JP2012227282A - 加工装置および加工条件算出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】装置保守によって装置状態が大きく変わった場合に、その装置状態に適合するモデルを短時間で導出する手法を提供することを目的とする。
【解決手段】実績データの加工量と、この時の加工条件とを用いて加工量予測重回帰式を調整し、
得られた加工量予測重回帰式を用いて、加工対象の加工目標値と加工量予測重回帰式に含まれる加工条件以外の説明因子とから加工条件を算出する手段を備え、
得られた加工条件で加工することを特徴とする加工装置。
【選択図】図3
【解決手段】実績データの加工量と、この時の加工条件とを用いて加工量予測重回帰式を調整し、
得られた加工量予測重回帰式を用いて、加工対象の加工目標値と加工量予測重回帰式に含まれる加工条件以外の説明因子とから加工条件を算出する手段を備え、
得られた加工条件で加工することを特徴とする加工装置。
【選択図】図3
Description
本発明は、イオンミリング、エッチングなどの加工装置とその加工条件算出方法
に関する。
に関する。
半導体集積回路、太陽電池、液晶ディスプレイ、発光ダイオード、磁気ディスク、磁気ヘッドなどの製造プロセスにおいて目標品質を実現するために、製造工程で収集された多数のデータを用いたAPC(Advanced Process Control)や装置異常検知(Fault Detection and Classification)技術が開発されてきた。しかし、装置状態は一定ではなく、変化するため、装置状態を表すモデルを装置状態に合わせて調整していく必要がある。装置異常検知に統計解析手法を用いた特許文献1では、「故障を診断する方法及び装置である。一組のデータサンプルを受信する。一組のデータサンプルには、複数のプロセス変数が含まれる。1つ以上の多変量統計的モデルが適応される。適応には、変更が閾値より大きい場合に、1つ以上の多変量統計的モデルの少なくとも1つの単変量統計に対して変更を適用する工程が含まれる。1つ以上の多変量統計的モデルを用いて、後のプロセスデータを分析して、故障を検出する」と記載されている。また、非特許文献1には、「提案する相関型JIT(C−JIT)モデリングでは入出力間の相関関係を適切に考慮してモデル構築用サンプルを選択できるため、プロセス特性の急激な変化にも追従し推定性能を大幅に改善できる」と述べられている。
Koichi Fujiwara, Manabu Kano, Shinji Hasebe,and Akitoshi Takinami, "Soft−Sensor Development Using Correlation−Based Just−in−Time Modeling", American Institute of Chemical Engineers Journal,Vol.55, No.7,July 2009, pp.1754−1765
上述した特許文献1に記載されている方法は、装置保守のように装置状態が大きく変わる場合はモデルを初期化して、再度モデルを導出する必要がある。また非特許文献1に記載されている方法は、「時間的に近いサンプルほど類似の相関関係を有することを前提として、データセットを構築している。このような前提を満たさない対象については、提案する相関型JIT(C−JIT)モデリング法は適用できず、データセットの構築に別途検討を要する」と述べられ、装置保守のような不連続な事象は適用できない。
そこで、本発明は、装置保守によって装置状態が大きく変わる場合に、その装置状態に適合するモデルを短時間で導出する機能を有する加工装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本願発明の加工装置の主な特徴は以下の通りである。
(1)加工量予測重回帰式を用いて、被加工物の加工条件を算出する手段を具備してなる加工装置において、被加工物の加工条件であり被加工物の加工寸法を決定する第1因子を含む第1の説明因子と、加工条件と独立であって被加工物の加工寸法を決定する第2因子を含む第2の説明因子とを用いて、第1の加工量予測重回帰式を求める手段と、被加工物が複数ある場合において、複数の被加工物の一つに対する加工条件である第1因子の実績値と、第2因子の実績値とこのときの加工量実績値とを用いて、第1の加工量予測重回帰式を調整し第2の加工量予測重回帰式を算出する手段と、算出された第2の加工量予測重回帰式を用いて、被加工物の目標加工量を達成するための加工条件を算出する手段とを有し、算出された加工条件により被加工物の一つ以外の他の被加工物を加工することを特徴とする。
