JP2013072871A - 大事故時放射性廃液および周辺環境中汚染試料の緊急的改善処理法 - Google Patents

大事故時放射性廃液および周辺環境中汚染試料の緊急的改善処理法 Download PDF

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Abstract

【課題】広範な放射性核種の除染・浄化・低減化方法を提供する。
【解決手段】除染・浄化・低減化に極めて有効な次の10種類のスカベンジャーを新たに発見した。天然スカベンジャー(75μm以下の特殊有機シルト)を確証⇒⇒⇒⇒「(共沈法)」に適応。事故時発生のスカベンジャー(廃液(A):硫化物豊富な廃液)を確証⇒「(共沈法)」に適応。新規製造スカベンジャー(活性化高分子収着剤(2種))を発見⇒⇒⇒「(吸着法)」に適応。新規製造スカベンジャー(活性化無機収着剤(3種))を発見⇒「(共沈法)+(吸着法)」に適応。新規製造スカベンジャー(活性化有機収着剤(3種))を発見⇒「(共沈法)+(吸着法)」に適応。
【選択図】図15

Description

大地震および大津波等の天災により電源喪失、原子炉および使用済燃料の事故時冷却系(ECCS)の崩壊、核燃料棒の温度上昇、被覆管の高温による水蒸気との反応による水素発生、水素に引火、建屋天井が吹き飛び、想像もしなかった最悪な危機的状況が発生した。この段階に至ると廃炉を覚悟した外部からの真水、海水の消防車等による放水散布等により原子炉を冷却する等、炉水管理どころではなく、原子炉自体の保全措置が優先される事になり、極めて粗雑な対応策しか選択肢が無くなり、散布水による建屋内洗浄による放射性汚染廃液が止め度なく発生する。原子炉および使用済燃料冷却の為の経時的事故事象が連鎖的に誘引され、然もかなりの初期段階で、原子炉圧力容器内に於いて冷却が不充分な為に燃料はメルトダウンを起こす等壊滅的な大事故にまで至った。結果的には「原子炉内燃料およびプール内使用済燃料の冷却処理」と「超大量に発生した超高レベル放射性廃液処理」とが緊急的課題として、夫々の「安定化対策」および「安全処理対策」が希求される。ここで言う大事故とは、第一義的に上記に示した様な壊滅的な大事故を言う。
勿論前者の冷却による「安定化対策」は核燃料の再臨界にも関連する重要事項であるが、これについては高中性子核反応断面積物質(ホウ素、カドミウム)の添加により核反応の抑制対策を施す事ができるが、他方続いて起こる溶融混合団塊(デブリス)内部に共存する多種多様な核分裂物質の崩壊熱の除去は難題で、特に冷温停止までの短半減期核種の崩壊熱を徐冷しなければならず、外からの効果的水冷しか選択肢は無い。しかしこの水冷処置は後者の超大量・超高レベル放射性廃液処理が解決しないと充分な冷却水散布が抑制されてしまう事にも関連する。ここで問題になる、後者の「安全処理対策」については、これが進捗しないと、上記冷却水散布を抑制する事に止まらず、廃液中放射能が極めて高レベルである為に、被曝線量を考慮すると、原子炉、タービン建屋内、近傍で人間が実働する全ての関連作業が中断される事になり、それ故「安全処理対策」が進展せず、徒に原子炉事故の安定・沈静化(冷温停止状態)が遅れる。従って、超大量放射性廃液の発生が伴う、これまで類を見ない、極めて深刻な、この一連の難題を解決する為の最優先課題は上記超大量・超高レベル放射性廃液中の放射性核種の隔離化あるいは除去等で、具体的には超高レベル放射性核種の固体と超大量の母液の固液分離の実施である。加えるに、上記に示した散布水或いは注入される冷却水は循環される事なく、一方的に廃液化処理される為に、経時的に増量し、その保管容量も極限に達し猶予が無く、緊急性が求められる。
このような深刻な状況において更に重要な事象が発生する。タービン建屋復水器に連結して、地下から取・放水口に向って延びる約直径2m、大口径の取水管があり、この中には冷却用に取水した海水が停滞して詰まっている。厳しく考えてここにも上記超高レベル放射性核種が混入したと考える事にする。このような状況下で「稼働中に事故に遭遇した1号機〜3号機の高レベル放射性海水廃液」と「定検中で事故に合った4号機の放射性海水廃液」を比較すると取水管内壁にムラサキイガイが密集して事故時に蘇生していて、バクテリヤが増殖していたか否かによって、この2種類の放射性海水廃液の水質は極めて大きく異なる。この事は高レベル放射性海水の廃液処理を施行する場合に、多量の有機コロイドを考えるか否かの極めて大事な分岐点となり、海水を冷却水とする原子力発電所では共通の事項であるが、これが忘却されている。
例えば仏国アレバ社の凝集剤固液分離法を米国クリオン社のゼオライト処理後に実施する事を公表し、その方向で施設、設備の構築を進めたが、この処理方法は上記バクテリヤが関連する事象を反映した処理方法ではなく、少なくとも1〜3号機タービン建屋地下に溜まっていると考えられる冷却水取水管内の高レベル放射性海水廃液処理に関しては、その処理の順番は逆で、特に夏場に向って水温が上昇する時期においてはその影響が顕著に現れる。また全世界で初めての経験である大事故に関して仏国アレバ社、米国クリオン社を含め、全人類がその処理方法を予測はできても、実務的に経験して、事前に把握して構築できる筈が無く、実際に発生した廃液による実証試験なくして確定的な事を言える筈も無い。確定的で断定的な態度は国および科学を冒涜している。更に大事な事は周辺環境住民の被曝低減化処理に対して、これと同等或いはそれ以上の意識を傾注しなければならない。
本特許は上記に示したようなオリジナル事象も考慮した第I義的な大事故時放射性廃液の緊急的水処理(「段落:0050」の第I義的概念の水処理改善処理システム)および周辺環境住民の被曝低減化処理を考慮した第II義的緊急的水処理(「段落:0051」の第II義的概念の水処理改善処理システム)に関する。
技術背景
厖大な放射性廃液を伴う大事故はこれまでに類が無く、人類が初めて経験した事で、従って決まった技術の蓄積がある筈も無く、またこのような大事故が多数回発生しても困る事で、確固として蓄積された原子炉事故技術の系統的専門分野の構築は1975年の[非特許文献1]:「確率論的原子炉事故影響評価(WASH−1400,NUREG−75/014,PB246206)」が唯一である。しかし、その後1979年のTMI事故および1986年のチェルノビル(Chernobyl)事故によって確率論的評価が否定され、その専門的分野の大きな醸成は無かった。しかしラスムッセン(Prof.Norman C.Rasmussen of the MIT)報告書として敬愛されたその報告書で、考慮された考え方、アルゴリズム、モデル、計算方法等は部分的に継承され、例えば我が国で初めての計算コードは当該発明者により米国NRCから取り寄せられ(CRACコード)、日本に移植されたが、現在では「SPEED」に発展している。このような状況下の為、先の[技術分野]の記述には当該大事故に関連しそうな[背景技術]の連想を容易にする為、大事故の大略的な経緯と厖大な放射性廃液処理が最優先課題で、その廃液には下記に示す2種類の水質の極めて異なる廃液がある事を先ず最初に示し、注意を喚起した。
WASH−1400:Nuclear Regulatory Commission「PB−248 206,Reactor Safety Study;An Assessment of Accident Risk in U,S,Commercial Nuclear Power Plants,Appendix VI,Calculation of Reactor Accident Consequences(CRAC)」Oct.1975
当該大事故で問題にする放射性廃液は量的な観点からも放射能レベル的な観点からも類を見ない汚染水であるが、下記に示した2種類の廃液の処理あるいは管理が可能な処方箋ができれば、問題の大半を収束する事ができる。2種類の異なる水質が発生した理由として先の[技術分野]でムラサキイガイの存否に因ることを示したが、当該発明者の過去における研究成果から導かれた必然的な理由を下記に簡単に示す。
日本における通常の原子力発電所および火力発電所は沿岸立地が多く、タービン発電機を回転した後の水蒸気は海水冷却で復水して再利用している。この際にポンプで揚水して冷却に使用する海水量は例えば次に示すように、その量は多い。この水量を維持する為には直径2mの大口径円筒パイプあるいは大断面積筐体が必要で、冷却水主ポンプの取水流量は1号機で44,250m/hr×2台、2、3号機で50,550m/hr×3台、4号機で55,300m/hr×3台で取水されている(他に主ポンプの取水能の約3〜4%程度の副ポンプが在る)。従って取水円筒パイプ内の平均流速は2m直径の単管、主ポンプ当りで1号機では約14km/hr、2、3号機では約16km/hr,、4号機では約17.6km/hrで、ほぼ1ノット前後の流速になる様に設計されている。勿論単管3台であれば、ほぼ3倍の流速になる。
このような急流状況で棲息できる海生生物は30cmもの足糸を出して、相互に「絡み合って」、積層して繁殖するフランス料理で有名な「ムール貝」と同じ「ムラサキイガイ」が主流になる。このような速い水流では単位断面積当たりを通過する動植物プランクトンの絶対数は多く、然もムラサキイガイ同士が絡み合う事で、隙間に澱みもでき、「エサ」には不自由無く育ち、従って、通常の取・放水管内壁には30cm以上の厚さに密集している場合があり、その量は想像を絶する。
このように「ムラサキイガイ」が繁殖する為、原子炉定期検査時には直ちに大口径取放水管の海水を排水し、人間の手で管内壁面からムラサキイガイを剥離脱着して、管外に運び出し、廃棄する清掃処分をする。この排水とムラサキイガイの剥離脱着廃棄は原子炉が停止して冷却水流動が停止したら速やかに施行しないと、特に夏場の海水温が高くなる時期では次に示す大変な事態が発生する。
冷却水流動が停止したら、先ずムラサキイガイは「エサ」のプランクトンが供給されなくなる事により死滅し、腐敗が始まる。この事によりムラサキイガイの肉質に含まれる硫黄蛋白(メチオニン、システィン、シスチン等)が肉質の腐敗と同時に酸化され、硫酸イオンに変貌する。この肉質酸化腐敗により海水中の溶存酸素は無くなり、貧酸素海水環境になる。この嫌気的環境においてpH8前後、肉質の腐敗有機質が充分にあり、嫌気性硫黄還元菌が猛烈に繁殖し始める。この硫黄細菌のうち、例えばDesulfovibrio Desulfuricans等はムラサキイガイ肉質中硫黄蛋白から変質した硫酸イオン(SO 2−)と海水中に賦在する硫酸イオン(SO 2−)の合計量を最終的には硫黄イオン(S2−)にまで還元する。従ってこのような海水中には亜硫酸イオン(SO 2−)、チオ硫酸イオン(S 2−)、硫黄イオン(S2−)が混在し、硫酸イオン(SO 2−)の合計量は激減して少なくなる。またこの際には気相中に炭酸ガス、メタンガス、硫化水素ガスも含まれる事になるが、海水中に硫化物を生成する金属イオンが多い場合には気相中硫化水素ガスは少なくなる。しかも肉質が分解した際に発生した有機コロイドが海水中に多く共存する事により、これが固液分離に支障をきたし、円滑な濾過操作を阻害する。
このような最悪条件に符合すると人間にも害を及ぼし特に、夏場に事件が多発するが、Aサイトの例では復水器側面のマンホールの蓋を開けた途端に内部に充満していた硫化水素ガスが吹き出し、それを吸引して死亡する事件まで起きている。このように油断をすると想像以上に硫化水素発生がある等、このバクテリアの分解反応は速く、当該発明者の研究成果によれば、海水温30℃で2700ppmの硫酸イオンが約23〜24日間で200ppmになり93%が消失する。またその温度依存性は実験室的には海水温度の10℃を闘値として30日間のガス発生量(炭酸ガス+メタンガス+硫化水素ガス)は35℃でムラサキイガイ500gに対して4.8lに達する。また季節的には3月〜4月の太平洋側東北沖合いの海水の水温は約10℃で閾値に相当する時期であるが、4月以降は例年では必ずそれ以上の水温になり、夏場に向って海水温は上昇する。従って海水温が高くなる夏場の場合は1週間以内に上記清掃処理をしないと取・放水管内には硫化水素ガスが充満してくる事が分っている。
「廃液Aの定義」:
以上に説明した最悪の条件に符合しているのが「当該大事故によってムラサキイガイの棄却ができなかった1号機〜3号機の取・放水管内の海水」に代表される水質状態の廃液であるが、還元的条件の海水に有機コロイドが多量含まれる事が特徴的で、これが固液分離に支障をきたす。この大変身した腐敗海水に更に大事故によって発生した超高レベルの核分裂物質(FP)および腐蝕放射化物質(CP)が混入していると厳しく仮定して、これを「廃液A」と定義する。
「廃液Bの定義」:
他方、もう1種類の廃液は「定検中に当該大事故に合った4号機の取・放水管内の海水」に代表される水質状態の廃液である。4号機は定検中であった為、海水冷却取・放水管内の海水およびムラサキイガイは除去されていて、管内も清掃され、ムラサキイガイの貝殻の存在も無く、相対的に「キレイ」な管内であった事が予想される。従って現在充填されている管内に存在する「水」は当然空間であった取・放水管内に津波によって侵入した海水およびその後の事故によって外から使用済燃料プールへ散布された水および原子炉循環冷却水が汚水として溜まったものと思われる。この汚水は還元的腐敗海水廃液でもなく、然も亜硫酸イオン(SO 2−)、チオ硫酸イオン(S 2−)、硫黄イオン(S2−)等も含まれていない放射性廃液で、先に定義した「廃液A」とは全く異なる、むしろ通常時に経験する水質を有する廃液で、これを「廃液B」と定義する。この高レベル放射性核種を含む「廃液B」の組成は平常時稼動における「ランドリードレン中」或いは「フロアドレン中」の放射性核種の物理的、化学的形態より複雑怪奇な成分組成に変身すると思われるが、水質的には大きく異なる事が無く「ランドリードレン中」或いは「フロアドレン中」の放射性核種の物理的、化学的形態から類推される事も多くあると思われるので、この種の廃液を「廃液B相当廃液」として固液分離段階では「廃液B」として扱う。従ってこの定義の中には平常時の放射性廃液、原子炉建屋、タービン建屋の事故時地下の溜まり水および地下坑道として掘削した大地下トレンチ内に事故時に流入した廃液等を含めて考える。
[表1]に「廃液A」と「廃液B」の水質が極めて異なる事、およびその発生理由の相違点を相対的にまとめて示した。この表から分かるように、これら両者の廃液を同様に、同等に、同じ処理方法で扱う事ができない事、および外国技術をそのまま「鵜呑み」に適用できない事は多量の有機コロイドの存否を考えれば当然の事である。
以上、当該発明者の研究成果に基ずいて必然的に分類された「廃液A」と「廃液B」について、その発生源と発生理由について紹介したが、上記に示した背景技術に加えて、以下の[非特許文献2]、[非特許文献3]に示した応用技術からも新たな技術的発想が得られるが、後述の[先行技術]に示される技術の基本はTMI事故、チェルノビル事故時に適応されたゼオライト処理技術、下水道処理技術の応用的共沈技術等のコピーで、新しい技術の発見、発明に薄く、その展開が乏しいように写る。この点の飛躍の意味を込めて本発明の後半において新しい技術の導入を行っている。
産業排水対策に関する技術リスト 2010年3月 http://www.env.go.jp/air/tech/ine/asia/vietnam/files/needs/vietnam−technology−list−jp.pdf
Chernobyl forum expert Group‘Environment’「Environmental Consequences of the Chernobyl Accident and their Remediation:Twenty Years of Experience」IAEA 2006
Figure 2013072871
先行技術
(1):仏国アレバ社の汚水処理技術の指向する方向:
新聞報道によるとタービン建屋地下坑道に溜まった高濃度汚染水を処理する為、仏国アレバ社(Areva SA)に発注していた汚染除去装置の資材搬入がほぼ終了し、2011年6月の運転開始を目途としていて、運転場所は集中廃棄物処理施設の主プロセス建屋で、設備の大略は「装置本体、小型タンク10個、ポンプ30台、放射線モニター5台で構成される」と公表されている。
仏国アレバ社は原子力庁79.0%、財務省5.2%の国策会社で、原子力部門はアレバグループのアレバNP社が担当する。このアレバNP社はアレバ社66%、シーメンス社34%の合弁企業で、傘下にウラン濃縮会社Eurodif社、ウラン転換会社Comurhex社を抱えている仏国挙げての原子力総合会社である。
仏国は極めて技術情報の閉鎖的な国で、かって当該発明者も技術情報検索システムで仏国情報収集を試みたが「80%以上は秘密情報として技術内容についてはアブストラクトすら入手できず、得られるのは報告書タイトルのみ」と言う苦い経験がある。日本のような資源小国は大国米国を真似て開放的になるばかりではなく、一部仏国のような閉鎖的姿勢も技術資源確保の観点から大切な事かもしれない。
当該大事故の高レベル放射性廃液処理についてもアレバ社の技術情報は極めて限定的であるが、その限られた少ない情報の中からアレバ社の固液分離法は「凝結・凝集剤」による放射性核種共沈法の応用処理技術である事が分かっている。「凝結・凝集剤」による固液分離法は下水道処理における活性汚泥処理法の発展と共に古くから進歩しており、後述の「段落:0033」の(3)および「段落:0039」の(4)に示す如く、水酸化アルミニウムによる重金属分離法(PAC法)、水酸化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄(PF)、ポリシリカ鉄(PCI)等々の凝結剤および近年における高分子凝集剤によるフロキュレーション法として熟知されていて、アレバ社の独占的斬新的技術とは言えない。また後述する「段落:0042」の(5−2)に示す如く斬新的な凝結剤Eおよび凝結剤Fのようにセシウム(Cs)を含むアルカリ金属に強い選択性を持つ分離抽出剤の発展については日本においても極めて高度な進歩がある。
上記観点を考慮すると、TVニュースで垣間観られるアレバ社の搬入装置映像から、スカベンジァー(清掃人)共沈法における「沈殿分離操作:濾過法」に特徴があるように思える。以上を総合的に評価すると、仏国アレバ社の技術は放射線計測器が付いている事のみなのか?例えばヨウ化ナトリウム(NaI−Tl)とフォトマル(光電子倍増管)、あるいは半導体検出器(SSD)が付いてレートメーター(崩壊速度計)あるいはパルハイ(パルス波高解析計)計測機能が付いているのみではないのか?そうでないとしても、固液分離法の基本的処理法は後述する(3)、(4)と大差なく、固液分離の「濾過法」にのみ独創性のある技術であるように思える。しかし、この点に関しても[非特許文献2]に示す如く、日本の廃液処理のレベルは高く、果たして日本の廃液処理システムを超える技術であろうか?日本人が日本の技術を熟知する事無く、徒に、盲目的に外国技術に依存する事には疑問を感じる。
(2):米国クリオン社の汚水処理技術の指向する方向:
アルカリ金属、アルカリ土類金属の分離処理過程においてセシウムイオン(Cs)に特異的な収着を示す鉱物としてゼオライト(沸石)がある。多種多様の分子、元素に強い選択的弁別性を示す有機物であるイオン交換樹脂を用いないのは、高レベル放射線による結晶損傷を回避する事のみではなく、廃水処理の最終処分形態としてガラス溶融固化体を想定すると、有機質の大量発生は、その燃焼過程を考えると不利になる。その為、収着操作を考える場合には有機質のイオン交換樹脂よりも無機イオン交換体の方が有利である事は明白である。当該大事故で主役を演じる放射性セシウム(Cs−134,Cs−137)は水溶液中で多数ある無機イオン交換体鉱物の中でゼオライトが有効である事は昔から熟知された事実で、目新しい技術でもなく陳腐な汎用技術である。
他方、気相中におけるゼオライトの吸着現象は上記水溶液中の収着現象とは異なり、その鉱物結晶空間中に構成されるオングストローム(Å)単位で4(Å)、5(Å)、13(Å)直径の空孔が吸着現象を左右する。ここに特定気体(酸素、窒素、炭酸ガス、メタンガス等の永久気体)がトラップされるが、例えばガスクロマトグラフィーにおける充填カラム吸着剤としてのゼオライト(この場合はモレキュラシーブと言われる)とキャリヤーガスとの間での吸・脱着速度の相違によって空気のような複数混合気体が分配され、酸素ガスと窒素ガスに分離される。
これに対して上述したセシウムイオン(Cs)の水溶液中の収着はゼオライト結晶を構成するアルカリイオン(NH ,Na,Ketc.)がCsと交換反応を起こす事でゼオライトに吸収される現象で、その交換優先順位でセシウムイオン(Cs)が高く、Na,Kよりも優先的に格子内にトラップされる為にNaイオンが断然多い海水中においてすらCsがゼオライトに吸着される。
ゼオライトが吸着する大略の現象は上述した理由に拠るが、米国クリオン社は上記に示したゼオライトによるCs−134,Cs−137の吸着装置、と言うよりは、吸着モジュールを提唱している。従って原理的には斬新的でも無く、驚く程の事でも無い、周知の技術で、このゼオライトによる吸着現象の原理を米国クリオン社が独占的に占有できる筈は無い。他方、その吸着過程をモジュール化(吸着筐体化)した吸着装置はクリオン社の示す映像の中から把握できるが、独創的なモジュールの可能性のある事は理解できる。因みにクリオン社が示すシステムの特徴は他社のゼオライト吸着システムと比較して「除染係数が高い」「同位体吸着量が多い」「放射性耐性が良い」「ガラス固化に適合性が良い」等々を掲げ、特許事項として「補完的なモジュール化ガラス固化システム」がある事を説明している。納得できる説明内容である。
従って、客観的に米国クリオン社による海水汚染水中のCs−134,Cs−137のゼオライト吸着による固液分離を考えた時、その特徴は固液分離に関する原理的な事ではなく、モジール化等の補完的な利便性を主体にしたシステムである事を認識しなければならない。また当該事故でタービン建屋地下に溜まっている高レベル放射能は450万(Bq/cm)であると言う。この線量が全てCs−137が放射する線量と仮定すると、その重量は下記の[計算式01]に示す如く、汚染水1000トン当たり、1.40kg相当になる。更にゼオライトのセシゥム収着能を1%(ゼオライト100gがCs1gを収着)と仮定すれば、汚染水1000トン中のCs−137:1.40kgを吸収するゼオライト量は、その100倍の140kgが必要になる。なおゼオライトのセシウム収着能は東電の研究結果によれば0.6%で、30時間で1kgのゼオライトがセシウム6gを収着する事が分かっている。
計算式01
Figure 2013072871
しかし、これは先に[背景技術]の中で示した「廃液B」の水質環境において成立する除染係数で、有機コロイドが多量に含まれる「廃液A」の海水中においては、上記に設定した計画的除染係数を達成できない事が予想される事を念頭に置くべきと思う。従って、この「ゼオライト収着過程」は「凝結・凝集剤共沈法の固液分離過程」の後に実施する精製機能的処理工程として実施すべきと思われる。
(3):凝結剤共沈法(Coagulation)による固液分離法
溶液中のアルカリイオン、アルカリ土類イオン以外の金属イオンは、その種類も多く、その中の当該イオンを分析化学的に単離する場合、分属を意識した同類弁別分類処理を意図するのが常識的である。その分離分属的な媒体として考えられるのが集合包含的効果(清掃人的スカベンジァー効果)に優れている水酸化第二鉄、硫化鉄、ポリ硫酸第2鉄、ポリシリカ鉄(PCI)および水酸化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)である。これらをpH等の調整によって溶液中に共存する当該イオンを沈殿同伴によって巻き込む事(共沈現象)で、溶液中から固体として当該イオンを母液中から分離する。この固液分離法を共沈法と言い、加えた物質を凝結剤と言う。
一般的に水中の懸濁物質表面はマイナスに荷電している場合が多く、お互いに反発するか、水の膜面に覆われていて、相互間距離が大きい為に分散状態になる。このような状態に硫酸バンド(硫酸第二鉄)、あるいは上記に示した水酸化第二鉄等のプラス荷電のカチオン物質が添加されると懸濁物質の表面荷電が中和され、斥力が無くなり、相互に引力が働き懸濁物質同士が結合して大きな集合体になるが、この現象を凝結作用(Coagulation)といい、加えた物質を凝固剤、あるいは凝結剤(Coagulant)と言う。ただしこの状態では、まだ集合体の大きさが小さく、固液分離の為の濾過操作では濾過膜に目詰まりを起こし、実務的には非能率的である。そこで、これらの集合体を更に大きくする為に、高分子凝集剤が添加される場合があるが、この点については後述する(4)において説明する。
水酸化第2鉄、硫化鉄および水酸化アルミニウムの溶解度積は[表2]に示す如く、極めて小さく、母液中の鉄イオン量、アルミニウムイオン量は極めて低レベルになり、他の共存イオンが水酸化鉄等に共沈する場合、その水酸化物の溶解度積の低い事も重要であるが、上述したように水酸化鉄のpH8.5(等電点)以下における沈殿のプラス荷電効果も大きい。水酸化鉄独自では荷電斥力により集合が阻害され、コロイド状態で均一に分散しているが、このプラス荷電コロイドに多くのマイナス荷電の沈殿が引き寄せられて集合され、凝結作用(Coagulation)を起こす。例えばヨウ素の酸化イオンであるヨウ素酸(IO )は水酸化鉄に吸着され、共沈する現象は、この静電的効果に因る事で説明されている。[非特許文献4]によれば、例えば塩素水で酸化したヨウ素イオンはヨウ素酸イオンとなりマイナスに荷電する。また水酸化第2鉄はpH3〜4でプラス荷電する為、これを凝結剤にすると放射性ヨウ素は凝結剤に共沈して溶液中からの放射性ヨウ素の除去率は95%以上に達する。
木村捷二郎、他3名「水酸化鉄(III)共沈法による上水中の放射性ヨウ素の吸着除去」 Radioisotopes Vol51,No4,p149〜156,2002
他方硫化物沈殿法はpHが中性領域でも処理が可能で、金属硫化物の溶解度積がその水酸化物より小さく、硫化物沈殿の生成によって水酸化物法よりも低い残留濃度まで重金属イオンを除去できる点で有害金属除去処理法として優れた一面がある。ただし硫化物の沈殿は一般的に沈降性が悪い為、ポリ塩化アルミニウム(PAC)や塩化鉄などの凝結剤を加えて改善するのが一般的である。このような共沈法による固液分離法の現実的で大規模な応用例は下水処理における重金属イオンあるいは燐酸除去の為の水酸化アルミニウムあるいは水酸化第二鉄等による固液分離法であろう。通常、リン除去の為の薬剤添加法はBOD等流入有機物が少なく、生物学的にリンを除去するのが困難な場合や、処理設備自体がリンを積極的に除去するプロセスが無いような下水処理施設で実施される方法で例えば、エアレーションにより下水中のリンは殆どがリン酸イオン(PO 3−)になるので、これに凝結剤のポリ塩化アルミニウム(PAC法)を加えるとリン酸イオンはリン酸アルミニウムとして化学反応的に沈殿分離される方法である。このような現実的な上水、下水処理応用例の内容については多くの文献やWeb検索で解説、説明が容易に、しかも多数得られるので、これ以上の詳述はしない。
Figure 2013072871
(4):高分子凝集剤共沈法(Flocculation)による固液分離法:
上記に示した水酸化第二鉄および水酸化アルミニウムのコロイド状沈殿物(スカベンジャー)が共存する溶液中では当該イオンが共沈して、その固液分離に効果的である事を示した。しかし実務的には、この処理を行ったスカベンジャー沈殿は当該イオンを共沈した後においても、その粒子は小さく、溶媒の母液を分離する場合には、濾過膜(布および紙)が目詰まりを起こして濾過操作に極めて長時間を要する場合が多く、遂には固液分離を諦める場合もある。このような場合、縣濁物質集合体のCoagulation状態のコロイド状沈殿物を高分子凝集剤の架橋吸着作用により取り込み、大きく強いフロック体を形成させる高分子凝集剤共沈法を適用する。この巨大化共沈現象を凝集作用(Flocculation)と言う。これら両者を含め、集合包含作用により分離局在化させる物質を広い意味で、スカベンジャー(清掃人)と言う。なお通常の場合は凝結作用(Coagulation)と凝集作用(Flocculation)が混同して使われるが、支障の無い場合には拘泥しないが、本特許の文中では明らかに区別して扱う事が望ましい為、厳密に意味ある言葉として両者を区別して使用する。この際に用いられる高分子凝集剤についてはWeb検索によって日本における多くの製品、多くの製造メーカーのある事が確認できる。日本が高分子凝集剤技術について極めて高いレベルにある事を指摘して、これ以上の記述はしない。
(5):その他効果的な選択性凝結剤:
当該事故によって放出された放射性核種が近傍周辺の環境で経時的にどのように減衰するかはチェルノビル大事故の場合について、1年以上経過した段階では環境中に存在する残渣放射能はCs−137が大部分を占める。しかし当該大事故に関しては原子炉構造金属の内面腐食による放射化物質(CP:コロージョンプロダクツ)としてのCo−60も半減期が長く主要な長期的残渣核種になる。なおチェルノビル大事故における炉型(コールダーホール型)の場合には中性子減速材として黒鉛を使い、軽水(通常の水)を使用していない事から、このCPは少ない。
(5−1):プルシァンブルー(PB)色素によるCsの選択抽出:
上述したように大事故の場合はCs−137除去方法についての感心が高く、その除去法については数多くの選択的弁別剤の発見、製造、評価が行われており、その最たる弁別剤はプルシァンブルー(PB、フェロシアン化第二鉄)であろう。これはチェルノビル大事故の際には、セシウムへの吸収特性が認められ、Cs−134、Cs−137の被曝低減化剤の医薬品として使われるほど選択性があり、特定な一価陽イオンのセシウム、タリウム等と結合する吸収剤である。我が国においては、放射線総合医学研究所がその効能情報の全国管理をする事を条件に、ようやく人間の被爆低減化医薬品として販売処方が認められ(厚生労働省承認番号22200AMX00966000)、「ラディオガルダーゼ」の名称でカプセル剤として市販されるようになった。
(5−2):凝結剤Eと凝結剤F:
アルカリ金属の相互分離では(Li,Na)と(K,Rb,Cs)のグループ分離は容易であるが、後者の3元素相互の分離は比較的困難である。この3元素の合計量(K+Rb+Cs)としてであれば、定量的に沈殿させる薬剤は、[非特許文献5]、[特許文献1]に示されているように凝結剤Eが在る。
また一部Rbを沈殿同伴するが、Csを完全に定量的沈殿させる試薬で、化学構造的には上記凝結剤Eの******にフッ素原子が1ケずつ付加された構造に相当する凝結剤Fがある。これは[非特許文献6]に示された薬剤であるが、理科学辞典に掲載されている化合物で周知はされている。しかし高価(≒2万円/g)な事もあり、
凝結剤Eと共に認知度は低い。
しかしカリウム(K)が同伴されずに、しかも ルビジウム(Rb)含量の少ない海水中のセシウム(Cs)の弁別で例えば、前処理段階で大部分のCsが系外に除去された後の、精製段階過程での使用であれば、その利用価値は高く、当該放射性廃液の汚染水処理において、その様なプロセスでの使い方ができる。この様な精製段階の導入により例えば、Cs−134,Cs−137の放射能レベルが海洋へ放出可能な極低レベルにまで除染できるとすれば、汚染廃液の大量貯蔵から開放され、そのメリットは大きい。
****、外2名「****」18,p81,19** 特開平*−*****、******のセシウム*******分離方法
************etal「**********************」35,1〜5,19**
(5−3):リンモリブデン酸アンモン:
リンモリブデン酸アンモン(NH[PO(MoO12]・3HOは薬剤中のアンモニウム基が水溶液中のセシウムイオンをイオン交換する濃縮物質として有名で、放射化学分析において欠かせない収着剤である。日本における「核実験および原子力施設周辺の環境放射能調査」で公的に定められた放射能測定方法があり、その中で「セシウム分析法」は下記に示す[非特許文献7]の中で決められている。ここで降水、陸水、海水、土壌、海底・河底堆積物、農作物、牛乳、海産生物、日常食等々の環境試料中に含まれるセシゥム−137放射能の分析方法、β線計測方法および評価方法等々について、汎用的なマニュアルとして細かく指示が示されている。その分析操作の中でセシウムの濃縮物質として用いられているのがリンモリブデン酸アンモンである。このようにセシウム−137のβ線計測法による化学分離操作で吸着、弁別能の高い薬剤として万人が認めるリンモリブデン酸アンモンが何故当該大事故でセシウム−137の濃縮剤として即座に使用されないのか?それは(NH[PO(MoO12]分子に占めるモリブデン酸根(MoO12の重量比が大きく、イオン交換されるセシウム量に比較して添加されるリンモリブデン酸アンモン総量が相対的に多くなる事が理由の一つである。当該大事故の場合のように超大容量の放射性廃液から弁別抽出するには大多量の薬剤を加える事になり、他に優秀な薬剤がある為に、不向きな薬剤として出番が無くなっている。これ以上についてはWeb検索で多くの情報が得られるので、これ以上は述べない。
文部科学省「放射性セシウム分析法、第六刷」日本分析センター 平成14年11月
発明が解決しようとする課題
本発明は大きく分けて2種類の概念を有する水処理システムを含む。
第一番目は「冷却水喪失大事故⇒炉心溶融⇒水素爆発に拠る建屋外枠の破壊⇒外部冷却水に依る炉心冷却⇒恒常的な超大量廃液発生⇒超高レベル、超大量廃液発生⇒超高レベル、超大量廃液の水処理システムの完成と運転実施⇒炉心の低温冷却停止」に至る大事故時に発生する廃液に対する第I義的概念の水処理改善システムである。
第二番目は周辺環境住民の健康保全の為の上下水道生活用水の水質保全および周辺住民の子女子の為の精神的抑制低減化も含めた例えば、プール等のスポーツ用水の水質保全を維持する為の汚染水処理、降水による校庭の土壌表面低減化および水噴霧による焼却灰、植物乾燥体中の低減化等、周辺住民の生活に関連する環境および環境試料中に含まれる放射性核種の低減化も含めた広い意味での第II義的概念の水処理改善システムである。
第I義的水処理改善システムも第II義的水処理改善システムも両者共に極めて深い概念的な意義があり、改善システムの速やかな施行が強く希求されている。
第I義的水処理改善システムは大事故時放射性廃液の緊急的水処理に関するものであるが、超大量および超高レベルであるが故に被曝線量を原因として「冷温停止」処理作業が遅れる傾向にある。その解決策の最優先課題は本発明で示すような水処理技術である。これらの観点から下記要点を考慮した課題を解決することが希求される。
*緊急性を考えて、設備、装置の構築所要時間が短い水処理法である事。
*単純な方法による短時間水処理法である事。
*施設周辺環境で流用できる設備、装置を使う事で、上記の時間短縮を満たす事。
*被曝線量を考えた簡単な幾何学的遮蔽位置、距離および遠隔操作ができる事。
これらの水処理技術の実施においては当該大事故における特殊事情が発生している事を「段落:0020」の[表1]に示したが、複合的で複雑な放射性廃液を水質の大きく異なる2種類の廃液に分類し、その廃液A、Bの実体と水質および超高レベルの放射能を把握して、除染効果が確実に確認され、放射性核種の除染係数が高く、且つ廃棄物減容率が比較的高い固液分離法の構築が望まれる。
