JP2013044604A - 金属酸化物の絶縁膜を用いたバイオチップ - Google Patents
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Abstract
【課題】蛍光物質等の標識をすることなく、特定のターゲット物質を迅速、簡便に検出することが可能で、かつ、測定精度が向上されたバイオチップを提供する。
【解決手段】基板上に形成した電極配線をTiO2、SiO2などの金属酸化物の絶縁膜で被覆し、この絶縁膜に微細加工技術によって1または複数の微小ウェルを形成し、各ウェルの底部にプローブ物質を固定化したバイオ分子アレイチップを作製する。
【選択図】なし
【解決手段】基板上に形成した電極配線をTiO2、SiO2などの金属酸化物の絶縁膜で被覆し、この絶縁膜に微細加工技術によって1または複数の微小ウェルを形成し、各ウェルの底部にプローブ物質を固定化したバイオ分子アレイチップを作製する。
【選択図】なし
Description
本発明は、金属酸化物の絶縁膜を用いたバイオチップに関する。より詳しくは、複数のウェルが形成された金属酸化物の絶縁膜を有し、検出感度が向上したバイオチップに関する。
近年、新薬開発プロセス、医療診断等などの分野において、バイオチップが注目され、研究開発が盛んに進められている。
バイオチップとは、固体表面上(固相化担体としては、シリコン基板、ガラス基板、高分子、金基板など)にDNA等の核酸、酵素や抗体のごときタンパク質、ペプチド等のバイオ分子アレイ、あるいは細胞等を固定化し、固定化されたバイオ分子アレイ等のプローブ物質に特定のターゲット物質が結合したときに生じる特異的な反応を検出するものである[特許文献1、2]。
さらに、プローブ物質として、リポソーム、β−アミロイドオリゴマー、還元糖を用いたバイオチップも提案されている[特許文献3、4]。
バイオチップとは、固体表面上(固相化担体としては、シリコン基板、ガラス基板、高分子、金基板など)にDNA等の核酸、酵素や抗体のごときタンパク質、ペプチド等のバイオ分子アレイ、あるいは細胞等を固定化し、固定化されたバイオ分子アレイ等のプローブ物質に特定のターゲット物質が結合したときに生じる特異的な反応を検出するものである[特許文献1、2]。
さらに、プローブ物質として、リポソーム、β−アミロイドオリゴマー、還元糖を用いたバイオチップも提案されている[特許文献3、4]。
様々なプローブ物質を用いることが可能になり、バイオチップの有用性は、ますます、増大している。特に、微量のサンプルを用いて大量にハイスループットな検出および解析ができるところから、大量かつ同時並行的な処理を要求されるポストゲノム時代のバイオ分子アレイの機能解析技術にはバイオチップ関連技術が必須となっている。
特許文献1〜4のバイオチップは、基板上に1または複数の電極配線を形成し、該1または複数の電極配線を絶縁膜で被覆し、該1または複数の電極配線の各々の一領域上の絶縁膜に電極表面に達する1または複数の孔を設けることによって1または複数のウェルを形成し、次いで、該1または複数のウェルの底部にプローブ物質を固定化することによって作製する。
このようなバイオチップの上面図を図1に示す。ここでは、ガラス基板10上に8本の電極配線13を形成し、一度に8点測定が可能なバイオチップ1を形成する。
電極配線13の一方の端部にはバイオ分子アレイ領域131が形成され、他方の端部にはバイオ分子アレイ領域で検出した電気的信号を取り出すためのパッド132が形成されている。
図2にバイオ分子アレイ領域131の拡大上面図を示す。バイオ分子アレイ領域131上には絶縁性レジスト膜14が形成され、この絶縁膜に1または複数の孔を設けることによって、バイオ分子を固定化するための1または複数のウェル131aが形成されている。
バイオ分子アレイ領域131には、ウェル131aの直径が5μm以上の場合、図2aに示すように単一のウェルを形成することができ、ウェル131aの直径がサブミクロン以下20nm程度までの場合、図2bに示すように複数のウェルを配列させることができる。
電極配線13の一方の端部にはバイオ分子アレイ領域131が形成され、他方の端部にはバイオ分子アレイ領域で検出した電気的信号を取り出すためのパッド132が形成されている。
図2にバイオ分子アレイ領域131の拡大上面図を示す。バイオ分子アレイ領域131上には絶縁性レジスト膜14が形成され、この絶縁膜に1または複数の孔を設けることによって、バイオ分子を固定化するための1または複数のウェル131aが形成されている。
バイオ分子アレイ領域131には、ウェル131aの直径が5μm以上の場合、図2aに示すように単一のウェルを形成することができ、ウェル131aの直径がサブミクロン以下20nm程度までの場合、図2bに示すように複数のウェルを配列させることができる。
バイオ分子アレイ領域131の断面図を図3aに示す。ここでは、ガラス基板10上に、まず、Ti薄膜13aを形成し、その上にAu薄膜13bを形成することによって、Au/Ti積層薄膜からなる電極配線13を形成した。Au薄膜を直接ガラス基板に形成することもできるが、Au薄膜の接着強度が弱いので、Au薄膜の剥離を防止し、バイオチップの信頼性を向上させるためにTi薄膜を用いた。Ti以外にCrを用いることもできる。
この図が示すように、絶縁性レジスト膜に形成された孔は、下部層の電極配線の表面にまで達している。すなわち、バイオ分子アレイ領域に形成されたウェルの側面は絶縁性レジスト膜14により定められ、ウェルの底部は電極配線13の表面により定められている。
この構成によって、図3bに示すように、ウェル131aの底部の露出した電極表面上にのみプローブとなるバイオ分子を固定化する。この図において、電極表面上に脂質二重層4を固定化し、その上にプローブタンパク質2を固定化している。
