以下、本発明を詳しく説明する。本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味する。また、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムは、第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層を、順次、備えるフィルムであり、その概略断面は、図1及び図2に例示される。即ち、図1の太陽電池用裏面保護フィルム1Aは、第1樹脂層11、第2樹脂層12及び第3樹脂層13を、順次、備える積層型フィルムである。図2の太陽電池用裏面保護フィルム1Bは、第1樹脂層11、第2樹脂層12及び第3樹脂層13に加えて、他の層14及び15を更に備える積層型フィルムである。そして、本発明において、太陽電池用裏面保護フィルムは、第1樹脂層の表面で、太陽電池モジュールの充填材部の露出面と接着させるために用いられる。
上記第1樹脂層は、含珪素熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂(以下、「熱可塑性樹脂(I)」という。)を含む層であり、この熱可塑性樹脂(I)を含む熱可塑性樹脂組成物(以下、「第1熱可塑性樹脂組成物」という。)を用いて得られた層である。そして、この第1樹脂層は、太陽電池素子を包埋する充填材部との接着性に優れ、且つ、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムに対して、主として可撓性を与える作用を有する層である。
上記第2樹脂層は、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムにおける基層であり、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムに対して、主として耐熱性を与える作用を有する層であり、樹脂成分を含むものであれば、特に限定されないが、好ましくは熱可塑性樹脂(以下、「熱可塑性樹脂(II)」という。)を含む熱可塑性樹脂組成物(以下、「第2熱可塑性樹脂組成物」という。)を用いて得られた層である。
上記第3樹脂層は、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムに対して、主として可撓性を与える作用を有する層であり、樹脂成分を含むものであれば、特に限定されない。また、この第3樹脂層は、好ましくは熱可塑性樹脂(以下、「熱可塑性樹脂(III)」という。)を含む熱可塑性樹脂組成物(以下、「第3熱可塑性樹脂組成物」という。)を用いて得られた層である。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムは、好ましくは耐熱性及び可撓性を有するフィルムであり、少なくとも上記第1熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、フィルム形成性を有する組成物である。また、本発明において、特に好ましくは、第1、第2及び第3熱可塑性樹脂組成物がフィルム形成性を有する組成物である。
尚、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムに、耐熱性及び可撓性を付与するためには、熱可塑性樹脂(I)のガラス転移温度(以下、「Tg」という。)及び熱可塑性樹脂(III)のTgは、熱可塑性樹脂(II)のTgと同じである又はそれより低いことが好ましい。十分な可撓性を付与するためには、熱可塑性樹脂(I)のTg及び熱可塑性樹脂(III)のTgは、熱可塑性樹脂(II)のTgより低いことが好ましい。熱可塑性樹脂(I)のTg及び熱可塑性樹脂(II)のTgの差は、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上であり、熱可塑性樹脂(II)のTg及び熱可塑性樹脂(III)のTgの差は、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上である。
1つの樹脂層に熱可塑性樹脂が2種以上含まれて、示差走査熱量計(DSC)により得られるチャートにおいて複数のTgが検出された場合、複数のTgのうち、最高温度をTgとして採用するものとする。
上記第1樹脂層は、含珪素熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂(I)を含有する第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層である。
尚、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムに可撓性及び耐熱性を付与する観点から、この熱可塑性樹脂(I)のTgは、好ましくは90℃〜200℃、より好ましくは95℃〜180℃、更に好ましくは100℃〜160℃、特に好ましくは105℃〜140℃である。第1熱可塑性樹脂組成物が複数の熱可塑性樹脂を含む場合、少なくとも1つの樹脂は、上記範囲のTgを有する。好ましくは、少なくとも1つの含珪素熱可塑性樹脂は、上記範囲のTgを有する。
上記熱可塑性樹脂(I)は、含珪素熱可塑性樹脂であってよいし、この含珪素熱可塑性樹脂と、珪素非含有熱可塑性樹脂とからなるものであってもよい。そして、第1熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(I)からなるものであってよいし、この熱可塑性樹脂(I)と、添加剤とを含有する組成物であってもよい。
上記含珪素熱可塑性樹脂は、分子中に珪素原子を含む樹脂であり、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む芳香族ビニル樹脂(以下、「含珪素芳香族ビニル系樹脂」という。)、ポリオレフィン樹脂(含珪素ポリオレフィン系樹脂)、ポリ塩化ビニル樹脂(含珪素ポリ塩化ビニル系樹脂)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(含珪素ポリ塩化ビニリデン系樹脂)、飽和ポリエステル樹脂(含珪素飽和ポリエステル系樹脂)、ポリカーボネート樹脂(含珪素ポリカーボネート系樹脂)、ポリアミド樹脂(含珪素ポリアミド系樹脂)、アクリル樹脂(含珪素アクリル系樹脂)、フッ素樹脂(含珪素フッ素系樹脂)、珪素樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせてアロイとして用いることができる。
尚、上記含珪素熱可塑性樹脂における、重合性不飽和化合物を含む単量体を重合して得られる樹脂の形態としては、含珪素重合性不飽和化合物を含む単量体を重合して得られた(共)重合体からなる樹脂;珪素非含有ゴムの存在下、含珪素重合性不飽和化合物を含む単量体を重合して得られたグラフト重合樹脂;含珪素ゴムの存在下、含珪素重合性不飽和化合物を含まない単量体を重合して得られたグラフト重合樹脂;含珪素ゴムの存在下、含珪素重合性不飽和化合物を含む単量体を重合して得られたグラフト重合樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、太陽電池素子を包埋する、エチレン・酢酸ビニル共重合体組成物等を含む充填材部との接着性、耐熱性及び耐候性に優れることから、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を有する含珪素芳香族ビニル系樹脂が好ましい。
尚、上記第1熱可塑性樹脂組成物に含まれる含珪素熱可塑性樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂(I)の全量に対して、好ましくは1〜100質量%、より好ましくは3〜100質量%、更に好ましくは10〜90質量%である。上記割合であれば、上記第1熱可塑性樹脂組成物を含む第1樹脂層は、太陽電池素子を包埋する、エチレン・酢酸ビニル共重合体組成物等を含む充填材部との接着性、耐熱性及び耐候性に優れる。
一方、上記珪素非含有熱可塑性樹脂としては、芳香族ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位を含むアクリル樹脂、フッ素樹脂や、珪素非含有ゴムの存在下、含珪素重合性不飽和化合物を含まない単量体を重合して得られた珪素非含有グラフト重合樹脂(ジエン系グラフト重合樹脂、アクリル系グラフト重合樹脂等)等が挙げられる。これらの樹脂は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記含珪素芳香族ビニル系樹脂は、以下に例示される。
[1]芳香族ビニル化合物と、含珪素重合性不飽和化合物とを含む単量体(以下、「単量体(m11)」という。)を重合して得られた含珪素共重合体
[2]珪素非含有ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物と、含珪素重合性不飽和化合物とを含む単量体(以下、「単量体(m12)」という。)を重合して得られたグラフト重合樹脂(以下、「グラフト重合樹脂(g11)」という。)
[3]含珪素ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物を含む単量体(以下、「単量体(m13)」という。)を重合して得られたグラフト重合樹脂(以下、「グラフト重合樹脂(g12)」という。)
これらのうち、好ましくは態様[2]〜[3]であり、特に好ましくは態様[3]である。
上記態様[1]の含珪素共重合体は、芳香族ビニル化合物と、含珪素重合性不飽和化合物とを含む単量体(m11)を重合して得られた重合体である。
芳香族ビニル化合物は、少なくとも1つのビニル結合と、少なくとも1つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されない。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの芳香族ビニル化合物のうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
また、含珪素重合性不飽和化合物は、珪素原子を有し、少なくとも1つのビニル結合を有する化合物であれば、特に限定されず、例えば、下記一般式(1)で表される化合物等を用いることができる。
R1Si(OR2)3 (1)
〔式中、R1は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する炭素数1〜20の有機基であり、R2は、互いに同一又は異なって、水素原子、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である。〕
尚、炭素−炭素二重結合としては、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ノルボルネニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
上記一般式(1)で表される含珪素重合性不飽和化合物としては、ビニルトリアルコキシシラン化合物、3−メタクリロキシアルキルトリアルコキシシラン化合物、3−アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン化合物、アリルトリアルコキシシラン化合物、ノルボルネニルトリアルコキシシラン化合物、シクロヘキセニルエチルトリアルコキシシラン化合物等が挙げられる。
上記ビニルトリアルコキシシラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン等が挙げられる。
上記3−メタクリロキシアルキルトリアルコキシシランとしては、3−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシメチルトリプロポキシシラン、3−メタクリロキシエチルトリプロポキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリブトキシシラン等が挙げられる。
上記3−アクリロキシアルキルトリアルコキシシランとしては、3−アクリロキシメチルトリメトキシシラン、3−アクリロキシエチルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシメチルトリエトキシシラン、3−アクリロキシエチルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシメチルトリプロポキシシラン、3−アクリロキシエチルトリプロポキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリブトキシシラン等が挙げられる。
上記アリルトリアルコキシシランとしては、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリプロポキシシラン、アリルトリブトキシシラン等が挙げられる。
上記ノルボルネニルトリアルコキシシランとしては、ノルボルネニルトリメトキシシラン、ノルボルネニルトリエトキシシラン、ノルボルネニルトリプロポキシシラン、ノルボルネニルトリブトキシシラン等が挙げられる。
上記シクロヘキセニルエチルトリアルコキシシランとしては、シクロヘキセニルエチルトリメトキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリエトキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリプロポキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリブトキシシラン等が挙げられる。
また、上記以外の他の含珪素重合性不飽和化合物としては、ジエトキシメチルビニルシラン、トリス(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、1−(m−ビニルフェニル)メチルジメチルイソプロポキシシラン、3−(p−ビニルフェノキシ)プロピルメチルジエトキシシラン、3−(p−ビニルベンゾイロキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(m−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(o−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、1−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、1−(m−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、1−(o−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、1−(o−ビニルフェニル)−1,1,2−トリメチル−2,2−ジメトキシジシラン、1−(p−ビニルフェニル)−1,1−ジフェニル−3−エチル−3,3−ジエトキシジシロキサン、m−ビニルフェニル−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジフェニルシラン、[3−(p−イソプロペニルベンゾイルアミノ)プロピル]フェニルジプロポキシシラン、N−3−(メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート、3−[トリス(ジメチルビニルシロキシ)]プロピルメタクリレート、3−(トリクロロシリル)プロピルメタクリレート、トリメチルシリルメタクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)−3−メタクリロキシプロピルシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、アクリロキシトリメチルシラン、イタコン酸ビストリメチルシリル、(メタクリロキシメチル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、2−(トリメチルシロキシ)エチルメタクリレ−ト、2−(アクリロキシエトキシ)トリメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリス(トリメチルシロキシ)シラン、トリクロロビニルシラン、アリルトリクロロシラン等が挙げられる。
上記含珪素重合性不飽和化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記態様[1]の含珪素共重合体を形成する単量体(m11)は、芳香族ビニル化合物と、含珪素重合性不飽和化合物とからなるものであってよいし、芳香族ビニル化合物と、含珪素重合性不飽和化合物と、他のビニル系化合物とからなるものであってもよい。他のビニル系化合物としては、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
他のビニル系化合物のうち、上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−クロロ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらのシアン化ビニル化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
上記マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらのマレイミド系化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。尚、マレイミド系化合物に由来する構造単位を導入する他の方法としては、例えば、無水マレイン酸を共重合し、その後イミド化する方法でもよい。
上記不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの不飽和酸無水物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ヒドロキシル基含有不飽和化合物としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、ヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸5−ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸7−ヒドロキシヘプチル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸9−ヒドロキシノニル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸11−ヒドロキシウンデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシドデシル等が挙げられる。これらのヒドロキシル基含有不飽和化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
上記アミノ基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジ−n−プロピルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸3−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3−ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−tert−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸フェニルアミノエチル、4−アミノスチレン、4−ジメチルアミノスチレン、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、(メタ)アクリルアミン、N−メチル(メタ)アクリルアミン等が挙げられる。これらのアミノ基含有不飽和化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記アミド基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらのアミド基含有不飽和化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記態様[1]の含珪素共重合体を構成する、含珪素重合性不飽和化合物に由来する構造単位の含有割合は、構造単位の全量に対して、好ましくは0.01〜15質量%、より好ましくは0.1〜10質量%である。上記割合であれば、この態様[1]の含珪素共重合体を含む第1樹脂層と、太陽電池素子を包埋する、エチレン・酢酸ビニル共重合体組成物等を含む充填材部との接着性、耐熱性及び耐候性に優れる。
また、上記態様[1]の含珪素共重合体において、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位、及び、含珪素重合性不飽和化合物に由来する構造単位の含有割合は、特に限定されないが、これらの合計量は、上記含珪素共重合体を構成する構造単位の全量に対して、好ましくは40〜100質量%、より好ましくは60〜90質量%である。上記割合であれば、この態様[1]の含珪素共重合体を含む第1樹脂層と、太陽電池素子を包埋する、エチレン・酢酸ビニル共重合体組成物等を含む充填材部との接着性、耐熱性及び耐候性に優れる。
上記態様[1]の含珪素共重合体の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう。)は、耐衝撃性、可撓性、成膜性、靭性等の観点から、好ましくは30,000〜1,000,000、より好ましくは50,000〜500,000である。上記Mwは、標準ポリスチレンを用いたGPCにより測定することができる。
上記態様[1]の含珪素共重合体は、重合開始剤の存在下、上記単量体を重合することにより製造される。重合方法は、溶液重合等、公知の方法が適用される。
上記態様[2]のグラフト重合樹脂(g11)は、珪素非含有ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物と、含珪素重合性不飽和化合物とを含む単量体(m12)を重合して得られたグラフト重合樹脂である。
また、上記態様[3]のグラフト重合樹脂(g12)は、含珪素ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物を含む単量体(m13)を重合して得られたグラフト重合樹脂である。
上記態様[2]及び[3]において用いられる、珪素非含有ゴム及び含珪素ゴムの構成成分は、以下に説明されるが、物理的性質(形状、大きさ、分子量等)は、特に限定されない。
上記ゴム成分の形状は、特に限定されず、粒子状(球状、略球状)、直線状、曲線状等とすることができる。粒子状である場合、その体積平均粒子径は、好ましくは5〜2,000nmであり、より好ましくは10〜1,800nmであり、更に好ましくは50〜1,500nmである。体積平均粒子径が上記の範囲にあれば、第1熱可塑性樹脂組成物の加工性及び得られる第1樹脂層の耐衝撃性等に優れる。尚、上記体積平均粒子径は、電子顕微鏡写真を用いた画像解析、レーザー回折法、光散乱法等により測定することができる。
上記珪素非含有ゴムとしては、アクリル系ゴム;ポリブタジエン、ポリイソプレン等の単独重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、天然ゴム等のジエン系ゴム;共役ジエン系化合物よりなる単位を含む(共)重合体を水素添加してなる重合体からなるゴム;エチレン単位と、炭素数3以上のα−オレフィンからなる単位とを含むエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム;ウレタン系ゴム等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記アクリル系ゴムは、好ましくは、アルキル基の炭素数が2〜8のアクリル酸アルキルエステル化合物に由来する構造単位を含む(共)重合体である。この構造単位の含有量は、構造単位の全量に対して、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
上記アクリル酸アルキルエステル化合物としては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、アクリル酸アルキルエステル化合物は、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
上記アクリル系ゴムが、他の単量体に由来する構造単位を含む場合、他の単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、ビニルエステル化合物、メタクリル酸アルキルエステル化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物、メトキシメチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、プロポキシメチル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシ−1−メチル−プロピル(メタ)アクリレート、2−プロポキシ−1−メチルプロピル(メタ)アクリレート、2−ブトキシ−1−メチルプロピル(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、含フッ素不飽和化合物等の単官能性単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のモノ又はポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルサクシネート、トリアリルトリアジン等のジ又はトリアリル化合物、アリル(メタ)アクリレート等のアリル化合物、1,3−ブタジエン等の共役ジエン化合物等の、2以上の不飽和結合を有する多官能性単量体等が挙げられる。本発明においては、他の単量体は、多官能性単量体を含むことが好ましい。即ち、上記アクリル系ゴムは、上記多官能性単量体に由来する構造単位を含む共重合体であることが好ましい。
好ましいアクリル系ゴムを構成する、多官能性単量体に由来する構造単位の含有量は、低温衝撃性、可撓性等の観点から、構造単位の全量に対して、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜8質量%、更に好ましくは0.1〜5質量%である。
上記アクリル系ゴムのTgは、低温衝撃性、可撓性等の観点から、好ましくは−10℃以下である。
上記アクリル系ゴムを製造する方法としては、乳化重合等が挙げられる。この場合、乳化剤の種類及びその使用量、開始剤の種類及びその使用量、重合時間、重合温度、攪拌条件等の製造条件を選択することにより、上記体積平均粒子径等を調整することができる。また、上記体積平均粒子径(粒子径分布)の他の調整方法としては、異なる粒子径を有する上記アクリル系ゴムの2種以上をブレンドする方法でもよい。
上記含珪素ゴムとしては、含珪素重合性不飽和化合物と、ブタジエン等の共役ジエン化合物、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン化合物及びアクリル酸アルキルエステル化合物から選ばれた少なくとも1種と、を含む単量体を共重合して得られたゴム(水添ゴムでもよい);1種又は2種以上のオルガノシロキサンの重縮合により得られたポリオルガノシロキサンからなるシリコーンゴム;オルガノシロキサンと、含珪素架橋剤(3又は4のアルコキシ基を有する飽和シラン化合物)とを用いて得られたゴム;オルガノシロキサンと、含珪素重合性不飽和化合物とを用いて得られたゴム;オルガノシロキサンと、含珪素架橋剤(3又は4のアルコキシ基を有する飽和シラン化合物)と、含珪素重合性不飽和化合物とを用いて得られたゴム;共役ジエン化合物と、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物等から選ばれた少なくとも1種の珪素非含有重合性不飽和化合物と、含珪素カップリング剤(アルキルジクロロシラン化合物、アルキルトリクロロシラン化合物、ジアルキルクロロシラン化合物、トリクロロシラン、テトラクロロシラン、テトラアルコキシシラン化合物等)とを用いて得られたゴム等が挙げられる。上記含珪素ゴムは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記含珪素ゴムのうちの2種以上を組み合わせた場合、並びに、上記含珪素ゴムの少なくとも1種と、他のゴムとを組み合わせた場合は、複合ゴムといわれることがあるが、この複合ゴムにおいては、複数のゴムが化学結合していてよいし、絡み合いを有してよいし、単なる共存物であってもよい。
上記含珪素ゴムとしては、含珪素重合性不飽和化合物と、アクリル酸アルキルエステル化合物とを含む単量体を共重合して得られたゴム(以下、「含珪素ゴム(s1)」という。)、オルガノシロキサンと、含珪素重合性不飽和化合物とを用いて得られたゴム(以下、「含珪素ゴム(s2)」という。)、オルガノシロキサンと、含珪素架橋剤(3又は4のアルコキシ基を有する飽和シラン化合物)と、含珪素重合性不飽和化合物とを用いて得られたゴム(以下、「含珪素ゴム(s3)」という。)、並びに、複合ゴム(以下、「含珪素ゴム(s4)」という。)が好ましい。
上記含珪素ゴム(s1)の形成に用いる単量体のうち、含珪素重合性不飽和化合物は、上記態様[1]において例示した化合物を用いることができる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、含珪素重合性不飽和化合物は、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン及び3−(p−ビニルベンゾイロキシ)プロピルメチルジメトキシシランが好ましく、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシランが特に好ましい。上記単量体100質量%に含まれる含珪素重合性不飽和化合物の含有量は、好ましくは0.01〜15質量%、より好ましくは0.1〜10質量%である。
また、アクリル酸アルキルエステル化合物は、好ましくは、アルキル基の炭素数が2〜8のアクリル酸アルキルエステルであり、上記アクリル系ゴムの形成に用いるアクリル酸アルキルエステル化合物において例示した化合物を用いることができる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、アクリル酸アルキルエステル化合物は、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。上記単量体100質量%に含まれるアクリル酸アルキルエステル化合物の含有量は、好ましくは85〜99.99質量%、より好ましくは90〜99.9質量%である。
上記含珪素ゴム(s1)の形成に用いる単量体は、含珪素重合性不飽和化合物と、アクリル酸アルキルエステル化合物とからなるものであってよいし、含珪素重合性不飽和化合物と、アクリル酸アルキルエステル化合物と、他の重合性化合物とからなるものであってもよい。他の重合性化合物としては、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、アルコキシ基含有不飽和化合物、含フッ素不飽和化合物、2以上の不飽和結合を有する多官能性単量体等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、上記単量体が多官能性単量体を含むことが好ましく、上記アクリル系ゴムの形成に用いる多官能性単量体において例示した化合物を用いることができる。その使用量は、上記単量体100質量%に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
上記含珪素ゴム(s1)のTgは、低温衝撃性、可撓性等の観点から、好ましくは−10℃以下である。
上記含珪素ゴム(s2)は、オルガノシロキサンと、含珪素重合性不飽和化合物とを用いて得られたゴムであり、オルガノシロキサンセグメントと、他のセグメントとを含むポリオルガノシロキサン系ゴムである。
また、上記含珪素ゴム(s3)は、オルガノシロキサンと、含珪素架橋剤(3又は4のアルコキシ基を有する飽和シラン化合物)と、含珪素重合性不飽和化合物とを用いて得られたゴムであり、オルガノシロキサンセグメントと、他のセグメントとを含むポリオルガノシロキサン系ゴムである。
上記含珪素ゴム(s2)及び(s3)は、好ましくは、乳化重合でラテックスの状態で得られる、例えば、米国特許第2,891,920号明細書、同第3,294,725号明細書等に記載された方法により製造されたポリオルガノシロキサン系ゴムとすることができる。
上記ポリオルガノシロキサン系ゴムは、例えば、ホモミキサー又は超音波混合機を使用し、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸等のスルホン酸系乳化剤の存在下に、オルガノシロキサンと水とを剪断混合し、その後、縮合する方法により得られたラテックスに含まれるシリコーンゴムであることが好ましい。アルキルベンゼンスルホン酸は、オルガノシロキサンの乳化剤として作用するとともに、重合開始剤としても作用するので好適である。この際、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、アルキルスルホン酸金属塩等を併用すると、グラフト重合樹脂を製造する際に、シリコーンゴムを安定に維持する効果があるので好ましい。尚、本発明においては、上記オルガノシロキサンの使用に際して、含珪素重合性不飽和化合物を併用しており、重合体末端が、ジメチルビニルシリル基、メチルフェニルビニルシリル基等で封止されていてもよい。また、上記ポリオルガノシロキサン系ゴムの末端は、例えば、ヒドロキシル基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基等で封止されていてもよい。
上記反応に用いるオルガノシロキサンは、例えば、下記一般式(2)で表される構造単位を有する化合物である。
(RmSiO(4−m)/2) (2)
〔式中、Rは置換又は非置換の1価の炭化水素基であり、mは0〜3の整数を示す。〕
上記一般式(2)で表される化合物の構造は、直鎖状、分岐状又は環状であるが、上記化合物は、好ましくは環状構造を有するオルガノシロキサンである。このオルガノシロキサンが有するR、即ち、1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;及び、これら炭化水素基における炭素原子に結合した水素原子の一部がハロゲン原子、シアノ基等で置換された基;並びにアルキル基の水素原子の少なくとも1個がメルカプト基で置換された基等が挙げられる。
上記オルガノシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等の環状化合物の他に、直鎖状又は分岐状のオルガノシロキサンを用いることができる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
尚、上記オルガノシロキサンは、予め縮合された、例えば、Mwが500〜10,000程度のポリオルガノシロキサンであってもよい。また、オルガノシロキサンがポリオルガノシロキサンである場合、その分子鎖末端は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基等で封止されていてもよい。
また、上記反応に用いる含珪素重合性不飽和化合物は、上記態様[1]において例示した化合物を用いることができる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、含珪素重合性不飽和化合物は、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン及び3−(p−ビニルベンゾイロキシ)プロピルメチルジメトキシシランが好ましく、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシランが特に好ましい。
上記含珪素ゴム(s2)及び(s3)の製造に際して、上記オルガノシロキサンと、上記含珪素重合性不飽和化合物とを併用する場合、上記含珪素重合製不飽和化合物の使用量は、これらの合計量100質量%に対し、好ましくは0.01〜15質量%、より好ましくは0.05〜12質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。上記含珪素重合性不飽和化合物の使用量が多すぎると、得られる第1樹脂層の耐衝撃性及び耐候性が十分でない場合がある。
上記含珪素ゴム(s3)の製造に際して用いられる含珪素架橋剤としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の3官能性架橋剤、テトラエトキシシラン等の4官能性架橋剤等が挙げられる。尚、これらの化合物を予め縮重合させてなる架橋性プレポリマーを使用してもよい。これらは、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記含珪素架橋剤を用いて得られた含珪素ゴム(s3)の存在下、芳香族ビニル化合物を含む単量体(m3)を重合して得られたグラフト重合樹脂を含む第1樹脂層は、耐衝撃性に特に優れる。
上記含珪素ゴム(s3)の製造に際して用いられる含珪素架橋剤の使用量は、オルガノシロキサン、グラフト交叉剤(通常、含珪素重合性不飽和化合物である)及び含珪素架橋剤の合計量100質量%に対し、通常、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、更に好ましくは0.01〜5質量%である。上記含珪素架橋剤の使用量が、10質量%を超えると、得られるポリオルガノシロキサン系ゴムの柔軟性が損なわれ、得られる第1樹脂層の可撓性が低下する場合がある。
上記含珪素ゴム(s2)又は(s3)の製造に用いられる乳化剤の使用量は、オルガノシロキサン及び含珪素重合性不飽和化合物の合計量100質量部に対し、通常、0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜3質量部である。
上記含珪素ゴム(s2)又は(s3)の製造に用いられる水の使用量は、オルガノシロキサン及び含珪素重合性不飽和化合物の合計量100質量部に対し、通常、100〜500質量部、好ましくは200〜400質量部である。
また、上記含珪素ゴム(s2)又は(s3)の製造の際の縮合温度は、通常、5℃〜100℃である。
上記含珪素ゴム(s2)及び(s3)の体積平均粒子径は、通常、500nm以下、好ましくは400nm以下、より好ましくは50〜400nmである。体積平均粒子径が500nm以下であれば、第1熱可塑性樹脂組成物の加工性及び得られる第1樹脂層の耐衝撃性等に優れる。一方、上記体積平均粒子径が500nmを超えると、第1樹脂層の光沢が低下する等、外観性が劣る傾向にある。
尚、上記体積平均粒子径は、含珪素ゴム(s2)及び(s3)の製造時に用いる乳化剤及び水の使用量、オルガノシロキサンの添加方法、ホモミキサー又は超音波混合機を使用したときの分散の程度等によって、容易に制御することができる。
上記含珪素ゴム(s2)のTgは、低温衝撃性、可撓性等の観点から、好ましくは−150℃〜−30℃である。
上記含珪素ゴム(s3)のTgは、低温衝撃性、可撓性等の観点から、好ましくは−150℃〜−30℃である。
上記複合ゴム(s4)は、以下に例示される。これらの態様においては、上記のように、ゴムどうしが化学結合していてよいし、絡み合いを有してよいし、単なる共存物であってもよい。
(s4−1)上記含珪素ゴム(s1)及び(s2)の組合せ
(s4−2)上記含珪素ゴム(s1)及び(s3)の組合せ
(s4−3)上記含珪素ゴム(s1)、(s2)及び(s3)の組合せ
(s4−4)アクリル系ゴム及び上記含珪素ゴム(s2)の組合せ
(s4−5)アクリル系ゴム及び上記含珪素ゴム(s3)の組合せ
(s4−6)アクリル系ゴム、上記含珪素ゴム(s2)及び(s3)の組合せ
上記態様(s4−4)〜(s4−6)の複合ゴムにおいて、特に、ゴムどうしが絡み合いを有する場合、「シリコーン・アクリル複合ゴム」といわれることがあり、例えば、特開平4−239010号公報に記載された方法により製造することができる。これらの態様の市販品としては、三菱レイヨン社製「メタブレンSX−006」(商品名)等が挙げられる。
尚、上記態様[2]及び[3]に係る上記グラフト重合樹脂(g11)及び(g12)は、一般に、ゴム強化樹脂といわれる樹脂であり、単量体がゴムの周囲で重合した結果、ゴムの、表面及び内部のうちの少なくとも表面にグラフト重合体部を有する樹脂である。
上記態様[2]におけるグラフト重合樹脂(g11)の形成に用いられる珪素非含有ゴムとしては、アクリル系ゴム、ジエン系ゴム等が挙げられるが、アクリル系ゴムが好ましい。
上記グラフト重合樹脂(g11)の形成に用いられる単量体(m12)に含まれる芳香族ビニル化合物及び含珪素重合性不飽和化合物は、上記態様[1]において例示した化合物を用いることができる。上記単量体(m12)に含まれる芳香族ビニル化合物及び含珪素重合性不飽和化合物の割合は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは85〜99.99質量%及び0.01〜15質量%、より好ましくは90〜99.95質量%及び0.05〜10質量%である。
上記単量体(m12)は、芳香族ビニル化合物と、含珪素重合性不飽和化合物とからなるものであってよいし、芳香族ビニル化合物と、含珪素重合性不飽和化合物と、他のビニル系化合物とからなるものであってもよい。後者の場合、上記単量体(m12)に含まれる芳香族ビニル化合物及び含珪素重合性不飽和化合物の合計量の割合は、通常、60質量%以上である。他のビニル系化合物としては、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記グラフト重合樹脂(g11)は、上記珪素非含有ゴムの存在下に、上記単量体(m12)を重合することにより製造されたものであるが、その製造方法は、特に限定されず、例えば、乳化重合、溶液重合、塊状重合等を適用することができる。
上記グラフト重合樹脂(g11)の製造に際して用いられる上記珪素非含有ゴム及び上記単量体(m12)の使用量の割合は、上記珪素非含有ゴム100質量部に対して、上記単量体(m12)が、好ましくは25〜400質量部、より好ましくは40〜300質量部である。
また、上記態様[3]のグラフト重合樹脂(g12)の形成に用いられる単量体(m13)は、芳香族ビニル化合物のみからなるものであってよいし、芳香族ビニル化合物と、含珪素重合性不飽和化合物を除く他のビニル系化合物とからなるものであってもよい。後者の場合、上記単量体(m13)に含まれる芳香族ビニル化合物の割合は、好ましくは20質量%以上100質量%未満、より好ましくは40〜90質量%である。他のビニル系化合物としては、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記グラフト重合樹脂(g12)は、上記含珪素ゴムの存在下に、上記単量体(m13)を重合することにより製造されたものであるが、その製造方法は、特に限定されず、例えば、乳化重合、溶液重合、塊状重合等を適用することができる。
上記グラフト重合樹脂(g12)の製造に際して用いられる上記含珪素ゴム及び上記単量体(m13)の使用量の割合は、上記含珪素ゴム100質量部に対して、上記単量体(m13)が、好ましくは25〜400質量部、より好ましくは40〜300質量部である。
本発明においては、上記のように、含珪素芳香族ビニル系樹脂は、他の熱可塑性樹脂と組み合わせて熱可塑性樹脂(I)としてもよい。他の熱可塑性樹脂は、分子中に珪素原子を含み且つ芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含まない樹脂、分子中に珪素原子を含まず且つ芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む樹脂、及び、分子中に珪素原子を含まず且つ芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含まない樹脂が挙げられる。