また第II義的あるいは派生的な原子力施設事故時の周辺環境の汚染水(降水、雨水、陸水、地下水、湖水、池、プール、および海水等々)および環境試料中の除染処理法も周辺住民の生活環境問題として極めて重大な事項であるが、この場合の特徴は放射能レベルが極めて低いのであるが、更に低いレベルへの除染技術が求められる点にある。
このように第I義的水処理改善システムと第II義的水処理改善システムには、その放射能レベルにおいて「天と地」程の落差があり、第II義的水処理改善システムに第I義的水処理改善システムと同様のシステムを適応しても「サシミを牛刀で裁く」事にもなり、本特許の中で放射能レベルの高低に対応した複数の水処理システムを考えて、夫々に適応すべきと惹起した。そこで放射能レベルを下記の「段落:0059」[表3]に示した3段階の範囲に分級して、夫々のレベルに対応した「極低レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築」、「低〜高レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築」および「超高レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築」の3段階に分けて、課題の中で夫々に対応した汚染水中放射性核種の固液分離法の課題を提示した。なお放射能レベルの値は単位を種々変えて示し、単位によって惑わされないように計ったが、第3段階目の超高レベルにおいては放射能を無視して単純に重量のみで表現すれば、通常の化学分析で取り扱うmg、gオーダーの重量になっている点に注意が必要で、その確認実験は必ずしも超ミクロの放射能を使って放射化学的に実証しなくても、化学分析的にマクロな重量実証実験でも十分な程分子数、原子数は厖大である。
[課題1]:「極低レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築」:
当該大事故環境周辺住民の「上、下水道生活用水の水質保全」および「プール等のスポーツ用水の水質保全」を維持する為の簡便且つ廉価な水処理改善システムは大事故によって心身共に打ち拉がれた周辺住民の心情をも左右する大変重要な対応型のシステム構築で、第一に重要な課題として掲げた。この場合の水中放射能レベルは極めてバックグランドレベルに近い放射能あるいは検出限界レベルに近い放射能の高低が問題になる場合が多く、「1トン海水中の放射能検出限界レベル〜1cm当りGM計数管のバックグランド(10cpm)の範囲を考慮したレベル」に対応した「極低レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築」が課題である。
[課題2]:プールと校庭土壌の除染:
周辺住民の子供達の精神的、身体的ストレスを軽減し、安心してプールでの水泳が楽しめるように対処する為、プールの水質改善を簡便且つ廉価に実施できる方法を考える事および学校の校庭土壌の改良も検討する。この土壌改良は降雨による土壌洗浄と考えると、降雨中放射性核種の土壌による除染あるいは土壌中放射性核種の降雨による適宜な溶出作用と考えると、これも水質改善システムの一環であるとして考える事ができる。また焼却灰および稲藁等植物乾燥体中の放射性核種の低減化も放射性セシウムがイオンとしての存在割合が多く水移行が容易に起こる事で考えると、これらに水を噴霧する事で簡単に低減化できる事を考慮して環境全体にわたる広い意味での水経由の改善システムとして考えた。
[課題3]:「低〜高レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築」:
大事故発生施設から放射性廃液が漏洩して周辺環境への拡散が始まった場合、できうる限り初期段階で狭い区域内に留めて、拡散を防止する事が極めて重要な事である。然もそれに引き続いて拡散が防止されている当該区域が海洋の一部であるような場合が多く想定されるので、即座にその海水中放射能を低減化する為の水質改善システムが施行されなければならない。このような場合を想定して「1cm当りGM計数管のバックグランド(10cpm)を考慮したレベル〜トレンチ最高濃度(≒500万(Bq/cm)の約500分の1相当の濃度範囲の放射能」を考慮した「低〜高レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築」が課題である。
Figure 2013072871
★:トレンチ汚染水がCs−137のみと仮定して、その濃度を450万(Bq/cm)とすると、その汚染水1000ton当りに含まれるCs−137の重量W(g)(ρ≒1とする)は(注1)の3.12mgを濃度で450倍、重量で1000倍の4.5×10倍すれば求まるが、既に[0031]の[計算式01]でも示されている。1ton当りでは1.4gとなり、1円玉1.4枚分の重さである。W(g)≒1.4kg/1000ton=1.4g/1000000g=1.4ppm
[課題4]:超大量の放射性廃液の水処理方法に対応する大容量固液分離法の構築が必要であるが、特に濾過法の選択が重要である事から、新しい電源を要しないPassive typeの単純濾過法を提示し、電気回路トラブル、機械制御トラブル、濾過装置トラブル等々から開放され、また濾過の為に長時間を要し、それが律速段階になる要因もあり、それを緩和する為の課題もある。
[課題5]:「超高レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築」:
海水中濃度で約500万(Bq/cm)と言う、これまで人類が経験した事の無い超高レベルで、然も超大量の放射性廃液の放出を経験した。このようなレベルになると人間の作業もできないほどに危険な高線量レベルである為、その除去方法、除染作業および除染により発生した濃縮型超高レベル固体、液体廃棄物処理、処分の問題も関係して極めて難題な水処理改善システムになる事が想定される。これらに相当するレベルとして「トレンチ最高濃度の約500分の1レベル〜トレンチ濃度の約20倍に相当する1010(Bq/ton)〜1014(Bq/ton)の濃度範囲の放射能」を考慮して、下記項目についての検討も含め「超高レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築」が課題である
(1):廃棄物容量と処理廃水容量との減容率(仏国アレバ社の減容率は≒10−2
(2):減容率を高くした場合の遮蔽問題。
(3):減容率を高くした場合の遮蔽内面の表面温度(強度、溶融の観点から)。
(4):このレベルの線量を照射する核種の量はマクロ量になり、馴染みの重量単位mg、gで表現される事になり、通常のマクロ量の反応量として捉える事ができる為、必ずしも放射化学的な超ミクロの放射能的確認実験は必要なく、通常の分析化学的な定性、定量結果による確認実験で実証できる。
[課題6]:
緊急性を考えて、原子力発電所敷地内で簡単な改良、改修で流用できる下記の施設、設備の応用を考える。
(1):4号機冷却地下部取水管6本を反応槽として流用する件:4号機冷却地下部取水管は腹水器直下の取水管部分で、ここには原子炉が停止しても海水が残ると同時にムラサキイガイ、フジツボ等海洋付着生物が密集して生息する場合がある。しかし4号機は停検時期であった為、当然の事ながら付着生物は剥離除去されてムラサキイガイの貝殻の積層も無く、比較的キレイである事から、その容量(号機およびポンプNoによって長さは異なる)を活かして反応槽とする。
(2):4号機冷却地上部取水管を貯水槽として流用する件:1〜4号機地上取水管は地表面に沿って配管されている為、超高レベル放射性廃液を入れる反応槽としては被曝を考えれば流用できないが、処理後の放射能レベルが低くなった廃液については被曝線量を考慮しないで済む事から、その6本の空間容量(地下部取水管より長いので容量も大きくなる)を利用して処理後の貯水槽として利用する。また取水管タンクは超高レベル廃液の処理済海水で除染が完了していない低〜中レベル放射能汚染水についても被曝線量をチェックしながらの使用は可能である。
(3):4号トレンチを反応槽として流用する件:各号機のトレンチの形状は様々であるが、4号機は定検中であった事から、原子炉内に燃料が無く、その破損漏洩は勿論無く、トレンチ内放射能レベルは1〜3号機トレンチに比較して放射能レベルは低く、またトレンチの長さが短い割には立杭が5ケ所在り、この空間およびトレンチ立杭深さ空間を利用した有効な利用方法が有る。ただしトレンチ水位およびタービン建屋の汚染水位の経過時間変化を観ると少なくとも3号機建屋の汚染水と繋がっているように思えるので注意が肝心である。
(4):希ガスホールドアップタンク(以後“希ガスタンク”と言う)あるいは新規製造タンクの流用の件:これらタンクを流用して吸着槽およびデカンテーション槽として使う。ただし「タンク」の発想はAサイトからの類推であるが、モジュールタイプの場合は別途新規製造した100〜120tonの空タンクを使い、容量は適宜定めればよい。
[課題7]:
希ガスホールドアップタンク内の活性炭充填剤内部では、既にXe,Krの放射性希ガスの殆どは崩壊している筈であるから、この活性炭を有効に利用すべきと思われる。
希ガス用での活性炭の使用は気相中のガス流動の保持時間差の利用が目的であったが、今回は海水中の放射性核種の吸着現象の利用であるから当該活性炭が水処理用として最適条件下にある品種とは限らないが、他の吸着物質より利用価値は大きい。
課題を解決するための手段
本発明の課題の内容は水処理技術の概念、廃液の種類、放射能レベル、最終廃棄物固体の形態等々に関連して多岐に渉っている。そこで先ず本発明で考えている解決手段の為の基本的考え方を述べる。
その第1は液体溶存状態の固定化法と固定化した固体を液体から分離する固液分離法の選択肢に関してである。
第2は解決手段の為には「除染係数」のみでは無く、将来的な最終処分を考えると「減容率の優劣評価」も水処理改善システムには重要な事項で、仏国アレバ社の減容率(QRF)は「段落:0071」で求めているようにQRF=10−2で良い評価では無い。
第3は「除染係数が極めて大きく」「減容率が極めて大きい」汚染水処理システムが必ずしも最高の評価にならない場合がある。例えば燃焼灰比放射能の通常の埋設基準が規定されている場合、その規制値(例えば8000(Bq/kg灰))を超過すると通常の廃棄法(埋め立て地に棄却)では処分できなくなり、特定場所に設置された「青森県六ヶ所村の低レベル放射性廃棄物浅層処分場等々」或いは「高レベル放射性廃棄物処分場(今だ場所の特定ができていない)」への搬送処分が義務付けられる事になり、その最終処分コストは極めて高額になる可能性がある。特に極低レベルの汚染水処理システムにおいては有機物燃焼過程を経た灰化物として棄却可能の為、吸着・吸収体として有機物を選択できる。他方、灰化物として棄却できずにガラス固化体として最終処分する場合には焼却過程が付随する有機物吸着・吸収体は不利になり、この場合は無機物吸着・吸収体が有利になる。このような規制値による許認可の判定基準が水処理システム或いは水処理方法の優劣判定基準を凌駕する事になるので注意が肝心である。
(第1の基本的解決手段の考え方):
放射性汚染水の水処理改善システムにおける「液体溶存状態の固形化法」および固形化後の「固液分離法」について本特許で考慮しているプロセスおよび必要素材を[表4]に示して、全体の流れの把握を容易にした。この中から適宜な素材を選択して適宜な水質改善処理システムを完成させる。
Figure 2013072871
(第2の基本的解決手段の考え方):これまでの廃液処理の報道から視聴すると、放射性核種の除染係数のみで除染プロセスの優劣を評価する傾向にあるように思われる。しかし除染係数の大小も重要な事であるが、例えば汚染水の処理容量が1tonであるのに対して、処理後の廃液容量が10tonに達しているとすれば、最終処分のガラス固化体あるいは地下浅層埋設処分まで考えると極めて将来に高額なコストを先送りする事になり、極めて将来への負荷が大きい。また最近において、通常のゴミ廃棄物を業者に処分依頼すると廃棄物容量(例えば2トン車容量)で価格が決定される等廃棄物処分には必ず容量因子が付きまとう。このように高レベル汚染水が浄化されても、その原因となる放射性物質は大なり、小なり廃棄物に移行しただけで、それ自体が減るわけではない。放射性物質を薬剤で沈殿させたり、吸着剤で取り除いたりすれば水は浄化されるが、後には濃縮された放射性廃棄物が残る。この宿命は如何なる方法においても同様であるが、廃棄物処分システム、この場合は水処理プロセスであるが、その優劣は放射性核種の汚染水からの移行率(除染係数)をできる限り高くして移行先の廃棄物容量をできる限り小さくコンパクトにして(比放射能を高く)保存できるか否かにある。このような観点から、廃棄物処理プロセスの評価は「除染係数(DF:Decontamination Factor)」の大きさは勿論重要であるが「廃棄物減容率(QRF:Quantity Reduction Factor)」も極めて重要である事が理解できる。例えば仏国アレバ社の固液分離システムによるQRFを新聞報道の値から求めると、以下のようにQRF=10−2で評価としては決して良くない。
仏国アレバ社のQRF:
新聞報道では「東電の計算によると20万トンの高濃度汚染水を処理する事でアレバ社の装置からだけでもプール4〜5杯分の約2000tonの廃棄物が出る計算」になる。
汚染水の比重を1(ρ=1)として考えると、その減容率QRF(1)は
QRF(1)=[2000m/200000m]=10−2になる。
即ち100mの汚染水を処理したら廃棄物容量が1m発生する事になる。また異なる報道では福島第一原発敷地内に溜まった高濃度放射性汚染水量は11万トンで25メートルプール200杯分である事が示されたが、この計算に従えば20万トンでは364杯分になるから、アレバ社の装置から放出される廃棄物量がプール4〜5杯分とするとその減容率QRF(2)はQRF(2)=[4〜5杯分/364杯分]=(1.1〜1.4)×10−2>10−2になる。
いずれにしても大略的数値でQRF(1)≒QRF(2)≒10−2になる。
先に1ton海水中のCo−60を放射化学的に超微量分析を行った際の経験に依れば、この時に発生した最終的高分子沈殿凝集剤の量は半乾状態で800ml、乾燥状態で400mlの容量であったからこの場合の減容率はQRF(3)=[0.4〜0.8l/1000l]=(4〜8)×10−4である。このQRF(3)の代わりにアレバ社のQRF(1)=10−2を当てはめると、1ton海水処理で10l以上の高分子凝集沈殿が発生する事になり、この類推から考えてもアレバ社の水処理システムは優秀なシステムとは言えない。このレベルであれば放射能が伴う事を度外視すれば日本独自の性能のよい水処理システムあるいは水処理業者が沢山ある。アレバ社が将来的に廃棄物最終処分についても業務受注を考えているのであれば、廃棄物処理容量が多いほうが契約金額が大きくなる事で意義のある事かも知れない。しかし日本国として考えた場合、このようなプロセスによる処理処分は極めて得策ではなく、賢明な方策とは言えない。日本独自の優秀な技術により自前の技術を確立すべきである。以上に示すごとく減容率(QRF)についても評価する事は将来のコスト低減、抑制の為にも極めて重要な事で、これらについても考慮するのが解決の為の手段であるべきと惹起する。
米国クリオン社のQRF:ゼオライトに対するセシウム収着能は東電の研究結果に依れば0.6%で30時間で1kgのゼオライトがセシウム6gを収着する事が分かっている。先の計算では450万(Bq/cm)の廃液中放射能を全てCs−137とすると[計算式01]より1000ton中のCs−137総量は1.4kgであった。従って全廃液量が20万トンあって、全てをCs−137とした場合の合計量(ΣW)は208kgである。
Figure 2013072871
このCs−137の量を全量吸収するゼオライトの総量(ΣZeo)は
Figure 2013072871
従って、ゼオライトの減容率QRF(4)は
Figure 2013072871
上記観点からゼオライトによるCs−137に対する減容率QRF(4)は10−4オーダーでアレバ社の10−2オーダーより優秀である。
米国クリオン社のゼオライトによるCs−137の除染係数が予想に反して悪い結果を与えているようであるが、「段落:0004」で以下のように記述した。
「仏国アレバ社の凝集剤固液分離法を米国クリオン社のゼオライト処理後に実施す る事を公表し、その方向で施設、設備の構築を進めているが、この処理の順番はバ クテリヤが関連し、大量の有機コロイドが発生する事象を考慮した処理順番ではな く、少なくとも1〜3号機タービン建屋地下に溜まっていると考えられる冷却水地 下部分取水管内の高レベル放射性海水廃液処理に関しては、その処理の順番を逆に して、アレバ社の凝集剤固液分離法を先に、米国クリオン社のゼオライト処理を後 に実施すべきである」。
この指摘に対応する汚染水は[表1]の廃液Aに相当する場合で、例えば事故時に復水器直下の取水管地下部分に海水が残った場合の汚染水であるが、これらがトレンチに漏洩しない限り大量の有機コロイドの混入は無いであろうと思われる。従って上述のような断定的な指摘はできないが、一般的に物理化学的に考えればゼオライト吸着は結晶内部の陽イオンとのイオン交換であるからゼオライト結晶表面の汚染はその吸着速度の律速段階になる。他方凝集剤共沈法は結晶全体の電荷の正負の問題或いは高分子凝集剤の包み込み架橋現象(Flocculation)であるから結晶表面の汚染はそれ程厳しい条件にはならない。このように考えるとゼオライト処理は精製過程で導入すべき処理法と言えるから、最初に仏国アレバ社の凝集剤固液分離法により汚染廃液を処理し、然る後に米国クリオン社のゼオライト処理を行うように処理の順番を逆にするだけで除染係数の改善が期待できる。
(第3の基本的解決手段の考え方):
廃棄物の最終処分形態を考慮しなければならない。廃棄物の放射能レベルが極めて高く、最終処分の形態がガラス固化体にせざるを得ない場合は、例えば[表3]に示した第3段目の「超高レベル放射性汚染廃液」の水処理処分の最終形態は有機物の燃焼を伴わない無機鉱物である事が望ましい。他方放射能レベルが低く燃焼灰化処分が可能な場合は強熱減量(iL:Ignition Loss)を99%(灰化率1%)とした場合、例えば焼却灰比放射能が8,000(Bq/kg)まで通常の埋め立て埋設処分が許容される場合(環境省は6/28焼却灰の処理について焼却時焼却灰の放射能が8,000(Bq/kg)を超えた場合には通常の埋め立て処理を行わないように指導すると発表)には、水処理システムにおける最終処分濃度が80Bq/kg以下の可燃有機物であれば灰化後には80Bq/10g(=8000Bq/kg相当)以下になり、埋め立て認可条件を満足する。従って例えば、25m×20m×水深3mのプール(1.5ton)にCs−137が1000(Bq/ton)の濃度で汚染して、これを有機吸収剤20kgで100%の捕集率で浄化ができたとすると、有機吸収剤のCs−137収着濃度は1500Bq/20kgになり、比放射能は75Bq/kgであるから上記の条件を満足する事(75Bq/kg<80Bq/kg)から、このような場合にはガラス固化体を考える必要は無いので、除染性能の優秀な有機物吸収剤の使用が許容される。従って通常の[課題1]および[課題2]の低レベル域においては有機吸収剤が使用できる事になり、より広い選択肢から水処理システムを構築できる。なおレーヨンの一部には灰化率0.1%以下のものもあり、この場合には減容率を生かし、焼却過程後にガラス固化体法による最終処分法を選択するか?あるいは収着性能が10%であるような性能の悪い吸収剤を選択するか?或いは100%収着剤で収着後に10倍の非放射性物質焼却灰で希釈して埋設処分するか?状況に応じて判断すればよい。このように最終処分の廃棄物形態が放射能レベルによって左右される事が起こり、従ってその水処理改善プロセスの選択肢は制限されるから、この点も考慮して課題を解決する手段を選ばなければならない。
以上の「基本的解決手段の考え方」を基に課題別の解決手段を以下に示した。
(課題1の解決手段):
○放射能レベルが極めて低く周辺住民の生活環境との関連性が高いので、その濃縮過程は「最高除染係数」と「最高の減容率」を目指す事よりも、安全性を重要視した方法を採用するのがよい。
○海洋有機シルトを基本とした固液分離法で濃縮率が未達になる場合にはCs−137については凝結剤Dを使う。アルカリ性、還元性環境、および加温状態での凝結剤Dは加水分解等により不安定になるが、海洋有機シルトの添加により安定したスカベンジャーに変身する。
○放射性物質の最終収着体として濃縮物の比放射能が低い事が期待されるので、有機物収着方式を採用できる。
○Cs−134,Cs−137については高分子収着剤に凝結剤Dを収着させた活性化高分子収着剤を用いた大型カラム濾過法により固液分離する事ができる。
○その他の核種(Co−50,Mn−54,−−−−−−−−−)については海洋有機シルトを基本として[表4]における(ii)〜(v,vi,vii)、(ii)〜(iii)〜(iv,viii)過程から凝集剤Kの使用も含めて適宜な選択肢を選べる。
(課題2の解決手段):
○放射能レベルが極めて低く、周辺住民の子、女子の生活行動との関連性が高く、課題1と共通の解決手段になる場合が多く、その濃縮過程は「最高除染係数」と「最高の減容率」を目指すよりも、安全性を重要視した方法を採用するのがよい。
○放射性物質の最終収着体として濃縮物の比放射能が低い事が期待されるので、有機物収着方式も採用できる。
○プール内のCs−134,Cs−137の浄化法として、凝結剤Dを収着させたカーテン状、網目状の布をプール内を往復させる事により吸着除去する方法がある。
○Cs−134,Cs−137については高分子収着剤に凝結剤Dを収着させた活性化高分子収着剤を使用した大型カラム濾過法による固液分離法も可能である。ただし活性化高分子収着剤の灰化後の比放射能は8000(Bq/kg灰)以下にする。
○その他の核種(Co−50,Mn−54,−−−−−−−−−)については[表4]における(ii)〜(v,vi,vii)、(ii)〜(iii)〜(iv,viii)過程で凝集剤Kの添加も含めて適宜選択肢が選べる
○土壌の降雨による洗浄浄化はCs−134,Cs−137についてのみ考え、中空杭の中に凝結剤Dを付着させた「活性化高分子収着剤B」を充填し、さらにその中心部を中空にして、その中心部から浸透した雨水を抽出し、汲み採る事ができるようにした縦棒式雨水抽出杭方式による。なお他の核種については土壌による吸着能が高い為(殆どの核種は30cmの土壌で吸着されてしまう)、覆土等による方式が適切と考えられる。
○焼却灰および植物乾燥体中のCs−137については水によるイオン移行性が高い為、「活性化高分子収着剤B」を担持した繊維状、スポンジ状、セラミックボール状等の回転子を回転駆動機器(ロータリーキルン、セメントミキサー、洗濯機等々)に入れ、当該対象物を投入して、適宜な水分量を噴霧して湿潤状態にして回転するだけでCs−134,Cs−137を低減できる。
(課題3の解決手段):
○低レベル比放射能領域においては(課題2の解決手段)と同じ。
○高レベル比放射能レベル領域においては[表4]における(ii)〜(v,vi,vii)、(ii)〜(iii)〜(iv,viii)過程から適宜選択できる。
○ここで特に注意するのは例えば1号機〜3号機の海側前面にある「取水港開渠」における拡散防止策であろう。海洋へ広く拡散する以前にこの領域で浄化、除染できれば海洋汚染を軽微な段階で解決できる点で重要である。ここで一番性能が発揮できるのは「海洋有機シルト」であろう。
(課題4の解決手段):
○電源を要しないPassive Typeの水の自然重力による滴下分離方式を採用できる事を利用する。この事により電気回路トラブル、機械的トラブル、装置トラブルから開放されるメリッがある。
○この為には「高分子凝集剤K〜N」の適応が必須である。
(課題5の解決手段):
○当該の汚染水は超高レベルの比放射能である為、その濃縮過程は「最高除染係数」と「最高の減容率」を目指す事が肝要で、その為の汚染水浄化処理システムを構築する事
○Cs−134,Cs−137については高分子収着剤に凝結剤Dを収着させた大型カラム濾過法、或いは少々薬剤は高価であるがCsに対して極めて選択性の高い凝結剤Fを活性炭、無機収着剤C、有機収着剤A,B,C或いは高分子収着剤Bに収着させた大型カラム濾過法で固液分離する。ただしこの場合、その他の核種の固液分離の操作後に行うべきで、多量の有機コロイドが含まれる事が予測される汚染海水についてはその吸着性能が極端に悪化する事が予想される事から、その操作の順番が重要である。
○その他の核種については凝結剤スカベンジャーとして「活性化無機収着剤B」、「Fe(OH)」、「有機シルト」等々を使用し、更に凝集スカベンジャーとして「凝集剤K〜P」を用いて(viii)過程により固液分離する方法を構築する。燃焼過程が許容される場合は収着容量の大きな「活性化有機収着剤A,B,C」と「凝集剤K〜P」の適用が効果的である。
(課題6の解決手段):
緊急性を考えて、原子力発電所敷地内で簡単な改良、改修で流用できる下記の施設、設備の応用を考える。
(1):4号機冷却地下部取水管6本を反応槽として流用する件:
4号機冷却地下部取水管は事故当時定検中であった為、ムラサキイガイの貝殻の積層も無く、比較的キレイである事および他の1〜3号機に比較して放射能レベルが低い事および地下に埋設されている為、幾何学的放射線遮蔽ができる事から、これら地下部取水管を直径2m、長さ約44m×3本(1本当り容量は水平部分で約126m)、長さ約55m×3本(1本当り容易は水平部分で約176m)と仮定して、その容量(号機およびポンプNoによって長さは異なる)を活かして反応槽とする(随時他の地下部取水管も空になったら利用する)。
(2):4号機冷却地上部取水管を貯水槽として流用する件:
1〜4号機地上取水管は地表面に沿って配管されている為、超高レベル放射性廃液に入れる反応槽としては被曝を考えれば流用できない。しかし汚染除去処理後の放射能レベルが低くなった廃液については被曝線量を考慮しないで済む事から、これら3本の空間容量(地下部取水管より長いので容量も大きくなる)を利用して処理後の貯水槽あるいはデカンテーション槽として利用する。ただし入口も出口も開放状態なので入口、出口位置を決めたら、夫々取水管の上部から穴を開け、そこに超大型の風船2個をいれ、穴の直下位置を中心に、それぞれを1m以上離して設置する。勿論風船はテントで使用するような頑強な布で被覆補強されたものを使うが、これに圧搾空気を入れる事で穴の直下分に空間のある風船隔壁ができる。次いで穴の直下にできた空間に水ガラスセメント等強力充填剤を注入すれば即席で強固なセメント隔離壁ができる。セメントが固化したら内側風船の更に内側の適宜な位置、例えば穴中心から2.5m以上の位置に溶液の出入り口用の穴を更に1個開ける。第2の穴ができたら、隔壁になっている風船を撤去すると同時に蓋を設置して、貯水タンクとして機能するように例えば円周部に接着剤補強するとか、蓋にバルブを取り付けて動力による取水、放水ができるように工夫する。これと同じ造作を他の一方の他端位置にも施し、出口と入り口の対を完成させる。
このように地上部取水管に溶液の出入り口を付設すれば地上取水管は約200トン前後の貯水槽に変身する。このような流用により1号機に2本、2号機〜4号機で夫々3本で、合計11本あり、平均200トンとすれば2000トン余りの貯水タンクが即座に製作できる。然も取水管強度は維持されている筈であるから強度的にも安心ができる。また、この取水管タンクは超高レベル廃液の清浄化処理後の海水で外洋放出が出来ないような低レベル放射能汚染水の貯水槽としても被曝線量をチェックしながらの使用は可能である。
(3):4号機トレンチを反応槽として流用する件:
各号機のトレンチの形状は様々であるが、4号機は定検中であった事から、原子炉内に燃料は無く、その破損による放射能寄与が少ない為、トレンチ内放射能レベルは1〜3号機トレンチに比較して低く、またトレンチの中間箇所に立杭が5ケ所在り、この空間およびトレンチ立杭深さ空間を利用した有効な利用方法が有る。然も前項(2)に示した地上部取水管を加工した貯水槽の出入り口とトレンチ入り口が近傍にあり、取水管加工貯水槽とトレンチを合体して利用する事で、例えば4号機の取水ポンプの稼動が可能であれば、(2)の取水ポンプ側の出口をトレンチと直結できるように工夫すればトレンチ、取水管の大容量の海水、溶液を大容量取水用ポンプで駆動攪拌ができる流動的な大容量反応槽ができる。
(4):希ガスホールドアップタンク(以後“希ガスタンク”と言う)あるいは新規製造タンクの流用の件:これらタンクを流用して吸着槽およびデカンテーション槽として使う。希ガスホールドアップ施設(以後“希ガス施設”と言う)は事故後1ケ月以上経過しているので、施設に注入した希ガスの殆どは半減期により消滅していると判断されるので、希ガスによる被曝は考える必要はない。現在使用されていない1〜4号機用の“希ガスタンク”は多数あり、例えば上記に示した地下部取水管1本当り水平部分の容量(173m)を満足する為には、タンク仕様を直径3mΦ、高さ8mと仮定すると、1基当り容量は約56.5mで、3〜4基を直列および並列にすることで、その容量を確保できる。3〜4基を直列にして吸着槽とし、3〜4基を並列にしてデカンテーション槽或いは貯水槽として流用する。ただし「タンク」の発想はAサイトからの類推であるが、モジュールタイプの場合は別途新規製造した100〜120tonの空タンクを使い、容量は適宜定めればよい。
(課題7の解決手段):
除染効果向上の為、“施設タンク”内部に大量に保存されている活性炭およびこれを薬剤修飾して活性炭を利用する。特にヨウ素131(I−131)およびルテニウム107(Ru−107)の吸着および薬剤付着によるセシウム134(Cs−134)、セシウム−137(Cs−137)の吸着により、除染係数の大幅向上を目指す。この活性炭除染過程は先に定義した「廃液A」内に多量に存在する有機コロイドの吸着妨害を考慮して、凝集剤による固液分離の初段プロセス施工後の後段プロセスとして位置付け、活性炭を高い吸着薬剤の付着単体として位置付け、除染係数の大幅向上を目指す。第一段の凝集剤固液分離プロセスで例えばCs−134,Cs−137の大部分が除去されれば、その後段においてはCsに対して極めて選択性は高いが、高価で使用不可であったような薬剤についても、その使用が少量で限定的になる事から使用可能となる。例えば前述したCsに対する凝結剤F)の使用が可能となり、より一層の除染係数の大幅向上が期待できると共に、選択的吸着量が高ければ付着量単体の活性炭量は少量で済む事から最終廃棄物処分量を大幅に抑制して、将来のガラス固化体最終処分形態の量を大幅に低減化できる事になる。また除染係数を極めて高い状態で処理できれば処理水を直接海洋に放出できる可能性も生じ、徒に増加する汚染処理水の容量を低減できる点で注目できる技術であろう。
発明の実施の形態および実施例
以下、図面および表を参照しつつ、本発明の実施の形態および実施例について説明する。本発明についてはこれまで放射能レベルによって「極低レベル」「低〜高レベル」「超高レベル」の3段階に分類し、夫々の階層において適宜な放射性核種の固体化法と固液分離法のある事を示してきた。以下の説明においては「極低レベル」については上、下水道水質改善を主体とする[課題1]で説明した内容を中心に本発明の「第1の実施の形態」として説明する。また「極低レベル」の[課題2]の周辺住民の子、子女に対するプール、校庭の土壌改良および焼却灰等の低減化については「第2の実施の形態」として説明する。また「低〜高レベル」についての[課題3]については「第3の実施の形態」で、また「超高レベル」については濾過法の開発の[課題4]と[課題5]を合わせて「第4の実施の形態」で、および施設・設備の流用に関する[課題6]および[課題7]については「第5の実施の形態」として説明する。
(第1の実施の形態)
ここで述べる実施の形態は当該大事故環境周辺住民および一般的な自然環境において上下水道生活用水保全の為に行う放射性核種汚染水の水処理浄化を実施する場合の具体的事例の形態に関する。この低レベルで周辺住民の生活用水に関連する放射能汚染の水質改善事例は先の[非特許文献3]および次に示す[非特許文献8]の中で紹介されているチェルノビル事故時の対処療法的研究が良い事例で、下記にその大略を箇条書きにして示した。
(1)ウクライナ政府はキエフの飲料水の取水を事故後1週間でドニエブル川よりデスナ川に切り替え、水道水中の懸濁物質は上水処理により除去され、溶解物についてはドニエブル浄水場においてI−131およびRu−106を活性炭フイルター、Cs−134、Cs−137およびSr−90をゼオライト吸着フイルターにより除去して効果があった。
(2)表層水汚染の低減化の為に河川底土の浚渫により汚染粒子を除去する方法或いは、河川にゼオライト障壁を設けて河川水の濃度低減化を試みたが、何れの場合も表層水放射能汚染の浄化には効果が無かった。
(3)湖沼水については石灰やカリウムを湖水に散布して淡水魚のセシウム摂取を同位体希釈法的に低減化する実験も行われたが、あまり効果的ではなかった。
これら活性炭およびゼオライトについてはこれまで幾度と無くTMI事故時における使用例も含めてマスコミ等で報道されている内容の為、新鮮味が無く周知の事実になっている。しかし効果の無かった例については、何故陸水の河川でゼオライトの効果が発揮できなかったのか?湖水で化学的挙動の似ている石灰、カリウムによる同位体希釈法的な効果が現れなかったのか?また今回米国クリオン社のゼオライトによる除染係数が期待に沿わず当初の目標より、かなり成績が振るわない理由は何なのか?これらについては同様のマイナス共通項があるように思われるが、後述する事にして、ここでは触れない。
村主進「チェルノビル事故における環境対策とその修復」 http://www.euup2.jp/newpage35.html
ここで我々が注目するのは自然現象の中で海洋湾外の砂質海底土には検出されずに、湾内の黒色ヘドロ状海底土に放射性核種が強く濃縮される事で、一般的には忌避される現象である。この強く吸着している物質を単離して放射性核種の吸着スカベンジャーとして利用できれば自然界に存在する極めて安全性が担保されたスカベンジャーとして利用できる事になる。この安全性の高いスカベンジャーを使えば生活用水の低レベル放射能汚染の高度な水処理改善システムの構築が可能となる。しかし一般的には陸水河川におけるシルトの吸着能は極小粒径のシルト質・粘土質粒径のうち例えば、カオリン等の粘土質の極小無機鉱物が吸着活性を示すと言われており、有機シルトでは無いとされ、次に示す[非特許文献9]にも示されているように、原子力発電所のランドリードレン、フロアドレンにおける放射性核種の粒径別放射能分布にも同様の傾向がある。そこでこの有機シルトスカベンジャーの抽出法を試みた。
T.Hashimoto,et al [Physical and Chemical Properties and Composition of Liquid Effluents of Nuclear Power Reactor] 7th.International Congress of IRPA,Sydney 10〜17,1988.
