JP2012253602A - 結像光学系及び撮像装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】被写界深度の拡大が可能であり、しかも、焦点調節を容易化するのに適した構成の結像光学系、及びそれを備えた撮像装置を提供する。
【解決手段】本発明の結像光学系(14)は、物体からの光を結像する結像光学系であって、前記結像光学系の瞳面の近傍に配置され、通過波面の位相を空間的に変化させることにより、デフォーカスに起因する前記結像光学系のMTFの劣化を減じる光波面変換素子(17)を備え、前記光波面変換素子の光軸と垂直な第1方向に亘る位相変化量は非一様であり、前記第1方向及び前記光軸に垂直な第2方向に亘る位相変化量は一様である。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の結像光学系(14)は、物体からの光を結像する結像光学系であって、前記結像光学系の瞳面の近傍に配置され、通過波面の位相を空間的に変化させることにより、デフォーカスに起因する前記結像光学系のMTFの劣化を減じる光波面変換素子(17)を備え、前記光波面変換素子の光軸と垂直な第1方向に亘る位相変化量は非一様であり、前記第1方向及び前記光軸に垂直な第2方向に亘る位相変化量は一様である。
【選択図】 図1
Description
本発明は、WFC(wave-front coding)、EDOF(Extended Depth of Field)技術が適用可能な結像光学系及び撮像装置に関する。
WFC、EDOF技術は、像の明るさを損なうことなく結像光学系の被写界深度を拡張する技術である(特許文献1等を参照)。
この技術では、結像光学系の瞳面付近に光波面変換素子を配置することにより結像光学系の光束を所定方向(x軸方向及びy軸方向)へと規則的に分散させる。この場合、撮像面と共役な距離にある物体を含めて全ての距離の物体像にボケは含まれるものの、デフォーカス面(撮像面の共役面から外れた面)に位置する点の像のボケ量は、フォーカス面(撮像面の共役面)に位置する点の像のボケ量に近づけられる(デフォーカス面のMTFがフォーカス面のMTFに近づけられる。)。つまり、この光波面変換素子には、デフォーカスに起因した結像光学系のMTFの劣化を減じ、MTF値が零以下となるデフォーカス範囲を広げるという機能がある。このような光波面変換素子によると、結像光学系の単体では伝達できなかった、デフォーカス面の微細構造を、結像光学系の像面へ伝達させることができる。
また、この結像光学系が光波面変換素子と共に生成した画像を、光波面変換素子の位相変化量分布に基づきディジタル処理すれば、被写界深度の拡張された画像が得られる。このディジタル処理は、MTF値が零以下となるデフォーカス範囲が広げられたことを利用して、実質的なMTF値を嵩上げするものである。
しかしながら、結像光学系の被写界深度を拡張すると、デフォーカス量(物体上の任意の点とフォーカス面との間のズレ量)の変化による像のボケの変化量は小さくなるため、任意の点に対する結像光学系の焦点調節が難しいという問題があった。
そこで本発明は、被写界深度の拡張が可能であり、しかも、焦点調節を容易化するのに適した構成の結像光学系、及びそれを備えた撮像装置を提供する。
本発明の結像光学系は、物体からの光を結像する結像光学系であって、前記結像光学系の瞳面の近傍に配置され、通過波面の位相を空間的に変化させることにより、デフォーカスに起因する前記結像光学系のMTFの劣化を減じる光波面変換素子を備え、前記光波面変換素子の光軸と垂直な第1方向に亘る位相変化量は非一様であり、前記第1方向及び前記光軸に垂直な第2方向に亘る位相変化量は一様である。
本発明の撮像装置は、本発明の結像光学系と、前記結像光学系の像面に配置された撮像素子とを備える。
本発明によれば、被写界深度の拡張が可能であり、しかも、焦点調節を容易化するのに適した構成の結像光学系、及びそれを備えた撮像装置が実現する。
[実施形態]
以下、本発明の実施形態の1つとして、結像光学系を備えた撮像装置を説明する。
以下、本発明の実施形態の1つとして、結像光学系を備えた撮像装置を説明する。
先ず、撮像装置の全体構成を説明する。図1は、撮像装置の全体構成を示すブロック図である。図1に示すとおり撮像装置には、結像光学系14、光波面変換素子17、撮像素子19、画像処理回路20、モニタ21などが備えられる。
光波面変換素子17の配置面は、結像光学系14の瞳面又はその近傍に設定されている。よって、光波面変換素子17に入射する光の入射角度は、比較的小さい値となる。