この構成によって、図3bに示すように、ウェル131aの底部の露出した電極表面上にのみプローブとなるバイオ分子を固定化する。この図において、電極表面上に脂質二重層4を固定化し、その上にプローブタンパク質2を固定化している。
このようなバイオチップを作製するために、半導体製造技術の1つであるフォトファブリケーション技術を用いることができる。ここでは、「フォトファブリケーション技術」なる用語は、フォトリソグラフィー技術、蒸着技術、エッチング技術などを組み合わせた技術を意味する。
フォトファブリケーション技術はすでにICやLSI製造技術の1つとして確立されているため、従来のDNAチップのように小型化や製造工程の自動化が可能で、チップの大量生産や低コスト化につながる。
フォトファブリケーション技術はすでにICやLSI製造技術の1つとして確立されているため、従来のDNAチップのように小型化や製造工程の自動化が可能で、チップの大量生産や低コスト化につながる。
図4ないし図9は、フォトファブリケーション技術によってバイオチップを作製する工程を示す概略図である
まず、直径5μm以上の単一ウェルを作製する工程について説明する。基板10上にスピンコーターを用いて感光性材料であるフォトレジスト11を塗布し、90℃にて2分間ベーキングする(図4a,4b)。この説明ではガラス基板を用いたが、アルミナ基板、シリコン基板、または、シリコーン樹脂のごとき樹脂製基板等のいずれの材質の基板も用いることができる。
次いで、フォトマスクを用いて紫外線12aで20秒間露光し(図4c)、フォトレジスト11を現像して電極配線13用の配線パターンを形成する(図4d)。フォトレジストには、露光によって結合が分解して現像液に溶解するもの(ポジ型)と、逆に重合して溶解しないもの(ネガ型)があるが、ここではフォトレジスト11としてポジ型レジスト(AZ1500:クラリアントジャパン株式会社)を用いる。
まず、直径5μm以上の単一ウェルを作製する工程について説明する。基板10上にスピンコーターを用いて感光性材料であるフォトレジスト11を塗布し、90℃にて2分間ベーキングする(図4a,4b)。この説明ではガラス基板を用いたが、アルミナ基板、シリコン基板、または、シリコーン樹脂のごとき樹脂製基板等のいずれの材質の基板も用いることができる。
次いで、フォトマスクを用いて紫外線12aで20秒間露光し(図4c)、フォトレジスト11を現像して電極配線13用の配線パターンを形成する(図4d)。フォトレジストには、露光によって結合が分解して現像液に溶解するもの(ポジ型)と、逆に重合して溶解しないもの(ネガ型)があるが、ここではフォトレジスト11としてポジ型レジスト(AZ1500:クラリアントジャパン株式会社)を用いる。
その後、真空蒸着やRFスパッタリングなどの蒸着技術によって基板上に電極材料となる金属薄膜を形成する(図4e)。
さらに、これをアセトンのごとき有機溶媒中に浸漬して、レジスト11を剥離することによって、ガラス基板10上に電極配線13を形成する(図4f)。電極配線13が形成されたチップの概略上面図を図6aに示す。図6において、一方の端部に円形のバイオ分子アレイ領域131が形成され、他方の端部には電気的信号を取り出すための角型パッド132が形成された電極配線が示されているが、これは電極配線の一例であって、この形状に限定されるものではない。当業者であれば、バイオセンサーに搭載されるバイオチップとして使用できるいずれの形状にも変形することができる。
また、電極配線の本数も、使用の形態に適合させて、適宜増減することができる。
さらに、これをアセトンのごとき有機溶媒中に浸漬して、レジスト11を剥離することによって、ガラス基板10上に電極配線13を形成する(図4f)。電極配線13が形成されたチップの概略上面図を図6aに示す。図6において、一方の端部に円形のバイオ分子アレイ領域131が形成され、他方の端部には電気的信号を取り出すための角型パッド132が形成された電極配線が示されているが、これは電極配線の一例であって、この形状に限定されるものではない。当業者であれば、バイオセンサーに搭載されるバイオチップとして使用できるいずれの形状にも変形することができる。
また、電極配線の本数も、使用の形態に適合させて、適宜増減することができる。
次に、スピンコーターを用いて電極配線13が形成された基板上に絶縁性レジスト14(AZ1500)を塗布し、90℃にて2分間ベーキングする(図5a)。次いで、フォトマスク12bを用いて紫外線12aで20秒間露光し(図5b)、レジスト14を現像することによって電極表面を露出させて、バイオ分子アレイ領域131上にウェル131aを形成する(図5c)。これを150℃にて5分間ベーキングすることによって、レジスト14を固着させる(図5d)。ウェルが形成されたチップの概略上面図を図6bに示す。
次に、直径がサブミクロン以下のウェルのアレイを作製する工程を説明する。直径5μm以上の単一ウェルを作製したときと同様にして電極配線を形成し(図4)、その後、図5aに示す工程と同様に、スピンコーターを用いて電極配線13が形成された基板上に絶縁性レジスト14(ZEP520:日本ゼオン株式会社)を塗布し、90℃にて2分間ベーキングする(図7a)。次いで、75kVにて電子ビーム15を照射し(図7b)、レジスト14を現像することによって電極表面を露出させて、バイオ分子アレイ領域131上に複数のウェル131aの配列を形成する(図7c)。これを200℃にて5分間ベーキングすることによって、レジスト14を固着させる(図7d)。ウェルが形成されたチップの概略上面図を図8に示す。
