JP2012201913A - 基材表面に耐食性合金皮膜を形成させる方法 - Google Patents

基材表面に耐食性合金皮膜を形成させる方法 Download PDF

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Abstract

【課題】めっき法以外の方法によって、スズと鉄とタングステンからなる耐食性の三元合金皮膜を基材上に形成させる方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、基材表面にスズ、鉄及びタングステンからなる耐食性合金皮膜を形成させる方法であって、
スズ、鉄及びタングステンの金属粉末を混合し、圧縮成形することによって、スパッタリングターゲットを形成する工程Aと、
真空チャンバー内に前記基材と前記スパッタリングターゲットとを対向させ、スパッタリング法によってスズ、鉄及びタングステンからなる合金皮膜を形成する工程Bとを有し、
前記金属粉末は、タングステンの質量を1とした場合、スズの質量は5以上7以下であり、鉄の質量は2以上4以下である、ことを特徴とする方法に関する。耐食性合金皮膜の結晶構造は、アモルファスである。
【選択図】図6

Description

本発明は、金属をはじめとする基材の表面に、スズ、鉄及びタングステンからなる三元合金からなる耐食性に優れた合金皮膜を、スパッタリング法によって形成させる方法に関する。
金属材料の防食方法としては、めっき法が広く利用されている。例えば、自動車又は家電製品の鉄鋼材料のめっきには、犠牲防食性に優れた亜鉛めっきが利用されている(非特許文献1)。亜鉛めっきにおいては、亜鉛が鉄より電気化学的に卑な金属であるため、亜鉛が優先的に溶出する。また、亜鉛めっきでは、めっき皮膜表面の耐食性改善のため、亜鉛めっき後クロメート処理が実施されることが多いが、クロメート処理がなされた鉄鋼製品が屋外に放置された場合、酸性雨によってめっき皮膜表面から六価クロムが溶出するおそれがある。そのため、近年では、環境意識の高まりから、クロムのような有害物質を使用しない、又は使用量を軽減した環境負荷の少ない表面処理技術が注目されている。
例えば、非特許文献2は、無害で安価な鉄を利用したスズ及び鉄からなる二元合金皮膜をめっき法によって形成させる方法を開示している。このスズ及び鉄からなる二元合金皮膜は、環境負荷が小さく、耐食性も高いが、めっき皮膜の電析時に発生する水素ガスが金属基材に取り込まれることによって、めっき皮膜の内部応力が高くなる問題があった。
めっき皮膜の電析時に発生する水素ガスが金属基材に取り込まれにくくするための手段として、特許文献1は、スズと鉄とタングステン等からなる三元合金皮膜を金属基材表面に形成させる技術を開示している。
特開2006−274346号公報
鈴木 勇、「実務表面技術」Vol.35(1988)P.466-473 水谷芳樹、「表面技術」Vol.37 No.6(1986)P.313-315
スズと鉄とタングステンからなる三元合金皮膜の場合、タングステン量を増加させれば、スズ及び鉄からなる二元合金皮膜よりも耐食性及び基材との密着性が向上することが確認されている。しかし、めっき法によってスズと鉄とタングステンからなる三元合金皮膜を基材表面に形成させる場合、各元素が析出する速度が異なるために、合金中のタングステン量を2質量%以上含有させることが困難であることが確認された。
このため、スズと鉄とタングステンからなる三元合金皮膜において、タングステン量を増加させるための新たな技術が求められていた。
本発明者は、めっき法以外の方法によって、スズと鉄とタングステンからなる耐食性の三元合金皮膜を形成する方法について検討した。その結果、金属薄膜を基材上に形成させる方法として周知であるスパッタリング法において、スズ、鉄及びタングステンの金属粉末を混合及び圧縮して形成したスパッタリングターゲットを使用すれば、めっき法よりもタングステン量を大幅に増加させ、かつ、基材表面との密着性も維持し得ることを見出し、本発明が完成されるに至った。
具体的に、本発明は、
基材表面にスズ、鉄及びタングステンからなる耐食性合金皮膜を形成させる方法であって、
スズ、鉄及びタングステンからなる金属粉末を圧縮成形することによって、スパッタリングターゲットを形成する工程Aと、
真空チャンバー内に前記基材と前記スパッタリングターゲットとを対向させ、スパッタリング法によってスズ、鉄及びタングステンからなる合金皮膜を形成する工程Bとを有し、
