JP2012524992A - 磁気渦記憶装置 - Google Patents

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Abstract

本発明は、渦状態の平面磁気セル(4)のネットワークを含む磁気記憶装置(1)であって、各セルの渦コアが、反対方向でありかつセル(4)面に垂直な第1と第2の平衡位置のいずれかの磁化を有し、2つの位置のそれぞれが2進情報を表す、磁気記憶装置(1)に関する。装置(1)は、セルに格納される2進情報を書き込む手段(5、8a、8b、3)であって、各セル(4)の近傍で前記セル(4)面にほぼ垂直な第1のバイアス静磁場と前記セル(4)にほぼ平行な直線偏波無線周波数磁場とを選択的に印加する手段を含む書き込み手段(5、8a、8b、3)を含む。説明の装置はまた、点接触(7)により渦コアの周囲の領域を介し電流線を導くことにより、2つの交差する電極(6)と(9)間の選択的輸送測定を使用して、好ましくは共振的に極性を読み取る手段を含む。

Description

本発明は磁気渦記憶装置に関する。本発明は、特に、半導体素子内の揮発性ランダムアクセスメモリを置換するメモリセルおよび不揮発性MRAM(磁気ランダムアクセスメモリ:Magnetic Random Access Memory)の製造における情報技術にその用途がある。
既知の方法では、渦状態はナノ構造体(通常は、ナノディスク)の残留磁気における最低エネルギー磁気配位である。本明細書を通して、本発明者らは、渦状態のすべての基本磁気ナノ物体に対応するメモリセルの形式を記述するために用語「プレートレット(platelet)」を使用する。
セルの渦状態の存在を処理しなければならない状況は、特に「Single Domain Circular Nanomagnets」(Coburn et al.−Physical Review Letters−Volume 83,Number 5,August 2,1999)に既に記載されている。渦状態のセルは、空間的に異質の磁気配位(すなわち、セルの内部の位置の点に依存して異なる方向に向く磁化)を有する。図1に、渦状態のセルC(例えば、ナノディスク形状を有するセル)上の磁化の配向を示す。磁化(磁化ベクトルは矢印により表される)はセル面内に位置し、時計回りまたは反時計回りに(ここでは、時計回りが示される)向きを変える。セルの磁化は自然発生的に(すなわち、外部磁場無しに)現われ、磁化の円形構造は双極浮遊磁場の自発発生的最小化により説明される。したがって磁化が面内で回転している方向にその符号
Figure 2012524992
が依存するキラリティ(chirality)と呼ばれる渦状態のセルの磁気配位の第1の縮退が存在する。磁化がもはや向きを変えることができないセルの中心に特異点がまた存在する(「渦コア」(vortex core)と呼ばれる領域V内)。この中央領域V(数ナノメートルの直径を有する)は、それ以下では磁化がもはや変化することができない最小長を定義する交換特性長(characteristic length of
exchange)Lex(すなわち、約5nm)にほぼ等しい寸法を有する。磁化は渦コアVの中では変化することができないので、磁化はセル面を垂直上方向(コアの磁化または極性pが+1である)または下方向(コアの磁化または極性pが−1である)にする傾向がある。したがって、上方に向く(p=+1)または下方に向く(p=−1)セル面に垂直な磁化を有する渦コア極性に基づく渦状態のセルの磁気配位の第2の縮退が存在する。
渦状態の一組のメモリセルを使用するMRAM磁気記憶装置がある。米国特許出願第7072208号明細書では、2つの層のそれぞれが渦状態である自由層とトンネル障壁により分離された基準層とを有する磁気トンネル接合を含むこのようなMRAM装置について述べている。この装置によると、抵抗のばらつきを測定しかつ2進情報(「0」または「1」)を決定するために回転磁化(基準層に対し固定され、自由層内で時計回りと反時計回りに可変である)のキラリティcを使用する。磁化の配向(「時計回り」対「反時計回り」)は大きな静磁場の印加により変更される。しかしながらこのような装置を得ることは、かなり複雑でありかつ磁気トンネル接合の抵抗を測定するための基準層の存在を要する。また、位相書き込みと磁化のキラリティ反転には多量のエネルギーを必要とする。
「Polarization Selective Magnetic Vortex
Dynamics and Core Reversal in Rotating Magnetic Fields」(Curcic et al.−Physical Review Letters,2008,101,197204)では、制御された右または左円偏波を有する共振周波数における振動磁場を使用することにより零磁場(または残留磁気)で渦コアの磁化を選択的に反転する方法について述べられており、この磁場はセル面に平行に配向されている。この周期的励起に対する渦コアの応答は、その平衡位置の周囲の渦コアの円運動(ジャイロトロピック運動)に対応し、渦コア(ばねと類似)は比較的低いばね定数を有する。2つの可能なコア極性のそれぞれは、それ自身の旋回感覚(sense of gyration)を有するので、ジャイロトロピック運動を励起するためには、渦コア極性が上方または下方に配向されているかに依存して、左または右分波を有する円偏波磁場を印加することが必要とされる。回転の方向は渦のキラリティとは無関係であり、渦コアの極性だけに依存する。旋回半径が増加すると、コアの変位速度もまた渦コアの反転を引き起こす臨海速度に達するまで増加する。コアの極性が反転されると、渦コアはその中央平衡位置に戻る。しかしながら、この方法は技術的に実行するのが極めて困難な制御された円偏波の生成を必要とするので、いくつか技術的挑戦をもたらす。
この状況において、本発明の目的は、円偏波振動磁場の生成を必要とせず、かつセルの状態を変更するために励起を使用することが必要な場合の位相書き込みにおけるエネルギー消費量を著しく低減する、渦状態のセルのネットワークを含む磁気装置を提供することである。