光波面変換素子17は、入射光束の波面形状(位相分布)を変換する位相板であって、その位相変化量分布は固定であり、結像光学系14の光束を特定方向へと規則的に分散させるような分布(後述)に設定されている。この位相変化量分布によると、結像光学系14の被写界深度(結像光学系14が微細構造を高コントラストに伝達できるz軸方向の範囲)を実質的に拡張することができる。なお、ここでいう微細構造とは、撮像素子19が分解可能な空間周波数を有した微細構造のことであって、ここでいうMTFとは、撮像素子19が分解可能な空間周波数域に関するMTFのことである。
光波面変換素子17は、z軸の周りに回転可能である(図2参照)。つまり、撮像素子19に対する光波面変換素子17の回転角度は、自在に変更可能である。
撮像素子19は、所定のフレームレート(例えば1/30秒)で撮像を行うことができる。撮像素子19の駆動タイミングは、光波面変換素子17の回転角度と共に制御される。撮像素子19が取得した画像は、画像処理回路20へ順次に送出される。
画像処理回路20は、撮像素子19から送出される画像に対して復元処理を施してからモニタ21へ送出する。この復元処理は、前述した位相変化量分布に応じた処理であって、結像光学系14のMTFを実質的に嵩上げする処理である。以下、復元処理前の画像と復元処理後の画像とを区別するために、前者を「変調画像」と称し、後者を「復元画像」と称す。したがって、ユーザは、で被写界深度の高い画像を復元画像として観察することができる。
なお、画像処理回路20による1フレーム当たりの復元処理の処理時間は撮像素子19のフレーム周期内に収まっており、モニタ21に対する復元画像の表示は、リアルタイムで行われるものと仮定する。よって、ユーザは、モニタ21上で復元画像を確認しながら結像光学系14の焦点調節(フォーカス調整)を行うことができる。
次に、光波面変換素子17の詳細を説明する。ここでは、光波面変換素子17の一方の面は一様(平坦)であり、他方の面は非一様(起伏)であると仮定する。この場合、光波面変換素子17の位相変化量分布は、他方の面の高さ分布によって決まる。以下、光波面変換素子17のうち波面変換機能を有した面を「位相変化面」と称す。
光波面変換素子の位相変化面の高さ分布は、図3に示すとおり、z軸に対して垂直な所定方向(x軸方向)にかけて非一様に設定されているのに対し、x軸方向に垂直な所定方向(y軸方向)にかけては一様に設定されている。なお、ここでいう位相変化面の高さ分布とは、位相変化面によって実現する位相変化量分布を高さ分布に換算したものである。
以下、光波面変換素子の位相変化面上でz軸と交差する点を原点としたxyz直交座標系を想定する。
図4は、光波面変換素子の位相変化面の有効径をz軸に沿った方向から見た模式図である。図4に示すとおり、光波面変換素子の位相変化面をyz平面により分割してできる2つの分割領域を考えると、一方の分割領域には、通過光束の位相を遅延させる機能が付与され、他方の分割領域には、通過光束の位相を相対的に進行させる機能が付与されている。
このような位相変化面のx軸方向の高さ分布をf(x)とおくと、高さ分布f(x)は、例えば以下のとおりx座標の関数で表される(図5参照)。
f(x)=ax3
なお、aは、位相変化の程度(位相変化度)を規定する係数である。
なお、aは、位相変化の程度(位相変化度)を規定する係数である。
また、xがプラスであるときの関数f(x)と、xがマイナスであるときの関数f(x)との間には、意図的な差異が与えられていてもよい。
例えば、xがプラスであるときの関数f(x)と、xがマイナスであるときの関数f(x)との間では、以下の通り、位相変化度の係数が異なっていてもよい(図6参照)。
f(x)=ax3 (x≦0のとき)、
f(x)=a’x3 (x>0のとき)
言い換えると、xがプラスであるときの関数f(x)と、xがマイナスであるときの関数f(x)との間では、以下の通り、x軸方向のスケールが異なってもよい(図7参照)。
f(x)=a’x3 (x>0のとき)
言い換えると、xがプラスであるときの関数f(x)と、xがマイナスであるときの関数f(x)との間では、以下の通り、x軸方向のスケールが異なってもよい(図7参照)。
f(x)=ax3 (x≦0のとき)、
f(x)=a(αx)3 (x>0のとき)
また、例えば、xがプラスであるときの関数f(x)と、xがマイナスであるときの関数f(x)との間では、以下の通り、x軸方向のシフト量が異なってもよい(図8参照)。
f(x)=a(αx)3 (x>0のとき)
