JP2013066465A - 植物の貯蔵タンパク質の集積に関与する遺伝子およびその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、新規な植物の種子貯蔵タンパク質集積関連遺伝子を提供することにある。また、本発明は、該遺伝子を利用して植物の種子貯蔵タンパク質組成を改変し、これにより植物の種子成分の特性を改変することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、植物の貯蔵タンパク質の集積に関与する遺伝子を特定した。本発明は、ポリヌクレオチドを機能可能に有し、貯蔵タンパク質を貯蔵型液胞に集積する植物において該ポリヌクレオチドを機能不能とすることにより、貯蔵タンパク質の集積性が改変された植物を生産する方法を提供する。貯蔵タンパク質は、好ましくはグルテリンである。本発明は、イネ、大豆、エンバク、カボチャ、またはシロイヌナズナ等に適用することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、植物の種子貯蔵タンパク質の集積に関与する遺伝子および該遺伝子を利用した植物の種子貯蔵タンパク質の改変に関する。植物の種子貯蔵タンパク質の改変は、植物の品種改良などの分野並びに米粉の加工特性の改良において有用である。
イネ種子貯蔵タンパク質グルテリンは、全貯蔵タンパク質の約60%を占める消化の良いタンパク質である。しかし、米は他の植物に比べて必須アミノ酸であるリジン、トリプトファンの含有量が低い(栄養と栄養素の大事典 http://www.fjkw33.com/eiyou/e32-3.html)。米のリジン含有量を増加させるために、マメタンパク質であるファゼオリンをイネ種子内に発現させる研究も試みられたが(非特許文献1)、その蓄積効率は低い。また、糖尿病患者にはグルテリン含量が少ないコメが適しているため、グルテリン含量が低いコメの育成が要求されている。低グルテリン米の育成が試みられているが、その原因遺伝子等の詳細は明らかとなっていない。
イネグルテリンは小胞体上で前駆体として合成され、その後、ゴルジ体を経由し、貯蔵型液胞へと輸送される。貯蔵型液胞内で、2つのサブユニットに開裂し、成熟型グルテリンとして蓄積する。glup6glutelin precursor 6)突然変異体(非特許文献2および3)は野生型と比べてグルテリン前駆体を多く集積し、成熟型グルテリンの蓄積量が減少する。GLUP6遺伝子は、染色体3に座乗することがすでに明らかとなっている(非特許文献4)が、未だ同定されていない。
一方、シロイヌナズナにおいて、GEF(GEF:Guanine nucleotide Exchange Factor)は異なる2種のRab5の活性化を制御することが知られている(非特許文献5)。また、Rab5ファミリーであるRha1はタバコの葉の上皮細胞において、ゴルジ体に局在し、液胞輸送に関与している(非特許文献6)。しかしながら、イネ胚乳においてグルテリン前駆体の細胞内輸送にGEFがどのように関与するのかは不明である。
Zheng, Z., Sumi, K., Tanaka, K., and Murai, N. Plant Physiol. 109, 777-786 (1995) Tian, H.D., Kumamaru, T., and Satoh, H. Rice Genet. Newslet. 18, 48-50 (2001) Ueda, Y., Satoh-Cruz, M., Matsusaka, H., Takemoto-Kuno, Y., Fukuda, M., Okita, T.W., Ogawa, M., Satoh, H., and Kumamaru, T. Breed Sci. 60, 568-574 (2010) Sato et al. Rice Genetics Newsletter 20: 43-45 (2003) Goh, T., Uchida, W., Arakawa, S., Ito, E., Dainobu, T., Ebine, K., Takeuchi, M., Sato, K., Ueda, T., and Nakano, A. Plant Cell 19, 3504-3515 (2007) Kotzer, A.M., Brandizzi, F., Neumann, U., Paris, N., Moore, I., and Hawes, C. J. Cell Sci. 117, 6377-6389 (2004)
glup6はグルテリン前駆体の貯蔵型液胞への輸送に関与する因子であることが予想される。本発明の目的は、新規な植物の種子貯蔵タンパク質集積関連遺伝子を提供することにある。また、本発明は、該遺伝子を利用して植物の種子貯蔵タンパク質組成を改変し、これにより植物の種子成分の特性を改変することを目的とする。
本発明者等は、植物の中でも、種子成分を改変する簡便な方法の開発が望まれているイネに着目し、なかでも栄養学的に良好である貯蔵タンパク質グルテリンの集積に関与する遺伝子を単離すべく鋭意研究を行った。そして、その遺伝子を単離することに成功したとともに、当該遺伝子を利用して植物の貯蔵タンパク質の組成を改変させることが可能であることを見いだし、本発明を完成した。
本発明は、以下を提供する。
[1]下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、または(f)のポリヌクレオチドを機能可能に有し、貯蔵タンパク質を貯蔵型液胞に集積する植物において該ポリヌクレオチドを機能不能とすることにより、貯蔵タンパク質の集積性が改変された植物を生産する方法:
(a)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 11またはSEQ ID NO: 12に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 11またはSEQ ID NO: 12に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ貯蔵タンパク質を貯蔵型液胞に集積する機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 11またはSEQ ID NO: 12に記載の塩基配列と少なくとも90%の同一性を有し、かつ貯蔵タンパク質を貯蔵型液胞に集積する機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(d)SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 6に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド;
(e)SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 6に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換、付加および/または挿入したアミノ酸配列からなり、かつ貯蔵タンパク質を貯蔵型液胞に集積する機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(f)SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 6に記載のアミノ酸配列と少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ貯蔵タンパク質を貯蔵型液胞に集積する機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
[2][1]に定義された(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、または(f)のポリヌクレオチドが機能不能である植物へ、[1]に定義された(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、または(f)のポリヌクレオチドを導入することにより、貯蔵タンパク質の集積性が改変された植物を生産する方法。
[3]貯蔵タンパク質が、グルテリンである、[1]または[2]に記載の生産方法。
[4][1]に定義したポリヌクレオチドを含むベクター、またはSEQ ID NO: 7またはSEQ ID NO: 9の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含むベクターを用いて形質転換された、形質転換植物またはその子孫。
[5]植物が、イネ、大豆、エンバク、カボチャ、またはシロイヌナズナである、[4]に記載の形質転換植物またはその子孫。
[6][1]〜[3]のいずれか1項に記載の生産方法により得られた植物より得られる、または[4]または[5]に記載の植物若しくはその子孫より得られる、収穫物、繁殖材料または加工品。
本発明により、貯蔵タンパク質の集積に関与するGLUP6-GEF遺伝子が提供された。
本発明の遺伝子は植物種子の細胞内輸送に関与する。この遺伝子の発現や機能を調節することにより、種子中の成熟型グルテリンの集積量を調節することができる。このため、本発明の遺伝子は成熟型グルテリンの量が減少したイネの品種育成に有用である。従来、イネの品種改良は(1)交雑による有望系統の選抜、(2)放射線や化学物質による突然変異誘起などによって行われてきた。これらの作業は長期間を要することや変異の程度や方向性を制御できないことなどの問題があった。本発明の遺伝子を用いるイネの品種育成は、短期間で高い確実性をもって目的の植物体を得ることができる点で、従来の方法より有利である。
本発明により、品種の選抜、検査が容易・迅速にできるようになった。glup6変異体を交配母本に用い、その交雑後代からglup6型を選抜する際に、変異部位の塩基配列から作製したDNA多型マーカーを用いて、幼苗期にglup6型を効率的に選抜することが可能となった。さらに、GLUP6-GEF遺伝子が特定されたことにより、glup6に関する他のアミノ酸置換変異体やアミノ酸欠損変異体をTilling法を用いて選抜することが可能となった。
