JP2013134241A - 波浪場の造波方法および造波システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】運動物体や構造物が流体の自由表面に発生させる波浪場(1)を予め計測あるいは計算によって求め(S10)、前記波浪場(1)に基づいた目標とする波浪場(2)を得て(S20)、この目標とする波浪場(2)に基づいて水槽内に造波機を用いて波浪場(1)を再現する波浪場(3)を発生させる(S30)。
【選択図】 図1
Description
特許文献1には、目標とする水面領域内で一様性の高い波高および波向き分布をもつ造波を実現することを目的として、水面における水位振幅の目標値と個々の造波板の運動振幅に応じて計算された計算値との残差平方和を最小にする構成が記載されている。
そこで、本発明は、信頼性の高い水槽実験を可能とする、船舶等の運動物体周りや海洋構造物等の構造物周りの複雑な波浪場を発生させる波浪場の造波方法および造波システムを提供することを目的としている。
上記の構成により、運動物体や構造物が流体の自由表面に発生させる波浪場(1)を水槽内に再現することができる。ここで、「波浪場(1)」とは、計測または計算によって求められた流体の運動をいい、「波浪場(2)」とは、波浪場(1)を再現する波浪場(3)発生させる制御における設定値として用いられるものをいい、「波浪場(3)」とは、水槽内において実際に発生させられる流体の自由表面の運動をいう。また、「流体の自由表面」としては、例えば、水面や海面などが相当するが、水以外の流体を実験に用いることも可能であるところ、この流体の流体表面を含む。この場合、水槽、平水中等の用語は適宜、読み替えるものとする。
上記の構成により、自由表面変位および/または流束を波浪場(2)として取得することができる。ここで、「造波板の位置を基準とした検査面」とは、造波板の位置または造波板から所定の距離を隔てた鉛直な面をいう。また、「検査面における自由表面変位」とは、流体自由表面と検査面とが交わる交線における自由表面の垂直方向の変位をいう。
なお、修正係数とは、波浪場(1)から計測あるいは計算により求めるもの、また波浪場(2)における目標とする速度を得るもの、波浪場(3)を発生させる際に使用するもの等であり、この修正係数のうち速度信号を得る式等に適用するものを補正係数という。
例えば、修正係数がテーブルや式で、補正係数が数値であるような表現が異なるものであってもよい。
vwm:造波板の速度
CS:検査面
FS:自由表面
CS∩FS:検査面と自由表面との交線
kk:曳波補正係数
添字kは曳波を意味する。
ηk:曳波による自由表面変位
t:時間
vn:検査面での流束
vni:入射波による検査面での流束
vn0:攪乱波による検査面での流束
vn1〜vn6:放射波による検査面での流束
ki:入射波補正係数
k0:攪乱波補正係数
k1〜k6:放射波補正係数
vwm:造波板の速度
添字i、jは次の波成分を意味する。
i:入射波
j=0:攪乱波
j=1〜6:構造物の6自由度の動揺による放射波
vn:検査面での流束
vnk:曳波による検査面での流束
vni:入射波による検査面での流束
vn0:攪乱波による検査面での流束
vn1〜vn6:放射波による検査面での流束
ki:入射波補正係数
kk:曳波補正係数
k0:攪乱波補正係数
k1〜k6:放射波補正係数
vwm:造波板の速度
添字i、jは次の波成分を意味する。
i:入射波
k:曳波
j=0:攪乱波
j=1〜6:運動物体あるいは構造物の6自由度の動揺による放射波
上記の構成により、入射波、曳波、運動物体あるいは構造物が入射波を攪乱することで発生する攪乱波および運動物体あるいは構造物の6自由度の揺動による放射波の存在する複雑な波浪場(1)を再現する波浪場(3)を発生させることができる。
上記の構成によれば、波浪場(3)を発生させた後の検査面における自由表面変位の測定結果を造波板の制御にフィードバックすることができる。
この構成により、造波板から離れた位置の検査面の波浪場(3)を目標とする波浪場(1)に整合するものに収束させることができる。ここで、「離れた位置の検査面」とは、造波板により直接形成された流体の運動を計測するための検査面ではなく、造波板から所定の距離離れた位置において、流体を媒体として伝わった運動を計測するための検査面をいう。例えば、例えば、小型船の走行経路として想定される直線のような実験に用いられる領域をいう。
本発明の造波方法を実施する形態について、以下、図1および図2を参酌して説明する。
