以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
<発明の実施の形態1>
本実施の形態にかかる安全制御装置1は、サービスロボットや運輸機器等に搭載されて機能安全確保のための安全制御を実行する。安全制御装置1は、安全関連アプリケーションと非安全関連アプリケーションを同一のコンピュータシステムで実行するよう構成される。図1は、本実施の形態にかかる安全制御装置1の構成例を示すブロック図である。
プロセッサ10は、プログラム(命令ストリーム)の取得、命令のデコード、命令のデコード結果に応じた演算処理を行う。なお、図1では、1つのプロセッサ10のみを示しているが、安全制御装置1は、複数のプロセッサ10を有するマルチプロセッサ構成であってもよい。また、プロセッサ10は、マルチコアプロセッサでもよい。プロセッサ10は、システムプログラムとしてのオペレーティングシステム(OS)100を実行することによりマルチプログラミング環境を提供する。マルチプログラミング環境とは、複数のプログラムを定期的に切り替えて実行したり、あるイベントの発生に応じて実行するプログラムを切り替えたりすることによって、複数のプログラムがあたかも並列実行されているような環境を意味する。
マルチプログラミングは、マルチプロセス、マルチスレッド、マルチタスク等と呼ばれる場合もある。プロセス、スレッド及びタスクは、マルチプログラミング環境で並列実行されるプログラム単位を意味する。本実施の形態のプロセッサ10が具備するマルチプログラミング環境は、マルチプロセス環境でもよいし、マルチスレッド環境でもよい。
実行用メモリ11は、プロセッサ10によるプログラム実行のために使用されるメモリである。実行用メモリ11には、不揮発性メモリ13からロードされたプログラム(OS100及びアプリケーション101〜103等)、プロセッサ10の入出力データ等が記憶される。なお、プロセッサ10は、プログラムを不揮発性メモリ13から実行用メモリ11にロードすることなく、これらのプログラムを不揮発性メモリ13から直接実行してもよい。
具体的には、実行用メモリ11は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等のランダムアクセス可能な揮発性メモリとすればよい。図1の実行用メモリ11は、論理的な構成単位を示している。すなわち、実行用メモリ11は、例えば、複数のSRAMデバイスの組み合わせ、複数のDRAMデバイスの組み合わせ、又はSRAMデバイスとDRAMデバイスの組み合わせでもよい。
I/Oポート12は、外部デバイスとの間のデータ送受信に使用される。例えば、安全制御装置1がサービスロボットに搭載される場合であれば、外部デバイスは、各種センサ及びサービスロボットを動作させるアクチュエータ等である。この場合、各種センサは、例えば、サービスロボット周囲の障害物を計測可能な視覚センサ、サービスロボットの姿勢を検知するための姿勢センサ、及びサービスロボットのアクチュエータの状態を検知するための回転センタ等のサービスロボットの内外の状態を検出するセンサを含む。
不揮発性メモリ13は、電力の供給を受けることなく、実行用メモリ11に比べて安定的に記憶内容を維持することが可能なメモリデバイスである。例えば、不揮発性メモリ13は、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ若しくは光ディスクドライブ、又はこれらの組み合わせである。不揮発性メモリ13は、OS100及びアプリケーション101〜103を格納する。なお、不揮発性メモリ13の少なくとも一部は安全制御装置1から取り外し可能に構成されてもよい。例えば、アプリケーション101〜103が格納されたメモリを取り外し可能としてもよい。また、不揮発性メモリ13の少なくとも一部は、安全制御装置1の外部に配置されてもよい。
OS100は、プロセッサ10によって実行されることにより、プロセッサ10及び実行用メモリ11及び不揮発性メモリ13等のハードウェア資源を利用して、タスクスケジューリングを含むタスク管理、割り込み管理、時間管理、資源管理、タスク間同期およびタスク間通信機構の提供等を行う。
さらに、機能安全の確保に関連する安全監視アプリケーション101及び安全制御アプリケーション103の通常制御アプリケーション102からの独立性を高めるため、OS100は、ハードウェア資源を、時間的および空間的に保護する機能を有する。ここで、ハードウェア資源とは、プロセッサ10、実行用メモリ11、I/Oポート12を含む。
このうち、時間的な保護は、プロセッサ10の実行時間という時間的な資源をパーティショニングすることにより行う。具体的に述べると、時間的な保護は、プロセッサ10の実行時間をパーティショニングし、各パーティション(タイムパーティションと呼ぶ)にタスク(プロセス又はスレッド)を割り当てることにより行う。OS100のスケジューリング機能(パーティションスケジューラ21)は、各タイムパーティション(以下、TPと略称する場合がある。)に割り当てられたタスクに対して、プロセッサ10の実行時間を含む資源の利用を保証する。
図2は、タイム・パーティショニングに関する概念図である。図2の例では、予め定められた1サイクル時間(TPの繰り返し周期)を3つのTP1、TP2及びTP3に分割する例を示している。例えば、1サイクル時間を100Tickとした場合、このうち前半の20TickがTP1、中間の30TickがTP2、後半の50TickがTP3と規定される。