分子中に珪素原子を含み且つ芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含まない樹脂としては、含珪素ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物を含まない単量体(以下、「単量体(m14)」という。)を重合して得られたグラフト重合樹脂(以下、「グラフト重合樹脂(g13)」という。)、含珪素アクリル系樹脂、含珪素ポリオレフィン系樹脂、含珪素ポリ塩化ビニル系樹脂、含珪素ポリ塩化ビニリデン系樹脂、含珪素飽和ポリエステル系樹脂、含珪素ポリカーボネート系樹脂、含珪素ポリアミド系樹脂、含珪素フッ素系樹脂、珪素樹脂等が挙げられる。
分子中に珪素原子を含まず且つ芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む樹脂としては、芳香族ビニル化合物を含む単量体(以下、「単量体(m15)」という。)を重合して得られた芳香族ビニル(共)重合体、及び、珪素非含有ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物を含む単量体(以下、「単量体(m16)」という。)を重合して得られた珪素非含有グラフト重合樹脂(以下、「グラフト重合樹脂(g14)」という。)が挙げられる。
また、分子中に珪素原子を含まず且つ芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含まない樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位を含むアクリル樹脂、フッ素樹脂や、珪素非含有ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物、含珪素重合性不飽和化合物を含まない単量体(以下、「単量体(m17)」という。)を重合して得られた珪素非含有グラフト重合樹脂(以下、「グラフト重合樹脂(g15)」という。)等が挙げられる。このグラフト重合樹脂(g15)としては、ジエン系グラフト重合樹脂、アクリル系グラフト重合樹脂等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂(I)が、含珪素芳香族ビニル系樹脂と、他の熱可塑性樹脂とからなる場合、含珪素芳香族ビニル系樹脂及びグラフト重合樹脂(g14)の組み合わせ、含珪素芳香族ビニル系樹脂及びグラフト重合樹脂(g15)の組み合わせ、等とすることができる。
上記含珪素熱可塑性樹脂としては、上記のように、含珪素芳香族ビニル系樹脂以外の樹脂であってもよく、その具体例は、上記グラフト重合樹脂(g13)のほか、芳香族ビニル化合物を含まない重合性不飽和化合物と、含珪素重合性不飽和化合物とを含む単量体を重合して得られた含珪素共重合体等が挙げられる。
これらの樹脂は、上記態様[1]〜[3]の樹脂成分、芳香族ビニル化合物を含む単量体(以下、「単量体(m15)」という。)を重合して得られた芳香族ビニル(共)重合体、上記グラフト重合樹脂(g14)等の、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を有する樹脂と組み合わせて用いることができ、その場合には、形成される第1樹脂層と、太陽電池素子を包埋する、エチレン・酢酸ビニル共重合体組成物等を含む充填材部との接着性、耐熱性及び耐候性に優れる。
上記第1熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(I)が、グラフト重合樹脂(g13)と、単量体(m15)を重合して得られた芳香族ビニル(共)重合体、及び、グラフト重合樹脂(g14)から選ばれた少なくとも1種とを組み合わせてなる樹脂である場合(以下、態様[4]という。)について、説明する。
即ち、上記態様[4]は、以下に例示される。
(4−1)グラフト重合樹脂(g13)と、芳香族ビニル(共)重合体とからなる樹脂
(4−2)グラフト重合樹脂(g13)と、珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)とからなる樹脂
(4−3)グラフト重合樹脂(g13)と、珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)と、芳香族ビニル(共)重合体とからなる樹脂
上記グラフト重合樹脂(g13)の形成に用いる含珪素ゴムとしては、上記含珪素ゴム(s1)〜(s4)が好ましい。
また、上記グラフト重合樹脂(g13)の形成に用いる単量体(m14)としては、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等から選ばれた少なくとも1種の化合物が用いられる。
上記グラフト重合樹脂(g13)は、上記含珪素ゴムの存在下に、上記単量体(m14)を重合することにより製造されたものであるが、その製造方法は、特に限定されず、例えば、乳化重合、溶液重合、塊状重合等を適用することができる。
上記グラフト重合樹脂(g13)の製造に際して用いられる上記含珪素ゴム及び上記単量体(m14)の使用量の割合は、上記含珪素ゴム100質量部に対して、上記単量体(m14)が、好ましくは25〜400質量部、より好ましくは40〜300質量部である。
上記芳香族ビニル(共)重合体の形成に用いられる単量体(m15)は、芳香族ビニル化合物のみからなるものであってよいし、芳香族ビニル化合物と、含珪素重合性不飽和化合物を除く他のビニル系化合物とからなるものであってもよい。後者の場合、上記単量体(m15)に含まれる芳香族ビニル化合物の割合は、好ましくは20質量%以上100質量%未満、より好ましくは40〜90質量%である。他のビニル系化合物としては、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、シアン化ビニル化合物が好ましい。
上記芳香族ビニル(共)重合体は、上記単量体(m15)を重合することにより製造されたものであるが、その製造方法は、特に限定されず、例えば、乳化重合、溶液重合、塊状重合等を適用することができる。
上記珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)の形成に用いる珪素非含有ゴムとしては、アクリル系ゴム、ジエン系ゴム等が挙げられるが、アクリル系ゴムが好ましい。
上記珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)の形成に用いる単量体(m16)は、芳香族ビニル化合物のみからなるものであってよいし、芳香族ビニル化合物と、含珪素重合性不飽和化合物を除く他のビニル系化合物とからなるものであってもよい。後者の場合、上記単量体(m16)に含まれる芳香族ビニル化合物の割合は、好ましくは20質量%以上100質量%未満、より好ましくは40〜90質量%である。他のビニル系化合物としては、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)は、上記珪素非含有ゴムの存在下に、上記単量体(m16)を重合することにより製造されたものであるが、その製造方法は、特に限定されず、例えば、乳化重合、溶液重合、塊状重合等を適用することができる。
上記珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)の製造に際して用いられる上記珪素非含有ゴム及び上記単量体(m16)の使用量の割合は、上記珪素非含有ゴム100質量部に対して、上記単量体(m16)が、好ましくは25〜400質量部、より好ましくは40〜300質量部である。
上記態様[4]において、上記態様(4−1)である場合、グラフト重合樹脂(g13)及び芳香族ビニル(共)重合体の含有割合は、特に限定されないが、グラフト重合樹脂(g13)の形成に用いた含珪素ゴムの含有割合が、熱可塑性樹脂(I)全体に対して、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%となるように選択される。含珪素ゴムの含有割合が、上記範囲にあると、得られる第1樹脂層の耐衝撃性に優れる。
上記態様[4]において、上記態様(4−2)である場合、グラフト重合樹脂(g13)及び珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)の含有割合は、特に限定されないが、グラフト重合樹脂(g13)の形成に用いた含珪素ゴム及び珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)の形成に用いた珪素非含有ゴムの合計含有量の割合が、熱可塑性樹脂(I)全体に対して、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%となるように選択される。ゴム成分の合計含有量の割合が、上記範囲にあると、得られる第1樹脂層の耐衝撃性に優れる。
また、上記態様[4]において、上記態様(4−3)である場合、グラフト重合樹脂(g13)、珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)及び芳香族ビニル(共)重合体の含有割合は、特に限定されないが、グラフト重合樹脂(g13)の形成に用いた含珪素ゴム及び珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)の形成に用いた珪素非含有ゴムの合計含有量の割合が、熱可塑性樹脂(I)全体に対して、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%となるように選択される。ゴム成分の合計含有量の割合が、上記範囲にあると、得られる第1樹脂層の耐衝撃性に優れる。
また、上記第1熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂成分が、グラフト重合樹脂(g14)と、含珪素芳香族ビニル系樹脂である上記態様[1]〜[3]から選ばれた樹脂とを組み合わせてなる樹脂である場合(以下、態様[5]という。)について、説明する。
即ち、上記態様[5]は、以下に例示される。
(5−1)珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)と、上記態様[1]の含珪素共重合体とからなる樹脂
(5−2)珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)と、上記態様[2]の樹脂、即ち、グラフト重合樹脂(g11)とからなる樹脂
(5−3)珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)と、上記態様[3]の樹脂、即ち、グラフト重合樹脂(g12)とからなる樹脂
上記態様[5]において、上記態様(5−1)である場合、珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)及び上記態様[1]の含珪素共重合体の含有割合は、特に限定されないが、珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)の形成に用いた珪素非含有ゴムの含有割合が、熱可塑性樹脂(I)全体に対して、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%となるように選択される。珪素非含有ゴムの含有割合が、上記範囲にあると、得られる第1樹脂層の耐衝撃性に優れる。
上記態様[5]において、上記態様(5−2)である場合、珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)及びグラフト重合樹脂(g11)の含有割合は、特に限定されないが、珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)の形成に用いた珪素非含有ゴム及びグラフト重合樹脂(g11)の形成に用いた珪素非含有ゴムの合計含有量の割合が、熱可塑性樹脂(I)全体に対して、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%となるように選択される。珪素非含有ゴムの含有割合が、上記範囲にあると、得られる第1樹脂層の耐衝撃性に優れる。
上記態様[5]において、上記態様(5−3)である場合、珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)及びグラフト重合樹脂(g12)の含有割合は、特に限定されないが、珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)の形成に用いた珪素非含有ゴム及びグラフト重合樹脂(g12)の形成に用いた含珪素ゴムの合計含有量の割合が、熱可塑性樹脂(I)全体に対して、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%となるように選択される。珪素非含有ゴムの含有割合が、上記範囲にあると、得られる第1樹脂層の耐衝撃性に優れる。
更に、上記第1熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂成分が、珪素非含有ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物、含珪素重合性不飽和化合物を含まない単量体(m17)を重合して得られた珪素非含有グラフト重合樹脂(g5)と、含珪素芳香族ビニル系樹脂である上記態様[1]〜[5]から選ばれた樹脂とを組み合わせてなる樹脂である場合(以下、態様[6]という。)について、説明する。
即ち、上記態様[6]は、以下に例示される。
(6−1)珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)と、上記態様[1]の含珪素共重合体とからなる樹脂
(6−2)珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)と、上記態様[2]の樹脂、即ち、グラフト重合樹脂(g11)とからなる樹脂
(6−3)珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)と、上記態様[3]の樹脂、即ち、グラフト重合樹脂(g12)とからなる樹脂
(6−4)珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)と、上記態様[4]の樹脂とからなる樹脂
(6−5)珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)と、上記態様[5]の樹脂とからなる樹脂
上記珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)の形成に用いる珪素非含有ゴムとしては、アクリル系ゴム、ジエン系ゴム等が挙げられるが、アクリル系ゴムが好ましい。
上記珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)の形成に用いる単量体(m17)としては、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等から選ばれた少なくとも1種の化合物が用いられる。
上記珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)は、上記珪素非含有ゴムの存在下に、上記単量体(m17)を重合することにより製造されたものであるが、その製造方法は、特に限定されず、例えば、乳化重合、溶液重合、塊状重合等を適用することができる。
上記珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)の製造に際して用いられる上記珪素非含有ゴム及び上記単量体(m17)の使用量の割合は、上記珪素非含有ゴム100質量部に対して、上記単量体(m17)が、好ましくは25〜400質量部、より好ましくは40〜300質量部である。
上記態様[6]において、上記態様(6−1)である場合、珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)及び上記態様[1]の含珪素共重合体の含有割合は、特に限定されないが、珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)の形成に用いた珪素非含有ゴムの含有割合が、熱可塑性樹脂(I)全体に対して、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%となるように選択される。珪素非含有ゴムの含有割合が、上記範囲にあると、得られる第1樹脂層の耐衝撃性に優れる。
上記態様[6]において、上記態様(6−2)である場合、珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)及びグラフト重合樹脂(g11)の含有割合は、特に限定されないが、珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)の形成に用いた珪素非含有ゴム及びグラフト重合樹脂(g11)の形成に用いた珪素非含有ゴムの合計含有量の割合が、熱可塑性樹脂(I)全体に対して、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%となるように選択される。珪素非含有ゴムの合計含有量の割合が、上記範囲にあると、得られる第1樹脂層の耐衝撃性に優れる。
上記態様[6]において、上記態様(6−3)である場合、珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)及びグラフト重合樹脂(g12)の含有割合は、特に限定されないが、珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)の形成に用いた珪素非含有ゴム及びグラフト重合樹脂(g12)の形成に用いた含珪素ゴムの合計含有量の割合が、熱可塑性樹脂(I)全体に対して、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%となるように選択される。ゴム成分の合計含有量の割合が、上記範囲にあると、得られる第1樹脂層の耐衝撃性に優れる。
上記態様[6]において、上記態様(6−4)である場合、珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)及び上記態様[4]の樹脂の含有割合は、特に限定されないが、珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)の形成に用いた珪素非含有ゴム及び上記態様[4]の樹脂に含まれるゴム成分の合計含有量の割合が、熱可塑性樹脂(I)全体に対して、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%となるように選択される。ゴム成分の合計含有量の割合が、上記範囲にあると、得られる第1樹脂層の耐衝撃性に優れる。
上記態様[6]において、上記態様(6−5)である場合、珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)及び上記態様[5]の樹脂の含有割合は、特に限定されないが、珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)の形成に用いた珪素非含有ゴム及び上記態様[5]の樹脂に含まれるゴム成分の合計含有量の割合が、熱可塑性樹脂(I)全体に対して、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%となるように選択される。ゴム成分の合計含有量の割合が、上記範囲にあると、得られる第1樹脂層の耐衝撃性に優れる。
上記グラフト重合樹脂(g11)〜(g15)の製造方法は、上記のように、公知の方法を適用することができるが、以下に、乳化重合による製造方法を説明する。
乳化重合においては、ゴム成分、単量体(単量体(m12)、(m13)、(m14)、(m16)及び(m17)を意味する)の他、通常、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水等が用いられる。
上記重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレイト、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記重合開始剤の使用量は、上記単量体全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%である。
尚、上記重合開始剤は、反応系に一括して、又は、連続的に添加することができる。
上記連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類;ターピノーレン類、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記連鎖移動剤の使用量は、上記単量体全量に対し、通常、0.05〜2.0質量%である。
尚、上記連鎖移動剤は、反応系に一括して、又は、連続的に添加することができる。
上記乳化剤としては、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩;高級脂肪族カルボン酸塩、脂肪族リン酸塩等が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型化合物、アルキルエーテル型化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記乳化剤の使用量は、上記単量体全量に対し、通常、0.3〜5.0質量%である。
乳化重合は、単量体、重合開始剤等の種類に応じた温度条件等で行うことができる。この乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、樹脂成分を粉末状とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製される。この凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸等の有機酸等が用いられる。
上記グラフト重合樹脂(g11)〜(g15)におけるグラフト率は、好ましくは20%〜170%であり、より好ましくは30%〜170%、更に好ましくは40%〜150%である。このグラフト率が低すぎると、上記第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる第1樹脂層の可撓性が十分でない場合がある。一方、グラフト率が高すぎると、第1熱可塑性樹脂組成物の粘度が高くなり、薄肉化が困難になる場合がある。
グラフト率は、下記式により求めることができる。
グラフト率(質量%)={(S−T)/T}×100
上記式において、Sは、1グラムのグラフト重合樹脂をアセトン(ゴム成分がアクリル系ゴムを含む場合、アセトニトリル)20ミリリットルに投入し、25℃で、振とう機により2時間振とうした後、5℃で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(グラム)であり、Tは、1グラムのグラフト重合樹脂に含まれるゴム成分の質量(グラム)である。このゴム成分の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外線吸収スペクトル(IR)により求める方法等により得ることができる。
上記グラフト率は、例えば、グラフト重合樹脂の製造時に用いる重合開始剤の種類及びその使用量、連鎖移動剤の種類及びその使用量、単量体の添加方法及び添加時間、重合温度等を、適宜、選択することにより調整することができる。
上記グラフト重合樹脂のアセトン可溶分(ゴム成分がアクリル系ゴムを含む場合、アセトニトリル可溶分)の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、好ましくは0.1〜2.5dl/g、より好ましくは0.2〜1.5dl/g、更に好ましくは0.25〜1.2dl/gである。極限粘度がこの範囲内であると、第1熱可塑性樹脂組成物の加工性に優れ、肉厚精度の高い第1樹脂層を形成することができる。
ここで、極限粘度[η]は、以下の要領で求めることができる。
上記グラフト重合樹脂におけるグラフト率を求める際に、遠心分離後に回収されたアセトン可溶分(ゴム成分がアクリル系ゴムを含む場合、アセトニトリル可溶分)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点調製し、ウベローデ粘度管を用いて、30℃で各濃度の還元粘度を測定し、極限粘度[η]が求められる。
上記極限粘度[η]は、上記グラフト重合樹脂を製造する際に用いる、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を調整することにより、容易に制御することができる。
上記第1樹脂層と、太陽電池素子を包埋する、エチレン・酢酸ビニル共重合体組成物等を含む充填材部との接着性を特に優れたものとするために、上記含珪素熱可塑性樹脂に由来する含珪素構造単位の含有量は、上記第1熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(I)を構成する構造単位の全量に対して、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.07〜15質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。上記含珪素構造単位の含有量が多すぎると、外観性が低下する場合がある。尚、上記含珪素構造単位とは、含珪素重合性不飽和化合物に由来する単位、及び、オルガノシロキサンに由来する単位を意味する。
上記第1樹脂層が耐熱性に特に優れたものとするために、上記第1熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(I)は、マレイミド系化合物に由来する構造単位(以下、「構造単位(u11)」という。)を含むことが好ましい。この構造単位(u11)は、どの樹脂成分に由来するものであってもよい。即ち、上記含珪素熱可塑性樹脂が構造単位(u11)を含んでよいし、他の熱可塑性樹脂がこの構造単位(u11)を含んでもよい。
上記構造単位(u11)の含有量は、上記観点から、上記第1熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(I)を構成する構造単位の全量に対して、好ましくは1〜45質量%、より好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは10〜35質量%である。上記構造単位(u11)の含有量が多すぎると、第1樹脂層の可撓性が低下する場合がある。
上記構造単位(u11)を有する樹脂成分は、好ましくは、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位と、構造単位(u11)とからなる共重合体である。各構造単位の含有割合は、特に限定されない。この共重合体としては、アクリロニトリル・スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体等が挙げられる。
更に、上記第1樹脂層が耐加水分解性に特に優れたものとするために、上記第1熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(I)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(以下、「構造単位(t11)」という。)を含むことが好ましい。上記のように、上記含珪素熱可塑性樹脂は、含珪素芳香族ビニル系樹脂を含むことが好ましいので、上記構造単位(t11)の含有は、この樹脂のみで満たされてよいし、上記含珪素芳香族ビニル系樹脂と、他の芳香族ビニル系樹脂とから満たされてもよい。
上記構造単位(t11)の含有量は、上記観点から、上記第1熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(I)を構成する構造単位の全量に対して、好ましくは30〜80質量%、より好ましくは35〜75質量%、更に好ましくは40〜70質量%である。上記構造単位(t11)の含有量が多すぎると、耐熱性、可撓性等が劣る場合がある。
上記第1樹脂層の形成に用いる第1熱可塑性樹脂組成物に配合される添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、着色剤、蛍光増白剤、耐候剤、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、抗菌剤、防かび剤、防汚剤、粘着付与剤等が挙げられる。これらの添加剤における具体的な化合物及びその配合量は、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムの好ましい態様とともに、後述される。
上記第1樹脂層は、含珪素熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂(I)を含む第1原料組成物を溶融混練してなる第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層である。
上記第1原料組成物の溶融混練法及びその装置は、特に限定されず、例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続ニーダー等を用いて、公知の条件で溶融混練され、第1熱可塑性樹脂組成物が製造される。
上記第1樹脂層の厚さは、通常、5〜500μm、好ましくは10〜400μmである。
上記第2樹脂層は、上記のように、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムにおける基層であり、熱可塑性樹脂(II)を含有する第2熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層である。
上記熱可塑性樹脂(II)のガラス転移温度(Tg)は、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムに十分な可撓性及び耐熱性を付与する観点から、更には、第3樹脂層又はその裏面側に必要に応じて配される層に印刷、表面処理等を行った場合、温度履歴等に伴う熱収縮等を抑制する観点から、好ましくは110℃〜220℃、より好ましくは115℃〜200℃、更に好ましくは120℃〜190℃、特に好ましくは125℃〜180℃である。
上記熱可塑性樹脂(II)は、熱可塑性を有する樹脂であれば、特に限定されず、珪素非含有熱可塑性樹脂であってよいし、分子中に珪素原子を含む含珪素熱可塑性樹脂であってもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
上記珪素非含有熱可塑性樹脂としては、芳香族ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記含珪素熱可塑性樹脂としては、芳香族ビニル樹脂(含珪素芳香族ビニル系樹脂)、ポリオレフィン樹脂(含珪素ポリオレフィン系樹脂)、ポリ塩化ビニル樹脂(含珪素ポリ塩化ビニル系樹脂)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(含珪素ポリ塩化ビニリデン系樹脂)、飽和ポリエステル樹脂(含珪素飽和ポリエステル系樹脂)、ポリカーボネート樹脂(含珪素ポリカーボネート系樹脂)、ポリアミド樹脂(含珪素ポリアミド系樹脂)、アクリル樹脂(含珪素アクリル系樹脂)、フッ素樹脂(含珪素フッ素系樹脂)、珪素樹脂等が挙げられる。これらの含珪素熱可塑性樹脂については、上記第1熱可塑性樹脂組成物に含有される含珪素熱可塑性樹脂を適用することができ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記熱可塑性樹脂(II)が、含珪素熱可塑性樹脂を含む場合、この含珪素熱可塑性樹脂は、上記熱可塑性樹脂(I)に含まれる含珪素熱可塑性樹脂と同一であってよいし、異なってもよい。
上記熱可塑性樹脂(II)としては、耐加水分解性、寸法安定性等の観点から、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む芳香族ビニル樹脂(以下、「芳香族ビニル樹脂(II−1)」という。)が好ましい。尚、この芳香族ビニル樹脂(II−1)は、珪素非含有熱可塑性樹脂であってよいし、分子中に珪素原子を含む含珪素熱可塑性樹脂(含珪素芳香族ビニル系樹脂等)であってもよい。
上記芳香族ビニル樹脂(II−1)としては、ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物を含む単量体(以下、「単量体(m21)」という。)を重合して得られたグラフト重合樹脂(以下、「グラフト重合樹脂(g21)」という。);芳香族ビニル化合物を含む単量体(以下、「単量体(m22)」という。)を重合してなる芳香族ビニル系(共)重合体(以下、「(共)重合体(c21)」という。);並びに、上記グラフト重合樹脂(g21)及び(共)重合体(c21)の混合物(以下、「混合物(y21)」という。)が挙げられる。
上記芳香族ビニル樹脂(II−1)がグラフト重合樹脂(g21)である場合、このグラフト重合樹脂(g21)の形成に用いられるゴムとしては、アクリル系ゴム;ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、天然ゴム等からなるジエン系ゴム;共役ジエン系化合物よりなる単位を含む(共)重合体を水素添加してなる重合体からなる水添ゴム;エチレン単位と、炭素数3以上のα−オレフィンからなる単位を含むエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム;ウレタン系ゴム;シリコーン系ゴム;シリコーン・アクリル複合ゴム等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ゴムの形状は、特に限定されない。この形状が粒子状である場合、その体積平均粒子径は、好ましくは5〜2,000nm、より好ましくは10〜1,800nm、更に好ましくは50〜1,500nmである。体積平均粒子径が上記の範囲にあれば、第2熱可塑性樹脂組成物の加工性、得られる第2樹脂層の耐衝撃性等に優れる。
上記グラフト重合樹脂(g21)の形成に用いられるゴムは、上記第1樹脂層に含有させることのできるグラフト重合樹脂(g11)〜(g15)の形成に用いたゴム成分と同一であってよいし、異なってもよい。
本発明において、上記ゴムは、耐衝撃性の観点から、ジエン系ゴムが好ましく、耐候性の観点から、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム、シリコーン・アクリル複合ゴム、エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム及び水添ゴムが好ましい。
従って、ジエン系ゴムを用いて得られたグラフト重合樹脂(g21)、又は、このグラフト重合樹脂(g21)と(共)重合体(c21)とを含む混合物(y21)を含有する第2熱可塑性樹脂組成物により、可撓性及び耐衝撃性に優れた第2樹脂層を形成することができる。
尚、上記ジエン系ゴムは、可撓性、低温衝撃性等の観点から、ガラス転移点が−20℃以下の(共)重合体であることが好ましい。
上記アクリル系ゴムは、フィルムに十分な可撓性を付与することができることから、2つ以上のガラス転移温度を有する共重合体であることが好ましい。
上記アクリル系ゴムとしては、上記第1樹脂層の形成に用いられる第1熱可塑性樹脂組成物に配合される含珪素芳香族ビニル系樹脂の形成に用いられる珪素非含有ゴムとして説明したアクリル系ゴムが好ましい。このアクリル系ゴムは、可撓性、低温衝撃性等の観点から、ガラス転移点が−10℃以下の(共)重合体であることが好ましい。
上記アクリル系ゴムとしては、好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、エトキシエトキシエチルアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物を含む単量体を(共)重合して得られたゴムである。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記単量体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物以外に、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;メタクリロイル基を有するシリコーン、含フッ素不飽和化合物等の単官能性単量体、アリル(メタ)アクリレート等の多官能性単量体を、合計で30質量%以下の範囲で共重合成分として含んでいてもよい。
上記アクリル系ゴムを構成する構造単位は、好ましくは、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル化合物に由来する構造単位、及び、アリル(メタ)アクリレート等の多官能性単量体に由来する構造単位である。好ましいアクリル系ゴムを構成する、多官能性単量体に由来する構造単位の含有量は、可撓性、低温衝撃性等の観点から、構造単位の全量に対して、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜8質量%、更に好ましくは0.1〜5質量%である。
上記アクリル系ゴムの体積平均粒子径は、可撓性、低温衝撃性等の観点から、好ましくは5〜500nm、より好ましくは10〜450nm、更に好ましくは30〜400nmである。
上記シリコーン系ゴムとしては、上記第1樹脂層の形成に用いられる第1熱可塑性樹脂組成物に配合される含珪素芳香族ビニル系樹脂の形成に用いられる含珪素ゴムとして例示した含珪素ゴム(s2)及び含珪素ゴム(s3)が好ましい。即ち、オルガノシロキサンと、含珪素重合性不飽和化合物とを用いて得られ、オルガノシロキサンセグメントと、他のセグメントとを含むポリオルガノシロキサン系ゴム、並びに、オルガノシロキサンと、含珪素架橋剤(3又は4のアルコキシ基を有する飽和シラン化合物)と、含珪素重合性不飽和化合物とを用いて得られ、オルガノシロキサンセグメントと、他のセグメントとを含むポリオルガノシロキサン系ゴムが好ましい。これらのシリコーン系ゴムの好ましい構成も上記含珪素ゴム(s2)及び含珪素ゴム(s3)における記載の通りである。また、これらのシリコーン系ゴムは、グラフト重合樹脂の製造に好適な方法である乳化重合を容易なものとするために、ラテックスに含まれるゴムであることが好ましい。従って、このシリコーン系ゴムは、上記のように、例えば、米国特許第2,891,920号明細書、同第3,294,725号明細書等に記載された方法により製造されたポリオルガノシロキサン系ゴムとすることができる。
上記シリコーン系ゴムの体積平均粒子径は、可撓性、低温衝撃性等の観点から、好ましくは5〜500nm、より好ましくは10〜450nm、更に好ましくは30〜400nmである。
また、上記シリコーン・アクリル複合ゴムとしては、上記第1樹脂層の形成に用いられる第1熱可塑性樹脂組成物に配合される含珪素芳香族ビニル系樹脂の形成に用いられる複合ゴム(s4−4)〜(s4−6)が好ましい。特に好ましくは、ポリオルガノシロキサン系ゴムと、アクリル系ゴムとが分離できないように相互に絡み合った構造を有する複合ゴムである。
上記ポリオルガノシロキサン系ゴムとしては、好ましくは、オルガノシロキサンを共重合したものを用いることができる。上記オルガノシロキサンとしては、3員環以上の各種の還元体が挙げられ、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等が好ましい。そして、これらのオルガノシロキサンは、単独であるいは2つ以上を組み合せて用いることができる。
上記ポリオルガノシロキサン系ゴムを構成する、オルガノシロキサンに由来する構造単位の含有量は、構造単位の全量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
上記シリコーン・アクリル複合ゴムの体積平均粒子径は、可撓性、低温衝撃性等の観点から、好ましくは5〜500nm、より好ましくは10〜450nm、更に好ましくは30〜400nmである。
上記エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムは、エチレン単位と、炭素数3以上のα−オレフィンからなる単位とを含む共重合体であり、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体等が挙げられる。
上記エチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体等が挙げられる。また、上記エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体としては、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・ブテン−1・非共役ジエン共重合体等が挙げられる。
上記α−オレフィンとしては、好ましくは、炭素数3〜20のα−オレフィンであり、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン等が挙げられる。上記α−オレフィンにおいて、より好ましい炭素数は3〜12であり、更に好ましくは3〜8である。
上記エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムを構成する、エチレン単位及びα−オレフィン単位の割合は、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは5〜95質量%及び5〜95質量%、より好ましくは50〜90質量%及び10〜50質量%、更に好ましくは60〜88質量%及び12〜40質量%、特に好ましくは70〜85質量%及び15〜30質量%である。上記α−オレフィン単位の含有割合が多すぎると、可撓性が低下する場合がある。
上記エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムが、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体である場合、非共役ジエンとしては、5−エチリデン−2−ノルボルネン等のアルケニルノルボルネン;ジシクロペンタジエン等の環状ジエン;脂肪族ジエン等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記非共役ジエンに由来する構造単位の含有量は、上記エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体を構成する構造単位の全量に対して、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜20質量%である。非共役ジエン単位の含有割合が多すぎると、成形外観性及び耐侯性が低下する場合がある。
上記エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムにおける不飽和基量は、ヨウ素価に換算して4〜40であることが好ましい。
また、上記エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃;JIS K6300に準拠)は、好ましくは5〜80、より好ましくは10〜65、更に好ましくは15〜45である。ムーニー粘度が上記範囲にあると、耐衝撃性及び可撓性に優れる。
上記水添ゴムは、共役ジエン系化合物に由来する構造単位を含む(共)重合体を水素添加してなる(共)重合体であれば、特に限定されない。
上記水添ゴムとしては、下記の構造を有する共役ジエンブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。即ち、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなる重合体ブロックA;1,2−ビニル結合含量が25モル%を超える共役ジエン系化合物に由来する構造単位からなる重合体の二重結合部分を95モル%以上水素添加してなる重合体ブロックB;1,2−ビニル結合含量が25モル%以下の共役ジエン系化合物に由来する構造単位からなる重合体の二重結合部分を95モル%以上水素添加してなる重合体ブロックC;並びに、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と共役ジエン系化合物に由来する構造単位とからなる共重合体の二重結合部分を95モル%以上水素添加してなる重合体ブロックDのうち、2種以上を組み合わせたものからなるブロック共重合体である。
