JP2012524544A - プロスタグランジンF2アルファ(PGF2a)を産生する細胞系およびその使用 - Google Patents
プロスタグランジンF2アルファ(PGF2a)を産生する細胞系およびその使用 Download PDFInfo
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Abstract
hCox−2酵素を発現するように遺伝子改変され、それにより、細胞においてプロスタグランジンF2アルファ(PGF2a)が上方制御される、細胞および細胞系が得られた。そのような細胞または細胞系を含有する、PGF2aを送達することができるカプセル化細胞療法デバイス、ならびにPGF2aを眼に送達するため、および眼の障害に罹患している患者において眼の障害を治療するためにこれらのデバイスを使用する方法も記載されている。
Description
関連出願
本願は、2009年4月23日に出願された米国仮特許出願61/171,921号への優先権を主張し、この米国仮特許出願は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
本願は、2009年4月23日に出願された米国仮特許出願61/171,921号への優先権を主張し、この米国仮特許出願は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
発明の分野
本発明は、概して、カプセル化細胞療法の分野に関する。
本発明は、概して、カプセル化細胞療法の分野に関する。
発明の背景
多くの臨床状態、欠乏症および病態は、生細胞によって産生される1種または複数種の生物活性分子を患者に与えることによって、または、生細胞によって代謝される有害因子を患者から除去することによって、改善または軽減することができる。多くの場合、これらの分子により、器官または組織の機能の欠陥または損失を回復させる、または代償することができる。したがって、多くの研究者が、分泌産物をもたらす、または代謝機能に影響を与える全器官、器官組織、および/または細胞を移植することによって器官または組織の機能を再構成することを試みている。しかし、そのような移植によって劇的な利点がもたらされる一方、その適用は、グラフティングに適し、利用可能な比較的少数の器官に限定される。さらに、一般に、移植患者は、移植片の機能の損失および移植された組織または細胞の最終的な壊死を招く移植片の免疫拒絶反応を防ぐために免疫抑制されなければならない。同様に、多くの場合、移植片は長い間、患者の残りの寿命までもの間、機能性のままでなければならない。かなりの期間、患者を免疫抑制された状態に維持することは、望ましくなく、費用もかかる。
多くの臨床状態、欠乏症および病態は、生細胞によって産生される1種または複数種の生物活性分子を患者に与えることによって、または、生細胞によって代謝される有害因子を患者から除去することによって、改善または軽減することができる。多くの場合、これらの分子により、器官または組織の機能の欠陥または損失を回復させる、または代償することができる。したがって、多くの研究者が、分泌産物をもたらす、または代謝機能に影響を与える全器官、器官組織、および/または細胞を移植することによって器官または組織の機能を再構成することを試みている。しかし、そのような移植によって劇的な利点がもたらされる一方、その適用は、グラフティングに適し、利用可能な比較的少数の器官に限定される。さらに、一般に、移植患者は、移植片の機能の損失および移植された組織または細胞の最終的な壊死を招く移植片の免疫拒絶反応を防ぐために免疫抑制されなければならない。同様に、多くの場合、移植片は長い間、患者の残りの寿命までもの間、機能性のままでなければならない。かなりの期間、患者を免疫抑制された状態に維持することは、望ましくなく、費用もかかる。
さらなる良好な療法が依然として必要とされているいくつもの視力を脅かす眼の障害が存在する。そのような疾患の治療における1つの主要な問題は、眼内に治療剤を送達し、そこで治療剤を治療有効濃度で維持することができないことである。
多くの成長因子について、視覚疾患を治療することにおける見込みが示されている。例えば、種々の動物モデルにおいて、BDNFおよびCNTFによって網膜神経節細胞の変性が遅くなり、光受容器の変性が減少することが示されている。例えば、非特許文献1を参照されたい。さらに、神経成長因子により、視神経を切開した後の網膜神経節細胞の生存が増大することが示されており、また、神経成長因子によって虚血後の網膜ニューロンの回復が促進されることも示されている。例えば、非特許文献2を参照されたい。さらに、カプセル化細胞を使用して、ヒトの眼にCNTFが首尾よく送達されている(非特許文献3(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
移植手順に対する望ましい代替は、体の関門内への細胞または組織の埋め込みであり、それにより、栄養分、代謝産物および分泌産物の拡散が可能になるが、免疫拒絶反応の細胞性エフェクターおよび分子性エフェクターは遮断される。選択された産物を産生する組織または細胞を免疫系から保護する種々のデバイスが探究されている。例えば、そのそれぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、特許文献1;特許文献2;特許文献3;および特許文献4を参照されたい。これらのデバイスとしては、例えば、血管外拡散チャンバー、血管内拡散チャンバー、血管内限外濾過チャンバーおよびマイクロカプセル化細胞の埋め込みが挙げられる。非特許文献4を参照されたい。例えば、非特許文献5;非特許文献6;特許文献5;および特許文献6を参照されたい。そのようなデバイスを使用することにより、患者を免疫抑制された状態に維持する必要性が軽減される。しかし、これらの手法はいずれも長期的な移植片の機能をもたらすために十分でない。
Genetic Technology News、13巻、1号(1993年1月)
Siliprandiら、Invest. Ophthalmol. & Vis. Sci.34巻、3232〜3245頁(1993年)
Sievingら、PNAS 103巻(10号):3896〜901頁(2006年)
Scharp,D. W.ら、World J. Surg.、8巻、221〜9頁(1984年)
Limら、Science 210巻:908〜910頁(1980年)
Sun,A. M.、Methods in Enzymology 137巻:575〜579頁(1988年)
したがって、適量の、例えば、神経栄養因子、抗血管新生因子、抗炎症因子、酵素、ホルモンおよび/または他の因子などの必要物質を送達する、または、眼に、他の必要代謝機能を長時間提供する方法が必要とされている。
発明の要旨
本発明は、配列番号1の核酸配列を含む、または配列番号1の核酸配列からなる発現ベクターを提供する。発現ベクターは、配列番号2のアミノ酸配列を含む、または配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする核酸分子を含むことが好ましい。さらに、発現ベクターは、配列番号2の配列と少なくとも95%同一な配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子を含んでよい。あるいは、核酸分子は、そのような核酸分子の相補物(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、ヌクレオチド類似体を使用して生成したDNA類似体またはRNA類似体、ならびにそれらの誘導体、断片および相同体であってよい。核酸分子は単一であってよい。
本発明は、配列番号1の核酸配列を含む、または配列番号1の核酸配列からなる発現ベクターを提供する。発現ベクターは、配列番号2のアミノ酸配列を含む、または配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする核酸分子を含むことが好ましい。さらに、発現ベクターは、配列番号2の配列と少なくとも95%同一な配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子を含んでよい。あるいは、核酸分子は、そのような核酸分子の相補物(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、ヌクレオチド類似体を使用して生成したDNA類似体またはRNA類似体、ならびにそれらの誘導体、断片および相同体であってよい。核酸分子は単一であってよい。
「単離された」核酸分子は、その核酸の天然源に存在する他の核酸分子から分離された核酸分子である。「単離された」核酸は、その核酸を得た生物体のゲノムDNA内の核酸に天然に隣接する配列(すなわち、その核酸の5’末端および3’末端に位置する配列)を含まないことが好ましい。例えば、種々の実施形態では、本発明の核酸分子は、約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kb未満の、その核酸を得た細胞のゲノムDNA内の核酸分子に天然に隣接するヌクレオチド配列を含有してよい。さらに、cDNA分子などの「単離された」核酸分子は、組換え技法によって産生される場合は他の細胞材料または培地を、または、化学的に合成される場合は化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まなくてよい。
本発明の核酸分子(例えば、配列番号1のヌクレオチド配列を有する核酸分子、配列番号2の配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子、またはこれらのヌクレオチド配列のいずれかの相補物)は、標準の分子生物学的技法および本明細書において提供される配列情報を使用して単離することができる。これらの核酸配列の全てまたは一部を使用して、ハイブリダイゼーションプローブ、ポリペプチドを、標準のハイブリダイゼーション技法およびクローニング技法を使用して単離することができる(例えば、Sambrookら(編)、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989年;およびAusubelら(編)、CURRENT PRPTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley & Sons、New York、NY、1993年に記載の通り)。
本明細書に記載の核酸はいずれも、標準のPCR増幅技法に従い、cDNA、mRNAまたはその代わりにゲノムDNAを鋳型として、および適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して増幅することができる。そのように増幅された核酸を適切なベクターにクローニングし、DNA配列解析によって特徴づけすることができる。さらに、hCox−2ヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドを、標準の合成技法によって、例えば、自動DNA合成機を使用して調製することができる。
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、一連の連結したヌクレオチド残基を指し、オリゴヌクレオチドはPCR反応に使用するために十分な数のヌクレオチド塩基を有する。短いオリゴヌクレオチド配列はゲノムDNA配列またはcDNA配列に基づく、またはゲノムDNA配列またはcDNA配列から設計することができ、特定の細胞または組織における同一の、類似の、または相補的なDNAまたはRNAの存在を増幅、確認、または明らかにするために使用される。オリゴヌクレオチドは、約10nt、50ntまたは100ntの長さ、好ましくは約15nt〜30ntの長さを有する核酸配列の一部分を含む。一実施形態では、長さ100nt未満の核酸分子を含むオリゴヌクレオチドは、少なくとも6つの近接する配列番号1のヌクレオチドまたはその相補物をさらに含む。オリゴヌクレオチドは、化学的に合成することができ、プローブとして使用することができる。
他の実施形態では、単離された核酸分子は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列の相補物である核酸分子を含む。これらのヌクレオチド配列と相補的な核酸分子は、ミスマッチがほとんどなく、またはミスマッチなく水素結することができ、したがって安定な二重鎖を形成するヌクレオチド配列と十分に相補的な核酸分子である。
本明細書で使用される「相補的な」という用語は、核酸分子のヌクレオチド単位間のワトソンクリック塩基対またはフーグスティーン塩基対を指し、「結合」という用語は、2つのポリペプチドもしくは化合物、または関連するポリペプチドもしくは化合物またはそれらの組合せの間の物理的または化学的な相互作用を意味する。結合としては、イオン性相互作用、非イオン性相互作用、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用などが挙げられる。物理的な相互作用は、直接的または間接的であってよい。間接的な相互作用は、別のポリペプチドまたは化合物の作用を介してよい、またはそれに起因してよい。直接結合は、別のポリペプチドまたは化合物の作用を介して、またはそれに起因して起こらないが、その代わり他の実質的な化学中間体を伴わない相互作用を指す。
さらに、核酸分子は、配列番号1の核酸配列の一部分、例えば、プローブまたはプライマーとして使用することができる断片またはhCox−2酵素の生物活性がある一部分をコードする断片のみを含んでよい。本明細書において提供される断片は、それぞれ核酸については特異的なハイブリダイゼーションを可能にするのに十分な長さである少なくとも6つの(近接する)核酸配列、またはアミノ酸についてはエピトープの特異的な認識を可能にするのに十分な長さである少なくとも4つの(近接する)アミノ酸配列であり、最大で全長配列未満の、一部分の配列として定義される。断片は、選択された核酸配列またはアミノ酸配列の任意の近接する一部分に由来するものであってよい。誘導体は、元の化合物から、直接または修飾もしくは部分的な置換によってのいずれかで形成された核酸配列またはアミノ酸配列である。類似体は、元の化合物と類似するが、同一ではない構造を有し、ある特定の成分または側鎖に関して元の化合物と異なる核酸配列またはアミノ酸配列である。類似体は、合成、または異なる進化的起源由来であってよく、野生型と比較して類似した、または反対の代謝活性を有してよい。相同体は、異なる種から得た特定の遺伝子の核酸配列またはアミノ酸配列である。
誘導体および類似体は、誘導体または類似体が、修飾された核酸またはアミノ酸を含有する場合、全長または全長以外であってよい。本発明の核酸またはタンパク質の誘導体または類似体としては、これだけに限定されないが、種々の実施形態において、同一サイズの核酸配列またはアミノ酸配列にわたって、または当技術分野で公知のコンピュータ相同性プログラムによって行う整列化において整列させた配列と比較した場合、少なくとも約30%、50%、70%、80%または95%の同一性まで(好ましい同一性は80〜95%である)本発明の核酸またはタンパク質と実質的に相同な領域を含む分子、または、それがコードする核酸が、ストリンジェントな条件下、中程度にストリンジェントな条件下、または低ストリンジェントな条件下で上述のタンパク質をコードする配列の相補物とハイブリダイズすることができる分子が挙げられる。例えば、Ausubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley & Sons、New York、NY、1993年および以下を参照されたい。
本発明は、さらに、遺伝暗号の縮重によって配列番号1に示されるヌクレオチド配列とは異なり、したがって配列番号1に示されるヌクレオチド配列によってコードされるhCox−2酵素と同じhCox−2酵素をコードする核酸分子を包含する。
別の実施形態では、単離された核酸分子は、長さが少なくとも6ヌクレオチドであり、配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。別の実施形態では、核酸は、長さが少なくとも10、25、50、100、250、500、1000、1500、2000ヌクレオチド、またはそれ以上である。別の実施形態では、単離された核酸分子は、例えば配列番号1のコード領域とハイブリダイズする。
本明細書で使用される「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」という用語は、互いと少なくとも60%相同であるヌクレオチド配列が概して互いにハイブリダイズしたままであるハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を説明するものとする。さらに、本明細書で使用される「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」というフレーズは、プローブ、プライマーまたはオリゴヌクレオチドがその標的配列とハイブリダイズするが、他の配列にはハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、異なる状況においては異なる。長い配列は、短い配列よりも高い温度で特異的にハイブリダイズする。一般に、ストリンジェントな条件は、定義済みのイオン強度およびpHにおける特異的な配列の熱融点(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。Tmは、標的配列と相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列とハイブリダイズする温度(定義済みのイオン強度、pHおよび核酸濃度の下で)である。標的配列は一般に過剰に存在するので、Tmにおいて、プローブの50%が平衡状態で占有される。一般には、ストリンジェントな条件は、pH7.0〜8.3で塩濃度が約1.0Mのナトリウムイオン未満、一般には約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン(または他の塩)かつ温度が、短いプローブ、プライマーまたはオリゴヌクレオチド(例えば、10nt〜50nt)に対しては少なくとも約30℃、長いプローブ、プライマーおよびオリゴヌクレオチドに対して少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤を添加することによっても実現することができる。