また、図2の例では、第1アプリケーション(APL1)〜第4アプリケーション(APL4)が、TP1〜TP3のいずれかに割り当てられている。OS100のスケジューリング機能(パーティションスケジューラ21)は、時間の経過に応じて、TP1〜TP3のいずれをアクティブにするかを選択・決定する。そして、アクティブなTPに割り当てられているアプリケーションが、プロセッサ10で実行される。
一方、空間的な保護は、実行用メモリ11及びI/Oポート12を含む固定的な資源をパーティショニングし、各パーティション(リソースパーティションと呼ぶ)にタスクを割り当てることにより行う。OS100のスケジューリング機能(パーティションスケジューラ21)は、予め割り当てられたリソースパーティション(以下、RPと略称する場合がある。)を超えてタスクが他のリソースにアクセスすることを禁止する。
図3は、リソース・パーティショニングに関する概念図である。図3の例では、2つのRP(RP1及びRP2)を示している。RP1には、実行用メモリ11及び不揮発性メモリ13の一部(A領域)と、I/Oポート12の一部(ポートA)が割り当てられている。また、RP2には、実行用メモリ11及び不揮発性メモリ13の他の一部(B領域)と、I/Oポート12の他の一部(ポートB)が割り当てられている。RP1からはRP2に割り当てられたリソースへのアクセスが禁止され、RP2からはRP1に割り当てられたリソースへのアクセスが禁止される。
なお、全てのリソースがいずれかのRPに排他的に割り当てられる必要はない。つまり、複数のRPによって共有されるリソースがあってもよい。例えば、サービスロボットの安全制御を行う場合、アクチュエータには、通常制御アプリケーション102及び安全制御アプリケーション103の双方からアクセスできる必要がある。よって、通常制御アプリケーション102が属するRPと安全制御アプリケーション103が属するRPによって、アクチュエータを制御するためのI/Oポートを共有するとよい。
図1に戻り説明を続ける。アプリケーション101〜103は、OS100及びプロセッサ10によって提供されるマルチプログラミング環境で実行される。このうち、安全監視アプリケーション101は、通常制御アプリケーション102の実行状況の監視と、安全制御アプリケーション103の実行状況の監視と、I/Oポート12への入出力データの監視と、をプロセッサ10に実行させるための命令コードを含む。さらに、安全監視アプリケーション101は、パーティションスケジューラ21への結果通知をプロセッサ10に実行させるための命令コードを含む。つまり、安全監視アプリケーション101は、安全関連アプリケーションである。
また、通常制御アプリケーション102は、サービスロボット等の制御対象に通常の機能・動作を行わせるための制御手順をプロセッサ10に実行させるための命令コードを含む。さらに、通常制御アプリケーション102は、パーティションスケジューラ21への結果通知をプロセッサ10に実行させるための命令コードを含む。つまり、通常制御アプリケーション102は、非安全関連アプリケーションである。
また、安全制御アプリケーション103は、何らかの異常が検出された場合に対応して、機能安全を確保するために定められた制御手順をプロセッサ10に実行させるための命令コードを含む。さらに、安全制御アプリケーション103は、パーティションスケジューラ21への結果通知をプロセッサ10に実行させるための命令コードを含む。つまり、安全制御アプリケーション103は、安全関連アプリケーションである。
リセット回路14は、OS100からの信号に基づき、マイクロコントローラ15のリセットを行う。パーティションスケジューラ21からリセット回路14に定期的に送信信号を送信するようにし、リセット回路14は、パーティションスケジューラ21からの送信信号が途絶えた場合に、マイクロコントローラ15をリセットする。例えば、パーティションスケジューラ21は、後述するように、1Tickごとに動作するタイミングで送信信号を送信する。また、OS100で異常を検知した場合、又は、アプリケーション101〜103のいずれかから異常を示す結果通知を受けた場合に、パーティションスケジューラ21がリセット回路14にリセット信号を送信するようにして、それに応じて、リセット回路14がマイクロコントローラ15をリセットするようにしてもよい。このようにすることで、マイクロコントローラ15に不具合が発生した場合に、マイクロコントローラ15をリセットして復旧することができる。
続いて以下では、パーティションスケジューラ21と、アプリケーション101〜103の起動により生成されるタスクと、の関係について、図4を用いて説明する。図4は、OS100によって提供されるマルチプログラミング環境で起動される、パーティションスケジューラ21とタスク24、26、28との関係を示す図である。
マイクロコントローラ15は、プロセッサ10、実行用メモリ11、I/Oポート12、不揮発性メモリ13等を含む。なお、図4では、マイクロコントローラ15の外部にリセット回路14を備える構成を例示しているが、マイクロコントローラ15の内部にリセット回路14を含む構成としてもよい。
マイクロコントローラ15には、外部のクロック源からのクロック信号が供給され、プロセッサ10等は、このクロック信号に基づく所定のタイマー周期で動作する。本実施の形態では、所定のタイマー周期を、1Tickであるとして説明する。このため、プロセッサ10によりOS100が実行されることで、パーティションスケジューラ21が1Tickごとに動作すると共に、各TPにおいて、タスクスケジューラ23、25、27およびタスク(安全監視タスク24、通常制御タスク26、安全制御タスク28)が1Tickごとに動作する。