前記金属粉末は、タングステンの質量を1とした場合、スズの質量は5以上7以下であり、鉄の質量は2以上4以下である、ことを特徴とする方法に関する。
まず、本発明者は、スズからなるスパッタリングターゲット、鉄からなるスパッタリングターゲット及びタングステンからなるスパッタリングターゲットを同時に使用して、スパッタリング法によって基材表面に合金薄膜を形成することを試みた。しかし、このような方法では、均一な合金薄膜を形成することは不可能であった。
そこで、本発明者は、スズ、鉄及びタングステンの金属粉末を混合及び圧縮成形し、この成型物をスパッタリングターゲットとして使用したところ、基材表面に均一、かつ、基材表面との密着性の高い合金薄膜を形成することが可能であった。
スパッタリングターゲットを形成するために使用される金属粉末は、タングステンの質量を1とした場合、スズの質量は5以上7以下であり、鉄の質量は2以上4以下である。タングステンの質量を単純に多くするだけでは、スズ、鉄及びタングステンの金属粉末を混合及び圧縮しても、スパッタリングターゲットとして成形させることはできない。3種類の金属粉末を圧縮成型するためには、3種類の金属粉末を適切な質量比で混合する必要がある。
工程Bにおけるスパッタリング法は、アルゴンガス中の出力25W以上100W以下の直流スパッタリング法であることが好ましい。
スパッタリングの出力を大きくすると、基材表面に形成される合金薄膜中のスズ量が増大し、鉄量及びタングステン量が減少する傾向が認められたためである。
前記耐食性合金皮膜は、アモルファス構造であることが好ましい。なお、耐食性合金皮膜の厚さは、1μm以上20μm以下であることが好ましい。
本発明によれば、有害な廃液を発生させることなく、基材表面にタングステン量が高く、耐食性に優れる均一な合金皮膜を形成させることが可能となる。
スパッタリング出力(横軸)と、三元合金皮膜中のスズ、鉄及びタングステンの含有量(縦軸)との関係をプロットしたグラフを示す。 実施例1,2及び比較例1の三元合金皮膜、及び比較例3の二元合金薄膜の薄膜X線回析グラフを示す。 実施例1及び3の三元合金皮膜の薄膜X線回析グラフを示す。 実施例1及び比較例2の三元合金皮膜の薄膜X線回析グラフを示す。 (a)は、実施例1及び3の三元合金皮膜の走査型電子顕微鏡写真を示す。実施例1及び3の三元合金皮膜の原子間力顕微鏡画像を示す。 耐食性試験(0.1N硫酸)における電位と電流密度との関係をプロットしたグラフを示す。 実施例1の三元合金薄膜を形成させた基板の、耐食性試験前後の走査型電子顕微鏡写真を示す。(a)は耐食性試験前、(b)は耐食性試験後を示す。 実施例3の三元合金薄膜を形成させた基板の、耐食性試験前後の走査型電子顕微鏡写真を示す。(a)は耐食性試験前、(b)は耐食性試験後を示す。 実施例3及び4について、耐食性試験(0.1N塩酸)における電位と電流密度との関係をプロットしたグラフを示す。
本発明の実施の形態について、適宜図面を参酌しながら説明する。なお、本発明は、以下の記載に限定されない。
(工程A)
本発明の方法では、スズ、鉄及びタングステンからなる金属粉末を圧縮成形することによって、スパッタリングターゲットを形成させる。金属粉末は、タングステンの質量を1とした場合、スズの質量は5以上7以下であり、鉄の質量は2以上4以下であるように、それぞれの金属の粉末を混合することによって調製し得る。スズ及び鉄の合金に、耐食性向上のためにタングステンを追加する場合、タングステン量を多くするだけでは、タングステンが硬い金属であるため、3種類の金属粉末を混合して圧縮しても、スパッタリングターゲットとして成形させることはできない。混合した金属粉末を圧縮成型させ、かつ、合金薄膜に十分な耐食性を与えるためには、混合した金属粉末中の質量は、スズと鉄とタングステンとを特定の質量比で混合しなければならない。
スズ、鉄及びタングステンは、例えば、粒径0.6 μm〜100 μmの粉末を混合し、プレス機を用いて圧縮成型されることによって、スパッタリングターゲットとして成形させ得る。圧縮形成される金属粉末は、24g〜60gとすることが好ましい。
(工程B)
工程Aで成形されたスパッタリングターゲットは、スパッタリング装置の真空チャンバー内に、鋼材のような基材と対向するようにセットされる。真空チャンバー内を減圧し、スパッタリングを開始する。