(2)あるいは、本願発明の加工装置の別の特徴は以下の通りである。
(1)加工量予測重回帰式を用いて、被加工物の加工条件を算出する手段を具備してなる加工装置において、被加工物の加工条件であり被加工物の加工寸法を決定する第1因子を含む第1の説明因子と、加工条件と独立であって被加工物の加工寸法を決定する第2因子を含む第2の説明因子とを用いて、第1の加工量予測重回帰式を求める手段と、被加工物が複数ある場合において、複数の被加工物の一つに対する加工条件である第1因子の実績値と、第2因子の実績値とこのときの加工量実績値とを用いて、第1の加工量予測重回帰式を調整し第2の加工量予測重回帰式を算出する手段と、算出された第2の加工量予測重回帰式を用いて、被加工物の目標加工量を達成するための加工条件を算出する手段とを有し、算出された加工条件により被加工物の一つ以外の他の被加工物を加工することを特徴とする。
(2)あるいは、本願発明の加工装置の別の特徴は以下の通りである。
加工量予測重回帰式を用いて、被加工物の加工条件を算出する手段を具備してなる加工装置において、加工条件を入力する入力手段と、被加工物を所望の形状に加工する加工手段と、加工を制御する制御手段と、加工前および加工後の被加工物形状に係るデータを含む情報を記憶する記憶手段とを備え、記憶装置により、加工量予測重回帰式と、被加工物の一つの加工実績データと、被加工物の目標加工量とを含む情報を記憶し、制御手段により、被加工物の一つの加工実績データを用いて予め設定された加工量予測重回帰式を調整し、調整した加工量予測重回帰式と被加工物の目標加工量とから加工条件を算出し、加工手段により、加工条件を用いて被加工物の一つ以外の他の被加工物を加工することを特徴とする。
(3)また、本願発明の加工条件算出方法の主な特徴は以下の通りである。
(3)また、本願発明の加工条件算出方法の主な特徴は以下の通りである。
加工量予測重回帰式を用いて、加工装置による被加工物の加工条件を算出する加工条件算出方法において、被加工物の一つの加工実績データを用いて予め設定された加工量予測重回帰式を調整するステップと、調整した加工量予測重回帰式と前記被加工物の目標加工量とから、被加工物の一つ以外の他の被加工物を加工する加工条件を算出するステップと、を有することを特徴とする。
すなわち、本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、加工装置保守後の加工実績データの処理条件と処理結果の取得手段と、加工量予測重回帰モデルを備え、実績データを用いて加工量予測重回帰モデルを調整し、加工対象の目標値を満足する加工条件を算出する加工装置およびその条件出し方法を提供する。
本発明によれば、装置保守後の装置状態に適合した加工量予測重回帰モデルを1サンプルの処理結果より導出可能であり、条件出し時間を著しく削減する効果がある。
以下に、実施例を、図面を用いて説明する。
本実施例では、加工装置の条件導出方法を、イオンミリング装置1を対象に磁気ヘッドの製造工程へ適用した例を説明する。なお、以下に示す符号は、数値等と符号の数字と混同を生じやすいと思われる個所は、括弧中に符号を付した。
図1は、本発明に係る加工装置の一例としてイオンミリング装置1の概要の例を示した図である。図1に示す断面構造のイオンミリング装置1を用いて、プラズマ生成室から引き出される200〜5000V程度のエネルギーを持つイオンビームを基板に照射し、該基板をスパッタすることで該基板の表面の微細加工を行う。イオンミリング装置1は、イオン生成室101と、イオン生成室101からイオンを引き出すグリッド電極102と、基板103の保持および冷却を行うホルダー104と、基板およびホルダーを収納する真空容器105と、真空容器内を真空にする真空ポンプ106と、真空容器の真空度を計測する真空計107から概略構成されている。イオン生成室101では、イオン生成室101に設けられているガス導入口108からアルゴンガス等の中性ガス109が導入され、高周波電源110より高周波が印加されてアルゴンガスがイオン化される。アルゴンイオンは、グリッド電極102により真空容器105内へ引き出され基板103に照射される。この時、ホルダー104のAA’(111)を含む面をBB'(112)のように角度θ(113)だけ傾斜させることにより、アルゴンイオンビーム115の基板103への入射角を変え、一定の時間アルゴンイオンを基板103に入射させることで、所望の基板表面の加工形状を得る。また、基板中心を通るCC’(114)を軸にホルダーを回転させることで基板表面をあらゆる方向から入射角θで均一に加工する。