JP2013120630A - プラズマディスプレイパネルの製造方法 - Google Patents

プラズマディスプレイパネルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高精細で高輝度の表示性能を備え、かつ低消費電力のプラズマディスプレイパネルを実現することを目的とする。
【解決手段】本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法は、表示電極、誘電体層および保護層を有した前面板と、背面板とを対向配置したプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記保護層は下地膜および凝集粒子とを有し、前記凝集粒子は、前記凝集粒子を含む分散液を、前記下地膜上に塗布することによって、前記下地膜上に配され、前記分散液中における前記凝集粒子に対して音波エネルギーを与えるステップがあることを特徴とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、表示デバイスなどに用いるプラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPとする)は、高精細化、大画面化の実現が可能であることから、65インチクラスのテレビなどが製品化されている。近年、PDPは従来のNTSC方式に比べて走査線数が2倍以上のハイディフィニションテレビへの適用が進んでいるとともに、環境問題に配慮して鉛成分を含まないPDPが要求されている。
PDPは、基本的には、前面板と背面板とで構成されている。前面板は、フロート法による硼硅酸ナトリウム系ガラスのガラス基板と、ガラス基板の一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極とバス電極とで構成される表示電極と、表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層とで構成されている。一方、背面板は、ガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のアドレス電極と、アドレス電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑色および青色それぞれに発光する蛍光体層とで構成されている。
前面板と背面板とはその電極形成面側を対向させて気密封着され、隔壁によって仕切られた放電空間にNe−Xeの放電ガスが55kPa〜80kPaの圧力で封入されている。PDPは、表示電極に映像信号電圧を選択的に印加することによって放電させ、その放電によって発生した紫外線が各色蛍光体層を励起して赤色、緑色、青色の発光をさせてカラー画像表示を実現している(特許文献1参照)。
特開2007−48733号公報
このようなPDPにおいて、前面板の誘電体層上に形成される保護層は、放電によるイオン衝撃から誘電体層を保護すること、アドレス放電を発生させるための初期電子を放出することなどがあげられる。イオン衝撃から誘電体層を保護することは、放電電圧の上昇を防ぐ重要な役割であり、またアドレス放電を発生させるための初期電子を放出することは、画像のちらつきの原因となるアドレス放電ミスを防ぐ重要な役割である。
保護層からの初期電子の放出数を増加させて画像のちらつきを低減するためには、たとえばMgOにSiやAlを添加するなどの試みが行われている。
近年、テレビは高精細化が進んでおり、市場では低コスト・低消費電力・高輝度のフルHD(ハイ・ディフィニション)(1920×1080画素:プログレッシブ表示)PDPが要求されている。保護層からの電子放出特性はPDPの画質を決定するため、電子放出特性を制御することは非常に重要である。
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、高精細で高輝度の表示性能を備え、かつ低消費電力のPDPを実現することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明のPDPの製造方法は、表示電極、誘電体層および保護層を有した前面板と、背面板とを対向配置したPDPの製造方法であって、前記保護層はナノ結晶粒子および凝集粒子とを有し、前記保護層は前記ナノ結晶粒子を含有したペーストによって形成され、前記ペーストはエチレン系グリコール類の溶剤およびアクリル系樹脂を含有することを特徴とする。