上記ブロック共重合体の分子構造は、分岐状、放射状又はこれらの組み合わせでもよい。また、ブロック構造は、ジブロック、トリブロックもしくはマルチブロック又はこれらの組み合わせでもよい。
上記ブロック共重合体の構造としては、A−(B−A)n、(A−B)n、A−(B−C)n、C−(B−C)n、(B−C)n、A−(D−A)n、(A−D)n、A−(D−C)n、C−(D−C)n、(D−C)n、A−(B−C−D)n、(A−B−C−D)n〔但し、nは1以上の整数である。〕等が挙げられ、好ましくは、A−B−A、A−B−A−B、A−B−C、A−D−C、C−B−Cである。
上記ブロック共重合体を構成する重合体ブロックA及びDの形成に用いられる芳香族ビニル化合物としては、少なくとも1つのビニル結合と、少なくとも1つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されない。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレンが好ましい。
上記ブロック共重合体を構成する重合体ブロックAの含有割合は、重合体の全体に対して、好ましくは0〜65質量%、より好ましくは10〜40質量%である。重合体ブロックAの含有量が多すぎると、耐衝撃性が十分でない場合がある。
上記重合体ブロックB、C及びDは、共役ジエン系化合物及び芳香族ビニル化合物を用いて得られた水素添加前ブロック共重合体を水素添加することにより形成される。上記重合体ブロックB、C及びDの形成に用いられる共役ジエン系化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、クロロプレン等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、工業的に利用でき、物性に優れることから、1,3−ブタジエン及びイソプレンが好ましい。
上記重合体ブロックB、C及びDの水素添加率は、いずれも95モル%以上であり、好ましくは96モル%以上である。
上記重合体ブロックBにおける1,2−ビニル結合含量は、好ましくは25モル%を超え90モル%以下、より好ましくは30〜80モル%である。この1,2−ビニル結合含量が25モル%以下であると、ゴム的性質が失われ、耐衝撃性が十分でない場合がある。一方、90モル%を超えると、耐薬品性が十分でない場合がある。
また、上記重合体ブロックCにおける1,2−ビニル結合含量は、好ましくは25%モル以下、より好ましくは20モル%以下である。
上記重合体ブロックDにおける1,2−ビニル結合含量は、好ましくは25〜90モル%、より好ましくは30〜80モル%である。この1,2−ビニル結合含量が25モル%未満であると、ゴム的性質が失われ、耐衝撃性が十分でない場合がある。一方、90モル%を超えると、耐薬品性が十分でない場合がある。
また、上記重合体ブロックDにおける芳香族ビニル化合物単位量は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。この芳香族ビニル化合物単位量が25質量%を超えると、ゴム的性質が失われ耐衝撃性が十分でない場合がある。
上記水添ゴムとしては、水添ポリブタジエン、水添スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックポリマー、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックポリマー、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体の水素添加物等が挙げられる。
上記水添ゴムの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万〜100万、より好ましくは3万〜80万、更に好ましくは5万〜50万である。Mwが上記範囲にあると、可撓性に優れる。
上記グラフト重合樹脂(g21)の形成に用いられる単量体(m21)は、芳香族ビニル化合物を含み、その含有量は、上記単量体(m21)の全体に対して、通常、30〜100質量%、より好ましくは40〜95質量%、更に好ましくは50〜90質量%である。上記芳香族ビニル化合物は、上記第1樹脂層の形成に用いられる第1熱可塑性樹脂組成物に配合される含珪素芳香族ビニル系樹脂の形成に用いられる芳香族ビニル化合物において例示した化合物を用いることができる。上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
上記単量体(m21)は、芳香族ビニル化合物以外に、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等を用いることができる。これら他の化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記のうち、シアン化ビニル化合物が好ましく、アクリルニトリルが好ましい。
上記単量体(m21)において、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の合計使用量は、成形加工性、耐薬品性、耐加水分解性、成形外観性等の観点から、単量体(m21)全量に対し、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%である。また、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の使用比率は、成形加工性、耐薬品性、耐加水分解性、成形外観性等の観点から、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは5〜95質量%及び5〜95質量%、より好ましくは50〜95質量%及び5〜50質量%、更に好ましくは60〜90質量%及び10〜40質量%である。
また、上記単量体(m21)は、マレイミド系化合物を含むことにより、第2樹脂層に、優れた耐熱性を付与することができる。尚、上記グラフト重合樹脂(g21)又は上記混合物(y21)に含まれる、マレイミド系化合物に由来する構造単位の好ましい含有量は後述される。
上記グラフト重合樹脂(g21)として、好ましい樹脂は、以下の通りである。
(g21−1)ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物からなる単量体を重合して得られたグラフト重合樹脂
(g21−2)ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及びマレイミド系化合物からなる単量体を重合して得られたグラフト重合樹脂
(g21−3)ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及びメタクリル酸エステル化合物からなる単量体を重合して得られたグラフト重合樹脂
上記グラフト重合樹脂(g21)の製造方法は、上記第1樹脂層の形成に用いられる第1熱可塑性樹脂組成物に配合される含珪素芳香族ビニル系樹脂として例示した、グラフト重合樹脂(g11)〜(g15)と同様である。
上記グラフト重合樹脂(g21)のグラフト率は、好ましくは20〜170%であり、より好ましくは30〜170%、更に好ましくは40〜150%である。このグラフト率が低すぎると、フィルムとしての可撓性が十分でない場合がある。一方、グラフト率が高すぎると、第2熱可塑性樹脂組成物の粘度が高くなり、薄肉化が困難になる場合がある。
上記グラフト重合樹脂(g21)は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記芳香族ビニル樹脂(II−1)が上記(共)重合体(c21)である場合、この(共)重合体(c21)を形成する単量体(m22)は、芳香族ビニル化合物を含むものであれば、特に限定されない。
上記単量体(m22)は、芳香族ビニル化合物を含み、その含有量は、上記単量体(m22)の全体に対して、通常、30〜100質量%、より好ましくは40〜95質量%、更に好ましくは50〜90質量%である。上記芳香族ビニル化合物は、上記例示した化合物を用いることができる。上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
上記単量体(m22)は、芳香族ビニル化合物以外に、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等を用いることができる。これら他の化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記のうち、シアン化ビニル化合物が好ましく、アクリルニトリルが好ましい。
上記単量体(m22)において、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の合計使用量は、成形加工性、耐薬品性、耐加水分解性、成形外観性等の観点から、単量体(m22)全量に対し、好ましくは40〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%である。また、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の使用比率は、成形加工性、耐薬品性、耐加水分解性、成形外観性等の観点から、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは5〜95質量%及び5〜95質量%、より好ましくは40〜95質量%及び5〜60質量%、更に好ましくは50〜90質量%及び10〜50質量%である。
また、上記単量体(m22)は、マレイミド系化合物を含むことにより、第2樹脂層に、優れた耐熱性を付与することができる。
上記(共)重合体(c21)が共重合体である場合、好ましい重合体は、以下の通りである。
(c21−1)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位とからなる共重合体
(c21−2)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位と、マレイミド系化合物に由来する構造単位とからなる共重合体
上記(共)重合体(c21)の製造方法は、特に限定されず、例えば、乳化重合、溶液重合、塊状重合等を適用することができる。
上記(共)重合体(c21)は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記芳香族ビニル樹脂(II−1)が上記混合物(y21)である場合、上記グラフト重合樹脂(g21)及び上記(共)重合体(c21)の含有割合は、特に限定されない。 また、上記芳香族ビニル樹脂(II−1)が、上記グラフト重合樹脂(g21)である場合、及び、上記混合物(y21)である場合、のいずれにおいても、上記第2熱可塑性樹脂組成物に含まれるゴムの合計含有量の割合は、耐衝撃性の観点から、熱可塑性樹脂(II)全体に対して、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
上記芳香族ビニル樹脂(II−1)が、上記グラフト重合樹脂(g21)からなる場合、及び、上記混合物(y21)からなる場合、のいずれにおいても、この芳香族ビニル樹脂(II−1)のアセトン(但し、ゴムがアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリル)に可溶な成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜2.5dl/g、より好ましくは0.2〜1.5dl/g、更に好ましくは0.25〜1.2dl/gである。この極限粘度[η]が上記範囲内であると、上記第2熱可塑性樹脂組成物の成形加工性に優れ、第2樹脂層の肉厚精度にも優れる。
上記第2樹脂層が耐熱性に特に優れたものとするために、上記のように、上記第2熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(II)は、マレイミド系化合物に由来する構造単位(以下、「構造単位(u21)」という。)を含むことが好ましい。この構造単位(u21)は、どの樹脂成分に由来するものであってもよい。即ち、上記グラフト重合樹脂(g21)が構造単位(u21)を含んでよいし、上記(共)重合体(c21)がこの構造単位(u21)を含んでもよい。
上記構造単位(u21)の含有量は、上記観点から、上記第2熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(II)を構成する構造単位の全量に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜45質量%、更に好ましくは10〜40質量%である。上記構造単位(u21)の含有量が多すぎると、第2樹脂層の可撓性が低下する場合がある。
上記熱可塑性樹脂(II)が芳香族ビニル樹脂(II−1)を含む場合、この熱可塑性樹脂(II)は芳香族ビニル樹脂(II−1)のみからなるものであってよいし、芳香族ビニル樹脂(II−1)と、他の熱可塑性樹脂とからなるものであってもよい。他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂(II)が他の熱可塑性樹脂を含有する場合、その含有量は、耐熱性及び耐衝撃性の観点から、上記熱可塑性樹脂(II)に対して、好ましくは1〜50質量%である。
上記第2熱可塑性樹脂組成物は、第2樹脂層と、その両面側に配される第1樹脂層及び第3樹脂層との接着性を更に向上させるために、上記熱可塑性樹脂(II)と、下記一般式(3)で表されるシランカップリング剤とを含むシランカップリング剤含有組成物を溶融混練してなる組成物であってもよい。
〔式中、R
3は、ビニル基、アミノ基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びエポキシ結合のうちの少なくとも1種を含む有機基であり、R
4は、互いに同一又は異なって、1又は2以上のハロゲン原子が置換してもよい炭化水素基であり、nは0又は1である。〕
上記シランカップリング剤について、説明する。
上記一般式(3)におけるR3として用いられるアミノ基としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基及びアルキレンポリアミノ基のいずれでもよい。
また、エポキシ結合を含む有機基としては、γ−グリシドキシプロピル基等が挙げられる。
また、上記一般式(3)におけるR4として用いられる、ハロゲン原子が置換してもよい炭化水素基は、好ましくは、炭素数1〜10の有機基であり、直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれでもよい。
上記一般式(3)で表されるシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン等のビニルシランカップリング剤;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシランカップリング剤;3−アクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアクリルシランカップリング剤;3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のメタクリルシランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシランカップリング剤等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
上記シランカップリング剤の使用量は、上記熱可塑性樹脂(II)100質量部に対して、好ましくは0.05〜20質量部であり、より好ましくは0.07〜15質量部であり、更に好ましくは0.1〜10質量部である。上記シランカップリング剤の含有量が上記範囲にあると、得られる第2樹脂層と、その両面側に配される第1樹脂層及び第3樹脂層との接着性に優れる。
上記シランカップリング剤含有組成物は、シランカップリング剤以外の添加剤(後述)を含んでもよい。
上記シランカップリング剤含有組成物を溶融混練して、第2熱可塑性樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されず、熱可塑性樹脂(II)及びシランカップリング剤を含む全成分を、溶融混練する方法;熱可塑性樹脂(II)及びシランカップリング剤を溶融混練しながら、他の原料成分を、分割して又は連続して添加し、溶融混練を継続する方法;熱可塑性樹脂(II)及び他の原料成分を溶融混練しながら、シランカップリング剤を、分割して又は連続して添加し、溶融混練を継続する方法;熱可塑性樹脂(II)を溶融混練しながら、シランカップリング剤及び他の原料成分を、分割して又は連続して添加し、溶融混練を継続する方法等が挙げられる。
溶融混練に用いる装置としては、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続ニーダー等が挙げられる。
上記第2熱可塑性樹脂組成物は、フィルム形成のために配合される添加剤を含有してもよい。この添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、着色剤、蛍光増白剤、耐候剤、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、抗菌剤、防かび剤、防汚剤、粘着付与剤等が挙げられる。これらの添加剤における具体的な化合物及びその配合量は、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムの好ましい態様とともに、後述される。
上記第2樹脂層は、熱可塑性樹脂(II)を含む第2原料組成物を溶融混練してなる第2熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層である。この第2原料組成物は、シランカップリング剤を含む上記シランカップリング剤含有組成物であってよいし、シランカップリング剤を含まない組成物であってもよい。
上記第2原料組成物の溶融混練法及びその装置は、特に限定されず、例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続ニーダー等を用いて、公知の条件で溶融混練され、第2熱可塑性樹脂組成物が製造される。
上記第2樹脂層の厚さは、通常、10〜990μm、好ましくは20〜500μmである。
次に、上記第3樹脂層は、上記のように、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムに主として可撓性を与える作用を有する層であり、熱可塑性樹脂(III)を含有する第3熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層である。
上記熱可塑性樹脂(III)のガラス転移温度(Tg)は、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムに十分な可撓性を、また、第3樹脂層に耐熱性を付与する観点から、好ましくは90℃〜200℃、より好ましくは95℃〜180℃、更に好ましくは100℃〜160℃、特に好ましくは105℃〜140℃である。
上記熱可塑性樹脂(III)は、熱可塑性を有する樹脂であれば、特に限定されず、珪素非含有熱可塑性樹脂であってよいし、分子中に珪素原子を含む含珪素熱可塑性樹脂であってもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
上記珪素非含有熱可塑性樹脂としては、芳香族ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記含珪素熱可塑性樹脂としては、芳香族ビニル樹脂(含珪素芳香族ビニル系樹脂)、ポリオレフィン樹脂(含珪素ポリオレフィン系樹脂)、ポリ塩化ビニル樹脂(含珪素ポリ塩化ビニル系樹脂)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(含珪素ポリ塩化ビニリデン系樹脂)、飽和ポリエステル樹脂(含珪素飽和ポリエステル系樹脂)、ポリカーボネート樹脂(含珪素ポリカーボネート系樹脂)、ポリアミド樹脂(含珪素ポリアミド系樹脂)、アクリル樹脂(含珪素アクリル系樹脂)、フッ素樹脂(含珪素フッ素系樹脂)、珪素樹脂等が挙げられる。これらの含珪素熱可塑性樹脂については、上記第1熱可塑性樹脂組成物に含有される含珪素熱可塑性樹脂を適用することができ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記熱可塑性樹脂(III)が、含珪素熱可塑性樹脂を含む場合、この含珪素熱可塑性樹脂は、上記熱可塑性樹脂(I)に含まれる含珪素熱可塑性樹脂、及び/又は、上記熱可塑性樹脂(II)に用いることができる含珪素熱可塑性樹脂と同一であってよいし、異なってもよい。
上記熱可塑性樹脂(III)としては、耐加水分解性、寸法安定性等の観点から、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む芳香族ビニル樹脂(以下、「芳香族ビニル樹脂(III−1)」という。)が好ましい。尚、この芳香族ビニル樹脂(III−1)は、珪素非含有熱可塑性樹脂であってよいし、分子中に珪素原子を含む含珪素熱可塑性樹脂(含珪素芳香族ビニル系樹脂等)であってもよい。
上記芳香族ビニル樹脂(III−1)としては、ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物を含む単量体(以下、「単量体(m31)」という。)を重合して得られたグラフト重合樹脂(以下、「グラフト重合樹脂(g31)」という。);芳香族ビニル化合物を含む単量体(以下、「単量体(m32)」という。)を重合してなる芳香族ビニル系(共)重合体(以下、「(共)重合体(c31)」という。);並びに、上記グラフト重合樹脂(g31)及び(共)重合体(c31)の混合物(以下、「混合物(y31)」という。)が挙げられる。
上記グラフト重合樹脂(g31)は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記(共)重合体(c31)は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記単量体(m31)及び単量体(m32)、グラフト重合樹脂(g31)、(共)重合体(c31)及び混合物(y31)並びにこれらの製造方法は、それぞれ、上記芳香族ビニル樹脂(II−1)の形成に用いられる単量体(m21)及び単量体(m22)、上記芳香族ビニル樹脂(II−1)に含まれるグラフト重合樹脂(g21)、(共)重合体(c21)及び混合物(y21)並びにこれらの製造方法を適用することができる。好ましい単量体(m31)及び単量体(m32)の種類及び構成、グラフト重合樹脂(g31)の形成に用いられる好ましいゴムの種類についても同様である。
上記グラフト重合樹脂(g31)として、好ましい樹脂は、以下の通りである。
(g31−1)ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物からなる単量体を重合して得られたグラフト重合樹脂
(g31−2)ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及びマレイミド系化合物からなる単量体を重合して得られたグラフト重合樹脂
(g31−3)ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及びメタクリル酸エステル化合物からなる単量体を重合して得られたグラフト重合樹脂
上記グラフト重合樹脂(g31)のグラフト率は、好ましくは20〜170%であり、より好ましくは30〜170%、更に好ましくは40〜150%である。このグラフト率が低すぎると、フィルムとしての可撓性が十分でない場合がある。一方、グラフト率が高すぎると、第3熱可塑性樹脂組成物の粘度が高くなり、薄肉化が困難になる場合がある。
上記(共)重合体(c31)が共重合体である場合、好ましい重合体は、以下の通りである。
(c31−1)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位とからなる共重合体
(c31−2)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位と、マレイミド系化合物に由来する構造単位とからなる共重合体
上記芳香族ビニル樹脂(III−1)が上記混合物(y31)である場合、上記グラフト重合樹脂(g31)及び上記(共)重合体(c31)の含有割合は、特に限定されない。 また、上記芳香族ビニル樹脂(III−1)が、上記グラフト重合樹脂(g31)である場合、及び、上記混合物(y31)である場合、のいずれにおいても、上記第3熱可塑性樹脂組成物に含まれるゴムの合計含有量の割合は、耐衝撃性の観点から、熱可塑性樹脂(III)全体に対して、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
上記芳香族ビニル樹脂(III−1)が、上記グラフト重合樹脂(g31)からなる場合、及び、上記混合物(y31)からなる場合、のいずれにおいても、この芳香族ビニル樹脂(III−1)のアセトン(但し、ゴムがアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリル)に可溶な成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜2.5dl/g、より好ましくは0.2〜1.5dl/g、更に好ましくは0.25〜1.2dl/gである。この極限粘度[η]が上記範囲内であると、上記第3熱可塑性樹脂組成物の成形加工性に優れ、第3樹脂層の肉厚精度にも優れる。
上記第3樹脂層が耐熱性に特に優れたものとするために、上記のように、上記第3熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(III)は、マレイミド系化合物に由来する構造単位(以下、「構造単位(u31)」という。)を含むことが好ましい。この構造単位(u31)は、どの樹脂成分に由来するものであってもよい。即ち、上記グラフト重合樹脂(g31)が構造単位(u31)を含んでよいし、上記(共)重合体(c31)がこの構造単位(u31)を含んでもよい。
上記構造単位(u31)の含有量は、上記観点から、上記第3熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(III)を構成する構造単位の全量に対して、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは2〜35質量%、更に好ましくは5〜30質量%である。上記構造単位(u31)の含有量が多すぎると、第3樹脂層の可撓性が低下する場合がある。
上記熱可塑性樹脂(III)が芳香族ビニル樹脂(III−1)を含む場合、この熱可塑性樹脂(III)は芳香族ビニル樹脂(III−1)のみからなるものであってよいし、芳香族ビニル樹脂(III−1)と、他の熱可塑性樹脂とからなるものであってもよい。他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂(III)が他の熱可塑性樹脂を含有する場合、その含有量は、耐熱性及び耐衝撃性の観点から、上記熱可塑性樹脂(III)に対して、好ましくは1〜50質量%である。
上記第3熱可塑性樹脂組成物は、上記第2熱可塑性樹脂組成物と同様、上記熱可塑性樹脂(III)と、上記一般式(3)で表されるシランカップリング剤とを含むシランカップリング剤含有組成物を溶融混練してなる組成物であってもよい。
上記第3熱可塑性樹脂組成物は、フィルム形成のために配合される添加剤を含有してもよい。この添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、着色剤、蛍光増白剤、耐候剤、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、抗菌剤、防かび剤、防汚剤、粘着付与剤等が挙げられる。これらの添加剤における具体的な化合物及びその配合量は、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムの好ましい態様とともに、後述される。
上記第3樹脂層は、熱可塑性樹脂(III)を含む第3原料組成物を溶融混練してなる第3熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層である。この第3原料組成物は、シランカップリング剤を含む上記シランカップリング剤含有組成物であってよいし、シランカップリング剤を含まない組成物であってもよい。
上記第3原料組成物の溶融混練法及びその装置は、特に限定されず、例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続ニーダー等を用いて、公知の条件で溶融混練され、第3熱可塑性樹脂組成物が製造される。
上記第3樹脂層の厚さは、通常、5〜500μm、好ましくは10〜400μmである。
次に、上記の第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物に含有される添加剤について説明する。
上記着色剤としては、顔料及び染料のいずれを用いてもよく、通常、外観性等を考慮して、1種又は2種以上が選択される。
白色系着色剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、シリカ、2PbCO3・Pb(OH)2、[ZnS+BaSO4]、タルク、石膏等が挙げられる。
また、黒色系着色剤としては、カーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等)、グラファイト、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、チタンブラック、活性炭、フェライト(非磁性フェライト、磁性フェライト等)、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体、複合酸化物、アントラキノン系化合物、ペリレン系化合物等が挙げられる。
更に、シアン系着色剤(青緑系色材)、マゼンダ系着色剤(赤紫系色材)及びイエロー系着色剤(黄系色材)を用いることもできる。
太陽電池素子が暗色系の色であることが多いことから、太陽電池モジュールも、同様の色を呈するように着色剤が選択される。暗色系に着色させる場合、暗色系着色剤の単一化合物により発現させてよいし、2種以上の着色剤の組合せにより発現させてもよい。
また、暗色系着色剤は、目的に応じて、上記第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物の少なくとも1つの組成物に配合される。
上記酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ハイドロキノン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、含硫黄化合物、含リン化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記酸化防止剤の含有量は、上記第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物又は第3熱可塑性樹脂組成物に含まれる、含珪素熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂(I)、熱可塑性樹脂(II)又は熱可塑性樹脂(III)100質量部に対して、いずれも、好ましくは0.05〜10質量部である。
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記紫外線吸収剤の含有量は、上記第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物又は第3熱可塑性樹脂組成物に含まれる、含珪素熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂(I)、熱可塑性樹脂(II)又は熱可塑性樹脂(III)100質量部に対して、いずれも、好ましくは0.05〜10質量部である。
上記老化防止剤としては、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系化合物、リン酸系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記老化防止剤の含有量は、上記第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物又は第3熱可塑性樹脂組成物に含まれる、含珪素熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂(I)、熱可塑性樹脂(II)又は熱可塑性樹脂(III)100質量部に対して、いずれも、好ましくは0.05〜10質量部である。
上記可塑剤としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソブチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等の脂肪酸エステル類;トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸n−オクチルエステル、トリメリット酸イソノニルエステル等のトリメリット酸エステル類;ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート、ジエチレングリコールモノオレート、グリセリルモノリシノレート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、エポキシ化大豆油等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記可塑剤の含有量は、上記第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物又は第3熱可塑性樹脂組成物に含まれる、含珪素熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂(I)、熱可塑性樹脂(II)又は熱可塑性樹脂(III)100質量部に対して、いずれも、好ましくは0.05〜10質量部である。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムにおいて、上記第1樹脂層は、含珪素熱可塑性樹脂を含むことから、第1樹脂層側の表面に、太陽電池素子を包埋する充填材部と接着させるための接着層を設けることなく、この第1樹脂層と、太陽電池素子を包埋する、エチレン・酢酸ビニル共重合体組成物等を含む充填材部との接着性に優れる。そして、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムは、図1及び図2に示される、第1樹脂層11の表面(上面側)において、上記充填材部の露出面と接着させて太陽電池モジュールが製造される。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムは、波長400〜1,400nmの光を、太陽電池用裏面保護フィルムにおける第1樹脂層の表面に放射したときに、上記光に対する反射率が50%以上であるフィルム(以下、「本発明のフィルム(X)」という。)、及び、第1樹脂層において、波長800〜1,400nmの光に対する透過率が60%以上であり、波長400〜700nmの光に対する吸収率が60%以上であり、且つ、波長800〜1,400nmの光を、上記太陽電池用裏面保護フィルムにおける上記第1樹脂層の表面に放射した場合、該光に対する反射率が50%以上であるフィルム(以下、「本発明のフィルム(Y)」という。)とすることができる。
本発明のフィルム(X)によれば、太陽光の大半の波長の光に対する反射性が優れるので、太陽光が、隣り合う太陽電池素子の隙間から、太陽電池用裏面保護フィルムの方へ漏れたときに、第1樹脂層から太陽光を反射させ、その反射光を太陽電池素子の裏面に供給して、光電変換に利用し、発電効率を向上させることができる。
また、本発明のフィルム(Y)によれば、太陽光が、隣り合う太陽電池素子の隙間から、太陽電池用裏面保護フィルムの方へ漏れたときに、第1樹脂層において、上記波長800〜1,400nmの光が透過し、この光による蓄熱が抑制されるので、この第1樹脂層に接着する充填材部の蓄熱が抑制される。そして、このフィルム(Y)を用いて形成される太陽電池モジュールにおける蓄熱も抑制され、発電効率の低下を抑制することができる。
本発明のフィルム(X)において、波長400〜1,400nmの光に対する反射率は、厚さ30〜1,000μmのフィルム(X)における第1樹脂層の表面に光を放射して測定されるものである。上記反射率は、50%以上であり、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。この反射率が高いほど、上記光を、充填材部に配された太陽電池素子の方へ反射させることができ、光電変換効率を向上させることができる。
本発明において、「波長400〜1,400nmの光に対する反射率が50%以上である」とは、400nmから1,400nmまでの波長域における光の反射率を、400nm又は1,400nmから20nm毎に測定し、各反射率を用いて算出される平均値が50%以上であることを意味し、上記波長域における光の反射率が全て50%以上であることを要求するものではない。
本発明のフィルム(X)において、第1樹脂層を構成するフィルムのみ(厚さ5〜1,000μm)に、波長400〜1,400nmの光を放射した場合、この光に対する反射率は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上である。
本発明のフィルム(X)において、波長400〜1,400nmの光に対する反射率を50%以上とするために、上記第1樹脂層側の表面で測定されたL値(明度)が60以上であることが好ましい。
上記性質を満足するフィルム(X)としては、上記第1樹脂層、上記第2樹脂層及び上記第3樹脂層のうちの少なくとも1つの樹脂層において、白色系着色剤を含むことが好ましい。すべての樹脂層が同一の白色系着色剤を含んでよいし、異なる白色系着色剤を含んでもよい。上記白色系着色剤としては、酸化チタンが好ましい。
上記第1樹脂層、上記第2樹脂層及び上記第3樹脂層が白色系着色剤を含む場合、いずれの層においても、白色系着色剤の含有割合は、波長400〜1,400nmの光に対する反射性の観点から、上記含珪素熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂(I)100質量部、上記熱可塑性樹脂(II)100質量部、及び、上記熱可塑性樹脂(III)100質量部に対して、いずれも、好ましくは1〜45質量部、より好ましくは3〜40質量部、更に好ましくは5〜30質量部である。この白色系着色剤の含有量が多すぎると、本発明のフィルム(X)の可撓性が低下する場合がある。
尚、本発明のフィルム(X)の第1樹脂層の表面における、上記光に対する反射率を50%未満にまで低下させるものでなければ、目的、用途等に応じて、更に他の着色剤を用いてもよい。他の着色剤を用いる場合、その含有量は、上記含珪素熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂(I)100質量部、熱可塑性樹脂(II)100質量部、及び、熱可塑性樹脂(III)100質量部に対して、いずれも、通常、5質量部以下である。
本発明のフィルム(X)においては、上記第1樹脂層のみにおいて測定されたL値が60以上であることが特に好ましい。従って、本発明のフィルム(X)においては、上記第1樹脂層が白色系着色剤を含む白色樹脂層であることが好ましい。
本発明のフィルム(X)において、上記第1樹脂層が白色系着色剤を含む場合、この第1樹脂層を構成する厚さ5〜500μmのフィルムに、波長400〜1,400nmの光を放射したとき、その反射率は、好ましくは50%以上である。この場合、第2樹脂層及び第3樹脂層の構成及び性質(透明性、着色性等)は、特に限定されない。
上記第2樹脂層及び上記第3樹脂層は、上記第1樹脂層の表面における、上記光に対する反射率をより確実なものとする等のために、白色樹脂層であってもよい。この白色樹脂層は、白色系着色剤により着色されたものとすることができる。また、上記第2樹脂層及び上記第3樹脂層は、白色樹脂層ではなく、少なくとも一方が暗色系の色に着色されていてもよい。上記第2樹脂層及び/又は上記第3樹脂層が、他の着色剤を含む場合、各層を形成する第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物に含有される他の着色剤の含有量は、熱可塑性樹脂(II)100質量部、及び、熱可塑性樹脂(III)100質量部に対して、いずれも、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部である。
また、上記第1樹脂層が白色樹脂層であって、この第1樹脂層を構成するフィルムのみにおいて、波長400〜1,400nmの光に対する反射率が50%未満である場合、第2樹脂層及び/又は第3樹脂層は、白色系着色剤を含む樹脂層であることが好ましい。このときの白色系着色剤の含有量は、上記第1樹脂層の表面における、上記光に対する反射性の観点から、上記熱可塑性樹脂(II)100質量部、及び、熱可塑性樹脂(III)100質量部に対して、いずれも、好ましくは5〜40質量部、より好ましくは10〜35質量部である。
尚、上記第1樹脂層が白色系着色剤を含む樹脂層であって、この第1樹脂層を構成するフィルムのみにおいて、上記光に対する反射率が50%未満である場合、上記第2樹脂層が白色系着色剤を含み、上記第3樹脂層が暗色系の色に着色する他の着色剤を含むことが好ましい。この場合、上記第1樹脂層における白色系着色剤の含有量は、上記含珪素熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して、1質量部未満、上記第2樹脂層における白色系着色剤の含有量は、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは10〜40質量部、上記第3樹脂層における他の着色剤の含有量は、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.02〜5質量部、とすることができる。
本発明のフィルム(X)において、上記第1樹脂層が白色樹脂層でない場合、この第1樹脂層は、他の着色剤を含まず、且つ、上記第2樹脂層及び/又は上記第3樹脂層が白色系着色剤を含むことが好ましい。上記第2樹脂層及び/又は上記第3樹脂層が白色系着色剤を含む場合、その含有量は、上記光に対する反射性の観点から、上記熱可塑性樹脂(II)100質量部、及び、熱可塑性樹脂(III)100質量部に対して、いずれも、好ましくは5〜40質量部、より好ましくは10〜35質量部である。
本発明のフィルム(X)において、上記例示したように、上記第1樹脂層、上記第2樹脂層及び上記第3樹脂層のうちの少なくとも1つの樹脂層が、白色系着色剤を含む場合には、太陽光が、隣り合う太陽電池素子の隙間から漏れたときに、波長400〜1,400nmの光が第1樹脂層表面で反射し、この反射光を太陽電池素子の裏面に供給して、光電変換に利用し、発電効率を向上させることができる。
一方、本発明のフィルム(Y)において、波長800〜1,400nmの光に対する透過率、及び、波長400〜700nmの光に対する吸収率は、厚さ30〜1,000μmの、第1樹脂層を構成するフィルムのみに各光を放射して測定された測定値である。
上記透過率は、60%以上であり、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上である。この透過率が高いほど、第1樹脂層において、波長800〜1,400nmの光による蓄熱が抑制されるので、この第1樹脂層に接着する充填材部の蓄熱も抑制される。そして、このフィルム(Y)を用いて形成される太陽電池モジュールの蓄熱が抑制され、発電効率を向上させることができる。
