JP2012201556A - 酸化亜鉛半導体材料および製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、色素増感型太陽電池の電極材料として好適な新規な酸化亜鉛半導体材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】化学浴堆積法を用いて酸化亜鉛半導体ナノロッド結晶を析出させる方法において、析出反応液におけるアルミニウム原子と亜鉛原子のモル比(Al/Zn)を0.0001×10−2 〜 10×10−2の範囲に調整する。その結果、アルミニウムドープ酸化亜鉛ナノロッド構造は、ロッド径が太くなり、結晶内の電子伝導性が向上する。さらに、アルミニウムドープ酸化亜鉛ナノロッドの高い電子伝導性を維持した状態で結晶構造を伸長させることよって、低電気抵抗と高い開放電圧が同時に実現される。
【選択図】図2
【解決手段】化学浴堆積法を用いて酸化亜鉛半導体ナノロッド結晶を析出させる方法において、析出反応液におけるアルミニウム原子と亜鉛原子のモル比(Al/Zn)を0.0001×10−2 〜 10×10−2の範囲に調整する。その結果、アルミニウムドープ酸化亜鉛ナノロッド構造は、ロッド径が太くなり、結晶内の電子伝導性が向上する。さらに、アルミニウムドープ酸化亜鉛ナノロッドの高い電子伝導性を維持した状態で結晶構造を伸長させることよって、低電気抵抗と高い開放電圧が同時に実現される。
【選択図】図2
Description
本発明は、酸化亜鉛半導体材料に関し、より詳細には、色素増感型太陽電池の電極材料として好適な酸化亜鉛半導体材料に関する。
以前より、クリーンエネルギーを利用する太陽光発電への期待は大きいものの、シリコン半導体は、高温・高圧の製造条件が必須であるため、シリコン型太陽電池は、その製造コストが高くつき、このことが太陽光発電の普及の障壁となっていた。この点につき、近年、色素増感型太陽電池が次世代の太陽電池として期待されている。
色素増感型太陽電池の電極は、ワイドバンドギャップの金属酸化物半導体によって形成される。表面に化学吸着する色素から光励起電子を収集する役割を担う金属酸化物半導体は、液相法を用いて常温・常圧下で基板上に析出させることが可能であることに加え、その原材料も安価であるため、色素増感型太陽電池の製造コストは、シリコン型太陽電池のそれに比べて1/5〜1/10にまで抑えられると言われている。
この点につき、特開2002−100418号公報(特許文献1)は、酸化チタン半導体のナノ粒子が多数堆積した多孔質層からなる色素増感型太陽電池の電極を開示する。従来の色素増感型太陽電池においては、ITOなどの透明電極層の上に酸化チタンナノ粒子からなる多孔質層を形成し、当該ナノ粒子の表面に色素を吸着させることによって電極を形成していた。しかしながら、図14(a)に概念的に示す従来型の構造では、ナノ粒子間の界面抵抗が大きいため、電子の収集効率が悪いという問題があった。
一方で、酸化チタンよりも理論的に高い開放電圧を得られると期待される酸化亜鉛を色素増感型太陽電池の電極材料に用いることが検討されている。酸化亜鉛の伝導帯は、酸化チタンのそれに比べてわずかに大きく、その移動度は、酸化チタンよりも1桁大きい値を持つことが報告されている。この点につき、既往研究においては、酸化亜鉛電極の電気抵抗を低減すべく、図14(b)に示すように、酸化亜鉛の結晶構造をナノロッド状にすることによって、その結晶粒界を減らすことが試みられている。しかしながら、今までのところ、酸化亜鉛ナノロッド電極の性能は、従来の酸化チタンナノ粒子電極のそれに及ばないというのが現状である。
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、色素増感型太陽電池の電極材料として好適な新規な酸化亜鉛半導体材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、色素増感型太陽電池の電極材料として好適な新規な酸化亜鉛半導体材料およびその製造方法につき検討する中で、化学浴堆積法を用いて酸化亜鉛半導体ナノロッド結晶を析出させる方法において、析出反応液に添加するアルミニウムの量を調整することによって、ナノロッド結晶構造を制御し、もって、結晶内の電子伝導を向上させることを企図した。そして、鋭意実験を重ねた結果、アルミニウムドープ酸化亜鉛ナノロッド材料について、アルミニウム添加量が所定の範囲内にあるときに、その電気抵抗が低減されることを見出した。さらに、当該添加量においては、ナノロッド結晶構造を好適に伸長させることができることを実験により明らかにした。これらの知見に基づき、本発明者らは、アルミニウムドープ酸化亜鉛ナノロッドの高い電子伝導性を維持した状態でその結晶構造を伸長させることよって、低電気抵抗と高い開放電圧を同時に実現しうることを見出し、本発明に至ったのである。