スパッタリングは、不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましいが、皮膜の酸化の観点からは、アルゴンガス雰囲気下で行われることが好ましい。アルゴンガス雰囲気下の場合、ガス圧は0.5Pa~10Paに調整されることが好ましい。
スパッタリングは、直流スパッタリングが好ましい。アルゴンガス雰囲気下では、スパッタリングの出力は、25W以上100W以下に調整されることが好ましい。
スパッタリングによって、基材表面にスズ、鉄及びタングステンの合金皮膜が形成される。合金皮膜の膜厚は、スパッタリング出力及び時間によって調整し得る。合金皮膜中のスズ、鉄及びタングステンの質量比は、スパッタリングターゲット中のスズ、鉄及びタングステンの質量比とは、必ずしも一致しない。
<1.スパッタリング出力による三元合金皮膜の組成変化>
スズ粉末(平均粒径38μm、高純度化学研究所社製)、鉄粉末(平均粒径5μm、高純度化学研究所社製)、及びタングステン粉末(平均粒径0.9μm、高純度化学研究所社製)を、質量比50:30:20の割合で混合した。混合した金属粉末50gは、100トンプレス機によって、直径2インチ、厚さ1.5mmの円盤状のスパッタリングターゲットへと圧縮成形された。
当該スパッタリングターゲットは、スパッタリング装置(キャノンアネルバ社製、E-200S)の減圧チャンバーにセットされた。減圧チャンバーには、基材となるシリコン基板(フルウチ化学社製、n型、面方位(100)、厚さ525μm)も、スパッタリングターゲットに対向するようにセットされた。その後、アルゴンガス0.5 Paの雰囲気下、出力を25W〜100Wに変化させながら直流スパッタリングが行われた。スパッタリング時間は、150分間とした。
スパッタリング終了後、シリコン基板上に形成された三元合金皮膜中のスズ、鉄及びタングステンの含有量が、蛍光X線分析によって分析された。
図1は、スパッタリング出力(横軸)と、三元合金皮膜中のスズ、鉄及びタングステンの含有量(縦軸)との関係をプロットしたグラフを示す。出力25Wの場合には、タングステン含有量は22質量%であった。出力が増加するに従って、タングステンの含有量が減少し、出力100Wの場合には、タングステン含有量は7質量%となった。出力が増加すると、三元合金皮膜中の鉄含有量も減少し、スズ含有量のみ増加した。これは、スパッタリング出力が増加して温度が上昇するに従って、最も融点の低いスズの揮散量が増加することが原因と推測された。
<2.スパッタリングターゲットの組成及び三元合金皮膜の組成>
[実施例1]
上記と同じスズ粉末、鉄粉末及びタングステン粉末を、質量比60:30:10の割合で混合した。混合した金属粉末50gは、上記と同様、100トンプレス機を用いて、スパッタリングターゲットへと圧縮成形された。当該スパッタリングターゲットを用いて、上記と同様にして、スパッタリング出力25Wでシリコン基板上に三元合金皮膜(厚さ約1μm)が形成された。
[実施例2]
上記と同じスズ粉末、鉄粉末及びタングステン粉末を、質量比50:30:20の割合で混合する以外、実施例1と同様の操作によって、シリコン基板上に三元合金皮膜(厚さ約1μm)が形成された。
[比較例1]
上記と同じスズ粉末、鉄粉末及びタングステン粉末を、質量比60:38:2の割合で混合する以外、実施例1と同様の操作によって、シリコン基板上に三元合金皮膜(厚さ約1μm)が形成された。
[比較例2]
スパッタリング出力を100Wとする以外、実施例1と同様の操作によって、シリコン基板上に三元合金皮膜(厚さ約1μm)が形成された。
[比較例3]
上記と同じスズ粉末及び鉄粉末を、質量比60:40の割合で混合する以外、実施例1と同様の操作によって、シリコン基板上に二元合金皮膜(厚さ約1μm)が形成された。
表1は、スパッタリングターゲット中の各金属の含有量(質量%)と、シリコン基板上に形成された合金皮膜中の各金属の含有量(質量%)とを示す。
スパッタリングターゲット中のタングステン含有量が多い程、三元合金皮膜中のタングステン含有量も多くなった。実施例1及び比較例2は、スパッタリングターゲットが同じであるが、スパッタリング出力の大きい実施例1は、比較例2よりもスズ及びタングステン含有量が減少した。
<3.三元合金皮膜の結晶構造>
実施例1,2、及び比較例1及び3において得られた三元合金皮膜について、薄膜X線回析測定法によって、結晶構造が確認された。比較例2において得られた二元合金皮膜についても、同様にして結晶構造が確認された。