(実施例1):天然に存在する放射性核種スカベンジャーの抽出法
自然界に存在して放射性核種をかなり濃縮する物質を実感したのは「内湾の極めて有機質の多い、即ち強熱減量(iL:ignition Loss)が極めて大きい80〜90%も含む試料のあるような海底土である。これら海底土においては粒径分布においても75μm以下粒径のシルト質・粘土質粒径含量が極めて多く、真っ黒な色相を示し、Cs−137、Co−60、Mn−54等々の放射能が高い」と言う事であった。この事実に従って[図1]と[図2]を求めた。[図1]は横軸にシルト含量(%)、左縦軸に強熱減量(%)、右縦軸にCs−137の比放射能(相対値)をプロットしたもので、75μm以下のシルト含量(%)が多い試料ほど強熱減量(%)、比放射能共に高く、しかも右肩上がりで、その勾配も同じ(単位を調整)である。また調査時期を同じにして、湾外の砂質海底土の同様のデータを求め図示したのが[図2]であるが、75μm以下のシルト含量(%)が4%以下を示す試料が多く、しかも強熱減量(%)はシルト含量とは無関係に分散している事が分かる。これらの結果からシルト含量が極めて高い海洋湾内のヘドロ状海底土は有機質を多く含みシルト質組成含量が高いほど放射能を多く収着(吸収・吸着)する。この事は一般的に陸域での物質吸着現象のデータと矛盾するかもしれないが、海洋に多く生息する海藻類のアルギン酸、カラゲナン等々は有機質粘着物質で、特にアルギン酸は褐藻類に特有な天然多糖類で海水中の金属イオンと塩を形成しゼリー状になり、凝集剤の典型的な例でもある。また越前海岸では冬季に発生する泡が道路まで飛散して通行止めになる等被害が発生する毎年恒例の自然現象を観察できるが、この正体は対馬暖流で運ばれてくる界面活性物質が原因である事を実証する機会にも遭遇し、対馬暖流が裏日本沿岸の陸地側に大きく蛇行する時に限り発生し、若狭湾から能登半島輪島沖まで、泡の発生し易い海水に変身する事を解明する事ができた。このような海洋の懐の深さには驚嘆し、敬服もしている事から、今回のシルト質の放射物質の吸着はこれら高分子有機質に由来しているのであろうと惹起された。これらは年間を通して発生蓄積されていて、かなり多量に存在し、発電所、漁港等の湾内において特に湾奥或いは海水が渦を巻く中心部のように海水が停滞する場所で安定的に採取が可能である。
[図1]
[図2]
75μm以下の有機シルトは有機質としての特性もあるが、表面積が大きい事による疎水性物質の吸着能が高くなる事にも起因する。例えば代表的な海底土の粒径分級として砂/シルト/粘土=1mm/0.01mm/0.001mmと仮定すると、砂の比表面積を1とすれば、上記粒径分級の比表面積は 1/100/1000になる。このような粒径分布を持つ海底土は細かい方から10〜15%程度の重量組成範囲で、全体の持つ表面積の約80〜90%を占める事になる。従って放射能の海底土への吸着や付着が表面積に依存すると考える事ができるような場合は全体の放射能の約80〜90%は小さいほうから10〜15%の極小粒径組成範囲の海底土に吸着・付着されている事になる。この事から「粒径の小さい方から約10〜15%の極小範囲組成」の海底土を分級単離しておけば、これを放射性核種が混入した水或いは、海水に投じる事によって、その極小分級海底土組成をスカベンジャーとして、それに吸着・吸収される事が期待される事になる。そこでこの粒径の小さいほうから約10〜15%の組成範囲を「75μm以下のシルト質」として分離して、それを放射性核種スカベンジャーとして単離保存する方法を考える。
分離の原理は[図3]に示した周知のストークスの法則により選別分級方法を決めておけば、個人差による分級誤差を小さくする事ができる。[図3]から
Φ=1μmシルトの海水中沈降速度は約7.4cm/day、
Φ=5μmシルトの沈降速度は約2cm/day(≒8.3cm/hr)、
Φ=10μmシルトでは約7.4cm/day(≒30.8cm/hr)、
Φ=20μmシルトでは約30cm/day(≒1.25cm/hr)、
Φ=40μmシルトでは約115cm/day(≒4.8cm/hr)、
Φ=50μmシルトでは約180cm/day(≒7.5cm/hr)、
Φ=75μmシルトでは約400cm/day(≒16.7cm/hr)である。
ただしこの沈降速度は粒子密度をρ=2.6(g/cm)としているので、有機シルトの場合は上記計算と同じ粒径に対してかなり遅くなる。また実際に海水中に微小海底土を分散させた後、放置して海底土を沈降させるとかなりハッキリとした固液境界面が徐々に底面に向って沈降する。従ってこの境界面に在る粒子がストークスの法則に従って沈降しているとすれば、規定された時間で定められる境界面の上側と下側で分散物質を分級すればよい。そこで実際の分級方法の一例を以下に示した。
できる限りシルト質を多く含む海水を確保して、これを撹乱して放置すると2〜3分後には明解な境界層が現れ、当初はかなり早いスピードで下降し、時間の経過と共に境界層の下降速度は緩やかになってくる。測定時間毎の境界面高さを[図4]に示したが、各時間毎の境界面沈降差を求め、その平均沈降速度を日単位で求めると[図3]からストークス相当の粒径が求まる。これによって「大略の粒径」と「弁別操作の時間的猶予」を考慮して例えば規定弁別時間t(min)を定め、その時間tで境界層の上側の分散液側と下側固体沈降層を弁別して、下側を開弁放出或いは吸引除去するか、或いは上側をデカンテーション分離するか適宜な方法により弁別して、上側分散液側に含まれるシルト質を「スカベンジャー有機シルト」として確保する。この上側の分散液側は放置する事により更にシルトが沈降して底面に密集したシルト層を得る事ができる。適宜な時間〜数日間放置後上澄み海水を棄却すれば濃厚な「有機シルト分散スカンベンジャー」を得る事ができるので、これをストック、保持しておいて放射性核種汚染水の水処理改善システムの放射性核種スカベンジャーを必要とする時に、これを投入する事によって放射能汚染水および海水の浄化に資する事ができる。このような操作方法をマニァアル化して定めておけば、個人差の少ない有機シルトを採取する事ができ、また新しい放射能汚染水浄化法が確立できる。
[図3]
[図4]
このように海水中の放射性核種を弁別濃縮して計測した例を[図5]に示したが、[図1]に示したCs−137以外にCo−60、Mn−54もよく収着され、天然スカベンジャーとして優秀である事が分かる。ただしこのスカベンジャーの欠点はその吸着容量が小さい点にあり、高レベル放射性核種の汚染海水の場合は単独では負荷が大きくなる。しかし次の(実施例2)に示すように静電的には中性で他のスカベンジャーの補強剤として機能する事もあり、安全性を重視するような低レベルの放射能汚染水の水処理剤としては環境に優しいスカベンジャーである。
[図5]
(実施例2):有機シルトのスカベンジャー補強剤としての機能(電荷的中性か両性)
「凝結剤D」はセシウムに対して極めて良好なスカベンジャーとして広く周知されている物質で弱酸に対して安定であるが、アルカリ性、熱および還元的水環境においては加水分解等により分解し、不安定である事が知られている。またこの「凝結剤D」は負電荷を持つコロイド粒子として通常の水中においては安定に分散して、その粒径はΦ=〜10nm前後とされている極めて微細なナノ粒子の酸性染料である。
従って、先に[表1]で示した「廃液A」に含まれるコロイドを含めて負電荷を帯びる他のコロイド粒子(Ag,Au,Pt,S,Se,AgBr,As,CuS,ガラス末,石灰末,,粘土,アスベスト,デンプン,羊毛,等々)の中では同種の電荷として斥力が働き、安定なコロイドとして分散される。同様の事が界面活性剤との間でも起こる。例えば、セッケンや洗剤(ラウリル酸ナトリウムやドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムなど)では1ツのコロイド粒子が多数のイオン性分子からできており、ミセル表面は多くのCOO(カルボキシル基),SO 2−(スルフォン基)等の原子団によって負の電荷を帯びているので、これら界面活性剤を含む水溶液中においては同種の電荷による為、斥力が働き、安定なコロイド粒子として存在し、沈殿しない。ただし海水中におけるようにアルカリ、アルカリ土類の金属陽イオンが多量に含まれる場合には沈殿する。
この陽イオンは、先に[表1]で示した「廃液B」に含まれるイオンと同種であるが正電荷を帯びる他のコロイド粒子(Fe(OH),Zn(OH),Al(OH),Fe,ZnO,Ti,ヘモクロビン,塩基性染料等々)が共存すると「凝結剤D」は静電的に結合して凝結・凝集を起こし量的に多くなれば勿論沈殿する。身近な例では海水中の陽イオンと電荷中和を起こし、かなり長時間を要するが、静置しておくと沈降して底面に浮遊性で不安定な沈殿として溜まる。これが一般的な凝斥を起こす原因の1ツであるが、このように共沈現象で凝析を起こすような沈殿剤「凝結剤D」をスカベンジャーと呼ぶ。この現象により放射性核種が固形化され、結果的に固液分離を起こし水中のイオン性、溶存物質、懸濁物質を水中から取り除く作用をする。最近この「凝結剤D」スカベンジャーにより放射性セシウムを共沈凝集して遠心分離により超高レベル放射性廃液を水質改善する方法が提案されているが、チェルノビル事故時においても提案されており、またその必要量が廃液100ml当り1g必要で、今回の事故時における超大量廃液量の20万tonに対して「凝結剤D」スカベンジャーは2000ton調達しなければならず、非現実的と言わざるを得ない。
コロイドについて少々詳しく説明したのは、今回の一連の水処理改善システムの根本的作用を律する機能として極めて重要な作用の為である。例えば上述した「凝結剤D」が海水中で凝析を起こし沈殿するのと同様に大規模に起こる周知されている自然現象がある。それは海洋への河川からの出口に存在する三角州はその結果であるが、陸水中に含まれていた微細な粘土粒子(マイナス電荷)が海水中の陽イオンと静電的に中和して沈殿する現象の結果である事を考えれば十分であろう。そこでこれらのコロイドの静電的電荷の重要性を指摘したので、有機シルトと「凝結剤D」の相互作用について調査した結果を[表5]に示した。
[表5]から分かるように「凝結剤D」は明らかにアルカリ性では分解し、茶褐色を呈するように加水分解し、アスコルビン酸還元性海水溶液では、沈殿量が半減している事が分かる。ここで見落としてはならない重要な事実を発見している。即ち今回指摘している「有機シルト」は静電的に負の電荷を持つ「凝結剤D」と結合し、その安定性に貢献しているが、他方[図5]に示すように放射能レベルにあるラジオコロイド正イオンとしてのCo2+(CO−60),Mn2+(Mn−54),Cs(Cs−137)とも結合している点である。即ち負の電荷物質とも正の電荷を持つ正イオンとも結合して沈降する現象を示す。従って電荷を持たない中性的立場で微細粒子として接しているのか?あるいは分子内に両性の原子団を持つ両性物質であるのか?現時点では分からないが有機シルトは正負両方の電荷に作用しているスカベンジャーである事が重要である。陸水河川に含まれる超微細シルト粒子である粘土質粒子が負電荷を帯びていて、マイナス電荷の環境下ではなかなか沈降せず、他方プラス電荷の、例えば海水環境下で沈降して三角州を構成する現象とは異なる点で新しい発見である。
(実施例3):有機シルトと凝結剤Dによる薬剤凝集法による生活用水浄化法:
海洋港湾内に存在する有機シルトが放射性核種(Cs−137)スカベンジャーとして低レベル放射能汚染水浄化システムに有効である事を示し、その有機シルトの採取法を(実施例1)において示した。またセシウム(Cs−134,Cs−137)の吸着剤としてよく知られている「凝結剤D」は通常加熱、pHの高い環境(海水中においても)、或いは還元性環境下において不安定な物質であるが、今回求めた有機シルトが存在すると「凝結剤D」は安定に存在する事が判明し、然も有機シルトの弱点である吸着容量の低さを充分補完する。また有機シルトは中性的であるから「段落:0096」に示したように、その比表面積の大きい事が長所として機能し、吸着能を大きくしており、更に凝結剤Dによって放射性セシウに対する吸着能増大が(実施例2)によって担保されている。
以上の観点から事故時周辺環境の周辺住民の生活用水の水処理改善にはこの有機シルトの特性とCs−137吸着特性の強い「凝結剤D」の両者を用いて上水(水道水)或いは下水道処理における活性汚泥処理後の清浄水に対して放射性核種特にCs−134,Cs−137に対する水処理浄化法に薬剤凝集法(濾過を容易にしたい場合には「段落:0069」[表4]に示す「凝集剤K〜P」を添加する事が望ましい)として適用する事ができ、低レベル生活用水の浄化水処理に機能する事ができる。ただし現時点では「凝結剤D」は医薬品として認可されているにも拘らず、上下水道処理剤としての使用は法的規制により使用できない点に注意が肝心である。尚後述の「第2の実施の形態」で示す「活性高分子収着剤B」による放射性核種の上水道、下水道浄化処理法の1ツであるカラム濾過法が極めて簡便で有効な方法である事を付記する。
Figure 2013072871
(第2の実施の形態)
ここで述べる「第2の実施の形態」は当該大事故の周辺住民の子、子女の精神的肉体的ストレスを軽減し、安心してプールでの水泳が楽しめるように、また学校の校庭で何の心配も無くスポーツに興じる事ができるように事故時周辺の住民生活環境下において「僅かに高くなった放射性核種濃度の低減化」に資する為の水処理改善システムの実施の形態である。また焼却灰或いは稲藁中のCs−134,Cs−137の濃縮も問題である為、この浄化システムについてもここで述べる。この実施の形態の為には放射性核種、特にCs−134,Cs−137の強力濃縮剤を網目状、スポンジ状に加工する方法を開発する必要があった。マスコミ等の報道によればセシウムの吸収剤として注目されている無機吸収剤のゼオライトは1kg当り6gのセシウムを収着する事を東電発表として伝えている。また超高レベル廃液中のCs−137の濃度は[表3]の脚注に示す如く1.4ppmであるから超高レベル放射性廃液100ml中に存在するCs−137は1.4×10−4g相当である。他方「段落:0105」に記載があるように、この廃液100ml当りに「凝結剤」は1g必要とされている。従って「凝結剤」1kg当り0.14gのCs−137しか吸着しない事になり、上記ゼオライトの吸着能6gに対して、約1/40相当でしかなく、「凝結剤」単独使用の吸着能の評価は悪く、このレベルであれば「段落:0047」に示すリンモリブデン酸アンモンの方が効果的であるように思える。しかし「段落:0105」に記載の事実は安定元素での試験であり、量論的にも考えにくく、安全係数を多く見積もっているように思える事、および今回の事故時における超大量廃液量の20万tonに対してこの「凝結剤」スカベンジャーは2000ton調達しなければならない計算になり、非現実的な提言である事。これら2点を考慮する限りに於いても、この報道の提言は信用の置ける応用実験と判断するにはゆかず、確定的な事は言えない。
(形態:2−1):収着(吸収・吸着)量の大きい素材の開発
(第2の実施の形態)においては放射能汚染レベルが極めて低いレベルの水環境(イオン移行)における汚染浄化システムについての具体的事例を示すが、事故後の時間経過と共に周辺環境中の放射性核種の残留率で主体的になるのはCs−137である為、ここではCs−137の浄化法を中心に記述する。その他の核種については[表4]から適宜な選択ができる。実際のプール、学校の校庭あるいは焼却灰、稲藁中Cs−137の浄化事例等々について説明する前に、その前提条件となる活性化高分子収着剤、活性化有機収着剤、活性化無機収着剤等々の新しい収着剤(吸収・吸着剤)の開発結果についてそれぞれ(実施例1)、(実施例2)、(実施例3)に示し、その応用例を(形態2−2)〜(形態2−4)に示した。
(実施例1):活性化高分子収着剤へのセシウム収着能
[表4]に示すスカベンジャーおよび固体収着分離法の中で凝結剤C、凝結剤Dについてはこれまで説明したが、ここでは「高分子収着剤(A〜F)」に「活性化剤(a)〜(f)」を作用させて強力にスカベンジャーを付着できるようにした「活性化高分子収着剤」について述べる。「高分子収着剤」には高分子繊維、高分子軟質材(スポンジ等)、高分子硬板等を含むが、これらに対して「凝結剤D」を単純に塗布、乾燥しても通常は水中に浸漬すると溶出して意味を為さない。そこでその表面を活性化する為に活性化剤(a)〜(f)を噴霧した後、乾燥して、その後凝結剤スカベンジャーを塗布、噴霧、乾燥すると水中、海水中に浸漬してもスカベンジャーの溶出は無い。そのような物質を開発した。
多数の試料検討から目的に沿う物質として選択した結果を[表6]に示した。
Figure 2013072871
[表6]の結果から「活性化高分子収着剤A〜C」がセシウム収着剤として適用可能である事が分かった。然も透水性が極めて高い素材(布状、スポンジ状、粒状或いは隙間のある多層状)として製造加工も可能で、円筒カラム内にその素材を充填する事で水溶液中の放射性核種を連続的にその素材に吸着濃縮できるようになり、極めて単純で簡便な水処理改善システムを構築できる事になる。その応用としてプール中放射性核種の除去、土壌表層中の放射性核種の降水浄化による低減化および焼却灰、稲藁中の放射性核種の低減化等々が容易になり、その応用範囲は広く具体的な応用例を、後述の「段落:0127」形態(2−2)〜「段落:0137」形態(2−4)に示した。
(実施例2):活性化有機収着剤へのセシウム収着能
[表4]に示したセシウムスカベンジャーの有機収着剤へのセシウム収着能について検討した結果、極めて有効な収着剤を開発する事ができたので、有望と思われる3種についてその結果を[表7]に示した。
[表7]から分かるように、これら有機収着剤は「活性化剤」の添加がない場合は全く無力であるが、此の添加によりスカベンジャーFFの大量収着素材に変身する事が分かる。またスカベンジャーFFの示す青色を指示薬的に用いて、溶液においては完全に無色透明、沈殿の色は青色(沈殿の濃紺色は有機収着剤の結晶が表面付着色とし、この場合は結晶内表面付着サイトが全て飽和されたと判断し、青色はまだその飽和点に達していないと判断した)である場合を終点とし、この2点においてスカベンジャーFFは有機収着剤内表面付着が飽和した段階とした。例えば「有機収着剤B」200mgに対するスカベンジャーFFの収着量の終点は約100mgとしたが、「有機収着剤B」の結晶外表面付着も含めての吸収・吸着量は450mgにもおよび、他の収着剤に比較して「有機収着剤のスカベンジャー収着能は極めて大きい」事が判明した。またこれらの有機収着剤は食品添加物として認可されているものもあり、動・植物体内の生物学的半減期の排出加速剤としての効果も期待できるから人間の体内、牛乳中、乳牛体内、稲等の植物からのセシウムの排出改善に機能する事が考えられる。ただしこれらは有機収着剤に収着されるセシウムスカベンジャーFFは医薬品として認可されているが、上、下水道法で規制されている為、セシウムスカベンジヤーFFを収着した「活性化有機収着剤」としての使用については注意が肝心である。しかし「活性化有機収着剤」単独の使用は問題がない場合があるので、人間、動物、植物体内に取り込まれた放射性セシウムの排泄加速剤としての「活性化有機収着剤」の利用法等について今後の研究が期待される。
(実施例3):活性化無機収着剤へのセシウム収着能
ここで述べる「活性化無機収着剤」については、発明者の個人的研究において古い歴史がある。約40年程前の事であるが、サイクロトロンによる荷電粒子(He3+,He4+)反応のターゲットとしてセシウム(Cs)の均一薄膜シートを作成する機会があり検討していたが、当時これらを含む物質の薄膜は無く超微粒子の沈降膜による製造方法を研究していた。セシウムの不溶性粒子作成には成功していたが、その生成効率は良くないので今回の共沈法には利用できない。しかし当時、他の金属イオンの超微粒子の生成条件についても併せて検討していた。夫々の超微細粒子の生成条件を夫々求められていたので、全体的な平均的生成条件を[表8]に示した。
[表8]の結果を基に当時用いた無機収着剤のデータを参考にセシウムスカベンジャーの収着能について「無機収着剤A,B,C」について検討した結果を[表9]に示した。
また[表9]から分かるように、無機収着剤は「スカベンジャーFF」を直接収着する事ができず、加水分解されて構成分子であるFe2+,Fe3+に分解され、最終的にはFe3+として収着され「スカベンジャーFF」として収着される事はない。しかし「無機収着剤C」に限って先ずFe3+を吸着させ、然る後に結晶上で「スカベンジャーFF」を合成する方法を採用すると安定して収着させる事ができ、液相は完全に無色透明になり、固相は無機収着剤として厚さ2mmから23mmに大きく膨潤して濃青色を呈して安定化する。この事によりセシウムスカベンジャーFFは「無機収着剤C」に収着する事ができ、更には「無機収着剤A,B」により鉄剤として他のMn2+,Co2+を吸収・吸着できる事が予想され、また[表4]の「凝集剤K」に示される高分子凝集剤との併用でセシウム以外の広範な放射性核種の共沈法浄化が期待される。
高分子収着剤、有機収着剤では[表4]に示した「活性化剤」の効果は[表6]、[表7]に示す如く顕著であったが、[表9]の結果は「活性化剤」を使用していない実験結果である。そこで「無機収着剤」に対しても、この「活性化剤」効果について検討して[表10]に示した。
Figure 2013072871
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Figure 2013072871
Figure 2013072871
[表10]から「活性化剤」の効果は「無機収着剤」の場合も現れ、特に「活性化無機収着剤C」に対して顕著であった。しかしこの収着能の相対比較は[表6]の脚注に示してあるが、「活性化有機収着剤B」に比較すると1/10程度のレベルである。しかしこの「活性化無機収着剤C」の強みは他のバインダーを添加する事無く、焼成のみで「セラミックボール」の成型が容易である点にある。即ち「活性化高分子収着剤B」の繊維、フェルト状素材と、この「活性化無機収着剤C」のセラミックボール素材によりセシウム除去プロセス仕様の選択肢が大きく広がった事を意味する。
以上、「段落:0111」(形態:2−1)の素材開発で新しく開発した素材を(実施例1)〜(実施例3)の中で紹介したが、これらの素材が開発できたので、その応用は広がり、下記に示す(形態:2−2)のプール水の浄化、(形態2−3)の土壌浄化法、(形態2−4)の焼却灰の浄化等々の分野別に夫々適応した装置に応用する事ができ、放射性セシウムの汚染浄化が可能となった。以下に夫々の装置の形態への応用例を示した。
(形態:2−2):プール水浄化装置の形態
大事故時周辺環境におけるプールで自由に水泳、水遊びができない状態は幼児、年少者の精神的開放感にストレスを与える事で決して良い影響を与えない。これらの事からプール水に混入した事故時放出の放射性セシウムによる汚染は直ちに浄化されることが望ましい。その為には本発明により得られたセシウムスカベンジヤーの収着材料に依る、例えば次に述べる(イ)、(ロ)の2ツの浄化システムはこの目的に充分効果的である事が期待される。
(イ):移動式カーテン吸着浄化法
この浄化法は[表6]に示した「活性化高分子収着剤B」の実用化例で、網目状に構成されたフェルトを「活性化高分子収着剤B」相当に加工したカーテン状の薄膜を[図6]に示す如くプール内に設置して、これを簡単な動力(例えば釣り竿にセットするリール用モーター等)によりカーテン状薄膜をプール内を往復させる事により、プール水中のセシウム等放射性核種を吸着・吸収してプール水を浄化する方法である。カーテン状薄膜は網目フェルト、網目レーヨン、網目パルプ等に活性化高分子収着剤Bを収着加工して作成し、水面上端には「浮き輪」、「プールのコース区分用浮き輪」等々を連結し、またプール底面の下端には釣りに用いる「鉛の錘」を垂らし、重量が相互にバランスするように適宜に大きさを選択して用いる。
(ロ):カラム式吸着塔浄化法
この浄化法は[表6]に示した「活性化高分子収着剤B」或いは[表10]に示した「活性化無機収着剤C」を実用化素材として用いた場合の浄化法で、例えば前者については上記(イ)に示した網目状フェルト素材、後者については「活性化無機収着剤C」をセラミックボール、ラシヒリング、ハニカム構造として吸着・吸収塔充填材仕様の素材として、これらを吸着・吸収カラム塔に充填し、そのカラム塔にポンプ等の外力によりプール水を循環させる仕様の、例えば[図7]に示したような浄化システムを稼動させる事によりプール水中の放射性核種を収着させて浄化する方法である。
[図6]
[図7]
(形態:2−3):学校校庭の土壌表面の浄化装置の形態
大事故時の周辺環境の風下側地域においては残念ながら放射性核種が降下、飛散、蓄積される事は明白である。その1ツの例がプール水中の汚染であったが、同じ事は学校校庭土壌表面においても起こっており、特に時間が経過すればする程放射性セシウムの汚染割合が高くなり顕著になってくる。これらの汚染による幼児、年少者を抱える家庭においてはスポーツの場、遊び場が失われ、またその汚染区域での子供達の活動の有無に絶えず気を配らなければならない。このような事態は周辺住民の日常生活における毎日のストレスとして蓄積され良い影響を与えない。直ちに浄化される事が望ましい。ただし、この場合は土壌の構成成分により放射性核種の浸透挙動は極めて異なる事を念頭に置くべきで、例えばC14、Hおよび水溶性キレート化合物以外は土壌による吸着能が高い為、通常の核種で30cm以上移行する事は無い。勿論この時間依存は後述の[表12]に示すような土壌中の構成成分に依り大きく異なり、層状珪酸塩(Phyllosilicates)である雲母質、ゼオライト、タルク質等々が含まれる場合は極めて強く吸着される場合(特にpHが高い場合)がある。従って酸性雨の降り始め時(pHが低い)に於いても溶出が少ない場合には覆土等、別の方法を考えるのが良い。このような考察も無く、無闇に1mも土壌を掘り返して他の場所に移転する等の行動は放射性核種を広く分散させるだけで無意味な行動になる場合がある。何故なら通常の放射性核種は上述の如く、土壌に吸着され30cm以上移動する事は稀であるから、1mも掘削することは70cmもの清浄な土壌まで掘削時に汚染させる事になるからである。他方セシウムはCo−60,Mn−54等に比較して相対的にはイオンになり易くCs−134,Cs−137の移動深度、距離は一般的にはCo−60,Mn−54,他の核分裂物質(FP)、腐食放射化物質(CP)よりも大きく、従ってイオンとしての除去もその分、容易になる事を示している。従って現在の状況では「掘り返す事により深い土壌まで撹乱する事」は避けて、土壌表面から放射性核種を吸い取る方式が最良と思われる。それでも効果が薄い場合には深度毎の汚染分布を把握した上で覆土等表面土壌剥離等を考えるべきである。ここでは先ず最初の土壌表面からの吸い取り方式として例えば次に述べる(ハ)(ニ)(ホ)の3ツの浄化システムを示したが、この方式により浄化の効果は充分期待できるものと惹起される。
(ハ):ローラによるフェルト吸着浄化法
この浄化法は[表6]に示した「活性化高分子収着剤B」の実用化例でフェルト状の不織布として適宜な厚さで用意したシート素材として用いる方法である。Cs−134,Cs−137は他の放射性核種に比較してイオン状として溶出し易いので、例えば雨上がりの日におけるような土壌表面が湿潤状態であるような時、上記フェルト状不織布シートを敷き、水分が不足しているような場合にはその上から噴霧、ジョーロ等により適宜な水分を補給して、その上から道路工事に用いるローラを走行させ、フェルトと土壌に圧力を懸け、土壌中放射性核種を吸い取るように作用させる事によって土壌表層中にトラップされている放射性核種をフェルト中に存在するCs−134,Cs−137スカベンジャーに捕捉させ、土壌表層内に蓄積された放射性核種を除去、浄化する方法で、その概念図を[図8]に示した。
(ニ):セラミックボールによる吸着浄化法
この浄化法は[表10]に示した「活性化無機収着剤C」の実用化素材として、例えば直径〜数cmのセラミックボールとして製造準備し、これを校庭等の土壌表面に適宜な間隔を置いてバラマキ、その上からローラ等により埋め込む。その概念は上記(ハ)のフェルト状シート素材に代えてセラミックボールを使う点が異なる点で、セラミックボールの場合は埋め込み、一定期間放置する点で、上記(ハ)のフェルトの場合と異なる。このように処置した後、降雨があれば表面土壌に含まれる放射性核種はセラミックボールに移行するから、適宜な時間が経過したら、セラミックボールを掘り返して回収し、跡地を平坦に整備すれば土壌表層からCs−134,Cs−137を除去、浄化できる。
[図8]
(ホ):パイプ杭によるカラム式吸着浄化法
この浄化法は「段落:0129」(ロ)で示した「カラム式吸着塔浄化法」のミニマムサイズの応用例で、考え方は同じである。相違する点は例えば吸着塔を直径5cm、長さを30cm程度の大きさの2重パイプを考え、内側と外側パイプには適宜な間隔で例えば3mm 程度の穴を開け、内側パイプの中心部は中空として、ここに雨水が溜まるような構造ににする。内側と外側パイプの隙間には「段落:0111」(ロ)で示した「活性化高分子収着剤B」のフェルト素材、或いは「活性化無機収着剤C」の直径数mm程度のセラミックボールを充填して概念図、[図8]の図中に示すように先端を尖らせたパイプ状の杭を準備する。これらを土壌中に打ち込む形で適宜な間隔をあけて当該土壌範囲に埋め込む。適宜な時間経過後には中心部の中空部には雨水が溜まっている筈であるが、この雨水は浄化されて放射性核種含量は低い筈であるから、その存否を確認して適宜に処理をする。このようにして中空に存在した雨水を除去すれば、新たに土壌を浸透通過した雨水がパイプ中心の中空に集まり、土壌中のCs−134,Cs−137は雨水による繰り返し浸透により土壌からパイプ中の充填収着材に移行する事になる。
(形態:2−4):焼却灰、稲藁等々の浄化装置の形態
大事故時周辺環境の風下側で稲藁に放射性セシウムが付着し、これを家畜牛の飼料として与えた事により、肉牛の体内汚染を起こし、マスコミで大きな問題として報じられている。同じ事は「牧草」「籾殻」「米糠」「玄米、白米」或いは風下側建築材(家屋の崩壊資材等)の焼却過程で排出される焼却灰等々についても同じ問題点を含んでいる。広範な種類、広範な地域に深刻な問題を転嫁してしまい、周辺住民の身体的、精神的、経済的に重大な悪影響を及ぼし、その生活は不健康な状態と言わざるをえず、早急な解決策が希求されている。そこでこれらの固体から放射性核種を除去、浄化する方法として回転駆動体機器による浄化システムを考え、固体系と、液体系の2ツの場合に分けて提案する。固体或いは粉体、粒子状物質について(ヘ)半乾燥的浄化法、(ト)溶液状態に浮遊させる浄化法の具体例を以下に示す。
(ヘ):半乾燥物質の回転駆動体浄化法
この浄化法で用いる回転駆動機器は例えばトン容量のような大容量の場合は「ロータリーキルン」、数100kg程度の容量の場合は「コンクリートミキサー」、kg単位の場合は「洗濯機の乾燥ドラム」等々の機器を考え、この中に半乾燥物質として放射性核種に汚染された「牧草」「籾殻」「米糠」「玄米、白米」「建築資材」「焼却灰」等々を投入し、これらに噴霧器等で適度な湿分を与え、放射性核種の収着材として先に示した「活性化高分子収着剤B」のフェルト、布、等の繊維素材或いはスポンジ状の素材、「活性化無機収着剤C」のセラミックボール、粒状体、粉体等々を混入させ、全体を回転することで「放射性核種汚染物質」と「収着材」が適度な湿潤状態で接触させられる事でCs−134,Cs−137等が収着材に移行する。その概念図を[図9(a)、(b)]に示した。このように放射性セシウムが簡便な方法で移行吸着できる大きな理由はセシウムの特性にあり、[非特許文献9]に示すように他の放射性核種がコロイド、共沈、イオン交換等で濃縮付着しやすいのに対してCs−134,Cs−137はイオン状として存在する割合が高く、水溶液移行が容易である点にある。
[図9(a)、(b)]
(ト):溶液中浮遊物質の回転駆動浄化法
この浄化法で用いる回転駆動機器は上述(ヘ)で使用した「ロータリーキルン」「コンクリートミキサー」と家庭用の「電気洗濯機」が使える。特に洗濯機は小規模な浄化法として効果的と思われる。方法は(ト)の場合と同じであるが、回転駆動機器内部に適量の水(水道水、海水、蒸留水等々)が存在し、その中で当該対象汚染物質が浮遊している状態が(ト)と違う点であるが、除染、浄化の考え方は全く同一である。即ち汚染対象物質の例えばCs−134,Cs−137を水相に移し、その水相から収着材の固相に濃縮する方法である。このように放射性汚染物質が水溶液に混入しても良い場合にはその接触面積を考えると(ヘ)の場合よりも効果的と思われるが、それ以上に収着量が極めて多い[表7]に示した「活性化有機収着剤B」が使える点に大きなメリットを感じる。これらの概念図は(ヘ)で示したものと同じで、機器内部に水溶液の相が存在する点が相違するのみである為、[図10]に洗濯機を示した。
[図10]
(第3の実施の形態):取水口開渠における放射性核種の浄化法
この実施の形態は「段落:0059」[表3]の低〜高レベル放射性核種汚染廃液の10〜1010Bq/tonを対象にしているが、具体的な行動目標は「事故によって高レベル廃液が放出された初期段階で、如何に早期に、如何に拡散させずに除染、浄化するか」にある。このように考えると本特許に適合する場所は「1〜4号機前面の取水港開渠」であろう。ここにおける汚染海水の浄化は周辺海洋環境への汚染拡大を最小に止める極めて重要な作業点、作業範囲である事が理解できる。事故時放射性核種の汚染水が環境に放出された場合に濃度的に高い状態の狭い範囲で浄化する事により周辺海洋に拡散される事を防御できる第1の砦が「取水港開渠」で第2の砦が「取水港湾」であろう。ここにおける「汚染海水改善処理システム」の1例としてゼオライト吸着槽による吸着除去装置が写真報道されている。しかしゼオライトのCs−137吸着能は6g/kgであるが、米国クリオン社の今回の稼動実績での除染係数は約1/100程度で比較的低レベルである事および海水の通常放射能レベルは極めて低いレベルである事(1nBq/cm〜1Bq/cm)を考えると、以下の選択肢のほうが良いと思われる。
(1)第1の方法:高分子凝集剤を使う固液分離法
本発明の(第1の実施の形態)の(実施例2)に示した「有機シルト」で補強した「凝結剤D」をCoagulatiion スカベンジャーとして使い、更にFlocculationスカベンジャーとして「凝集剤K」を使い[表4]の共沈法経路(viii)による「吊るし濾過法」による固液分離法が最良の除染係数が得られると考えられる。
(2)第2の方法:現場にある有機シルトを利用する固液分離法
上記「(1)第1の方法」は多種の放射性核種に対して除染係数を高く浄化できると思われるが、システム・設備が多段に及び、その操作開始までの時間とコストが多く掛かり、規模が大きくなる欠点がある。そこで天然凝結剤である有機シルトを考えると本発明で想定した有機シルトと同等のシルトが「取水港」および「取水港開渠」に豊富に存在し、特に「物揚場岸壁近傍」のように海水の淀む場所には最適な有機シルトが眠っていると惹起されるので、これを使う。「取水港開渠」が外界海洋から十分隔離、遮断されていると判断された段階で次のような操作を行う事で、一挙に「取水港開渠海水中のCs−134,Cs−137」および「Co−60,Mn−54」を浄化できる方法が、この第2の方法である。
▲1▼:浚渫掘削機等で海底土を舞い上がらせて海底に沈降している多量の有機シルトを海水中に浮遊させる。
▲2▼:時間的に30分程経過すると粗大粒子は海底面に沈降し、海水中には微細シルトのみ浮遊している状態にあるので、この段階で、4区分程度に分割した範囲の広さの100meshプランクトンネットのシートをできる限り底面を這わせるようにセットする。
▲3▼:プランクトンネット設置が完了した段階で、[表4]に示した「凝結剤D」の適宜な計算量を添加して、液相の海水中に分散する。即ちこの段階の海水中には本発明で指摘した「有機シルトと凝結剤D」が混合状態で存在している事になる。この事は「段落:0109」で示されたように「有機シルトが存在すると凝結剤Dは安定に存在する」事になり、海水中セシウムは「有機シルト+凝結剤D」の沈殿に捕捉される。
▲4▼:その後1〜2日ほど経過した段階で、一枚のプランクトンネットの4隅、その中間、更にまたその中間の計16ケ所に取り付けたロープを徐々に、深さを3mとして、30cm毎に10回に分けて、1回を10分かけて徐々に引き上げ、計100分程でプランクトンネットを海表面まで引き揚げる。例えばこのようにして徐々に引き揚げる事によりプランクトンネット上に蓄積された微細な有機シルトを捕集する。プランクトンネット上の有機シルトは、プランクトンネットと共にできるだけ水分を除去した後、廃棄物処理をする。この方法は「(1)第1の方法」における「凝集剤K」の添加とその前処理である溶液pHの調整を割愛して処理を簡便にした方法である。この事により[図5]に示す如く海水中に溶存していたCs−134,Cs−137,Co−60,Mn−54をプランクトンネット上に蓄積した「凝結剤D」で補完した有機シルトに吸着し、これらを捕集する事により、効果的に除去できる。
▲5▼:海水中からプランクトンネット全体を引き揚げ完了したら、再度▲1▼から同じ操作を繰り返し、再挑戦する。この事により海底土および海水中のCo−60,Mn−54及びCs−134,Cs−137を指数的に減少、除去できるものと惹起する。尚「取水港開渠」に敷き詰めるプランクトンネット枚数の4枚は例示したのみで、これに拘泥する必要は無く、またその引き揚げについてはモーターを使って自動的に緩慢引き揚げができるように工夫する事が望ましく、方法論的には[図6]の方法を応用すればよく、難しい事では無い。
(3)第3の方法:カラム式吸着塔浄化法
海水中の放射能レベルが比較的低い場合においては(第2の実施の形態)の「(形態:2−2)」の「段落:0129」(ロ):カラム式吸着塔浄化法、或いは「(形態:2−3)」の「段落:0134」(ニ):セラミックボールによる吸着浄化法を応用すれば容易に海水中放射能レベルを低減化できる。尚マスコミ等により写真報道されている東芝によるゼオライト吸着方式は原理的には、この「第3の方法」に使用する「活性化高分子収着剤B」のフェルト或いは「活性化無機収着剤C」のセラミックボールの代わりにゼオライトを使っている方式と言える。
(4)第4の方法:活性化有機収着剤浄化法
「第3の方法」において吸着能に満足がいかない場合は「(1)第1の方法」の改善方法がある。「(1)第1の方法」ではCoagulationスカベンジャーとして「有機シルト」で補強した「凝結剤D」を用いているが、これに代えて(第2の実施の形態)の形態(2−1)の「段落:0115」(実施例2)で開発した「段落:0121」[表7]に示す「活性化有機収着剤C」を用いれば吸着能が大きく目的を達成する事ができると惹起される。
(第4の実施の形態):
ここで述べる「第4の実施の形態」は当該大事故に伴う「超高レベル廃液処理」に関して電源を要しないPassive Typeの水の自然重力による滴下分離方式の濾過法(吊るし濾過法)の開発にに関する[課題4]と超高レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築に関する[課題5]を含む。[課題4]に関しては「高分子凝集剤K〜N」の適応が必須で、[課題5]に関しては当該の汚染水は超高レベルの比放射能である為、その濃縮過程では「最高除染係数」と共に「最高の減容率」を目指す事が肝要で、その為の汚染水浄化処理システムを構築する事が重要である。そこで「吊るし濾過法」を用いた海水中の超微量Co−60の放射化学分析法の例を(実施例1)で示す。また仏国アレバ社の「共沈法」による「減容率:QRF」は「段落:0071」に示すようにQRF≒10−2であったが、(実施例2)では「高分子凝集剤K」を用いて1000l海水中のCo−60の放射化学分析法における「共沈法⇒吊るし濾過法」での「減容率:QRF」を確認して、「共沈法」における仏国アレバ社の「QRF≒10−2」のレベルを確認する。
(形態:4−1):大量海水中の超微量Co−60の放射化学分析
以下に「吊るし濾過法」を用いた海水中Co−60の放射化学分析法を示す。
(実施例1):「吊るし濾過法」を用いた1000l海水中のCo−60の放射化学分析法
海水中のCo−60の濃度は通常〜0.7pCi/1000l程度であるが、共沈法により濃縮した収着物のγ線計測では1000l処理した場合でも8万秒(8×104sec≒22.2hr)計測での検出限界値(5〜6pCi/1000l)が高い為、検出限界値以下として「LTD」と記録するのが一般的であった。しかし当時放射性核種(Co−60)の海洋拡散の実態評価が求められていた為、検出限界値を最低1桁精度を上げる(0.5〜0.6 pCi/1000l)事によって〜0.7pCi/1000lレベルの濃度分布を把握する必要があった。この為にはγ線計測用の半導体検出器容量を大きくすれば、ある程度目的を達成できるのであるが、当時の半導体技術レベルでは容量を大幅に改善する事は望めなかった為、止む無くβ線計測による評価法を採用せざるを得なかった。この為には分析評価する海水の容量は多い程検出感度を上げられるのであるが反面、装置、時間、試薬量等々全てがスケールアップされ、簡単な事ではなく、最終的には1000l容量の分析法の確立を目指して文献調査をして既存分析法の適否を検討した。その結果、[表11]に示したように高分子凝集法に依ればCo−60もMn−54も同時に共沈法によって固液分離が可能と判断した。
Figure 2013072871
しかし、このような1000lレベル容量の海水分析の例は無く、当時では400lまでが最大分析容量であった為、400l以上の場合の分析パラメーターのスケール効果(温度、pH、キャリヤーおよび試薬添加量等々)についてホット試験(実際にCo−60を海水に添加する実験)で確認する必要があり、夫々のパラメーターの確認の為にも扱う量は1000lになる為、放射性廃棄物発生もあり、放射線管理にも細心の注意が必要で、夫々のデータ取得には困難が伴った。最終的には以後に説明する分析法操作によりCo−60を円形銅板に電着して2πガスフローカウンターによるβ線計測で検出可能となり、その検出限界を0.1pCi/1000l(=3.7nBq/cm3)(**)レベルまで改善する事ができ、通常海水中のCo−60濃度レベルを評価する事ができるようになった。例えばAサイト近傍海水の20ケ所程度の分析結果によれば、その濃度は0.15〜0.67pCi/1000lに分布しており、納得できる分布を示していた。この時の検出限界値は0.11pCi/1000lであった。またこの際に横須賀の海水を対象海水として同様に1000l分析を行った結果0.074pCi/1000lの値を示し、検出限界値(0.11pCi/1000l)以下の値になる事が判明した。当時の1000l大量海水の分析には上記に示すような理由があって遂行したものであるが、その時の改良型分析フローを次頁の[図11]に示した。
Figure 2013072871
[図11]
(実施例2):「共沈法⇒吊るし濾過法」における「減容率:QRF」のレベル
通常の化学分析で所要時間を気にする操作は濾過工程である。溶液から固体への吸着移行が十分であっても、その収着固体粒子が微細すぎると、濾過に要する時間が極めて長くなり、その分析方法は改善を要する事になる。例えば水酸化第二鉄コロイド沈殿、土壌抽出時の濾過等々に難儀した研究者は多く、通常このレベルを凝結(Coagulation)状態と言われる。近年ではこれらの状況を改善する為に、この凝結沈殿を有機高分子に架橋する事で沈殿固体を一次元的に長鎖の物質に集合させる方法が採用される事が多くなり、濾過操作もかなり改善され容易になった。この架橋高分子を有機凝集剤と呼び、この沈殿状況を凝集(Flocculation)状態と称して、上記の凝結状態と区別する場合がある。この有機凝集剤の添加により濾紙ではなく目の粗い濾布の使用が可能となった。処理量が少ない場合は目の粗い濾紙(NoC)でも良いが1000l処理になると発生する有機凝集剤の量も1000ml(l)レベルになる為、4隅を固定した50cm×50cm広さのプランクトンネット(50〜100mesh)を使用して中央部に沈殿を移し、注いでも、沈殿はプランクトンネットを透過しない事が分かった。
[図12]
そこで簡便でPassive Typeの[図12]に示す「吊るし濾過法」を考える事で濾過操作の困難を軽減した。試料1ケ当りの濾過時間は自然濾過の為、長くなるが、多くの試料を同時に濾過をして「溜め置き」濾過を行えば、この問題の大部分は軽減される。この事により上記沈殿分離操作では上澄み母液を例えば、デカンテーション等により990l程度移し終えたとすれば、この容量分は濾別操作から開放された事になる。フロック状態の沈殿を含む残液10lは上述の如く50cm×50cmのプランクトンネットの中央に4隅を徐々に持ち上げながら溢れる事の無いように注意深く移し、ついには4隅を一点で結び、この結び目に適宜な紐を連結して紐によって沈殿を吊るし、重力による自然濾過によって母液を絞り出す簡便な方法で固液分離が完成する。この簡便な濾過は高分子凝集剤の添加なくして起こりえない事であるが、この事によって1000l処理における固液分離は極めて簡便な形で完結する事ができた。この際のフロック状沈殿量は湿潤状態で約800ml程度になり、またその後、1昼夜の放置で400〜600mlに減容できる事が分かった。この結果から「吊し濾過法」による減容率(QRF)はQRF=(4〜8)×100ml/1000l=(4〜8)×10−4になる。この値は米国クリオン社による「吸着法」のQRF=5×10−4と同レベルであり、仏国アレバ社の共沈法によるQRF=10−2に対して17〜25倍減容率は高く、仏国アレバ社の共沈法は改善の余地が大きい事が予想される。
(形態:4−2):原子力発電所で発生する放射性核種の化学的、物理的形態
(形態:4−1)に示した1000l海水中の超微量Co−60の分析法の開発は原子力施設から放出された放射性核種の拡散状況の把握を精度高く評価するの為には必須な事であった。しかし放出後の拡散状況を正確に把握しても、その放出源における化学的・物理的性状についての把握なくして拡散状況の変化、移行、希釈等々を正確に評価、検討する事はできない。これに関して有機シルト質含量の多い海底土、特にシルトへの分配についての情報は「段落:0102」[図5]から得られるが、放出源についての情報は少ない。このように少ない情報の中でAサイトにおけるランドリ−ドレン、フロアドレンに含まれる放射性核種の化学的、物理的形態に関して平常時と定検時に分けて夫々Co−60、Mn−54、Cs−137について詳細な検討を行っている例、[非特許文献9]がある事は貴重な情報であろう。
この情報をまとめると[図13]、[図14]の様になるが、ランドリードレンは放出直前に「活性炭槽」を通してCo−60、Mn−54の放出低減化を行っているが、[図13]から、除染係数(DF)は総合平均でDF=3〜10になり、Cs−137については除染効果は殆ど無い事が分かる。又粒径別、有機物、無機物(主としてイオン)としての構成成分別については[図14]に示されているが、総合的にまとめると以下のようになる。
[図13]
[図14]
放出源核種の性状のまとめ:
(1):放射性核種の形態別割合
平均的な放出廃液組成としてはCo−60が全放射能の約8割を占めており、そのうち固相が約60%、液相が約40%であり、固相では約10μm前後(8〜15μm)の粒径が放射能の殆どで、液相は無機金属イオンが大半である。廃液の種類別では、ランドリードレンについては、殆ど(90〜100%)が固相(懸濁物質)に含まれており、フロアドレ処理水については液相も固相と同程度のCo−60(無機物、イオン状)が存在している。
(2):固相の構成成分
文献にはX線回折により鉱物学的な解析を行っている旨の記述しかないが、個人的な内容確認情報によれば大略以下の2点であるらしい。
★固相の構成成分としては、有機物が半分以上(50〜60%)を占めており、その他にゴム手袋の潤滑粉体として使用されているタルクやコンクリート建材中に含まれるムスコバイト、クロライトが比較的多く存在するらしい。
★ランドリードレン濾過槽上下固相のX線解析に依れば、構成成分に大きな相違点が現れたのはタルクの捕捉除去によると見られるSi、Mgの減少傾向であった。これらの情報は「ホット施設でゴム手袋を使う作業経験のある人の場合には誰もが経験する基礎的事項」で、タルクの使用頻度が多いので、上記解析結果は納得できる当然の結果であろう。
(3):ランドリードレン濾過槽の設置効果
★ランドリードレン濾過槽の除去率は廃液の性状により大きく左右されるが、徐去率はCo−60、Mn−54で数分の1〜10分の1程度であった。
★固相の方が液相よりも除去率は良く、又粒径の大きいものほど比較的良く徐去される事実は活性炭粒による篩い分け濾過である事を考えれば当然のことであろう。液相中放射性核種の徐去率は核種ごとの差が大きく、Co−60、Mn−54は良く徐去されるがCs−137は無機イオンである為、殆ど徐去されない。
(4):矛盾点か?