パーティションスケジューラ21は、1Tickごとに動作し、TPの切り替え(パーティション・スケジューリング)を行う。パーティションスケジューラ21は、次の1Tickの間にTP1〜TP3のいずれをアクティブにするかを選択・決定する。さらに、パーティションスケジューラ21は、選択したTPに関するタスクスケジューラの動作を開始させる。
パーティションスケジューラ21によるパーティション・スケジューリングについて具体的に述べると、パーティションスケジューラ21は、スケジューリングテーブル22を参照し、TPの設定を定めたスケジューリングパターンに従って、パーティション・スケジューリングを行う。
スケジューリングテーブル22は、TPの切り替え順序およびタイミングを規定したスケジューリングパターンを保持している。スケジューリングテーブル22は、例えば、実行用メモリ11に予め格納されている。なお、スケジューリングテーブル22は、少なくとも2つの異なるスケジューリングパターンを保持している。1つは、安全監視タスク24による異常検知が行われていない場合(つまり通常時)に適用されるスケジューリングパターンである。もう1つは、安全監視タスク24によって異常が検知された場合に適用されるスケジューリングパターンである。以下では、通常時に適用されるスケジューリングパターンを"通常制御スケジューリングパターン"と呼ぶ。また、異常検知時に適用されるスケジューリングパターンを"安全制御スケジューリングパターン"と呼ぶ。
図5Aは、通常制御スケジューリングパターンの具体例を示している。図5Aでは、通常制御タスク26が属するTP2が1サイクル時間の前半(T1)に割り当てられている。また、安全監視タスク24が属するTP1が1サイクル時間の後半(T2)に割り当てられている。図5Aのスケジューリングパターンによれば、通常制御タスク26と安全監視タスク24が繰り返しスケジューリングされる。
図5Bは、安全制御スケジューリングパターンの具体例を示している。図5Bでは、安全制御タスク28が属するTP3が1サイクル時間の前半(T3)に割り当てられている。また、安全監視タスク24が属するTP1が1サイクル時間の後半(T4)に割り当てられている。図5Bのスケジューリングパターンによれば、安全制御タスク28と安全監視タスク24が繰り返しスケジューリングされる。
図4に戻り説明を続ける。タスクスケジューラ23、25、27は、それぞれが属するTP内でのタスクのスケジューリングを行う。各TP内でのタスクのスケジューリングには、一般的な優先度ベースのスケジューリングを適用すればよい。なお、図4では、各TPはそれぞれ1つのタスクのみを含むものとして図示しているが、1以上のタスクが含まれるようにしてもよい。例えば、通常制御用のTP2内には、通常制御タスクA及び通常制御タスクBの2つのタスクが含まれていてもよい。
安全監視タスク24は、安全監視アプリケーション101の起動によって生成されるタスクである。図4の例では、安全監視タスク24は、TP1及びRP1に割り当てられている。安全監視タスク24は、非安全関連アプリケーションである通常制御タスク26の実行状況の監視と、安全関連アプリケーションである安全制御タスク28の実行状況の監視と、I/Oポート12の入出力データを監視する。安全監視タスク24は、自身が属するRP1に割り当てられた実行用メモリ11のリソースを使用しながら、自身の処理を実行するために必要な演算等を行う。さらに、安全監視タスク24は、タスクの実行状況を、パーティションスケジューラ21へ通知する。
通常制御タスク26は、通常制御アプリケーション102の起動によって生成されるタスクである。図4の例では、通常制御タスク26は、TP2及びRP2に割り当てられている。通常制御タスク26は、サービスロボット等の制御対象に通常の機能・動作を行わせるための制御を行う。通常制御タスク26は、自身が属するRP2に割り当てられた実行用メモリ11のリソースを使用しながら、自身の処理を実行するために必要な演算等を行う。さらに、通常制御タスク26は、タスクの実行状況を、パーティションスケジューラ21へ通知する。
安全制御タスク28は、安全制御アプリケーション103の起動によって生成されるタスクである。図4の例では、安全制御タスク28は、TP3及びRP3に割り当てられている。安全制御タスク28は、何らかの異常が検出された場合に対応して、機能安全を確保するために定められた制御を行う。安全制御タスク28は、自身が属するRP3に割り当てられた実行用メモリ11のリソースを使用しながら、自身の処理を実行するために必要な演算等を行う。さらに、安全制御タスク28は、タスクの実行状況を、パーティションスケジューラ21へ通知する。
なお、各タスクからパーティションスケジューラ21へと結果を通知する具体的な構成としては、様々な手法を採用することができる。例えば、タスクがOS100のシステムコール(サービスコール)を呼び出し、OS100を介して、パーティションスケジューラ21に結果を通知することができる。例えば、タスク間通信を行うシステムコールを呼び出すことによって通知をするようにしてもよい。また、例えば、タスクの実行状況に関するフラグを実行用メモリ11に格納するものとして、タスクがその実行状況に応じてフラグの値を設定し、パーティションスケジューラ21がフラグの設定値に応じてタスクの実行状況を判断することもできる。
上述したように、パーティションスケジューラ21が1Tickごとに動作し、TP1〜TP3のいずれをアクティブにするかを選択・決定する。さらに、パーティションスケジューラ21が、選択したTPに関するタスクスケジューラの動作を開始させる。そして、タスクスケジューラ23、25、27が動作を開始することでタスクのスケジューリングが行われ、プロセッサ10が、タスクスケジューラ23、25、27によりスケジューリングされた順序に従って、TP内でのタスクを実行していく。これによって、アクティブなTPに割り当てられているアプリケーションが、プロセッサ10で実行される。
