JP2012501641A - グルタミンシンセターゼ遺伝子からのdna標的配列を切断するメガヌクレアーゼ変異型及びその使用 - Google Patents

グルタミンシンセターゼ遺伝子からのdna標的配列を切断するメガヌクレアーゼ変異型及びその使用 Download PDF

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Abstract

2つのI-CreI単量体の一方が、I-CreIの28位〜40位及び44位〜77位にそれぞれ位置するLAGLIDADGコアドメインの2つの機能的サブドメイン内に1つずつ少なくとも2つの置換を有し、変異型が、グルタミンシンセターゼ遺伝子からのDNA標的配列を切断できるI-CreI変異型。組換えタンパク質の生産のための発現系を改良するための該変異型及び派生生成物の使用。

Description

本発明は、グルタミンシンセターゼ(GS)遺伝子からのDNA標的配列を切断するメガヌクレアーゼ変異型、該変異型をコードするベクター、該ベクターにより改変された細胞、動物又は植物、ゲノム工学並びにインビボ及びエクスビボでのゲノム療法(遺伝子細胞療法)のための該メガヌクレアーゼ変異型及びその派生生成物の使用に関する。
グルタミンシンセターゼ(GS)は、グルタメート‐アンモニアリガーゼ(GLUL)とも呼ばれ、グルタメート及びアンモニウムからのグルタミンの生合成を担う普遍的なハウスキーピングエンザイムであり、ATPからADP及びホスフェートへの加水分解を用いて、反応を進行させる。そういうものであるから、GSは、クレブス回路及びアミノ酸代謝との間に重要な関連を示す(Meisterら, 1980, Glutamine metabolism, enzymology and regulation, Academic Press, N.Y., p.1-40及び319-329)。この酵素反応は、哺乳動物細胞において、グルタミン形成のための経路である。生育培地におけるグルタミンの不存在下に、GS酵素は、培養中の哺乳動物細胞の生存に必須の役割を果たす。グルタミンシンセターゼは、遺伝子進化の歴史上最も古くから存在し、機能している遺伝子の1つによってコードされ、原核生物及び真核生物の代謝において重要な酵素とみなすことができる(Kumadaら, 2003, PNAS USA, 90: 3009-3013)。その生物学的機能に鑑みて、GS遺伝子は、ゲノム工学(標的及びランダム遺伝子操作)のためのポジティブ選択マーカーとして用いられる。
GSは、最も高等な脊椎動物細胞において低レベル(可溶性タンパク質の0.01%〜0.1%)で見られ、特定の特化された細胞型、例えば肝細胞、脂肪細胞及びグリア細胞において高レベル(全タンパク質の>1%)で見られる(Tiemeierら, 1972, J. Biol. Chem., 247: 2272-2277; Gebhardtら, 1983, EMBO J., 2: 567-570; Millerら, 1978, PNAS USA, 75:1418-1422; Linserら, 1979, PNAS USA, 76: 6476-6480)。多様な調節シグナルは細胞内のGSレベルに影響し、例えば培養培地中のグルココルチコイドステロイド及びcAMP及びグルタミンは、ADPのリボシル化を介して翻訳後にGSレベルを調節するようである(Milman ら, 1975, J. Biol. Chem., 250: 1393-1399; Aradら, 1976, Cell, 8:59-101)。
マウスミエローマ株のようないくつかの哺乳動物株化細胞は、グルタミンの添加なしで生存するのに十分なGSを発現しない。これらの株化細胞で、トランスフェクトされたGS遺伝子は、グルタミン非含有培地中での生育を許容することにより選択マーカーとして機能することができる。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)株化細胞のような他の株化細胞は、外因性のグルタミンなしで生存するのに十分なGSを発現する。これらの場合に、メチオニンスルフォキシミン(Msx)のようなGSインヒビターは、付加的なGS活性を有するトランスフェクタントだけが生存できるように内因性のGS活性を阻害するために使用できる。
哺乳動物細胞は、GSのようなタンパク質が、一般的に正確に折り畳まれ、適切に修飾され、完全に機能的であるために、タンパク質生産に魅力的であり、しばしばバクテリア細胞において発現するタンパク質と著しく対照的である。
哺乳動物の発現システム(GSシステム(商標)と命名されている)が、所望のタンパク質生産のために、CHO‐K1細胞を用いて、Lonza Biologics社によって開発されている。CHO‐K1細胞は内因性GSを生産するが、GS遺伝子にトランスフェクトし、(内因性の酵素を阻害するのに十分なレベルで)Msxを補足したグルタミン非含有培地を用いて興味対象の遺伝子のトランスフェクションと共に選択圧を付与することによって、安定細胞株を生産するのに用いることができる。
GSシステム(商標)は、広範多種の組換えタンパク質、特に規制当局により認可されている治療用製品を生産するのに用いられている。現在、臨床試験中の50以上の製品及びGSシステム(商標)を用いる5つの市販製品、例えばゼナパックス(登録商標)(Roche社)及びシナジス(登録商標)(MedImmune社)がある。
それにも拘らず、GSの内因性発現を阻害するためのGSインヒビターの使用は、余剰の発現が残存するために、完全に満足のいくものではない。この問題は、内因性GS遺伝子を直接不活化することにより克服できた。この不活化は、メガヌクレアーゼのような部位特異的エンドヌクレアーゼを用いて得ることができる。該メガヌクレアーゼは、生細胞において、DNA二本鎖破断(break)(DSB)を生じ、特定の部位を切断できる。この切断は、相同組換え(図3A)又は非相同末端連結(NHEJ)(図3B)により、その後修復できる。したがって、GS遺伝子を標的とする人工メガヌクレアーゼは、GS遺伝子を不活化できる。
グルタミンシンセターゼはまた、ヒトの器官内で、肝臓、脳及び筋肉組織内において高濃度で、普遍的に発現する(Haussinger Dら, 1984, Glutamate Metabolism in Mammalian Tissues. Berlin: Springer Verlag, 3-15)。GSは、アンモニア及びグルタメートの解毒化、器官間窒素フラックス、pH恒常性及び細胞のシグナリングに主要な役割を果たす(Haussinger D, 1998, Adv Enzymol RAMB 72: 43-86)。グルタミンシンセターゼの欠損に基づく遺伝性の全身性グルタミン欠乏は、初期の致死性疾患経過を有する2人の新生児において記載されている(Haberleら, 2006, J Inherit Metab Dis, 29, 352-358)。グルタミンは、彼らの血清、尿及び髄液中に、十分に存在していなかった。グルタミンシンセターゼ遺伝子のエキソン7のホモ接合性変異を、両方の患者において検出した。一方の患者はアルギニン324からシステインへの置換(R324C)、他方はアルギニン341からシステインへの置換(R341C)を有していた。グルタミンシンセターゼ酵素の研究は、それら変異がグルタミンシンセターゼの深刻な減少をもたらすことを確認した。
標的化相同組換えは、その場(in situ)での変異の正確な修正を可能にする(図3C)。したがって、GS遺伝子を標的とする人工メガヌクレアーゼは、遺伝性の全身性グルタミン欠乏を伴う変異を修復するために用いることができた。
相同組換え(HR)は、DNA二本鎖破断 (DSB)及びその他のDNA損傷の修復に関与する、非常に保存されたDNA維持経路である(Rothstein, Methods Enzymol., 1983, 101, 202〜211; Paquesら, Microbiol Mol Biol Rev, 1999, 63, 349〜404; Sungら, Nat. Rev. Mol.Cell. Biol., 2006, 7, 739〜750)が、減数分裂における対立遺伝子の減数分裂性再集合(Roeder, Genes Dev., 1997, 11, 2600〜2621)、酵母における交配型の相互交換(Haber, Annu. Rev. Genet., 1998, 32, 561〜599)、及び新規な対立遺伝子へのクラスIイントロン及びインテインの「ホーミング」のような多くの生物学的現象の根底をもなす。HRは、内因性配列間の遺伝情報の交換を通常、促進するが、遺伝子ターゲティング実験において、これは、内因性染色体配列と外因性DNA構築物との交換を促進するために用いられる。基本的に、標的配列と相同性を有するDNAを細胞の核に導入すると、内因性相同組換え機構が、次の工程を提供する(図3C)。
相同遺伝子ターゲティングストラテジーは、内因性遺伝子をノックアウトする(Capecchi, M.R., Science, 1989, 244, 1288〜1292, Smithies, O., Nature Medicine, 2001, 7,1083〜1086)か、又は染色体に外因性配列をノックインするために用いられている。これは、遺伝子修正、原則的に、単一遺伝子疾患に関連する変異の修正のためにも用いることができる。しかし、この使用は、プロセスの低い効率(トランスフェクトされた細胞の10-6〜10-9)のために、実際は困難である。
組換えの効率を高めるためのいくつかのストラテジーの1つは、メガヌクレアーゼを用いて、標的遺伝子座にDNA二本鎖破断を付加することである。メガヌクレアーゼは、定義によると、大きい配列を認識する配列特異的エンドヌクレアーゼである(Thierry, A.およびB. Dujon, Nucleic Acids Res., 1992, 20, 5625〜5631)。これらは生細胞において特定の部位を切断でき、それにより遺伝子ターゲティングを、切断部位の近傍において1000倍以上に高める(Puchtaら, Nucleic Acids Res., 1993, 21, 5034〜5040 ; Rouetら, Mol. Cell. Biol., 1994, 14, 8096〜8106; Choulikaら, Mol. Cell. Biol., 1995, 15, 1968〜1973; Puchtaら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1996, 93, 5055〜5060; Sargentら, Mol. Cell. Biol., 1997, 17, 267〜277; Cohen-Tannoudjiら, Mol. Cell. Biol., 1998,18, 1444〜1448; Donoho,ら, Mol. Cell. Biol., 1998, 18, 4070〜4078; Elliottら, Mol. Cell. Biol., 1998, 18, 93〜101)。このようなメガヌクレアーゼを用いて、遺伝性単一遺伝子疾患の原因である変異を修正できた。
遺伝子欠損を修正するための最も正確な様式は、遺伝子の非変異コピーを有する修復マトリクスを用いることであり、これは、変異の復帰をもたらす。しかし、遺伝子修正の効率は、変異とDSBとの間の距離が大きくなるほど減少し、200 bpの距離で5倍減少する。よって、所与のメガヌクレアーゼは、そのDNA標的の近傍にある変異のみを修正するために用いることができる(図3C)。
「エキソンノックイン」とよばれる代案が、図3Dに示される。この場合、遺伝子の5'部分を切断するメガヌクレアーゼを用いて、有害変異の上流に機能的エキソン配列をノックインできる。この方法は、導入遺伝子をその通常の場所に配置するが、エキソンの重複ももたらし、この長期の影響は評価されていないままである。さらに、天然のシス作用性要素が切断の下流のイントロン内に位置する場合、それらの近傍の環境は改変されるだろうし、それら特有の機能も調査する必要があるだろう。しかし、この方法は、非常に有利である。単一のメガヌクレアーゼを、メガヌクレアーゼ切断部位の下流の多くの異なる変異に用いることができるだろう。
しかし、「ホーミングエンドヌクレアーゼ」ともよばれる数百の天然メガヌクレアーゼが同定されているが(Chevalier, B.S.ら, Nucleic Acids Res., 29, 3757〜3774)、切断可能な配列のレパートリーは、ゲノムの複雑さに取り組むには非常に限られており、例えば、GS遺伝子内には切断部位がない。理論的には、選択された特異性を有する人工の配列特異的エンドヌクレアーゼを作製することにより、この制限を緩和できる。よって、目的に応じた特異性を有するメガヌクレアーゼの作製は、精力的に検討されている。
最近、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)と、クラスIIS制限エンドヌクレアーゼであるFokIの触媒ドメインとの融合体を用いて、機能的配列特異的エンドヌクレアーゼが作製された (Smithら, Nucleic Acids Res., 1999, 27, 674〜681; Bibikovaら, Mol. Cell. Biol., 2001, 21, 289〜297; Bibikovaら, Genetics, 2002, 161, 1169〜1175; Bibikovaら, Science, 2003, 300, 764; Porteus, M.H.及びD. Baltimore, Science, 2003, 300, 763〜; Alwinら, Mol. Ther., 2005, 12, 610〜617; Urnovら, Nature, 2005, 435, 646〜651; Porteus, M.H., Mol. Ther., 2006, 13, 438〜446)。
Cys2-His2型のジンクフィンガータンパク質の結合特異性は、おそらくこれらが単純(フィンガーあたり実質的に4残基により駆動される特異性)でモジュール性の(modular)システムを示すので、操作するのが容易である(Paboら, Annu. Rev. Biochem., 2001, 70, 313〜340; Jamiesonら, Nat. Rev. Drug Discov., 2003, 2, 361〜368)。Pabo(Rebar, E.J.及びC.O. Pabo, Science, 1994, 263, 671〜673; Kim, J.S.及びC.O. Pabo, Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 1998, 95, 2812〜2817)、Klug(Choo, Y.及びA. Klug, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1994, 91, 11163〜11167; Isalan M.及びA. Klug, Nat. Biotechnol., 2001, 19, 656〜660)及びBarbas(Choo, Y.及びA. Klug, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1994, 91, 11163〜11167; Isalan M.及びA. Klug, Nat. Biotechnol., 2001, 19, 656〜660)の実験室からの研究は、ほとんどのG/ANNG/ANNG/ANN配列に結合できる新規な人工ZFPの大きいレパートリーをもたらした。
にもかかわらず、ZFPは、特に、治療用途のような非常に高レベルの特異性を必要とする用途について制限があるかもしれない。融合体でのFokIヌクレアーゼ活性は二量体として作用するが、最近、2つの単量体の1つのみがDNAに結合するか、又は2つの単量体が2つの離れたDNA配列に結合したときに、これがDNAを切断できることが示された(Cattoら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, 1711〜1720)。よって、特異性は、哺乳動物細胞(Porteus, M.H.及びD. Baltimore, Science, 2003, 300, 763)及びショウジョウバエ(Drosophila)(Bibikovaら, Genetics, 2002, 161, 1169〜1175; Bibikovaら, Science, 2003, 300, 764〜)における毒性により示されるように、非常に退化している。
野生では、メガヌクレアーゼは、ホーミングエンドヌクレアーゼにより実質的に代表される。ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)は、数百のタンパク質ファミリーを含む天然のメガヌクレアーゼの広範なファミリーである(Chevalier, B. S.及びB.L. Stoddard, Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3774)。これらのタンパク質は、「ホーミング」とよばれるプロセスにより伝播される可動性遺伝要素によりコードされる。エンドヌクレアーゼは、可動性要素が存在しない同族の対立遺伝子を切断することにより、受容側遺伝子座に可動性DNAを重複させる相同組換え事象を刺激する。効率及び特異性の点でのそれらの例外的な切断特性に鑑みて、これらは、新規で特異性が高いエンドヌクレアーゼを導くために理想的な足場であり得る。
HEは、4つの主要なファミリーに属する。触媒中心に含まれる保存されたペプチドモチーフにちなんで命名されたLAGLIDADGファミリーは、最も普及しており、最もよく特徴付けられている群である。現在、7つの構造が入手可能である。このファミリーからのほとんどのタンパク質が単量体であり、2つのLAGLIDADGモチーフを示すが、いくつかは1つのモチーフのみを有し、したがって、二量体を形成してパリンドローム又は偽パリンドローム標的配列を切断する。
ファミリーのメンバーのうち、LAGLIDADGペプチドが唯一の保存領域であるが、これらのタンパク質は、非常によく似た構造を有する(図1A)。触媒コアは、I-CreI(Chevalierら, Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312〜316)、I-MsoI (Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269)及びI-CeuI (Spiegelら, Structure, 2006, 14, 869〜880)のようなホモ二量体について完全な2回回転対称の、そしてI-SceI (Moureら, J. Mol. Biol., 2003, 334, 685〜69)、I-DmoI (Silvaら, J. Mol. Biol., 1999, 286, 1123〜1136)又はI-AniI (Bolducら, Genes Dev., 2003, 17, 2875〜2888)のような単量体について偽対称を有する2つのDNA結合ドメインで挟まれる。両方の単量体又は両方のドメイン(単量体タンパク質について)は、二価カチオンの周りに組織された触媒コアに貢献する。触媒コアのすぐ上に、2つのLAGLIDADGペプチドが、二量体形成界面において必須の役割も担う。DNA結合は、DNA主溝の上に位置する2つの典型的なサドル形αββαββα折り畳みに依存する。他のドメインは、例えばPI-PfuI (Ichiyanagiら, J. Mol. Biol., 2000, 300, 889〜901)及びPI-SceI (Moureら, Nat. Struct. Biol., 2002, 9, 764〜770)のようなインテインにおいて見出すことができ、このタンパク質スプライシングドメインはDNA結合にも関与する。
N-末端I-DmoIドメインをI-CreI単量体と融合させることによる機能的キメラメガヌクレアーゼの作製(Chevalierら, Mol. Cell., 2002, 10, 895〜905; Epinatら, Nucleic Acids Res, 2003, 31, 2952〜62; 国際PCT出願WO 03/078619及びWO 2004/031346)は、LAGLIDADGタンパク質の可塑性を証明する。
異なるグループが、I-CreI (Seligmanら, Genetics, 1997, 147, 1653〜1664; Sussmanら, J. Mol. Biol., 2004, 342, 31〜41; 国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853、WO 2007/060495及びWO 2007/049156; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; Rosenら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, 4791〜4800; Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)、I-SceI (Doyonら, J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 2477〜2484)、PI-SceI (Gimbleら, J. Mol. Biol., 2003, 334, 993〜1008)及びI-MsoI (Ashworthら, Nature, 2006, 441, 656〜659)の特異性を局所的に変更するために半合理的(semi-rational)アプローチを用いている。
さらに、局所的に特異性が変更された数百のI-CreI誘導体が、半合理的アプローチとハイスループットスクリーニングとを組み合わせることにより工学的に作製された:
- I-CreIの残基Q44、R68及びR70又はQ44、R68、D75及びI77を変異させ、DNA標的(5NNN DNA標的)の±3〜5位での特異性が変更された変異型のコレクションを、スクリーニングにより同定した(国際PCT出願WO 2006/097784及びWO 2006/097853; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)。
- I-CreIの残基K28、N30及びQ38、N30、Y33及びQ38又はK28、Y33、Q38及びS40を変異させ、DNA標的(10NNN DNA標的)の±8〜10位での特異性が変更された変異型のコレクションを、スクリーニングにより同定した(Smithら, Nucleic Acids Res.,2006, 34, e149; 国際PCT出願WO 2007/060495及びWO 2007/049156)。
図1Bに示すように、2つの異なる変異型を組み合わせて、それぞれの変異型DNA標的配列の2つの異なる半分の融合により得られるキメラ標的を切断できる機能的へテロ二量体エンドヌクレアーゼを組み立てた(Arnouldら, 上記; 国際PCT出願WO 2006/097854及びWO 2007/034262)。
さらに、I-CreIの残基28〜40及び44〜77は、ホーミングエンドヌクレアーゼハーフサイト(half-site)の別個の部分に結合できる、2つの分離可能な機能的サブドメインを形成することが示された(Smithら Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149; 国際PCT出願WO 2007/049095及びWO 2007/057781)。
I-CreIの2つのサブドメインからの変異を同じ単量体内で組み合わせることにより、それぞれのサブドメインが結合する±3〜5位及び±8〜10位のヌクレオチドを含むパリンドロームの組み合わせたDNA標的配列を切断できる新規なキメラ分子(ホモ二量体)の設計が可能になった(Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149; 国際PCT出願WO 2007/049095及びWO 2007/057781)。
メガヌクレアーゼ変異型を作製する方法、及び特異性が変更された変異型をスクリーニングするために用いられる哺乳動物又は酵母細胞での切断誘発組換えに基づくアッセイは、国際PCT出願WO 2004/067736; Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜2962; Chamesら, Nucleic Acids Res., 2005, 33, e178及びArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458に記載される。これらのアッセイは、機能的LacZレポーター遺伝子をもたらし、これは、標準的な方法によりモニターできる。