本イオンミリング装置1は、バス123を介して全体制御部116に接続されている。本イオンミリング装置1には、この他に中央演算処理装置(CPU)117、一次記憶装置118、二次記憶装置119、キーボード、マウス、ディスプレイ、プリンタ、ネットワークインターフェイスなどの入出力部122が備わっている。また、二次記憶装置119にはミリング加工量予測重回帰式をグリッド交換後の装置状態に適合するように調整する重回帰式調整プログラム120、調整した重回帰式を用いて条件を算出する条件算出プログラム121などが格納されている。これらのプログラムは、二次記憶装置119から一次記憶装置118に読み出され、CPU117で計算される。
図2は、磁気ヘッドの記録素子となる磁性膜の加工方法を示した図である。垂直磁気記録方式の磁気ヘッドにおいては、良好な磁気記録特性を得るために、図2(d)に示したような、磁気記録面に傾斜をつけた逆台形形状201が必要である。図2(d)に示すように、パターン上部の幅Lt(202)の方がパターン下部の幅Lb(203)より大きい逆台形形状とするために、図2(a)〜(c)に示した2段階のミリング加工を実施する。図2(a)は下地膜204の上に磁性膜205を成膜し、アルゴンイオンビーム115の磁性膜205への入射を妨げるマスクとなるポリイミドのパターン206を露光装置302によって形成した状態を示す。最初に入射角θ1(207)、ミリング時間T1(208)の垂直ミリング209で、磁性膜205を垂直に加工する。次に入射角θ2(211)、ミリング時間T2(212)の傾斜ミリング213で磁性膜205に傾斜をつける。このとき下地膜205の削り込み深さN(214)も磁気記録特性へ影響する重要な因子であり、パターン上部の幅Lt(202)、パターン下部の幅Lb(203)とともにミリング加工の目標寸法となる。ここで、Lt(202)、Lb(203)はマスク206の幅に依存する量であり、同じミリング条件で加工してもLt(202)、Lb(203)の出来栄えが異なってくる。そこでマスク寸法(例えば、250nm高さ地点のマスク幅L250(215))と出来栄え寸法との差分を取ったミリング加工量を加工目標値とする。上部ミリング加工量dLt、下部ミリング加工量dLbはそれぞれ、
のように表される。
図3は、グリッド交換を行った後の新しい装置状態で、上部ミリング加工量dLt、下部ミリング加工量dLb、削り込み深さN(214)が目標値を満足するミリング条件(θ1、T1、θ2、T2)を決定するためのシステム構成である。成膜装置301、露光装置302を用いて、図2(a)に示した構造を形成した1枚のウエハのマスク寸法を検査装置303で計測する。次に、暫定的に定めたミリング条件(θ10、T10、θ20、T20)で2段階のミリング加工を実施する。検査装置303でパターン上部の幅Lt(202)、パターン下部の幅Lb(203)、削り込み深さN(214)を計測する。マスク寸法L250(215)を用いて、上部ミリング加工量dLt、下部ミリング加工量dLbを(式1)、(式2)より得る。重回帰式の導出方法および重回帰式の調整方法について詳細は後述するが、重回帰式を
で表す。ここで、Yはミリング加工量であり、上部ミリング加工量dLt、下部ミリング加工量dLb、削り込み深さNに相当する。Xiは加工量Yの予測に使われる説明因子であり、予測対象によって異なるが、例えばミリング条件やマスク寸法、磁性膜厚D(216)である。1枚目のマスク寸法304、1枚目のミリング条件305、1枚目のミリング結果306を用いて、(式3)を
に調整する。(式4)は、ミリング条件Xiの偏回帰係数を調整して導出した式であるが、グリッド交換後の装置状態に適合させるための調整に適した係数は、加工量Yによって異なる。上部ミリング加工量dLt、下部ミリング加工量dLb、削り込み深さNのそれぞれに対して得られた調整後の予測重回帰式を用いて、目標加工量307を満足する条件を算出し、3つの目標加工量に共通した条件を適正条件308としてミリング装置309でミリングを実施する。
図4は、ミリング加工量予測重回帰式の導出方法を示すフローチャートである。本実施例では、ミリング加工量予測重回帰式の導出、および重回帰式調整因子の選定が重要であり、その方法について図4および図10のフローチャートを用いて説明する。必要十分な説明因子からなる予測重回帰式を得るために、変数減少法を用いた説明因子探索を実施した後、グリッド交換時に予測誤差最小となる重回帰式の調整因子の選定を実施する。変数減少法は説明因子候補と考えられる因子を全て用いてモデルを導出して、予測への寄与の小さい不要な説明因子を除いていく手法である。