共有メモリ29は、いずれのTP1〜3に属するタスク24、26、28であっても、アクセスすることが可能なメモリ領域である。共有メモリ29は、実行用メモリ11の一部領域に設けられる。各タスク24、26、28は、共有メモリ29を介して、相互にデータを受け渡すことが可能である。
このような共有メモリ29を利用したタスク間でのデータの受け渡しでは、主に、受け渡し側のタスクが、その実行を終了する(スリープする)ときに、実行結果となるデータを共有メモリ29に格納し、受け取り側のタスクがそのデータを共有メモリ29から読み出して、読み出したデータに基づいて処理を実行するといったことが行われる。しかしながら、図13を参照して説明したように、タスク間で同期をとることができない場合がある。
そこで、パーティションスケジューラ21は、タスクの実行終了タイミング(データの更新タイミング)によらず、タスク間の同期を実現するために、共有メモリ29のデータを所望のタイミングで公開するOEPN処理を実行する。具体的には、パーティションスケジューラ21は、TPに属するタスクが共有メモリ29のデータを更新した場合、そのTPの制御周期が終了するタイミングで、更新後のデータを他のTPに属するタスクに対して公開する。言い換えると、TPに属するタスクの実行周期が終了するタイミングで、そのTPに属するタスクによる更新後のデータを、他のTPに属するタスクが読み出し可能とする。以下、図6Aを参照して、OPEN処理について説明する。
図6Aは、スケジューリングパターンの一例を示している。図6Aでは、TPの繰り返し周期(以下、「1サイクル」とも呼ぶ)において、時系列順に、TP1、TP2が交互に4回繰り返される場合について示している。つまり、1サイクルに8つのTPが含まれている。また、TP1は制御周期が1TPであり、TP2は制御周期が4TPである場合について示している。言い換えると、TP1に属するT1は、1つのTP1を使用して、その実行が終了することが期待されており、TP2に属するT2は、4つのTP2を使用して、その実行が終了することが期待されている。
そして、T2は、1サイクルの最後のTP(TP2)で、共有メモリ29のデータを更新して実行を終了することが期待されている。また、T1は、1サイクルの最初のTP(TP1)で、前回の1サイクルの最後のTP(TP2)でT2が更新したデータを共有メモリ29から読み出して、読み出したデータに基づいて処理を実行することが期待されている。この場合、パーティションスケジューラ21は、T2が共有メモリ29に格納したデータを、TP2の制御周期が終了するタイミングで公開する。すなわち、パーティションスケジューラ21は、1サイクルの最後のTP(TP2)が終了するタイミングで、T2による更新後の共有メモリ29のデータを他のTPに属するタスクに公開する。
また、T1は、1サイクルの1、3、5、7番目のTP(全てのTP1)のそれぞれで、共有メモリ29のデータを更新して実行を終了することが期待されている。また、T2は、1サイクルの2番目のTP(TP2)で、T1が更新したデータを共有メモリ29から読み出して、読み出したデータに基づいて処理を実行することが期待されている。この場合、パーティションスケジューラ21は、T1が共有メモリ29に格納したデータを、TP1の制御周期が終了するタイミングで公開する。すなわち、パーティションスケジューラ21は、1サイクルの1、3、5、7番目のTP(全てのTP1)のそれぞれが終了するタイミングで、T1による更新後の共有メモリ29のデータを他のTPに属するタスクに公開する。
ここで、このようなデータの公開タイミングの調整は、タスクが書き込んだデータを共有メモリ29に反映するタイミングを調整することによって行う。具体的には、タスクが、共有メモリ29のデータを更新するために、そのデータに対する書き込みを行った場合であっても、OS100は、すぐには共有メモリ29にデータを書き込まないようにする。そして、パーティションスケジューラ21は、データの公開タイミングで、共有メモリ29のデータを更新するようにする。
図7を参照して、その処理について説明する。まず、実行用メモリ11には、共有メモリ29に格納するデータを一時的に保持しておく領域(以下、「一時保持領域」と呼ぶ)が用意されている。OS100は、タスクが共有メモリ29に対してデータの書き込みを行った場合、ひとまず、そのデータを一時保持領域に格納する。これは、例えば、OS100が各タスクに対して共有メモリ29のデータを更新するためのシステムコールを提供し、そのシステムコールによって呼び出されるOS100のルーチンにおいて行うようにすればよい。具体的には、タスクが、共有メモリ29に書き込むデータを指定してシステムコールを呼び出した場合に、タスクによって指定されたデータが一時保持領域に書き込まれるようにする。そして、パーティションスケジューラ21は、TPのデータの公開タイミングで、一時保持領域に書き込まれたデータを共有メモリにコピーするようにする。
ここで、パーティションスケジューラ21は、データの公開タイミングを、どのように認識するようにしてもよい。例えば、スケジューリングテーブル22において保持されているスケジューリングパターンにおいて、それぞれのTPのデータの公開タイミングを規定しておき、パーティションスケジューラ21がそれを参照することで認識するようにしてもよい。