図1は本発明の実施形態による波浪場の造波方法のフローチャートである。同図に示すように、本発明の波浪場の造波方法は、運動物体や構造物が流体の自由表面に発生させる波浪場(1)を予め計測あるいは計算によって求めるステップ(S10)、波浪場(1)に基づいた目標とする波浪場(2)を設定するステップ(S20)、この目標とする波浪場(2)に基づいて水槽内に造波機を用いて波浪場(1)を再現する波浪場(3)を発生させるステップ(S30)を備えている。
図2は本発明の第1の実施形態による造波方法により再現される波浪場の一例を説明する模式図である。同図に示すように、船舶(運動物体)1が波のない平水中を航走することにより、水面(自由表面)10に曳波が形成される。この水面10の変位を計測または計算することによって波浪場(1)を求める。この水面10の変位を計算する方法としては、この水面10の変位をCFD(Computational Fluid Dynamics、計算流体力学)を用いて求める方法が挙げられる。
波浪場(2)を設定するにあたり、図2に示すように検査面20を設定する。この検査面20は、水面10に対して垂直であり、かつ、水槽30の造波手段が配置される辺に対応する位置に設けられる。また、本実施形態では、船体1の航路に略平行となるように設けられている。そして、検査面20における水面10の変位または流束、もしくはその両方を計測あるいは計算によって求め、これを波浪場(2)として設定する。流束とは、水の流速vを検査面20に対する法線方向成分vkと検査面20に平行な方向の成分vpとに分けた場合における、検査面20に対する法線方向成分vkをいう。
波浪場(3)の発生においては、図2中に破線で示した領域の波浪場(1)を水槽30内で再現する。水槽30の備えている造波機の造波板31が検査面20に対応する位置に配置されている。造波機は、波浪場(2)としての変位または流束に基づいて造波板31を制御して波浪場(3)を発生させることにより、水槽30内に波浪場(1)を再現する。
空間に固定された座標系をSFC(Space Fixed Coordinates)、SFCに対し速度Uで移動している運動物体に固定された座標系をBFC(Body Fixed Coordinates)とする。SFCとBFCは直交座標系、円筒座標系、球面座標系等、何であってもよく、座標系の取り方に依存しない。
SFCによる位置ベクトルと、BFCによる位置ベクトルは式(13)で与えられる平行移動と回転からなる座標変換Qと式(14)で与えられる逆変換Q−1により相互に変換可能である。
平水中を航走する船舶が造る曳波の造波方法として本発明を実施する形態について、以下、図3〜図5を参酌して説明する。
空間固定座標系は、空間に固定された水平面をXY、鉛直上向きをZとする三次元直交座標系O−XYZである。対象物固定座標系は、対象物である運動体または構造物に原点oを固定された水平面をxy、鉛直上向きをzとする三次元直交座標系o−xyzである。
X=x+ut
Y=y
Z=z
なお、本実施形態では、説明の便宜のため、空間固定座標系のX軸と対象物固定座標系のx軸とを一致させている。
YC:検査面位置
vk:曳波による検査面での流束
k:補正係数
波浪中を航走する船舶が造る波浪場の造波方法として本発明を実施する形態について、以下に説明する。なお、平水中と波浪中において異ならない構成については、本実施形態では説明を省略する。
船体が波浪中を運動する場合、入射波、曳波、攪乱波、6自由度の船体の動揺に対応した放射波が生じる。ここで、攪乱波とは、入射派を船体1が攪乱することによって発生する波をいう。また、6自由度の船体の動揺とは、並進運動としての、前後揺(サージ)、左右揺(スウェイ)および上下揺(ヒーブ)、ならびに、回転運動としての、横揺(ロール)、縦揺(ピッチ)、および船首揺(ヨー)をいう。
Yc:検査面位置
vi:入射波による検査面での流束
vk:曳波による検査面での流束
v0:攪乱波による検査面での流束
v1〜v6:放射波による検査面での流束
ki:入射波補正係数
kk:曳波補正係数
k0:攪乱波補正係数
k1〜k6:放射波補正係数
添字i、j、kは次の波成分を意味する。
i:入射波
k:曳波
j=0:攪乱波
j=1〜6:6自由度の船体1の動揺による放射波
このことは、水面10の自由表面変位ηを第1の実施形態において述べた式(4)、式(8)または式(12)で表現した場合も同様である。
Yc:検査面位置
ηi:検査面での入射波による自由表面変位
ηk:検査面での曳波による自由表面変位
η0:検査面での攪乱波による自由表面変位
η1〜η6:検査面での放射波による自由表面変位
添字i、j、kは次の波成分を意味する。
i:入射波
j=0:攪乱波
