JP2013106561A - 家畜・家禽用敷料及び家畜・家禽用飼育舎におけるウイルス感染の防止方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の家畜・家禽用敷料は、家畜や家禽の飼育舎の床や該飼育舎の周囲に敷設される敷料であって、多孔構造を有する無機酸化物から成る粒子2の表面及び細孔に、光触媒機能を有する微粒子3が担持されてなる砂状粒子(光触媒合成砂1)から構成されていることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
その一つに、二酸化チタンの光触媒作用を利用した感染防止方法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の方法は、シリカやゼオライト等の多孔構造の無機酸化物を粒子状に形成し、この粒子の表面や細孔に二酸化チタン等の光触媒の微粒子を担持させた浄化剤を飼育舎の地表に散布することにより、飼育舎内の細菌やウイルスを分解し、死滅させるというものである。
本発明は、本願発明者の更なる研究開発により、光触媒合成砂が鳥インフルエンザウイルスや口蹄疫ウイルス等のウイルスに対して分解・死滅作用を有することが見いだされたことから、成されたものである。
家畜・家禽用敷料に照射される光は太陽光でも良いが、飼育舎に太陽光を取り入れるための採光窓が設けられていない場合、或いは、採光窓からの光が飼育舎の床に敷設された家畜・家禽用敷料に照射されない場合には、光照射装置を用いて前記家畜・家禽用敷料に光を照射するようにしても良い。この場合、前記家畜・家禽用敷料に照射される光が紫外光であれば、なお良い。
以下、本実施例に係る光触媒合成砂1の機能に関する各種の試験について説明する。
本実施例に係る光触媒合成砂の抗インフルエンザウイルス活性の有無を調べた。本試験に用いた材料及び試験方法は次の通りである。なお、この試験1は、長浜バイオ大学バイオサイエンス学部遺伝子生命化学コース微生物研究室の伊藤正恵教授に委託し実施されたものである。
[1]材料
・ウイルス:鳥インフルエンザウイルス A/R/Hok/1/2004 (H5N1)
・細胞:イヌ腎臓由来のMadin-Darby canine kidney(MDCK)細胞
5%ウシ胎児血清(FBS)を添加したDulbecco's modified Eagle Medium(DMEM)を用い、37℃で培養した。
粗粒子及び細粒子の光触媒合成砂1をそれぞれ0.5gずつ、鳥インフルエンザウイルス液(1x106 CIU/ml)0.5mlと混合してブラックライト蛍光ランプ(1.0mW/cm2)の15cm下のところに設置し、室温(20℃)で2時間紫外線照射した。10,000rpm、4℃で5分間遠心後、上清を採取して試験検体とした。また、ウイルス液のみを同様に処理したものを対照検体とした。なお、上述の「CIU」はウイルス感染価の単位で、感染性ウイルス1粒子に相当する。
また、紫外線照射なしで室温(20℃)に2時間放置した検体についても同様にウイルス感染価を求めた。図2及び図3に各検体のウイルス感染価(%)を表及び棒グラフにて示す。なお、図2及び図3において、ウイルス感染価(%)は、もとのウイルス液の感染価を100%としたときの残存活性を示す。
<試験2:光触媒合成砂のマウスを用いた急性経口毒性試験>
[1]試験方法
本実施例に係る光触媒合成砂を媒体として、OECD Guidelines for the Testings of Chemicals 401 (1987)に準拠し、マウスを用いた急性毒性試験(限度試験)を行った。
試験群に与える検体は、本実施例に係る光触媒合成砂1(ここでは、直径0.1mmの細粒子を用いた。)を綿実油に混合することにより調整し、対象群に与える検体(対象検体)は溶媒対照(綿実油)とした。
試験群の雌雄マウスには2,000mg/kgの用量の検体を単回投与し、対照群の雌雄マウスには綿実油を試験群と同量だけ単回経口投与した。
投与後7日及び14日に各マウスの体重測定を実施した。
[3]結果
試験群、対照群のいずれにおいても、雌雄マウス共に投与当日に下痢が見られたが、投与後1日で下痢は回復し、その後、異常は見られなかった。下痢は、綿実油の大量投与によるものと思われた。
また、投与後7日及び14日の体重測定では、試験群、対照群の間で体重増加に差が見られなかった。
なお、各群共に、観察期間中の死亡例はなかった。
[1]試験方法
本実施例に係る光触媒合成砂を検体として、OECD Guidelines for the Testings of Chemicals 401 (1992)に準拠し、ウサギを用いた皮膚一次刺激性試験を行った。
検体には本実施例に係る光触媒合成砂(直径0.1mmの細粒子)を用い、これをウサギ3匹の無傷皮膚及び有傷皮膚に4時間閉鎖貼付した後の状態を観察した。
ウサギの皮膚から検体を除去後、1時間で全てのウサギの皮膚に非常に軽度な紅斑が見られたが、全て24時間で消失した。以上の結果から、Federal Register(1972)に準拠して求めた一次刺激性インデックス(P.I.I.)は「0.3」となり、ウサギを用いた皮膚一次刺激性において検体は「無刺激性」の範疇に入るものと判定された。
本試験4及び以下の試験5は、本実施例に係る光触媒合成砂1のウイルス感染症以外の病気に対する作用、効果を調べるために行った試験である。この試験4は大阪市立大学医学部医動物学研究所の宇仁茂彦講師への委託により実施した。
[1]試験方法
大阪市動物管理センターで保護されたイヌより、イヌ回虫雌成虫を採取し、その子宮末端部よりイヌ回虫卵を取り出し、1%フォルマリン水中で2週間培養し、幼虫形成卵を得、この幼虫形成卵を試験に用いた。