また、例えば、xがプラスであるときの関数f(x)と、xがマイナスであるときの関数f(x)との間では、以下の通り、x軸方向のシフト量が異なってもよい(図8参照)。
f(x)=ax3 (x≦0のとき)、
f(x)=0 (0<x<Δのとき)、
f(x)=a(x−Δ)3 (x>Δのとき)
以上の何れかの光波面変換素子によると、被写界深度の拡張効果は、x軸方向にのみ現れ、y軸方向には現れない。よって、フォーカス調整中にユーザがデフォーカス量(物体上の任意の点に対するフォーカス面のズレ量)を変化させると、復元画像に写っている任意の点の像のx軸方向のボケ量は少ししか変化しないものの、復元画像に写っている任意の点の像のy軸方向のボケ量は、大幅に変化する。
f(x)=0 (0<x<Δのとき)、
f(x)=a(x−Δ)3 (x>Δのとき)
以上の何れかの光波面変換素子によると、被写界深度の拡張効果は、x軸方向にのみ現れ、y軸方向には現れない。よって、フォーカス調整中にユーザがデフォーカス量(物体上の任意の点に対するフォーカス面のズレ量)を変化させると、復元画像に写っている任意の点の像のx軸方向のボケ量は少ししか変化しないものの、復元画像に写っている任意の点の像のy軸方向のボケ量は、大幅に変化する。
したがって、ユーザは、復元画像を観察しながら、任意の点に対する結像光学系14のフォーカス調整を行い、復元画像における任意の点の像のy軸方向のボケ量が最小となった時点で、フォーカス調整を終了すればよい。したがって、本実施形態のユーザは、フォーカス調整を高精度に行うことができる。
なお、本実施形態の撮像装置では、関数f(x)の次数(xの冪数)を3としたが、5などとしてもよい。基本的に、関数f(x)は、f(x)=−f(−x)を満たすような関数(奇関数)であることが望ましい。
また、本実施形態の撮像装置では、被写界深度の拡張効果がx軸方向にしか得られないため、フォーカス調整後、詳細観察用の復元画像を取得する際には、光波面変換素子17をz軸の周りに回転させながら、撮像素子19を繰り返し駆動することで、位相変化方向の異なる複数枚の変調画像(少なくとも、位相変化方向の90°ずれた2枚の変調画像)を取得するとよい。また、その場合、画像処理回路20は、取得した複数枚の変調画像の各々に対して復元処理を施してから、それらの復元画像を合成することにより、多方向(少なくとも2方向)に亘って被写界深度の拡張された合成復元画像を作成し、モニタ21へ送出するとよい。なお、複数枚の変調画像の各々に対する復元処理は、その変調画像の位相変化方向に応じた処理となる。
因みに、本実施形態の撮像装置では、変調画像の取得枚数を多くした方が、合成変調画像のノイズ低減や、被写界深度の拡張方向の多次元化などを考慮すると、有利である。
次に、光波面変換素子の具体例(光波面変換素子の位相変化面の具体例)を説明する。具体例を評価するに当たり、光波面変換素子を備えた結像光学系として、以下のような第1モデルを想定した。
第1モデルは、図9に示すように、像側にテレセントリックな理想結像光学系(アフォーカルレンズ)Bと、理想結像光学系Bの瞳面(絞り面)に配置された光波面変換素子Aと、理想結像光学系Bの像面に配置された撮像素子Cとからなる。
理想結像光学系Bの焦点距離は、100mmであり、画角は10度であり、F値は4であり、光波面変換素子Aから物体空間内のフォーカス面までの距離は、800mmであり、理想結像光学系Bの横倍率は、−0.1247倍である。以下、特に指定しない限り距離の単位を[mm]とする。
光波面変換素子Aとしては、2枚の光波面変換素子(第1の光波面変換素子、第2の光波面変換素子)を光軸方向に並べたものを想定した。これらの光波面変換素子の位相変化面は何れも、y軸方向の高さ分布が一様な位相変化面である。
第1の光波面変換素子の位相変化面のx軸方向の高さ分布f1(x)は、以下のとおり設定されている。
f1(x)=a1×(α1x)3、
a1=6.0×10−7、
α1=1.5444
一方、第2の光波面変換素子の位相変化面のx軸方向の高さ分布f2(x)は、以下のとおり設定されている。
a1=6.0×10−7、
α1=1.5444
一方、第2の光波面変換素子の位相変化面のx軸方向の高さ分布f2(x)は、以下のとおり設定されている。
f2(x)=a2×(α2x)5、
a2=−5.0×10−11、
α2=2.0696
したがって、第1の光波面変換素子及び第2の光波面変換素子を含んだ光波面変換素子Aのトータルの位相変化面の高さ分布f(x)は、以下のとおりとなる。
a2=−5.0×10−11、