2つの前の工程の組合せにより、4つの異なるサブドメインを含む、より大きいコンビナトリアルアプローチが可能になる。異なるサブドメインは、図1Cに示すように、別々に改変でき、組み合わせて、選択された特異性を有する完全に再設計されたメガヌクレアーゼ変異型(ヘテロ二量体又は単鎖分子)を得ることができる。第1工程において、新規なメガヌクレアーゼの対を、切断したい標的に由来するパリンドローム標的を切断する新しい分子(「ハーフメガヌクレアーゼ」)に組み合わせる。次いで、このような「ハーフメガヌクレアーゼ」の組合せは、興味対象の標的を切断するヘテロ二量体種をもたらすことができる。4組の変異を、モデル標的配列又はヒトRAG1、XPC及びHPRT遺伝子からの配列を切断するヘテロ二量体エンドヌクレアーゼに組み立てることが、Smithら(Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)、Arnouldら(J. Mol. Biol., 2007, 371, 49〜65)及びWO2008/059382にそれぞれ記載されている。
これらの変異型は、真性の(genuine)染色体配列を切断するために用いることができ、遺伝子治療を含むいくつかの分野において、新しい展望のための道を切り開く。
しかし、塩基対±1及び±2はタンパク質といずれの接触も示さないが、これらの位置が、特に塩基対±1について、満足な情報が欠けているわけではなく(Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269)、さらなる基質特異性の原因であり得ることが示されている(Argastら, J. Mol. Biol., 1998, 280, 345〜353; Juricaら, Mol. Cell., 1998, 2,469〜476; Chevalier, B.S.及びB.L. Stoddard, Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3774)。ランダム突然変異を誘発した切断可能なI-CreI標的のインビトロ選択(Argastら,上記)は、タンパク質結合及び切断活性に対するこれらの4つの塩基対の重要性を明らかにした。活性部位で見出される規則正しい水分子のネットワークが、DNA標的の位置決めに重要であることが示唆されている(Chevalierら, Biochemistry, 2004, 43, 14015〜14026)。さらに、I-CreI結合の際にこの領域に出現する広範なコンホメーション変化は、4つの中央のヌクレオチドが、おそらく配列依存性のコンホメーション嗜好性により、基質特異性に貢献しうることを示唆する(Chevalierら, 2003, 上記)。
つまり、gtacである4つの中央ヌクレオチドを有するパリンドローム配列を切断するホモ二量体として10NNN及び5NNN DNA標的に対して同定される変異型が、4つの中央ヌクレオチド中に変化を含有する標的を切断する新しいエンドヌクレアーゼの設計を可能にするかどうか、明らかでなかった。
本発明者らは、I-CreI変異型により切断できるGS遺伝子内の一連のDNA標的を同定した(図18〜20)。図1Dに示されるように、コンビナトリアルアプローチを用いて、I-CreIタンパク質のDNA結合ドメインを完全に再設計し、そのことにより、完全に工学的に改変された(engineered)特異性を有する新規なメガヌクレアーゼを工学的に作製し、1つのDNA標的(GSCHO1)を切断した。GSCHO1標的は、マウス(図2A)及びチャイニーズハムスター(クリテクルス・グリセウス(Criteculus griseus);図2B)のGS遺伝子の両方に存在し、I-CreIのC1221の22 bpのパリンドローム部位とは、4つの中央ヌクレオチドのうち2つ(+1位、+2位)を含む15ヌクレオチドが異なる(図4)。
第1工程において、新規なメガヌクレアーゼの対を、切断したい標的に由来するパリンドローム標的を切断する新しい分子(「ハーフメガヌクレアーゼ」)に組み合わせる。次いで、このような「ハーフメガヌクレアーゼ」の組合せは、興味対象の標的を切断するヘテロ二量体種をもたらすことができる。4組の変異を、モデル標的配列又はヒトRAG1遺伝子からの配列を切断するヘテロ二量体エンドヌクレアーゼに組み立てることが、Smithら(Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)に以前に記載されている。
組み合わせた変異型は、それぞれヌクレオチド10NNN及び5NNNに指向して最初は同定され、標的の4つの中央ヌクレオチドの、工学的に作製されたメガヌクレアーゼの活性に対する強い影響が観察されたが、特異性における重大な変化を有する機能的メガヌクレアーゼが選択された。さらに、工学的に作製されたタンパク質の活性は、I-CreIタンパク質の活性と比較して、ランダム突然変異誘発及び/若しくは部位特異的突然変異誘発並びにスクリーニングにより著しく改良できた。
GS遺伝子からのゲノムDNA標的を切断できる、これらのI-CreI変異型は、GS遺伝子座の不活性化(ノックアウト及びノックイン)に用いることができ(図3A及び3B)、したがって、任意の遺伝子座でのゲノム工学のために、例えばトランスジェニック動物及び組換え株化細胞の作製のために、選択マーカーとしてGSを用いることを可能にする。さらに、これらのI-CreI変異型は、遺伝性の全身性グルタミン欠乏を伴うGS変異の修復に用いることができる(図3C及び3D)。
本発明は、2つのI-CreI単量体の少なくとも一方が、I-CreIの28位〜40位及び44位〜77位にそれぞれ位置するLAGLIDADGコアドメインの2つの機能的サブドメイン内に1つずつ存在する少なくとも2つの置換を有するI-CreI変異型に関し、これはGS遺伝子からのDNA標的配列を切断できる。
本発明による変異型の切断活性は、国際PCT出願WO 2004/067736; Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜2962; Chamesら, Nucleic Acids Res., 2005, 33, e178; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458及びArnouldら, J. Mol. Biol., 2007,371, 49〜65に記載されるような任意の周知のインビトロ又はインビボ切断アッセイにより測定できる。例えば、本発明の変異型の切断活性は、直列反復組換えアッセイ(direct repeat recombination assay)により、酵母又は哺乳動物細胞内で、レポーターベクターを用いて測定できる。レポーターベクターは、酵母又は哺乳動物発現ベクター中にクローニングされた介在配列内に、レポーター遺伝子の2つの切断された非機能的コピー(直列反復)と、(非パリンドロームの)ゲノムDNA標的配列とを含む。通常、ゲノムDNA標的配列は、それぞれの(パリンドローム又は偽パリンドロームの)親のホモ二量体I-CreIメガヌクレアーゼ標的配列の1つの異なる半分を含む。ヘテロ二量体変異型の発現は、ゲノムDNA標的配列を切断できる機能的エンドヌクレアーゼをもたらす。この切断は、直列反復同士の相同組換えを誘発し、機能的レポーター遺伝子をもたらし、その発現を、適切なアッセイによりモニターできる。変異型のゲノムDNA標的に対する切断活性は、それら天然の標的に対する野生型I-CreI又はI-SceI活性と比較し得る。
定義
- ポリペプチド配列中のアミノ酸残基は、本明細書において、1文字コードに従って表し、例えばQはGln又はグルタミン残基を意味し、RはArg又はアルギニン残基を意味し、DはAsp又はアスパラギン酸残基を意味する。
- ヌクレオチドは、次のように表す:1文字コードは、ヌクレオシドの塩基を表すために用いる:aはアデニンであり、tはチミンであり、cはシトシンであり、gはグアニンである。縮重ヌクレオチドについて、rはg又はa (プリンヌクレオチド)を表し、kはg又はtを表し、sはg又はcを表し、wはa又はtを表し、mはa又はcを表し、yはt又はc (ピリミジンヌクレオチド)を表し、dはg、a又はtを表し、vはg、a又はcを表し、bはg、t又はcを表し、hはa、t又はcを表し、nはg、a、t又はcを表す。
- 「メガヌクレアーゼ」により、12〜45 bpの2本鎖DNA標的配列を有するエンドヌクレアーゼを意図する。該メガヌクレアーゼは、各ドメインが単量体上にある二量体酵素、又は単一ポリペプチド上に2つのドメインを含む単量体酵素のいずれかである。
- 「メガヌクレアーゼドメイン」により、メガヌクレアーゼのDNA標的の一方の半分と相互作用し、かつDNA標的の他方の半分と相互作用する同じメガヌクレアーゼの他方のドメインと会合して、該DNA標的を切断できる機能的メガヌクレアーゼを形成できる領域を意図する。
- 「メガヌクレアーゼ変異型」又は「変異型」により、野生型メガヌクレアーゼ(天然のメガヌクレアーゼ)のアミノ酸配列における少なくとも1つの残基の、別のアミノ酸での置き換えにより得られるメガヌクレアーゼを意図する。
- 「機能的変異型」により、DNA標的配列、好ましくは、親のメガヌクレアーゼにより切断されない新しい標的を切断できる変異型を意図する。例えば、このような変異型は、DNA標的配列に接触するか、又は直接若しくは間接的に該DNA標的と相互作用する位置にてアミノ酸変動を有する。
- 「I-CreI」により、配列表内の配列番号1の配列に相当するpdbアクセッションコード1g9yの配列を有する野生型I-CreIを意図する。
- 「新規な特異性を有するI-CreI変異型」により、親のメガヌクレアーゼのものとは異なる切断標的のパターンを有する変異型を意図する。等価で、同様に用いられる用語「新規な特異性」「改変された特異性」「新規な切断特異性」「新規な基質特異性」は、DNA標的配列のヌクレオチドに対する変異型の特異性のことである。
- 「I-CreI部位」により、I-CreIにより切断される22〜24 bpの2本鎖DNA配列を意図する。I-CreI部位は、野生型(天然)非パリンドロームI-CreIホーミング部位と、C1221ともよばれる(図4)配列5'- t-12c-11a-10a-9a-8a-7c-6g-5t-4c-3g-2t-1a+1c+2g+3a+4c+5g+6t+7t+8t+9t+10g+11a+12 (配列番号2)のような派生パリンドローム配列を含む。
- 「ドメイン」又は「コアドメイン」により、約100アミノ酸残基の配列に相当する、LAGLIDADGファミリーのホーミングエンドヌクレアーゼの特徴的なα1β1β2α2β3β4α3折り畳みである「LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメイン」を意図する。該ドメインは、DNA標的の一方の半分と相互作用する逆平行ベータシートに折り畳まれた4つのベータ鎖(β1β2β3β4)を含む。このドメインは、DNA標的の他方の半分と相互作用する別のLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインと会合して、該DNA標的を切断できる機能的エンドヌクレアーゼを形成できる。例えば、二量体ホーミングエンドヌクレアーゼI-CreI (163アミノ酸)の場合、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインは、残基6〜94に相当する。
- 「サブドメイン」により、ホーミングエンドヌクレアーゼDNA標的ハーフサイトの別個の部分と相互作用するLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインの領域を意図する。
- 「ベータヘアピン」により、ループ又はターンにより接続されたLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインの逆平行ベータシートの2つの連続するベータ鎖(β1β2又はβ3β4)を意図する。
- 「単鎖メガヌクレアーゼ」「単鎖キメラメガヌクレアーゼ」「単鎖メガヌクレアーゼ誘導体」「単鎖キメラメガヌクレアーゼ誘導体」又は「単鎖誘導体」により、ペプチドスペーサーで連結された2つのLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼドメイン又はコアドメインを含むメガヌクレアーゼを意図する。単鎖メガヌクレアーゼは、それぞれの親のメガヌクレアーゼ標的配列の1つの異なる半分を含むキメラDNA標的配列を切断できる。
- 「DNA標的」、「DNA標的配列」、「標的配列」、「標的部位」、「標的」、「部位」、「興味対象の部位」、「認識部位」、「認識配列」、「ホーミング認識部位」、「ホーミング部位」、「切断部位」により、I-CreIのようなLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ、又は変異型、又はI-CreIに由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼにより認識されかつ切断される20〜24 bpの2本鎖パリンドローム、部分的パリンドローム(偽パリンドローム)又は非パリンドロームのポリヌクレオチド配列を意図する。これらの用語は、そこでメガヌクレアーゼにより2本鎖破断(切断)が誘導される独特のDNAの場所、好ましくはゲノムの場所のことをいう。DNA標的は、C1221について上で示したように、2本鎖ポリヌクレオチドの一方の鎖の5'から3'の配列により定義される。DNA標的の切断は、センス鎖及びアンチセンス鎖のそれぞれについて、+2位及び−2位のヌクレオチドで生じる。そうでないと記載しない限り、I-CreIメガヌクレアーゼ変異型によるDNA標的の切断が生じる位置は、DNA標的のセンス鎖上の切断部位に相当する。
- 「DNA標的ハーフサイト」、「ハーフ切断部位」又は「ハーフサイト」により、それぞれのLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインが結合するDNA標的の部分を意図する。
- 「キメラDNA標的」又は「ハイブリッドDNA標的」により、2つの親のメガヌクレアーゼ標的配列の異なる半分の融合を意図する。さらに、該標的の少なくとも一方の半分は、少なくとも2つの別個のサブドメインが結合するヌクレオチドの組合せ(組み合わせたDNA標的)を含み得る。
- 「GS遺伝子」により、グルタミンシンセターゼ遺伝子又はグルタメート‐アンモニアリガーゼ(GLUL)遺伝子、好ましくは脊椎動物のGS遺伝子、より好ましくは哺乳動物のGS遺伝子、例えばヒト、マウス及びチャイニーズハムスター(クリテクルス・グリセウス)のGS遺伝子を意図する。GS遺伝子の配列は、NCBI/GenBankデータベースのような配列データベースにて入手可能である。ヒトGS遺伝子の配列(9282 bp;配列番号272)は、アクセッション番号NC_000001.9(逆相補鎖の180618292位〜180627573位)の下、入手可能である。マウスGS遺伝子の配列(9770 bp;配列番号3)は、アクセッション番号NC_000067.5(逆相補鎖の155747075位〜155756844位)の下、入手可能である。これら遺伝子はともに7つのエキソンを有する。マウスGS遺伝子は、図2Aで詳説する(エキソン1(1位〜115位)、エキソン2(2990位〜3168位)、エキソン3(4593位〜4754位)、エキソン4(6405位〜6551位)、エキソン5(7076位〜7203位)、エキソン6(7342位〜7541位)及びエキソン7(7920位〜9770位))。ヒトGS遺伝子は以下を含む:エキソン1(1位〜137位)、エキソン2(3066位〜3244位)、エキソン3(4524位〜4685位)、エキソン4(5414位〜5560位)、エキソン5(5929位〜6056位)、エキソン6(6260位〜6459位)及びエキソン7(7093位〜9282位)。エキソン2の初め(3003位(マウスGS)又は3079(ヒトGS))〜エキソン7の初め(8238位(マウスGS)又は7411位(ヒトGS))までであるORFは、それぞれ5'末端及び3'末端において、長い非翻訳領域に挟まれている。マウスの遺伝子は、129位〜1250位までのGSのORFを含む2782 bpのmRNA(GenBank NM_008131)に翻訳される。チャイニーズハムスター(クリテクルス・グリセウス)GSのmRNAは、147位〜1268位までのGSのORF(図2B)を含む1421 bpの配列(アクセッション番号GenBank X03495)である。
- 「GS遺伝子からのDNA標的配列」、「ゲノムDNA標的配列」、「ゲノムDNA切断部位」、「ゲノムDNA標的」又は「ゲノム標的」により、メガヌクレアーゼ変異型又は単鎖キメラメガヌクレアーゼ誘導体により認識され切断される、上記で規定されたGS遺伝子の20〜24 bpの配列を意図する。
- 「ベクター」により、連結された別の核酸を輸送できる核酸分子を意図する。
- 「相同な」により、配列同士の間の相同組換えを導くのに充分な別の配列との同一性を有する、より具体的には少なくとも95%の同一性、好ましくは97%の同一性、より好ましくは99%を有する配列を意図する。
- 「同一性」は、2つの核酸分子又はポリペプチド間の配列同一性のことをいう。同一性は、比較の目的のために整列させ得るそれぞれの配列中の位置の比較により決定できる。比較される配列中の位置が同じ塩基により占められる場合、その分子同士は、その位置において同一である。核酸又はアミノ酸配列間の類似性又は同一性の程度は、核酸配列により共有される位置での同一又は一致するヌクレオチドの数の関数である。種々のアラインメントアルゴリズム及び/又はプログラムを用いて、2つの配列間の同一性を計算することができ、GCG配列解析パッケージ(University of Wisconsin, Madison, Wis.)の一部分として利用可能であり、例えばデフォルト設定で用い得るFASTA又はBLASTを含む。
- 「変異」により、ポリヌクレオチド(cDNA、遺伝子)又はポリペプチド配列内の1つ又は複数のヌクレオチド/アミノ酸の置換、欠失、挿入を意図する。上記の変異は、遺伝子のコード配列又はその調節配列に影響し得る。これは、ゲノム配列の構造又はコードされるmRNAの構造/安定性にも影響し得る。
本発明による変異型は、ホモ二量体又はヘテロ二量体であり得る。好ましくは、ヘテロ二量体の両方の単量体が、28位〜40位及び/又は44位〜77位で変異される。より好ましくは、両方の単量体が、I-CreIの28位〜40位及び44位〜77位の両方に異なる置換を有する。
上記の変異型の好ましい実施形態において、I-CreIの44位〜77位に位置するサブドメイン内の上記の置換は、44位、68位、70位、75位及び/又は77位にある。
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、I-CreIの28位〜40位に位置するサブドメイン内の上記の置換は、28位、30位、32位、33位、38位及び/又は40位にある。
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、これは、DNA標的配列と接触するか又はDNA主鎖(backbone)若しくはヌクレオチド塩基と直接又は水分子を介して相互作用する他のアミノ酸残基の位置にて、1つ又は複数の変異を含む。これらの残基は、当該技術において周知である(Juricaら, Molecular Cell., 1998, 2, 469〜476; Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269)。特に、付加的な置換は、例えば最終C-末端ループ中の(137位〜143位; Prietoら, Nucleic Acids Res., Epub 2007年4月22日)、リン酸主鎖と接触する位置にて導入され得る。好ましくは、上記の残基は、上記のDNA切断部位の結合及び切断に関与する。より好ましくは、上記の残基は、I-CreIの138位、139位、142位又は143位にある。それぞれの変異が138位と139位の残基の対及び142位と143位の残基の対から選択される異なる残基の対の中にあることを条件として、2つの残基を1つの変異型内で変異させ得る。導入される変異は、最終C-末端ループのアミノ酸の、I-CreI部位のリン酸主鎖との相互作用を改変する。好ましくは、138位又は139位の残基を疎水性アミノ酸により置換して、DNA切断部位のリン酸主鎖との水素結合の形成を回避する。例えば、138位の残基がアラニンにより置換されるか、又は139位の残基がメチオニンにより置換される。142位又は143位の残基を、有利には、小さいアミノ酸、例えばグリシンにより置換して、これらのアミノ酸残基の側鎖のサイズを低減させる。より好ましくは、最終C-末端ループ中の上記の置換は、I-CreI部位の±1〜2位、±6〜7位及び/又は±11〜12位のヌクレオチドに対する変異型の特異性を改変する。
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、これは、GS遺伝子からのDNA標的配列に対する変異型の結合及び/又は切断特性を改良する1つ又は複数の付加的な変異を含む。
変異される付加的な残基は、I-CreI配列全体、特にI-CreIのC-末端半分(80位〜163位)にあり得る。両方のI-CreI単量体を変異させるのが有利である。それぞれの単量体中の変異は、同じ又は異なることができる。例えば、変異型は、以下の位置の1つ又は複数の付加的な置換を含む:2位、3位、6位、7位、12位、19位、24位、35位、39位、43位、45位、47位、50位、54位、57位、59位、60位、64位、66位、80位、87位、92位、96位、105位、107位、110位、114位、117位、118位、119位、120位、125位、129位、132位、137位、139位、153位、154位、160位及び161位。上記の置換は、N2S、T3A、N6K、K7E、Y12H、G19S、G19A、I24V、F35L、L39V、F43L、V45L、V45M、Q47K、Q50R、F54L、K57E、V59A、D60Y、V64A、Y66H、E80K、F87L、F87I、Q92R、K96R、V105A、K107R、E110V、S114F、S114P、E117V、S118T、P119L、D120A、D120E、V125I、V129A、I132V、D137N、D137Y、K139R、D153N、S154G、K160R、S161P及びS161Tからなる群より選択されるのが有利である。より好ましくは、変異型は、G19S、F54L、E80K、F87L、V105A及びI132Vからなる群より選択される少なくとも1つの置換を含む。変異型は、C-末端に付加的な残基を含むこともできる。例えば、グリシン(G)及び/又はプロリン(P)残基を、それぞれI-CreIの164位及び165位に挿入できる。
上記の変異型のより好ましい実施形態によると、上記の付加的な変異は、機能的ホモ二量体の形成をさらに損なう。より好ましくは、上記の変異はG19S変異である。有利には、G19S変異を、ヘテロ二量体I-CreI変異型の2つの単量体のうちの一方に導入することにより、切断活性が増強され、切断特異性が増強されたメガヌクレアーゼを得る。さらに、切断特異性をさらに増強するために、他方の単量体は、機能的ホモ二量体の形成を損なうか又はヘテロ二量体の形成に好ましい、別個の変異を有し得る。
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、上記の置換は、元の(initial)アミノ酸の、A、D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S、T、Y、C、V、L、M、F、I及びWからなる群より選択されるアミノ酸での置き換えである。
本発明の変異型は、野生型I-CreI (配列番号1)、又は配列番号1と少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有するI-CreI足場タンパク質、例えばI-CreI配列の2位のアラニンの挿入、及びC-末端でのAADの挿入(164位〜166位)を有する足場I-CreI N75 (167アミノ酸;配列番号4)から導き得る。
さらに、本発明の変異型は、配列のNH2末端及び/又はCOOH末端に挿入された1つ又は複数の残基を含み得る。例えば、タグ(エピトープ又はポリヒスチジン配列)を、NH2末端及び/又はCOOH末端に導入できる。このタグは、上記の変異型の検出及び/又は精製のために有用である。変異型は、核局在化シグナル(NLS)も含み得る。上記のNLSは、変異型を細胞の核に移入するために有用である。NLSは、変異型の最初のメチオニンの直後又はN-末端タグの直後に挿入できる。
本発明による変異型は、パリンドローム又は偽パリンドロームDNA標的配列を切断できるホモ二量体であり得る。
或いは、上記の変異型は、I-CreIの28位〜40位及び44位〜77位に異なる置換を有する第1及び第2単量体の会合により得られるヘテロ二量体であって、GS遺伝子からの非パリンドロームDNA標的配列を切断できるヘテロ二量体である。