j=1〜6:6自由度の船体1による放射波
運動物体ではなく構造物が造る波浪場の造波方法として本発明を実施する形態について、以下に説明する。なお、第1〜第3の実施形態と共通する事項については、説明を省略する。
YC:検査面位置
vi:入射波による検査面での流束
v0:攪乱波による検査面での流束
v1〜v6:放射波による検査面での流束
ki:入射波補正係数
kk:曳波補正係数
k0:攪乱波補正係数
k1〜k6:放射波補正係数
添字i、j、kは次の波成分を意味する。
i:入射波
j=0:攪乱波
j=1〜6:6自由度の構造物2の動揺による放射波
造波機を用いた波浪場の造波を試すため、実海域再現水槽を用いて曳波の造波を実施した。図7は、下記の実施例において用いた水槽130の概略平面図を示している。水槽130は全周に382台の多分割型吸収造波機131を有している。多分割型吸収造波機131としては、フラップ型で、造波の幅は55cm、ヒンジ深さは1.6mのものを用いた。
本発明の造波方法を試すため、水中を移動する吹き出しが作る曳波の発生を試みた。Ingris 等の方法(R.B. Inglis and W.G. Price:Calculation of the
Velocity Potential of a Translating, Pulsating Source, Trans. RINA Vol.123 (1981),
pp.163-174.)で計算した検査線Y=−2m上での速度ポテンシャルφ、自由表面形状η、流速を図8(a)〜(c)に示す。この例では吹き出しの深度は0.25m、前進速度は4.0m/sである。
本実施例では、図8(b)中段に示す自由表面形状の検査線に添った波形を用いた造波を試みた。川口は造波板前面で目標とする水位変動を与える造波板の速度信号を求める式を導いた(川口隆:波面検出及び速度制御を用いた無反射造波方式,三井造船技報,第 128 号,(1986),P.20-24)。この式には造波板が作る定存波成分も考慮されており、この式を用いて造波機を制御すれば、より忠実な造波が可能であると考えられる。実海域再現水槽130の造波機131として、この方式による造波機制御プログラムが用意されており、造波板位置での水位変動データを与えて造波できるようになっているものを用いた。
図8の横軸は船体固定座標系のxである。ここでは、時刻t=0に特異点はX0=−10mにあるものとする。空間固定座標系(水槽固定座標系)の位置Xiにある造波板の速度Viが流束(フラックス)と等しくなるよう制御すると、造波板の速度は下記の式で与えられる。造波板が変位制御方式の場合は、下記の式を時間積分して用いれば良い。
2 構造物
10 水面(自由表面)
20、21、120 検査面
30、130 水槽
31、131 造波板
Claims (19)
- 運動物体あるいは構造物が流体の自由表面に発生させる波浪場(1)を予め計測あるいは計算によって求め、
前記波浪場(1)に基づいた目標とする波浪場(2)を得て、
この目標とする波浪場(2)に基づいて水槽内に造波機を用いて波浪場(1)を再現する波浪場(3)を発生させたことを特徴とする波浪場の造波方法。 - 前記波浪場(2)の取得に当たって、前記造波機の造波板の位置を基準とした検査面を前記波浪場(1)に設定し、前記検査面における自由表面変位、もしくは流速の前記検査面に対する法線方向成分である流束、もしくはその両方を計測あるいは計算によって求めたことを特徴とする請求項1に記載の波浪場の造波方法。
- 前記波浪場(1)の前記検査面における鉛直方向の流束分布と、前記造波板の鉛直方向の速度分布の差に基づく修正係数を計測あるいは計算によって求めたことを特徴とする請求項2に記載の波浪場の造波方法。
- 前記流束に前記修正係数を乗じた値を前記波浪場(2)における目標とする速度とし、前記造波板の速度信号として与えて前記波浪場(3)を発生させたことを特徴とする請求項3に記載の波浪場の造波方法。
- 前記修正係数は、前記運動物体が平水中を運動する際の曳波に対する補正係数であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の波浪場の造波方法。
- 前記検査面での流束を式(1)で表現した場合、前記造波板の速度信号を式(2)で与えたことを特徴とする請求項5に記載の波浪場の造波方法。
CS:検査面
FS:自由表面
CS∩FS:検査面と自由表面との交線
kk:曳波補正係数
添字kは曳波を意味する。 - 前記運動物体が平水中を運動する際の前記曳波の自由表面変位を予め計測あるいは計算によって求めた結果を式(3)で表現した場合、式(4)で与えられる前記検査面での自由表面変位に基づいて前記速度信号を補正したことを特徴とする請求項4から請求項6のうちの1項に記載の波浪場の造波方法。