ランドリードレンのCo−60は殆どが固相であるのに対して、フロアドレンでは半分が液相(イオン)として存在している。この理由として考えられる大きな理由はゴム手袋の潤滑粉体としてタルク(滑石)が頻繁に使われる点にあると思う。固体成分としてタルクおよびムスコバイト(白雲母)がX線回折で主要成分として(2)において確認されているが、これらは[表12]に示す「土壌中の無機成分」のうち層状珪酸塩(Phyllosilicates)に属し、これらは無機イオンを強く包接する事で知られている。従ってランドリードレン中のCo−60はタルクあるいはムスコバイト(白雲母)にインタカレート(包接)される事で固相に多く分配されていると思われる。他方フロアドレン中のCo−60は[図14]から無機イオンとして半分、固体として半分分配されている事が分かるが、これは包接体の無い環境下でコバルトイオン(+)電荷と水酸化第2鉄の(+)荷電および海水および沿岸に存在する塩分の(+)電荷等々との斥力から「段落:0033〜0035」に示した様にイオン同士が凝結、凝集せずにイオンとして存在し易い環境下にある事が予想され、反面陸水中、粘土質シルト等(−)電荷の環境下では沈殿し易くなる事が予想され、驚く状況でもない。むしろ驚く事はランドリードレン中にタルク、ムスコバイトが多量に存在するにも拘わらずCs−137が依然として液相(イオン状)として多く存在する点にある。このCs−137の捕捉されない性状はイオンとして流れやすく、吸着し難く、拡散し易い為、例えば環境土壌(校庭)表面からCs−137を吸収、吸着し易く、「吸い取り効果」がある等長所になる反面、降雨に含まれるCs−137は広く分散、拡散し易く、植物の経根吸収による摂取が容易に起こる等の短所にもなり、捉え方により長所にも短所にもなる。この様に放射性核種の化学的、物理的形態を把握する事は極めて重要である。
(形態:4−3):超高レベル放射能汚染海水の浄化法
この形態(4−3)で対象になる汚染廃液は「段落:0059」[表3]に示した超高レベル放射性核種汚染廃液の1010〜1014(Bq/ton)に相当し、それらの浄化法についての形態である。このレベルになると[表3]の脚注に示す如くCs−137相当で計算すると1ton当り1.4gの重量を示す事から放射化学的な、例えばラジオコロイドによる特殊性を主体に考える必要は無く、通常の化学分析の概念が通用する、量的にはマクロの世界になる。しかし放射能レベルは極めて熾烈で厳重な被曝管理が行なわれなければならない。即ち次の2点を常に念頭において作業しなければならない。
▲1▼:分析はマクロ的化学分析概念で考え、従って操作する沈殿等の量的規模も極めて膨大になる。
▲2▼:放射能は極めて熾烈で放射線遮蔽等による厳重な被曝管理下で作業は遂行されなければならない。
上記2点を基本理念として作業を進める事として、これまでの放射能レベルに対応する浄化法を含めて、この超高レベルの汚染海水浄化法で考えられる本特許の主要な方法をまとめると次に示す[図15]のようになる。
この[図15]でこれまで示されていないのは固液分離手段としての(廃液A)の存在であろう。これは「段落:0020」[表1]に示したように大量に存在する(廃液B)に対してマイナー的な量ではあるが、必ず1〜3号機腹水器地下部冷却取水管(直径2m)内に存在している。廃液Aと廃液Bの環境電荷は陰・陽の相反するチャージを持っているので、これらを有効に使う事は賢明な方法で「毒をもって毒を制す」方法として有効であろう。これ以外については、これまで紹介してきた「〜高レベル放射能廃液レベル浄化法」の中で全てが説明されているので、これらについての詳述は避ける。重要な事は[図15]に示すように本特許で発明された多種類の、例えば[図15]では(A)〜(E)の5種類の「活性化収着剤」を用いて適宜な形態に応用加工して使用できる点にあり、その応用例は多種多様にある事である。
Figure 2013072871
(AA)固液分離法の大別
超高レベル放射能汚染海水母液中に溶存するCs−134,Cs−137等放射性核種を何らかの固体に収着(吸収・吸着)させ、その収着固体を母液から分離する事が浄化方法で、。その方法には異なる収着方法がある。1ツは適宜な吸着剤、例えばゼオライト等々の吸着物質に溶存状態(或いはコロイド分散状態)にある当該核種を直接その固体に収着移行させ、分離する方法である。これを「“吸着法による固液分離法”と定義」する。他の1ツは溶存状態にある放射性核種(Cs−134,Cs−137等)の母液に適宜な凝結剤を加えて相互の電荷、化学反応等々の作用により凝結剤に連結させ、固体成分の1部に共沈させる。この状態では通常の凝結剤物質は極小粒子状である為、その固液分離操作には困難を伴う。そこで更に有機高分子凝集剤により架橋集合を起こし、相互の小粒子を大きなフロック状集合物質に変え、相互に取り込む形で更に大きな濾過固体に成長させて濾過操作を容易にして母液から分離する方法である。これを「“共沈法による固液分離法”と定義」する。これらの方法を夫々代表するのが[先行技術]で示した「段落:0021」(1)仏国アレバ社の技術と「段落:0026」(2)米国クリオン社の技術で下記に示した。
「超高レベル溶存核種 “吸着法による固液分離法”……米国クリオン社の技術
の固液分離法」 “共沈法による固液分離法”……仏国アレバ社の技術
[図15]
(BB)超高レベル汚染海水の浄化法に関する本発明の特徴的な関連性
(1):当該超高レベル放射性汚染海水を電荷(+)の廃液(B)として定義する
(2):1〜3号機復水器地下部分冷却取水管に存在する汚染海水を電荷(−)の廃液(A)として定義すると、この廃液(A)は廃液(B)の凝結剤として有効に作用する。
(3):本発明で定義する有機シルト「凝結剤C」およびスカベンジャー「凝結剤D」で相互補完した複合凝結剤をスカベンジヤーとして上記共沈法と連結できる。
(4):極めて多量のCs−134,Cs−137の収着を目論む場合は選択する凝結剤を収着量の多い「活性化有機収着剤B」として、これを凝結剤スカベンジャーとして上記共沈法と連結する。
(5):最終処分をガラス固化体とする場合を想定した場合には、システム的に有利な「活性化無機収着剤C」等を凝結剤スカベンジャーとして上記共沈法と連結する。
(6):上記(1)〜(5)の共沈法は継続して高分子「凝集剤K」によるフロック状スカベンジヤーによる共沈操作を伴う事が望ましく、この事により本発明で考慮した簡便な濾過法である「吊るし濾過法」を適用できる。
(7):吸着法においてはゼオライトに代えてフェルト状、ガーゼ状、布状等々の「活性化高分子収着剤B」を使用する事で高レベル溶液環境の中を往来させる事で吸着除去、低減化処理を施す事ができる。また溶液中の高レベル核種に限らず土壌或いは焼却灰等の固体表層中にイオンとして含まれる場合の湿潤除去法として固体表面近傍に存在するCs−134,Cs−137の吸着除去、低減化処理にこの「活性化高分子収着剤B」を使用できる事は大きな利用価値を生む。
(8):吸着法においてゼオライトに代えて「活性化無機収着剤C」を用いる事により例えば中空状セラミックボール、木製ボール、コットンボール等々に加工して用いれば高レベル溶液中を浮遊往来させる事ができ吸着除去、低減化に大きく寄与する事ができる。
(9):放射性核種例えばCs−134,Cs−137に汚染されている固体を「活性化高分子収着剤B」であるフェルト状、ガーゼ状、布状等々繊維状吸着剤で拭き取る事により表面除染ができる事で「除染作業手段」として、スミヤ法と同様に効果があり、極めて有効な手段である。
(10):同様に粉体状、粒子状の「活性化無機収着剤」「活性化有機収着剤」等を汚染固体に「振り掛ける」事により固体表面を除染できる事は「除染作業手段」として極めて有効な手段である。
(11):低〜高レベル汚染環境に於ける「プール水」「校庭土壌表面」「焼却灰」「稲藁」等々の除染方法と同様の利用方法も考えられる。
(CC)流用施設による超高レベル汚染海水浄化法のプロポーザル
CC−1:共沈法−−−−−4号機復水器地下部分取水管を反応槽として流用する。
(1):方法論−−−−−−−多数の収着剤を開発できたので多数の共沈法が考えられるが、その1部は[図16]に示す流用設備で、[図15]に示す新規薬剤および処理手法により下記に示す共沈反応過程によって、超高レベル放射性核種を母液から分離、隔離する事で、これら超高レベル汚染海水を浄化する事ができる。ただし何れの場合も汚染海水に混入していると思われる油分を取り除く前処理が必要である。この為には幸いにも無機収着剤Cが油性物質の吸着剤として効果的である事から例えば[図7]に示すように充填槽に前置して予め汚染海水から徐去するシステムを必要に応じて対処して設置する。[図15]の新規薬剤および処理手法を応用した共沈反応過程の例を次頁に示した。
(2):具体的な反応方法の例−−−−−−−−後述の(第5の実施の形態)で示す設備、機器の流用に依る反応形態により[図16]の概念で超高レベル汚染水を浄化する事ができる。
Figure 2013072871
[図16]
CC−2:吸着法−−−−−−−−4号機復水器地下部取水管を処理槽、反応槽として流用する。
「取水管地下部」の流用反応槽を使い例えば[図16]に示す「吸着法」により汚染海水を浄化する。
(1):カラム塔吸着法−−−−復水器地下部分取水管の立抗部分に収着剤を充填したカラム、シリンダー、円柱、角錐等長尺容器の充填塔を設置して、地下外部の送水ポンプより超高レベル汚染水をこの充填塔を通過させる事で超高レベル放射性核種を吸収・吸着させ低レベル母液を抽出する。設備的な点も含めて具体的な方法は[図7]のカラム吸着塔システムと同様であるから、ここでは詳述しない。
(2):フェルト、繊維状の移動式カーテン状収着物への吸着法
(イ):先ず4号機の復水器地下部取水管内を低レベル放射能に清浄化する
(ロ):[図16]の吸着法に図示するように復水器地下取水管の長尺方向にワイヤー、紐、チェーン等の糸状長尺物(例えばワイヤーとする)で貫通して、その一部を回転モーターに巻き付けて、糸状のこれらがモーターの回転と共に取水管を移動するようにして、取水管の端に達したら逆送して、他端方向へ反転して移動するようにする。
(ハ):糸状長尺物の適宜な位置に固定用フックを取り付け、これにフェルト、繊維状のカーテンを固定できるようにする。
(ニ):このように準備した地下部取水管を「取水管反応槽」と定義する。
(ホ):上記に示すように準備した「取水管反応槽」に超高レベル汚染海水を外部ポンプにより注入する。
(ヘ):所定量の注入が終了したら(ハ)で準備したフックに放射性核種収着カーテンをセットして、汚染海水中に浸漬する
(ト):外部モーターにより糸状ワイヤーを所定速度で「取水管反応槽」内をユックリ移動して取水管の端に達したら、反転して他端方向に逆送するようにする。
(チ):これらの反転移動を複数回繰り返し往来したら、収着物を取水管から持ち上げ鉛コンテナーに収納する
(リ):持ち上げはユニック車、クレーン車等々の外力により行い、その移動は汚染溶液が雫状で落下しなくなってから行う。
(3):セラミックボール、チップ状スポンジ、角状フェルト等担体形状物に活性化剤等により不溶化した活性化無機収着物Cおよび活性化高分子収着物B等による吸着法について。
上記(2)に示した移動式カーテン状収着物による吸着方法と同様にカーテン状収着物に代えて放射性核種収着物を表面被覆した形状物であるセラミックボール、角状フェルト、チップ状スポンジ、木製ボール、綿状ボール等々を入れたステンレス籠を吊るす。他の仕様は(2)と同様にして、このステンレス籠を地下部分取水管を往復する事で取水管内に注入した超高レベル汚染海水中の放射性核種をこれらステンレス内にセットした形状物に吸収・吸着させて母液中の放射能レベルを低減化し、除染、浄化する。
(第5の実施の形態):
ここでは「段落:0088」で説明しているような施設・設備の流用に関する[課題6]および[課題7]についての形態について述べる。ただし、これらの「課題の解決方法」としての説明は既に[課題6の解決手段]、[課題7の解決手段]の中で説明しており、その大略を以下に示したが、これらの説明から夫々の形態の概要は推察される。
[課題6の解決手段]、[課題7の解決手段]で示した流用施設の説明の大略
◎4号機冷却地下部取水管6本を反応槽として流用する件
「段落:0082」(1):4号機冷却地下部取水管6本を反応槽として流用する件:4号機冷却地下部取水管は事故当時定検中であった為、ムラサキイガイの貝殻の積層も無く、比較的キレイである事および他の1〜3号機に比較して放射能レベルが低い事および地下に埋設されている為、幾何学的放射線遮蔽ができる事から、これら6本の地下部取水管を直径2m、長さ約40m×3本(1本当りの容量は水平部で約126m)長さ約55mの場合は一本当り容量は水平部で約176mと仮定して、その容量(号機およびポンプNoによって長さは異なる)を活かして反応槽とする(随時他の地下部取水管も空になったら利用する)。
◎4号機冷却地上部取水管を貯水槽あるいはデカンテーション槽として流用する件
「段落:0083」(2):4号機冷却地上部取水管を貯水槽として流用する件:1〜4号機地上取水管は地表面に沿って配管されている為、超高レベル放射性廃液を入れる反応槽としては被曝を考えれば流用できない。しかし汚染除去処理後の放射能レベルが低くなった廃液については被曝線量を考慮しないで済む事から、これら3本の空間容量(地下部取水管より長いので容量も大きくなる)を利用して処理後の貯水槽あるいはデカンテーション槽として利用する。ただし入口も出口も開放状態なので入口、出口位置を決めたら、夫々取水管の上部から穴を開け、そこに超大型の風船2個をいれ、穴の直下位置を中心に、それぞれを1m以上離して設置する。勿論風船はテントで使用するような頑強な布で被覆補強されたものを使うが、これに圧搾空気を入れる事で穴の直下分に空間のある風船隔壁ができる。次いで穴の直下にできた空間に水ガラスセメント等強力充填剤を注入すれば即席で強固なセメント隔離壁ができる。セメントが固化したら内側風船の更に内側の適宜な位置、例えば穴中心から2.5m以上の位置に溶液の出入り口用の穴を更に1個開ける。第2の穴ができたら、隔壁になっている風船を撤去すると同時に蓋を設置して、貯水タンクとして機能するように例えば円周部に接着剤補強するとか、蓋にバルブを取り付けて動力による取水、放水ができるように工夫する。これと同じ造作を他の一方の他端位置にも施し、出口と入口の対を完成させる。
◎線量が低ければ「低〜中レベル放射能汚染水」の反応槽、貯水槽として流用可能の件
「段落:0084」:このように地上部取水管に溶液の出入り口を付設すれば地上取水管は約200トン前後の貯水槽に変身する。このような流用により1号機に2本、2号機〜4号機で夫々3本で、合計11本あり、平均200トンとすれば2000トン余りの貯水タンクが即座に製作できる。然も取水管強度は維持されている筈であるから強度的にも安心ができる。また、この取水管タンクは超高レベル廃液の清浄化処理後の海水で外洋放出が出来ないような低レベル放射能汚染水の貯水槽としても被曝線量をチェックしながらの使用は可能である。
◎4号機トレンチを反応槽として流用する件
「段落:0085」(3):4号機トレンチを反応槽として流用する件:各号機のトレンチの形状は様々であるが、4号機は定検中であった事から、原子炉内に燃料は無く、その破損による放射能寄与が少ない為、トレンチ内放射能レベルは1〜3号機トレンチに比較して低く、またトレンチの中間箇所に立杭が5ケ所在り、この空間およびトレンチ立杭深さ空間を利用した有効な利用方法が有る。然も前項(2)に示した地上部取水管を加工した貯水槽の出入り口とトレンチ入り口が近傍にあり、取水管加工貯水槽とトレンチを合体して利用する事で、例えば4号機の取水ポンプの稼動が可能であれば、(2)の取水ポンプ側の出口をトレンチと直結できるように工夫すればトレンチ、取水管の大容量の海水、溶液を大容量取水用ポンプで駆動攪拌ができる流動的な大容量反応槽ができる。
◎希ガスホールドアップタンクを反応槽として流用する件
「段落:0086」(4):希ガスホールドアップタンク(以後“希ガスタンク”と言う)あるいは新規製造タンクの流用の件:これらタンクを流用して吸着槽およびデカンテーション槽として使う。希ガスホールドアップ施設(以後“希ガス施設”と言う)は事故後1ケ月以上経過しているので、施設に注入した希ガスの殆どは半減期により消滅していると判断されるので、希ガスによる被曝は考える必要はない。現在使用されていない1〜4号機用の“希ガスタンク”は多数あり、例えば上記に示した地下部取水管1本当り水平部分容量173mを満足する為には、タンク仕様を直径3mΦ、高さ8mと仮定すると、1基当り容量は約56.5mで、3〜4基を直列および並列にすることで、その容量を確保できる。3〜4基を直列にして吸着槽とし、3〜4基を並列にしてデカンテーション槽或いは貯水槽として流用する。ただし「タンク」の発想はAサイトからの類推であるが、モジュールタイプの場合は別途新規製造した100〜120tonの空タンクを使い、容量は適宜定めればよい。
◎希ガスホールドアップタンク内の活性炭を流用する件
「段落:0087」(課題7の解決手段):除染効果向上の為、“施設タンク”内部に大量に保存されている活性炭およびこれを薬剤修飾して活性炭を利用する。特にヨウ素131(I−131)およびルテニウム107(Ru−107)の吸着および薬剤付着によるセシウム134(Cs−134)、セシウム−137(Cs−137)の吸着により、除染係数の大幅向上を目指す。この活性炭除染過程は先に定義した「廃液A」内に多量に存在する有機コロイドの吸着妨害を考慮して、凝集剤による固液分離の初段プロセス施工後の後段プロセスとして位置付け、活性炭を高価な吸着薬剤の付着単体として位置付け、除染係数の大幅向上を目指す。第一段の凝集剤固液分離プロセスで例えばCs−134,Cs−137の大部分が除去されれば、その後段においてはCsに対して極めて選択性は高いが、高価で使用不可であったような薬剤についても、その使用が少量で限定的になる事から使用可能となる。例えば前述したCsに対する凝結剤Fの使用が可能となり、より一層の除染係数の大幅向上が期待できると共に、選択的吸着量が高ければ付着量単体の活性炭量は少量で済む事から最終廃棄物処分量を大幅に抑制して、将来のガラス固化体最終処分形態の量を大幅に低減化できる事になる。また除染係数を極めて高い状態で処理できれば処理水を直接海洋に放出できる可能性も生じ、徒に増加する汚染処理水の容量を低減できる点で注目できる技術であろう。
そこで、これらの説明の事項を図面に示し「実施の形態」を視的に表現した。
(形態:5−1):4号機冷却地下部取水管6本を共沈法反応槽として流用する件
4号炉の復水器地下部分の取水管が2,3号炉と同じであれば[図17]に示すように直径2m,長さ約50m前後と長さ約40m前後の地下取水管部分2本がポンプ1台について付属している事から取水ポンプ3台に対して長さ約40m前後の取水管3本、約50m前後の取水管3本の合計6本在り、4号機限定の、この部分の海水は[0020][表1]の分類に依れば廃液Bに分類される。原子炉が稼働中に停止した1〜3号機の場合には1週間程度で「廃液A」相当の水質に変貌するが、今回の4号炉は停検中であった為、その取水管坑道は清掃されており、比較的キレイでムラサキイガイの残骸も無い事が予想されるから、この部分は外からの放射性核種の混入が無ければ直ちに反応槽として使える。
(形態:5−2):4号機冷却地上部取水管3本を貯水槽、デカンテーション槽、低レベル反応槽として流用する件
4号炉の復水器手前の逆洗弁辺りまでは取水ポンプから地上部にあり、[図17]に示す如く事故直後、取水ポンプが停止すると直径2mの取水管は海に向ってなだらかな勾配になっている為、この中の海水は自然に「ポンプ汲み上げ口」を通じて海洋に放出され空洞になっている筈である。この取水管3本を[図17]に示す簡単な工事によって貯水槽として準備する。
蛇足であるが、1〜3号機の場合は稼働中に停止した為、復水器地下部分と逆先弁を通じて放水路蓋渠が海水レベルと通じており、サイホン効果がある範囲で、復水器地下部分の取水管内部海水も放水口を通じて外洋に放出されると思われる。しかし[図17]から分かるように海面ゼロ(LWL±0)は「放水口蓋渠」の上下中間位置、復水器地下部分取水管の上面位置にある為、サイホン効果で復水器地下部分取水管内の海水が全て排出されずに残留するものと思われる。又それまで生息していたムラサキイガイ、フジツボも当然の事ながら管内に取り残された状態になる。従ってこれら海水と海生生物の両者に含まれるイオウ(S)起源(海生生物は硫黄蛋白、海水は硫酸根)がこの海水の水質を激変させ、有毒な硫化水素ガス発生の起因となる。
[図17]
(形態:5−3):4号機トレンチを反応槽として流用する件:
(A)トレンチ内部の清浄化と反応槽の変身
トレンチ立抗脇に鉛コンテナーで遮蔽されたカラム式吸着塔を設置して、[図16]の吸着法と同様に吸着剤例えばゼオライト、活性化高分子収着剤B(フェルト状、布状等々)、活性化無機収着剤C(セラミックボール、ラシヒリング等々)をカラム内に充填し、トレンチ内の汚染水に含まれる主要な放射性核種であるCs−134、Cs−137を吸着剤に吸着される。低レベルになったトレンチ内の汚染水は貯水槽に移転し、4号機トレンチ内を放射能汚染から浄化し、更に内部にある固定されていないような不要物をできるだけ取り除き、トレンチ内の空間を大きくし、できる限り清浄にして、次に示す付帯設備を設置する。[図16]の「取水管地下部の立抗を利用した吸着槽」と同様に任意の立抗2ケ所を選択し、その間のトレンチ内に移動式フックの付いたワイヤーを設定してモーターを利用してワイヤーを動かし、フックに付けたステンレス製の網目籠を任意に動かすことができるようにする。この籠の内部にフェルト状、スポンジ状の活性化高分子収着剤B、あるいは中空のセラミックボール状の活性化無機収着剤Cを充填できるように加工して将来的にトレンチ内部に高レベル汚染水を入れた場合、上記に示した吸着塔に代えてステンレス製網目籠を移動する事のみで籠内部に充填した収着剤にCs−134,Cs−137を吸着濃縮できるようにする。このようにすればステンレス製籠の往復回数によって除染係数を任意に決定できるようになり、地下における操作によって作業による被曝レベルを低減化できると同時に廃棄物の濃度レベルを任意に選択できる事になり、最終処分法および遮蔽レベルの決定を容易に選択できるシステムを構築できる。
(B)トレンチ立抗を「共沈法反応槽」として応用する件
トレンチ立抗5ケ所の深さ空間を濾過槽空間として利用し、ここで共沈法により発生した凝集剤スカベンジャー沈殿の固液分離操作を行う。方法論は(CC−1)と全く同様である為、詳述はしない。
(C)4号機取水管地上部と4号機トレンチを連結した大型反応槽の件
これは1番大型の反応槽への流用の件であるが、[図18]の拡大図に示した「4号機取水管3号」の地上部分と「立抗A〜立抗E」を結びトレンチの全容を使う大型反応槽への提案である。この構想は大型ではあるが、設備の流用を主体にしている点、設備を熟知している点、設備の弱点の補強による強化が容易な点、安全性を高める為の企画ができる点等々有利な面が多々有り、おまけに設備の新規構築は少なく済む点でコスト的にも有利である。以下にその意図する企画概要を示す。
▲1▼:[図18]4号機「立抗A」と「4号機ポンプC」を直結する。
もし「取水ポンプC」が稼動できる場合は「4号機ポンプCの汲み上げ口」と直結するパイプを立抗Aの中まで延長して、整備する。使用できない場合には新規に適宜な水輸送ポンプを中間に設置すれば良い。
▲2▼:次に「4号機取水管3号の地上部の建屋側」から地上部取水管を「立抗E」まで延長して取水管からの水を「立抗E」の上部から注入できる構造にする。
▲3▼:▲1▼と▲2▼が整備されれば「4号機トレンチ内の水」は「ポンプC」あるいは「新設ポンプ」により汲み上げられ、「4号機取水管3号」を通して「立抗E」近傍まで運ばれ「新しく連結整備した直系2mパイプ」を通して「立抗E」の開口上部から「トレンチ内」に注入される。このように整備すればポンプ容量の選択によりトレンチ内の移流速度が自由に選択する事ができ、例えば「共沈法」を利用する場合は「薬剤の攪拌効果および濃度の均一性効果」が期待され「立抗E」に吊るし濾過用の濾布をセットすれば固液分離が可能になる。又「吸着法」を利用する場合は「立抗E」に吸着塔を設置すれば汚染水の循環により簡単に浄化システムが完成する。又「収着剤」は[図15]から適宜選択できる。尚トレンチを移動する「カーテン式」「籠内収着剤」による吸着浄化方式においては「立抗A〜立抗E」までは「立抗D」にてトレンチ方向が直角に方向転換している為、一直線的な操作はできない。しかし「立抗A〜D」区間と「立抗D〜E」区間に分割すれば容易に応用できる事は自明である。
[図18]
大地震および大津波等の天災により電源喪失、原子炉および使用済燃料の事故時冷却系(ECCS)の崩壊、核燃料棒の温度上昇、被覆管の高温による水蒸気との反応による水素発生、水素に引火、建屋天井が吹き飛び、想像もしなかった最悪な危機的状況が発生した。この段階に至ると廃炉を覚悟した外部からの真水、海水の消防車等による放水散布等により原子炉を冷却する等、炉水管理どころではなく、原子炉自体の保全措置が優先される事になり、極めて粗雑な対応策しか選択肢が無くなり、散布水による建屋内洗浄による放射性汚染廃液が止め度なく発生する。原子炉および使用済燃料冷却の為の経時的事故事象が連鎖的に誘引され、然もかなりの初期段階で、原子炉圧力容器内に於いて冷却が不充分な為に燃料はメルトダウンを起こす等壊滅的な大事故にまで至った。結果的には「原子炉内燃料およびプール内使用済燃料の冷却処理」と「超大量に発生した超高レベル放射性廃液処理」とが緊急的課題として、夫々の「安定化対策」および「安全処理対策」が希求される。ここで言う大事故とは、第一義的に上記に示した様な壊滅的な大事故を言う。
勿論前者の冷却による「安定化対策」は核燃料の再臨界にも関連する重要事項であるが、これについては高中性子核反応断面積物質(ホウ素、カドミウム)の添加により核反応の抑制対策を施す事ができるが、他方続いて起こる溶融混合団塊(デブリス)内部に共存する多種多様な核分裂物質の崩壊熱の除去は難題で、特に冷温停止までの短半減期核種の崩壊熱を徐冷しなければならず、外からの効果的水冷しか選択肢は無い。しかしこの水冷処置は後者の超大量・超高レベル放射性廃液処理が解決しないと充分な冷却水散布が抑制されてしまう事にも関連する。ここで問題になる、後者の「安全処理対策」については、これが進捗しないと、上記冷却水散布を抑制する事に止まらず、廃液中放射能が極めて高レベルである為に、被曝線量を考慮すると、原子炉、タービン建屋内、近傍で人間が実働する全ての関連作業が中断される事になり、それ故「安全処理対策」が進展せず、徒に原子炉事故の安定・沈静化(冷温停止状態)が遅れる。従って、超大量放射性廃液の発生が伴う、これまで類を見ない、極めて深刻な、この一連の難題を解決する為の最優先課題は上記超大量・超高レベル放射性廃液中の放射性核種の隔離化あるいは除去等で、具体的には超高レベル放射性核種の固体と超大量の母液の固液分離の実施である。加えるに、上記に示した散布水或いは注入される冷却水は循環される事なく、一方的に廃液化処理される為に、経時的に増量し、その保管容量も極限に達し猶予が無く、緊急性が求められる。
このような深刻な状況において更に重要な事象が発生する。タービン建屋復水器に連結して、地下から取・放水口に向って延びる約直径2m、大口径の取水管があり、この中には冷却用に取水した海水が停滞して詰まっている。厳しく考えてここにも上記超高レベル放射性核種が混入したと考える事にする。このような状況下で「稼働中に事故に遭遇した1号機〜3号機の高レベル放射性海水廃液」と「定検中で事故に合った4号機の放射性海水廃液」を比較すると取水管内壁にムラサキイガイが密集して事故時に蘇生していて、バクテリヤが増殖していたか否かによって、この2種類の放射性海水廃液の水質は極めて大きく異なる。この事は高レベル放射性海水の廃液処理を施行する場合に、多量の有機コロイドを考えるか否かの極めて大事な分岐点となり、海水を冷却水とする原子力発電所では共通の事項であるが、これが忘却されている。
例えば仏国アレバ社の凝集剤固液分離法を米国クリオン社のゼオライト処理後に実施する事を公表し、その方向で施設、設備の構築を進めたが、この処理方法は上記バクテリヤが関連する事象を反映した処理方法ではなく、少なくとも1〜3号機タービン建屋地下に溜まっていると考えられる冷却水取水管内の高レベル放射性海水廃液処理に関しては、その処理の順番は逆で、特に夏場に向って水温が上昇する時期においてはその影響が顕著に現れる。また全世界で初めての経験である大事故に関して仏国アレバ社、米国クリオン社を含め、全人類がその処理方法を予測はできても、実務的に経験して、事前に把握して構築できる筈が無く、実際に発生した廃液による実証試験なくして確定的な事を言える筈も無い。確定的で断定的な態度は国および科学を冒涜している。更に大事な事は周辺環境住民の被曝低減化処理に対して、これと同等或いはそれ以上の意識を傾注しなければならない。
本特許は上記に示したようなオリジナル事象も考慮した第I義的な大事故時放射性廃液の緊急的水処理(「段落:0050」の第I義的概念の水処理改善処理システム)および周辺環境住民の被曝低減化処理を考慮した第II義的緊急的水処理(「段落:0051」の第II義的概念の水処理改善処理システム)に関する。
技術背景
厖大な放射性廃液を伴う大事故はこれまでに類が無く、人類が初めて経験した事で、従って決まった技術の蓄積がある筈も無く、またこのような大事故が多数回発生しても困る事で、確固として蓄積された原子炉事故技術の系統的専門分野の構築は1975年の[非特許文献1]:「確率論的原子炉事故影響評価(WASH−1400,NUREG−75/014,PB246206)」が唯一である。しかし、その後1979年のTMI事故および1986年のチェルノビル(Chemobyl)事故によって確率論的評価が否定され、その専門的分野の大きな醸成は無かった。しかしラスムッセン(Prof.Norman C.Rasmussen of the MIT)報告書として敬愛されたその報告書で、考慮された考え方、アルゴリズム、モデル、計算方法等は部分的に継承され、例えば我が国で初めての計算コードは当該発明者により米国NRCから取り寄せられ(CRACコード)、日本に移植されたが、現在では「SPEED」に発展している。このような状況下の為、先の[技術分野]の記述には当該大事故に関連しそうな[背景技術]の連想を容易にする為、大事故の大略的な経緯と厖大な放射性廃液処理が最優先課題で、その廃液には下記に示す2種類の水質の極めて異なる廃液がある事を先ず最初に示し、注意を喚起した。
WASH−1400:Nuclear Regulatory Commission 「PB−248 206,Reactor Safety Study;An Assessment of Accident Risk in U,S,Commercial Nuclear Power Plants,Appendix VI,Calculation of Reactor Accident Consequences(CRAC)」Oct.1975
当該大事故で問題にする放射性廃液は量的な観点からも放射能レベル的な観点からも類を見ない汚染水であるが、下記に示した2種類の廃液の処理あるいは管理が可能な処方箋ができれば、問題の大半を収朿する事ができる。2種類の異なる水質が発生した理由として先の[技術分野]でムラサキイガイの存否に因ることを示したが、当該発明者の過去における研究成果から導かれた必然的な理由を下記に簡単に示す。
日本における通常の原子力発電所および火力発電所は沿岸立地が多く、タービン発電機を回転した後の水蒸気は海水冷却で復水して再利用している。この際にポンプで揚水して冷却に使用する海水量は例えば次に示すように、その量は多い。この水量を維持する為には直径2mの大口径円筒パイプあるいは大断面積筐体が必要で、冷却水主ポンプの取水流量は1号機で44,250m/hr×2台、2、3号機で50,550m/hr×3台、4号機で55,300m/hr×3台で取水されている(他に主ポンプの取水能の約3〜4%程度の副ポンプが在る)。従って取水円筒パイプ内の平均流速は2m直径の単管、主ポンプ当りで1号機では約14km/hr、2、3号機では約16km/hr,、4号機では約17.6km/hrで、ほぼ1ノット前後の流速になる様に設計されている。勿論単管3台であれば、ほぼ3倍の流速になる。
このような急流状況で棲息できる海生生物は30cmもの足糸を出して、相互に「絡み合って」、積層して繁殖するフランス料理で有名な「ムール貝」と同じ「ムラサキイガイ」が主流になる。このような速い水流では単位断面積当たりを通過する動植物プランクトンの絶対数は多く、然もムラサキイガイ同士が絡み合う事で、隙間に澱みもでき、「エサ」には不自由無く育ち、従って、通常の取・放水管内壁には30cm以上の厚さに密集している場合があり、その量は想像を絶する。
このように「ムラサキイガイ」が繁殖する為、原子炉定期検査時には直ちに大口径取放水管の海水を排水し、人間の手で管内壁面からムラサキイガイを剥離脱着して、管外に運び出し、廃棄する清掃処分をする。この排水とムラサキイガイの剥離脱着廃棄は原子炉が停止して冷却水流動が停止したら速やかに施行しないと、特に夏場の海水温が高くなる時期では次に示す大変な事態が発生する。
冷却水流動が停止したら、先ずムラサキイガイは「エサ」のプランクトンが供給されなくなる事により死滅し、腐敗が始まる。この事によりムラサキイガイの肉質に含まれる硫黄蛋白(メチオニン、システィン、シスチン等)が肉質の腐敗と同時に酸化され、硫酸イオンに変貌する。この肉質酸化腐敗により海水中の溶存酸素は無くなり、貧酸素海水環境になる。この嫌気的環境においてpH8前後、肉質の腐敗有機質が充分にあり、嫌気性硫黄還元菌が猛烈に繁殖し始める。この硫黄細菌のうち、例えばDesulfovibrio Desulfuricans等はムラサキイガイ肉質中硫黄蛋白から変質した硫酸イオン(SO 2−)と海水中に賦在する硫酸イオン(SO 2−)の合計量を最終的には硫黄イオン(S2−)にまで還元する。従ってこのような海水中には亜硫酸イオン(SO 2−)、チオ硫酸イオン(S 2−)、硫黄イオン(S2−)が混在し、硫酸イオン(SO 2−)の合計量は激減して少なくなる。またこの際には気相中に炭酸ガス、メタンガス、硫化水素ガスも含まれる事になるが、海水中に硫化物を生成する金属イオンが多い場合には気相中硫化水素ガスは少なくなる。しかも肉質が分解した際に発生した有機コロイドが海水中に多く共存する事により、これが固液分離に支障をきたし、円滑な濾過操作を阻害する。
このような最悪条件に符合すると人間にも害を及ぼし特に、夏場に事件が多発するが、Aサイトの例では復水器側面のマンホールの蓋を開けた途端に内部に充満していた硫化水素ガスが吹き出し、それを吸引して死亡する事件まで起きている。このように油断をすると想像以上に硫化水素発生がある等、このバクテリアの分解反応は速く、当該発明者の研究成果によれば、海水温30℃で2700ppmの硫酸イオンが約23〜24日間で200ppmになり93%が消失する。またその温度依存性は実験室的には海水温度の10℃を閾値として30日間のガス発生量(炭酸ガス+メタンガス+硫化水素ガス)は35℃でムラサキイガイ500gに対して4.8lに達する。また季節的には3月〜4月の太平洋側東北沖合いの海水の水温は約10℃で閾値に相当する時期であるが、4月以降は例年では必ずそれ以上の水温になり、夏場に向って海水温は上昇する。従って海水温が高くなる夏場の場合は1週間以内に上記清掃処理をしないと取・放水管内には硫化水素ガスが充満してくる事が分っている。
「廃液Aの定義」:
以上に説明した最悪の条件に符合しているのが「当該大事故によってムラサキイガイの棄却ができなかった1号機〜3号機の取・放水管内の海水」に代表される水質状態の廃液であるが、還元的条件の海水に有機コロイドが多量含まれる事が特徴的で、これが固液分離に支障をきたす。この大変身した腐敗海水に更に大事故によって発生した超高レベルの核分裂物質(FP)および腐蝕放射化物質(CP)が混入していると厳しく仮定して、これを「廃液A」と定義する。
「廃液Bの定義」:
他方、もう1種類の廃液は「定検中に当該大事故に合った4号機の取・放水管内の海水」に代表される水質状態の廃液である。4号機は定検中であった為、海水冷却取・放水管内の海水およびムラサキイガイは除去されていて、管内も清掃され、ムラサキイガイの貝殻の存在も無く、相対的に「キレイ」な管内であった事が予想される。従って現在充填されている管内に存在する「水」は当然空間であった取・放水管内に津波によって侵入した海水およびその後の事故によって外から使用済燃料プールへ散布された水および原子炉循環冷却水が汚水として溜まったものと思われる。この汚水は還元的腐敗海水廃液でもなく、然も亜硫酸イオン(SO 2−)、チオ硫酸イオン(S 2−)、硫黄イオン(S2−)等も含まれていない放射性廃液で、先に定義した「廃液A」とは全く異なる、むしろ通常時に経験する水質を有する廃液で、これを「廃液B」と定義する。この高レベル放射性核種を含む「廃液B」の組成は平常時稼動における「ランドリードレン中」或いは「フロアドレン中」の放射性核種の物理的、化学的形態より複雑怪奇な成分組成に変身すると思われるが、水質的には大きく異なる事が無く「ランドリードレン中」或いは「フロアドレン中」の放射性核種の物理的、化学的形態から類推される事も多くあると思われるので、この種の廃液を「廃液B相当廃液」として固液分離段階では「廃液B」として扱う。従ってこの定義の中には平常時の放射性廃液、原子炉建屋、タービン建屋の事故時地下の溜まり水および地下坑道として掘削した大地下トレンチ内に事故時に流入した廃液等を含めて考える。
[表1]に「廃液A」と「廃液B」の水質が極めて異なる事、およびその発生理由の相違点を相対的にまとめて示した。この表から分かるように、これら両者の廃液を同様に、同等に、同じ処理方法で扱う事ができない事、および外国技術をそのまま「鵜呑み」に適用できない事は多量の有機コロイドの存否を考えれば当然の事である。
以上、当該発明者の研究成果に基ずいて必然的に分類された「廃液A」と「廃液B」について、その発生源と発生理由について紹介したが、上記に示した背景技術に加えて、以下の[非特許文献2]、[非特許文献3]に示した応用技術からも新たな技術的発想が得られるが、後述の[先行技術]に示される技術の基本はTMI事故、チェルノビル事故時に適応されたゼオライト処理技術、下水道処理技術の応用的共沈技術等のコピーで、新しい技術の発見、発明に薄く、その展開が乏しいように写る。この点の飛躍の意味を込めて本発明の後半において新しい技術の導入を行っている。
産業排水対策に関する技術リスト 2010年3月 http://www.env.go.jp/air/tech/ine/asia/vietnam/files/needs/vietnam−technology−list−jp.pdf