X線回析装置には、Rigaku社製のSmart Laboが用いられた。薄膜X線回析測定は、管電流200mA、管電圧45kV、入射X線=CuのKα線という条件下、斜入射X線回折によって行われた。X線の入射角度は0.5°、2θの走査角度は20°〜70°、走査方法はステップスキャンで0.04°刻みで2秒間保持とした。この測定方法では、浅いX線入射角度により皮膜だけの結晶構造を測定することができる。
図2は、実施例1,2及び比較例1の三元合金皮膜、及び比較例3の二元合金薄膜の薄膜X線回析グラフを示す。いずれの合金皮膜も、32°及び42°付近にブロードなピークが確認された。実施例2の三元合金皮膜のみ、42°付近のピークが32°付近のピークよりも大きく、他の合金皮膜とはピーク強度比が逆となったが、これは合金皮膜中のスズ含有量が少ないためであると推察された。
[実施例3]
シリコン基板の代わりに、同じ寸法の鉄板(SPCC SA、((株)山本鍍金試験器製、ハルセル陰極板B-60-P01))を基材として使用する以外、実施例1と同様にして、鉄基板上に三元合金皮膜(厚さ約1μm)が形成された。
図3は、実施例1及び3の三元合金皮膜の薄膜X線回析グラフを示す。鉄基板を使用した実施例3の三元合金薄膜も、シリコン基板を使用した実施例1の三元合金薄膜と同様に、32°及び42°付近にブロードなピークが確認された。このように、基板の材質の違いによる皮膜の結晶構造の違いは確認されなかった。
図4は、実施例1及び比較例2の三元合金皮膜の薄膜X線回析グラフを示す。比較例2のグラフには、図中「●」で示されるスズに由来するピークが複数確認された。しかし、同じスパッタリングターゲットが使用されているにも拘わらず、実施例1のグラフには、スズに由来するピークは確認されなかった。これは、実施例1の合金薄膜は、アモルファス構造になっているためであると推察された。
このように、スパッタリング出力によって、三元合金薄膜の結晶構造が変化することが確認された。本発明の方法では、スパッタリング出力が調整されていることにより、三元合金皮膜がアモルファス構造を有するために、三次元合金皮膜が耐食性に優れていると推察された。
<4.三元合金皮膜の表面形状>
図5(a)は、実施例1及び3の三元合金皮膜の走査型電子顕微鏡写真を示す。基材であるシリコン基板の表面は、鉄基板の表面と比較すると平滑である。このため、同じスパッタリング条件で三元合金皮膜を形成させても、実施例1の三元合金皮膜は、実施例4の三元合金皮膜よりも平滑であった。
図5(b)は、実施例1及び3の三元合金皮膜の原子間力顕微鏡画像を示す。実施例1の三元合金皮膜のRMSは0.6nmであり、実施例3の三元合金皮膜のRMSは12nmであった。ただし、鉄基板の表面を、エッチング剤を用いて下地処理等することによって平滑化したような場合には、下地処理しない鉄基板を基材として使用する場合よりも、同じスパッタリング条件でより平滑な三元合金皮膜が得られる。
<5.三元合金皮膜の耐食性試験>
[比較例4]
スズ:鉄:タングステン=0.05M:0.05M:0.1Mとなるように、硫酸第一スズ、硫酸第一鉄、及びタングステン酸ナトリウムが秤取された。さらにグルコン酸ナトリウム、界面活性剤であるポリエチレングリコールが添加され、めっき浴が作製された。アノードにスズ板、カソードに銅板を用いて、液温25℃、pH6、電流密度4A/dm2という条件で、めっき皮膜(厚さ約10μm)が銅基板上に作製された。この比較例4の三元合金皮膜のスズ、鉄及びタングステンの質量比は、それぞれ70.0、27.9、2.1であった。
(1)実施例1及び2で得られた三元合金皮膜を形成させたシリコン基板;(2)比較例2及び4で得られた三元合金皮膜を形成させたシリコン基板及び銅基板;(3)実施例3で使用されたステンレス鋼(SUS304);(4)(3)と同じ寸法の鉄板:を0.1N硫酸に浸漬した。それぞれの基板は、アノードとして直流電圧を印加され、各アノードについて電流密度の変化が測定された。電流密度の測定は、北斗電工社製HZ-1ACを使用し、測定面積0.785cm2、照合電極AgCl、測定温度30℃、走査電位:自然電位〜500mV、掃引速度1mV/secという条件で行われた。
