投与し、4時間又は6時間後に再灌流を実施し、その後、脳を取り出して傷害側の出血痕の定量化(面積又は体積)、重症度での分類化、又はアルブミン等の血漿蛋白の脳実質内への漏出の定量化をすることにより虚血性脳血管障害に伴う脳出血(急性期虚血性脳血管障害発症に伴う脳出血)に対する予防効果を検討することができる。この予防効果が確認できれば、t-PAの使用開始期間の延長を示すことになる。
前述したとおり、脳梗塞治療薬としてt-PAは著効を示すが、出血リスク増加の観点から使用時間には大きな制限がかけられている。例えば、日本においては急性期虚血性脳血管障害発症後3時間以内の使用に制限されている。本発明の医薬は、t-PAと組みあせて投与することにより、t-PAの出血リスクを低減させることができ、その結果としてt-PAの使用制限時間を3時間以上に延長することができ、例えば4時間以内、4.5時間以内、又は6時間以内までの使用を可能にすることができる。あるいは、本発明の医薬を投与することによりt-PAの出血リスクが低減するので、t-PAを急性期虚血性脳血管障害発症後4.5時間経過後、かつ6時間以内に使用できるようになる。また、本発明の医薬は、t-PAと組みあせて投与することにより、t-PAの単位時間あたり(例えば、発症後3時間以内、発症後4時間以内、又は発症後6時間以内)の出血リスクを低減することができる。急性期虚血性脳血管障害発症後3時間以内にt-PA療法を開始する場合においても本発明の医薬を投与することが好ましい場合がある。
本発明の医薬とt-PAとを組み合わせる際のt-PAの投与量としては、t-PA単独投与として販売承認を受けている量が好ましい量として挙げられる。具体的には、0.001 mg/kg以上が挙げられ、0.01 mg/kg以上が好ましく、0.1 mg/kg以上がさらに好ましい。また、t-PA投与量の下限としては、1,000 mg/kg以下が挙げられ、100 mg/kg以下が好ましく、10 mg/kg以下が更に好ましい。本発明の医薬とt-PAとを組み合わせる際の本発明の医薬の投与量としては、例えば一日あたり1 mg以上が挙げられ、10 mg以上が好ましく、30 mg/kg以上がさらに好ましい。また、本発明の医薬の投与量の下限としては、3,000 mg以下が挙げられ、1,000 mg以下が好ましく、200 mg以下が更に好ましい。
t-PAを投与するにあたっては急性期虚血性脳血管障害の発症時刻を確定する必要があるが、一般的には臨床的に呈される脳梗塞症状、例えば脳梗塞超急性期の症状である突然の強い頭痛、突然発症の意識障害、突然の局在症状(片側四肢麻痺、顔面神経麻痺、構語障害等)等の症状発現時刻を急性期虚血性脳血管障害の発症時刻として特定することができる。従来のt-PA療法のプログラムに従う場合には、患者が来院した時点で発症時刻から3時間が経過していない場合にはt-PA療法が第一選択療法として検討されることになる。もっとも、患者が来院してからt-PA療法の適用の可否を検討するのでは治療開始時刻が大幅に遅れる可能性が高い。従って、救急隊あるいは家族や患者本人からの第1報を受けたときに、発症時刻を出来るだけ正確に聞き出し、必要に応じて検査の準備や必要人員の確保を行っておくことが望まれている。本発明の医薬の適用によりt-PA療法を開始する時間を遅延させることができるが、t-PAとの組み合わせ療法の適用を確実にするために上記の対応を省略することは望ましくない。
一般的に、急性期虚血性脳血管障害の発症時刻としては患者自身又は症状発現時に目撃した人が報告した時刻が採用されるが、こうした情報が得られない場合には患者が無症状であることが最後に確認された時刻(最終未発症時刻)をもって急性期虚血性脳血管障害の発症時刻とする必要があり、すでに発症した患者が発見された時刻ではないことに留意する必要がある。例えば、起床時に症状を有していた場合は、就寝前あるいはその途中で無症状であることが確認された時刻となる。また、例えば倒れていた患者が発見された場合には、家族などの第3者により無症状であったことが確認されていた最後の時刻が発症時刻となる。階段状増悪の場合には、最初に症状が発現した時点が発症時刻である。一過性脳虚血発作が前駆した場合は、症状がいったん完全に消失し、2度目に症状が発現した時刻を発症時刻として特定する。
脳梗塞発症後に重度の脳出血を伴うと、脳の障害が広がり死に至ることもある。またt-PAなどの脳梗塞治療剤での治療時に重度の脳出血が発生することによって死に至ることもある。