この目的のため、本発明は、基板上の平坦な磁気セルのネットワークを含む磁気記憶装置であって、各磁気セルの寸法はセルが渦状態となるように選択され、各セルの渦コアが、互いに反対方向でありかつセル面にほぼ垂直な第1と第2の平衡位置のいずれかの磁化を有し、上記2つの位置のそれぞれが1個の2進情報を表す、磁気記憶装置であって、以下の特徴を有する磁気記憶装置を提案する。本装置は、セルに格納される2進情報を書き込む手段を含み、書き込み手段は、各セルの近傍において、
−セル面にほぼ垂直なバイアスを有する第1の静磁場HEと、
−セル面にほぼ平行な左右2つの円偏波を含む直線偏波を有する無線周波数磁場と、を選択的にかつ同時に印加する手段を含む。これにより、
−選択されたセル上の第1の周波数における第1の静磁場HEと無線周波数磁場の同時
の印加が、
○第1の平衡位置の周囲のコアの円運動の影響下で、第2の平衡位置に向かう、第1の平衡位置にある渦コアの磁化方向の切り換えを生じ、磁化の反転を引き起こし、渦コアは2つの円偏波の1つに結合されることにより回転し、さらに、
○第2の平衡位置にある渦コアの磁化方向を維持させ、
−選択されたセル上の第1の周波数とは異なる第2の周波数における第1の静磁場HE
と無線周波数磁場の同時の印加が、
○第2の平衡位置の周囲のコアの円運動の影響下で、第1の平衡位置に向かう、第2の平衡位置にある渦コアの磁化方向の切り換えを生じ、磁化の反転を引き起こし、渦コアは2つの円偏波の1つに結合されることにより回転し、
○第1の平衡位置にある渦コアの磁化方向を維持させる。
本発明のおかげで、静バイアス磁場とセルの幾何学的形状との両方により自発的に生成
され制御される渦コアの極性による縮退の解除があり、渦状態を生じる。
したがって、右円偏波磁場と左円偏波磁場の両方を含む直線偏波を有する平面無線周波数磁場が使用され、無線周波数(セル面に平行)と静的垂直磁場とが加えられる。この静磁場の存在が、渦コアの極性を下から上方向にまたは上から下方向に反転しようとしているかに依存して、2つの異なる共振周波数を得られるようにする。励起に対する応答を増幅するために共振現象を利用することにより、それを越えるとその極性が反転される渦コアの反転の閾値速度に達するのに必要な周波数は、極性が当初上向きか下向きかかに応じて異なる。残留磁気の特定の場合(ここでは静磁場は零である)、直線偏波マイクロ波磁場だけ(すなわち、2つの円偏波成分を含む)の使用は、極性の複数反転はあるもののマイクロ波パルス書き込みの際に高精度なタイミングを必要とするので、この問題を解決しないだろう。零静磁場では、渦コアにおける磁化は、それが反転するまでほぼ同じ周波数における直線偏波無線周波数磁場に含まれる2つの円偏波の1つと結合することにより向きを変えるだろう(例えば、上方向磁化に対しては時計回り、下方向磁化に対しては反時計回り)。一旦反転されると、磁化は、他の極性に再び戻ることができ、他の円偏波と結合されまた無線周波数磁場の直線偏波に含まれるだろう。したがって、本発明者らは、渦コアの磁化状態に関する制御の無いランダム状態を有することとなり、したがって各セルの正確な幾何学的形状に基づいて無線周波パルスの振幅、期間、形状を非常に精密に制御することができないであろう。磁場の静的成分を加えることにより、本発明者らは、第1の極性(例えば、p=+1)が第2の極性(例えば、p=−1)より速やかに向きを変えるように周波数弁別を導入するので、下から上方向にコアの磁化を反転するのに必要とされる無線周波数磁場の共振周波数は、上から下方向にコアの磁化を反転するのに必要とされる無線周波数磁場と異なる。このような装置の利点は、セルに情報(通常、2進の「1」を表す第1の極性p=+1と2進の「0」を表す第2の極性p=−1)を書き込むための周波数を選択的に制御できるようにすることである。磁化反転は共振現象に基づくので、渦コアの反転を許容する臨界速度に達するために高強度の無線周波数磁場を印加する必要は無い。非常に低い磁気制動を有する材料を使用することにより実現することができる共振現象のレバレッジ効果は、共振線が狭いことがさらに重要であるようにする。それに加え、以下に見るように線の狭い幅は選択性を増す。pを反転するのに必要な電力については、非線形処理が支配的である。非線形処理は、最適書き込み周波数を公称共振周波数に比し低い周波数にシフト(おおよそ線の幅のシフト)することを含む。直線偏波無線周波数磁場を使用することにより、得るのが困難な左右円形磁場を生成する必要無く2つの円偏波を含むことができる。「互いに反対方向に回転する2つの左右円偏波磁場を重ねることにより直線偏波磁場を形成する」ことが確立された。逆に、円偏波それ自体は暗黙には2つの直線偏波の組み合わせであり、これらは1/4回転だけ分離される。上記従来技術によると(特には「Polarization Selective Magnetic Vortex Dynamics and Core Reversal in Rotating Magnetic Fields」(Curcic et al.−Physical Review Letters,2008,101,197201を参照)、渦コアの決定的反転は円偏波の方向に関する制御を必要とする。使用されるマイクロ波振動数では、このような制御は実現するのが非常に困難である。一つのやり方は、それぞれが90°位相がずれる線形磁場を生成する2つのアンテナを交差することからなる。したがって、位相シフトが直角位相の前か後かに依存して、本発明者らは右または左の円偏波を局所的に有することになる。逆に、本発明による装置は、右または左の円偏波の方向を制御する必要はない。本発明による装置の実施形態は、直線偏波磁場が2つの左右円偏波磁場の重なりであるということを有利に利用し、したがって円偏波を制御することなく、直線偏波磁場により決定的反転を実現する(すなわち、単一のアンテナにより得る)。
コアの磁化が正しい共振周波数を有する線形磁場の2つの円形成分の1つにより反転さ