ストリンジェントな条件は当業者に公知であり、Ausubelら(編)、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley & Sons、N.Y.(1989年)、6.3.1〜6.3.6において見ることができる。この条件は、少なくとも約65%、70%、75%、85%、90%、95%、98%または99%互いと相同な配列が概して互いにハイブリダイズしたままになるような条件であることが好ましい。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例は、6×SSC、50mMのTris−HCl(pH7.5)、1mMのEDTA、0.02%のPVP、0.02%のフィコール、0.02%のBSAおよび500mg/mlの変性サケ精子DNAを含む高塩濃度の緩衝液中、65℃でのハイブリダイゼーション、その後、0.2×SSC、0.01%のBSA中、50℃での1回または複数回の洗浄である。中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例は、6×SSC、5×デンハート液、0.5%のSDSおよび100mg/mlの変性サケ精子DNA中、55℃でのハイブリダイゼーション、その後、1×SSC、0.1%のSDS中、37℃での1回または複数回の洗浄である。使用することができる他の中程度にストリンジェントな条件は、当技術分野で周知である。例えば、Ausubelら(編)、1993年、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley & Sons、NYおよびKriegler、1990年、GENE TRANSFER AND EXPRESSION、A LABORATORY MANUAL、Stockton Press、NYを参照されたい。低ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例は、35%のホルムアミド、5×SSC、50mMのTris−HCl(pH7.5)、5mMのEDTA、0.02%のPVP、0.02%のフィコール、0.2%のBSA、100mg/mlの変性サケ精子DNA、10%(wt/vol)のデキストラン硫酸中、40℃でのハイブリダイゼーション、その後、2×SSC、25mMのTris−HCl(pH7.4)、5mMのEDTAおよび0.1%のSDS中、50℃での1回または複数回の洗浄である。使用することができる他の低ストリンジェントな条件は当技術分野で周知である(例えば、異種間のハイブリダイゼーションに使用するような)。例えば、Ausubelら(編)、1993年、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley & Sons、NYおよびKriegler、1990年、GENE TRANSFER AND EXPRESSION、A LABORATORY MANUAL、Stockton Press、NY;Shilo and Weinberg、1981年、Proc Natl Acad Sci USA 78巻:6789〜6792頁を参照されたい。
本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドと少なくとも80%同一な単離されたポリペプチドにも関する。あるいは、単離されたポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドの断片(すなわち、少なくとも6つの近接するアミノ酸)と少なくとも80%相同である。さらに、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドの誘導体、類似体または相同体と少なくとも80%相同な単離されたポリペプチドも含む。同様に、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドの天然に存在する対立遺伝子変異体と少なくとも80%同一な単離されたポリペプチドも提供する。当業者は、そのようなポリペプチドが配列番号1の核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる核酸分子によってコードされるべきであることを認識されたい。
本明細書で使用される「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、互換的であるものとする。本発明は、その残基のいずれかが配列番号2に示される対応する残基から変化してよいが、それでもPGF2aを上方制御する活性および生理機能を維持するポリペプチドまたはその機能性断片をコードする突然変異体または変異体のhCox−2酵素も含む。突然変異体または変異体のタンパク質では、20%以上に至るまでの残基が変化してよい。
一般に、PGF2aを上方制御する機能を保つhCox−2酵素の変異体は、配列の特定の位置における残基が他のアミノ酸によって置換されている任意の変異体を含み、さらなる1つの残基または複数の残基が親タンパク質の2つの残基の間に挿入される可能性をさらに含み、さらに、1つまたは複数の残基が親配列から欠失する可能性も含む。任意のアミノ酸の置換、挿入または欠失が本発明に包含される。好ましい状況では、置換は保存的な置換である。
当業者は、本発明が、単離されたポリペプチドおよび生物活性があるその一部分、またはそれらの誘導体、断片、類似体もしくは相同体にも関することを認識されたい。本明細書に記載のポリペプチドは、細胞性供給源または組織供給源から、標準のタンパク質精製の技法を使用した適切な精製スキームによって単離することができる。他の実施形態では、本発明のポリペプチドは、組換えDNA技法によって産生される。
「単離された」もしくは「精製された」ポリペプチドまたは生物活性があるその一部分は、細胞材料または他の、ポリペプチドを得る細胞性供給源または組織供給源由来の汚染タンパク質または汚染ポリペプチドを実質的に含まない、または、化学的に合成される場合は、化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない。「実質的に細胞材料を含まない」という言葉は、ポリペプチドが単離されたまたは組換えによって産生された細胞の細胞成分からポリペプチドが分離されている、ポリペプチドの調製物を含む。例えば、「実質的に細胞材料を含まない」という言葉は、約30%未満(乾燥重量で)の非hCox−2酵素(本明細書では「汚染タンパク質」とも称される)、より好ましくは約20%未満の非hCox−2酵素、さらに好ましくは約10%未満の非hCox−2酵素および最も好ましくは約5%未満の非hCox−2酵素を有するhCox−2酵素の調製物を含む。ポリペプチドまたは生物活性があるその一部分が組換えによって産生される場合、実質的に培地を含まない、すなわち、培地がタンパク質調製物の容積の約20%未満、より好ましくは約10%未満および最も好ましくは約5%未満を示すことも好ましい。
同様に、「化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という言葉は、ポリペプチドが、ポリペプチドの合成に関与する化学的前駆体または他の化学物質から分離されているポリペプチドの調製物を含む。例えば、「化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という言葉は、約30%未満(乾燥重量で)の化学的前駆体または非hCox−2酵素化学物質、より好ましくは約20%未満の化学的前駆体または非hCox−2酵素化学物質、さらに好ましくは約10%未満の化学的前駆体または非hCox−2酵素化学物質、および最も好ましくは約5%未満の化学的前駆体または非hCox−2酵素化学物質を有するhCox−2酵素の調製物を含む。
本発明のポリペプチドの生物活性のある一部分は、hCox−2酵素のアミノ酸配列と十分に相同な、またはhCox−2酵素のアミノ酸配列から得たアミノ酸配列、例えば、本明細書に記載の全長ポリペプチドよりも少ないアミノ酸を含み、少なくとも1つのhCox−2酵素の活性(例えば、PGF2aの産生を上方制御すること)を示す、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むペプチドを含む。一般には、生物活性がある一部分は、少なくとも1つのhCox−2酵素の活性を有するドメインまたはモチーフを含む。
2つのアミノ酸配列または2つの核酸の相同性の百分率を決定するために、配列を最適な比較のために整列させる(例えば、第2のアミノ酸配列または核酸配列と最適な整列化をするために第1のアミノ酸配列または核酸配列にギャップを導入することができる)。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列の位置が、第2の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドに占有されていれば、その分子はその位置において相同である(すなわち、本明細書で使用されるアミノ酸または核酸の「相同性」は、アミノ酸または核酸の「同一性」と同等である)。
核酸配列の相同性は、2つの配列間の同一性の程度として決定することができる。相同性は、GCGプログラムパッケージの中に提供されるGAPソフトウェアなどの当技術分野で公知のコンピュータプログラムを使用して決定することができる。NeedlemanおよびWunsch 1970年 J Mol Biol 48巻:443〜453頁を参照されたい。「配列同一性」という用語は、2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列が、特定の比較領域にわたって残基ごとベースで同一である程度を指す。「配列同一性の百分率」という用語は、その比較領域にわたって2つの最適に整列させた配列を比較し、両方の配列において生じる同一な核酸塩基(例えば、核酸の場合、A、T、C、G、U、またはI)の位置の数を決定してマッチした位置数をもたらし、マッチした位置の数を比較領域位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割り、その結果に100を掛けて配列同一性の百分率をもたらすことによって算出される。本明細書で使用される「実質的な同一性」という用語は、ポリヌクレオチドが、参照配列と比較領域にわたって比較して少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも85パーセントの同一性、および多くの場合90〜95パーセントの配列同一性、より一般的には少なくとも99パーセントの配列同一性を有する配列を含む、ポリヌクレオチド配列の特性を示す。
本発明は、キメラタンパク質または融合タンパク質も提供する。キメラタンパク質または融合タンパク質は、標準の組換えDNA技法を使用して産生することができる。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNA断片を、従来の技法に従って、例えば、ライゲーションのための平滑末端化された、またはねじれ型末端化された末端、適切な末端をもたらすための制限酵素による消化、必要に応じて付着末端の穴埋め、望ましくない連結を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的ライゲーションを使用することによってインフレームで一緒にライゲーションすることができる。別の実施形態では、融合遺伝子を、自動DNA合成機を含めた従来の技法によって合成することができる。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅を、後でアニーリングし、再増幅させてキメラ遺伝子配列を生成することができる2つの連続した遺伝子断片の間に相補的な突出を生じさせるアンカープライマーを使用して行うことができる(例えば、Ausubelら(編) CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley & Sons、1992年を参照されたい)。さらに、すでに融合部分をコードしている多くの発現ベクターが市販されている(例えば、GSTポリペプチド)。
本発明は、さらに、本発明の核酸分子のいずれかを含有するベクターを提供する。詳細には、本発明は、ベクター、好ましくは本発明のポリペプチドをコードする核酸を含有する発現ベクター、またはそれらの誘導体、断片、類似体もしくは相同体にも関する。本明細書で使用される「ベクター」という用語は、それに連結している別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、これは、その中にさらなるDNAセグメントをライゲーションすることができる環状の二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、さらなるDNAセグメントをウイルスゲノム中にライゲーションすることができる。ある特定のベクターは、それが導入される宿主細胞において自律複製することができる(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌性ベクターおよびエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入されるとすぐ宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、それによって宿主のゲノムと一緒に複製される。さらに、ある特定のベクターは、それが作動可能に連結されている遺伝子の発現を誘導することができる。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と称される。一般に、組換えDNA技法において有用な発現ベクターは、多くの場合プラスミドの形である。本明細書では、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も一般的に使用される形であるので、互換的に使用することができる。しかし、本発明は、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルス)などの、同等の機能を果たす発現ベクターの他の形を含むものとする。
好ましい発現ベクターの非限定的な一例はpKAN3ベクターである(図1参照)。
本発明の組換え発現ベクターは、本発明の核酸のいずれかを、宿主細胞において核酸を発現させるために適した形で含んでよく、これは、組換え発現ベクターが発現のために使用される宿主細胞に基づいて選択された、発現される核酸配列に作動可能に連結されている1つまたは複数の制御配列を含むことを意味する。組換え発現ベクターの中で、「作動可能に連結」とは、対象とするヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で制御配列(複数可)に連結されていることを意味するものとする(例えば、in vitro転写/翻訳系において、またはベクターが宿主細胞中に導入される場合は宿主細胞において)。
本明細書で使用される「制御配列」という用語は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現調節エレメントを含むものとする(例えば、ポリアデニル化シグナル)。そのような制御配列は、例えば、Goeddel;GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185巻、Academic Press、San Diego、Calif.(1990年)に記載されている。制御配列は、多くの種類の宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的な発現を誘導する制御配列、およびある特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を誘導する制御配列(例えば、組織特異的な制御配列)を含む。当業者は、発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現のレベルなどの因子に左右されることを理解されたい。本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入して、それによって、本明細書に記載の核酸によってコードされる、融合タンパク質または融合ペプチドを含めたタンパク質またはペプチド(例えば、hCox−2酵素、hCox−2酵素の突然変異型、融合タンパク質など)を産生することができる。
本発明の組換え発現ベクターは、hCox−2酵素を原核細胞または真核細胞において発現させるために設計することができる。原核細胞および真核細胞の両方のための他の適切な発現系は、当技術分野で公知である。(例えば、Sambrookら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL. 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1989年の第16章および第17章を参照されたい)。