本発明において、「波長800〜1,400nmの光に対する透過率が60%以上」とは、第1樹脂層を構成するフィルムを用いて、800nmから1,400nmまでの波長域における光の透過率を、800nm又は1,400nmから20nm毎に測定し、各透過率を用いて算出される平均値が60%以上であることを意味し、上記波長域における光の透過率が全て60%以上であることを要求するものではない。
また、上記光の吸収率は、60%以上であり、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。この吸収率が高いほど、上記第1樹脂層の明度が低下し、暗色系の第1樹脂層、即ち、暗色系の太陽電池用裏面保護フィルムが形成されることとなる。これにより、太陽電池を、家屋の屋根等に配設したとき、外観性及び意匠性に優れる。
本発明において、「波長400〜700nmの光に対する透過率が60%以上」とは、第1樹脂層を構成するフィルムを用いて、400nmから700nmまでの波長域における光の吸収率を、400nm又は700nmから20nm毎に測定し、各吸収率を用いて算出される平均値が60%以上であることを意味し、上記波長域における光の吸収率が全て60%以上であることを要求するものではない。
また、本発明のフィルム(Y)において、波長800〜1,400nmの光に対する反射率は、フィルム(Y)における第1樹脂層の表面に光を放射して測定されるものである。上記反射率は、50%以上であり、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。この反射率が高いほど、少なくとも上記波長を有する光を、充填材部に配された太陽電池素子の方へ反射させることができ、光電変換効率を向上させることができる。
本発明において、「波長800〜1,400nmの光に対する反射率が50%以上である」とは、フィルム(Y)の第1樹脂層における、800nmから1,400nmまでの波長域における光の反射率を、800nm又は1,400nmから20nm毎に測定し、各反射率を用いて算出される平均値が50%以上であることを意味し、上記波長域における光の反射率が全て50%以上であることを要求するものではない。
本発明のフィルム(Y)において、波長400〜800nmの光に対する透過率は、特に限定されない。
上記フィルム(Y)では、第1樹脂層を構成するフィルムにおいて、波長800〜1,400nmの光に対する透過率を60%以上とし、波長400〜700nmの光に対する吸収率を60%以上とするために、上記第1樹脂層を構成するフィルムは、可視光線を吸収し、赤外線を透過させる性質を有することが好ましい。
従って、上記性質を満足させる第1樹脂層を構成する第1熱可塑性樹脂組成物は、含珪素熱可塑性樹脂、及び、可視光線を吸収し、赤外線を透過させる性質を有する着色剤(以下、「赤外線透過性着色剤」という。)を含有する組成物であることが好ましい。
上記赤外線透過性着色剤は、通常、白色以外の有色を呈しており、好ましくは黒色、褐色、濃青色、深緑色等の暗色系である。暗色系の赤外線透過性着色剤を用いることにより、第1樹脂層と充填材部の露出面との接着性を損なうことなく、優れた暗色系外観を有する太陽電池用裏面保護フィルム及びそれを備える太陽電池モジュールを与えることができる。
上記赤外線透過性着色剤としては、ペリレン系顔料等が挙げられる。このペリレン系顔料としては、下記一般式(4)〜(6)で表される化合物等を用いることができる。
〔式中、R
5及びR
6は、互いに同一又は異なって、ブチル基、フェニルエチル基、メトキシエチル基又は4−メトキシフェニルメチル基である。〕
〔式中、R
7及びR
8は、互いに同一又は異なって、フェニレン基、3−メトキシフェニレン基、4−メトキシフェニレン基、4−エトキシフェニレン基、炭素数1〜3のアルキルフェニレン基、ヒドロキシフェニレン基、4,6−ジメチルフェニレン基、3,5−ジメチルフェニレン基、3−クロロフェニレン基、4−クロロフェニレン基、5−クロロフェニレン基、3−ブロモフェニレン基、4−ブロモフェニレン基、5−ブロモフェニレン基、3−フルオロフェニレン基、4−フルオロフェニレン基、5−フルオロフェニレン基、ナフチレン基、ナフタレンジイル基、ピリジレン基、2,3−ピリジンジイル基、3,4−ピリジンジイル基、4−メチル−2,3−ピリジンジイル基、5−メチル−2,3−ピリジンジイル基、6−メチル−2,3−ピリジンジイル基、5−メチル−3,4−ピリジンジイル基、4−メトキシ−2,3−ピリジンジイル基又は4−クロロ−2,3−ピリジンジイル基である。〕
〔式中、R
7及びR
8は、互いに同一又は異なって、フェニレン基、3−メトキシフェニレン基、4−メトキシフェニレン基、4−エトキシフェニレン基、炭素数1〜3のアルキルフェニレン基、ヒドロキシフェニレン基、4,6−ジメチルフェニレン基、3,5−ジメチルフェニレン基、3−クロロフェニレン基、4−クロロフェニレン基、5−クロロフェニレン基、3−ブロモフェニレン基、4−ブロモフェニレン基、5−ブロモフェニレン基、3−フルオロフェニレン基、4−フルオロフェニレン基、5−フルオロフェニレン基、ナフチレン基、ナフタレンジイル基、ピリジレン基、2,3−ピリジンジイル基、3,4−ピリジンジイル基、4−メチル−2,3−ピリジンジイル基、5−メチル−2,3−ピリジンジイル基、6−メチル−2,3−ピリジンジイル基、5−メチル−3,4−ピリジンジイル基、4−メトキシ−2,3−ピリジンジイル基又は4−クロロ−2,3−ピリジンジイル基である。〕
また、上記ペリレン系顔料としては、「Paliogen Black S 0084」、「Paliogen Black L 0086」、「Lumogen Black FK4280」、「Lumogen Black FK4281」(以上、いずれもBASF社製商品名)等の市販品を用いることができる。
上記赤外線透過性着色剤は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記第1熱可塑性樹脂組成物における赤外線透過性着色剤の含有割合は、上記各光に対する透過性及び吸収性の観点から、上記含珪素熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは0.1〜5質量部である。
尚、上記第1樹脂層において、上記透過率及び吸収率を低下させるものでなければ、目的、用途等に応じて、他の着色剤を含むことができる。例えば、赤外線透過性着色剤以外の着色剤として、黄色系顔料、青色系顔料等を用い、下記のような組合せにより、種々の外観を有する太陽電池モジュールとすることができる。
[1]黒色系赤外線透過性着色剤及び黄色系顔料の組合せによる褐色着色
[2]黒色系赤外線透過性着色剤及び青色系顔料の組合せによる濃青色着色
他の着色剤を用いる場合、上記第1熱可塑性樹脂組成物における含有割合は、上記赤外線透過性着色剤100質量部に対して、通常、200質量部以下、好ましくは0.01〜100質量部である。
尚、暗色系の着色剤としては、カーボンブラックが知られている。このカーボンブラックは、赤外線領域の波長の光を吸収するため、太陽光が、隣り合う太陽電池素子の隙間から、本発明のフィルム(Y)の方へ漏れたときに、蓄熱した第1樹脂層から、太陽電池素子を含む充填材部の温度を上昇させることがあり、発電効率を低下させる場合があるが、上記赤外線透過性着色剤を用いることにより、発電効率を低下させることなく、意匠性及び耐久性にも優れる。
本発明のフィルム(Y)において、第1樹脂層が、上記赤外線透過性着色剤を含む場合、この第1樹脂層において、波長800〜1,400nmの光の60%以上が透過するので、第2樹脂層及び/又は第3樹脂層が、上記光に対する反射率の高い層であることが好ましい。このような作用を有することにより、上記第1樹脂層を透過した、波長800〜1,400nmの光を光電変換に利用することができる。即ち、上記第2樹脂層を構成するフィルム、及び/又は、上記第3樹脂層を構成するフィルムにおいて、上記光に対する反射率が、少なくとも50%であればよい。具体的には、上記第2樹脂層からなる厚さ10〜990μmのフィルム、及び、上記第3樹脂層からなる厚さ5〜500μmのフィルムに、上記波長の光を放射したとき、その反射率の合計が50%以上であるか、あるいは、いずれか一方の反射率が50%以上であることが好ましい。
このようなフィルム(Y)とするためには、上記第2樹脂層及び/又は上記第3樹脂層が白色系着色剤を含むことが好ましい。この白色系着色剤の含有量は、上記光に対する反射性の観点から、上記熱可塑性樹脂(II)100質量部、及び、熱可塑性樹脂(III)100質量部に対して、いずれも、好ましくは1〜45質量部、より好ましくは3〜40質量部、更に好ましくは5〜30質量部である。この白色系着色剤の含有量が多すぎると、本発明のフィルム(Y)の可撓性が低下する場合がある。
尚、上記光に対する反射率を大きく低下させるものでなければ、上記第2樹脂層及び/又は上記第3樹脂層は、目的、用途等に応じて、更に他の着色剤を含んでもよい。他の着色剤を用いる場合、その含有量は、上記熱可塑性樹脂(II)100質量部、及び、熱可塑性樹脂(III)100質量部に対して、いずれも、通常、10質量部以下である。また、この場合、上記第1樹脂層は、実質的に、白色系着色剤を含まないことが好ましいが、この白色系着色剤を含有させる場合、その含有量の上限は、通常、3質量部、好ましくは1質量部である。
上記フィルム(Y)としては、上記第1樹脂層及び上記第2樹脂層が赤外線透過性着色剤を含み、上記第3樹脂層が白色系着色剤を含む態様とすることもできる。
また、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムにおける、上記フィルム(X)及び(Y)を除く態様として、上記第1樹脂層が着色剤を含有せず、上記第2樹脂層が赤外線透過性着色剤を含み、上記第3樹脂層が白色系着色剤を含む態様とすることもできる。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムとして、好ましい態様を以下に示す。
(ア)第1樹脂層が、含珪素熱可塑性樹脂及び白色系着色剤を含む第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第2樹脂層が、熱可塑性樹脂(II)を含み且つ白色系着色剤を含まない第2熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第3樹脂層が、熱可塑性樹脂(III)を含み且つ白色系着色剤を含まない第3熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であるフィルム
(イ)第1樹脂層が、含珪素熱可塑性樹脂及び白色系着色剤を含む第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第2樹脂層が、熱可塑性樹脂(II)を含み且つ白色系着色剤を含まない第2熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第3樹脂層が、熱可塑性樹脂(III)及び白色系着色剤を含む第3熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であるフィルム
(ウ)第1樹脂層が、含珪素熱可塑性樹脂及び白色系着色剤を含む第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第2樹脂層が、熱可塑性樹脂(II)及び白色系着色剤を含む第2熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第3樹脂層が、熱可塑性樹脂(III)を含み且つ白色系着色剤を含まない第3熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であるフィルム
(エ)第1樹脂層が、含珪素熱可塑性樹脂及び白色系着色剤を含む第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第2樹脂層が、熱可塑性樹脂(II)及び白色系着色剤を含む第2熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第3樹脂層が、熱可塑性樹脂(III)及び白色系着色剤を含む第3熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であるフィルム
以上、上記フィルム(X)として好ましい例である。
また、上記フィルム(Y)として好ましい例は、以下に示される。
(オ)第1樹脂層が、含珪素熱可塑性樹脂及び赤外線透過性着色剤を含む第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第2樹脂層が、熱可塑性樹脂(II)を含み且つ白色系着色剤を含まない第2熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第3樹脂層が、熱可塑性樹脂(III)及び白色系着色剤を含む第3熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であるフィルム
(カ)第1樹脂層が、含珪素熱可塑性樹脂及び赤外線透過性着色剤を含む第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第2樹脂層が、熱可塑性樹脂(II)及び白色系着色剤を含む第2熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第3樹脂層が、熱可塑性樹脂(III)を含み且つ白色系着色剤を含まない第3熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であるフィルム
(キ)第1樹脂層が、含珪素熱可塑性樹脂及び赤外線透過性着色剤を含む第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第2樹脂層が、熱可塑性樹脂(II)及び白色系着色剤を含む第2熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第3樹脂層が、熱可塑性樹脂(III)及び白色系着色剤を含む第3熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であるフィルム
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムにおいて、上記第1樹脂層に含まれる含珪素熱可塑性樹脂が含珪素芳香族ビニル系樹脂であり、且つ、上記第2樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂(II)、及び、上記第3樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂(III)が、芳香族ビニル樹脂であることが好ましい。上記構成とすることにより、耐加水分解性、寸法安定性及び耐衝撃性に優れる。熱可塑性樹脂(II)及び熱可塑性樹脂(III)は、互いに、同一でも異なってもよい。上記芳香族ビニル樹脂は、特に好ましくは、グラフト重合樹脂である。この場合、第1樹脂層及び第2樹脂層に含まれるゴム(成分)の含有割合は、互いに、同一でも異なってもよい。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムは、上記第3樹脂層の外表面に、水蒸気バリア層及び/又は裏面保護層を、更に備えることができる。本発明の太陽電池用裏面保護フィルムが、水蒸気バリア層及び裏面保護層の両方を備える場合、第3樹脂層、水蒸気バリア層及び裏面保護層の順に備えることが好ましい(図2参照)。即ち、図2の太陽電池用裏面保護フィルム1Bは、第1樹脂層11、第2樹脂層12、第3樹脂層13、水蒸気バリア層14及び裏面保護層15を、順次、備える積層型フィルムである。
上記水蒸気バリア層は、JIS K7129に準じて、温度40℃及び湿度90%RHの条件で測定した透湿度(「水蒸気透湿度」ともいう。)が、好ましくは3g/(m2・day)以下、より好ましくは1g/(m2・day)以下、更に好ましくは0.7g/(m2・day)以下である性能を有する層である。
上記水蒸気バリア層は、好ましくは、電気絶縁性を有する材料からなる層である。
上記水蒸気バリア層は、1種の材料からなる単層構造又は多層構造であってよいし、2種以上の材料からなる単層構造又は多層構造であってもよい。本発明においては、その表面に金属及び/又は金属酸化物からなる膜が形成されてなる蒸着フィルムが、水蒸気バリア層形成用材料として用いられて、水蒸気バリア層が形成されたことが好ましい。金属及び金属酸化物は、いずれも、単一物質であってよいし、2種以上であってもよい。
上記水蒸気バリア層形成用材料は、金属及び/又は金属酸化物からなる膜が、上層側樹脂層と、下層側樹脂層の間に配された3層型フィルムであってもよい。
上記金属としては、アルミニウム等が挙げられる。
また、上記金属酸化物としては、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウム等の元素の酸化物が挙げられる。これらのうち、水蒸気バリア性の観点から、酸化珪素、酸化アルミニウム等が特に好ましい。
上記金属及び/又は金属酸化物からなる膜は、メッキ、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、プラズマCVD、マイクロウェーブCVD等の方法により形成されたものとすることができる。これらのうちの2つ以上の方法を組み合わせてもよい。
上記蒸着フィルムにおける樹脂層としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム;ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリスルホンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。この樹脂膜の厚さは、好ましくは5〜50μm、より好ましくは8〜20μmである。
上記水蒸気バリア層は、市販品を用いて形成されたものとすることができる。例えば、三菱樹脂社製「テックバリアAX」、凸版印刷社製「GXフィルム」、東洋紡社製「エコシアールVE500」(以上、商品名)等のフィルム又はシートを、水蒸気バリア層形成用材料として用いることができる。
上記第3樹脂層に面する水蒸気バリア層の配置は、特に限定されない。水蒸気バリア層形成用材料として蒸着フィルムを用いた場合、金属及び/又は金属酸化物からなる膜が、第3樹脂層に接合されていてよいし、蒸着膜が外側(表面側)にあってもよい。
上記水蒸気バリア層の厚さは、好ましくは5〜300μm、より好ましくは8〜250μm、更に好ましくは10〜200μmである。上記水蒸気バリア層が薄すぎると、水蒸気バリア性が不十分になる場合があり、厚すぎると、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムとしての柔軟性が不十分でない場合がある。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムが水蒸気バリア層を備える場合、上記第3樹脂層と、上記水蒸気バリア層との間に、接着層を備えることができる。接着層の構成は、ポリウレタン樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等とすることができる。
上記裏面保護層は、熱可塑性樹脂(以下、「熱可塑性樹脂(IV)」という。)を含有する組成物(以下、「第4熱可塑性樹脂組成物」という。)を含み、耐傷性を付与する層である。
上記熱可塑性樹脂(IV)は、熱可塑性を有する樹脂であれば、特に限定されない。そして、この熱可塑性樹脂(IV)は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリビニルフルオライド、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアミド樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリアクリロニトリル;セルロースアセテート等のセルロース樹脂;アクリル樹脂;ポリスチレン、ABS樹脂等の芳香族ビニル系樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、ポリエチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル樹脂及びフッ素樹脂が好ましい。
上記第4熱可塑性樹脂組成物は、目的、用途等に応じて、添加剤を含有したものとすることができる。この添加剤としては、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、可塑剤、蛍光増白剤、耐候剤、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、抗菌剤、防かび剤、防汚剤、粘着付与剤、シランカップリング剤等が挙げられる。これらの添加剤における具体的な化合物及びその配合量は、後述する。
尚、上記裏面保護層は、単層構造であってよいし、多層構造であってもよい。後者の場合、互いに同一の組成物からなるフィルム等が積層されてなるものであってよいし、互いに異なる組成物からなるフィルム等が積層されてなるものであってもよい。更には、上記第4熱可塑性樹脂組成物からなるフィルム等の一面側又は両面に、他の物質又は他の組成物からなる層が形成されてなるものであってもよい。
上記裏面保護層は、難燃性を有する樹脂層であることが好ましく、難燃剤を含有する第4熱可塑性樹脂組成物に由来する層であってよいし、分子骨格内に芳香環や、ヘテロ原子を含む組成物に由来する層であってよいし、上記第4熱可塑性樹脂組成物(難燃剤の可否を問わず)からなるフィルム等の一面側又は両面に、有機・無機ハイブリッド材料が積層された層であってもよい。
上記裏面保護層の難燃性は、UL94規格に準ずる燃焼性がVTM−2のクラスか又はそれ以上のクラスであることが好ましい。
上記裏面保護層としては、難燃性を有する樹脂フィルムである市販を用いることもできる。例えば、帝人デュポン社製「Melinex238」(商品名)、SKC社製「SR55」(商品名)、東レ社製「ルミラーX10P」、「ルミラーX10S」、「ルミラーZV10」(以上、商品名)等を用いることができる。
上記裏面保護層の厚さは、通常、10〜500μm、好ましくは15〜400μm、より好ましくは20〜300μmである。上記裏面保護層が薄すぎると、耐傷性が十分でない場合がある。一方、厚すぎると、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムとしての柔軟性が十分でない場合がある。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムが裏面保護層を備える場合、上記第3樹脂層と、上記裏面保護層との間に、接着層を備えることができる。上記第3樹脂層の側に、水蒸気バリア層及び裏面保護層を、順次、備える場合には、上記水蒸気バリア層と、上記裏面保護層との間に、接着層を備えることができる。接着層の構成は、ポリウレタン樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等とすることができる。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムの厚さは、好ましくは30〜1,000μm、より好ましくは40〜900μm、更に好ましくは50〜800μmである。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムが、第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層からなるフィルムである場合、各層の厚さの組み合わせは、好ましくは5〜500μm、10〜990μm及び5〜500μm、より好ましくは10〜400μm、20〜500μm及び10〜400μm、更に好ましくは20〜350μm、30〜450μm及び20〜350μmである。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムが、第1樹脂層、第2樹脂層、第3樹脂層及び水蒸気バリア層からなるフィルムである場合、各層の厚さの組み合わせは、好ましくは5〜500μm、10〜985μm、5〜500μm及び5〜300μm、より好ましくは10〜400μm、20〜500μm、10〜400μm及び8〜250μm、更に好ましくは20〜350μm、30〜450μm、20〜350μm及び10〜200μmである。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムが、第1樹脂層、第2樹脂層、第3樹脂層及び裏面保護層からなるフィルムである場合、各層の厚さの組み合わせは、好ましくは5〜500μm、10〜980μm、5〜500μm及び10〜500μm、より好ましくは10〜400μm、20〜500μm、10〜400μm及び15〜400μm、更に好ましくは20〜350μm、30〜450μm、20〜350μm及び20〜300μmである。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムが、第1樹脂層、第2樹脂層、第3樹脂層、水蒸気バリア層及び裏面保護層からなるフィルムである場合、各層の厚さの組み合わせは、好ましくは5〜500μm、10〜975μm、5〜500μm、5〜300μm及び10〜500μm、より好ましくは10〜400μm、20〜500μm、10〜400μm、8〜250μm及び15〜400μm、更に好ましくは20〜350μm、30〜450μm、20〜350μm、10〜200μm及び20〜300μmである。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムが、第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層からなるフィルムである場合、その製造方法は、各層の構成材料、即ち、各熱可塑性樹脂組成物によって選択され、特に限定されない。好ましい製造方法は、各熱可塑性樹脂組成物を用いた共押出(Tダイキャスト成形法等)、各熱可塑性樹脂組成物を用いて作製した3種の樹脂フィルムを、熱融着又はドライラミネーションする方法、接着剤により接合する方法等である。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムが、第1樹脂層、第2樹脂層、第3樹脂層及び水蒸気バリア層からなるフィルム、又は、第1樹脂層、第2樹脂層、第3樹脂層及び裏面保護層からなるフィルム、である場合、その製造方法は、層構成、各層の構成材料等によって選択され、特に限定されない。製造方法は、以下に例示される。
(1)第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物を用いた共押出法等により、積層フィルムを作製し、その後、積層フィルムにおける第3樹脂層の表面と、水蒸気バリア層形成用フィルム又は裏面保護層形成用フィルムと、を熱融着又はドライラミネーション若しくは接着剤により接合させる方法
(2)第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物を用いた共押出法等により、積層フィルムを作製し、その後、積層フィルムにおける第3樹脂層の表面と、水蒸気バリア層形成用フィルムと、を熱融着又はドライラミネーション若しくは接着剤により接合させて水蒸気バリア層を形成し、次いで、第4熱可塑性樹脂組成物を用いて、水蒸気バリア層の表面に、裏面保護層を形成する方法
(3)第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物を用いて、上記のようにして積層フィルムを作製し、その後、この積層フィルムにおける第3樹脂層の表面と、水蒸気バリア層形成用フィルムと、を熱融着又はドライラミネーション若しくは接着剤により接合させて水蒸気バリア層を形成し、次いで、水蒸気バリア層の表面に、別途、準備した、第4熱可塑性樹脂組成物を用いてなるフィルム(裏面保護層形成用フィルム)を、熱融着又はドライラミネーション若しくは接着剤により接合する方法
(4)裏面保護層形成用フィルムと、水蒸気バリア層形成用フィルムと、を熱融着又はドライラミネーション若しくは接着剤により接合させて積層フィルムを形成し、その後、水蒸気バリア層の表面と、別途、準備した、第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物を用いてなる積層フィルムにおける第3樹脂層とを、熱融着又はドライラミネーション若しくは接着剤により接合する方法
本発明の太陽電池モジュールは、上記本発明の太陽電池用裏面保護フィルムを備えることを特徴とする。本発明の太陽電池モジュールの概略図は、図3に示される。
図3の太陽電池モジュール2は、太陽光の受光面側(図面で上側)から、表面側透明保護部材21、表面側封止膜(表面側充填材部)23、太陽電池素子25、裏面側封止膜(裏面側充填材部)27、及び上記本発明の太陽電池用裏面保護フィルム1が、この順で配設されたものとすることができる。
上記表面側透明保護部材21としては、水蒸気バリア性に優れた材料からなるものが好ましく、通常、ガラス、樹脂等からなる透明基板が使用される。尚、ガラスは、透明性及び耐候性に優れるが、耐衝撃性が十分ではなく、重いため、家屋の屋根に載せる太陽電池とする場合には、耐候性の透明樹脂を用いることが好ましい。透明樹脂としては、フッ素系樹脂等が挙げられる。
上記表面側透明保護部材21の厚さは、ガラスを使用した場合は、通常、1〜5mm程度であり、透明樹脂を使用した場合は、通常、0.1〜5mm程度である。
上記太陽電池素子25は、太陽光の受光により発電機能を有するものである。このような太陽電池素子としては、光起電力としての機能を有するものであれば、特に限定されることなく、公知のものを用いることができる。例えば、単結晶シリコン型太陽電池素子、多結晶シリコン型太陽電池素子等の結晶シリコン太陽電池素子;シングル結合型若しくはタンデム構造型等からなるアモルファスシリコン太陽電池素子;ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池素子;カドミウムテルル(CdTe)や銅インジウムセレナイド(CuInSe2)等のII−VI族化合物半導体太陽電池素子等が挙げられる。これらのうち、結晶シリコン太陽電池素子が好ましく、多結晶シリコン型太陽電池素子が特に好ましい。尚、薄膜多結晶性シリコン太陽電池素子、薄膜微結晶性シリコン太陽電池素子、薄膜結晶シリコン太陽電池素子とアモルファスシリコン太陽電池素子とのハイブリッド素子等を用いることができる。
図3において、図示していないが、上記太陽電池素子25は、通常、配線電極及び取り出し電極を備える。配線電極は、太陽光の受光により、複数の太陽電池素子において生じた電子を集める作用を有するものであり、例えば、表面側封止膜(表面側充填材部)21側の太陽電池素子と、裏面側封止膜(裏面側充填材部)27側の太陽電池素子とを連結するように接続される。また、取り出し電極は、上記配線電極等により集められた電子を電流として取り出す作用を有するものである。
上記表面側封止膜(表面側充填材部)21及び上記裏面側封止膜(裏面側充填材部)27(以下、これらを併せて「封止膜」という。)は、通常、互いに同一又は異なる封止膜形成材料を用いて、予め、シート状又はフィルム状の封止膜とした後、上記表面側透明保護部材21及び太陽電池用裏面保護フィルム1の間において、太陽電池素子25等を熱圧着して形成される。
各封止膜(充填材部)の厚さは、通常、100μm〜4mm程度、好ましくは200μm〜3mm程度、より好ましくは300μm〜2mm程度である。厚さが薄すぎると、太陽電池素子25が損傷する場合があり、一方、厚さが厚すぎると、製造コストが高くなり好ましくない。
上記封止膜形成材料は、通常、樹脂組成物又はゴム組成物である。樹脂としては、オレフィン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。また、ゴムとしては、シリコーン系ゴム、水添共役ジエン系ゴム等が挙げられる。これらのうち、オレフィン系樹脂及び水添共役ジエン系ゴムが好ましい。
オレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン、又は、ジオレフィンを重合して得られた重合体等のほか、エチレンと、酢酸ビニル、アクリル酸エステル等の他のモノマーとの共重合体、アイオノマー等を用いることができる。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。これらのうち、エチレン・酢酸ビニル共重合体及びエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましく、エチレン・酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
また、水添共役ジエン系ゴムとしては、水添スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックポリマー、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックポリマー、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー等が挙げられる。好ましくは、下記の構造を有する共役ジエンブロック共重合体の水素添加物、即ち、芳香族ビニル化合物単位を含む重合体ブロックA;1,2−ビニル結合含量が25モル%を超える共役ジエン系化合物単位を含む重合体の二重結合部分を80モル%以上水素添加してなる重合体ブロックB;1,2−ビニル結合含量が25モル%以下の共役ジエン系化合物単位を含む重合体の二重結合部分を80モル%以上水素添加してなる重合体ブロックC;並びに芳香族ビニル化合物単位及び共役ジエン系化合物単位を含む共重合体の二重結合部分を80モル%以上水素添加してなる重合体ブロックD、から選ばれた少なくとも2種を有するブロック共重合体である。
上記封止膜形成材料は、必要に応じて、架橋剤、架橋助剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系やホスファイト系の酸化防止剤、ヒンダードアミン系の光安定剤、光拡散剤、難燃剤、変色防止剤等の添加剤を含有することができる。
上記のように、表面側封止膜(表面側充填材部)23を形成する材料と、裏面側封止膜(裏面側充填材部)27を形成する材料は、同一であっても異なってもよいが、接着性の点から同じであることが好ましい。
本発明の太陽電池モジュールは、例えば、表面側透明保護部材、表面側封止膜、太陽電池素子、裏面側封止膜及び上記本発明の太陽電池用裏面保護フィルムを、この順に配置した後、これらを積層状態として、真空吸引しながら加熱圧着する、ラミネーション法等により製造することができる。
このラミネーション法におけるラミネート温度は、上記本発明の太陽電池用裏面保護フィルムの接着性の観点から、通常、100℃〜250℃程度である。また、ラミネート時間は、通常、3〜30分程度である。
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
1.評価方法
各種評価項目の測定方法を以下に示す。
1−1.熱可塑性樹脂中のゴム含有量
原料仕込み時の組成から計算した。
1−2.熱可塑性樹脂中のN−フェニルマレイミド単位量及び含珪素構造単位量
原料仕込み時の組成から算出した。
1−3.ガラス転移温度(Tg)
JIS K 7121に準拠して、TA Instruments社製示差走査熱量計「DSC2910」(型式名)により測定した。
1−4.剥離強度
太陽電池用裏面保護フィルムを短冊状(長さ200mm、幅15mm、厚さは表に記載)に裁断し、2枚の評価用フィルムを得た。エチレン・酢酸ビニル共重合体からなる長さ100mm、幅15mm及び厚さ400μmのフィルム「ウルトラパール」(商品名、サンビック社製)を、2枚の評価用フィルムにおける第1樹脂層の間に位置するように配置し、積層状態でラミネーターに入れた。その後、ラミネーターの上部及び下部を真空状態にし、150℃で5分間予熱した。次いで、上部を大気圧に戻して15分間プレスし、剥離強度測定用試料を得た。
得られた剥離強度測定用試料において、評価用フィルムが、EVAフィルムと接着していない部分からT字剥離することにより、剥離強度を測定した。また、剥離状態を評価した。剥離状態は、EVAフィルムが破壊している場合を「○」、EVAフィルム及び評価用フィルム部分の界面で破壊している場合を「×」とした。
1−5.L値
太陽電池用裏面保護フィルム(50mm×50mm、厚さは表に記載)を測定試料とし、東洋精機製作所社製分光光度計「TCS−II」(型式名)を用いて、太陽電池用裏面保護フィルムにおける第1樹脂層表面のL値を測定した。
1−6.波長400〜1,400nmの光及び波長800〜1,400nmの光に対する反射率(%)
太陽電池用裏面保護フィルム(50mm×50mm、厚さは表に記載)を測定試料とし、日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計「V−670」(型式名)により、反射率を測定した。即ち、測定試料の第1樹脂層表面に、光を放射し、400nm又は800nmから1,400nmまでの波長域における反射率を、20nm毎に測定し、これらの平均値を算出した。
1−7.波長800〜1,400nmの光に対する透過率(%)
赤外線透過性着色剤(ペリレン系黒色顔料)を含む第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた第1樹脂層用フィルム(50mm×50mm、厚さは表に記載)を測定試料とし、日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計「V−670」(型式名)により、透過率を測定した。即ち、測定試料に、光を放射し、800nmから1,400nmまでの波長域における透過率を、20nm毎に測定し、これらの平均値を算出した。
1−8.波長400〜700nmの光に対する吸収率(%)
赤外線透過性着色剤(ペリレン系黒色顔料)を含む第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた第1樹脂層用フィルム(50mm×50mm、厚さは表に記載)を測定試料とし、日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計「V−670」(型式名)により、透過率及び反射率を測定した。即ち、測定試料に、光を放射し、400nmから700nmまでの波長域における透過率及び反射率を、20nm毎に測定し、これらの平均値を算出した。吸収率は、透過率の平均値及び反射率の平均値を用いて、下記式により算出した。
吸収率(%)=100−{透過率(%)+反射率(%)}
1−9.引張強度保持率(湿熱老化試験)
所定の大きさの太陽電池用裏面保護フィルムを、下記曝露試験に供し、曝露前後の引張強度をJIS K7127に準じて測定して、その比を算出した。
<曝露試験>
太陽電池用裏面保護フィルムを短冊状(長さ200mm、幅15mm、厚さは表に記載)に裁断し、温度85℃及び湿度85%RHの条件下、2,000時間放置した。
1−10.寸法安定性
所定の大きさの太陽電池用裏面保護フィルムを、下記加熱試験に供し、加熱前後の標線の長さを測定し、下記式に基づいて、寸法変化率を算出した。
算出値から、寸法安定性を、下記基準により判定した。
○:寸法変化率が1%未満である
△:寸法変化率が1%以上2%未満である
×:寸法変化率が2%以上である
<加熱試験>
太陽電池用裏面保護フィルムを正方形状(120mm×120mm)に裁断し、中央部に100mm×100mmの正方形の標線を引いた。このフィルムを、温度120℃の恒温槽に30分間放置した後、取り出して放冷した。
1−11.耐傷性
太陽電池用裏面保護フィルムにおける裏面保護層側の表面を、東測精密工業株式会社製往復動摩擦試験機を用いて、綿帆布かなきん3号、垂直荷重500gで500往復摩擦させた。その後の表面を目視で観察し、下記基準で判定した。
○:傷が観察されなかった
△:傷がわずかに観察された
×:傷が明確に観察された
1−12.水蒸気バリア性
温度40℃、及び、湿度90%RHの条件下、MOCON社製水蒸気透過率測定装置「PERMATRAN W3/31」(型式名)を用いて、JIS K7129Bに準じて、水蒸気透湿度を測定した。尚、透過面として、第1樹脂層ではない側の表面を水蒸気側に配置した。
1−13.光電変換効率向上率
温度25℃±2℃、及び、湿度50±5%RHに調整された室において、ペクセル・テクノロジーズ社製Solar Simulator「PEC−11」(型式名)を用いて、予め、セル単体の光電変換効率を測定した1/4多結晶シリコンセルの表面に、厚さ3mmのガラスを、裏面に、太陽電池用裏面保護フィルムを配置して、シリコンセルを挟み、ガラス及び太陽電池用裏面保護フィルムの間にEVAを導入してシリコンセルを封止し太陽電池モジュールを作製した。その後、温度の影響を低減させるために、光を照射後すぐに光電変換効率を測定した。得られた光電変換効率と、セル単体の光電変換効率とを用いて、光電変換効率向上率を求めた。
光電変換効率向上率(%)={(モジュールの光電変換効率−セル単体の光電変換効率)÷(セル単体の光電変換効率)}×100
2.太陽電池用裏面保護フィルムの製造原料
熱可塑性樹脂組成物の調製等に用いた原料成分を以下に示す。
2−1.グラフト重合樹脂(A−1)
p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン1.3部及びオクタメチルシクロテトラシロキサン98.7部を混合し、これを、ドデシルベンゼンスルホン酸2.0部を溶解した蒸留水300部中に入れ、ホモジナイザーにより3分間攪拌して乳化分散させた。この乳化分散液を、コンデンサー、窒素導入口及び攪拌機を備えたセパラブルフラスコに移し、攪拌しながら、90℃で6時間加熱した。次いで、5℃で24時間保持し、縮合を完結させ、ポリオルガノシロキサン系ゴム(含珪素ゴム)を含むラテックスを得た。縮合率は93%であった。その後、このラテックスを、炭酸ナトリウム水溶液を用いてpH7に中和した。得られたポリオルガノシロキサン系ゴムの体積平均粒子径は300nmであった。
次に、攪拌機を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコに、イオン交換水100部、オレイン酸カリウム1.5部、水酸化カリウム0.01部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部、上記ポリオルガノシロキサン系ゴム40部を含む、pH7に調製されたラテックス、スチレン15部及びアクリロニトリル5部からなるバッチ重合成分を加え、攪拌しながら昇温した。温度が45℃に達した時点で、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.1部、硫酸第1鉄0.003部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート・二水塩0.2部及びイオン交換水15部よりなる活性剤水溶液、並びにジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部を添加し、1時間重合を行った。
その後、上記反応系に、イオン交換水50部、オレイン酸カリウム1部、水酸化カリウム0.02部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.2部、スチレン30部及びアクリロニトリル10部よりなるインクレメント重合成分を、3時間に渡って連続的に添加し、重合を続けた。添加終了後、更に攪拌を継続した。1時間後、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加し、重合を終了し、グラフト重合樹脂(A−1)を含むラテックスを得た。次いで、上記ラテックスに、硫酸1.5部を加えて、樹脂成分を90℃で凝固させ、その後、樹脂成分の水洗、脱水及び乾燥を行って、粉末状のグラフト重合樹脂(A−1)を得た。ガラス転移温度(Tg)は108℃、グラフト率は84%、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は0.60dl/gであった。
