JP2012504624A - 皮膚感染の局所的処置 - Google Patents

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Abstract

本発明は、プロピレングリコールが哺乳動物の皮膚障害におけるプロピオニバクテリウム・アクネスの殺菌または阻害において極めて効果的であるとの予期せぬ知見、ならびにプロピレングリコールおよびサリチル酸の皮膚障害の処置における使用に関する。本発明はまた、プロピオニバクテリウム・アクネスの殺菌または阻害に用いるための、プロピレングリコールを単独で、またはサリチル酸と組み合わせて含有する組成物に関する。

Description

本願は、すべての国の指定国の出願人を、アメリカ合衆国の国民であるウィン・エル・キオウの名称で、PCT国際特許出願として2009年9月28日に出願されており、2008年10月3日に出願した米国特許出願番号12/244924号に対する優先権を主張するものである。
(発明の分野)
本発明は、プロピレングリコールが哺乳動物の皮膚障害におけるプロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)の殺菌または阻害にて極めて効果的であるという予期せぬ知見、ならびにプロピレングリコールおよびサリチル酸の皮膚障害の処置に関する。本発明はまた、プロピレングリコールを単独で、またはサリチル酸と組み合わせて含む組成物であって、プロピオニバクテリウム・アクネスの殺菌または阻害に用いるための組成物に関する。
座瘡は一般的な皮膚障害である。多数の局所性および全身性処置方法が利用できる(非特許文献1;非特許文献2)。現行の処置方法の欠点は主としてその応答が遅いことであり、毎日の塗布または投与を数ヶ月にわたって必要とすることも多い。さらには、満足のいく結果が得られるのは、しばしば、わずかに約40%ないし60%である(特許文献1)。複数(3ないし4種)の処置工程を必要とすることも多い。皮膚の乾燥および炎症が一般的であり;処置の後に、窪みまたは瘢痕が残るかもしれない。強力な薬物では重度の副作用も生じうる。最近では、天然の多価金属化合物を用いて座瘡を処置するが(特許文献1)、グリセリンおよび増粘剤を用いるため、製品の粘性が大きな欠点であり、その効能(未発表観察)にも拘わらず、多くの患者に受け入れられていない。このことは酒さの処置にも当てはまる(特許文献1)。
Chiou, 米国特許第7258875号B2
Handbook of Nonprescription Drugs, American Pharmaceutical Association, 2002, p.777-791 Katsambas and Dessiniot, Dermatologic Therapy, 21: 86-95, 2008
上記した見解は、窪みまたは瘢痕を残すことなく、座瘡または酒さを局所的に処置するための、新たな、化粧品として利用可能であり、簡単で、一工程の、安全性が高く、効果の高い方法を開発する必要のあることを示す。理想的には、新たな薬物処置は処方箋を必要とせず、同じ製剤を用いて両方の障害を処置できるものである。本発明の目標は上記の目的を達成することにある。このことは、一般に使用され、安全性が高く、迅速に吸収される(未発表観察)化合物が、プロピオニバクテリウム・アクネスに対してインビトロにて強力な殺菌活性を有し、すなわち、座瘡の感染に関与するとの意外な知見により可能とされる。座瘡の発症には多くの他の因子が関与することも知られており、全く異なる方法が座瘡障害の対応に用いられている。興味深いことに、同じ化合物を用いて酒さの感染を処置することもできる。
プロピレングリコール(PG)は無色無臭の甘い軽液体である。略一世紀にわたりスキンケア製品にて、溶剤、保湿剤、スキン−コンディショニング剤および粘度降下剤として広く利用されている("International Cosmetic Ingredients Dictionary and Handbook", 2004, page 1536)。今日、販売承認される皮膚病薬中の不活性成分として掲載されている。一般に使用される濃度は約1%から数%と低い範囲にある。