先ず、図4に示すように、精度良い予測重回帰式を得るために、直交表を用いた実験計画法(DOE)に基づく実験を実施する(ステップ401)。
図5は、18枚のウエハを用いて、4つのミリング条件(θ1、T1、θ2、T2)を3水準で振る際に参照した直交表を示す。横軸501は、評価したい条件名称に相当し、縦軸502は横軸501に示した条件を3水準に設定して18種類に組み合わせた実験条件に相当する。条件算出に用いる重回帰式はなるべく広範なミリング条件範囲で成立することが望ましい。
図6は、ミリング条件に割り振った3水準である。3水準を組み合わせた18枚のミリング加工結果が、全て計測可能となる範囲で可能な限り広く設定した。
図7に実験結果を示す。18枚の実験において設定したミリング条件701、及びミリング後の測定結果702をまとめたものである。ミリング後の磁性膜201の加工寸法に対しては、上部寸法Lt(202)、下部寸法Lb(203)、削りこみ量N(214)を測定したが、ミリング結果に求める形状に応じて、磁性膜の側壁角度など他の因子を計測することも可能である。
図8に重回帰式を導出するための入力データを示す。
図8の入力データは、図7の実験データを用いて導出したもので、図4に示すように、これを用いてミリング加工量の予測重回帰式を作成する(ステップ402)。ミリング条件以外にミリング加工する磁性膜の膜厚D(216)、ミリングマスクのマスク寸法差を説明因子801として算出した。マスク寸法差L1000−L250は、マスク高さ1000nm地点のマスク幅L1000と、マスク高さ250nm地点のマスク幅L250との差分であり、ミリングマスクの張り出し量に相当する。イオンビームを磁性膜に入射させるミリング加工に影響があると考えられる物理量を説明因子として準備する。図8に示した上部ミリング加工量dLt802を目的変数とし、それ以外の項目を説明因子として重回帰式を作成する。
図8の入力データは、図7の実験データを用いて導出したもので、図4に示すように、これを用いてミリング加工量の予測重回帰式を作成する(ステップ402)。ミリング条件以外にミリング加工する磁性膜の膜厚D(216)、ミリングマスクのマスク寸法差を説明因子801として算出した。マスク寸法差L1000−L250は、マスク高さ1000nm地点のマスク幅L1000と、マスク高さ250nm地点のマスク幅L250との差分であり、ミリングマスクの張り出し量に相当する。イオンビームを磁性膜に入射させるミリング加工に影響があると考えられる物理量を説明因子として準備する。図8に示した上部ミリング加工量dLt802を目的変数とし、それ以外の項目を説明因子として重回帰式を作成する。
次に、図4に示すように、作成した重回帰式の予測誤差を算出する(ステップ403)。予測誤差は重回帰式導出には用いなかった未知のデータで評価する必要があり、交差検証法を用いる。すなわち18枚の実験データの1枚を除いて重回帰式を作成して、除いた1枚のデータで予測誤差を評価し、これを除く1枚を順次変えて18回実施する。予測誤差は、
の二乗平均平方根誤差で算出する。
次に、図4に示すように、重回帰式の偏回帰係数の有意性検定を実施して、説明因子の有意確率を算出する(ステップ404)。有意確率は偏回帰係数が0になる確率を示し、1に近いほど該当する説明因子の必要性が低いことを意味する。交差検証法に基づいて18回繰り返し算出した有意確率の平均値を求めて、重回帰式導出に用いた説明因子の有意確率とする。
次に、図4に示すように、有意確率が最も大きい説明因子を除く(ステップ405)。これは予測重回帰式に不要な説明因子を取り除く作業である。この一連の説明因子評価、削減手順を誤差最小となるまで実施する(ステップ406)。
図9に評価した説明因子901を示す。評価した説明因子は、垂直ミリング入射角θ1、垂直ミリング時間T1、傾斜ミリング入射角θ2、傾斜ミリング時間T2、磁性膜厚D、マスク寸法差L1000−L250、マスク寸法差L750−L250、マスク寸法差L500−L250、マスク寸法差L0−L250の9個である。
図10に説明因子の探索結果を示す。1回目の説明因子評価1001で有意確率が最も大きな説明因子1002は、マスク寸法差L0−L250(1003)であった。この時の有意確率は0.94(1005)である。順次、有意確率が大きな説明因子1002を除いていくことで、予測誤差1008が低減する。5回目の説明因子評価で有意確率が0.02(1006)であった垂直ミリング時間T1(1007)を除くと、予測誤差は1.5nm(1009)から1.8nm(1010)に悪化し、ここで予測誤差が最小となり重回帰式は、