2−2.グラフト重合樹脂(A−2)
アクリル酸n−ブチル99部及びアリルメタアクリレート1部を乳化重合して得られた、体積平均粒子径100nmのアクリルゴム(ゲル含率90%)50部を含む固形分濃度40%のラテックスを収容した反応器に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部及びイオン交換水150部を加えて希釈した。その後、反応器内を窒素ガスで置換し、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.02部、硫酸第一鉄0.005部及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.3部を加え、撹枠しながら60℃まで昇温した。
一方、別途準備した容器において、スチレン37.5部及びアクリロニトリル12.5部の混合物50部に、ターピノーレン1.0部及びクメンハイドロパーオキサイド0.2部を溶解させ、その後、容器内を窒素ガスで置換し、単量体組成物を得た。
次いで、上記単量体組成物を、5時間かけて、一定流量で上記反応器に添加しながら70℃で重合を行い、グラフト重合樹脂(A−2)を含むラテックスを得た。このラテックスに、硫酸マグネシウムを添加し、樹脂成分を凝固させた。その後、樹脂成分の水洗、脱水及び乾燥を行って、粉末状のグラフト重合樹脂(A−2)を得た。ガラス転移温度(Tg)は108℃、グラフト率は93%、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は0.30dl/gであった。
2−3.グラフト重合樹脂(A−3)
アクリル酸n−ブチル97.5部、アリルメタアクリレート1部及びビニルメトキシシラン1.5部を乳化重合して得られた、体積平均粒子径100nmのアクリル系ゴム(ゲル含率90%)50部を含む固形分濃度40%のラテックスを収容した反応器に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部及びイオン交換水150部を加えて希釈した。その後、反応器内を窒素ガスで置換し、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.02部、硫酸第一鉄0.005部及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.3部を加え、撹枠しながら60℃まで昇温した。
一方、別途準備した容器において、スチレン37.5部及びアクリロニトリル12.5部の混合物50部に、ターピノーレン1.0部及びクメンハイドロパーオキサイド0.2部を溶解させ、その後、容器内を窒素ガスで置換し、単量体組成物を得た。
次いで、上記単量体組成物を、5時間かけて、一定流量で上記反応器に添加しながら70℃で重合を行い、グラフト重合樹脂(A−3)を含むラテックスを得た。このラテックスに、硫酸マグネシウムを添加し、樹脂成分を凝固させた。その後、樹脂成分の水洗、脱水及び乾燥を行って、粉末状のグラフト重合樹脂(A−3)を得た。ガラス転移温度(Tg)は108℃、グラフト率は93%、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は0.30dl/gであった。
2−4.グラフト重合樹脂(A−4)
撹拌機を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水75部、ロジン酸カリウム0.5部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部、体積平均粒子径270nmのポリブタジエンゴム(ゲル含率:90%)32部を含む固形分濃度57%のラテックス、体積平均粒子径550nmのスチレン・ブタジエン共重合体(スチレン単位量25%、ゲル含率50%)8部を含む固形分濃度68%のラテックス、スチレン15部及びアクリロニトリル5部を入れ、窒素気流中、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達した時点で、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.2部をイオン交換水20部に溶解した水溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加え、70℃で重合を開始し、1時間重合させた。
その後、イオン交換水50部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部、tert−ドデシルメルカプタン0.05部及びクメンハイドロパーオキサイド0.01部を3時間かけて連続的に添加し、重合を継続した。1時間重合させた後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチレン−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加し、重合を完結させ、ラテックスを得た。
次いで、このラテックスに硫酸マグネシウムを添加し、樹脂成分を凝固させた。その後、水洗及び乾燥することにより、グラフト重合樹脂(A−4)を得た。グラフト率は72%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は0.47dl/gであった。また、ガラス転移温度(Tg)は、108℃であった。
2−5.アクリロニトリル・スチレン共重合体
テクノポリマー社製AS樹脂「SAN−H」(商品名)を用いた。ガラス転移温度(Tg)は、108℃である。
2−6.アクリロニトリル・スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体
日本触媒社製アクリロニトリル・スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体「ポリイミレックス PAS1460」(商品名)を用いた。N−フェニルマレイミド単位量は40%、スチレン単位量は51%、GPCによるポリスチレン換算のMwは120,000である。ガラス転移温度(Tg)は、173℃である。
2−7.白色系着色剤
石原産業社製酸化チタン「タイペークCR−50−2」(商品名)を用いた。平均一次粒子径は0.25μmである。
2−8.赤外線透過性着色剤
BASF社製ペリレン系黒色顔料「Lumogen BLACK FK4280」(商品名)を用いた。
2−9.黄色着色剤
BASF社製キノフタロン系黄色顔料「Paliotol Yellow K0961HD」(商品名)を用いた。
2−10.水蒸気バリア層形成用フィルム(R−1)
三菱樹脂社製透明蒸着フィルム「テックバリアAX」(商品名)を用いた。PETフィルムの片面にシリカ蒸着膜を有する透明フィルムであり、厚さは12μm、水蒸気透湿度(JIS K7129)は0.15g/(m2・day)である。
2−11.水蒸気バリア層形成用フィルム(R−2)
東洋紡社製無機2元蒸着バリアフィルム「エコシアールVE500」(商品名)を用いた。PETフィルムの片面に(シリカ/アルミナ)の蒸着を施した透明フィルムであり、厚さは12μm、水蒸気透湿度は0.5g/(m2・day)である。
2−12.裏面保護層形成用フィルム(P−1)
東レ社製半透明PETフィルム「ルミラーX10S」(商品名)を用いた。厚さは50μmである。
2−13.裏面保護層形成用フィルム(P−2)
帝人デュポン社製乳白色PETフィルム「Melinex238」(商品名)を用いた。厚さは75μmである。
3.太陽電池用裏面保護フィルムの製造及び評価(1)
実施例1−1
表1に示した、第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層を形成するための熱可塑性樹脂組成物の原料を、それぞれ、ヘンシェルミキサーにより混合した。その後、二軸押出機(型式名「TEX44」、日本製鋼所製)を用いて、バレル温度270℃で溶融混練し、第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物の、3種のペレットを得た。
次に、ダイ幅1,400mm及びリップ間隔1.5mmのTダイを有し、スクリュー径65mmの押出機3機を備える多層フィルム成形機を用い、各押出機に、第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物を供給した。そして、Tダイから、溶融温度270℃で溶融樹脂を吐出させ、3層型軟質フィルムとした。その後、この3層型軟質フィルムを、エアーナイフにより、表面温度が95℃に制御されたキャストロールに面密着させ、冷却固化し、厚さ170μmの白色の3層型太陽電池用裏面保護フィルムを得た。尚、第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層の厚さは、表1に記載の通りである。フィルムの厚さは、シックネスゲージ(型式名「ID−C1112C」、ミツトヨ社製)を用い、フィルムの製造開始から1時間経過後のフィルムを切り取り、フィルム幅方向の中心、及び、中心より両端に向けて、10mm間隔で厚さを測定し(n=107)、その平均値とした。フィルムの端部から20mmの範囲にある測定点の値は、上記平均値の計算から除去した。
この太陽電池用裏面保護フィルムについて、各種評価を行い、その結果を表1に併記した。
実施例1−2〜1−3及び比較例1−1
表1に示した、第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層を形成するための熱可塑性樹脂組成物の原料を用い、実施例1−1と同様にして、白色の3層型太陽電池用裏面保護フィルムを得た。そして、この太陽電池用裏面保護フィルムについて、各種評価を行い、その結果を表1に併記した。
4.太陽電池用裏面保護フィルムの製造及び評価(2)
実施例1−4〜1−5及び比較例1−2
表2に示した、第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層を形成するための熱可塑性樹脂組成物を用い、実施例1−1と同様にして、3層型太陽電池用裏面保護フィルムを得た。そして、この太陽電池用裏面保護フィルムについて、各種評価を行い、その結果を表2に併記した。
表1及び表2から明らかなように、含珪素熱可塑性樹脂でないグラフト重合樹脂(A−2)を含有する熱可塑性樹脂組成物を用いて形成された第1樹脂層を備える太陽電池用裏面保護フィルムとした比較例1−1及び比較例1−2は、エチレン・酢酸ビニル共重合体からなるフィルムとの接着において、剥離強度が、それぞれ、12N及び15Nと低く、接着性が十分ではなかった。
一方、含珪素熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物を用いて形成された第1樹脂層を備える太陽電池用裏面保護フィルムとした実施例1−1〜1−5は、剥離強度が67〜82Nと高く、接着性に優れていた。
5.太陽電池用裏面保護フィルムの製造及び評価(3)
実施例2−1
ダイ幅1,400mm及びリップ間隔1.5mmのTダイを有し、スクリュー径65mmの押出機3機を備える多層フィルム成形機を用い、各押出機に、表3に示した、第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物、及び、第3熱可塑性樹脂組成物を供給した。そして、Tダイから、温度270℃で溶融させた、各樹脂組成物を吐出させ、3層型軟質フィルムとした。その後、この3層型軟質フィルムを、エアーナイフにより、表面温度が95℃に制御されたキャストロールに面密着させつつ、冷却固化させ、厚さ170μmの積層フィルムを得た。尚、第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層の厚さは、表3に記載の通りである。フィルムの厚さは、ミツトヨ社製シックネスゲージ「ID−C1112C」(型式名)を用い、フィルムの製造開始から1時間経過後のフィルムを切り取り、フィルム幅方向の中心、及び、中心より両端に向けて、10mm間隔で厚さを測定し(n=107)、その平均値とした。フィルムの端部から20mmの範囲にある測定点の値は、上記平均値の計算から除去した。
次に、上記積層フィルムにおける第3樹脂層の外表面に、水蒸気バリア層形成用フィルム(R−1)を、蒸着膜が外表面となるようにして、ポリウレタン系の接着剤を用いて接着させ、太陽電池用裏面保護フィルムを得た。そして、この太陽電池用裏面保護フィルムについて、各種評価を行い、その結果を表3に併記した。
実施例2−2
表3に示した、第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物と、水蒸気バリア層形成用フィルム(R−2)とを用い、実施例2−1と同様にして、太陽電池用裏面保護フィルムを得た。そして、この太陽電池用裏面保護フィルムについて、各種評価を行い、その結果を表3に併記した。
実施例2−3
ダイ幅1,400mm及びリップ間隔1.5mmのTダイを有し、スクリュー径65mmの押出機3機を備える多層フィルム成形機を用い、各押出機に、表4に示した、第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物、及び、第3熱可塑性樹脂組成物を供給した。そして、Tダイから、温度270℃で溶融させた、各樹脂組成物を吐出させ、3層型軟質フィルムとした。その後、この3層型軟質フィルムを、エアーナイフにより、表面温度が95℃に制御されたキャストロールに面密着させつつ、冷却固化させ、厚さ170μmの積層フィルムを得た。尚、第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層の厚さは、表4に記載の通りである。フィルムの厚さは、ミツトヨ社製シックネスゲージ「ID−C1112C」(型式名)を用い、フィルムの製造開始から1時間経過後のフィルムを切り取り、フィルム幅方向の中心、及び、中心より両端に向けて、10mm間隔で厚さを測定し(n=107)、その平均値とした。フィルムの端部から20mmの範囲にある測定点の値は、上記平均値の計算から除去した。
次に、上記積層フィルムにおける第3樹脂層の外表面に、裏面保護層形成用フィルム(P−1)を、蒸着膜が外表面となるようにして、ポリウレタン系の接着剤を用いて接着させ、太陽電池用裏面保護フィルムを得た。そして、この太陽電池用裏面保護フィルムについて、各種評価を行い、その結果を表4に併記した。
実施例2−4
表4に示した、第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物並びに裏面保護層形成用フィルム(P−2)を用い、実施例2−3と同様にして、太陽電池用裏面保護フィルムを得た。そして、この太陽電池用裏面保護フィルムについて、各種評価を行い、その結果を表4に併記した。
実施例2−5
ダイ幅1,400mm及びリップ間隔1.5mmのTダイを有し、スクリュー径65mmの押出機3機を備える多層フィルム成形機を用い、各押出機に、第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物、及び、第3熱可塑性樹脂組成物を供給した。そして、Tダイから、温度270℃で溶融させた、各樹脂組成物を吐出させ、3層型軟質フィルムとした。その後、この3層型軟質フィルムを、エアーナイフにより、表面温度が95℃に制御されたキャストロールに面密着させつつ、冷却固化させ、厚さ170μmの積層フィルムを得た。尚、第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層の厚さは、表4に記載の通りである。フィルムの厚さは、ミツトヨ社製シックネスゲージ「ID−C1112C」(型式名)を用い、フィルムの製造開始から1時間経過後のフィルムを切り取り、フィルム幅方向の中心、及び、中心より両端に向けて、10mm間隔で厚さを測定し(n=107)、その平均値とした。フィルムの端部から20mmの範囲にある測定点の値は、上記平均値の計算から除去した。
次に、上記積層フィルムにおける第3樹脂層の外表面に、水蒸気バリア層形成用フィルム(R−1)を、蒸着膜が外表面となるようにして、ポリウレタン系の接着剤を用いて接着させた。更に、水蒸気バリア層における蒸着膜の表面に、裏面保護層形成用フィルム(P−1)をポリウレタン系の接着剤を用いて接着させ、太陽電池用裏面保護フィルムを得た。そして、この太陽電池用裏面保護フィルムについて、各種評価を行い、その結果を表4に併記した。
比較例2−1
表4に示した組成を有する第1熱可塑性樹脂組成物を用いた以外は、実施例2−5と同様にして、太陽電池用裏面保護フィルムを得た。そして、この太陽電池用裏面保護フィルムについて、各種評価を行い、その結果を表4に併記した。
実施例2−6
表5に示した、第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物と、水蒸気バリア層形成用フィルム(R−1)とを用い、実施例2−1と同様にして、太陽電池用裏面保護フィルムを得た。そして、この太陽電池用裏面保護フィルムについて、各種評価を行い、その結果を表5に併記した。
実施例2−7
表6に示した、第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物と、裏面保護層形成用フィルム(P−1)とを用い、実施例2−3と同様にして、太陽電池用裏面保護フィルムを得た。そして、この太陽電池用裏面保護フィルムについて、各種評価を行い、その結果を表6に併記した。
実施例2−8
表6に示した、第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物と、水蒸気バリア層形成用フィルム(R−1)と、裏面保護層形成用フィルム(P−1)とを用い、実施例2−5と同様にして、太陽電池用裏面保護フィルムを得た。そして、この太陽電池用裏面保護フィルムについて、各種評価を行い、その結果を表6に併記した。
比較例2−2
表6に示した組成を有する第1熱可塑性樹脂組成物を用いた以外は、実施例2−8と同様にして、太陽電池用裏面保護フィルムを得た。そして、この太陽電池用裏面保護フィルムについて、各種評価を行い、その結果を表6に併記した。
以下、本発明を詳しく説明する。本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味する。また、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムは、第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層を、順次、備えるフィルムであり、その概略断面は、図1及び図2に例示される。即ち、図1の太陽電池用裏面保護フィルム1Aは、第1樹脂層11、第2樹脂層12及び第3樹脂層13を、順次、備える積層型フィルムである。図2の太陽電池用裏面保護フィルム1Bは、第1樹脂層11、第2樹脂層12及び第3樹脂層13に加えて、他の層14及び15を更に備える積層型フィルムである。そして、本発明において、太陽電池用裏面保護フィルムは、第1樹脂層の表面で、太陽電池モジュールの充填材部の露出面と接着させるために用いられる。
上記第1樹脂層は、含珪素熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂(以下、「熱可塑性樹脂(I)」という。)を含む層であり、この熱可塑性樹脂(I)を含む熱可塑性樹脂組成物(以下、「第1熱可塑性樹脂組成物」という。)を用いて得られた層である。そして、この第1樹脂層は、太陽電池素子を包埋する充填材部との接着性に優れ、且つ、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムに対して、主として可撓性を与える作用を有する層である。
上記第2樹脂層は、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムにおける基層であり、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムに対して、主として耐熱性を与える作用を有する層であり、樹脂成分を含むものであれば、特に限定されないが、好ましくは熱可塑性樹脂(以下、「熱可塑性樹脂(II)」という。)を含む熱可塑性樹脂組成物(以下、「第2熱可塑性樹脂組成物」という。)を用いて得られた層である。
上記第3樹脂層は、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムに対して、主として可撓性を与える作用を有する層であり、樹脂成分を含むものであれば、特に限定されない。また、この第3樹脂層は、好ましくは熱可塑性樹脂(以下、「熱可塑性樹脂(III)」という。)を含む熱可塑性樹脂組成物(以下、「第3熱可塑性樹脂組成物」という。)を用いて得られた層である。
本発明においては、上記第2樹脂層及び/又は上記第3樹脂層が白色系着色剤を含む。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムは、好ましくは耐熱性及び可撓性を有するフィルムであり、少なくとも上記第1熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、フィルム形成性を有する組成物である。また、本発明において、特に好ましくは、第1、第2及び第3熱可塑性樹脂組成物がフィルム形成性を有する組成物である。
尚、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムに、耐熱性及び可撓性を付与するためには、熱可塑性樹脂(I)のガラス転移温度(以下、「Tg」という。)及び熱可塑性樹脂(III)のTgは、熱可塑性樹脂(II)のTgと同じである又はそれより低いことが好ましい。十分な可撓性を付与するためには、熱可塑性樹脂(I)のTg及び熱可塑性樹脂(III)のTgは、熱可塑性樹脂(II)のTgより低いことが好ましい。熱可塑性樹脂(I)のTg及び熱可塑性樹脂(II)のTgの差は、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上であり、熱可塑性樹脂(II)のTg及び熱可塑性樹脂(III)のTgの差は、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上である。
1つの樹脂層に熱可塑性樹脂が2種以上含まれて、示差走査熱量計(DSC)により得られるチャートにおいて複数のTgが検出された場合、複数のTgのうち、最高温度をTgとして採用するものとする。
上記第1樹脂層は、含珪素熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂(I)を含有する第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層である。
尚、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムに可撓性及び耐熱性を付与する観点から、この熱可塑性樹脂(I)のTgは、好ましくは90℃〜200℃、より好ましくは95℃〜180℃、更に好ましくは100℃〜160℃、特に好ましくは105℃〜140℃である。第1熱可塑性樹脂組成物が複数の熱可塑性樹脂を含む場合、少なくとも1つの樹脂は、上記範囲のTgを有する。好ましくは、少なくとも1つの含珪素熱可塑性樹脂は、上記範囲のTgを有する。
上記熱可塑性樹脂(I)は、含珪素熱可塑性樹脂であってよいし、この含珪素熱可塑性樹脂と、珪素非含有熱可塑性樹脂とからなるものであってもよい。そして、第1熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(I)からなるものであってよいし、この熱可塑性樹脂(I)と、添加剤とを含有する組成物であってもよい。
上記含珪素熱可塑性樹脂は、分子中に珪素原子を含む樹脂であり、含珪素ゴムの存在下 、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体を重合して得られたグラフ ト重合樹脂(以下、「含珪素芳香族ビニル系樹脂」ともいう。)を含む。そして、併用可 能な樹脂として、ポリオレフィン樹脂(含珪素ポリオレフィン系樹脂)、ポリ塩化ビニル樹脂(含珪素ポリ塩化ビニル系樹脂)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(含珪素ポリ塩化ビニリデン系樹脂)、飽和ポリエステル樹脂(含珪素飽和ポリエステル系樹脂)、ポリカーボネート樹脂(含珪素ポリカーボネート系樹脂)、ポリアミド樹脂(含珪素ポリアミド系樹脂)、アクリル樹脂(含珪素アクリル系樹脂)、フッ素樹脂(含珪素フッ素系樹脂)、珪素樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせてアロイとして用いることができる。
本発明においては、太陽電池素子を包埋する、エチレン・酢酸ビニル共重合体組成物等を含む充填材部との接着性、耐熱性及び耐候性に優れることから、含珪素芳香族ビニル系樹脂が用いられる。
尚、上記第1熱可塑性樹脂組成物に含まれる含珪素熱可塑性樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂(I)の全量に対して、好ましくは1〜100質量%、より好ましくは3〜100質量%、更に好ましくは10〜90質量%である。上記割合であれば、上記第1熱可塑性樹脂組成物を含む第1樹脂層は、太陽電池素子を包埋する、エチレン・酢酸ビニル共重合体組成物等を含む充填材部との接着性、耐熱性及び耐候性に優れる。
一方、上記珪素非含有熱可塑性樹脂としては、芳香族ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位を含むアクリル樹脂、フッ素樹脂や、珪素非含有ゴムの存在下、含珪素重合性不飽和化合物を含まない単量体を重合して得られた珪素非含有グラフト重合樹脂(ジエン系グラフト重合樹脂、アクリル系グラフト重合樹脂等)等が挙げられる。これらの樹脂は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記含珪素芳香族ビニル系樹脂は、含珪素ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物及びシア ン化ビニル化合物を含む単量体を重合して得られたグラフト重合樹脂である。
芳香族ビニル化合物は、少なくとも1つのビニル結合と、少なくとも1つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されない。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの芳香族ビニル化合物のうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−クロロ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらのシアン化ビニル化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
含珪素ゴムの構成成分は、以下に説明されるが、物理的性質(形状、大きさ、分子量等)は、特に限定されない。
上記ゴム成分の形状は、特に限定されず、粒子状(球状、略球状)、直線状、曲線状等とすることができる。粒子状である場合、その体積平均粒子径は、好ましくは5〜2,000nmであり、より好ましくは10〜1,800nmであり、更に好ましくは50〜1,500nmである。体積平均粒子径が上記の範囲にあれば、第1熱可塑性樹脂組成物の加工性及び得られる第1樹脂層の耐衝撃性等に優れる。尚、上記体積平均粒子径は、電子顕微鏡写真を用いた画像解析、レーザー回折法、光散乱法等により測定することができる。
上記含珪素ゴムとしては、含珪素重合性不飽和化合物と、ブタジエン等の共役ジエン化合物、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン化合物及びアクリル酸アルキルエステル化合物から選ばれた少なくとも1種と、を含む単量体を共重合して得られたゴム(水添ゴムでもよい);1種又は2種以上のオルガノシロキサンの重縮合により得られたポリオルガノシロキサンからなるシリコーンゴム;オルガノシロキサンと、含珪素架橋剤(3又は4のアルコキシ基を有する飽和シラン化合物)とを用いて得られたゴム;オルガノシロキサンと、含珪素重合性不飽和化合物とを用いて得られたゴム;オルガノシロキサンと、含珪素架橋剤(3又は4のアルコキシ基を有する飽和シラン化合物)と、含珪素重合性不飽和化合物とを用いて得られたゴム;共役ジエン化合物と、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物等から選ばれた少なくとも1種の珪素非含有重合性不飽和化合物と、含珪素カップリング剤(アルキルジクロロシラン化合物、アルキルトリクロロシラン化合物、ジアルキルクロロシラン化合物、トリクロロシラン、テトラクロロシラン、テトラアルコキシシラン化合物等)とを用いて得られたゴム等が挙げられる。上記含珪素ゴムは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記含珪素ゴムのうちの2種以上を組み合わせた場合、並びに、上記含珪素ゴムの少なくとも1種と、他のゴムとを組み合わせた場合は、複合ゴムといわれることがあるが、この複合ゴムにおいては、複数のゴムが化学結合していてよいし、絡み合いを有してよいし、単なる共存物であってもよい。
上記含珪素ゴムとしては、含珪素重合性不飽和化合物と、アクリル酸アルキルエステル化合物とを含む単量体を共重合して得られたゴム(以下、「含珪素ゴム(s1)」という。)、オルガノシロキサンと、含珪素重合性不飽和化合物とを用いて得られたゴム(以下、「含珪素ゴム(s2)」という。)、オルガノシロキサンと、含珪素架橋剤(3又は4のアルコキシ基を有する飽和シラン化合物)と、含珪素重合性不飽和化合物とを用いて得られたゴム(以下、「含珪素ゴム(s3)」という。)、並びに、複合ゴム(以下、「含珪素ゴム(s4)」という。)が好ましい。
上記含珪素ゴム(s1)の形成に用いる単量体のうち、含珪素重合性不飽和化合物は、下記一般式(1)で表される化合物等を用いることができる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記反応に用いる含珪素重合性不飽和化合物は、珪素原子を有し、少なくとも1
つのビニル結合を有する化合物であれば、特に限定されず、例えば、下記一般式(1)で
表される化合物等を用いることができる。
R
1
Si(OR
2
)
3
(1)
〔式中、R
1
は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する炭素数1〜20の有機基
であり、R
2
は、互いに同一又は異なって、水素原子、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化
水素基である。〕
尚、炭素−炭素二重結合としては、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ア
リル基、ノルボルネニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
上記一般式(1)で表される含珪素重合性不飽和化合物としては、ビニルトリアルコキ
シシラン化合物、3−メタクリロキシアルキルトリアルコキシシラン化合物、3−アクリ
ロキシアルキルトリアルコキシシラン化合物、アリルトリアルコキシシラン化合物、ノル
ボルネニルトリアルコキシシラン化合物、シクロヘキセニルエチルトリアルコキシシラン
化合物等が挙げられる。
上記ビニルトリアルコキシシラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニル
トリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン等が挙げ
られる。
上記3−メタクリロキシアルキルトリアルコキシシランとしては、3−メタクリロキシ
メチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、3−メタク
リロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、
3−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキ
シシラン、3−メタクリロキシメチルトリプロポキシシラン、3−メタクリロキシエチル
トリプロポキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3−メタク
リロキシプロピルトリブトキシシラン等が挙げられる。
上記3−アクリロキシアルキルトリアルコキシシランとしては、3−アクリロキシメチ
ルトリメトキシシラン、3−アクリロキシエチルトリメトキシシラン、3−アクリロキシ
プロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシメチルトリエトキシシラン、3−アクリ
ロキシエチルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−
アクリロキシメチルトリプロポキシシラン、3−アクリロキシエチルトリプロポキシシラ
ン、3−アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリブ
トキシシラン等が挙げられる。
上記アリルトリアルコキシシランとしては、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエ
トキシシラン、アリルトリプロポキシシラン、アリルトリブトキシシラン等が挙げられる
。
上記ノルボルネニルトリアルコキシシランとしては、ノルボルネニルトリメトキシシラ
ン、ノルボルネニルトリエトキシシラン、ノルボルネニルトリプロポキシシラン、ノルボ
ルネニルトリブトキシシラン等が挙げられる。
上記シクロヘキセニルエチルトリアルコキシシランとしては、シクロヘキセニルエチル
トリメトキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリエトキシシラン、シクロヘキセニルエ
チルトリプロポキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリブトキシシラン等が挙げられる
。
また、上記以外の他の含珪素重合性不飽和化合物としては、ジエトキシメチルビニルシ
ラン、トリス(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン、p−ビニルフェニルメチルジメト
キシシラン、1−(m−ビニルフェニル)メチルジメチルイソプロポキシシラン、3−(
p−ビニルフェノキシ)プロピルメチルジエトキシシラン、3−(p−ビニルベンゾイロ
キシ)プロピルメチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメ
トキシシラン、2−(m−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(o−
ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、1−(p−ビニルフェニル)エチルメ
チルジメトキシシラン、1−(m−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、1
−(o−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、1−(o−ビニルフェニル)
−1,1,2−トリメチル−2,2−ジメトキシジシラン、1−(p−ビニルフェニル)
−1,1−ジフェニル−3−エチル−3,3−ジエトキシジシロキサン、m−ビニルフェ
ニル−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジフェニルシラン、[3−(p−イソプ
ロペニルベンゾイルアミノ)プロピル]フェニルジプロポキシシラン、N−3−(メタク
リロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メタク
リロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、3−[トリス(トリメチルシロキ
シ)シリル]プロピルメタクリレート、3−[トリス(ジメチルビニルシロキシ)]プロ
ピルメタクリレート、3−(トリクロロシリル)プロピルメタクリレート、トリメチルシ
リルメタクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)−3−メタクリロキシプロピルシラ
ン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、アクリロキシトリメチルシラン、
イタコン酸ビストリメチルシリル、(メタクリロキシメチル)ビス(トリメチルシロキシ
)メチルシラン、2−(トリメチルシロキシ)エチルメタクリレ−ト、2−(アクリロキ
シエトキシ)トリメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ
)メチルシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルビス(トリメチルシロキシ)シラ
ン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピ
ル)トリス(トリメチルシロキシ)シラン、トリクロロビニルシラン、アリルトリクロロ
シラン等が挙げられる。
含珪素重合性不飽和化合物は、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン及び3−(p−ビニルベンゾイロキシ)プロピルメチルジメトキシシランが好ましく、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシランが特に好ましい。上記単量体100質量%に含まれる含珪素重合性不飽和化合物の含有量は、好ましくは0.01〜15質量%、より好ましくは0.1〜10質量%である。
また、アクリル酸アルキルエステル化合物は、好ましくは、アルキル基の炭素数が2〜8のアクリル酸アルキルエステルである。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、アクリル酸アルキルエステル化合物は、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。上記単量体100質量%に含まれるアクリル酸アルキルエステル化合物の含有量は、好ましくは85〜99.99質量%、より好ましくは90〜99.9質量%である。
上記含珪素ゴム(s1)の形成に用いる単量体は、含珪素重合性不飽和化合物と、アクリル酸アルキルエステル化合物とからなるものであってよいし、含珪素重合性不飽和化合物と、アクリル酸アルキルエステル化合物と、他の重合性化合物とからなるものであってもよい。他の重合性化合物としては、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、アルコキシ基含有不飽和化合物、含フッ素不飽和化合物、2以上の不飽和結合を有する多官能性単量体等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、上記単量体がエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチ レングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレー ト、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のモノ又はポリエチレングリコ ールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルマレエ ート、ジアリルサクシネート、トリアリルトリアジン等のジ又はトリアリル化合物、アリ ル(メタ)アクリレート等のアリル化合物、1,3−ブタジエン等の共役ジエン化合物等 の、2以上の不飽和結合を有する多官能性単量体を含むことが好ましい。その使用量は、上記単量体100質量%に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
上記含珪素ゴム(s1)のTgは、低温衝撃性、可撓性等の観点から、好ましくは−10℃以下である。
上記含珪素ゴム(s2)は、オルガノシロキサンと、含珪素重合性不飽和化合物とを用いて得られたゴムであり、オルガノシロキサンセグメントと、他のセグメントとを含むポリオルガノシロキサン系ゴムである。
また、上記含珪素ゴム(s3)は、オルガノシロキサンと、含珪素架橋剤(3又は4のアルコキシ基を有する飽和シラン化合物)と、含珪素重合性不飽和化合物とを用いて得られたゴムであり、オルガノシロキサンセグメントと、他のセグメントとを含むポリオルガノシロキサン系ゴムである。
上記含珪素ゴム(s2)及び(s3)は、好ましくは、乳化重合でラテックスの状態で得られる、例えば、米国特許第2,891,920号明細書、同第3,294,725号明細書等に記載された方法により製造されたポリオルガノシロキサン系ゴムとすることができる。
上記ポリオルガノシロキサン系ゴムは、例えば、ホモミキサー又は超音波混合機を使用し、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸等のスルホン酸系乳化剤の存在下に、オルガノシロキサンと水とを剪断混合し、その後、縮合する方法により得られたラテックスに含まれるシリコーンゴムであることが好ましい。アルキルベンゼンスルホン酸は、オルガノシロキサンの乳化剤として作用するとともに、重合開始剤としても作用するので好適である。この際、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、アルキルスルホン酸金属塩等を併用すると、グラフト重合樹脂を製造する際に、シリコーンゴムを安定に維持する効果があるので好ましい。尚、本発明においては、上記オルガノシロキサンの使用に際して、含珪素重合性不飽和化合物を併用しており、重合体末端が、ジメチルビニルシリル基、メチルフェニルビニルシリル基等で封止されていてもよい。また、上記ポリオルガノシロキサン系ゴムの末端は、例えば、ヒドロキシル基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基等で封止されていてもよい。
上記反応に用いるオルガノシロキサンは、例えば、下記一般式(2)で表される構造単位を有する化合物である。
(RmSiO(4−m)/2) (2)
〔式中、Rは置換又は非置換の1価の炭化水素基であり、mは0〜3の整数を示す。〕
上記一般式(2)で表される化合物の構造は、直鎖状、分岐状又は環状であるが、上記化合物は、好ましくは環状構造を有するオルガノシロキサンである。このオルガノシロキサンが有するR、即ち、1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;及び、これら炭化水素基における炭素原子に結合した水素原子の一部がハロゲン原子、シアノ基等で置換された基;並びにアルキル基の水素原子の少なくとも1個がメルカプト基で置換された基等が挙げられる。
上記オルガノシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等の環状化合物の他に、直鎖状又は分岐状のオルガノシロキサンを用いることができる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
尚、上記オルガノシロキサンは、予め縮合された、例えば、Mwが500〜10,000程度のポリオルガノシロキサンであってもよい。また、オルガノシロキサンがポリオルガノシロキサンである場合、その分子鎖末端は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基等で封止されていてもよい。
これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、含珪素重合性不飽和化合物は、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン及び3−(p−ビニルベンゾイロキシ)プロピルメチルジメトキシシランが好ましく、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシランが特に好ましい。