I-CreI変異型により切断されるDNA標的配列は、ヒト、マウス及び/又はチャイニーズハムスター(クリテクルス・グリセウス)のGS遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つの哺乳動物GS遺伝子内に存在する。DNA標的配列はGSのORF内に位置し、これらの配列は、GSのORF全体に及ぶ(図18〜20)。
例えば、配列番号5〜28(図18)のDNA標的配列は、ヒトGS遺伝子内に存在する。配列番号19及び29〜48のDNA標的配列は、マウスGS遺伝子内に存在する(図19)。配列番号19、29、30、34、46、47及び49〜60のDNA標的配列は、チャイニーズハムスターGS遺伝子内に存在する(図20)。
配列番号19のDNA標的配列は、ヒト、マウス及びチャイニーズハムスターのGS遺伝子内に存在する。したがって、配列番号19のDNA標的配列を切断するI-CreI変異型は、ヒト、マウス及びチャイニーズハムスターのGS遺伝子内に部位特異的修飾を誘導できる。配列番号29、30、34、46及び47のDNA標的配列は、マウス及びチャイニーズハムスターの両方のGS遺伝子に存在する。したがって、配列番号29、30、34、46及び47のDNA標的配列を切断するI-CreI変異型は、マウス及びチャイニーズハムスターのGS遺伝子内に部位特異的修飾を誘導できる。
さらに、配列番号7、31及び49のヒト、マウス及びチャイニーズハムスターのDNA標的配列は、±3位〜5位及び±8位〜10位のヌクレオチドとの配列同一性を有する。したがって、配列番号49のDNA標的配列を切断するI-CreI変異型は、チャイニーズハムスターにおいて、及びそれらのいくつかについてはヒト及び/又はマウスのGS遺伝子においても、部位特異的修飾を誘導できる。
それぞれのDNA標的を切断するヘテロ二量体変異型の例を、図18〜20及び表I〜IIIに提示する。
Figure 2012501641
Figure 2012501641
Figure 2012501641
それぞれのI-CreI変異型の配列は、記載した位置にて変異した残基により定義される。例えば、表Iの第1ヘテロ二量体変異型は、T、G、V、E、N、R及びKを、それぞれ30位、33位、44位、68位、75位、77位及び80位に有する第1単量体と、R、T、N、Q、D、S、R及びTを、それぞれ30位、32位、33位、40位、44位、70位、75位及び77位に有する第2単量体とからなる。位置はI-CreI配列(配列番号1)への言及により示される;I-CreIは、N、S、Y、Q、S、Q、R、R、D、I及びEを、それぞれ30位、32位、33位、38位、40位、44位、68位、70位、75位、77位及び80位に有する。
本発明によるヘテロ二量体変異型のそれぞれの単量体(第1単量体及び第2単量体)は、28位、30位、32位、33位、38位、40位、44位、68位及び70位、75位及び77位の11残基と、上記のような変異した付加的な残基の文字コードでも命名され得る。例えば、KTSGQS/ENRNR+80K又は28K30T32S33G38Q40S / 44E68N70R75N77R + 80Kは、I-CreI K28、T30、S32、G33、S38、S40/E44、N68、R70、N75、R77及びK80のことである。
上記のように定義されるヘテロ二量体変異型は、上記のアミノ酸置換のみを有し得る。この場合、記載していない位置は変異しておらず、よって、野生型I-CreI (配列番号1)又はI-CreI N75足場(配列番号4)の配列にそれぞれ相当する。図18〜20(配列番号5〜60のヌクレオチド配列)のGSのDNA標的を切断するこのようなへテロ二量体I-CreI変異型の例は、以下の配列の対に相当する第1及び第2単量体からなる変異型を含む:配列番号61〜84(第1単量体)及びそれぞれ配列番号85〜108(第2単量体;図18及び表I);配列番号109〜123、75、124〜128(第1単量体)及びそれぞれ配列番号129〜146、99、147〜151(第2単量体;図19及び表II);配列番号109、110、152〜155、114、156〜159、75、160〜162、126、127、163(第1単量体)及びそれぞれ配列番号129〜133、164〜167、137、168〜171、99、172〜174、149、150及び175(第2単量体;図20、表III及びX)。
或いは、ヘテロ二量体変異型は、上記で定義されるアミノ酸置換を含むI-CreI配列からなることができる。後者の場合、記載していない位置は、付加的な変異、例えば上記で定義される1つ又は複数の付加的変異を含み得る。
特に、ヘテロ二量体変異型の1つ又は両方の単量体は、有利には、GS標的についての変異型の切断活性を増大させる付加的な置換を含む。
例えば、配列番号211〜229、242〜244及び271(表XI及びXII)のいずれか1つを有する第1変異型及び配列番号245〜268(表XIII及びXIV)のいずれかを1つを有する第2変異型により形成されたヘテロ二量体変異型は、GSCHO1標的(配列番号30)についての切断活性を増大させる付加的な置換を有する。
GSCHO1標的を切断する好ましいヘテロ二量体変異型を表IVに提示する。
Figure 2012501641
本発明は、上記で定義される配列と少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95% (96%、97%、98%、99 %)の同一性を有するI-CreI変異型であって、GS遺伝子からのDNA標的を切断できる変異型を含む。
ヘテロ二量体変異型は、有利には、2つのI-CreI単量体間に分子間相互作用をつくる第1及び第2単量体の残基に対応する興味対象の少なくとも1対の変異を有する偏性(obligate)ヘテロ二量体変異型であり、ここで、上記の対の第1変異は第1単量体中にあり、上記の対の第2変異は第2単量体中にあり、上記の変異の対は各単量体からの機能的ホモ二量体の形成を妨げ、GS遺伝子からのゲノムDNA標的を切断できる機能的ヘテロ二量体の形成を可能にする。
偏性ヘテロ二量体を形成するために、単量体は、第1及び第2単量体のそれぞれについて、以下の変異の対の少なくとも1つを有することが有利である:
a) 8位のグルタミン酸の塩基性アミノ酸、好ましくはアルギニンでの置換(第1単量体)、及び7位のリジンの酸性アミノ酸、好ましくはグルタミン酸での置換(第2単量体);第1単量体は、7位及び96位のリジン残基の少なくとも1つのアルギニンによる置換をさらに含み得る、
b) 61位のグルタミン酸の塩基性アミノ酸、好ましくはアルギニンでの置換(第1単量体)、及び96位のリジンの酸性アミノ酸、好ましくはグルタミン酸での置換(第2単量体);第1単量体は、7位及び96位のリジン残基の少なくとも1つのアルギニンによる置換をさらに含み得る、
c) 97位のロイシンの芳香族アミノ酸、好ましくはフェニルアラニンでの置換(第1単量体)、及び54位のフェニルアラニンの小さいアミノ酸、好ましくはグリシンでの置換(第2単量体);第1単量体は、54位のフェニルアラニンのトリプトファンによる置換をさらに含むことができ、第2単量体は、58位のロイシン又は57位のリジンのメチオニンによる置換をさらに含み得る、
d) 137位のアスパラギン酸の塩基性アミノ酸、好ましくはアルギニンでの置換(第1単量体)、及び51位のアルギニンの酸性アミノ酸、好ましくはグルタミン酸での置換(第2単量体)。
例えば、第1単量体は変異D137Rを、第2単量体は変異R51Dを有し得る。偏性ヘテロ二量体メガヌクレアーゼは、有利には、上記のa)、b)、c)又はd)で定義される変異の少なくとも2対を含む。変異の対のうちの1つは、有利にはc)又はd)で定義されるとおりである。好ましくは、一方の単量体は、7位及び96位のリジン残基の酸性アミノ酸(アスパラギン酸(D)又はグルタミン酸(E))、好ましくはグルタミン(K7E及びK96E)による置換を含み、他方の単量体は、8位及び61位のグルタミン酸残基の塩基性アミノ酸(アルギニン(R)又はリジン(K);例えばE8K及びE61R)による置換を含む。より好ましくは、偏性ヘテロ二量体メガヌクレアーゼは、上記のa)、b)及びc)で定義される変異の3対を含む。偏性ヘテロ二量体メガヌクレアーゼは、有利には、(i) E8R、E8K又はE8H、E61R、E61K又はE61H及びL97F、L97W又はL97Y; (ii) K7R、E8R、E61R、K96R及びL97F、或いは(iii) K7R、E8R、F54W、E61R、K96R及びL97Fの変異を少なくとも有する第1単量体(A)と、(iv) K7E又はK7D、F54G又はF54A及びK96D又はK96E; (v) K7E、F54G、L58M及びK96E、或いは(vi) K7E、F54G、K57M及びK96Eの変異を少なくとも有する第2単量体(B)とからなる。例えば、第1単量体は、変異K7R、E8R又はE8K、E61R、K96R及びL97F、或いはK7R、E8R又はE8K、F54W、E61R、K96R及びL97Fを有し、第2単量体は、変異K7E、F54G、L58M及びK96E又はK7E、F54G、K57M及びK96Eを有し得る。偏性ヘテロ二量体は、上記で定義される少なくとも1つのNLS及び/又は1つのタグを有し得る。上記のNLS及び/又はタグは、第1及び/又は第2単量体にあり得る。
本発明の主題は、上記で定義されるI-CreI変異型に由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼ(融合タンパク質)でもある。単鎖メガヌクレアーゼは、2つのI-CreI単量体、2つのI-CreIコアドメイン(I-CreIの6位〜94位)、又はこれら両方の組合せを含み得る。好ましくは、2つの単量体/コアドメイン又はこれら両方の組合せは、ペプチドリンカーにより連結される。
本発明の主題は、上記で定義される変異型又は単鎖キメラメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドフラグメントでもある。上記のポリヌクレオチドは、ホモ二量体若しくはヘテロ二量体の変異型の1つの単量体、又は単鎖キメラメガヌクレアーゼの2つのドメイン/単量体をコードし得る。
本発明の主題は、本発明による変異型又は単鎖メガヌクレアーゼの発現のための組換えベクターでもある。組換えベクターは、上記で定義される変異型又は単鎖メガヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドフラグメントを含む。好ましい実施形態において、上記のベクターは、それぞれがヘテロ二量体変異型の単量体の一方をコードする2つの異なるポリヌクレオチドフラグメントを含む。
本発明において用い得るベクターは、限定されないが、ウイルスベクター、プラスミド、RNAベクター、或いは染色体、非染色体、半合成又は合成の核酸からなり得る線状若しくは環状のDNA又はRNA分子を含む。好ましいベクターは、自律複製できるもの(エピソームベクター)及び/又は連結された核酸の発現を可能にするもの(発現ベクター)である。多数の適切なベクターが当業者に知られ、商業的に入手可能である。
ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えばアデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えばオルトミクソウイルス(例えばインフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば狂犬病及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば麻疹及びセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えばピコルナウイルス及びアルファウイルス、並びにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス1及び2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)及びポックスウイルス(例えばワクシニア、鶏痘及びカナリア痘)を含む二本鎖DNAウイルスを含む。その他のウイルスは、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス及び肝炎ウイルスを含む。レトロウイルスの例は、トリ白血病肉腫、哺乳類C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプマウイルスを含む(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, 第3版, B. N. Fieldsら編,Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。
好ましいベクターは、レンチウイルスベクター、特に自己不活性化レンチウイルスベクター(self inactivacting lentiviral vectors)を含む。
ベクターは、選択マーカー、例えば真核細胞培養についてネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、グルタミンシンセターゼ及びヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ;エス・セレビシエ(S. cerevisiae)についてTRP1、URA3及びLEU2;大腸菌(E. coli)においてテトラサイクリン、リファンピシン又はアンピシリン耐性を含み得る。
好ましくは、上記のベクターは、本発明の変異型/単鎖メガヌクレアーゼをコードする配列が、適切な転写及び翻訳制御要素の制御下に位置して、該変異型の生成又は合成を許容する発現ベクターである。よって、上記のポリヌクレオチドは、発現カセットに含まれる。より具体的には、該ベクターは、複製起点、上記のポリヌクレオチドに機能可能に連結されたプロモーター、リボソーム結合部位、RNAスプライシング部位(ゲノムDNAを用いる場合)、ポリアデニル化部位、及び転写終結部位を含む。これは、エンハンサーも含み得る。プロモーターの選択は、ポリペプチドが発現される細胞に依存する。好ましくは、変異型がヘテロ二量体である場合、各単量体をコードする2つのポリヌクレオチドは、両方のポリヌクレオチドの発現を同時に駆動し得る1つのベクターに含まれる。適切なプロモーターは、組織特異的及び/又は誘導性プロモーターを含む。誘導性プロモーターの例は、重金属のレベルの増加により誘導される真核メタロチオネインプロモーター、イソプロピル-β-D-チオガラクト-ピラノシド(IPTG)に応答して誘導される原核lacZプロモーター、及び温度の増加により誘導される真核熱ショックプロモーターである。組織特異的プロモーターの例は、足場筋クレアチンキナーゼ、前立腺特異的抗原(PSA)、α-アンチトリプシンプロテアーゼ、ヒトサーファクタント(SP)タンパク質A及びB、β-カゼイン及び酸性ホエータンパク質遺伝子である。
上記のベクターの別の有利な実施形態によると、これは、上記で定義されるゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列を含むターゲティング構築物を含む。
例えば、変異型のゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する前記配列は、配列番号3の2913位〜3112位、2971位〜3170位、2999位〜3198位、3045位〜3244位、4653位〜4852位、6360位〜6559位、6400位〜6599位、6445位〜6644位、7083位〜7282位、7105位〜7304位、7234位〜7433位、7266位〜7465位、7302位〜7501位、7314位〜7513位、7316位〜7515位、7423位〜7622位、7882位〜8081位、7906位〜8105位、7998位〜8197位、8005位〜8204位及び8012位〜8211位を含むマウスGS遺伝子のフラグメントである。或いは、変異型のゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する前記配列は、配列番号272の2988位〜3187位、3073位〜3272位、3075位〜3274位、3081位〜3280位、3121位〜3320位、3127位〜3326位、4540位〜4739位、5405位〜5604位、5425位〜5624位、5454位〜5653位、5823位〜6022位、5936位〜6135位、5954位〜6153位、6272位〜6471位、6341位〜6540位、6986位〜7185位、7046位〜7245位、7055位〜7254位、7079位〜7278位、7089位〜7288位、7136位〜7335位、7171位〜7370位、7178位〜7377位及び7185位〜7384位を含むヒトGS遺伝子のフラグメントである。
或いは、I-CreI変異型/単鎖メガヌクレアーゼをコードするベクターと、ターゲティング構築物を含むベクターとは、異なるベクターである。
より好ましくは、ターゲティングDNA構築物は:
a) 上記で定義されるゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列と、
b) a)に記載の配列で挟まれたか又はa)に記載の配列に含まれる、導入される配列とを含む。
好ましくは、少なくとも50 bp、好ましくは100 bpを超える、より好ましくは200 bpを超える相同配列が用いられる。よって、ターゲティングDNA構築物は、好ましくは200 pb〜6000 pb、より好ましくは1000 pb〜2000 pbである。実際に、共有されるDNA相同性は、破断の部位の上流及び下流に接する領域に位置し、導入されるDNA配列は、2つの腕の間に位置するべきである。導入される配列は、GS遺伝子内の変異を修復し、変異したものに代えて機能的GS遺伝子を回復し、GS遺伝子内の特定の配列を改変するため、GS遺伝子を減弱若しくは活性化するため、GS遺伝子若しくはその一部分を不活性化又は欠失させるため、興味対象の部位に変異を導入するため、或いは外因性遺伝子又はその一部分を導入するために用いられる配列を含む、いくつかの特定の様式で染色体DNAを変更させるために用いられる任意の配列であり得る。このような染色体DNAの変更は、ゲノム工学(動物モデル/組換え株化細胞)又はゲノム療法(遺伝子修正又は機能的遺伝子の回復)のために用いられる。ターゲティング構築物は、2つの相同腕の間にポジティブ選択マーカーと、ついには、第1の相同腕の上流又は第2の相同腕の下流にネガティブ選択マーカーとを含むのが有利である。マーカーは、標的部位にて相同組換えにより興味対象の配列が挿入された細胞の選択を可能にする。
例えば、図18〜20は、ヒト、マウス及びチャイニーズハムスターのGS遺伝子からの標的、該標的を切断できる変異型の例及び各標的部位にて切断を修復するための最小修復マトリクスを示す。
導入される配列は、好ましくはGS遺伝子又はその一部を不活性化又は欠失させるための配列である(図3A)。このような染色体DNAの変更を用いて、内因性GS遺伝子が不活性化され、導入遺伝子発現カセットがついにはGS遺伝子座に挿入される遺伝子改変株化細胞を作製することができる。このような染色体DNAの変更を用いて、GS遺伝子が不活性化(ノックアウト)され、ついには興味対象の外因性遺伝子で置き換えられる(ノックイン)、ノックアウト及びノックイン細胞/動物を作製することもできる。
内因性GS遺伝子の不活性化の後に、グルタミンシンセターゼを、ポジティブ選択マーカーとして、さらなるゲノム工学ストラテジー(標的又はランダム遺伝子操作)に、GS欠損細胞/動物のゲノムの任意の遺伝子座で用いてもよい。
ノックイン細胞/動物を作製するために、ターゲティングDNA構築物は、以下のものを含む:切断を修復するためのI-CreI変異型の標的部位に接する少なくとも200 bpの相同配列を有するGS遺伝子フラグメントと、発現カセット内に含まれる興味対象の外因性遺伝子の配列と、ついには、ネオマイシン耐性遺伝子のような選択マーカー。
配列の挿入のために、DNA相同性は、破断の部位のすぐ上流及び下流の領域に一般的に位置する(破断に隣接する配列;最小修復マトリクス)。しかし、挿入が、切断部位に接するORF配列の欠失を伴う場合、共有されるDNA相同性は、欠失の領域の上流及び下流の領域に位置する。
或いは、導入される配列は、ゲノム治療の目的のために、GS遺伝子内の変異を修復(遺伝子修正又は機能的遺伝子の回復)する配列である(図3C及び3D)。GS遺伝子を修正するために、遺伝子の切断は、変異の近傍、好ましくは変異の500 bpの範囲内で起こる(図3C)。ターゲティング構築物は、切断を修復するための、標的部位に接する少なくとも200 bpの相同配列を有するGS遺伝子フラグメント(最小修復マトリクス)を含み、変異を修復するために変異の領域に対応する野生型GS遺伝子の一部をコードする配列を含む(図3C)。結果として、遺伝子修正のためのターゲティング構築物は、最小修復マトリクスを含むか、又は最小修復マトリクスからなる;該最小修復マトリクスは、好ましくは200 pb〜6000 pb、より好ましくは1000 pb〜2000 pbである。好ましくは、変異型の切断部位が変異と重複するとき、修復マトリクスは、GS遺伝子において該切断を誘導するために用いられる変異型により切断されない改変された切断部位及びGS遺伝子のオープンリーディングフレームを変化させない野生型GSをコードする配列を含む。
或いは、機能的遺伝子を回復するために(図3D)、遺伝子の切断は、変異の上流で生じる。好ましくは、上記の変異は、遺伝子の配列内で最初のわかっている変異であり、そのことにより、遺伝子の全ての下流の変異を同時に修正できる。ターゲティング構築物は、インフレームで融合され(cDNAでのように)、かつ3'での転写を停止するためのポリアデニル化部位を有する切断部位の下流のエキソンを含む。導入される配列(エキソンノックイン構築物)は、切断部位を取り囲むイントロン又はエキソンの配列で挟まれており、そのことにより、機能的タンパク質をコードできるmRNAへの工学的操作遺伝子(エキソンノックイン遺伝子)の転写を可能にする(図3D)。例えば、エキソンノックイン構築物は、上記で定義される最小修復マトリクスからの、切断部位の上流及び下流の配列により挟まれる。
本発明の主題は、上記で定義されるターゲティングDNA構築物でもある。
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ(変異型又は単鎖キメラメガヌクレアーゼ)及び/又は上記で定義される、上記のメガヌクレアーゼをコードする少なくとも1つの発現ベクターを含むことを特徴とする組成物でもある。
上記の組成物の好ましい実施形態において、これは、上記で定義されるターゲティングDNA構築物を含む。
好ましくは、上記のターゲティングDNA構築物は、組換えベクターに含まれるか、又は本発明によるメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターに含まれる。
本発明の主題は、さらに、上記で規定されたメガヌクレアーゼ、好ましくは発現ベクターに含まれる1つ又は2つのポリヌクレオチドの、非治療目的でのGS遺伝子のゲノム工学のための使用である。GS遺伝子は、そのゲノム遺伝子座における内因性GS遺伝子又は動物若しくは株化細胞、例えばGSノックイン動物若しくは株化細胞に挿入されている導入遺伝子であり得る。
上記の使用の有利な実施形態によると、これは、ゲノムDNA標的配列を含むGS遺伝子の興味対象部位内に二本鎖破断を誘発することにより、DNA組換え事象、DNA欠失又は細胞死を誘発するためである。
本発明によると、上記の二本鎖破断は、GS遺伝子内の特定の配列を修復するため、GS遺伝子内の特定の配列を改変するため、変異された遺伝子の代わりに機能的GS遺伝子を回復するため、GS遺伝子を減弱若しくは活性化するため、GS遺伝子の興味対象部位に変異を導入するため、外因性遺伝子若しくはその一部分を導入するため、GS遺伝子若しくはその一部分を不活性化又は欠失させるため、染色体腕を転座させるため、或いはDNAを修復されないままにして分解させるためである。
好ましくは、上記の二本鎖破断は:
(i)GS遺伝子を、相同組換えにより、不活性化カセットで不活性化し(ノックアウト動物/株化細胞(図3A))、ついには導入遺伝子発現カセットを、GS遺伝子座に挿入する(ノックイン動物/株化細胞(図3A))ためであるか、又は
(ii)GS遺伝子を非相同性末端連結(図3B)により不活性化するためである。
本発明の主題は、少なくとも以下の:
(a)細胞に、上記で定義されるメガヌクレアーゼ(I-CreI変異型又は単鎖誘導体)を導入して、該メガヌクレアーゼのDNA認識及び切断部位を含むGS遺伝子の興味対象部位に二本鎖切断を誘発し、同時に又は連続的に、
