JP2013121711A - 記録装置、および記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 溶媒吸収性の低い記録媒体においても、光沢性の低下や滲みを低減し、発色性を向上した高品位な画像を得られるような記録装置、および記録方法を提供する。
【解決手段】 親水性の溶媒成分を多く含むインクを付与してから自己分散型のインクを付与するように記録を行う。
【選択図】 図1

Description

本発明は、インクを吐出して記録媒体上に画像を形成する記録装置、および記録方法に関するものである。
記録ヘッドから微小なインク滴を吐出して記録媒体に画像を形成するインクジェット記録装置は、高密度かつ高速な記録が可能であり、種々の記録媒体に容易に記録を行うことができることから写真やポスターなどの高精細な画像形成用途へも用いられている。インクジェット記録装置に用いられるインクは、水や水系溶媒を主成分とする水系インクが主流である。この水系インクを用いて高精細な画像形成を行うためには、水系溶媒の吸収性に優れたインクジェット専用紙が用いられる。しかし、近年、オフセット印刷等で用いられる印刷塗工紙などの溶媒吸収性の低い記録媒体や、塩ビなどのプラスチックフィルムやガラス板などの溶媒吸収性が非常に低い非吸収性記録媒体に対しても水系インクを用いた画像形成の要望が高まっている。市場流通量の多い印刷塗工紙を用いることでインクジェット専用紙を用いるより印刷コストを低減できる。
インクジェット記録装置に用いられる水系インクは、色材の種類により染料インクと顔料インクに分けられる。水系インクの色材以外の成分としては、水を主成分とし、乾燥や目詰まり防止等の目的で水系有機溶剤や、機能性樹脂や界面活性剤などの添加剤が含まれている。一般的に顔料インクは、耐水性や耐候性などの画像堅牢性において染料インクに比べて優れているため、長期間の保存を必要とする写真やポスターなどの印刷物に適している。
乾燥等の追加定着手段のないインクジェット記録装置を用いて、水系顔料インクにより印刷塗工紙に発色性に優れた高精細な画像形成を行うことは難しい。その理由としては、印刷塗工紙の溶媒吸収性能が低いために、記録媒体に付与されたインク滴の定着が遅く、インク付与量が増加すると隣り合うインク滴同士が混ざり合ってしまうためである。その結果、異なるインクが隣接する境界部においてインク滴が滲んで混ざるブリードが生じたり、同一のインク滴が混ざって着弾位置がずれることでベタ領域の濃度が不均一になる濃度むら(ビーディング)が生じることで、画像品位が低下してしまう。
また、顔料インクを用いて記録を行うと、インク内の溶媒成分は記録媒体内に浸透したり、蒸発したりするものの、顔料は記録媒体上に残るため光沢性が低くなってしまうことが知られている。印刷塗工紙のような溶媒吸収性の低い記録媒体には、光沢性が比較的高くはないものの光沢系メディアと分類されるものがある。この光沢系メディアに対して顔料インクを付与すると、光沢性が比較的高くはない光沢系メディアよりもさらに光沢性が低くなってしまう問題がある。記録媒体に対してインクの付与される領域と付与されない領域とで、光沢性に差があると光沢むらが生じてしまい、画像品位が低下してしまう。
このような光沢の低下を抑制する技術として、特許文献1のようなインクの重ね順で記録を行う方法が挙げられる。特許文献1には、多次色画像を記録する時の重ね順が最後となるインクが、色材濃度が最も高いインクとは異なる他のインク、または、光沢度が最も低いインクとは異なる他のインクとなるように光沢を考慮したインクの重ね順で記録を行う技術が記載されている。このようなインクの重ね順で記録を行うことで、混色用インクのうちの光沢度が最も低いインクが後から重ねられることを抑制することができるので、効果的に、再現された色の光沢の低下を抑制することができることが記載されている。
特開2005−193463号公報
しかしながら、本発明者らの検討によれば、溶媒吸収性の低い記録媒体に対して特許文献1に記載の方法で記録を行っても光沢性の低下が十分に抑制されないことがわかった。これは、溶媒吸収性の低い記録媒体に対して記録を行ったときにブリードやビーディングが比較的良好になるような処方のインクを用いているためと考えられる。このような処方のインクを用いて記録を行うと、特に光沢性が低くなる傾向にある。
本発明では、特に溶媒吸収性の低い記録媒体においても、光沢性の低下や滲みを低減し、発色性を向上した高品位な画像を得られるような記録装置、および記録方法を提供することを目的とする。
本発明は、インクを吐出する複数のノズルを所定方向に配列したノズル列を前記所定方向と交差する方向に複数配列した記録ヘッドから複数のインクを吐出して記録媒体に画像を記録する記録装置において、前記記録ヘッドを走査する走査手段と、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、前記複数のインクのうち、少なくともひとつは親水性の溶媒成分が相対的に少なく自己分散型の色材を含むインクであり、他の少なくともひとつは親水性の溶媒成分が相対的に多く樹脂分散型の色材を含むインクであって、前記複数のインクを吐出する吐出手段と、を有し、前記吐出手段は、記録媒体の所定領域に対して複数回の記録走査で画像を完成させるときに、前記親水性の溶媒成分が相対的に多い樹脂分散型のインクを記録媒体に付与してから前記親水性の溶媒成分が相対的に少ない自己分散型のインクを付与するように、前記複数のインクを吐出することを特徴とする。
また、本発明は、少なくともひとつは親水性の溶媒成分が相対的に少なく自己分散型の色材を含むインクであり、他の少なくともひとつは親水性の溶媒成分が相対的に多く樹脂分散型の色材を含むインクである複数のインクを記録ヘッドから吐出させて記録媒体に画像を形成する記録方法において、前記記録ヘッドの複数回の記録走査で画像を完成させるべく、画像データを各記録走査に振り分ける振り分け工程と、振り分けられたデータに基づいて、前記複数のインクを吐出する吐出工程と、を備え、前記吐工程は、前記親水性の溶媒成分が相対的に多い樹脂分散型のインクを記録媒体に付与してから前記親水性の溶媒成分が相対的に少ない自己分散型のインクを付与するように、前記複数のインクを吐出することを特徴とする。