上記含珪素ゴム(s2)及び(s3)の製造に際して、上記オルガノシロキサンと、上記含珪素重合性不飽和化合物とを併用する場合、上記含珪素重合製不飽和化合物の使用量は、これらの合計量100質量%に対し、好ましくは0.01〜15質量%、より好ましくは0.05〜12質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。上記含珪素重合性不飽和化合物の使用量が多すぎると、得られる第1樹脂層の耐衝撃性及び耐候性が十分でない場合がある。
上記含珪素ゴム(s3)の製造に際して用いられる含珪素架橋剤としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の3官能性架橋剤、テトラエトキシシラン等の4官能性架橋剤等が挙げられる。尚、これらの化合物を予め縮重合させてなる架橋性プレポリマーを使用してもよい。これらは、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記含珪素架橋剤を用いて得られた含珪素ゴム(s3)の存在下、芳香族ビニル化合物を含む単量体(m3)を重合して得られたグラフト重合樹脂を含む第1樹脂層は、耐衝撃性に特に優れる。
上記含珪素ゴム(s3)の製造に際して用いられる含珪素架橋剤の使用量は、オルガノシロキサン、グラフト交叉剤(通常、含珪素重合性不飽和化合物である)及び含珪素架橋剤の合計量100質量%に対し、通常、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、更に好ましくは0.01〜5質量%である。上記含珪素架橋剤の使用量が、10質量%を超えると、得られるポリオルガノシロキサン系ゴムの柔軟性が損なわれ、得られる第1樹脂層の可撓性が低下する場合がある。
上記含珪素ゴム(s2)又は(s3)の製造に用いられる乳化剤の使用量は、オルガノシロキサン及び含珪素重合性不飽和化合物の合計量100質量部に対し、通常、0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜3質量部である。
上記含珪素ゴム(s2)又は(s3)の製造に用いられる水の使用量は、オルガノシロキサン及び含珪素重合性不飽和化合物の合計量100質量部に対し、通常、100〜500質量部、好ましくは200〜400質量部である。
また、上記含珪素ゴム(s2)又は(s3)の製造の際の縮合温度は、通常、5℃〜100℃である。
上記含珪素ゴム(s2)及び(s3)の体積平均粒子径は、通常、500nm以下、好ましくは400nm以下、より好ましくは50〜400nmである。体積平均粒子径が500nm以下であれば、第1熱可塑性樹脂組成物の加工性及び得られる第1樹脂層の耐衝撃性等に優れる。一方、上記体積平均粒子径が500nmを超えると、第1樹脂層の光沢が低下する等、外観性が劣る傾向にある。
尚、上記体積平均粒子径は、含珪素ゴム(s2)及び(s3)の製造時に用いる乳化剤及び水の使用量、オルガノシロキサンの添加方法、ホモミキサー又は超音波混合機を使用したときの分散の程度等によって、容易に制御することができる。
上記含珪素ゴム(s2)のTgは、低温衝撃性、可撓性等の観点から、好ましくは−150℃〜−30℃である。
上記含珪素ゴム(s3)のTgは、低温衝撃性、可撓性等の観点から、好ましくは−150℃〜−30℃である。
上記複合ゴム(s4)は、以下に例示される。これらの態様においては、上記のように、ゴムどうしが化学結合していてよいし、絡み合いを有してよいし、単なる共存物であってもよい。
(s4−1)上記含珪素ゴム(s1)及び(s2)の組合せ
(s4−2)上記含珪素ゴム(s1)及び(s3)の組合せ
(s4−3)上記含珪素ゴム(s1)、(s2)及び(s3)の組合せ
(s4−4)アクリル系ゴム及び上記含珪素ゴム(s2)の組合せ
(s4−5)アクリル系ゴム及び上記含珪素ゴム(s3)の組合せ
(s4−6)アクリル系ゴム、上記含珪素ゴム(s2)及び(s3)の組合せ
上記態様(s4−4)〜(s4−6)の複合ゴムにおいて、特に、ゴムどうしが絡み合いを有する場合、「シリコーン・アクリル複合ゴム」といわれることがあり、例えば、特開平4−239010号公報に記載された方法により製造することができる。これらの態様の市販品としては、三菱レイヨン社製「メタブレンSX−006」(商品名)等が挙げられる。
上記グラフト重合樹脂は、一般に、ゴム強化樹脂といわれる樹脂であり、単量体がゴムの周囲で重合した結果、ゴムの、表面及び内部のうちの少なくとも表面にグラフト重合体部を有する樹脂である。
また、上記グラフト重合樹脂の形成に用いられる単量体は、芳香族ビニル化合物及びシ アン化ビニル化合物のみからなるものであってよいし、芳香族ビニル化合物と、シアン化 ビニル化合物と、含珪素重合性不飽和化合物を除く他のビニル系化合物とからなるものであってもよい。後者の場合、上記単量体に含まれる芳香族ビニル化合物の割合は、好ましくは40〜90質量%である。他のビニル系化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記グラフト重合樹脂は、上記含珪素ゴムの存在下に、上記単量体を重合することにより製造されたものであるが、その製造方法は、特に限定されず、例えば、乳化重合、溶液重合、塊状重合等を適用することができる。
上記グラフト重合樹脂の製造に際して用いられる上記含珪素ゴム及び上記単量体の使用量の割合は、上記含珪素ゴム100質量部に対して、上記単量体が、好ましくは25〜400質量部、より好ましくは40〜300質量部である。
本発明においては、上記のように、含珪素芳香族ビニル系樹脂は、他の熱可塑性樹脂と組み合わせて熱可塑性樹脂(I)としてもよい。他の熱可塑性樹脂は、分子中に珪素原子を含み且つ芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含まない樹脂、分子中に珪素原子を含まず且つ芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む樹脂、及び、分子中に珪素原子を含まず且つ芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含まない樹脂が挙げられる。
分子中に珪素原子を含み且つ芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含まない樹脂としては、含珪素ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物を含まない単量体(以下、「単量体(m14)」という。)を重合して得られたグラフト重合樹脂(以下、「グラフト重合樹脂(g13)」という。)、含珪素アクリル系樹脂、含珪素ポリオレフィン系樹脂、含珪素ポリ塩化ビニル系樹脂、含珪素ポリ塩化ビニリデン系樹脂、含珪素飽和ポリエステル系樹脂、含珪素ポリカーボネート系樹脂、含珪素ポリアミド系樹脂、含珪素フッ素系樹脂、珪素樹脂等が挙げられる。
分子中に珪素原子を含まず且つ芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む樹脂としては、芳香族ビニル化合物を含む単量体(以下、「単量体(m15)」という。)を重合して得られた芳香族ビニル(共)重合体、及び、珪素非含有ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物を含む単量体(以下、「単量体(m16)」という。)を重合して得られた珪素非含有グラフト重合樹脂(以下、「グラフト重合樹脂(g14)」という。)が挙げられる。
また、分子中に珪素原子を含まず且つ芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含まない樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位を含むアクリル樹脂、フッ素樹脂や、珪素非含有ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物、含珪素重合性不飽和化合物を含まない単量体(以下、「単量体(m17)」という。)を重合して得られた珪素非含有グラフト重合樹脂(以下、「グラフト重合樹脂(g15)」という。)等が挙げられる。このグラフト重合樹脂(g15)としては、ジエン系グラフト重合樹脂、アクリル系グラフト重合樹脂等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂(I)が、含珪素芳香族ビニル系樹脂と、他の熱可塑性樹脂とからなる場合、含珪素芳香族ビニル系樹脂及びグラフト重合樹脂(g14)の組み合わせ、含珪素芳香族ビニル系樹脂及びグラフト重合樹脂(g15)の組み合わせ、等とすることができる。
上記グラフト重合樹脂(g13)の形成に用いる含珪素ゴムとしては、上記含珪素ゴム(s1)〜(s4)が好ましい。
また、上記グラフト重合樹脂(g13)の形成に用いる単量体(m14)としては、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等から選ばれた少なくとも1種の化合物が用いられる。
上記グラフト重合樹脂(g13)は、上記含珪素ゴムの存在下に、上記単量体(m14)を重合することにより製造されたものであるが、その製造方法は、特に限定されず、例えば、乳化重合、溶液重合、塊状重合等を適用することができる。
上記グラフト重合樹脂(g13)の製造に際して用いられる上記含珪素ゴム及び上記単量体(m14)の使用量の割合は、上記含珪素ゴム100質量部に対して、上記単量体(m14)が、好ましくは25〜400質量部、より好ましくは40〜300質量部である。
上記芳香族ビニル(共)重合体の形成に用いられる単量体(m15)は、芳香族ビニル化合物のみからなるものであってよいし、芳香族ビニル化合物と、含珪素重合性不飽和化合物を除く他のビニル系化合物とからなるものであってもよい。後者の場合、上記単量体(m15)に含まれる芳香族ビニル化合物の割合は、好ましくは20質量%以上100質量%未満、より好ましくは40〜90質量%である。他のビニル系化合物としては、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、シアン化ビニル化合物が好ましい。
上記芳香族ビニル(共)重合体は、上記単量体(m15)を重合することにより製造されたものであるが、その製造方法は、特に限定されず、例えば、乳化重合、溶液重合、塊状重合等を適用することができる。
上記珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)の形成に用いる珪素非含有ゴムとしては、アクリル系ゴム、ジエン系ゴム等が挙げられるが、アクリル系ゴムが好ましい。
上記珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)の形成に用いる単量体(m16)は、芳香族ビニル化合物のみからなるものであってよいし、芳香族ビニル化合物と、含珪素重合性不飽和化合物を除く他のビニル系化合物とからなるものであってもよい。後者の場合、上記単量体(m16)に含まれる芳香族ビニル化合物の割合は、好ましくは20質量%以上100質量%未満、より好ましくは40〜90質量%である。他のビニル系化合物としては、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)は、上記珪素非含有ゴムの存在下に、上記単量体(m16)を重合することにより製造されたものであるが、その製造方法は、特に限定されず、例えば、乳化重合、溶液重合、塊状重合等を適用することができる。
上記珪素非含有グラフト重合樹脂(g14)の製造に際して用いられる上記珪素非含有ゴム及び上記単量体(m16)の使用量の割合は、上記珪素非含有ゴム100質量部に対して、上記単量体(m16)が、好ましくは25〜400質量部、より好ましくは40〜300質量部である。
更に、上記第1熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂成分が、珪素非含有ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物、含珪素重合性不飽和化合物を含まない単量体(m17)を重合して得られた珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)と、上記含珪素芳香族ビニル系樹脂(グ ラフト重合樹脂)とを組み合わせてなる樹脂である場合について、説明する。
上記珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)の形成に用いる珪素非含有ゴムとしては、アクリル系ゴム、ジエン系ゴム等が挙げられるが、アクリル系ゴムが好ましい。
上記珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)の形成に用いる単量体(m17)としては、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等から選ばれた少なくとも1種の化合物が用いられる。
上記珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)は、上記珪素非含有ゴムの存在下に、上記単量体(m17)を重合することにより製造されたものであるが、その製造方法は、特に限定されず、例えば、乳化重合、溶液重合、塊状重合等を適用することができる。
上記珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)の製造に際して用いられる上記珪素非含有ゴム及び上記単量体(m17)の使用量の割合は、上記珪素非含有ゴム100質量部に対して、上記単量体(m17)が、好ましくは25〜400質量部、より好ましくは40〜300質量部である。
珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)及び上記グラフト重合樹脂の含有割合は、特に限定されないが、珪素非含有グラフト重合樹脂(g15)の形成に用いた珪素非含有ゴム、及び、上記グラフト重合樹脂の形成に用いた含珪素ゴムの合計含有量の割合が、熱可塑性樹脂(I)の全体に対して、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%となるように選択される。ゴム成分の合計含有量の割合が、上記範囲にあると、得られる第1樹脂層の耐衝撃性に優れる。
上記グラフト重合樹脂(g13)〜(g15)の製造方法は、上記のように、公知の方法を適用することができるが、以下に、乳化重合による製造方法を説明する。
乳化重合においては、ゴム成分、単量体の他、通常、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水等が用いられる。
上記重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレイト、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記重合開始剤の使用量は、上記単量体全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%である。
尚、上記重合開始剤は、反応系に一括して、又は、連続的に添加することができる。
上記連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類;ターピノーレン類、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記連鎖移動剤の使用量は、上記単量体全量に対し、通常、0.05〜2.0質量%である。
尚、上記連鎖移動剤は、反応系に一括して、又は、連続的に添加することができる。
上記乳化剤としては、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩;高級脂肪族カルボン酸塩、脂肪族リン酸塩等が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型化合物、アルキルエーテル型化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記乳化剤の使用量は、上記単量体全量に対し、通常、0.3〜5.0質量%である。
乳化重合は、単量体、重合開始剤等の種類に応じた温度条件等で行うことができる。この乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、樹脂成分を粉末状とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製される。この凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸等の有機酸等が用いられる。
上記グラフト重合樹脂(g13)〜(g15)におけるグラフト率は、好ましくは20%〜170%であり、より好ましくは30%〜170%、更に好ましくは40%〜150%である。このグラフト率が低すぎると、上記第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる第1樹脂層の可撓性が十分でない場合がある。一方、グラフト率が高すぎると、第1熱可塑性樹脂組成物の粘度が高くなり、薄肉化が困難になる場合がある。
グラフト率は、下記式により求めることができる。
グラフト率(質量%)={(S−T)/T}×100
上記式において、Sは、1グラムのグラフト重合樹脂をアセトン(ゴム成分がアクリル系ゴムを含む場合、アセトニトリル)20ミリリットルに投入し、25℃で、振とう機により2時間振とうした後、5℃で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(グラム)であり、Tは、1グラムのグラフト重合樹脂に含まれるゴム成分の質量(グラム)である。このゴム成分の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外線吸収スペクトル(IR)により求める方法等により得ることができる。
上記グラフト率は、例えば、グラフト重合樹脂の製造時に用いる重合開始剤の種類及びその使用量、連鎖移動剤の種類及びその使用量、単量体の添加方法及び添加時間、重合温度等を、適宜、選択することにより調整することができる。
上記グラフト重合樹脂のアセトン可溶分(ゴム成分がアクリル系ゴムを含む場合、アセトニトリル可溶分)の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、好ましくは0.1〜2.5dl/g、より好ましくは0.2〜1.5dl/g、更に好ましくは0.25〜1.2dl/gである。極限粘度がこの範囲内であると、第1熱可塑性樹脂組成物の加工性に優れ、肉厚精度の高い第1樹脂層を形成することができる。
ここで、極限粘度[η]は、以下の要領で求めることができる。
上記グラフト重合樹脂におけるグラフト率を求める際に、遠心分離後に回収されたアセトン可溶分(ゴム成分がアクリル系ゴムを含む場合、アセトニトリル可溶分)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点調製し、ウベローデ粘度管を用いて、30℃で各濃度の還元粘度を測定し、極限粘度[η]が求められる。
上記極限粘度[η]は、上記グラフト重合樹脂を製造する際に用いる、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を調整することにより、容易に制御することができる。
上記第1樹脂層と、太陽電池素子を包埋する、エチレン・酢酸ビニル共重合体組成物等を含む充填材部との接着性を特に優れたものとするために、上記含珪素熱可塑性樹脂に由来する含珪素構造単位の含有量は、上記第1熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(I)を構成する構造単位の全量に対して、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.07〜15質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。上記含珪素構造単位の含有量が多すぎると、外観性が低下する場合がある。尚、上記含珪素構造単位とは、含珪素重合性不飽和化合物に由来する単位、及び、オルガノシロキサンに由来する単位を意味する。
上記第1樹脂層が耐熱性に特に優れたものとするために、上記第1熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(I)は、マレイミド系化合物に由来する構造単位(以下、「構造単位(u11)」という。)を含むことが好ましい。この構造単位(u11)は、どの樹脂成分に由来するものであってもよい。即ち、上記含珪素熱可塑性樹脂が構造単位(u11)を含んでよいし、他の熱可塑性樹脂がこの構造単位(u11)を含んでもよい。
上記構造単位(u11)の含有量は、上記観点から、上記第1熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(I)を構成する構造単位の全量に対して、好ましくは1〜45質量%、より好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは10〜35質量%である。上記構造単位(u11)の含有量が多すぎると、第1樹脂層の可撓性が低下する場合がある。
上記構造単位(u11)を有する樹脂成分は、好ましくは、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位と、構造単位(u11)とからなる共重合体である。各構造単位の含有割合は、特に限定されない。この共重合体としては、アクリロニトリル・スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体等が挙げられる。
更に、上記第1樹脂層が耐加水分解性に特に優れたものとするために、上記第1熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(I)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(以下、「構造単位(t11)」という。)を含むことが好ましい。上記のように、上記含珪素熱可塑性樹脂は、含珪素芳香族ビニル系樹脂を含むことが好ましいので、上記構造単位(t11)の含有は、この樹脂のみで満たされてよいし、上記含珪素芳香族ビニル系樹脂と、他の芳香族ビニル系樹脂とから満たされてもよい。
上記構造単位(t11)の含有量は、上記観点から、上記第1熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(I)を構成する構造単位の全量に対して、好ましくは30〜80質量%、より好ましくは35〜75質量%、更に好ましくは40〜70質量%である。上記構造単位(t11)の含有量が多すぎると、耐熱性、可撓性等が劣る場合がある。
上記第1樹脂層の形成に用いる第1熱可塑性樹脂組成物に配合される添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、着色剤、蛍光増白剤、耐候剤、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、抗菌剤、防かび剤、防汚剤、粘着付与剤等が挙げられる。これらの添加剤における具体的な化合物及びその配合量は、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムの好ましい態様とともに、後述される。
上記第1樹脂層は、含珪素熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂(I)を含む第1原料組成物を溶融混練してなる第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層である。
上記第1原料組成物の溶融混練法及びその装置は、特に限定されず、例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続ニーダー等を用いて、公知の条件で溶融混練され、第1熱可塑性樹脂組成物が製造される。
上記第1樹脂層の厚さは、通常、5〜500μm、好ましくは10〜400μmである。
上記第2樹脂層は、上記のように、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムにおける基層であり、熱可塑性樹脂(II)を含有する第2熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層である。
上記熱可塑性樹脂(II)のガラス転移温度(Tg)は、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムに十分な可撓性及び耐熱性を付与する観点から、更には、第3樹脂層又はその裏面側に必要に応じて配される層に印刷、表面処理等を行った場合、温度履歴等に伴う熱収縮等を抑制する観点から、好ましくは110℃〜220℃、より好ましくは115℃〜200℃、更に好ましくは120℃〜190℃、特に好ましくは125℃〜180℃である。
上記熱可塑性樹脂(II)は、熱可塑性を有する樹脂であれば、特に限定されず、珪素非含有熱可塑性樹脂であってよいし、分子中に珪素原子を含む含珪素熱可塑性樹脂であってもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
上記珪素非含有熱可塑性樹脂としては、芳香族ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記含珪素熱可塑性樹脂としては、芳香族ビニル樹脂(含珪素芳香族ビニル系樹脂)、ポリオレフィン樹脂(含珪素ポリオレフィン系樹脂)、ポリ塩化ビニル樹脂(含珪素ポリ塩化ビニル系樹脂)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(含珪素ポリ塩化ビニリデン系樹脂)、飽和ポリエステル樹脂(含珪素飽和ポリエステル系樹脂)、ポリカーボネート樹脂(含珪素ポリカーボネート系樹脂)、ポリアミド樹脂(含珪素ポリアミド系樹脂)、アクリル樹脂(含珪素アクリル系樹脂)、フッ素樹脂(含珪素フッ素系樹脂)、珪素樹脂等が挙げられる。これらの含珪素熱可塑性樹脂については、上記第1熱可塑性樹脂組成物に含有される含珪素熱可塑性樹脂を適用することができ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記熱可塑性樹脂(II)が、含珪素熱可塑性樹脂を含む場合、この含珪素熱可塑性樹脂は、上記熱可塑性樹脂(I)に含まれる含珪素熱可塑性樹脂と同一であってよいし、異なってもよい。
上記熱可塑性樹脂(II)としては、耐加水分解性、寸法安定性等の観点から、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む芳香族ビニル樹脂(以下、「芳香族ビニル樹脂(II−1)」という。)が好ましい。尚、この芳香族ビニル樹脂(II−1)は、珪素非含有熱可塑性樹脂であってよいし、分子中に珪素原子を含む含珪素熱可塑性樹脂(含珪素芳香族ビニル系樹脂等)であってもよい。
上記芳香族ビニル樹脂(II−1)としては、ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物を含む単量体(以下、「単量体(m21)」という。)を重合して得られたグラフト重合樹脂(以下、「グラフト重合樹脂(g21)」という。);芳香族ビニル化合物を含む単量体(以下、「単量体(m22)」という。)を重合してなる芳香族ビニル系(共)重合体(以下、「(共)重合体(c21)」という。);並びに、上記グラフト重合樹脂(g21)及び(共)重合体(c21)の混合物(以下、「混合物(y21)」という。)が挙げられる。
上記芳香族ビニル樹脂(II−1)がグラフト重合樹脂(g21)である場合、このグラフト重合樹脂(g21)の形成に用いられるゴムとしては、アクリル系ゴム;ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、天然ゴム等からなるジエン系ゴム;共役ジエン系化合物よりなる単位を含む(共)重合体を水素添加してなる重合体からなる水添ゴム;エチレン単位と、炭素数3以上のα−オレフィンからなる単位を含むエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム;ウレタン系ゴム;シリコーン系ゴム;シリコーン・アクリル複合ゴム等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ゴムの形状は、特に限定されない。この形状が粒子状である場合、その体積平均粒子径は、好ましくは5〜2,000nm、より好ましくは10〜1,800nm、更に好ましくは50〜1,500nmである。体積平均粒子径が上記の範囲にあれば、第2熱可塑性樹脂組成物の加工性、得られる第2樹脂層の耐衝撃性等に優れる。
上記グラフト重合樹脂(g21)の形成に用いられるゴムは、上記第1樹脂層に含有させることのできるグラフト重合樹脂(g13)〜(g15)の形成に用いたゴム成分と同一であってよいし、異なってもよい。
本発明において、上記ゴムは、耐衝撃性の観点から、ジエン系ゴムが好ましく、耐候性の観点から、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム、シリコーン・アクリル複合ゴム、エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム及び水添ゴムが好ましい。
従って、ジエン系ゴムを用いて得られたグラフト重合樹脂(g21)、又は、このグラフト重合樹脂(g21)と(共)重合体(c21)とを含む混合物(y21)を含有する第2熱可塑性樹脂組成物により、可撓性及び耐衝撃性に優れた第2樹脂層を形成することができる。
尚、上記ジエン系ゴムは、可撓性、低温衝撃性等の観点から、ガラス転移点が−20℃以下の(共)重合体であることが好ましい。
上記アクリル系ゴムは、フィルムに十分な可撓性を付与することができることから、2つ以上のガラス転移温度を有する共重合体であることが好ましい。
上記アクリル系ゴムとしては、上記第1樹脂層の形成に用いられる第1熱可塑性樹脂組成物に配合される含珪素芳香族ビニル系樹脂の形成に用いられる珪素非含有ゴムとして説明したアクリル系ゴムが好ましい。このアクリル系ゴムは、可撓性、低温衝撃性等の観点から、ガラス転移点が−10℃以下の(共)重合体であることが好ましい。
上記アクリル系ゴムとしては、好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、エトキシエトキシエチルアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物を含む単量体を(共)重合して得られたゴムである。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記単量体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物以外に、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;メタクリロイル基を有するシリコーン、含フッ素不飽和化合物等の単官能性単量体、アリル(メタ)アクリレート等の多官能性単量体を、合計で30質量%以下の範囲で共重合成分として含んでいてもよい。
上記アクリル系ゴムを構成する構造単位は、好ましくは、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル化合物に由来する構造単位、及び、アリル(メタ)アクリレート等の多官能性単量体に由来する構造単位である。好ましいアクリル系ゴムを構成する、多官能性単量体に由来する構造単位の含有量は、可撓性、低温衝撃性等の観点から、構造単位の全量に対して、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜8質量%、更に好ましくは0.1〜5質量%である。
上記アクリル系ゴムの体積平均粒子径は、可撓性、低温衝撃性等の観点から、好ましくは5〜500nm、より好ましくは10〜450nm、更に好ましくは30〜400nmである。
上記シリコーン系ゴムとしては、上記第1樹脂層の形成に用いられる第1熱可塑性樹脂組成物に配合される含珪素芳香族ビニル系樹脂の形成に用いられる含珪素ゴムとして例示した含珪素ゴム(s2)及び含珪素ゴム(s3)が好ましい。即ち、オルガノシロキサンと、含珪素重合性不飽和化合物とを用いて得られ、オルガノシロキサンセグメントと、他のセグメントとを含むポリオルガノシロキサン系ゴム、並びに、オルガノシロキサンと、含珪素架橋剤(3又は4のアルコキシ基を有する飽和シラン化合物)と、含珪素重合性不飽和化合物とを用いて得られ、オルガノシロキサンセグメントと、他のセグメントとを含むポリオルガノシロキサン系ゴムが好ましい。これらのシリコーン系ゴムの好ましい構成も上記含珪素ゴム(s2)及び含珪素ゴム(s3)における記載の通りである。また、これらのシリコーン系ゴムは、グラフト重合樹脂の製造に好適な方法である乳化重合を容易なものとするために、ラテックスに含まれるゴムであることが好ましい。従って、このシリコーン系ゴムは、上記のように、例えば、米国特許第2,891,920号明細書、同第3,294,725号明細書等に記載された方法により製造されたポリオルガノシロキサン系ゴムとすることができる。
上記シリコーン系ゴムの体積平均粒子径は、可撓性、低温衝撃性等の観点から、好ましくは5〜500nm、より好ましくは10〜450nm、更に好ましくは30〜400nmである。
また、上記シリコーン・アクリル複合ゴムとしては、上記第1樹脂層の形成に用いられる第1熱可塑性樹脂組成物に配合される含珪素芳香族ビニル系樹脂の形成に用いられる複合ゴム(s4−4)〜(s4−6)が好ましい。特に好ましくは、ポリオルガノシロキサン系ゴムと、アクリル系ゴムとが分離できないように相互に絡み合った構造を有する複合ゴムである。
上記ポリオルガノシロキサン系ゴムとしては、好ましくは、オルガノシロキサンを共重合したものを用いることができる。上記オルガノシロキサンとしては、3員環以上の各種の還元体が挙げられ、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等が好ましい。そして、これらのオルガノシロキサンは、単独であるいは2つ以上を組み合せて用いることができる。
上記ポリオルガノシロキサン系ゴムを構成する、オルガノシロキサンに由来する構造単位の含有量は、構造単位の全量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
上記シリコーン・アクリル複合ゴムの体積平均粒子径は、可撓性、低温衝撃性等の観点から、好ましくは5〜500nm、より好ましくは10〜450nm、更に好ましくは30〜400nmである。
上記エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムは、エチレン単位と、炭素数3以上のα−オレフィンからなる単位とを含む共重合体であり、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体等が挙げられる。
上記エチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体等が挙げられる。また、上記エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体としては、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・ブテン−1・非共役ジエン共重合体等が挙げられる。
上記α−オレフィンとしては、好ましくは、炭素数3〜20のα−オレフィンであり、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン等が挙げられる。上記α−オレフィンにおいて、より好ましい炭素数は3〜12であり、更に好ましくは3〜8である。
上記エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムを構成する、エチレン単位及びα−オレフィン単位の割合は、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは5〜95質量%及び5〜95質量%、より好ましくは50〜90質量%及び10〜50質量%、更に好ましくは60〜88質量%及び12〜40質量%、特に好ましくは70〜85質量%及び15〜30質量%である。上記α−オレフィン単位の含有割合が多すぎると、可撓性が低下する場合がある。
上記エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムが、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体である場合、非共役ジエンとしては、5−エチリデン−2−ノルボルネン等のアルケニルノルボルネン;ジシクロペンタジエン等の環状ジエン;脂肪族ジエン等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記非共役ジエンに由来する構造単位の含有量は、上記エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体を構成する構造単位の全量に対して、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜20質量%である。非共役ジエン単位の含有割合が多すぎると、成形外観性及び耐侯性が低下する場合がある。
上記エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムにおける不飽和基量は、ヨウ素価に換算して4〜40であることが好ましい。
また、上記エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃;JIS K6300に準拠)は、好ましくは5〜80、より好ましくは10〜65、更に好ましくは15〜45である。ムーニー粘度が上記範囲にあると、耐衝撃性及び可撓性に優れる。
上記水添ゴムは、共役ジエン系化合物に由来する構造単位を含む(共)重合体を水素添加してなる(共)重合体であれば、特に限定されない。
上記水添ゴムとしては、下記の構造を有する共役ジエンブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。即ち、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなる重合体ブロックA;1,2−ビニル結合含量が25モル%を超える共役ジエン系化合物に由来する構造単位からなる重合体の二重結合部分を95モル%以上水素添加してなる重合体ブロックB;1,2−ビニル結合含量が25モル%以下の共役ジエン系化合物に由来する構造単位からなる重合体の二重結合部分を95モル%以上水素添加してなる重合体ブロックC;並びに、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と共役ジエン系化合物に由来する構造単位とからなる共重合体の二重結合部分を95モル%以上水素添加してなる重合体ブロックDのうち、2種以上を組み合わせたものからなるブロック共重合体である。
上記ブロック共重合体の分子構造は、分岐状、放射状又はこれらの組み合わせでもよい。また、ブロック構造は、ジブロック、トリブロックもしくはマルチブロック又はこれらの組み合わせでもよい。
上記ブロック共重合体の構造としては、A−(B−A)n、(A−B)n、A−(B−C)n、C−(B−C)n、(B−C)n、A−(D−A)n、(A−D)n、A−(D−C)n、C−(D−C)n、(D−C)n、A−(B−C−D)n、(A−B−C−D)n〔但し、nは1以上の整数である。〕等が挙げられ、好ましくは、A−B−A、A−B−A−B、A−B−C、A−D−C、C−B−Cである。
上記ブロック共重合体を構成する重合体ブロックA及びDの形成に用いられる芳香族ビニル化合物としては、少なくとも1つのビニル結合と、少なくとも1つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されない。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレンが好ましい。
上記ブロック共重合体を構成する重合体ブロックAの含有割合は、重合体の全体に対して、好ましくは0〜65質量%、より好ましくは10〜40質量%である。重合体ブロックAの含有量が多すぎると、耐衝撃性が十分でない場合がある。
上記重合体ブロックB、C及びDは、共役ジエン系化合物及び芳香族ビニル化合物を用いて得られた水素添加前ブロック共重合体を水素添加することにより形成される。上記重合体ブロックB、C及びDの形成に用いられる共役ジエン系化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、クロロプレン等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、工業的に利用でき、物性に優れることから、1,3−ブタジエン及びイソプレンが好ましい。
上記重合体ブロックB、C及びDの水素添加率は、いずれも95モル%以上であり、好ましくは96モル%以上である。
上記重合体ブロックBにおける1,2−ビニル結合含量は、好ましくは25モル%を超え90モル%以下、より好ましくは30〜80モル%である。この1,2−ビニル結合含量が25モル%以下であると、ゴム的性質が失われ、耐衝撃性が十分でない場合がある。一方、90モル%を超えると、耐薬品性が十分でない場合がある。
また、上記重合体ブロックCにおける1,2−ビニル結合含量は、好ましくは25%モル以下、より好ましくは20モル%以下である。
上記重合体ブロックDにおける1,2−ビニル結合含量は、好ましくは25〜90モル%、より好ましくは30〜80モル%である。この1,2−ビニル結合含量が25モル%未満であると、ゴム的性質が失われ、耐衝撃性が十分でない場合がある。一方、90モル%を超えると、耐薬品性が十分でない場合がある。
また、上記重合体ブロックDにおける芳香族ビニル化合物単位量は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。この芳香族ビニル化合物単位量が25質量%を超えると、ゴム的性質が失われ耐衝撃性が十分でない場合がある。
上記水添ゴムとしては、水添ポリブタジエン、水添スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックポリマー、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックポリマー、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体の水素添加物等が挙げられる。
上記水添ゴムの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万〜100万、より好ましくは3万〜80万、更に好ましくは5万〜50万である。Mwが上記範囲にあると、可撓性に優れる。
上記グラフト重合樹脂(g21)の形成に用いられる単量体(m21)は、芳香族ビニル化合物を含み、その含有量は、上記単量体(m21)の全体に対して、通常、30〜100質量%、より好ましくは40〜95質量%、更に好ましくは50〜90質量%である。上記芳香族ビニル化合物は、上記第1樹脂層の形成に用いられる第1熱可塑性樹脂組成物に配合される含珪素芳香族ビニル系樹脂の形成に用いられる芳香族ビニル化合物において例示した化合物を用いることができる。上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
上記単量体(m21)は、芳香族ビニル化合物以外に、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等を用いることができる。これら他の化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記のうち、シアン化ビニル化合物が好ましく、アクリルニトリルが好ましい。