さらに、本発明は、そのようなベクター(または本明細書に記載の核酸分子のいずれか)を含有する宿主細胞または宿主細胞系も提供する。本明細書で使用される「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書では互換的に使用される。そのような用語は、特定の対象の細胞だけでなく、そのような細胞の後代または潜在的な後代も指すことが理解されよう。続く世代において、突然変異または環境的な影響のいずれかに起因するある特定の修飾が起こり得るので、そのような後代は、実際には親細胞と同一でない可能性があるが、それでも本明細書で使用される用語の範囲内に含まれる。
宿主細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であってよい。非限定的な例として、宿主細胞はpKAN3ベクターを含有するARPE−19細胞であってよい。しかし、他の適切な宿主細胞が当業者に公知である。本発明は、発現ベクター(すなわち、pKAN3ベクター)を含有する細胞系も提供する。
ベクターDNAは、従来の形質転換またはトランスフェクションの技法によって原核細胞または真核細胞に導入することができる。本明細書で使用される「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、リン酸カルシウム共沈澱法もしくは塩化カルシウム共沈澱法、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション法、リポフェクション法または電気穿孔法を含めた、外来核酸(例えば、DNA)を宿主細胞に導入するための技術分野で認められている種々の技法を指すものとする。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするための適切な方法は、Sambrookら(MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL. 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1989年)および他のラボラトリーマニュアルにおいて見ることができる。
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションに関して、使用する発現ベクターおよびトランスフェクション技法に応じて、ごく一部の細胞のみで外来DNAがゲノムに組み込まれ得ることが公知である。これらの組み込み体を同定し選択するために、一般に選択マーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子が、対象とする遺伝子と一緒に宿主細胞中に導入される。種々の選択マーカーはとしては、G418、ハイグロマイシンおよびメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与する選択マーカーが挙げられる。選択マーカーをコードする核酸は、別々のベクター上で導入することができるhCox−2酵素をコードする核酸と同じベクター上で宿主細胞中に導入することができる。導入された核酸で安定にトランスフェクトされた細胞は、薬物選択によって同定することができる(例えば、選択マーカー遺伝子を取り込んだ細胞は生存するが、他の細胞は死ぬ)。
培養物中の原核宿主細胞または真核宿主細胞などの本発明の宿主細胞を使用して、hCox−2酵素を産生させる(すなわち、発現させる)ことができる。したがって、本発明は、さらに、本発明の宿主細胞を使用してhCox−2酵素を産生させるための方法を提供する。一実施形態では、方法は、本発明の宿主細胞(hCox−2酵素(配列番号1)をコードする組換え発現ベクターが導入された宿主細胞)を、hCox−2酵素が発現されるような適切な培地中で培養するステップを含む。発現されたhCox−2酵素によって細胞によるPGF2aの産生が上方制御される。別の実施形態では、方法は、上方制御されたPGF2aを培地または宿主細胞から単離するステップをさらに含む。
同様に、本発明は、配列番号1の選択された核酸配列によってコードされるhCox−2酵素を産生するように遺伝子操作されたARPE−19細胞の細胞系も提供する。同様に、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を含むhCox−2酵素を産生するように遺伝子操作されたARPE−19細胞の細胞系も提供する。
本発明の細胞系は、配列番号1の核酸配列によってコードされるヒトCox−2(hCox−2)酵素を発現するように遺伝子操作されたARPE−19細胞であってよい。当業者は、hCox−2酵素の発現により、今度はプロスタグランジンF2アルファ(PGF2a)の産生が上方制御されることを認識されたい。例えば、細胞系は、1日当たり細胞100万個当たり約1〜約20ngのPGF2aを産生し得る。
本発明は、本発明の細胞系のいずれか、および/または配列番号1の核酸によってコードされるCox−2(すなわち、hCox−2)酵素を発現するように遺伝子操作された1つまたは複数のARPE−19細胞を含有するコアであって、hCox−2の発現により、1つまたは複数のARPE−19細胞によるPGF2aの産生が上方制御される、コアと、コアを取り囲む半透膜であって、それを通じて上方制御されたPGF2aの拡散が可能になる膜とを有する埋め込み式の細胞培養デバイスも提供する。
別の実施形態では、本発明は、1つまたは複数のARPE−19細胞であって、ARPE−19細胞によるCox−2酵素の発現が、当業者に公知の任意の適切な方法(例えば、プラスミドのエピソームの複製;Cox−2を上方制御するエレメントの遺伝子ターゲティング;Cox−2合成を上方制御するための細胞系の突然変異誘発;および/またはCox−2分子の分子進化)を使用することで増加し、hCox−2の発現の増加によって1つまたは複数のARPE−19細胞によるプロスタグランジンF2アルファ(PGF2a)の産生が上方制御される細胞と、コアを取り囲む半透膜であって、それを通じてPGF2aの拡散が可能になる膜とを含有する埋め込み式の細胞培養デバイスも提供する。
一部の実施形態では、デバイスのコアは、半透膜の内部に配置されたマトリックスを含有する。例えば、マトリックスは、ヒドロゲル(例えば、多価イオンと架橋結合したアルギネート)から、細胞外マトリックスの成分から、または撚り合わされて撚糸にされ、もしくは織り合わされてメッシュにされ、もしくは撚り合わされて、織り合わされていない束である撚糸にされた複数のモノフィラメントから作製することができ、細胞がその上に分布する。生体適合性材料から作製された任意の適切な繊維状の細胞支持マトリックスを使用することができる。例えば、適切な生体適合性材料としては、これだけに限定されないが、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセトニトリル、ポリエチレンテレフタラート、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリブトエステル(polybutester)、絹、綿、キチン、炭素、および/または生体適合性の金属が挙げられる。
一部の実施形態では、本発明のデバイスは、デバイスを眼球構造に固着するように適合されたつなぎアンカー、例えば、アンカーループを含有してよい。
本発明のデバイスはいずれも眼内に埋め込むことができる(または埋め込むことに適している)。非限定的な例として、1つまたは複数のデバイスを眼の硝子体、房液、テノン下の空間、眼窩周辺の空間、後眼房、および/または前眼房の中に埋め込むことができる(または埋め込むことに適している)。好ましい一実施形態では、デバイスは眼の硝子体内に埋め込まれる(または埋め込むことに適している)。
本発明のデバイスの被覆物は、選択透過性の免疫隔離膜から、または細孔膜から作製することができる。例えば、被覆物は、限外濾過膜または精密濾過膜から作製される。当業者は、限外濾過膜は一般には1〜100nmの孔径を有し、一方精密濾過膜は一般には0.1〜10μmの孔径を有することを認識されたい。他の実施形態では、被覆物は、非多孔質の膜材料(例えば、ヒドロゲルまたはポリウレタン)から作製することができる。
任意の適切なデバイスの形状を本発明に関連させて使用することができる。例えば、デバイスは、中空繊維または平板として構成されていてよい。
一部の実施形態では、少なくとも1つのさらなる生物活性分子(非細胞性供給源または細胞性供給源由来)が、デバイスから一緒に送達される。当業者は、少なくとも1つのさらなる生物活性分子は、コア内の1つまたは複数の遺伝子操作されたARPE−19細胞に産生させることができることを認識されたい。
本発明のデバイスのいずれにおいても、コア内の細胞(または細胞系)によるhCox−2の発現によってプロスタグランジンF2アルファ(PGF2a)の産生が上方制御される。デバイスにより1日当たり約1〜約20ngのPGF2aが産生されることが好ましい。
1つまたは複数の本発明の埋め込み式の細胞培養デバイスを患者の眼内に埋め込み、PGF2aが治療有効量で発現されることを可能にし、それによって眼の障害を治療することにより、眼の障害を治療するための方法も提供される。例えば、治療有効量のPGF2aの産生は、1日当たり細胞100万個当たり約1〜約20ngである。眼の障害は緑内障(例えば、開放隅角緑内障)であることが好ましい。治療される他の眼の障害としては、これだけに限定されないが、未熟児網膜症、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性、網膜色素変性症、白内障形成、網膜芽細胞腫および網膜虚血が挙げられる。
当業者は、PGF2aが産生されることにより、患者の眼圧が低下する、眼圧が安定する、または眼圧が低下かつ安定することを認識されたい。
本発明は、本発明の埋め込み式の細胞培養デバイスをレシピエント宿主の標的領域内に埋め込み、標的領域において、カプセル化された1つまたは複数のARPE−19細胞によってPGF2aが分泌されることによってPGF2aがレシピエント宿主に送達される方法も提供する。適切な標的領域としては、これだけに限定されないが、脳、室、脊髄、眼の房水および硝子体液、ならびに眼の後眼房および前眼房が挙げられる。好ましい標的領域は、眼の房水および硝子体液および眼の後眼房および前眼房である。
当業者は、本明細書に記載の方法のいずれにおいても、1日当たり患者当たり0.1pgから1000μgまでの間のPGF2aを埋め込み式の細胞培養デバイスから拡散させることができることを認識されたい。デバイスにより、1日当たり約1〜約20ngのPGF2aが産生されることが好ましい。
最後に、本発明は、本発明の埋め込み式の細胞培養デバイスを、少なくとも1つのARPE−19細胞を、配列番号1の核酸配列を発現するように遺伝子操作し、遺伝子改変されたARPE−19細胞を半透膜内にカプセル化することによって作製するための方法も提供する。別の方法では、少なくとも1つのARPE−19細胞を、配列番号2のアミノ酸配列を有するhCox−2酵素を発現し、それにより今度はARPE−19細胞によるPGF2aの産生が上方制御されるように遺伝子操作し、遺伝子改変されたARPE−19細胞を、半透膜であって、それを通じて上方制御されたPGF2aの拡散が可能になる膜内にカプセル化する。
特に定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と類似のまたは均等な方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載している。本明細書で言及した全ての刊行物、特許出願、特許および他の参照文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合には、用語の説明を含めた本明細書が支配する。さらに、材料、方法および実施例は、単に例示的なものであり、限定するものではない。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる。
緑内障は、眼圧の上昇(「IOP」)を特徴とする、失明の可能性がある疾患である。プロスタグランジンF2アルファ(「PGF2a」)を局所投与することにより、緑内障に伴う眼圧の上昇が低下することが示されている。しかし、効果的なPGF2aの投薬量は、これだけに限定されないが、結膜充血(充血した目)、虹彩の色素沈着(虹彩の黒ずみ)、多毛症(睫毛の成長および黒ずみ)、前部ぶどう膜炎(虹彩および毛様体の炎症)および/または嚢胞様黄斑浮腫を含めた許容できない副作用を有する。
これらの欠点を克服するために、キサラタン(Xalatan)、ルミガン(Lumigan)およびトラバタン(Travatan)などの合成PGF2a類似体(「PGA」)が創出された。これらのPGAは、PGF2aのIOPを低下させる特性を保持している。しかし、これらのPGAは、副作用が完全に排除されていない。
一般には、このクラスの薬物は、1日1回、滴剤の形で、滴剤当たりおよそ1〜13マイクログラムの濃度で局所的にボーラス送達される。上に列挙した他の副作用に加えて、ボーラス投薬に伴う薬物利用率の昇降により、緑内障に罹患している患者に対する主要な危険因子である可能性がある、患者のIOPの変動(ゆらぎ)も引き起こされる恐れがある。
細胞のPGF2aは、アラキドン酸(arachadonic acid)から合成される。酵素であるシクロオキシゲナーゼ(Cox)は、PGF2a、ならびに他のプロスタグランジンの生合成に関係したステップを触媒する。シクロオキシゲナーゼには、Cox−1およびCox−2と称される2種のアイソフォームがある。Cox−1は、構成的に発現されるハウスキーピング遺伝子であると考えられ、通常低い、基底レベルのPGF2aの産生に関与する。Cox−2の発現は、高度に制御され、種々の刺激によって誘発することができ、それが今度はプロスタグランジンF2アルファの生理的なレベルの上昇をもたらす。
本発明の細胞系を創出するために、ヒトCox−2(GenBank受託番号NM_000963.1)に対するヒトcDNAクローンをNeurotechの発現ベクターpKAN3にサブクローニングして(図1参照)、本明細書でP777と称されるhCox−2発現ベクターを創出した。次に、P777を使用してARPE−19細胞を安定にトランスフェクトした。いくつかの安定な細胞系が、ELISAによって測定される高レベルのPGF2a(例えば、1日当たり細胞100万個当たり1〜20ng)を産生することが見出された。
当業者は、Cox−2は細胞内酵素であるので、免疫原性は心配することではないことを認識されたい。したがって、本明細書に詳細が記載されている組成物および方法ではヒトCox−2遺伝子を利用するが、hCox−2の代わりに任意の他の種由来のCox−2遺伝子を使用することができる。
本発明は、細胞内のCox−2酵素の発現を増加させることができる方法および組成物に関する。このCox−2酵素の発現が増加することが、今度は、プロスタグランジンF2アルファ(PGF2a)の産生の増加につながる。当技術分野で公知の、Cox−2発現のレベルを上昇させる任意の適切な方法を本発明に従って使用することができる。
例えば、対象とする遺伝子(すなわち、ヒトシクロオキシゲナーゼ2(hCox−2)をコードする遺伝子)を、標準の技法を使用して適切な発現ベクターのクローニング部位に挿入することができる。hCox−2をコードするヒト(および他の哺乳動物)の遺伝子の核酸およびアミノ酸配列は公知である。
多種多様な宿主/発現ベクターの組合せを使用して、成長因子または他の対象とする生物活性分子(複数可)をコードする遺伝子を発現させることができる。長期的な、安定なin vivo発現は、hCox−2をコードする遺伝子が、in vivoで哺乳動物宿主に埋め込まれた際に下方制御を受けないプロモーターに作動可能に連結されている発現ベクター(すなわち、組換えDNA分子)を使用して実現される。したがって、そのような発現ベクターは一般にはレトロウイルスプロモーターを含有しない。適切なプロモーターとしては、例えば、SV40またはアデノウイルスの初期プロモーターおよび後期プロモーター、マウスメタロチオネインプロモーター、ならびに遺伝子発現を調節することができる他の公知の非レトロウイルスプロモーターが挙げられる。
次に、対象とする遺伝子を含有する発現ベクターを使用して所望の細胞系をトランスフェクトすることができる。リン酸カルシウム共沈澱法、DEAE−デキストラントランスフェクションまたは電気穿孔法などの標準のトランスフェクション技法を利用することができる。Fugene6(Roche Applied Sciences)などの市販の哺乳動物トランスフェクションキットを使用することができる。ヒト哺乳動物細胞も使用することができる。全ての場合において、デバイスに含有される細胞または組織が汚染または不純物混和されていないことが重要である。開示される構築物に使用される好ましいプロモーターは、図1に示した通り、SV40プロモーター、AmpプロモーターおよびMTlプロモーターを含む。