Chernobyl forum expert Group‘Environment’「Environmental Consequences of the Chernobyl Accident and their Remediation:Twenty Years of Experience」IAEA 2006
Figure 2013072871
先行技術
(1):仏国アレバ社の汚水処理技術の指向する方向:
新聞報道によるとタービン建屋地下坑道に溜まった高濃度汚染水を処理する為、仏国アレバ社(Areva SA)に発注していた汚染除去装置の資材搬入がほぼ終了し、2011年6月の運転開始を目途としていて、運転場所は集中廃棄物処理施設の主プロセス建屋で、設備の大略は「装置本体、小型タンク10個、ポンプ30台、放射線モニター5台で構成される」と公表されている。
仏国アレバ社は原子力庁79.0%、財務省5.2%の国策会社で、原子力部門はアレバグループのアレバNP社が担当する。このアレバNP社はアレバ社66%、シーメンス社34%の合弁企業で、傘下にウラン濃縮会社Eurodif社、ウラン転換会社Comurhex社を抱えている仏国挙げての原子力総合会社である。
仏国は極めて技術情報の閉鎖的な国で、かって当該発明者も技術情報検索システムで仏国情報収集を試みたが「80%以上は秘密情報として技術内容についてはアブストラクトすら入手できず、得られるのは報告書タイトルのみ」と言う苦い経験がある。日本のような資源小国は大国米国を真似て開放的になるばかりではなく、一部仏国のような閉鎖的姿勢も技術資源確保の観点から大切な事かもしれない。
当該大事故の高レベル放射性廃液処理についてもアレバ社の技術情報は極めて限定的であるが、その限られた少ない情報の中からアレバ社の固液分離法は「凝結・凝集剤」による放射性核種共沈法の応用処理技術である事が分かっている。「凝結・凝集剤」による固液分離法は下水道処理における活性汚泥処理法の発展と共に古くから進歩しており、後述の「段落:0033」の(3)および「段落:0039」の(4)に示す如く、水酸化アルミニゥムによる重金属分離法(PAC法)、水酸化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄(PF)、ポリシリカ鉄(PCI)等々の凝結剤および近年における高分子凝集剤によるフロキュレーション法として熟知されていて、アレバ社の独占的斬新的技術とは言えない。また後述する「段落:0042」の(5−2)に示す如く斬新的な凝結剤Eおよび凝結剤Fのようにセシウム(Cs)を含むアルカリ金属に強い選択性を持つ分離抽出剤の発展については日本においても極めて高度な進歩がある。
上記観点を考慮すると、TVニュースで垣間観られるアレバ社の搬入装置映像から、スカベンジァー(清掃人)共沈法における「沈殿分離操作:濾過法」に特徴があるように思える。以上を総合的に評価すると、仏国アレバ社の技術は放射線計測器が付いている事のみなのか?例えばヨウ化ナトリウム(NaI−Tl)とフォトマル(光電子倍増管)、あるいは半導体検出器(SSD)が付いてレートメーター(崩壊速度計)あるいはパルハイ(パルス波高解析計)計測機能が付いているのみではないのか?そうでないとしても、固液分離法の基本的処理法は後述する(3)、(4)と大差なく、固液分離の「濾過法」にのみ独創性のある技術であるように思える。しかし、この点に関しても[非特許文献2]に示す如く、日本の廃液処理のレベルは高く、果たして日本の廃液処理システムを超える技術であろうか?日本人が日本の技術を熟知する事無く、徒に、盲目的に外国技術に依存する事には疑問を感じる。
(2):米国クリオン社の汚水処理技術の指向する方向:
アルカリ金属、アルカリ土類金属の分離処理過程においてセシウムイオン(Cs)に特異的な収着を示す鉱物としてゼオライト(沸石)がある。多種多様の分子、元素に強い選択的弁別性を示す有機物であるイオン交換樹脂を用いないのは、高レベル放射線による結晶損傷を回避する事のみではなく、廃水処理の最終処分形態としてガラス溶融固化体を想定すると、有機質の大量発生は、その燃焼過程を考えると不利になる。その為、収着操作を考える場合には有機質のイオン交換樹脂よりも無機イオン交換体の方が有利である事は明白である。当該大事故で主役を演じる放射性セシウム(Cs−134,Cs−137)は水溶液中で多数ある無機イオン交換体鉱物の中でゼオライトが有効である事は昔から熟知された事実で、目新しい技術でもなく陳腐な汎用技術である。
他方、気相中におけるゼオライトの吸着現象は上記水溶液中の収着現象とは異なり、その鉱物結晶空間中に構成されるオングストローム(Å)単位で4(Å)、5(Å)、13(Å)直径の空孔が吸着現象を左右する。ここに特定気体(酸素、窒素、炭酸ガス、メタンガス等の永久気体)がトラップされるが、例えばガスクロマトグラフィーにおける充填カラム吸着剤としてのゼオライト(この場合はモレキュラシーブと言われる)とキャリヤーガスとの間での吸・脱着速度の相違によって空気のような複数混合気体が分配され、酸素ガスと窒素ガスに分離される。
これに対して上述したセシウムイオン(Cs)の水溶液中の収着はゼオライト結晶を構成するアルカリイオン(NH ,Na,Ketc.)がCsと交換反応を起こす事でゼオライトに吸収される現象で、その交換優先順位でセシウムイオン(Cs)が高く、Na,Kよりも優先的に格子内にトラップされる為にNaイオンが断然多い海水中においてすらCsがゼオライトに吸着される。
ゼオライトが吸着する大略の現象は上述した理由に拠るが、米国クリオン社は上記に示したゼオライトによるCs−134,Cs−137の吸着装置、と言うよりは、吸着モジュールを提唱している。従って原理的には斬新的でも無く、驚く程の事でも無い、周知の技術で、このゼオライトによる吸着現象の原理を米国クリオン社が独占的に占有できる筈は無い。他方、その吸着過程をモジュール化(吸着筐体化)した吸着装置はクリオン社の示す映像の中から把握できるが、独創的なモジュールの可能性のある事は理解できる。因みにクリオン社が示すシステムの特徴は他社のゼオライト吸着システムと比較して「除染係数が高い」「同位体吸着量が多い」「放射性耐性が良い」「ガラス固化に適合性が良い」等々を掲げ、特許事項として「補完的なモジュール化ガラス固化システム」がある事を説明している。納得できる説明内容である。
従って、客観的に米国クリオン社による海水汚染水中のCs−134,Cs−137のゼオライト吸着による固液分離を考えた時、その特徴は固液分離に関する原理的な事ではなく、モジール化等の補完的な利便性を主体にしたシステムである事を認識しなければならない。また当該事故でタービン建屋地下に溜まっている高レベル放射能は450万(Bq/cm)であると言う。この線量が全てCs−137が放射する線量と仮定すると、その重量は下記の[計算式01]に示す如く、汚染水1000トン当たり、1.40kg相当になる。更にゼオライトのセシウム収着能を1%(ゼオライト100gがCs1gを収着)と仮定すれば、汚染水1000トン中のCs−137:1.40kgを吸収するゼオライト量は、その100倍の140kgが必要になる。なおゼオライトのセシウム収着能は東電の研究結果によれば0.6%で、30時間で1kgのゼオライトがセシウム6gを収着する事が分かっている。
計算式01
Figure 2013072871
しかし、これは先に[背景技術]の中で示した「廃液B」の水質環境において成立する除染係数で、有機コロイドが多量に含まれる「廃液A」の海水中においては、上記に設定した計画的除染係数を達成できない事が予想される事を念頭に置くべきと思う。従って、この「ゼオライト収着過程」は「凝結・凝集剤共沈法の固液分離過程」の後に実施する精製機能的処理工程として実施すべきと思われる。
(3):凝結剤共沈法(Coagulation)による固液分離法
溶液中のアルカリイオン、アルカリ土類イオン以外の金属イオンは、その種類も多く、その中の当該イオンを分析化学的に単離する場合、分属を意識した同類弁別分類処理を意図するのが常識的である。その分離分属的な媒体として考えられるのが集合包含的効果(清掃人的スカベンジァー効果)に優れている水酸化第二鉄、硫化鉄、ポリ硫酸第2鉄、ポリシリカ鉄(PCI)および水酸化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)である。これらをpH等の調整によって溶液中に共存する当該イオンを沈殿同伴によって巻き込む事(共沈現象)で、溶液中から固体として当該イオンを母液中から分離する。この固液分離法を共沈法と言い、加えた物質を凝結剤と言う。
一般的に水中の懸濁物質表面はマイナスに荷電している場合が多く、お互いに反発するか、水の膜面に覆われていて、相互間距離が大きい為に分散状態になる。このような状態に硫酸バンド(硫酸第二鉄)、あるいは上記に示した水酸化第二鉄等のプラス荷電のカチオン物質が添加されると懸濁物質の表面荷電が中和され、斥力が無くなり、相互に引力が働き懸濁物質同士が結合して大きな集合体になるが、この現象を凝結作用(Coagulation)といい、加えた物質を凝固剤、あるいは凝結剤(Coagulant)と言う。ただしこの状態では、まだ集合体の大きさが小さく、固液分離の為の濾過操作では濾過膜に目詰まりを起こし、実務的には非能率的である。そこで、これらの集合体を更に大きくする為に、高分子凝集剤が添加される場合があるが、この点については後述する(4)において説明する。
水酸化第2鉄、硫化鉄および水酸化アルミニウムの溶解度積は[表2]に示す如く、極めて小さく、母液中の鉄イオン量、アルミニウムイオン量は極めて低レベルになり、他の共存イオンが水酸化鉄等に共沈する場合、その水酸化物の溶解度積の低い事も重要であるが、上述したように水酸化鉄のpH8.5(等電点)以下における沈殿のプラス荷電効果も大きい。水酸化鉄独自では荷電斥力により集合が阻害され、コロイド状態で均一に分散しているが、このプラス荷電コロイドに多くのマイナス荷電の沈殿が引き寄せられて集合され、凝結作用(Coagulation)を起こす。例えばヨウ素の酸化イオンであるヨウ素酸(IO )は水酸化鉄に吸着され、共沈する現象は、この静電的効果に因る事で説明されている。[非特許文献4]によれば、例えば塩素水で酸化したヨウ素イオンはヨウ素酸イオンとなりマイナスに荷電する。また水酸化第2鉄はpH3〜4でプラス荷電する為、これを凝結剤にすると放射性ヨウ素は凝結剤に共沈して溶液中からの放射性ヨウ素の除去率は95%以上に達する。
木村捷二郎、他3名「水酸化鉄(III)共沈法による上水中の放射性ヨウ素の吸着除去」Radioisotopes Vol51,No4,p149〜156,2002
他方硫化物沈殿法はpHが中性領域でも処理が可能で、金属硫化物の溶解度積がその水酸化物より小さく、硫化物沈殿の生成によって水酸化物法よりも低い残留濃度まで重金属イオンを除去できる点で有害金属除去処理法として優れた一面がある。ただし硫化物の沈殿は一般的に沈降性が悪い為、ポリ塩化アルミニウム(PAC)や塩化鉄などの凝結剤を加えて改善するのが一般的である。このような共沈法による固液分離法の現実的で大規模な応用例は下水処理における重金属イオンあるいは燐酸除去の為の水酸化アルミニウムあるいは水酸化第二鉄等による固液分離法であろう。通常、リン除去の為の薬剤添加法はBOD等流入有機物が少なく、生物学的にリンを除去するのが困難な場合や、処理設備自体がリンを積極的に除去するプロセスが無いような下水処理施設で実施される方法で例えば、エアレーションにより下水中のリンは殆どがリン酸イオン(PO 3−)になるので、これに凝結剤のポリ塩化アルミニウム(PAC法)を加えるとリン酸イオンはリン酸アルミニウムとして化学反応的に沈殿分離される方法である。このような現実的な上水、下水処理応用例の内容については多くの文献やWeb検索で解説、説明が容易に、しかも多数得られるので、これ以上の詳述はしない。
Figure 2013072871
(4):高分子凝集剤共沈法(Flocculation)による固液分離法:
上記に示した水酸化第二鉄および水酸化アルミニウムのコロイド状沈殿物(スカベンジャー)が共存する溶液中では当該イオンが共沈して、その固液分離に効果的である事を示した。しかし実務的には、この処理を行ったスカベンジャー沈殿は当該イオンを共沈した後においても、その粒子は小さく、溶媒の母液を分離する場合には、濾過膜(布および紙)が目詰まりを起こして濾過操作に極めて長時間を要する場合が多く、遂には固液分離を諦める場合もある。このような場合、縣濁物質集合体のCoagulation状態のコロイド状沈殿物を高分子凝集剤の架橋吸着作用により取り込み、大きく強いフロック体を形成させる高分子凝集剤共沈法を適用する。この巨大化共沈現象を凝集作用(Flocculation)と言う。これら両者を含め、集合包含作用により分離局在化させる物質を広い意味で、スカベンジャー(清掃人)と言う。なお通常の場合は凝結作用(Coagulation)と凝集作用(Flocculation)が混同して使われるが、支障の無い場合には拘泥しないが、本特許の文中では明らかに区別して扱う事が望ましい為、厳密に意味ある言葉として両者を区別して使用する。この際に用いられる高分子凝集剤についてはWeb検索によって日本における多くの製品、多くの製造メーカーのある事が確認できる。日本が高分子凝集剤技術について極めて高いレベルにある事を指摘して、これ以上の記述はしない。
(5):その他効果的な選択性凝結剤:
当該事故によって放出された放射性核種が近傍周辺の環境で経時的にどのように減衰するかはチェルノビル大事故の場合について、1年以上経過した段階では環境中に存在する残渣放射能はCs−137が大部分を占める。しかし当該大事故に関しては原子炉構造金属の内面腐食による放射化物質(CP:コロージョンプロダクツ)としてのCo−60も半減期が長く主要な長期的残渣核種になる。なおチェルノビル大事故における炉型(コールダーホール型)の場合には中性子減速材として黒鉛を使い、軽水(通常の水)を使用していない事から、このCPは少ない。
(5−1):プルシアンブルー(PB)色素によるCsの選択抽出:
上述したように大事故の場合はCs−137除去方法についての感心が高く、その除去法については数多くの選択的弁別剤の発見、製造、評価が行われており、その最たる弁別剤はプルシァンブルー(PB、フェロシアン化第二鉄)であろう。これはチェルノビル大事故の際には、セシウムへの吸収特性が認められ、Cs−134、Cs−137の被曝低減化剤の医薬品として使われるほど選択性があり、特定な一価陽イオンのセシウム、タリウム等と結合する吸収剤である。我が国においては、放射線総合医学研究所がその効能情報の全国管理をする事を条件に、ようやく人間の被爆低減化医薬品として販売処方が認められ(厚生労働省承認番号22200AMX00966000)、「ラディオガルダーゼ」の名称でカプセル剤として市販されるようになった。
(5−2):凝結剤Eと凝結剤F:
アルカリ金属の相互分離では(Li,Na)と(K,Rb,Cs)のグループ分離は容易であるが、後者の3元素相互の分離は比較的困難である。この3元素の合計量(K+Rb+Cs)としてであれば、定量的に沈殿させる薬剤は、[非特許文献5]、[特許文献1]に示されているように凝結剤Eが在る。
また一部Rbを沈殿同伴するが、Csを完全に定量的沈殿させる試薬で、化学構造的には上記凝結剤Eの******にフッ素原子が1ケずつ付加された構造に相当する凝結剤Fがある。これ[非特許文献6]に示された薬剤であるが、理科学辞典に掲載されている化合物で周知はされている。しかし高価(≒2万円/g)な事もあり、凝結剤Eと共に認知度は低い。
しかしカリウム(K)が同伴されずに、しかも ルビジウム(Rb)含量の少ない海水中のセシウム(Cs)の弁別で例えば、前処理段階で大部分のCsが系外に除去された後の、精製段階過程での使用であれば、その利用価値は高く、当該放射性廃液の汚染水処理において、その様なプロセスでの使い方ができる。この様な精製段階の導入により例えば、Cs−134,Cs−137の放射能レベルが海洋へ放出可能な極低レベルにまで除染できるとすれば、汚染廃液の大量貯蔵から開放され、そのメリットは大きい。
****、外2名「****」18,p81,19**
Figure 2013072871
Figure 2013072871
(5−3):リンモリブデン酸アンモン:
リンモリブデン酸アンモン(NH[PO(MoO12]・3HOは薬剤中のアンモニウム基が水溶液中のセシウムイオンをイオン交換する濃縮物質として有名で、放射化学分析において欠かせない収着剤である。日本における「核実験および原子力施設周辺の環境放射能調査」で公的に定められた放射能測定方法があり、その中で「セシウム分析法」は下記に示す[非特許文献7]の中で決められている。ここで降水、陸水、海水、土壌、海底・河底堆積物、農作物、牛乳、海産生物、日常食等々の環境試料中に含まれるセシウム−137放射能の分析方法、β線計測方法および評価方法等々について、汎用的なマニュアルとして細かく指示が示されている。その分析操作の中でセシウムの濃縮物質として用いられているのがリンモリブデン酸アンモンである。このようにセシウム−137のβ線計測法による化学分離操作で吸着、弁別能の高い薬剤として万人が認めるリンモリブデン酸アンモンが何故当該大事故でセシウム−137の濃縮剤として即座に使用されないのか?それは(NH[PO(MoO12]分子に占めるモリブデン酸根(MoO12の重量比が大きく、イオン交換されるセシウム量に比較して添加されるリンモリブデン酸アンモン総量が相対的に多くなる事が理由の一つである。当該大事故の場合のように超大容量の放射性廃液から弁別抽出するには大多量の薬剤を加える事になり、他に優秀な薬剤がある為に、不向きな薬剤として出番が無くなっている。これ以上についてはWeb検索で多くの情報が得られるので、これ以上は述べない。
文部科学省「放射性セシウム分析法、第六刷」日本分析センター 平成14年11月
発明が解決しようとする課題
本発明は大きく分けて2種類の概念を有する水処理システムを含む。
第一番目は「冷却水喪失大事故⇒炉心溶融⇒水素爆発に拠る建屋外枠の破壊⇒外部冷却水に依る炉心冷却⇒恒常的な超大量廃液発生⇒超高レベル、超大量廃液発生⇒超高レベル、超大量廃液の水処理システムの完成と運転実施⇒炉心の低温冷却停止」に至る大事故時に発生する廃液に対する第I義的概念の水処理改善システムである。
第二番目は周辺環境住民の健康保全の為の上下水道生活用水の水質保全および周辺住民の子女子の為の精神的抑制低減化も含めた例えば、プール等のスポーツ用水の水質保全を維持する為の汚染水処理、降水による校庭の土壌表面低減化および水噴霧による焼却灰、植物乾燥体中の低減化等、周辺住民の生活に関連する環境および環境試料中に含まれる放射性核種の低減化も含めた広い意味での第II義的概念の水処理改善システムである。
第I義的水処理改善システムも第II義的水処理改善システムも両者共に極めて深い概念的な意義があり、改善システムの速やかな施行が強く希求されている。
第I義的水処理改善システムは大事故時放射性廃液の緊急的水処理に関するものであるが、超大量および超高レベルであるが故に被曝線量を原因として「冷温停止」処理作業が遅れる傾向にある。その解決策の最優先課題は本発明で示すような水処理技術である。これらの観点から下記要点を考慮した課題を解決することが希求される。
*緊急性を考えて、設備、装置の構築所要時間が短い水処理法である事。
*単純な方法による短時間水処理法である事。
*施設周辺環境で流用できる設備、装置を使う事で、上記の時間短縮を満たす事。
*被曝線量を考えた簡単な幾何学的遮蔽位置、距離および遠隔操作ができる事。
これらの水処理技術の実施においては当該大事故における特殊事情が発生している事を「段落:0020」の[表1]に示したが、複合的で複雑な放射性廃液を水質の大きく異なる2種類の廃液に分類し、その廃液A、Bの実体と水質および超高レベルの放射能を把握して、除染効果が確実に確認され、放射性核種の除染係数が高く、且つ廃棄物減容率が比較的高い固液分離法の構築が望まれる。
また第II義的あるいは派生的な原子力施設事故時の周辺環境の汚染水(降水、雨水、陸水、地下水、湖水、池、プール、および海水等々)および環境試料中の除染処理法も周辺住民の生活環境問題として極めて重大な事項であるが、この場合の特徴は放射能レベルが極めて低いのであるが、更に低いレベルへの除染技術が求められる点にある。
このように第I義的水処理改善システムと第II義的水処理改善システムには、その放射能レベルにおいて「天と地」程の落差があり、第II義的水処理改善システムに第I義的水処理改善システムと同様のシステムを適応しても「サシミを牛刀で裁く」事にもなり、本特許の中で放射能レベルの高低に対応した複数の水処理システムを考えて、夫々に適応すべきと惹起した。そこで放射能レベルを下記の「段落:0059」[表3]に示した3段階の範囲に分級して、夫々のレベルに対応した「極低レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築」、「低〜高レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築」および「超高レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築」の3段階に分けて、課題の中で夫々に対応した汚染水中放射性核種の固液分離法の課題を提示した。なお放射能レベルの値は単位を種々変えて示し、単位によって惑わされないように計ったが、第3段階目の超高レベルにおいては放射能を無視して単純に重量のみで表現すれば、通常の化学分析で取り扱うmg、gオーダーの重量になっている点に注意が必要で、その確認実験は必ずしも超ミクロの放射能を使って放射化学的に実証しなくても、化学分析的にマクロな重量実証実験でも十分な程分子数、原子数は厖大である。
[課題1]:「極低レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築」:
当該大事故環境周辺住民の「上、下水道生活用水の水質保全」および「プール等のスポーツ用水の水質保全」を維持する為の簡便且つ廉価な水処理改善システムは大事故によって心身共に打ち拉がれた周辺住民の心情をも左右する大変重要な対応型のシステム構築で、第一に重要な課題として掲げた。この場合の水中放射能レベルは極めてバックグランドレベルに近い放射能あるいは検出限界レベルに近い放射能の高低が問題になる場合が多く、「1トン海水中の放射能検出限界レベル〜1cm当りGM計数管のバックグランド(10cpm)の範囲を考慮したレベル」に対応した「極低レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築」が課題である。
[課題2]:プールと校庭土壌の除染:
周辺住民の子供達の精神的、身体的ストレスを軽減し、安心してプールでの水泳が楽しめるように対処する為、プールの水質改善を簡便且つ廉価に実施できる方法を考える事および学校の校庭土壌の改良も検討する。この土壌改良は降雨による土壌洗浄と考えると、降雨中放射性核種の土壌による除染あるいは土壌中放射性核種の降雨による適宜な溶出作用と考えると、これも水質改善システムの一環であるとして考える事ができる。また焼却灰および稲藁等植物乾燥体中の放射性核種の低減化も放射性セシウムがイオンとしての存在割合が多く水移行が容易に起こる事で考えると、これらに水を噴霧する事で簡単に低減化できる事を考慮して環境全体にわたる広い意味での水経由の改善システムとして考えた。
[課題3]:「低〜高レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築」:
大事故発生施設から放射性廃液が漏洩して周辺環境への拡散が始まった場合、できうる限り初期段階で狭い区域内に留めて、拡散を防止する事が極めて重要な事である。然もそれに引き続いて拡散が防止されている当該区域が海洋の一部であるような場合が多く想定されるので、即座にその海水中放射能を低減化する為の水質改善システムが施行されなければならない。このような場合を想定して「1cm当りGM計数管のバックグランド(10cpm)を考慮したレベル〜トレンチ最高濃度(≒500万(Bq/cm)の約500分の1相当の濃度範囲の放射能」を考慮した「低〜高レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築」が課題である。
Figure 2013072871
★:トレンチ汚染水がCs−137のみと仮定して、その濃度を450万(Bq/cm)とすると、その汚染水1000ton当りに含まれるCs−137の重量W(g)(ρ≒1とする)は(注1)の3.12mgを濃度で450倍、重量で1000倍の4.5×10倍すれば求まるが、既に[0031]の[計算式01]でも示されている。1ton当りでは1.4gとなり、1円玉1.4枚分の重さである。W(g)≒1.4kg/1000ton=1.4g/1000000g=1.4ppm
[課題4]:超大量の放射性廃液の水処理方法に対応する大容量固液分離法の構築が必要であるが、特に濾過法の選択が重要である事から、新しい電源を要しないPassive typeの単純濾過法を提示し、電気回路トラブル、機械制御トラブル、濾過装置トラブル等々から開放され、また濾過の為に長時間を要し、それが律速段階になる要因もあり、それを緩和する為の課題もある。
[課題5]:「超高レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築」:
海水中濃度で約500万(Bq/cm)と言う、これまで人類が経験した事の無い超高レベルで、然も超大量の放射性廃液の放出を経験した。このようなレベルになると人間の作業もできないほどに危険な高線量レベルである為、その除去方法、除染作業および除染により発生した濃縮型超高レベル固体、液体廃棄物処理、処分の問題も関係して極めて難題な水処理改善システムになる事が想定される。これらに相当するレベルとして「トレンチ最高濃度の約500分の1レベル〜トレンチ濃度の約20倍に相当する1010(Bq/ton)〜1014(Bq/ton)の濃度範囲の放射能」を考慮して、下記項目についての検討も含め「超高レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築」が課題である
(1):廃棄物容量と処理廃水容量との減容率(仏国アレバ社の減容率は≒10−2
(2):減容率を高くした場合の遮蔽問題。
(3):減容率を高くした場合の遮蔽内面の表面温度(強度、溶融の観点から)。
(4):このレベルの線量を照射する核種の量はマクロ量になり、馴染みの重量単位mg、gで表現される事になり、通常のマクロ量の反応量として捉える事ができる為、必ずしも放射化学的な超ミクロの放射能的確認実験は必要なく、通常の分析化学的な定性、定量結果による確認実験で実証できる。
[課題6]:
緊急性を考えて、原子力発電所敷地内で簡単な改良、改修で流用できる下記の施設、設備の応用を考える。
(1):4号機冷却地下部取水管6本を反応槽として流用する件:4号機冷却地下部取水管は腹水器直下の取水管部分で、ここには原子炉が停止しても海水が残ると同時にムラサキイガイ、フジツボ等海洋付着生物が密集して生息する場合がある。しかし4号機は停検時期であった為、当然の事ながら付着生物は剥離除去されてムラサキイガイの貝殻の積層も無く、比較的キレイである事から、その容量(号機およびポンプNoによって長さは異なる)を活かして反応槽とする。
(2):4号機冷却地上部取水管を貯水槽として流用する件:1〜4号機地上取水管は地表面に沿って配管されている為、超高レベル放射性廃液を入れる反応槽としては被曝を考えれば流用できないが、処理後の放射能レベルが低くなった廃液については被曝線量を考慮しないで済む事から、その6本の空間容量(地下部取水管より長いので容量も大きくなる)を利用して処理後の貯水槽として利用する。また取水管タンクは超高レベル廃液の処理済海水で除染が完了していない低〜中レベル放射能汚染水についても被曝線量をチェックしながらの使用は可能である。
(3):4号トレンチを反応槽として流用する件:各号機のトレンチの形状は様々であるが、4号機は定検中であった事から、原子炉内に燃料が無く、その破損漏洩は勿論無く、トレンチ内放射能レベルは1〜3号機トレンチに比較して放射能レベルは低く、またトレンチの長さが短い割には立杭が5ケ所在り、この空間およびトレンチ立杭深さ空間を利用した有効な利用方法が有る。ただしトレンチ水位およびタービン建屋の汚染水位の経過時間変化を観ると少なくとも3号機建屋の汚染水と繋がっているように思えるので注意が肝心である。
(4):希ガスホールドアップタンク(以後“希ガスタンク”と言う)あるいは新規製造タンクの流用の件:これらタンクを流用して吸着槽およびデカンテーション槽として使う。ただし「タンク」の発想はAサイトからの類推であるが、モジュールタイプの場合は別途新規製造した100〜120tonの空タンクを使い、容量は適宜定めればよい。
[課題7]:
希ガスホールドアップタンク内の活性炭充填剤内部では、既にXe,Krの放射性希ガスの殆どは崩壊している筈であるから、この活性炭を有効に利用すべきと思われる。希ガス用での活性炭の使用は気相中のガス流動の保持時間差の利用が目的であったが、今回は海水中の放射性核種の吸着現象の利用であるから当該活性炭が水処理用として最適条件下にある品種とは限らないが、他の吸着物質より利用価値は大きい。
課題を解決するための手段
本発明の課題の内容は水処理技術の概念、廃液の種類、放射能レベル、最終廃棄物固体の形態等々に関連して多岐に渉っている。そこで先ず本発明で考えている解決手段の為の基本的考え方を述べる。
その第1は液体溶存状態の固定化法と固定化した固体を液体から分離する固液分離法の選択肢に関してである。
第2は解決手段の為には「除染係数」のみでは無く、将来的な最終処分を考えると「減容率の優劣評価」も水処理改善システムには重要な事項で、仏国アレバ社の減容率(QRF)は「段落:0071」で求めているようにQRF=10−2で良い評価では無い。
第3は「除染係数が極めて大きく」「減容率が極めて大きい」汚染水処理システムが必ずしも最高の評価にならない場合がある。例えば燃焼灰比放射能の通常の埋設基準が規定されている場合、その規制値(例えば8000(Bq/kg灰))を超過すると通常の廃棄法(埋め立て地に棄却)では処分できなくなり、特定場所に設置された「青森県六ヶ所村の低レベル放射性廃棄物浅層処分場等々」或いは「高レベル放射性廃棄物処分場(今だ場所の特定ができていない)」への搬送処分が義務付けられる事になり、その最終処分コストは極めて高額になる可能性がある。特に極低レベルの汚染水処理システムにおいては有機物燃焼過程を経た灰化物として棄却可能の為、吸着・吸収体として有機物を選択できる。他方、灰化物として棄却できずにガラス固化体として最終処分する場合には焼却過程が付随する有機物吸着・吸収体は不利になり、この場合は無機物吸着・吸収体が有利になる。このような規制値による許認可の判定基準が水処理システム或いは水処理方法の優劣判定基準を凌駕する事になるので注意が肝心である。
(第1の基本的解決手段の考え方):
放射性汚染水の水処理改善システムにおける「液体溶存状態の固形化法」および固形化後の「固液分離法」について本特許で考慮しているプロセスおよび必要素材を[表4]に示して、全体の流れの把握を容易にした。この中から適宜な素材を選択して適宜な水質改善処理システムを完成させる。
Figure 2013072871
(第2の基本的解決手段の考え方):これまでの廃液処理の報道から視聴すると、放射性核種の除染係数のみで除染プロセスの優劣を評価する傾向にあるように思われる。しかし除染係数の大小も重要な事であるが、例えば汚染水の処理容量が1tonであるのに対して、処理後の廃液容量が10tonに達しているとすれば、最終処分のガラス固化体あるいは地下浅層埋設処分まで考えると極めて将来に高額なコストを先送りする事になり、極めて将来への負荷が大きい。また最近において、通常のゴミ廃棄物を業者に処分依頼すると廃棄物容量(例えば2トン車容量)で価格が決定される等廃棄物処分には必ず容量因子が付きまとう。このように高レベル汚染水が浄化されても、その原因となる放射性物質は大なり、小なり廃棄物に移行しただけで、それ自体が減るわけではない。放射性物質を薬剤で沈殿させたり、吸着剤で取り除いたりすれば水は浄化されるが、後には濃縮された放射性廃棄物が残る。この宿命は如何なる方法においても同様であるが、廃棄物処分システム、この場合は水処理プロセスであるが、その優劣は放射性核種の汚染水からの移行率(除染係数)をできる限り高くして移行先の廃棄物容量をできる限り小さくコンパクトにして(比放射能を高く)保存できるか否かにある。このような観点から、廃棄物処理プロセスの評価は「除染係数(DF:Decontamination Factor)」の大きさは勿論重要であるが「廃棄物減容率(QRF:Quantity Reduction Factor)」も極めて重要である事が理解できる。例えば仏国アレバ社の固液分離システムによるQRFを新聞報道の値から求めると、以下のようにQRF=10−2で評価としては決して良くない。
仏国アレバ社のQRF:
新聞報道では「東電の計算によると20万トンの高濃度汚染水を処理する事でアレバ社の装置からだけでもプール4〜5杯分の約2000tonの廃棄物が出る計算」になる。汚染水の比重を1(ρ=1)として考えると、その減容率QRF(1)は
QRF(1)=[2000m/200000m]=10−2 になる。
即ち100mの汚染水を処理したら廃棄物容量が1m発生する事になる。また異なる報道では福島第一原発敷地内に溜まった高濃度放射性汚染水量は11万トンで25メートルプール200杯分である事が示されたが、この計算に従えば20万トンでは364杯分になるから、アレバ社の装置から放出される廃棄物量がプール4〜5杯分とするとその減容率QRF(2)はQRF(2)=[4〜5杯分/364杯分]=(1.1〜1.4)×10−2>10−2 になる。
いずれにしても大略的数値でQRF(1)≒QRF(2)≒10−2になる。
先に1ton海水中のCo−60を放射化学的に超微量分析を行った際の経験に依れば、この時に発生した最終的高分子沈殿凝集剤の量は半乾状態で800ml、乾燥状態で400mlの容量であったからこの場合の減容率はQRF(3)=[0.4〜0.8l/1000l]=(4〜8)×10−4である。このQRF(3)の代わりにアレバ社のQRF(1)=10−2を当てはめると、1ton海水処理で10l以上の高分子凝集沈殿が発生する事になり、この類推から考えてもアレバ社の水処理システムは優秀なシステムとは言えない。このレベルであれば放射能が伴う事を度外視すれば日本独自の性能のよい水処理システムあるいは水処理業者が沢山ある。アレバ社が将来的に廃棄物最終処分についても業務受注を考えているのであれば、廃棄物処理容量が多いほうが契約金額が大きくなる事で意義のある事かも知れない。しかし日本国として考えた場合、このようなプロセスによる処理処分は極めて得策ではなく、賢明な方策とは言えない。日本独自の優秀な技術により自前の技術を確立すべきである。以上に示すごとく減容率(QRF)についても評価する事は将来のコスト低減、抑制の為にも極めて重要な事で、これらについても考慮するのが解決の為の手段であるべきと惹起する。
米国クリオン社のQRF:ゼオライトに対するセシウム収着能は東電の研究結果に依れば0.6%で30時間で1kgのゼオライトがセシウム6gを収着する事が分かっている。先の計算では450万(Bq/cm)の廃液中放射能を全てCs−137とすると[計算式01]より1000ton中のCs−137総量は1.4kgであった。従って全廃液量が20万トンあって、全てをCs−137とした場合の合計量(ΣW)は208kgである。
ΣW=1.4kg×200(200,000/1,000)=208kg
このCs−137の量を全量吸収するゼオライトの総量(ΣZeo)は
ΣZeo=ΣW×(1,000g/6g)=208kg×167=34,736kg≒35ton
従って、ゼオライトの減容率QRF(4)は
QRF(4)=[35ton/200,000ton]=1.75×10−4≒1.8×10−4 になる。
上記観点からゼオライトによるCs−137に対する減容率QRF(4)は10−4オーダーでアレバ社の10−2オーダーより優秀である。
米国クリオン社のゼオライトによるCs−137の除染係数が予想に反して悪い結果を与えているようであるが、「段落:0004」で以下のように記述した。
「仏国アレバ社の凝集剤固液分離法を米国クリオン社のゼオライト処理後に実施する事を公表し、その方向で施設、設備の構築を進めているが、この処理の順番はバクテリヤが関連し、大量の有機コロイドが発生する事象を考慮した処理順番ではなく、少なくとも1〜3号機タービン建屋地下に溜まっていると考えられる冷却水地下部分取水管内の高レベル放射性海水廃液処理に関しては、その処理の順番を逆にして、アレバ社の凝集剤固液分離法を先に、米国クリオン社のゼオライト処理を後に実施すべきである」。
この指摘に対応する汚染水は[表1]の廃液Aに相当する場合で、例えば事故時に復水器直下の取水管地下部分に海水が残った場合の汚染水であるが、これらがトレンチに漏洩しない限り大量の有機コロイドの混入は無いであろうと思われる。従って上述のような断定的な指摘はできないが、一般的に物理化学的に考えればゼオライト吸着は結晶内部の陽イオンとのイオン交換であるからゼオライト結晶表面の汚染はその吸着速度の律速段階になる。他方凝集剤共沈法は結晶全体の電荷の正負の問題或いは高分子凝集剤の包み込み架橋現象(Flocculation)であるから結晶表面の汚染はそれ程厳しい条件にはならない。このように考えるとゼオライト処理は精製過程で導入すべき処理法と言えるから、最初に仏国アレバ社の凝集剤固液分離法により汚染廃液を処理し、然る後に米国クリオン社のゼオライト処理を行うように処理の順番を逆にするだけで除染係数の改善が期待できる。
(第3の基本的解決手段の考え方):
