JP2013126381A - 細胞融合方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
電気的細胞融合において、2細胞一対での細胞融合をより効率的により確実に実施できる新規な細胞融合方法を提供する。
【解決の手段】
融合させる細胞のうち直径の大きい細胞の直径より小さい微細孔を有する融合容器に前記細胞の混合懸濁液を導入し、交流電圧を印加して導入した細胞を微細孔に誘導し、前記微細孔内にまず前記直径の大きい細胞を固定、かつ/または、当該細胞と接した状態で前記直径の小さい細胞を固定し、交流電圧に代えて、直流パルス電圧を印加して接している直径の小さい細胞と直径の大きい細胞にかかる電界強度が、1.0×105〜7.0×105(V/m)の範囲で融合することにより、前記課題を解決する。
【選択図】なし

Description

本発明は、大きさの異なる2つの細胞を効率的に細胞融合するための方法に関するものである。
従来、大きさの異なる2つの細胞、例えば特定の抗体を産生するマウスの脾臓細胞とマウスのミエローマ細胞等の2種類の異なる細胞を融合し、1つの交雑細胞(ハイブリドーマ)とする細胞融合技術が利用されている。細胞を融合する方法として、電気的細胞融合方法が知られている。この方法は、交流電圧を印加した平行電極間に細胞を導入して細胞を数珠状に整列させ、この状態で数マイクロ秒から数十マイクロ秒単位の直流パルス電圧を電極間に印加するものであるが、実施に際して特別の習熟が不要で、簡単かつ効率よく細胞を融合させることができるという利点を有する。電気的細胞融合法は自動化に適しており、これまでに電気的細胞融合法を実施するための装置が報告されている。
本出願人もまた、細胞融合用チャンバーの細胞融合領域に対向するように配置された導電部材よりなる一対の電極と、前記一対の電極間に配置され、且つ前記一対の電極方向に貫通した微細孔を有する絶縁体とよりなる細胞融合用チャンバーを報告している(特許文献1等)。本出願人が報告した前記装置を説明すると、図1に示したように、細胞融合領域内に対向するように配置された導電部材よりなる一対の電極と、前記一対の電極方向に貫通した微細孔を形成した絶縁体からなる細胞融合容器であって、前記絶縁体が前記電極のうちどちらか一方の電極の細胞融合領域側の電極面上に配置されている細胞融合容器と、前記一対の電極に交流電圧を印加するための交流電源及び、直流パルス電圧を印加するための直流パルス電源からなり、前記交流電源により前記電極間に印加する交流電圧の波形が、前記細胞の充電と放電を周期的に繰り返す波形である細胞融合装置を用いて、前記細胞融合領域内に第1の細胞を導入し、前記波形を有する交流電圧を印加することで前記微細孔内に前記第1の細胞を固定した後、前記細胞融合領域内に第2の細胞を導入して、前記波形を有する交流電圧を印加することで前記第1の細胞に前記第2の細胞を微細孔の位置において接触させ、前記直流パルス電圧を印加して細胞融合する細胞融合方法である。
また本細胞融合容器は、微細孔の直径が直径の大きい細胞の直径以下、直径の小さい細胞の直径以上である細胞融合容器であり、1つの微細孔につき1つの細胞を固定するため、前記交流電源により前記電極間に印加する交流電圧の波形が、電源により、前記細胞の充電と放電を周期的に繰り返す波形である細胞融合装置である。
ここで、上記細胞融合方法の動作を図1を用いて説明する。まず、第1の細胞(22)として、直径の小さい細胞を細胞懸濁液(30)とともに細胞融合領域(1)に導入し、前述した波形を有する交流電圧を印加して1つの微細孔(9)につき第1の細胞1つを固定する。この場合、第1の細胞は主に誘電泳動力、重力、電極からの静電気力によって微細孔に誘導される。微細孔の直径と深さは第1の細胞の直径とほぼ等しく、第1の細胞がちょうど微細孔の中に入る。このようにすることで、微細孔の底面の電極面と第1の細胞に静電気力が発生し、第1の細胞は微細孔に確実に固定される。ここで誘電泳動力(10)とは、図2に示すように、電極間に特定の周波数の交流電圧を印加した時、上部電極(14)と微細孔(9)で覆われた下部電極のように、電気力線(12)の集中部位があると、その電気力線の集中部位(11)の方向(すなわち、微細孔の方向)に向かって細胞等の誘電体粒子を動かす力である。一般に誘電泳動力は、誘電体粒子の体積、誘電体粒子の誘電率と溶液の誘電率の差、印加電圧の2乗に比例し、細胞等に対しては高い周波数(例えば30kHz以上)の交流電圧を印加すると、電気力線の集中する部位に向かって誘電泳動力が生じる。
次に、第2の細胞(18)として、直径の大きい細胞を細胞懸濁液(30)とともに細胞融合領域(1)に導入する。このとき、第1の細胞(22)は電極との静電気力で固定されている上、周囲を微細孔(9)で囲まれているため、第2の細胞を送液することにより第1の細胞が微細孔から離脱することはほとんどない。導入された第2の細胞は、前述した波形を有する交流電圧を印加することにより、微細孔に固定された第1の細胞の上から接触し固定される。この場合、第2の細胞には、微細孔での誘電泳動力も作用するが、主に重力、第1の細胞からの静電気力によって微細孔に固定された第1の細胞に誘導される。次に、電源を直流パルス電源(6)に切り換え、細胞融合を行うための直流パルス電圧を印加することで、微細孔において接触した第1の細胞と第2の細胞を2細胞一対で細胞融合させ、融合細胞(32)を得ることができ、効率的な2細胞一対での細胞融合が可能となる。
しかしながら、前記特許文献1に記載された方法では、効率的な2細胞1対の細胞融合が可能となり、通常の電気細胞融合法と比べ高い融合確率が得られたが、得られた融合細胞のうち目的の抗体を産生する抗体産生融合細胞の割合が、融合確率が向上した割合ほど多くはないという課題があった。ここで融合確率とは、(融合細胞数)/(使用したBCP免疫マウス脾臓細胞数)のことを表す。また前記方法では、主に微細孔にちょうど入るような大きさの細胞が融合し、微細孔より大きい細胞や小さい細胞は融合し難いことから、細胞の大きさに幅がある場合に細胞全てをより効率的に融合する事が難しかった。さらに、前記方法では、融合させる細胞の一方を細胞融合領域内に導入して微細孔に固定後、融合させる細胞の他方を細胞融合領域内に導入して微細孔に固定していたため操作に時間がかかり、細胞の活性が、時間経過に連れて次第に落ちてくるという課題があった。
特開2007−295912号公報
本発明の目的は、かかる従来の実状に鑑みて提案されたものであり、電気的細胞融合によって2個の細胞を効率的かつ確実に融合し、目的の抗体を産生する抗体産生融合細胞を効率的により多く獲得するための新たな細胞融合方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく本発明者らは鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、直径の異なる2個の細胞の融合方法であって、