本発明によると、親水性の溶媒成分を多く含むインクを付与してから自己分散型のインクを付与するので、自己分散型のインクの色材成分の分散安定性を高めることができ、光沢性の低下を低減することができる。さらに、自己分散型のインクを用いることで滲みの低減や発色性の向上した高品位な画像を得ることができる。
インクジェット記録装置の要部を示した斜視図である。 記録システムの構成を示すブロック図である。 2種類のインクを用いて階調パッチを記録したときの光沢度の推移を示す。 記録時のフローチャートを示す。 画像データの振り分けに用いる振り分けマスクである。
以下、図を参照して本発明の実施形態について詳細な説明を行う。
(第一の実施形態)
図1は、本実施形態のインクジェット記録装置の要部を示した斜視図である。
記録ヘッド5は、配列された複数の吐出口から記録媒体1に対してインクを吐出することにより画像を記録する。記録ヘッド5は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のカラーインクをそれぞれ吐出する4つの記録ヘッド5K、5C、5M、5Yを有する。記録ヘッド5K、5C、5M、5Yには、それぞれ1200dpiの密度で1280個の吐出口(ノズルとも称する)が所定方向に配列された吐出口列(ノズル列)が複数配されており、各吐出口から1度に吐出されるインク量は約4ngである。
また、インクタンク6は、記録ヘッド5K、5C、5M、5Yのそれぞれに対応するインクを供給するためのインクを貯蔵し、4つのインクタンク6K、6C、6M、6Yを有している。この記録ヘッドとインクタンクは、一体的または分離可能にヘッドカートリッジを構成し、そのヘッドカートリッジが不図示のキャリッジに着脱可能に搭載される。記録ヘッドとインクタンクは、ヘッドカートリッジを構成せずに、別々にキャリッジに搭載されるものであってもよい。記録ヘッドを搭載したキャリッジは、ベルト4を介してキャリッジモーター2により所定方向(主走査方向、図中矢印X方向)にシャフト8に沿って往復移動する。また、記録媒体1は、搬送ローラ3によって、主走査方向と交差(本例の場合は、直交)する副走査方向(図中矢印Y方向)に搬送される。インクジェット記録装置は、キャリッジを移動しながら記録ヘッド5からインクを吐出する記録走査と、記録媒体1の搬送動作とを繰り返して、記録媒体1に画像を形成する。
キャップ7は、4つの記録ヘッド夫々の吐出口が形成された吐出口面をキャップするもので、4つのキャップ7K、7C、7M、7Yを有する。記録ヘッド5およびインクタンク6を搭載したキャリッジは、記録を行わないときには、キャップ7のあるホームポジションに戻る。また、キャリッジがホームポジションで待機してから一定時間に達した場合には、記録ヘッド5の吐出口面が乾燥したり、吐出口からインクが蒸発したりしないよう、記録ヘッド5の吐出口面にキャップ7を当接するキャッピング動作を行う。
なお、これらの記録ヘッドやインクタンクを個別的に言及する場合には、夫々に付された参照番号を用いるが、包括的に言及する場合には総称的な参照番号として、記録ヘッドには「5」、インクタンクには「6」、キャップには「7」を用いる。
図2は、本実施形態の記録システムの構成を示すブロック図である。
図2の記録システムは、ホスト装置100とインクジェット記録装置200とを含むシステムである。ホスト装置100は、情報処理装置としての機能を有するパーソナルコンピュータやデジタルカメラなどを用いることができ、インクジェット記録装置(プリンタ)200に接続される装置である。このホスト装置100は、CPU10、メモリ11、外部記憶部13、キーボードやマウス等の入力部12、プリンタ200との通信を行うためのインターフェイス14を備えている。ユーザーは、メモリ11に格納されているプログラム(アプリケーション)を実行してインクジェット記録装置200から出力する画像データを作成することが可能である。CPU10は、メモリ11に格納されたプログラムに従って、種々の処理を実行するものであり、ユーザーにより作成されたり撮影された画像データに対して色処理や量子化処理等の画像処理などを実行する。画像処理を施された記録データは、インターフェイスを介して接続されているインクジェット記録装置200に送信される。
また、インクジェット記録装置200は、マイクロプロセッサ等のCPU20a、CPU20aのワークエリアとして使用されると共に記録データやレジ調整値などの各種データの保管等を行うRAM20bを備える制御部20を有している。制御部20は、CPU20aの制御プログラムや各種データを格納しているROM20cも備えている。さらに、インクジェット記録装置200は、インターフェイス21、操作パネル22、ドライバ27、28を備えている。ドライバ27は、キャリッジ駆動用のモータ23、給紙ローラ駆動用のモータ24、第1搬送ローラ対駆動用のモータ25、第2搬送ローラ対駆動用のモータ26それぞれのモータを駆動制御し、ドライバ28は記録ヘッド5を駆動制御する。ホスト装置100から送信され、インクジェット記録装置200のインターフェイス21を介して受信した記録データは、制御部20のRAM20bに格納される。RAM20bに格納された記録データにしたがって、制御部20は、各モータ23〜26を駆動させるためのON、OFF信号をドライバ27に、吐出信号等をドライバ28にそれぞれ出力し、記録媒体に画像を形成する。
次に、本実施形態において適用可能なインクについて説明する。なお、以下の記載において、部、%とあるものは特に断わらない限り質量基準である。又、残部とあるのは、インクの全量が100部となるように、イオン交換水で調整したことを意味する。
[各色インクの調製]