のように決定する(図4に示すステップ407)。
図11に決定された重回帰式を対象に、調整因子を探索する手順を示す。まず、グリッド交換時の条件出しデータを取得する(ステップ1101)。
ここで、図12に条件出しデータの例を示す。異なる保守時期1201(1月〜3月)のミリング条件701(垂直ミリング入射角θ1、垂直ミリング時間T1、傾斜ミリング入射角θ2、傾斜ミリング時間T2)および加工結果702(上部寸法Lt、下部寸法Lb、削り込み量N)がまとめられたものである。
さらに、図13に、図12で示した条件出しデータより求めた調整因子探索用データを示す。調整因子探索用データは、(式6)に示した重回帰式の調整因子を探索するためのデータであり、説明因子801は垂直ミリング入射角θ1、垂直ミリング時間T1、傾斜ミリング入射角θ2、傾斜ミリング時間T2およびマスク寸法差L500−L250である。目的変数802は上部ミリング量dLtである。
次に、図11において、モデル調整因子を1つ選択する(ステップ1102)。基準とする最初の重回帰式を(式3)で表し、グリッド交換後の1枚のウエハのミリング実測値をY1、この時のミリング条件に対する(式3)の予測値をY1’とすると、(式3)の切片を調整した重回帰式は、
のように表される。また(式3)の傾きを調整した重回帰式は、
のように表される。(式8)では全ての説明因子の係数aiに等しい重み付けをして重回帰式が1枚目のウエハの実測値に合うように調整しているが、グリッド交換によって説明因子X1のミリング加工に対する影響が変化したと仮定した場合、調整後の重回帰式は、
のように表される。
どの調整方法が最も良くグリッド交換後の装置状態に重回帰式を調整できるか、順次探索する。本実施例ではモデル調整因子は前述のとおり、重回帰式の切片、傾き、各説明因子(垂直ミリング入射角θ1、垂直ミリング時間T1、傾斜ミリング入射角θ2、傾斜ミリング時間T2およびマスク寸法差L500−L250)の係数の7つである。
選択した調整因子を用いてモデルを調整する(ステップ1103)。切片調整であれば(式6)を用い、傾き調整であれば(式7)を用い、着目した説明因子の係数調整であれば(式8)を用いて、グリッド交換後1枚目の処理条件および処理結果から重回帰式を調整する。
調整した重回帰式を用いて2枚目以降のウエハの上部ミリング量dLt予測値を算出し、予測誤差を算出する(ステップ1104)。予測誤差は(式5)を用いて算出する。全ての調整因子でモデル調整と予測誤差算出を繰り返し(ステップ1105)、予測誤差最小となる調整因子を選択する(ステップ1106)。
図14に調整因子の評価結果を示す。傾斜ミリング時間T2の係数を調整した場合の予測誤差1401が最小となった。
図15に上部ミリング加工量dLt予測重回帰式の予測結果を示す。図15(a)は調整前の重回帰式の予測結果であり、3回の保守後の上部ミリング量dLt予測結果をそれぞれ、1回目を●1501、2回目を×1502、3回目を○1503で示した。保守後の1枚目の結果を用いて重回帰式を調整することで、図4(b)に示すとおり3回の保守後の予測値と実測値とがほぼ一致する結果となった。
本実施例によれば、図2で示した逆台形形状201を得るための条件出しが1枚のウエハ加工で済み、条件出し時間を大幅に削減できる。
本実施例では、ミリング装置条件出しツールについて説明する。
図16は、ミリング装置条件出しツールのグラフィカルユーザインターフェースの一例であり、重回帰式調整機能を有するものである。ミリング加工条件として、ミリングパラメータ垂直ミリング入射角θ1(1601)、垂直ミリング時間T1(1602)、傾斜ミリング入射角θ2(1603)、傾斜ミリング時間T2(1604)の実績値1605を入力する。また重回帰式に含まれる説明因子の中で、既に入力したミリング加工条件以外の説明因子の値を入力する。本実施例では、マスク高さ150nmのマスク幅からマスク高さ250nmのマスク幅を差し引いたマスク寸法差L150−L250(1606)、マスク高さ500nmのマスク幅からマスク高さ250nmのマスク幅を差し引いたマスク寸法差L500−L250(1607)、マスク高さ750nmのマスク幅からマスク高さ250nmのマスク幅を差し引いたマスク寸法差L750−L250(1608)をそれぞれ入力する1609。次に、ミリング加工実績値として、上部ミリング加工量dLt(1610)、下部ミリング加工量dLb(1611)、掘り込み深さN(1612)をそれぞれ入力する1613。重回帰式調整ボタン1614をクリックすることで、図16に示した処理が実行される。