本発明は、高濃度のPGがインビトロにて、前もって特別な洗浄または処置を必要とすることなく、極めて効果的にピー・アクネスを殺すこと(実施例1)、高濃度(20ないし80重量%などの高濃度)のPG水溶液が、1回ないし数回の局所的塗布を行った約0.5ないし2−3日後に、窪みまたは瘢痕を残すことなく、種々の大きさの感染性(膿疱性または丘疹性)座瘡を実際に治癒しうること(実施例2−4)という、真に意外で、新規な知見を開示するものである。75%または80%までのPGを含有する溶液について副作用は観察されなかった(実施例3−7)。純粋な(100%)PGおよび90%PG溶液(実施例5)は正常な皮膚に対して注目に値する副作用を惹起しなかった。75%または80%PG溶液を毎日使用することで新たな座瘡形成に対する優れた予防効果が得られた(実施例4)。75%PGと0.5%サリチル酸とを含有する水溶液は、副作用もなく、座瘡および酒さに対して極めて効果的であった(実施例6)。
従って、本発明は、哺乳動物の皮膚障害におけるピー・アクネスの殺菌および阻害に極めて効果的で、安全性が高い、新規な方法であって、本質的に、治療上有効量のPGを単独で、または治療上有効量のサリチル酸または他の抗座瘡化合物と組み合わせて、医薬上許容される剤形にて皮膚障害の領域に局所的に塗布することのみからなり、あるいは局所的に塗布することを含み、ここでかかる皮膚障害の一つが座瘡である、方法を提供する。上記した方法はまた、酒さの処置にも極めて効果的である。
したがって、本発明は、座瘡および酒さを処置するのに全く新規で、簡単な、一工程の極めて効果的かつ安全な方法であって、本質的に、治療上有効量のPGを単独で、または治療上有効量のサリチル酸または他の抗座瘡または抗酒さ化合物と組み合わせて、一の剤形にて皮膚損傷の領域に局所的に塗布することのみからなり、あるいは局所的に塗布することを含む、方法を提供する。PGとサリチル酸の新規な組み合わせの原理および利点を以下に記載する。
本願明細書に記載の「処置」または「処置する」なる語は、皮膚に存するピー・アクネスを殺すことおよび/または阻害すること、哺乳動物における座瘡または酒さの徴候を改善または消散させること、あるいはその発症を治癒および防止することを包含する。該語はまた、座瘡または酒さの吹き出物の徴候を改善または消散させる助けまたは助けの可能性のあること、あるいはその発症を治癒または治療および防止する助けまたは助けの可能性のあることを包含する。抗座瘡または抗酒さ作用あるいは管理を含んでもよい。「有効量」なる語は、かかる治療を必要とする哺乳動物に局所的に投与した場合に、効果的な治療に十分である、PGまたはサリチル酸の量をいう。「防止」なる語は予防をいう。「剤形」なる語は、以下:溶液またはその混合液、懸濁液、ゲル、ローション、エマルジョン、ペースト、クリーム、スプレーまたは薬用包帯、パッドもしくはマスクをいうが、これらに限定されない。剤形の製法は標準的原理または種々の薬学文献に記載の方法に基づく。「サリチル酸」なる語はサリチル酸またはサリチラートをいう。
本願明細書に記載のPGおよび他の成分の濃度はすべて重量に基づく。PGの効果的な濃度は約5%ないし約100%、約8%ないし約100%、約10%ないし約100%、約15%ないし約100%、約20%ないし約100%、約25%ないし約100%、約50%ないし約100%、約10%ないし約90%、約15%ないし約90%、および約20%ないし約90%、好ましくは約25%ないし約85%、あるいは約50%ないし約90%の範囲である。純粋な(100%)PGの使用はピー・アクネスを殺す最も劇的な作用をもたらすと考えられる。しかしながら、座瘡の損傷部に、または敏感皮膚に対してわずかな皮膚炎症をもたらすかもしれない。グリセリンを5%ないし20%程度配合することで皮膚を滑らかにし、PGにより惹起される痒みおよび疼きは除かれる(実施例2)。
使用される剤形は、適量の水、グリセリン、他の溶媒、電解質、pH調節剤、界面活性剤、吸収促進剤、乳化剤、増粘剤、芳香剤、保存剤またはそれらの混合物を含んでもよい。