本発明の医薬の有効成分が虚血性脳血管障害に伴う脳出血に起因する致死の予防のために有用であることは、例えば、動物を用いた脳梗塞急性期の脳出血モデル[脳虚血(脳血管閉塞)・再灌流モデル)]等を用いて確認することができる。上記一般式(I)で表される化合物を0.1−1,000 mg/kg、好ましくは0.1−100 mg/kgの投与量でモデル動物に静脈内、腹腔内、又は経口で単回又は反復投与した後の生存率を算出することにより虚血性脳血管障害に伴う脳出血に起因する致死に対する予防効果を確認することができる。
本発明の医薬の有効成分が脳梗塞治療薬の投与による脳出血に起因する致死の予防のために有用であることは、例えば、動物を用いた脳梗塞急性期の脳出血モデル[脳虚血(脳血管閉塞)・再灌流モデル)]等を用いて確認できる。脳梗塞治療薬、例えば脳血栓溶解剤、抗血小板剤、又は抗凝固剤を再灌流を行う前又は後に投与しておき、上記一般式(I)で表される化合物を0.1−1,000 mg/kg、好ましくは0.1−100 mg/kgの投与量で脳梗塞治療薬が投与されたモデル動物に静脈内、腹腔内、又は経口で単回又は反復投与し後の生存率を算出することにより虚血性脳血管障害に伴う脳出血に起因する致死に対する予防効果を確認することができる。
脳梗塞発症後に脳出血を伴うと、脳の障害が広がり、運動機能の障害が悪化する。またt-PAなどの脳梗塞治療剤での治療時に脳出血が発生することによって、運動機能の障害が悪化することもある。運動機能障害の悪化は、患者の日常生活の質を著しく損なう。
本発明の医薬の有効成分が虚血性脳血管障害に伴う脳出血に起因する運動機能障害の予防のために有用であることは、例えば、動物を用いた脳梗塞急性期の脳出血モデル[脳虚血(脳血管閉塞)・再灌流モデル)]等を用いて確認することができる。上記一般式(I)で表される化合物を0.1−1,000 mg/kg、好ましくは0.1−100 mg/kgの投与量でモデル動物に静脈内、腹腔内、又は経口で単回又は反復投与した後の自発運動量を定量することにより虚血性脳血管障害に伴う脳出血に起因する運動機能障害に対する予防効果を確認することができる。
本発明の医薬の有効成分が脳梗塞治療薬の投与による脳出血に起因する運動機能障害の予防のために有用であることは、例えば、動物を用いた脳梗塞急性期の脳出血モデル[脳虚血(脳血管閉塞)・再灌流モデル)]等を用いて確認できる。脳梗塞治療薬、例えば脳血栓溶解剤、抗血小板剤、又は抗凝固剤を再灌流を行う前又は後に投与しておき、上記一般式(I)で表される化合物を0.1−1,000 mg/kg、好ましくは0.1−100 mg/kgの投与量で脳梗塞治療薬が投与されたモデル動物に静脈内、腹腔内、又は経口で単回又は反復投与し後の自発運動量を定量することにより虚血性脳血管障害に伴う脳出血に起因する運動機能障害に対する予防効果を確認することができる。
一般式(I)で表される化合物は、公知の方法、例えば、Chem. Pharm. Bull., 40, (3) 770-773 (1992)、特開昭61-152658号公報等に記載されている方法に従って合成することができる。また、その酸付加塩としては、薬学上許容される非毒性の塩が好ましく、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸等の無機酸、及び酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、メタンスルホン酸等の有機酸の塩を挙げることができ、塩酸が好適な例として挙げられる。本発明の医薬の有効成分としては、遊離形態の化合物又は酸付加塩の水和物若しくは溶媒和物を用いてもよい。溶媒和物を形成する溶媒としては、生理学的に許容される有機溶媒、例えばエタノールなどを用いることができる。
本発明の医薬は、有効成分である上記の一般式(I)で表される化合物若しくはその酸付加塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物と、生理学的に許容される製剤用添加物とを用いて医薬組成物の形態として調製されることが好ましい。製剤用添加物としては、例えば、ゼラチン;乳糖、グルコース等の糖類;小麦、米、とうもろこし澱粉等の澱粉類;ステアリン酸等の脂肪酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸塩;タルク;植物油;ステアリンアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール;ガム;ポリアルキレングリコール等の担体が挙げられる。液状媒体としては、一般的には水、生理食塩液、デキストロース又は類似の糖溶液、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンルリコール等のグルコール類が挙げられる。カプセル剤を調製する場合には、通常はゼラチンカプセルを用いてカプセル剤を調製することが好ましい。