(b) 工程(a)の細胞に、(1) 切断部位を取り囲む領域と相同性を有するDNAと、(2) ターゲティングDNAと染色体DNAとの組換えの際に興味対象部位を修復するDNAとを含むターゲティングDNAを導入して、相同組換えにより興味対象部位が修復された組換え細胞を作製し、
(c) 任意の適切な手段により、工程(b)の組換え細胞を単離する
工程を含む、GSノックアウト又はノックイン組換え細胞を作製する方法でもある。
本発明の主題は、少なくとも以下の:
(a) 動物の多能性前駆細胞又は胚に、上記で定義されるメガヌクレアーゼを導入して、該メガヌクレアーゼのDNA認識及び切断部位を含むGS遺伝子の興味対象部位に二本鎖切断を誘発し、同時に又は連続的に、
(b) 工程(a)の動物の前駆細胞又は胚に、(1) 切断部位を取り囲む領域と相同性を有するDNAと、(2) ターゲティングDNAと染色体DNAとの組換えの際に興味対象部位を修復するDNAとを含むターゲティングDNAを導入して、相同組換えにより興味対象部位が修復された遺伝子改変された動物の前駆細胞又は胚を作製し、
(c) 工程(b)のゲノム改変された動物の前駆細胞又は胚をキメラ動物に発達させ、
(d) 工程(c)のキメラ動物からトランスジェニック動物を誘導する
工程を含む、GSノックアウト又はノックイン動物を作製する方法でもある。
好ましくは、工程(c)は、工程(b)において作成された遺伝子改変前駆細胞を胚盤胞に導入し、キメラ動物を作製することを含む。
ターゲティングDNAは、細胞内に、ターゲティングDNAを興味対象部位に導入するのに適する条件下で導入される。
ノックアウト細胞/動物を作製するために、興味対象部位を修復するDNAは、GS遺伝子を不活性化する配列を含む。
ノックイン細胞/動物を作製するために、興味対象部位を修復するDNAは、興味対象の外因性遺伝子の配列を含み、ついにはネオマイシン耐性遺伝子のような選択マーカーを含む。
好ましい実施形態において、上記のターゲティングDNA構築物は、ベクターに挿入される。
或いは、GS遺伝子は、非相同性末端連結による二重鎖破断の修復により不活性化され得る(図3B)。
本発明の主題は、少なくとも以下の:
(a)細胞に、上記で定義されるメガヌクレアーゼを導入して、該メガヌクレアーゼのDNA認識及び切断部位を含むGS遺伝子の興味対象部位に二本鎖切断を誘発することにより、非相同性末端連結により二重鎖破断が修復されているゲノム改変されたGS欠損細胞を作製し、
(b) 任意の適切な手段により、工程(a)の遺伝子改変されたGS欠損細胞を単離する
工程を含む、GS欠損細胞を作製する方法でもある。
本発明の主題は、少なくとも以下の:
(a) 動物の多能性前駆細胞又は胚に、上記で定義されるメガヌクレアーゼを導入して、該メガヌクレアーゼのDNA認識及び切断部位を含むGS遺伝子の興味対象部位に二本鎖切断を誘発し、それにより、非相同性末端連結により二重鎖破断が修復されている遺伝子改変された前駆細胞又は胚を作製し、
(b) 工程(a)のゲノム改変された動物の前駆細胞又は胚をキメラ細胞に発達させ、
(c) 工程(b)のキメラ動物からトランスジェニック動物を誘導する
工程を含む、GSノックアウト動物を作製する方法でもある。
好ましくは、工程(b)は、工程(a)で得られたゲノム改変前駆細胞を、キメラマウスを作製するように、胚盤胞へ導入することを含む。
改変された細胞は、任意の興味対象の細胞であり得る。ノックイン/トランスジェニックマウスを作製するために、細胞は、当該技術分野において周知である、胚由来幹(ES)細胞のような多能性前駆細胞である。組換えヒト株化細胞を作製するために、細胞は、PerC6(Fallauxら、Hum. Gene Ther. 9, 1909-1917, 1998)又はHEK293(ATCC # CRL-1573)細胞であるのが有利である。マウス株化細胞を作製するために、細胞は、NSO、SP2/0(BALB/c ミエローマ;ECACC #85110503及び #85072401)又はL(ATCC #CRL-2648)細胞であるのが有利である。チャイニーズハムスター株化細胞を作製するために、細胞は、CHO-K1(ATCC #CCL-61)、DG44(Invitrogen社)又はCHO-S(Invitrogen社)細胞であるのが有利である。
動物は、好ましくは哺乳動物、より好ましくは研究用げっ歯動物(マウス、ラット、テンジクネズミ)又はウシ、ブタ、ウマ又はヤギである。
前記メガヌクレアーゼは、直接細胞に、又は前記メガヌクレアーゼをコードし、用いられる細胞内でのその発現に適切なポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを介して提供できる。
興味対象の異種タンパク質を発現する組換え株化細胞を作製するために、ターゲティングDNAは、相同組換えによって、GS遺伝子内に興味対象の外因性配列が組み込まれたゲノム改変細胞を作製するように興味対象の生成物(タンパク質又はRNA)並びについには上記で定義される切断部位の上流及び下流の配列に接するマーカー遺伝子をコードする配列を含む。
興味対象の配列は、ある興味対象のタンパク質/ペプチドをコードする任意の遺伝子であってよく、限定されないが、レポーター遺伝子、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、医薬活性タンパク質及びペプチド、疾患原因遺伝子産物及び毒素を含む。配列は、例えばsiRNAを含む興味対象のRNA分子をコードしてもよい。
外因性配列の発現は、内因性GS遺伝子プロモーター又は異種プロモーター、好ましくは上記で定義される構成性若しくは誘導性の遍在性又は組織特異的プロモーターにより駆動され得る。さらに、興味対象の配列の発現は、条件的であり得る。発現は、部位特異的リコンビナーゼ(Cre、FLP・・・)により誘発され得る。
よって、興味対象の配列は、興味対象の遺伝子に機能的に連結された異種プロモーターと、限定されないが(選択)マーカー遺伝子、リコンビナーゼ認識部位、ポリアデニル化シグナル、スプライス受容配列、イントロン、タンパク質検出のためのタグ及びエンハンサーを含む1つ又は複数の機能的配列とを含み得る適切なカセット内に挿入される。
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ及び/又は1つの発現ベクターを含むGSノックアウト又はノックイン細胞/動物を作製するためのキットでもある。好ましくは、該キットは、前記メガヌクレアーゼのDNA切断部位を取り囲むGS遺伝子の領域と相同性を有する配列に接しているGS遺伝子を不活性化する配列を含むターゲティングDNAをさらに含む。さらに、ノックイン細胞/動物を作製するために、該キットは、前記細胞/動物のゲノム内に導入される興味対象の配列と、ついには上記で定義される選択マーカー遺伝子とを含むベクターも含む。
本発明の主題は、その必要がある個体における、上記で定義されるGS遺伝子内の変異に起因する病的状態を予防、改善又は治癒するための医薬の製造のための、上記で定義される、少なくとも1つのメガヌクレアーゼ及び/又は1つの発現ベクターの使用でもある。
好ましくは、前記病的状態は、遺伝性の全身性グルタミン欠乏である。
メガヌクレアーゼの使用は、少なくとも以下の工程を含み得る:
(a)ドナー/個体の体細胞組織において、二本鎖切断を、前記メガヌクレアーゼの認識・切断部位の少なくとも1つを含むGS遺伝子の興味対象部位に、前記切断部位を前記メガヌクレアーゼと接触させることにより誘導する工程、
(b)前記体細胞組織にターゲティングDNAを導入する工程(ここで、前記ターゲティングDNAは、上記に定義されるように、(1)切断部位を取り囲む領域と相同性を有するDNAと、(2)ターゲティングDNAと染色体DNAとの間の組換えの際にGS遺伝子を修復するDNAとを含む)。ターゲティングDNAは、体細胞組織に、興味対象部位へのターゲティングDNAの導入に適切な条件下で導入される。
本発明によれば、前記二本鎖切断は、エクスビボで、前記メガヌクレアーゼの疾患個体からの体細胞への導入及びその後改変細胞を疾患個体に移植し戻すことにより誘導されてもよい。
本発明の主題は、その必要がある個体において、GS遺伝子の変異に起因する病的状態を予防、改善又は治癒するための方法でもあり、前記方法は、前記個体に上記で定義される組成物を任意の手段により投与する工程を少なくとも含む。メガヌクレアーゼは、ポリペプチド又は前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド構築物のいずれかとして用いることができる。メガヌクレアーゼは、マウス細胞に、当業者に周知の、特定の細胞型に適切である任意の都合の良い手段により、単独で又は少なくとも1つの適切なビヒクル若しくは担体のいずれか及び/又はターゲティングDNAと組合せて導入される。
本発明による使用の有利な実施形態によると、メガヌクレアーゼ(ポリペプチド)は、以下のものと組み合わされる:
- リポソーム、ポリエチレンイミン(PEI);このような場合、組合せが投与され、よって、標的体細胞に導入される。
- 膜移送ペプチド(membrane translocating peptides) (Bonetta, The Scientist, 2002, 16, 38; Fordら, Gene Ther., 2001, 8, 1〜4 ; Wadia及びDowdy, Curr. Opin. Biotechnol., 2002, 13, 52〜56);このような場合、変異型/単鎖メガヌクレアーゼの配列は、膜移送ペプチドの配列と融合される(融合タンパク質)。
本発明による使用の別の有利な実施形態によると、メガヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド)及び/又はターゲティングDNAは、ベクターに挿入される。ターゲティングDNA及び/又はメガヌクレアーゼをコードする核酸を含むベクターは、種々の方法により細胞に導入できる(例えば注入、直接取込、遺伝子銃法、リポソーム、エレクトロポレーション)。メガヌクレアーゼは、発現ベクターを用いて、細胞内で安定的又は一過的に発現させ得る。真核細胞における発現の方法は、当業者に周知である(Current Protocols in Human Genetics: 12章 「Vectors For Gene Therapy」及び13章「Delivery Systems for Gene Therapy」を参照)。所望により、組換えタンパク質中に、核局在化シグナルを組み込んで、核内でそれが発現されることを確実にすることが好ましい。
一旦細胞内に入ると、メガヌクレアーゼ及び存在するならばターゲティングDNA及び/又はメガヌクレアーゼをコードする核酸を含むベクターとは、細胞質から核内の作用部位まで、細胞により移入又は移送される。
治療目的のために、メガヌクレアーゼ及び医薬的に許容される賦形剤は、治療有効量で投与される。このような組合せは、投与される量が生理的に重要である場合に、「治療有効量」で投与されるという。作用剤は、その存在が、レシピエントの生理機能に検出可能な変化をもたらす場合に、生理的に重要である。この関係において、作用剤は、その存在が、標的疾患の1つ又は複数の症状の重篤度を低減させ、損傷又は異常のゲノム修正をもたらす場合に、生理的に重要である。
本発明による使用のある実施形態において、メガヌクレアーゼは、本質的に非免疫原性であり、すなわち、ほとんど又は全く有害免疫応答を生じない。この種の有害免疫反応を緩和又は排除するための種々の方法を、本発明に従って用いることができる。好ましい実施形態において、メガヌクレアーゼは、N-ホルミルメチオニンを実質的に含まない。望ましくない免疫反応を回避するその他の様式は、メガヌクレアーゼをポリエチレングリコール(「PEG」)又はポリプロピレングリコール(「PPG」) (好ましくは500〜20,000ダルトンの平均分子量(MW)のもの)とコンジュゲートさせることである。Davisら(US 4,179,337)により記載されるPEG又はPPGとのコンジュゲート形成は、例えば抗ウイルス活性を有する、非免疫原性で、生理活性で水溶性のエンドヌクレアーゼコンジュゲートを提供できる。ポリエチレン--ポリプロピレングリコール共重合体を用いる同様の方法が、Saiferらにより記載される(US 5,006,333)。
本発明は、上記で定義されるポリヌクレオチド又はベクター、好ましくは発現ベクターで改変された原核又は真核宿主細胞にも関する。
本発明は、細胞の全て又は一部分が上記で定義されるポリヌクレオチド又はベクターで改変されたことを特徴とする非ヒトトランスジェニック動物又はトランスジェニック植物にも関する。
本明細書で用いる場合、細胞とは、原核細胞、例えば細菌細胞、又は真核細胞、例えば動物、植物若しくは酵母細胞のことである。
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ変異型の、別のメガヌクレアーゼを作製するための足場としての使用でもある。例えば、新規なメガヌクレアーゼを作製する目的で、さらなる回の突然変異誘発及び選択/スクリーニングを上記の変異型に対して行うことができる。
本発明によるメガヌクレアーゼの異なる使用及び上記のメガヌクレアーゼを用いる方法は、I-CreI変異型、該変異型に由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼ、上記で定義される、該変異型若しくは単鎖キメラメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ベクター、細胞、トランスジェニック植物又は非ヒトトランスジェニック哺乳動物の使用を含む。
本発明によるI-CreI変異型は、少なくとも以下の工程を含む、GS遺伝子からのゲノムDNA標的配列を切断できるI-CreI変異型を工学的に作製するための方法により得ることができる:
(a) I-CreIの28位〜40位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第1機能的サブドメイン内に少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第1シリーズを構築し、
(b) I-CreIの44位〜77位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第2機能的サブドメイン内に少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第2シリーズを構築し、
(c) 工程(a)の第1シリーズから、(i) I-CreI部位の−10位〜−8位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の−10位〜−8位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の−10位〜−8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(d) 工程(b)の第2シリーズから、(i) I-CreI部位の−5位〜−3位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の−5位〜−3位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の−5位〜−3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(e) 工程(a)の第1シリーズから、(i) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) −10位〜−8位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(f) 工程(b)の第2シリーズから、(i) I-CreI部位の+3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) −5位〜−3位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(g) 工程(c)及び工程(d)からの2つの変異型の28位〜40位及び44位〜77位の変異を、単一の変異型に組み合わせて、(i) −10位〜−8位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の−10位〜−8位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の−10位〜−8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) −5位〜−3位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の−5位〜−3位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(iv) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の−5位〜−3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモ二量体I-CreI変異型を得て、及び/又は
(h) 工程(e)及び工程(f)からの2つの変異型の28位〜40位及び44位〜77位の変異を、単一の変異型に組み合わせて、(i) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) −5位〜−3位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(iv) −10位〜−8位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモ二量体I-CreI変異型を得て、
(i) 工程(g)及び(h)で得られた変異型を組み合わせて、ヘテロ二量体を形成し、
(j) GS遺伝子からの上記のゲノムDNA標的を切断できる工程(i)からのヘテロ二量体を選択及び/又はスクリーニングする。
上記の工程(c)、(d)、(e)又は(f)の1つは省略できる。例えば、工程(c)を省略する場合、工程(d)は、−10位〜−8位及び−5位〜−3位の両方のヌクレオチドトリプレットが上記のゲノム標的の−10位〜−8位及び−5位〜−3位に存在するヌクレオチドトリプレットでそれぞれ置き換えられ、+3位〜+5位及び+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、上記のゲノム標的の−5位〜−3位及び−10位〜−8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列でそれぞれ置き換えられた変異I-CreI部位を用いて行われる。
工程(g)及び(h)における変異の(分子内)組合せは、周知のオーバーラップPCR法に従って、2つのサブドメインのそれぞれを含むオーバーラップフラグメントを増幅することにより行うことができる。
工程(i)の変異型の(分子間)組合せは、工程(g)からの1つの変異型を、工程(h)からの1つの変異型と共発現させて、ヘテロ二量体の形成を可能にすることにより行われる。例えば、宿主細胞を、上記の変異型をコードする1つ又は2つの組換え発現ベクターにより改変できる。次いで、国際PCT出願WO 2006/097854及びArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458に以前に記載されたように、細胞を変異型の発現を可能にする条件下で培養することにより、ヘテロ二量体が宿主細胞内で形成される。
工程(c)、(d)、(e)、(f)及び/又は(j)の選択及び/又はスクリーニングは、国際PCT出願WO 2004/067736、Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458, Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜2962及びChamesら, Nucleic Acids Res., 2005, 33, e178に記載されるように、切断アッセイを用いることにより、インビトロ又はインビボで行うことができる。
上記の方法の別の有利な実施形態によると、工程(c)、(d)、(e)、(f)及び/又は(j)は、インビボで、上記の変異型により作製された変異DNA標的配列内の二本鎖破断が、ポジティブ選択マーカー若しくはレポーター遺伝子の活性化、又はネガティブ選択マーカー若しくはレポーター遺伝子の不活性化を、該DNA二本鎖破断の組換え媒介修復により導く条件下で行われる。
さらに、工程(g)又は(h)で得られるホモ二量体組合せ変異型を、選択/スクリーニング工程に供して、少なくとも−11位〜−3位(工程(g)の組合せ変異型)又は+3位〜+11位(工程(h)の組合せ変異型)のヌクレオチドが該ゲノム標的の−11位〜−3位(工程(g)の組合せ変異型)又は+3位〜+11位(工程(h)の組合せ変異型)に存在するヌクレオチドと同一であり、+3位〜+11位(工程(g)の組合せ変異型)又は−11位〜−3位(工程(h)の組合せ変異型)のヌクレオチドが該ゲノム標的の−11位〜−3位(工程(g)の組合せ変異型)又は+3位〜+11位(工程(h)の組合せ変異型)に存在するヌクレオチドの逆相補配列と同一である偽パリンドローム配列を切断できるものを同定することが有利である。
好ましくは、工程(g)又は工程(h) の組合せ変異型の組(又は両方の組)は、さらなる選択/スクリーニング工程を受けて、(i) −2位〜+2位のヌクレオチド(4つの中央塩基) が該ゲノム標的の−2位〜+2位に存在するヌクレオチドと同一であり、(ii) −11位〜−3位(工程(g)の組合せ変異型)又は+3位〜+11位(工程(h)の組合せ変異型)のヌクレオチドが、該ゲノム標的の−11位〜−3位(工程(g)の組合せ変異型)又は+3位〜+11位(工程(h)の組合せ変異型)に存在するヌクレオチドと同一であり、(iii) +3位〜+11位(工程(g)の組合せ変異型)又は−11位〜−3位(工程(h)の組合せ変異型)のヌクレオチドが、該ゲノム標的の−11位〜−3位(工程(g)の組合せ変異型)又は+3位〜+11位(工程(h)の組合せ変異型)に存在するヌクレオチドの逆相補配列と同一である偽パリンドローム配列を切断できる変異型を同定する。このさらなるスクリーニング工程は、興味対象のゲノム標的を切断できるヘテロ二量体を単離する可能性を増大させる(工程(j))。
工程(a)、(b)、(g)、(h)及び(i)は、上記で定義される、DNA標的配列と接触するか又は該DNA標的と直接若しくは間接的に相互作用する他の位置、変異型の結合及び/又は切断特性を改良する位置、或いは機能的ホモ二量体の形成を妨げるか若しくは損なうか、又はヘテロ二量体の形成に好ましい位置での、付加的な変異の導入をさらに含み得る。
当業者に周知の標準的な突然変異誘発法に従って、例えばPCRを用いることにより、変異型又は変異型のプールに対して部位特異的突然変異誘発及び/又はランダム突然変異誘発により付加的な変異を導入してよい。
特に、ランダム突然変異誘発は、変異型全体又は変異型の一部分、特に変異型のC-末端半分(80位〜163位)に導入して、興味対象の遺伝子からのDNA標的に対する変異型の結合及び/又は切断特性を改良できる。変異型の結合及び/又は切断特性を改良する位置、例えば19位、54位、80位、87位、105位及び/又は132位での部位特異的突然変異誘発を、ランダム突然変異誘発と組み合わせることもできる。突然変異誘発は、当該技術において周知である標準的な突然変異誘発法に従って、ランダム/部位特異的突然変異誘発ライブラリを変異型のプールに対して作製することにより行うことができる。部位特異的突然変異誘発は、上記で定義されるような変異部位を含むオーバーラップフラグメントを、周知のオーバーラップPCR法に従って増幅することにより有利に行うことができる。さらに、多部位特異的突然変異誘発を、変異型又は変異型のプールに対して行うことが有利であろう。
好ましくは、突然変異誘発は、工程(i)で形成されるか又は工程(j)で得られるヘテロ二量体の一方の単量体に対して、有利には、単量体のプールに対して、好ましくは工程(i)又は(j)のへテロ二量体の両方の単量体に対して行われる。
好ましくは、Arnouldら, J. Mol. Biol., 2007, 371, 49〜65の図4に記載される手順に従って、少なくとも2回の選択/スクリーニングを行う。1回目において、ヘテロ二量体の一方の単量体(図4の単量体Y)に突然変異を誘発し、他方の単量体(図4の単量体X)と共発現させてヘテロ二量体を形成し、改良単量体Y+を、興味対象遺伝子からの標的に対して選択する。2回目において、他方の単量体(単量体X)に突然変異を誘発し、改良単量体Y+と共発現させてヘテロ二量体を形成し、興味対象遺伝子からの標的に対して選択して、改良された活性を有するメガヌクレアーゼ(X+ Y+)を得る。突然変異誘発は、上記で定義される、単量体又は単量体のプールに対するランダム突然変異誘発又は部位特異的突然変異誘発であり得る。両方の型の突然変異誘発は、組み合わせることが有利である。1つ又は両方の単量体に対してさらなる回の選択/スクリーニングを行って、変異型の切断活性を改良できる。