必須ではないが、剤形はまた、サリチル酸、サリチラート、過酸化ベンゾイル、メトロニダゾール、エリスロマイシン、テトラサイクリンおよびその誘導体、マクロライド、クリンダマイシン、ミノサイクリン、メクロサイクリン、クロキシサイクリン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、レチノイド、アゼライン酸、多価金属化合物、ピコリン酸、ダプソン、抗炎症性化合物および収斂剤またはそれらの混合物を含むが、これらに限定されない、1または複数の任意のあるいは付加的な抗座瘡成分を含んでもよい。
サリチル酸は、その面皰溶解特性から、食品医薬品局承認の市販されている座瘡治療薬である。この物質、および過酸化ベンゾイル、抗ピー・アクネス薬、ならびに他の多くの成分(30種まで、またはそれ以上)が、しばしば、用いられて、3−または4−工程からなる座瘡の治療方法を形成する。皮膚乾燥および炎症が上記した治療方法に付随する問題として知られている。
本発明のPGとサリチル酸との溶液中での新規な組み合わせは、窪みまたは瘢痕を残すことなく、座瘡の感染性(膿疱性または丘疹性)成分および非感染性(実施例6のホワイトヘッドおよびブラックヘッド)成分の両方に対する効能が高いこと、アレルギーおよび副作用を示す可能性が極めて低いこと(両方の化合物は天然の化合物である)、鎮静作用のあること、保湿性があること、皮膚を滑らかにし、皮膚を引き締める作用を有すること(実施例7)、簡単な一工程法または簡単なオール−イン−ワン法であること、旅行者にすごく便利であること(3または4個のボトルを持ち運ぶ必要がない)および明らかに経済的であること、などの多くの独特かつ重要な利点を提供する。さらには、該組み合わせは酒さの処置にも用いることができる(実施例7)。本発明はまた、他の細菌の皮膚感染の処置にも有用でありうる。サリチル酸またはサリチラートの濃度は約0.05%ないし約2%、または約0.05%ないし約3%、または約0.05%ないし約6%の範囲にある。剤形は皮膚鎮静作用としてグリセインを約5%ないし約20%の範囲で含んでもよい(実施例2)。
ピー・アクネスの殺菌または阻害のために、あるいは座瘡または酒さの吹き出物を処置するために、投与製剤は、損傷領域に、あるいは後に新たな吹き出物の発生があり得る領域に予防的に一日に数回まで薄層として塗布され得る。
したがって、本発明は、本質的に、治療上有効量のプロピレングリコールを、治療上有効量のサリチル酸または他の抗座瘡または抗酒さ化合物と共にまたは無しで、医薬上許容される剤形にて座瘡または酒さの損傷領域に局所的に塗布することからなる、あるいは含む、座瘡または酒さの新規な治療方法を提供する。
次に実施例を用いて本発明を説明する。かかる実施例は何ら本発明を限定するものではない。
実施例
実施例1
インビトロにおける時間−殺菌実験用の水中20%および65%PG
プロピオニバクテリウム・アクネスATCC#6919を用いる標準的な時間−殺菌実験のためにPGおよび水を適当な割合で混合することで20または65%PG含有の水溶液を調製した。20%PG溶液の場合、細菌の47%および98%を、各々、1時間および5時間で殺した。65%PG溶液の場合、細菌の91%および99.6%を、各々、1時間および5時間で殺した。最初の細菌の数は1.78x10CFU/mLであった。もっと高いPG溶液はもっと高い殺菌割合を示すと考えられる。
実施例2
座瘡処置のための水中80%PG:劇的な効果
成人の額にある数個の感染性丘疹性座瘡に上記PG水溶液を薄層として直接塗布した。感染(炎症)は8時間で完全に消えたようであり、それは1回の塗布だけで実際に治癒したことを示した。別の日の、より大きな丘疹性座瘡もまた、わずか1回の塗布で、窪みまたは瘢痕なく、約8時間後に実際に治癒されていた。両方の実験で中程度の痒みおよび疼きが約3分間続いた。これらの取るに足らない副作用も、グリセリン(約10%)をその混合物に添加すると、完全に回避された。これまで、および以下に記載の実験ではすべて病変または皮膚を特に洗浄する必要はなく、かくしてその操作は真に簡単な一工程方法または「オール−イン−ワン」方法である。
実施例3
座瘡処置のための水中20%、40%および60%PG