廃棄物の最終処分形態を考慮しなければならない。廃棄物の放射能レベルが極めて高く、最終処分の形態がガラス固化体にせざるを得ない場合は、例えば[表3]に示した第3段目の「超高レベル放射性汚染廃液」の水処理処分の最終形態は有機物の燃焼を伴わない無機鉱物である事が望ましい。他方放射能レベルが低く燃焼灰化処分が可能な場合は強熱減量(iL:Ignition Loss)を99%(灰化率1%)とした場合、例えば焼却灰比放射能が8,000(Bq/kg)まで通常の埋め立て埋設処分が許容される場合(環境省は6/28焼却灰の処理について焼却時焼却灰の放射能が8,000(Bq/kg)を超えた場合には通常の埋め立て処理を行わないように指導すると発表)には、水処理システムにおける最終処分濃度が80Bq/kg以下の可燃有機物であれば灰化後には80Bq/10g(=8000Bq/kg相当)以下になり、埋め立て認可条件を満足する。従って例えば、25m×20m×水深3mのプール(1.5ton)にCs−137が1000(Bq/ton)の濃度で汚染して、これを有機吸収剤20kgで100%の捕集率で浄化ができたとすると、有機吸収剤のCs−137収着濃度は1500Bq/20kgになり、比放射能は75Bq/kgであるから上記の条件を満足する事(75Bq/kg<80Bq/kg)から、このような場合にはガラス固化体を考える必要は無いので、除染性能の優秀な有機物吸収剤の使用が許容される。従って通常の[課題1]および[課題2]の低レベル域においては有機吸収剤が使用できる事になり、より広い選択肢から水処理システムを構築できる。なおレーヨンの一部には灰化率0.1%以下のものもあり、この場合には減容率を生かし、焼却過程後にガラス固化体法による最終処分法を選択するか?あるいは収着性能が10%であるような性能の悪い吸収剤を選択するか?或いは100%収着剤で収着後に10倍の非放射性物質焼却灰で希釈して埋設処分するか?状況に応じて判断すればよい。このように最終処分の廃棄物形態が放射能レベルによって左右される事が起こり、従ってその水処理改善プロセスの選択肢は制限されるから、この点も考慮して課題を解決する手段を選ばなければならない。
以上の「基本的解決手段の考え方」を基に課題別の解決手段を以下に示した。
(課題1の解決手段):
○放射能レベルが極めて低く周辺住民の生活環境との関連性が高いので、その濃縮過程は「最高除染係数」と「最高の減容率」を目指す事よりも、安全性を重要視した方法を採用するのがよい。
○海洋有機シルトを基本とした固液分離法で濃縮率が未達になる場合にはCs−137については凝結剤Dを使う。アルカリ性、還元性環境、および加温状態での凝結剤Dは加水分解等により不安定になるが、海洋有機シルトの添加により安定したスカベンジャーに変身する。
○放射性物質の最終収着体として濃縮物の比放射能が低い事が期待されるので、有機物収着方式を採用できる。
○Cs−134,Cs−137については高分子収着剤に凝結剤Dを収着させた活性化高分子収着剤を用いた大型カラム濾過法により固液分離する事ができる。
○その他の核種(Co−50,Mn−54,………)については海洋有機シルトを基本として[表4]における(ii)〜(v,vi,vii)、(ii)〜(iii)〜(iv,viii)過程から凝集剤Kの使用も含めて適宜な選択肢を選べる。
(課題2の解決手段):
○放射能レベルが極めて低く、周辺住民の子、女子の生活行動との関連性が高く、課題1と共通の解決手段になる場合が多く、その濃縮過程は「最高除染係数」と「最高の減容率」を目指すよりも、安全性を重要視した方法を採用するのがよい。
○放射性物質の最終収着体として濃縮物の比放射能が低い事が期待されるので、有機物収着方式も採用できる。
○プール内のCs−134,Cs−137の浄化法として、凝結剤Dを収着させたカーテン状、網目状の布をプール内を往復させる事により吸着除去する方法がある。
○Cs−134,Cs−137については高分子収着剤に凝結剤Dを収着させた活性化高分子収着剤を使用した大型カラム濾過法による固液分離法も可能である。ただし活性化高分子収着剤の灰化後の比放射能は8000(Bq/kg灰)以下にする。
○その他の核種(Co−50,Mn−54,………)については[表4]における(ii)〜(v,vi,vii)、(ii)〜(iii)〜(iv,vii)過程で凝集剤Kの添加も含めて適宜選択肢が選べる
○土壌の降雨による洗浄浄化はCs−134,Cs−137についてのみ考え、中空杭の中に凝結剤Dを付着させた「活性化高分子収着剤B」を充填し、さらにその中心部を中空にして、その中心部から浸透した雨水を抽出し、汲み採る事ができるようにした縦棒式雨水抽出杭方式による。なお他の核種については土壌による吸着能が高い為(殆どの核種は30cmの土壌で吸着されてしまう)、覆土等による方式が適切と考えられる。
○焼却灰および植物乾燥体中のCs−137については水によるイオン移行性が高い為、「活性化高分子収着剤B」を担持した繊維状、スポンジ状、セラミックボール状等の回転子を回転駆動機器(ロータリーキルン、セメントミキサー、洗濯機等々)に入れ、当該対象物を投入して、適宜な水分量を噴霧して湿潤状態にして回転するだけでCs−134,Cs−137を低減できる。
(課題3の解決手段):
○低レベル比放射能領域においては(課題2の解決手段)と同じ。
○高レベル比放射能レベル領域においては[表4]における(ii)〜(v,vi,vii)、(ii)〜(iii)〜(iv,viii)過程から適宜選択できる。
○ここで特に注意するのは例えば1号機〜3号機の海側前面にある「取水港開渠」における拡散防止策であろう。海洋へ広く拡散する以前にこの領域で浄化、除染できれば海洋汚染を軽微な段階で解決できる点で重要である。ここで一番性能が発揮できるのは「海洋有機シルト」であろう。
(課題4の解決手段):
○電源を要しないPassive Typeの水の自然重力による滴下分離方式を採用できる事を利用する。この事により電気回路トラブル、機械的トラブル、装置トラブルから開放されるメリッがある。
○この為には「高分子凝集剤K〜N」の適応が必須である。
(課題5の解決手段):
○当該の汚染水は超高レベルの比放射能である為、その濃縮過程は「最高除染係数」と「最高の減容率」を目指す事が肝要で、その為の汚染水浄化処理システムを構築する事
○Cs−134,Cs−137については高分子収着剤に凝結剤Dを収着させた大型カラム濾過法、或いは少々薬剤は高価であるがCsに対して極めて選択性の高い凝結剤Fを活性炭、無機収着剤C、有機収着剤A,B,C或いは高分子収着剤Bに収着させた大型カラム濾過法で固液分離する。ただしこの場合、その他の核種の固液分離の操作後に行うべきで、多量の有機コロイドが含まれる事が予測される汚染海水についてはその吸着性能が極端に悪化する事が予想される事から、その操作の順番が重要である。
○その他の核種については凝結剤スカベンジャーとして「活性化無機収着剤B」、「Fe(OH)」、「有機シルト」等々を使用し、更に凝集スカベンジャーとして「凝集剤K〜P」を用いて(viii)過程により固液分離する方法を構築する。燃焼過程が許容される場合は収着容量の大きな「活性化有機収着剤A,B,C」と「凝集剤K〜P」の適用が効果的である。
(課題6の解決手段):
緊急性を考えて、原子力発電所敷地内で簡単な改良、改修で流用できる下記の施設、設備の応用を考える。
(1):4号機冷却地下部取水管6本を反応槽として流用する件:
4号機冷却地下部取水管は事故当時定検中であった為、ムラサキイガイの貝殻の積層も無く、比較的キレイである事および他の1〜3号機に比較して放射能レベルが低い事および地下に埋設されている為、幾何学的放射線遮蔽ができる事から、これら地下部取水管を直径2m、長さ約44m×3本(1本当り容量は水平部分で約126m)、長さ約55m×3本(1本当り容易は水平部分で約176m)と仮定して、その容量(号機およびポンプNoによって長さは異なる)を活かして反応槽とする(随時他の地下部取水管も空になったら利用する)。
(2):4号機冷却地上部取水管を貯水槽として流用する件:
1〜4号機地上取水管は地表面に沿って配管されている為、超高レベル放射性廃液に入れる反応槽としては被曝を考えれば流用できない。しかし汚染除去処理後の放射能レベルが低くなった廃液については被曝線量を考慮しないで済む事から、これら3本の空間容量(地下部取水管より長いので容量も大きくなる)を利用して処理後の貯水槽あるいはデカンテーション槽として利用する。ただし入口も出口も開放状態なので入口、出口位置を決めたら、夫々取水管の上部から穴を開け、そこに超大型の風船2個をいれ、穴の直下位置を中心に、それぞれを1m以上離して設置する。勿論風船はテントで使用するような頑強な布で被覆補強されたものを使うが、これに圧搾空気を入れる事で穴の直下分に空間のある風船隔壁ができる。次いで穴の直下にできた空間に水ガラスセメント等強力充填剤を注入すれば即席で強固なセメント隔離壁ができる。セメントが固化したら内側風船の更に内側の適宜な位置、例えば穴中心から2.5m以上の位置に溶液の出入り口用の穴を更に1個開ける。第2の穴ができたら、隔壁になっている風船を撤去すると同時に蓋を設置して、貯水タンクとして機能するように例えば円周部に接着剤補強するとか、蓋にバルブを取り付けて動力による取水、放水ができるように工夫する。これと同じ造作を他の一方の他端位置にも施し、出口と入り口の対を完成させる。
このように地上部取水管に溶液の出入り口を付設すれば地上取水管は約200トン前後の貯水槽に変身する。このような流用により1号機に2本、2号機〜4号機で夫々3本で、合計11本あり、平均200トンとすれば2000トン余りの貯水タンクが即座に製作できる。然も取水管強度は維持されている筈であるから強度的にも安心ができる。また、この取水管タンクは超高レベル廃液の清浄化処理後の海水で外洋放出が出来ないような低レベル放射能汚染水の貯水槽としても被曝線量をチェックしながらの使用は可能である。
(3):4号機トレンチを反応槽として流用する件:
各号機のトレンチの形状は様々であるが、4号機は定検中であった事から、原子炉内に燃料は無く、その破損による放射能寄与が少ない為、トレンチ内放射能レベルは1〜3号機トレンチに比較して低く、またトレンチの中間箇所に立杭が5ケ所在り、この空間およびトレンチ立杭深さ空間を利用した有効な利用方法が有る。然も前項(2)に示した地上部取水管を加工した貯水槽の出入り口とトレンチ入り口が近傍にあり、取水管加工貯水槽とトレンチを合体して利用する事で、例えば4号機の取水ポンプの稼動が可能であれば、(2)の取水ポンプ側の出口をトレンチと直結できるように工夫すればトレンチ、取水管の大容量の海水、溶液を大容量取水用ポンプで駆動攪拌ができる流動的な大容量反応槽ができる。
(4):希ガスホールドアップタンク(以後“希ガスタンク”と言う)あるいは新規製造タンクの流用の件:これらタンクを流用して吸着槽およびデカンテーション槽として使う。希ガスホールドアップ施設(以後“希ガス施設”と言う)は事故後1ケ月以上経過しているので、施設に注入した希ガスの殆どは半減期により消滅していると判断されるので、希ガスによる被曝は考える必要はない。現在使用されていない1〜4号機用の“希ガスタンク”は多数あり、例えば上記に示した地下部取水管1本当り水平部分の容量(173m)を満足する為には、タンク仕様を直径3mΦ、高さ8mと仮定すると、1基当り容量は約56.5mで、3〜4基を直列および並列にすることで、その容量を確保できる。3〜4基を直列にして吸着槽とし、3〜4基を並列にしてデカンテーション槽或いは貯水槽として流用する。ただし「タンク」の発想はAサイトからの類推であるが、モジュールタイプの場合は別途新規製造した100〜120tonの空タンクを使い、容量は適宜定めればよい。
(課題7の解決手段):
除染効果向上の為、“施設タンク”内部に大量に保存されている活性炭およびこれを薬剤修飾して活性炭を利用する。特にヨウ素131(I−131)およびルテニウム107(Ru−107)の吸着および薬剤付着によるセシウム134(Cs−134)、セシウム−137(Cs−137)の吸着により、除染係数の大幅向上を目指す。この活性炭除染過程は先に定義した「廃液A」内に多量に存在する有機コロイドの吸着妨害を考慮して、凝集剤による固液分離の初段プロセス施工後の後段プロセスとして位置付け、活性炭を高い吸着薬剤の付着単体として位置付け、除染係数の大幅向上を目指す。第一段の凝集剤固液分離プロセスで例えばCs−134,Cs−137の大部分が除去されれば、その後段においてはCsに対して極めて選択性は高いが、高価で使用不可であったような薬剤についても、その使用が少量で限定的になる事から使用可能となる。例えば前述したCsに対する凝結剤F)の使用が可能となり、より一層の除染係数の大幅向上が期待できると共に、選択的吸着量が高ければ付着量単体の活性炭量は少量で済む事から最終廃棄物処分量を大幅に抑制して、将来のガラス固化体最終処分形態の量を大幅に低減化できる事になる。また除染係数を極めて高い状態で処理できれば処理水を直接海洋に放出できる可能性も生じ、徒に増加する汚染処理水の容量を低減できる点で注目できる技術であろう。
発明の実施の形態および実施例
以下、図面および表を参照しつつ、本発明の実施の形態および実施例について説明する。本発明についてはこれまで放射能レベルによって「極低レベル」「低〜高レベル」「超高レベル」の3段階に分類し、夫々の階層において適宜な放射性核種の固体化法と固液分離法のある事を示してきた。以下の説明においては「極低レベル」については上、下水道水質改善を主体とする[課題1]で説明した内容を中心に本発明の「第1の実施の形態」として説明する。また「極低レベル」の[課題2]の周辺住民の子、子女に対するプール、校庭の土壌改良および焼却灰等の低減化については「第2の実施の形態」として説明する。また「低〜高レベル」についての[課題3]については「第3の実施の形態」で、また「超高レベル」については濾過法の開発の[課題4]と[課題5]を合わせて「第4の実施の形態」で、および施設・設備の流用に関する[課題6]および[課題7]については「第5の実施の形態」として説明する。
(第1の実施の形態)
ここで述べる実施の形態は当該大事故環境周辺住民および一般的な自然環境において上下水道生活用水保全の為に行う放射性核種汚染水の水処理浄化を実施する場合の具体的事例の形態に関する。この低レベルで周辺住民の生活用水に関連する放射能汚染の水質改善事例は先の[非特許文献3]および次に示す[非特許文献8]の中で紹介されているチェルノビル事故時の対処療法的研究が良い事例で、下記にその大略を箇条書きにして示した。
(1)ウクライナ政府はキエフの飲料水の取水を事故後1週間でドニエブル川よりデスナ川に切り替え、水道水中の懸濁物質は上水処理により除去され、溶解物についてはドニエブル浄水場においてI−131およびRu−106を活性炭フイルター、Cs−134、Cs−137およびSr−90をゼオライト吸着フイルターにより除去して効果があった。
(2)表層水汚染の低減化の為に河川底土の浚渫により汚染粒子を除去する方法或いは、河川にゼオライト障壁を設けて河川水の濃度低減化を試みたが、何れの場合も表層水放射能汚染の浄化には効果が無かった。
(3)湖沼水については石灰やカリウムを湖水に散布して淡水魚のセシウム摂取を同位体希釈法的に低減化する実験も行われたが、あまり効果的ではなかった。
これら活性炭およびゼオライトについてはこれまで幾度と無くTMI事故時における使用例も含めてマスコミ等で報道されている内容の為、新鮮味が無く周知の事実になっている。しかし効果の無かった例については、何故陸水の河川でゼオライトの効果が発揮できなかったのか?湖水で化学的挙動の似ている石灰、カリウムによる同位体希釈法的な効果が現れなかったのか?また今回米国クリオン社のゼオライトによる除染係数が期待に沿わず当初の目標より、かなり成績が振るわない理由は何なのか?これらについては同様のマイナス共通項があるように思われるが、後述する事にして、ここでは触れない。
村主進「チェルノビル事故における環境対策とその修復」 http://www.euup2.jp/newpage35.html
ここで我々が注目するのは自然現象の中で海洋湾外の砂質海底土には検出されずに、湾内の黒色ヘドロ状海底土に放射性核種が強く濃縮される事で、一般的には忌避される現象である。この強く吸着している物質を単離して放射性核種の吸着スカベンジャーとして利用できれば自然界に存在する極めて安全性が担保されたスカベンジャーとして利用できる事になる。この安全性の高いスカベンジャーを使えば生活用水の低レベル放射能汚染の高度な水処理改善システムの構築が可能となる。しかし一般的には陸水河川におけるシルトの吸着能は極小粒径のシルト質・粘土質粒径のうち例えば、カオリン等の粘土質の極小無機鉱物が吸着活性を示すと言われており、有機シルトでは無いとされ、次に示す[非特許文献9]にも示されているように、原子力発電所のランドリードレン、フロアドレンにおける放射性核種の粒径別放射能分布にも同様の傾向がある。そこでこの有機シルトスカベンジャーの抽出法を試みた。
T.Hashimoto,et al [Physical and Chemical Properties and Composition of Liquid Effluents of Nuclear Power Reactor] 7th.International Congress of IRPA,Sydney10〜17,1988.
(実施例1):天然に存在する放射性核種スカベンジャーの抽出法
自然界に存在して放射性核種をかなり濃縮する物質を実感したのは「内湾の極めて有機質の多い、即ち強熱減量(iL:ignition Loss)が極めて大きい80〜90%も含む試料のあるような海底土である。これら海底土においては粒径分布においても75μm以下粒径のシルト質・粘土質粒径含量が極めて多く、真っ黒な色相を示し、Cs−137、Co−60、Mn−54等々の放射能が高い」と言う事であった。この事実に従って[図1]と[図2]を求めた。[図1]は横軸にシルト含量(%)、左縦軸に強熱減量(%)、右縦軸にCs−137の比放射能(相対値)をプロットしたもので、75μm以下のシルト含量(%)が多い試料ほど強熱減量(%)、比放射能共に高く、しかも右肩上がりで、その勾配も同じ(単位を調整)である。また調査時期を同じにして、湾外の砂質海底土の同様のデータを求め図示したのが[図2]であるが、75μm以下のシルト含量(%)が4%以下を示す試料が多く、しかも強熱減量(%)はシルト含量とは無関係に分散している事が分かる。これらの結果からシルト含量が極めて高い海洋湾内のヘドロ状海底土は有機質を多く含みシルト質組成含量が高いほど放射能を多く収着(吸収・吸着)する。この事は一般的に陸域での物質吸着現象のデータと矛盾するかもしれないが、海洋に多く生息する海藻類のアルギン酸、カラゲナン等々は有機質粘着物質で、特にアルギン酸は褐藻類に特有な天然多糖類で海水中の金属イオンと塩を形成しゼリー状になり、凝集剤の典型的な例でもある。また越前海岸では冬季に発生する泡が道路まで飛散して通行止めになる等被害が発生する毎年恒例の自然現象を観察できるが、この正体は対馬暖流で運ばれてくる界面活性物質が原因である事を実証する機会にも遭遇し、対馬暖流が裏日本沿岸の陸地側に大きく蛇行する時に限り発生し、若狭湾から能登半島輪島沖まで、泡の発生し易い海水に変身する事を解明する事ができた。このような海洋の懐の深さには驚嘆し、敬服もしている事から、今回のシルト質の放射物質の吸着はこれら高分子有機質に由来しているのであろうと惹起された。これらは年間を通して発生蓄積されていて、かなり多量に存在し、発電所、漁港等の湾内において特に湾奥或いは海水が渦を巻く中心部のように海水が停滞する場所で安定的に採取が可能である。
[図1]
[図2]
75μm以下の有機シルトは有機質としての特性もあるが、表面積が大きい事による疎水性物質の吸着能が高くなる事にも起因する。例えば代表的な海底土の粒径分級として砂/シルト/粘土=1mm/0.01mm/0.001mmと仮定すると、砂の比表面積を1とすれば、上記粒径分級の比表面積は 1/100/1000になる。このような粒径分布を持つ海底土は細かい方から10〜15%程度の重量組成範囲で、全体の持つ表面積の約80〜90%を占める事になる。従って放射能の海底土への吸着や付着が表面積に依存すると考える事ができるような場合は全体の放射能の約80〜90%は小さいほうから10〜15%の極小粒径組成範囲の海底土に吸着・付着されている事になる。この事から「粒径の小さい方から約10〜15%の極小範囲組成」の海底土を分級単離しておけば、これを放射性核種が混入した水或いは、海水に投じる事によって、その極小分級海底土組成をスカベンジャーとして、それに吸着・吸収される事が期待される事になる。そこでこの粒径の小さいほうから約10〜15%の組成範囲を「75μm以下のシルト質」として分離して、それを放射性核種スカベンジャーとして単離保存する方法を考える。
分離の原理は[図3]に示した周知のストークスの法則により選別分級方法を決めておけば、個人差による分級誤差を小さくする事ができる。[図3]から
Φ=1μmシルトの海水中沈降速度は約7.4cm/day、
Φ=5μmシルトの沈降速度は約2cm/day(≒8.3cm/hr)、
Φ=10μmシルトでは約7.4cm/day(≒30.8cm/hr)、
Φ=20μmシルトでは約30cm/day(≒1.25cm/hr )、
Φ=40μmシルトでは約115cm/day(≒4.8cm/hr)、
Φ=50μmシルトでは約180cm/day(≒7.5cm/hr)、
Φ=75μmシルトでは約400cm/day(≒16.7cm/hr)である。
ただしこの沈降速度は粒子密度をρ=2.6(g/cm)としているので、有機シルトの場合は上記計算と同じ粒径に対してかなり遅くなる。また実際に海水中に微小海底土を分散させた後、放置して海底土を沈降させるとかなりハッキリとした固液境界面が徐々に底面に向って沈降する。従ってこの境界面に在る粒子がストークスの法則に従って沈降しているとすれば、規定された時間で定められる境界面の上側と下側で分散物質を分級すればよい。そこで実際の分級方法の一例を以下に示した。
できる限りシルト質を多く含む海水を確保して、これを撹乱して放置すると2〜3分後には明解な境界層が現れ、当初はかなり早いスピードで下降し、時間の経過と共に境界層の下降速度は緩やかになってくる。測定時間毎の境界面高さを[図4]に示したが、各時間毎の境界面沈降差を求め、その平均沈降速度を日単位で求めると[図3]からストークス相当の粒径が求まる。これによって「大略の粒径」と「弁別操作の時間的猶予」を考慮して例えば規定弁別時間t(min)を定め、その時間tで境界層の上側の分散液側と下側固体沈降層を弁別して、下側を開弁放出或いは吸引除去するか、或いは上側をデカンテーション分離するか適宜な方法により弁別して、上側分散液側に含まれるシルト質を「スカベンジャー有機シルト」として確保する。この上側の分散液側は放置する事により更にシルトが沈降して底面に密集したシルト層を得る事ができる。適宜な時間〜数日間放置後上澄み海水を棄却すれば濃厚な「有機シルト分散スカンベンジャー」を得る事ができるので、これをストック、保持しておいて放射性核種汚染水の水処理改善システムの放射性核種スカベンジャーを必要とする時に、これを投入する事によって放射能汚染水および海水の浄化に資する事ができる。このような操作方法をマニャアル化して定めておけば、個人差の少ない有機シルトを採取する事ができ、また新しい放射能汚染水浄化法が確立できる。
[図3]
[図4]
このように海水中の放射性核種を弁別濃縮して計測した例を[図5]に示したが、[図1]に示したCs−137以外にCo−60、Mn−54もよく収着され、天然スカベンジャーとして優秀である事が分かる。ただしこのスカベンジャーの欠点はその吸着容量が小さい点にあり、高レベル放射性核種の汚染海水の場合は単独では負荷が大きくなる。しかし次の(実施例2)に示すように静電的には中性で他のスカベンジャーの補強剤として機能する事もあり、安全性を重視するような低レベルの放射能汚染水の水処理剤としては環境に優しいスカベンジャーである。
[図5]
(実施例2):有機シルトのスカベンジャー補強剤としての機能(電荷的中性か両性)
「凝結剤D」はセシウムに対して極めて良好なスカベンジャーとして広く周知されている物質で弱酸に対して安定であるが、アルカリ性、熱および還元的水環境においては加水分解等により分解し、不安定である事が知られている。またこの「凝結剤D」は負電荷を持つコロイド粒子として通常の水中においては安定に分散して、その粒径はΦ=〜10nm前後とされている極めて微細なナノ粒子の酸性染料である。
従って、先に[表1]で示した「廃液A」に含まれるコロイドを含めて負電荷を帯びる他のコロイド粒子(Ag,Au,Pt,S,Se,AgBr,As,CuS,ガラス末,石灰末,,粘土,アスベスト,デンプン,羊毛,等々)の中では同種の電荷として斥力が働き、安定なコロイドとして分散される。同様の事が界面活性剤との間でも起こる。例えば、セッケンや洗剤(ラウリル酸ナトリウムやドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムなど)では1ツのコロイド粒子が多数のイオン性分子からできており、ミセル表面は多くのCOO(カルボキシル基),SO 2−(スルフォン基)等の原子団によって負の電荷を帯びているので、これら界面活性剤を含む水溶液中においては同種の電荷による為、斥力が働き、安定なコロイド粒子として存在し、沈殿しない。ただし海水中におけるようにアルカリ、アルカリ土類の金属陽イオンが多量に含まれる場合には沈殿する。
この陽イオンは、先に[表1]で示した「廃液B」に含まれるイオンと同種であるが正電荷を帯びる他のコロイド粒子(Fe(OH),Zn(OH),Al(OH),Fe,ZnO,Ti,ヘモクロビン,塩基性染料等々)が共存すると「凝結剤D」は静電的に結合して凝結・凝集を起こし量的に多くなれば勿論沈殿する。身近な例では海水中の陽イオンと電荷中和を起こし、かなり長時間を要するが、静置しておくと沈降して底面に浮遊性で不安定な沈殿として溜まる。これが一般的な凝斥を起こす原因の1ツであるが、このように共沈現象で凝析を起こすような沈殿剤「凝結剤D」をスカベンジャーと呼ぶ。この現象により放射性核種が固形化され、結果的に固液分離を起こし水中のイオン性、溶存物質、懸濁物質を水中から取り除く作用をする。最近この「凝結剤D」スカベンジャーにより放射性セシウムを共沈凝集して遠心分離により超高レベル放射性廃液を水質改善する方法が提案されているが、チェルノビル事故時においても提案されており、またその必要量が廃液100ml当り1g必要で、今回の事故時における超大量廃液量の20万tonに対して「凝結剤D」スカベンジャーは2000ton調達しなければならず、非現実的と言わざるを得ない。
コロイドについて少々詳しく説明したのは、今回の一連の水処理改善システムの根本的作用を律する機能として極めて重要な作用の為である。例えば上述した「凝結剤D」が海水中で凝析を起こし沈殿するのと同様に大規模に起こる周知されている自然現象がある。それは海洋への河川からの出口に存在する三角州はその結果であるが、陸水中に含まれていた微細な粘土粒子(マイナス電荷)が海水中の陽イオンと静電的に中和して沈殿する現象の結果である事を考えれば十分であろう。そこでこれらのコロイドの静電的電荷の重要性を指摘したので、有機シルトと「凝結剤D」の相互作用について調査した結果を[表5]に示した。
[表5]から分かるように「凝結剤D」は明らかにアルカリ性では分解し、茶褐色を呈するように加水分解し、アスコルビン酸還元性海水溶液では、沈殿量が半減している事が分かる。ここで見落としてはならない重要な事実を発見している。即ち今回指摘している「有機シルト」は静電的に負の電荷を持つ「凝結剤D」と結合し、その安定性に貢献しているが、他方[図5]に示すように放射能レベルにあるラジオコロイド正イオンとしてのCo2+(CO−60),Mn2+(Mn−54),Cs(Cs−137)とも結合している点である。即ち負の電荷物質とも正の電荷を持つ正イオンとも結合して沈降する現象を示す。従って電荷を持たない中性的立場で徴細粒子として接しているのか?あるいは分子内に両性の原子団を持つ両性物質であるのか?現時点では分からないが有機シルトは正負両方の電荷に作用しているスカベンジャーである事が重要である。陸水河川に含まれる超微細シルト粒子である粘土質粒子が負電荷を帯びていて、マイナス電荷の環境下ではなかなか沈降せず、他方プラス電荷の、例えば海水環境下で沈降して三角州を構成する現象とは異なる点で新しい発見である。
(実施例3):有機シルトと凝結剤Dによる薬剤凝集法による生活用水浄化法:
海洋港湾内に存在する有機シルトが放射性核種(Cs−137)スカベンジャーとして低レベル放射能汚染水浄化システムに有効である事を示し、その有機シルトの採取法を(実施例1)において示した。またセシウム(Cs−134,Cs−137)の吸着剤としてよく知られている「凝結剤D」は通常加熱、pHの高い環境(海水中においても)、或いは還元性環境下において不安定な物質であるが、今回求めた有機シルトが存在すると「凝結剤D」は安定に存在する事が判明し、然も有機シルトの弱点である吸着容量の低さを充分補完する。また有機シルトは中性的であるから「段落:0096」に示したように、その比表面積の大きい事が長所として機能し、吸着能を大きくしており、更に凝結剤Dによって放射性セシウに対する吸着能増大が(実施例2)によって担保されている。
以上の観点から事故時周辺環境の周辺住民の生活用水の水処理改善にはこの有機シルトの特性とCs−137吸着特性の強い「凝結剤D」の両者を用いて上水(水道水)或いは下水道処理における活性汚泥処理後の清浄水に対して放射性核種特にCs−134,Cs−137に対する水処理浄化法に薬剤凝集法(濾過を容易にしたい場合には「段落:0069」[表4]に示す「凝集剤K〜P」を添加する事が望ましい)として適用する事ができ、低レベル生活用水の浄化水処理に機能する事ができる。ただし現時点では「凝結剤D」は医薬品として認可されているにも拘らず、上下水道処理剤としての使用は法的規制により使用できない点に注意が肝心である。尚後述の「第2の実施の形態」で示す「活性高分子収着剤B」による放射性核種の上水道、下水道浄化処理法の1ツであるカラム濾過法が極めて簡便で有効な方法である事を付記する。
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(第2の実施の形態)
ここで述べる「第2の実施の形態」は当該大事故の周辺住民の子、子女の精神的肉体的ストレスを軽減し、安心してプールでの水泳が楽しめるように、また学校の校庭で何の心配も無くスポーツに興じる事ができるように事故時周辺の住民生活環境下において「僅かに高くなった放射性核種濃度の低減化」に資する為の水処理改善システムの実施の形態である。また焼却灰或いは稲藁中のCs−134,Cs−137の濃縮も問題である為、この浄化システムについてもここで述べる。この実施の形態の為には放射性核種、特にCs−134,Cs−137の強力濃縮剤を網目状、スポンジ状に加工する方法を開発する必要があった。マスコミ等の報道によればセシウムの吸収剤として注目されている無機吸収剤のゼオライトは1kg当り6gのセシウムを収着する事を東電発表として伝えている。また超高レベル廃液中のCs−137の濃度は[表3]の脚注に示す如く1.4ppmであるから超高レベル放射性廃液100ml中に存在するCs−137は1.4×10−4g相当である。他方「段落:0105」に記載があるように、この廃液100ml当りに「凝結剤」は1g必要とされている。従って「凝結剤」1kg当り0.14gのCs−137しか吸着しない事になり、上記ゼオライトの吸着能6gに対して、約1/40相当でしかなく、「凝結剤」単独使用の吸着能の評価は悪く、このレベルであれば「段落:0047」に示すリンモリブデン酸アンモンの方が効果的であるように思える。しかし「段落:0105」に記載の事実は安定元素での試験であり、量論的にも考えにくく、安全係数を多く見積もっているように思える事、および今回の事故時における超大量廃液量の20万tonに対してこの「凝結剤」スカベンジャーは2000ton調達しなければならない計算になり、非現実的な提言である事。これら2点を考慮する限りに於いても、この報道の提言は信用の置ける応用実験と判断するにはゆかず、確定的な事は言えない。
(形態:2−1):収着(吸収・吸着)量の大きい素材の開発
(第2の実施の形態)においては放射能汚染レベルが極めて低いレベルの水環境(イオン移行)における汚染浄化システムについての具体的事例を示すが、事故後の時間経過と共に周辺環境中の放射性核種の残留率で主体的になるのはCs−137である為、ここではCs−137の浄化法を中心に記述する。その他の核種については[表4]から適宜な選択ができる。実際のプール、学校の校庭あるいは焼却灰、稲藁中Cs−137の浄化事例等々について説明する前に、その前提条件となる活性化高分子収着剤、活性化有機収着剤、活性化無機収着剤等々の新しい収着剤(吸収・吸着剤)の開発結果についてそれぞれ(実施例1)、(実施例2)、(実施例3)に示し、その応用例を(形態2−2)〜(形態2−4)に示した。
(実施例1):活性化高分子収着剤へのセシウム収着能
[表4]に示すスカベンジャーおよび固体収着分離法の中で凝結剤C、凝結剤Dについてはこれまで説明したが、ここでは「高分子収着剤(A〜F)」に「活性化剤(a)〜(f)」を作用させて強力にスカベンジャーを付着できるようにした「活性化高分子収着剤」について述べる。「高分子収着剤」には高分子繊維、高分子軟質材(スポンジ等)、高分子硬板等を含むが、これらに対して「凝結剤D」を単純に塗布、乾燥しても通常は水中に浸漬すると溶出して意味を為さない。そこでその表面を活性化する為に活性化剤(a)〜(f)を噴霧した後、乾燥して、その後凝結剤スカベンジャーを塗布、噴霧、乾燥すると水中、海水中に浸漬してもスカベンジャーの溶出は無い。そのような物質を開発した。
多数の試料検討から目的に沿う物質として選択した結果を[表6]に示した。
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[表6]の結果から「活性化高分子収着剤A〜C」がセシウム収着剤として適用可能である事が分かった。然も透水性が極めて高い素材(布状、スポンジ状、粒状或いは隙間のある多層状)として製造加工も可能で、円筒カラム内にその素材を充填する事で水溶液中の放射性核種を連続的にその素材に吸着濃縮できるようになり、極めて単純で簡便な水処理改善システムを構築できる事になる。その応用としてプール中放射性核種の除去、土壌表層中の放射性核種の降水浄化による低減化および焼却灰、稲藁中の放射性核種の低減化等々が容易になり、その応用範囲は広く具体的な応用例を、後述の「段落:0127」形態(2−2)〜「段落:0137」形態(2−4)に示した。
(実施例2):活性化有機収着剤へのセシウム収着能
[表4]に示したセシウムスカベンジャーの有機収着剤へのセシウム収着能について検討した結果、極めて有効な収着剤を開発する事ができたので、有望と思われる3種についてその結果を[表7]に示した。
[表7]から分かるように、これら有機収着剤は「活性化剤」の添加がない場合は全く無力であるが、此の添加によりスカベンジャーFFの大量収着素材に変身する事が分かる。またスカベンジャーFFの示す青色を指示薬的に用いて、溶液においては完全に無色透明、沈殿の色は青色(沈殿の濃紺色は有機収着剤の結晶が表面付着色とし、この場合は結晶内表面付着サイトが全て飽和されたと判断し、青色はまだその飽和点に達していないと判断した)である場合を終点とし、この2点においてスカベンジャーFFは有機収着剤内表面付着が飽和した段階とした。例えば「有機収着剤B」200mgに対するスカベンジャーFFの収着量の終点は約100mgとしたが、「有機収着剤B」の結晶外表面付着も含めての吸収・吸着量は450mgにもおよび、他の収着剤に比較して「有機収着剤のスカベンジャー収着能は極めて大きい」事が判明した。またこれらの有機収着剤は食品添加物として認可されているものもあり、動・植物体内の生物学的半減期の排出加速剤としての効果も期待できるから人間の体内、牛乳中、乳牛体内、稲等の植物からのセシウムの排出改善に機能する事が考えられる。ただしこれらは有機収着剤に収着されるセシウムスカベンジャーFFは医薬品として認可されているが、上、下水道法で規制されている為、セシウムスカベンジヤーFFを収着した「活性化有機収着剤」としての使用については注意が肝心である。しかし「活性化有機収着剤」単独の使用は問題がない場合があるので、人間、動物、植物体内に取り込まれた放射性セシウムの排泄加速剤としての「活性化有機収着剤」の利用法等について今後の研究が期待される。
(実施例3):活性化無機収着剤へのセシウム収着能
ここで述べる「活性化無機収着剤」については、発明者の個人的研究において古い歴史がある。約40年程前の事であるが、サイクロトロンによる荷電粒子(He3+,He4+)反応のターゲットとしてセシウム(Cs)の均一薄膜シートを作成する機会があり検討していたが、当時これらを含む物質の薄膜は無く超微粒子の沈降膜による製造方法を研究していた。セシウムの不溶性粒子作成には成功していたが、その生成効率は良くないので今回の共沈法には利用できない。しかし当時、他の金属イオンの超微粒子の生成条件についても併せて検討していた。夫々の超微細粒子の生成条件を夫々求められていたので、全体的な平均的生成条件を[表8]に示した。
[表8]の結果を基に当時用いた無機収着剤のデータを参考にセシウムスカベンジャーの収着能について「無機収着剤A,B,C」について検討した結果を[表9]に示した。
また[表9]から分かるように、無機収着剤は「スカベンジャーFF」を直接収着する事ができず、加水分解されて構成分子であるFe2+,Fe3+に分解され、最終的にはFe3+として収着され「スカベンジャーFF」として収着される事はない。しかし「無機収着剤C」に限って先ずFe3+を吸着させ、然る後に結晶上で「スカベンジャーFF」を合成する方法を採用すると安定して収着させる事ができ、液相は完全に無色透明になり、固相は無機収着剤として厚さ2mmから23mmに大きく膨潤して濃青色を呈して安定化する。この事によりセシウムスカベンジャーFFは「無機収着剤C」に収着する事ができ、更には「無機収着剤A,B」により鉄剤として他のMn2+,Co2+を吸収・吸着できる事が予想され、また[表4]の「凝集剤K」に示される高分子凝集剤との併用でセシウム以外の広範な放射性核種の共沈法浄化が期待される。
高分子収着剤、有機収着剤では[表4]に示した「活性化剤」の効果は[表6]、[表7]に示す如く顕著であったが、[表9]の結果は「活性化剤」を使用していない実験結果である。そこで「無機収着剤」に対しても、この「活性化剤」効果について検討して[表10]に示した。
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[表10]から「活性化剤」の効果は「無機収着剤」の場合も現れ、特に「活性化無機収着剤C」に対して顕著であった。しかしこの収着能の相対比較は[表6]の脚注に示してあるが、「活性化有機収着剤B」に比較すると1/10程度のレベルである。しかしこの「活性化無機収着剤C」の強みは他のバインダーを添加する事無く、焼成のみで「セラミックボール」の成型が容易である点にある。即ち「活性化高分子収着剤B」の繊維、フェルト状素材と、この「活性化無機収着剤C」のセラミックボール素材によりセシウム除去プロセス仕様の選択肢が大きく広がった事を意味する。