α2=2.0696
したがって、第1の光波面変換素子及び第2の光波面変換素子を含んだ光波面変換素子Aのトータルの位相変化面の高さ分布f(x)は、以下のとおりとなる。
f(x)=f1(x)+f2(x)
=a1×(α1x)3+a2×(α2x)5
=6.0×10−7×(1.5444×x)3−5.0×10−11×(2.0696×x)5
図10は、光波面変換素子Aから物体側の評価対象点までの距離が800mmであり、横倍率が−0.1247倍であるとき(デフォーカス量=0)における第1モデルの横収差図である。
=a1×(α1x)3+a2×(α2x)5
=6.0×10−7×(1.5444×x)3−5.0×10−11×(2.0696×x)5
図10は、光波面変換素子Aから物体側の評価対象点までの距離が800mmであり、横倍率が−0.1247倍であるとき(デフォーカス量=0)における第1モデルの横収差図である。
図11は、光波面変換素子Aから物体側の評価対象点までの距離が840mmであり、横倍率が−0.1188倍であるとき(デフォーカス量=+40)における第1モデルの横収差図である。
図12は、光波面変換素子Aから物体側の評価対象点までの距離が760mmであり、横倍率が−0.1312倍であるとき(デフォーカス量=−40)における第1モデルの横収差図である。
これらの図10、図11、図12を参照すると、第1モデルの横収差は、デフォーカス量がプラスであるときとマイナスであるときとで反転することがわかる。
図13は、第1モデルのx軸方向のMTF値のデフォーカス特性である。なお、図13では、空間周波数32[cycles/mm]に関するMTF値のみを代表して示した。また、図13における3つのカーブは、画角の相違を表している。また、図13の横軸は、物体側のデフォーカス量を像側の距離に換算したものである。
このデフォーカス特性カーブを参照すると、デフォーカス特性カーブの中央近傍(デフォーカス量がゼロ近傍であるときのMTF値)が平坦化されているのがわかる。これによって、第1モデルのx軸方向の被写界深度は、実質的に拡張されることになる。
比較のため、光波面変換素子Aの代わりに平行平板を配置した同様のモデル(第1比較モデル)のデータを、図14、図15、図16、図17に示す。
図14は、平行平板から物体側の評価対象点までの距離が800mmであり、横倍率が−0.1247倍であるとき(デフォーカス量=0)における第1比較モデルの横収差図である。
図15は、平行平板から物体側の評価対象点までの距離が840mmであり、横倍率が−0.1188倍であるとき(デフォーカス量=+40)における第1比較モデルの横収差図である。
図16は、平行平板から物体側の評価対象点までの距離が760mmであり、横倍率が−0.1312倍であるとき(デフォーカス量=−40)における第1比較モデルの横収差図である。
これらの図14、図15、図16を図10、図11、図12と比較すると、第1比較モデルの横収差と第1モデルの横収差とは同程度であることがわかる。すなわち、光波面変換素子Aを備えた第1モデルの横収差は、光波面変換素子Aの代わりに平行平板を備えた第1比較モデルの横収差と同様、良好であることがわかる。
図17は、第1比較モデルのMTF値のデフォーカス特性である。なお、図17では、空間周波数32[cycles/mm]に関するMTF値のみを代表して示した。また、図17における3つのカーブは、画角の相違を表している。また、図17の横軸は、物体側のデフォーカス量を像側の距離に換算したものである。
この図17を図13と比較すると、第1比較モデルのデフォーカス特性カーブは、第1モデルのx軸方向のデフォーカス特性カーブよりも尖っているのがわかる。すなわち、光波面変換素子Aを備えた第1モデルのx軸方向の被写界深度は拡張されているのに対し、光波面変換素子Aの代わりに平行平板を備えた第1比較モデルの被写界深度は拡張されていないのがわかる。
なお、ここでは、第1モデルのy軸方向のデフォーカス特性に言及しなかったが、第1モデルにおける光波面変換素子Aのy軸方向の高さ分布は一様に設定されているので、第1モデルのy軸方向のデフォーカス特性は、第1比較モデルのデフォーカス特性と同じになる。すなわち、第1モデルのy軸方向の被写界深度は、狭いままである。
