[0048]図1は、掘削孔が地盤を通して連続ループに掘削された地中連続ループ熱交換器の例示的一実施形態を示す。地中連続ループ熱交換器10は、掘削孔12が第1の位置、例えば埋設システムのための地層18内、または地表システムのための地層18の表面すなわち地面の上において開口する、第1の端部16における入口14を含む掘削孔12と、掘削孔12が、地層18の第2の位置、例えば埋設システムのための地層18内、または地表システムのための地層18の表面すなわち地面の上の、地層18の第2の位置において開口する、第2の端部22における出口20を含む。掘削孔12の大部分は、季節的な温度の影響を受けやすい大地の層(ground level)24より実質的に下、すなわち、通常、表面26の下61.0から243.8cm(2から8フィート)の間に存在する。流体のための導管28(切り欠き図に示す)が、掘削孔12の少なくとも一部分の中に配置される。例示的一実施形態では、導管は、合成物質、金属もしくは金属合金で形成されたチューブ(tube)もしくは管であってよく、内面もしくは外面のすべてもしくは一部の上に、同じ材料、異なる材料または組み合わせた材料からなる被膜を有してよい。
[0049]図1は、地層18内の掘削孔12の第1の端部16を有し、反転する前に(before turning)表面26から深さ(D)まで進み、例えば、対称的にまたは同じ円弧で第2の端部22における表面26に向かって戻り、地層18で終端する埋設システムを示す。地中熱交換器の実働深さ(working depth)(DW)は、掘削孔が、季節的な温度の影響を受けやすい大地の層24より下に延びる深さとして測定される。
[0050]図示された例示的実施形態では、第1の端部16が入口であり、第2の端部22が出口であるが、入口と出口とは、流体のための導管28の、大地調達ヒートポンプまたは熱交換器システム38に対する供給管路34および戻り管路36との機能的な接続を容易にするために、必要に応じて切り替えられてよい。一例では、構造物40の温度または他の環境パラメータを調節するために、大地調達ヒートポンプ38自体が、構造物40に機能的に接続される。図1では、大地調達ヒートポンプ38が、構造物40の地下室の中に置かれる。
[0051]入口14および出口20は、所定の距離(DS)だけ分離される。所定の距離は、入口14における掘削孔12の熱膜42と出口20における掘削孔12の熱膜44とが実質的に独立するように選択される。熱膜は、図1の点線で示される。図1では、所定の距離(DS)は大きく、それぞれの端部における熱膜は、決して重ならない。
[0052]図2は、入口14と出口20とがずっと小さい所定の距離(DS)だけ分離された、地中連続ループ熱交換器10の第2の実施形態の拡大図を示す。図2の実施形態では、入口14および出口20のそれぞれの熱膜42、44は、それぞれの熱膜42、44の間の分離距離(DE)で立証されるように、重ならない。適切な所定の距離(DS)の一例は、少なくとも約7.62メートル(25フィート)、あるいは少なくとも約3.05メートル(10フィート)、あるいは少なくとも約0.91メートル(3フィート)、あるいは約0.91メートルと約3.05メートル(約3フィートと約10フィート)との間、あるいは約0.91メートルと約1.52メートル(約3フィートと約5フィート)との間である。図2に示される例では、所定の距離(DS)において、熱膜42、44の分離距離(DE)は、ゼロより大きく、好ましくは少なくとも約30.5cm(約1フィート)より大きく、あるいは少なくとも約91.4cm(約3フィート)より大きいことが分かる。
[0053]掘削孔が、それらを分離する明確に定められた直線距離を有する理由は、掘削孔間の熱対流および熱伝導を補償し、掘削孔を取り囲む大地温度が自然に復活するのに十分な領域が存在することを確実にするためである。エネルギーが、掘削孔の中に除去または注入されるので、周囲の地層が、時間がたつにつれて暖まるかまたは冷える。例えば、周囲の地層は、地盤の平均温度より冷たい流体が掘削孔を通って循環するときに大地から除去されたエネルギーを、熱膜内の領域を暖めることによって補う。このことは、大地調達ヒートポンプが暖房モードで動作されているときに起こる。掘削孔が、互いに接近しすぎているか、または浅すぎるならば、掘削孔と地盤との間もしくはその逆のエネルギー伝達は、地盤が順応できるよりも速いペースとなり、大地温度が熱流体の温度付近で均一になるという結果をもたらすであろう。掘削孔が互いに接近しすぎて隔置される場合には、熱連通は、供給源(source)と除去源(sink)との間にあるのではなく、掘削孔間にあるであろう。このことは、その場における掘削孔の熱効率の低下をもたらし、結果として、機器にストレス、非能率または突発故障をもたらす。接近して隔置された掘削孔を補償するために、1つの選択肢は、より多くの掘削孔を掘削すること、または直線深さを増すことであり、そのことは、コストを増加させる。