れると、線形磁場の他の円形成分は非常に弱く渦に結合されることになる。これは、その周波数は渦を回転させるために必要な共振周波数に等しくないので、渦コアが実質的に固定されたままとなるためである。したがって、コアの極性を再び変更するために、本発明者らは、無線周波数磁場の周波数を正しい共振周波数に変更して旋回させなければならないだろう。
本発明による装置はまた、個々に、あるいは技術的に可能な組み合わせのすべてにより考慮される以下の特徴の1つまたは複数を有してもよい。
−本発明による装置は、セルに格納される2進情報を書き込む手段を含み、書き込み手段は、
○読み取られるセルの近傍において
・セル面にほぼ垂直な第2の静バイアス磁場(以下、HLで表す)と、
・セル面にほぼ平行な直線偏波を有する無線周波数磁場と、
を選択的に印加する手段であって、これにより、無線周波数磁場の周波数が第3の周波数に等しい場合、第2の静磁場と無線周波数磁場とを選択されたセル上に同時に印加することで、
・第1の平衡位置の周囲の第1の平衡位置にある渦コアの円運動の励起に対応するセルによる無線周波電力の吸収をもたらし、このrf吸収が、磁化反転を生じない局部加熱をもたらし、
・第2の平衡位置にある渦コアの磁化方向を維持させる、手段
○セル内に読み取りプローブ電流を選択的に注入する手段
を含む。
−周波数を選択的にするために、第1の静磁場(HE:位相書き込み)と第2の静磁場
(HL:位相読み取り)にほぼ垂直な静バイアス磁場の振幅H(絶対値を意味する)は、
Hmin<H<Hmaxとなるようにされ、ここで、Hmin=αHsはHsにより表される共振周波数線の幅を意味し、Hsはセルの飽和磁場を意味し、αはギルバート磁気制動
係数を意味する。Hmaxは、渦コアの磁化方向の反転を生じる静磁場の振幅を意味する。
−好ましくは、第1の静磁場の振幅は第2の静磁場の振幅より大きい。
−セル内に選択的にプローブ読み取り電流を注入する手段は、読み取られるセルの渦コアの周囲の領域をほぼ介し電流を循環させるための点接触を含む。
−書き込み手段は、セルの近傍に配置された複数の並列の第1の導電線を含み、上記線のそれぞれは、線の下に位置するセル面にほぼ平行な第1の周波数または第2の周波数における直線偏波無線周波数磁場の印加のための第1の周波数または第2の周波数における等しい周波数の電流を受け取ることができる。
−複数の第1の線のそれぞれは、線の下に位置するセル面にほぼ平行な第3の周波数に、直線偏波無線周波数磁場を印加するための第3の周波数に等しい周波数の電流を受け取ることができる。
−書き込み手段は、セルの近傍の単一面に配置された複数の対の導電線を含み、単一の対の線はセルの行の両側に配置され、上記線のそれぞれは直流を受け取ることができ、これにより、単一対の2つの連続線が、2つの連続線間に配置されたセルの近傍のセル面にほぼ垂直な第1のバイアス静磁場の成分の印加のための反対方向の電流を受け取る。
−単一対の2つの線は2つの線間に配置されたセルを囲むように波紋が付けられる。
−書き込み手段は、セル面にほぼ垂直な第1の静バイアス磁場の成分の印加のための基板に平行な永久磁石を含む。
−永久磁石は基板の下に配置され、BiMn、AlNiCoまたはRCo等の材料で作られ、ここで、R=Y、La、Pr、Nd、またはSmである。
−永久磁石は、垂直異方性を有する磁性体層の形式で作られる。
−第2の静磁場を印加する手段は、基板に平行な永久磁石により形成される。
−セルは、0.03以下のギルバート磁気制動係数を有する強磁性体材料で作られる。
−セルは、0.0001以上のギルバート磁気制動係数を有する強磁性体材料で作られる。
−セルは、
・NiFe合金のような合金と、
○NiMnSb、CO2MnSi、またはCO2MnAlのようなホイスラ合金等の金属単結晶、あるいはFeのような純金属等と、
○GaMnAs等の磁性半導体と、
○ボロメータ検出器(bolometric detector)として働く導電層により覆われたY3Fe512またはFe34等の絶縁単結晶と、
の中から選択される強磁性体材料で作られる。
−セルのそれぞれは円形、楕円、または面平行な形状を有する。
−セルのそれぞれの幅または最小寸法(すなわち、円形セルの場合は直径、楕円セルの場合は2つの直径のうち小さいほうの直径)は、10nm〜1.0μmである。
−セルのそれぞれは、3nm〜100nmの厚さを有する。
−セルのそれぞれは2以下のアスペクト比(=厚さ/幅)βを有する。
−第1の周波数は、その第1の平衡位置の渦コアにおける旋回の共振周波数にほぼ等しく、第2の周波数は、その第2の平衡位置の渦コアの旋回の共振周波数にほぼ等しい。
−第1の静磁場(静的書き込み磁場HE)の振幅(すなわち絶対値)が第2の静磁場(
静的読み取り磁場HL)の振幅より大きいという戦略では、第1の周波数はまた、その第
1の平衡位置の渦コアの旋回の共振周波数以上、かつその第1の平衡位置の渦コアの旋回の共振周波数と、その第1の平衡位置の渦コアの旋回の共振周波数の線幅の半分との和以下であってもよい。
−第2の周波数はまた、その第2の平衡位置の渦コアの旋回の共振周波数以下、かつその第2の平衡位置の渦コアの旋回の共振周波数と、その第2の平衡位置の渦コアの旋回の共振周波数の線幅の半分との差以上であってもよい。
本発明の他の特徴と利点は、添付図面を参照し、以下の非網羅的リストの例において与えられる説明から明らかとなる。
渦状態のセル上の磁化の方向を示す。 本発明による磁気装置の第1の実施形態を概略的に示す。 基板平面に垂直な面に沿った図2の装置の単セルの断面図である。 本発明による装置のセル内の情報を読み取る機構を示す。 セル面に垂直な静磁場の振幅に基づく渦状態のセル内の旋回の共振周波数の変化を示す。 本発明による装置のセルに情報を書き込む機構を示す。
図2に、本発明による磁気装置1の第1の実施形態を概略的に示す。
本装置1は、
−基板2と、
−永久磁石3と、
−ナノディスクとして成形された平坦な磁気セル4のネットワークと、
−第1のメタライゼーションレベルとして互いに平行に配置された複数の第1の導電線5と、
−第2のメタライゼーションレベルとして互いに平行に配置された複数の第2の導電線6と、
−第2の線6と第2の線6の下に位置するセル4との間の電気接点を保証する複数の円
錐7と、
−第3のメタライゼーションレベルとして基板2上に配置された複数の波状導電線対8a、8bと、