本発明による方法により得ることができる改良されたメガヌクレアーゼの切断活性は、元のメガヌクレアーゼのものとの比較により、レポーターベクターを用いて、酵母又は哺乳動物細胞での直列反復組換えアッセイにより測定できる。レポーターベクターは、酵母又は哺乳動物発現ベクター中にクローニングされた介在配列内に、レポーター遺伝子の2つの切断された非機能的コピー(直列反復)と、ゲノムDNA標的配列とを含む。メガヌクレアーゼの発現が、ゲノムDNA標的配列の切断をもたらす。この切断は、直列反復同士の相同組換えを誘発し、機能的レポーター遺伝子(例えばLacZ)をもたらし、この発現は、適切なアッセイによりモニターできる。元のメガヌクレアーゼと比較して、より強いシグナルが、改良されたメガヌクレアーゼを用いて観察される。或いは、そのゲノムDNA標的に対する改良されたメガヌクレアーゼの活性は、同じゲノム遺伝子座にて、哺乳動物細胞での染色体アッセイ(Arnouldら, J. Mol. Biol., 2007, 371, 49〜65)を用いて、I-CreI部位に対するI-CreIのものと比較できる。
本発明の主題は、本発明に従う、GS遺伝子からのDNA標的を切断できる変異型を工学的に作製するために有用なI-CreIの28位〜40位及び/又は44位〜77位に変異を有するI-CreI変異型でもある。特に、本発明は、表V及びVIIに提示される28位、30位、32位、33位、38位及び40位、又は44位、68位、70位、75位及び77位の変異型を含む、上記で定義されるI-CreI変異型を工学的に作製する方法の工程(c)〜(f)で定義されるI-CreI変異型を包含する。本発明は、表V〜VIIIの組合せ変異型を含む上記で定義されるI-CreI変異型を工学的に作製する方法の工程(g)及び(h)で定義されるI-CreI変異型も包含する。
興味対象の遺伝子からのDNA標的を切断できる単鎖キメラメガヌクレアーゼは、当該技術において周知の方法により、本発明による変異型から導かれる(Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜62; Chevalierら, Mol. Cell., 2002, 10, 895〜905; Steuerら, Chembiochem., 2004, 5, 206〜13; 国際PCT出願WO 03/078619及びWO 2004/031346)。このような方法はいずれも、本発明で定義される変異型に由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼを構築するために用いることができる。
本発明で定義される変異型をコードするポリヌクレオチド配列は、当業者に知られる任意の方法により調製できる。例えば、これらは、cDNA鋳型から、特異的プライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応により増幅される。好ましくは、上記のcDNAのコドンは、所望の発現系における上記のタンパク質の発現に好ましいように選択される。
上記のポリヌクレオチドを含む組換えベクターは、周知の組換えDNA及び遺伝子工学の技術により得て、宿主細胞に導入できる。
本発明で定義されるI-CreI変異型又は単鎖誘導体は、上記で定義されるポリペプチドを発現させることにより生成される。好ましくは、該ポリペプチドは、ポリペプチドの発現又は共発現に適する条件下で、1つの発現ベクター又は2つの発現ベクター(変異型のみの場合)により改変された宿主細胞又はトランスジェニック動物/植物で、発現又は共発現(変異型のみの場合)され、変異型又は単鎖誘導体は、宿主細胞培養物又はトランスジェニック動物/植物から回収される。
本発明の実行は、そうでないと記載しない限り、当該技術の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA及び免疫学の通常の技術を用いる。このような技術は、文献に充分に説明されている。例えばCurrent Protocols in Molecular Biology (Frederick M. AUSUBEL, 2000, Wiley and son Inc, Library of Congress, USA); Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版, (Sambrookら, 2001, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press);Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait編, 1984); Mullisら、米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization (B. D. Harries及びS. J. Higgins編 1984); Transcription And Translation (B. D. Hames及びS. J. Higgins編 1984); Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987); Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); Methods In ENZYMOLOGY (J. Abelson及びM. Simon編, Academic Press, Inc., New York)のシリーズ, 特に第154巻及び第155巻(Wuら編)並びに第185巻「Gene Expression Technology」(D. Goeddel編); Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Miller及びM. P.Calos編, 1987, Cold Spring Harbor Laboratory); Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer及びWalker編, Academic Press, London, 1987); Handbook Of Experimental Immunology, 第I〜IV巻(D. M. Weir及びC. C. Blackwell編, 1986); 並びにManipulating the Mouse Embryo, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986)を参照されたい。
上記の特徴に加えて、本発明は、本発明によるI-CreIメガヌクレアーゼ変異型及びそれらの使用を説明する実施例、並びに添付の図面に言及する以下の記載から明らかになるその他の特徴をさらに含む。添付の図面において:
‐図1:ホーミングエンドヌクレアーゼのモジュール構造及びカスタムメガヌクレアーゼ設計のためのコンビナトリアルアプローチ。
A. そのDNA標的に結合したI-CreIホーミングエンドヌクレアーゼの三次元構造。触媒コアは、DNA主溝より上方で、サドル形の相互作用界面を形成している2つのαββαββα折り畳みにより取り囲まれている。
B. 非パリンドロームキメラ標的(右下)を切断するヘテロ二量体又は単鎖融合分子を得るための、I-CreI標的配列に由来する異なる配列に結合する異なるI-CreI変異型(右上及び左下)。
C. より小さい非依存性サブユニット、すなわち単一単量体又はαββαββα折り畳み内のサブユニット(右上及び左下)の同定は、同一単量体内の変異の組合せにより、新規なキメラ分子(右下)の設計を可能にする。このような分子は、パリンドロームキメラ標的を切断する(右下)。
D. 上記の2つの工程の組合せは、4つの異なるサブドメインを含む、より大きなコンビナトリアルアプローチを可能にする。第1工程において、新規なメガヌクレアーゼの対は結合して、切断したい標的に由来するパリンドローム標的を切断する新規な分子(「ハーフメガヌクレアーゼ」)となることができる。その後、このような「ハーフメガヌクレアーゼ」の組合せは、興味対象の標的を切断するヘテロ二量体種となることができる。よって、各サブドメインについての少数の新規な切断体(cleaver)の同定は、非常に多数の新規なエンドヌクレアーゼの設計を可能にする。
‐図2:グルタミンシンセターゼのコード配列。
A. マウスのグルタミンシンセターゼ遺伝子(アクセッション番号 NC000067.5)。エキソンを灰色の四角で示す。GSCHO1標的をその配列及び位置とともに示す。
B. クリテクルス・グリセウスのグルタミンシンセターゼmRNA(アクセッション番号 X03495)。ORFを灰色の四角で示す。GSCHO1ゲノム標的部位を、グルタミンシンセターゼmRNA配列に関連して、その配列及びその位置とともに示す。
‐図3:グルタミンシンセターゼ(GS)遺伝子を切断するメガヌクレアーゼの利用のためのストラテジー。
A. 遺伝子挿入及び/又は遺伝子不活性化。メガヌクレアーゼによる切断及び切断部位を取り囲む配列と相同性を有する配列に挟まれる興味対象遺伝子(遺伝子挿入)又は不活性化カセット(遺伝子不活性化)を含む修復マトリクスでの組換えの際に、遺伝子挿入又は遺伝子不活性化が起こる。
B. 非相同性末端連結による遺伝子不活性化。メガヌクレアーゼによる切断の際に、DNA末端が分解し、非相同性末端連結(NHEJ)により再結合し、遺伝子不活性化が起こる。
C. 遺伝子修正。変異はGS遺伝子内で起こる。メガヌクレアーゼによる切断及び修復マトリクスでの組換えの際に、有害変異が修正される。
D. エキソン配列ノックイン。変異はGS遺伝子内で起こる。変異したmRNA転写産物を遺伝子の下方に示す。修復マトリクスにおいて、切断部位の下流に位置するエキソンを、3'末端で転写を停止させるポリアデニル化部位とともに、インフレーム(cDNA中のように)で融合する。イントロン及びエキソンの配列を、相同領域として用いることができる。エキソン配列のノックインは、機能的タンパク質をコードできるmRNAに転写される、工学的に作製された遺伝子を生じる。
‐図4:GSCHO1標的配列及びその誘導体。10GCC_P、10GGA_P、5AGG_P及び5TTC_Pは、以前に得られたI-CreI変異型により切断される近い誘導体である。それらは、C1221とは四角で囲まれたモチーフが異なる。C1221、10GCC_P、10GGA_P、5AGG_P及び5TTC_Pは、最初24 bpの配列として記載されたが、構造データは、22 bpのみがタンパク質/DNA相互作用に関連していることを示唆する。しかし、±12位を括弧に示す。GSCHO1は、マウス及びクリテクルス・グリセウスのグルタミンシンセターゼ遺伝子に位置するDNA配列である。GSCHO1.2標的において、標的の中央のGTGA配列は、C1221に見られる塩基であるGTACで置き換えられている。GSCHO1.3は、GSCHO1.2の左部分に由来するパリンドローム配列であり、GSCHO1.4は、GSCHO1.2の右部分に由来するパリンドローム配列である。図に示されるように、10GCC_P、10GGA_P、5AGG_P及び5TTC_Pの四角で囲まれたモチーフは、GSCHO1シリーズの標的において見られる。
‐図5:pCLS1055プラスミド地図。
‐図6:pCLS0542プラスミド地図。
‐図7:組合せ変異型によるGSCHO1.3標的の切断。図は、GSCHO1.3標的でのI-CreI組合せ変異型のスクリーニングの例を示す。フィルター上で、H2位にてポジティブな変異型の配列は、(表VIの命名によれば)KRSRES/DYSYQである。H10、H11及びH12は、種々の強度のネガティブコントロール及びポジティブコントロールである。
‐図8:pCLS1107プラスミド地図。
‐図9:組合せ変異型によるGSCHO1.4標的の切断。図は、GSCHO1.4標的でのI-CreI組合せ変異型のスクリーニングの例を示す。H10、H11及びH12は、種々の強度のネガティブコントロール及びポジティブコントロールである。フィルター上で、D4、F3及びF9の位置でポジティブな変異型の配列は、(表VIIの命名によれば)それぞれKRDYQS/RHRDI、KRGYQS/KARDI及びKRDYQS/RNRDIである。
‐図10:ヘテロ二量体の組合せ変異型によるGSCHO1.2及びGSCHO1標的配列の切断。
A. GSCHO1.2標的に対するI-CreI変異型の組合せのスクリーニングの例。
B. GSCHO1標的に対するI-CreI変異型の同一の組合せのスクリーニング。
試験された全てのヘテロ二量体はGSCHO1.2標的を切断した。GSCHO1標的と最強のシグナルを示すヘテロ二量体は、GSCHO1.3変異型KRSRES/DYSYQと、GSCHO1.4変異型KRGYQS/KHRDI、KRGYQS/KNRDI、KRCYQS/RHRDI又はKRGYQS/RHRDIとをそれぞれ共発現する酵母に対応する、D3位、D7位、D9位及びE2位にて見られる。E10、E11及びE12は、種々の強度のネガティブコントロール及びポジティブコントロールである。
‐図11:GSCHO1標的の切断。GSCHO1.3を切断する変異型のランダム突然変異誘発(実施例5)より得られ、GSCHO1.4を切断する変異型(表VIIIによればKRGYQS/KNRDI)と共発現したI-CreI洗練化(refine)変異型のGSCHO1標的に対するスクリーンの例。
各クラスターは6つのスポットを含む:4つの左スポットにおいて、GSCHO1標的及びGSCHO1.4変異型を含む酵母株を、ライブラリからの4つの異なるクローンと交雑する(H10、H11及びH12を除く:種々の強度のネガティブコントロール及びポジティブコントロール)。右上スポットは、元のGSCHO1.3変異型の1つ(表VIの命名によれば)KRSRES/DYSYQと交雑したGSCHO1.4変異型/GSCHO1標的株である;右下スポットは内部コントロールである。フィルター上で、C11位、E12位及びF1位にてポジティブな変異型の配列は、それぞれ30R,33R,38E,44D,66H,68Y,70S,75Y,77Q,132V;7E,19A,30R,33R,38E,44D,68Y,70S,75Y,77Q,120A,及び30R,33R,38E,44D,68Y,70S,75Y,77Q,87Lである。
‐図12:GSCHO1標的の切断。GSCHO1.3標的を切断する元の変異型の部位特異的突然変異誘発により実施例6において構築され、GSCHO1.4を切断する変異型(表VIIIによればKRGYQS/KNRDI)と共発現されたライブラリのGSCHO1標的に対するスクリーンの例。
各クラスターは6つのスポットを含む:各スポットについて、GSCHO1標的及びGSCHO1.4変異型を含む酵母株を;E80K置換を含むライブラリからの2つの異なるクローン(左スポット)、F87Lライブラリからの2つの異なるクローン(中央スポット)又は実施例3に記載されるGSCHO1.3を切断する変異型であるKRSRES/DYSYQ(右上スポット)と交雑する。右下スポットは内部コントロールである。H10、H11及びH12は、種々の強度のネガティブコントロール及びポジティブコントロールである。B7位及びG6位にてポジティブな変異型の配列は、それぞれ30R,33R,38E,44D,68Y,70S,75Y,77Q,80K及び30R,33R,38E,44D,68Y,70S,75Y,77Q, 87Lである。
‐図13:GSCHO1標的の切断。GSCHO1.4を切断する変異型のランダム突然変異誘発(実施例7)により得られ、GSCHO1.3を切断する変異型(表VIによればKRSRES/DYSYQ)と共発現したI-CreI洗練化変異型のGSCHO1標的に対するスクリーンの例。
各クラスターは6つのスポットを含む:4つの左スポットにおいて、GSCHO1標的及びGSCHO1.3変異型を含む酵母株を、ライブラリからの4つの異なるクローンと交雑する(H10、H11及びH12を除く:種々の強度のネガティブコントロール及びポジティブコントロール)。右上スポットは、元のGSCHO1.4変異型の1つ(表VIIIの命名によれば)KRGYQS/KYSNIと交雑されるGSCHO1.3変異型/GSCHO1標的株である;右下スポットは内部コントロールである。フィルター上で、E6位、D9位及びH3位にてポジティブな変異型の配列は、それぞれ30R,32G,44R,68H,132V,154G;30R,33H,68A,77R及び2S,30R,33H,68A,77Rである。
‐図14:GSCHO1標的の切断。GSCHO1.4標的を切断する元の変異型の部位特異的突然変異誘発により実施例8において構築され、GSCHO1.3を切断する変異型(表VIによればKRSRES/DYSYQ)と共発現したライブラリのGSCHO1標的に対するスクリーンの例。
各クラスターは6つのスポットを含む:各スポットについて、GSCHO1標的及びGSCHO1.3変異型を含む酵母株を;G19S置換を含むライブラリからの2つの異なるクローン(2つの上スポット)、F54Lライブラリからの2つの異なるクローン(2つの下スポット)又は実施例4に記載されるGSCHO1.4を切断する変異型であるKRGYQS/KYSNI(右上スポット)と交雑する。右下スポットは内部コントロールである。H10、H11及びH12は、種々の強度のネガティブコントロール及びポジティブコントロールである。B2位、F1位及びH2位にてポジティブな変異型の配列は、それぞれ30R,32G,44R,54L,68H;19S,30R,32G,44K,45M,68H及び19S,30R,33H,68A,77Rである。
‐図15:pCLS1058プラスミド地図。
‐図16:pCLS1768プラスミド地図。
‐図17:CHO細胞におけるGSCHO1標的の切断。
哺乳動物細胞におけるGSCHO1標的配列の染色体外切断効率を、12のヘテロ二量体の組合せについて比較した。試験した変異型の配列を表XVに記載する。ネガティブコントロールpCLS1768は空の発現ベクターである。
‐図18は、ヒトGS遺伝子において見られるメガヌクレアーゼ標的配列及び該DNA標的を切断できるI-CreI変異型の例を示す;変異型(第1及び第2 I-CreI変異型単量体により形成されるヘテロ二量体)の例の少なくとも1つを、各標的について提示する。標的配列に最も近いエキソン及びエキソン境界を示す(縦欄1及び2)。DNA標的の配列を(縦欄3)、その配列番号(縦欄4)及びヒトGS遺伝子配列に(9782 bp;アクセッション番号 NC_000001.9)関して、その最初のヌクレオチドの位置(縦欄5)とともに提示する。標的部位における切断を修復するための最小修復マトリクスを、その最初のヌクレオチド(開始、縦欄10)及び最後のヌクレオチド(終了、縦欄11)により示す。各I-CreI変異型の配列を、記載した位置にて変異した残基(縦欄6及び8)及び対応する配列番号(縦欄7及び9)により定義する。例えば、図18の最初のヘテロ二量体の変異型は、T、G、V、E、N、R及びKを、それぞれ30位、33位、44位、68位、75位、77位及び80位に有する第1単量体と、R、T、N、Q、D、S、R及びTを、それぞれ30位、32位、33位、40位、44位、68位、70位、75位及び77位に有する第2単量体とからなる。位置をI-CreI配列(配列番号1)に関連して示す;I-CreIは、N、S、Y、S、Q、R、R、D、I及びEを、それぞれ30位、32位、33位、40位、44位、68位、70位、75位、77位及び80位に有する。
‐図19は、マウスGS遺伝子において見られるメガヌクレアーゼ標的配列及び該DNA標的を切断できるI-CreI変異型の例を示す;変異型(第1及び第2 I-CreI変異型単量体により形成されるヘテロ二量体)の例の少なくとも1つを、各標的について提示する。標的配列に最も近いエキソン及びエキソン境界を示す(縦欄1及び2)。DNA標的の配列を(縦欄3)、その配列番号(縦欄4)及びマウスGS遺伝子配列(配列番号3)に関して、その最初のヌクレオチドの位置(縦欄5)とともに提示する。標的部位における切断を修復するための最小修復マトリクスを、その最初のヌクレオチド(開始、縦欄10)及び最後のヌクレオチド(終了、縦欄11)により示す。各I-CreI変異型の配列を、記載した位置にて変異した残基(縦欄6及び8)及び対応する配列番号(縦欄7及び9)により定義する。例えば、図19の最初のヘテロ二量体の変異型は、C、C、H、K、Y、S及びNを、それぞれ32位、33位、38位、44位、68位、70位及び75位に有する第1単量体と、R、T、Y、S、R及びTを、それぞれ30位、44位、68位、70位、75位及び77位に有する第2単量体とからなる。位置をI-CreI配列(配列番号1)に関して示す;I-CreIは、N、S、Y、Q、Q、R、R、D、I及びEを、それぞれ30位、32位、33位、38位、44位、68位、70位、75位、77位及び80位に有する。
‐図20は、チャイニーズハムスター(クリテクルス・グリセウス)GS遺伝子において見られるメガヌクレアーゼ標的配列及び該DNA標的を切断できるI-CreI変異型の例を示す;変異型(第1及び第2 I-CreI変異型単量体により形成されるヘテロ二量体)の例の少なくとも1つを、各標的について提示する。標的配列に最も近いエキソンを示す(縦欄1)。DNA標的の配列を(縦欄2)、その配列番号(縦欄3)及びチャイニーズハムスターGSのmRNA配列(GenBank X03495)に関して、その最初のヌクレオチドの位置(縦欄4)とともに提示する。各I-CreI変異型の配列を、記載した位置にて変異した残基(縦欄5及び7)及び対応する配列番号(縦欄6及び8)により定義する。例えば、図20の最初のヘテロ二量体の変異型は、C、C、H、K、Y、S及びNを、それぞれ32位、33位、38位、44位、68位、70位及び75位に有する第1単量体と、R、T、Y、S、R及びTを、それぞれ30位、44位、68位、70位、75位及び77位に有する第2単量体とからなる。位置をI-CreI配列(配列番号1)に関連して示す;I-CreIは、N、S、Y、Q、Q、R、R、D、I及びEを、それぞれ30位、32位、33位、38位、44位、68位、70位、75位、77位及び80位に有する。
実施例1:グルタミンシンセターゼ(GS)遺伝子からの標的を切断する新規なメガヌクレアーゼを工学的に作製するためのストラテジー
GSCHO1は、マウス及びクリテクルス・グリセウス(チャイニーズハムスター)両方のグルタミンシンセターゼ遺伝子のコード配列に位置する22 bpの(非パリンドローム)標的である。標的配列は、マウスグルタミンシンセターゼ遺伝子(アクセッション番号 NC000067.5)の3060位〜3083位(図2A)及びクリテクルス・グリセウスグルタミンシンセターゼ(GS)cDNA(アクセッション番号 X03495)の204位〜227位(図2B)に対応する。
GSCHO1配列は、部分的には、国際PCT出願WO 2006/097784及びWO 2006/097853;Arnouldら、J. Mol. Biol., 2006, 355, 443-458;Smithら、Nucleic Acids Res., 2006に記載されるようにして得られる、以前に同定されたメガヌクレアーゼにより切断される10GCC_P、10GGA_P、5AGG_P及び5_TTC_P標的のパッチワークである(図4)。よって、GSCHO1は、それら以前に同定されたメガヌクレアーゼから得られた組合せ変異型により切断し得る。