[0054]所定の距離(DS)は、用途によって変わる可能性があり、掘削孔が配置される地層の特性に対して、また用地の大きさに対して適切であるように、かつ/または地中連続ループ熱交換器で補助される大地調達ヒートポンプまたは熱交換器システムによってその温度が調節される構造物40の負荷要件に基づいて、選択される。例えば、距離の制約があまりない場合は、図1の例示的実施形態に示されるような掘削孔12の構成は、所定の距離(DS)が非常に大きいように、例えば数十フィートまたは数百フィート程度に、あるいは少なくとも約4.57メートル(15フィート)程度に、選択されてよい。しかし、距離の制約が適応される別の実施形態では、図2の例示的実施形態に示されるような掘削孔12の構成は、所定の距離(DS)が非常に小さいように、例えば30.5cm(1フィート)程度でかつ3.05メートル(10フィート)未満に、選択されてよい。図2に示される第2の例では、掘削孔は、入口および出口においてほぼ垂直であり、そのことは、例えば本明細書でさらに説明されるように、指向性ボーリング(directional boring)装置を用いて掘削孔を形成することによって達成される。
[0055]他の一例では、掘削孔が、例えば3.05メートル(10フィート)未満、あるいは1.52メートル(5フィート)未満の小さい所定の距離(DS)を有するとともに、各熱膜が、例えば3.05メートル(10フィート)未満、あるいは1.52メートル(5フィート)未満、さらには0.61メートル(2フィート)未満の小さい分離距離(DE)を有するために、掘削孔は、入口および出口においてほぼ垂直である必要はない。例えば、切り欠き斜視図で図3に示されるように、地中連続ループ熱交換器10の例示的一実施形態は、例えば3.05メートル(10フィート)未満、あるいは1.52メートル(5フィート)未満の小さい所定の距離(DS)を有し、同様に、例えば3.05メートル(10フィート)未満、あるいは1.52メートル(5フィート)未満、さらには0.61メートル(2フィート)未満の小さい各熱膜42、44の分離距離(DE)を有する入口14および出口20に対して、垂直でなくかつ水平でない掘削孔12の向きを有してよい。図示された実施形態では、距離DS、DEに対する小さな値は、少なくとも部分的には、曲げられた掘削孔12の向きと、涙滴に似たそのループ構成とによって達成されるが、他の向きおよびループ構成が使用されてもよい。
[0056]図4は、構造物40の下に配置された掘削孔12の例示的一実施形態を示す。この例示的実施形態では、入口14と出口20とが、対向辺上または隣接辺上など、構造物40の異なる辺上に配置される。対照的に、図1の地中連続ループ熱交換器10の掘削孔12の例示的実施形態は、構造物40の同一辺上に配置される。図4に示される残りの特徴は、図1の地中連続ループ熱交換器10の掘削孔12の例示的実施形態に関して示し、説明した特徴と同じである。
[0057]地中連続ループ熱交換器10の例示的実施形態の流体流の方向は、掘削孔12に対して一方向である。すなわち、導管28を通る流体流(F)は、掘削孔12の第1の端部16から入り、第2の端部22に向かって移動する一方向のみである。さらに、流体流(F)は、掘削孔12に関して第1の端部16から第2の端部22に向かって一方向に移動した後、(例えば、大地調達ヒートポンプ38を通って)第1の端部16に戻され、そこで再び第1の端部16から入る、連続ループの中にある。
[0058]例示的実施形態では、地中連続ループ熱交換器10は、大半の長さが水平でない、あるいは長さの75%超が水平でない、さらには長さの85%超が水平でない掘削孔12を有する。一例として、図1および図3を参照されたい。図1および図3において、掘削孔12は、水平でない大半の長さを含む向きを有する。実際に、これらの例では、最深点50における向きを除いて、掘削孔12は、第1の端部16から第2の端部22までの全長にわたって水平でない。
[0059]例示的実施形態では、地中連続ループ熱交換器10は、掘削孔12の入口14および掘削孔12の出口20の両方が、垂直から±15度の範囲内、あるいは垂直から±5度の範囲内にある中心線52を有する掘削孔12を有する。他の代替実施形態では、掘削孔12の中心線52の向きは、掘削孔12が凍結線24より深くなるまでは、垂直から±15度の範囲内、あるいは垂直から±5度の範囲内で継続する。そのような配列の一例が、図1および図2に示される。さらに、図2に関して、掘削孔12の中心線52は、少なくとも最深点50の50%の深さまでは、垂直から±5度の範囲内にある。