図1は、glup6変異の完熟種子のSDS-PAGEおよびグルテリン抗体を用いたウエスタンブロット分析結果を示す図を示す。用いた試料は、A:野生型(台中65号)、B:EM939(glup6変異体)、C:EM1327(glup6変異体)である。左図は、野生型とglup6変異体の種子貯蔵タンパク質のSDS-PAGE像を示す。右図は抗グルテリン抗体を用いたウエスタンブロッティング解析結果である。 図2は、GLUP6遺伝子の高密度連鎖地図および候補ゲノム領域を示す図を示す。GLUP6遺伝子連鎖地図をRFLP、STS、CAPSマーカーを用いて構築した。連鎖地図の上部にマーカー名と括弧内に染色体短腕末端からの遺伝距離を、地図の下部に各マーカーにおける組換え個体数を示す。OJナンバーは日本晴由来のBACクローンを示す。AとBはそれぞれ41個と234個のglup6ホモ個体を用いて構築した連鎖地図を、CはGLUP6遺伝子の候補領域内に整列化したBACクローンの物理地図とBACクローン内に作製したマーカーによって1122個の集団を用いて構築した連鎖地図を、Dは候補領域内における予測遺伝子を矢印で示す。AからDの両矢印はGLUP6遺伝子の候補領域を示す。C169、R216:CAPSマーカー;E50818、R10784、C53358、R10784、C63279:STSマーカー;R4996:不明。 図3は、GLUP6遺伝子のコーディング配列の塩基配列の比較を示す。 図3は、GLUP6遺伝子のコーディング配列の塩基配列の比較を示す。 図3は、GLUP6遺伝子のコーディング配列の塩基配列の比較を示す。 図3は、GLUP6遺伝子のコーディング配列の塩基配列の比較を示す。 図3は、GLUP6遺伝子のコーディング配列の塩基配列の比較を示す。図3〜図5において、配列の下の星印(*)は共通する配列を、配列の下のピリオド(.)は変異部位を示す。glup6変異系統「EM939」、「EM1327」とそれらの原品種「台中65号」並びに「日本晴」のGLUP6候補遺伝子の塩基配列を解析した結果を示す(SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 9)。その結果、予測遺伝子の一つにglup6変異体2系統ともに一塩基置換が認められた。配列の下の星印(*)は共通する配列を示す。「EM939」と「EM1327」はそれぞれ、C418がTに、そしてC784がTに、それぞれ置換されていることが示された。814番目と927番目の塩基の下線は「日本晴」と「台中65号」との間の多型を示す。日本晴:Os03g0262900のゲノム塩基配列の内のコーディング配列、JO3309P13:cDNAクローンJO3309P13の塩基配列(イントロンを除く。)、cDNA:台中65号の種子から抽出したmRNAを逆転写した1本鎖cDNAを鋳型として、GLUP6-GEF特異的プライマーによって増幅したcDNAの塩基配列、台中65号:台中65号の当該遺伝子のゲノムDNAの内のコーディング配列、EM939:EM939の当該遺伝子のゲノムDNAの内のコーディング配列、EM1327:EM1327の当該遺伝子のゲノムDNAの内のコーディング配列をそれぞれ示す。 図4は、GLUP6遺伝子のゲノムDNAの塩基配列の比較を示す。 図4は、GLUP6遺伝子のゲノムDNAの塩基配列の比較を示す。 図4は、GLUP6遺伝子のゲノムDNAの塩基配列の比較を示す。 図4は、GLUP6遺伝子のゲノムDNAの塩基配列の比較を示す。 図4は、GLUP6遺伝子のゲノムDNAの塩基配列の比較を示す。 図4は、GLUP6遺伝子のゲノムDNAの塩基配列の比較を示す。 図4は、GLUP6遺伝子のゲノムDNAの塩基配列の比較を示す。 図4は、GLUP6遺伝子のゲノムDNAの塩基配列の比較を示す。 図4は、GLUP6遺伝子のゲノムDNAの塩基配列の比較を示す。 図4は、GLUP6遺伝子のゲノムDNAの塩基配列の比較を示す。glup6変異系統「EM939」、「EM1327」とそれらの原品種「台中65号」並びに「日本晴」のGLUP6候補遺伝子のゲノムDNAの塩基配列を示す(SEQ ID NO: 11〜SEQ ID NO: 14)。配列の下の星印(*)は共通する配列を示す。 図5は、cDNAクローンJO3309P13の塩基配列(イントロンを含む)を示す。 図6は、GEFタンパク質のアミノ酸配列の比較を示す図である。glup6変異系統「EM939」、「EM1327」とそれらの原品種「台中65号」並びに「日本晴」のGLUP6候補遺伝子から推定したアミノ酸配列を示す(SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 8、およびSEQ ID NO: 10)。配列の下の星印(*)は共通する配列を、バー(-)は欠失部位を、そして配列の下のピリオド(.)は変異部位を示す。「EM939」と「EM1327」のそれぞれ140番目と262番目の「−」は各系統の突然変異による終止コドンの形成を示す。272番目のアミノ酸の下線は「日本晴」と「台中65号」との間の多型を示す。「日本晴」、「台中65号」、「EM939」、「EM1327」はゲノム塩基配列から推定したアミノ酸配列を、「cDNA」は「台中65号」の登熟種子から抽出したmRNAから逆転写した当該遺伝子のcDNAの塩基配列から推定したアミノ酸配列を示す。 図7は、glup6変異体をGFP-GEF遺伝子によって形質転換した相補性検定結果を示す図である。具体的には、「EM939」にGEFプロモーターで発現するように設計されたGEFのORFを形質転換させたT1個体の種子をSDS-PAGE(A)とウエスタンブロット分析(B)した結果を示した図。ウエスタンブロット分析にはGEF抗体およびGFP抗体を用いた。矢印はglup6変異で減少する57-kDグルテリン前駆体のバンドを示す。数字はT1の個体番号を示し、それぞれの個体から6粒ずつ供試した。1-6:形質転換個体の自殖によって得られた種子、星印(2、3、4):台中65号と同じレベルのグルテリン前駆体を示し、GFPタンパク質が発現している種子、無印(1、5、6):EM939と同レベルのグルテリン前駆体を集積し、GFPタンパク質が発現していない種子を示す。星印(★)は形質転換によって復帰した種子を示す。 図8は、登熟種子におけるGEFの発現をGLUP6-GEF抗体を用いたウエスタンブロットによって解析した結果を示す図である。 図9は、蛍光顕微鏡を用いたglup6変異体の胚乳細胞組織の観察結果を示す図である。AとB:野生型(台中65号)、CおよびD:EM939(glup6変異体)、EおよびF:EM1327(glup6変異体)。緑(濃灰)で標識された部位はグルテリン抗体、赤(薄灰)で標識された部位はグルテリン抗体が反応したことを示す。上段(A、CおよびE)は、登熟初期(開花後1週目)の胚乳組織を、下段(B,DおよびF)は、登熟後期(開花後3週目)の胚乳組織を示す。 図10は、蛍光顕微鏡を用いたglup6変異体におけるβ-グルカンとグルテリンの局在を示す図である。A-C:野生型(台中65号)、D-F:EM939(glup6変異体)、G-I:EM1327(glup6変異体)を示す。緑(濃灰)で標識された部位(A、D、G)はβ-グルカン抗体によって、赤(薄灰)で標識された部位(B、E、H)はグルテリン抗体が反応したことを示す。C、F、IはそれぞれAとB、DとE、GとHのマージ像である。 図11は、蛍光顕微鏡を用いたglup4変異体におけるβ-グルカンとグルテリンの局在を示す図である。A-C:野生型(台中65号)、D-F:EM956(glup4変異体)を示す。緑(濃灰)で標識された部位(A、D)はβ-グルカン抗体によって、赤(薄灰)で標識された部位は(B、E)グルテリン抗体が反応したことを示す。C、FはそれぞれAとB、DとEのマージ像である。 図12は、GOPANを使用した野生型(台中65号)とglup6の製パン特性比較を示す図である。
発明を実施するための態様
本発明者等は、植物の中でも、種子成分を改変する簡便な方法の開発が望まれているイネに着目し、なかでも栄養学的に良好である貯蔵タンパク質グルテリンの集積に関与する遺伝子を単離すべく鋭意研究を行った。
イネグルテリンは小胞体上で前駆体として合成され、その後、ゴルジ体を経由し、貯蔵型液胞へと輸送される。貯蔵型液胞内で、2つのサブユニットに開裂し、成熟型グルテリンとして蓄積する。glup6(glutelin precursor 6)突然変異体は野生型と比べてグルテリン前駆体を多く集積し、成熟型グルテリンの蓄積量が減少する(図1)。従って、グルテリン前駆体の貯蔵型液胞への輸送に関与する因子であることが予想されるが、変異の原因となるGLUP6遺伝子は未だ同定されていない。
すでにGLUP6遺伝子は染色体3に座乗することが明らかとなっている(Sato et al. Rice Genet. Newslet., 20: 43-45, 2003)。そこで、染色体3のマーカーを用いた連鎖解析によってGLUP6遺伝子近傍の遺伝子連鎖地図の構築を行った。GLUP6遺伝子連鎖地図をSTS、CAPSマーカーを用いて作成した。glup6突然変異系統EM939とインド型品種Kasalathとの交雑F2種子から、SDS-PAGE解析によってグルテリン前駆体を多量に集積するglup6遺伝子ホモ個体を選抜し連鎖解析に用いた。
41個体のglup6ホモ個体を用いた連鎖解析によって、GLUP6遺伝子はSTSマーカーR10784とCAPSマーカーR216の間10.4 cMの領域内に位置づけられた(図2A:Sato et al. Rice Genet. Newslet., 20: 43-45, 2003)。さらに、234個体のglup6遺伝子ホモ個体を用いた連鎖解析によってGLUP6遺伝子を1.6 cMの領域内に絞り込んだ(図2B)。この遺伝子領域は4個のBACクローンによってカバーされていた(図2C)。
これらのBACクローン内の配列を基に新規に作成したDNAマーカーと1122個体のglup6遺伝子ホモ個体を用いた連鎖解析によって、GLUP6遺伝子をBACクローンOJ1041F02内の約16 kbの領域内に絞り込んだ(図2Cと図2D)。この候補領域のゲノム塩基配列に対してRiceGAAS(Rice Genome Annotation Database; http://RiceGAAS.dna.affrc.go.jp/rgadb/)による遺伝子予測ならびに類似性検索を行ったところ、3個の遺伝子が予測された(図2D)。