以上、「段落:0111」(形態:2−1)の素材開発で新しく開発した素材を(実施例1)〜(実施例3)の中で紹介したが、これらの素材が開発できたので、その応用は広がり、下記に示す(形態:2−2)のプール水の浄化、(形態2−3)の土壌浄化法、(形態2−4)の焼却灰の浄化等々の分野別に夫々適応した装置に応用する事ができ、放射性セシウムの汚染浄化が可能となった。以下に夫々の装置の形態への応用例を示した。
(形態:2−2):プール水浄化装置の形態
大事故時周辺環境におけるプールで自由に水泳、水遊びができない状態は幼児、年少者の精神的開放感にストレスを与える事で決して良い影響を与えない。これらの事からプール水に混入した事故時放出の放射性セシウムによる汚染は直ちに浄化されることが望ましい。その為には本発明により得られたセシウムスカベンジヤーの収着材料に依る、例えば次に述べる(イ)、(ロ)の2ツの浄化システムはこの目的に充分効果的である事が期待される。
(イ):移動式カーテン吸着浄化法
この浄化法は[表6]に示した「活性化高分子収着剤B」の実用化例で、網目状に構成されたフェルトを「活性化高分子収着剤B」相当に加工したカーテン状の薄膜を[図6]に示す如くプール内に設置して、これを簡単な動力(例えば釣り竿にセットするリール用モーター等)によりカーテン状薄膜をプール内を往復させる事により、プール水中のセシウム等放射性核種を吸着・吸収してプール水を浄化する方法である。カーテン状薄膜は網目フェルト、網目レーヨン、網目パルプ等に活性化高分子収着剤Bを収着加工して作成し、水面上端には「浮き輪」、「プールのコース区分用浮き輪」等々を連結し、またプール底面の下端には釣りに用いる「鉛の錘」を垂らし、重量が相互にバランスするように適宜に大きさを選択して用いる。
(ロ):カラム式吸着塔浄化法
この浄化法は[表6]に示した「活性化高分子収着剤B」或いは[表10]に示した「活性化無機収着剤C」を実用化素材として用いた場合の浄化法で、例えば前者については上記(イ)に示した網目状フェルト素材、後者については「活性化無機収着剤C」をセラミックボール、ラシヒリング、ハニカム構造として吸着・吸収塔充填材仕様の素材として、これらを吸着・吸収カラム塔に充填し、そのカラム塔にポンプ等の外力によりプール水を循環させる仕様の、例えば[図7]に示したような浄化システムを稼動させる事によりプール水中の放射性核種を収着させて浄化する方法である。
[図6]
[図7]
(形態:2−3):学校校庭の土壌表面の浄化装置の形態
大事故時の周辺環境の風下側地域においては残念ながら放射性核種が降下、飛散、蓄積される事は明白である。その1ツの例がプール水中の汚染であったが、同じ事は学校校庭土壌表面においても起こっており、特に時間が経過すればする程放射性セシウムの汚染割合が高くなり顕著になってくる。これらの汚染による幼児、年少者を抱える家庭においてはスポーツの場、遊び場が失われ、またその汚染区域での子供達の活動の有無に絶えず気を配らなければならない。このような事態は周辺住民の日常生活における毎日のストレスとして蓄積され良い影響を与えない。直ちに浄化される事が望ましい。ただし、この場合は土壌の構成成分により放射性核種の浸透挙動は極めて異なる事を念頭に置くべきで、例えばC14、Hおよび水溶性キレート化合物以外は土壌による吸着能が高い為、通常の核種で30cm以上移行する事は無い。勿論この時間依存は後述の[表12]に示すような土壌中の構成成分に依り大きく異なり、層状珪酸塩(Phyllosilicates)である雲母質、ゼオライト、タルク質等々が含まれる場合は極めて強く吸着される場合(特にpHが高い場合)がある。従って酸性雨の降り始め時(pHが低い)に於いても溶出が少ない場合には覆土等、別の方法を考えるのが良い。このような考察も無く、無闇に1mも土壌を掘り返して他の場所に移転する等の行動は放射性核種を広く分散させるだけで無意味な行動になる場合がある。何故なら通常の放射性核種は上述の如く、土壌に吸着され30cm以上移動する事は稀であるから、1mも掘削することは70cmもの清浄な土壌まで掘削時に汚染させる事になるからである。他方セシウムはCo−60,Mn−54等に比較して相対的にはイオンになり易くCs−134,Cs−137の移動深度、距離は一般的にはCo−60,Mn−54,他の核分裂物質(FP)、腐食放射化物質(CP)よりも大きく、従ってイオンとしての除去もその分、容易になる事を示している。従って現在の状況では「掘り返す事により深い土壌まで撹乱する事」は避けて、土壌表面から放射性核種を吸い取る方式が最良と思われる。それでも効果が薄い場合には深度毎の汚染分布を把握した上で覆土等表面土壌剥離等を考えるべきである。ここでは先ず最初の土壌表面からの吸い取り方式として例えば次に述べる(ハ)(ニ)(ホ)の3ツの浄化システムを示したが、この方式により浄化の効果は充分期待できるものと惹起される。
(ハ):ローラによるフェルト吸着浄化法
この浄化法は[表6]に示した「活性化高分子収着剤B」の実用化例でフェルト状の不織布として適宜な厚さで用意したシート素材として用いる方法である。Cs−134,Cs−137は他の放射性核種に比較してイオン状として溶出し易いので、例えば雨上がりの日におけるような土壌表面が湿潤状態であるような時、上記フェルト状不織布シートを敷き、水分が不足しているような場合にはその上から噴霧、ジョーロ等により適宜な水分を補給して、その上から道路工事に用いるローラを走行させ、フェルトと土壌に圧力を懸け、土壌中放射性核種を吸い取るように作用させる事によって土壌表層中にトラップされている放射性核種をフェルト中に存在するCs−134,Cs−137スカベンジャーに捕捉させ、土壌表層内に蓄積された放射性核種を除去、浄化する方法で、その概念図を[図8]に示した。
(ニ):セラミックボールによる吸着浄化法
この浄化法は[表10]に示した「活性化無機収着剤C」の実用化素材として、例えば直径〜数cmのセラミックボールとして製造準備し、これを校庭等の土壌表面に適宜な間隔を置いてバラマキ、その上からローラ等により埋め込む。その概念は上記(ハ)のフェルト状シート素材に代えてセラミックボールを使う点が異なる点で、セラミックボールの場合は埋め込み、一定期間放置する点で、上記(ハ)のフェルトの場合と異なる。このように処置した後、降雨があれば表面土壌に含まれる放射性核種はセラミックボールに移行するから、適宜な時間が経過したら、セラミックボールを掘り返して回収し、跡地を平坦に整備すれば土壌表層からCs−134,Cs−137を除去、浄化できる。
[図8]
(ホ):パイプ杭によるカラム式吸着浄化法
この浄化法は「段落:0129」(ロ)で示した「カラム式吸着塔浄化法」のミニマムサイズの応用例で、考え方は同じである。相違する点は例えば吸着塔を直径5cm、長さを30cm程度の大きさの2重パイプを考え、内側と外側パイプには適宜な間隔で例えば3mm程度の穴を開け、内側パイプの中心部は中空として、ここに雨水が溜まるような構造ににする。内側と外側パイプの隙間には「段落:0111」(ロ)で示した「活性化高分子収着剤B」のフェルト素材、或いは「活性化無機収着剤C」の直径数mm程度のセラミックボールを充填して概念図、[図8]の図中に示すように先端を尖らせたパイプ状の杭を準備する。これらを土壌中に打ち込む形で適宜な間隔をあけて当該土壌範囲に埋め込む。適宜な時間経過後には中心部の中空部には雨水が溜まっている筈であるが、この雨水は浄化されて放射性核種含量は低い筈であるから、その存否を確認して適宜に処理をする。このようにして中空に存在した雨水を除去すれば、新たに土壌を浸透通過した雨水がパイプ中心の中空に集まり、土壌中のCs−134,Cs−137は雨水による繰り返し浸透により土壌からパイプ中の充填収着材に移行する事になる。
(形態:2−4):焼却灰、稲藁等々の浄化装置の形態
大事故時周辺環境の風下側で稲藁に放射性セシウムが付着し、これを家畜牛の飼料として与えた事により、肉牛の体内汚染を起こし、マスコミで大きな問題として報じられている。同じ事は「牧草」「籾殻」「米糠」「玄米、白米」或いは風下側建築材(家屋の崩壊資材等)の焼却過程で排出される焼却灰等々についても同じ問題点を含んでいる。広範な種類、広範な地域に深刻な問題を転嫁してしまい、周辺住民の身体的、精神的、経済的に重大な悪影響を及ぼし、その生活は不健康な状態と言わざるをえず、早急な解決策が希求されている。そこでこれらの固体から放射性核種を除去、浄化する方法として回転駆動体機器による浄化システムを考え、固体系と、液体系の2ツの場合に分けて提案する。固体或いは粉体、粒子状物質について(ヘ)半乾燥的浄化法、(ト)溶液状態に浮遊させる浄化法の具体例を以下に示す。
(ヘ):半乾燥物質の回転駆動体浄化法
この浄化法で用いる回転駆動機器は例えばトン容量のような大容量の場合は「ロータリーキルン」、数100kg程度の容量の場合は「コンクリートミキサー」、kg単位の場合は「洗濯機の乾燥ドラム」等々の機器を考え、この中に半乾燥物質として放射性核種に汚染された「牧草」「籾殻」「米糠」「玄米、白米」「建築資材」「焼却灰」等々を投入し、これらに噴霧器等で適度な湿分を与え、放射性核種の収着材として先に示した「活性化高分子収着剤B」のフェルト、布、等の繊維素材或いはスポンジ状の素材、「活性化無機収着剤C」のセラミックボール、粒状体、粉体等々を混入させ、全体を回転することで「放射性核種汚染物質」と「収着材」が適度な湿潤状態で接触させられる事でCs−134,Cs−137等が収着材に移行する。その概念図を[図9(a)、(b)]に示した。このように放射性セシウムが簡便な方法で移行吸着できる大きな理由はセシウムの特性にあり、[非特許文献9]に示すように他の放射性核種がコロイド、共沈、イオン交換等で濃縮付着しやすいのに対してCs−134,Cs−137はイオン状として存在する割合が高く、水溶液移行が容易である点にある。
[図9(a)、(b)]
(ト):溶液中浮遊物質の回転駆動浄化法
この浄化法で用いる回転駆動機器は上述(ヘ)で使用した「ロータリーキルン」「コンクリートミキサー」と家庭用の「電気洗濯機」が使える。特に洗濯機は小規模な浄化法として効果的と思われる。方法は(ト)の場合と同じであるが、回転駆動機器内部に適量の水(水道水、海水、蒸留水等々)が存在し、その中で当該対象汚染物質が浮遊している状態が(ト)と違う点であるが、除染、浄化の考え方は全く同一である。即ち汚染対象物質の例えばCs−134,Cs−137を水相に移し、その水相から収着材の固相に濃縮する方法である。このように放射性汚染物質が水溶液に混入しても良い場合にはその接触面積を考えると(ヘ)の場合よりも効果的と思われるが、それ以上に収着量が極めて多い[表7]に示した「活性化有機収着剤B」が使える点に大きなメリットを感じる。これらの概念図は(ヘ)で示したものと同じで、機器内部に水溶液の相が存在する点が相違するのみである為、[図10]に洗濯機を示した。
[図10]
(第3の実施の形態):取水口開渠における放射性核種の浄化法
この実施の形態は「段落:0059」[表3]の低〜高レベル放射性核種汚染廃液の10〜1010Bq/tonを対象にしているが、具体的な行動目標は「事故によって高レベル廃液が放出された初期段階で、如何に早期に、如何に拡散させずに除染、浄化するか」にある。このように考えると本特許に適合する場所は「1〜4号機前面の取水港開渠」であろう。ここにおける汚染海水の浄化は周辺海洋環境への汚染拡大を最小に止める極めて重要な作業点、作業範囲である事が理解できる。事故時放射性核種の汚染水が環境に放出された場合に濃度的に高い状態の狭い範囲で浄化する事により周辺海洋に拡散される事を防御できる第1の砦が「取水港開渠」で第2の砦が「取水港湾」であろう。ここにおける「汚染海水改善処理システム」の1例としてゼオライト吸着槽による吸着除去装置が写真報道されている。しかしゼオライトのCs−137吸着能は6g/kgであるが、米国クリオン社の今回の稼動実績での除染係数は約1/100程度で比較的低レベルである事および海水の通常放射能レベルは極めて低いレベルである事(1nBq/cm〜1Bq/cm)を考えると、以下の選択肢のほうが良いと思われる。
(1)第1の方法:高分子凝集剤を使う固液分離法
本発明の(第1の実施の形態)の(実施例2)に示した「有機シルト」で補強した「凝結剤D」をCoagulationスカベンジャーとして使い、更にFlocculationスカベンジャーとして「凝集剤K」を使い[表4]の共沈法経路(viii)による「吊るし濾過法」による固液分離法が最良の除染係数が得られると考えられる。
(2)第2の方法:現場にある有機シルトを利用する固液分離法
上記「(1)第1の方法」は多種の放射性核種に対して除染係数を高く浄化できると思われるが、システム・設備が多段に及び、その操作開始までの時間とコストが多く掛かり、規模が大きくなる欠点がある。そこで天然凝結剤である有機シルトを考えると本発明で想定した有機シルトと同等のシルトが「取水港」および「取水港開渠」に豊富に存在し、特に「物揚場岸壁近傍」のように海水の淀む場所には最適な有機シルトが眠っていると惹起されるので、これを使う。「取水港開渠」が外界海洋から十分隔離、遮断されていると判断された段階で次のような操作を行う事で、一挙に「取水港開渠海水中のCs−134,Cs−137」および「Co−60,Mn−54」を浄化できる方法が、この第2の方法である。
▲1▼:浚渫掘削機等で海底土を舞い上がらせて海底に沈降している多量の有機シルトを海水中に浮遊させる。
▲2▼:時間的に30分程経過すると粗大粒子は海底面に沈降し、海水中には微細シルトのみ浮遊している状態にあるので、この段階で、4区分程度に分割した範囲の広さの100meshプランクトンネットのシートをできる限り底面を這わせるようにセットする。
▲3▼:プランクトンネット設置が完了した段階で、[表4]に示した「凝結剤D」の適宜な計算量を添加して、液相の海水中に分散する。即ちこの段階の海水中には本発明で指摘した「有機シルトと凝結剤D」が混合状態で存在している事になる。この事は「段落:0109」で示されたように「有機シルトが存在すると凝結剤Dは安定に存在する」事になり、海水中セシウムは「有機シルト+凝結剤D」の沈殿に捕捉される。
▲4▼:その後1〜2日ほど経過した段階で、一枚のプランクトンネットの4隅、その中間、更にまたその中間の計16ケ所に取り付けたロープを徐々に、深さを3mとして、30cm毎に10回に分けて、1回を10分かけて徐々に引き上げ、計100分程でプランクトンネットを海表面まで引き揚げる。例えばこのようにして徐々に引き揚げる事によりプランクトンネット上に蓄積された微細な有機シルトを捕集する。プランクトンネット上の有機シルトは、プランクトンネットと共にできるだけ水分を除去した後、廃棄物処理をする。この方法は「(1)第1の方法」における「凝集剤K」の添加とその前処理である溶液pHの調整を割愛して処理を簡便にした方法である。この事により[図5]に示す如く海水中に溶存していたCs−134,Cs−137,Co−60,Mn−54をプランクトンネット上に蓄積した「凝結剤D」で補完した有機シルトに吸着し、これらを捕集する事により、効果的に除去できる。
▲5▼:海水中からプランクトンネット全体を引き揚げ完了したら、再度▲1▼から同じ操作を繰り返し、再挑戦する。この事により海底土および海水中のCo−60,Mn−54及びCs−134,Cs−137を指数的に減少、除去できるものと惹起する。尚「取水港開渠」に敷き詰めるプランクトンネット枚数の4枚は例示したのみで、これに拘泥する必要は無く、またその引き揚げについてはモーターを使って自動的に緩慢引き揚げができるように工夫する事が望ましく、方法論的には[図6]の方法を応用すればよく、難しい事では無い。
(3)第3の方法:カラム式吸着塔浄化法
海水中の放射能レベルが比較的低い場合においては(第2の実施の形態)の「(形態:2−2)」の「段落:0129」(ロ):カラム式吸着塔浄化法、或いは「(形態:2−3)」の「段落:0134」(ニ):セラミックボールによる吸着浄化法を応用すれば容易に海水中放射能レベルを低減化できる。尚マスコミ等により写真報道されている東芝によるゼオライト吸着方式は原理的には、この「第3の方法」に使用する「活性化高分子収着剤B」のフェルト或いは「活性化無機収着剤C」のセラミックボールの代わりにゼオライトを使っている方式と言える。
(4)第4の方法:活性化有機収着剤浄化法
「第3の方法」において吸着能に満足がいかない場合は「(1)第1の方法」の改善方法がある。「(1)第1の方法」ではCoagulationスカベンジャーとして「有機シルト」で補強した「凝結剤D」を用いているが、これに代えて(第2の実施の形態)の形態(2−1)の「段落:0115」(実施例2)で開発した「段落:0121」[表7]に示す「活性化有機収着剤C」を用いれば吸着能が大きく目的を達成する事ができると惹起される。
(第4の実施の形態):
ここで述べる「第4の実施の形態」は当該大事故に伴う「超高レベル廃液処理」に関して電源を要しないPassive Typeの水の自然重力による滴下分離方式の濾過法(吊るし濾過法)の開発にに関する[課題4]と超高レベル放射性汚染廃液の水処理改善システムの構築に関する[課題5]を含む。[課題4]に関しては「高分子凝集剤K〜N」の適応が必須で、[課題5]に関しては当該の汚染水は超高レベルの比放射能である為、その濃縮過程では「最高除染係数」と共に「最高の減容率」を目指す事が肝要で、その為の汚染水浄化処理システムを構築する事が重要である。そこで「吊るし濾過法」を用いた海水中の超微量Co−60の放射化学分析法の例を(実施例1)で示す。また仏国アレバ社の「共沈法」による「減容率:QRF」は「段落:0071」に示すようにQRF≒10−2であったが、(実施例2)では「高分子凝集剤K」を用いて1000l海水中のCo−60の放射化学分析法における「共沈法⇒吊るし濾過法」での「減容率:QRF」を確認して、「共沈法」における仏国アレバ社の「QRF≒10−2」のレベルを確認する。
(形態:4−1):大量海水中の超微量Co−60の放射化学分析
以下に「吊るし濾過法」を用いた海水中Co−60の放射化学分析法を示す。
(実施例1):「吊るし濾過法」を用いた1000l海水中のCo−60の放射化学分析法
海水中のCo−60の濃度は通常〜0.7pCi/1000l程度であるが、共沈法により濃縮した収着物のγ線計測では1000l処理した場合でも8万秒(8×104sec≒22.2hr)計測での検出限界値(5〜6pCi/1000l)が高い為、検出限界値以下として「LTD」と記録するのが一般的であった。しかし当時放射性核種(Co−60)の海洋拡散の実態評価が求められていた為、検出限界値を最低1桁精度を上げる(0.5〜0.6pCi/1000l)事によって〜0.7pCi/1000lレベルの濃度分布を把握する必要があった。この為にはγ線計測用の半導体検出器容量を大きくすれば、ある程度目的を達成できるのであるが、当時の半導体技術レベルでは容量を大幅に改善する事は望めなかった為、止む無くβ線計測による評価法を採用せざるを得なかった。この為には分析評価する海水の容量は多い程検出感度を上げられるのであるが反面、装置、時間、試薬量等々全てがスケールアップされ、簡単な事ではなく、最終的には1000l容量の分析法の確立を目指して文献調査をして既存分析法の適否を検討した。その結果、[表11]に示したように高分子凝集法に依ればCo−60もMn−54も同時に共沈法によって固液分離が可能と判断した。
Figure 2013072871
しかし、このような1000lレベル容量の海水分析の例は無く、当時では400lまでが最大分析容量であった為、400l以上の場合の分析パラメーターのスケール効果(温度、pH、キャリヤーおよび試薬添加量等々)についてホット試験(実際にCo−60を海水に添加する実験)で確認する必要があり、夫々のパラメーターの確認の為にも扱う量は1000lになる為、放射性廃棄物発生もあり、放射線管理にも細心の注意が必要で、夫々のデータ取得には困難が伴った。最終的には以後に説明する分析法操作によりCo−60を円形銅板に電着して2πガスフローカウンターによるβ線計測で検出可能と
Figure 2013072871
ができ、通常海水中のCo−60濃度レベルを評価する事ができるようになった。例えばAサイト近傍海水の20ケ所程度の分析結果によれば、その濃度は0.15〜0.67pCi/1000lに分布しており、納得できる分布を示していた。この時の検出限界値は0.11pCi/1000lであった。またこの際に横須賀の海水を対象海水として同様に1000l分析を行った結果0.074pCi/1000lの値を示し、検出限界値(0.11pCi/1000l)以下の値になる事が判明した。当時の1000l大量海水の分析には上記に示すような理由があって遂行したものであるが、その時の改良型分析フローを次頁の[図11]に示した。
Figure 2013072871
[図11]
(実施例2):「共沈法⇒吊るし濾過法」における「減容率:QRF」のレベル
通常の化学分析で所要時間を気にする操作は濾過工程である。溶液から固体への吸着移行が十分であっても、その収着固体粒子が微細すぎると、濾過に要する時間が極めて長くなり、その分析方法は改善を要する事になる。例えば水酸化第二鉄コロイド沈殿、土壌抽出時の濾過等々に難儀した研究者は多く、通常このレベルを凝結(Coagulation)状態と言われる。近年ではこれらの状況を改善する為に、この凝結沈殿を有機高分子に架橋する事で沈殿固体を一次元的に長鎖の物質に集合させる方法が採用される事が多くなり、濾過操作もかなり改善され容易になった。この架橋高分子を有機凝集剤と呼び、この沈殿状況を凝集(Flocculation)状態と称して、上記の凝結状態と区別する場合がある。この有機凝集剤の添加により濾紙ではなく目の粗い濾布の使用が可能となった。処理量が少ない場合は目の粗い濾紙(No C)でも良いが1000l処理になると発生する有機凝集剤の量も1000ml(l)レベルになる為、4隅を固定した50cm×50cm広さのプランクトンネット(50〜10mesh)を使用して中央部に沈殿を移し、注いでも、沈殿はプランクトンネットを透過しない事が分かった。
[図12]
そこで簡便でPassive Typeの[図12]に示す「吊るし濾過法」を考える事で濾過操作の困難を軽減した。試料1ケ当りの濾過時間は自然濾過の為、長くなるが、多くの試料を同時に濾過をして「溜め置き」濾過を行えば、この問題の大部分は軽減される。この事により上記沈殿分離操作では上澄み母液を例えば、デカンテーション等により990l程度移し終えたとすれば、この容量分は濾別操作から開放された事になる。フロック状態の沈殿を含む残液10lは上述の如く50cm×50cmのプランクトンネットの中央に4隅を徐々に持ち上げながら溢れる事の無いように注意深く移し、ついには4隅を一点で結び、この結び目に適宜な紐を連結して紐によって沈殿を吊るし、重力による自然濾過によって母液を絞り出す簡便な方法で固液分離が完成する。この簡便な濾過は高分子凝集剤の添加なくして起こりえない事であるが、この事によって1000l処理における固液分離は極めて簡便な形で完結する事ができた。この際のフロック状沈殿量は湿潤状態で約800ml程度になり、またその後、1昼夜の放置で400〜600mlに減容できる事が分かった。この結果から「吊し濾過法」による減容率(QRF)はQRF=(4〜8)×100ml/1000l=(4〜8)×10−4になる。この値は米国クリオン社による「吸着法」のQRF=5×10−4と同レベルであり、仏国アレバ社の共沈法によるQRF=10−2に対して17〜25倍減容率は高く、仏国アレバ社の共沈法は改善の余地が大きい事が予想される。
(形態:4−2):原子力発電所で発生する放射性核種の化学的、物理的形態
(形態:4−1)に示した1000l海水中の超微量Co−60の分析法の開発は原子力施設から放出された放射性核種の拡散状況の把握を精度高く評価するの為には必須な事であった。しかし放出後の拡散状況を正確に把握しても、その放出源における化学的・物理的性状についての把握なくして拡散状況の変化、移行、希釈等々を正確に評価、検討する事はできない。これに関して有機シルト質含量の多い海底土、特にシルトへの分配についての情報は「段落:0102」[図5]から得られるが、放出源についての情報は少ない。このように少ない情報の中でAサイトにおけるランドリードレン、フロアドレンに含まれる放射性核種の化学的、物理的形態に関して平常時と定検時に分けて夫々Co−60、Mn−54、Cs−137について詳細な検討を行っている例、[非特許文献9]がある事は貴重な情報であろう。
この情報をまとめると[図13]、[図14]の様になるが、ランドリードレンは放出直前に「活性炭槽」を通してCo−60、Mn−54の放出低減化を行っているが、[図13]から、除染係数(DF)は総合平均でDF=3〜10になり、Cs−137については除染効果は殆ど無い事が分かる。又粒径別、有機物、無機物(主としてイオン)としての構成成分別については[図14]に示されているが、総合的にまとめると以下のようになる。
[図13]
[図14]
放出源核種の性状のまとめ:
(1):放射性核種の形態別割合
平均的な放出廃液組成としてはCo−60が全放射能の約8割を占めており、そのうち固相が約60%、液相が約40%であり、固相では約10μm前後(8〜15μm)の粒径が放射能の殆どで、液相は無機金属イオンが大半である。廃液の種類別では、ランドリードレンについては、殆ど(90〜100%)が固相(懸濁物質)に含まれており、フロアドレ処理水については液相も固相と同程度のCo−60(無機物、イオン状)が存在している。
(2):固相の構成成分
文献にはX線回折により鉱物学的な解析を行っている旨の記述しかないが、個人的な内容確認情報によれば大略以下の2点であるらしい。
★固相の構成成分としては、有機物が半分以上(50〜60%)を占めており、その他にゴム手袋の潤滑粉体として使用されているタルクやコンクリート建材中に含まれるムスコバイト、クロライトが比較的多く存在するらしい。
★ランドリードレン濾過槽上下固相のX線解析に依れば、構成成分に大きな相違点が現れたのはタルクの捕捉除去によると見られるSi、Mgの減少傾向であった。これらの情報は「ホット施設でゴム手袋を使う作業経験のある人の場合には誰もが経験する基礎的事項」で、タルクの使用頻度が多いので、上記解析結果は納得できる当然の結果であろう。
(3):ランドリードレン濾過槽の設置効果
★ランドリードレン濾過槽の除去率は廃液の性状により大きく左右されるが、徐去率はCo−60、Mn−54で数分の1〜10分の1程度であった。
★固相の方が液相よりも除去率は良く、又粒径の大きいものほど比較的良く徐去される事実は活性炭粒による篩い分け濾過である事を考えれば当然のことであろう。液相中放射性核種の徐去率は核種ごとの差が大きく、Co−60、Mn−54は良く徐去されるがCs−137は無機イオンである為、殆ど徐去されない。
(4):矛盾点か?
ランドリードレンのCo−60は殆どが固相であるのに対して、フロアドレンでは半分が液相(イオン)として存在している。この理由として考えられる大きな理由はゴム手袋の潤滑粉体としてタルク(滑石)が頻繁に使われる点にあると思う。固体成分としてタルクおよびムスコバイト(白雲母)がX線回折で主要成分として(2)において確認されているが、これらは[表12]に示す「土壌中の無機成分」のうち層状珪酸塩(Phyllosilicates)に属し、これらは無機イオンを強く包接する事で知られている。従ってランドリードレン中のCo−60はタルクあるいはムスコバイト(白雲母)にインタカレート(包接)される事で固相に多く分配されていると思われる。他方フロアドレン中のCo−60は[図14]から無機イオンとして半分、固体として半分分配されている事が分かるが、これは包接体の無い環境下でコバルトイオン(+)電荷と水酸化第2鉄の(+)荷電および海水および沿岸に存在する塩分の(+)電荷等々との斥力から「段落:0033〜0035」に示した様にイオン同士が凝結、凝集せずにイオンとして存在し易い環境下にある事が予想され、反面陸水中、粘土質シルト等(−)電荷の環境下では沈殿し易くなる事が予想され、驚く状況でもない。むしろ驚く事はランドリードレン中にタルク、ムスコバイトが多量に存在するにも拘わらずCs−137が依然として液相(イオン状)として多く存在する点にある。このCs−137の捕捉されない性状はイオンとして流れやすく、吸着し難く、拡散し易い為、例えば環境土壌(校庭)表面からCs−137を吸収、吸着し易く、「吸い取り効果」がある等長所になる反面、降雨に含まれるCs−137は広く分散、拡散し易く、植物の経根吸収による摂取が容易に起こる等の短所にもなり、捉え方により長所にも短所にもなる。この様に放射性核種の化学的、物理的形態を把握する事は極めて重要である。
(形態:4−3):超高レベル放射能汚染海水の浄化法
この形態(4−3)で対象になる汚染廃液は「段落:0059」[表3]に示した超高レベル放射性核種汚染廃液の1010〜1014(Bq/ton)に相当し、それらの浄化法についての形態である。このレベルになると[表3]の脚注に示す如くCs−137相当で計算すると1ton当り1.4gの重量を示す事から放射化学的な、例えばラジオコロイドによる特殊性を主体に考える必要は無く、通常の化学分析の概念が通用する、量的にはマクロの世界になる。しかし放射能レベルは極めて熾烈で厳重な被曝管理が行なわれなければならない。即ち次の2点を常に念頭において作業しなければならない。
▲1▼:分析はマクロ的化学分析概念で考え、従って操作する沈殿等の量的規模も極めて膨大になる。
▲2▼:放射能は極めて熾烈で放射線遮蔽等による厳重な被曝管理下で作業は遂行されなければならない。
上記2点を基本理念として作業を進める事として、これまでの放射能レベルに対応する浄化法を含めて、この超高レベルの汚染海水浄化法で考えられる本特許の主要な方法をまとめると次に示す[図15]のようになる。
この[図15]でこれまで示されていないのは固液分離手段としての(廃液A)の存在であろう。これは「段落:0020」[表1]に示したように大量に存在する(廃液B)に対してマイナー的な量ではあるが、必ず1〜3号機腹水器地下部冷却取水管(直径2m)内に存在している。廃液Aと廃液Bの環境電荷は陰・陽の相反するチャージを持っているので、これらを有効に使う事は賢明な方法で「毒をもって毒を制す」方法として有効であろう。これ以外については、これまで紹介してきた「〜高レベル放射能廃液レベル浄化法」の中で全てが説明されているので、これらについての詳述は避ける。重要な事は[図15]に示すように本特許で発明された多種類の、例えば[図15]では(A)〜(E)の5種類の「活性化収着剤」を用いて適宜な形態に応用加工して使用できる点にあり、その応用例は多種多様にある事である。
Figure 2013072871
(AA)固液分離法の大別
超高レベル放射能汚染海水母液中に溶存するCs−134,Cs−137等放射性核種を何らかの固体に収着(吸収・吸着)させ、その収着固体を母液から分離する事が浄化方法で、。その方法には異なる収着方法がある。1ツは適宜な吸着剤、例えばゼオライト等々の吸着物質に溶存状態(或いはコロイド分散状態)にある当該核種を直接その固体に収着移行させ、分離する方法である。これを「“吸着法による固液分離法”と定義」する。他の1ツは溶存状態にある放射性核種(Cs−134,Cs−137等)の母液に適宜な凝結剤を加えて相互の電荷、化学反応等々の作用により凝結剤に連結させ、固体成分の1部に共沈させる。この状態では通常の凝結剤物質は極小粒子状である為、その固液分離操作には困難を伴う。そこで更に有機高分子凝集剤により架橋集合を起こし、相互の小粒子を大きなフロック状集合物質に変え、相互に取り込む形で更に大きな濾過固体に成長させて濾過操作を容易にして母液から分離する方法である。これを「“共沈法による固液分離法”と定義」する。これらの方法を夫々代表するのが[先行技術]で示した「段落:0021」
(1)仏国アレバ社の技術と「段落:0026」(2)米国クリオン社の技術で下記に示した。
「超高レベル溶存核種 “吸着法による固液分離法”……米国クリオン社の技術
の固液分離法」 “共沈法による固液分離法”……仏国アレバ社の技術
[図15]
(BB)超高レベル汚染海水の浄化法に関する本発明の特徴的な関連性
(1):当該超高レベル放射性汚染海水を電荷(+)の廃液(B)として定義する
(2):1〜3号機復水器地下部分冷却取水管に存在する汚染海水を電荷(−)の廃液(A)として定義すると、この廃液(A)は廃液(B)の凝結剤として有効に作用する。
(3):本発明で定義する有機シルト「凝結剤C」およびスカベンジャー「凝結剤D」で相互補完した複合凝結剤をスカベンジヤーとして上記共沈法と連結できる。
(4):極めて多量のCs−134,Cs−137の収着を目論む場合は選択する凝結剤を収着量の多い「活性化有機収着剤B」として、これを凝結剤スカベンジャーとして上記共沈法と連結する。
(5):最終処分をガラス固化体とする場合を想定した場合には、システム的に有利な「活性化無機収着剤C」等を凝結剤スカベンジャーとして上記共沈法と連結する。
(6):上記(1)〜(5)の共沈法は継続して高分子「凝集剤K」によるフロック状スカベンジヤーによる共沈操作を伴う事が望ましく、この事により本発明で考慮した簡便な濾過法である「吊るし濾過法」を適用できる。
(7):吸着法においてはゼオライトに代えてフェルト状、ガーゼ状、布状等々の「活性化高分子収着剤B」を使用する事で高レベル溶液環境の中を往来させる事で吸着除去、低減化処理を施す事ができる。また溶液中の高レベル核種に限らず土壌或いは焼却灰等の固体表層中にイオンとして含まれる場合の湿潤除去法として固体表面近傍に存在するCs−134,Cs−137の吸着除去、低減化処理にこの「活性化高分子収着剤B」を使用できる事は大きな利用価値を生む。
(8):吸着法においてゼオライトに代えて「活性化無機収着剤C」を用いる事により例えば中空状セラミックボール、木製ボール、コットンボール等々に加工して用いれば高レベル溶液中を浮遊往来させる事ができ吸着除去、低減化に大きく寄与する事ができる。
(9):放射性核種例えばCs−134,Cs−137に汚染されている固体を「活性化高分子収着剤B」であるフェルト状、ガーゼ状、布状等々繊維状吸着剤で拭き取る事により表面除染ができる事で「除染作業手段」として、スミヤ法と同様に効果があり、極めて有効な手段である。
(10):同様に粉体状、粒子状の「活性化無機収着剤」「活性化有機収着剤」等を汚染固体に「振り掛ける」事により固体表面を除染できる事は「除染作業手段」として極めて有効な手段である。
(11):低〜高レベル汚染環境に於ける「プール水」「校庭土壌表面」「焼却灰」「稲藁」等々の除染方法と同様の利用方法も考えられる。
(CC)流用施設による超高レベル汚染海水浄化法のプロポーザル
CC−1:共沈法……4号機復水器地下部分取水管を反応槽として流用する。
(1):方法論……多数の収着剤を開発できたので多数の共沈法が考えられるが、その1部は[図16]に示す流用設備で、[図15]に示す新規薬剤および処理手法により下記に示す共沈反応過程によって、超高レベル放射性核種を母液から分離、隔離する事で、これら超高レベル汚染海水を浄化する事ができる。ただし何れの場合も汚染海水に混入していると思われる油分を取り除く前処理が必要である。この為には幸いにも無機収着剤Cが油性物質の吸着剤として効果的である事から例えば[図7]に示すように充填槽に前置して予め汚染海水から徐去するシステムを必要に応じて対処して設置する。
[図15]の新規薬剤および処理手法を応用した共沈反応過程の例を次頁に示した。
(2):具体的な反応方法の例……後述の(第5の実施の形態)で示す設備、機器の流用に依る反応形態により[図16]の概念で超高レベル汚染水を浄化する事ができる。
Figure 2013072871
[図16]
CC−2:吸着法……4号機復水器地下部取水管を処理槽、反応槽として流用する。
「取水管地下部」の流用反応槽を使い例えば[図16]に示す「吸着法」により汚染海水を浄化する。
(1):カラム塔吸着法……復水器地下部分取水管の立抗部分に収着剤を充填したカラム、シリンダー、円柱、角錐等長尺容器の充填塔を設置して、地下外部の送水ポンプより超高レベル汚染水をこの充填塔を通過させる事で超高レベル放射性核種を吸収・吸着させ低レベル母液を抽出する。設備的な点も含めて具体的な方法は[図7]のカラム吸着塔システムと同様であるから、ここでは詳述しない。
(2):フェルト、繊維状の移動式カーテン状収着物への吸着法
(イ):先ず4号機の復水器地下部取水管内を低レペル放射能に清浄化する
(ロ):[図16]の吸着法に図示するように復水器地下取水管の長尺方向にワイヤー、紐、チェーン等の糸状長尺物(例えばワイヤーとする)で貫通して、その一部を回転モーターに巻き付けて、糸状のこれらがモーターの回転と共に取水管を移動するようにして、取水管の端に達したら逆送して、他端方向へ反転して移動するようにする。
(ハ):糸状長尺物の適宜な位置に固定用フックを取り付け、これにフェルト、繊維状のカーテンを固定できるようにする。
(ニ):このように準備した地下部取水管を「取水管反応槽」と定義する。
(ホ):上記に示すように準備した「取水管反応槽」に超高レベル汚染海水を外部ポンプにより注入する。
(ヘ):所定量の注入が終了したら(ハ)で準備したフックに放射性核種収着カーテンをセットして、汚染海水中に浸漬する
(ト):外部モーターにより糸状ワイヤーを所定速度で「取水管反応槽」内をユックリ移動して取水管の端に達したら、反転して他端方向に逆送するようにする。
(チ):これらの反転移動を複数回繰り返し往来したら、収着物を取水管から持ち上げ鉛コンテナーに収納する
(リ):持ち上げはユニック車、クレーン車等々の外力により行い、その移動は汚染溶液が雫状で落下しなくなってから行う。
(3):セラミックボール、チップ状スポンジ、角状フェルト等担体形状物に活性化剤等により不溶化した活性化無機収着物Cおよび活性化高分子収着物B等による吸着法について。
上記(2)に示した移動式カーテン状収着物による吸着方法と同様にカーテン状収着物に代えて放射性核種収着物を表面被覆した形状物であるセラミックボール、角状フェルト、チップ状スポンジ、木製ボール、綿状ボール等々を入れたステンレス籠を吊るす。他の仕様は(2)と同様にして、このステンレス籠を地下部分取水管を往復する事で取水管内に注入した超高レベル汚染海水中の放射性核種をこれらステンレス内にセットした形状物に吸収・吸着させて母液中の放射能レベルを低減化し、除染、浄化する。
(第5の実施の形態):
ここでは「段落:0088」で説明しているような施設・設備の流用に関する[課題6]および[課題7]についての形態について述べる。ただし、これらの「課題の解決方法」としての説明は既に[課題6の解決手段]、[課題7の解決手段]の中で説明しており、その大略を以下に示したが、これらの説明から夫々の形態の概要は推察される。