製剤用添加物と有効成分である上記の一般式(I)で表される化合物若しくはその酸付加塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物との比率は特に限定されないが、医薬組成物の全重量に対して、通常は0.01重量%以上で、80重量%以下、好ましくは60重量%以下の有効成分を含む医薬組成物が好ましい。
本発明の医薬の投与方法は特に限定されず、経口投与又は非経口投与のいずれであってもよい。経口投与に適した医薬組成物としては、例えば、錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、液剤、又はエリキシル剤等が挙げられ、非経口投与に適した医薬組成物としては、例えば、注射剤、点滴剤、吸入剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤などが挙げられる。非経口的に筋肉内注射、静脈内注射、又は皮下注射により投与する場合には、等張化剤として食塩やグルコース等の溶質を製剤用添加物として加えた無菌溶液を調製して投与することが好ましい。
注射により投与する場合には、滅菌水、塩酸リドカイン溶液(筋肉内注射用)、生理食塩液、ブドウ糖、静脈内注射用溶液、又は電解質溶液(静脈内注射用)等の水性媒体で有効成分を溶解することも好ましい。例えば、0.01重量%以上、20重量%以下、好ましくは0.1重量%以上、10重量%以下の割合で有効成分を含む注射剤を調製することができる。経口投与用の液剤の場合には、0.01-20重量%の有効成分を含む懸濁剤又はシロップ剤が好ましい例として挙げられる。この場合における担体としては、香料、シロップ、製剤的ミセル体等の水様賦形剤が挙げられる。
本発明の医薬の投与量は特に限定されず、一般的には患者の年齢、脳梗塞の重症度、体重、同時処置があるならばその種類、処置頻度、あるいは投与経路や投与計画などによって適宜選択できるが、一般的には、非経口投与の場合には一日あたり0.01-20mg/kg、経口投与の場合には一日あたり0.02-100 mg/kgの投与量を挙げることができる。例えば、有効成分重量として一日あたり20 mg-120 mgを点滴静注する例が挙げられる。有効成分重量として一回あたり60 mgを一日あたり2回、約60分間かけて点滴静注する投与方法、又は一回あたり30 mgを一日あたり2〜3回、約30分間かけて点滴静注する投与方法などを好適な例として挙げることができる。
本発明の医薬の投与時期は特に限定されず、脳梗塞の発症直後からそれ以降の脳梗塞急性期及び脳梗塞慢性期のいずれか任意の時期に投与することができる。例えば脳梗塞発症直後から脳梗塞急性期までの期間に投与することができ、あるいは脳梗塞罹患中の全期間にわたって投与することもできる。例えば、本発明の医薬の好適な投与時期としては、脳梗塞急性期に行われる閉塞又は狭窄に対する治療と同時期における投与が挙げられる。別の態様としては脳梗塞急性期における閉塞又は狭窄に対する治療の終了後から投与を開始することができる。
より具体的には、脳梗塞急性期における閉塞又は狭窄に対する治療と同時期に本発明の医薬を投与する場合には、例えば、本発明の医薬を脳梗塞発症直後から72時間以内、好ましくは48時間以内に初回投与を行い、その後、初回投与日から14日目まで投与を連続して行う投与計画を挙げることができる。また、別な態様としては、脳梗塞急性期における閉塞又は狭窄に対する治療を開始する同時に本発明の医薬の投与を開始し、その後、14日目まで投与を連続して行う投与計画を挙げることができる。さらに別な態様としては、本発明の医薬を脳梗塞発症直後から72時間以内、好ましくは48時間以内に初回投与をしていない患者に対して、脳梗塞発症から14日以内に本発明の医薬の投与を開始する投与計画を挙げることができる。