他の有用な発現ベクターは、例えば、種々の公知のSV40の誘導体および公知の細菌性プラスミド、例えば、pBR322、pCR1、pMB9およびそれらの誘導体を含めたE.coli由来のpUCプラスミド、pBlueScript(商標)プラスミドなどの染色体DNA配列、非染色体DNA配列および合成DNA配列のセグメントからなってよい。ジェネテシン(G418)またはハイグロマイシンの薬物選択遺伝子を含有する発現ベクター(Southern,P. J.、In Vitro、18巻、315頁(1981年)、Southern,P. J.およびBerg、P.、J. Mol. Appl. Genet.、1巻、327頁(1982年))も有用である。これらのベクターに、種々の異なるエンハンサー/プロモーター領域を使用して、対象とする生物学的遺伝子および/またはG418またはハイグロマイシンBなどの毒素を用いた選択に対する耐性を付与する遺伝子の両方の発現を推進することができる。種々の異なる哺乳動物プロモーターを使用してG418およびハイグロマイシンBの遺伝子ならびに/または対象とする生物学的遺伝子の発現を誘導することができる。G418耐性遺伝子は、培地に添加されるG418(100〜500μg/μl)を酵素的に不活性化するアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)をコードする。APH遺伝子を発現している細胞のみが薬物選択に生き残り、通常、その結果として第2の生物学的遺伝子も発現される。ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(HPH)遺伝子は、ハイグロマイシン毒素を特異的に修飾し、不活性化する酵素をコードする。ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子と同じプラスミドで同時トランスフェクトされる遺伝子またはハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子と同じプラスミドに含有される遺伝子は、50〜200μg/mlの濃度のハイグロマイシンBの存在下で優先的に発現される。
使用することができる発現ベクターの例としては、これだけに限定されないが、市販のpRC/CMV、pRC/RSVおよびpCDNA1NEO(InVitrogen)が挙げられる。好ましい一実施形態ではpKAN3ベクター(Neurotech USA、Inc.)を使用する(図1参照)。
薬物選択遺伝子および対象とするBAM遺伝子の転写を誘導するウイルスプロモーター領域は、CNS内でウイルスプロモーターが受ける下方制御を受けない上記のプロモーター配列の1つと交換される。例えば、アストロサイトおよびアストロサイト細胞系をトランスフェクトするためにGFAPプロモーターが使用され、PC12細胞ではTHプロモーターが使用され、オリゴデンドロサイトではMBPプロモーターが使用される。
一実施形態では、突然変異体DHFRのcDNAおよびポリリンカーを含む全pUC18配列を含有するpNUT発現ベクターを使用することができる。例えば、Aebischer,P.ら、Transplantation、58巻、1275〜1277頁(1994年);Baetgeら、PNAS、83巻、5454〜58頁(1986年)を参照されたい。pNUT発現ベクターは、DHFRコード配列がG418またはハイグロマイシン薬物耐性のコード配列と交換されるように修飾することができる。pNUT発現ベクター内のSV40プロモーターも、上記のプロモーターなどの任意の適切な構成的に発現される哺乳動物プロモーターと交換することができる。
発現の増加は、所望の分子をコードする導入遺伝子のコピー数を、当技術分野で周知の増幅方法を使用して増加または増幅させることによって実現することができる。そのような増幅方法としては、例えば、DHFR増幅(例えば、Kaufmanら、米国特許第4,470,461号を参照されたい)またはグルタミン合成酵素(「GS」)増幅(例えば、米国特許第5,122,464号および欧州特許出願公開第EP338,841号を参照されたい)が挙げられる。
別の実施例では、プラスミドのエピソームの複製を使用して細胞内のCox−2酵素の発現レベルを上昇させることができる。複製開始点と複製機構の正しい組合せを前提として、エピソームの形で存在しながら安定に転写し、タンパク質を産生する発現ベクターを生成することができる。1つの例は、pCEP4発現系(InVitrogen)と同様、エプスタインバー核内抗原によってOri−P遺伝子座を通してプラスミドの複製が刺激されるOri−PおよびEBNAの系である。他の実施例では、発現プラスミドのエピソームの保持は、S/MAR複製機構によって、SV40に基づく系によって、BKVに基づく系によって、またはBPVに基づく系によって実現されている。安定なエピソームの発現系は、安定な細胞系の生成とは独立して連続的なCox−2発現をもたらすDNA発現ベクター系の創出を可能にするために十分に頑強であり得る。
別の実施例の通り、Cox−2を上方制御するエレメントの遺伝子ターゲティングを使用してCox−2酵素の発現レベルを上昇させることもできる。レポーター遺伝子をランダム挿入することによってプロモーターを哺乳動物ゲノム中に閉じ込めることができることは周知であり、定義済みの領域を、遺伝子機能を修飾する組換えをもたらすDNAエレメントをそのような定義済みの領域に挿入することによって遺伝子ターゲティングすることは常識である。これらの2つの技術を組み合わせることにより、ARPE−19細胞(すなわち、(NTC−200細胞)に対して活性なプロモーターおよびエンハンサーを合成し、単離し、Cox−2遺伝子の近くの接合部で細胞に再導入することができる第3の技術を創出することができる。例えば、標的のプロモーターまたは増強エレメントは、Cox−2遺伝子の上流であってよく、そこに組み込むことにより、Cox−2遺伝子合成の有意な増加が引き起こされる。導入されたプロモーターは、単一の遺伝子エレメントとして存在してよい、または多重コピーで存在してよい、または複数種の異なる発現増強エレメントのコンカテマーとして存在してよい。その代わりに(またはそれに加えて)、増強領域をCox−2遺伝子のスプライスイントロン内またはCox−2遺伝子に隣接する領域内の非コード領域にターゲティングすることができる。
当業者は、細胞系の突然変異誘発を使用してCox−2合成を上方制御することができることも認識されたい。例えば、遺伝子合成を上方制御する突然変異誘発性の方法は、一般には、ランダムに使用することができる。そのような突然変異誘発性の方法としては、非限定的な例として、DNAエレメントのランダムな組み込み、および/または、DNA損傷を誘発する、または遺伝子サイレンシングのための刷り込みのメチル化を取り除く突然変異誘発性の化学化合物の適用を挙げることができる。当業者は、そのような処理(複数可)を受けた細胞系の後代により、時々、ある特定のタンパク質の不連続な産生が上方制御されることを認識されたい。この上方制御は、遺伝子アレイ、または次世代ディープシーケンシング戦略を使用して、転写レベルで検出することができる。親のARPE−19細胞系(すなわち、NTC−200)を突然変異誘発の手順(複数可)に曝露させることができ、それが今度は、Cox−2合成に影響を及ぼすことによって、PGF2aが上方制御され得る。当業者は、Cox−2をコードする外因性の遺伝子エレメントを導入する必要なくそのような手順(複数可)を使用することができることを認識されたい。
最後に、Cox−2分子の分子進化も使用することができる。詳細には、分子進化の現在の方法を使用して、Cox−2と比較して同様の活性を有するが構造がずれているCox−2のタンパク質誘導体を創出することができる。この技法の例としては、これだけに限定されないが、フィブロネクチンドメイン、免疫グロブリンV−ドメイン足場、設計アンキリンリピートタンパク質(darpins(designed ankyrin repeat proteins))、および/またはリポカリンを、親分子に関連付けられない結合機能を有する抗体様構造に首尾よく分子進化させることが挙げられる。
この技法を用いて、ヒトCox−2分子を突然変異誘発の手順を開始するための鋳型として使用することができる。その代わりに(またはそれに加えて)、開始鋳型は、酵素的分子を生成するための分子進化を可能にし得る、Cox−2とのいくらかの構造的類似性を有する無関係なタンパク質であってよい。当業者は、構造的類似性は、これだけに限定されないが、Pfamドメイン分析、3−D結晶構造、および/または系統学的な分析によって定義できることを認識されたい。
別の実施形態では、Cox−2様タンパク質の特徴を有する遺伝子鋳型は、homo sapiens以外の種の遺伝情報解析によって同定することができる。そのような開始鋳型から始めて、連続的な合成突然変異誘発を適用して新しい生理活性分子を創出することができる。これらの突然変異誘発の手順としては、これだけに限定されないが、エラープローンPCR、1組のCox−2様配列断片のドメインシャッフリング、化学的付加物に基づくin vivo突然変異誘発、鎖の合成における標的突然変異誘発性オリゴヌクレオチドの取り込み、またはコドンに基づく置換を挙げることができる。上出来の成果は、Cox−2と同様のメカニズムでPGF2aの産生を刺激するCox−2突然変異タンパク質である。後の分子のライブラリーは全長のCox−2由来遺伝子産物、またはCox−2突然変異タンパク質をコードする短縮もしくは切断された遺伝子産物を含有してよい。得られたCox−2突然変異タンパク質は、トランスフェクトされた細胞から放出されるPGF2aの上方制御を測定するバイオアッセイにおいてスクリーニングすることによって定義することができる。
hCox−2酵素をコードする遺伝子がクローニングされ、そのヌクレオチド配列が公表されている(GenBank受託NM_000963.1)。この遺伝子は、American Type Culture Collection(ATCC)などの保管所または種々の商業的な供給源から公的に入手可能である。あるいは、公的に入手できない本発明において有用な生物活性分子をコードする遺伝子は、PCR増幅、オリゴヌクレオチドプローブを用いたゲノムライブラリーおよびcDNAライブラリーのスクリーニングなどの標準の組換えDNA方法を使用して得ることができる。
hCox−2についてのヌクレオチド配列およびポリペプチド配列を、それぞれ配列番号1および配列番号2として以下に示す。
いくつかの好ましい実施形態では、選択された細胞はARPE−19細胞系、自然発症的に生じる連続的なヒト網膜色素性上皮細胞系である。ここで、細胞の選択は、意図される適用に基づく。プロスタグランジン2Fアルファを分泌させるためにカプセル化細胞を選択することができる。活性である、構築物のアゴニスト、類似体、誘導体または断片を合成し、分泌する細胞も使用することができる。当業者は、本明細書に記載のPGF2αを分泌/合成させるために、他の適切な細胞型も遺伝子操作することができることを認識されたい。
細胞の選択は、意図される適用に基づく。hCox−2酵素および/またはPGF2aを発現させるためにカプセル化細胞を選択することができる。活性なhCox−2および/またはPGF2aのアゴニスト、類似体、誘導体または断片を合成し、分泌する細胞も使用することができる。
カプセル化細胞に基づく送達系のプラットフォーム細胞系であるために、細胞系は、以下の特性をできるだけ多く有するべきである:(1)細胞はストリンジェントな条件に耐えられるべきである(カプセル化細胞は、中枢神経系または眼などの血管組織の腔において、特に眼内環境において機能性であるべきである);(2)細胞は、遺伝子改変可能であるべきである(所望の治療的因子は細胞中に操作される必要があった);(3)細胞は比較的長い寿命を有するべきである(細胞は、バンクに保存するため、特徴づけるため、操作するため、安全性試験するため、および臨床ロットで製造するために十分な後代を産生するべきである);(4)細胞は、好ましくはヒト起源のものであるべきである(カプセル化細胞と宿主との間の適合性が増す);(5)細胞は、in vivoにおいてデバイス中、1か月を超える期間、80%を超える生存率を示すべきである(長期的な送達が確実になる);(6)カプセル化細胞により、効果的な量の有用な生物学的産物が送達されるべきである(治療の有効性が確実になる);(7)細胞は、低レベルの宿主免疫応答を有するべきである(グラフトの長寿命が確実になる);および(8)細胞は、非腫瘍形成性であるべきである(デバイスが漏出した場合に宿主に追加の安全性をもたらすため)。
ARPE−19細胞系(Dunnら、62巻 Exp. Eye Res. 155〜69頁(1996年)、Dunnら、39巻 Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 2744〜9頁(1998年)、Finnemannら、94巻 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 12932〜7頁(1997年)、Handaら、66巻 Exp. Eye. 411〜9頁(1998年)、Holtkampら、112巻 Clin. Exp. Immunol. 34〜43頁(1998年)、Maidjiら、70巻 J. Virol. 8402〜10頁(1996年);米国特許第6,361,771号を参照されたい)により、カプセル化細胞に基づく送達系のための首尾よいプラットフォーム細胞の特性の全てが実証される。ARPE−19細胞系は、American Type Culture Collectionから入手可能である(ATCC番号CRL−2302)。ARPE−19細胞は、正常な網膜色素性上皮(RPE)細胞であり、網膜色素性上皮細胞に特異的なマーカーであるCRALBPおよびRPE−65を発現する。ARPE−19細胞は、形態的および機能的な極性を示す安定な単層を形成する。
本発明のデバイスを使用する場合、好ましくは102から108個までの間のARPE−19細胞、最も好ましくは5×102個の、hCox−2を発現するように(それにより、今度は、PGF2aの産生が上方制御される)遺伝子操作されたARPE−19細胞を、各デバイスにカプセル化する。一実施形態では、デバイスは200,000個から400,000個までの間の細胞を含有する。しかし、10,000個から100,000個までの間の細胞を含有する微粒子化されたデバイスも検討されている(参照により本明細書に組み込まれるWO07/078922を参照されたい)。投薬量は、少数または多数のデバイス、好ましくは患者当たり1個から50個までの間のデバイスを埋め込むことによって調節することができる。本明細書に記載のデバイスは、1日当たりデバイス当たり約1ng〜約200ngのPGF2a(in vitro)を送達することができる。
選択された産物を産生する細胞または組織を単離するための技法および手順は、当業者に公知である、または慣例的な実験だけの公知の手順から適合させることができる。
単離される細胞が、in vitroで成長させるために適合された複製細胞または複製細胞系である場合、これらの細胞の細胞バンクを生成することが特に有利である。細胞バンクの特定の利点は、それが、同じ細胞の培養物またはバッチから調製された細胞の供給源であることである。すなわち、全ての細胞が、同じ細胞の供給源を起源とし、同じ条件およびストレスに曝露された。したがって、バイアルを同一のクローンとして処理することができる。移植に関しては、このことにより同一デバイスまたは交換デバイスの産生が大いに促進される。これにより、試験プロトコールを簡略化することもでき、埋め込まれた細胞がレトロウイルスなどを含まないことが確実になる。これにより、ビヒクルをin vivoおよびin vitroで並行してモニタリングすることも可能になり得、したがって、in vivoで残存に特有の効果または因子を調査することが可能になる。
本明細書で使用される「個体」または「レシピエント」または「宿主」という用語は、ヒトまたは動物の対象を指す。
「生物活性分子」(「BAM」)は、本発明のデバイスが埋め込まれる個体の体において生物学的に有用な効果を発揮することができる物質である。例えば、hCox−2およびPGF2aがBAMの例である。
「カプセル」および「デバイス」および「ビヒクル」という用語は、本明細書では本発明のECTデバイスを指すために互換的に使用される。
別段の指定のない限り、「細胞」という用語は、これだけに限定されないが、組織中に保持された細胞、細胞集塊、細胞系および個々に単離された細胞を含めた任意の形の細胞を意味する。
本明細書で使用される「生体適合性カプセル」または「生体適合性デバイス」または「生体適合性ビヒクル」は、カプセルまたはデバイスまたはビヒクルが、個体への埋め込みに際して、カプセルが拒絶される、または例えば分解によってカプセルが動作不能になるのに十分な有害な宿主応答を引き出さないことを意味する。
本明細書で使用される「免疫隔離カプセル」または「免疫隔離デバイス」または「免疫隔離ビヒクル」は、個体への埋め込みに際して、コア内の細胞に対する宿主の免疫系の有害な影響を最小にするカプセルを意味する。
本明細書で使用される「生物活性分子の長期的な、安定な発現」は、生物活性分子の有用な生物活性を1か月超、好ましくは3か月超、および最も好ましくは6か月超の期間維持するために十分なレベルで生物活性分子の産生が継続することを意味する。デバイスの埋め込み物およびその内容物は、in vivoで3か月超の間、そして多くの場合1年超の間、機能性を保持することができる。
コアを取り囲む被覆膜の「半透性」の性質により、細胞によって産生される分子(例えば、代謝産物、栄養分および/または治療的物質)がデバイスから周囲の宿主の眼組織に拡散されるが、コア内の細胞を宿主による有害な免疫学的攻撃から保護するために十分に不透過性である。
ビヒクルのコアからIgGを排除することは、標的の細胞または組織の細胞溶解を生じるためにほとんどの場合、IgG単独では不十分であるので、免疫隔離の試金石ではない。したがって、免疫隔離カプセルについて、最大1000kDまでの被覆物の公称分画分子量(MWCO)値が検討されている。MWCOは50kDから700kDまでの間であることが好ましい。MWCOは70kDから300kDまでの間であることが最も好ましい。例えば、WO92/19195を参照されたい。
本発明は、PGF2aを眼に送達するための、生体適合性であり、場合によって免疫隔離的なデバイスにも関する。そのようなデバイスは、hCox−2酵素を産生または分泌し、それにより今度はPGF2aの産生が細胞内で上方制御される生細胞を含有するコアと、コアを取り囲む生体適合性被覆物であって、眼内(例えば、硝子体内)および/または脳、室、脊髄を含めた中枢神経系へのPGF2aの拡散が可能になる分画分子量(「MWCO」)を有する被覆物とを含有する。