本発明は、電子放出特性を改善するとともに、電荷保持特性も併せ持ち、高画質と、低コスト、低電圧を両立することのできるPDPを提供することにより、低消費電力で高精細で高輝度の表示性能を備えたPDPを実現することができる。
本発明の実施の形態におけるPDPの構造を示す斜視図 本発明の第1の実施の形態のPDPの前面板の構成を示す断面図 本発明の第2の実施の形態のPDPの前面板の構成を示す断面図 同PDPの保護層において、凝集粒子を説明するための拡大図 結晶粒子の粒径と電子放出特性の関係を示す特性図 凝集粒子分散液の循環時間と凝集粒子粒径との関係を示した図
以下、本発明の一実施の形態におけるPDPについて図面を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態におけるPDPの構造を示す斜視図である。PDPの基本構造は、一般的な交流面放電型PDPと同様である。図1に示すように、PDP1は前面ガラス基板3などよりなる前面板2と、背面ガラス基板11などよりなる背面板10とが対向して配置され、その外周部をガラスフリットなどからなる封着材によって気密封着されている。封着されたPDP1内部の放電空間16には、NeおよびXeなどの放電ガスが55kPa〜80kPaの圧力で封入されている。
前面板2の前面ガラス基板3上には、走査電極4および維持電極5よりなる一対の帯状の表示電極6とブラックストライプ(遮光層)7が互いに平行にそれぞれ複数列配置されている。前面ガラス基板3上には表示電極6と遮光層7とを覆うようにコンデンサとしての働きをする誘電体層8が形成され、さらにその表面に酸化マグネシウム(MgO)などからなる保護層9が形成されている。
また、背面板10の背面ガラス基板11上には、前面板2の走査電極4および維持電極5と直交する方向に、複数の帯状のアドレス電極12が互いに平行に配置され、これを下地誘電体層13が被覆している。さらに、アドレス電極12間の下地誘電体層13上には放電空間16を区切る所定の高さの隔壁14が形成されている。隔壁14間の溝にアドレス電極12毎に、紫外線によって赤色、緑色および青色にそれぞれ発光する蛍光体層15が順次塗布して形成されている。走査電極4および維持電極5とアドレス電極12とが交差する位置に放電セルが形成され、表示電極6方向に並んだ赤色、緑色、青色の蛍光体層15を有する放電セルがカラー表示のための画素になる。
図2および図3は本発明の第1の実施の形態におけるPDP1の前面板2の構成を示す断面図である。そして図2および図3は図1と上下反転させて示している。これらの図に示すように、フロート法などにより製造された前面ガラス基板3に、走査電極4と維持電極5よりなる表示電極6と遮光層7がパターン形成されている。走査電極4と維持電極5はそれぞれインジウムスズ酸化物(ITO)や酸化スズ(SnO2)などからなる透明電極4a、5aと、透明電極4a、5a上に形成された金属バス電極4b、5bとにより構成されている。金属バス電極4b、5bは透明電極4a、5aの長手方向に導電性を付与する目的として用いられ、銀(Ag)材料を主成分とする導電性材料によって形成されている。
誘電体層8は、前面ガラス基板3上に形成されたこれらの透明電極4a、5aと金属バス電極4b、5bと遮光層7を覆って設け、さらに誘電体層8上に保護層9を形成している。
次に、PDPの製造方法について説明する。まず、前面ガラス基板3上に、走査電極4および維持電極5と遮光層7とを形成する。これらの透明電極4a、5aと金属バス電極4b、5bは、フォトリソグラフィ法などを用いてパターニングして形成される。透明電極4a、5aは薄膜プロセスなどを用いて形成され、金属バス電極4b、5bは銀(Ag)材料を含むペーストを所望の温度で焼成して固化している。また、遮光層7も同様に、黒色顔料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や黒色顔料をガラス基板の全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、焼成することにより形成される。
次に、走査電極4、維持電極5および遮光層7を覆うように前面ガラス基板3上に誘電体ペーストをダイコート法などにより塗布して誘電体ペースト層(誘電体材料層)を形成する。誘電体ペーストを塗布した後、所定の時間放置することによって塗布された誘電体ペースト表面がレベリングされて平坦な表面になる。その後、誘電体ペースト層を焼成固化することにより、走査電極4、維持電極5および遮光層7を覆う誘電体層8が形成される。なお、誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体材料、バインダおよび溶剤を含む塗料である。次に、誘電体層8上に酸化マグネシウム(MgO)等からなる保護層9を形成する。なお保護層9については後に詳細に説明する。以上の工程により前面ガラス基板3上に所定の構成物(走査電極4、維持電極5、遮光層7、誘電体層8、保護層9)が形成され、前面板2が完成する。