上述したように、本発明によれば、色素増感型太陽電池の電極材料として好適な新規な酸化亜鉛半導体材料およびその製造方法が提供される。
以下、本発明を図面に示した実施の形態をもって説明するが、本発明は、図面に示した実施の形態に限定されるものではない。以下、本発明のアルミニウムドープ酸化亜鉛ナノロッド材料の製造方法について、図1に示すフローチャートに基づいて説明する。
(工程1)
亜鉛源のアルカリ性水溶液に対してアルミニウム源を添加してアルミニウムドープ酸化亜鉛析出反応液(以下、AZO析出反応液として参照する)を調整する。具体的には、亜鉛塩水溶液とアルカリ性溶液の混合溶液に対して、所定量のアルミニウム塩水溶液を添加してAZO析出反応液を調整する。亜鉛塩としては、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛などを挙げることができ、アルミニウム塩としては、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムなどを挙げることができる。アルカリ性溶液としてアンモニア水を使用した場合、AZO析出反応液は、Zn(OH)4 2-の過飽和状態となる。本発明は、AZO析出反応液においてアルミニウムの添加量を調整することによって、析出する結晶の構造を制御することを特徴とする。この点については後に詳説する。
亜鉛源のアルカリ性水溶液に対してアルミニウム源を添加してアルミニウムドープ酸化亜鉛析出反応液(以下、AZO析出反応液として参照する)を調整する。具体的には、亜鉛塩水溶液とアルカリ性溶液の混合溶液に対して、所定量のアルミニウム塩水溶液を添加してAZO析出反応液を調整する。亜鉛塩としては、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛などを挙げることができ、アルミニウム塩としては、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムなどを挙げることができる。アルカリ性溶液としてアンモニア水を使用した場合、AZO析出反応液は、Zn(OH)4 2-の過飽和状態となる。本発明は、AZO析出反応液においてアルミニウムの添加量を調整することによって、析出する結晶の構造を制御することを特徴とする。この点については後に詳説する。
(工程2)
続いて、化学浴堆積法によって、透明電極基板にアルミニウムドープ酸化亜鉛半導体結晶を析出させる。具体的には、ITOなどの透明電極膜が形成された基板(以下、透明電極基板という)を化学浴内で適切な析出温度条件(50〜100℃)に維持されたAZO析出反応液に浸漬する。その結果、AZO析出反応液のZn(OH)4 2-の過飽和状態が加熱によって変化し、反応液中のAlを取り込みながら透明電極基板上にアルミニウムドープ酸化亜鉛半導体結晶として析出する。ここで、六方晶ウルツ鉱構造を取る酸化亜鉛は、結晶の面によってその活性が異なり、c軸方向(001)に優先的に成長する。その結果、アルミニウムドープ酸化亜鉛半導体結晶が透明電極基板上にナノロッド状に成長する。以下、ナノロッド状に成長したアルミニウムドープ酸化亜鉛半導体結晶を「AZOナノロッド」として参照する。
続いて、化学浴堆積法によって、透明電極基板にアルミニウムドープ酸化亜鉛半導体結晶を析出させる。具体的には、ITOなどの透明電極膜が形成された基板(以下、透明電極基板という)を化学浴内で適切な析出温度条件(50〜100℃)に維持されたAZO析出反応液に浸漬する。その結果、AZO析出反応液のZn(OH)4 2-の過飽和状態が加熱によって変化し、反応液中のAlを取り込みながら透明電極基板上にアルミニウムドープ酸化亜鉛半導体結晶として析出する。ここで、六方晶ウルツ鉱構造を取る酸化亜鉛は、結晶の面によってその活性が異なり、c軸方向(001)に優先的に成長する。その結果、アルミニウムドープ酸化亜鉛半導体結晶が透明電極基板上にナノロッド状に成長する。以下、ナノロッド状に成長したアルミニウムドープ酸化亜鉛半導体結晶を「AZOナノロッド」として参照する。
なお、工程2においては、化学浴に浸漬する前に、透明電極基板上にシード層を形成しておくことが好ましい。具体的には、亜鉛源を含むシード溶液をゾルゲル法によって透明電極基板上にコーティングした後、仮焼結を行って水分と有機物を除去する。この工程を複数回繰り返し、最後に結晶化のための本焼結を行うことによって透明電極基板上にZnOの種結晶を形成することができる。
(工程3)
AZOナノロッドの成長に伴って、AZO析出反応液内の亜鉛源およびアルミニウム源が枯渇するので、適宜、化学浴内のAZO析出反応液を入れ替え、ナノロッド結晶を基板に対して垂直な方向に成長させる。なお、本発明においては、AZO析出反応液に対してポリエチレンイミン(PEI)を添加することによって、ナノロッド構造の径方向の成長を抑制して高アスペクト比のナノロッドを得ることが好ましい。