上記単量体(m21)において、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の合計使用量は、成形加工性、耐薬品性、耐加水分解性、成形外観性等の観点から、単量体(m21)全量に対し、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%である。また、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の使用比率は、成形加工性、耐薬品性、耐加水分解性、成形外観性等の観点から、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは5〜95質量%及び5〜95質量%、より好ましくは50〜95質量%及び5〜50質量%、更に好ましくは60〜90質量%及び10〜40質量%である。
また、上記単量体(m21)は、マレイミド系化合物を含むことにより、第2樹脂層に、優れた耐熱性を付与することができる。尚、上記グラフト重合樹脂(g21)又は上記混合物(y21)に含まれる、マレイミド系化合物に由来する構造単位の好ましい含有量は後述される。
上記グラフト重合樹脂(g21)として、好ましい樹脂は、以下の通りである。
(g21−1)ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物からなる単量体を重合して得られたグラフト重合樹脂
(g21−2)ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及びマレイミド系化合物からなる単量体を重合して得られたグラフト重合樹脂
(g21−3)ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及びメタクリル酸エステル化合物からなる単量体を重合して得られたグラフト重合樹脂
上記グラフト重合樹脂(g21)の製造方法は、上記第1樹脂層の形成に用いられる第1熱可塑性樹脂組成物に配合される含珪素芳香族ビニル系樹脂である、グラフト重合樹脂(g13)〜(g15)と同様である。
上記グラフト重合樹脂(g21)のグラフト率は、好ましくは20〜170%であり、より好ましくは30〜170%、更に好ましくは40〜150%である。このグラフト率が低すぎると、フィルムとしての可撓性が十分でない場合がある。一方、グラフト率が高すぎると、第2熱可塑性樹脂組成物の粘度が高くなり、薄肉化が困難になる場合がある。
上記グラフト重合樹脂(g21)は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記芳香族ビニル樹脂(II−1)が上記(共)重合体(c21)である場合、この(共)重合体(c21)を形成する単量体(m22)は、芳香族ビニル化合物を含むものであれば、特に限定されない。
上記単量体(m22)は、芳香族ビニル化合物を含み、その含有量は、上記単量体(m22)の全体に対して、通常、30〜100質量%、より好ましくは40〜95質量%、更に好ましくは50〜90質量%である。上記芳香族ビニル化合物は、上記例示した化合物を用いることができる。上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
上記単量体(m22)は、芳香族ビニル化合物以外に、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等を用いることができる。これら他の化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記のうち、シアン化ビニル化合物が好ましく、アクリルニトリルが好ましい。
上記単量体(m22)において、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の合計使用量は、成形加工性、耐薬品性、耐加水分解性、成形外観性等の観点から、単量体(m22)全量に対し、好ましくは40〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%である。また、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の使用比率は、成形加工性、耐薬品性、耐加水分解性、成形外観性等の観点から、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは5〜95質量%及び5〜95質量%、より好ましくは40〜95質量%及び5〜60質量%、更に好ましくは50〜90質量%及び10〜50質量%である。
また、上記単量体(m22)は、マレイミド系化合物を含むことにより、第2樹脂層に、優れた耐熱性を付与することができる。
上記(共)重合体(c21)が共重合体である場合、好ましい重合体は、以下の通りである。
(c21−1)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位とからなる共重合体
(c21−2)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位と、マレイミド系化合物に由来する構造単位とからなる共重合体
上記(共)重合体(c21)の製造方法は、特に限定されず、例えば、乳化重合、溶液重合、塊状重合等を適用することができる。
上記(共)重合体(c21)は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記芳香族ビニル樹脂(II−1)が上記混合物(y21)である場合、上記グラフト重合樹脂(g21)及び上記(共)重合体(c21)の含有割合は、特に限定されない。
また、上記芳香族ビニル樹脂(II−1)が、上記グラフト重合樹脂(g21)である場合、及び、上記混合物(y21)である場合、のいずれにおいても、上記第2熱可塑性樹脂組成物に含まれるゴムの合計含有量の割合は、耐衝撃性の観点から、熱可塑性樹脂(II)全体に対して、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
上記芳香族ビニル樹脂(II−1)が、上記グラフト重合樹脂(g21)からなる場合、及び、上記混合物(y21)からなる場合、のいずれにおいても、この芳香族ビニル樹脂(II−1)のアセトン(但し、ゴムがアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリル)に可溶な成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜2.5dl/g、より好ましくは0.2〜1.5dl/g、更に好ましくは0.25〜1.2dl/gである。この極限粘度[η]が上記範囲内であると、上記第2熱可塑性樹脂組成物の成形加工性に優れ、第2樹脂層の肉厚精度にも優れる。
上記第2樹脂層が耐熱性に特に優れたものとするために、上記のように、上記第2熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(II)は、マレイミド系化合物に由来する構造単位(以下、「構造単位(u21)」という。)を含むことが好ましい。この構造単位(u21)は、どの樹脂成分に由来するものであってもよい。即ち、上記グラフト重合樹脂(g21)が構造単位(u21)を含んでよいし、上記(共)重合体(c21)がこの構造単位(u21)を含んでもよい。
上記構造単位(u21)の含有量は、上記観点から、上記第2熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(II)を構成する構造単位の全量に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜45質量%、更に好ましくは10〜40質量%である。上記構造単位(u21)の含有量が多すぎると、第2樹脂層の可撓性が低下する場合がある。
上記熱可塑性樹脂(II)が芳香族ビニル樹脂(II−1)を含む場合、この熱可塑性樹脂(II)は芳香族ビニル樹脂(II−1)のみからなるものであってよいし、芳香族ビニル樹脂(II−1)と、他の熱可塑性樹脂とからなるものであってもよい。他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂(II)が他の熱可塑性樹脂を含有する場合、その含有量は、耐熱性及び耐衝撃性の観点から、上記熱可塑性樹脂(II)に対して、好ましくは1〜50質量%である。
上記第2熱可塑性樹脂組成物は、第2樹脂層と、その両面側に配される第1樹脂層及び第3樹脂層との接着性を更に向上させるために、上記熱可塑性樹脂(II)と、下記一般式(3)で表されるシランカップリング剤とを含むシランカップリング剤含有組成物を溶融混練してなる組成物であってもよい。
〔式中、R
3は、ビニル基、アミノ基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びエポキシ結合のうちの少なくとも1種を含む有機基であり、R
4は、互いに同一又は異なって、1又は2以上のハロゲン原子が置換してもよい炭化水素基であり、nは0又は1である。〕
上記シランカップリング剤について、説明する。
上記一般式(3)におけるR3として用いられるアミノ基としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基及びアルキレンポリアミノ基のいずれでもよい。
また、エポキシ結合を含む有機基としては、γ−グリシドキシプロピル基等が挙げられる。
また、上記一般式(3)におけるR4として用いられる、ハロゲン原子が置換してもよい炭化水素基は、好ましくは、炭素数1〜10の有機基であり、直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれでもよい。
上記一般式(3)で表されるシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン等のビニルシランカップリング剤;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシランカップリング剤;3−アクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアクリルシランカップリング剤;3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のメタクリルシランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシランカップリング剤等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
上記シランカップリング剤の使用量は、上記熱可塑性樹脂(II)100質量部に対して、好ましくは0.05〜20質量部であり、より好ましくは0.07〜15質量部であり、更に好ましくは0.1〜10質量部である。上記シランカップリング剤の含有量が上記範囲にあると、得られる第2樹脂層と、その両面側に配される第1樹脂層及び第3樹脂層との接着性に優れる。
上記シランカップリング剤含有組成物は、シランカップリング剤以外の添加剤(後述)を含んでもよい。
上記シランカップリング剤含有組成物を溶融混練して、第2熱可塑性樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されず、熱可塑性樹脂(II)及びシランカップリング剤を含む全成分を、溶融混練する方法;熱可塑性樹脂(II)及びシランカップリング剤を溶融混練しながら、他の原料成分を、分割して又は連続して添加し、溶融混練を継続する方法;熱可塑性樹脂(II)及び他の原料成分を溶融混練しながら、シランカップリング剤を、分割して又は連続して添加し、溶融混練を継続する方法;熱可塑性樹脂(II)を溶融混練しながら、シランカップリング剤及び他の原料成分を、分割して又は連続して添加し、溶融混練を継続する方法等が挙げられる。
溶融混練に用いる装置としては、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続ニーダー等が挙げられる。
上記第2熱可塑性樹脂組成物は、フィルム形成のために配合される添加剤を含有してもよい。この添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、着色剤、蛍光増白剤、耐候剤、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、抗菌剤、防かび剤、防汚剤、粘着付与剤等が挙げられる。これらの添加剤における具体的な化合物及びその配合量は、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムの好ましい態様とともに、後述される。
上記第2樹脂層は、熱可塑性樹脂(II)を含む第2原料組成物を溶融混練してなる第2熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層である。この第2原料組成物は、シランカップリング剤を含む上記シランカップリング剤含有組成物であってよいし、シランカップリング剤を含まない組成物であってもよい。
上記第2原料組成物の溶融混練法及びその装置は、特に限定されず、例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続ニーダー等を用いて、公知の条件で溶融混練され、第2熱可塑性樹脂組成物が製造される。
上記第2樹脂層の厚さは、通常、10〜990μm、好ましくは20〜500μmである。
次に、上記第3樹脂層は、上記のように、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムに主として可撓性を与える作用を有する層であり、熱可塑性樹脂(III)を含有する第3熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層である。
上記熱可塑性樹脂(III)のガラス転移温度(Tg)は、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムに十分な可撓性を、また、第3樹脂層に耐熱性を付与する観点から、好ましくは90℃〜200℃、より好ましくは95℃〜180℃、更に好ましくは100℃〜160℃、特に好ましくは105℃〜140℃である。
上記熱可塑性樹脂(III)は、熱可塑性を有する樹脂であれば、特に限定されず、珪素非含有熱可塑性樹脂であってよいし、分子中に珪素原子を含む含珪素熱可塑性樹脂であってもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
上記珪素非含有熱可塑性樹脂としては、芳香族ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記含珪素熱可塑性樹脂としては、芳香族ビニル樹脂(含珪素芳香族ビニル系樹脂)、ポリオレフィン樹脂(含珪素ポリオレフィン系樹脂)、ポリ塩化ビニル樹脂(含珪素ポリ塩化ビニル系樹脂)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(含珪素ポリ塩化ビニリデン系樹脂)、飽和ポリエステル樹脂(含珪素飽和ポリエステル系樹脂)、ポリカーボネート樹脂(含珪素ポリカーボネート系樹脂)、ポリアミド樹脂(含珪素ポリアミド系樹脂)、アクリル樹脂(含珪素アクリル系樹脂)、フッ素樹脂(含珪素フッ素系樹脂)、珪素樹脂等が挙げられる。これらの含珪素熱可塑性樹脂については、上記第1熱可塑性樹脂組成物に含有される含珪素熱可塑性樹脂を適用することができ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記熱可塑性樹脂(III)が、含珪素熱可塑性樹脂を含む場合、この含珪素熱可塑性樹脂は、上記熱可塑性樹脂(I)に含まれる含珪素熱可塑性樹脂、及び/又は、上記熱可塑性樹脂(II)に用いることができる含珪素熱可塑性樹脂と同一であってよいし、異なってもよい。
上記熱可塑性樹脂(III)としては、耐加水分解性、寸法安定性等の観点から、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む芳香族ビニル樹脂(以下、「芳香族ビニル樹脂(III−1)」という。)が好ましい。尚、この芳香族ビニル樹脂(III−1)は、珪素非含有熱可塑性樹脂であってよいし、分子中に珪素原子を含む含珪素熱可塑性樹脂(含珪素芳香族ビニル系樹脂等)であってもよい。
上記芳香族ビニル樹脂(III−1)としては、ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物を含む単量体(以下、「単量体(m31)」という。)を重合して得られたグラフト重合樹脂(以下、「グラフト重合樹脂(g31)」という。);芳香族ビニル化合物を含む単量体(以下、「単量体(m32)」という。)を重合してなる芳香族ビニル系(共)重合体(以下、「(共)重合体(c31)」という。);並びに、上記グラフト重合樹脂(g31)及び(共)重合体(c31)の混合物(以下、「混合物(y31)」という。)が挙げられる。
上記グラフト重合樹脂(g31)は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記(共)重合体(c31)は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記単量体(m31)及び単量体(m32)、グラフト重合樹脂(g31)、(共)重合体(c31)及び混合物(y31)並びにこれらの製造方法は、それぞれ、上記芳香族ビニル樹脂(II−1)の形成に用いられる単量体(m21)及び単量体(m22)、上記芳香族ビニル樹脂(II−1)に含まれるグラフト重合樹脂(g21)、(共)重合体(c21)及び混合物(y21)並びにこれらの製造方法を適用することができる。好ましい単量体(m31)及び単量体(m32)の種類及び構成、グラフト重合樹脂(g31)の形成に用いられる好ましいゴムの種類についても同様である。
上記グラフト重合樹脂(g31)として、好ましい樹脂は、以下の通りである。
(g31−1)ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物からなる単量体を重合して得られたグラフト重合樹脂
(g31−2)ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及びマレイミド系化合物からなる単量体を重合して得られたグラフト重合樹脂
(g31−3)ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及びメタクリル酸エステル化合物からなる単量体を重合して得られたグラフト重合樹脂
上記グラフト重合樹脂(g31)のグラフト率は、好ましくは20〜170%であり、より好ましくは30〜170%、更に好ましくは40〜150%である。このグラフト率が低すぎると、フィルムとしての可撓性が十分でない場合がある。一方、グラフト率が高すぎると、第3熱可塑性樹脂組成物の粘度が高くなり、薄肉化が困難になる場合がある。
上記(共)重合体(c31)が共重合体である場合、好ましい重合体は、以下の通りである。
(c31−1)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位とからなる共重合体
(c31−2)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位と、マレイミド系化合物に由来する構造単位とからなる共重合体
上記芳香族ビニル樹脂(III−1)が上記混合物(y31)である場合、上記グラフト重合樹脂(g31)及び上記(共)重合体(c31)の含有割合は、特に限定されない。
また、上記芳香族ビニル樹脂(III−1)が、上記グラフト重合樹脂(g31)である場合、及び、上記混合物(y31)である場合、のいずれにおいても、上記第3熱可塑性樹脂組成物に含まれるゴムの合計含有量の割合は、耐衝撃性の観点から、熱可塑性樹脂(III)全体に対して、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
上記芳香族ビニル樹脂(III−1)が、上記グラフト重合樹脂(g31)からなる場合、及び、上記混合物(y31)からなる場合、のいずれにおいても、この芳香族ビニル樹脂(III−1)のアセトン(但し、ゴムがアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリル)に可溶な成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜2.5dl/g、より好ましくは0.2〜1.5dl/g、更に好ましくは0.25〜1.2dl/gである。この極限粘度[η]が上記範囲内であると、上記第3熱可塑性樹脂組成物の成形加工性に優れ、第3樹脂層の肉厚精度にも優れる。
上記第3樹脂層が耐熱性に特に優れたものとするために、上記のように、上記第3熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(III)は、マレイミド系化合物に由来する構造単位(以下、「構造単位(u31)」という。)を含むことが好ましい。この構造単位(u31)は、どの樹脂成分に由来するものであってもよい。即ち、上記グラフト重合樹脂(g31)が構造単位(u31)を含んでよいし、上記(共)重合体(c31)がこの構造単位(u31)を含んでもよい。
上記構造単位(u31)の含有量は、上記観点から、上記第3熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(III)を構成する構造単位の全量に対して、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは2〜35質量%、更に好ましくは5〜30質量%である。上記構造単位(u31)の含有量が多すぎると、第3樹脂層の可撓性が低下する場合がある。
上記熱可塑性樹脂(III)が芳香族ビニル樹脂(III−1)を含む場合、この熱可塑性樹脂(III)は芳香族ビニル樹脂(III−1)のみからなるものであってよいし、芳香族ビニル樹脂(III−1)と、他の熱可塑性樹脂とからなるものであってもよい。他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂(III)が他の熱可塑性樹脂を含有する場合、その含有量は、耐熱性及び耐衝撃性の観点から、上記熱可塑性樹脂(III)に対して、好ましくは1〜50質量%である。
上記第3熱可塑性樹脂組成物は、上記第2熱可塑性樹脂組成物と同様、上記熱可塑性樹脂(III)と、上記一般式(3)で表されるシランカップリング剤とを含むシランカップリング剤含有組成物を溶融混練してなる組成物であってもよい。
上記第3熱可塑性樹脂組成物は、フィルム形成のために配合される添加剤を含有してもよい。この添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、着色剤、蛍光増白剤、耐候剤、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、抗菌剤、防かび剤、防汚剤、粘着付与剤等が挙げられる。これらの添加剤における具体的な化合物及びその配合量は、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムの好ましい態様とともに、後述される。
上記第3樹脂層は、熱可塑性樹脂(III)を含む第3原料組成物を溶融混練してなる第3熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層である。この第3原料組成物は、シランカップリング剤を含む上記シランカップリング剤含有組成物であってよいし、シランカップリング剤を含まない組成物であってもよい。
上記第3原料組成物の溶融混練法及びその装置は、特に限定されず、例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続ニーダー等を用いて、公知の条件で溶融混練され、第3熱可塑性樹脂組成物が製造される。
上記第3樹脂層の厚さは、通常、5〜500μm、好ましくは10〜400μmである。
次に、上記の第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物に含有される添加剤について説明する。
上記着色剤としては、顔料及び染料のいずれを用いてもよく、通常、外観性等を考慮して、1種又は2種以上が選択される。尚、上記の第2熱可塑性樹脂組成物及び/又は第3 熱可塑性樹脂組成物は、白色系着色剤を含有する。
白色系着色剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、シリカ、2PbCO3・Pb(OH)2、[ZnS+BaSO4]、タルク、石膏等が挙げられる。
また、黒色系着色剤としては、カーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等)、グラファイト、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、チタンブラック、活性炭、フェライト(非磁性フェライト、磁性フェライト等)、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体、複合酸化物、アントラキノン系化合物、ペリレン系化合物等が挙げられる。
更に、シアン系着色剤(青緑系色材)、マゼンダ系着色剤(赤紫系色材)及びイエロー系着色剤(黄系色材)を用いることもできる。
太陽電池素子が暗色系の色であることが多いことから、太陽電池モジュールも、同様の色を呈するように着色剤が選択される。暗色系に着色させる場合、暗色系着色剤の単一化合物により発現させてよいし、2種以上の着色剤の組合せにより発現させてもよい。
また、暗色系着色剤は、目的に応じて、上記第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物の少なくとも1つの組成物に配合される。
上記酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ハイドロキノン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、含硫黄化合物、含リン化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記酸化防止剤の含有量は、上記第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物又は第3熱可塑性樹脂組成物に含まれる、含珪素熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂(I)、熱可塑性樹脂(II)又は熱可塑性樹脂(III)100質量部に対して、いずれも、好ましくは0.05〜10質量部である。
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記紫外線吸収剤の含有量は、上記第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物又は第3熱可塑性樹脂組成物に含まれる、含珪素熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂(I)、熱可塑性樹脂(II)又は熱可塑性樹脂(III)100質量部に対して、いずれも、好ましくは0.05〜10質量部である。
上記老化防止剤としては、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系化合物、リン酸系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記老化防止剤の含有量は、上記第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物又は第3熱可塑性樹脂組成物に含まれる、含珪素熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂(I)、熱可塑性樹脂(II)又は熱可塑性樹脂(III)100質量部に対して、いずれも、好ましくは0.05〜10質量部である。
上記可塑剤としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソブチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等の脂肪酸エステル類;トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸n−オクチルエステル、トリメリット酸イソノニルエステル等のトリメリット酸エステル類;ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート、ジエチレングリコールモノオレート、グリセリルモノリシノレート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、エポキシ化大豆油等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記可塑剤の含有量は、上記第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物又は第3熱可塑性樹脂組成物に含まれる、含珪素熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂(I)、熱可塑性樹脂(II)又は熱可塑性樹脂(III)100質量部に対して、いずれも、好ましくは0.05〜10質量部である。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムにおいて、上記第1樹脂層は、含珪素熱可塑性樹脂を含むことから、第1樹脂層側の表面に、太陽電池素子を包埋する充填材部と接着させるための接着層を設けることなく、この第1樹脂層と、太陽電池素子を包埋する、エチレン・酢酸ビニル共重合体組成物等を含む充填材部との接着性に優れる。そして、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムは、図1及び図2に示される、第1樹脂層11の表面(上面側)において、上記充填材部の露出面と接着させて太陽電池モジュールが製造される。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムは、第1樹脂層において、波長800〜1,400nmの光に対する透過率が60%以上であり、波長400〜700nmの光に対する吸収率が60%以上であり、且つ、波長800〜1,400nmの光を、上記太陽電池用裏面保護フィルムにおける上記第1樹脂層の表面に放射した場合、該光に対する反射率が50%以上であるフィルム(以下、「本発明のフィルム(Y)」という。)とすることができる。
本発明のフィルム(Y)によれば、太陽光が、隣り合う太陽電池素子の隙間から、太陽電池用裏面保護フィルムの方へ漏れたときに、第1樹脂層において、上記波長800〜1,400nmの光が透過し、この光による蓄熱が抑制されるので、この第1樹脂層に接着する充填材部の蓄熱が抑制される。そして、このフィルム(Y)を用いて形成される太陽電池モジュールにおける蓄熱も抑制され、発電効率の低下を抑制することができる。
本発明のフィルム(Y)において、波長800〜1,400nmの光に対する透過率、及び、波長400〜700nmの光に対する吸収率は、厚さ30〜1,000μmの、第1樹脂層を構成するフィルムのみに各光を放射して測定された測定値である。
上記透過率は、60%以上であり、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上である。この透過率が高いほど、第1樹脂層において、波長800〜1,400nmの光による蓄熱が抑制されるので、この第1樹脂層に接着する充填材部の蓄熱も抑制される。そして、このフィルム(Y)を用いて形成される太陽電池モジュールの蓄熱が抑制され、発電効率を向上させることができる。
本発明において、「波長800〜1,400nmの光に対する透過率が60%以上」とは、第1樹脂層を構成するフィルムを用いて、800nmから1,400nmまでの波長域における光の透過率を、800nm又は1,400nmから20nm毎に測定し、各透過率を用いて算出される平均値が60%以上であることを意味し、上記波長域における光の透過率が全て60%以上であることを要求するものではない。
また、上記光の吸収率は、60%以上であり、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。この吸収率が高いほど、上記第1樹脂層の明度が低下し、暗色系の第1樹脂層、即ち、暗色系の太陽電池用裏面保護フィルムが形成されることとなる。これにより、太陽電池を、家屋の屋根等に配設したとき、外観性及び意匠性に優れる。
本発明において、「波長400〜700nmの光に対する透過率が60%以上」とは、第1樹脂層を構成するフィルムを用いて、400nmから700nmまでの波長域における光の吸収率を、400nm又は700nmから20nm毎に測定し、各吸収率を用いて算出される平均値が60%以上であることを意味し、上記波長域における光の吸収率が全て60%以上であることを要求するものではない。
また、本発明のフィルム(Y)において、波長800〜1,400nmの光に対する反射率は、フィルム(Y)における第1樹脂層の表面に光を放射して測定されるものである。上記反射率は、50%以上であり、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。この反射率が高いほど、少なくとも上記波長を有する光を、充填材部に配された太陽電池素子の方へ反射させることができ、光電変換効率を向上させることができる。
本発明において、「波長800〜1,400nmの光に対する反射率が50%以上である」とは、フィルム(Y)の第1樹脂層における、800nmから1,400nmまでの波長域における光の反射率を、800nm又は1,400nmから20nm毎に測定し、各反射率を用いて算出される平均値が50%以上であることを意味し、上記波長域における光の反射率が全て50%以上であることを要求するものではない。
本発明のフィルム(Y)において、波長400〜800nmの光に対する透過率は、特に限定されない。
上記フィルム(Y)では、第1樹脂層を構成するフィルムにおいて、波長800〜1,400nmの光に対する透過率を60%以上とし、波長400〜700nmの光に対する吸収率を60%以上とするために、上記第1樹脂層を構成するフィルムは、可視光線を吸収し、赤外線を透過させる性質を有することが好ましい。
従って、上記性質を満足させる第1樹脂層を構成する第1熱可塑性樹脂組成物は、含珪素熱可塑性樹脂、及び、可視光線を吸収し、赤外線を透過させる性質を有する着色剤(以下、「赤外線透過性着色剤」という。)を含有する組成物である。
上記赤外線透過性着色剤は、通常、白色以外の有色を呈しており、好ましくは黒色、褐色、濃青色、深緑色等の暗色系である。暗色系の赤外線透過性着色剤を用いることにより、第1樹脂層と充填材部の露出面との接着性を損なうことなく、優れた暗色系外観を有する太陽電池用裏面保護フィルム及びそれを備える太陽電池モジュールを与えることができる。
上記赤外線透過性着色剤としては、ペリレン系顔料等が挙げられる。このペリレン系顔料としては、下記一般式(4)〜(6)で表される化合物等を用いることができる。
〔式中、R
5及びR
6は、互いに同一又は異なって、ブチル基、フェニルエチル基、メトキシエチル基又は4−メトキシフェニルメチル基である。〕
〔式中、R
7及びR
8は、互いに同一又は異なって、フェニレン基、3−メトキシフェニレン基、4−メトキシフェニレン基、4−エトキシフェニレン基、炭素数1〜3のアルキルフェニレン基、ヒドロキシフェニレン基、4,6−ジメチルフェニレン基、3,5−ジメチルフェニレン基、3−クロロフェニレン基、4−クロロフェニレン基、5−クロロフェニレン基、3−ブロモフェニレン基、4−ブロモフェニレン基、5−ブロモフェニレン基、3−フルオロフェニレン基、4−フルオロフェニレン基、5−フルオロフェニレン基、ナフチレン基、ナフタレンジイル基、ピリジレン基、2,3−ピリジンジイル基、3,4−ピリジンジイル基、4−メチル−2,3−ピリジンジイル基、5−メチル−2,3−ピリジンジイル基、6−メチル−2,3−ピリジンジイル基、5−メチル−3,4−ピリジンジイル基、4−メトキシ−2,3−ピリジンジイル基又は4−クロロ−2,3−ピリジンジイル基である。〕
〔式中、R
7及びR
8は、互いに同一又は異なって、フェニレン基、3−メトキシフェニレン基、4−メトキシフェニレン基、4−エトキシフェニレン基、炭素数1〜3のアルキルフェニレン基、ヒドロキシフェニレン基、4,6−ジメチルフェニレン基、3,5−ジメチルフェニレン基、3−クロロフェニレン基、4−クロロフェニレン基、5−クロロフェニレン基、3−ブロモフェニレン基、4−ブロモフェニレン基、5−ブロモフェニレン基、3−フルオロフェニレン基、4−フルオロフェニレン基、5−フルオロフェニレン基、ナフチレン基、ナフタレンジイル基、ピリジレン基、2,3−ピリジンジイル基、3,4−ピリジンジイル基、4−メチル−2,3−ピリジンジイル基、5−メチル−2,3−ピリジンジイル基、6−メチル−2,3−ピリジンジイル基、5−メチル−3,4−ピリジンジイル基、4−メトキシ−2,3−ピリジンジイル基又は4−クロロ−2,3−ピリジンジイル基である。〕
また、上記ペリレン系顔料としては、「Paliogen Black S 0084」、「Paliogen Black L 0086」、「Lumogen Black
FK4280」、「Lumogen Black FK4281」(以上、いずれもBASF社製商品名)等の市販品を用いることができる。
上記赤外線透過性着色剤は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記第1熱可塑性樹脂組成物における赤外線透過性着色剤の含有割合は、上記各光に対する透過性及び吸収性の観点から、上記含珪素熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは0.1〜5質量部である。
尚、上記第1樹脂層において、上記透過率及び吸収率を低下させるものでなければ、目的、用途等に応じて、他の着色剤を含むことができる。例えば、赤外線透過性着色剤以外の着色剤として、黄色系顔料、青色系顔料等を用い、下記のような組合せにより、種々の外観を有する太陽電池モジュールとすることができる。
[1]黒色系赤外線透過性着色剤及び黄色系顔料の組合せによる褐色着色
[2]黒色系赤外線透過性着色剤及び青色系顔料の組合せによる濃青色着色
他の着色剤を用いる場合、上記第1熱可塑性樹脂組成物における含有割合は、上記赤外線透過性着色剤100質量部に対して、通常、200質量部以下、好ましくは0.01〜100質量部である。
尚、暗色系の着色剤としては、カーボンブラックが知られている。このカーボンブラックは、赤外線領域の波長の光を吸収するため、太陽光が、隣り合う太陽電池素子の隙間から、本発明のフィルム(Y)の方へ漏れたときに、蓄熱した第1樹脂層から、太陽電池素子を含む充填材部の温度を上昇させることがあり、発電効率を低下させる場合があるが、上記赤外線透過性着色剤を用いることにより、発電効率を低下させることなく、意匠性及び耐久性にも優れる。
本発明のフィルム(Y)において、第1樹脂層が、上記赤外線透過性着色剤を含む場合、この第1樹脂層において、波長800〜1,400nmの光の60%以上が透過するので、第2樹脂層及び/又は第3樹脂層が、上記光に対する反射率の高い層であることが好ましい。このような作用を有することにより、上記第1樹脂層を透過した、波長800〜1,400nmの光を光電変換に利用することができる。即ち、上記第2樹脂層を構成するフィルム、及び/又は、上記第3樹脂層を構成するフィルムにおいて、上記光に対する反射率が、少なくとも50%であればよい。具体的には、上記第2樹脂層からなる厚さ10〜990μmのフィルム、及び、上記第3樹脂層からなる厚さ5〜500μmのフィルムに、上記波長の光を放射したとき、その反射率の合計が50%以上であるか、あるいは、いずれか一方の反射率が50%以上であることが好ましい。
このようなフィルム(Y)とするためには、上記第2樹脂層及び/又は上記第3樹脂層が白色系着色剤を含む。この白色系着色剤の含有量は、上記光に対する反射性の観点から、上記熱可塑性樹脂(II)100質量部、及び、熱可塑性樹脂(III)100質量部に対して、いずれも、好ましくは1〜45質量部、より好ましくは3〜40質量部、更に好ましくは5〜30質量部である。この白色系着色剤の含有量が多すぎると、本発明のフィルム(Y)の可撓性が低下する場合がある。
尚、上記光に対する反射率を大きく低下させるものでなければ、上記第2樹脂層及び/又は上記第3樹脂層は、目的、用途等に応じて、更に他の着色剤を含んでもよい。他の着色剤を用いる場合、その含有量は、上記熱可塑性樹脂(II)100質量部、及び、熱可塑性樹脂(III)100質量部に対して、いずれも、通常、10質量部以下である。また、この場合、上記第1樹脂層は、実質的に、白色系着色剤を含まないことが好ましいが、この白色系着色剤を含有させる場合、その含有量の上限は、通常、3質量部、好ましくは1質量部である。
上記フィルム(Y)としては、上記第1樹脂層及び上記第2樹脂層が赤外線透過性着色剤を含み、上記第3樹脂層が白色系着色剤を含む態様とすることもできる。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムとして、好ましい態様を以下に示す。
(オ)第1樹脂層が、含珪素熱可塑性樹脂及び赤外線透過性着色剤を含む第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第2樹脂層が、熱可塑性樹脂(II)を含み且つ白色系着色剤を含まない第2熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第3樹脂層が、熱可塑性樹脂(III)及び白色系着色剤を含む第3熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であるフィルム
(カ)第1樹脂層が、含珪素熱可塑性樹脂及び赤外線透過性着色剤を含む第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第2樹脂層が、熱可塑性樹脂(II)及び白色系着色剤を含む第2熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第3樹脂層が、熱可塑性樹脂(III)を含み且つ白色系着色剤を含まない第3熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であるフィルム
(キ)第1樹脂層が、含珪素熱可塑性樹脂及び赤外線透過性着色剤を含む第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第2樹脂層が、熱可塑性樹脂(II)及び白色系着色剤を含む第2熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であり、第3樹脂層が、熱可塑性樹脂(III)及び白色系着色剤を含む第3熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた層であるフィルム
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムにおいて、上記第1樹脂層に含まれる含珪素熱可塑性樹脂が含珪素芳香族ビニル系樹脂であり、且つ、上記第2樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂(II)、及び、上記第3樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂(III)が、芳香族ビニル樹脂であることが好ましい。上記構成とすることにより、耐加水分解性、寸法安定性及び耐衝撃性に優れる。熱可塑性樹脂(II)及び熱可塑性樹脂(III)は、互いに、同一でも異なってもよい。上記芳香族ビニル樹脂は、特に好ましくは、グラフト重合樹脂である。この場合、第1樹脂層及び第2樹脂層に含まれるゴム(成分)の含有割合は、互いに、同一でも異なってもよい。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムは、上記第3樹脂層の外表面に、水蒸気バリア層及び/又は裏面保護層を、更に備えることができる。本発明の太陽電池用裏面保護フィルムが、水蒸気バリア層及び裏面保護層の両方を備える場合、第3樹脂層、水蒸気バリア層及び裏面保護層の順に備えることが好ましい(図2参照)。即ち、図2の太陽電池用裏面保護フィルム1Bは、第1樹脂層11、第2樹脂層12、第3樹脂層13、水蒸気バリア層14及び裏面保護層15を、順次、備える積層型フィルムである。