10GCC_P、10GGA_P、5AGG_P及び5_TTC_P標的配列は、I-CreIにより切断されるパリンドローム配列であるC1221の24 bpの誘導体である(Arnouldら、前記引用)。しかし、そのDNA標的に結合しているI-CreIの構造は、それら標的の外側の2つの塩基対(−12位及び12位)が結合及び切断に影響しないことを示唆しており(Chevalierら、Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312-316; Chevalier及びStoddard、Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757-3774;Chevalierら、J. Mol. Biol., 2003, 329, 253-269)、この研究では、−11位〜11位だけを考慮した。結果として、GSCHO1シリーズの標的を、24 bpの代わりに22 bpの配列として定義した。GSCHO1は、C1221とは4 bpの中央領域が異なる。その標的に結合しているI-CreIタンパク質の構造によれば、4つの中央塩基対(−2位〜2位)とI-CreIタンパク質との間の接触はない(Chevalierら、Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312-316; Chevalier及びStoddard, Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757-3774; Chevalierら、J. Mol. Biol., 2003, 329, 253-269)。よって、これらの位置の塩基は、結合効率に影響を及ぼさないはずである。しかし、それらは、この領域の端の2つのニックから生じる切断に影響を及ぼすことはできる。よって、−2位〜2位のgtga配列は、まずC1221からのgtac配列で置き換えられ、標的GSCHO1.2(図4)を生ずる。そして、2つのパリンドローム標的(GSCHO1.3及びGSCHO1.4)は、GSCHO1.2に由来していた(図4)。GSCHO1.3及びGSCHO1.4はパリンドロームであるから、それらはホモ二量体タンパク質により切断されるはずである。よって、ホモ二量体としてGSCHO1.3及びGSCHO1.4配列を切断できるタンパク質をまず設計し(実施例2及び3)、その後共発現によりGSCHO1を切断するヘテロ二量体を得た(実施例4)。GSCHO1.2及びGSCHO1標的を切断するヘテロ二量体を同定できた。GSCHO1標的について切断活性を改善するために、GSCHO1.3及びGSCHO1.4を切断する変異型のシリーズを選択し、その後洗練化した。選択した変異型をランダム突然変異誘発又は部位特異的突然変異誘発に付し、それらを用いて新規なヘテロ二量体を形成させ、GSCHO1標的配列に対してスクリーニングした(実施例5、6、7及び8)。GSCHO1標的について改善された切断活性を有するヘテロ二量体を同定できた。選択したヘテロ二量体を、その後哺乳動物の発現ベクターにクローニングし、CHO細胞においてGSCHO1標的に対してスクリーニングした(実施例9)。GSCHO1標的の強力な切断活性を、哺乳動物細胞において、これらヘテロ二量体について観察できた。
実施例2:GSCHO1.3を切断するメガヌクレアーゼの同定
この実施例は、I-CreI変異型が、GSCHO1.2標的の左部分に由来する、パリンドロームの形態にあるGSCHO1.3のDNA標的配列を切断できることを示す(図4)。この実施例に記載される標的配列は、22 bpのパリンドローム配列である。したがって、それらについては、最初の11ヌクレオチドのみを記載し、その後に接尾辞「_P」を添える(例えば、標的GSCHO1.3は、tgccccagggt_Pと表す)。
GSCHO1.3は、±1位、±2位、±6位、±8位、±9位及び±10位において10GCC_Pと、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位及び±6位において5AGG_Pと類似している。±7位及び±11位は、結合及び切断活性に対して有する影響がほとんどないと仮定した。10GCC_P標的を切断できる変異型は、I-CreI N75若しくはD75の、28位、30位、32位、33位、38位、40位及び70位における突然変異誘発により、Smithら(Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149);国際PCT出願WO 2007/060495及びWO 2007/049156に以前に記載されたようにして得た。5AGG_Pを切断できる変異型は、I-CreI N75の24位、44位、68位、70位、75位及び77位における突然変異誘発により、Arnouldら(J. Mol. Biol., 2006, 355, 443-458);Smithら(Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149);国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853、WO 2007/060495及びWO 2007/049156に記載されるようにして得た。
両方のタンパク質の組は、70位にて変異している。しかし、2つの識別可能な機能的サブドメインの存在を仮定した。これは、この位置が標的の10位〜8位の塩基における特異性に対して有する影響がほとんどないことを暗示する。5AGG_P標的を切断する変異型で見出された24位の変異は、コンビナトリアルプロセスの間失われる。しかし、このことは、GSCHO1.3標的を切断する組合せ変異型の能力に対して有する影響はほとんどないことを仮定した。
したがって、組合せ変異型がGSCHO1.3標的を切断できるかどうか確認するために、5AGG_Pを切断するタンパク質からの44位、68位、70位、75位及び77位の変異を、10GCC_Pを切断するタンパク質からの28位、30位、32位、33位、38位及び40位の変異と組み合わせた。
A)材料及び方法
a)標的ベクターの構築
標的を以下のようにしてクローニングした;ゲートウェイクローニング配列に接するGSCHO1.3標的配列に対応するオリゴヌクレオチドを、PROLIGO社から注文した:5' tggcatacaagtttctgccccagggtaccctggggcagcaatcgtctgtca 3'(配列番号183)。一本鎖オリゴヌクレオチドのPCR増幅により生成した二本鎖標的DNAを、Gatewayプロトコル(INVITROGEN社)を用いて、酵母レポーターベクター(pCLS1055、図5)にクローニングした。
酵母レポーターベクターを、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株FYBL2-7B(MAT a, ura3Δ851, trp1Δ63, leu2Δ1, lys2Δ202)に形質転換し、レポーター株を得た。
b)酵母におけるメガヌクレアーゼを発現するクローンの交雑及びスクリーニング
10GCC_P又は5AGG_Pを切断するI-CreI変異型を、それぞれ10GCC_P及び5AGG_P標的に関して、Smithら(Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149);国際PCT出願WO 2007/060495及びWO 2007/049156、並びにArnouldら(J. Mol. Biol., 2006, 355, 443-458);国際PCT出願WO 2006/097784及びWO 2006/097853に記載されるようにして予め同定した。両方のシリーズからの変異を含むI-CreI由来コード配列を作製するために、別々にオーバーラップPCR反応を行い、I-CreIコード配列の5'末端(アミノ酸1位〜43位)又は3'末端(39位〜167位)を増幅した。5'末端及び3'末端の両方について、ベクター(pCLS0542、図6)に特異的なプライマー(Gal10F 5'-gcaactttagtgctgacacatacagg-3'(配列番号186)又はGal10R 5'-acaaccttgattggagacttgacc-3'(配列番号187))、及びnnnが残基40をコードし、アミノ酸39位〜43位についてI-CreIコード配列に特異的なプライマー(assF 5'-ctannnttgaccttt-3'(配列番号188)又はassR 5'-aaaggtcaannntag-3'(配列番号189))を用いてPCR増幅を行った。同一のプライマーと、残基40について同一のコード配列とを用いて行った増幅反応から得られたPCRフラグメントをプールした。
そして、プライマーGal10F及びassR又はassF及びGal10Rを用いた反応から得られたPCRフラグメントの各プールを、等モル比で混合した。最後に、およそ25 ngの2つのオーバーラップPCRフラグメントの各最終プール及び75 ngのNcoI及びEagIでの消化により線状にしたベクターDNA(pCLS0542、図6)を用いて、酵母サッカロミセス・セレビシエ株FYC2-6A(MATα、trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコル(Gietz及びWoods、Methods Enzymol., 2002, 350, 87-96)を用いて形質転換した。両方のグループの変異を含むインタクトなコード配列を、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。
c)酵母におけるメガヌクレアーゼを発現するクローンの交雑及びスクリーニング
スクリーニングを、以前に記載されたようにして行った(Arnouldら、J. Mol. Biol., 2006, 355, 443-458)。交雑をコロニーグリッダー(QpixII, GENETIX社)を用いて行った。変異型を、YPDプレートを覆うナイロンフィルター上に、低いグリッド密度(4〜6スポット/cm2)を用いてグリッド状に播種した。第2のグリッディングプロセスを同一のフィルター上で行い、レポーターを保持する酵母株からなる第2層をスポットした。メンブレンを固形寒天YPDリッチ培地上に置き、30℃で一晩インキュベートし、交雑させた。次いで、フィルターを、ロイシン及びトリプトファンを欠き、炭素源としてガラクトース(2%)を有する合成培地に移し、5日間37℃でインキュベートし、発現及び標的ベクターを有する二倍体を選択した。5日後、フィルターを、0.5 Mリン酸ナトリウム緩衝液pH 7.0中の0.02% X-Gal、0.1% SDS、6% ジメチルホルムアミド(DMF)、7 mM β‐メルカプトエタノール、1% アガロースを有する固形寒天培地上に置き、37℃でインキュベートし、β‐ガラクトシダーゼ活性をモニターした。結果をスキャニングにより分析し、定量化を適切なソフトウェアを用いて行った。
d)変異型のシークエンシング
変異型の発現プラスミドを回収するために、酵母DNAを、標準プロトコルを用いて抽出し、大腸菌(E. coli)の形質転換に用いた。変異型ORFのシークエンシングを、その後、プラスミド上でMILLEGEN SAにより行った。或いは、ORFを酵母DNAからPCRにより増幅し(Akadaら、Biotechniques, 2000, 28, 668-670)、シークエンシングを直接PCR産物についてMILLEGEN SAにより行った。
B)結果
I-CreI組合せ変異型を、I-CreI足場上で、5AGG_Pを切断するタンパク質からの44位、68位、70位、75位及び77位の変異と10GCC_Pを切断するタンパク質からの28位、30位、32位、33位、38位及び40位の変異とを組み合わせることにより構築し、複雑度2303のライブラリを得た。組合せ変異型の例を表Vに示す。このライブラリを酵母に形質転換し、4608クローン(2倍の多様性)をGSCHO1.3のDNA標的(tgccccagggt_P)に対する切断についてスクリーニングした。シークエンシングの後に、2つの異なる新規なエンドヌクレアーゼ変異型(表VI)に相当することが判明した2つのポジティブなクローンを見出した(1つは強力なカッター(cutter)及びもう1つは弱いカッター)。ポジティブなものの例を図7に示す。これら2つの変異型は28位、30位、32位、33位、38位、40位、又は44位、68位、70位、75位、77位において、親譲りでない組合せを示す。このような組合せは、コンビナトリアルプロセスの間のPCRアーチファクトから得られるようである。或いは、変異型は、酵母におけるインビボ相同組換えの間の2つの元の変異型間のミクロ組換え(micro-recombination)から得られるI-CreI組合せ変異型であり得る。
Figure 2012501641
Figure 2012501641
実施例3:GSCHO1.4を切断するメガヌクレアーゼの作製
この実施例は、I-CreI変異型が、GSCHO1.2標的の右部分に由来する、パリンドロームの形態にあるGSCHO1.4のDNA標的配列を切断できることを示す(図4)。この実施例に記載される全ての標的配列は、22 bpのパリンドローム配列である。したがって、それらについては、最初の11ヌクレオチドのみを記載し、その後に接尾辞「_P」を添える(例えば、GSCHO1.4は、tggactttcgt_Pと呼ばれる)。
GSCHO1.4は、5TTC_Pと±1位、±2位、±3位、±4位、±5位及び±8位において、並びに10GGA_Pと±1位、±2位、±3位、±4位、±8位、±9位及び±10位において類似している。±6位、±7位及び±11位は、結合及び切断活性に対して有する影響がほとんどないと仮定した。5TTC_Pを切断できる変異型は、I-CreI N75の、44位、68位、70位、75位及び77位における突然変異誘発により、以前に記載されたようにして得た(Arnouldら、J. Mol. Biol., 2006, 355, 443-458;Smithら、Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149;国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853、WO 2007/060495及びWO 2007/049156)。10GGA_P標的を切断できる変異型は、I-CreI N75若しくはD75の、28位、30位、32位、33位、38位、40位及び70位における突然変異誘発により、Smithら(Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149);国際PCT出願WO 2007/060495及びWO 2007/049156に以前に記載されたようにして得た。
両方のタンパク質の組は、70位にて変異している。しかし、2つの識別可能な機能的サブドメインの存在を仮定した。これは、この位置が、標的の10位〜8位の塩基における特異性に対して有する影響がほとんどないことを暗示している。
したがって、組合せ変異型がGSCHO1.4標的を切断できるかどうか確認するために、5TTC_Pを切断するタンパク質からの44位、68位、70位、75位及び77位の変異を、10GGA_Pを切断するタンパク質からの28位、30位、32位、33位、38位及び40位の変異と組み合わせた。
A)材料及び方法
a)標的ベクターの構築
実験手順は、GSCHO1.4標的配列に対応するオリゴヌクレオチド:5' tggcatacaagtttttggactttcgtacgaaagtccaacaatcgtctgtca 3'(配列番号185)を用いたことを除いて、実施例2に記載されたとおりである。
b)組合せ変異型の構築
10GGA_P又は5TTC_Pを切断するI-CreI変異型を、それぞれ10GGA_P及び5TTC_P標的に関して、Smithら(Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149);国際PCT出願WO 2007/060495及びWO 2007/049156、並びにArnouldら(J. Mol. Biol., 2006, 355, 443-458);国際PCT出願WO 2006/097784及びWO 2006/097853に記載されるようにして予め同定した。両方のシリーズからの変異を含むI-CreI由来コード配列を作製するために、別々にオーバーラップPCR反応を行い、I-CreIコード配列の5’末端(アミノ酸1位〜43位)又は3’末端(39位〜167位)を増幅した。5’末端及び3’末端の両方について、ベクター(pCLS1107、図8)に特異的なプライマー(Gal10F 5’-gcaactttagtgctgacacatacagg-3’(配列番号186)又はGal10R 5’-acaaccttgattggagacttgacc-3’(配列番号187))、及びnnnが残基40をコードし、アミノ酸39位〜43位についてI-CreIコード配列に特異的なプライマー(assF 5’-ctannnttgaccttt-3’(配列番号188)又はassR 5’-aaaggtcaannntag-3’(配列番号189))を用いてPCR増幅を行った。同一のプライマー及び残基40について同一のコード配列を用いて行った増幅反応から得られたPCRフラグメントをプールした。そして、プライマーGal10F及びassR又はassF及びGal10Rを用いた反応から得られたPCRフラグメントの各プールを、等モル比で混合した。最後に、およそ25 ngの2つのオーバーラップPCRフラグメントの各最終プール及び75 ngのDraIII及びNgoMIVでの消化により線状にしたベクターDNA(pCLS1107、図8)を用いて、酵母サッカロミセス・セレビシエ株FYC2-6A(MATα、trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコル(Gietz及びWoods、Methods Enzymol., 2002, 350, 87-96)を用いて形質転換した。両方のグループの変異を含むインタクトなコード配列を、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。
c)酵母におけるメガヌクレアーゼを発現するクローンの交雑及びスクリーニング
スクリーニングを、以前に記載されたようにして行った(Arnouldら、J. Mol. Biol., 2006, 355, 443-458)。交雑をコロニーグリッダー(QpixII, GENETIX社)を用いて行った。変異型を、YPDプレートを覆うナイロンフィルター上で、低いグリッド密度(4〜6スポット/cm2)を用いてグリッド状に播種した。第2のグリッディングプロセスを同一のフィルター上で行い、レポーターを保持する酵母株からなる第2層をスポットした。メンブレンを固形寒天YPDリッチ培地上に置き、30℃で一晩インキュベートし、交雑させた。次いで、フィルターを、トリプトファンを欠き、G418を加え、炭素源としてガラクトース(2%)を有する合成培地に移し、5日間37℃でインキュベートし、発現及び標的ベクターを有する二倍体を選択した。5日後、フィルターを、0.5 Mリン酸ナトリウム緩衝液pH 7.0中の0.02% X-Gal、0.1% SDS、6% ジメチルホルムアミド(DMF)、7 mM β‐メルカプトエタノール、1% アガロースを有する固形寒天培地上に置き、37℃でインキュベートし、β‐ガラクトシダーゼ活性をモニターした。結果をスキャニングにより分析し、定量化を適切なソフトウェアを用いて行った。ポジティブな結果のクローンを、シークエンシング(MILLEGEN社)により、実施例2に記載されるようにして確認した。
B)結果
I-CreI組合せ変異型を、I-CreI足場上で、5TTC_Pを切断するタンパク質からの44位、68位、70位、75位及び77位の変異と10GGA_Pを切断するタンパク質からの28位、30位、32位、33位、38位及び40位の変異とを組み合わせることにより構築し、複雑度1600のライブラリを得た。組合せ変異型の例を表VIIに示す。このライブラリを酵母に形質転換し、3456クローン(2.2倍の多様性)をGSCHO1.4のDNA標的(tggactttcgt_P)に対する切断についてスクリーニングした。GSCHO1.4を切断する、総数250のポジティブなクローンを見出した。91の最良のI-CreI変異型のシークエンシング及び二次スクリーニングによる確認で、57の異なる新規なエンドヌクレアーゼを同定した。ポジティブなものの例を図9に示す。いくつかの同定された変異型の配列は、28位、30位、32位、33位、38位、40位又は44位、68位、70位、75位、77位において、親譲りでない組合せ及び付加的な変異を示す(表VIIIの例を参照されたい)。このような変異型は、コンビナトリアルプロセスの間のPCRアーチファクトから得られるようである。或いは、変異型は、酵母でのインビボ相同組換えの間の2つの元の変異型間のミクロ組換えから得られるI-CreIの組合せ変異型であり得る。
Figure 2012501641
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実施例4:GSCHO1.2及びGSCHO1を切断するメガヌクレアーゼの作製
それぞれのパリンドロームGSCHO1.2由来標的(GSCHO1.3及びGSCHO1.4)を切断できるI-CreI変異型を、実施例2及び実施例3において同定した。このような変異型の対(一方はGSCHO1.3を切断し、もう一方はGSCHO1.4を切断する)を酵母において共発現させた。共発現の際に、3つの活性分子種、2つのホモ二量体及び1つのヘテロ二量体が存在するはずである。形成されているはずのヘテロ二量体が、GSCHO1.2及び非パリンドロームGSCHO1標的を切断するかどうか試験した。
A)材料及び方法
a)標的ベクターの構築
実験手順は、GSCHO1.2標的配列に対応するオリゴヌクレオチド:5’ tggcatacaagtttctgccccagggtacgaaagtccaacaatcgtctgtca 3’(配列番号201)又はGSCHO1標的配列に対応するオリゴヌクレオチド:5' tggcatacaagtttctgccccagggtgagaaagtccaacaatcgtctgtca 3'(配列番号202)を用いたことを除いて、実施例2に記載されたとおりである。
b)変異型の共発現
酵母DNAをpCLS1107発現ベクター内のGSCHO1.4を切断する変異型から、標準プロトコルを用いて抽出し、それを用いて大腸菌を形質転換した。得られたプラスミドDNAをその後用いて、pCLS0542発現ベクター内のGSCHO1.3標的を切断する変異型を発現する酵母株を形質転換した。形質転換体を、ロイシンを欠き、G418を含む合成培地で選択した。
c)酵母におけるメガヌクレアーゼを共発現するクローンの交雑及びスクリーニング
交雑をコロニーグリッダー(QpixII, GENETIX社)を用いて行った。
変異型を、YPDプレートを覆うナイロンフィルター上に、低いグリッド密度(4〜6スポット/cm2)を用いてグリッド状に播種した。第2のグリッディングプロセスを同一のフィルター上で行い、各標的について、異なるレポーターを保持する酵母株からなる第2層をスポットした。メンブレンを固形寒天YPDリッチ培地上に置き、30℃で一晩インキュベートし、交雑させた。次いで、フィルターを、ロイシン及びトリプトファンを欠き、G418を加え、炭素源としてガラクトース(2%)を有する合成培地に移し、5日間37℃でインキュベートし、発現及び標的ベクターを有する二倍体を選択した。5日後、フィルターを、0.5 Mリン酸ナトリウム緩衝液pH 7.0中の0.02% X-Gal、0.1% SDS、6% ジメチルホルムアミド(DMF)、7 mM β‐メルカプトエタノール、1% アガロースを有する固形寒天培地上に置き、37℃でインキュベートし、β‐ガラクトシダーゼ活性をモニターした。結果をスキャニングにより分析し、定量化を適切なソフトウェアを用いて行った。
B)結果
GSCHO1.4標的を切断する変異型(表VII及び表VIIIに記載されるもののなかから選択される14の変異型)と(表VIに記載される)GSCHO1.3標的を切断する2つの変異型との共発現は、全ての場合においてGSCHO1.2標的の効率的な切断をもたらす(図10A)。さらに、これらの組合せのうちいくつかは、GSCHO1.2配列と1位及び2位の2 bpが異なっている天然のGSCHO1標的を切断できた(図10B)。機能的組合せを表IX及び表Xに要約する。
Figure 2012501641
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実施例5:GSCHO1.3を切断するタンパク質のランダム突然変異誘発によるGSCHO1を切断するメガヌクレアーゼの改良及びGSCHO1.4を切断するタンパク質との組合せ
パリンドロームGSCHO1.3及びGSCHO1.4標的を切断する変異型の組合せにより、GSCHO1.2及びGSCHO1を切断できるI-CreI変異型を、実施例4で予め同定している。しかし、これらの変異型は、GSCHO1標的と比べて、GSCHO1.2標的とのより強い活性を示す。
したがって、2つのGSCHO1.3を切断する組合せ変異型を突然変異誘発させ、変異型を、GSCHO1.4を切断する変異型と共発現させたときのGSCHO1切断活性についてスクリーニングした。その標的に結合しているI-CreIタンパク質の構造によれば、4つの中央塩基対(−2位〜2位)とI-CreIタンパク質との間の接触はない(Chevalierら、Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312-316; Chevalier及びStoddard, Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757-3774; Chevalierら、J. Mol. Biol., 2003, 329, 253-269)。よって、変異させる位置の組を合理的に選択することは困難であり、突然変異誘発をタンパク質全体について行った。ランダム突然変異誘発は高複雑度のライブラリを生じた。したがって、試験する変異型ライブラリの複雑度を制限するために、GSCHO1を切断するヘテロ二量体の2つの構成要素のうち1つだけを突然変異誘発させた。