ηk:曳波による自由表面変位
- 前記運動物体が平水中を運動する際の前記曳波の前記検査面における自由表面変位を予め計測あるいは計算によって求めた結果を式(4)で表現した場合、式(4)と前記検査面における自由表面変位との差を、PID制御を含む制御アルゴリズムにフィードバックし前記造波板を制御したことを特徴とする請求項7に記載の波浪場の造波方法。
- 前記修正係数は、前記構造物に対する波浪の入射波、攪乱波、6自由度の前記構造物の動揺に対応した放射波に対する補正係数であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の波浪場の造波方法。
- 前記検査面での流束を式(5)で表現した場合、前記造波板の速度信号を式(6)で与えたことを特徴とする請求項9に記載の波浪場の造波方法。
vn:検査面での流束
vni:入射波による検査面での流束
vn0:攪乱波による検査面での流束
vn1〜vn6:放射波による検査面での流束
ki:入射波補正係数
k0:攪乱波補正係数
k1〜k6:放射波補正係数
vwm:造波板の速度
添字i、jは次の波成分を意味する。
i:入射波
j=0:攪乱波
j=1〜6:構造物の6自由度の動揺による放射波 - 前記構造物まわりの前記入射波、前記攪乱波、前記放射波の自由表面変位ηを予め計測あるいは計算によって求めた結果を式(7)で表現した場合、式(8)で与えられる前記検査面位置の自由表面変位に基づいて前記速度信号を補正したことを特徴とする請求項4、請求項9、請求項10のうちの1項に記載の波浪場の造波方法。
- 前記構造物まわりの前記入射波、前記攪乱波、前記放射波の前記検査面における自由表面変位を予め計測あるいは計算によって求めた結果を式(8)で表現した場合、式(8)と前記検査面における自由表面変位との差を、PID制御を含む制御アルゴリズムにフィードバックし前記造波板を制御したことを特徴とする請求項11に記載の波浪場の造波方法。
- 前記修正係数は、前記運動物体による曳波、前記運動物体あるいは前記構造物への入射波、攪乱波、6自由度の前記運動物体あるいは前記構造物の動揺に対応した放射波に対する補正係数であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の波浪場の造波方法。
- 前記検査面での流束を式(9)で表現した場合、前記造波板の速度信号を式(10)で与えたことを特徴とする請求項13に記載の波浪場の造波方法。
vn:検査面での流束
vni:入射波による検査面での流束
vn0:攪乱波による検査面での流束
vn1〜vn6:放射波による検査面での流束
ki:入射波補正係数
kk:曳波補正係数
k0:攪乱波補正係数
k1〜k6:放射波補正係数
vwm:造波板の速度
添字i、jは次の波成分を意味する。
i:入射波
k:曳波
j=0:攪乱波
j=1〜6:運動物体あるいは構造物の6自由度の動揺による放射波 - 前記運動物体が波浪中を運動する際の前記入射波、前記曳波、前記攪乱波、前記放射波の自由表面変位を予め計測あるいは計算によって求めた結果を式(11)で表現した場合、式(12)で与えられる前記検査面位置の自由表面変位に基づいて前記速度信号を補正したことを特徴とする請求項4、請求項13、請求項14のうちの1項に記載の波浪場の造波方法。
- 前記運動物体が波浪中を運動する際の前記入射波、前記曳波、前記攪乱波、前記放射波の前記検査面における自由表面変位を予め計測あるいは計算によって求めた結果を式(12)で表現した場合、式(12)と前記検査面における自由表面変位との差を、PID制御を含む制御アルゴリズムにフィードバックし前記造波板を制御したことを特徴とする請求項15記載の波浪場の造波方法。
- 補正した前記速度信号を用いて前記波浪場(3)を発生させ、前記造波板から離れた位置の検査面における自由表面変位を計測し、この自由表面変位計測結果に基づいて前記速度信号をさらに補正したことを特徴とする請求項7、請求項11または請求項15に記載の波浪場の造波方法。
- 前記自由表面変位もしくは前記流束を実現するため前記造波板に変位信号を与えて波浪場(3)を発生させたことを特徴とする請求項2から請求項17のうちの1項に記載の波浪場の造波方法。
- 請求項1から請求項18のうちの1項に記載の波浪場の造波方法に基づいて造波機を動作させ波浪場を発生させたことを特徴とする造波システム。
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