−第4のメタライゼーションレベルとして互いに平行に配置された複数の第3の導電線と、を含む。
図3は、基板平面2に垂直な面に沿った単セル4、セル4の上に位置する交差した第1の線5と第2の線6、セル4の下に位置する第3の線9、そしてセル4の両側に位置する一対の線8a、8bの断面図である。
半導体集積回路と同様に、本発明による装置は、層に対し平行に延びる金属化導電線と絶縁層とを有する複数の層であって交互導電層(「メタライゼーションレベル」とも呼ばれる)を含む複数の層により作られる。メタライゼーションレベルは最も高いレベルから最も低いレベルまで順序付けられている(すなわち、第1のメタライゼーションレベルが最も高い)。
概して、各導電線は本明細書では導電ストリップとして示される。
各セル4は渦状態のナノディスクまたはプレートレットである。本明細書ではセル4はディスクのように成形されるが、渦状態が存在するので、別の形状(例えば、楕円または面平行な形状)を有するセルを有することも可能である。序論で既に述べたように、渦状態は、残留ナノ構造体の磁化の最も低いエネルギー磁気配位である。渦状態のセルは空間的に異質の磁気配位を有する(すなわち、磁化はセルの内部が位置する点に依存して異なる配向を有する)。図1に示すように、渦状態のセルC上の磁化の方向は、セル面内に位置しており、時計回りにまたは反時計回りに(ここでは時計回りが示される)回転する。セルの磁化は自然発生的に(すなわち、外部場なしに)現われ、磁化の円形的振る舞いは漏洩磁場の自然発生的最小化により説明される。したがって、磁化が回転する方向に依存して、渦状態のセルの磁化の第1の縮退が存在する。磁化がもはや向きを変えることができないセルの中心には特異点も存在する(領域V内の「渦コア」と呼ばれる)。この中央領域V(数ナノメートルの直径を有する)は、それ以下では磁化がもはや変化することができない最小長を定義する交換特性長Lex(すなわち、約5nm)にほぼ等しい寸法を有する。磁化は渦コアVの中では変化することができないので、磁化はセル面を垂直上方向(コアの磁化または極性pが+1である)または下方向(コアの磁化または極性pが−1である)のままにする傾向が有る。したがって、セル面に垂直な磁化を有する渦コア極性:上方向(p=+1)または下方向(p=−1)に基づく渦状態のセルの第2の縮退が存在する。これらの2つの状態p=+1とp=−1は、特に不揮発性メモリセルの生成を可能にする垂直静磁場に対し高度に安定した2つの状態であり、2つの極性pの一方は2進情報「1」に対応し、他方の極性pは2進情報「0」に対応する。渦コア極性を反転するための基板2に垂直な静磁場の典型的な振幅Hmaxは、室温における熱変動のエネルギーの約400倍のエネルギー障壁を表す約3000Oeである。数百エルステッドの外部平面静磁場の印加は、プレートレットから渦コアを取り出すのに十分と考えられる。これを克服するために、パーマロイ膜(または任意の他の高透磁率材料)を使用した単純なスクリーン装置を使用することができる。スクリーンはまた、寄生外部電磁波から保護することができる。
セルが渦状態となるセルの寸法に関する条件は、セルの厚さが交換長より大きいということと、セルの半径(楕円形の場合には小さい方の半径)がセルの厚さの2倍より大きいことと、を暗示する。好ましい実施形態では、セルのそれぞれの直径は10nm〜1.0μmであり、厚さtは3nm〜100nmである。さらに、アスペクト比β=t/Rは2以下である。
非限定的な例として、ここで検討されるメモリセル4は、ここでは1に等しいアスペクト比βに対して厚さt=50nmと半径R=50nmを有するナノディスクである。セル4は、低い磁気ロットと0.001〜0.003の低いギルバート磁気制動係数αとを有する軟磁性材料であるNiMnSb(ホイスラー合金)で作られる。
これらのセル4は例えば、基板2(通常は基板lnP(001))上の分子線エピタキシー(すなわちMBE)により得られる。
セル4の各水平行は単一の第3の導電線9内に配置され、第3の線は基板2上の水平方向にかつ互いに平行に配置される。
永久磁石3は基板3の下に配置され、例えば直径1cm、厚さ5mmのCoSm円柱の形式で作られ、基板平面に垂直な約600Oeの均一静磁場HLを生成する。もちろん、
本発明はこの幾何学的形状に限定されず、永久磁石3は他の方法で配置することができる。例えば、本発明による磁気記憶装置の第2の実施形態は図2に示す装置と同一であり、唯一の相違は、第2の実施形態は下部の永久磁石を有しないということと、この永久磁石が、永久バイアス磁場を生成するために使用される垂直磁化材料で作られた複数の線対で置換されるということである。各線対は一対の線8a、8bと一致し、線同士は絶縁層により電気的に絶縁される。本装置を形成する他の手段は、図2を参照し本発明で説明された手段と同一となるであろう。
セル4のそれぞれはその上面上で、対応する読み取り円錐7に接触している。
各円錐7は、対応するセル4と第2の線6との電気接点を提供する。第2の線6の上には第1の導電線5がある。
セル4毎に、セル4の下に位置する第3の線9とセル4の上に位置する第2の線6と第1の線5とのセル4の面内の投影はほぼセルのレベルに3つの交差線を与える。
それぞれの第1の線5は、例えば300nmの厚さを有するAu線である。第1のメタライゼーションレベルにより互いに平行に配置されるこれらの第1の導電線5は例えば厚さ50nmであるSi34保護層10(図2に示さず)上の蒸着により得られる。
既に述べたように、本発明による装置1はまた、第3のメタライゼーションレベルにより基板2上の波紋が付けられて配置された複数の導電線対8a、8bを含む。2つの線8a、8bの波紋によりセル4の形状を選択できるようにする(すなわち、2つの線8a、8bは2つの線間に位置するセルの方に延び、その後戻って一緒になる)。これらの波状導電線8a、8bは、例えば50nmの厚さを有するAuストリップであり、それが囲むセル4から線8a(8bそれぞれ)を分離する距離dは例えば100nmに等しい。