従来の半導体製造技術を用いれば、基板上にウェルを形成することができるので、上記の条件に限定されることなく、適宜、当業者によく知られた他の条件でウェルを形成することができる。
次に、生物化学の分野でよく知られている方法を用いて、ウェル底部の電極表面上に脂質二重層を形成する。具体的には、まず、チップをピランハ溶液(H2O2:H2SO4=1:3[v/v]に10分間浸漬してウェル底部の電極表面上の有機不純物質を除去し、純粋で十分に洗浄し、エタノールで洗浄した後(図9a)、1−オクタデカンチオール(ODT)3のエタノール溶液に浸漬してODT3をその−SH基を介して電極表面に結合させる(図9b)。
次いで、リン酸バッファー(PBS、pH7.4)中に1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)4を溶解して(10mM)、POPC4のリポソーム溶液を調製する。このリポソーム溶液をチップに滴下し、湿度100%の環境で1時間静置して、電極表面上にPOPC4の脂質二重層を形成する(図9c)。
あるいは、99.9モル%のPOPC4および0.1モル%のODT3をクロロホルム中でよく混合した後、溶媒をPBSに交換して混合リポソーム溶液を調製し、このリポソーム溶液をチップに滴下して、電極表面上にPOPC4の脂質二重層を形成する(図9c)。
いずれの場合も、ウェル底部の電極表面にのみ脂質二重層が固定化されるように、前記のレジスト14はODTの−SH基が結合しない材料であることが必要である。
次いで、リン酸バッファー(PBS、pH7.4)中に1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)4を溶解して(10mM)、POPC4のリポソーム溶液を調製する。このリポソーム溶液をチップに滴下し、湿度100%の環境で1時間静置して、電極表面上にPOPC4の脂質二重層を形成する(図9c)。
あるいは、99.9モル%のPOPC4および0.1モル%のODT3をクロロホルム中でよく混合した後、溶媒をPBSに交換して混合リポソーム溶液を調製し、このリポソーム溶液をチップに滴下して、電極表面上にPOPC4の脂質二重層を形成する(図9c)。
いずれの場合も、ウェル底部の電極表面にのみ脂質二重層が固定化されるように、前記のレジスト14はODTの−SH基が結合しない材料であることが必要である。
次に、1mMの(11−フェロセニル)ウンデシルポリオキシエチレン(Fe−PEG)5および0.1mMのビオチン化した1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(Bio−PE)21のリン酸バッファー混合溶液(pH7.4)を脂質二重層が形成されたチップに滴下し、1時間放置して脂質二重層上にFe−PEG5およびBio−PE21をアンカーする(図9d)。このとき、Fe−PEG5およびBio−PE21の混合溶液中のモル濃度比を適宜調整することによって、Bio−PE21が分散して適度な密度で脂質二重層上にアンカーされるようにする。
脂質二重層は絶縁性であるので、脂質二重層上での現象を電気的信号として検出することが不可能である。そこで、脂質二重層表面を導電性にする目的で、Fe−PEG5を用いる。
脂質二重層は絶縁性であるので、脂質二重層上での現象を電気的信号として検出することが不可能である。そこで、脂質二重層表面を導電性にする目的で、Fe−PEG5を用いる。
さらに、このビオチン修飾脂質二重層が形成されたチップに0.2mg/mlのストレプトアビジン22の水溶液を滴下し、湿度100%の環境で1時間静置して、Bio−PE21のビオチンとの特異的結合により、ストレプトアビジン22を結合させる(図9e)。PBSで洗浄することによって、脂質二重層に固定化されていない未結合のストレプトアビジンを除去する。
ストレプトアビジンは、ビオチンと生物学的に最も強固で安定に結合(Kd=10−15M)するタンパク質であり、4分子のビオチンと結合する。
ストレプトアビジン−ビオチン間の特異的結合を利用して、ストレプトアビジンを修飾した分子と、ビオチンを修飾したもう一つの分子とを結合させる手法が一般的に用いられている。したがって、様々なタンパク質にビオチンを修飾する技術がすでに確立され、そのためのキットも市販されている。また、ビオチン修飾したDNAも商業的に入手可能である。
ストレプトアビジン−ビオチン間の特異的結合を利用して、ストレプトアビジンを修飾した分子と、ビオチンを修飾したもう一つの分子とを結合させる手法が一般的に用いられている。したがって、様々なタンパク質にビオチンを修飾する技術がすでに確立され、そのためのキットも市販されている。また、ビオチン修飾したDNAも商業的に入手可能である。
Bio−PE21は脂質二重層上に分散してアンカーされ、1つのストレプトアビジン分子には、1つのビオチンしか結合していないと考えられる。
最後に、予めビオチン化したプローブ抗体23の溶液にストレプトアビジン固定化チップを浸漬することによって、ストレプトアビジン−ビオチンの特異的結合を介してプローブ抗体23をウェル底部に固定化する(図9f)。
ストレプトアビジンが基板上に固定化されている場合、ビオチンの有効結合数は1であることがすでに知られている。固定化によりビオチンが接近可能なストレプトアビジンの結合部位が限定されているためと考えられる。特に、本発明の場合、ビオチンにはタンパク質が結合しているので、1つのビオチン化タンパク質がストレプトアビジンに結合した後、立体障害によりさらなるビオチン化タンパク質がストレプトアビジンに接近できないためと考えられる。したがって、1つの固定化ストレプトアビジン22には1つのビオチン化プローブ抗体23が結合していると十分に考えられる。