脳梗塞急性期における閉塞又は狭窄に対する治療の終了後から本発明の医薬の投与を開始する場合には、本発明の医薬を脳梗塞発症直後から72時間以内、好ましくは48時間以内に初回投与を行い、その後、初回投与日から15日目以降に投与を開始して、その後に投与を連続して行う投与計画を挙げることができる。別な態様としては、脳梗塞急性期における閉塞又は狭窄に対する治療を終了した後、本発明の医薬の投与を連続して行う投与計画を挙げることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
[参考例1]血小板凝集に対する作用(in vitro)
雄性ウサギ(18-19週齢、北山ラベス)より採取した血液を遠心分離し、多血小板血漿及び乏血小板血漿を分取した。多血小板血漿に上記一般式(I)で表される化合物又はポジティブコントロールのアデノシンを添加して3分間インキュベーションした後、ADP(終濃度5μM)又はコラーゲン(終濃度5μg/mL)を添加して、惹起される凝集をアグリゴメーター(NBS HEMA TRACER VI)で測定した。上記一般式(I)で表される化合物及びアデノシンの濃度は10μMとした。結果を表1及び表2に示した。上記一般式(I)で表される化合物(式中、R1は水素原子又は水酸基)はADP及びコラーゲンによって誘発される血小板凝集に対して影響を及ぼしておらず、これらの化合物は血小板凝集に影響しないことが明らかとなった。
[実施例1]血液凝固に対する作用(in vitro)
ヒト正常プール血漿(George King Bio-Medical Inc.)に上記一般式(I)で表される化合物及び/又はアルガトロバンを添加した溶液とし、全自動コアギュロメーター(Amelung AMAX CS190; Sigma)にて、器械的測定原理による血液凝固時間の測定を行った。指標はAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)とPT(プロトロンビン時間)とした。上記一般式(I)で表される化合物の濃度は10 μMとし、アルガトロバンの濃度は1 μMとした。
結果を表3及び表4に示した。一般式(I)で表される化合物(R1は水素原子)単独ではAPTT及びPTに影響を与えなかった。また、アルガトロバンのAPTT及びPT延長作用に対して、一般式(I)で表される化合物(R1は水素原子)の併用も影響を与えなかった。一般式(I)で表される化合物(R1は水酸基)を用いた実験でも同様の結果を得た。この結果、一般式(I)で表される化合物は血液凝固系に影響しないことが明らかとなった。
[実施例2] 出血時間に対するファスジル単独、又はオザグレル、アルガトロバン、及びt-PA併用投与での作用
雄性ラットをペントバルビタールで麻酔し(40 mg/kg i.p.)、仰臥位に固定した。尾の先端から約2 mmの場所にサインペンで印を付けた。左大腿部の皮膚を切開し、大腿静脈を露出させ、まず併用剤又は生理食塩液を大腿静脈より投与し、続いて一般式(I)で表される化合物(R1は水素原子:以下、「ファスジル」と呼ぶ)又は生理食塩液を投与した。その5分後に尾の印を付けた場所を剃刀で切断し、尾からの出血を15秒ごとにろ紙で拭い、止血までの時間を最長30分まで測定した。出血時間の単位は分で表し、30分を超えた場合は30分とした。ファスジルは1 mg/kgを静脈内より投与した。オザグレルは1 mg/kgを静脈内より投与した。アルガトロバンは、まず1 mg/kgを静脈内より投与した後、25μg/kg/minで持続的に静脈内より投与した。t-PAは1 mg/kgを静脈内より投与した。
結果を表5、6、及び7に示す。ファスジルの単独投与は全ての実験において出血時間に影響を与えなかった。また、オザグレル、アルガトロバン、及びt-PAの出血時間延長作用に対して、ファスジルの併用投与は影響を与えなかった。この結果から、ファスジルは通常の出血に影響しないことが明らかとなった。
[実施例3]脳梗塞急性期の脳出血マウスモデル(脳虚血・再灌流モデル)での脳出血に対する予防作用