1)融合させる細胞のうち直径の大きい細胞の直径より小さい微細孔を有する融合容器に前記細胞の混合懸濁液を導入し、
2)交流電圧を印加して導入した細胞を誘導し、
3)前記微細孔内に前記細胞を固定、かつ、当該細胞と接した状態で前記細胞を固定し、
4)交流電圧を印加しつつ、又は、交流電圧に代えて、直流パルス電圧を印加して接している直径の小さい細胞と直径の大きい細胞とを融合する、
ことを特徴とする。
以下、本発明を説明する。
本発明の融合方法は、2つの細胞を融合するものである。融合の対象となる2つの細胞は、その大きさが異なる細胞であれば、いかなる細胞であっても良く、例えば由来する動物種や器官についても、同一又は異なる由来の細胞が制限なく使用できる(以下、融合の対象となる2つの細胞のうち、その直径が他方よりも大きい細胞を細胞A、その直径が他方よりも小さい細胞を細胞Bと記載することがある)。
本発明において細胞の直径とは、細胞が球状又はほぼ球状である場合にはその直径をいい、また細胞が楕円形状その他の場合には、当該細胞が内接することとなる球の直径をいう。当然のことながら、同一種類の細胞であっても細胞毎に直径は僅かずつ異なるため、細胞A又は細胞Bとする細胞中の平均的な細胞の直径をもって直径とすることができる。また本発明で用いた細胞および大きさは、2〜15μmの脾臓細胞と5〜30μmの癌細胞である。
なお、本発明における融合対象の例として、例えば卵子と精子、遺伝子を含有したリポソームと細胞、ウイルスと細胞等にも適用できる。これらを融合することにより、例えば異なる有用な蛋白質を発現する遺伝子をそれぞれ含有する細胞を融合して、これら2つの蛋白質を同時に発現し得る単一の細胞を創出したり、例えば有用な抗体を産生する細胞と増殖能を有する細胞を融合して、有用な抗体を産生しつつ、増殖可能な細胞を創出すること等がある。
細胞Aと細胞Bは、融合容器への導入に先立ち、2種類の細胞を同時に融合容器へ導入させるために混合して懸濁液としておくが、懸濁液の成分としてはマンニトールやスクロースのような糖等、融合させようとする細胞Aと細胞Bを不活性化しない成分を含むものであれば良い。なお、懸濁液の伝導度は、細胞に誘電泳動力が働く必要があるため1mS以下の範囲とする。融合容器に導入する細胞Aと細胞Bの混合懸濁液を調製するに当たっては、細胞Aと細胞Bを2対1で混合することが特に好ましい。また、融合容器が複数の微細孔を有する場合には、細胞Bを少なくとも微細孔の数と同数以上使用することが好ましい。微細孔に固定される細胞Bの数を最大限にして、1回の操作によってより多数の融合細胞を得るためである。
本発明の融合方法は、細胞融合領域内に直径の異なる2種類の細胞を導入し、微細孔の位置において前記細胞を接触させ融合を行う際、直径の異なる2種類の2つの細胞の接触面にかかる電界強度が、好ましくは1.0×10〜7.0×10(V/m)となるような直流パルス電圧を印加することとする。この場合、目的の抗体を産生する細胞をより多く融合することができ、抗体産生融合細胞を効率的により多く獲得することが可能となり、通常の電気的細胞融合法における抗体産生融合細胞獲得率と比べて、2倍以上の抗体産生融合細胞獲得率が得られる。またより好ましくは、直径の異なる2種類の2つの細胞の接触面にかかる電界強度が、2.0×10〜5.0×10(V/m)となるような直流パルス電圧を印加することとする。この場合、通常の電気的細胞融合法における抗体産生融合細胞獲得率の5倍以上の抗体産生融合細胞獲得率が得られる。また、2つの細胞の接触面にかかる電界強度をあまりに低くすると、目的の抗体を産生する細胞が融合されなくなり、一方で2つの細胞の接触面にかかる電界強度をあまりに高くすると、目的の抗体を産生する細胞自体が死んでしまうなど、いずれの場合も所望の融合細胞があまり得られなくなる。
また本発明の細胞融合方法は、融合の対象となる細胞Aと細胞Bを2種類の細胞を同時に融合容器へ導入させるために混合した状態で細胞容器に導入することを可能とするものである。この融合容器は、微細孔を有するが、微細孔の開口は、細胞Aの直径よりも小さい。ここで、微細孔の開口とは、微細孔の絶縁体表面に接する部分のことを言う。具体的に例えば、微細孔の開口が円状である場合、その直径を細胞Aよりも小さくすれば良い。また具体的に例えば、微細孔の開口が円状以外のものである場合、融合対象である細胞Aの柔軟性を勘案のうえ、モデルを作成する等して開口の形状と寸法を決定すれば良い。また融合容器は、細胞を混合した懸濁液を導入するための流路や、本発明の方法を実施した後の液体を容器外に排出するための流路を有していても良いし、そのような流路を形成することの代わりに、例えば容器の上蓋となる面を可動可能に取り付ける構成としておき、懸濁液の導入又は排出の際にはこの上蓋を跳ね上げるような構成とすることも例示できる。
微細孔は、その深さが細胞Aの直径の1/2以上であることが好ましい。ここで深さとは、前記開口から、微細孔底面までの距離をいう。微細孔の深さが細胞Aの直径の1/2である場合には、細胞Aが微細孔底面まで入り込むぎりぎりの深さということになる。微細孔の深さをこのように調整することによって、細胞Aが微細孔から半分以上露出するようになり、微細孔表面から離れた、電界強度がより一定である領域で、細胞Aと細胞Bとの融合を効率的に実施できるようになるからである。
融合容器が複数の微細孔を有する場合、各微細孔は、隣接する微細孔と等間隔に配置されることが特に好ましい。ここでいう等間隔とは、任意の微細孔の中心から隣接する微細孔の中心までの距離が等しいことをいう。これは、後述する通り融合容器中の細胞に交流電圧を印加して微細孔に誘導するに際し、各微細孔に均一な電気力線の集中を起こさせ、全ての微細孔において細胞融合を生じさせるためである。隣接する微細孔と等間隔に配置する具体的な例としては、例えば碁盤の目のように配置することが例示できる(以後、このような配置をアレイ状又はアレイ状配置等と記載することができる)。
本発明では、特に、隣接する微細孔との間隔を細胞Aの直径の0.5倍から6倍以下、特に好ましくは細胞Aの直径の1〜2倍程度とすることが好ましい。微細孔を等間隔に配置することで交流電圧を印加した際に生じる電界を均一にすることができるからである。また、微細孔の間隔をあまりに狭くすると、1つの微細孔に複数の細胞が固定される確率が高くなり、一方で微細孔の間隔をあまりに広くすると微細孔と微細孔の間に細胞が残される可能性が高くなるなど、いずれの場合も融合に寄与しないか又は所望の融合細胞とならない無駄な細胞が増えるからである。