一方、背面板10は次のようにして形成される。まず、背面ガラス基板11上に、銀(Ag)材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や、金属膜を全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする方法などによりアドレス電極12用の構成物となる材料層を形成し、それを所望の温度で焼成することによりアドレス電極12を形成する。次に、アドレス電極12が形成された背面ガラス基板11上にダイコート法などによりアドレス電極12を覆うように誘電体ペーストを塗布して誘電体ペースト層を形成する。その後、誘電体ペースト層を焼成することにより下地誘電体層13を形成する。なお、誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体材料とバインダおよび溶剤を含んだ塗料である。
次に、下地誘電体層13上に隔壁材料を含む隔壁形成用ペーストを塗布して所定の形状にパターニングすることにより、隔壁材料層を形成した後、焼成することにより隔壁14を形成する。ここで、下地誘電体層13上に塗布した隔壁用ペーストをパターニングする方法としては、フォトリソグラフィ法やサンドブラスト法を用いることができる。次に、隣接する隔壁14間の下地誘電体層13上および隔壁14の側面に蛍光体材料を含む蛍光体ペーストを塗布し、焼成することにより蛍光体層15が形成される。以上の工程により、背面ガラス基板11上に所定の構成部材を有する背面板10が完成する。
このようにして所定の構成部材を備えた前面板2と背面板10とを走査電極4とアドレス電極12とが直交するように対向配置して、その周囲をガラスフリットで封着し、放電空間16にNe、Xeなどを含む放電ガスを封入することによりPDP1が完成する。
ここから本発明の第1の実施の形態における保護層9について詳細に説明する。図2で示したように本発明の第1の実施の形態では、前記誘電体層8上に、MgOからなる下地膜91を形成するとともに、その下地膜91上に、金属酸化物であるMgOの結晶粒子92が数個凝集した凝集粒子93を離散的に散布させている。
また図3で示したように本発明の第2の実施の形態では、前記誘電体層8上に結晶粒子92が数個凝集した凝集粒子93を層内に有した粒子層95を形成している。
次に、本発明の保護層9を上記の構造とする理由について述べる。PDPの保護層9は放電セル内において放電の際に電子の受給動作をするため、電子放出性能と電荷保持性能を有することが求められる。
ここで、電子放出性能は大きいほど電子放出量が多いことを示す数値で、放電の表面状態及びガス種とその状態によって定まる初期電子放出量をもって表現される。初期電子放出量については表面にイオン或いは電子ビームを照射して表面から放出される電子電流量を測定する方法で測定できるが、パネルの前面板表面の評価を非破壊で実施することが困難を伴う。
そこで本発明では、電子放出性能を次のように評価している。まず、放電時の遅れ時間のうち統計遅れ時間と呼ばれる放電の発生しやすさの目安となる数値を測定する。そして、その逆数を積分することで、初期電子の放出量と線形に対応する数値になるため、ここではこの数値を用いて指標としている。
この放電時の遅れ時間とは、パルスの立ち上がりから放電が遅れて行われる放電遅れの時間を意味し、放電遅れは、放電が開始される際にトリガーとなる初期電子が保護層表面から放電空間中に放出されにくいことが主要な要因として考えられている。
一方、電荷保持性能は、PDPとして作製した場合に電荷放出現象によって生じる画像不具合を抑えるための性能を示す値である。本発明では、その指標として駆動時に電荷放出現象を抑えるのに必要とされる電圧である、走査電極に印加する電圧(以下Vscn点灯電圧と呼称する)の電圧値を用いた。すなわち、Vscn点灯電圧の低い方が、電荷保持能力が高いことを示す。
ところで、PDPにおいて、保護層に不純物を混在させることで電子放出特性を改善しようとする試みが行われているが、保護層に不純物を混在させ、電子放出特性を改善した場合、これと同時に保護層表面に電荷が蓄積され、メモリー機能として使用しようとする際の電荷が時間と共に減少する減衰率が大きくなってしまう。このため、これを抑えるための印加電圧を大きくする等の対策が必要になる。