以上に説明したOPEN処理によれば、図6Bに示すように、T2が予定よりも早く、共有メモリ29のデータを更新してしまった場合であっても、期待したタイミング以降から、T1によって更新後のデータが読み出されるようにすることができる。具体的には、図6Bでは、T2が、1サイクルの最後のTP(TP2)ではなく、1サイクルの4番目のTP(TP2)で、その処理が終了してしまった場合について例示している。この場合、T2は、1サイクルの4番目のTP(TP2)で共有メモリ29のデータに対する書き込みを行ってしまう。しかしながら、上述したOPEN処理によって、実際にデータが更新されるのは、TP2のデータの公開タイミングである、1サイクルの最後のTP(TP2)が終了するタイミングである。そのため、T1は、1サイクルの5、7番目のTP(TP1)では、期待通り更新前のデータに基づいて処理を実行することができ、次の1サイクルから、期待通り更新後のデータに基づいて処理を実行することができるようになる。
続いて以下では、パーティションスケジューラ21によるパーティション・スケジューリングについて、図8を用いて説明する。図8は、発明の実施の形態1にかかるパーティションスケジューラ21の処理手順の具体例を示すフローチャートである。
なお、図8では、図9Aに例示する通常制御スケジューリングパターン、または、図9Bに例示する安全制御スケジューリングパターンに従って、スケジューリングを実行する場合を例に説明する。すなわち、TP2またはTP3に続く次のTPはTP1であり、かつ、TP2での異常がTP1で検知された場合に、TP1からの結果を受けて次に選択・決定されるTPはTP3である場合を例に説明する。なお、図9Aは、図6Aに示すスケジューリングパターンと同様である。また、図9Bは、TP2がTP3となっており、T2がT3となっていること以外は、図9Aと同様である。
OS100は、1Tick経過するごと(周期的なタイマー割り込みが発生するごと)に(S11)、パーティションスケジューラ21を起動する(S12)。これによって、パーティションスケジューラ21が実行される(S13)。パーティションスケジューラ21は、スケジューリングパターンを参照して、TPの切り替えタイミングか否かを判定する(S14)。
TPの切り替えタイミングでないと判定した場合(S14でNo)、パーティションスケジューラ21は、同一のTPXについての動作を継続させる。すなわち、TPの切り替えタイミングとなるまでの間、S11〜S14、S18〜S20の処理が繰り返される。ここで、変数XはTPの番号を示し、Xは1〜3のうちのいずれかの値となる。すなわち、通常制御スケジューリングパターンに従ってパーティション・スケジューリングを実施している場合は、安全制御用のTP3を除いた、TP2及びTP1のいずれかを動作させる。
一方、TPの切り替えタイミングであると判定した場合(S14でYes)、パーティションスケジューラ21は、現在動作しているTPの制御周期が終了するタイミングか否かを判定する(S15)。すなわち、現在アクティブとなっているTPのデータの公開タイミングとなったか否かを判定する。
現在動作しているTPの制御周期が終了するタイミングであると判定した場合(S15でYes)、パーティションスケジューラ21は、共有メモリ29のOPEN処理を実施する(S16)。これによって、現在動作しているTPのタスクが、共有メモリ29に対して書き込んだデータが、共有メモリ29に反映される。このタイミングは、図9A及び図9Bに示す場合、TP2及びTP3に関しては1サイクルの最後のTP(TP2)が終了するタイミングに相当し、TP1に関しては1サイクルの1、3、5、7番目のTP(全てのTP1)のそれぞれが終了するタイミングに相当する。
一方、現在動作しているTPの制御周期が終了するタイミングでないと判定した場合(S15でNo)、パーティションスケジューラ21は、現在動作しているTPのタスクが、共有メモリ29に対してデータの書き込みを行った場合であっても、書き込んだデータを共有メモリ29に反映しない。そして、パーティションスケジューラ21は、TPの切り替えを実行する(S17)。
ここで、このように、パーティションスケジューラ21は、次にアクティブにするTPを変更する(S14でYes)場合には、さらに、切り替え前のTPに属するタスクからの通知結果に応じて、切り替え前のTPが正常であったか否かを判断する。判断の結果、切り替え前のTPが異常であった場合、パーティションスケジューラ21は、次の1Tickの間にアクティブにするTPXを、安全制御スケジューリングパターンに従って、TP1及びTP3のいずれかから選択・決定する。判断の結果、正常であった場合、パーティションスケジューラ21は、次の1Tickの間にアクティブにするTPXを、通常制御スケジューリングパターンに従って、TP1及びTP2のいずれかを選択・決定する。
パーティションスケジューラ21は、現在アクティブになっているTPXのタスクスケジューラを動作させる(S18)。S18で動作を開始したTPXのタスクスケジューラは、TPX内のタスクを優先度に応じて実行する(S19)。タスクスケジューラによって実行されたタスクは、必要に応じて、共有メモリ29のデータを更新する(S20)。これは、図9A及び図9Bに示す場合であって、制御周期の通りにその実行が終了したときであれば、TP2及びTP3に関しては1サイクルの最後のTP(TP2)に相当し、TP1に関しては1サイクルの1、3、5、7番目のTP(全てのTP1)のそれぞれに相当する。なお、このときは、上述したように、まだ、共有メモリ29のデータ自体は更新されていないことになる。