実験には5-7週齢の雄ddYマウス(日本エスエルシー株式会社)を用いた。イソフルラン麻酔下で、頸部正中皮膚を切開し、左外頚動脈、左総頚動脈を剥離結紮した。左内頚動脈内に塞栓子を挿入し、左中大脳動脈の起始部を閉塞することにより虚血した(虚血0時間)。その2時間後に塞栓子を引き抜き再灌流した。虚血24時間後にマウスを麻酔下で、腹部大静脈より全採血して放血安楽死させた後に生理食塩水で経心臓的に灌流し、脳を摘出した。摘出した脳は前頭極から後頭極までを2 mm間隔で連続的にスライスを作製した。作製した脳スライスで観察される出血痕は以下の2通りの方法で解析した。スキャナーで脳スライスの画像をコンピューターに取り込みNIHイメージJを用いて出血痕の面積を求めた。また各個体の出血痕の重症度の程度を視覚的に、出血痕ほぼ無し、軽度の出血、重度の出血に分類し解析した。ファスジルは、虚血直後に10 mg/kgの用量で腹腔内より投与した。
出血痕の面積の結果を表8及び出血痕の重症度の分類の結果を表9に示した。ファスジル投与群は、コントロール群に比べて脳出血面積が著しく小さく、またその出血の重症度も軽微なものであった。この結果から、ファスジルは虚血性脳血管障害に伴う脳出血を予防することが明らかとなった。
[実施例4]脳梗塞急性期の脳出血マウスモデル(脳虚血・再灌流モデル)でのt-PAによる脳出血増加に対する予防作用(1)
実験には6〜7週齢の雄ddYマウス(日本エスエルシー株式会社)を用いた。イソフルラン麻酔下で、頸部正中皮膚を切開し、左外頚動脈、左総頚動脈を剥離結紮した。左内頚動脈内に塞栓子を挿入し、左中大脳動脈の起始部を閉塞することにより虚血した(虚血0時間)。その4時間後に塞栓子を引き抜き再灌流した。虚血24時間後にマウスを麻酔下で、腹部大静脈より全採血して放血安楽死させた後に生理食塩水で経心臓的に灌流し、脳を摘出した。摘出した脳は前頭極から後頭極までを2 mm間隔で連続的にスライスを作製した。作製した脳スライスで観察される出血痕は、スキャナーで脳スライスの画像をコンピューターに取り込みNIHイメージJを用いて出血痕の面積を求めた。t−PA(グルトパ注、田辺三菱製薬株式会社)は、再灌流直後に15 mg/kgの用量で尾静脈から投与した。ファスジル(AT-877)は、虚血直後及び再灌流直後の2回10 mg/kgの用量で腹腔内投与した。
マウスの脳虚血4時間後の再灌流モデルでの出血痕の面積の結果を図1に示した。コントロール群に比べてt-PA投与群は脳出血面積が増加した。t-PAにファスジルを併用投与すると、脳出血面積は減少した。この結果、t-PAによって生じる脳出血の増加をファスジルが予防することが明らかとなった。ファスジルの併用は、t-PAの使用可能時間を脳虚血後少なくとも4時間まで延長することが明らかとなった。
[実施例5]脳梗塞急性期の脳出血マウスモデル(脳虚血・再灌流モデル)でのt-PAによる脳出血増加に対する予防作用(2)
実験には4週齢の雄ddYマウス(日本エスエルシー株式会社)を用いた。イソフルラン麻酔下で、頸部正中皮膚を切開し、左外頚動脈、左総頚動脈を剥離結紮した。左内頚動脈内に塞栓子を挿入し、左中大脳動脈の起始部を閉塞することにより虚血した(虚血0時間)。その6時間後に塞栓子を引き抜き再灌流した。虚血24時間後にマウスをペントバルビタールの過剰投与によって安楽死させた後に生理食塩水で経心臓的に灌流し、脳を摘出した。摘出した脳は前頭極から後頭極までを2 mm間隔で連続的に5つのスライスを作製した。出血量の測定には前頭極から4番目のスライスの障害側を用いた。出血量は、脳スライス中のヘモグロビン量をHemoglobin Assay Kit(BioAssay Systems, Hayward)を用いて、分光光学的に測定することによって定量した。
t−PA(グルトパ注、田辺三菱製薬株式会社)は、再灌流直前に10 mg/kgの用量で静脈内投与した。ファスジル(AT-877)は、t-PA投与直後に、3 mg/kgの用量で腹腔内投与した。
マウスの脳虚血・再灌流モデル(虚血6時間後に再灌流)での、障害側のヘモグロビン量の結果を図2に示した。コントロール群に比べてt-PA投与群はヘモグロビン量が増加した。t-PAにファスジルを併用投与すると、ヘモグロビンは減少した。この結果、t-PAによって生じる脳出血の増加をファスジルが予防することが明らかとなった。ファスジルの併用は、t-PAの使用可能時間を脳虚血後少なくとも6時間まで延長することが明らかとなった。
[実施例6]脳梗塞急性期の脳出血マウスモデル(中大脳動脈閉塞・再灌流モデル)でのt-PAとの併用による生存率及び自発運動量に対する作用