図6は、耐食性試験(0.1N硫酸)における電位と電流密度との関係をプロットしたグラフを示す。電位をかけ始めると、比較例4のアノードは、鉄板と同程度で電流密度が上昇したことから、比較例4の三元合金薄膜には耐食性が認められなかった。比較例2のアノードは、200mV以上の電位で電流密度が急激に上昇した。一方、実施例1及び2のアノードは、-100mV以上の電位でも電流密度の上昇が認められず、耐食性に優れていた。特に、実施例1のアノードは、SUS304よりも耐食性に優れることが確認された。
図7は、実施例1の三元合金薄膜を形成させた基板の、耐食性試験前後の走査型電子顕微鏡写真を示す。図7(a)は耐食性試験前、図7(b)は耐食性試験後の状態を示す。耐食性試験の前後で、三元合金薄膜の剥離は認められなかった。
図6は、基材がシリコン基板である実施例及び比較例のデータであるが、同じ合金薄膜を実施例3と同じ鉄基材(鉄板)上に形成させた場合は、三元合金皮膜の耐食性は、シリコン基板を使用したアノードと比較して劣っていた。
図8は、実施例3の三元合金薄膜を形成させた基板の、耐食性試験前後の走査型電子顕微鏡写真を示す。図8(a)は耐食性試験前、図8(b)は耐食性試験後の状態を示す。耐食性試験の前でも、図7(a)に示される実施例1の三元合金薄膜と比較すると、図8(a)から実施例3の三元合金薄膜表面は凹凸が大きいことが確認された。図8(b)からは、耐食性試験後には、三元合金薄膜の一部が剥離していることが確認された。
これは、鉄基材表面に掲載される三元合金薄膜の表面の凹凸が大きいために、三元合金皮膜の一部に欠陥が存在し、その欠陥から0.1N硫酸が皮膜内部に侵入するためでと推察された。
しかし、鉄基板を使用する場合であっても、スパッタリング時間を延長し、三元合金皮膜の厚みを10μm以上とすれば、表面の凹凸がなくなり、0.1N硫酸に浸漬して直流電圧を印加しても、剥離が起こりにくくなり、耐食性が向上することが確認された。同様に、スパッタリング前に、鉄基材をエッチング剤で下処理して表面を平滑化させることによっても、三元合金薄膜表面の凹凸がなくなることも確認された。
[実施例4]
厚さ約10μmの三元合金皮膜を形成させる以外、実施例3と同様にして、鉄基板上に三元合金皮膜が形成された。
実施例3及び4で三元合金皮膜が形成された鉄基板を0.1N塩酸に浸漬した。それぞれの基板は、アノードとして直流電圧が印加され、各アノードについて電流密度の変化を測定された。電流密度の測定は、北斗電工社製HZ-1ACを使用し、測定面積0.785cm2、照合電極AgCl、測定温度30℃、走査電位:自然電位〜500mV、掃引速度1mV/secという条件で行われた。
図9は、耐食性試験(0.1N塩酸)における電位と電流密度との関係をプロットしたグラフを示す。三元合金皮膜の厚みが約10μmである実施例4の場合、厚みが約1μmである実施例3と比較して、-150mV〜+100mV付近の電位において電流密度が低下し、三元合金薄膜の耐食性が向上したことが確認された。
本発明の基材表面に耐食性合金皮膜を形成させる方法は、鉄鋼又は機械金属分野のようなめっき関連の技術分野において有用である。

Claims (3)

  1. 基材表面にスズ、鉄及びタングステンからなる耐食性合金皮膜を形成させる方法であって、
    スズ、鉄及びタングステンからなる金属粉末を圧縮成形することによって、スパッタリングターゲットを形成する工程Aと、
    真空チャンバー内に前記基材と前記スパッタリングターゲットとを対向させ、スパッタリング法によってスズ、鉄及びタングステンからなる合金皮膜を形成する工程Bとを有し、
    前記金属粉末は、タングステンの質量を1とした場合、スズの質量は5以上7以下であり、鉄の質量は2以上4以下である、ことを特徴とする方法。
  2. 前記工程Bにおけるスパッタリング法が、アルゴンガス中の出力25W以上100W以下の直流スパッタリング法である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記耐食性合金皮膜の結晶構造がアモルファスである、請求項1又は2に記載の方法。
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CN102943221A (zh) * 2012-11-14 2013-02-27 仝泽彬 具有高导电率和耐电化学腐蚀的银合金反射薄膜及其制备方法

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