[課題6の解決手段]、[課題7の解決手段]で示した流用施設の説明の大略
◎4号機冷却地下部取水管6本を反応槽として流用する件
「段落:0082」(1):4号機冷却地下部取水管6本を反応槽として流用する件:4号機冷却地下部取水管は事故当時定検中であった為、ムラサキイガイの貝殻の積層も無く、比較的キレイである事および他の1〜3号機に比較して放射能レベルが低い事および地下に埋設されている為、幾何学的放射線遮蔽ができる事から、これら6本の地下部取水管を直径2m、長さ約40m×3本(1本当りの容量は水平部で約126m)長さ約55mの場合は一本当り容量は水平部で約176mと仮定して、その容量(号機およびポンプNoによって長さは異なる)を活かして反応槽とする(随時他の地下部取水管も空になったら利用する)。
◎4号機冷却地上部取水管を貯水槽あるいはデカンテーション槽として流用する件
「段落:0083」(2):4号機冷却地上部取水管を貯水槽として流用する件:1〜4号機地上取水管は地表面に沿って配管されている為、超高レベル放射性廃液を入れる反応槽としては被曝を考えれば流用できない。しかし汚染除去処理後の放射能レベルが低くなった廃液については被曝線量を考慮しないで済む事から、これら3本の空間容量(地下部取水管より長いので容量も大きくなる)を利用して処理後の貯水槽あるいはデカンテーション槽として利用する。ただし入口も出口も開放状態なので入口、出口位置を決めたら、夫々取水管の上部から穴を開け、そこに超大型の風船2個をいれ、穴の直下位置を中心に、それぞれを1m以上離して設置する。勿論風船はテントで使用するような頑強な布で被覆補強されたものを使うが、これに圧搾空気を入れる事で穴の直下分に空間のある風船隔壁ができる。次いで穴の直下にできた空間に水ガラスセメント等強力充填剤を注入すれば即席で強固なセメント隔離壁ができる。セメントが固化したら内側風船の更に内側の適宜な位置、例えば穴中心から2.5m以上の位置に溶液の出入り口用の穴を更に1個開ける。第2の穴ができたら、隔壁になっている風船を撤去すると同時に蓋を設置して、貯水タンクとして機能するように例えば円周部に接着剤補強するとか、蓋にバルブを取り付けて動力による取水、放水ができるように工夫する。これと同じ造作を他の一方の他端位置にも施し、出口と入口の対を完成させる。
◎線量が低ければ「低〜中レベル放射能汚染水」の反応槽、貯水槽として流用可能の件
「段落:0084」:このように地上部取水管に溶液の出入り口を付設すれば地上取水管は約200トン前後の貯水槽に変身する。このような流用により1号機に2本、2号機〜4号機で夫々3本で、合計11本あり、平均200トンとすれば2000トン余りの貯水タンクが即座に製作できる。然も取水管強度は維持されている筈であるから強度的にも安心ができる。また、この取水管タンクは超高レベル廃液の清浄化処理後の海水で外洋放出が出来ないような低レベル放射能汚染水の貯水槽としても被曝線量をチェックしながらの使用は可能である。
◎4号機トレンチを反応槽として流用する件
「段落:0085」(3):4号機トレンチを反応槽として流用する件:各号機のトレンチの形状は様々であるが、4号機は定検中であった事から、原子炉内に燃料は無く、その破損による放射能寄与が少ない為、トレンチ内放射能レベルは1〜3号機トレンチに比較して低く、またトレンチの中間箇所に立杭が5ケ所在り、この空間およびトレンチ立杭深さ空間を利用した有効な利用方法が有る。然も前項(2)に示した地上部取水管を加工した貯水槽の出入り口とトレンチ入り口が近傍にあり、取水管加工貯水槽とトレンチを合体して利用する事で、例えば4号機の取水ポンプの稼動が可能であれば、(2)の取水ポンプ側の出口をトレンチと直結できるように工夫すればトレンチ、取水管の大容量の海水、溶液を大容量取水用ポンプで駆動攪拌ができる流動的な大容量反応槽ができる。
◎希ガスホールドアップタンクを反応槽として流用する件
「段落:0086」(4):希ガスホールドアップタンク(以後“希ガスタンク”と言う)あるいは新規製造タンクの流用の件:これらタンクを流用して吸着槽およびデカンテーション槽として使う。希ガスホールドアップ施設(以後“希ガス施設”と言う)は事故後1ケ月以上経過しているので、施設に注入した希ガスの殆どは半減期により消滅していると判断されるので、希ガスによる被曝は考える必要はない。現在使用されていない1〜4号機用の“希ガスタンク”は多数あり、例えば上記に示した地下部取水管1本当り水平部分容量173mを満足する為には、タンク仕様を直径3mΦ、高さ8mと仮定すると、1基当り容量は約56.5mで、3〜4基を直列および並列にすることで、その容量を確保できる。3〜4基を直列にして吸着槽とし、3〜4基を並列にしてデカンテーション槽或いは貯水槽として流用する。ただし「タンク」の発想はAサイトからの類推であるが、モジュールタイプの場合は別途新規製造した100〜120tonの空タンクを使い、容量は適宜定めればよい。
◎希ガスホールドアップタンク内の活性炭を流用する件
「段落:0087」(課題7の解決手段):除染効果向上の為、“施設タンク”内部に大量に保存されている活性炭およびこれを薬剤修飾して活性炭を利用する。特にヨウ素131(I−131)およびルテニウム107(Ru−107)の吸着および薬剤付着によるセシウム134(Cs−134)、セシウム−137(Cs−137)の吸着により、除染係数の大幅向上を目指す。この活性炭除染過程は先に定義した「廃液A」内に多量に存在する有機コロイドの吸着妨害を考慮して、凝集剤による固液分離の初段プロセス施工後の後段プロセスとして位置付け、活性炭を高価な吸着薬剤の付着単体として位置付け、除染係数の大幅向上を目指す。第一段の凝集剤固液分離プロセスで例えばCs−134,Cs−137の大部分が除去されれば、その後段においてはCsに対して極めて選択性は高いが、高価で使用不可であったような薬剤についても、その使用が少量で限定的になる事から使用可能となる。例えば前述したCsに対する凝結剤Fの使用が可能となり、より一層の除染係数の大幅向上が期待できると共に、選択的吸着量が高ければ付着量単体の活性炭量は少量で済む事から最終廃棄物処分量を大幅に抑制して、将来のガラス固化体最終処分形態の量を大幅に低減化できる事になる。また除染係数を極めて高い状態で処理できれば処理水を直接海洋に放出できる可能性も生じ、徒に増加する汚染処理水の容量を低減できる点で注目できる技術であろう。
そこで、これらの説明の事項を図面に示し「実施の形態」を視的に表現した。
(形態:5−1):4号機冷却地下部取水管6本を共沈法反応槽として流用する件
4号炉の復水器地下部分の取水管が2,3号炉と同じであれば[図17]に示すように直径2m,長さ約50m前後と長さ約40m前後の地下取水管部分2本がポンプ1台について付属している事から取水ポンプ3台に対して長さ約40m前後の取水管3本、約50m前後の取水管3本の合計6本在り、4号機限定の、この部分の海水は[0020][表1]の分類に依れば廃液Bに分類される。原子炉が稼働中に停止した1〜3号機の場合には1週間程度で「廃液A」相当の水質に変貌するが、今回の4号炉は停検中であった為、その取水管坑道は清掃されており、比較的キレイでムラサキイガイの残骸も無い事が予想されるから、この部分は外からの放射性核種の混入が無ければ直ちに反応槽として使える。
(形態:5−2):4号機冷却地上部取水管3本を貯水槽、デカンテーション槽、低レベル反応槽として流用する件
4号炉の復水器手前の逆洗弁辺りまでは取水ポンプから地上部にあり、[図17]に示す如く事故直後、取水ポンプが停止すると直径2mの取水管は海に向ってなだらかな勾配になっている為、この中の海水は自然に「ポンプ汲み上げ口」を通じて海洋に放出され空洞になっている筈である。この取水管3本を[図17]に示す簡単な工事によって貯水槽として準備する。
蛇足であるが、1〜3号機の場合は稼働中に停止した為、復水器地下部分と逆先弁を通じて放水路蓋渠が海水レベルと通じており、サイホン効果がある範囲で、復水器地下部分の取水管内部海水も放水口を通じて外洋に放出されると思われる。しかし[図17]から分かるように海面ゼロ(LWL±0)は「放水口蓋渠」の上下中間位置、復水器地下部分取水管の上面位置にある為、サイホン効果で復水器地下部分取水管内の海水が全て排出されずに残留するものと思われる。又それまで生息していたムラサキイガイ、フジツボも当然の事ながら管内に取り残された状態になる。従ってこれら海水と海生生物の両者に含まれるイオウ(S)起源(海生生物は硫黄蛋白、海水は硫酸根)がこの海水の水質を激変させ、有毒な硫化水素ガス発生の起因となる。
[図17]
(形態:5−3):4号機トレンチを反応槽として流用する件:
(A)トレンチ内部の清浄化と反応槽の変身
トレンチ立抗脇に鉛コンテナーで遮蔽されたカラム式吸着塔を設置して、[図16]の吸着法と同様に吸着剤例えばゼオライト、活性化高分子収着剤B(フェルト状、布状等々)、活性化無機収着剤C(セラミックボール、ラシヒリング等々)をカラム内に充填し、トレンチ内の汚染水に含まれる主要な放射性核種であるCs−134、Cs−137を吸着剤に吸着される。低レベルになったトレンチ内の汚染水は貯水槽に移転し、4号機トレンチ内を放射能汚染から浄化し、更に内部にある固定されていないような不要物をできるだけ取り除き、トレンチ内の空間を大きくし、できる限り清浄にして、次に示す付帯設備を設置する。[図16]の「取水管地下部の立抗を利用した吸着槽」と同様に任意の立抗2ケ所を選択し、その間のトレンチ内に移動式フックの付いたワイヤーを設定してモーターを利用してワイヤーを動かし、フックに付けたステンレス製の網目籠を任意に動かすことができるようにする。この籠の内部にフェルト状、スポンジ状の活性化高分子収着剤B、あるいは中空のセラミックボール状の活性化無機収着剤Cを充填できるように加工して将来的にトレンチ内部に高レベル汚染水を入れた場合、上記に示した吸着塔に代えてステンレス製網目籠を移動する事のみで籠内部に充填した収着剤にCs−134,Cs−137を吸着濃縮できるようにする。このようにすればステンレス製籠の往復回数によって除染係数を任意に決定できるようになり、地下における操作によって作業による被曝レベルを低減化できると同時に廃棄物の濃度レベルを任意に選択できる事になり、最終処分法および遮蔽レベルの決定を容易に選択できるシステムを構築できる。
(B)トレンチ立抗を「共沈法反応槽」として応用する件
トレンチ立抗5ケ所の深さ空間を濾過槽空間として利用し、ここで共沈法により発生した凝集剤スカベンジャー沈殿の固液分離操作を行う。方法論は(CC−1)と全く同様である為、詳述はしない。
(C)4号機取水管地上部と4号機トレンチを連結した大型反応槽の件
これは1番大型の反応槽への流用の件であるが、[図18]の拡大図に示した「4号機取水管3号」の地上部分と「立抗A〜立抗E」を結びトレンチの全容を使う大型反応槽への提案である。この構想は大型ではあるが、設備の流用を主体にしている点、設備を熟知している点、設備の弱点の補強による強化が容易な点、安全性を高める為の企画ができる点等々有利な面が多々有り、おまけに設備の新規構築は少なく済む点でコスト的にも有利である。以下にその意図する企画概要を示す。
▲1▼:[図18]4号機「立抗A」と「4号機ポンプC」を直結する。
もし「取水ポンプC」が稼動できる場合は「4号機ポンプCの汲み上げ口」と直結するパイプを立抗Aの中まで延長して、整備する。使用できない場合には新規に適宜な水輸送ポンプを中間に設置すれば良い。
▲2▼:次に「4号機取水管3号の地上部の建屋側」から地上部取水管を「立抗E」まで延長して取水管からの水を「立抗E」の上部から注入できる構造にする。
▲3▼:▲1▼と▲2▼が整備されれば「4号機トレンチ内の水」は「ポンプC」あるいは「新設ポンプ」により汲み上げられ、「4号機取水管3号」を通して「立抗E」近傍まで運ばれ「新しく連結整備した直系2mパイプ」を通して「立抗E」の開口上部から「トレンチ内」に注入される。このように整備すればポンプ容量の選択によりトレンチ内の移流速度が自由に選択する事ができ、例えば「共沈法」を利用する場合は「薬剤の攪拌効果および濃度の均一性効果」が期待され「立抗E」に吊るし濾過用の濾布をセットすれば固液分離が可能になる。又「吸着法」を利用する場合は「立抗E」に吸着塔を設置すれば汚染水の循環により簡単に浄化システムが完成する。又「収着剤」は[図15]から適宜選択できる。尚トレンチを移動する「カーテン式」「籠内収着剤」による吸着浄化方式においては「立抗A〜立抗E」までは「立抗D」にてトレンチ方向が直角に方向転換している為、一直線的な操作はできない。しかし「立抗A〜D」区間と「立抗D〜E」区間に分割すれば容易に応用できる事は自明である。
[図18]
:強熱減量の大きな特殊海底土のセシウム137捕集効果を示す定量図である。 :細粒シルト量の少ない通常の海底土は強熱減量も小さい事を示す定量図である。 :特殊海底土選別手段に参考とするストークス沈降速度の定量図である。 :特殊海底土弁別採取の際に基準とする海底土沈降界面高さの時間依存性を示す図である。 :本発明に用いる弁別された特殊海底土による放射性核種の捕集効果を示す定量図である。 :本発明の活性化高分子収着剤を網目状に構成した示したフェルトに強固に付着させ、これをカーテン状にしてプール内の溶存放射性セシウムを捕集する実施例を示した概念図である。 :本発明の活性化無機収着剤を吸収塔充填剤に強固に付着させ、水溶液を循環させる事で、溶存する放射性セシウムを捕集する実施例を示した概念図である。 :1ツは口径の異なる2重の穴あきパイプの間隙に本発明の活性化高分子収着剤或いは活性化無機収着剤を詰め、雨水によって土壌中から移流した溶存放射性セシウムを捕集して、土壌中の放射性セシウムを低減化する実施例を示した概念図である。他の1ツは本発明の活性化高分子収着剤を強固に付着させたフェルトを湿潤にした土壌表面に敷き詰め、その上から道路工事用のローラーにて圧着する事で土壌中放射性セシウムを低減化する実施例を示した概念図である。 :(a)は本発明の活性化高分子収着剤或いは活性化無機収着剤を土壌、焼却灰、稲藁等の放射性汚染固体と共にミキサー車に混在させ、攪拌、撹乱させる事で放射性汚染固体中から放射性セシウムを低減化する実施例を示した概念図である。(b)は(a)の場合よりも量的に多量の場合の例で、キルン等により大型化した実施例を示した概念図である。 :本発明による活性化高分子収着剤或いは活性化無機収着剤を比較的少量の放射性汚染のある溶液と共に洗濯機に混在させ、これを撹乱、攪拌する事により溶存放射性セシウムの低減化を計る実施例の概念図である。尚比較的少量の放射性汚染固体の場合には洗濯乾燥機の応用も考えられる。 :極めて少量溶存している海水中の放射性コバルト(Co−60)を捕集して計測可能にした分析例を示すフロー図であるが、これにより海水1000lに溶存している0.1μCi/1000l濃度のコバルト60(Co−60)を捕集可能にした例である。 :本発明の吊るし濾過法を図示したものであるが、有機凝集剤の添加により沈殿サイズを大きくして濾別するとプランクトンネット等の粗い網目(60〜100mesh)に依っても固液分離が可能となる事を示した概念図である. :第7回世界放射線防護協議会集会(IRPA7)で発表されている原子力発電所におけるランドリードレン活性炭吸着塔による放射性核種の除染係数を示した定量図である。 :同じく、IRPA7にて発表されているランドリードレン及びフロアドレン中の放射性核種の形態別構成比を示した円形図である。 :高レベル汚染海水中に含まれる可溶性Cs−134及びCs−137の補集法に関連した本発明の関与事項を示したフロー図で、共沈法及び吸着法共に、その応用例は多種多用である。 :図−15に示した本発明による共沈法及び吸着法による補集法を具体的に適用する場合の実施例を示した概念図である。 :本発明を原子力発電所の超高レベル、超大量汚染海水に適用する際に必要とされる大容量反応タンク及び貯留水タンクを冷却水取放水管から製造する方法を示した概念図である。 :本発明を原子力発電所の超高レベル、超大量汚染海水に適用する際に必要とされる超大容量反応タンクを冷却水取放水管とトレンチを連結する事により製造する方法を示した概念図である。

Claims (16)

  1. 天然スカベンジャー(清掃人=除染剤)としての有機シルトを用いた放射能汚染海水から放射性核種(以後“Ri”と言う)を除染・浄化・低減化する方法に関する。
    “Ri”に汚染された海水の除染・浄化・低減化の方法として共沈法と吸着法があるが、共沈法において海洋の湾奥に存在する粒径65〜75μm以下のシルト含量が80%〜90%以上にも及ぶヘドロ状の黒色海底土から得られる有機シルトを“Ri”(Co−60,Mn−54,Cs−134,Cs−137等)の凝結剤として使用する。この際用いる有機シルトの製造方法は採取したヘドロ状黒色海底土の沈殿からストークスの原理を応用して海底土沈殿を海水中で攪拌した懸濁液から経過時間差により65〜75μm以下の粒径を持つ有機シルトを弁別分類採取して製造する。これら弁別して製造した有機シルトを“Ri”を含む汚染海水に加えて、これに共沈させ、分離して汚染海水から“Ri”を除染・浄化・低減化する方法である。尚65〜75μm以下の有機シルトを単独あるいはセシウムの選択的吸収剤を付加した補強シルトをスカベンジャー(清掃人=除染剤)として使用し、凝結補強剤として水酸化第2鉄、また凝集補強剤として有機高分子凝集剤を使用し、“Ri”を固液分離法により母液から除去するような発展的放射性廃液の水処理法等も本(請求項1)の権利を妨げるものではない。この際使用するシルトは当該サイト近傍の港湾例えば、サイトの取水湾内、近傍の火力発電所取水湾および近隣の漁港湾内の海底土から通常の方法にて得られる。
  2. 大事故によって原子炉が停止した際に、復水器地下部取水管内に硫黄パクテリアによって水質が激変した硫黄イオン豊富な海水廃液が生成する。この水質が激変した海水そのものをスカベンジャーとして用いて汚染海水中の放射性核種(以後“Ri”と言う)を除染・浄化・低減化する方法に関する。
    原子力発電所が稼動中に停止すると復水器地下部分の取水管内で、そこに棲息していたムラサキイガイ等海生生物が死滅して、腐敗する事によって肉質有機物は酸化され、硫黄蛋白は硫酸イオンに酸化される。それと同時に海水中の酸素は激減するから、当然貧酸素状態の嫌気的海水になる。この状態ではスルフォビブリオ・ディサルファリカンツ等々の嫌気的硫黄バクテリアが繁殖を始め、特に水温が25℃を超えてくると猛烈に繁殖し硫黄蛋白から変質した硫酸イオンおよび海水中の賦存の硫酸イオンを硫黄イオンに還元する。海水中に陽イオンが無くなると、これらが水素イオンと反応して、気相中にガス状になって硫化水素として出てくるので注意が肝心である。勿論生物反応であるから、この際にはメタンガス、炭酸ガスも同時に発生している事は言うまでも無い。
    例えば、今回の大事故時に稼働中の1〜3号機の復水器地下部取水管においても同様の現象が起こっていた筈で、海水の水質は激変して亜硫酸イオン、硫黄イオン、チオ硫酸イオン等のマイナス荷電の豊富な還元的海水に変貌する。この海水廃液を“廃液(A)”と定義する。他方、この作用を受けずに、他の場所に大量に存在する好気的汚染海水廃液を“廃液(B)”と定義する。これらは静電的に相互に正逆性を持つ事から廃液(A)と廃液(B)を混合する事により中和され、海水中に含まれる鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、他の陽イオン(+M)は硫化物、水酸化物を生成し、海水中に超高レベルで存在する“Ri”(Cs,Co,Mn,etc.)を同伴して沈殿し、共沈物として固形化する。これら固形化された“Ri”は直接的な濾過或いは、更に有機凝集剤を添加して沈殿を大きくしてから濾過する方法で固液分離する事ができる。この事により“Ri”を“廃液(A)”、“廃液(B)”から徐去する事で浄化して汚染海水中の“Ri”濃度の低減化が可能となる。
  3. 放射性核種(以後“Ri”と言う)に対してスカベンジャーとして作用する凝結剤、凝集剤を活性化剤により安定的に担体に付着させ、全体として“Ri”の収着物として製造し、これにより放射能汚染物体或いは放射能汚染水を除染・浄化・低減化する方法に関する。
    本発明での活性化剤の開発により最終的な“Ri”収着物は形状、大きさ、性状が多種多様な形態として多数存在する事になるが、その形態には拘泥する事無く、本特許で示す活性化剤によって“Ri”の収着機能を発生させる場合は本「請求項3」の権利を妨げるものではない。
    下記に「(1):活性剤の開発」「(2):活性剤によるスカベンジャー収着の多様性」「(3):全体としての活性化収着材による放射能の除染・浄化・低減化機能の向上」等についての推移、状況等を説明している。ただしこの事により「請求項3」の権利を妨げられる事は無い。
    (1):“Riスカベンジャー”を保持担体に強固に収着させる物質(活性剤)の開発!!除染・浄化・低減化の方法論としては大別して「共沈法」と「吸着法」がある。そのうち「吸着法」に付いては“Ri”を捕捉する物質を捕捉する担体の開発を試みて多種類の物質を発見した。“Ri”を良く補足する化学物質(以後“Riスカベンジャー”と言う)は種々あるが、水溶性か超微粒子(ナノ物質)で水溶液中から分離する事は難しい。また“Riスカベンジャー”を保持する物体(以後“担体”と言う)の表面に付着させる事ができたとしても水溶液中では溶解或いは離脱して“担体”上に安定して存在しない。本発明は、この水移行性物質である“Riスカベンジャー”を多種多様な形態の“担体”に安定した状態で吸収・吸着(以後“収着”と言う)させる物質(以後“活性化剤”と言う)を新たに発見した。
    (2):活性剤の開発により多種多様な形態物質に“Riスカベンジャー”の収着が可能この事により多種多様な形態、例えばフェルト状、布状、網目状の担体(繊維状高分子材等)。球状、ハニカム状、板状等の担体(セラミツク無機材等)。粒状、粉状の担体(有機高分子材等)。等々に“Riスカベンジャー”を安定的に“収着”させた担体(以後“活性化収着材”と言う)を多種多様に製造する事ができた。これらの多種多様な“活性化収着材”は“Ri”を捕捉できるので放射能の除染、浄化、低減化に広く応用が可能になった。尚上記“活性化収着材”のうち「活性化有機収着材」と「活性化無機収着材」の粒状、粉状物質は他の方法論「共沈法」の新規開発スカベンジャーとしても利用が可能である。
    (3):多種多様な形態の“活性化収着材”で除染・浄化・低減化が可能!!
    上記(2)の成功により、現在進行形の浄化の諸問題「超大量、超高レベルの廃液レベルの浄化処理」、「意図せずに漏出した場合の高レベル廃液をできるだけ拡散する前の初期的段階で浄化する例えば、「取水路開渠」における浄化処理」、「風下側拡散領域における当該周辺環境の建屋、土壌、水系における浄化処理」に対する有効な手段を呈示しているのみならず、将来的に発生するであろう原子力発電所内の建屋内外、施設、設備、機器類等々の除染の方法論、および廃炉に伴って発生する放射性核種汚染物の除染方法、等々についても広範にわたって利用価値が甚大となり、その供給が希求される事になる。
  4. 「共沈法」における固液分離の為の濾過法において電源を全く使用しないPassive Typeの「吊し濾過法」による濾過方法に関する。以下にこの濾過法に至った推移、状況を示すが、この事により、本「請求項4」の権利は妨げられない。
    通常無機化学分析において「時間」を憂慮する操作は沈殿の固液分離である。沈殿粒子が超微細である場合は固体と液体の分離は困難となり、遂には諦める事すらある。今回の事故で発生した超高レベル、超大量の放射性核種(以後“Ri”と言う)を含む汚染廃液の固液分離においても当該スカベンジャーは水酸化鉄、水酸化アルミニウムが有効である。必然的に、これら凝結剤のみによる固液分離においては難儀な事を予想し、化学分析経験者なら誰もが「有機凝集剤」の添加によって沈殿個体をフロック状態に大きくして分離を試みる事を考える。この様にすると固液分離には網目の微細な濾紙を使わなくても、粗い網目のプランクトンネット(60〜100mesh)等の使用が可能となる。
    そこで被曝線量の低減化を考慮できる事、また電源使用による複雑回路による電気的トラブル、機械的トラブル、濾過装置トラブル等を回避できる事から、より原始的ではあるが、電源を全く使用せず、自然重力のみによるPassive Typeの、プランクトンネット濾過方法を応用して「吊し濾過法」を構築した。具体的には高分子凝集剤添加により微細沈殿をフロック化し、沈殿粒子の巨大集合体を生成させる事で、適宜な網目を持つ濾布例えば、60〜100メッシュのプランクトンネット等で覆い、包み、吊す事のみで濾別が簡単、単純に行える。約半日程の時間で雫の落ちない、湿潤沈殿を得る事ができるが、操作が簡単な為、濾過固体数を多くする事で、吊るし時間分の長さの欠点をカバーできる極めて単純で簡単な方法である。この方法により、既に海水1000l中Co−60分析方法において実施して体験しており、その減容率(QRF)は(4〜8)×10−4で注目に値する。今回のような大事故時において超高レベル、超大量廃液の共沈法における固液分離法には、有機凝集剤の併用による、この「吊し濾過法」の応用・適用が有効である事を惹起した。
  5. 回転機器内で「請求項3」で製造した収着材を放射性核種含有物と混合し、少々の水を噴霧、添加する事で湿澗状態にしたり、或いは溶液中で、これら全体を回転させる事によって固体から固体への放射性核種移行を促進し、放射性核種含有物からその保持する放射能を低減化せしめる手法に関する。回転体としてはロータリーキルン、コンクリートミキサー、洗濯機、洗濯機の乾燥機等々考えられるが、本特許「請求項5亅はそれら回転体の機種によって権利は妨げられない。
  6. 流体が流れるカラム方式、流体が通過する透過性パイプ方式、或いは流体中を移動する方式等々において「請求項3」で定めた収着物或いは他の収着物を存在せしめ、その中、或いは近傍、或いは表面を通る放射性核種を含む溶液を通過させる事によって、その溶液中の放射能を低減化させる手法に関する。ただし収着材を存在せしめる方法は多種多様あるが、その存在方法および形態の違いにより「請求項6」は、その権利を妨げられない。
  7. 「請求項3」で作成したフェルト状、布状の収着物を放射性核種の除染・浄化・低減化の為にスミヤ法的に使い汚染物体表面を低放射能に低減化する方法に関する。
  8. 「請求項3」で作成した粒状、粉体状の収着物を放射能に汚染されている物体(動物、植物、人間等を問わない)に作用(噴射、コスリ付け、混在等々により接触させる事)させ、その物体中あるいは表面の放射能を低減化せしめ、低レベルの物体に変貌、調整、製造する方法に関する。
  9. 「請求項3」で作成した粒状、粉体状物を人間を含む動物に与え摂取せしめ、体内に存在する放射性核種を早期に体外に排出せしめる促進剤として作用させる方法に関する。
  10. 「請求項3」で作成した収着物を使用して放射能に汚染されている物体から放射能を低減化せしめ、低レベルの物体に変貌、製造、調整する方法全般に関する。
  11. 超大量の超高レベル放射性廃液の水処理で第一に注意するのが被曝防止の為の放射線遮蔽である。この為に地下に埋設され、しかもムラサキイガイを剥離駆除された地下部分の大口径取水管は容量的に約100トン容量の海水を貯留できる格好の溶液空間となる。この溶液空間は地表面からすれば土壌遮蔽および距離的遮蔽により被曝低減も可能である事から、この大口径取水管を固液分離の水処理反応槽として流用する水処理システムの方法に関する。
    例えば、4号機冷却取水管地下部分はムラサキイガイの貝殻の積層も無く、比較的キレイである事および他の1〜3号機に比較して放射能レベルが低い事から直径2m、長さ55〜76m、約176〜239mの容量を活かして、これを利用する反応槽とする(随時他の取水管も空になったら利用する)。
  12. 4号炉の冷却水取水管は復水器手前の逆洗弁辺りまでは取水ポンプから地上部にあり、停検時に原子炉を停止し、取水ポンプが停止すると直径2mの取水管は海に向ってなだらかな勾配になっている為、この中の海水は自然に「ポンプ汲み上げ口」を通じて海洋に放出され空洞になっている筈である。この取水管3本を簡単な工事によって貯水槽或いはデカンテーション槽として流用する水処理システムの方法に関する。
    4号機地上取水管は地表面に沿って配管されている為、超高レベル放射性廃液を入れる反応槽としては被曝を考えれば流用できない。しかし汚染除去処理後の放射能レベルが低くなった廃液については被曝線量を考慮せずに済む事から、これら3本の空間容量(地下部取水管より長いので容量も大きくなる)を利用して処理後の貯水槽あるいはデカンテーション槽として利用する。ただし入口も出口も開放状態なので入口、出口位置を決めたら、夫々取水管の上部から穴を開け、そこに超大型の風船2個をいれ、穴の直下位置を中心に、それぞれを1m以上離して設置する。勿論風船はテントで使用するような頑強な布で被覆補強されたものを使うが、これに圧搾空気を入れる事で穴の直下分に空間のある風船隔壁ができる。次いで穴の直下にできた空間に水ガラスセメント等強力充填剤を注入すれば即席で強固なセメント隔離壁ができる。セメントが固化したら内側風船の更に内側の適宜な位置、例えば穴中心から2.5m以上の位置に溶液の出入り口用の穴を更に1個開ける。第2の穴ができたら、隔壁になっている風船を撤去すると同時に蓋を設置して、貯水タンクとして機能するように例えば円周部に接着剤補強するとか、蓋にバルブを取り付けて動力による取水、放水ができるように工夫する。これと同じ造作を他の一方の他端位置にも施し、出口と入口の対を完成させる。ただし、ここに示した製造方法の例は(請求項11)の権利を妨げるものではない。
  13. Aサイトでは希ガスホールドアップタンクとして鋼鉄製の円筒(直径3m、高さ8m)を13連にして使用している。これらタンクの内容物である活性炭を外部に取り出し、空になったタンクを固液分離の水処理過程で必要になる例えば、「貯水槽」あるいは「デカンテーション槽」等として流用するような水処理システムの方法に関する。
    Aサイトの希ガスホールドアップタンクの内部に活性炭を充填し、この直列円筒に核分裂時に発生する希ガスを空気キャリヤーで搬送通過させるシステムになっている。このシステムの注入口では空気と希ガスは均一な混合状態になっているが、空気キャリヤーがシステム出口から排出される頃になっても、活性炭に分配され遅延効果の大きい希ガスは活性炭円筒の半ば位置にある。この遅延希ガスがシステム出口に達するのは空気キャリヤーが排出されてから約一ヵ月後になり、この遅延時間により半減期の短い希ガスの殆どは崩壊消滅し安定元素に変換されている。これが希ガスホールドアップタンク(以後“施設タンク”と言う)の原理である。これらのタンクの空間容量を流用して吸着槽およびデカンテーション槽として使うことができる。希ガスホールドアップ施設(以後“施設”と言う)は事故後1ケ月以上経過しているので、施設に注入した希ガスの殆どは半減期により消滅していると判断されるので、希ガスによる被曝は考える必要はない。現在使用されていない1〜4号機用の“施設タンク”は多数あり、例えば(請求項10)で示した流用水処理反応槽の容量239mを満足する為には、タンク仕様を直径3mΦ、高さ8mと仮定すると、1基当り容量は約56.5mで、5基を直列および並列にすることで、約283mの容量を確保できる。5基を直列にして吸着槽とし、5基を並列にしてデカンテーション槽として流用する等多様な対応ができる。ただし「タンク」の発想はAサイトからの類推であるが、モジュールタイプの場合は別途新規製造した100〜120tonの空タンクを使い、容量は適宜定めればよい。
    ただしここで示した流用の例は(請求項12)の権利を妨げるものではない。
  14. 4号機トレンチを反応槽として流用する水処理システムの方法に関する。ただし、以下に述べる対処方法により(請求項14)の権利は妨げられない。
    各号機のトレンチの形状は様々であるが、4号機は定検中であった事から、原子炉内に燃料は無く、その破損による放射能汚染の寄与が少ない為、トレンチ内放射能レベルは1〜3号機トレンチに比較して低く、またトレンチの中間箇所に立杭が5ケ所在る。これらトレンチ空間およびトレンチ立杭深さ空間を水処理システムに流用した有効な水処理法を想定している。
    (1)トレンチ空間を流用する件:
    トレンチ立抗脇に鉛コンテナーで遮蔽されたカラム式吸着塔を設置して、(請求項6)の吸着法と同様に吸着剤例えばゼオライト、活性化高分子収着剤B(フェルト状、布状等々)、活性化無機収着剤C(セラミックボール、ラシヒリング等々)をカラム内に充填し、トレンチ内の汚染水に含まれる主要な放射性核種であるCs−134、Cs−137を吸着剤に吸着される。低レベルになったトレンチ内の汚染水は貯水槽に移転し、4号機トレンチ内を放射能汚染から浄化し、更に内部にある固定されていないような不要物をできるだけ取り除き、トレンチ内の空間を大きくし、できる限り清浄にして、次に示す付帯設備を設置する。任意の立抗2ケ所を選択し、その間のトレンチ内に移動式フックの付いたワイヤーを設定してモーターを利用してワイヤーを動かし、フックに付けたステンレス製の網目籠を任意に動かすことができるようにする。この籠の内部にフェルト状、スポンジ状の活性化高分子収着剤B、あるいは中空のセラミックボール状の活性化無機収着剤Cを充填できるように加工して将来的にトレンチ内部に高レベル汚染水を入れた場合、上記に示した吸着塔に代えてステンレス製網目籠を移動する事のみで籠内部に充填した収着剤にCs−134,Cs−137を吸着濃縮できるようにする。このようにすればステンレス製籠の往復回数によって除染係数を任意に決定できるようになり、地下における操作によって作業による被曝レベルを低減化できると同時に廃棄物の濃度レベルを任意に選択できる事になり、最終処分法および遮蔽レベルの決定を容易に選択できるシステムを構築できる。
    (2)「共沈法反応槽」としてトレンチ立抗を流用する件:
    トレンチ立抗5ケ所の深さ空間を濾過槽空間として利用し、ここで共沈法により発生した凝集剤スカベンジャー沈殿の固液分離操作を行う。
  15. これは1番大型の反応槽への流用の件であるが、「4号機取水管3号(3本のうち1番南側の取水管)」の地上部分と「立抗A(1番海側)〜立抗E(1番建屋側)」を結び取水管とトレンチの全容を使う大型反応槽として流用した水処理システムの方法に関する。この構想は大型ではあるが、設備の流用を主体にしている点、設備を熟知している点、設備の弱点の補強による強化が容易な点、安全性を高める為の企画ができる点等々有利な面が多々有り、おまけに設備の新規構築は少なく済む点でコスト的にも有利である。以下にその意図する概要を示す。
    ▲1▼:4号機「立抗A」と「4号機ポンプC(1番南側)」を直結する。
    もし「取水ポンプC」が稼動できる場合は「4号機ポンプCの汲み上げ口」と直結するパイプを立抗Aの中間〜底面まで延長して、整備する。使用できない場合には新規に適宜な水輸送ポンプを中間に設置すれば良い。
    ▲2▼:次に「4号機取水管3号(1番南側)の地上部の建屋側」から地上部取水管を「立抗E(1番建屋側)」まで延長して取水管からの水を「立抗E」の上部から注入できる構造にする。
    ▲3▼:▲1▼と▲2▼が整備されれば「4号機トレンチ内の水」は「ポンプC」あるいは「新設ポンプ」により汲み上げられ、「4号機取水管3号」を通して「立抗E」近傍まで運ばれ「新しく連結整備した直系2mパイプ」を通して「立抗E」の開口上部から「トレンチ内」に注入される。このように整備すればポンプ容量の選択によりトレンチ内の移流速度が自由に選択する事ができ、例えば「共沈法」を利用する場合は「薬剤の攪拌効果および濃度の均一性効果」が期待され「立抗E」に吊るし濾過用の濾布をセットすれば固液分離が可能になる。又「吸着法」を利用する場合は「立抗E」に吸着塔を設置すれば汚染水の循環により簡単に浄化システムが完成する。又「収着剤」は適宜選択できる。尚トレンチを移動する「カーテン式」「籠内収着剤」による吸着浄化方式においては「立抗A〜立抗E」までは「立抗D」にてトレンチ方向が直角に方向転換している為、一直線的な操作はできない。しかし「立抗A〜D」区間と「立抗D〜E」区間に分割すれば容易に応用できる事は自明である。上記に示した具体的な例示は(請求項15)の権利を妨げるものではない。
  16. [請求項13]で示した希ガスホールドアップタンクには活性炭が充填されているので、この活性炭充填のまま、カラム式タンクに「真水および沸騰水」を注入する事で廃液中の放射性ヨウ素、放射性セシゥムおよびその他放射性核種を吸着できるように活性化して、吸着槽として流用する水処理システムの方法に関する。ただし活性炭の活性化法およびその使用方法の違いによる(請求項16)の権利は妨げられない。
    除染効果向上の為、“施設タンク”内部に大量に保存されている活性炭および薬剤修飾された活性炭を活用する。特にヨウ素131(I−131)およびルテニウム107(Ru−107)の吸着および薬剤付着によるセシウム134(Cs−134)、セシウム−137(Cs−137)の吸着により、除染係数の大幅向上を目指す。この活性炭除染過程は先に定義した「廃液A」内に多量に存在する有機コロイドがあるような場合、それにより吸着妨害が考えられるので、このような場合は、直接分離にこの流用システムを使う事はせずに、凝集剤による固液分離の初段プロセス施工後の後段プロセスとして位置付けて使い、除染係数の大幅向上を目指す。第一段プロセスで例えばCs−134,Cs−137の大部分が除去されれば、その後段においてはCsに対して極めて選択性は高いが、高価で使用不可であったような高吸着性、高選択性の薬剤についても、その使用が少量で限定的になる事から適用が可能となる。例えば前述したセシウムに対する凝結剤Fの使用が可能となり、より一層の除染係数の大幅向上が期待できる。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013079839A (ja) * 2011-10-03 2013-05-02 Kanematsu Nnk Corp 放射性物質回収装置及び回収工法
JP2013234954A (ja) * 2012-05-10 2013-11-21 Makino:Kk 汚染土壌の除染プラント及び除染方法
CN110364280A (zh) * 2019-06-20 2019-10-22 中国辐射防护研究院 一种放射性废树脂芬顿氧化废液的高效吸附处理方法
CN111681798A (zh) * 2020-04-30 2020-09-18 中国辐射防护研究院 一种小型核设施退役现场放射性废水处理装置

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