そして、1Tickが経過すると(S11)、パーティションスケジューラ21が、再びTPのスケジューリングを開始する(S12)。すなわち、パーティションスケジューラ21は、スケジューリングパターンに従って、次の1Tickの間にいずれのTPをアクティブにするかを選択・決定する。
図8で示した処理に関して、パーティション・スケジューリングの具体例を説明する。まず、図9Aに例示した通常制御スケジューリングパターンに従って、TP2がアクティブの状態からスケジューリングを開始した場合を説明する。この場合、S14でNoが続く限り、TPX=TP2の状態が維持されて、S11〜S14、S18〜S20が繰り返される。S14でYesとなり、S17でTP2からTP1へと変更された場合、続くS18〜S20にかけてTP1のままである。そして、S14でNoが続く限り、TPX=TP1の状態が維持されて、S11〜S14、S18〜S20が繰り返される。TP1がアクティブのときに、S19で、TP2に関する実行状況(データ入出力等)が正常であると判定されていた場合には、次のS17では、TPX=TP2となる(つまり、TP2から開始する通常制御スケジューリングパターンが継続される。)。一方で、S19で、TP2に関する実行状況(データ入出力等)が異常であると判定されていた場合には、次のS17で、TPX=TP3となる(つまり、TP3から開始する安全制御スケジューリングパターンに切り替わる。)。
また、図9Bに例示した安全制御スケジューリングパターンに従って、TP3がアクティブの状態からスケジューリングを開始した場合を説明する。この場合、S14でNoが続く限り、TPX=TP3の状態が維持されて、S11〜S14、S18〜S20が繰り返される。S14でYesとなり、S17でTP3からTP1へと変更された場合、続くS18〜S20にかけてTP1のままである。そして、S14でNoが続く限り、TPX=TP1の状態が維持されて、S11〜S14、S18〜S20が繰り返される。TP1がアクティブのときに、S19で、TP3に関する実行状況(データ入出力等)が正常であると判定されていた場合には、次のS17では、TPX=TP2とする(つまり、TP2から開始する通常制御スケジューリングパターンに切り替わる。)。一方で、S19で、TP3に関する実行状況(データ入出力等)に異常があると判定されていた場合には、次のS17で、TPX=TP3となる(つまり、TP3から開始する安全制御スケジューリングパターンが継続される。)。
なお、上述の例では、スケジューリングパターンとして、3つのTP(安全監視用のTP1、通常制御用のTP2、安全制御用のTP3)のみを組み合わせた場合を例に説明したが、TP2のような通常制御用パーティションや、TP3のような安全制御用パーティションについては、それぞれ複数個存在するものとしてもよい。例えば、2つの通常制御用のTP2及びTP4と、安全監視用のTP1と、2つの安全制御用のTP3及びTP5と、が存在し、これら5つのTP(TP1〜TP5)を組み合わせてスケジューリングパターンを構成してもよい。この場合、S14では、パーティションスケジューラ21が、TPXに関する実行状況(データ入出力等)の異常状態の種類を判定し、その異常種類に応じて、安全制御用のTP3またはTP5のいずれかを選択すればよい。また、S14では、通常制御用のTP2またはTP4のいずれかを選択すればよい。
上述したように、本実施の形態では、OS100は、安全監視用のTP1からの通知、または、各TPからの通知に応じて、次にアクティブとするパーティションを選択・決定するパーティションスケジューラ21を備えている。パーティションスケジューラ21は、各TPにおいて実行されるタスクとは独立して、所定のタイマー周期で動作する。
独立に動作するパーティションスケジューラ21が、全てのTPから結果通知を受ける構成とすることで、パーティションスケジューラ21は、全てのTPに関する状況を一元的に把握することができる。このため、例えば、安全監視用のTP1からの結果通知に応じて、パーティションスケジューラ21が次のパーティションを決定・選択しようとする場合には、パーティションスケジューラ21は、各TPの状況を考慮した上で、正常状態にあるTPのみから次のパーティションを決定・選択することもできる。これによれば、より正確なパーティション・スケジューリングを実現することができるという効果を奏する。
以上に説明したように、本実施の形態1では、メモリに格納されたデータを更新するT2が実行されるTP2と、メモリに格納されたデータに基づいて処理を実行するT1が実行されるTP1とを含むスケジューリングパターンに従って、T2及びT1を実行する場合に、スケジューリングパターンにおけるTP2のうち、予め定めたTP2までに、T2からメモリのデータを更新するための書き込みがあった場合、書き込みによるメモリのデータの更新を保留するようにしている。そして、予め定めたTP2がアクティブになってから、保留していたメモリのデータの更新を行うようにしている。
これによれば、T2から予定よりも早く、メモリに対するデータの書き込みがあった場合であっても、予定していたTP2よりも早く、データの更新が実際に行われてしまわないようにすることができる。その結果、T1が予定よりも早く、T2によって更新されてしまったデータに基づいて処理を実行してしまわないようにすることができる。すなわち、本実施の形態1によれば、よりタスク間での同期をとったタスクの実行が可能となる。
<発明の実施の形態2>