[0060]地層18との間の熱交換を促進するために、熱交換媒体60は、掘削孔12の内壁64と導管28の外面66との間の環帯62(好ましくは、環帯全体)内に配置されてよい。熱交換媒体60は、環帯62内に、少なくとも季節的な温度の干渉を受けやすい大地の層24の下まで、好ましくは環帯62全体の中に配置され、周囲の地層18との熱交換に寄与する。
[0061]熱交換媒体60の一例は、Elkton、South DakotaのGeoPro,Incが市販する「Thermal Grout Seclet」および「Thermal Grout Lite」など、ベントナイトベースの熱グラウトである。熱交換媒体60の別の例が、参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,251,179号に開示される。米国特許第6,251,179号の熱交換媒体は、優れた熱伝導率および収縮低減特性によって、注目されている。従来の掘削孔のグラウト混合物は、初期には良好な封止を形成するが、時間がたつにつれて接合が劣化し、空隙の形成を引き起こして交換器の効率を大幅に減じる可能性のある、セメントおよびベントナイトを使用した。例示的代替実施形態では、熱交換媒体60は、保水性を強化するために、合成材料を含んでよい。保水性強化材料の例は、石油およびガスの掘削流体ならびに産業用途において見出されるような、ゲル添加剤である。熱交換媒体60の一態様は、水と接触してゲル材料を形成する重合体である。そのような重合体の例は、シリカまたは砕石からなる砂、ビーズ状もしくは粉末状のガラス、および/または金属もしくは金属合金などの熱伝導性の固体を、限定されることなく含む。いくつかの組合せにおける、水溶性のポリアクリルアミド重合体、生重合体、グアーガム(guar gum)またはキサンタンガム(xanthan gum)は、水を加えて元に戻すことができ(rehydrateable)、脱水時に亀裂ができない。
[0062]地中連続ループ熱交換器10の例示的実施形態は、流体の流れが、流体と周囲の地層との間で最も効率的な熱変換を発生する方式で流体を循環させ、移送する。約2500のレイノルズ数に対応するのに十分な容積および速度で導管を通る流体流は、一般に、当業者に知られているように、地中熱交換器を使用する効率的な熱変換に対する目標流量である。2300と4000との間の対応レイノルズ数を有する従来の大地調達熱交換器の中で使用されるような過渡的な流量が、導管内に収容された流れ強化機構(flow enhancement feature)の使用によって、または補助的な流れ強化機構の追加によって、強化された熱変換に遭遇する可能性のあることを、研究および試験が示している。
[0063]流量および流れ強化機構の最適な使用を確実にするために、地中掘削孔の大地の深さに対して解析が実施された。流れ強化機構は、使用される場合に、掘削孔(複数可)を収容する地層の熱的能力(thermal capability)を最大化するものであり、存在する条件に基づいて選択される。当業者に知られているように、地層の熱変換の限界を超えないが、供給源と除去源との間の可能性を最大化するように、注意が払われる。
[0064]地中連続ループ熱交換器10の例示的実施形態は、地層と流体との間の熱変換効率を向上させるように、流体を循環させ、移送する。例えば、地中熱交換器は、地中熱交換器を通る流体流の乱流を生成し、強化もしくは増加させる機構を含んでよい。図5〜図7は、導管内の流体流の流れの中に置かれた、そのような流れ強化機構を概略的に示し、流れ強化機構は、例として、導管の内面上の1つまたは複数のリブ、導管内に配置された挿入体、および1つまたは複数の導管の表面上の隆起プロフィールを含んでよい。これらの流れ強化機構は、地中連続ループ熱交換器10の熱変換効率を強化するために、単独でまたは組み合わせて使用されてよい。
[0065]図5〜図7は、流体移送管路の例および挿入体の例を示す掘削孔の例示的実施形態の断面図である。図示された例において、導管28が、掘削孔12内に配置され、導管28と掘削孔12との間に熱交換媒体60が存在する。導管内に、挿入体80が配置される。挿入体80は、導管28内を移動する流体が挿入体80を通り過ぎて動くときに乱流を発生する、種々の形のうちの任意の形を取ってよい。図5では、挿入体80は、同軸挿入体の形で示される。同軸挿入体は、渦巻形、ばね形を有する。同様に、らせん(helical)形が、同軸挿入体として使用されてよい。別の例では、渦巻刃が、同軸挿入体として使用されてよい。図6では、挿入体80は、ねじりリボンの形で示される。図7では、挿入体80は、ワイヤの形で示される。各例において、挿入体80は、一連の構造物と一連の開口とを含み、それらの組合せが、導管28内を移動する流体が挿入体80を通り過ぎて動くときに、乱流を発生する。挿入体80が作られる材料は、導管28内を移動する流体が挿入体80を通り過ぎて動くときに、乱流を発生することができ、かつ、許容できないレベルの腐蝕または他の故障モードを被ることのない、任意の適切な材料であってよい。