先ず、下記に述べるようにして、夫々顔料を含むブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの各色インクを調製した。
(インクBkの調製)
<顔料分散液の作製>
まず、酸性カーボンブラック(MA−77;三菱化学製、pH3のもの)を用いて、次亜塩素酸ソーダを用いた通常の液相酸化処理を行う。反応時間および反応温度を適宜調整することによって反応を行い、得られたスラリーをろ過し、顔料粒子を十分に水洗することで、顔料ウェットケーキが得られる。次に、この顔料ウェットケーキを水に再分散させて、電導度が0.2μsになるまで逆浸透膜で脱塩する。さらに、この顔料分散液(pH=8.5)を顔料濃度が10%になるように濃縮して、自己分散型カーボンブラックが水中に分散された状態の顔料分散液を得た。
上記方法で得られた顔料分散液を使用し、下記組成比を有する成分を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのメンブレンフィルタにて加圧ろ過して顔料を含有するインクを作製してインクとした。このときの表面張力は19mN/mであった。
・上記顔料分散液 30.0部
・グリセリン 7.0部
・ポリエチレングリコール1000(分子量1000) 1.5部
・ゾニールFSO−100(デュポン製フッ素系界面活性剤) 0.5部
・アクリルシリコーン共重合体(サイマックUS−450;東亞合成製) 5.0部
・イオン交換水 残部
顔料インクで記録された画像は、物が触れたり擦れたりすることで記録媒体上の顔料成分が剥がれたり、移動することで画像に傷がついたり、触れたものに対して顔料成分が付着してしまうことがある。このような物が触れたり擦れたりすることで画像品位が低下しやすいことを、堅牢性が悪い、または擦過性が低いという。このような擦過性の低いインクに対して、樹脂を含有させることで擦過性が向上することが知られている。上述のインクBkのような自己分散型のBkは、特に擦過性が低いインクであるので、本実施形態においては、市販のポリジメチルシロキサン成分を共重合した透明樹脂であるアクリルシリコーン共重合体を含有している。このポリジメチルシロキサン成分を共重合した樹脂を用いると、記録媒体上の画像に対して爪などにより外力が加わっても、滑り性が生じ動摩擦係数を効率的に下げることが可能となる。そのため、画像に傷が付きにくくなり、擦過性を向上させることができる。なお、擦過性を向上させるための樹脂としては、ポリジメチルシロキサン成分を共重合した透明樹脂に限らず、記録された画像の擦過性が向上するような樹脂であれば他の樹脂を用いても良い。
(インクCの調製)
<顔料分散液の作製>
・スチレン−アクリル酸共重合体(酸価=210、重量平均分子量=9,000) 1.5部
・モノエタノールアミン 1.0部
・ジエチレングリコール 5.0部
・イオン交換水 78.5部
上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させる。この溶液に新たに試作されたピグメントブルー15を10部、エチレングリコール4部を加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
・分散機:サンドグラインダー(五十嵐機械製)
・粉砕メディア:ジルコニウムビーズ、1mm径
・粉砕メディアの充填率:50%(体積比)
・粉砕時間:3時間
更に、遠心分離処理(12,000rpm、20分間)を行い、粗大粒子を除去して顔料分散液とした。
上記方法で得られた顔料分散液を使用し、下記組成比を有する成分を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのメンブレンフィルタにて加圧ろ過して顔料を含有するインクを作製してインクとした。このときの表面張力は22mN/mであった。
・上記顔料分散液 30.0部
・グリセリン 15.0部
・ポリエチレングリコール1000(分子量1000) 1.5部
・ゾニールFSO−100(デュポン製フッ素系界面活性剤) 0.5部
・イオン交換水 残部
(インクMの調製)
インクCの調製の際に使用したピグメントブルー15をピグメントレッド7に代えたこと以外は、インクCの調製と同様にして顔料を含有したインクMを調製した。このときの表面張力は22mN/mであった。
(インクYの調製)
インクCの調製の際に使用したピグメントブルー15をピグメントイエロー74に代えたこと以外は、インクCの調製と同様にして顔料を含有したインクYを調製した。このときの表面張力は21mN/mであった。
(その他の成分)
上記の顔料色材以外に、インクのインクジェット適性を発現するために、各種の水系有機溶媒が用いられることもある。水系有機溶剤の具体例を以下に示す。
メタノール、エタノール、プロパノール、プロパンジオール、ブタノール、ブタンジオール、ペンタノール、ペンタンジオール、ヘキサノール、ヘキサンジオールなどの炭素数1乃至6のアルキルアルコール類。エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールなどの炭素数2乃至6のアルキレン基を持つアルキレングリコール類。グリセリン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類。N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなど。尿素や尿素誘導体など。エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類。ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの低級アルキルエーテルアセテート。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類。アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類。