上記水蒸気バリア層は、JIS K7129に準じて、温度40℃及び湿度90%RHの条件で測定した透湿度(「水蒸気透湿度」ともいう。)が、好ましくは3g/(m2・day)以下、より好ましくは1g/(m2・day)以下、更に好ましくは0.7g/(m2・day)以下である性能を有する層である。
上記水蒸気バリア層は、好ましくは、電気絶縁性を有する材料からなる層である。
上記水蒸気バリア層は、1種の材料からなる単層構造又は多層構造であってよいし、2種以上の材料からなる単層構造又は多層構造であってもよい。本発明においては、その表面に金属及び/又は金属酸化物からなる膜が形成されてなる蒸着フィルムが、水蒸気バリア層形成用材料として用いられて、水蒸気バリア層が形成されたことが好ましい。金属及び金属酸化物は、いずれも、単一物質であってよいし、2種以上であってもよい。
上記水蒸気バリア層形成用材料は、金属及び/又は金属酸化物からなる膜が、上層側樹脂層と、下層側樹脂層の間に配された3層型フィルムであってもよい。
上記金属としては、アルミニウム等が挙げられる。
また、上記金属酸化物としては、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウム等の元素の酸化物が挙げられる。これらのうち、水蒸気バリア性の観点から、酸化珪素、酸化アルミニウム等が特に好ましい。
上記金属及び/又は金属酸化物からなる膜は、メッキ、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、プラズマCVD、マイクロウェーブCVD等の方法により形成されたものとすることができる。これらのうちの2つ以上の方法を組み合わせてもよい。
上記蒸着フィルムにおける樹脂層としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム;ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリスルホンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。この樹脂膜の厚さは、好ましくは5〜50μm、より好ましくは8〜20μmである。
上記水蒸気バリア層は、市販品を用いて形成されたものとすることができる。例えば、三菱樹脂社製「テックバリアAX」、凸版印刷社製「GXフィルム」、東洋紡社製「エコシアールVE500」(以上、商品名)等のフィルム又はシートを、水蒸気バリア層形成用材料として用いることができる。
上記第3樹脂層に面する水蒸気バリア層の配置は、特に限定されない。水蒸気バリア層形成用材料として蒸着フィルムを用いた場合、金属及び/又は金属酸化物からなる膜が、第3樹脂層に接合されていてよいし、蒸着膜が外側(表面側)にあってもよい。
上記水蒸気バリア層の厚さは、好ましくは5〜300μm、より好ましくは8〜250μm、更に好ましくは10〜200μmである。上記水蒸気バリア層が薄すぎると、水蒸気バリア性が不十分になる場合があり、厚すぎると、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムとしての柔軟性が不十分でない場合がある。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムが水蒸気バリア層を備える場合、上記第3樹脂層と、上記水蒸気バリア層との間に、接着層を備えることができる。接着層の構成は、ポリウレタン樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等とすることができる。
上記裏面保護層は、熱可塑性樹脂(以下、「熱可塑性樹脂(IV)」という。)を含有する組成物(以下、「第4熱可塑性樹脂組成物」という。)を含み、耐傷性を付与する層である。
上記熱可塑性樹脂(IV)は、熱可塑性を有する樹脂であれば、特に限定されない。そして、この熱可塑性樹脂(IV)は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリビニルフルオライド、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアミド樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリアクリロニトリル;セルロースアセテート等のセルロース樹脂;アクリル樹脂;ポリスチレン、ABS樹脂等の芳香族ビニル系樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、ポリエチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル樹脂及びフッ素樹脂が好ましい。
上記第4熱可塑性樹脂組成物は、目的、用途等に応じて、添加剤を含有したものとすることができる。この添加剤としては、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、可塑剤、蛍光増白剤、耐候剤、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、抗菌剤、防かび剤、防汚剤、粘着付与剤、シランカップリング剤等が挙げられる。これらの添加剤における具体的な化合物及びその配合量は、後述する。
尚、上記裏面保護層は、単層構造であってよいし、多層構造であってもよい。後者の場合、互いに同一の組成物からなるフィルム等が積層されてなるものであってよいし、互いに異なる組成物からなるフィルム等が積層されてなるものであってもよい。更には、上記第4熱可塑性樹脂組成物からなるフィルム等の一面側又は両面に、他の物質又は他の組成物からなる層が形成されてなるものであってもよい。
上記裏面保護層は、難燃性を有する樹脂層であることが好ましく、難燃剤を含有する第4熱可塑性樹脂組成物に由来する層であってよいし、分子骨格内に芳香環や、ヘテロ原子を含む組成物に由来する層であってよいし、上記第4熱可塑性樹脂組成物(難燃剤の可否を問わず)からなるフィルム等の一面側又は両面に、有機・無機ハイブリッド材料が積層された層であってもよい。
上記裏面保護層の難燃性は、UL94規格に準ずる燃焼性がVTM−2のクラスか又はそれ以上のクラスであることが好ましい。
上記裏面保護層としては、難燃性を有する樹脂フィルムである市販を用いることもできる。例えば、帝人デュポン社製「Melinex238」(商品名)、SKC社製「SR55」(商品名)、東レ社製「ルミラーX10P」、「ルミラーX10S」、「ルミラーZV10」(以上、商品名)等を用いることができる。
上記裏面保護層の厚さは、通常、10〜500μm、好ましくは15〜400μm、より好ましくは20〜300μmである。上記裏面保護層が薄すぎると、耐傷性が十分でない場合がある。一方、厚すぎると、本発明の太陽電池用裏面保護フィルムとしての柔軟性が十分でない場合がある。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムが裏面保護層を備える場合、上記第3樹脂層と、上記裏面保護層との間に、接着層を備えることができる。上記第3樹脂層の側に、水蒸気バリア層及び裏面保護層を、順次、備える場合には、上記水蒸気バリア層と、上記裏面保護層との間に、接着層を備えることができる。接着層の構成は、ポリウレタン樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等とすることができる。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムの厚さは、好ましくは30〜1,000μm、より好ましくは40〜900μm、更に好ましくは50〜800μmである。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムが、第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層からなるフィルムである場合、各層の厚さの組み合わせは、好ましくは5〜500μm、10〜990μm及び5〜500μm、より好ましくは10〜400μm、20〜500μm及び10〜400μm、更に好ましくは20〜350μm、30〜450μm及び20〜350μmである。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムが、第1樹脂層、第2樹脂層、第3樹脂層及び水蒸気バリア層からなるフィルムである場合、各層の厚さの組み合わせは、好ましくは5〜500μm、10〜985μm、5〜500μm及び5〜300μm、より好ましくは10〜400μm、20〜500μm、10〜400μm及び8〜250μm、更に好ましくは20〜350μm、30〜450μm、20〜350μm及び10〜200μmである。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムが、第1樹脂層、第2樹脂層、第3樹脂層及び裏面保護層からなるフィルムである場合、各層の厚さの組み合わせは、好ましくは5〜500μm、10〜980μm、5〜500μm及び10〜500μm、より好ましくは10〜400μm、20〜500μm、10〜400μm及び15〜400μm、更に好ましくは20〜350μm、30〜450μm、20〜350μm及び20〜300μmである。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムが、第1樹脂層、第2樹脂層、第3樹脂層、水蒸気バリア層及び裏面保護層からなるフィルムである場合、各層の厚さの組み合わせは、好ましくは5〜500μm、10〜975μm、5〜500μm、5〜300μm及び10〜500μm、より好ましくは10〜400μm、20〜500μm、10〜400μm、8〜250μm及び15〜400μm、更に好ましくは20〜350μm、30〜450μm、20〜350μm、10〜200μm及び20〜300μmである。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムが、第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層からなるフィルムである場合、その製造方法は、各層の構成材料、即ち、各熱可塑性樹脂組成物によって選択され、特に限定されない。好ましい製造方法は、各熱可塑性樹脂組成物を用いた共押出(Tダイキャスト成形法等)、各熱可塑性樹脂組成物を用いて作製した3種の樹脂フィルムを、熱融着又はドライラミネーションする方法、接着剤により接合する方法等である。
本発明の太陽電池用裏面保護フィルムが、第1樹脂層、第2樹脂層、第3樹脂層及び水蒸気バリア層からなるフィルム、又は、第1樹脂層、第2樹脂層、第3樹脂層及び裏面保護層からなるフィルム、である場合、その製造方法は、層構成、各層の構成材料等によって選択され、特に限定されない。製造方法は、以下に例示される。
(1)第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物を用いた共押出法等により、積層フィルムを作製し、その後、積層フィルムにおける第3樹脂層の表面と、水蒸気バリア層形成用フィルム又は裏面保護層形成用フィルムと、を熱融着又はドライラミネーション若しくは接着剤により接合させる方法
(2)第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物を用いた共押出法等により、積層フィルムを作製し、その後、積層フィルムにおける第3樹脂層の表面と、水蒸気バリア層形成用フィルムと、を熱融着又はドライラミネーション若しくは接着剤により接合させて水蒸気バリア層を形成し、次いで、第4熱可塑性樹脂組成物を用いて、水蒸気バリア層の表面に、裏面保護層を形成する方法
(3)第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物を用いて、上記のようにして積層フィルムを作製し、その後、この積層フィルムにおける第3樹脂層の表面と、水蒸気バリア層形成用フィルムと、を熱融着又はドライラミネーション若しくは接着剤により接合させて水蒸気バリア層を形成し、次いで、水蒸気バリア層の表面に、別途、準備した、第4熱可塑性樹脂組成物を用いてなるフィルム(裏面保護層形成用フィルム)を、熱融着又はドライラミネーション若しくは接着剤により接合する方法(4)裏面保護層形成用フィルムと、水蒸気バリア層形成用フィルムと、を熱融着又はドライラミネーション若しくは接着剤により接合させて積層フィルムを形成し、その後、水蒸気バリア層の表面と、別途、準備した、第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物を用いてなる積層フィルムにおける第3樹脂層とを、熱融着又はドライラミネーション若しくは接着剤により接合する方法
本発明の太陽電池モジュールは、上記本発明の太陽電池用裏面保護フィルムを備えることを特徴とする。本発明の太陽電池モジュールの概略図は、図3に示される。
図3の太陽電池モジュール2は、太陽光の受光面側(図面で上側)から、表面側透明保護部材21、表面側封止膜(表面側充填材部)23、太陽電池素子25、裏面側封止膜(裏面側充填材部)27、及び上記本発明の太陽電池用裏面保護フィルム1が、この順で配設されたものとすることができる。
上記表面側透明保護部材21としては、水蒸気バリア性に優れた材料からなるものが好ましく、通常、ガラス、樹脂等からなる透明基板が使用される。尚、ガラスは、透明性及び耐候性に優れるが、耐衝撃性が十分ではなく、重いため、家屋の屋根に載せる太陽電池とする場合には、耐候性の透明樹脂を用いることが好ましい。透明樹脂としては、フッ素系樹脂等が挙げられる。
上記表面側透明保護部材21の厚さは、ガラスを使用した場合は、通常、1〜5mm程度であり、透明樹脂を使用した場合は、通常、0.1〜5mm程度である。
上記太陽電池素子25は、太陽光の受光により発電機能を有するものである。このような太陽電池素子としては、光起電力としての機能を有するものであれば、特に限定されることなく、公知のものを用いることができる。例えば、単結晶シリコン型太陽電池素子、多結晶シリコン型太陽電池素子等の結晶シリコン太陽電池素子;シングル結合型若しくはタンデム構造型等からなるアモルファスシリコン太陽電池素子;ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池素子;カドミウムテルル(CdTe)や銅インジウムセレナイド(CuInSe2)等のII−VI族化合物半導体太陽電池素子等が挙げられる。これらのうち、結晶シリコン太陽電池素子が好ましく、多結晶シリコン型太陽電池素子が特に好ましい。尚、薄膜多結晶性シリコン太陽電池素子、薄膜微結晶性シリコン太陽電池素子、薄膜結晶シリコン太陽電池素子とアモルファスシリコン太陽電池素子とのハイブリッド素子等を用いることができる。
図3において、図示していないが、上記太陽電池素子25は、通常、配線電極及び取り出し電極を備える。配線電極は、太陽光の受光により、複数の太陽電池素子において生じた電子を集める作用を有するものであり、例えば、表面側封止膜(表面側充填材部)21側の太陽電池素子と、裏面側封止膜(裏面側充填材部)27側の太陽電池素子とを連結するように接続される。また、取り出し電極は、上記配線電極等により集められた電子を電流として取り出す作用を有するものである。
上記表面側封止膜(表面側充填材部)21及び上記裏面側封止膜(裏面側充填材部)27(以下、これらを併せて「封止膜」という。)は、通常、互いに同一又は異なる封止膜形成材料を用いて、予め、シート状又はフィルム状の封止膜とした後、上記表面側透明保護部材21及び太陽電池用裏面保護フィルム1の間において、太陽電池素子25等を熱圧着して形成される。
各封止膜(充填材部)の厚さは、通常、100μm〜4mm程度、好ましくは200μm〜3mm程度、より好ましくは300μm〜2mm程度である。厚さが薄すぎると、太陽電池素子25が損傷する場合があり、一方、厚さが厚すぎると、製造コストが高くなり好ましくない。
上記封止膜形成材料は、通常、樹脂組成物又はゴム組成物である。樹脂としては、オレフィン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。また、ゴムとしては、シリコーン系ゴム、水添共役ジエン系ゴム等が挙げられる。これらのうち、オレフィン系樹脂及び水添共役ジエン系ゴムが好ましい。
オレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン、又は、ジオレフィンを重合して得られた重合体等のほか、エチレンと、酢酸ビニル、アクリル酸エステル等の他のモノマーとの共重合体、アイオノマー等を用いることができる。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。これらのうち、エチレン・酢酸ビニル共重合体及びエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましく、エチレン・酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
また、水添共役ジエン系ゴムとしては、水添スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックポリマー、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックポリマー、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー等が挙げられる。好ましくは、下記の構造を有する共役ジエンブロック共重合体の水素添加物、即ち、芳香族ビニル化合物単位を含む重合体ブロックA;1,2−ビニル結合含量が25モル%を超える共役ジエン系化合物単位を含む重合体の二重結合部分を80モル%以上水素添加してなる重合体ブロックB;1,2−ビニル結合含量が25モル%以下の共役ジエン系化合物単位を含む重合体の二重結合部分を80モル%以上水素添加してなる重合体ブロックC;並びに芳香族ビニル化合物単位及び共役ジエン系化合物単位を含む共重合体の二重結合部分を80モル%以上水素添加してなる重合体ブロックD、から選ばれた少なくとも2種を有するブロック共重合体である。
上記封止膜形成材料は、必要に応じて、架橋剤、架橋助剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系やホスファイト系の酸化防止剤、ヒンダードアミン系の光安定剤、光拡散剤、難燃剤、変色防止剤等の添加剤を含有することができる。
上記のように、表面側封止膜(表面側充填材部)23を形成する材料と、裏面側封止膜(裏面側充填材部)27を形成する材料は、同一であっても異なってもよいが、接着性の点から同じであることが好ましい。
本発明の太陽電池モジュールは、例えば、表面側透明保護部材、表面側封止膜、太陽電池素子、裏面側封止膜及び上記本発明の太陽電池用裏面保護フィルムを、この順に配置した後、これらを積層状態として、真空吸引しながら加熱圧着する、ラミネーション法等により製造することができる。
このラミネーション法におけるラミネート温度は、上記本発明の太陽電池用裏面保護フィルムの接着性の観点から、通常、100℃〜250℃程度である。また、ラミネート時間は、通常、3〜30分程度である。
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
1.評価方法
各種評価項目の測定方法を以下に示す。
1−1.熱可塑性樹脂中のゴム含有量
原料仕込み時の組成から計算した。
1−2.熱可塑性樹脂中のN−フェニルマレイミド単位量及び含珪素構造単位量
原料仕込み時の組成から算出した。
1−3.ガラス転移温度(Tg)
JIS K 7121に準拠して、TA Instruments社製示差走査熱量計「DSC2910」(型式名)により測定した。
1−4.剥離強度
太陽電池用裏面保護フィルムを短冊状(長さ200mm、幅15mm、厚さは表に記載)に裁断し、2枚の評価用フィルムを得た。エチレン・酢酸ビニル共重合体からなる長さ100mm、幅15mm及び厚さ400μmのフィルム「ウルトラパール」(商品名、サンビック社製)を、2枚の評価用フィルムにおける第1樹脂層の間に位置するように配置し、積層状態でラミネーターに入れた。その後、ラミネーターの上部及び下部を真空状態にし、150℃で5分間予熱した。次いで、上部を大気圧に戻して15分間プレスし、剥離強度測定用試料を得た。
得られた剥離強度測定用試料において、評価用フィルムが、EVAフィルムと接着していない部分からT字剥離することにより、剥離強度を測定した。また、剥離状態を評価した。剥離状態は、EVAフィルムが破壊している場合を「○」、EVAフィルム及び評価用フィルム部分の界面で破壊している場合を「×」とした。
1−5.L値
太陽電池用裏面保護フィルム(50mm×50mm、厚さは表に記載)を測定試料とし、東洋精機製作所社製分光光度計「TCS−II」(型式名)を用いて、太陽電池用裏面保護フィルムにおける第1樹脂層表面のL値を測定した。
1−6.波長400〜1,400nmの光及び波長800〜1,400nmの光に対する反射率(%)
太陽電池用裏面保護フィルム(50mm×50mm、厚さは表に記載)を測定試料とし、日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計「V−670」(型式名)により、反射率を測定した。即ち、測定試料の第1樹脂層表面に、光を放射し、400nm又は800nmから1,400nmまでの波長域における反射率を、20nm毎に測定し、これらの平均値を算出した。
1−7.波長800〜1,400nmの光に対する透過率(%)
赤外線透過性着色剤(ペリレン系黒色顔料)を含む第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた第1樹脂層用フィルム(50mm×50mm、厚さは表に記載)を測定試料とし、日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計「V−670」(型式名)により、透過率を測定した。即ち、測定試料に、光を放射し、800nmから1,400nmまでの波長域における透過率を、20nm毎に測定し、これらの平均値を算出した。
1−8.波長400〜700nmの光に対する吸収率(%)
赤外線透過性着色剤(ペリレン系黒色顔料)を含む第1熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた第1樹脂層用フィルム(50mm×50mm、厚さは表に記載)を測定試料とし、日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計「V−670」(型式名)により、透過率及び反射率を測定した。即ち、測定試料に、光を放射し、400nmから700nmまでの波長域における透過率及び反射率を、20nm毎に測定し、これらの平均値を算出した。吸収率は、透過率の平均値及び反射率の平均値を用いて、下記式により算出した。
吸収率(%)=100−{透過率(%)+反射率(%)}
1−9.引張強度保持率(湿熱老化試験)
所定の大きさの太陽電池用裏面保護フィルムを、下記曝露試験に供し、曝露前後の引張強度をJIS K7127に準じて測定して、その比を算出した。
<曝露試験>
太陽電池用裏面保護フィルムを短冊状(長さ200mm、幅15mm、厚さは表に記載)に裁断し、温度85℃及び湿度85%RHの条件下、2,000時間放置した。
1−10.寸法安定性
所定の大きさの太陽電池用裏面保護フィルムを、下記加熱試験に供し、加熱前後の標線の長さを測定し、下記式に基づいて、寸法変化率を算出した。
算出値から、寸法安定性を、下記基準により判定した。
○:寸法変化率が1%未満である
△:寸法変化率が1%以上2%未満である
×:寸法変化率が2%以上である
<加熱試験>
太陽電池用裏面保護フィルムを正方形状(120mm×120mm)に裁断し、中央部に100mm×100mmの正方形の標線を引いた。このフィルムを、温度120℃の恒温槽に30分間放置した後、取り出して放冷した。
1−11.耐傷性
太陽電池用裏面保護フィルムにおける裏面保護層側の表面を、東測精密工業株式会社製往復動摩擦試験機を用いて、綿帆布かなきん3号、垂直荷重500gで500往復摩擦させた。その後の表面を目視で観察し、下記基準で判定した。
○:傷が観察されなかった
△:傷がわずかに観察された
×:傷が明確に観察された
1−12.水蒸気バリア性
温度40℃、及び、湿度90%RHの条件下、MOCON社製水蒸気透過率測定装置「PERMATRAN W3/31」(型式名)を用いて、JIS K7129Bに準じて、水蒸気透湿度を測定した。尚、透過面として、第1樹脂層ではない側の表面を水蒸気側に配置した。
1−13.光電変換効率向上率
温度25℃±2℃、及び、湿度50±5%RHに調整された室において、ペクセル・テクノロジーズ社製Solar Simulator「PEC−11」(型式名)を用いて、予め、セル単体の光電変換効率を測定した1/4多結晶シリコンセルの表面に、厚さ3mmのガラスを、裏面に、太陽電池用裏面保護フィルムを配置して、シリコンセルを挟み、ガラス及び太陽電池用裏面保護フィルムの間にEVAを導入してシリコンセルを封止し太陽電池モジュールを作製した。その後、温度の影響を低減させるために、光を照射後すぐに光電変換効率を測定した。得られた光電変換効率と、セル単体の光電変換効率とを用いて、光電変換効率向上率を求めた。
光電変換効率向上率(%)={(モジュールの光電変換効率−セル単体の光電変換効率)÷(セル単体の光電変換効率)}×100
2.太陽電池用裏面保護フィルムの製造原料
熱可塑性樹脂組成物の調製等に用いた原料成分を以下に示す。
2−1.グラフト重合樹脂(A−1)
p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン1.3部及びオクタメチルシクロテトラシロキサン98.7部を混合し、これを、ドデシルベンゼンスルホン酸2.0部を溶解した蒸留水300部中に入れ、ホモジナイザーにより3分間攪拌して乳化分散させた。この乳化分散液を、コンデンサー、窒素導入口及び攪拌機を備えたセパラブルフラスコに移し、攪拌しながら、90℃で6時間加熱した。次いで、5℃で24時間保持し、縮合を完結させ、ポリオルガノシロキサン系ゴム(含珪素ゴム)を含むラテックスを得た。縮合率は93%であった。その後、このラテックスを、炭酸ナトリウム水溶液を用いてpH7に中和した。得られたポリオルガノシロキサン系ゴムの体積平均粒子径は300nmであった。
次に、攪拌機を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコに、イオン交換水100部、オレイン酸カリウム1.5部、水酸化カリウム0.01部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部、上記ポリオルガノシロキサン系ゴム40部を含む、pH7に調製されたラテックス、スチレン15部及びアクリロニトリル5部からなるバッチ重合成分を加え、攪拌しながら昇温した。温度が45℃に達した時点で、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.1部、硫酸第1鉄0.003部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート・二水塩0.2部及びイオン交換水15部よりなる活性剤水溶液、並びにジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部を添加し、1時間重合を行った。
その後、上記反応系に、イオン交換水50部、オレイン酸カリウム1部、水酸化カリウム0.02部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.2部、スチレン30部及びアクリロニトリル10部よりなるインクレメント重合成分を、3時間に渡って連続的に添加し、重合を続けた。添加終了後、更に攪拌を継続した。1時間後、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加し、重合を終了し、グラフト重合樹脂(A−1)を含むラテックスを得た。次いで、上記ラテックスに、硫酸1.5部を加えて、樹脂成分を90℃で凝固させ、その後、樹脂成分の水洗、脱水及び乾燥を行って、粉末状のグラフト重合樹脂(A−1)を得た。ガラス転移温度(Tg)は108℃、グラフト率は84%、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は0.60dl/gであった。
2−2.グラフト重合樹脂(A−2)
アクリル酸n−ブチル99部及びアリルメタアクリレート1部を乳化重合して得られた、体積平均粒子径100nmのアクリルゴム(ゲル含率90%)50部を含む固形分濃度40%のラテックスを収容した反応器に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部及びイオン交換水150部を加えて希釈した。その後、反応器内を窒素ガスで置換し、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.02部、硫酸第一鉄0.005部及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.3部を加え、撹枠しながら60℃まで昇温した。
一方、別途準備した容器において、スチレン37.5部及びアクリロニトリル12.5部の混合物50部に、ターピノーレン1.0部及びクメンハイドロパーオキサイド0.2部を溶解させ、その後、容器内を窒素ガスで置換し、単量体組成物を得た。
次いで、上記単量体組成物を、5時間かけて、一定流量で上記反応器に添加しながら70℃で重合を行い、グラフト重合樹脂(A−2)を含むラテックスを得た。このラテックスに、硫酸マグネシウムを添加し、樹脂成分を凝固させた。その後、樹脂成分の水洗、脱水及び乾燥を行って、粉末状のグラフト重合樹脂(A−2)を得た。ガラス転移温度(Tg)は108℃、グラフト率は93%、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は0.30dl/gであった。
2−3.グラフト重合樹脂(A−3)
アクリル酸n−ブチル97.5部、アリルメタアクリレート1部及びビニルメトキシシラン1.5部を乳化重合して得られた、体積平均粒子径100nmのアクリル系ゴム(ゲル含率90%)50部を含む固形分濃度40%のラテックスを収容した反応器に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部及びイオン交換水150部を加えて希釈した。その後、反応器内を窒素ガスで置換し、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.02部、硫酸第一鉄0.005部及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.3部を加え、撹枠しながら60℃まで昇温した。
一方、別途準備した容器において、スチレン37.5部及びアクリロニトリル12.5部の混合物50部に、ターピノーレン1.0部及びクメンハイドロパーオキサイド0.2部を溶解させ、その後、容器内を窒素ガスで置換し、単量体組成物を得た。
次いで、上記単量体組成物を、5時間かけて、一定流量で上記反応器に添加しながら70℃で重合を行い、グラフト重合樹脂(A−3)を含むラテックスを得た。このラテックスに、硫酸マグネシウムを添加し、樹脂成分を凝固させた。その後、樹脂成分の水洗、脱水及び乾燥を行って、粉末状のグラフト重合樹脂(A−3)を得た。ガラス転移温度(Tg)は108℃、グラフト率は93%、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は0.30dl/gであった。
2−4.グラフト重合樹脂(A−4)
撹拌機を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水75部、ロジン酸カリウム0.5部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部、体積平均粒子径270nmのポリブタジエンゴム(ゲル含率:90%)32部を含む固形分濃度57%のラテックス、体積平均粒子径550nmのスチレン・ブタジエン共重合体(スチレン単位量25%、ゲル含率50%)8部を含む固形分濃度68%のラテックス、スチレン15部及びアクリロニトリル5部を入れ、窒素気流中、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達した時点で、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.2部をイオン交換水20部に溶解した水溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加え、70℃で重合を開始し、1時間重合させた。
その後、イオン交換水50部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部、tert−ドデシルメルカプタン0.05部及びクメンハイドロパーオキサイド0.01部を3時間かけて連続的に添加し、重合を継続した。1時間重合させた後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチレン−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加し、重合を完結させ、ラテックスを得た。
次いで、このラテックスに硫酸マグネシウムを添加し、樹脂成分を凝固させた。その後、水洗及び乾燥することにより、グラフト重合樹脂(A−4)を得た。グラフト率は72%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は0.47dl/gであった。また、ガラス転移温度(Tg)は、108℃であった。
2−5.アクリロニトリル・スチレン共重合体
テクノポリマー社製AS樹脂「SAN−H」(商品名)を用いた。ガラス転移温度(Tg)は、108℃である。
2−6.アクリロニトリル・スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体
日本触媒社製アクリロニトリル・スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体「ポリイミレックス PAS1460」(商品名)を用いた。N−フェニルマレイミド単位量は40%、スチレン単位量は51%、GPCによるポリスチレン換算のMwは120,000である。ガラス転移温度(Tg)は、173℃である。
2−7.白色系着色剤
石原産業社製酸化チタン「タイペークCR−50−2」(商品名)を用いた。平均一次粒子径は0.25μmである。
2−8.赤外線透過性着色剤
BASF社製ペリレン系黒色顔料「Lumogen BLACK FK4280」(商品名)を用いた。
2−9.黄色着色剤
BASF社製キノフタロン系黄色顔料「Paliotol Yellow K0961HD」(商品名)を用いた。
2−10.水蒸気バリア層形成用フィルム(R−1)
三菱樹脂社製透明蒸着フィルム「テックバリアAX」(商品名)を用いた。PETフィルムの片面にシリカ蒸着膜を有する透明フィルムであり、厚さは12μm、水蒸気透湿度(JIS K7129)は0.15g/(m2・day)である。
2−11.水蒸気バリア層形成用フィルム(R−2)
東洋紡社製無機2元蒸着バリアフィルム「エコシアールVE500」(商品名)を用いた。PETフィルムの片面に(シリカ/アルミナ)の蒸着を施した透明フィルムであり、厚さは12μm、水蒸気透湿度は0.5g/(m2・day)である。
2−12.裏面保護層形成用フィルム(P−1)
東レ社製半透明PETフィルム「ルミラーX10S」(商品名)を用いた。厚さは50μmである。
2−13.裏面保護層形成用フィルム(P−2)
帝人デュポン社製乳白色PETフィルム「Melinex238」(商品名)を用いた。厚さは75μmである。
3.太陽電池用裏面保護フィルムの製造及び評価
実施例1〜2及び比較例1
表1に示した、第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層を形成するための熱可塑性樹脂 組成物の原料を、それぞれ、ヘンシェルミキサーにより混合した。その後、二軸押出機( 型式名「TEX44」、日本製鋼所製)を用いて、バレル温度270℃で溶融混練し、第 1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物の、3種の ペレットを得た。
次に、ダイ幅1,400mm及びリップ間隔1.5mmのTダイを有し、スクリュー径 65mmの押出機3機を備える多層フィルム成形機を用い、各押出機に、第1熱可塑性樹 脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物及び第3熱可塑性樹脂組成物を供給した。そして、T ダイから、溶融温度270℃で溶融樹脂を吐出させ、3層型軟質フィルムとした。その後 、この3層型軟質フィルムを、エアーナイフにより、表面温度が95℃に制御されたキャ ストロールに面密着させ、冷却固化し、実施例1の3層型太陽電池用裏面保護フィルムを 得た。尚、第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層の厚さは、表1に記載の通りである。 フィルムの厚さは、シックネスゲージ(型式名「ID−C1112C」、ミツトヨ社製) を用い、フィルムの製造開始から1時間経過後のフィルムを切り取り、フィルム幅方向の 中心、及び、中心より両端に向けて、10mm間隔で厚さを測定し(n=107)、その 平均値とした。フィルムの端部から20mmの範囲にある測定点の値は、上記平均値の計 算から除去した。
また、表1に示した、第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層を形成するための熱可塑性樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして、実施例2及び比較例1の3層型太陽電池用裏面保護フィルムを得た。そして、これらの太陽電池用裏面保護フィルムについて、各種評価を行い、その結果を表1に併記した。
表1から明らかなように、含珪素熱可塑性樹脂でないグラフト重合樹脂(A−2)を含有する熱可塑性樹脂組成物を用いて形成された第1樹脂層を備える太陽電池用裏面保護フィルムとした比較例1は、エチレン・酢酸ビニル共重合体からなるフィルムとの接着において、剥離強度が、15Nと低く、接着性が十分ではなかった。
一方、含珪素熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物を用いて形成された第1樹脂層を備える太陽電池用裏面保護フィルムとした実施例1〜2は、剥離強度が71〜77Nと高く、接着性に優れていた。
実施例3
ダイ幅1,400mm及びリップ間隔1.5mmのTダイを有し、スクリュー径65m mの押出機3機を備える多層フィルム成形機を用い、各押出機に、表2に示した、第1熱 可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物、及び、第3熱可塑性樹脂組成物を供給した 。そして、Tダイから、温度270℃で溶融させた、各樹脂組成物を吐出させ、3層型軟 質フィルムとした。その後、この3層型軟質フィルムを、エアーナイフにより、表面温度 が95℃に制御されたキャストロールに面密着させつつ、冷却固化させ、積層フィルムを 得た。尚、第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層の厚さは、表2に記載の通りである。 フィルムの厚さは、ミツトヨ社製シックネスゲージ「ID−C1112C」(型式名)を 用い、フィルムの製造開始から1時間経過後のフィルムを切り取り、フィルム幅方向の中 心、及び、中心より両端に向けて、10mm間隔で厚さを測定し(n=107)、その平 均値とした。フィルムの端部から20mmの範囲にある測定点の値は、上記平均値の計算 から除去した。
次に、上記積層フィルムにおける第3樹脂層の外表面に、水蒸気バリア層形成用フィル ム(R−1)を、蒸着膜が外表面となるようにして、ポリウレタン系の接着剤を用いて接 着させ、太陽電池用裏面保護フィルムを得た。そして、この太陽電池用裏面保護フィルム について、各種評価を行い、その結果を表2に併記した。
実施例4
ダイ幅1,400mm及びリップ間隔1.5mmのTダイを有し、スクリュー径65m mの押出機3機を備える多層フィルム成形機を用い、各押出機に、表3に示した、第1熱 可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物、及び、第3熱可塑性樹脂組成物を供給した 。そして、Tダイから、温度270℃で溶融させた、各樹脂組成物を吐出させ、3層型軟 質フィルムとした。その後、この3層型軟質フィルムを、エアーナイフにより、表面温度 が95℃に制御されたキャストロールに面密着させつつ、冷却固化させ、積層フィルムを 得た。尚、第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層の厚さは、表3に記載の通りである。 フィルムの厚さは、ミツトヨ社製シックネスゲージ「ID−C1112C」(型式名)を 用い、フィルムの製造開始から1時間経過後のフィルムを切り取り、フィルム幅方向の中 心、及び、中心より両端に向けて、10mm間隔で厚さを測定し(n=107)、その平 均値とした。フィルムの端部から20mmの範囲にある測定点の値は、上記平均値の計算 から除去した。
次に、上記積層フィルムにおける第3樹脂層の外表面に、裏面保護層形成用フィルム( P−1)を、蒸着膜が外表面となるようにして、ポリウレタン系の接着剤を用いて接着さ せ、太陽電池用裏面保護フィルムを得た。そして、この太陽電池用裏面保護フィルムにつ いて、各種評価を行い、その結果を表3に併記した。
実施例5
ダイ幅1,400mm及びリップ間隔1.5mmのTダイを有し、スクリュー径65m mの押出機3機を備える多層フィルム成形機を用い、各押出機に、第1熱可塑性樹脂組成 物、第2熱可塑性樹脂組成物、及び、第3熱可塑性樹脂組成物を供給した。そして、Tダ イから、温度270℃で溶融させた、各樹脂組成物を吐出させ、3層型軟質フィルムとし た。その後、この3層型軟質フィルムを、エアーナイフにより、表面温度が95℃に制御 されたキャストロールに面密着させつつ、冷却固化させ、積層フィルムを得た。尚、第1 樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層の厚さは、表3に記載の通りである。フィルムの厚さ は、ミツトヨ社製シックネスゲージ「ID−C1112C」(型式名)を用い、フィルム の製造開始から1時間経過後のフィルムを切り取り、フィルム幅方向の中心、及び、中心 より両端に向けて、10mm間隔で厚さを測定し(n=107)、その平均値とした。フ ィルムの端部から20mmの範囲にある測定点の値は、上記平均値の計算から除去した。
次に、上記積層フィルムにおける第3樹脂層の外表面に、水蒸気バリア層形成用フィル ム(R−1)を、蒸着膜が外表面となるようにして、ポリウレタン系の接着剤を用いて接 着させた。更に、水蒸気バリア層における蒸着膜の表面に、裏面保護層形成用フィルム( P−1)をポリウレタン系の接着剤を用いて接着させ、太陽電池用裏面保護フィルムを得 た。そして、この太陽電池用裏面保護フィルムについて、各種評価を行い、その結果を表 3に併記した。
比較例2
表3に示した組成を有する第1熱可塑性樹脂組成物を用いた以外は、実施例5と同様にして、太陽電池用裏面保護フィルムを得た。そして、この太陽電池用裏面保護フィルムについて、各種評価を行い、その結果を表3に併記した。