種々の生体適合性カプセルは、本発明に従って分子を送達することに適している。有用な生体適合性ポリマーカプセルは、(a)液体培地中に浮遊しているか、または生体適合性マトリックス内に固定化されているかいずれかの、1つの細胞または複数の細胞を含有するコアと、(b)生体適合性であり、細胞が産生した生物活性分子が眼内に拡散することを可能にする、隔離された細胞を含有しない膜を含む周囲の被覆物とを含む。
多くの形質転換された細胞または細胞系は、例えば、栄養培地を含み、場合によって細胞の生存率および機能を持続させるためのさらなる因子の供給源を含有する液体のコアを有するカプセル内に有利に隔離される。本発明のデバイスのコアは、成長因子(例えば、プロラクチンまたはインスリン様成長因子2)、形質転換成長因子β(TGF−β)などの成長制御因子物質または網膜芽細胞腫遺伝子タンパク質または栄養分を輸送するエンハンサー(例えば、コア内の溶存酸素濃度を増強し得るペルフルオロカーボン)のリザーバーとして機能し得る。ある特定のこれらの物質は、液体培地中に封入することにも適している。
さらに、当該デバイスは、必要とされる薬物または生物学的治療法の送達を調節するためのリザーバーとしても使用することができる。そのような場合、コアは高濃度の選択された薬物または生物学的治療法(単独または細胞もしくは組織との組合せ)を含有する。さらに、本発明によるデバイスが埋め込まれる体の領域内の快適な環境を調製または創出する物質を含有するサテライトビヒクルもレシピエントに埋め込むことができる。そのような場合、免疫隔離された細胞を含有するデバイスは、調節された量の、例えば、レシピエントからの炎症反応を下方調節または阻害する物質(例えば、抗炎症性ステロイド)、または毛細血管床の内殖を刺激する物質(例えば、血管新生因子)を放出するサテライトビヒクルと一緒に領域内に埋め込まれる。
あるいは、コアは、細胞の位置を安定化する、ヒドロゲルまたは他の生体適合性材料(例えば、細胞外マトリックスの成分)の生体適合性マトリックスも含んでよい。「ヒドロゲル」という用語は、本明細書では、架橋した親水性ポリマーの三次元網目構造を指す。網目構造はゲルの形であり、実質的に水で構成され、ゲルは90%超の水であることが好ましい。ヒドロゲルを形成する組成物は3つのクラスに分類される。第1のクラスは正味の負電荷を有する(例えば、アルギネート)。第2のクラスは、正味の正電荷を有する(例えば、コラーゲンおよびラミニン)。市販の細胞外マトリックスの成分の例としては、Matrigel(商標)およびVitrogen(商標)が挙げられる。第3のクラスは正味の電荷が中性である(例えば、高度に架橋したポリエチレンオキシドまたはポリビニルアルコール)。
沈澱したキトサン、合成ポリマーおよびポリマー混合物、マイクロキャリアなどを含めた任意の適切なマトリックスまたはスペーサーを、カプセル化される細胞の成長特性に応じてコア内に使用することができる。
あるいは、カプセルは内部の足場を有してよい。足場により、細胞が凝集することを防ぎ、デバイス中の細胞の分布を改善することができる。(PCT公開第WO96/02646号パンフレットを参照されたい)。足場によりカプセル化細胞の微環境が規定され、細胞のコア内への良好な分布が保たれる。特定のデバイスのための最適な内部の足場は、使用される細胞型に大きく左右される。そのような足場が存在しないと、接着細胞は凝集して集塊を形成する。
例えば、内部の足場は撚り糸またはメッシュであってよい。撚り糸またはメッシュの内部の足場を形成するために使用するフィラメントは、任意の適切な生体適合性の、実質的に非分解性の材料で形成される(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,303,136号および同第6,627,422号を参照されたい)。本発明のカプセルは参照により組み込まれる、PCT国際特許出願第WO92/19195号パンフレットまたは同第WO95/05452号パンフレット;または参照により組み込まれる、米国特許第5,639,275号;同第5,653,975号;同第4,892,538号;同第5,156,844号;同第5,283,187号;または同第5,550,050号に記載のカプセルに類似することが好ましい。撚り糸または織り合わされたメッシュを形成するために有用な材料としては、例えば、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタラート、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリブトエステルなどの、繊維に形成することができる任意の生体適合性ポリマー、または綿、絹、キチンもしくは炭素などの天然繊維が挙げられる。任意の適切な熱可塑性のポリマー、熱可塑性のエラストマー、または繊維形成特性を有する他の合成材料もしくは天然材料を、予め制作された中空繊維膜、または平らな膜のシートから形成された中空の円柱の中に挿入することができる。例えば、縫合材料として、または血管グラフトの製造に使用される絹、PETまたはナイロンフィラメントは、この種の適用の大きな助けになる。他の実施形態では、金属リボンまたはワイヤーを使用し、織り合わせることができる。これらのフィラメント材料のそれぞれは、よく調節された表面および幾何学的な性質を有し、大量生産することができ、また、埋め込み用途の長い歴史を有する。ある特定の実施形態では、フィラメントは粗い表面および細胞の突起が接着することができる「手掛かり」をもたらすために「テクスチャライズ」することができる。フィラメントへの細胞の接着を増強するために、フィラメントを細胞外マトリックス分子でコーティングすること、または表面処理することができる(例えば、プラズマ照射)。
一部の実施形態では、フィラメントは、ランダムでない一方向性の配向に組織されることが好ましく、これを束状に撚り合わせて厚さおよび空隙容量が様々である撚り糸を形成する。空隙容量は、フィラメント間に存在する空間として定義される。撚り糸の空隙容量は、20〜95%の間で変動するべきであるが、50〜95%の間であることが好ましい。フィラメント間の好ましい空隙容量は20〜200μmの間であり、これは撚り糸の長さに沿って細胞を足場に播種することを可能にし、細胞がフィラメントに接着することを可能にするために十分である。撚り糸を構成するフィラメントの好ましい直径は、5〜100μmの間である。これらのフィラメントは、束状に撚り合わせて撚り糸を構成することを可能にするために十分な機械的強度を有するべきである。フィラメントの横断面の形状は様々であってもよく、環状、長方形、楕円形、三角形、および/または星形の横断面が好ましい。
あるいは、フィラメントまたは撚り糸は織り合わせてメッシュにすることができる。メッシュはモノフィラメントまたはマルチフィラメントを含有し、織り合わしている間、撚り糸またはフィラメントのいずれかを繰り出してメッシュにする働きをする糸巻きに類似した担体を使用した組みひも機で作出することができる。担体の数は調整可能であり、同じフィラメントまたは組成および構造が異なるフィラメントの組合せを巻くことができる。組みひもの角度は、横糸によって定義され、担体の回転スピードおよび作出スピードによって調節される。一実施形態では、主軸を使用してメッシュの中空管を作出する。ある特定の実施形態では、組みひもは単層として構築され、他の実施形態では、組みひもは多層構造である。組みひもの引っ張り強さは個々のフィラメントの引っ張り強さの線形合計である。
他の実施形態では、管状の組みひもが構築される。組みひもを、細胞が播種される中空繊維膜に挿入することができる。あるいは、細胞をメッシュの管の壁に浸潤させて細胞の接着に利用できる表面領域を最大化することができる。そのような細胞の浸潤が起こる場合、組みひもは、細胞の足場マトリックスとして、およびデバイスの内部支持体としての両方の働きをする。組みひもで支持されたデバイスの引っ張り強さの増加は、代替的な手法における引っ張り強さの増加よりも著しく大きい。
述べた通り、眼周囲の部位および他の前眼房(房水)および後眼房(硝子体)の外側の領域などの免疫特権がない埋め込み部位に対して、カプセルが免疫隔離的であることが好ましい。生体適合性材料の成分は、周囲の半透膜および内部の細胞支持足場を含んでよい。形質転換された細胞は、上記の選択透過性の膜でカプセル化された足場上に播種されることが好ましい。また、接合した繊維構造も細胞を埋め込むために使用することができる(参照により組み込まれる米国特許第5,512,600号を参照されたい)。生物分解性ポリマーとしては、ポリ(乳酸)PLA、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)PLGAおよびポリ(グリコール酸)PGAならびにそれらの等価物で構成されるポリマーが挙げられる。移植された細胞が付着する表面をもたらすために泡状足場が使用されている(参照により組み込まれるPCT国際特許出願第98/05304号パンフレット)。織り合わされたメッシュの管が、血管グラフトとして使用されている(参照により組み込まれるPCT国際特許出願第WO99/52573号パンフレット)。さらに、コアは、細胞の位置を安定化させる、ヒドロゲルから形成された固定化マトリックスでできていてよい。ヒドロゲルは、ゲルの形の架橋した親水性ポリマーの三次元網目構造であり、実質的に水でてきている。
ポリアクリレート(アクリルコポリマーを含む)、ポリビニリデン、ポリ塩化ビニルコポリマー、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)、ポリホスファセン、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリルニトリル/塩化コビニル)(poly(acrylonitrile/covinyl chloride))、ならびにそれらの誘導体、コポリマーおよび混合物を含めた種々のポリマーおよびポリマー混合物を使用して周囲の半透膜を製造することができる。周囲の半透膜は生体適合性半透性の中空繊維膜であることが好ましい。そのような膜およびそのような膜を作製する方法は、参照により組み込まれる米国特許第5,284,761号および同第5,158,881号に開示されている。周囲の半透膜は、参照により組み込まれる、米国特許第4,976,859号または米国特許第4,968,733号に記載のものなどのポリエーテルスルホンの中空繊維から形成される。代替的な周囲の半透膜材料はポリスルホンである。
カプセルは、例えば、円柱形、長方形、円盤状、パッチ状、卵形、放射状または球状を含めた、生物活性を維持し、産物または機能の送達を利用できるようにするために適した任意の形態であってよい。さらに、カプセルはメッシュ様または入れ子状の構造に渦巻き状に巻く、または巻きつけることができる。カプセルを埋め込んだ後にそれを回収する場合、埋め込み部位からのカプセルの移動を導きやすい、レシピエント宿主の血管中を移行するのに十分小さい球状のカプセルなどの形態は好ましくない。長方形、パッチ、円盤、円柱および平板などのある特定の形状により卓越した構造的完全性がもたらされ、回収することが所望である場合に好ましい。
デバイスは、埋め込んでいる間デバイスの配置を維持する助けとなり、回収の助けとなるつなぎを有することが好ましい。そのようなつなぎは、カプセルを定位置に留めるために適合された任意の適切な形状を有してよい。例えば、縫合はループ、円盤または縫合であってよい。一部の実施形態では、つなぎは、つなぎ(したがってデバイスも)を強膜または他の適切な眼球構造に留めるために縫合糸を使用することができるように鳩目様の形状である。別の実施形態では、つなぎは、一方の端ではカプセルとつながっていて、他方の端では予め撚り糸を通した縫合針を形成する。好ましい一実施形態では、つなぎは、カプセルを眼球構造にアンカリングするために適合させたアンカーループである。つなぎは、形状記憶金属および/または当技術分野で公知の任意の他の適切な医療用材料で構築することができる。
中空繊維形態では、繊維は、1000ミクロン未満、好ましくは750ミクロン未満の内径を有する。300〜600ミクロン未満の外径を有するデバイスも検討されている。中空繊維形態で眼内に埋め込むために、カプセルは長さが0.4cmから1.5cmまでの間であることが好ましく、長さが0.5cmから1.0cmまでの間であることが最も好ましい。長いデバイスは眼内で適応し得るが、しかし、安定した適切な配置のために、曲線状の形状または精密な形状が必要であり得る。中空繊維形態は眼内に配置するために好ましい。
眼周囲に配置するために、中空繊維形態(実質的に上記と同じ寸法を有する)または平板形態のいずれかが検討されている。平板について検討されている上限は、正方形の形状と仮定しておよそ5mm×5mmである。およそ同じ表面領域を有する他の形状も検討されている。
透水率は、一般には1〜100mls/min/M2/mmHgの範囲であり、25〜70mls/min/M2/mmHgの範囲であることが好ましい。Dionneら、ASAIO Abstracts、99頁(1993年)およびColtonら、The Kidney編、Brenner B M and Rector F C、2425〜89頁(1981年)に記載の通り定義、測定および算出されるカプセルのグルコース物質輸送係数は、10−6cm/秒超であり、10−4cm/秒超であることが好ましい。
当該デバイスのコアを取り囲む周囲または末端の領域(被覆物)は、選択透過性、生体適合性、および/または免疫隔離的であってよい。被覆物は、隔離された細胞を含まず、コアを完全に取り囲み(すなわち、隔離する)、それによってコア内の任意の細胞とレシピエントの体との間の接触を防ぐように作製される。生体適合性の半透性中空繊維膜およびそれらを作製する方法は、そのそれぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,284,761号および同第5,158,881号に開示されている(WO95/05452も参照されたい)。例えば、カプセル被覆物は、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,976,859号および同第4,968,733号および同第5,762,798号に記載のものなどのポリエーテルスルホン中空繊維から形成することができる。
選択透過性であるために、被覆物は、デバイスが埋め込まれた後に発生すると予想される免疫応答の種類および程度、ならびに、デバイスの中に、およびデバイスから外に眼内に移行することが望ましい最も大きい物質の分子サイズのどちらに対しても適した分画分子量(「MWCO」)の範囲を有するように形成する。デバイスを埋め込んだ後にレシピエントによって開始される可能性がある免疫学的攻撃の種類および程度は、デバイス中に隔離された1種または複数種の部分に一部左右され、レシピエントの同一性(すなわち、レシピエントがBAMの供給源とどれだけ密接に遺伝的に関連するか)に一部左右される。埋め込まれる組織または細胞がレシピエントに対して同種である場合、免疫拒絶反応は主として、埋め込まれた細胞に対するレシピエントの免疫細胞による細胞媒介性の攻撃を通じて進行し得る。組織または細胞がレシピエントに対して異種である場合、補体との抗体相互作用だけでなく、レシピエントの細胞溶解性の補体攻撃複合体が組み立てられることを通じた分子攻撃が優勢であり得る。
被覆物により、所定のサイズまでの物質が眼内に移行することが可能になるが、それより大きな物質が移行することは防がれる。より詳細には、周囲または末端の領域は、所定の範囲のサイズの孔または空隙を有し、その結果としてデバイスが選択透過性であるように作出する。周囲の被覆物のMWCOは、コアに対する免疫学的攻撃が行われるために必要とされる物質が接近することを阻止するために十分に低いにもかかわらず、PGF2aをレシピエントの眼に送達可能にするために十分に高くなければならない。本発明のデバイスの生体適合性被覆物のMWCOは約1kD〜約150kDであることが好ましい。
デバイスの被覆物に関して本明細書で使用される「生体適合性」という用語は、デバイスおよびその内容物の両方を集合的に指す。詳細には、「生体適合性」という用語は、埋め込まれたインタクトなデバイスおよびその内容物の、体の種々の防御系の有害な作用を回避する能力、およびかなりの期間、機能性のままである能力を指す。本明細書で使用される「防御系」という用語は、当該ビヒクルが埋め込まれる個体の免疫系によって開始される可能性がある免疫学的攻撃の種類、ならびに線維化反応、異物反応および個体の体に外来の物体が存在することによって誘発される可能性がある他の種類の炎症反応などの他の拒絶メカニズムを指す。免疫系からの防御反応または異物線維化反応の回避に加えて、本明細書で使用される「生体適合性」という用語は、ビヒクルおよびその内容物により、ビヒクルまたはその内容物の所望の機能に干渉することになる作用などの特異的な望ましくない細胞傷害性または全身性の作用が引き起こされないことも意味する。
デバイスの外側の表面は、選択された部位に埋め込むことに特に適するに選択または設計することができる。例えば、外側の表面は、周囲の組織の細胞が接着することが望ましいかどうかに応じて、滑らかであってよく、点状であってよく、または粗くてよい。形状または形態は、選択された埋め込み部位に特に適するように選択または設計することもできる。
デバイスの周囲または末端の領域(被覆物)の生体適合性は、因子を組み合わせることによってもたらされる。生体適合性および継続した機能性のために重要なのは、デバイスの形態、疎水性、およびデバイス自体の表面にも望ましくない物質が存在せず、デバイス自体から浸出可能な望ましくない物質も存在しないことである。したがって、ブラシ表面、ひだ、中間層または異物反応を引き出す他の形状もしくは構造は避ける。さらに、デバイスを形成する材料は、不必要な物質がデバイス材料自体から浸出しないことを保証するために十分に純粋である。さらに、デバイスを調製した後、デバイスに付着する、またはデバイスに吸収され、その後デバイスの生体適合性を損なう可能性がある体液または材料(例えば、血清)でデバイスの外側の表面を処理することは避ける。