よって、第1工程において、GSCHO1.3を切断するタンパク質を突然変異誘発させ、第2工程において、GSCHO1.4を切断するタンパク質と共発現させたときに、それらがGSCHO1を切断できるかどうか評価した。
A)材料及び方法
a)ランダム突然変異誘発によるライブラリの構築
ランダム突然変異誘発を、選択した変異型のプールについて、Mn2+を用いたPCRにより行った。pCLS0542(図6)及びpCLS1107(図8)ベクターに共通である、プライマー preATGCreFor(5'- gcataaattactatacttctatagacacgcaaacacaaatacacagcggccttgccacc -3';配列番号209)及びICreIpostRev(5'- ggctcgaggagctcgtctagaggatcgctcgagttatcagtcggccgc -3';配列番号210)を用いてPCR反応を行い、I-CreIコード配列を増幅した。およそ25 ngのPCR産物及び75 ngのNcoI及びEagIでの消化により線状にしたベクターDNA(pCLS0542)を用いて、酵母サッカロミセス・セレビシエ株FYC2-6A(MATα、trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコル(Gietz及びWoods、Methods Enzymol., 2002, 350, 87-96)を用いて形質転換した。インタクトなコード配列を含む発現ベクターを、I-CreI変異型について、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。
b)変異型‐標的酵母株、スクリーニング及びシークエンシング
酵母レポーターベクター(pCLS1055、図5)内にGSCHO1標的を含む酵母株FYBL2-7B (MAT a, ura3Δ851, trp1Δ63, leu2Δ1, lys2Δ202)を、カナマイシンベクター(pCLS1107)内でGSCHO1.4標的を切断する変異型で、高効率LiAc形質転換プロトコルを用いて形質転換した。変異型‐標的酵母株を、実施例4に記載の交雑試験のために、標的株として用いた。ポジティブな結果のクローンを、実施例2に記載されるようにして、シークエンシング(MILLEGEN社)により確認した。
B)結果
GSCHO1.3を切断する2つの変異型、KRSRES/TYSNI及びKRSRES/DYSYQ(I-CreI 30R,33R,38E,44T,68Y,70S,75N及びI-CreI 30R,33R,38E,44D,68Y,70S,75Y,77Q(表VIの命名によれば、KRSRES/TYSNI及びKRSRES/DYSYQとも呼ばれる))をプールし、ランダム突然変異誘発し、酵母に形質転換した。2304の形質転換されたクローンを、その後(i)レポータープラスミド内にGSCHO1標的と、(ii)GSCHO1.4標的を切断する変異型(表VIIIの命名によればI-CreI 30R,32G,44K,68N又はKRGYQS/KNRDI)を含む発現プラスミドとを含む酵母株と交雑させた。この酵母株との交雑後、38のクローンが、元の変異型よりも効率的にGSCHO1標的を切断することが見出された。よって、38のポジティブなものは、GSCHO1標的について強力な切断活性を有するKRGYQS/KNRDIとヘテロ二量体を形成できるタンパク質を含んでいた。ポジティブなものの例を図11に示す。これらの38のポジティブなクローンのシークエンシングは、表XIに列挙された19の異なる変異型が同定されたことを示す。
Figure 2012501641
実施例6:GSCHO1.3を切断するタンパク質の部位特異的突然変異誘発によりGSCHO1を切断するメガヌクレアーゼの改良及びGSCHO1.4を切断するタンパク質との組合せ
表VIに記載され、実施例5においてランダム突然変異誘発に用いたGSCHO1.3を切断する元のI-CreI変異型もまた、タンパク質内の選択されたアミノ酸置換を導入し、GSCHO1.4を切断する変異型との組合せでGSCHO1を切断する、より有能な変異型をスクリーニングすることにより突然変異誘発した。
6つのアミノ酸置換を、I-CreI誘導体の活性を増強するための以前の研究で見出している;これらの変異は、グリシン19のセリンでの置換(G19S)、フェニルアラニン54のロイシンでの置換(F54L)、グルタミン酸80のリジンでの置換(E80K)、フェニルアラニン87のロイシンでの置換(F87L)、バリン105のアラニンでの置換(V105A)及びイソロイシン132のバリンでの置換(I132V)に対応する。これらの変異を、GSCHO1.3を切断するタンパク質のコード配列に個々に導入し、GSCHO1.4を切断する変異型との共発現の際に、GSCHO1標的の切断を誘導するそれらの能力について、得られたタンパク質を試験した。
A)材料及び方法
a)部位特異的突然変異誘発
部位特異的突然変異誘発ライブラリを、選択した変異型のプールのPCRにより作製した。例えば、G19S置換を、変異型のコード配列に導入するために、2回の別々のオーバーラップPCR反応を行い、I-CreIコード配列の5'末端(残基1〜24) 又は3'末端(残基14〜167)を増幅した。5'及び3'の両方の末端について、PCR増幅を、ベクターに相同なプライマー(Gal10F 5'-gcaactttagtgctgacacatacagg-3' (配列番号186)又はGal10R 5'-acaaccttgattggagacttgacc-3'(配列番号187)) と、G19Sの置換変異を含有するアミノ酸14〜24についてのI-CreIコード配列に特異的なプライマー(G19SF 5'-gccggctttgtggactctgacggtagcatcatc-3'(配列番号230)又はG19SR 5'-gatgatgctaccgtcagagtccacaaagccggc-3'(配列番号231)) とを用いて行う。得られたPCR産物は、互いに33 bpの相同性を有する。PCRフラグメントを精製した。最後に、2つのオーバーラップPCRフラグメントのそれぞれおよそ25 ngと、NcoI及びEagIでの消化により線状にした75 ngのベクターDNA (pCLS0542、図6) とを用いて、酵母サッカロミセス・セレビシエFYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコル(Gietz及びWoods, Methods Enzymol.,2002, 350, 87〜96)を用いて形質転換した。G19S置換を含むインタクトなコード配列を、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。
同じストラテジーを、以下のオリゴヌクレオチド対とともに用いてそれぞれ、F54L、E80K、F87L、V105A及びI132Vの置換を含む他のライブラリを作製する:
* F54LF: 5'-acccagcgccgttggctgctggacaaactagtg-3'及びF54LR: 5'-cactagtttgtccagcagccaacggcgctgggt-3' (配列番号232及び233);
* E80KF: 5'-ttaagcaaaatcaagccgctgcacaacttcctg-3'及びE80KR: 5'- caggaagttgtgcagcggcttgattttgcttaa-3' 配列番号234及び235);
* F87LF: 5'-aagccgctgcacaacctgctgactcaactgcag-3'及びF87LR: 5'-ctgcagttgagtcagcaggttgtgcagcggctt-3' 配列番号236及び237);
* V105AF: 5'-aaacaggcaaacctggctctgaaaattatcgaa-3'及びV105AR: 5'-ttcgataattttcagagccaggtttgcctgttt-3' 配列番号238 及び239);
* I132VF: 5'-acctgggtggatcaggttgcagctctgaacgat-3'及びI132VR: 5'-atcgttcagagctgcaacctgatccacccaggt-3' 配列番号240及び241)。
c)酵母におけるメガヌクレアーゼを発現するクローンの交雑及びスクリーニング
実験手順は実施例5に記載されるとおりである。
d)変異型のシークエンシング
実験手順は実施例2に記載されるとおりである。
B)結果
6つのアミノ酸置換(グリシン19をセリンで、フェニルアラニン54をロイシンで、グルタミン酸80をリジンで、フェニルアラニン87をロイシンで、バリン105をアラニンで、及びイソロイシン132をバリンで)のうち1つを含むライブラリを、GSCHO1.3を切断する2つの変異型KRSRES/TYSNI及びKRSRES/DYSYQ(I-CreI 30R,33R,38E,44T,68Y,70S,75N及びI-CreI 30R,33R,38E,44D,68Y,70S,75Y,77Q、表VIの命名によれば、それぞれKRSRES/TYSNI及びKRSRES/DYSYQとも呼ばれる)のプールについて構築した。各ライブラリについて、192の形質転換クローンを、その後(i)レポータープラスミド内のGSCHO1標的と、(ii)実施例3に記載されるGSCHO1.4標的を切断する変異型(I-CreI 30R,32G,44K,68N又はKRGYQS/KNRDI)を含む発現プラスミドとを含む酵母株と交雑した。
この酵母株との交雑後、フェニルアラニン54のロイシンでのアミノ酸置換を含むライブラリを除いて、各ライブラリにおいて、多数のクローン(>20)が、元の変異型よりも効率的にGSCHO1標的を切断することが見出された。ポジティブなものの例を図12に示す。KRGYQS/KNRDI変異型とヘテロ二量体を形成するときに、5つの最良のGSCHO1標的を切断するI-CreI変異型の配列を表XIIに列挙する。
Figure 2012501641
実施例7:GSCHO1.4を切断するタンパク質のランダム突然変異誘発による、GSCHO1を切断するメガヌクレアーゼの改良及びGSCHO1.3を切断するタンパク質との組合せ
実施例4の補完として、本発明者らは、GSCHO1.4を切断する変異型のランダム突然変異誘発を行うことも決意した。突然変異誘発したGSCHO1.4を切断するタンパク質を、その後、GSCHO1.3を切断するタンパク質と共発現したときに、それらがGSCHO1を効率的に切断できるかどうか決定するために試験した。
A)材料及び方法
a)ランダム突然変異誘発によるライブラリの構築
ランダム突然変異誘発を、選択した変異型のプールについて、Mn2+を用いたPCRにより行った。プライマーpreATGCreFor (5'-gcataaattactatacttctatagacacgcaaacacaaatacacagcggccttgccacc-3';配列番号209)及びICreIpostRev (5'-ggctcgaggagctcgtctagaggatcgctcgagttatcagtcggccgc-3';配列番号210)を用いてPCR反応を行い、I-CreIコード配列を増幅した。およそ25 ngのPCR産物と、75 ngのDraIII及びNgoMIVでの消化により線状にしたベクターDNA(pCLS1107、図8)を用いて、酵母サッカロミセス・セレビシエ株FYC2-6A (MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコル(Gietz及びWoods, Methods Enzymol., 2002, 350, 87-96)を用いて形質転換した。I-CreI変異型についてインタクトなコード配列を含む発現プラスミドを、酵母でのインビボ相同組換えにより作製した。
b)変異型‐標的酵母株、スクリーニング及びシークエンシング
酵母レポーターベクター(pCLS1055、図5)内でGSCHO1標的を含む酵母株FYBL2-7B (MAT a, ura3Δ851, trp1Δ63, leu2Δ1, lys2Δ202)を、ロイシンベクター(pCLS0542)内でGSCHO1.3標的を切断する変異型で、高効率LiAc形質転換プロトコルを用いて形質転換した。変異型‐標的酵母株を、実施例4に記載されるように、交雑試験の標的株として用いた。ポジティブな結果のクローンを、実施例2に記載されるようにして、シークエンシング(MILLEGEN社)により確認した。
B)結果
9つのGSCHO1.4を切断する変異型(I-CreI 30R,32G,44K,68Y,70S,75N, I-CreI 33H,38N,44K,47K,68N,70S,75N, I-CreI 30K,33A,75N, I-CreI 30R,32G,44K,59A,68N,70A,75N, I-CreI 30R,33T,38R,44K,68N,70S,75N, I-CreI 30R,32G,44K,45M,68Y,70S,75N,77V, I-CreI 30R,32G,44K,68N,70S,75N, I-CreI 30R,32G,44R,68Y,70S,75N及びI-CreI 32A,33H,44K,68P,70S,75N、表VII及び表VIIIの命名によれば、それぞれKRGYQS/KYSNI, KNSHNS/KNSNI +47K, KKSAQS/QRRNI, KRGYQS/KNANI + 59A, KRSTRS/KNSNI, KRGYQS/KYSNV + 45M, KRGYQS/KNSNI, KRGYQS/RYSNI及びKNAHQS/KPSNIとも呼ばれる)をプールし、ランダム突然変異誘発し、酵母に形質転換した。4608の形質転換クローンを、その後(i)レポータープラスミド内のGSCHO1標的と、(ii)GSCHO1.3標的を切断する変異型(表VIの命名によれば、I-CreI 30R,33R,38E,44D,68Y,70S,75Y,77Q又はKRSRES/DYSYQ)を含む発現プラスミドとを含む酵母株と交雑した。この酵母株との交雑後、254のクローンが、元の変異型よりも効率的にGSCHO1標的を切断することを見出した。
よって、254のポジティブなものは、GSCHO1標的について強力な切断活性を有するKRSRES/DYSYQとヘテロ二量体を形成できるタンパク質を含んでいた。ポジティブなものの例を図13に示す。32の最強のポジティブなクローンのシークエンシングは、表XIIIに列挙した18の異なる変異型を同定したことを示す。
Figure 2012501641
実施例8:GSCHO1.4を切断するタンパク質の部位特異的突然変異誘発による、GSCHO1を切断するメガヌクレアーゼの改良及びGSCHO1.3を切断するタンパク質との組合せ
表3及び4に記載され、実施例7においてランダム突然変異誘発に用いたGSCHO1.4を切断する元のI-CreI変異型もまた、タンパク質内に選択したアミノ酸置換を導入し、GSCHO1.3を切断する変異型との組合せでGSCHO1を切断する、より有能なタンパク質のスクリーニングにより突然変異誘発した。
6つのアミノ酸置換が、I-CreI誘導体の活性を増強するための以前の研究で見出されている:これらの変異は、グリシン19のセリンでの置換(G19S)、フェニルアラニン54のロイシンでの置換(F54L)、グルタミン酸80のリシンでの置換(E80K)、フェニルアラニン87のロイシンでの置換(F87L)、バリン105のアラニンでの置換(V105A)及びイソロイシン132のバリンでの置換(I132V)に対応する。これらの変異を、GSCHO1.3を切断するタンパク質のコード配列に個々に導入し、得られたタンパク質を、GSCHO1.4を切断する変異型との共発現の際にGSCHO1標的の切断を誘導するそれらの能力について試験した。
A)材料及び方法
a)部位特異的突然変異誘発
部位特異的突然変異誘発ライブラリを、選択した変異型のプールについてPCRにより作製した。例えば、G19S置換を変異型コード配列に導入するために、2回の別々のオーバーラップPCR反応を行い、I-CreIコード配列の5'末端(残基1〜24) 又は3'末端(残基14〜167)を増幅した。5'及び3'の両方の末端について、PCR増幅を、ベクターに相同なプライマー(Gal10F 5'-gcaactttagtgctgacacatacagg-3'又はGal10R 5'-acaaccttgattggagacttgacc-3') と、G19Sの置換変異を含有するアミノ酸14〜24についてのI-CreIコード配列に特異的なプライマー(G19SF 5'-gccggctttgtggactctgacggtagcatcatc-3'(配列番号230)又はG19SR 5'-gatgatgctaccgtcagagtccacaaagccggc-3'(配列番号231))とを用いて行う。得られたPCR産物は、互いに33 bpの相同性を有する。PCRフラグメントを精製した。2つのオーバーラップPCRフラグメントのそれぞれおよそ25 ngと、DraIII及びNgoMIVでの消化により線状にした75 ngのベクターDNA (pCLS1107、図8) とを用いて、酵母サッカロミセス・セレビシエFYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコル(Gietz及びWoods, Methods Enzymol.,2002, 350, 87〜96)を用いて形質転換した。G19S置換を含むインタクトなコード配列を、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。
同じストラテジーを、以下のオリゴヌクレオチド対とともに用いて、それぞれF54L、E80K、F87L、V105A及びI132Vの置換を含む他のライブラリを作製する:
* F54LF: 5’-acccagcgccgttggctgctggacaaactagtg-3’及びF54LR: 5’-cactagtttgtccagcagccaacggcgctgggt-3’ (配列番号232及び233);
* E80KF: 5’-ttaagcaaaatcaagccgctgcacaacttcctg-3’及びE80KR: 5’- caggaagttgtgcagcggcttgattttgcttaa-3’ 配列番号234及び235);
* F87LF: 5’-aagccgctgcacaacctgctgactcaactgcag-3’及びF87LR: 5’-ctgcagttgagtcagcaggttgtgcagcggctt-3’ 配列番号236及び237);
* V105AF: 5’-aaacaggcaaacctggctctgaaaattatcgaa-3’及びV105AR: 5’-ttcgataattttcagagccaggtttgcctgttt-3’ 配列番号238 及び239);
* I132VF: 5’-acctgggtggatcaggttgcagctctgaacgat-3’及びI132VR: 5’-atcgttcagagctgcaacctgatccacccaggt-3’ 配列番号240及び241)。
c)酵母におけるメガヌクレアーゼを発現するクローンの交雑及びスクリーニング
実験手順は実施例7に記載されるとおりである。
d)変異型のシークエンシング
実験手順は実施例2に記載されるとおりである。
B)結果
6つのアミノ酸置換(グリシン19をセリンで、フェニルアラニン54をロイシンで、グルタミン酸80をリシンで、フェニルアラニン87をロイシンで、バリン105をアラニンで、及びイソロイシン132をバリンで)のうち1つを含むライブラリを、GSCHO1.4を切断する9つの変異型(I-CreI 30R,32G,44K,68Y,70S,75N, I-CreI 33H,38N,44K,47K,68N,70S,75N, I-CreI 30K,33A,75N, I-CreI 30R,32G,44K,59A,68N,70A,75N, I-CreI 30R,33T,38R,44K,68N,70S,75N, I-CreI 30R,32G,44K,45M,68Y,70S,75N,77V, I-CreI 30R,32G,44K,68N,70S,75N, I-CreI 30R,32G,44R,68Y,70S,75N及びI-CreI 32A,33H,44K,68P,70S,75N、表VII及び表VIIIの命名によれば、それぞれKRGYQS/KYSNI, KNSHNS/KNSNI +47K, KKSAQS/QRRNI, KRGYQS/KNANI + 59A, KRSTRS/KNSNI, KRGYQS/KYSNV + 45M, KRGYQS/KNSNI, KRGYQS/RYSNI及びKNAHQS/KPSNIとも呼ばれる)のプールについて構築した。各ライブラリについて、192の形質転換クローンを、その後(i)レポータープラスミド内のGSCHO1標的と、(ii)実施例2に記載されるGSCHO1.3標的を切断する変異型(I-CreI 30R,33R,38E,44D,68Y,70S,75Y,77Q又はKRSRES/DYSYQ)を含む発現プラスミドとを含む酵母株と交雑した。
この酵母株との交雑後、グリシン19のセリンでの、フェニルアラニン54のロイシンでの、イソロイシン132のバリンでのアミノ酸置換を含むライブラリについて、多数のクローン(>20)が、元の変異型よりも効率的にGSCHO1標的を切断することが見出された。ポジティブなものの例を図14に示す。KRSRES/DYSYQ変異型とヘテロ二量体を形成するときに、GSCHO1標的を切断する各ライブラリからの2つの最良のI-CreI変異型の配列を表XIVに列挙する。これらの変異型は、28位、30位、32位、33位、38位、40位又は44位、68位、70位、75位、77位において親譲りでない組合せを示す。このような組合せは、コンビナトリアルプロセスの間のPCRに誘導される変異から得られるようである。
Figure 2012501641
実施例9:CHO細胞における染色体外モデル内のGSCHO1標的切断の確認
ヘテロ二量体を形成するときに、酵母においてGSCHO1標的を効率的に切断できるI-CreI変異型は、実施例4、5、6、7及び8に記載した。CHO細胞において、GSCHO1標的について最大の切断活性を示すヘテロ二量体を同定するために、選択した変異型の組合せのGSCHO1標的を切断する効率を、CHO細胞における染色体外アッセイを用いて比較した。CHO細胞におけるスクリーニングは、一本鎖アニーリング(SSA)に基づいたアッセイであり、ここで、メガヌクレアーゼによる標的の切断は、相同組換え及びLagoZレポーター遺伝子(バクテリアlacZ遺伝子の誘導体)の発現を誘導する。
1)材料及び方法
a)CHOスクリーニング用ベクター内のGSCHO1標的のクローニング
標的を以下のようにクローニングした;ゲートウェイクローニング配列に挟まれるGSCHO1標的配列に対応するオリゴヌクレオチドを、PROLIGO社から注文した:5' tggcatacaagtttctgccccagggtgagaaagtccaacaatcgtctgtca 3' (配列番号202)。一本鎖オリゴヌクレオチドのPCR増幅により作製した二本鎖標的DNAを、Gatewayプロトコル(INVITROGEN社)を用いて、CHOレポーターベクター(pCLS1058、図15)にクローニングした。クローニングされた標的をシークエンシング(MILLEGEN社)により確認した。
b)メガヌクレアーゼの再クローニング
実施例3、5、6、7及び8において同定された、GSCHO1.3及びGSCHO1.4標的を切断するI-CreI変異型のORFを、pCLS1768(図16)に再クローニングした。ORFを、PCRにより、酵母DNAについて、attB1-ICreIFor (5'-ggggacaagtttgtacaaaaaagcaggcttcgaaggagatagaaccatggccaataccaaatataacaaagagttcc-3';配列番号269)及びattB2-ICreIRev (5'- ggggaccactttgtacaagaaagctgggtttagtcggccgccggggaggatttcttcttctcgc-3'; 配列番号270)プライマーを用いて増幅した。PCR産物を、Gatewayプロトコル(INVITROGEN社)を用いて、CHO発現ベクターpCLS1768(図16)にクローニングした。得られたクローンをシークエンシング(MILLEGEN社)により確認した。
c)哺乳動物細胞における染色体外アッセイ