上記の水系有機溶媒のインク中に含まれる含有量は、インク全量を基準として3重量%から50重量%含まれる。上記の水系有機溶媒のなかで、多価アルコール類などの高沸点溶媒の含有量が少なくなると、インクの乾燥による固着性が高まり、インクジェット記録ヘッドのノズル内で詰り等の問題が生じ安定的に使用することが難しくなる。また、水系有機溶媒の量が多くなると、インク粘度が上昇し、ノズルからの吐出障害が生じるほか、記録画像の乾燥が遅く印字物のハンドリング性が悪くなる、などの問題が発生する。使用する水系有機溶剤は、これらの諸特性を勘案し、適宜選定されなければならない。
上記の水系有機溶媒と共に、その他の成分として、インク中には界面活性剤、水系樹脂、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤及び蒸発促進剤などの種々の添加剤が必要に応じて含まれる。この中で、界面活性剤は、インクの表面張力に大きく影響するため、本発明で課題としている吸収性の低い記録媒体に用いるインクとしては、重要な材料成分となる。表面張力の高いインクは、記録媒体の表面で拡がり難いため、吸収性能の低い記録媒体ではインクの溢れがより顕著に発生する。印刷塗工紙等の吸収性能の低い記録媒体に用いるインクとして、表面張力が35(mN/m)以上となると、溢れにより画像形成は極めて困難である。本発明で用いるインクの好ましい表面張力としては,30(mN/m)以下、より好ましくは25(mN/m)以下のインクである。
使用される界面活性剤としては、アニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、両性型界面活性剤、ノニオン型界面活性剤等を用いることができる。ただし、顔料インクの分散破壊や増粘等の安定性の問題から、顔料インクのイオン性に合わせて用いることが重要である。
具体的には、アセチレングリコール系界面活性剤などの炭化水素系界面活性剤、ポリエーテル変性ジメチルシロキサンなどのシリコーン系界面活性剤、ポリエーテル変性フルオロアルキルなどのフッ素系界面活性剤などが用いられる。表面張力を25(mN/m)以下に調整するためには、なかでもシリコーン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤が好適である。
ここで、吸収性能の低い記録媒体として、印刷塗工紙について説明する。印刷塗工紙は、パルプを主体とする原紙の表面に、印字物の表面性や印刷インキの定着性能を高めるための、数〜数十ミクロンの表面塗工層が形成されている。表面塗工層は、主に、炭酸カルシウムやカオリンなどの無機顔料と、これらの結着させるための樹脂バインダー成分からなる。炭酸カルシウムやカオリンなどの無機粒子は、細孔を有するため溶媒成分を吸収する性質を有するが、インクジェット用紙に用いられるインク受容層に比べて、使用される無機粒子の細孔容積が小さいために、溶媒の吸収性能は十分でない。その結果、インクジェット用の記録媒体に対して記録するのと同じように溶媒成分の多いインクジェット用インクを記録媒体に付与すると、記録媒体に吸収されない溶媒によって記録媒体表面でインクが溢れてしまい、画像に濃度むらが生じてしまう。
記録媒体に対するインクの吸収特性を評価する方法として、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.51の『紙及び板紙の液体吸収性試験方法』に記載されたブリストー法がある。多くの市販図書に説明があるため詳細な説明は省略するが、概要は次の通りである。
一定量のインクを所定の大きさの開口スリットを有する保持容器に注入し、スリットを介して、短冊状に加工し円盤に巻きつけられた記録媒体と接触させ、保持容器の位置を固定したまま、円盤を回転させ記録媒体に転移するインク帯の面積(長さ)を測定する。インク帯の面積から単位面積辺りの転移量(ml/m)を算出することができ、この転移量(ml/m)は所定時間に記録媒体に吸収されたインク容量を示す。ここで所定時間は、転移時間として定義される。転移時間(ミリ秒^1/)は、スリットと記録媒体の接触時間に相当し、円盤の速度と開口スリットの幅から換算される。
一般的な印刷塗工紙について、ブリストー法により水系インクに対する転移量を測定した所、転移時間1秒における転移量は20ml/mより小さく、本発明の記録方法はこのような溶媒吸収特性の低い記録媒体に対して好適であると考えられる。但し、インクジェット用紙では転移量は30ml/m以上を示すものが多いが、転移量の低いインクジェット用紙や、転移量の低い一般的な記録媒体に対しても本発明は効果的に用いることができると考えられる。
図3に、2種類のインクを用いて印字方法を変えて印字した時の光沢度の推移を示す。光沢度は、各パッチの表面光沢度(20度反射)を光沢度計(製品名:マイクロヘイズプラス;BYKガードナー製)で測定した。
上述のBkのような自己分散型のインクは、色材である顔料の分散のために樹脂成分を用いない。一方上述のCMYのようなインクは、色材である顔料の分散のために、樹脂成分(スチレン−アクリル酸共重合体)を含んでいる。このようなインクのことを樹脂分散型のインクと称する。自己分散型のインクは、樹脂分散型のインクと比較して色材成分の分散安定性が低い傾向にある。インクタンク内に存在している自己分散型インクは安定した状態にあるので色材は分散した状態にあるが、記録媒体上に着弾したインクはインク中の溶剤成分が浸透したり揮発したりすることで色材の分散安定性が不安定な状態になり、色材成分が凝集しやすくなる。そのため、記録媒体上で色材成分が大きな塊となって凝集してしまうと、光沢性が低下してしまう。なお、自己分散型のインクのように顔料の分散安定性が低く、比較的凝集性の高いインクを用いた場合には、着弾したインク滴が記録媒体上で素早く色材成分が凝集するので、発色性やブリードが向上するという利点もある。これは2種類の自己分散型のインクを用いた場合だけなく、自己分散型のインクとそうではないインクとを用いた場合でも、隣接する領域において隣り合うインク滴同士が混ざり合う現象が低減されることも分かった。