このようなバイオチップを作製するために、ナノインプリンティングリソグラフィー(NIL)技術を用いることもできる。
近年、ナノインプリントリソグラフィー(NIL)技術は、エレクトロニクス、フォトニクス、磁気デバイス、バイオロジーなど様々な分野において、高解像度でナノスケールのパターンを形成するための最も期待される技術の一つである。
NIL技術は、樹脂層にモールド(スタンプまたはテンプレートともいう。)を押しつけることによって樹脂層にパターン形成する技術であり、熱NIL技術および光NIL技術がある。熱NIL技術では、熱可塑性樹脂の層に、そのガラス転移点以上の温度にて、高い圧力で硬質のモールドを押しつけ、その状態で冷却した後、モールドを取り外すことによって、樹脂層にパターニングを行う。また、光NIL技術では、光硬化性樹脂の層にモールドを押しつけ、その状態でUV等の光を照射した後、モールドを取り外すことによって、樹脂層にパターニングを行う。
さらに、高スループットかつ低コストで大面積にレリーフパターンを形成するNIL技術として、ステップ・アンド・フラッシュ・インプリント・リソグラフィー(SFIL)がある。SFILは、低温低圧の条件下で行うUV−NILである。SFILでは、低粘度の光硬化性樹脂を基板上に滴下するだけで樹脂層を形成するため、スピンコートを行う必要がない。この技術により、大面積に対して100nm以下のサイズの微小パターンを形成することができる[非特許文献1〜5]。
NIL技術は、樹脂層にモールド(スタンプまたはテンプレートともいう。)を押しつけることによって樹脂層にパターン形成する技術であり、熱NIL技術および光NIL技術がある。熱NIL技術では、熱可塑性樹脂の層に、そのガラス転移点以上の温度にて、高い圧力で硬質のモールドを押しつけ、その状態で冷却した後、モールドを取り外すことによって、樹脂層にパターニングを行う。また、光NIL技術では、光硬化性樹脂の層にモールドを押しつけ、その状態でUV等の光を照射した後、モールドを取り外すことによって、樹脂層にパターニングを行う。
さらに、高スループットかつ低コストで大面積にレリーフパターンを形成するNIL技術として、ステップ・アンド・フラッシュ・インプリント・リソグラフィー(SFIL)がある。SFILは、低温低圧の条件下で行うUV−NILである。SFILでは、低粘度の光硬化性樹脂を基板上に滴下するだけで樹脂層を形成するため、スピンコートを行う必要がない。この技術により、大面積に対して100nm以下のサイズの微小パターンを形成することができる[非特許文献1〜5]。
特許文献5は、NIL技術を用いて、図1〜4に記載されたものと同様の構成のバイオチップを作製する。
図10は、NIL技術によってバイオチップを作製する工程を示す概略図である
図10は、NIL技術によってバイオチップを作製する工程を示す概略図である
(1)UV−NIL法
UV硬化性樹脂を用いて、SiO2基板上にナノパターンを形成する絶縁性レジスト樹脂層を形成する。
まず、SiO2基板16上に、1重量%のDMPAを含有するエタノールで希釈した30重量%のUV硬化性樹脂を3000rpmにて20秒間スピンコートして450nm厚のUV硬化性樹脂の樹脂層17を形成する。ついで、ホットプレート上で70℃にて3分間予備加熱処理を行って、溶媒を除去する(図10a)。
モールド18を減圧下および室温にて、0.2MPaの圧力で1分間樹脂層17に押しつける(図10b)。使用するUV硬化性樹脂は低粘度の液体なので、室温に低圧でインプリントを行うことができる。
UVランプを装着したナノインプリント装置(NM−401:明昌機工株式会社製)を用いて、モールド18に圧力を負荷した状態で、UV硬化性樹脂の樹脂層17に365nmのUV光19を1分間照射することによって(紫外線量 200mJ/cm2)、UV硬化性樹脂の樹脂層17を硬化して硬化膜17aを形成する。
モールド18を基板から取り外し(図10c)、ナノパターンが形成されたUV硬化性樹脂の硬化膜17aを120℃にて1時間加熱処理して、機械強度および溶媒耐性を強化する。
UV硬化性樹脂を用いて、SiO2基板上にナノパターンを形成する絶縁性レジスト樹脂層を形成する。
まず、SiO2基板16上に、1重量%のDMPAを含有するエタノールで希釈した30重量%のUV硬化性樹脂を3000rpmにて20秒間スピンコートして450nm厚のUV硬化性樹脂の樹脂層17を形成する。ついで、ホットプレート上で70℃にて3分間予備加熱処理を行って、溶媒を除去する(図10a)。
モールド18を減圧下および室温にて、0.2MPaの圧力で1分間樹脂層17に押しつける(図10b)。使用するUV硬化性樹脂は低粘度の液体なので、室温に低圧でインプリントを行うことができる。
UVランプを装着したナノインプリント装置(NM−401:明昌機工株式会社製)を用いて、モールド18に圧力を負荷した状態で、UV硬化性樹脂の樹脂層17に365nmのUV光19を1分間照射することによって(紫外線量 200mJ/cm2)、UV硬化性樹脂の樹脂層17を硬化して硬化膜17aを形成する。
モールド18を基板から取り外し(図10c)、ナノパターンが形成されたUV硬化性樹脂の硬化膜17aを120℃にて1時間加熱処理して、機械強度および溶媒耐性を強化する。
(2)熱−NIL法
熱硬化性樹脂を用いて、SiO2基板上にナノパターンを形成する絶縁性レジスト樹脂層を形成する。
まず、UV−オゾンクリーナーを用いて洗浄したSiO2基板16上に、熱硬化性樹脂を3000rpmにて20秒間スピンコートして120nm厚の熱硬化性樹脂の樹脂層17を形成する。ついで、ホットプレート上で80℃にて10分間予備加熱処理を行って、溶媒を除去する(図10a)。