実験には4週齢の雄ddYマウス(日本エスエルシー株式会社)を用いた。イソフルラン麻酔下で、頸部正中皮膚を切開し、左外頚動脈、左総頚動脈を剥離結紮した。左内頚動脈内に塞栓子を挿入し、左中大脳動脈の起始部を閉塞することにより虚血した(虚血0時間)。その6時間後に塞栓子を引き抜き再灌流した。虚血7日後での、マウスの生存率と自発運動量を検討した。自発運動量は赤外線センサーを有したデジタルカウンター(NSASS01、Neuroscience社)を用いて、90分間測定した。
t−PA(グルトパ注、田辺三菱製薬株式会社)は、再灌流直前に10 mg/kgの用量で静脈内投与した。ファスジル(AT-877)は、t-PA投与直後に、3 mg/kgの用量で腹腔内投与した。
マウスの脳虚血・再灌流モデル(虚血6時間後に再灌流)脳での、虚血7日後での生存率及び自発運動量の結果を図3及び図4に示した。虚血6時間後の再灌流の条件下では、虚血7日後全てのマウスが死亡した。t-PAにファスジルを併用した群が最も生存率が高かった。虚血7日後の自発運動量は、t-PA単独群に比べファスジル併用群の方が高値を示した。この結果、ファスジルを併用することによって、生存率及び自発運動機能も改善することが明らかとなった。
[実施例7]脳梗塞急性期の脳出血マウスモデル(中大脳動脈閉塞・再灌流モデル)でのt-PA以外の血栓溶解剤、抗凝固剤、又は抗血小板剤投与後の脳出血に対する予防作用
実験にはマウス又はラットを用いる。麻酔下で、頸部正中皮膚を切開し、左総頚動脈を剥離結紮する。左内頚動脈内に塞栓子を挿入し、左中大脳動脈の起始部を閉塞し、その2−6時間後に塞栓子を引き抜き再灌流する。虚血24−48時間後にマウス又はラットを麻酔下で全採血して放血安楽死させた後に生理食塩水で経心臓的に灌流し、脳を摘出する。摘出した脳は前頭極から後頭極までを2 mm間隔で連続的にスライスを作製する。脳血栓溶解剤、抗血小板剤又は抗凝固剤は再灌流を行う前又は後に投与する。ファスジルは虚血後から投与する。
スキャナーで脳スライスの画像をコンピューターに取り込み、画像解析ソフトを用いて出血痕の面積を求める。又は、脳をすりつぶし血球成分のマーカー例えばヘモグロビンの定量によって出血の量を定量する。さらには各個体の出血痕の重症度の程度を視覚的に、出血痕ほぼ無し、軽度の出血、重度の出血に分類し解析することにより、脳血栓溶解剤、抗血小板剤、又は抗凝固剤投与後に生じる脳出血の予防に対するファスジルの有効性を判断することができる。
本発明の医薬は血小板の活性及び血液凝固系に影響せず、虚血性脳血管障害に伴う脳出血に対して優れた予防効果を発揮することができる。その結果、例えば、t-PAと組み合わせて使用する場合にはt-PAの使用制限時間を3時間以上に延長することができ、例えば4時間以内、4.5時間以内、又は6時間以内までのt-PA療法適用が可能になる。

Claims (30)

  1. 下記一般式(I):
    (式中、R1は水素原子又は水酸基を示す)で表される化合物若しくはその酸付加塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含み、虚血性脳血管障害に伴う脳出血を予防するための医薬。
  2. 脳出血が脳梗塞急性期に生じる出血である請求項1に記載の医薬。
  3. 脳出血が脳梗塞急性期の再灌流障害に起因する出血である請求項1に記載の医薬。
  4. 脳出血が脳梗塞治療薬の投与後に生じる出血である請求項1に記載の医薬。
  5. 脳出血が血栓溶解剤の投与後に生じる出血である請求項1に記載の医薬。
  6. 血栓溶解剤の使用可能時間範囲を延長できる請求項1に記載の医薬。
  7. 脳出血が組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の投与後に生じる出血である請求項1に記載の医薬。
  8. 組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を延長するための請求項1に記載の医薬。
  9. 組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後4時間まで延長するための請求項1に記載の医薬。
  10. 急性期虚血性脳血管障害発症後3時間までである組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後4時間にまで延長するための請求項1に記載の医薬。
  11. 組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後6時間まで延長するための請求項1に記載の医薬。