ここで、第1モデルの位相変化面のx軸方向の高さ分布(関数f(x))は、奇関数又は奇関数に近い関数(すなわちxがプラスであるときとマイナスであるときとで反対符号)であったが、比較のため、位相変化面のx軸方向の高さ分布(関数f(x))を偶関数又は偶関数に近い関数(すなわちxがプラスであるときとマイナスであるときとで同符号)としたもの(第2比較モデル)のデータを、図18、図19、図20、図21に示す。なお、第2比較モデルでは、位相変化面を球面に設定し、その球面の前側曲率半径を100mm(この部分の焦点距離を218mm)に設定した。
図18は、光波面変換素子から物体側の評価対象点までの距離が800mmであり、横倍率が−0.1259倍であるとき(デフォーカス量=0)における第2比較モデルの横収差図である。
図19は、光波面変換素子から物体側の評価対象点までの距離が840mmであり、横倍率が−0.1199倍であるとき(デフォーカス量=+40)における第2比較モデルの横収差図である。
図20は、光波面変換素子から物体側の評価対象点までの距離が760mmであり、横倍率が−0.1325倍であるとき(デフォーカス量=−40)における第2比較モデルの横収差図である。
図21は、第2比較モデルのMTF値−デフォーカス特性である。なお、図21では、空間周波数32[cycles/mm]に関するMTF値のみを代表して示した。また、図21における3つのカーブは、画角の相違を表している。また、図21の横軸は、物体側のデフォーカス量を像側の距離に換算したものである。
これらの図18、図19、図20、図21からわかるとおり、第2比較モデルでは、横収差が悪く、被写界深度も狭い。したがって、横収差を良好にしたまま被写界深度を拡張するには、第1モデルのように、位相変化面のx軸方向の高さ分布(関数f(x))を、奇関数又は奇関数に近い関数(すなわちxがプラスであるときとマイナスであるときとで反対符号)にする必要があることがわかる。
次に、関数f(x)の次数が3である場合における係数a(又はスケールα)の選定方法を説明する。
図22は、関数f(x)がf(x)=ax3であるときのx軸方向のMTFを係数aの値毎に表したグラフである。
図23は、関数f(x)がf(x)=ax3であるときのx軸方向のMTF値のデフォーカス特性を、係数aの値毎に表したグラフである。なお、図23では、空間周波数32[cycles/mm]に関するMTF値のみを代表して示した。また、図23のデフォーカス軸は、物体側のデフォーカス量を像側の距離で表したものである。
これらの図22、図23に基づけば、所望の深度内で良好なMTFカーブが得られるような係数a(例えば、a=3×10−6)を簡単に選定することができる。
因みに、図24は、図23において係数aが3×10−6であるときのデータを抽出して二次元のグラフで表したものである。
なお、ここでは係数aの値を選定する場合を説明したが、スケールαの値を選出する場合には、図23の代わりに図25を使用すればよい。図25は、関数f(x)がf(x)=(αx)3であるときのx軸方向のMTF値のデフォーカス特性を、スケールαの値毎に表したグラフである。
次に、関数f(x)の次数が5である場合における係数a(又はスケールα)の選定方法を説明する。
図26は、関数f(x)がf(x)=ax5であるときのx軸方向のMTFを係数aの値毎に表した図である。
図27は、関数f(x)がf(x)=ax5であるときのx軸方向のMTF値のデフォーカス特性を、係数aの値毎に表したグラフである。なお、図27では、空間周波数32[cycles/mm]に関するMTF値のみを代表して示した。また、図27のデフォーカス軸は、デフォーカス量を像側の距離で表したものである。
これらの図26、図27に基づけば、所望の深度内で良好なMTFカーブが得られるような係数a(例えば、a=3×10−8)を簡単に選定することができる。
因みに、図28は、図27において係数aが3×10−8であるときのデータを抽出して二次元のグラフで表したものである。
なお、ここでは係数aの値を選定する場合を説明したが、スケールαの値を選出する場合には、図27の代わりに図29を使用すればよい。図29は、関数f(x)がf(x)=(αx)5であるときのx軸方向のMTF値のデフォーカス特性を、スケールαの値毎に表したグラフである。
次に、第1モデルの位相変化面を光軸の周りに回転させたときのデータを説明する。
図30は、光波面変換素子の回転角度が0°であるときのMTF値のデフォーカス特性である。図30に点線で示すのがy軸方向のデフォーカス特性であり、実線で示すのがx軸方向のデフォーカス特性である。また、図31は、光波面変換素子の回転角度が0°であるときのスポットダイアグラムである(スポットダイアグラムの上下方向がx軸方向に対応し、左右方向がy軸方向に対応する。以下のスポットダイアグラムも同様。)。