[0066]図8Aは、導管の中の流体流内の隆起プロフィールを示す掘削孔の例示的一実施形態の断面である。図示した例では、導管28が掘削孔12内に配置され、導管28と掘削孔12との間に熱交換媒体60が存在する。導管28の内壁の表面は、導管28の中の流体流内に置かれた1つまたは複数の突出部またはリブなど、隆起プロフィール82を含む。これらの隆起プロフィール82は、導管28内を移動する流体が通り過ぎて動くときに乱流を発生する、種々の形のうちの任意の形を取ってよい。例えば、隆起プロフィールは、単一の断面平面状にあってよく、または、例えばより糸のように、いくつかの断面平面を横切ってよい。付随して、隆起プロフィール82が、例えば成形によって、導管28の中に一体的に形成される場合は、導管28の外壁の表面は、対応する窪んだプロフィール84を有する。付加的な利点として、隆起プロフィール82は、単独でまたは(存在するならば)窪んだプロフィール84との組合せで、流体および熱交換媒体60と接触する導管28の表面積を増加させ、それにより、地層と流体との間の熱伝達を増加させる。同様に、導管28の内壁の表面と導管28の外壁の表面との両方の上の隆起プロフィールが含まれてよく、それらは、同様に、流体および熱交換媒体60と接触する導管28の表面積を増加させ、それにより、地層と流体との間の熱伝達を増加させる。
[0067]図8Bは,隆起プロフィール82の一例を有する流体移送管路の断面図である。この図において、内面が、隆起プロフィール82を有する。例えば、内面は、より糸状のまたは線条のある(rifled)特性を有する隆起プロフィール82を含んでよい。
[0068]図9および図10は、同軸挿入体の2つの例を示す。図9では、渦巻形を有する同軸挿入体の例示的一実施形態が示される。同軸挿入体の本体90は、その長さに沿って軸方向に渦巻形になる。図10では、ねじりリボンの形を有する同軸挿入体の例示的一実施形態が示される。側面図では、ねじりリボンの表面92は、その表面が、リボンのねじれによって形成される変曲点94を通過するときに見ることができる。
[0069]図11〜図14は、導管内に異なる挿入体および隆起プロフィールを示す掘削孔の種々の例示的実施形態の切り欠き上面図を示す。図11では、渦巻刃挿入体86が示され、図12では、ワイヤ挿入体87が示され、図13では、渦巻羽根挿入体88が示され、図14では、隆起プロフィール82が示される。
[0070]掘削孔と導管との種々の配列および組合せが、熱効率を改善し、構造物の負荷要件に適合するために使用されてよい。例えば、流体のための複数の導管が、地中連続ループ熱交換器内に配置されてよい。各導管が、地中掘削孔の少なくとも一部分の中に配置されてよく、大地調達ヒートポンプに接続するための供給管路および戻り管路と機能的に接続されてよい。機能的な接続は、例えばヘッダシステムであってよい。
[0071]上で説明された配列および組合せのいくつかの例は、図15〜図17に示される。図15は、それぞれが挿入体80を有する2本の導管28、28’を有する掘削孔12の例示的一実施形態の切り欠き図である。図15の実施形態では、挿入体80は同軸挿入体である。図16は、それぞれが挿入体80を有する3本の導管28、28’、28”を有する掘削孔12の例示的一実施形態の切り欠き図である。図16の実施形態では、挿入体80は、ねじりリボン挿入体である。図17は、ヘッダ100および大地調達ヒートポンプ38からの供給管路34に接続された2本の導管28、28’を有する掘削孔12の例示的一実施形態の切り欠き図である。上で説明された複数の導管の代わりに、掘削孔12は、本明細書で説明された乱流機構、例えば挿入体もしくは隆起プロフィールをそれぞれが含んでよい複数の流体移送管路を挿入された1本の導管28を含んでよい。
[0072]代替の一実施形態では、地中連続ループ熱交換器は、その長さに沿って、1つまたは複数の室もしくは空所を含む導管を有する。地中連続ループ熱交換器の中を移動する流体は、正常動作の間にこれらの室もしくは空所に流入する。次いで、流体は、一定の直径の導管のみを通って流体が流れる場合よりも長い時間の間、これらの場所に留まる。このより長い滞留時間が、流体と周囲の地層との間の熱交換が増加することを可能にし、それにより、熱効率が向上する。
[0073]図18Aは、導管28の長さに沿った複数の室もしくは空所102を示す、地中連続ループ熱交換器10の一例を示す。図18Bの拡大図に見られるように、室もしくは空所102は、例えば導管28の製造工程の間に導管28自体の中に組み込まれるか、または、別の例では、導管28内に印加された圧力のもとで拡張した導管28の領域であってよい。