その後、UV光9を照射する代わりに、熱硬化性樹脂の樹脂層17に比較的高い温度(150℃)および圧力(10MPa)にて5分間モールド18を押しつける(図10b)。
モールド18に圧力を負荷した状態で、熱硬化性樹脂の樹脂層17を冷却することによって、熱硬化性樹脂の樹脂層17を硬化する。その後、モールドを基板から取り外し(図10c)、熱硬化性樹脂の硬化膜17aを形成する。
熱硬化性樹脂を用いて、SiO2基板上にナノパターンを形成する絶縁性レジスト樹脂層を形成する。
まず、UV−オゾンクリーナーを用いて洗浄したSiO2基板16上に、熱硬化性樹脂を3000rpmにて20秒間スピンコートして120nm厚の熱硬化性樹脂の樹脂層17を形成する。ついで、ホットプレート上で80℃にて10分間予備加熱処理を行って、溶媒を除去する(図10a)。
その後、UV光9を照射する代わりに、熱硬化性樹脂の樹脂層17に比較的高い温度(150℃)および圧力(10MPa)にて5分間モールド18を押しつける(図10b)。
モールド18に圧力を負荷した状態で、熱硬化性樹脂の樹脂層17を冷却することによって、熱硬化性樹脂の樹脂層17を硬化する。その後、モールドを基板から取り外し(図10c)、熱硬化性樹脂の硬化膜17aを形成する。
この図では、NIL法を用いてウェルを形成する方法のみを示しているが、基板16上に電極配線を形成した後、電極配線上にウェルを形成することができる。NIL法でウェルを形成すると、厚さが10〜15ナノメートル程度の薄い硬化膜が電極配線表面に残存する。このような不要な硬化膜は、O2プラズマ(150W ICP、RIE 30W、250mTorr,49sccm O2)およびエッチング誘導結合プラズマ反応性イオン(ICP−RIE)によるドライエッチングを30秒間行って除去し、電極表面を露出させて、バイオ分子アレイ領域上に複数のウェルの配列を有するバイオチップを形成することができる。
特許文献1〜6に開示または示唆されたバイオチップを作用電極として用い、その他、少なくとも対極および参照電極を含むバイオセンサーを作製すれば、バイオチップ上のプローブ物質にターゲット分子が相互作用したときの電気信号の変化を高感度で検出することができ、試料中のターゲット分子の存在を検知し、さらには、その存在量を測定することができる。通常、電気信号として酸化還元電流を使用する。
ターゲット分子の種類によって、プローブ物質を、DNA、抗体などのタンパク質、リポソーム、β−アミロイドオリゴマー、還元糖などを用いて、幅広い分野での測定が可能となる。
ターゲット分子の種類によって、プローブ物質を、DNA、抗体などのタンパク質、リポソーム、β−アミロイドオリゴマー、還元糖などを用いて、幅広い分野での測定が可能となる。
S. Y. Chou, P. R. Krauss, J. P. Renstrom, Appl. Phys. Lett. 1995, 67, 3114.
S. Y. Chou, P. R. Krauss, J. P. Renstrom, Science 1996, 272, 85.
J. Haisma, M. Verheijen, K. Vandenheuvel, J. Vandenberg, J. Vac. Sci. Technol. B 1996, 14, 4124.
P. Ruchhoeft, M. Colburn, B. Choi, H. Nounu, S. Johnson, T. Bailey, S. Damle, M. Stewart, J. Ekerdt, S. V. Sreenivasan, J. C. Wolfe, C. G. Willson, J. Vac. Sci. Technol. B 1999, 17, 2965.
M. Colburn, S. Johnson, M. Stewart, S. Damle, T. C. Bailey, B. Choi, M. Wedlake, T. Michaelson, S. V. Sreenivasan, J. Ekerdt, C. G. Willson, Proc. SPIE-Int. Soc. Opt. Eng. 1999, 3676, 379.
L. J. Guo, P. R. Krauss, S. Y. Chou, Appl. Phys. Lett. 1997, 71, 1881.
特許文献1〜6に開示されたバイオチップを作用電極として用いたバイオセンサーは、非常に有用であるが、本発明者らは、得られる酸化還元電位が測定毎に大きく変動することに気がついた。本発明者らは、この酸化還元電位の変動は、バイオチップの絶縁性レジスト膜の膨潤に起因することを突き止めた。すなわち、バイオチップの絶縁膜にレジスト組成物を用いているので、バイオチップを測定試料に浸積しているときに樹脂組成物が水により膨潤することによって、絶縁性レジスト膜の膜厚や絶縁性に変化が生じ、得られる酸化還元電位に影響を与えていると考えられる。
したがって、本発明の目的は、絶縁性レジスト膜の膨潤によって、センサーの測定変動を発生させないバイオチップを提供することにある。
本発明は、プローブ物質を固定化するためのウェルのアレイが形成されたバイオチップであり、ウェルの底部には、バイオチップ上の電極配線が露出している。金属酸化物の絶縁膜に形成された複数のウェルの底部に、検出対象によって適切なプローブ物質を固定することができる。
より詳しくは、本発明は、プローブ物質を配列して固定化するための1または複数のウェルが形成されたバイオチップであって、基板上に1または複数の電極配線が形成され、該1または複数の電極配線は、金属酸化物の絶縁膜で被覆され、該1または複数の電極配線の各々の一領域上の絶縁膜に、電極表面に達する1または複数の孔を設けることによって1または複数のウェルが形成されたバイオチップを提供する。