これらの予測された遺伝子のゲノム配列を基にして、glup6変異系統「EM939」および「EM1327」、およびそれらの原品種「台中65号」のGLUP6遺伝子候補領域のゲノム塩基配列を解析した。その結果、予測遺伝子の一つにglup6変異体2系統の塩基配列はそれぞれ、「台中65号」の塩基配列に対して一塩基置換が認められた。具体的には、「台中65号」とglup6変異体と比較した場合、EM939ではC418が、そしてEM1327ではC784が、それぞれTに置換されていた。候補領域における他の塩基に置換は認められなかった。さらに、「台中65号」の登熟種子から単離した当該予測遺伝子のmRNAから逆転写したcDNAの塩基配列を解析した。図3にそれらの塩基配列を示す。
各系統のゲノム塩基配列はcDNAに対応するコーディング領域の配列のみを示した(図4)。なお、「台中65号」と「日本晴」間では当該遺伝子のゲノム塩基配列に6塩基の多型が認められた(図4)。この予測遺伝子は、グアニンヌクレオチド交換因子(guanine nucleotide exchange factor:GEF)とアミノ酸配列において高い相同性が認められる。この結果は、GLUP6遺伝子はGEFをコードしていることを示唆している。
「日本晴」において当該予測遺伝子のcDNAの全長の配列をKOME(Knowledge-based Oryza Molecular biological Encyclopedia;http://cdna01.dna.affrc.go.jp/cDNA/)による検索を行い、ゲノム塩基配列と比較した結果、並びに「台中65号」のゲノム塩基配列とcDNAとを比較した結果、GLUP6候補遺伝子は5個のエキソンから構成されていた。同遺伝子のコード領域の全長は1443 bpで、480個の推定アミノ酸からなるタンパク質をコードしていることが予測された(図6:GEFタンパク質のアミノ酸配列の比較)。glup6変異系統「EM939」と「EM1327」において、それぞれ139および261番目のグリシンが終止コドンに置換していた(図6)。これらの結果は、GLUP6遺伝子はGEFをコードしていることを示唆している。
このGEF遺伝子がグルテリンの輸送・蓄積に機能を有していることを確認するために、「glup6変異体」の植物体にGLUP6候補遺伝子を導入する形質転換実験を行った。GLUP6候補遺伝子であるGEFのプロモーターを「台中65号」のゲノムDNAからサブクローニングし、GEFクローン(JO33091P13:つくばゲノムリソースセンターより分譲)をテンプレートにPCRでGEF配列を増幅し、構築したGFPを含むエントリーベクターをDV9バイナリーベクターに導入し、アグロバクテリウム(EHA105菌株)を介して「EM939」に導入した。その結果、作出された形質転換体は、グルテリン前駆体含量が原品種とほぼ同等まで減少していた(図7A)。更に、その個体において、GFP抗体を用いたウエスタンブロットを行った結果、GFPバンドが認められたことから(図7B)、GEF遺伝子の導入によってglup6変異体が野生型に復帰したことを示している。以上の結果から、GLUP6遺伝子はGEFをコードしていることが明らかとなった。
glup6同座変異体におけるGEFタンパク質の発現の有無を調査した(図8)。「台中65号」では、2本のバンドが検出された。一方、「EM939」および「EM1327」において、2本のバンドのうち63 kDaのバンドが欠損していた。glup6変異体におけるGEFタンパク質の欠損は、ナンセンス変異により当該GEFの機能が喪失されたことを示唆している。
GEF欠損変異体glup6の胚乳細胞組織におけるグルテリンの局在を蛍光顕微鏡解析により調査した。野生型では、グルテリンを集積する顆粒(PB-II)とプロラミンを集積する顆粒(PB-I)が単独で観察され、登熟を経るに従い両PBのサイズは大きくなった(図9Aおよび図9B)。一方、glup6変異では、グルテリン抗体で標識された大きな構造体(paramural body:PMB)が観察された。PMBは登熟初期から存在し、登熟とともにそのサイズが拡大化していった(図9C、図9D、図9F)。また、glup6変異体のPB-IIは、登熟初期から後期にかけて、大きさはほぼ一定であった。これらの結果は、glup6変異では、グルテリン前駆体の貯蔵型液胞への輸送が阻害されていることを示している。さらに、細胞壁にもグルテリンの存在を示すシグナルが認められた。この結果から、細胞壁の構成物質であるβ-グルカンの細胞内輸送も阻害されている可能性が考えられる。そこで、glup6変異体における、β-グルカンとグルテリンの局在を蛍光顕微鏡解析により調査した。野生型においてβ-グルカンは、細胞壁にのみ検出された(図10Aおよび図10C)が、glup6変異体において、β-グルカンは細胞壁だけでなくPMBの周囲およびPMB内にも存在していた(図10D〜図10I)。glup6変異体では、PMBに付随してβ-グルカンを含む細胞壁様物質が存在していることが明らかとなった。これらの結果は、glup6変異では、β-グルカンの細胞壁への輸送も阻害され、細胞壁の構造が変化している可能性およびβ-グルカンの蓄積が増加していることを示唆している。
グルテリン前駆体を多く蓄積しているglup4変異はSmall GTPase Rab5aの構造遺伝子変異である。glup4変異体でも、同様にPMB周囲にβ-グルカンの高蓄積が認められた(図11D〜図11F)。Megazyme社のMixed-linkage β-グルカンアッセイキットを用いて、野生型品種(台中65号)とglup6(EM939)の玄米に含まれるβ-グルカンを定量比較したところ、野生型の玄米に含まれるβ-グルカンは100 g(乾燥重量)あたり48 mg(±14、n=3)であったのに対し、glup6の玄米には約2倍の97 mg(±49、n=3)が蓄積していた。
β-グルカンの高蓄積が、米粉の製パン特性および米粉パンの食味にどのように影響するのかを調べるために、三洋電機の新商品GOPAN(製パン機、登録商標)を使用して、glup6変異体(EM939)と野生型(台中65号)の米粉を用いてパンを作り、両者を比較した(図12)。製パン試験を繰り返し行った結果、野生型の米粉から作製したパン生地は、焼きたて直後は柔らかいものの、数時間後から生地が硬くなり始め、2日後にはボソボソになるのに対し、glup6(EM939)では、同様な条件下で、野生型と比較して生地が硬くなり難いことが判明した。一般に、米粉パンは時間の経過とともに固くなる問題がある。この問題は米粉パンに限らず、通常のコムギパンの品質で重要な評価項目であり、「パンの老化」と呼ばれる。glup6変異体(EM939)が示す「老化しにくい米粉パン」の原因として、PMBに蓄積するβ-グルカンの特徴である保湿性、澱粉そのものの老化特性の違い、または水溶性のβ-グルカンが糊化澱粉に結合して老化を阻害する可能性などが考えられる。
本発明者らは、植物の貯蔵タンパク質の集積に関与する新たな遺伝子を単離することに成功したとともに、当該遺伝子を利用して植物の貯蔵タンパク質およびβ-グルカンの組成が変化した米粉が優れた製パン特性を持つことを見いだし、これにより本研究を完成するに至った。
本発明は、植物の貯蔵タンパク質の貯蔵型液胞における集積に関する、GLUP6-GEF遺伝子、すなわち下記のポリヌクレオチド(またはポリヌクレオチドからなる遺伝子)、およびその利用方法を提供する。
(a)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 11またはSEQ ID NO: 12に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 11またはSEQ ID NO: 12に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ貯蔵タンパク質を貯蔵型液胞に集積する機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 11またはSEQ ID NO: 12に記載の塩基配列と少なくとも90%の同一性を有し、かつ貯蔵タンパク質を貯蔵型液胞に集積する機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(d)SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 6に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド;
(e)SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 6に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換、付加および/または挿入したアミノ酸配列からなり、かつ貯蔵タンパク質を貯蔵型液胞に集積する機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(f)SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 6に記載のアミノ酸配列と少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ貯蔵タンパク質を貯蔵型液胞に集積する機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
本発明は、植物の貯蔵タンパク質の貯蔵型液胞への集積に関するタンパク質、すなわち下記のタンパク質、およびその利用に関する。
(e')SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(f')SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 6に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換、付加および/または挿入したアミノ酸配列からなり、かつ植物種子においてグルテリンを集積させる機能を有するタンパク質;