  12. 急性期虚血性脳血管障害発症後3時間までである組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後6時間にまで延長するための請求項1に記載の医薬。
  13. 急性期虚血性脳血管障害発症後4.5時間までである組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後6時間にまで延長するための請求項1に記載の医薬。
  14. 組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を延長するための請求項1に記載の医薬の使用。
  15. 組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後4時間まで延長するための請求項1に記載の医薬の使用。
  16. 急性期虚血性脳血管障害発症後3時間までである組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後4時間にまで延長するための請求項1に記載の医薬の使用。
  17. 組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後6時間まで延長するための請求項1に記載の医薬の使用。
  18. 急性期虚血性脳血管障害発症後3時間までである組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後6時間にまで延長するための請求項1に記載の医薬の使用。
  19. 急性期虚血性脳血管障害発症後4.5時間までである組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の使用可能時間範囲を急性期虚血性脳血管障害発症後6時間にまで延長するための請求項1に記載の医薬の使用。
  20. 脳出血が抗血小板剤の投与後に生じる出血である請求項1に記載の医薬。
  21. 脳出血が抗凝固剤の投与後に生じる出血である請求項1に記載の医薬。
    に記載の医薬。
  22. 脳出血が脳保護剤の投与後に生じる出血である請求項1に記載の医薬。
  23. 脳出血が脳浮腫改善薬の投与後に生じる出血である請求項1に記載の医薬。
  24. 脳出血が血液希釈療法後に生じる出血である請求項1に記載の医薬。
  25. 脳出血が外科的な治療後に生じる出血である請求項1に記載の医薬。
  26. 脳出血が請求項4、5、7、20ないし25のいずれかに記載の薬剤投与又は治療方法を2つ以上組み合わせた処置の後に生じる脳出血である前記(1)に記載の医薬。
  27. 少なくとも下記の有効成分(a)と有効成分(b)との組み合わせを含む虚血性脳血管障害に伴う脳出血を予防する医薬組成物:
    (a)請求項1に記載の一般式(I)(式中、R1は水素原子又は水酸基を示す)で表される化合物若しくはその酸付加塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物;
    (b)脳保護薬及び脳浮腫治療薬からなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の医薬に含まれる有効成分。
  28. 治療に有効な量の組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)と、治療に有効な量の請求項1に記載の一般式(I)で表される化合物若しくはその酸付加塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物との組み合わせを含み、急性期虚血性脳血管障害発症後3時間以上が経過し、かつ急性期虚血性脳血管障害発症後6時間以内である患者の虚血性脳血管障害に伴う脳出血を予防する為の医薬。
  29. 急性期虚血性脳血管障害発症後4.5時間以上が経過し、かつ急性期虚血性脳血管障害発症後6時間以内である患者の虚血性脳血管障害に伴う脳出血を予防する為の請求項28に記載の組み合わせ医薬。
  30. 急性期虚血性脳血管障害発症後3時間以上が経過し、かつ急性期虚血性脳血管障害発症後4時間以内である患者の虚血性脳血管障害に伴う脳出血を予防する為の請求項28に記載の組み合わせ医薬。
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