CHO細胞を、ポリフェクト(登録商標)トランスフェクション試薬を用いて、供給者用プロトコル(QIAGEN社)に従ってトランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後、それぞれのトランスフェクションについてβ‐ガラクトシダーゼ発現のレベルを、ベータグロ(登録商標)アッセイシステム(Promega社)を用いて定量化した。ベータグロアッセイは、β‐ガラクトシダーゼを切断してルシフェリンを形成させ、その後該ルシフェリンをホタルルシフェラーゼ反応に利用し、光を生じさせることができるルシフェリン‐ガラクトシド基質(6-O-β-ガラクトピラノシルルシフェリン)を含む。それぞれのトランスフェクションについて、100 μlの培地中のおよそ100,000細胞を、等量のベータグロ溶解/検出(lysis/revelation)緩衝液と、製造業者(Promega社)により記載されるようにして混合する。室温で30分のインキュベーション後、シグナルをルミノメーター(パーキンエルマービクターマルチラベルプレートリーダー)で測定した。
アッセイ毎に、150 ngの標的ベクターを、両方の変異型のそれぞれ25 ng(25 ngのパリンドロームGSCHO1.3標的を切断する変異型及び25 ngのパリンドロームGSCHO1.4標的を切断する変異型)と同時にトランスフェクトした。
2)結果
実施例3、5、6、7及び8に記載されるいくつかの変異型を、まずpCLS1768(図16)に再クローニングした。その後、CHO細胞においてGSCHO1標的と最大の切断活性を示すヘテロ二量体を同定するために、(実施例3、5、6、7及び8に記載される)GSCHO1.3又はGSCHO1.4標的を切断するI-CreI変異型を、CHO染色体外アッセイにおいて、GSCHO1標的に対するヘテロ二量体として、共に試験した。
図17は、試験した12のヘテロ二量体について得られた結果を示し、種々の組合せの値を表XVに集計する。GSCHO1配列の切断効率の分析は、I-CreI変異型の12の組合せのうち10が、CHO細胞において、GSCHO1標的を効率的に切断できることを証明する。
Figure 2012501641

Claims (45)

  1. 2つのI-CreI単量体の少なくとも一方が、I-CreIの28位〜40位及び44位〜77位にそれぞれ位置するLAGLIDADGコアドメインの2つの機能的サブドメイン内に1つずつ少なくとも2つの置換を有し、変異型が、グルタミンシンセターゼ遺伝子からのDNA標的配列を切断でき、かつ少なくとも以下の:
    (a) I-CreIの28位〜40位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第1機能的サブドメイン内に少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第1シリーズを構築し、
    (b) I-CreIの44位〜77位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第2機能的サブドメイン内に少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第2シリーズを構築し、
    (c) 工程(a)の第1シリーズから、少なくとも、(i) I-CreI部位の−10位〜−8位のヌクレオチドトリプレットが、グルタミンシンセターゼ遺伝子からのDNA標的配列の−10位〜−8位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、グルタミンシンセターゼ遺伝子からのDNA標的配列の−10位〜−8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
    (d) 工程(b)の第2シリーズから、少なくとも、(i) I-CreI部位の−5位〜−3位のヌクレオチドトリプレットが、グルタミンシンセターゼ遺伝子からのDNA標的配列の−5位〜−3位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、グルタミンシンセターゼ遺伝子からのDNA標的配列の−5位〜−3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
    (e) 工程(a)の第1シリーズから、少なくとも、(i) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、グルタミンシンセターゼ遺伝子からのDNA標的配列の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) −10位〜−8位のヌクレオチドトリプレットが、グルタミンシンセターゼ遺伝子からのDNA標的配列の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
    (f) 工程(b)の第2シリーズから、少なくとも、(i) I-CreI部位の+3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、グルタミンシンセターゼ遺伝子からのDNA標的配列の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) −5位〜−3位のヌクレオチドトリプレットが、グルタミンシンセターゼ遺伝子からのDNA標的配列の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
    (g) 工程(c)及び工程(d)からの2つの変異型の26位〜40位及び44位〜77位の変異を、単一の変異型に組み合わせて、(i) −10位〜−8位のヌクレオチドトリプレットが、グルタミンシンセターゼ遺伝子からのDNA標的配列の−10位〜−8位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、グルタミンシンセターゼ遺伝子からのDNA標的配列の−10位〜−8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii)−5位〜−3位のヌクレオチドトリプレットが、グルタミンシンセターゼ遺伝子からのDNA標的配列の−5位〜−3位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(iv) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、グルタミンシンセターゼ遺伝子からのDNA標的配列の−5位〜−3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモ二量体I-CreI変異型を得て、及び/又は
    (h) 工程(e)及び工程(f)からの2つの変異型の26位〜40位及び44位〜77位の変異を、単一の変異型に組み合わせて、(i) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、グルタミンシンセターゼ遺伝子からのDNA標的配列の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) −5位〜−3位のヌクレオチドトリプレットが、グルタミンシンセターゼ遺伝子からのDNA標的配列の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii)I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、グルタミンシンセターゼ遺伝子からのDNA標的配列の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(iv)−10位〜−8位のヌクレオチドトリプレットが、グルタミンシンセターゼ遺伝子からのDNA標的配列の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモ二量体I-CreI変異型を得て、
    (i) 工程(g)及び/又は(h)で得られた変異型を組み合わせて、ヘテロ二量体を形成し、
    (j)グルタミンシンセターゼ遺伝子からのDNA標的配列を切断できる工程(i)からのヘテロ二量体を選択及び/又はスクリーニングする
    工程を含む方法により得ることができることを特徴とする、I-CreI変異型。
  2. I-CreIの44位〜77位に位置するサブドメイン内の前記置換が、44位、68位、70位、75位及び/又は77位に位置する請求項1に記載の変異型。
  3. I-CreIの28位〜40位に位置するサブドメイン内の前記置換が、28位、30位、32位、33位、38位及び/又は40位に位置する請求項1に記載の変異型。
  4. 前記置換が、元のアミノ酸の、A、D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S、T、Y、C、V、L、M、F、I及びWからなる群より選択されるアミノ酸での置き換えである請求項1〜3のいずれか1項に記載の変異型。
  5. I-CreIの28位〜40位及び/又は44位〜77位に異なる変異を有する第1及び第2単量体の組合せにより得られるヘテロ二量体であり、前記へテロ二量体がグルタミンシンセターゼ遺伝子からの非パリンドロームDNA標的配列を切断できる請求項1〜4のいずれか1項に記載の変異型。
  6. 前記DNA標的が、ヒトGS遺伝子由来であり、かつ配列番号5〜28の配列からなる群より選択される請求項5に記載の変異型。
  7. 前記DNA標的が、マウスGS遺伝子由来であり、かつ配列番号19及び29〜48の配列からなる群より選択される請求項5に記載の変異型。
  8. 前記DNA標的が、チャイニーズハムスターGS遺伝子由来であり、かつ配列番号19、29、30、34、46、47及び49〜60の配列からなる群より選択される請求項5に記載の変異型。
  9. I-CreI部位の±1〜2位、±6〜7位及び/又は±11〜12位のヌクレオチドに対する変異型の特異性を改変する少なくとも1つの置換を、I-CreIの137位〜143位に含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の変異型。
  10. グルタミンシンセターゼ遺伝子からの前記DNA標的配列に対する変異型の結合及び/又は切断特性を改良する少なくとも1つの置換を、I-CreI配列全体に対して含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の変異型。
  11. N2S、T3A、N6K、K7E、Y12H、G19S、G19A、I24V、F35L、L39V、F43L、V45L、V45M、Q47K、Q50R、F54L、K57E、V59A、D60Y、V64A、Y66H、E80K、F87L、F87I、Q92R、K96R、V105A、K107R、E110V、S114F、S114P、E117V、S118T、P119L、D120A、D120E、V125I、V129A、I132V、D137N、D137Y、K139R、D153N、S154G、K160R、S161P及びS161Tからなる群より選択される少なくとも1つの置換を含む請求項10に記載の変異型。
  12. G19S、F54L、E80K、F87L、V105A及びI132Vからなる群より選択される少なくとも1つの置換を含む請求項11に記載の変異型。
  13. 第1及び第2単量体がそれぞれ、28位、30位、32位、33位、38位、40位、44位、68位、70位、75位、77位及びついには80位の位置に:
    KTSGQS/VERNR+K80及び KRTNQQ/DRSRT、
    KNGCAS/IRSNR及びKNSRDR/YASRI、
    KRTCQT/KYSEV及びKRTNQQ/LRNNI+K80、
    KNSCAS/NTSRY及びKNSTAS/MERNR、
    KNSRNQ/RYSEV及びENSRRK/NRSRY、
    KNTCQS/LRANV及びKYTCQS/DYSSR、
    KNHHQS/NQSSV及びKNSEQE/AYSYK、
    KRCCQE/KTTNI及びKNRDQS/ARSRL、
    KRSYQS/QESRR及びKSSHKS/NYSRV、
    KNSTQS/ARSER及びKNSPQQ/KYSEV、
    KDSRTS/RRSND及びKNCCHS/RRSND、
    KNHHQS/YYSST及びKTSGQS/QRSYR、
    KTSGQS/KRSRR及びKNSRAQ/NRSRY、
    KNSYQS/KYSNQ及びENSRRK/KYSQN、
    KSSHKS/IRSNR及びKNDYCS/KESDR、
    KNSTQT/QNSQR及びKNSRAQ/AQNNI、
    KNSRDR/IRCNR及びKRANQE/ARSER、
    KNSPKS/NKHNI及びRNSAYQ/DYSSR、
    KNSCAS/IRANR及びKNTCQS/QRSHY、
    KNTYWS/ARSRL及びKNSRNQ/YSSSD、
    KDSRSS/YRSDV及びKNTYWS/DYSSR、
    KTSGQS/KRSDK及びNNSSRK/AYSRI、
    KNSRNQ/SRSYT及びKDSRQS/KESDR、
    KNSCAS/ARSER及びKRSRQS/QYRNI
    からなる群より選択されるアミノ酸を有する請求項6及び10〜12のいずれか1項に記載の変異型。
  14. 第1及び第2単量体がそれぞれ、28位、30位、32位、33位、38位、40位、44位、68位、70位、75位、77位及びついには24位又は80位の位置に:
    KNCCHS/KYSNI及びKRSYQS/TYSRT、
    KRSRES/DYSYQ及びKRGYQS/RHRDI、KRGYQS/KHRDI、KRGYQS/KNRDI、KRCYQS/RHRDI、KRGYQS/NYSRY、KRGYQS/RTRDI、KRGYQS/TYSRV、KRGYQS/KARDI、KRGYQS/QYSRY、KKSAQS/NYSRY、 KRDYQS/QRSRT+K80又はKRDYQS/TRSRI+K80、
    KHHCQT/RYSEV及びKRTNQQ/IRCNR、
    KNSRAQ/RYSER及びKNSHAS/VERNR+K80、
    KRGRQA/RYSER及びKNRDQS/TYSRT、
    KNSYQS/LRNNI+K80及びKNSYQS/NYSYN+V24、
    KDSRQS/YRSDV及びKHHCAS/DRSRQ、
    KNSTQS/DYSSR及びKNSRAQ/RNSQI、
    KNHHQS/QHSNR及びKNSGQQ/QYSRV、
    KDSRTS/AYSYK及びKRTYQS/RSSNT、
    KNSCQQ/QRSNR及びKNDYYS/TYSRV、
    KRYSQS/RYSEQ及びKNSYRK/KSSNI、
    KNSCAS/NYSRV及びKNTYQS/QHSNR、
    KNSSRD/QRSNI及びKNSYQS/KESDR、
    KNTCQS/ECSNI及びKNNGQS/KYSNI、
    KSSHKS/IRSNR及びKNDYCS/KESDR、
    KTSHRS/NRSRY及びKNTYWS/DYSSR、
    KNSYHS/AYSRV及びKDSRGS/QNSRV、
    KDSRQS/KESDR及びNNSYRK/ARRNI、
    KNSRNQ/ARSRL及びKWSCQS/KASDK、
    KGSYKS/TRSER及びKNSYGQ/KYSNQ
    からなる群より選択されるアミノ酸を有する請求項7及び10〜12のいずれか1項に記載の変異型。
  15. 第1及び第2単量体がそれぞれ、28位、30位、32位、33位、38位、40位、44位、68位、70位、75位、77位及びついには24位又は80位の位置に:
    KNCCHS/KYSNI及びKRSYQS/TYRST、
    KRSRES/DYSYQ及びKRGYQS/RHRDI、KRGYQS/KHRDI、KRGYQS/KNRDI、KRCYQS/RHRDI、KRGYQS/NYSRY、KRGYQS/RTRDI、KRGYQS/TYSRV、KRGYQS/KARDI、KRGYQS/QYSRY、KKSAQS/NYSRY、KRDYQS/QRSRT+K80又はKRDYQS/TRSRI+K80、
    KNHCQA/RYSER及びKRTNQ/IRSNR、
    KNSRDR/KYSEV及びKNSGQG/TYSYR、
    KNSNQR/KYSEV及びKRDYQS/NYSYQ、
    KRSYQS/KESDR及びKNHHQS/RYSEY、
    KNSYQS/LRNNI+K80及びKNSYQS/NYSYN+V24、
    KRSYQS/KSSNV及びKSTSRS/AYSDH、
    KSSCQA/NKHNI及びKNGHQS/QESRR、
    KRSYQS/QHSNR及びKTSGQS/QYSRV、
    KNRDQS/ECSNI及びKNSNYR/QRDNR、
    KSSHKS/IRSNR及びKNDCQS/KESDR、
    KNSHQT/NRSRY及びKRSYES/DYSSR、
    KNSCQH/VERNR+K80及びSNSYRK/NRSRY、
    KDSRTS/YRSDV及びKKSSQS/DYSSR、
    KDSRQS/KESDR及びNNSYRK/ARRNI、
    KNSRNQ/ARSRL及びKWSCQS/KASDK、
    KGSYKS/ARSER及びKNSRQR/ARGNI
    からなる群より選択されるアミノ酸を有する請求項8及び10〜12のいずれか1項に記載の変異型。
  16. 第1単量体及び第2単量体がそれぞれ、以下の配列の対:
    配列番号61〜84(第1単量体)及び配列番号85〜108(第2単量体);
    配列番号109、110、63、111〜128(第1単量体)及び配列番号129〜134、89、135〜151(第2単量体);
    配列番号109、110、63、152〜154、113、155〜158、123、159〜162、127、163(第1単量体)及び配列番号164、130〜133、198〜200、203及び206〜208、134、89、165、166、136、167〜170、146、147、171〜175(第2単量体);
    から選択される請求項13〜15のいずれか1項に記載の変異型。
  17. マウス及びクリテクルス種グルタミンシンセターゼ遺伝子からの配列番号30のDNA標的配列を切断し、28位、30位、32位、33位、38位、40位、44位、68位、70位、75位及び77位の位置並びに付加的な位置に:
    KRSRES/DYSYQ+H66+132V、KRSRES/DYSYQ+A19+120A又はKRSRES/DYSYQ+S19+E57+T118+V132(第1単量体)及びKRGQS/RHRDI、KRGYQS/QARDR+119L又はKRSRQS/QARDR(第2単量体); KRSRES/DYSYQ+H66+132V(第1単量体)及びKRGYQS/KHRDI+S19+M45 (第2単量体)
    からなる群より選択されるアミノ酸を有する第1単量体及び第2単量体を含む請求項7、8、10〜12、14及び15のいずれか1項に記載の変異型。
  18. マウス及びクリテクルス種グルタミンシンセターゼ遺伝子からの配列番号30のDNA標的配列を切断し、配列番号211〜229、242〜244及び271の配列のいずれかを有する第1単量体と、配列番号245〜268の配列のいずれかを有する第2単量体とを含む請求項7、8、10〜12、14、15及び17のいずれか1項に記載の変異型。
  19. 請求項16又は18で規定される配列の1つと、少なくとも95%の配列同一性を有する請求項1〜15及び17のいずれか1項に記載の変異型。
  20. 核局在化シグナル及び/又はタグを含む請求項1〜19のいずれか1項に記載の変異型。
  21. 第1単量体がD137R変異をさらに含み、第2単量体がR51D変異をさらに含む偏性へテロ二量体である請求項5〜20のいずれか1項に記載の変異型。
  22. 第1単量体がE8R変異又はE8K変異及びE61R変異をさらに含み、第2単量体がK7E変異及びK96E変異をさらに含む偏性へテロ二量体である請求項5〜20のいずれか1項に記載の変異型。
  23. 請求項1〜22のいずれか1項に記載の1つの変異型の2つの単量体又はコアドメイン、或いはその両方の組合せを含む単鎖メガヌクレアーゼ。
  24. ペプチドリンカーで連結された請求項13〜18のいずれか1項で規定される第1単量体及び第2単量体を含む請求項23に記載の単鎖メガヌクレアーゼ。
  25. 請求項1〜22のいずれか1項に記載の変異型又は請求項23若しくは24に記載の単鎖メガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドフラグメント。
  26. 請求項25に記載のポリヌクレオチドフラグメントを少なくとも1つ含む発現ベクター。
  27. それぞれが請求項5〜22のいずれか1項に記載のヘテロ二量体変異型の単量体の1つをコードする2つの異なるポリヌクレオチドフラグメントを含む請求項26に記載の発現ベクター。
  28. グルタミンシンセターゼ遺伝子に導入される配列と、請求項1及び5〜8のいずれか1項で規定されるI-CreI 変異型のゲノムDNA切断部位と接するグルタミンシンセターゼ遺伝子配列に相同な配列とを含むターゲティング構築物を含む請求項26又は27に記載のベクター。
  29. 導入される前記配列が、グルタミンシンセターゼ遺伝子を不活性化し、I-CreI変異型のゲノムDNA切断部位と接するグルタミンシンセターゼ遺伝子の配列に相同な配列と接している請求項28に記載のベクター。
  30. 導入される前記配列が、ヒトグルタミンシンセターゼ遺伝子内の変異を修復する配列である請求項28に記載のベクター。
  31. 前記配列が、野生型ヒトグルタミンシンセターゼの一部分をコードする請求項30に記載のベクター。
  32. I-CreI変異型のゲノムDNA切断部位と接するグルタミンシンセターゼ遺伝子の配列に相同な前記配列が、請求項31で規定される野生型グルタミンシンセターゼの一部分をコードする配列を含む請求項28に記載のベクター。
  33. 前記変異を修復する前記配列が、I-CreI変異型のゲノムDNA切断部位と接するヒトグルタミンシンセターゼ遺伝子の配列に相同な配列に挟まれている、ヒトグルタミンシンセターゼのオープンリーディングフレーム及び3'の転写を停止するポリアデニル化部位を含む請求項30に記載のベクター。
  34. 請求項1〜22のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異型、請求項23若しくは24に記載の1つの単鎖メガヌクレアーゼ、及び/又は請求項26〜33のいずれか1項に記載の1つの発現ベクターを含む組成物。
  35. 請求項28〜33のいずれか1項で規定されるターゲティングDNA構築物を含む請求項34に記載の組成物。
  36. 前記ターゲティングDNA構築物が、組換えベクターに含まれる請求項35に記載の組成物。
  37. 請求項25若しくは27で規定される少なくとも1つのポリヌクレオチドフラグメント、又は請求項26〜33のいずれか1項に記載の1つのベクターにより改変された宿主細胞。
  38. 請求項25若しくは27で規定される1つ又は2つのポリヌクレオチドフラグメントを含む非ヒトトランスジェニック動物。
  39. 請求項25若しくは27で規定される1つ又は2つのポリヌクレオチドフラグメントを含むトランスジェニック植物。
  40. 請求項1〜22のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異型、請求項23若しくは24に記載の1つの単鎖メガヌクレアーゼ、及び/又は請求項26〜33のいずれか1項に記載の1つの発現ベクターの、非治療目的でのゲノム工学のための使用。
  41. グルタミンシンセターゼノックアウト動物/株化細胞を作製するための請求項40に記載の使用。
  42. 前記動物/株化細胞が、トランスジェニック動物/株化細胞であり、ここで導入遺伝子がグルタミンシンセターゼ遺伝子座に挿入されている請求項41に記載の使用。
  43. 前記動物/株化細胞が、トランスジェニック動物/株化細胞であり、ここで導入遺伝子が任意のゲノム遺伝子座に挿入されている請求項41に記載の使用。
  44. 請求項1〜22のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異型、請求項23若しくは24に記載の1つの単鎖メガヌクレアーゼ、及び/又は請求項26〜33のいずれか1項に記載の1つの発現ベクターの、グルタミンシンセターゼ遺伝子内の変異に起因する病的状態を予防、改善又は治癒する目的の医薬製造のための使用。
  45. 前記変異型、単鎖メガヌクレアーゼ又はベクターが、請求項28〜33のいずれか1項で定義されるターゲティングDNA構築物と組み合わされている請求項40〜44のいずれか1項に記載の使用。
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