[0074]図19Aは、掘削孔12の長さに沿った複数の導管を示す、地中連続ループ熱交換器10の一例を示す。切り欠き図である図19Bの一例に示すように、掘削孔12は、流体が流れて通る3本の導管28を有する。導管は、周囲の地層との積極的な熱的接続を確実にするグラウト60によって取り囲まれる。導管は、図19Cの切り欠き図に示されるように、掘削孔の両端において終端し、ヘッダシステム100の中に連結される。ヘッダ100においてまとめられる複数の導管28を有する掘削孔12は、単一の管路34として構造物40の中に進み、大地調達ヒートポンプ38に進む。
[0075]別の例示的代替実施形態では、地中連続ループ熱交換器の導管は、複数の掘削孔の中で直列に配列されるか、または複数の掘削孔の中で並列に配列される。導管に対して直列もしくは並列の配列を使用する選択は、とりわけ、地層の地質学的および熱的特性、用地の大きさおよび構造物の位置、ならびに負荷要件に基づいてよい。
[0076]地中連続ループ熱交換器に関する構造および装置は、任意の適切な手段を使用して構築されてよい。例えば、少なくとも1本の連続的掘削孔を含む例示的一実施形態では、掘削孔の第1の部分が、第1の開口から地層の中にボーリングすることによって形成される。掘削孔の第2の部分が、第2の開口から地層の中にボーリングすることによって形成され、第2の部分が第1の部分に連結されて、連続的掘削孔が形成される。次いで、流体のための導管が、掘削孔の少なくとも一部分の中に配置され、任意選択で、大地調達ヒートポンプに接続するための供給管路および戻り管路に機能的に接続される。上で説明され、本明細書に示されたように、例えば図1〜図4では、第1の開口と第2の開口とが所定の距離だけ分離され、第1の開口における掘削孔の第1の熱膜と第2の開口における掘削孔の第2の熱膜とは、実質的に独立している。さらに、掘削孔の大半の長さは、水平でない。
[0077]図20は、構築の中間段階において少なくとも1本の連続的掘削孔を含む、地中連続ループ熱交換器の構築を概略的に示す。示された図の200において、連結される前の、掘削孔の第1の部分202と掘削孔の第2の部分204とが示される。掘削孔を形成するために適切な機器は、掘削リグ、適切な掘削流体、掘削モータ、掘削ビット、流体ハンマーもしくは空気ハンマーを含み、それらのすべては、遠位端から近位端までの運動において支援するための付加的な地下の機械的手段である、方向誘導装置、掘削流体の混合、注入および回収システム、掘削流体および固体の制御システム、指向性掘削の記録および報告システム(複数可)を使用してよい。熱流体移送の準備ができた掘削孔を完成するために適切な機器は、掘削媒体が取り除かれるときに掘削孔を通して挿入され、押されかつ/または引かれる導管(複数可)を取り付けるための機構、熱グラウトが掘削孔全体を通して置かれることを確実にするために熱グラウトを混合、注入および設置する機器、熱流体、導管の完全性を圧力試験する機器、および掘削孔の熱抵抗を検証するための熱試験機器を含んでよい。
[0078]掘削孔を形成するために、適切な掘削ビットの向きを常時確保するように注意が払われるべきである。例示的一実施形態では、種々の会社によって製造される、機械的、電子的、パルス的、音響的、電磁的、磁気的および非磁気的方向誘導ツール、または種々の会社によって提供されるサービスが使用されてよい。他の有効な誘導ツールは、前述の動作プラットフォームのうちの任意の1つの上で動作可能な、掘削孔を通して掘削を誘導するためのビーコンおよび信号放出体(signal emitter)を含む。例えば、誘導装置が、第2の部分204を第1の部分202に連結するためのボーリングを支援するために使用されてよい。誘導装置の一例は、第1の部分202に置かれたビーコン220および第2の部分204に置かれたセンサ222の1つまたは複数を含む。センサ222は、掘削リグの運転室(operators station)内に置かれてよいセンサ監視器224と機能的に連絡している。センサ監視器224からの出力は、第2の部分204をボーリングして第1の部分202に連結することを誘導するために使用されてよい。例えば、ユーザが掘削を実時間で誘導することを可能にするために、出力が、監視システム226に送られてよい。この例では、誘導装置は、無線周波数、電気信号、磁場または音響信号を使用することができる。図20では、方向誘導ツールは、ボーリング装置を所望の方向に誘導するのを支援する、1つまたは複数のドリルストリング定位装置(drill string orientation device)を有するコイルドチュービング掘削および/または操舵組立体ユニット230の中に一体化される。