(g')SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 6に記載のアミノ酸配列と少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ植物種子においてグルテリンを集積させる機能を有するタンパク質。
本発明でポリヌクレオチドに関し「ストリンジェントな条件下」というときは、特に記載した場合を除き、中程度または高程度にストリンジェントな条件をいう。
中程度にストリンジェントな条件は、例えば、対象となるポリヌクレオチドの長さに基づき、当業者であれば容易に設計することができる。基本的な条件は、Sambrookら,Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版、第6〜7章、Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に示されている。典型的には、中程度にストリンジェントな条件は、ニトロセルロースフィルターに関し、5×SSC、0.5%SDS、1.0 mM EDTA(pH8.0)の前洗浄条件;約40〜50℃での、約50%ホルムアミド、2〜6×SSC(または、約42℃での、約50%ホルムアミド中のStark's solutionなどの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーション条件;および約40℃〜60℃、0.5〜6×SSC、0.1% SDSの洗浄条件を含む。中程度にストリンジェントな条件は、好ましくは、約50℃、6×SSCのハイブリダイゼーション条件を含み、前述の洗浄条件および/または洗浄条件を含んでいてもよい。
高程度にストリンジェントな条件(高ストリンジェントな条件)もまた、例えば、対象となるポリヌクレオチドの長さに基づき、当業者であれば容易に設計することができる。高ストリンジェントな条件は、中程度にストリンジェントな条件よりも高い温度および/または低い塩濃度がが含まれる。典型的には、約65℃、0.2〜6×SSC、好ましくは6×SSC、より好ましくは2×SSC、さらに好ましくは0.2×SSCのハイブリダイゼーション条件を含む。いずれの場合も、約65〜68℃、0.2×SSC、0.1% SDSの洗浄条件を含むことが好ましい。
いずれの場合も、ハイブリダイゼーション、前洗浄および洗浄のための緩衝液として、SSC(1×SSCは、0.15 M NaClおよび15 mM クエン酸ナトリウムである。)の代わりにSSPE(1×SSPEは、0.15 M NaCl、10 mM NaH2PO4、および1.25 mM EDTA、pH7.4である。)を代用することができる。いずれの場合も、洗浄は、ハイブリダイゼーションが完了した後、約15分間行うことができる。
また、本発明のためにストリンジェントな条件下でハイブリダイズを行う場合、プローブに放射性物質を使用しない市販のハイブリダイゼーションキット、例えばECL direct labeling & detection system(Amersham社製)を使用することができる。このキットを使用する場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーションとしては、典型的には、キット中のハイブリダイゼーションバッファーにブロッキング試薬を5%(w/v)、NaClを0.5 Mになるように加え、42℃で4時間ハイブリダイゼーション行い、続いて55℃、0.4% SDS、0.5×SSC中で20分間の洗浄を二回行い、さらに室温、2×SSC中で5分間の洗浄を一回行うことができる。
また、本発明でタンパク質に関し、「1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換、付加および/または挿入された」というときの置換等されるアミノ酸の個数は、そのアミノ酸配列からなるタンパク質が所望の機能を有する限り特に限定されないが、1〜9個または1〜4個程度である。性質の似たアミノ酸への置換であれば、所望の機能を消失しないであろうから、より多くのアミノ酸の置換が可能である場合がある。ヌクレオチドまたはアミノ酸が置換等されたポリヌクレオチドまたはタンパク質を調製するための手段には、例えば、site-directed mutagenesis法(Kramer W & Fritz H-J: Methods Enzymol 154: 350、 1987)がある。
本発明で、塩基配列に関し、同一性(相同性ということもある。)が高いというときは、特別な場合を除き、90%以上、好ましくは92%以上、より好ましくは94%以上、さらに好ましくは96%以上、最も好ましくは98%以上の配列の同一性を指す。本発明で、アミノ酸配列に関し、同一性(相同性ということもある。)が高いというときは、特別な場合を除き、97%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の配列の同一性を指す。塩基配列またはアミノ酸配列の同一性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268、 1990、Proc Natl Acad Sci USA 90: 5873、 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF、 et al: J Mol Biol 215: 403、 1990)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は当業者にはよく知られている(例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。
本発明ではまた、塩基配列についてはBLAST 2を用いて同一性を計算することができ、またアミノ酸配列についてはblastpで検索し、同一性を求めることができる。本発明で塩基配列またはアミノ酸配列について同一性をいうときは、特別な場合を除き、通常の設定でこれらの手段により得た値である。
本発明のポリヌクレオチドは、天然の植物組織材料から調製することができる。本発明のポリヌクレオチドを調製するためには、ハイブリダイゼーション技術やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を利用することができる。例えば、GLUP6-GEF遺伝子(SEQ ID NO: 3)の一部をプローブまたはプライマーとして、イネや他の植物からGLUP6-GEF遺伝子と高い同一性を有するDNAを単離することができる。本発明のポリヌクレオチドには、ゲノムDNA、cDNAおよび化学合成DNAが含まれる。本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖DNAおよび二本鎖DNAであり得る。
本発明において、ポリヌクレオチドに関して「機能を有する」または「機能可能」というときは、特別な場合をのぞき、そのポリヌクレオチドの存在により、目的の機能が果たされることをいう。これには、ポリヌクレオチドが転写され、転写産物が翻訳され、目的の機能を有するタンパク質が発現されることが含まれる。例えば、GLUP6-GEF遺伝子の変異体が、比較的重要な部分における変異を有するために、本来有すべき機能が低下または喪失している場合、その変異ポリヌクレオチドは、「機能を有する」とはいえず、また「機能可能」とはいえない。
本発明において「貯蔵タンパク質」というときは、特に記載した場合を除き、グルテリンおよびグロブリンを含む。
本発明において「グルテリン」というときは、特に記載した場合を除き、純タンパク質の一つで、穀類中に含まれ、純水・中性塩類溶液およびアルコールには溶けず、稀酸・稀アルカリには溶けるタンパク質(総称)をいう。本発明で単に、「貯蔵タンパク質」または「グルテリン」というときは、成熟型のものを指す。イネにおいて、グルテリンは全タンパク質のうちの約60%を占める。グルテリンは、コムギの麩素(グルテンgluten)中のグルテニン(glutenin)を含み、αグルテリン(イネにおいては、分子量37〜40 kD)、βグルテリン(イネにおいては、分子量20〜23 kD)を含む。
本発明において「グルテリン前駆体」というときは、特に記載した場合を除き、グルテリンの前駆体であって、分子量約57 kDのものを指す。グルテリンの定義から、57 kDaグルテリン前駆体はグルテリンには含まれない。この前駆体は塩可溶性の「グロブリン」に属する。なお、明細書では、貯蔵タンパク質の一つとして、イネにおけるグルテリンを例に説明することがあるが、特に記載した場合を除き、その説明は、ダイズ等の豆類、エンバク、カボチャまたはシロイヌナズナ等のグロブリンを貯蔵型液胞に集積する植物における、グロブリンにも当てはまる。
成熟型グルテリンは抽出法によって定量可能である。例えば、Kumamaruらの抽出・定量法を参照することができる(Kumamaru, T., Satoh, H., Iwata, N., Omura, T., Ogawa, M., and Tanaka, K. (1988). Mutants for rice storage proteins. 1. Screening of mutants for rice storage proteins of protein bodies in the starchy endosperm. Theor. Appl. Genet. 76, 11-16.)。
グルテリン前駆体を定量するには、グルテリンおよび標準物質をSDS-PAGEで処理し、染色し、表れたバンドの濃淡に基づくことができる。より詳細には、対照となる米の完熟玄米1粒と、評価の対象米を改良した改良米の完熟玄米1粒とを、それぞれ細かく粉砕した後、SDS溶液(50 mM Tris−HCl、pH6.8、0.5%(w/v)SDS)を加え、SDS−PAGEゲルにアプライし、電気泳動後CBBで染色する。それぞれの含量は、必要に応じ、あらかじめ検量線を作成しておき、イメージアナライザーでバンドの濃度を比較する。