図16は、ミリング装置条件出しツールのグラフィカルユーザインターフェースの一例であり、重回帰式調整機能を有するものである。ミリング加工条件として、ミリングパラメータ垂直ミリング入射角θ1(1601)、垂直ミリング時間T1(1602)、傾斜ミリング入射角θ2(1603)、傾斜ミリング時間T2(1604)の実績値1605を入力する。また重回帰式に含まれる説明因子の中で、既に入力したミリング加工条件以外の説明因子の値を入力する。本実施例では、マスク高さ150nmのマスク幅からマスク高さ250nmのマスク幅を差し引いたマスク寸法差L150−L250(1606)、マスク高さ500nmのマスク幅からマスク高さ250nmのマスク幅を差し引いたマスク寸法差L500−L250(1607)、マスク高さ750nmのマスク幅からマスク高さ250nmのマスク幅を差し引いたマスク寸法差L750−L250(1608)をそれぞれ入力する1609。次に、ミリング加工実績値として、上部ミリング加工量dLt(1610)、下部ミリング加工量dLb(1611)、掘り込み深さN(1612)をそれぞれ入力する1613。重回帰式調整ボタン1614をクリックすることで、図16に示した処理が実行される。
すなわち、図18において、図22に示すミリング条件出し装置2201の制御・演算装置(CPU)117は入力装置2205を介して出力装置2206上に入力されたミリング加工条件を読み込み(ステップ1801)、説明因子の値を読み込み(ステップ1802)、ミリング加工結果を読み込む(ステップ1803)。これらの値を用いて、予め導出され二次記憶装置119に保存された上部ミリング加工量dLt予測重回帰式(式10)、下部ミリング加工量dLb予測重回帰式(式11)、掘り込み深さN予測重回帰式(式12)を調整する(ステップ1804)。
調整に使われる因子は、上部ミリング加工量dLt予測重回帰式に対しては傾斜ミリング時間の係数、下部ミリング加工量dLb予測重回帰式に対しては傾斜ミリング時間の係数、掘り込み深さN予測重回帰式に対しては垂直ミリング入射角の係数が予め選定され、二次記憶装置119に保存されたプログラム上に記載されている。
図17に、図16に示したグラフィカルユーザインターフェースを生成するためのマスターファイルを示す。マスターファイルには、ミリング加工条件として入力するミリングパラメータ数1701およびその名称1702、重回帰式に用いる説明因子として入力する説明因子の数1703およびその名称1704、加工結果として入力する加工形状の因子数1705およびその名称1706が記載されている。
図19は、ミリング装置条件出しツールのグラフィカルユーザインターフェースの一例であり、条件算出機能を有するものである。本グラフィカルユーザインターフェースは、図17に示したミリング加工条件として入力するミリングパラメータ数1701およびその名称1702、重回帰式に用いる説明因子として入力する説明因子の数1703およびその名称1704、加工結果として入力する加工形状の因子数1705およびその名称1706、を記載したマスターファイル1707を読み込む事により生成される。ミリング条件探索範囲として、垂直ミリング入射角θ1(1601)の探索最大値1902と探索最小値1903、垂直ミリング時間T1(1602)の探索最大値1902と探索最小値1903、傾斜ミリング入射角θ2(1603)の探索最大値1902と探索最小値1903、傾斜ミリング時間T2(1603)の探索最大値1902と探索最小値1903、をそれぞれ入力する。
次に、ミリング加工量予測重回帰式(数10)(数11)(数12)の説明因子の中で、ミリング条件以外の説明因子の値を入力する。ここでは、マスク寸法差L150−L250(1606)、マスク寸法差L500−L250(1607)、マスク寸法差L750−L250(1608)の値1904をそれぞれ入力する。最後にミリング加工量目標値として、上部ミリング加工量dLt目標値1610、下部ミリング加工量dLb目標値1611、掘り込み深さN目標値1612の値1905をそれぞれ入力する。条件算出ボタン1906をクリックすることにより、図20に示した処理が実行される。