第1に、デバイスの被覆物を形成するために使用する材料は、埋め込まれるデバイスのレシピエントの組織に適合性である、およびレシピエントに許容される能力に基づいて選択された物質である。レシピエントまたは分離された細胞に害を及ぼさない物質を使用する。好ましい物質としては、ポリマー材料、すなわち、熱可塑性のポリマーが挙げられる。特に好ましい熱可塑性のポリマー物質は、中程度に疎水性である熱可塑性のポリマー物質、すなわち、Brandrup Jら Plymer Handbook 第3版、John Wiley & Sons、NY(1989年)において定義されている通り、8(ジュール/m3)1/2から15(ジュール/m3)1/2までの間、またはより好ましくは9(ジュール/m3)1/2から14(ジュール/m3)1/2までの間の溶解性パラメータを有する熱可塑性のポリマー物質である。ポリマー物質は、有機溶媒に可溶性であるために十分に低いが、分割されて適切な膜を形成するために十分に高い溶解性パラメータを有するように選択する。そのようなポリマー物質は、不安定な求核部分を実質的に含まず、安定化剤の非存在下でさえも、酸化剤および酵素に対して高度に耐性であるべきである。特定のビヒクルについて検討されているin vivoでの残存期間も考慮すべきである:生理的状態およびストレスに曝露されたときに十分に安定である物質を選択するべきである。1年または2年を超過する期間などの長いin vivoでの残存期間でさえも十分に安定な多くの熱可塑性物質が公知である。
デバイスを構築するために使用する材料の選択については、参照により本明細書に組み込まれる、Dionne WO92/19195に詳細が記載されている通り、いくつもの因子によって決定される。簡単に述べると、種々のポリマーおよびポリマー混合物を使用して、カプセルの被覆物を製造することができる。デバイスおよびその成長表面を形成するポリマー膜としては、ポリアクリレート(アクリルコポリマーを含む)、ポリビニリデン、ポリ塩化ビニルコポリマー、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルジフルオライド、ポリオレフィン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリスルホン、ポリホスファセン、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリルニトリル/塩化コビニル)、ならびにそれらの誘導体、コポリマーおよび混合物を挙げることができる。
好ましい膜キャスティング溶液は、水混和性溶媒であるジメチルアセトアミド(DMACSO)に溶解されたポリスルホンまたは水混和性溶媒であるブチロラクトンに溶解されたポリエーテルスルホンのいずれかを含む。このキャスティング溶液は、場合によって、完成した膜の透過特性に影響を及ぼす親水性または疎水性の添加剤を含んでよい。ポリスルホンまたはポリエーテルスルホンに対する好ましい親水性添加剤はポリビニルピロリドン(PVP)である。他の適切なポリマーは、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルジフロライド(PVDF)、ポリエチレンオキシド、ポリオレフィン(例えば、ポリイソブチレンまたはポリプロピレン)、ポリアクリロニトリル/ポリ塩化ビニル(PAN/PVC)、および/またはセルロース誘導体(例えば、酢酸セルロースまたは酪酸セルロース)を含む。これらのポリマーおよびコポリマーならびに他の適切なポリマーおよびコポリマーに対して適合性である水混和性溶媒は、米国特許第3,615,024号の教示において見ることができる。
第2に、デバイスの生体適合性被覆物の調製に使用する物質は、浸出可能な発熱性の、または他の害を及ぼす、刺激性の、または免疫原性の物質を含まないか、そのような害を及ぼす物質を除去するために徹底的に精製されるかのいずれかである。その後、およびデバイスを埋め込む前に製造および維持する間、デバイスまたは被覆物が、その生体適合性に不利な影響を及ぼすことになる物質で不純物混和または汚染されるのを阻止するために多大な注意を払う。
第3に、テクスチャを含めたデバイスの外側の形態を、埋め込まれた後にレシピエントの眼との最適な境界面をもたらすように形成する。ある特定のデバイスの幾何学的な形状によっても異物線維化反応が特異的に引き出されることが見出されており、それは避けるべきである。したがって、デバイスは、ブラシ表面またはひだなどの中間層を有する構造を含有するべきではない。一般に、同じビヒクルまたは隣り合ったビヒクル由来のいずれの反対側のビヒクルの表面または端も、少なくとも1mm、好ましくは2mm超、最も好ましくは5mm超離れているべきである。好ましい実施形態としては、約200μmから350μmまでの間の外径および約0.5mmから6mmまでの間の長さを有する円柱が挙げられる。本発明のデバイスのコアはおよそ2.5μlの容積を有することが好ましい。しかし、当業者は、0.5μl未満(例えば、約0.3μl)のコア容積を有する「微粒子化された」デバイスを使用することも可能であることを認識されたい。
生体適合性デバイスの周囲の被覆物は、場合によって、埋め込まれるビヒクルに対する局所的な炎症反応を減少させるまたは阻止する物質、および/または埋め込まれる細胞または組織に適切な局所的な環境を生成するまたは育成する物質を含んでよい。例えば、免疫応答の1種または複数種のメディエーターに対する抗体を含めることができる。リンフォカイン腫瘍壊死因子(TNF)に対する抗体およびインターフェロン(IFN)に対する抗体などの利用可能な潜在的に有用な抗体をマトリックスの前駆体溶液に含めることができる。同様に、抗炎症性ステロイドを含めることができる。参照により本明細書に組み込まれる、Christenson、L.ら、J.Biomed. Mat. Res.、23巻、705〜718頁(1989年);Christenson,L.、Ph.D. thesis、Brown University、1989年を参照されたい。あるいは、血管新生(毛細血管床の内殖)を刺激する物質を含めることができる。
一部の実施形態では、本デバイスの被覆物は免疫隔離的である。すなわち、被覆物により、デバイスのコア内の細胞が、デバイスが埋め込まれる個体の免疫系から保護される。これは、(1)個体の体の害を及ぼす物質がコアに侵入することを阻止することによって、(2)個体と、コア内に存在する可能性がある炎症性材料、抗原性材料、または他の害を及ぼす材料との間の接触を最小限にすることによって、および(3)隔離された部分と個体の免疫系の有害な一部との間の免疫学的な接触を阻止するために十分な空間的な関門および体の関門をもたらすことによって成される。
一部の実施形態では、外側の被覆物は、限外濾過膜または細孔膜のいずれかであってよい。当業者は、限外濾過膜は約1〜約100ナノメートルの孔径の範囲を有する膜であり、一方細孔膜は約0.05ミクロンから約10ミクロンまでの間の範囲を有することを認識されたい。
この体の関門の厚さは変動してよいが、常に関門の両側の細胞および/または物質の間の直接的な接触を阻止するために十分な厚さである。この領域の厚さは、一般に、5ミクロンから200ミクロンの間にわたり;10〜100ミクロンの厚さが好ましく、20〜50ミクロンまたは20〜75ミクロンの厚さが特に好ましい。当該デバイスを使用することによって阻止することができる、または最小限にすることができる免疫学的攻撃の種類としては、マクロファージ、好中球、細胞免疫応答(例えば、天然キラー細胞および抗体依存性T細胞媒介性細胞傷害(ADCC))および液性応答(例えば、抗体依存性補体媒介性細胞溶解)による攻撃が挙げられる。
カプセル被覆物は、ポリアクリレート(アクリルコポリマーを含む)、ポリビニリデン、ポリ塩化ビニルコポリマー、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)、ポリホスファセン、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリルニトリル/塩化コビニル)、ならびにそれらの誘導体、コポリマーおよび混合物を含めた種々のポリマーおよびポリマー混合物から製造することができる。そのような材料から製造されるカプセルは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,284,761号および同第5,158,881号に記載されている。参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,976,859号および同第4,968,733号に記載のものなどのポリエーテルスルホン(PES)繊維から形成されるカプセルも使用することができる。
外側の表面の形態に応じて、カプセルは1型(T1)、2型(T2)、1/2型(T1/2)または4型(T4)にカテゴリー化されている。そのような膜は、例えば、Lacyら、「Maintenance Of Normoglycemia In Diabetic Mice By Subcutaneous Xenografts Of Encapsulated Islets」、Science、254巻、1782〜84頁(1991年)、Dionneら、WO92/19195およびBaetge、WO95/05452に記載されている。滑らかな外側の表面形態が好ましい。
当業者は、免疫特権がない部位には選択透過性の免疫隔離膜を有するカプセル被覆物が好ましいことを認識されたい。対照的に、免疫特権部位には、細孔膜または選択透過性の膜が適切であり得る。免疫特権部位に埋め込むために、PESまたはPS(それぞれ、ポリエーテルスルホンまたはポリスルホン)膜から作製されたカプセルが好ましい。
ポリマー接着剤の使用ならびに/または圧着、節止めおよび熱密封を含めた当技術分野で公知のカプセルを密封するための任意の適切な方法を使用することができる。さらに、任意の適切な「乾式」密封方法も使用することができる。そのような方法では、細胞を含有する溶液がそれを通して導入される、実質的に非多孔質の付属品が提供される。充填した後、カプセルを密封する。そのような方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,653,688号;同第5,713,887号;同第5,738,673号;同第6,653,687号;同第5,932,460号;および同第6,123,700号に記載されている。
本発明の方法に従って、PGF2aに加えて他の分子を一緒に送達することができる。例えば、抗血管新生因子と一緒に栄養因子(複数可)を送達することが好ましい。
一緒に送達することは、いくつもの方式で実現することができる。第1に、細胞を、記載の分子をコードする遺伝子を含有する別々の構築物でトランスフェクトすることができる。第2に、細胞を、2種以上の遺伝子ならびに必要な調節エレメントを含有する単一の構築物でトランスフェクトすることができる。第3に、2種以上の別々に操作された細胞系を、一緒にカプセル化することができる、または2種以上のデバイスを対象とする部位に埋め込むことができるかのいずれかである。
単一の転写物から多数の遺伝子が発現されることは、多重転写単位からの発現と比較して好ましい。例えば、Macejak、Nature、353巻、90〜94頁(1991年);WO94/24870;MountfordおよびSmith、Trends Genet.、11巻、179〜84頁(1995年);Dirksら、Gene、128巻、247〜49頁(1993年);Martinez−Salasら、J. Virology、67巻、3748〜55頁(1993年)およびMountfordら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、91巻、4303〜07頁(1994年)を参照されたい。
いくつかの指標として、BAMを眼内の2か所の異なる部位に同時に送達することが好ましい場合がある。例えば、神経網膜(RPEに対する神経節細胞)を供給するために神経栄養因子を硝子体に送達すること、および脈絡膜の脈管構造を供給するために抗血管新生因子をテノン下の空間経由で送達することが望ましい場合がある。デバイスは、眼の網膜、硝子体または前眼房を標的とするために結膜下に埋め込むこともできる。
本発明の方法およびデバイスは、霊長類、好ましくはヒトの宿主、レシピエント、患者、対象または個体において使用することが意図されている。本発明のデバイスおよび方法のために、いくつもの異なる埋め込み部位が検討されている。適切な埋め込み部位としては、これだけに限定されないが、眼の房水および硝子体液、眼周囲の空間、前眼房または後眼房、ならびに/またはテノン下嚢が挙げられる。本発明のデバイスは、結膜下に埋め込むこともできる。
埋め込まれるデバイスに対するレシピエントの免疫学的な応答の種類および程度は、レシピエントの、コア内の隔離された細胞との関連性に影響される。例えば、コアが同系の細胞を含有する場合、レシピエントがデバイス内の特定の細胞型または組織型に関して自己免疫を生じない限り、これらによって活発な免疫応答は引き起こされない。同系の細胞または組織はめったに利用できない。多くの場合、同種または異種の細胞または組織(すなわち、予定されるレシピエントと同じ種のドナー由来、またはそれとは異なる種由来)を利用することができる。免疫隔離デバイスを使用することにより、同種または異種の細胞または組織を、レシピエントを免疫抑制するという付随する必要性なく埋め込むことが可能になる。免疫隔離カプセルを使用することにより、不適合細胞(非自筆)を使用することも可能になる。したがって当該デバイスにより、従来の移植技法によって治療することができる個体よりもはるかに多くの個体を治療することが可能になる。
異種移植された組織に対する免疫応答の種類および勢いは、同系または同種の組織がレシピエントに埋め込まれた場合に発生する応答とは異なることが予想される。この拒絶は、第一に細胞媒介性の攻撃によって、または補体媒介性の攻撃によって進行し得る。ビヒクルのコアからIgGを排除することは、ほとんどの場合、標的の細胞または組織の細胞溶解を生じるためにIgG単独では不十分であるので、免疫防御の試金石ではない。免疫学的攻撃を媒介するために必要な決定的な物質が免疫隔離カプセルから除外されていれば、免疫隔離デバイスを使用して、必要な高分子量の産物を送達すること、または高分子量の物質に関する代謝機能をもたらすことが可能になる。これらの物質は、補体攻撃複合体の成分CIqを含み得る、または、これらは食作用性の細胞または細胞傷害性の細胞を含み得る。免疫隔離カプセルを使用することにより、これらの害を及ぼす物質と隔離された細胞との間に防御の関門が提供される。
本発明のデバイスはマクロカプセルであるが、当業者は、例えばRha、LimおよびSunに記載のものなどのマイクロカプセルも使用することができることを認識されたい(Rha、C. K.ら、米国特許第4,744,933号;Methods in Enzymology 137巻、575〜579頁(1988年);米国特許第4,652,833号;米国特許第4,409,331号を参照されたい)。一般に、マイクロカプセルは、(1)デバイスの外側の層からの細胞の完全な排除、および(2)デバイスの外側の層の厚さに関して、マクロカプセルとは異なる。一般には、マイクロカプセルは約1μlの容積を有し、104個よりも少ない細胞を含有する。より詳細には、マイクロカプセル化により、一般に、カプセル当たりおよそ1〜10個の生存可能な島または500個の細胞がカプセル化される。
MWCOが低いカプセルを使用して、カプセル化細胞を有する患者の免疫系の分子の相互作用をさらに阻止することができる。
本明細書に記載の方法に従って使用されるデバイスのいずれからも、少なくとも1次元において、隔離された細胞の生存率および機能を維持するために、コア内の隔離された細胞のいずれもがレシピエントの周囲の眼組織に十分にすぐ近傍であることがもたらされなければならない。しかし、デバイスを形成するために使用された材料の拡散の限界は、全ての場合において単にその形態的な制限に規定されるのではない。基本的なビヒクルの拡散特性、または栄養分もしくは酸素の輸送特性を変更または増強するある特定の添加剤を使用することができる。例えば、コアの内部の培地に酸素飽和ペルフルオロカーボンを補充し、したがって血液由来の酸素とすぐに接触する必要性を低下させることができる。これにより、例えば、勾配させたアンジオテンシンがビヒクルから周囲の組織中に放出され、毛細管の内殖を刺激している間、隔離された細胞または組織を生存可能なままにすることが可能になる。ペルフルオロカーボンを使用することに関する参照および方法は、参照により本明細書に組み込まれる、Faithful,N. S. Anaesthesia、42巻、234〜242頁(1987年)およびNASA Tech Briefs MSC−21480、U.S. Govt. Printing Office、Washington、D.C. 20402頁によってもたらされる。あるいはPC12細胞などのクローン細胞系に対して、遺伝子操作されたヘモグロビン配列を細胞系に導入して優れた酸素貯蔵をもたらすことができる。NPO−17517 NASA Tech Briefs、15巻、54頁を参照されたい。
デバイスの被覆物の厚さは、デバイスが存在することに対する患者の免疫応答を阻止するために十分であるべきである。この目的のために、デバイスは最低1μm以上の厚さを有し、細胞を含まないことが好ましい。