このように保護層の特性として、高い電子放出性能を有すると共に、メモリー機能としての電荷の減衰率を小さくする、すなわち高い電荷保持特性を有するという、相反する二つの特性を併せ持たなければならないという課題があった。
すなわち、保護層の製膜条件を変更したり、また、保護層中にAlやSi、Baなどの不純物をドーピングして製膜することにより、電子放出性能を向上することは可能であるが、副作用としてVscn点灯電圧も上昇してしまうことになる。
これに対して、本発明では上述したように、保護層9として結晶粒子92が凝集した凝集粒子93とその他にMgOからなる層を有しているため、電子放出能力と電荷保持能力の両方を満足させることができる。
(本発明の第1の実施の形態)
次に、本発明の第1の実施の形態における下地膜91について説明する。下地膜91には酸化マグネシウム単結晶のナノメートルサイズの粒子(以下、ナノ結晶粒子とする。ただし図示無し)を用いた膜を使用する。このような粒子を使用することで、上記の効果のほかに保護層への不純物ガスの吸着を大きく低減することができるという付随効果も有する。
なお、以下の説明において、粒径とは平均粒径を意味し、平均粒径とは、体積累積平均径(D50)のことを意味している。また、酸化マグネシウム結晶粒子の粒径は、結晶粒子をSEM観察することで測長した。
このようなナノサイズの酸化マグネシウム結晶粒子は瞬間気相成長法によって作製する。これはプラズマ等の高エネルギー化で気化した酸化マグネシウムに対して反応ガスを含む冷却ガスによって瞬間冷却してナノサイズの微粒子を作製する方法である。本発明の実施の形態では、ホソカワ粉体技術研究所にて作製された粒径5nm〜200nmのナノ結晶粒子を使用した。
そしてトリプロピレングリコールを90重量%、三菱レイヨン製アクリル樹脂EMB−001等を10重量%、を混合し作製したビークルに対し、同等の重量配分となるナノサイズ粒子を混練してペーストを作製する。
また、発明者らは、例えばトリプロピレングリコールのような水に対する溶解度が低い溶剤を用いると、空気中の水分により粉体同士の架橋により引き起こされる増粘が抑えられることを見出した。これまで用いていた溶媒のペーストでは作製後1週間で粘度が59000Pa・s増大するのに対し、前記溶剤を用いたナノ結晶粒子を含むペーストの一週間後の粘度は20000Pa・s増大することがわかり、前記溶剤のような水に対する溶解度が低い溶剤を用いると増粘が抑えられることを見出した。尚、この特性についてトリプロピレングリコールに限るものではなく、水に対する溶解度が低いエチレン系グリコールエーテル類の溶剤であれば良い。
このようなペーストをスクリーン印刷法等によって基板上に塗布し、100℃〜120℃にて60分の乾燥、340℃〜360℃にて60分の焼成を行う。このように作製した下地膜91は不純物ガスの吸着する量を低減させることができる。尚、焼成後の下地膜91の膜厚は電荷保持に必要な0.5μm〜2μmの範囲が好ましい。
不純物ガスの吸着量低減について発明者らは昇温脱離ガス分析法(以下、TDSとする)によって確認している。TDS分析においては、従来技術で一般的に用いられているEB蒸着法によって形成された保護層(以下、EB蒸着膜とする)と、平均粒径が5nm〜200nmの範囲であったナノ結晶粒子を用いて形成した保護層(以下、ナノ結晶粒子膜とする)を比較した。
その結果、EB蒸着膜に対して、ナノ結晶粒子膜では、水分、炭酸ガス、CH系ガスいずれも大きく減少していた。具体的には、EB蒸着膜では、350℃〜400℃で脱離するガスの量が急激に増加しているが、ナノ結晶粒子膜ではこのような増加は見られていない。
また、400℃〜500℃で脱離する水分の量が急激に増加していた。これはペーストに含有する水またはエタノールに起因していると考えられる。
そして、粉末X線回折法(以下、XRDとする)によって平均粒径が5nm〜200nmの範囲であったナノ結晶粒子を用いたペースト(以下、ナノ結晶粒子ペーストとする)と、平均粒径が5nm〜200nmの範囲であったナノ結晶粒子を用いたペーストに精製水またはアルコールを加えたペースト(以下、水添加ナノ結晶粒子ペーストとする)の結晶構造を比較した。
その結果、ナノ結晶粒子ペーストが酸化マグネシウムのみが検出されたのに対し、水添加ナノ結晶粒子ペーストにおいては、酸化マグネシウムと酸化マグネシウム粒子が水分と反応し生成された水酸化マグネシウムが検出された。なお、ここで生成された水酸化マグネシウムは、封着・排気工程における熱処理によって脱離し、酸化マグネシウムに変化すると推定される。