そこで、本発明では、自己分散型インクを用いたときの記録媒体上での凝集性を制御することで、発色性やブリードを向上させながら、光沢性が低下することを低減できるような記録装置、およびその方法を提供している。
図3(a)は、上述の自己分散型インクBkと、自己分散型インクの凝集性を緩和するような溶剤を含有するクリアインクとを用いて階調パッチを印刷塗工紙に対して印字したときの、各パッチの光沢度を測定したものである。
自己分散型インクの凝集性を緩和するような溶剤としては、親水性の溶媒が考えられる。具体的には、グリセリン、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、N−メチル−2−ピロリドン、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどがあげられる。
図3(a)では、親水性の溶媒として、トリエチレングリコールを含むクリアインクを次のように作製した。
・トリエチレングリコール 15.0部
・ゾニールFSO−100(デュポン製フッ素系界面活性剤) 0.3部
・アセチレングリコールEO付加物 1.0部
・イオン交換水 残部
図3(a)では、上述のBkインクのみを用いて、記録dutyを異ならせて印刷塗工紙に対して階調パッチを印字したものの光沢変化を示している。さらに、上述のBkインクとクリアインクとを用い、Bkインクは記録dutyを異ならせ、各パッチに一律40%の記録dutyでクリアインクを付与させるように印刷塗工紙に対して階調パッチを印字したものの光沢変化を示している。Bkインクとクリアインクを用いた印字に関して、Bkインクとクリアインクそれぞれの記録パス数は8パスで同じだが、両インクを印刷塗工紙に同時に付与したり、順次付与するように記録方法を異ならせている。
図3(a)より、自己分散型インクの凝集性を緩和するようなクリアインクであっても、印字の仕方によって、光沢性に違いがあることがわかる。クリアインクを8パスで印字してから、Bkインクを8パスで印字するもの方法が一番光沢性の高い画像を得ることができることが分かる。この印字方法を行うことで、Bkインクのみで記録を行うよりも、光沢性の高い画像を得ることができる。なお、このクリアインクを先に付与し、Bkインクを後から付与する印字方法では、大抵のBkインクの記録dutyにおいて印刷塗工紙の紙白部よりも高い光沢性が得られたので、記録した画像の光沢むらを低減させることもできる。
図3(b)に、自己分散型インクの凝集性を緩和するようなクリアインクの代わりに上述のMインクを用いて、図3(a)と同様に印字方法で画像の光沢性について確認した結果を示す。図3(a)のクリアインクと同様に、Mインクには親水性の溶媒としてグリセリンを多く含むインクとなっている。
図3(a)と同様に、図3(b)においても印字方法によって光沢性に違いがあり、親水性の溶媒を相対的に多く含むMインクを先に印字してからBkインクを後から印字する方法が一番光沢性の高い画像を得ることができることが分かる。さらに、このMインクを先に付与してからBkインクを後から付与する印字方法においても、大抵のBkインクの記録dutyにおいて印刷塗工紙の紙白部よりも高い光沢性が得られたので、記録した画像の光沢むらを低減させることもできることも分かった。
このように、自己分散型インクの色材成分の凝集性を緩和させる、分散安定性をより安定化させる溶媒として、親水性の溶媒を多く含むインクを、自己分散型インクよりも先に付与することで、自己分散型インクの凝集性を緩和させることができる。その結果、光沢性の低下を低減することが可能となる。親水性の溶媒を多く含むインクを先に付与することで後から付与される自己分散型インクの凝集性が緩和される理由としては、次のように考えている。先に付与された親水性の溶媒を多く含むインクは記録媒体上で水分や溶媒成分が浸透するものの、親水性の溶媒成分が記録媒体上にとどまり、後から付与される自己分散型インクの色材の分散安定性を高めているのだと思われる。したがって、溶媒成分の吸収性能の高い記録媒体(例えば、インクの受容層を設けた光沢紙のような記録媒体)よりも、印刷塗工紙のような溶媒成分の吸収性能の低い記録媒体の方が、本発明の効果は高い傾向がある。
なお、親水性の溶媒成分を多く含む上述のCインクやYインクにおいても、親水性の溶媒成分を多く含むインクを先に付与してから自己分散インクであるBkインクを付与したところ、図3(b)と同様に光沢性の高い画像を得ることができた。
したがって、本実施形態においては、同一の画素に対してBkインクと他の色のインクが付与される場合には、先に他の色のインクを付与してから、Bkインクを後から付与する印字方法を採用する。
図4に、記録時のフローチャートを示す。
ホスト装置100のプログラム(アプリケーション)からユーザーが画像データの記録指示を出すと、ホスト装置100のメモリ11にインストールされているプリンタドライバは、画像データを取得する(S401)。この画像データとしては、ユーザーがホスト装置100のプログラム(アプリケーション)を利用して作成あるいは取得したデータや、ネットワーク経由で表示されるWeb画面や、デジタルカメラなどの外部機器により撮影あるいは取得した画像データがある。
次に、画像データがRGB色空間で生成されているRGB多値データある場合には、記録に用いるインクに対応するCMYK2値データへ変換する画像処理が行われる(S402)。具体的には、RGB多値データを記録に用いるインクに対応するCMYK多値データに変換する。次に、ホスト装置100のメモリ11に格納されている2値化パターンにしたがって、それぞれのインクに対応するCMYK多値データをそれぞれCMYK2値データに変換してビットマップデータに展開する(S403)。