さらに、強化性の構造要素もデバイスに取り込むことができる。例えば、これらの構造要素は、不透過性であり、かつデバイスをレシピエントの眼組織につなぐことまたは縫合することができるように適切に構成されるように作製することができる。ある特定の状況では、これらの要素は、被覆物を確実に密封するように働き(例えば、円柱の端で)、それによってコア材料の隔離が完全になり得る(例えば、成形された熱可塑性のクリップ)。多くの実施形態では、これらの構造要素によって選択透過性の被覆物の相当な領域が妨げられるはずがないことが望ましい。
本発明のデバイスは、十分なサイズであり、埋め込んだ後に完全に回収するために耐久性である。好ましい本発明のデバイスはおよそ1〜3μlのコアを有する。
PGF2aと一緒に、少なくとも1つのさらなるBAMをデバイスから眼に送達することができる。例えば、少なくとも1つのさらなるBAMは、細胞性供給源または非細胞性供給源(またはそれらの組合せ)から提供され得る。少なくとも1つのさらなるBAMが非細胞性供給源から提供される場合、さらなるBAM(複数可)は、これだけに限定されないが、(a)密封剤;(b)足場;(c)被覆膜;(d)つなぎアンカー;および/または(e)コア媒体を含めた細胞系の1つまたは複数の成分に、カプセル化することができる、分散させることができる、または接着させることができる。そのような実施形態では、非細胞性供給源由来のBAMを一緒に送達することは、細胞性供給源由来のBAMと同じデバイスで起こり得る。
あるいは、2つ以上のカプセル化細胞系を使用することができる。例えば、少なくとも1つのさらなる生物活性分子は、核酸、核酸断片、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣薬、炭水化物、脂質、有機分子、無機分子、治療剤またはそれらの任意の組合せであってよい。詳細には、治療剤は、抗血管新生薬、ステロイド性抗炎症薬もしくは非ステロイド性抗炎症薬、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍薬、抗寄生虫薬、IOP低下剤、ペプチド薬、および/または任意の他の眼科的な使用が認可されている生物活性分子薬であってよい。
適切な賦形剤としては、これだけに限定されないが、任意の非分解性ポリマーもしくは生物分解性ポリマー、ヒドロゲル、溶解性エンハンサー、疎水性分子、タンパク質、塩、または他の製剤用に認可されている複合剤が挙げられる。
非細胞性の投薬量は、治療剤の濃度、および/または眼当たりのデバイスの数を変動させること、および/またはカプセル化する賦形剤の組成を改変することなどの当技術分野で公知の任意の適切な方法によって変動させることができる。細胞性の投薬量は、(1)デバイス当たりの細胞数、(2)眼当たりのデバイスの数、および/または(3)細胞当たりのBAM産生のレベルを変化させることによって変動させることができる。細胞による産生は、例えば、形質導入される細胞におけるBAMの遺伝子のコピー数、またはプロモーターによって推進されるBAM発現の効率を変化させることによって変動させることができる。非細胞性供給源からの適切な投薬量は、1日当たり約1pgから約1000ngまでの間にわたってよい。
本発明は、本明細書に記載のマクロカプセル性のデバイスを作製するための方法にも関する。デバイスは、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって形成することができる(例えば、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,361,771号;同第5,639,275号;同第5,653,975号;同第4,892,538号;同第5,156,844号;同第5,283,138号;および同第5,550,050号を参照されたい)。
使用される膜は、その分子量に基づいて、PGF2aなどの分子の拡散を調節するように適応させることもできる(Lysaghtら、56巻 J. Cell Biochem. 196頁(1996年)、Colton、14巻 Trends Biotechnol. 158頁(1996年)を参照されたい)。カプセル化の技法を使用して、細胞を、免疫抑制薬を用いるか、または免疫抑制薬を用いずに、免疫拒絶なく宿主に移植することができる。カプセルは、宿主に埋め込んだ後に、カプセルの拒絶を招く、または例えば分解によってカプセルが動作不能になるのに十分な有害な宿主応答を引き出さない生体適合性材料から作製することができる。生体適合性材料は、宿主の免疫系の成分などの大きな分子に比較的不透過性であるが、インスリン、成長因子および栄養分などの小さな分子には透過性であり、同時に、代謝廃棄物を除去することが可能である。種々の生体適合性材料は、本発明の組成物による成長因子の送達に適している。種々の外側の表面形態および他の機械特性および構造特性を有する多くの生体適合性材料が公知である。
熱可塑性の膜またはポリマー膜の被覆物を有するデバイスが望ましい場合、孔径の範囲および分布は、米国特許第3,615,024号による教示の通り、前駆体材料溶液(キャスティング溶液)の固体含有量、水混和性溶媒の化学組成を変動させること、または場合によって、キャスティング溶液に親水性添加剤もしくは疎水性添加剤を含めることによって決定することができる。孔径は、血液凝固薬および/またはバスの疎水性を変動させることによって調整することもできる。
一般には、キャスティング溶液は、溶解した水溶性ポリマーまたは水溶性コポリマーを含有する極性有機溶媒を含む。このポリマーまたはコポリマーは、溶媒混和性の水相と接触すると沈澱し、境界面部位で選択透過性の膜を形成する。膜の孔のサイズは、水相から溶媒相への拡散速度に左右され;親水性添加剤または疎水性添加剤は、拡散速度を変更することによって孔径に影響を及ぼす。水相が溶媒中を遠くへ拡散するにつれ、残りのポリマーまたはコポリマーが沈澱して、完成したデバイスに機械的強度を与える小柱状の支持体が形成される。
デバイスの外側の表面も同様に、溶解したポリマーまたはコポリマーが沈澱する条件によって決定することができる(すなわち、空気に曝露させると、開いた小柱様または海綿様の外側の皮が生成し、水性沈澱バスに浸漬すると、滑らかな選択透過性の膜二重層がもたらされ、水蒸気で飽和した空気に曝露させると、中間の構造がもたらされる)。
デバイスの表面のテクスチャは、押し出しノズルがバスの上に位置しているか、またはバスに浸漬しているかに一部依存する:ノズルがバスの表面より上に位置していれば、PAN/PVCの粗い外側の皮が形成され、一方ノズルがバスに浸漬していれば、滑らかな外側の表面が形成される。
周囲または末端のマトリックスまたは膜を、前もって形成し、コアを形成する材料を充填し(例えば、シリンジを使用して)、その後、コア材料が完全に封入されるように密封することができる。次に、マトリックスの前駆体材料がコア内に存在する場合、デバイスを、コアマトリックスの形成がもたらされる状態に曝露することができる。
本発明のデバイスにより、完全に分化した細胞または組織、足場依存性の細胞または組織、胎児もしくは新生児の細胞または組織、形質転換された細胞または組織、足場非依存性の細胞または組織を含めた多様な細胞型または組織型の埋め込みを提供することができる。隔離される細胞は、ドナー(すなわち、成人、新生児および胎児の細胞または組織を含めた1次の細胞または組織)、またはin vitroで複製された細胞(すなわち、遺伝子改変された細胞を含めた不死化された細胞または細胞系)のいずれかから調製される。全ての場合において、効果的なレベルの必要産物を産生させるため、または効果的なレベルの必要代謝機能を供給するために十分な量の細胞を、一般に滅菌状態で調製し、隔離する前に適宜維持する(例えば、ハンクス塩などの平衡塩類溶液中、またはハムF12(Ham’s F12)などの栄養培地中)。
本発明のECTデバイスは、患者からの栄養分が細胞内に容易に接近できるようにするため、または細胞への患者のタンパク質の侵入が、細胞によって影響を受けて代謝機能がもたらされるようにするため、デバイスの中心と最も近い被覆物の一部との間の距離を縮小しやすい形状である。その点で、円柱などの非球状の形状が好ましい。
本発明のデバイスのコア内に置かれる細胞の数または組織の量(すなわち、装填密度)に影響を及ぼす4つの重要な因子は、(1)デバイスのサイズおよび幾何学的な形状;(2)デバイス内部の有糸分裂活性;(3)コアの調製および/または装填に必要とされる粘性;および(4)埋め込み前のアッセイおよび性格づけの必要性である。
これらの因子のうち第1の因子(デバイスのサイズおよび幾何学的な形状)に関して、重大な栄養分および代謝的な必要物が細胞内に拡散すること、ならびに代謝産物が細胞から離れて拡散することが、細胞の継続した生存率にとって重大である。ARPE−19細胞などのRPE細胞については、付近の細胞が瀕死細胞を貧食し、残骸をエネルギー源として使用することができる。
代謝的な必要物の中でデバイス内への物質の拡散に応ずるのは酸素の必要性である。特異的な細胞の酸素の必要量を、選択された細胞について決定しなければならない。Wilson D. F.ら、J. Biol. Chem.、263巻、2712〜2718頁、(1988年)にもたらされる酸素の代謝の決定についての方法および参照を参照されたい。
第2の因子(細胞分裂)に関して、選択された細胞が、デバイス内にある間活動的であると予測される場合は、利用できる空間を満たすまで、または接触阻害などの現象によりさらなる分裂が阻害されるまで、細胞は分裂し続ける。複製細胞については、デバイスのコアを完全に満たすことが拡散の限界による重大な栄養分の欠乏につながらないように、デバイスの幾何学的な形状およびサイズを選択する。
第3の因子(コア材料の粘度)に関して、デバイスの容量の最大70%までを占める密度の細胞が生存可能であり得るが、この濃度範囲の細胞溶液はかなりの粘度を有する。非常に粘度がある溶液中の細胞をデバイス内に導入することは極めて困難である。一般に、二段階戦略および同時押し出し戦略のどちらについても、30%より高い細胞の装填密度はあまり有用でなく、一般に、最適な装填密度は20%以下である。例えば、組織の断片について、内部の細胞の生存率を保つために、上記と同じ一般的なガイドラインを順守すること、および組織断片は直径が250ミクロンを超えるべきでなく、最も近い拡散表面との間に内部細胞が15個未満、好ましくは10個未満であることが重要である。
最後に、第4の因子(埋め込み前およびアッセイの必要性)に関して、多くの場合、デバイスの調製と埋め込みとの間にある特定の時間量が必要とされる。例えば、デバイスに、その生物活性に関して性格づけることが重要であり得る。したがって、有糸分裂的に活動性の細胞については、好ましい装填密度には、性格づけアッセイを実施するために存在する必要がある細胞の数も考慮する。
ほとんどの場合、in vivoで埋め込む前に、in vitroアッセイを使用してデバイス内でのBAM(例えば、PGF2a)の有効性を確立することが重要になる。デバイスは、細胞当たりに対する、または単位容積ベースのビヒクルの有効性を決定することを可能にするために、モデル系を使用して構築し、分析することができる。
デバイスの装填に対する、およびデバイスの有効性を決定することに対するこれらのガイドラインに従って、次に、埋め込み用の実際のデバイスのサイズを、特定の適用に必要とされる生物活性の量によって決定する。デバイスの数およびデバイスのサイズは、埋め込みに際して治療効果をもたらすために十分であるべきであり、特定の適用に必要とされる生物活性の量によって決定される。治療的物質を放出する分泌性の細胞については、標準の投薬量の考察および当技術分野で公知の基準を使用して、必要な分泌性の物質の量を決定することができる。考慮されるべき因子としては、レシピエントのサイズおよび重さ;細胞の生産性または機能性のレベル;および、必要に応じて、機能が戻っているまたは増大している器官または組織の通常の生産性または代謝活性が挙げられる。一部の細胞は、免疫隔離および埋め込みの手順を生き残ることができないことを考慮することも重要である。さらに、レシピエントが、埋め込みの有効性に干渉する可能性がある既存の状態を有するかどうかも考慮しなければならない。何千個の細胞(例えば、約5×102個から約500,000個までの細胞)を含有する本発明のデバイスを容易に製造することができる。例えば、現在の臨床的なデバイスは、200,000個から400,000個までの間の細胞を含有するが、一方、微粒子化されたデバイスは、10,000個から100,000個までの間の細胞を含有する。
カプセル化細胞療法は、細胞を、宿主内に埋め込む前に半透性の生体適合性材料で取り囲むことによって、細胞をレシピエント宿主の免疫系から隔離するという概念に基づく。例えば、本発明はレシピエント宿主内に埋め込んだ際のデバイスのコア内のARPE−19細胞に対する宿主の免疫系の有害な影響を最小限にする免疫隔離カプセル中に、遺伝子操作されたARPE−19細胞をカプセル化したデバイスを含む。ARPE−19細胞を、細孔膜で形成された埋め込み式のポリマー性カプセル中に封入することによって宿主から免疫隔離する。この手法により、宿主と埋め込まれる組織との間の細胞間接触が防がれ、それによって直接提示による抗原認識が排除される。
カプセル化細胞療法(「ECT」)を使用してPGF2aを送達することにより、局所的なPGA療法の種々の制限が克服すべきである。ECT送達の利点は、低く、持続的で治療的な用量の薬物を送達可能であることにある。さらに、ECT送達は、硝子体に直接施されるので、ECTでは、滴剤のボーラス投薬よりも有効であるがはるかに低い用量を送達し、それによって、都合の悪い副作用を潜在的に回避することができる。さらに、ECTにより、一定かつ持続的なむらのない投薬がもたらされ、それによりIOPのゆらぎが潜在的に排除される。
本明細書に記載の方法およびデバイスを使用して、PGF2aを眼内(例えば、前眼房および硝子体腔の中)または眼周囲(例えば、テノン嚢の内部または真下)、またはその両方に送達することができる。本発明のデバイスは、種々の眼の障害、眼の疾患および/または視覚に影響する疾患を治療するための受容体の制御放出および持続放出をもたらすためにも使用することができる。
眼内、好ましくは硝子体内に、PGF2aを1日当たり患者当たり眼当たり50pg〜500ng、好ましくは100pg〜100ngおよび最も好ましくは1ng〜50ngの投薬量の範囲で送達することが検討されている。眼周囲への送達、好ましくはテノン下の空間または領域内への送達は、わずかに高い、最大1日当たり患者当たり1μgまでの投薬量の範囲が検討されている。好ましい一実施形態では、1日当たりデバイス当たり約1ng〜約20ngのPGF2aを送達すること(in vivo)が検討されている。
本発明の種々の実施形態によって治療することができる眼の障害としては、これだけに限定されないが、緑内障(例えば、開放隅角緑内障)が挙げられる。
当業者は、加齢黄斑変性としては、これだけに限定されないが、滲出型(wet)加齢黄斑変性および委縮型加齢黄斑変性、滲出型(exudative)加齢黄斑変性および近視性変性が挙げられることを認識されたい。
好ましい実施形態では、治療される障害は緑内障、例えば、開放隅角緑内障である。当業者は、緑内障は眼圧の上昇を特徴とする疾患であることを認識されたい。PGF2aを局所投与することによってIOPが低下することが示されているが、そのような治療は多くの場合、許容できない副作用を伴う。したがって、PGF2aを送達するためにECTを使用することにより、緑内障に罹患している患者においてIOPが低下する、かつ/または安定する。
緑内障は、視神経症の特徴的なパターンで網膜神経節細胞の損失を伴う視神経の疾患グループの一部である。眼圧の上昇(例えば、22mnHg超)は、緑内障を発症する有意な危険因子になり得る。しかし、ある人では比較的低い圧で神経傷害を生じることがあるが、一方別の人では、何年も高い眼圧を有するにもかかわらず傷害を生じないこともある。未治療の緑内障は、視神経の恒久的な傷害および結果として生じる視野傷害につながり、失明に進行する恐れがある。
緑内障は、「開放隅角」緑内障または慢性緑内障および「閉塞隅角」緑内障または急性緑内障の2つの主要カテゴリーに分類することができる。閉塞隅角、すなわち急性緑内障は、突然出現し、多くの場合有痛性の副作用を伴い、通常すぐに診断されるが、視覚の傷害および損失は非常に突然である。開放隅角、すなわち慢性緑内障は、緩慢に進行する傾向があり、患者は疾患が相当重大に進行するまで症状に気づかない可能性がある。いずれの形でも、一度視野が失われれば、傷害は決して逆転しない。
大部分の緑内障に対する主要な危険因子は眼圧の増加である。眼圧は、眼の毛様体の、液体の房水を産生し、線維柱帯網を通して房水をドレナージする機能である。房水は、毛様体から、後ろ側に水晶体および毛様小帯が結合し、前側に虹彩が結合した後眼房に流れる。房水は次に虹彩の瞳孔を通って、後ろ側に虹彩が結合し、前側に角膜が結合した前眼房に流れる。ここから、線維柱帯網からシュレム管経由で強膜神経叢および全身の血液循環に房水が排出される。開放隅角緑内障では、線維柱帯網を通る流れが低下し;閉塞隅角緑内障では、虹彩が線維柱帯網に対して前方に押され、流体が漏れることが遮断されている。
緑内障の視神経症と眼圧が高いこととの一致しない関連性は、解剖学的構造、眼の発生、神経圧迫外傷、視神経の血流、興奮性神経伝達物質、栄養因子、網膜神経節細胞/軸索変性、グリア支持細胞、免疫、およびニューロンの損失加齢メカニズムに関連する。