さらに発明者らは、このナノ結晶粒子の平均粒径が10nm以上100nm以下である場合に、さらに保護層9の可視光に対する透過率を損なう事が少なく、PDP1の発光効率が低下しないことを見出した。
次に、本発明によるPDPの保護層9に用いた結晶粒子92およびそれらが数個凝集した凝集粒子93とそれらの製造方法について説明する。
ここで、凝集粒子93とは、図4に示すように、所定の一次粒径の結晶粒子92が凝集またはネッキングした状態のもので、固体として大きな結合力を持って結合しているのではなく、静電気やファンデルワールス力などによって複数の一次粒子が集合体の体をなしているもので、超音波などの外的刺激により、その一部または全部が一次粒子の状態になる程度で結合しているものである。凝集粒子93の粒径としては、約1μm程度のもので、結晶粒子92としては、14面体や12面体などの7面以上の面を持つ多面体形状を有するのが望ましい。
また、この酸化マグネシウムの結晶粒子92の一次粒子の粒径は、結晶粒子92の生成条件によって制御できる。例えば、炭酸マグネシウムや水酸化マグネシウムなどの酸化マグネシウム前駆体を焼成して生成する場合、焼成温度や焼成雰囲気を制御することで、粒径を制御できる。
一般的に、焼成温度は700℃程度から1500℃程度の範囲で選択できるが、焼成温度が比較的高い1000℃以上にすることで、一次粒径を0.3〜2μm程度に制御可能である。そして、このように結晶粒子92は酸化マグネシウム前駆体を加熱することにより得ることができるが、その生成過程において複数個の一次粒子同士が凝集またはネッキングと呼ばれる現象により結合した凝集粒子93を得ることができる。
また、発明者等は本発明の効果を奏し得る凝集粒子93の粒径について検討した。図5は、凝集粒子93の粒径を変化させて電子放出性能を調べた実験結果を示すものである。この図5に示すように、粒径が0.3μm程度に小さくなると、電子放出性能が低くなり、ほぼ0.9μm以上であれば、高い電子放出性能が得られることがわかる。
ところで、放電セル内での電子放出数を増加させるためには、保護層上の単位面積当たりの凝集粒子93の数は多い方が望ましい。しかしながら本発明者等の実験によれば、前面板2の保護層9と密接に接触する背面板の隔壁14の頂部に相当する部分に粒子が存在することで、隔壁14の頂部を破損させ、その材料が蛍光体の上に乗るなどによって、該当するセルが正常に点灯消灯しなくなる現象が発生することがわかった。この隔壁14破損の現象は、凝集粒子93が隔壁14頂部に対応する部分に存在しなければ発生しにくいことから、付着させる粒子数が多くなれば、隔壁14の破損発生確率が高くなる。
発明者等が検討した結果、凝集粒子93の粒径が2.5μm程度に大きくなると、隔壁破損の確率が急激に高くなるが、2.5μmより小さい粒子径であれば、隔壁破損の確率は比較的小さく抑えることができることがわかった。
以上の結果に基づくと、本発明のPDPにおける保護層9においては、凝集粒子93として、粒径が0.9μm以上2.5μm以下のものが望ましいと考えられる。また、PDPとして実際に量産する場合には、結晶粒子の製造上でのばらつきや保護層9を形成する場合の製造上でのばらつきを考慮する必要がある。これらを考慮すると上記範囲において特に、平均粒径が0.9μm〜2μmの範囲にある凝集粒子93を使用すれば、上述した本発明の効果を安定的に得られることがわかった。
次に、粒径が0.9μm以上2.5μm以下の凝集粒子93を含有した凝集粒子分散液の製造方法について説明する。
本実施の形態において、凝集粒子分散液を製造する凝集粒子分散液製造装置は、超音波ホモジナイザーと送液用ポンプおよび液回収タンクがテフロン(登録商標)等の配管にて繋がれており、送液用ポンプにより凝集粒子を含む揮発性溶媒を装置内に循環させ、超音波ホモジナイザーの先端部より発せられる超音波が凝集粒子93に照射され、凝集粒子が揮発性溶媒中に分散される構造となっている。そして、前記粒径0.9μm以上2.5μm以下になるまで凝集粒子を含む揮発性溶媒を装置内にて循環および分散を行う。
この構成としたのは以下の理由からなる。図6は装置内における循環時間と凝集粒子粒径との関係を示した図である。超音波ホモジナイザーより超音波を照射せず、凝集粒子分散液を循環のみ行うと、図6のように粒径が増大することがわかった。例えば、凝集粒子分散液を循環のみ10分間行うと、粒径が0.4μm程度増大する。
これは凝集粒子分散液を循環のみ行うと、分散された粒子同士が衝突し再凝集するためである。
そこで本実施の形態では、再凝集を抑制するために凝集粒子分散液を循環する時は短時間であっても必ず超音波ホモジナイザーより超音波を発生させ凝集粒子に照射させる構成としている。