[0079]図21は、連結される前の、掘削孔の第1の部分202と掘削孔の第2の部分204とを示す、掘削孔の形成の別の例を示す。この図示された例において、当業者によって保護管212と呼ばれる長い管またはチュービングが、掘削孔の内側を一列に整列させるために使用され、開口208を通して、最初に完了している掘削孔区画202の中に置かれる。この例示的実施形態では、保護管は、非固結表土または非固結成分18Aの深さを確実に超え、次の層である地層18Bに確実に入る距離を、下に向かって地中に延びる。また、図は、非固結地層レベル18Aを通って次の地層18Bの中に延びる、始点210における第2の掘削孔204の中に置かれる、第2の区画の保護管216の例を提供する。保護管は、種々の鉄類もしくは鉄合金、または非鉄金属もしくは非鉄合金、あるいは合成材料で作られてよく、その表面は、完全にまたは部分的に、塗膜、塗装されてよく、または他の処理を施されてよい。
[0080]掘削孔の例示的一実施形態のこの断面では、保護管は、導管206が置かれ固定される前に掘削孔が早々と閉じられることを防ぐ。保護管は、掘削流体の回収、および掘削孔の掘削によって発生した切削屑の表面への移動、を支援するという代替目的を有してよい。
[0081]多くの状況において、保護管は、導管が完全性を試験され、掘削孔内の空所がグラウトで満たされた後に、掘削孔から取り除かれる。
[0082]あるいは、掘削孔は、図22〜図24に示されるように、停止することなく、1本の連続ループに掘削されてよい。
[0083]図22は、掘削孔が地盤を通して連続ループに掘削された、地中連続ループ熱交換器の例示的一実施形態を示す。この例では、導管206はコネクタまたはカプラ229に取り付けられ、コネクタまたはカプラ229自体は、ドリルストリング236に接続されたバレルリーマ232または類似の装置に機能的に取り付けられる。
[0084]この例では、バレルリーマは、円錐形の先端(leading edge)を有し、掘削孔の直径すなわち口径にほぼ等しい直径のリーマ本体に移行する。リーマは、導管の滑らかな設置を支援するために、残留する切削屑または余剰物質を掘削孔の壁に突き固める目的を有する。
[0085]さらに、導管の掘削孔内への配置を位置決めまたは支援するために、受動的または能動的な機械的手段を使用して、導管を誘導または推進する装置230が示される。導管誘導または注入ユニット230は、導管の主体228と機能的制御状態にあってよく、またはなくてよい。例えば、導管の主体は、誘導または注入ユニットから、数フィートあるいは数百フィート離れてよい。別の例示的実施形態では、誘導または注入ユニットは、安定性をもたらし、導管に印加される力を機能的に増すために、大地に固定されてよい。印加される力は、オペレータが直接誘導または注入ユニットを制御して変更され制御されてよく、あるいは、オペレータが掘削リグ242上でドリルストリング236の取り出しを制御するのと同時に、変更され制御されてよい。この例では、掘削リグは、コイルドチュービングユニット242のモデルによって表される。導管誘導または注入装置230は、ケーブル231を介して掘削リグと接続されてよい。接続は、導管が掘削孔内に誘導または推進される速度が、ドリルストリングが他端で取り出される速度と同じであることを確実にするために、誘導または注入ユニットを機能的に制御するために設けられる。掘削リグを注入ユニットに接続するさらなる例は、掘削リグもしくは誘導ユニットのいずれかに対する機能的制御を有する複数の無線送信器であるか、あるいは両ユニットに無関係のオペレータである。
[0086]誘導または注入ユニットは、1本または複数本の導管を同時に取り扱う能力を有する。あるいは、誘導ユニットは、同じ掘削孔内で他の導管ではない1本の導管に機能的制御を加えることができる。すべての例において、誘導または注入装置は、導管が掘削孔を通って引き戻されるときの導管上の抗力または摩擦を低減または除去し、圧力下の導管の完全性に影響を与える可能性のある損傷を導管が受けないことを確実にするのを支援する。
[0087]図23Aは、1本の連続的掘削孔を含む地中連続ループ熱交換器の構築の別の例を概略的に示す。この例では、回転ユニットを装着されたトラックのモデルによって表される掘削リグ244が、第1の端部252から第2の端部254まで連続して掘削することによって、地中連続ループを形成している。図23Aの例では、掘削孔260は、第1の端部252および第2の端部254の両方において、ほぼ垂直な部分262を有する。