以上に説明した微細孔を有する融合容器は、種々の形態、形状に構成することができる。後述するように、本発明においては、融合容器中の細胞に交流電圧を付加し、微細孔に誘導する操作を行う。このため、本発明においては、融合容器の近傍に電極を配置するが、電極と融合容器を接触させる場合、融合容器は、ガラス、セラミック、樹脂等の絶縁材料で構成する。またその形状としては、例えば、筒状、錐状、柱状等を例示できる。通常、融合のために融合容器に導入される混合懸濁液の容量は数百μL〜1ml程度である事を考えれば、例えば底面が縦横2cm×2cm、高さが1mm程度の箱状のものが好ましい。なお、後述する交流電圧の印加により混合懸濁液中の細胞を効率的に誘導するためには、融合容器に混合懸濁液を導入したときに、当該細胞の誘導方向への当該混合懸濁液の高さ(幅)が0.5mm〜2mm程度となるようにすることが好ましい。また、細胞の誘導方向への当該混合懸濁液の高さ(幅)をあまりに低くすると、融合容器に細胞を充填し終わる前に底面に細胞が沈んでしまい融合容器の中に細胞が均一に導入できなくなり、一方で細胞の誘導方向への当該混合懸濁液の高さ(幅)をあまりに高くすると、細胞が重力により次第に沈降し誘電泳動力により微細孔に誘導されるまでに長い時間を要するため、効率が悪くなる。
ところで、細胞融合容器は、重力に対して垂直でも平行でもよいが、細胞は誘電泳動力以外にも重力や電極からの静電気力によっても移動するため、交流電圧印加による誘電泳動以外の移動の影響を少なくする目的で、微細孔は重力方向(通常は融合容器の底壁)に設けることが特に好ましい。
融合容器が有する微細孔は、例えば融合容器の側壁や底壁に設けた貫通孔又は閉塞した孔であっても良いし、また融合容器を構成する壁以外に設ける場合には、例えば融合容器とは別の部材を用いて構成しても良い。 微細孔を融合容器とは別の部材を用いて構成する例として、具体的に例えば、平板状の部材に貫通孔を設けておき、それを融合容器の底面に配置することも例示できる。いずれにしても、後述する電極によって交流電圧を付加した際に、混合した細胞懸濁液中の細胞を微細孔に誘導するために、微細孔を通じて融合容器中にまで電気力線が透過するように、微細孔の配置、微細孔を形成する部材の材質、電極の配置等を勘案する。
本発明の細胞融合方法では、融合容器に導入した細胞の混合懸濁液に対し、まず交流電圧を印加する。このために本発明では、電圧印加用の電極を使用するが、使用する電極について特に制限はない。例えば、融合容器を挟むように、それぞれ電極を配置した2枚の平板を対向して配置する構成を例示することができる。また、例えば融合容器の下部に、一対の電極を同一平面上に配置した一枚の平板を配置する構成も例示できる。(例えば図16)
本発明では、まず、細胞混合懸濁液中の細胞Aと細胞Bに対して交流電圧を印加し、微細孔に細胞を誘導して固定する。交流電圧を印加するためには、前記した電極を公知の交流電源に接続すれば良いが、この印加する交流電圧の波形は、当該交流電圧を印加することによって融合容器中の細胞の充電と放電が周期的に繰り返される波形を有する交流電圧がとすることが例示でき、かかる電圧として好ましくは0以外の値を有する電圧が一定時間変化しない時間を半周期内に1以上有する波形であり、特に好ましくはその波形が矩形波、台形波、またはこれらを組み合わせた波形となる交流電圧を印加することである。このような交流電圧を印加することにより、混合懸濁液中の細胞Aと細胞Bは微細孔に誘導される。本発明では、交流電圧を印加するに際し、この交流電圧は直流成分を有しないことが好ましい。これは、直流成分により発生した静電気力により細胞が特定の方向に偏った力を受けて移動し、誘電泳動力により細胞を微細孔に固定することを妨害したり、混合懸濁液に含まれるイオン成分が電極表面で電気反応を生じて発熱が起こり、それにより細胞が熱運動を起こして誘電泳動力による細胞の動きを制御する可能性があるからである。なお、融合容器が複数の微細孔を有する場合には、微細孔をアレイ状に配置し、かつ、配置された微細孔の全てをカバーする寸法、形状の電極を使用することにより、電極間に印加した電圧によってすべての微細孔にほぼ均等に電界が生じるようにすることが好ましい。
上記説明した波形の交流電圧、好ましくは融合容器中の細胞の充電と放電が周期的に繰り返される波形を有する交流電圧を付加することで、誘電泳動によって混合懸濁液中の細胞を微細孔に引き寄せることができる。印加する電圧値や周波数は電極間の距離や、融合する対象である細胞の種類や大きさ、混合懸濁液の種類によって適切な値を設定すればよい。
交流電圧を印加することにより、微細孔には細胞Aと細胞Bとが接触した状態で固定される。そこで、交流電圧を印加しつつ、又は交流電圧に代えて、直流パルス電圧を印加することで両細胞を融合することができる。交流電圧を印加しつつ直流パルス電圧を印加する場合には、前記した交流電圧印加用の電極とは別に直流パルス電圧印加用の電極を使用するが、印加する電圧を切り替える場合には、前記した電極を直流パルス電圧印加用電極として兼用することができる。
直流パルス電圧を印加すると、接触する細胞の細胞膜の電気伝導度が瞬間的に低下し、脂質二重層から構成される細胞膜の可逆的乱れとその再構成が行われることで、両者が融合される。本発明の融合方法では、後述するように、微細孔にまず細胞Aが固定され、続いてその上に細胞Bが、細胞Aに接した状態で固定される可能性が高い。ここで、一般に細胞の直径が小さいほど細胞膜の可逆的乱れを生じさせる直流パルス電圧は高くなるため、上記したように細胞Aを微細孔数の2倍以上、細胞Bを微細孔数と同等で混合した懸濁液を好ましく使用し、かつ、直流パルス電圧を適切に調整することで、細胞A同士又は細胞B同士の融合や、3個以上の細胞の誘導等を排して、細胞Aと細胞Bとが1対1で融合した融合細胞を効率的に得ることが可能となる。また細胞Aを微細孔数の3倍以上、細胞Bを微細孔数と同等で混合した懸濁液を使用した場合は、アレイ状の微細孔に細胞Bが均一に入りにくい可能性があるため、より好ましくは、細胞Aを微細孔数の2倍、細胞Bを微細孔数と同等で混合した懸濁液を使用することである。この場合、微細孔の上に細胞Aが2個連続して固定された上に細胞Bが固定される可能性が高く、直流パルス電圧を印加すると、微細孔の表面に固定された細胞Aは、強い電界強度により細胞膜が破壊されて破裂し、その上に固定された細胞Aとそれに接触した細胞Bの細胞膜の接触面は微細孔の表面から更に離れるため、細胞Aと細胞Bの接触面における電界強度は、微細孔の表面と比べより一定に近づき、この両者の融合のみが実現できるのである。
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明の細胞融合装置は、微細孔を形成した絶縁体を細胞融合領域側のどちらか一方の電極面上に配置することで、微細孔に細胞を確実に固定し、微細孔近傍にある2細胞一対を選択的に細胞融合させることができ、2細胞一対での細胞融合を効率的に行うことが可能となる。
(2)本発明の細胞融合方法においては、細胞融合領域内に直径の異なる2種類の細胞を混合して導入し、交流電圧を印加することで、前記微細孔内に前記細胞を固定かつ接触させ、直流パルス電圧を印加して細胞融合する方法であり、このようにすることで、操作が簡便かつ短時間で行え、さらに細胞活性をより維持したまま細胞融合を行うことが可能となる。