次に、S403で生成されたCMYK2値データ、つまりCMYKのインクの付与データを、記録ヘッドによる複数回の記録が行えるように振り分けるためのマスクを選択する(S404〜S406)。S404では、記録装置に用いられるインクのうち、自己分散型インクであるか、親水性の溶媒成分を多く含むインクであるかを判断する。本実施形態においては、自己分散型インクはBkのみで、親水性の溶媒成分を多く含むインクは他のCMYインクなので、S404ではBkインクか否かを判断している。S405では、自己分散型のインクが、複数の記録走査のうち比較的後の走査でインクが付与されるように、振り分けマスク(b)を選択する。また、S406では、親水性の溶媒成分を多く含むインクが、複数の記録走査のうち比較的先の走査でインクが付与されるように、振り分けマスク(a)を選択する。振り分けマスクについては、後述する。
次に、S403で生成されたCMYKのそれぞれのインクに対応する付与データを、S405、S406で選択された振り分けマスクを用いて、マスク処理をして複数回のそれぞれの記録走査で付与するインクのデータを生成する(S407)。
次に、インクジェット記録装置200は、S407で生成された記録データをホスト装置100から受信し、この記録データに従って記録媒体に画像の形成を行う(S408)。
図5に、画像データの振り分けに用いる振り分けマスクを示す。
図5は、ホスト装置100のメモリ11に格納されている画像データの振り分けに用いられるマスクであり、それぞれの記録走査で付与するデータを決定するものである。
図5(a)は、図4のS406で親水性の溶媒成分を多く含むインクに対して選択されるマスクである。図5(a)は、4×4ドットの画素群に対して、5回の記録走査で画像を完成するようデータを振り分けるマスクである。5つの4×4ドットの画素群の上から、1回目の記録走査のための記録データを生成するためのマスク、2回目の記録走査のための記録データを生成するためのマスク、・・・5回目の記録走査のための記録データを生成するためのマスクを並べたものである。黒塗りの画素はインクが吐出されることを示しており、5つの4×4ドットの画素群を足すと全ての画素が1度だけインクが吐出されるよう、互いに補完関係にあるように設定されている。CMYK2値データの一部(4×4ドットの大きさ)と各記録走査(各パス)に対応するマスクとの論理積(AND)処理を行うことで、各記録走査でインクを付与するための記録データを生成することができる。図5(a)の振り分けマスクを用いると、先の1パス〜3パスの間にインクを付与することで画像が完成させ、後の4パス、5パスではインクの付与がなされない。つまり、図5(a)の振り分けマスクは、全記録走査のうち、比較的先の記録走査においてインクが付与されるように、画像データを各記録走査に振り分けるマスクである。
図5(b)は、図4のS405で自己分散型のインクに対して選択されるマスクである。図5(b)は、図5(a)と同様に、4×4ドットの画素群に対して、5回の記録走査で画像を完成するようデータを振り分けるマスクである。図5(b)の振り分けマスクを用いると、先の1パス、2パスではインクの付与がなされず、後の3パス〜5パスの間にインクを付与することで画像が完成させる。つまり、図5(b)の振り分けマスクは、全記録走査のうち、比較的後の記録走査においてインクが付与されるように、画像データを各記録走査に振り分けるマスクである。
このように、図5のマスクを用いて画像データを振り分けることで、記録媒体に対してインクを付与する際に、親水性の溶媒成分の多いインクは比較的先の記録走査でインクの付与がなされ、自己分散型のインクは比較的後の記録走査でインクの付与がなされる。その結果、後から付与される自己分散型のインク中の色材成分の凝集性を緩和することができ、光沢むらを低減することができる。さらに、Bkインクに自己分散型のインクを用いているので、記録媒体上での発色性が向上し、ブリード(滲み)の低減した高品位な画像を得ることもできる。
なお、上述の図4では、インクの付与データ全てを選択された振り分けマスクにより各記録走査にデータを振り分けているが、自己分散型のインクと親水性の溶媒成分を多く含むインクとが同一の画素に付与されるときにだけ、図5の振り分けマスクを用いてもよい。このとき、自己分散型のインクと親水性の溶媒成分を多く含むインクの付与データの論理積処理を行うことで、同一の画素に付与されるデータを抜き出すことができる。この画素を振り分けるときに図5(a)、(b)のマスクを選択的に用い、他の画素に関しては通常の振り分けマスク、たとえば、複数回の記録走査に均等にデータが振り分けられるような振り分けマスクを用いてもよい。同一の画素に付与される画素として、1インク滴を最小単位とする画素毎に処理をしてもよく、また10滴程度の複数滴のインクにより形成される領域を最小単位とする画素群毎に処理をしてもよい。このように、図5の振り分けマスクの使用の割合を低減させて、通常の振り分けマスクの使用の割合を増加させることで、記録ヘッドのノズル全体を平均的に使用することができ、記録ヘッドの寿命を延ばすことが可能となる。
また、本実施形態の記録方法を、記録dutyの高い領域に対してのみ適用するようにしてもよい。例えば、印刷塗工紙に記録を行う場合に、記録媒体の所定領域ごとのインクの付与総量をカウントして、所定領域における記録dutyが100%を超える領域には本実施形態の記録方法を行うように制御することで実現可能である。これは、図3(a)のBkインクのみの光沢性を見ると分かるが、自己分散型のインクの記録dutyが高くなればなるほど、光沢性が低くなっている。そのため、光沢性が低下しやすい高duty部にのみ、本実施形態を適用するのである。この場合、低duty部では、通常の振り分けマスクを用いることで記録ヘッドの寿命を延ばすことが可能となる。なお、このときの所定領域としては、数ドットからなる複数の画素群とするのが良いと思われる。
また、本実施形態の記録方法を、記録媒体が溶媒吸収性の低い印刷塗工紙のような媒体のときにだけ適用するようにしてもよい。例えば、ユーザーがプリンタドライバ上で選択した記録媒体の種類が、溶媒吸収性の低い記録媒体であるときに、本実施形態の記録方法を行うように制御することで実現可能である。