続いて、本発明の実施の形態2について説明する。図10は、本発明の実施の形態2にかかるパーティションスケジューラ21とタスク30〜32との関係を示す図である。図10に示すように、本実施の形態2では、実施の形態1と比較して、安全監視タスク24、通常制御タスク26及び安全制御タスク28に代えて、監視制御タスク30、通常制御タスク31及び安全制御タスク32を有する点が異なる。なお、この場合、安全制御装置は、アプリケーション101〜103に代えて、タスク30〜32に対応するアプリケーションを有する必要があるが、その点は自明であるため図示及び説明を省略する。以下、実施の形態1と同様の内容については、説明を省略する。
ここで、本実施の形態2では、I/Oポート12は、PWM信号を生成してアクチュエータに出力する。これによって、アクチュエータを有する制御対象が制御される。すなわち、本実施の形態2では、アクチュエータがPWM信号によって制御されるモータである場合について説明する。I/Oポート12は、外部のクロック源から供給されるクロック信号に基づいて1Tick毎に、アクチュエータに出力するPWM信号の値を、プロセッサ10から出力された指令値に応じて更新する。I/Oポート12は、例えば、指令値に基づいてPWM信号を生成するPWM回路(図示せず)を含む。
監視制御タスク30は、制御対象を制御する。具体的には、監視制御タスク30は、通常制御タスク31又は安全制御タスク32が算出した指令値に基づいて、制御対象のアクチュエータを制御する。具体的には、監視制御タスク30は、通常制御タスク31又は安全制御タスク32によって共有メモリ29に格納された指令値情報を読み出して、読み出した指令値情報が示す指令値となる信号を生成してI/Oポート12に出力する。さらに、監視制御タスク30は、I/Oポート12を介して、制御対象のセンサから、センサ値を取得する。監視制御タスク30は、取得したセンサ値を示すセンサ値情報を共有メモリ29に格納する。すなわち、監視制御タスク30は、共有メモリ29に格納されているセンサ値情報を更新する。
通常制御タスク31は、制御対象に通常の機能・動作を行わせるための制御計算を行う。具体的には、通常制御タスク31は、監視制御タスク30によって共有メモリ29に格納されたセンサ値情報を読み出す。通常制御タスク31は、読み出したセンサ値情報が示すセンサ値に基づいて、通常制御におけるアクチュエータの制御計算をして、アクチュエータの指令値を算出する。通常制御タスク31は、算出した指令値を示す指令値情報を共有メモリ29に格納する。すなわち、通常制御タスク31は、共有メモリ29に格納されている指令値情報を更新する。
安全制御タスク32は、機能安全を確保するために定められた制御計算を行う。具体的には、安全制御タスク32は、監視制御タスク30によって共有メモリ29に格納されたセンサ値情報を読み出す。安全制御タスク32は、読み出したセンサ値情報が示すセンサ値に基づいて、安全制御におけるアクチュエータの制御計算をして、アクチュエータの指令値を算出する。安全制御タスク32は、算出した指令値を示す指令値情報を共有メモリ29に格納する。すなわち、安全制御タスク32は、共有メモリ29に格納されている指令値情報を更新する。
なお、本実施の形態2にかかるパーティションスケジューラ21の処理手順については、図8を参照して説明した実施の形態1にかかるパーティションスケジューラ21の処理手順と同様であるため、説明を省略する。
ここで、実施の形態1と同様に、図9Aに示すスケジューリングパターンに従って、スケジューリングを実行する場合を例に説明する。図10に示すように、監視制御タスク30はTP1に属し、通常制御タスク31はTP2に属し、安全制御タスク32はTP3に属する。
この場合、監視制御タスク30は、1周期の1、3、5、7番目のTP(TP1)のそれぞれにおいて、共有メモリ29に格納された指令値情報が示す指令で制御対象を制御することになる。また、通常制御タスク31は、1周期の2、4、6、8番目の4つTP(TP2)を使用して制御計算を行い、そのうちの最後(8番目)のTPで、計算結果となる指令値情報によって、共有メモリ29の指令値情報を更新する。これによって、その次の1周期における1番目のTP(TP1)から、監視制御タスク30がI/Oポート12に出力する指令値が更新される。その結果、それ以降のTPからのI/Oポート12がアクチュエータに出力するPWM信号の値が更新される。
すなわち、通常制御タスク31は、1周期ごとに指令値を更新した場合に、制御対象の制御が最適となるように指令値の制御計算を行っている。そのため、通常制御タスク31の制御計算が予定よりも早く終了してしまった場合には、図13を参照して説明したように、1周期ごとに適用した場合に最適となるように計算していた指令値が、それよりも早く適用されてしまうことになる。すなわち、制御対象を期待した通りに制御することができなくなってしまう。
それに対する本実施の形態2による効果を、具体的に、図11A、図11Bを参照して説明する。なお、ここでは、説明の簡略化のため、各TPが1Tickごとに切り替わる場合について図示している。
図11Bは、本実施の形態にかかるOPEN処理を適用していない場合について示している。この場合、図11Bに示すように、1周期の4番目のTP(TP2)で、通常制御タスク31が制御計算を終了してしまった場合、このタイミングで通常制御タスク31によって共有メモリ29の指令値情報が更新されてしまう。そのため、その次の5番目のTP(TP1)で、監視制御タスク30がその共有メモリ29の更新後の指令値情報に基づいて、指令値を変更して制御対象を制御してしまう。したがって、図11Bに示すように、予定よりも早く、PWM信号の値が更新されてしまう。