図4を参照して、本発明による装置1上に特定される(同図の円で囲まれた)セル4Lの平衡状態を読み取る方法を説明する。平衡状態を読み取ることは、円で囲まれたセル4Lの渦コアがセル面に垂直な上向き(p=+1)か下向き(p=−1)磁化を有するかを判断することを意味する。
永久磁石3は、セル4L面に垂直なバイアス静磁場HLを生成できるようにする。この
静磁場HLの存在は、その極性pが1または−1に等しい渦コアの旋回にそれぞれ対応す
る2つの異なる共振周波数fL,p=+1とfL,p=-1を得ることにより渦コアのジャイロ運動の縮退を解除できるようにする。
渦状態のセル4Lの固有線幅(intrinsic line width)を構成する静磁場HLの振幅は、差fL,P=+1−fL,P=-1がΔfより大きくなるように十分に高くな
ければならない。この固有線幅Δfは通常、10MHzに等しい。読み取りセルに印加されるkOeの垂直静磁場の振幅に基づくMHz単位のfp=+1とfp=-1の渦コアにおける旋回の共振周波数の変化を表すこの条件を図5に示す。低振幅静磁場が印加されると、2つの周波数は互いに分離され、ほぼ直線的に変化する。固有線幅Δfは周波数fL,p=-1に対しては濃いハッシュマークにより、そしてfL,P=+1に対しては濃いハッシュマークにより表される。単に例として、図5は、振幅HL=100Oeを有する静磁場に対し、2つの
周波数fL,1とfL,-1があることを示し、その差はΔfよりはるかに大きい。
したがって、好適な垂直静磁場を選択することにより、周波数により渦コアにおける旋回を選択的なものにすることが可能となる。
差がfL,P=+1−fL,P=-1>Δfとなるように静磁場振幅HLを有することは、次の不等
式により生成することができる。
L>Hmin=αHs、ここで、Hsは渦状態のセルの飽和磁場であり、αはギルバー
ト磁気制動係数である。磁気セルにNiMnSbを使用する例では、Hminはほぼ30Oeに等しい。位相書き込み中と位相読み取り中の両方で効率を増しかつエネルギー消費量を最小にする目的のために、αは最低限であることが本発明による装置では重要である。非限定的な例として、αを低減するための技術は、低い係数αを有するセルを含む材料を選択すること、エピタキシアル薄層を使用すること、非常に平らな界面を生成すること、界面の両側で大きなスピン拡散距離を有する材料(例えばCu、Al、Ag)を使用すること、そしてあまり薄くないプレートレット厚さと、からなる。
静磁場の振幅Hはまた、渦コアの極性反転を生じるであろう静磁場の振幅Hmax未満でなければならない。この値Hmaxはアスペクト比とHsの値とに弱依存する。使用さ
れる例では、β=1のアスペクト比を有するNiMnSbディスクを有すると、Hmaxは3000Oeにほぼ等しい。
セル4Lの上に位置する第1の線5Lでは、無線周波数電流iL,rfは2つの周波数fL,p=+1またはfL,P=-1のうちの1つにおいて読み取られる。以降、iL,rfの周波数はfL,P=+1に等しいと仮定する。電流iL,rfは、読み取られるセル4L面に対し面平行な第1の線5Lの下に直線偏波を有する動磁場を生成することになる。
直線偏波を有する無線周波数磁場を使用することにより、左右両方の円偏波磁場を含むことができる。
セル4Lの渦コアの極性pが1に等しいと仮定する。この場合、動磁場のバイアス周波数はfL,P=+1に等しいので、渦コアは2つの円偏波のうちの1つに結合することにより向きを変えることになる。渦コアの回転は、その直径が渦コアのほぼ旋回の直径であるセル(図3に示すように)のほぼ円筒状の中央領域11の局部加熱を生じることになる。
電流iL,rfは、本発明者らが読み取ろうとしているセルの極性を動磁場の力が反転させないように選択されなければならない。
このとき、読み取りは、セル4Lの上に位置する第2の線6Lを介しセル4L内に直流ilを注入することにより行われる。電流は、セル4Lの上に位置する円錐7Lを通り、
次にセル4Lを通り、最後にセル4Lの下の第3の線9Lを通る。円錐7Lは、電流il
が加熱中の領域11にだけ集中されるようにする。局部加熱はセル4Lの抵抗の増加をもたらす。
もちろん、セル4Lの渦コアの極性pが−1に等しい場合、動磁場の分波周波数はfL,P=+1に等しいので渦コアは実質的に向きを変えない。
また、その抵抗が円錐7Lと第2の線6L間の温度に敏感な界面(例えば、バナジウム酸化物)を加えることが可能である。
この読み取り方法によると、最初にiL,rfが流れその平衡状態がp=+1(動磁場の周波数fL,p=+1)の第1の線5Lの下に位置するセルのすべてが加熱され(極性の反転無しに)、次にその平衡状態を決定するために各セルの抵抗値が個々に読み取られる。
なお、セル内の情報を読み取るために他の周波数fL,p=+1またはfL,p=-1のうちの1つを使用してもよい。
要約すれば、本発明による装置1は、電流線を点接触7により渦コアを通るように導くことにより、2つの交差線6と9間の選択的輸送測定に基づき好ましくは共振極性を読み取る手段を含む。
読み取りは、静磁場HLにより導入されるp=+1とp=−1の極性を局所的に区別す
ることができる任意の他の方法により行うことができる。一例は、層6と円錐の層7との間に強磁性層を挿入する巨大磁気抵抗効果を利用することである。実施形態の一形式は、lL,rtが流れる経路(線6とコンタクト9間の)に従う垂直無線周波数電流と、ジャイロトロピックモードの励起による抵抗振動と、の組み合わせであるダイオード効果を利用することである。この場合、層6と円錐の層7間に挿入される磁性体層は面内に磁化を有しなければならない。
極性pを検出する別のより直接的な実施形態は、層6と円錐の層7間に挿入される磁性体層が固定面の外側に磁化を有することだろう。この場合、接触端子における電位降下がpに直接結び付けられる。
図6を参照し、本発明による装置1上に特定される(同図の円で囲まれた)セル4Eの平衡状態を書き込む機構について説明する。平衡状態を書き込むことは、セル4E内の平衡状態p=+1またはp=−1の配向を制御することを意味し、2つの状態のそれぞれは高安定であり、不揮発性メモリ状態の生成を可能にし、2つの極性pの一方は2進情報「1」に対応し、他の極性pは2進情報「0」に対応する。