また、図5の振り分けマスクでは、3パス目では親水性の溶媒成分を多く含むインクと自己分散型のインクとが同じ記録走査でインク付与されているが、同じ記録走査でインクが付与されないように振り分けマスクを用いてもよい。親水性の溶媒成分を多く含むインク中の水分等がある程度浸透した後に自己分散型のインクが付与されるので、親水性の溶媒成分と自己分散型のインクとが直接混ざることで、より凝集性が緩和されると考えられるので、光沢性を維持することができる。さらにまた、1回の記録走査だけでなく、2回以上の記録走査においても親水性の溶媒成分を多く含むインクと自己分散型のインクとが同じ記録走査でインク付与されるような振り分けマスクを用いてもよい。振り分けマスクの偏りを小さくすることで、記録ヘッドのノズル全体を平均的に使用することができ、記録ヘッドの寿命を延ばすことが可能となる。
さらに、本実施形態においては、Bkインクのみが自己分散型としたが、2色以上のインクを自己分散型のインクとしても良い。同様に、Bkインク以外のCMYインクすべてに、親水性の溶媒成分を多く含ませたが、全色ではなくそのうちの一部のインクにのみ親水性の溶媒成分を多く含ませるインクとしてもよい。自己分散型のインク色を増やすことで、発色性やブリードの良い画像を得ることができる。また、親水性の溶媒成分を多く含むインク色を増やすことで、自己分散型のインクの光沢性の低下を低減できる可能性を増やすことができる。また、本実施形態では、親水性の溶媒成分をインク中に15部含ませているが、量に関して自己分散型のインクの色材成分の凝集性を緩和する機能が働く量であればこの限りではない。好ましくは、5〜30部で、より好ましくは10〜25部程度と考える。
さらにまた、本実施形態では、CMYK2値データへ変換し、記録データを生成するまでをホスト装置のCPUおよびプリンタドライバが行うこととして説明したが、RGB多値データを記録装置が取得し、その後の処理を記録装置のCPUにより行う構成としてもよい。
さらに、本実施形態の図5(a)のマスクは、先の3パス目までインクの付与が行われ後ろの2パスではインクの付与が行われないマスクであるが、先の3パス目までで大部分のインクを付与して、後の2パスで残りのインクを付与するようなマスクとしてもよい。例えば、先の3パスで約8割の画素(13画素)のインクが付与され、後の2パスで残りの約2割の画素(3画素)のインクが付与されるようなマスクが考えられる。このように比較的先の走査で多くのインクを付与し、後の走査になるにつれてインクの付与量を少なくするマスクでもよい。
このようなマスクにすることで親水性の溶媒成分を多く含むインクを先に付与するという効果は多少薄れるものの、記録ヘッドの全域を使用した記録を行えるので、記録ヘッドの寿命を延ばすことが可能となる。同様に、図5(b)に関しても、比較的後の走査で多くのインクを付与し、先の走査になるにつれてインクの付与量を少なくするようなマスクを使用することができる。
(第二の実施形態)
第一の実施形態では、各走査へ画像を振り分けるマスクを異ならせることでインクの付与順序を決めていたが、本実施形態では通常のマスクを用い、異なる種類のインクが付与される画素に対してインクの付与順序を入れ替えることでインクの付与順序を決めている。
記録時のフローチャートについて、S401〜S403までの第一の実施形態と同様な個所については説明を省く。なお、本実施形態においても、第一の実施形態と同じインクを用いている。
S403で生成されたCMYKの2値データに対して、通常の振り分けマスクを使用して、S407のマスク処理を行って記録データを生成する。図示しないが、通常の振り分けマスクとしては、複数回の記録走査に均等にデータが振り分けられるような振り分けマスクや、記録ヘッドの端部のインク付与量が中央部のインク付与量よりも小さいグラデーションマスクなどを用いることができる。次に、S403で生成されたCMYKの2値データを利用して、自己分散型のインクであるBkインクと、親水性の溶媒成分を多く含むインクであるCMYインクとのデータの論理積処理を行う。この処理を行うことで、同一の画素にBkインクとカラーインクのうちのいずれかのインクとが付与されるデータを抽出することができる。
次に、抽出された画素のBkインクとカラーインクがどの記録走査で記録されるか確認し、Bkインクがカラーインクよりも後に付与されるように記録データを修正する。例えば、5回の記録走査で画像を完成し、Bkインクが2パス目の記録走査で付与され、Yインクが3パス目の記録走査で付与されるような場合、Bkインクを4パス目の記録走査で付与されるようにする。具体的には、2パス目のBkインクの記録データを「1」(インクを付与するフラグ)から「0」(インクを付与しないフラグ)に変更し、同一画素の4パス目のBkインクの記録データを「0」から「1」に変更する。または、2パス目でYインクが付与され、3パス目でBkインクが付与されるように記録データを変更してもよい。2パス目のBkインクの記録データを「1」から「0」に変更し、同一画素の3パス目のBkインクのデータを「0」から「1」に変更することで実行可能となる。さらに、3パス目のYインクの記録データを「1」から「0」に変更し、同一画素の2パス目のYインクのデータを「0」から「1」に変更する。このような記録データの修正を画像全体で行ってから、S408で修正された記録データに基づいて記録を行う。
このように、本実施形態によると、各記録走査毎に振り分けた記録データを変更することでも、記録媒体に対して、親水性の溶媒成分を多く含むインクを比較的先の記録走査で付与し、自己分散型のインクを比較的後の記録走査でインクを付与することができる。その結果、親水性の溶媒成分を多く含むインクの上に自己分散型のインクが付与される可能性が高くなるので、自己分散型のインクの色材成分の凝集性を緩和することができ、光沢性の低下を低減することができる。さらに、自己分散型のインクを用いているので、記録媒体上での発色性が向上し、ブリードの低減した高品位な画像を得ることもできる。