このうち図30を参照すると、x軸方向のデフォーカス特性は十分に平坦化されているのに対し、y軸方向のデフォーカス特性は尖ったままであることがわかる。また、図31を参照すると、光束がx軸方向にかけて分散しているのがわかる。
図32は、光波面変換素子の回転角度が15°であるときのMTF値のデフォーカス特性である。図32に点線で示すのがy軸方向のデフォーカス特性であり、実線で示すのがx軸方向のデフォーカス特性である。また、図33は、光波面変換素子の回転角度が15°であるときのスポットダイアグラムである。
このうち図32を参照すると、x軸方向のデフォーカス特性カーブは平坦化されているのに対し、y軸方向のデフォーカス特性カーブは比較的尖っていることがわかる。また、図33を参照すると、光束がx軸に対して+15°の方向にかけて分散しているのがわかる。
図34は、光波面変換素子の回転角度が30°であるときのMTF値のデフォーカス特性である。図34に点線で示すのがy軸方向のデフォーカス特性であり、図34に実線で示すのがx軸方向のデフォーカス特性である。また、図35は、光波面変換素子の回転角度が30°であるときのスポットダイアグラムである。
このうち図34を参照すると、x軸方向のデフォーカス特性カーブは若干だけ平坦化されているのに対し、y軸方向のデフォーカス特性カーブは若干だけ尖っていることがわかる。また、図35を参照すると、光束がx軸に対して+30°の方向にかけて分散しているのがわかる。
図36は、光波面変換素子の回転角度が45°であるときのMTF値のデフォーカス特性である。図36に実線で示すのがy軸方向及びx軸方向のデフォーカス特性である。また、図37は、光波面変換素子の回転角度が45°であるときのスポットダイアグラムである。
このうち図36を参照すると、x軸方向のデフォーカス特性カーブ及びy軸方向のデフォーカス特性カーブが共に若干だけ平坦化されているのがわかる。また、図37を参照すると、光束がx軸に対して+45°の方向にかけて分散しているのがわかる。
次に、以下のような第2モデルを想定した(理想結像光学系B、撮像素子Cなどは第1モデルと同様。)。
第2モデルでは、xがプラスであるときの関数f(x)と、xがマイナスであるときの関数f(x)とが以下のとおり互いに異なる。また、第2モデルにおける関数f(x)の次数は、3である。
f(x)=a1(α1(x−Δ1))3 (x>0のとき)、
f(x)=a2(α2(x−Δ2))3 (x≦0のとき)
a1=1×10−6、
a2=3×10−6、
α1=1、
α2=1、
Δ1=0、
Δ2=0
図38は、第2モデルのx軸方向のMTF値のデフォーカス特性である。なお、図38では、空間周波数32[cycles/mm]に関するMTF値のみを代表して示した。また、図38における3つのカーブは、画角の相違を表している。また、図38の横軸は、物体側のデフォーカス量を像側の距離に換算したものである。
f(x)=a2(α2(x−Δ2))3 (x≦0のとき)
a1=1×10−6、
a2=3×10−6、
α1=1、
α2=1、
Δ1=0、
Δ2=0
図38は、第2モデルのx軸方向のMTF値のデフォーカス特性である。なお、図38では、空間周波数32[cycles/mm]に関するMTF値のみを代表して示した。また、図38における3つのカーブは、画角の相違を表している。また、図38の横軸は、物体側のデフォーカス量を像側の距離に換算したものである。
このデフォーカス特性カーブを参照すると、デフォーカス量がプラスであるときのデフォーカス特性と、デフォーカス量がマイナスであるときのデフォーカス特性とに差異が設けられていることがわかる。
したがって、第2モデルによれば、フォーカス面の前側の被写界深度とフォーカス面の後側の被写界深度とを独立に設定することができる。
[変形例]
上述した図30、図32、図34、図36を参照すると明らかなとおり、上述した実施形態で取得される複数の画像(位相変化方向の異なる複数の変調画像)の間では、MTF値のデフォーカス特性は互いに異なる。そこで、上述した実施形態の画像処理回路20は、次のとおり動作してもよい。
上述した図30、図32、図34、図36を参照すると明らかなとおり、上述した実施形態で取得される複数の画像(位相変化方向の異なる複数の変調画像)の間では、MTF値のデフォーカス特性は互いに異なる。そこで、上述した実施形態の画像処理回路20は、次のとおり動作してもよい。