[0088]この例では、導管206が、始点252および他端254における掘削孔から延びる掘削孔260の全長の中に置かれている。掘削孔は、圧力下の導管の完全性を検証するための圧力試験を受けた。圧力試験が完了すると、掘削孔グラウト270が、この図示された例である混合ユニット248の中で混合される。グラウト混合ユニットは、ホースまたは導管250を介して掘削リグ244および掘削リグのための泥水ポンプ256に機能的に接続される。この図では、泥水ポンプ256が、掘削リグ244上に置かれ、掘削リグ244と機能的に連絡する。別の例では、泥水ポンプは、グラウト混合ユニット248の1つの機能的構成要素であってよい。次いで、グラウトが、始点252において掘削孔260内にポンプで注入され、ポンプ注入が、グラウトが掘削孔の端部254から突き出て、掘削孔内のすべての空所を有効に満たすまで継続する。図23Bは、掘削孔の端部254を、突き出ている導管206およびグラウト270で表面まで満たされた掘削孔と共に示す。この例では、保護管は、グラウトが掘削孔内に置かれる前に、遠位端254から取り出されている。
[0089]また、図23Aは、保護管が取り出された後、溝が、季節的温度変動によって直接影響されない深さまで地中に掘り下げられた図を提供する。掘削孔は、溝の中で終端し、ヘッダが、熱流体を要望通りに誘導するために導管206に取り付けられる。グラウトの設置が成功裏に完了すると、始点252における保護管が、大地から取り出され、類似の溝が形成されて掘削孔を完成させる。
[0090]図21、図22、図23A、図23Bでは、保護管の使用が、いくつかの構成において図示される。このことは、掘削孔の形成における保護管の使用の他の例を限定または排除するものではなく、図示の例を提供するものにすぎない。保護管使用の決定は、地中に見出される変数が、掘削孔が置かれることが望ましいと認定されることによって、明確に定められる。それゆえ、保護管の種類、構成および使用は、主観的であり、当業者には理解されるように、存在する大地の条件次第で変化する。
[0091]図24は、地盤を通る連続的なループに掘削された掘削孔を有する地中連続ループ熱交換器、および熱グラウトを掘削孔内に置く方法の、例示的一実施形態を示す。図24の例では、掘削孔260は、地表面に対してほぼ連続的な曲がりを有し、その掘削孔内の終端254から始点252まで、導管206が置かれたことを示す。さらに、トレミー管路(tremie line)280が、導管206と共に同じ方式で掘削孔内に挿入され、掘削孔の始点252まで引かれたことが、図24に示される。掘削リグおよび導管誘導設置システムが、トレミー管路回収格納システム280、グラウト混合ユニット248、およびグラウト移送導管250を介してトレミー管路担体280と機能的に連絡して取り付けられたグラウトポンプ注入システム256を残して、掘削孔の直近から撤去されることが、さらに示される。この例では、グラウトポンプ256は、混合器248からグラウト270を受け、グラウトを、移送導管250を介して掘削孔の開始端252までのトレミー管路280の長さにわたり送る。掘削孔がグラウトで満たされるのにつれて、トレミー管路は、グラウトですべての空所を満たしながら、トレミー管路が端部254において掘削孔から現れるまで、掘削孔を通してゆっくりと引き戻される。
[0092]図25は、地中連続ループ熱交換器が配置されている一塊の地盤300を示す。見て分かるように、地中連続ループ熱交換器は、18A〜18Eのいくつかの地層を横断し、その所望の熱交換機能に対して有利に配置される。ある1つの地層が他の隣接地層より高い熱伝導率を示すことは、当業者に理解されているとおりである。これに加えて、この場合では地層区域18Cの例によって示されるように、所望の地層が認識されていると、この地層内に、掘削孔のかなりの部分を置くことが有利であろう。掘削孔の分離距離(DS)および熱膜の分離距離(DE)は、地表面においておよび深さにおいて、実質的に独立していることが、図25にさらに示される。
[0093]図26は、保護管212の上に配置され、掘削孔12を1本の連続ループに掘削することを完了した、コイルチュービングリグ242を示す。例において、コイルドチュービング236は、掘削モータ230および方向誘導器(directional guidance)222の支援によって、機能的に掘削リグ242の後の表面に戻るように案内された。曲がり、すなわち、コイルドチュービング担体格納スプール248に巻かれることによってコイルドチュービング236に内在する、自然に記憶された曲がりが、大部分を曲げられた掘削孔を形成するのを付加的に助けた。
[0094]コイルドチュービングは、コイルドチュービング担体248から取り出され、首部(neck)258およびコイルドチュービング注入ヘッド264を通過するときに、コイルドチュービングが地中に挿入される前にコイルドチュービングを真っ直ぐにする明確な目的で、圧縮力を受ける。首部および注入ヘッドによってコイルドチュービングに印加される力を操作または調節することによって、チュービングが注入ヘッドを離れた後の、コイルドチュービングに残された残留記憶および/または曲がりの方向の量が増加または減少させることが可能であり、いくつかの例に見られたように、コイルの曲がりの量を増加させて実質的に曲がりを増幅させることが有利であることが見られた。残留記憶を操作することおよび/またはコイルドチュービングの曲がりを増すことの有利な特性が、地中掘削孔の曲がり部分を掘削する助けとなった。