本実施形態においては、各記録走査毎に振り分けて記録データを生成する際に、先うちマスクと後うちマスクのような通常の振り分けマスクと異なるマスクを用意する必要がないため、メモリ容量を小さくすることが可能となる。
5 記録ヘッド
6 インクタンク
10 CPU
11 メモリ
20 制御部
100 ホスト装置
200 インクジェット記録装置

Claims (11)

  1. インクを吐出する複数のノズルを所定方向に配列したノズル列を前記所定方向と交差する方向に複数配した記録ヘッドから複数のインクを吐出して記録媒体に画像を記録する記録装置において、
    前記記録ヘッドを走査する走査手段と、
    前記複数のインクを吐出する吐出手段と、
    を有し、
    前記複数のインクは、親水性の溶媒成分が相対的に少なく自己分散型の色材を含むインクと、親水性の溶媒成分が相対的に多く樹脂分散型の色材を含むインクと、を含み、
    前記吐出手段は、記録媒体の所定領域に対して複数回の記録走査で画像を記録するときに、前記親水性の溶媒成分が相対的に多い樹脂分散型のインクを前記記録媒体の所定領域に付与してから前記親水性の溶媒成分が相対的に少ない自己分散型のインクを前記所定領域に付与するように、前記複数のインクを吐出することを特徴とする記録装置。
  2. 前記吐出手段は、前記複数回の記録走査のうち、少なくとも1回の記録走査において、前記親水性の溶媒成分が相対的に多い樹脂分散型のインクと前記親水性の溶媒成分が相対的に少ない自己分散型のインクのいずれかを吐出しないことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
  3. 前記吐出手段は、前記複数回の記録走査のうち、後の記録走査になるにつれて前記親水性の溶媒成分が相対的に多い樹脂分散型のインクを少なく吐出することを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
  4. 前記吐出手段は、前記複数回の記録走査のうち、後の記録走査になるにつれて前記親水性の溶媒成分が相対的に少ない自己分散型のインクを多く吐出することを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
  5. 前記吐出手段は、前記記録媒体の前記複数のインクに対するブリストー法によるインクの転移量が、20ml/mより小さい記録媒体に対して記録を行うときに、前記親水性の溶媒成分が相対的に多い樹脂分散型のインクを記録媒体に付与してから前記親水性の溶媒成分が相対的に少ない自己分散型のインクを付与することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の記録装置。
  6. 前記吐出手段は、前記記録媒体が印刷塗工紙であるときに、前記親水性の溶媒成分が相対的に多い樹脂分散型のインクを記録媒体に付与してから前記親水性の溶媒成分が相対的に少ない自己分散型のインクを付与することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の記録装置。
  7. 前記吐出手段は、前記親水性の溶媒成分が相対的に少ない自己分散型のインクと前記親水性の溶媒成分が相対的に多い樹脂分散型のインクが前記記録媒体の所定の領域にともに付与されるときに、前記親水性の溶媒成分が相対的に多い樹脂分散型のインクを記録媒体に付与してから前記親水性の溶媒成分が相対的に少ない自己分散型のインクを付与することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の記録装置。
  8. 前記吐出手段は、前記記録媒体の所定の領域に付与されるインクが多いときに、前記親水性の溶媒成分が相対的に多い樹脂分散型のインクを記録媒体に付与してから前記親水性の溶媒成分が相対的に少ない自己分散型のインクを付与することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の記録装置。
  9. 前記親水性の溶媒成分が相対的に少ない自己分散型のインクにさらに樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の記録装置。
  10. 前記複数のインクの表面張力が、30(mN/m)以下であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の記録装置。
  11. 親水性の溶媒成分が相対的に少なく自己分散型の色材を含むインクと、親水性の溶媒成分が相対的に多く樹脂分散型の色材を含むインクと、を含む複数のインクを記録ヘッドから吐出させて記録媒体に画像を形成する記録方法において、
    前記記録ヘッドの複数回の記録走査で画像の記録を行うために、画像データを各記録走査に振り分ける振り分け工程と、
    振り分けられたデータに基づいて、前記複数のインクを吐出する吐出工程と、
    を備え、
    前記吐工程は、親水性の溶媒成分が相対的に少なく自己分散型の色材を含むインクを前記記録媒体の所定領域に付与してから親水性の溶媒成分が相対的に多く樹脂分散型の色材を含むインクを前記所定領域に付与するように、前記複数のインクを吐出することを特徴とする記録方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110398415A (zh) * 2019-07-31 2019-11-01 南京航空航天大学 一种桥梁钢结构防腐涂层寿命预测方法
US11271542B2 (en) * 2016-09-06 2022-03-08 Taiyo Yuden Co., Ltd. Acoustic wave device and method of fabricating the same

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