図4を参照して先に述べたように、読み取り方法は、平衡状態(p=+1またはp=−1)にありかつ単一の第1の線上に位置するセルをすべて反転すること無く加熱することができる。したがって、書き込み時に選択的であるために、成分HOeを静垂直磁場HL
局所的に(情報を書き込もうとしているセル4Eの近傍に)加えなければならないと考えられ、これにより、書き込み中のセルの近傍のみの旋回周波数を動かすことができるようになる。これを行うために、セル4Eを囲む一対の線8aE、8bEを使用する。電流+iOeが線8aEに注入され、電流−iOeが線8bEに注入される。
セル4Eの近傍でHOeとHLを組み合わせるこの垂直静磁場HEの存在により、上向き(p=+1)から下向き(p=−1)へあるいは下向き(p=−1)から上向き(p=+1)へセル4Eの渦コアの極性を反転しようとしているかに依存して、2つの異なる周波数fE,p=+1とfE,p=-1を得ることができる。
読み取りに関しては、書き込み時に渦状態のセル4Lの線幅を構成する静磁場HEの振
幅は、差fE,p=+1−fE,p=-1がΔfEより大きくなるように十分に高くなければならない
。この線幅ΔfEは通常、使用される書き込み電流無線周波パルスiE,rfが読み取りに使
用される無線周波パルスiL,rfより短い期間を有する限り、固有線幅Δfより大きい。値ΔfEは通常、50ns電流パルスに対しては50MHzに等しい。
この現象を図5に示す。書き込み線幅ΔfEは、周波数fp=-1に対してはハッシュマー
クにより、周波数fp=+1に対しては薄い点線により表される。単に例として、図5は、振幅300Oeを有する静磁場HEに対し、2つの周波数fE,1とfE,-1があり、その差はΔfEよりはるかに大きいということを示す。セルレベルに磁場HE=300Oeを印加するために、先に選択された磁場HL=100OeにHoe=200Oe(エルステッド磁場)
を加えなければならない。これは、書き込みシーケンス中、一対の線8a、8bに約12mAの電流を通すことを必要とする。
静磁場(第1の静磁場)の振幅HEはまた、渦コアの極性の反転を生じる静磁場の振幅
Hmax未満でなければならない。
OeとHLを合成した垂直静磁場HEがセル4Eの近傍に存在すると、「0」(p=−1)または「1」(p=+1)を書き込もうしているかに依存して2つの周波数fE,P=+1またはfE,P=-1の一方の周波数に無線周波数を有する電流iE,rfを、本発明者らが書き込もうとしているセル4Eの上の第1の線5Eに注入する。値p=−1を有する渦コアの極性を「書き込もう」としていると以降仮定する。したがって、ここではiE,rfの周波数はfE,p=+1に等しい。第1の線5E上で、この電流iE,rfは、書き込もうとしているセル4Eに対し面平行な直線偏波を有する動磁場を生成する。
直線偏波を有する無線周波数磁場を使用することにより、左右両方の円偏波を含むことができる。
セル4Eの渦コアの極性pは+1に等しいと仮定する。この場合、動磁場の分波周波数はfE,p=+1に等しいので、渦コアは2つの円偏波のうちの1つに結合することにより向きを変えることになる。旋回半径が増加すると、コアの変位速度もまた、渦コアにおける磁化の反転を引き起こす臨界速度に達するまで増加する。コアの極性が反転される(p=−1)と、渦コアはもはやrf周波数磁場fE,P=+1に結合されないので渦コアは中央の平衡位置に戻る。電流iE,rfはもちろん、動磁場の力がセル4Eの極性を反転するように選択される。本発明者らはコアの極性をp=+1からp=−1へ切り替えることを説明した。次に、セル4Eの渦コアの初期極性pが−1に等しいと仮定する。この場合、動磁場の分波周波数はfE,p=+1に等しいので、渦コアは実質的には向きを変えない。したがって、渦コアの極性は−1のままとなる。
したがって、周波数fE,p=+1の動磁場(直線偏波を有し、セル4Eに面平行な)の存在により、セル4Eにp=−1を書き込むことになる。
書き込み中のエネルギー消費量を最適化するためには、無線周波数電流パルスの持続時間の間だけ一対の線8a、8bに電流を印加することが好ましい。線5Eに送られるrfパルスには最適の長さ、振幅、周波数、形状がある。最適化戦略は、パルスの形状のアポダイゼイションまたは一連のパルスの使用を含む。パルスの最適周波数は、渦コアを反転するために必要とされる励起電力に影響を与える非線形効果によるジャイロトロピックモードの共振周波数に比し低い周波数にシフトされる。書き込みシーケンス中に周波数を走査するために非線形効果を取り入れたパルスの使用もまた、効率を改善する。
逆に、周波数fE,p=+1以外の周波数fE,P=-1における動磁場の存在(直線偏波を有し、セル4Eに面平行)は、セル4Eへp=−1を書き込むことになる。
垂直磁場の静的成分HEを加えることにより、本発明者らは、第1の極性(例えば、p
=+1)が第2の極性(例えば、p=−1)より速く向きを変えるように周波数弁別を導入する。したがって、下から上方向にコアの磁化を反転するのに必要とされる無線周波数磁場の共振周波数は、上から下方向にコアの磁化を反転するのに必要とされる無線周波数磁場と異なる。このような装置の利点は、セルに情報を書き込むための周波数を選択的に制御できるようにするということである。
本発明者らは、情報を書き込もうとしているセル4Eに対してだけ書き込むことができる。換言すれば、セル4Eの近傍に位置するセルに不注意に書き込む危険性は、以下のいくつかの理由のために非常に低い。
−同じ第1の線5E上に存在しないセルは、その面に平行な動磁場に、あるいはrf励起に動結合するのに必要な振幅に、左右されない。
−同じ第1の線5E上に存在するセルは一対の線8aE、8bEで囲まれず、線8aE、8bEにより生成される静的成分HOeはそれらのセルの近傍におけるHLを回避する傾
向があり、それらの周波数をfE,P=+1とfE,P=-1から延ばしてそれらのセルを動磁場に対し鈍感にする。
図5を参照すると、静磁場の振幅HEは、渦コアの2つの旋回の共振周波数fE,1とfE,-1に正確に対応するように選択される。しかしながら、本発明者らはまた、振幅HE未満