そして、この凝集粒子93を下地膜91上に離散的に複数個付着させる。その方法について説明する。まず、所定の粒径分布を持つ凝集粒子93を揮発性溶剤に混合し分散した凝集粒子分散液を準備する。
そして、その凝集粒子分散液をスリットコータ法などにより、下地膜91上に塗布する。なお、凝集粒子分散液を下地膜91上に塗布するための方法として、スリットコータ法以外に、ダイコータ、テーブルコータ、カーテンコータ法などを用いることができる。その後、下地膜91上に塗布された凝集粒子分散液の揮発性溶媒を乾燥させることにより、下地膜91上に複数個の凝集粒子93を付着させた保護層9を形成することができる。
(本発明の第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態における保護層9は、第1の実施の形態の下地膜91に用いたナノ結晶粒子と、その下地膜91に離散的に付着させた凝集粒子93とを、混合した単層膜によって形成する(以下、粒子層95とする)。
具体的には、まずトリプロピレングリコールを90重量%、三菱レイヨン製アクリル樹脂EMB−001等を10重量%を混合したビークルを作製する。そして、平均粒径10nm以上100nm以下であるナノ結晶粒子と平均粒径0.9μm〜2.5μmである凝集粒子93とを先のビークルと同等の重量配分となるように混練、分散してペーストを作製する。これをスクリーン印刷法等によって基板上に塗布し、100℃〜120℃にて60分の乾燥、340℃〜360℃にて60分の焼成を行い、粒子層95を形成する。
このように形成した粒子層95は、第1の実施の形態の下地膜91と同様に可視光に対する透過率を損なうことなく、水分等の不純物ガスの吸着を大きく低減することができる。そして結晶粒子92が数個凝集した凝集粒子93を有しているため、隔壁14の損傷を抑えつつ、高い電子放出性能を確保することができる。またさらに、保護層9の形成において生産プロセス数を削減することができ、製造コストを抑えることができる。
なお、先に述べた溶剤との配合はこれに限られたものではなく、またペースト塗布方法についても、この他、スリットコータ法等の手法によって塗布することによっても同様の効果は得られる。さらに溶剤については先に述べた溶剤に限られたものではなく、エチレン系グリコールエーテル類の水に対する溶解度が100g中20g以下のものであってもよい。
以上のように本発明による保護層を形成したPDPについて、電子放出能力および電荷保持能力を評価した。その結果、統計遅れから算出した評価指標についても、Vscn点灯電圧についても、画像表示品位が良品となる基準を満たすことができることを確認した。つまり、本発明を実施することによって高精細で高輝度の表示性能を備え、かつ低消費電力のPDPを実現することができる。また下地膜91をナノ結晶粒子膜とすることで、保護層9に吸着する不純物ガスも低減することができ、凝集粒子93の電子放出性能を長期的に維持する効果も得られる。
また、本発明の実施の形態では、単結晶粒子として酸化マグネシウム結晶粒子を用いて説明したが、この他の単結晶粒子でも、酸化マグネシウム同様に高い電子放出性能を持つSr、Ca、Ba、Al等の金属の酸化物による結晶粒子を用いても同様の効果を得ることができるため、粒子種としては酸化マグネシウムに限定されるものではない。
以上のように本発明は、高精細で高輝度の表示性能を備え、かつ低消費電力のPDPを実現する上で有用な発明である。
1 PDP
2 前面板
3 前面ガラス基板
4 走査電極
4a、5a 透明電極
4b、5b 金属バス電極
5 維持電極
6 表示電極
7 ブラックストライプ(遮光層)
8 誘電体層
9 保護層
10 背面板
11 背面ガラス基板
12 アドレス電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間
91 下地膜
92 結晶粒子
93 凝集粒子

Claims (1)

  1. 表示電極、誘電体層および保護層を有した前面板と、背面板とを対向配置したプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
    前記保護層は下地膜および凝集粒子とを有し、
    前記凝集粒子は、前記凝集粒子を含む分散液を、前記下地膜上に塗布することによって、前記下地膜上に配され、
    前記分散液中における前記凝集粒子に対して音波エネルギーを与えるステップがある、プラズマディスプレイパネルの製造方法。
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