(3)本発明の細胞融合方法においては、細胞融合領域内に直径の異なる2種類の細胞を導入し、微細孔の位置において前記細胞を接触させ、直径の異なる2種類の2つの細胞の接触面にかかる電界強度が、1.0×10〜7.0×10(V/m)の範囲で融合することで、目的の抗体を産生する細胞をより多く融合することができ、抗体産生融合細胞を効率的により多く獲得することが可能となり、通常の電気的細胞融合法における抗体産生融合細胞獲得率と比べて、2倍以上の抗体産生融合細胞獲得率が得られる。また、直径の異なる2種類の2つの細胞の接触面にかかる電界強度が、2.0×10〜5.0×10(V/m)となるような直流パルス電圧を印加することで、通常の電気的細胞融合法における抗体産生融合細胞獲得率の5倍以上の抗体産生融合細胞獲得率が得られる。
(4)本発明の細胞融合方法においては、それぞれ直径の異なる2種類の細胞を細胞融合させる場合、細胞の濃度は直径の大きい細胞が微細孔の数の2倍以上、直径の小さい細胞が微細孔の数と同等であることがより好ましく、このようにすることで、それぞれ細胞の大きさに幅がある場合でも、直流パルス電圧を適切に調整することで、一定の電界強度の下で更により多くの細胞を2細胞一対で選択的に効率的に細胞融合することが可能となる。
(5)本発明の細胞融合装置は、微細孔の平面形状の直径が、融合させる2種類の細胞のうち直径の大きい細胞の直径より小さく、このようにすることで、細胞を有効にかつ微細孔により確実に固定することが可能となる。
(6)本発明の細胞融合方法においては、微細孔の深さが細胞Aの直径の1/2以上であり、このような細胞融合領域内に細胞Aと細胞Bを混合して導入し、交流電圧を印加することで、前記微細孔内に前記細胞Aを固定および、前記細胞Bを微細孔の位置において接触させ、直流パルス電圧を印加して細胞融合する方法であり、このようにすることで、細胞Aと細胞Bの細胞膜の接触面が微細孔の表面から離れるため、一定の高い電界強度の下で融合が起こり、より多くの細胞を2細胞一対で効率的に細胞融合することが可能となる。
(7)本発明の細胞融合装置は、微細孔が絶縁体上に複数個、アレイ状に形成されており、このようにすることで、複数の微細孔に固定した2細胞一対の細胞を同時に細胞融合させることが可能となり、2細胞一対での細胞融合を効率的に行うことが可能となる。
(8)本発明の細胞融合装置においては、微細孔の隣り合う間隔が、微細孔に入れる細胞の直径の0.5倍以上6倍以下の範囲であり、このようにすることで、1つの微細孔に1つの細胞を固定する確率を高めることができ、微細孔において2細胞を一対で接触させる確率を上げることが可能になる。
(9)本発明の細胞融合装置においては、交流電源により電極間に印加する交流電圧の波形を制御することで、1つの微細孔に1つの細胞を固定することが可能となる。
特許文献1記載の細胞融合用チャンバーの断面図および動作を説明する概念図である。 本発明に用いる誘電泳動を説明するための図である。 本発明を実施するのに好適な細胞融合装置の一例及び、実施例で用いた細胞融合装置の概念図である。 図3に示した細胞融合容器のAA’断面図である。 本発明に用いる交流電圧の波形の一例として、正弦波を示した図である。 本発明に用いる交流電圧の波形の一例として、三角波を示した図である。 本発明に用いる交流電圧の波形の一例として、台形波を示した図である。 本発明に用いる交流電圧の波形の一例として、矩形波を示した図である。 本発明を説明するための第1の図である。 本発明を説明するための第2の図である。 本発明を説明するための第3の図である。 本発明の細胞融合方法の例を示す図である。 微細孔近傍の電界強度を示した図である。 一般的なフォトリソグラフィーとエッチング方法の概略図である。 本発明の細胞融合方法における2つの細胞の接触面にかかる電界強度と、抗体産生融合細胞獲得率との関係を表した図である。 本発明に用いる細胞融合装置の一例として、融合容器の下部に、一対の電極を同一平面上に配置した一枚の平板を配置した細胞融合装置の概念図である。
1:融合領域
2:電極
3:導電線
4:電源
5:交流電源
6:直流パルス電源
7:切換スイッチ
8:絶縁体
9:微細孔
10:誘電泳動力
11:電気力線の集中部位
12:電気力線
13:融合容器
14:上部電極
15:下部電極
16:スペーサー
17:微細孔A′
18:細胞A
19:導入口
20:排出口
21:微細孔B′
22:細胞B
23:ITO
24:ガラス
25:レジスト
26:露光用フォトマスク
27:露光
28:微細孔付き絶縁体一体型下部電極
29:現像液
30:細胞懸濁液
31:ピーク電圧
32:融合細胞
33:電極a
34:電極b
35:櫛状電極

以下、本発明を更に詳細に説明するためにその一実施形態を図面に基づき説明する。
図3は、本発明の細胞融合方法を実施するために使用できる装置の概念図を示す。この装置は大きく分けて、融合容器(13)と電源(4)から構成される。融合容器は電極と一体に構成されており、上部電極(14)と下部電極(15)の間に、スペーサー(16)を配置し、微細孔(9)を形成した絶縁体(8)を下部電極の細胞融合領域側に配置した構成を有する。上部電極と下部電極の材質は導電部材であって化学的に安定な部材であればとくに制限はなく、白金、金、銅などの金属やステンレスなどの合金及び、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)等の透明導電性材料を成膜したガラス基板などでも良いが、細胞の融合状況を観察するためには、ITOなどの透明導電性材料を成膜したガラス基板を電極として用いることが好ましい。
上部電極と下部電極の面積等の寸法には特に制限はないが、取り扱いやすいサイズとして、例えば、縦70mm×横40mm×厚さ1mm程度のサイズが好ましい。
スペーサーは、上部電極と下部電極が直接接触しないようにし、かつ融合容器に細胞混合懸濁液を保持するスペースを確保するためのものであり、その下部には微細孔を構成する貫通孔を有した絶縁体が配置されている。その材質は絶縁材料であればよく、例えばガラス、セラミック、樹脂等が例示できる。またスペーサーには、融合容器に細胞を導入したり、融合を実施した後の懸濁液を排出するための導入流路及びそれに連通する導入口(19)と、排出流路及びそれに連通する排出口(20)を設けることもできる。
スペーサーのサイズは上部電極と下部電極が接触しなければ特に制限はないが、電極の全面を有効に使用し得るサイズが好ましい。例えば、電極サイズが縦70mm×横40mm程度であれば、スペーサーのサイズは例えば縦40mm×横40mm程度である。本質的に融合容器として機能する領域部分(1)は、スペーサー、上部電極及び微細孔を形成した絶縁体により形成されるスペーサーの内側の空間部分ということになるが、この空間部分を創出するスペーサーの厚みは、懸濁液を例えば数μL〜数mL程度入れる容量があればよく、例えば、スペーサーのサイズが縦40mm×横40mm程度の場合、スペーサーの内側の空間は、縦20mm×横20mm程度であればよく、スペーサーの厚みは0.5〜2.0mm程度であればよい。