本明細書において貯蔵タンパク質の集積に関し、「改変(する)」または「制御(する)」というときは、特別な場合を除き、種子における貯蔵タンパク質の集積量を改変または調節することを指し、これには集積量が増すように調節することと集積量が低減するように調節することとが含まれる。貯蔵タンパク質量を調節する際に、他の種子に関する要素も同時に調節される場合がある。本発明者らの検討によると、glup6変異では、グルテリン前駆体の貯蔵型液胞への輸送が阻害されており、その際に、細胞壁にもグルテリンの存在を示すシグナルが認められた。この結果から、細胞壁の構成物質であるβ-グルカンの細胞内輸送も阻害されている可能性が考えられた。glup6変異体における、β-グルカンとグルテリンの局在を蛍光顕微鏡解析により調査したところ、野生型においてβ-グルカンは、細胞壁にのみ検出されたが、glup6変異体において、β-グルカンは細胞壁だけでなくPMBの周囲およびPMB内にも存在していた。すなわち、これらの結果は、glup6変異では、β-グルカンの細胞壁への輸送も阻害され、細胞壁の構造が変化している可能性およびβ-グルカンの蓄積が増加していることを示唆している。
貯蔵タンパク質の集積量を低減するように調節することには、貯蔵タンパク質集積に関与する遺伝子(例えば、本発明のGLUP6-GEF遺伝子)の機能を低下または喪失させることにより、貯蔵タンパク質を低減することが含まれる。グルテリン集積を増すように調節することには、グルテリン集積に関与する遺伝子(例えば、本発明のGLUP6-GEF遺伝子)を、植物に導入してその機能を発揮させることにより、グルテリン含量を増すことが含まれる。
本明細書において、植物の形質に関し、貯蔵タンパク質の集積性が改変されたというときは、特に記載した場合を除き、成熟型の貯蔵タンパク質の量が減少していることと増加していることとの双方を含む。例えば、本発明により、GLUP6-GEF遺伝子を機能可能に有する品種に由来するイネついてGLUP6-GEF遺伝子を変異させ、その機能を低下または喪失させることにより得られるイネは、通常の品種のイネに比較して種子における成熟型グルテリンの含量が低減される。このような状態を「低グルテリン(性)」または「グルテリン低集積(性)」ということができる。
本発明のある態様においては、成熟型グルテリンが、原品種に比較して、少なくとも約5%減じられている場合、好ましくは約10%減じられている場合、より好ましくは約20%減じられている場合、さらに好ましくは約25%減じられている場合に、「低グルテリン(性)」または「グルテリン低集積(性)」ということができる。この場合、典型的にはグロブリン前駆体の量は、少なくとも5%増加しており、好ましくは約10%増加しており、より好ましくは約20%減じられている場合、さらに好ましくは約25%減じられている。
本発明で「植物」というときは、特別な場合を除き、植物個体またはその一部の意味で用いており、また「その一部」というときは、特別な場合を除き、種子(発芽種子、未熟種子を含む。)、器官またはその部分(葉、根、茎、花、雄蕊、雌蘂、それらの片を含む)、植物培養細胞、カルス、プロトプラストを含む。植物には、遺伝子操作植物および形質転換植物が含まれる。植物には、「収穫物」および「繁殖材料」がふくまれる。本発明でいう「繁殖材料」とは、特別な場合を除き、植物体の全部または一部で繁殖の用に供されるもの(「種苗」ということもある。)をいい、例えば、種子、苗、細胞、カルス、幼芽がある。本発明でいう「収穫物」とは、特別な場合を除き、通常の意味で用いており、植物体の全部または一部で繁殖の用に供されないもの、例えば、植物がイネ属に属するものである場合、収穫物には、刈り取った稲、もみが含まれる。
本発明の植物には、本発明の方法により組換え植物細胞を得て、該植物細胞を植物体に再生させることにより得た形質転換植物(T0)が含まれる。本発明で、植物に関し、「その子孫」というときは、特別な場合を除き、当該植物を、少なくとも一方の遺伝的な親および/または祖先とする植物をいう。子孫には、本発明のポリヌクレオチドを利用して目的の形質が受け継がれている限り、親である形質転換植物より得られた後代(T1等)またはその子孫、T0またはT1を一方の親とする交雑後代(例えばF1)およびその子孫が含まれる。
本発明で「加工品」というときは、特別な場合を除き、収穫物から直接的にまたは間接的に生産される加工品をいう。本発明の範囲は、少なくとも、本発明の収穫物における特徴を反映した加工品が含まれる。例えば、植物がイネである場合、収穫物である米を原料とし、グルテリン集積性が制御されたことに起因して加工性、食味、食感、匂い等において従来とは異なることとなった、精米した米、米飯、米粉、米粉を使用したパン類、菓子類、饅頭類、ピザ、酒は、本発明の範囲に含まれる。パンは、本発明の加工品の特に好ましい例である(特開2009-213370)。
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含む組み換えベクター、そのようなベクターにより形質転換された形質転換植物を提供する。
本発明のポリヌクレオチドが挿入されるベクターは、植物細胞内で挿入物の機能を発揮させることが可能なものであれば特に制限はない。例えば、植物細胞内で恒常的に遺伝子を発現させるためのプロモーター(例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター)を有するベクターや、外的な刺激により誘導的に活性化されるプロモーターを有するベクターを用いることもできる。ここでいう「植物細胞」には、種々の形態の植物細胞、例えば、種子、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、カルスなどが含まれる。
植物細胞へのベクターの導入には、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、アグロバクテリウムを介する方法、パーティクルガン法など、当業者に公知の種々の方法を用いることができる。アグロバクテリウム(例えば、EHA101)を介する方法においては、例えば、超迅速単子葉形質転換法(特許第3141084号)を用いることが可能である。また、パーティクルガン法においては、例えば、バイオラッド社のものを用いることが可能である。
形質転換植物細胞からの植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて当業者に公知の方法で行うことが可能である。例えば、イネにおいて形質転換植物体を作出する手法については、ポリエチレングリコールを用いてプロトプラストへ遺伝子導入し、植物体(インド型イネ品種が適している)を再生させる方法(Datta SK: In Gene Transfer To Plants (Potrykus I and Spangenberg、 Eds) pp.66-74、 1995)、電気パルスによりプロトプラストへ遺伝子導入し、植物体(日本型イネ品種が適している)を再生させる方法(Toki S、 et al: Plant Physiol 100: 1503、 1992)、パーティクルガン法により細胞へ遺伝子を直接導入し、植物体を再生させる方法(Christou P、 et al: Biotechnology 9: 957、 1991)、およびアグロバクテリウムを介して遺伝子を導入し、植物体を再生させる方法(Hiei Y、 et al: Plant J 6: 271、 1994)など、いくつかの技術が既に確立し、本発明の技術分野において広く用いられている。本発明においては、これらの方法を好適に用いることができる。
ゲノム内に所望の遺伝子が導入された形質転換植物体がいったん得られれば、該植物体から有性生殖または無性生殖により子孫を得ることができる。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラストなど)を得て、それらを基に植物体を量産することも可能である。
本発明の形質転換の対象となる植物は、本発明のポリヌクレオチドからなる遺伝子の作用により、グルテリン集積性を制御することができるものであれば特に限定されないが、好ましくは被子植物であり、より好ましくは単子葉植物網に属する植物であり、さらに好ましくはツユクサ亜網に属する植物であり、最も好ましくはイネ科(Poaceae(Gramineae))に属する植物、例えばイネ(Oryza)、オオムギ、ライムギ、パンコムギ、イヌムギ、ハトムギ、サトウキビ、トウモロコシ、モロコシ、アワ、キビ、ヒエいずれかの属に属する植物である。イネ科に属する植物のうちでは、好ましくはイネ属に属する植物であり、より好ましくはイネ(Oryza sativa L.)である。本発明の形質転換の対象となる植物は、貯蔵タンパク質を貯蔵型液胞に集積する植物であるという観点からは、特に、大豆、トウモロコシ、ライムギ、エンバク、コムギ、オオムギ、ソルガム、カボチャ、シロイヌナズナ、イネに対して用いるのに適している。
イネの品種の中では、本発明は、特に「コシヒカリ」および「ヒノヒカリ」並びにそれらの近縁種に適していると考えられる。コシヒカリ近縁種とは、その育成系譜に「コシヒカリ」を交配母本としているもので、「ひのひかり」や「キヌヒカリ」等を指す。さらにコシヒカリ近縁種以外の「ササニシキ」等の良食味品種、および「滋賀羽二重もち」等のモチ品種、多収性品種である「ハバタキ」、「おおちから」等にも、本発明は適していると考えられる。本発明はまた、「ミズホチカラ」等の多収品種、IR64等のインド型品種に適していると考えられる。
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを利用することを特徴とする、植物の貯蔵タンパク質集積性の制御方法を提供する。ここでいう「(ポリヌクレオチド)利用すること」には、ポリヌクレオチドを機能可能に有する植物で該ポリヌクレオチドの機能を低下または喪失させるようにすること、および該ポリヌクレオチドが機能していない植物に該ポリヌクレオチドを機能可能に導入することが含まれる。