[0095]図26は、地盤を通ってループの中を掘削リグ242の後の表面まで戻る方向に移動するコイルチュービングを示す。他の例示的な例では、コイルチュービングは、当業者には理解されるように、例えば図21または図22に示されるように、掘削孔の掘削を支援するように操作された曲がりを有してよい。
[0096]本明細書ではボーリングとして説明されたが、掘削孔を形成する他の適切な手段は、ドリル、振動、オーガ、ハンマーまたは噴流による掘削を含む。多くの例では、表面で開始する掘削孔の最上部において、一時的または永久的な保護管を設定する必要がある。さらに、従来の回転掘削システム、流体式回転掘削システム、振動掘削システム、傾斜孔掘削システム、コイルまたはコイルドチュービングシステム、特殊掘削モータもしくはタービン掘削モータ、ラミング(ramming)、ジェットボーリングツールの使用が、掘削孔を形成するために使用されてよい。任意選択の機器およびシステムは、当業者に知られているような、掘削ツール(複数可)ならびに/あるいは保護および掘削管またはチュービングを促進するための誘導、電気的および/または機械的手段を含んでよい。
[0097]付加的な構築は、掘削孔の内壁と導管の外面との間の環帯の中に熱交換媒体を配置することを含む。本明細書で前に説明したように、熱交換媒体は、周囲の地層との熱交換に寄与する。
[0098]開示された地中連続ループ熱交換器は、(i)暖房を構造物に提供するため、(ii)冷房を構造物に提供するため、または(iii)エネルギーを将来の使用のために貯蔵するために使用されてよい。さらに、開示された地中連続ループ熱交換器は、例えば、暖房を第1の構造物に提供し、冷房を第2の構造物に提供することによって、2つ以上の機能を提供するために使用されてよい。そのような一例では、開示された地中連続ループ熱交換器は、暖房を水泳施設を含む第1の構造物に提供し、冷房をスケート施設を含む第2の構造物に提供するために使用されてよい。
[0099]一般に、暖房モードにおいて大地調達ヒートポンプを使用する例では、冷たい流体は、地中連続ループ熱交換器の一端からポンプで汲み入れられ、地中連続ループ熱交換器の中を通って他端まで移動する間に暖まる。暖房シーズンを通して、このことが、掘削孔を取り囲む地層を幾分冷たくする。冷房シーズンでは、流体は掘削孔を通して反転され、地中連続ループ熱交換器を通って流れる流体は、周囲の地層を幾分暖かくし始める。熱抵抗および熱伝導率を計算するための産業規格公式を使用すると、本明細書で開示されたような地中連続ループ熱交換器を使用するすべての構成において、掘削孔の効率における大きな利得が確認された。建物外面の要件に応じて、建物暖房負荷の期間中に地中連続ループ熱交換器内を循環する冷たい熱流体の形態、または建物冷房負荷要件の期間中に循環する熱い熱流体の形態のいずれかでエネルギーのある一定の量が使用される。
[00100]上記を考慮すると、構造物内の温度を調節する例示的な1つの方法は、流体を地中連続ループ熱交換器の掘削孔内の導管を通して、入口から出口まで流すステップを含む。出口から、流体は、大地調達ヒートポンプまたは熱交換器システムを通って流れ、大地調達ヒートポンプまたは熱交換器システムから地中連続ループ熱交換器の入口に戻される。大地調達ヒートポンプは、構造物内の温度を調節するように動作される。地中掘削孔の少なくとも一部分の中に配置された、流体のための導管は、大地調達ヒートポンプに接続するための供給管路および戻り管路に機能的に接続される。さらに、入口および出口は所定の距離だけ分離され、入口における掘削孔の第1の熱膜と出口における掘削孔の第2の熱膜とは実質的に独立している。
[00101]暖房および冷房の「負荷」が構造物に対して(エネルギーの公称トンで測定されて)計算されると、地中熱交換器(複数可)の中に放出するのに必要な対応する量、および/または地中熱交換器から摂取されるのに必要なエネルギーの量が、明確に定められる。技術者または設計者は、最もコスト効率のよい構成で熱エネルギー変換要件を満たす地中熱交換器の設計を特定する。次いで、さらなる計算が、地中熱交換器に必要な場の大きさを明確に定める。垂直掘削孔の場合は、計算は、一般に、領域内の地層の熱効率に基づいて必要な掘削孔のリニアフィート数を生成する。
[00102]好ましい実施形態に関連して説明されたが、具体的に説明されていない追加、削除、改変および置換が、添付の特許請求の範囲で定義されるような本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく行われうることは、当業者には理解されよう。