本実施例に係る光触媒合成砂1(直径0.1mmの細粒子)を直径5cmのプラスチックシャーレに入れ、イオン交換樹脂による精製水5mlを加えた。これを恒温インキュベータ(25℃)内に設置した紫外線照射装置(ブラックライト蛍光ランプ2本、1.0mW/cm2)の15cm下に置き、該シャーレ内にイヌ回虫卵を加えて実験を行った。実験は次の3種類行った。
実験B:対照実験として、光触媒合成砂1を加えていない精製水のみのシャーレに500個のイヌ回虫卵を加えて該シャーレを紫外線照射装置下に置き、実験を行った。
実験C:対照テストとして、インキュベータの外に精製水を入れたシャーレを置き、500個のイヌ回虫卵を加えて実験を行った。この実験Cでは紫外線を照射していない。
段階1:幼虫が内部で動いている虫卵(正常形態)
段階2:幼虫は動いていないが、幼虫の内部構造が段階1と同じである虫卵(これも正常形態であると判定、図4の(a)に示す写真参照)
段階3:幼虫の内部の黄卵顆粒に変性が見られる虫卵。更に次の2群に分けた。
段階3a:正常幼虫に似ているが、小さい顆粒を形成しているもの(図4の(b)に示す写真参照)
段階3b:大顆粒、凝集体を形成し、ほとんど死滅していると考えられるもの(図4の(c)に示す写真参照)
段階4:卵内の幼虫が崩壊している虫卵(図4の(d)に示す写真参照)
実験開始3日目において、少し変性した虫卵が出現し、7日目では変性虫卵の数が増加した。14日目の結果を図5に示す。図5に示すように、実験開始後14日目において、実験A〜Cの間に顕著な差が見られた。即ち、実験Aにおいて、イヌ回虫卵は虫卵内の幼虫に大きい変性(大顆粒形成)が見られた。また、ほとんど死滅したもの、及び幼虫の崩壊した虫卵が多く見られた。
一方、実験Bでは、ほとんど正常の幼虫と同じであるが、詳細に観察すると、小さい変性(小顆粒形成)を起こしているものが見られた。実験Cでは幼虫の変性はほとんど見られなかった。
以上の結果から、弱い紫外線下において、或いは光触媒合成砂の存在下において、虫卵内の幼虫を大きく変性させ、死滅させることができることが分かった。
この試験5は、財団法人 日本食品分析センターに委託して実施したものであり、環境条件の異なる大阪府下の4箇所の公園の砂場に本実施例に係る光触媒合成砂1を散布し、その抗菌、殺菌効果を調べたものである。
各公園の砂場の大きさ、光触媒合成砂1の散布量、環境条件を図6に示す。
[1]試験方法
砂場の上部を平坦に均すとともにおおまかな異物を撤去し、各砂場から検体(砂)を採取した。検体は、砂場表層と表面から150mm下の下層の各層から採取した。
その後、図6に記載した散布量の光触媒合成砂1を各公園の砂場の上に均一に散布し、通常通り砂場を開放した。散布後1ヶ月〜9ヶ月が経過した時点において、砂場の表層及び下層から検体を採取し、これら検体について大腸菌検査を実施した。検体採取日を図7に、大腸菌検査の結果を図8及び図9に示す。なお、C公園については、面積が広いため、P1〜P3の3箇所から検体を採取した。
A公園では、光触媒合成砂1の散布前と比べると散布後1ヶ月の砂場表層から採取した検体中の大腸菌数が減少した。その他の公園ではほとんど変化がなかった。
いずれの公園においても、散布後3ヶ月に砂場表層及び砂場下層から採取した検体に含まれる大腸菌数は少なかった。これは、散布後3ヶ月の時期が冬季であり、外気温が低かったからだと思われる。
散布後6〜8ヶ月後は、気温(25〜34℃)、湿度共に高く、いずれの公園においても大腸菌の数が増加する傾向にあったが、光触媒合成砂1を散布しなかったD公園に比べて、光触媒合成砂1を散布したA〜C公園における大腸菌の発生を少なく抑えることができた。これは、砂場の表層及び下層のいずれから採取した検体でも同じ結果であった。
また、図9に示すように、砂場の下層から採取した検体においても、砂場の表面に散布した光触媒合成砂1の作用により大腸菌の発生が抑えられており、子どもが砂遊びをする深さ(15cm)の安全性が確保できることが分かった。
2…二酸化ケイ素の粒子
3…二酸化チタンの微粒子
Claims (6)
- 家畜や家禽の飼育舎の床や該飼育舎の周囲に敷設される敷料であって、
多孔構造を有する無機酸化物の粒子の表面及び細孔に、光触媒機能を有する微粒子が担持されてなる砂状粒子から構成されていることを特徴とする家畜・家禽用敷料。 - 前記光触媒機能を有する微粒子が、二酸化チタンの微粒子又は二酸化チタンと金属酸化物からなる微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の家畜・家禽用敷料。
- 前記光触媒機能を有する微粒子が、二酸化タングステンの微粒子又は二酸化タングステンと金属酸化物から成る微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の家畜・家禽用敷料。
- 前記砂状粒子は、直径が0.1mm〜5mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の家畜・家禽用敷料。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の家畜・家禽用敷料を、家畜・家禽用飼育舎の床に敷設することを特徴とする家畜・家禽用飼育舎におけるウイルス感染の防止方法。
- 家畜・家禽用飼育舎の床に敷設された家畜・家禽用敷料に光照射装置により紫外光を照射することを特徴とする請求項5に記載の家畜・家禽用飼育舎におけるウイルス感染の防止方法。
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