それに対して、図11Aは、本実施の形態にかかるOPEN処理を適用した場合について示している。この場合、図11Aに示すように、1周期の4番目のTP(TP2)で、通常制御タスク31が制御計算を終了して、共有メモリ29に対して算出した指令値情報の書き込みを行ってしまった場合であっても、このタイミングで共有メモリ29の指令値情報が更新されることはない。そのため、その次の5番目のTP(TP1)で、監視制御タスク30がその共有メモリ29の更新前の指令値情報に基づいて、そのままの指令値で制御対象が制御される。そして、通常制御タスク31の本来の実行周期が終了するタイミング(1周期の8番目のTPが終了するタイミング)で、パーティションスケジューラ21によって、OPEN処理が行われて、指令値情報が更新後の値に更新される。この結果、図11Aに示すように、期待したタイミングからPWM信号の値が更新されることになる。
以上に説明したように、本実施の形態2によれば、T2から予定よりも早く、メモリに対する指令値の書き込みがあった場合であっても、予定していたTP2よりも早く、指令値の更新が実際に行われてしまわないようにすることができる。その結果、T2によって予定よりも早く更新されてしまった指令値に基づいて、T1が制御対象を制御してしまわないようにすることができる。そのため、より安定した制御対象の制御を行うことが可能となる。
また、本実施の形態は、上述したPWM制御のように、制御対象を制御する信号を、一定周期で出力しつつ、状況に応じてその値を更新していく制御に対して、特に好適である。このような制御の場合、信号の値を更新するタイミングを誤ると、誤った値の信号が連続して送出されてしまうことになる。そのため、制御結果も期待したものと大きく異なってきてしまう。それに対して、本実施の形態2によれば、PWM信号の値を規定する指令値を正しいタイミングで更新していくことができるため、より安定した制御対象の制御を行うことが可能となる。
<発明の他の実施の形態>
安全制御装置で動作するタスクの種類は、上述した実施の形態1、2で例示したタスクに限られない。すなわち、安全監視タスク24、通常制御タスク26、31、安全制御タスク28、32、監視制御タスク30に限られず、その他の制御対象の制御に関する任意の処理を実行するタスクを有するようにしてもよい。
例えば、図12に示すようなタスク33〜35を有するようにしてもよい。なお、この場合、安全制御装置は、アプリケーション101〜103に代えて、タスク33〜35に対応するアプリケーションを有する必要があるが、その点は自明であるため図示及び説明を省略する。
監視タスク33は、制御対象のセンサから、センサ値を取得する。このセンサには、上述したように制御対象の姿勢を検知するための姿勢センサを含む。ここで説明する例では、制御対象として、人が搭乗することができる走行装置に適用した場合について説明する。この場合、監視タスク33は、搭乗者による重心移動を姿勢センサにより検知することができる。監視タスク33は、取得したセンサ値を示すセンサ値情報を共有メモリ29に格納する。
HMI(Human Machine Interface)タスク35は、監視タスク33によって共有メモリ29に格納されたセンサ値情報を読み出す。HMIタスク35は、読み出したセンサ値情報が示すセンサ値に基づいて、制御対象のアクチュエータの制御計算をして、アクチュエータの指令値を算出する。HMIタスク35は、算出した指令値を示す指令値情報を共有メモリ29に格納する。制御タスク34は、HMIタスク35によって格納された指令値情報を共有メモリ29から読み出す。HMIタスク35は、共有メモリ29から読み出した指令値情報が示す指令値に基づいて、アクチュエータを制御する。
このような構成の場合も、本実施の形態2と同様に、HMIタスク35によって予定よりも早く更新されてしまった指令値に基づいて、制御タスク34が制御対象を制御してしまわないようにすることができる。そのため、より安定した制御対象の制御を行うことが可能となる。
また、上述した構成によれば、搭乗者の操作に応じて制御対象が制御されるというHMIを実現することができる。例えば、搭乗者が重心を前後に移動させることで制御対象が前後後退を行い、搭乗者が重心を左右に移動させることで制御対象が左右旋回を行うといった制御が可能となる。これについては、実施の形態1、2によって説明した例についても同様のことが言える。具体的には、安全監視タスク24又は監視制御タスク30が取得したセンサ値に応じて、通常制御タスク26及び安全制御タスク28、もしくは、通常制御タスク31及び安全制御タスク32が同様の制御をすることで、HMIを実現することが可能である。また、本実施の形態によれば、より安定した制御対象の制御を行うことが可能となる。そのため、以上に説明したように、人が搭乗することができる走行装置を制御対象として適用することで、より安全性を向上した制御対象の制御を行うことが可能となる。
なお、走行装置として、例えば、立ち乗り方の同軸二輪車とすることもできる。その場合は、アクチュエータを制御することで、車輪が回転動作をすることになる。また、安全制御装置自体も制御対象に搭載される構成としてもよい。
さらに、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、既に述べた本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
本実施の形態では、OSが、TP1〜TP3を有する場合について例示したが、TPの数は、これに限られない。スケジューリングパターンについても、本実施の形態に例示したものに限られない。
本実施の形態では、タスクの数が3つである場合について例示したが、タスクの数も、これに限られない。例えば、本実施の形態では、TPがTP1〜TP3の3つである場合について例示したが、TPの数を3つ以外の数としてもよく、それぞれのTPが1つ以上の任意の数のタスクを有するようにしてもよい。