である静磁場の振幅Hiを有することができる。この場合、使用される周波数fE,1とfE,-1は、旋回の共振周波数にもはや正確には等しくない。その代りに、これらにはわずかにオフセットが与えられる。第1の周波数fE,1は、p=+1に対する渦コアの旋回の共振
周波数と、この共振周波数と線幅の半分ΔfE/2の和との間にある。第2の周波数fE,-1は、p=−1に対する渦コアの旋回の共振周波数と、この共振周波数と線幅の半分ΔfE/2の差との間にある。これらの周波数は、旋回の共振周波数とはわずかに異なるので、渦コアにおける旋回を引き起こすのにさほど有効でなくなる。したがって、第1の線に注入される無線周波数電流の電力を増加しなければならない。しかしながら、一対の線8a、8bに注入される電流は低減されるので、書き込みシーケンス中に節約されるエネルギーが重要になる可能性がある。Hl=150Oeの場合、磁場Hoe=50Oeを磁場HL=100Oeに合成する必要がある。これには、前に使用した磁場HEと比較して16倍
の省エネルギーのために、一対の線8a、8bに3mAの電流を注入する必要がある。
周波数p=+1とp=−1との差は、垂直静磁場とプレートレットの幾何学的形状との両方に正比例する。本発明は、共振現象を利用するので、セルの均一性に関する制約条件を生じる。磁場の均一性は、永久巨視的磁石が基板の背後に置かれる推奨解決策では、実現するのが容易である。本出願人は、同一公称直径を有する異なるディスクの共振周波数の分布が電子リソグラフィにおいて技術的に低く、10MHzを超えないということを実験を通して検証した。
もちろん、本発明は今述べた実施形態に限定されない。
具体的には、本発明による装置では、セルを、例えば異なる直径を有するディスクを使用することにより書き込むための異なる対の共振周波数を有する様々な大きさの複数レジスタセルで置換することも可能である。通常、2つのセルに対し、本発明者らは、第1のセルに「0」または「1」を書き込むために2つの周波数を、第1のセルに重なる別のセルに「0」または「1」を書き込むために他の2つの周波数を使用するだろう。これによ
り、2ビット情報を符号化するための1つのメモリセルが得られる。
また、静磁場の第2の成分を生成できるようにする対の線は、波紋形状(セルの軸対称を維持する)を有するものとして説明されたが、本発明者らはまた、対の直線を使用することを考えることもできる。
本発明者らはまた、一様な周波数を越えて共振周波数を増加させるであろうピン止め欠陥をコア内に自発的に導入することを想像することもできる。異なるセルの特徴間の均一性のより良好な制御を得るためにこれらの欠陥を使用することができるかもしれない。

Claims (22)

  1. 基板(2)上の平坦な磁気セル(4)のネットワークを含む磁気記憶装置(1)であって、各磁気セル(4)の寸法は前記セル(4)が渦状態となるように選択され、各セルの渦コアは、反対方向でありかつ前記セル(4)の面にほぼ垂直な第1と第2の平衡位置のいずれかの磁化を有し、前記2つの位置のそれぞれが一個の2進情報を表す、磁気記憶装置(1)において、前記装置(1)は、
    前記セルに格納される2進情報を書き込む手段(3、5、8a、8b)を含み、前記書き込み手段(3、5、8a、8b)は、各セル(4)の近傍において、
    −前記セル(4)面にほぼ垂直なバイアスを有する第1の静磁場と、
    −前記セル(4)面にほぼ平行な左右2つの円偏波を含む直線偏波を有する無線周波数磁場と、
    を選択的にかつ同時に印加する手段を含み、これにより、
    −選択された前記セル(4)上の第1の周波数における前記第1の静磁場と前記無線周波数磁場の同時の印加が、
    ○前記第1の平衡位置の周囲の前記コアの円運動の影響下で、前記第2の平衡位置に向かう、前記第1の平衡位置にある前記渦コアの磁化方向の切り換えを生じ、前記磁化の反転を引き起こし、前記渦コアは2つの円偏波の1つに結合されることにより回転し、
    ○前記第2の平衡位置にある前記渦コアの前記磁化方向を維持させ、
    −前記選択されたセル(4)上の前記第1の周波数とは異なる第2の周波数における前記第1の静磁場と前記無線周波数磁場の同時の印加が、
    ○前記第2の平衡位置の周囲の前記コアの円運動の影響下で、前記第1の平衡位置に向かう、前記第2の平衡位置にある前記渦コアの磁化方向の切り換えを生じ、前記磁化の反転を引き起こし、前記渦コアは2つの円偏波の1つに結合されることにより回転し、
    ○前記第1の平衡位置にある前記渦コアの磁化方向を維持させることを特徴とする、装置(1)。
  2. 前記セル(4)上に格納された2進情報を読み取る手段(3、5)を含み、前記読み取り手段(3、5)は、
    −読み取られる前記セル(4)の近傍で、
    ○前記セル(4)面にほぼ垂直なバイアスを有する第2の静磁場と、
    ○前記セル(4)面にほぼ平行な直線偏波を有する無線周波数磁場と、を同時に印加する手段であって、これにより、前記無線周波数磁場の周波数が第3の周波数に等しい場合、前記第2の静磁場と前記無線周波数磁場とを前記選択されたセル(4)上に同時に印加することで、
    ○前記第1の平衡位置の周囲の前記第1の平衡位置にある前記渦コアの円運動の励起に対応する前記選択されたセル(4)による無線周波電力の吸収をもたらし、この無線周波数吸収が、磁化反転を生じない局部加熱をもたらし、
    ○前記第2の平衡位置にある前記渦コアの前記磁化方向を維持させる、手段
    −前記セル内に読み取りプローブ電流を選択的に注入する手段(6、7、9)
    を含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
  3. 前記第1の静磁場と前記第2の静磁場の振幅Hは、Hmin<H<Hmaxとなるようにされ、ここで、
    −Hminは、Hsで表される共振周波数線の幅を意味する積αHsに等しく、Hsは前
    記渦状態セルの飽和磁場を意味し、αはギルバート磁気制動係数を意味し、
    −Hmaxは、前記渦コアの前記磁化方向の反転を生じるであろう前記静磁場の振幅を意味することを特徴とする、請求項2に記載の装置。