スペーサーの下部に配置される絶縁体(8)には微細孔(9)が形成されている。この絶縁体(8)の材質は、例えばガラス、セラミック、樹脂等の絶縁材料であれば特に制限はないが、貫通した微細孔を形成させる必要があることから、樹脂等の比較的加工が容易な材料が好ましい。樹脂に貫通した微細孔を形成する手段としては、形成する微細孔の位置にレーザーを照射する方法や、微細孔の位置に貫通孔を形成するためのピンを有する金型を用いて成形する方法などの既知の方法を用いればよい。また、絶縁体にUV硬化性樹脂などを用いる場合は、微細孔に相当するパターンを描画した露光用フォトマスクを用いて一般的なフォトリソグラフィー(露光)とエッチング(現像)により貫通した微細孔を形成することができる。絶縁体に複数の微細孔を形成する場合は、絶縁体にUV硬化性樹脂を用いて、一般的なフォトリソグラフィーとエッチングによる方法で微細孔を形成することが好ましい。
図4は、図3の融合容器のAA’断面図を示した概略図である。上部電極(14)、スペーサー(16)、絶縁体(8)、下部電極(15)を図4のように張り合わせる手段としては、それぞれを接着剤で張り合わせる、加圧した状態で過熱して融着させる、等の方法や、スペーサーを表面粘着性のあるPDMS(poly−dimethylsiloxane)やシリコンシートのような樹脂を用いて作製することで圧着することにより張り合わせる方法など、既知の方法を用いればよい。このようにすることで図4に示した実質的な融合容器である領域(1)を形成することができる。
細胞容器の上部電極と下部電極には導電線(3)を介して電源(4)が接続されている。電源(4)は交流電圧の波形を上部電極(14)と下部電極(15)の電極間に印加する交流電源と、細胞融合させるための直流パルス電圧を上部電極と下部電極の電極間に印加する直流パルス電源から構成されており、交流電源(5)と直流パルス電源(6)は、切換スイッチ(7)等の切換機構により適宜切り換えて使用することができる。
本発明の細胞融合方法に用いる交流電源は、細胞が微細孔に固定できれば特に制限はなく例えば、ピーク電圧が1V〜20V程度、周波数30kHz〜3MHz程度の正弦波、矩形波、三角波、台形波等の交流電圧を出力できる交流電源などで良い。
本発明の細胞融合方法では、1つの微細孔に1つの細胞を固定した方がより効率的な細胞選別を行うことが可能となるが、1つの微細孔につき1つの細胞を固定するための交流電圧の波形としては、矩形波であることが好ましい。その理由として、図5〜図8に示すように、交流電圧の波形が正弦波(図5)、三角波(図6)、台形波(図7)に比べて、矩形波(図8)は瞬時に設定したピーク電圧(31)に到達するため、細胞が微細孔に速やかに動くため、細胞が重なって微細孔に入る確率が低くなり、従って、1つの微細孔につき1つの細胞を固定する確率が高くなる。また、細胞は電気的にコンデンサーと見なすことができ、矩形波のピーク電圧が変化しない間は、微細孔に入った細胞には電流が流れにくくなるため、電気力線が生じにくく、細胞の入った微細孔には誘電泳動力が発生しにくくなるため、一度微細孔に細胞が入ると、別の細胞がその微細孔に入る確率が低くなり、電気力線が生じ誘電泳動力が発生している空の微細孔に順次細胞が入っていき、細胞融合領域内にアレイ状に配置された全ての微細孔に細胞を均一に固定することが可能となる。
また、正弦波や三角波のように常に電圧が連続的に変化する交流電圧の波形では、複数の細胞が集中して固定される微細孔と、細胞が全く固定されない微細孔があり、1つの微細孔につき1つの細胞を固定すること、および全ての微細孔に細胞を均一に固定することが難しい。
また本発明の細胞融合方法で用いる交流電圧の波形は、直流成分を有しないことが好ましい。これは、直流成分により発生した静電気力により細胞が特定の方向に偏った力を受けて移動するため誘電泳動力により細胞を微細孔に固定することが困難になること、また細胞を含有する懸濁液に含まれるイオンが電極表面で電気反応を生じて発熱が起こり、それにより細胞が熱運動を起こすため、誘電泳動力により細胞の動きを制御することができなくなり細胞を微細孔に引き寄せることが困難となるためである。
本発明の細胞融合方法に用いる直流パルス電源は、微細孔あるいはその近傍にて互いに接触した第1の細胞と第2の細胞を細胞融合することができる直流パルス電圧を発生させることができれば特に制限はなく、例えば、直流パルス電圧として、50V〜1000V、パルス幅10μsec〜50μsec程度の直流パルス電圧を出力できる直流パルス電源であれば特に制限は無い。
本発明の細胞融合方法では、絶縁体を貫通する微細孔の平面形状の直径は、微細孔に固定する細胞の直径より小さく、さらに複数の微細孔の隣り合う間隔が、固定する細胞の直径の0.5〜6倍の範囲であることで、絶縁体上にアレイ状に形成した複数の微細孔において、1つの微細孔につき1つの細胞を固定することおよび全ての微細孔に細胞を均一に固定することが可能となる。
図9〜図11には本発明の細胞融合方法において、微細孔に細胞が入る過程の概念図を示すものである。絶縁体(8)の厚みは細胞A(18)及び細胞B(22)の直径の1/2より大きく、微細孔の内径は細胞X及び細胞Yの直径よりも小さい。また、図10に示すように微細孔A’(17)に細胞Xが入った後、図11に示すように微細孔B’(21)に細胞Yが入る場合を想定している。
本発明の細胞融合方法は、以上のような特徴を持つ細胞融合装置を用いて、以上のような交流電圧を印加することによって、細胞Aと細胞Bを混合して導入し、全ての微細孔に均一に細胞を固定および、もう1つの細胞を微細孔の位置において接触させる。ここで、細胞Aは細胞Bよりも直径が大きいため、融合容器中に混合して導入すると、細胞Aの方が重力により細胞Bより先に沈みやすいこと、および誘電泳動力が細胞の半径の3乗に比例にすることから、細胞Aの方が細胞Bより先に微細孔に固定されやすいことになる。このため、重力と誘電泳動力により、微細孔には細胞Aが先に固定され、その上に細胞Bが固定されやすくなる。これに対し、1つの微細孔に細胞Aを固定した後、固定した細胞Aのさらに上から細胞Bを固定する場合は、細胞Bには誘電泳動力、重力、及び細胞Aの静電気力が作用し細胞Aと接触する。しかしながら、前述した理由により、微細孔を細胞Aが塞いでしまうため電流が流れにくくなることで電気力線の発生が抑制され、細胞Bに作用する誘電泳動力が弱くなる。従って、細胞Bを、微細孔に固定した細胞A上に1つずつ接触させる確率が低下する。一方、細胞Aと細胞Bを混合して導入し、交流電圧を印加する場合に、細胞Aの濃度(個数)を細胞Bの濃度(個数)よりも高く(多く)し、融合容器に過剰に導入することで、細胞Aと細胞Bの接触確率や、目的抗体を産生する細胞の獲得率を向上することが可能となる。