本発明によるバイオチップにおいて、該1または複数のウェル底部に露出した電極配線表面上に、核酸、タンパク質、ペプチド、リポソーム、β−アミロイドオリゴマーおよび還元糖よりなる群から選択されるプローブ物質を固定化することができる。
本発明のバイオチップにおいて、該金属酸化物が、TiO2、SiO2、ZnOよりなる群から選択される。
さらに、本発明は、少なくとも、作用電極、対極および参照電極を含むバイオセンサーであって、ここに、該作用電極は、本発明のバイオチップ、すなわち、プローブ物質を配列して固定化するための1または複数のウェルが形成されたバイオチップであって、基板上に1または複数の電極配線が形成され、該1または複数の電極配線は、金属酸化物の絶縁膜で被覆され、該1または複数の電極配線の各々の一領域上の絶縁膜に、電極表面に達する1または複数の孔を設けることによって1または複数のウェルが形成されたバイオチップであり、
該1または複数のウェル底部に露出した電極配線表面上に、核酸、タンパク質、ペプチド、リポソーム、β−アミロイドオリゴマーおよび還元糖よりなる群から選択されるプローブ物質が固定化され、
処理前に、該バイオチップの第1の電気的信号を測定し;
該バイオチップを試験溶液中で処理した後、該バイオチップの第2の電気的信号を測定し;次いで、
第1の電気的信号と第2の電気的信号との強度差から、試験溶液中に存在する、該1または複数のプローブ物質と特異的結合する非標識ターゲット分子を検出することを特徴とするバイオセンサーを提供する。
該1または複数のウェル底部に露出した電極配線表面上に、核酸、タンパク質、ペプチド、リポソーム、β−アミロイドオリゴマーおよび還元糖よりなる群から選択されるプローブ物質が固定化され、
処理前に、該バイオチップの第1の電気的信号を測定し;
該バイオチップを試験溶液中で処理した後、該バイオチップの第2の電気的信号を測定し;次いで、
第1の電気的信号と第2の電気的信号との強度差から、試験溶液中に存在する、該1または複数のプローブ物質と特異的結合する非標識ターゲット分子を検出することを特徴とするバイオセンサーを提供する。
ここで、「処理」とは、プローブ物質と非標識ターゲット分子とを特異的結合させるために必要なプロセスをいう。したがって、処理前、バイオチップにおいては、該1または複数のプローブ物質には非標識ターゲット分子が結合していない。また、試験溶液中に該非標識ターゲット分子が存在していれば、この処理によって、該1または複数のプローブ物質に非標識ターゲット分子が特異的結合する。本発明のバイオチップに上記の処理を行う前後で、電気的信号を測定し、電気的信号に変化があれば、該試験溶液中に、非標識ターゲット分子が存在していたことを確認することができる。
本発明において、特に、電気的信号として酸化還元電流値を用いる。
すなわち、本発明によれば、非標識ターゲット分子のプローブ物質への特異的結合の有無をバイオチップのバイオ分子アレイ上の酸化還元状態の変化から検出する。したがって、ターゲット分子に蛍光物質等を標識することなく、酸化還元電流値を測定するだけで特異的結合を検出できるので、迅速かつ簡便な測定が可能となる。
すなわち、プローブ物質にターゲット分子が結合していない系で測定した電気的信号とプローブ物質にターゲット分子が結合した系で測定した電気的信号との間に統計学的に有意な変化があった場合、当該有意な変化をターゲット分子とプローブ物質との特異的結合に関連付けることができる。
すなわち、本発明によれば、非標識ターゲット分子のプローブ物質への特異的結合の有無をバイオチップのバイオ分子アレイ上の酸化還元状態の変化から検出する。したがって、ターゲット分子に蛍光物質等を標識することなく、酸化還元電流値を測定するだけで特異的結合を検出できるので、迅速かつ簡便な測定が可能となる。
すなわち、プローブ物質にターゲット分子が結合していない系で測定した電気的信号とプローブ物質にターゲット分子が結合した系で測定した電気的信号との間に統計学的に有意な変化があった場合、当該有意な変化をターゲット分子とプローブ物質との特異的結合に関連付けることができる。
本発明は、さらに、プローブ物質を配列して固定化するための1または複数のウェルが形成されたバイオチップの製造方法であって、
基板上に1または複数の電極配線を形成し、
該1または複数の電極配線を金属酸化物の絶縁膜で被覆し、ついで、
該1または複数の電極配線の各々の一領域上の絶縁膜に、電極表面に達する1または複数の孔を設けることによって1または複数のウェルを形成する、バイオチップの製造方法も提供する。
基板上に1または複数の電極配線を形成し、
該1または複数の電極配線を金属酸化物の絶縁膜で被覆し、ついで、
該1または複数の電極配線の各々の一領域上の絶縁膜に、電極表面に達する1または複数の孔を設けることによって1または複数のウェルを形成する、バイオチップの製造方法も提供する。
本発明のバイオチップは、従来のいかなる技術を適用して作製してもよい。
特に、本発明のバイオチップの製造方法において、該金属酸化物の絶縁膜にウェルを形成する技術が、ナノインプリンティング技術、KrFステッパーパターニング、E−ビーム法、収束イオンビーム法よりなる群から選択される。
特に、本発明のバイオチップの製造方法において、該金属酸化物の絶縁膜にウェルを形成する技術が、ナノインプリンティング技術、KrFステッパーパターニング、E−ビーム法、収束イオンビーム法よりなる群から選択される。
本発明のバイオチップは金属酸化物を絶縁膜として用いるので、試料溶液に浸漬したとき、レジストを絶縁膜として用いる従来のバイオチップと比較して、膨潤による電気的特性への悪影響がないので、安定した測定が可能となる。