本明細書に記載のデバイスおよび技法の使用により、他の送達経路と比較していくつかの利点が提供される:PGF2aを眼に直接送達することができ、それにより不必要な末端の副作用が減少する、または最小限になり、局所的な適用と比較して非常に少ない用量(すなわち、ミリグラムではなく、ナノグラムまたは低マイクログラムの量)のBAMを送達することができ、それによって副作用を潜在的に少なくすることもできる。さらに、生存細胞は新しく合成されたPGF2aを持続的に産生するので、これらの技法は、投与間で用量が大きく上下し、BAMが持続的に分解されるが持続的に補充されないPGF2aの注射または局所送達よりも優れているはずである。したがって、PGF2aを送達するためにECTを使用することにより、他のPGF2a療法に付随する問題の一部(または全部)を克服することが検討されている。詳細には、ECTにより、低く、持続的で治療的な投薬量のPGF2aを送達することができる(かつPGF2aを眼の硝子体に直接送達することができる)ので、不必要な副作用を低減または排除することができる。さらに、ECTによって一定の(かつ持続的な投薬)がもたらされ、緑内障患者におけるIOPのゆらぎを回避することができる。
hCox−2を発現し、それにより今度は、PGF2aの産生が上方制御されるように遺伝子操作された生細胞および生細胞系を、本発明のデバイスにカプセル化し、眼の任意の適切な解剖学的構造の中に外科的に挿入することができる(眼球後の麻酔下)。例えば、デバイスは、眼の硝子体内に外科的に挿入することができ、取り出しの助けになるようそこで強膜につなぐことが好ましい。デバイスは、所望の予防または療法を実現するために必要な時間、硝子体中に留めることができる。例えば、所望の療法としては、ニューロンまたは光受容器の生存または修復を促進すること、または脈絡膜または網膜の血管新生を阻害することおよび/または反転させること、ならびにぶどう膜の炎症、網膜の炎症および視神経の炎症を阻害することが挙げられる。硝子体に置くことで、PGF2aを網膜または網膜色素上皮(RPE)に送達することができる。
他の実施形態では、細胞を装填したデバイスは、硝子体内に埋め込むよりも浸潤性が低い、眼周囲のテノン嚢として公知の空間の内部または真下に埋め込まれる。したがって硝子体の出血および/または網膜剥離などの合併症は潜在的に排除される。この投与経路により、PGF2aをRPEまたは網膜に送達することも可能になる。眼周囲への埋め込みは、脈絡膜の血管新生ならびに視神経およびぶどう膜の炎症を治療するために特に好ましい。一般に、眼周囲の埋め込み部位から送達することにより、PGF2aを脈絡膜の脈管構造、網膜の脈管構造および視神経を循環させることが可能になる。
本発明の生体適合性デバイスの埋め込みは、滅菌条件下で実施される。デバイスは、シリンジまたは当業者に公知の任意の他の方法を使用して埋め込むことができる。一般に、デバイスは、レシピエントの体の、分泌産物または機能をレシピエントに適切に送達し、栄養分を埋め込まれる細胞または組織に送達することが可能になり、かつデバイスを回収および/または再配置するためにデバイスに接近することも可能になる部位に埋め込む。いくつもの異なる埋め込み部位が検討されている。これらとしては、例えば、房水、硝子体液、テノン下嚢、眼周囲の空間および前眼房が挙げられる。眼周囲部位などの免疫特権がない埋め込み部位、および他の前眼房(房水)および後眼房(硝子体)の外側の領域に対して、カプセルが免疫隔離的であることが好ましい。
細胞がデバイスの機能の内部に固定化されたことを、厳密に埋め込み前と埋め込み後の両方で検証することが好ましい。これらの目的のために当技術分野で周知の任意のアッセイまたは診断試験を使用することができる。例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、クロマトグラフィーによるアッセイもしくは酵素的アッセイ、または分泌産物に特異的なバイオアッセイを使用することができる。所望であれば、埋め込み体の分泌性の機能を、レシピエントから適切な試料(例えば、血清)を採取し、それらをアッセイすることによって、経時的にモニターすることができる。
多くの先行技術のデバイスおよび外科的な技法を使用した結果、多数の網膜剥離が生じた。本発明のデバイスおよび方法はいくつかの他の療法と比較して浸潤性が低いので、この合併症の発生は少なくなる。
当技術分野で公知の任意の修飾された形、切断された形および/または突然変異タンパク質の形のhCox−2および/またはPGF2aを、本発明に従って使用することができる。非限定的な例として、Cox−2様分子としては、Cox−2鋳型から分子的に進化した化合物;なおCox−2生物活性(例えば、PGF2aの産生を上方制御すること)を保持するドメインシャッフルされたCox−2化合物;および/または非常に遠い系統学的な種(例えば、クラゲ)由来のCox−2オルソログ/パラログを挙げることができる。さらに、これらの受容体の活性断片(すなわち、治療効果を実現するために十分な生物活性を有する断片)を使用することも検討されている。1つまたは複数のポリエチレングリコール(PEG)または他の繰り返しポリマー部分ならびにこれらのタンパク質の組合せおよびこれらのポリシストロニック版を接着させることによって修飾された受容体分子も検討されている。
本明細書に記載の方法による多くの状態の治療では、適切な治療量を供給するために、眼当たり、ただ1つ、または多くてもの50個未満の埋め込みデバイスが必要である。1日当たり患者当たり眼当たりの治療投薬量は、約0.1pgから1000ngまでの間であってよい(例えば、1日当たり患者当たり眼当たり0.1pgから500ngまでの間;1日当たり患者当たり眼当たり0.1pgから250ngまでの間、0.1pgから100ngまでの間、0.1pgから50ngまでの間、0.1pgから25ngまでの間、0.1pgから10ngまでの間、または0.1pgから5ngまでの間)。例えば、1日当たりデバイス当たり約1ngから20ngまでの間を1日当たりデバイス当たり眼に送達することができる。本発明のデバイスのいずれも、約1,000個から約500,000個までの間の細胞を、その型に応じて個々に、または集塊の形で貯蔵することができる。
本発明を、特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を限定しない以下の実施例においてさらに説明する。
(実施例1)
サブクローニング
ヒトシクロオキシゲナーゼ2、hCox−2、(GenBank受託番号NM000963.1)に対するcDNAを、所望の産物に特異的なオリゴヌクレオチドプライマー対を使用したPCRによって増幅した。増幅産物を適切な制限エンドヌクレアーゼで消化し、図1に概略図を示したNeurotechの哺乳動物発現ベクターpKAN3にライゲーションした。pKAN3の骨格は、ARPE−19−hCNTF細胞系を創出するために使用されるpNUT−IgSP−hCNTF発現プラスミドに基づく。
サブクローニング
ヒトシクロオキシゲナーゼ2、hCox−2、(GenBank受託番号NM000963.1)に対するcDNAを、所望の産物に特異的なオリゴヌクレオチドプライマー対を使用したPCRによって増幅した。増幅産物を適切な制限エンドヌクレアーゼで消化し、図1に概略図を示したNeurotechの哺乳動物発現ベクターpKAN3にライゲーションした。pKAN3の骨格は、ARPE−19−hCNTF細胞系を創出するために使用されるpNUT−IgSP−hCNTF発現プラスミドに基づく。
pKAN3のヌクレオチド配列を以下に示す:
形質転換された組換えクローンを、カナマイシンで選択し、精製されたミニプレッププラスミドDNAを制限消化およびアガロースゲル電気泳動分析によって分析した。適切な挿入断片を含有する推定プラスミドクローンを、自動ジデオキシシーケンシングによって、その後Vector NTI v7.0配列分析ソフトウェア(Invitrogen Corp、Carlsbad、CA)を使用した整列化分析によって検証した。
(実施例2)
細胞系の構築
検証されたプラスミドクローンを使用してARPE−10細胞(すなわち、NTC−200細胞)をトランスフェクトして安定なポリクローン細胞系を得た。簡単に述べると、予め18時間培養した200〜300K個の細胞を、Fugene6トランスフェクション試薬(Roche Applied Science、Indianapolis IN)6.0μlを製造者の推奨に従って使用して、プラスミドDNA3.0μgでトランスフェクトした。トランスフェクションは、10%のFBSを有する2.0〜3.0mlのDMEM/F12、内皮SFMまたはOptimem培地(Invitrogen Corp、Carlsbad、CA)において実施した。24〜48時間後、細胞を1.0μg/μlのG418を含有する新鮮培地を供給するか、またはG418を含有するT−25組織培養フラスコで継代した。細胞系を、14〜21日間、正常な成長が再開するまで選択下で継代し、その期間の後、薬物を除去し、特徴づける前に細胞を回復させた(約1週間)。
細胞系の構築
検証されたプラスミドクローンを使用してARPE−10細胞(すなわち、NTC−200細胞)をトランスフェクトして安定なポリクローン細胞系を得た。簡単に述べると、予め18時間培養した200〜300K個の細胞を、Fugene6トランスフェクション試薬(Roche Applied Science、Indianapolis IN)6.0μlを製造者の推奨に従って使用して、プラスミドDNA3.0μgでトランスフェクトした。トランスフェクションは、10%のFBSを有する2.0〜3.0mlのDMEM/F12、内皮SFMまたはOptimem培地(Invitrogen Corp、Carlsbad、CA)において実施した。24〜48時間後、細胞を1.0μg/μlのG418を含有する新鮮培地を供給するか、またはG418を含有するT−25組織培養フラスコで継代した。細胞系を、14〜21日間、正常な成長が再開するまで選択下で継代し、その期間の後、薬物を除去し、特徴づける前に細胞を回復させた(約1週間)。
これらの細胞系からのプロスタグランジンF2αの産生/合成の安定性を、PGF2aアルファ高感度ELISAキット(Assay Designs、Ann Arbor、MI)を使用して数週間にわたって測定した。簡単に述べると、10%のFBSを有するDMEM/F12中、12ウェル組織培養プレートで予め培養した50K個の細胞を、HBSS(Invitrogen Corp、Carlsbad、CA)中で2回洗浄し、次いでFBS(Invitrogen Corp、Carlsbad、CA)を欠く1.0mlのDMEM/F12基本培地で24時間パルスした。パルス培地を−20℃で保管し、採取の1週間以内に製造者のプロトコールの通りアッセイした。
均等物
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細を上記の詳細な説明に付随して明記した。本明細書に記載の方法および材料と類似のまたは均等な任意の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料をここで記載する。本発明の他の特徴、目的および利点は、詳細な説明から、および特許請求の範囲から明らかになる。本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、複数の指示対象を含む。特に定義のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書で引用した全ての特許および刊行物は参照により組み込まれる。
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細を上記の詳細な説明に付随して明記した。本明細書に記載の方法および材料と類似のまたは均等な任意の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料をここで記載する。本発明の他の特徴、目的および利点は、詳細な説明から、および特許請求の範囲から明らかになる。本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、複数の指示対象を含む。特に定義のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書で引用した全ての特許および刊行物は参照により組み込まれる。
前述の詳細な説明は、例示のためだけに提示し、開示された正確な形に本発明を限定するものではないが、添付の特許請求の範囲によって限定される。
Claims (37)
- 配列番号1の核酸配列を含む発現ベクター。
- pKAN3ベクターである、請求項1に記載の発現ベクター。
- 請求項1に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
- ARPE−19細胞である、請求項3に記載の宿主細胞。
- 請求項1に記載の発現ベクターを含む細胞系。
- ヒトCox−2(hCox−2)酵素を発現するように遺伝子操作されたARPE−19細胞を含む細胞系であって、該hCox−2酵素は、配列番号1の核酸配列によってコードされる、細胞系。
- 前記hCox−2酵素の前記発現により、プロスタグランジンF2アルファ(PGF2a)の産生が上方制御される、請求項6に記載の細胞系。
- 1日当たり細胞100万個当たり約1〜約20ngのPGF2aを発現する、請求項7に記載の細胞系。
- 埋め込み式の細胞培養デバイスであって、
a)ヒトCox−2(hCox−2)酵素を発現するように遺伝子操作された1つまたは複数のARPE−19細胞を含むコアであって、該hCox−2酵素は、配列番号1の核酸によってコードされ、hCox−2の該発現により、該1つまたは複数のARPE−19細胞によるプロスタグランジンF2アルファ(PGF2a)の産生が上方制御される、コアと、
b)該コアを取り囲む半透膜であって、該膜を通じてPGF2aの拡散が可能になる膜と
を含むデバイス。 - 1日当たり約1〜約20ngのPGF2aを産生する、請求項9に記載のデバイス。
- 前記コアが、前記半透膜の内部に配置されたマトリックスをさらに含む、請求項9に記載のデバイス。
- 前記マトリックスが、ヒドロゲルまたは細胞外マトリックスの成分を含む、請求項11に記載のデバイス。
- 前記ヒドロゲルが、多価イオンと架橋結合したアルギネートを含む、請求項12に記載のデバイス。
- 前記マトリックスが複数のモノフィラメントを含み、該モノフィラメントが
a)撚り合わされて撚糸にされるか、もしくは織り合わされてメッシュにされるか、または
b)撚り合わされて、織り合わされていない束である撚糸にされ、
前記細胞がその上に分布する、請求項11に記載のデバイス。 - 前記モノフィラメントが、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセトニトリル、ポリエチレンテレフタラート、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリブトエステル、絹、綿、キチン、炭素および生体適合性の金属からなる群から選択される生体適合性材料を含む、請求項14に記載のデバイス。
- つなぎアンカーをさらに含む、請求項9に記載のデバイス。
- 前記つなぎアンカーがアンカーループを含む、請求項16に記載のデバイス。
- 前記アンカーループが、前記デバイスを眼球構造に固着するように適合されている、請求項17に記載のデバイス。
- 眼内に埋め込まれる、請求項18に記載のデバイス。
- 眼の硝子体、房液、テノン下の空間、眼周囲の空間、後眼房、または前眼房の中に埋め込まれる、請求項19に記載のデバイス。
- 前記眼の硝子体内に埋め込まれる、請求項20に記載のデバイス。
- 被覆物が、選択透過性の免疫隔離膜を含む、請求項9に記載のデバイス。
- 前記被覆物が細孔膜を含む、請求項9に記載のデバイス。
- 中空繊維または平板として構成されている、請求項9に記載のデバイス。
- 少なくとも1つのさらなる生物活性分子が前記デバイスから一緒に送達される、請求項9に記載のデバイス。
- 前記少なくとも1つのさらなる生物活性分子が非細胞性供給源由来である、請求項25に記載のデバイス。
- 前記少なくとも1つのさらなる生物活性分子が細胞性供給源由来である、請求項25に記載のデバイス。
- 前記少なくとも1つのさらなる生物活性分子が、前記コア内の1つまたは複数の遺伝子操作されたARPE−19細胞によって産生される、請求項27に記載のデバイス。
- 眼の障害を治療するための方法であって、請求項9に記載の埋め込み式の細胞培養デバイスを患者の眼内に埋め込み、PGF2aが治療有効量で産生されることを可能にし、それによって前記眼の障害を治療することを含む方法。
- 前記治療有効量のPGF2aの産生が、1日当たり細胞100万個当たり約1〜約20ngである、請求項29に記載の方法。
- 前記眼の障害が緑内障である、請求項30に記載の方法。
- 前記眼の障害が開放隅角緑内障である、請求項31に記載の方法。
- PGF2aが産生されることにより、前記患者の眼圧が低下するか、眼圧が安定するか、または眼圧が低下かつ安定する、請求項31に記載の方法。
- PGF2aをレシピレント宿主に送達する方法であって、請求項9に記載の埋め込み式の細胞培養デバイスを前記レシピレント宿主の標的領域内に埋め込むことを含み、前記標的領域において、前記カプセル化された1つまたは複数のARPE−19細胞によってPGF2aが分泌される、方法。
- 前記標的領域が、脳、室、脊髄、眼の房水および硝子体液、ならびに眼の後眼房および前眼房からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
- 前記標的領域が、眼の房水および硝子体液、ならびに眼の後眼房および前眼房からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
- 請求項9に記載の埋め込み式の細胞培養デバイスを作製する方法であって、
a)少なくとも1つのARPE−19細胞を、配列番号1の核酸配列を発現するように遺伝子操作するステップと、
b)該遺伝子改変されたARPE−19細胞を半透膜内にカプセル化するステップと
を含む方法。
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