図12に示したように、融合容器(1)に、細胞A(18)と細胞B(22)を混合した懸濁懸濁液(30)で導入し、前述した波形を有する交流電圧を印加して微細孔(9)に細胞を固定する。この場合、細胞は主に誘電泳動力、重力、電極からの静電気力によって微細孔に誘導されるとともに、重力、およびそれぞれの細胞からの静電気力によって細胞同士が接触し微細孔に固定される。なお、直径の大きい細胞Aの方が、直径の小さい細胞Bより先に固定されやすい。ここで細胞Aの数に特に制限はないが、細胞Aを有効に使用することを考慮すると、微細孔の数と同等であることが好ましい。次に、電源を直流パルス電源(6)に切り換え、細胞融合を行うための直流パルス電圧を印加することで、微細孔において接触した細胞Aと細胞Bを2細胞一対で細胞融合させ、融合細胞(32)を得ることができる。
微細孔では電気力線の集中が生じるため、微細孔付近の電界強度は、図13に示すように微細孔内の電極面の電界強度が最も高く、絶縁膜面からもう一方の電極に向けて次第に電界強度が弱くなる。図13は、一方の電極に任意の膜厚の絶縁膜に任意の直径と深さを有する微細孔を1個配置し、電極間に任意の電圧を印加した場合の電界強度を有限要素法を用いて計算したものである。縦軸が電界強度を最大の電界強度で正規化した値であり、横軸は電極間の位置である。横軸の原点に絶縁膜を配置した電極が存在している。絶縁膜面は図中の点線で示した位置に相当し、横軸の原点から点線までの範囲が絶縁膜厚に相当する。今回行った計算では、絶縁膜の材質や厚み、微細孔の大きさや深さにあまり大きく依存せず、図13に示すように微細孔表面の電界強度は、微細孔表面から離れるに従って小さくなる。
一般に電気的細胞融合法は、前述したように、細胞融合させるための直流パルス電圧を印加することで細胞膜の電気伝導度が瞬間的に低下し、脂質二重層から構成される細胞膜の可逆的乱れとその再構成が行われることで細胞融合させる。一般に細胞の直径が小さいほど細胞膜の可逆的乱れを生じさせる直流パルス電圧は高くなるこのため、直径の大きい細胞を細胞A、直径の小さい細胞を細胞Bとして細胞Aと細胞Bを好ましくは2対1の割合で混合した懸濁液を融合容器に導入し、前述した波形を有する交流電圧を印加して微細孔に細胞A、細胞Bの順に固定し、適切な電圧の直流パルス電圧を印加することで、細胞Aと細胞Bが1対1で融合した融合細胞を効率的に得ることが可能となる。また、図13に示すように、電界強度は微細孔の表面から離れるに従って次第に小さくなり一定になるために、細胞Aと細胞Bの細胞膜の接触面における電界強度は、微細孔の表面と比べ一定に近づく。このようにすることで、直径の異なる細胞Aと細胞Bを細胞融合させる場合、それぞれ細胞の大きさに幅がある場合でも、直流パルス電圧を適切に調整することで、一定の電界強度の下でより多くの細胞を効率的に細胞融合することが可能となるのである。逆に言えば、この目的のため、細胞の濃度(個数)は、細胞Aと細胞Bとが2対1となるように使用することが好ましく、また細胞Aを微細孔の数の2倍(細胞Bを微細孔の数と同等)とすることが好ましいのである。参考のために述べれば、微細孔の上に細胞Aが2個連続して固定された上に細胞Bが固定されたとしても、直流パルス電圧を印加すると、微細孔の表面に固定された細胞Aは、強い電界強度により細胞膜が破壊されて破裂し、その上に固定された細胞Aとそれに接触した細胞Bの細胞膜の接触面は微細孔の表面から更に離れるため、細胞Aと細胞Bの接触面における電界強度は、微細孔の表面と比べより一定に近づき、この両者の融合のみが実現できるのである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更が可能であることは言うまでもない。
図3に実施例1に用いた細胞融合装置の概念図を示す。細胞融合装置は大きく分けて、細胞融合容器(13)と電源(4)から構成される。細胞融合容器は、図3に示すように上部電極(14)と下部電極(15)の間に、スペーサー(16)を配置し、複数の微細孔をアレイ状に形成した絶縁体(8)をスペーサーと下部電極で挟んだ構造を有する。
上部電極と下部電極は、縦70mm×横40mm×厚さ1mmのパイレックス(登録商標)基板に、ITOを成膜(膜厚150nm)したものを用いた。スペーサーは、縦40mm×横40mm×厚さ1.5mmのシリコンシートの中央を縦20mm×横20mmにくりぬいた形状にして用いた。また、図3に示すように、細胞が含有した細胞懸濁液を導入、排出するための導入口(19)と排出口(20)を設けた。複数の微細孔を有する絶縁体(8)は、図14に示すフォトリソグラフィーとエッチングによる方法により、下部電極(15)と複数の微細孔をアレイ状に形成した絶縁体を一体形成した微細孔付き絶縁体一体型下部電極(28)を用いた。
まず、ITO(23)を成膜したパイレックス(登録商標)ガラス(24)のITO成膜面にレジスト(25)を2.5μmの膜厚になるようスピンコーターを用いて塗布し、45分自然乾燥後、ホットプレートを用いてプリベーク(80℃、15分)を行った。レジストにはキシレン系のネガタイプレジストを用いた。次に、縦30mm×横30mmのエリアに、微細孔と微細孔の縦と横の間隔が20μmで、縦1500個×横1500個のアレイ状に並べた直径φ8.5μmの微細孔パターンを描いた露光用フォトマスク(26)を用いて、UV露光機にてレジストを露光(27)し、現像液(29)で現像した。露光時間と現像時間は、微細孔の深さがレジストの膜厚と等しい5μmになるように調整し、微細孔の底面にITOが露出するようにした。現像後、ホットプレートを用いてポストベーク(115℃、30分)を行いレジストを固めた。このようにして作製した上部電極(14)、スペーサー(16)、微細孔付き絶縁体一体型下部電極(28)を図4のように積層し圧着した。図4は、図3に示した細胞融合容器のAA’断面図である。シリコンシートの表面は粘着性があり、圧着することで各部品は密着し、細胞を含有した細胞懸濁液を漏れなく細胞融合容器の中に入れることができた。スペーサーをくりぬいた面積が縦20mm×横20mmであることから、この空間に存在する微細孔の数は約100万個である。また、電極間に電圧を印加する電源は、交流電源として信号発生器(エヌエフ回路設計ブロック製、WF1966)、直流パルス電源として細胞融合用電源(ネッパジーン製、LF101)を導電線(3)を介して接続し、交流電源と直流パルス電源は切換スイッチにより電極への接続を切り換えられるようにした。
なおここで、微細孔付き絶縁体一体型下部電極(28)の微細孔の直径は、融合させる2種類の細胞のうち直径の大きい細胞の直径より小さいことを特徴とする。
BCP(Blue Carrier Immunogenic Protein)抗原で免疫したBCP免疫マウス脾臓細胞(φ5μm)とマウスミエローマ細胞(φ10μm)を用いた。なお、BCP抗原で免疫したマウス脾臓細胞の中には、BCP抗体産生細胞が存在する。BCP免疫マウス脾臓細胞とマウスミエローマ細胞を1:2で混合し、両方の細胞を300mMの濃度のマンニトール水溶液に懸濁させ、5.0×10個/mLの密度になるように細胞懸濁液を調整した。両細胞懸濁液には、細胞融合での細胞膜の再生を促進するために、0.1mMの塩化カルシウム、0.1mMの塩化マグネシウムを添加した。