該ポリヌクレオチドの機能を低下または喪失させるようにする表現型を生じるには、例えば本発明のポリヌクレオチドからなる遺伝子の発現を抑制することによる。ここでいう「発現の抑制」には、遺伝子の転写の抑制、転写物のスプライシングの抑制、およびタンパク質への翻訳の抑制が含まれる。また、遺伝子の発現の完全な停止のみならず発現の減少も含まれる。また、翻訳されたタンパク質が植物細胞内で本来の機能を発揮することの抑制も含まれる。
本発明により、「glup6欠損変異(体)」(本発明のポリヌクレオチドからなる遺伝子の機能を低下または喪失させ、グルテリン低集積性である表現型を生じたもの」)が提供されるが、この欠損変異体を作製する方法としては、目的遺伝子の発現または目的タンパク質の機能が低下または喪失した変異体を作製できれば特に制限されないが、例えば、植物体に、化学変異原処理または放射線処理による変異誘発、ウイルス感染、トランスポゾン転移、自然突然変異がある。また、DNA断片導入による遺伝子の破壊、アンチセンス核酸等による遺伝子の発現抑制などがある。
遺伝子の発現の抑制は、また、リボザイムをコードするポリヌクレオチドを利用して行うことも可能である。RNAを部位特異的に切断するリボザイムの設計が可能である。また、遺伝子の発現の抑制は、標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有する二本鎖RNAを用いたRNA interferance(RNAi)によっても行いうる。RNAiは植物においても効果を奏することが知られている(Chuang CF & Meyerowitz EM: Proc Natl Acad Sci USA 97: 4985、 2000)。さらに、遺伝子の発現の抑制は、標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有するDNAによる形質転換によって起こる共抑制によっても達成しうる。「共抑制」とは、植物に標的内在性遺伝子と同一もしくは類似した配列を有する遺伝子を形質転換により導入すると、導入した外来遺伝子および標的内在性遺伝子の発現がいずれも抑制される現象のことを指す。共抑制の機構の詳細は明らかではないが、少なくともその機構の一部はRNAiの機構と重複していると考えられている。共抑制は植物においても観察される(Smyth DR: Curr Biol 7: R793、 1997、Martienssen R: Curr Biol 6: 810、 1996)。
[材料および方法]
植物材料:
材料には水稲品種「台中65号」および同品種のN-methyl-N-nitrosoureaを用いた受精卵処理によって誘発したglup6突然変異系統「EM939」、「EM1327」を用いた(Satoh et al, 2010, Ueda et al, 2010)。これらの系統の完熟種子、登熟種子を解析に用いた。遺伝子連鎖地図の構築のために、glup6突然変異系統「EM939」とインド型品種「Kasalath」との交雑F2種子を材料に用いた。
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(polyacrylamide gel electrophoresis: PAGE)解析:
種子1粒または半粒を粉砕し、種子10 mgに対し200μl量の試料用緩衝液(0.125 M Tris-HCl、4%SDS、4 M尿素、および5%β-メルカプトエタノール、pH 6.8)を加え、1晩振とうさせてタンパク質を抽出した。抽出したタンパク質をSDS-PAGEにより分離した。電気泳動終了後、ゲルを50%エタノール、7%酢酸を含む0.5%クマシーブルーによって染色し、染色したゲルを25%エタノール、7%酢酸によって脱色した。
ウエスタンブロッティング分析:
セミドライブロッティング装置を用いて、SDS-PAGE終了後のゲルからタンパク質をニトロセルロース膜に10 Vで1時間転写した。転写後のニトロセルロース膜をブロッキング用緩衝液(5%スキムミルクを含むTris buffer saline(TBS:10 mM Tris-HCl、0.15 M NaCl、pH 7.5))に浸して1時間ブロッキング処理を行った。ブロッキングの後、ニトロセルロース膜をブロッキング用緩衝液で希釈した1次抗体によって1晩反応させた後、TBST(0.05%Tween 20を含むTBS)によって10分間、3回洗浄した。洗浄後、ブロッキング用緩衝液で希釈した2次抗体によって1時間反応させた後、TBSTによって10分間、3回洗浄した。ECL試薬キット(GE healthcare, Buckinghamshire, UK)を用いてニトロセルトース膜上に目的バンドを検出した。 一次抗体には、抗α-グルテリン-ウサギ抗体および抗GEF(VPS9)-ウサギ抗体を用いた。二次抗体には、抗ウサギ IgG-ヤギ抗体および抗マウスIgG-ヤギ抗体を用いた。
遺伝子連鎖地図の構築:
「EM939」と「Kasalath」との交雑F2種子の遺伝子型を決定するために、各種子を半分に切断し、胚を含まない部位から抽出したタンパク質をSDS-PAGE解析した。SDS-PAGE解析によってグルテリン前駆体を多量に集積した種子をglup6遺伝子ホモ個体とした。glup6ホモ個体とした種子の胚を含む部位を播種し、生育した幼苗の葉からDNAを抽出し連鎖解析に用いた。
DNAの抽出:
約0.2 gの新鮮葉を乾燥し、マルチビーズショッカー(安井器械(株)製)を用いて粉砕した。粉砕した葉からCTAB(cetyltrimethylammonium bromide)法(Murray and Thompson, 1980)を用いて全DNAを抽出した。
プロモーターおよびGLUP6候補遺伝子のサブクローニング:
「台中65号」のゲノムDNAを鋳型として、GLUP6候補遺伝子の開始コドンより約2 kb上流領域を以下に示すプライマーを用いたPCR反応により増幅し、GLUP6候補遺伝子のプロモーターとした。
5'プライマー: 5'-ata gtcgac cagtgga cacgtagtgg cttattg-3'(SEQ ID NO: 15)
gtcgac は制限酵素SalIによる切断配列)
3'プライマー: 5'- tatgaattcagatctccggattcggtcacgttttgtg- 3'(SEQ ID NO: 16)
gaattcagatctは制限酵素EcoRIおよびBgl IIによる切断配列配列)
GLUP6候補遺伝子のコード配列を得るために、cDNAクローン(J033091P13)を鋳型として、94℃-1分間(1サイクル)、94℃-30秒間→61℃-30秒間→72℃-2分間(30サイクル)、72℃-2分間(1サイクル)の条件でPCRを行った。GLUP6候補遺伝子プロモーターおよび当該遺伝子のコード配列を、それぞれSalI/EcoRI、BglII/XhoIによる制限酵素処理・ライゲーション反応により、GFPを含むエントリーベクター(EV(zeo)126)に導入した。その後、LR反応(LRclonase)により、構築したエントリーベクターをバイナリーベクター(DV9)に挿入した。
アグロバクテリウム法によるイネへの形質転換:
「EM939」の完熟種子を除菌した後、カルス誘導培地に播種した。播種後1か月経過したカルスを形質転換に用いた。構築したコンストラクトをアグロバクテリウム(EHA105菌株)により「EM939」のカルスに導入した。
ゲノム遺伝子塩基配列解析:
テンプレート調製PCR: 葉から抽出したゲノムDNAを鋳型として、LA Taqポリメラーゼ(Takara社製)を用い添付のプロトコールに従いシークエンス用テンプレートを調製した。1 ngゲノムDNA(100 ng/μl)を用いてPCR反応溶液を調製し、94℃-30秒間(1サイクル)、94℃-30秒間→61℃-30秒間→72℃-2分間(30サイクル)、72℃-2分間(1サイクル)の条件でPCRを行った。その後エタノール沈殿にてPCR産物を精製し、濃縮させた。
シーケンス反応: 1μl DNA溶液(200〜500 ng)、1μl Big dye、1.5μlシークエンス反応液(5×)、1.5μl dH2O、5μl 1/100μMプライマー溶液を混合した後、96℃-3分間(1サイクル)、94℃-15秒間→50℃-20秒間→60℃-1分間(30サイクル)の条件でPCRを行った。
塩基配列解析: 遺伝子解析装置、ABI PRISMR3100 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社)を用いてゲノム塩基配列、cDNA塩基配列を解析した。得られた各塩基配列を、DNA Data Bank of Japan(DDBJ)(http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome-j.html)のCLUSTALW解析ソフトによって野生型および変異体間の塩基配列および推定アミノ酸配列を比較した。
種子固定および包埋:
登熟種子を約1 mmの厚さに切断し、固定液(25%グルタルアルデヒド、2%パラホルム-アルデヒドを含む50 mM Pipes、0.25 Mスクロース、pH 7.24)に浸し、4℃にて1晩細胞を固定した。固定した切片を、50 mM Pipes、0.25 Mスクロース(pH 7.24) 緩衝液を用いて10分間3回洗浄した。洗浄後、30、50、60、70、80、90、95、100%(V/V)のエタノール希釈シリーズを用いて各濃度10分間ずつ脱水を行なった。脱水後、LR-White樹脂の濃度シリーズ(LR-White樹脂:エタノール=1:3→1:2→1:1→3:1→LR-White樹脂100%×3日間)を用いて試料中に樹脂を浸透させた。樹脂浸透後、ゼラチンカプセルに試料を入れ樹脂を注いだ後、窒素を充填させた。恒温器に入れ、60℃で24時間以上加熱重合させた。
蛍光染色法:
作業はすべて湿室、常温で行なった。切片にPBS(10 mM Na2HPO4、10 mM NaH2PO4、150 mM NaCl、pH 7.4)を滴下し10分間静置後、ブロッキング用緩衝液(0.8% BSA、0.1%ゼラチン、2 mM NaN3 を含むPBS、pH 7.4)で10分間反応させた。ブロッキング反応後、ブロッキング用緩衝液で希釈した一次抗体溶液を2時間反応させた。反応後、切片をPBSによって10分間、5回の洗浄を行った後、ブロッキング用緩衝液によって10分間 反応させた。ブロッキング用緩衝液で希釈した二次抗体溶液によって1時間遮光して反応させた。反応後、切片をPBSによって10分間、5回洗浄した後、蒸留水によって1分間、3回洗浄した。乾燥後、切片に退色防止剤を滴下し、カバーガラスを被せマニキュアで封入した。一次抗体には、抗β-グルテリン-マウス抗体、抗α-グルテリン-ウサギ抗体、抗14プロラミン-ウサギ抗体および抗β-グルカン-マウス抗体を用いた。二次抗体には、FITC標識抗ウサギIgG-ヤギ抗体、ローダミン標識抗マウスIgG-ヤギ抗体、FITC標識抗マウスIgG-ヤギ抗体、ローダミン標識抗ウサギIgG-ヤギ抗体を用いた。
実施例1:候補遺伝子の特定
glup6glutelin precursor 6)突然変異体は野生型と比べてグルテリン前駆体を多く集積し、成熟型グルテリンの蓄積量が減少するので、グルテリン前駆体の貯蔵型液胞への輸送に関与する因子であることが予想される。すでにGLUP6遺伝子は染色体3に座乗することが明らかとなっている(Sato et al. Rice Genet. Newslet., 20: 43-45, 2003)。そこで、染色体3のマーカーを用いた連鎖解析によってGLUP6遺伝子近傍の遺伝子連鎖地図の構築を行った。GLUP6遺伝子連鎖地図をSTS、CAPSマーカーを用いて作成した。glup6突然変異系統EM939とインド型品種Kasalathとの交雑F2種子から、SDS-PAGE解析によってグルテリン前駆体を多量に集積するglup6遺伝子ホモ個体を選抜し連鎖解析に用いた。
この実施例により得られたGLUP6遺伝子の高密度連鎖地図および候補ゲノム領域を、図2に示す。この図において、GLUP6遺伝子連鎖地図をRFLP、STS、CAPSマーカーを用いて作成した。連鎖地図の上部にマーカー名と括弧内に染色体短腕末端からの遺伝距離を、地図の下部に各マーカーにおける組換え個体数を示す。OJナンバーはBACクローン(日本晴)を示す。AとBはそれぞれ41個と234個のglup6ホモ個体を用いて構築した連鎖地図を、CはGLUP6遺伝子の候補領域内に整列化したBACクローンの物理地図とBACクローン内に作製したマーカーによって1122個の集団を用いて構築した連鎖地図を、Dは候補領域内における予測遺伝子を矢印で示す。AからDの両矢印はGLUP6遺伝子の候補領域を示す。C169、R216:CAPSマーカー;E50818、R10784、C53358、R10784、C63279:STSマーカー;R4996:不明。
41個体のglup6ホモ個体を用いた連鎖解析によって、GLUP6遺伝子はSTSマーカーR10784とCAPSマーカーR216の間10.4 cMの領域内に位置づけられた(図2A:Sato et al. Rice Genet. Newslet., 20: 43-45, 2003)。さらに、234個体のglup6遺伝子ホモ個体を用いた連鎖解析によってGLUP6遺伝子を1.6 cMの領域内に絞り込んだ(図2B)。この遺伝子領域は4個のBACクローンによってカバーされていた(図2C)。
これらのBACクローン内の配列を基に新規に作成したDNAマーカーと1122個体のglup6遺伝子ホモ個体を用いた連鎖解析によって、GLUP6遺伝子をBACクローンOJ1041F02内の約16 kbの領域内に絞り込んだ(図2Cと図2D)。この候補領域のゲノム塩基配列に対してRiceGAAS(Rice Genome Annotation Database; http://RiceGAAS.dna.affrc.go.jp/rgadb/)による遺伝子予測ならびに類似性検索を行ったところ、3個の遺伝子が予測された(図2D)。
Rice annotation project database(RAP-DB: http://rapdb.dna.affrc.go.jp/)から得られたこれらの予測遺伝子のゲノム塩基配列を基にして、glup6変異系統「EM939」と「EM1327」、および原品種「台中65号」のGLUP6遺伝子候補領域内における予測遺伝子のゲノム塩基配列を解析した。各系統のゲノム塩基配列はcDNAに対応するコーディング領域の配列のみを示した(図4)。その結果、予測遺伝子の一つOs03g0262900中のコーディング領域内において、「台中65号」とglup6変異体、EM939におけるC418とEM1327におけるC784がそれぞれ、共にTに置換されていた(図3)。他の予測遺伝子に塩基置換は認められなかったことから、Os03g0262900をGLUP6候補遺伝子とした(図5)。同遺伝子はRiceGAAS並びにRice genome annotation project database(RGAP: http://rice.plantbiology.msu.edu/index.shtml)によって Vacuolar Protein Sorting 9 ドメインを有するsuperfamily に属するRABタンパク質のグアニンヌクレオチド交換因子(guanine nucleotide exchange factor:GEF)に分類された。
次に、「台中65号」の登熟種子から抽出したmRNAを逆転写して得られたcDNAを鋳型とし、当該遺伝子に特異的なプライマーによって増幅することによって単一バンドを得た。同バンドを直接塩基配列解析した結果をcDNAとして図3に示す。「台中65号」のゲノム塩基配列とRAP-DBから得た「日本晴」における当該遺伝子の全長のゲノム塩基配列とを比較した結果、「台中65号」と「日本晴」間では当該遺伝子のゲノム塩基配列中のコーディング領域において5番目エクソン中に2塩基の多型が認められた(図3における814番および927番ヌクレオチド)。「台中65号」における当該遺伝子のゲノム塩基配列とcDNA塩基配列とを比較した結果、GLUP6-GEF遺伝子は5個のエキソンから構成され、コード領域の全長は1443 bpであった(図3および図4)。また、480の推定アミノ酸からなるタンパク質をコードしていた(図6)。この配列はRGAP databaseにおけるLOC_Os03g15650.1 と完全に一致した。これに対して、glup6変異系統「EM939」と「EM1327」において、それぞれ140および262番目のグリシンが終止コドンに置換していた(図6)。これらの結果から、glup6変異体において当該GLUP6-GEFタンパク質が発現していないことが考えられる。
図6において、台中65号(cDNA)は登熟種子から単離したmRNAから逆転写したcDNAの塩基配列を示す。配列の下の星印(*)は共通する配列を、バー(-)は変異部位を示す。:は「台中65号」と「日本晴」間の多型を示す。
実施例2:機能の確認
GLUP6候補遺伝子がglup6変異体の原因遺伝子であることを明らかにするために、「glup6変異体」の植物体にGLUP6候補遺伝子を導入する形質転換実験を行い、相補性検定結果を行った。農業生物資源研究所イネゲノムリソースセンターより当該遺伝子に対するcDNAクローンJO33091P13の分譲を受けた。同クローンの塩基配列を解析した結果、コーディング領域の配列は日本晴の塩基配列と完全に一致したものの(図3)、第4エクソンの3'端の618Gと第5エクソンの5'端の619Gとの間に924 bpのイントロンを含んでおり、この配列も「日本晴」のゲノム塩基配列と完全に一致した(データ省略)。cDNAクローンJO33091P13(SEQ ID NO: 3、図5)を鋳型としてPCRによって同候補遺伝子の配列を増幅した。さらに、GLUP6候補遺伝子のプロモーターを「台中65号」のゲノムDNAからサブクローニングした。GFPを含むエントリーベクターに同候補遺伝子の配列とプロモーターを導入した。構築したエントリーベクターをDV9バイナリーベクターに導入し、アグロバクテリウム(EHA105菌株)を介して「EM939」に導入した。
glup6変異体をGEF遺伝子によって形質転換する相補性検定結果を、図7に示す。1〜6は形質転換個体の自殖によって得られた6粒の登熟種子を示す。
作出した形質転換体の種子に着生した6粒の自殖種子から抽出したタンパク質をSDS-PAGE解析した結果、6粒中、グルテリン前駆体含量が原品種とほぼ同等を示す種子3粒と、前駆体を多量に集積する種子3粒とが分離した(図7A)。同じ種子のタンパク質のGFP抗体を用いたウエスタンブロット解析の結果、グルテリン前駆体含量が原品種とほぼ同等を示す3粒の種子ではGFPバンドが検出されたが、前駆体を多量に集積する残り3粒の種子では同バンドは検出されなかった(図7B)。これらの結果は同候補遺伝子の導入によってglup6変異体が野生型に復帰したこと、すなわち、glup6変異体がGEF遺伝子によって相補されたこと、を示している。同遺伝子はシロイヌナズナのGEF(VPS9: At3g19770)とアミノ酸配列において53%の相同性が認められることから、GLUP6遺伝子はGEFをコードしていることが明らかとなった。以下当該遺伝子をGLUP6-GEF遺伝子、当該タンパク質をGLUP6-GEFと称する。
常法によりGLUP6-GEFタンパク質を大腸菌で大量に発現させ、精製した。精製したGLUP6-GEFタンパク質を抗原としてマウスとウサギに免疫した。得られた特異抗体を用いてglup6同座変異体の種子におけるGLUP6-GEFタンパク質の発現の有無を、glup6変異体の種子タンパク質のGEF抗体を用いたウエスタンブロット解析により調査した(図8)。「台中65号」では、2本のバンドが検出された。一方、「EM939」および「EM1327」において、2本のバンドのうち53.8 kDaのバンドが欠損していた。glup6変異体におけるGLUP6-GEFタンパク質の欠損は、ナンセンス変異によりGLUP6-GEFの機能が喪失されたことを示唆している。
実施例3:グルテリンの局在に関する検討
GLUP6-GEF欠損変異体glup6の胚乳細胞組織におけるグルテリンの局在を蛍光顕微鏡解析により調査した。蛍光顕微鏡を用いたglup6変異体の胚乳細胞組織の観察結果を示す図を図9に示す。図9において、AおよびB:野生型(台中65号)、CおよびD:EM939(glup6変異体)、EおよびF:EM1327(glup6変異体)を示す。緑で標識された部位はグルテリン抗体、赤で標識された部位はプロラミン抗体によって標識された。上段(A、CおよびE)は、登熟初期(開花後1週目)の胚乳組織を、下段(B,DおよびF)は、登熟後期(開花後3週目)の胚乳組織を示す。