また、本発明のバイオチップは金属酸化物を絶縁膜として用いるので、レジストを絶縁膜として用いる従来のバイオチップと比較して、ウェルのサイズを小さく作ることができるので、ウェル内部にタンパク質などのプローブ物質を固定化するとき、ウェル内部に多数のプローブ物質を取り込んでしまうことが減少し、プローブ物質のセンシング能が向上するため、より高い精度の測定が可能となる。
また、本発明のバイオチップは金属酸化物を絶縁膜として用いるので、レジストを絶縁膜として用いる従来のバイオチップと比較して、ウェルのサイズを小さく作ることができるので、ウェル内部にタンパク質などのプローブ物質を固定化するとき、ウェル内部に多数のプローブ物質を取り込んでしまうことが減少し、プローブ物質のセンシング能が向上するため、より高い精度の測定が可能となる。
実施例1[金属酸化膜を絶縁膜とするバイオチップ]
(1)バイオチップの製造
一般的な電子ビーム(e−ビーム)リソグラフィー法を利用してナノサイズのウェルを有するバイオチップを製造した。
まず、図4の(a)〜(f)のように従来の方法と同様に基板上に電極を形成する。
次に、スピンコーティング法(5000rpm:60秒)を利用して、電極上にe−ビーム用レジスト(ポリメチルメタクリレート)の2%クロロベンゼン溶液を150nm厚さでコーティングし、熱処理過程を経て硬化したレジスト膜61を形成した(図11a)。
硬化したレジスト膜61に、所定のパターンで電子ビーム62を照射し(図11b)、その後、基板を現像溶液(メチルエチルケトン:イソプロピルアルコール=1:3)に30秒の間浸漬することによってレジスト膜61を現像した(図11c)。
(1)バイオチップの製造
一般的な電子ビーム(e−ビーム)リソグラフィー法を利用してナノサイズのウェルを有するバイオチップを製造した。
まず、図4の(a)〜(f)のように従来の方法と同様に基板上に電極を形成する。
次に、スピンコーティング法(5000rpm:60秒)を利用して、電極上にe−ビーム用レジスト(ポリメチルメタクリレート)の2%クロロベンゼン溶液を150nm厚さでコーティングし、熱処理過程を経て硬化したレジスト膜61を形成した(図11a)。
硬化したレジスト膜61に、所定のパターンで電子ビーム62を照射し(図11b)、その後、基板を現像溶液(メチルエチルケトン:イソプロピルアルコール=1:3)に30秒の間浸漬することによってレジスト膜61を現像した(図11c)。
以後、一般的な金属酸化蒸着装置を用いる直流マグネトロンスパッタリング法(金属ターゲット、常温蒸着、圧力:5mTorr、DC電力:60W)によって、SiO2を蒸着して金属酸化物膜63を形成した(図11d)。
さらに、基板をアセトンに30分以上浸漬して蒸着後に残ったレジスト膜61およびレジスト上に蒸着したSiO2を除去することによって、電極表面を露出させ、複数のウェル63aの配列を形成した(図11e)。得られたバイオチップ概略上面図は示さないが、図8と同様であり、絶縁性レジスト膜14が金属酸化物(ここでは、SiO2)の絶縁膜63であることが相違する。
さらに、基板をアセトンに30分以上浸漬して蒸着後に残ったレジスト膜61およびレジスト上に蒸着したSiO2を除去することによって、電極表面を露出させ、複数のウェル63aの配列を形成した(図11e)。得られたバイオチップ概略上面図は示さないが、図8と同様であり、絶縁性レジスト膜14が金属酸化物(ここでは、SiO2)の絶縁膜63であることが相違する。
上記の方法で、直径60nmで深さが40nmでサイズが非常に小さいウェルのアレイが形成された。ウェルのアレイ部分の電子顕微鏡像を図12に示す。
次に、図9aから9fに図示する従来例のように、露出した電極配線上にストレプトアビジンを固定化したバイオチップAを作製した。
(2)電気化学的測定
BAS100B/Wポテンシオスタット(Bioanalytical Systems, Inc.)を用いて、室温にてバイオチップの電気化学的測定を行った。測定の際には、バイオチップを作用電極とし、3M KCl中のAg/AgClを参照電極とし、プラチナ線を対電極とした(1mM)。
各EC測定の前には、ナノサイズのウェルのアレイを形成したバイオチップをH2SO4溶液中で+1.7Vにて1分間予備処理を行った。
サイクリックボルタンメトリー(CV)測定は、100mM リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)を含有する溶液中で、スキャン速度200mV/秒にて行った。CV測定の設定は以下である。
初期電位:−0.3V、最終電位:0.6V、振幅:25mV、ステップ電位:4mV、周期:50Hz.
バイオチップAを溶液に浸漬した直後および、浸漬後30分から240分まで、CV曲線を得た結果を図13に示す。
BAS100B/Wポテンシオスタット(Bioanalytical Systems, Inc.)を用いて、室温にてバイオチップの電気化学的測定を行った。測定の際には、バイオチップを作用電極とし、3M KCl中のAg/AgClを参照電極とし、プラチナ線を対電極とした(1mM)。
各EC測定の前には、ナノサイズのウェルのアレイを形成したバイオチップをH2SO4溶液中で+1.7Vにて1分間予備処理を行った。
サイクリックボルタンメトリー(CV)測定は、100mM リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)を含有する溶液中で、スキャン速度200mV/秒にて行った。CV測定の設定は以下である。
初期電位:−0.3V、最終電位:0.6V、振幅:25mV、ステップ電位:4mV、周期:50Hz.