  4. 前記第1の静磁場の振幅は前記第2の静磁場の振幅より大きいことを特徴とする、請求
    項2または3に記載の装置(1)。
  5. 前記セル内に選択的にプローブ読み取り電流を注入する前記手段(6、7、9)は、読み取られる前記セル(4)の前記渦コア(11)の周囲の領域を介し電流を循環させるための点接触を含むことを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載の装置(1)。
  6. 前記書き込み手段(3、5、8a、8b)は、前記セル(4)の近傍に配置された複数の並列の第1の導電線(5)を含み、前記線(5)のそれぞれは、前記線(5)の下に位置する前記セル(4)面にほぼ平行な前記第1の周波数または前記第2の周波数における直線偏波無線周波数磁場の印加のための前記第1の周波数または前記第2の周波数における等しい周波数の電流を受け取ることができることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置(1)。
  7. 前記複数の第1の線(5)のそれぞれは、前記線の下に位置する前記セル面にほぼ平行な前記第3の周波数に直線偏波無線周波数磁場を印加するための前記第3の周波数に等しい周波数の電流を受け取ることができることを特徴とする、請求項2または6に記載の装置(1)。
  8. 前記書き込み手段は、前記セル(4)の近傍の単一面に配置された複数の対の導電線(8a、8b)を含み、前記単一の対の線はセルの行の両側に配置され、前記線のそれぞれは直流を受け取ることができ、これにより、単一対の2つの連続線(8a、8b)が、前記2つの連続線間に配置された前記セルの近傍の前記セル面にほぼ垂直な前記第1のバイアス静磁場の成分の印加のための反対方向の電流を受け取ることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置(1)。
  9. 単一対の2つの線(8a、8b)は、前記2つの線間に配置された前記セルを囲むように波紋が付けられることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
  10. 前記書き込み手段(3、5、8a、8b)は、前記セル面にほぼ垂直な前記第1の静バイアス磁場の成分の印加のための前記基板(2)に平行な永久磁石(3)を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置(1)。
  11. 前記永久磁石は前記基板の下に配置され、BiMn、AlNiCoまたはRCo等の材料で作られ、ここでR=Y、La、Pr、Nd、またはSmであることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
  12. 前記永久磁石は、垂直異方性を有する磁性体層の形式で作られることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
  13. 前記第2の静磁場を印加する前記手段は、前記基板に平行な前記永久磁石により形成されることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項または請求項2に記載の装置。
  14. 前記セルは、0.03以下のギルバート磁気制動係数を有する強磁性体材料で作られることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置。
  15. 前記セルは、0.0001以上のギルバート磁気制動係数を有する強磁性体材料で作られることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の装置。
  16. 前記セルは、
    −NiFe合金のような合金と、
    −NiMnSb、CO2MnSi、またはCO2MnAlのようなホイスラ合金等の金属単結晶、あるいはFeのような純金属等と、
    −GaMnAs等の磁性半導体と、
    −ボロメータ検出器として働く導電層により覆われたY3Fe512またはFe34等の絶縁単結晶と、
    の中から選択される強磁性体材料で作られることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の装置。
  17. 前記セルのそれぞれは円形、楕円、または面平行な形状を有することを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の装置。
  18. 前記各セルの最小寸法(円形セルの場合には直径、楕円セルの場合には2つの直径の小さい方、面平行セルの場合には長さ)は10nm〜1μmであることを特徴とする、請求項17に記載の装置。
  19. 前記セルのそれぞれは、3nm〜100nmの厚さを有することを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載の装置。
  20. 前記セルのそれぞれは2以下のアスペクト比βを有することを特徴とする、請求項1〜19のいずれか一項に記載の装置。
  21. 前記第1の周波数は、その第1の平衡位置の渦コアにおける旋回の共振周波数にほぼ等しく、前記第2の周波数は、その第2の平衡位置の渦コアの旋回の共振周波数にほぼ等しいことを特徴とする、請求項1〜20のいずれか一項に記載の装置。
  22. −前記第1の周波数は、その第1の平衡位置の渦コアの旋回の共振周波数以上、かつその第1の平衡位置の渦コアの旋回の前記共振周波数と、その第1の平衡位置の渦コアの旋回の前記共振周波数の線幅の半分との和以下であり、
    −前記第2の周波数は、その第2の平衡位置の渦コアの旋回の共振周波数以下、かつその第2の平衡位置の渦コアの旋回の前記共振周波数と、その第2の平衡位置の渦コアの旋回の前記共振周波数の線幅の半分との差以上であることを特徴とする、請求項1〜20のいずれか一項に記載の装置。
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