すなわち、画像処理回路20は、位相変化方向の少しずつずれた多数枚の変調画像を取得し、それら変調画像間のコントラスト変化カーブを、画素毎(又は領域毎)に求め、その画素毎(又は領域毎)のカーブ形状から、物体の高さ分布(物体の距離分布)を推定する。但し、物体上の各点がフォーカス面の前後のどちらに位置しているかを特定するためには、上記の第2モデルのように、関数f(x)のプラスx側とマイナスx側とに差異を付けておく必要がある。
また、上述した実施形態では、光波面変換素子として位相板を使用したが、位相変化量分布が可変である空間位相変調器を使用してもよい。その場合、例えば位相変化方向と位相変化度(前述した係数a又はスケールα)との組み合わせを自在に変更することができる。
また、位相変化度が自在に変更可能である場合、上述した実施形態の画像処理回路20は、次のとおり動作してもよい。すなわち、画像処理回路20は、位相変化度の少しずつずれた多数枚の変調画像を取得し、それら変調画像間のコントラスト変化カーブを、画素毎(又は領域毎)に求め、その画素毎(又は領域毎)のカーブ形状から、物体の高さ分布(物体の距離分布)を推定する。但し、物体上の各点がフォーカス面の前後のどちらに位置しているかを特定するためには、上記の第2モデルのように、関数f(x)のプラスx側とマイナスx側とに差異を付けておく必要がある。
また、物体の高さ分布が既知である場合、上述した実施形態の画像処理回路20は、次のとおり動作してもよい。すなわち、画像処理回路20は、物体の高さ分布と仮想的な左右の視点とに基づき他数枚の変調画像を処理することにより、立体視用の両眼視差画像(左眼用画像及び右眼用画像)を作成する。
また、物体の高さ分布が既知である場合、上述した実施形態の画像処理回路20は、次のとおり動作してもよい。すなわち、画像処理回路20は、物体の高さ分布と仮想的なフォーカス面とに基づき多数枚の変調画像を処理することにより、任意の距離に合焦した画像を作成する。この際、画像処理回路20は、z軸に対して非垂直な面を合焦面とすることもできる。
また、上述した実施形態の撮像装置では、フォーカス調整が手動で行われることを想定したが、フォーカス調整が自動で行われる場合、上述した実施形態の撮像装置は、次のとおり動作してもよい。すなわち、撮像装置は、フォーカス調整を行いながら、復元画像上のフォーカスエリアのy軸方向のコントラストを参照し、そのコントラストが最大となった時点で、フォーカス調整を終了する。なお、フォーカスエリアとは、復元画像上でユーザが予め指定したエリア、或いは、復元画像上の中央に位置する所定エリアなどである。
また、上述した実施形態の撮像装置では、光波面変換素子17として、関数f(x)の異なる2枚の光波面変換素子を配置し、かつ、両者のz軸周りの回転角度を0°以外の所定角度に設定してもよい。
例えば、関数f(x)の次数が3である光波面変換素子と、関数f(x)の次数が5である光波面変換素子との2枚をz軸方向に並べ、かつ、後者のz軸周りの回転角度を90°に設定してもよい。
なお、関数f(x)の次数が3であるモデルの位相変化方向のデフォーカス特性は、図24に示したとおりであって、関数f(x)の次数が5であるモデルの位相変化方向のデフォーカス特性は、図28に示したとおりである。よって、次数が3であるモデルのデフォーカス特性カーブよりも、次数が5であるモデルのデフォーカス特性カーブの方が尖っている。
したがって、この場合、x軸方向のデフォーカス特性カーブは平坦化され、y軸方向のデフォーカス特性カーブは尖ったままとなる。したがって、この場合は、2枚の光波面変換素子の全体をz軸周りに回転させなくとも、被写界深度の拡張効果を2次元方向へと拡張することができる(この場合、撮像素子19に対する2枚の光波面変換素子の相対的な回転角度は、不変であってもよい。)。
また、上述した実施形態の撮像装置では、光波面変換素子17として、関数f(x)の等しい2枚の光波面変換素子を配置し、かつ、両者のz軸周りの回転角度差を可変としてもよい。
図39(A)は、関数f(x)の等しい2枚の光波面変換素子の角度関係を基準状態(以下、この状態における両者の回転角度差を0°とする。)に設定したときの模式図であり、図39(B)は、両者の回転角度差を180°に設定したときの模式図であり、図39(C)は、両者の回転角度差を90°に設定したときの模式図である。
2枚の光波面変換素子の回転角度差が0°であるとき(図39(A))には、位相変化度が最小となり、両者の回転角度差が180°であるとき(図39(B))には、位相変化度が最大となる。したがって、例えば、両者の回転角度差を0°と180°との間で切り替えれば、位相変化の有無を切り替えることが可能となる。因みに、2枚の光波面変換素子の回転角度差を90°に設定すれば(図39(C))、位相変化方向をx軸方向とy軸方向との双方(二次元方向)にすることができる。図40は、MTF値のデフォーカス特性を、2枚の光波面変換素子の回転角度差(相対角度)毎に表したグラフである。