バイオチップAを溶液に浸漬した直後および、浸漬後30分から240分まで、CV曲線を得た結果を図13に示す。
図13の結果から分かるように、金属酸化膜を絶縁膜として用いたバイオチップは長時間溶液に浸漬してもCV曲線の変動がなく、非常に安定して測定できることが示された。
上の方法で作ったナノ構造のバイオ センサーは既存のポリマーを利用して製作した時より小さい大きさの製作が容易で、ポリマーより耐久性および安定性特にメタル酸化物の絶縁性が非常に良いからバイオセンサーの性能を向上させるのに良いことが分かった。
比較例1[レジスト膜を絶縁膜とするバイオチップ]
(1)バイオチップの製造
直径5μm以上の単一ウェルを作製したときと同様にして電極配線を形成し(図4)、その後、図5aに示す工程と同様に、スピンコーターを用いて電極配線13が形成された基板上に絶縁性レジスト14(ZEP520:日本ゼオン株式会社)を塗布し、90℃にて2分間ベーキングする(図7a)。次いで、75kVにて電子ビーム15を照射し(図7b)、レジスト14を現像することによって電極表面を露出させて、バイオ分子アレイ領域131上に複数のウェル131aの配列を形成した(図7c)。これを200℃にて5分間ベーキングすることによって、レジスト14を固着させた(図7d)。ウェルが形成されたチップの概略上面図は図8に示したものと同様である。
(1)バイオチップの製造
直径5μm以上の単一ウェルを作製したときと同様にして電極配線を形成し(図4)、その後、図5aに示す工程と同様に、スピンコーターを用いて電極配線13が形成された基板上に絶縁性レジスト14(ZEP520:日本ゼオン株式会社)を塗布し、90℃にて2分間ベーキングする(図7a)。次いで、75kVにて電子ビーム15を照射し(図7b)、レジスト14を現像することによって電極表面を露出させて、バイオ分子アレイ領域131上に複数のウェル131aの配列を形成した(図7c)。これを200℃にて5分間ベーキングすることによって、レジスト14を固着させた(図7d)。ウェルが形成されたチップの概略上面図は図8に示したものと同様である。
次に、実施例1と同様にして、露出した電極配線上にストレプトアビジンが固定化されたバイオチップBを作製した。
(2)電気化学的測定
実施例1と同じ条件で、サイクリックボルタンメトリー(CV)法によりバイオチップの電気化学的測定を行った。
バイオチップBを溶液に浸漬した直後および、浸漬後20分から120分まで、CV曲線を得た結果を図14に示す。
実施例1と同じ条件で、サイクリックボルタンメトリー(CV)法によりバイオチップの電気化学的測定を行った。
バイオチップBを溶液に浸漬した直後および、浸漬後20分から120分まで、CV曲線を得た結果を図14に示す。
図14の結果から分かるように、レジストを絶縁膜として用いたバイオチップは溶液に浸漬すると、CV曲線が大きく変動した。
従来のレジスト膜を絶縁膜として用いるバイオチップと比較すると、測定安定性が高いため、精度の高い測定を要する分野に応用することができる。
1・・・バイオチップ、10・・・基板、11・・・フォトレジスト、12a・・・紫外線、12b・・・フォトマスク、13・・・電極配線、131・・・バイオ分子アレイ領域、131a,131b・・・ウェル、132・・・パッド、14・・・絶縁性レジスト膜、15・・・電子ビーム、
16・・・基板、17・・・樹脂層、17a・・・硬化膜、18・・・モールド、19・・・UV光、
2・・・プローブ、21・・・ビオチン化1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(Bio−PE)、22・・・ストレプトアビジン、23・・・ビオチン化プローブ抗体、3・・・1−オクタデカンチオール(ODT)、4・・・1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)、5・・・(11−フェロセニル)ウンデシルポリオキシエチレン(Fe−PEG)、
61・・・電子ビームリソグラフィー用レジスト、62・・・電子ビーム、63・・・金属酸化膜、63a・・・ウェル。
16・・・基板、17・・・樹脂層、17a・・・硬化膜、18・・・モールド、19・・・UV光、
2・・・プローブ、21・・・ビオチン化1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(Bio−PE)、22・・・ストレプトアビジン、23・・・ビオチン化プローブ抗体、3・・・1−オクタデカンチオール(ODT)、4・・・1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)、5・・・(11−フェロセニル)ウンデシルポリオキシエチレン(Fe−PEG)、
61・・・電子ビームリソグラフィー用レジスト、62・・・電子ビーム、63・・・金属酸化膜、63a・・・ウェル。
Claims (7)
- プローブ物質を配列して固定化するための1または複数のウェルが形成されたバイオチップであって、基板上に1または複数の電極配線が形成され、該1または複数の電極配線は、金属酸化物の絶縁膜で被覆され、該1または複数の電極配線の各々の一領域上の絶縁膜に、電極表面に達する1または複数の孔を設けることによって1または複数のウェルが形成されたバイオチップ。
- 該1または複数のウェル底部に露出した電極配線表面上に、核酸、タンパク質、ペプチド、リポソーム、β−アミロイドオリゴマーおよび還元糖よりなる群から選択されるプローブ物質が固定化されている、請求項1に記載のバイオチップ。
- 金属酸化物が、TiO2、SiO2、ZnOよりなる群から選択される、請求項1に記載のバイオチップ。
- 少なくとも、作用電極、対極および参照電極を含むバイオセンサーであって、ここに、該作用電極は、プローブ物質を配列して固定化するための1または複数のウェルが形成されたバイオチップであって、基板上に1または複数の電極配線が形成され、該1または複数の電極配線は、金属酸化物の絶縁膜で被覆され、該1または複数の電極配線の各々の一領域上の絶縁膜に、電極表面に達する1または複数の孔を設けることによって1または複数のウェルが形成されたバイオチップであり、
該1または複数のウェル底部に露出した電極配線表面上に、核酸、タンパク質、ペプチド、リポソーム、β−アミロイドオリゴマーおよび還元糖よりなる群から選択されるプローブ物質が固定化され、
処理前に、該バイオチップの第1の電気的信号を測定し;
該バイオチップを試験溶液中で処理した後、該バイオチップの第2の電気的信号を測定し;次いで、
第1の電気的信号と第2の電気的信号との強度差から、試験溶液中に存在する、該1または複数のプローブ物質と特異的結合する非標識ターゲット分子を検出することを特徴とするバイオセンサー。 - 該電気的信号が、酸化還元電流値である請求項4記載のバイオセンサー。
- プローブ物質を配列して固定化するための1または複数のウェルが形成されたバイオチップの製造方法であって、
基板上に1または複数の電極配線を形成し、
該1または複数の電極配線を金属酸化物の絶縁膜で被覆し、ついで、
該1または複数の電極配線の各々の一領域上の絶縁膜に、電極表面に達する1または複数の孔を設けることによって1または複数のウェルを形成する、バイオチップの製造方法。 - 該金属酸化物の絶縁膜にウェルを形成する技術が、ナノインプリンティング技術、KrFステッパーパターニング、E−ビーム法、収束イオンビーム法よりなる群から選択される、請求項6に記載の製造方法。
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