まず、上記細胞懸濁液600μL(BCP免疫マウス脾臓細胞数:約100万個、マウスミエローマ細胞数:約200万個)をスペーサーの導入口よりシリンジを用いて注入し、交流電源により電圧20Vpp、周波数3MHzの矩形波交流電圧を電極間に印加したところ、2〜3秒程度の極めて短い時間でアレイ状に形成した複数の微細孔に、BCP免疫マウス脾臓細胞およびマウスミエローマ細胞を固定することができ、複数の細胞をアレイ状に配置させることができた。
次に、電源を直流パルス電源(ネッパジーン株式会社製、LF101)に切り換えて、電極間に電圧250V、パルス幅30μsの直流パルス電圧を印加し細胞融合を行い、そのまま10分静置したあと細胞融合容器内の細胞懸濁液をHAT培地(H:ヒポキサンチン(hypoxanthine)、A:アミノプテリン(aminopterine)、T:チミジン(thymidine)を成分とする培地)に入れ、融合細胞の培養を行った。なお、HAT培地は、融合細胞のみを選択的に増殖させる培地である。細胞懸濁液を入れたHAT培地をCOインキュベータに入れて細胞培養を行い6日後に融合細胞をカウントした結果、1000個の融合細胞を確認することができ、全BCP免疫マウス脾臓細胞100万個に対して10/10000の融合確率を得られた。ここで、融合確率とは、(融合細胞数)/(使用したBCP免疫マウス脾臓細胞数)のことを表す。また、得られた融合細胞を培養したHAT培地から上清を取り、酵素免疫分析法(ELISA)により、融合細胞のうちBCP抗体を産生する融合細胞数をカウントした結果、12個のBCP抗体産生融合細胞を確認する事ができ、注入した全BCP免疫マウス脾臓細胞の100万個に対して、12/1000000の抗体産生融合細胞獲得率を得られた。なお、ここで抗体産生融合細胞獲得率とは、(BCP抗体産生融合細胞数)/(使用したBCP免疫マウス脾臓細胞数)のことを表す。
これは、後述する比較例1に示した通常の電気的細胞融合における融合確率0.2/10000の50倍の融合確率および、通常の電気的細胞融合における抗体産生融合細胞獲得率0.19/1000000の63倍の抗体産生融合細胞獲得率であり、効率的な2細胞一対での細胞融合かつ、効率的な抗体産生細胞の取得を確認することができた。なお、比較例2に示した直径の異なる2種類の細胞を用いて、微細孔の上に細胞Aを固定した後、細胞Aのさらに上から細胞Bを固定して行った電気融合における抗体産生融合細胞獲得率3/1000000に対しても、4倍の抗体産生融合細胞獲得率であり、効率的な抗体産生細胞の取得を確認することができた。
また比較例3に示したBCP免疫マウス脾臓細胞とマウスミエローマ細胞を1:1で混合して、細胞融合領域に導入し、交流電圧を印加することにより微細孔に細胞を固定し、同様に細胞融合を行う方法における抗体産生融合細胞獲得率2/1000000に対しても、本方法は6倍の抗体産生融合細胞獲得率であり、効率的な抗体産生細胞の取得を確認することができた。
さらに、比較例4に示した微細孔を有しない並行電極で挟まれた細胞融合領域を有する細胞融合装置における電気融合における融合確率4.2/10000と抗体産生融合細胞獲得率8/1000000に対しても、本方法は融合確率、抗体産生融合細胞獲得率共に高い値を示しており、微細孔を設けた細胞融合装置を用いた本方法により、細胞をより有効に効率よく利用できる細胞融合が可能となった。
また、本実施例1で、直流パルス電圧を100V〜600Vの間で変化させた場合の、直径の異なる2種類の2つの細胞の接触面にかかる電界強度を横軸に、注入した全BCP免疫マウス脾臓細胞に対する抗体産生融合細胞獲得率を縦軸に表したグラフを図15に示す。これより、2.0×10〜5.0×10(V/m)の範囲で融合を行った場合、通常の電気的細胞融合における抗体産生融合細胞確率と比べ、40倍以上高い抗体産生融合細胞確率を得られた。

(比較例1)
比較のため、通常の電気的細胞融合を行った。電気的細胞融合を行う電極には、電極間1mmの金製のワイヤー電極(ネッパジーン株式会社製、MSゴールドワイヤー電極)を用い、この電極に細胞融合用電源(ネッパジーン製、LF101)を接続した。
細胞は、BCP免疫マウス脾臓細胞(φ5μm)とマウスミエローマ細胞(φ10μm)を用いた。マウス抗体産生細胞とマウスミエローマ細胞を4:1で混合し、両方の細胞を300mMの濃度のマンニトール水溶液に懸濁させ、5×10個/mLの密度になるように細胞懸濁液を調整した。両細胞懸濁液には、細胞融合での細胞膜の再生を促進するために、0.1mMの塩化カルシウム、0.1mMの塩化マグネシウムを添加した。
上記細胞懸濁液800μL(BCP免疫マウス脾臓細胞数:約3200万個、マウスミエローマ細胞数:約800万個)を電極間に注入し、細胞融合用電源を用いて、電圧20Vpp、周波数3MHzの正弦波交流電圧を電極間に印加し細胞パールチェーンの形成を確認後、細胞融合を行うため、電圧値200V、パルス幅30μsの直流パルス電圧を印加した。10分静置したあと細胞融合容器内の細胞懸濁液をHAT培地に入れた。細胞懸濁液を入れたHAT培地をCOインキュベータに入れて細胞培養を行い6日後に融合細胞をカウントした結果、640個の融合細胞を確認することができ、全マウス抗体産生細胞3200万個に対して0.2/10000の融合確率を得られた。また、得られた融合細胞を培養したHAT培地から上清を取り、酵素免疫分析法(ELISA)により、融合細胞のうちBCP抗体を産生する融合細胞数をカウントした結果、6個のBCP抗体産生融合細胞を確認する事ができ、全BCP免疫マウス脾臓細胞の3200万個に対して、0.19/1000000の抗体産生融合細胞獲得率を得られた。
(比較例2)
比較例のため、実施例1の細胞融合装置において、直径の異なる2種類の細胞を用いて、細胞Aの直径が細胞Bの直径よりも大きい場合、微細孔に細胞Aを固定した後、細胞Aのさらに上から細胞Bを固定して細胞融合を行った。
細胞は、BCP免疫マウス脾臓細胞(φ5μm)とマウスミエローマ細胞(φ10μm)を用いた。両方の細胞を300mMの濃度のマンニトール水溶液に懸濁させ、BCP免疫マウス脾臓細胞は1.7×10個/mLの密度になるように、マウスミエローマ細胞は3.4×10個/mLの密度になるように、それぞれ細胞懸濁液を調整した。両細胞懸濁液には、細胞融合での細胞膜の再生を促進するために、0.1mMの塩化カルシウム、0.1mMの塩化マグネシウムを添加した。
まず、上記マウスミエローマ細胞の細胞懸濁液600μL(マウスミエローマ細胞数:約200万個)をスペーサーの導入口よりシリンジを用いて注入し、交流電源により電圧20Vpp、周波数3MHzの矩形波交流電圧を電極間に印加したところ、2〜3秒程度の極めて短い時間でアレイ状に形成した複数の微細孔1つずつに1つのマウスミエローマ細胞を固定することができ、複数の細胞をアレイ状に配置させることができた。