なお、図39の構成を上述した実施形態に採用した場合であっても、2枚の光波面変換素子の全体は、z軸の周りに回転可能(撮像素子19に対して相対的に回転可能)であり、画像処理回路20は、2枚の光波面変換素子の全体を回転させながら、位相変化方向の異なる複数枚の変調画像を取得することが望ましい。
また、本発明は、生体又は工業製品などの特定種類の被写体を撮像する撮像装置(例えば顕微鏡のディジタルカメラ)や、多様な被写体を撮像する撮像装置(例えば汎用のディジタルカメラ)などに適用することができる。因みに、汎用のディジタルカメラに本発明を適用した場合は、マクロ撮影を行う際に特に効果が高くなる。なぜなら、マクロ撮影時には、被写界深度の広さと像の明るさとを両立させる必要性が高いからである。
また、汎用のディジタルカメラに本発明を適用する場合には、光波面変換素子の配置先を、撮影レンズの先端側(最も物体側)としてもよい。この位置とすれば、一般的なフィルタ類(偏光フィルタなど)と同様、撮影レンズに対する光波面変換素子の着脱が容易である。
また、上述した実施形態では、光波面変換素子が結像光学系の他の光学要素と別体で設けられたが、結像光学系の一部の光学要素の表面に直に設けられてもよい。
また、上述した実施形態では、光束の波面形状の変換を光学要素の厚さ分布によって実現したが、光学要素の屈折率分布によって実現してもよい。また、波面変換に反射系を使用する場合は、z軸方向の光路長分布によって実現してもよい。
14…結像光学系、17…光波面変換素子、19…撮像素子、20…画像処理回路、21…モニタ
Claims (7)
- 物体からの光を結像する結像光学系であって、
前記結像光学系の瞳面の近傍に配置され、通過波面の位相を空間的に変化させることにより、デフォーカスに起因する前記結像光学系のMTFの劣化を減じる光波面変換素子を備え、
前記光波面変換素子の光軸と垂直な第1方向に亘る位相変化量は非一様であり、前記第1方向及び前記光軸に垂直な第2方向に亘る位相変化量は一様である
ことを特徴とする結像光学系。 - 請求項1に記載の結像光学系において、
前記光軸を含み前記第2方向に平行な平面で前記光波面変換素子を分割してできる2つの分割領域の一方には、前記通過波面の位相を相対的に遅延させる機能が付与され、他方には、前記通過波面の位相を相対的に進行させる機能が付与される
ことを特徴とする結像光学系。 - 請求項2に記載の結像光学系において、
前記2つの分割領域の間では、位相変化量分布カーブの形状が異なる
ことを特徴とする結像光学系。 - 請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の結像光学系と、
前記結像光学系の像面に配置された撮像素子と、
を備えたことを特徴とする撮像装置。 - 請求項4に記載の撮像装置において、
前記光波面変換素子と前記撮像素子とは、
前記光軸の周りに相対的に回転可能である
ことを特徴とする撮像装置。 - 請求項4に記載の撮像装置において、
2枚の前記光波面変換素子を備え、
前記2枚の前記光波面変換素子は、前記光軸の周りに相対的に回転可能である
ことを特徴とする撮像装置。 - 請求項6に記載の撮像装置において、
前記2枚の前記光波面変換素子と前記撮像素子とは、
前記光軸の周りに相対的に回転可能である
ことを特徴とする撮像装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2011125257A JP2012253602A (ja) | 2011-06-03 | 2011-06-03 | 結像光学系及び撮像装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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-
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- 2011-06-03 JP JP2011125257A patent/JP2012253602A/ja not_active Withdrawn
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