上記PG溶液を用いて一の対象の顔面にある丘疹性または膿疱性座瘡を異なる折々に処置した。2ないし3日で数回塗布すると、窪みまたは瘢痕もなく、完全な治癒が得られた。痒みまたは疼きも起こらなかった。
実施例4
座瘡処置のための75%または80%PG溶液:劇的な予防効果
75%PGを含有する水溶液を用いて成人4人における種々の大きさの膿疱性または丘疹性座瘡を処置することに成功した。2人にはまた、毎日の塗布を約1ヶ月間行い、何の副作用なく、新しい感染性座瘡の形成を完全に阻害し、優れた予防効果を示す明らかな徴候があった。このことは約10%のグリセリンを含有する80%PG溶液を用いた場合でも同じであった。
実施例5
座瘡のない成人における90%PGまたは100%PGの毎日の塗布
純粋な(100%)PGまたは水中90%PGを2人の正常な顔および腕の皮膚に繰り返し塗布した。副作用は観察されなかった。
実施例6
酒さおよび座瘡の処置のための75%−0.5%サリチル酸溶液
上記のPG−サリチル酸溶液を一の対象の酒さ病変領域に一日に2回塗布し、吹き出物および発赤を迅速に制御する満足のいく結果が得られた。また、該溶液を用いて、何ら副作用がなく、2人の対象の座瘡を治療するのにも完全に成功した。さらには、該溶液はホワイトヘッドに対しては効果が高く、ブラックヘッドに対する応答はゆっくりであった;サリチル酸の濃度を高くすれば、効能は大きくなるはずである。この製剤において、PGはサリチル酸の優れた溶媒である。
実施例7
PGの組織治癒および皮膚安定化特性
実施したすべての実験にて、PG溶液は、窪みまたは瘢痕なく、座瘡の病変の迅速な治癒をもたらした。さらには、毎日の使用を約1ヶ月行うと、皮膚の塗布した領域はより滑らかとなり、より引き締まった。これらの結果は、PGの、その類似する型の化合物、グリセリンで観察される皮膚安定化現象と類似する、組織治癒および組織成長促進特性を示す(Chiou et al., 米国特許第6616923号B1;未発表観察)。
上記した記載は例示であって本発明を限定するものでないことを理解すべきである。当業者は、さらに慣用的実験を行うことなく、本願明細書に記載の具体的な実施態様を参照して、確認できるであろう。これらの均等物も添付した特許請求の範囲に含まれるものである。

Claims (10)

  1. 哺乳動物の皮膚障害におけるプロピオニバクテリウム・アクネスの殺菌および/または阻害方法であって、治療上有効量のプロピレングリコールを単独で、または治療上有効量のサリチル酸と組み合わせて、医薬上許容される剤形にて皮膚障害の領域に局所的に塗布することを含む、方法。
  2. 皮膚障害が座瘡であり、プロピレングリコールおよびサリチル酸の濃度が、各々、約5重量%ないし約100重量%、および約0.05重量%ないし約6重量%の範囲にある、請求項1記載の方法。
  3. 治療上有効量のプロピレングリコールを含む組成物を医薬上許容される剤形にて座瘡の病変の領域または酒さの病変の領域皮膚障害の領域に局所的に塗布することを含む、座瘡または酒さの治療方法。
  4. 組成物がさらにサリチル酸を含む、請求項3記載の方法。
  5. 座瘡の処置が座瘡の病変の領域に対するものである、請求項3記載の方法。
  6. 酒さの処置が酒さの病変の領域に対するものである、請求項3記載の方法。
  7. プロピレングリコールおよびサリチル酸の濃度が、各々、約5重量%ないし約100重量%、および約0.05重量%ないし約6重量%の範囲にある、請求項4または請求項6記載の方法。
  8. プロピレングリコールの濃度が約10重量%ないし約100重量%の範囲にある、請求項1、請求項5または請求項6のいずれか一項に記載の方法。
  9. プロピレングリコールの濃度が約20重量%ないし約100重量%の範囲にある、請求項1、請求項5または請求項6のいずれか一項に記載の方法。
  10. プロピレングリコールの濃度が約50重量%ないし約100重量%の範囲にある、請求項1、請求項5または請求項6のいずれか一項に記載の方法。
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