図20は、条件算出処理フローである。制御・演算装置(CPU)117がミリング条件探索範囲を読み込み(ステップ2001)、説明因子の値を読み込む(ステップ2002)。垂直ミリング入射角θ1、垂直ミリング時間T1、傾斜ミリング入射角θ2、傾斜ミリング時間T2をそれぞれ条件探索範囲の最小値とする(ステップ2003)。前述した重回帰式調整機能によって予め二次記憶装置119に保存されている調整済みのミリング加工量予測重回帰式を用いて、上部ミリング加工量dLt、下部ミリング加工量dLb、掘り込み深さNの予測値をそれぞれ算出する(ステップ2004)。そしてミリング条件および予測結果を一次記憶装置118上に保存する(ステップ2005)。傾斜ミリング時間T2、傾斜ミリング入射角θ2、垂直ミリング時間T1、垂直ミリング入射角θ1について0.1ずつ値を増やしていき、それぞれがミリング条件探索範囲の最大値となるまで、全ての組み合わせで上部ミリング加工量dLt、下部ミリング加工量dLb、掘り込み深さNを予測して、保存する(ステップ2005〜2013)。ミリング加工目標値を読み込み(ステップ2014)、上部ミリング加工量dLt、下部ミリング加工量dLb、掘り込み深さNが目標値を満足するミリング条件を絞込み、提示する(ステップ2015)。
図21に条件出し結果を示す。目標として与えた上部ミリング加工量dLt:41.6nm、下部ミリング加工量dLb:54nm、削り込み深さN:14nmに対して、加工量予測値2101が、上部ミリング加工量dLt:41.5nm、下部ミリング加工量dLb:54.1nm、削り込み深さN:14.2nmとなるミリング加工条件2102を得ることができた。本発明によるミリング条件算出装置によって、適正なミリング条件を算出することが可能となった。
図22は、本発明のミリング条件算出装置のハードウエア構成を示したブロック図の一例である。ミリング条件算出装置2201は、ローカルエリアネットワーク2202を介してミリング装置309に接続されている。ミリング条件算出装置2201は通信制御装置2204、制御・演算装置(CPU)117、一次記憶装置118、二次記憶装置119、キーボードやマウスなどの入力装置2205、ディスプレイやプリンタなどの出力装置2206を備えている。実績管理データベース2203はミリング条件やミリング加工結果を、ローカルエリアネットワーク2202を介して収集管理している。ミリング条件やミリング加工結果からなる実績データはローカルエリアネットワーク2202、通信制御装置2204を介してミリング条件算出装置2201に入力される。入力されたミリング条件やミリング加工結果は、二次記憶装置119に格納される。図18、図20で示した重回帰式調整プログラム120、条件算出プログラム121は、予め二次記憶装置119に格納され、実行時には一次記憶装置118に読み込まれて実行される。
以上、ハードディスクドライブの記録素子を形成する工程で、本発明を実施した一例を説明した。本発明はハードディスクドライブの記録素子のみならず、ミリング装置を用いて加工するハードディスクドライブの再生素子や、エッチング装置を用いて加工する半導体素子、あるいはMEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)、分析装置の試料の薄膜加工などにも活用できる。すなわち、被加工物が複数あり、それぞれを枚葉処理する加工プロセスに適用が可能であり、特に、加工装置のメンテナンスなどの装置状態の変動に対して加工プロセスの条件が大きく変動する場合に有効である。例えば、半導体装置の製造方法において、被加工物である酸化膜や窒化物をフォトマスクを用いて、ドライエッチングする場合に、予めエッチング条件,フォトマスクの設計寸法などを説明因子として加工量予測重回帰式を導出しておき、その式をメンテナンス後の1枚目の加工実績を用いて調整し、2枚目以降を加工する場合のエッチング条件算出に適用すると有効である。上記ドライエッチングは、ドライエッチング装置のメンテナンス頻度が高く,装置状態の変化により装置パラメータと被加工物の加工量との関係が大きく変化するからである。
上記実施例1では、被加工物の形状が逆台形(逆テーパ)の例を用いたが、順テーパでも、あるいはテーパがない場合にも適用が可能である。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウエアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウエアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