続いて、交流電源により電圧20Vpp、周波数3MHzの矩形波交流電圧を電極間に印加したまま、上記BCP免疫マウス脾臓細胞の細胞懸濁液600μL(マウス抗体産生細胞数:約100万個)をスペーサーの導入口よりシリンジを用いて注入した。
次に、電源を直流パルス電源(ネッパジーン株式会社製、LF101)に切り換えて、電極間に電圧250V、パルス幅30μsの直流パルス電圧を印加し細胞融合を行い、そのまま10分静置したあと細胞融合容器内の細胞懸濁液をHAT培地に入れ、融合細胞の培養を行った。なお、HAT培地は、融合細胞のみを選択的に増殖させる培地である。細胞懸濁液を入れたHAT培地をCOインキュベータに入れて細胞培養を行い6日後に融合細胞をカウントした結果、800個の融合細胞を確認することができ、全BCP免疫マウス脾臓細胞100万個に対して8/10000の融合確率を得られた。また、得られた融合細胞を培養したHAT培地から上清を取り、酵素免疫分析法(ELISA)により、融合細胞のうちBCP抗体を産生する融合細胞数をカウントした結果、3個のBCP抗体産生融合細胞を確認する事ができ、全BCP免疫マウス脾臓細胞の100万個に対して、3/1000000の抗体産生融合細胞獲得率を得られた。

(比較例3)
比較例のため、実施例1の細胞融合装置において、BCP免疫マウス脾臓細胞とマウスミエローマ細胞を1:1で混合して、細胞融合領域に導入し、交流電圧を印加することにより微細孔に細胞を固定し、同様に細胞融合を行った。
細胞は、BCP免疫マウス脾臓細胞とマウスミエローマ細胞を1:1で混合して、両方の細胞を300mMの濃度のマンニトール水溶液に懸濁させ、3.4×10個/mLの密度になるように細胞懸濁液を調整した。
両細胞懸濁液には、細胞融合での細胞膜の再生を促進するために、0.1mMの塩化カルシウム、0.1mMの塩化マグネシウムを添加した。
まず、上記細胞懸濁液600μL(BCP免疫マウス脾臓細胞数:約100万個、マウスミエローマ細胞数:約100万個)をスペーサーの導入口よりシリンジを用いて注入し、交流電源により電圧20Vpp、周波数3MHzの矩形波交流電圧を電極間に印加したところ、2〜3秒程度の極めて短い時間でアレイ状に形成した複数の微細孔に、BCP免疫マウス脾臓細胞およびマウスミエローマ細胞を固定することができ、複数の細胞をアレイ状に配置させることができた。
次に、電源を直流パルス電源(ネッパジーン株式会社製、LF101)に切り換えて、電極間に電圧250V、パルス幅30μsの直流パルス電圧を印加し細胞融合を行い、そのまま10分静置したあと細胞融合容器内の細胞懸濁液をHAT培地に入れ、融合細胞の培養を行った。細胞懸濁液を入れたHAT培地をCOインキュベータに入れて細胞培養を行い6日後に融合細胞をカウントした結果、600個の融合細胞を確認することができ、全BCP免疫マウス脾臓細胞100万個に対して6/10000の融合確率を得られた。また、得られた融合細胞を培養したHAT培地から上清を取り、酵素免疫分析法(ELISA)により、融合細胞のうちBCP抗体を産生する融合細胞数をカウントした結果、2個のBCP抗体産生融合細胞を確認する事ができ、全BCP免疫マウス脾臓細胞の100万個に対して、2/1000000の抗体産生融合細胞獲得率を得られた。

(比較例4)
比較例のため、実施例1と同様の細胞融合装置において、微細孔を有しない並行電極で挟まれた細胞融合領域を有する細胞融合容器を用いて、BCP免疫マウス脾臓細胞とマウスミエローマ細胞を1:2で混合して、細胞融合領域に導入し、交流電圧を印加することによりパールチェーンを作り、同様に細胞融合を行った。
なお、ここでは、上部電極と下部電極は、共に、縦70mm×横40mm×厚さ1mmのパイレックス(登録商標)基板に、ITOを成膜(膜厚150nm)したものを用いた。
また細胞は、BCP免疫マウス脾臓細胞とマウスミエローマ細胞を1:2で混合して、両方の細胞を300mMの濃度のマンニトール水溶液に懸濁させ、5.0×10個/mLの密度になるように細胞懸濁液を調整した。
両細胞懸濁液には、細胞融合での細胞膜の再生を促進するために、0.1mMの塩化カルシウム、0.1mMの塩化マグネシウムを添加した。
まず、上記細胞懸濁液600μL(BCP免疫マウス脾臓細胞数:約100万個、マウスミエローマ細胞数:約200万個)をスペーサーの導入口よりシリンジを用いて注入し、交流電源により電圧20Vpp、周波数3MHzの矩形波交流電圧を電極間に印加したところ、2〜3秒程度の極めて短い時間で、BCP免疫マウス脾臓細胞およびマウスミエローマ細胞がパールチェーンを作り電極方向に連なって並んだ。
ここで、パールチェーンとは、細胞が数珠状に連なって並ぶ現象のことを表す。
次に、電源を直流パルス電源(ネッパジーン株式会社製、LF101)に切り換えて、電極間に電圧250V、パルス幅30μsの直流パルス電圧を印加し細胞融合を行い、そのまま10分静置したあと細胞融合容器内の細胞懸濁液をHAT培地に入れ、融合細胞の培養を行った。細胞懸濁液を入れたHAT培地をCOインキュベータに入れて細胞培養を行い6日後に融合細胞をカウントした結果、420個の融合細胞を確認することができ、全BCP免疫マウス脾臓細胞100万個に対して4.2/10000の融合確率を得られた。また、得られた融合細胞を培養したHAT培地から上清を取り、酵素免疫分析法(ELISA)により、融合細胞のうちBCP抗体を産生する融合細胞数をカウントした結果、8個のBCP抗体産生融合細胞を確認する事ができ、全BCP免疫マウス脾臓細胞の100万個に対して、8/1000000の抗体産生融合細胞獲得率を得られた。

Claims (4)

  1. 直径の異なる2種類の細胞の融合方法であって、
    1)融合させる細胞のうち直径の大きい細胞の直径より小さい微細孔を有する融合容器に前記2種類の細胞の混合懸濁液を導入し、
    2)交流電圧を印加して導入した細胞を微細孔に誘導し、
    3)前記微細孔内に前記細胞を固定、かつ/または、当該細胞と接した状態で前記細胞を固定し、
    4)交流電圧に代えて、直流パルス電圧を印加して接している直径の小さい細胞と直径の大きい細胞とを融合する、
    ことを特徴とする、細胞融合方法。
  2. 細胞融合領域内に直径の異なる2種類の細胞を導入し、微細孔の位置において前記細胞を接触させ、直径の異なる2種類の2つの細胞の接触面にかかる電界強度が、1.0×E〜7.0×E(V/m)の範囲で融合することを特徴とする請求項1に記載の細胞融合方法。
  3. 前記微細孔は、その深さが前記直径の大きい細胞の直径の1/2以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の細胞融合方法。
  4. 前記直径の大きい細胞を微細孔数の2倍以上、前記直径の小さい細胞を微細孔数と同等で混合して細胞容器に導入することを特徴とする、請求項1乃至3項のいずれかに記載の細胞融合方法。
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