野生型では、グルテリンを集積する顆粒(PB-II)とプロラミンを集積する顆粒(PB-I)が単独で観察され、登熟を経るに従い両PBのサイズは大きくなった(図9A、図9B)。一方、glup6変異では、グルテリン抗体で標識された大きな構造体(paramural body:PMB)が観察された。PMBは登熟初期から存在し、登熟とともにそのサイズが拡大化していった(図9C、図9D、図9F)。また、glup6変異体のPB-IIは、登熟初期から後期にかけて、大きさはほぼ一定であった。PB-Iは野生型と比較して、違いは認められなかった。これらの結果は、glup6変異では、グルテリン抗体で標識されるグルテリン前駆体の貯蔵型液胞への輸送が阻害されていることを示している。またPB-IIの大きさは登熟を通して変化しないことが明らかとなった。さらに、細胞壁にもグルテリンの存在を示すシグナルが認められた。この結果から、細胞壁の構成物質であるβ-グルカンの細胞内輸送も阻害されている可能性が考えられる。
そこで、glup6変異体における、β-グルカンとグルテリンの局在を蛍光顕微鏡解析により調査した。蛍光顕微鏡を用いたglup6変異体におけるβ-グルカンとグルテリンの局在を示す結果を図10に示す。図10において、A-C:野生型(台中65号)、D-F:EM939(glup6変異体)、G-I:EM1327(glup6変異体)を示す。緑で標識された部位はβ-グルカン抗体によって、赤で標識された部位はグルテリン抗体によって標識された。野生型においてβ-グルカンは、細胞壁にのみ検出されたが(図10A、図10C)、glup6変異体において、β-グルカンは細胞壁だけでなくPMBの周囲およびPMB内にも存在していた(図10D〜図10I)。これらの結果は、glup6変異では、β-グルカンの細胞壁への輸送も阻害され、細胞壁の構造が変化している可能性およびβ-グルカンの蓄積が増加していることを示唆している。
グルテリン前駆体を多く蓄積しているglup4変異はSmall GTPase Rab5aの構造遺伝子変異である。蛍光顕微鏡を用いたglup4変異体におけるβ-グルカンとグルテリンの局在を示す結果を図11に示す。図11において、A-C:野生型(台中65号)、D-F:EM956(glup4変異体)を示す。野生型において、細胞壁にのみβ-グルカンが検出された(図11Aおよび図11C)。glup6変異と同様にglup4変異体でも同様に、β-グルカンは細胞壁だけでなくPMB周囲にβ-グルカンの高蓄積が認められた(図11D、図11F)。
実施例4:β-グルカンが、米粉パンに対して与える影響
β-グルカンの高蓄積が、米粉の製パン特性および米粉パンの食味にどのように影響するのかを調べるために、三洋電機の新商品GOPAN(製パン機、登録商標)を使用して、glup6変異体(EM939)と野生型(台中65号)の米粉を用いて、精米220 gとコムギグルテン50 gを主な材料として用いてパンを作り、両者を比較した(図12)。
製パン試験を繰り返し行った結果、野生型の米粉から作製したパン生地は、焼きたて直後は柔らかいものの、数時間後から生地が硬くなり始め、2日後にはボソボソになるのに対し、glup6(EM939)では、同様な条件下で、野生型と比較して生地が硬くなり難いことが判明した。一般に、米粉パンは時間の経過とともに固くなる問題がある。この問題は米粉パンに限らず、通常のコムギパンの品質で重要な評価項目であり、「パンの老化」と呼ばれる。glup6変異体(EM939)が示す「老化しにくい米粉パン」の原因として、PMBに蓄積するβ-グルカンの特徴である保湿性、澱粉そのものの老化特性の違い、または水溶性のβ-グルカンが糊化澱粉に結合して老化を阻害する可能性などが考えられる。
このような差異は、外見上も明らかであり、焼成後2〜3日の時点で、野生型(台中65号)の米粉パンは、glup6の米粉パンと比較して、生地がよりつぶれることが明らかになった(図12)。
本発明により、新規な貯蔵タンパク質の集積に関与する遺伝子が提供された。本発明の遺伝子は植物種子の細胞内輸送に関与する。この遺伝子の発現や機能を調節することにより、種子中の成熟型グルテリンの集積量を調節することができる。このため、本発明の遺伝子は成熟型グルテリンの量が減少したイネの品種育成に有用である。また、本発明の遺伝子を用いるイネの品種育成は、短期間で高い確実性をもって目的の植物体を得ることができる点で、従来の方法より有利である。
SEQ ID NO: 1:日本晴由来GLUP6-GEF遺伝子のcDNAの塩基配列
SEQ ID NO: 2:SEQ ID NO: 1に対応するアミノ酸配列
SEQ ID NO: 3:GLUP6-GEF遺伝子に対するcDNAクローンJO33091P13の塩基配列(イントロン部分を含む。)
SEQ ID NO: 4:SEQ ID NO: 3に対応するアミノ酸配列
SEQ ID NO: 5:台中65号の種子から抽出したmRNAを逆転写した1本鎖cDNAを鋳型として、GLUP6-GEF特異的プライマーによって増幅したcDNAの塩基配列
SEQ ID NO: 6:SEQ ID NO: 5に対応するアミノ酸配列
SEQ ID NO: 7:EM939の当該遺伝子のゲノムDNAの内のコーディング配列
SEQ ID NO: 8:SEQ ID NO: 7に対応するアミノ酸配列
SEQ ID NO: 9:EM1327の当該遺伝子のゲノムDNAの内のコーディング配列
SEQ ID NO: 10:SEQ ID NO: 9に対応するアミノ酸配列
SEQ ID NO: 11:日本晴のゲノムDNAの配列
SEQ ID NO: 12:台中65号のゲノムDNAの配列
SEQ ID NO: 13:EM939 のゲノムDNAの配列
SEQ ID NO: 14:EM1327のゲノムDNAの配列
SEQ ID NO: 15:PCRプライマー
SEQ ID NO: 16:PCRプライマー

Claims (6)

  1. 下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、または(f)のポリヌクレオチドを機能可能に有し、貯蔵タンパク質を貯蔵型液胞に集積する植物において該ポリヌクレオチドを機能不能とすることにより、貯蔵タンパク質の集積性が改変された植物を生産する方法:
    (a)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 11またはSEQ ID NO: 12に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (b)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 11またはSEQ ID NO: 12に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ貯蔵タンパク質を貯蔵型液胞に集積する機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    (c)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 11またはSEQ ID NO: 12に記載の塩基配列と少なくとも90%の同一性を有し、かつ貯蔵タンパク質を貯蔵型液胞に集積する機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    (d)SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 6に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド;
    (e)SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 6に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換、付加および/または挿入したアミノ酸配列からなり、かつ貯蔵タンパク質を貯蔵型液胞に集積する機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    (f)SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 6に記載のアミノ酸配列と少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ貯蔵タンパク質を貯蔵型液胞に集積する機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  2. 請求項1に定義された(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、または(f)のポリヌクレオチドが機能不能である植物へ、請求項1に定義された(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、または(f)のポリヌクレオチドを導入することにより、貯蔵タンパク質の集積性が改変された植物を生産する方法。
  3. 貯蔵タンパク質が、グルテリンである、請求項1または2に記載の生産方法。
  4. 請求項1に定義したポリヌクレオチドを含むベクター、またはSEQ ID NO: 7またはSEQ ID NO: 9の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含むベクターを用いて形質転換された、形質転換植物またはその子孫。
  5. 植物が、イネ、大豆、エンバク、カボチャ、またはシロイヌナズナである、請求項4に記載の形質転換植物またはその子孫。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の生産方法により得られた植物より得られる、または請求項4または5に記載の植物若しくはその子孫より得られる、収穫物、繁殖材料または加工品。
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