1…イオンミリング装置、101…イオン生成室、102…グリッド電極、103…基板、104…ホルダー、105…真空容器、106…真空ポンプ、107…真空計、108…ガス導入口、109…中性ガス、110…高周波電源、113…角度θ、115…アルゴンイオンビーム、116…全体制御部、117…CPU、118…一次記憶装置、119…二次記憶装置、120…重回帰式調整プログラム、121…条件算出プログラム、122…入出力部、123…バス、124…ミリングユニット、201…逆台形形状、202…パターン上部の幅Lt、203…パターン下部の幅Lb、204…下地膜、205…磁性膜、206…マスク(ポリイミドのパターン)、207…垂直ミリング入射角θ1、208…垂直ミリング時間T1、209…垂直ミリング、211…傾斜ミリング入射角θ2、212…傾斜ミリング時間T2、213…傾斜ミリング、214…削り込み深さN、215…250nm高さ地点のマスク幅L250、216…磁性膜厚D、217…500nm高さ地点のマスク幅L500、301…成膜装置、302…露光装置、303…検査装置、304…1枚目のマスク寸法、305…1枚目のミリング条件、306…1枚目のミリング結果、307…目標加工量、308…適正条件、309…ミリング装置、2201…ミリング条件算出装置、2202…ローカルエリアネットワーク、2204…通信制御装置、2205…入力装置、2206…出力装置。
Claims (8)
- 加工量予測重回帰式を用いて、被加工物の加工条件を算出する手段を具備してなる加工装置において、
前記被加工物の加工条件であり前記被加工物の加工寸法を決定する第1因子を含む第1の説明因子と、
前記加工条件と独立であって前記被加工物の加工寸法を決定する第2因子を含む第2の説明因子とを用いて、第1の加工量予測重回帰式を求める手段と、
前記被加工物が複数ある場合において、
前記複数の被加工物の一つに対する加工条件である第1因子の実績値と、前記第2因子の実績値と加工量実績値とを用いて、前記第1の加工量予測重回帰式を調整し第2の加工量予測重回帰式を算出する手段と、
算出された前記第2の加工量予測重回帰式を用いて、前記被加工物の目標加工量を達成するための加工条件を算出する手段と、を有し、
前記算出された加工条件により前記被加工物の一つ以外の他の被加工物を加工することを特徴とする加工装置。 - 前記第2因子は、前記被加工物の加工寸法を決定する加工用マスクのマスク寸法であることを特徴とする請求項1記載の加工装置。
- 前記加工装置が、ミリング装置、あるいはエッチング装置であることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
- 前記第1の加工量予測重回帰式を調整する方法が、モデルの切片調整か、傾き調整か、着目した1つの説明因子の偏回帰係数の調整か、のいずれか1つの方法で行われることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
- 前記第2の加工量予測重回帰式の説明因子探索が、変数減少法を用いて行われることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
- 加工量予測重回帰式を用いて、被加工物の加工条件を算出する手段を具備してなる加工装置において、
前記加工条件を入力する入力手段と、
前記被加工物を所望の形状に加工する加工手段と、
前記加工を制御する制御手段と、
加工前および加工後の被加工物形状に係るデータを含む情報を記憶する記憶手段とを備え、
前記記憶装置により、加工量予測重回帰式と、前記被加工物の一つの加工実績データと、前記被加工物の目標加工量とを含む情報を記憶し、
前記制御手段により、前記被加工物の一つの加工実績データを用いて予め設定された前記加工量予測重回帰式を調整し、調整した前記加工量予測重回帰式と前記被加工物の目標加工量とから加工条件を算出し、
前記加工手段により、前記加工条件を用いて前記被加工物の一つ以外の他の被加工物を加工することを特徴とする加工装置。 - 加工量予測重回帰式を用いて、加工装置による被加工物の加工条件を算出する加工条件算出方法において、
前記被加工物の一つの加工実績データを用いて予め設定された加工量予測重回帰式を調整するステップと、
調整した前記加工量予測重回帰式と前記被加工物の目標加工量とから、前記被加工物の一つ以外の他の被加工物を加工する加工条件を算出するステップと、を有することを特徴とする加工条件算出方法。 - 前記加工量予測重回帰式を導出するステップは、
設定された加工量予測重回帰式の予測誤差を算出する第1ステップと、
説明因子の有意確率を算出する第2ステップと、
加工量予測重回帰式に不要な説明因子を取り除く第3ステップと、を含み、
前記第1乃至第3のステップを誤差最小となるまで実施することを特徴とする請求項7記載の加工条件算出方法。
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