AZOナノロッドの成長に伴って、AZO析出反応液内の亜鉛源およびアルミニウム源が枯渇するので、適宜、化学浴内のAZO析出反応液を入れ替え、ナノロッド結晶を基板に対して垂直な方向に成長させる。なお、本発明においては、AZO析出反応液に対してポリエチレンイミン(PEI)を添加することによって、ナノロッド構造の径方向の成長を抑制して高アスペクト比のナノロッドを得ることが好ましい。
上述した一連の工程を経て、本発明のAZOナノロッド材料が作製される。さらに引き続いて、AZOナノロッドの表面に増感色素を既知の手法によって吸着させることにより、色素増感型太陽電池の電極が得られる(工程4)。以上、本発明のAZOナノロッド材料の製造方法について説明してきたが、次に、本発明におけるAZOナノロッド構造の形成メカニズムについて説明する。
図2は、本発明のAZOナノロッド構造の形成メカニズムを説明するための概念図である。図2の上段に示すように、既往研究では、AZOナノロッドは、アルミニウム無添加のZnOナノロッドに比較してロッド径が縮小することが報告されていた。ロッド径が縮小すると、基板上のロッドの密度が増大し、その結果、色素の吸着面積が拡大するので、そのこと自体は、電極の起電力に着目すれば好ましい傾向である。しかしながら、太陽電池の出力は電圧と電流の積であるので、太陽電池の性能を考える場合、電極の起電力とともにその電気抵抗を同時に考慮する必要がある。
この点につき、本発明者らは鋭意実験を重ねた結果、AZO析出反応液におけるアルミニウム原子(Al)と亜鉛原子(Zn)のモル比(Al/Zn)を0.0001×10-2 〜 10×10-2、好ましくは、0.0001×10-2 〜 5×10-2の範囲に制御した場合に、AZOナノロッド構造の径および長さが増大し、結晶の電気抵抗が低減することを発見したのである。
さらに、本発明者らは、AZO析出反応液におけるアルミニウム原子(Al)と亜鉛原子(Zn)のモル比(Al/Zn)を0.0001×10-2 〜 10×10-2、好ましくは、0.0001×10-2 〜 5×10-2の範囲に制御した場合には、AZOナノロッドの成長方向が揃い、ロッド同士が干渉することなく、高さ方向により長く成長することを実験により明らかにしたのである。すなわち、本発明の製造方法によって作製されるAZOナノロッド材料は、結晶の低抵抗化によりその電子伝導性が最大化されると同時に、ロッドの伸長により色素の吸着面積が拡大され、開放電圧が向上する。したがって、本発明のAZOナノロッド材料を電極に適用すれば、低電気抵抗と高い開放電圧が相乗的に働くことによって、色素増感型太陽電池の変換効率を最大化することが可能になる。
以下、本発明のアルミニウムドープ酸化亜鉛ナノロッド電極材料について、実施例を用いてより具体的に説明を行なうが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
以下の手順でAZOナノロッド材料を作製した。
(ZnOシード層の形成)
ジメトキシエタノール25mlに対してモノエタノールアミン15mMを添加・混合してなる混合溶液に酢酸亜鉛2水和物を15mM加えた後、これを70℃で加熱しながら60min,300rpmで攪拌してスピンコーティング用溶液を調整した。
以下の手順でAZOナノロッド材料を作製した。
(ZnOシード層の形成)
ジメトキシエタノール25mlに対してモノエタノールアミン15mMを添加・混合してなる混合溶液に酢酸亜鉛2水和物を15mM加えた後、これを70℃で加熱しながら60min,300rpmで攪拌してスピンコーティング用溶液を調整した。
ITO付きガラス基板(ガラス基板:30mm×20mm ,厚さ0.7mm 、ITO: 抵抗5Ω/sq ,膜厚3600±200Å,透過率550nm=76%以上、GEOMATEC社製、以下、ITO基板として参照する)を超純水およびアセトンを使用して十分に超音波洗浄した後、窒素ガスで乾燥させた。
次に、(1)ITO基板の上にマスク(開口部:1cm×1cm)を形成する工程、(2)ITO付きガラス基板の露出した部分に調整したスピンコーティング用溶液を塗布した後、30sec,3000rpmでスピンコーティングする工程、(3)マスクを除去して、10min,250℃で仮焼結する工程、という一連の工程を3回繰り返した後、当該基板を60min,400℃で本焼結することによって、ITO基板上にZnOシード層を形成した。
(AZO析出反応液の調整)
超純水25mlに対して硝酸亜鉛6水和物0.0025molを加えてなる硝酸亜鉛水溶液(0.05M)と超純水25mlにアンモニア水0.0375molを加えてなるアンモニア水溶液(0.75M)を混合し、300rpmで攪拌した。この混合溶液に対して、硝酸アルミニウム9水和物を加えて攪拌し、AZO析出反応液を得た。なお、本実験においては、モル比(Al/Zn)を異ならしめた6種類のAZO析出反応液(Al/Zn = 0、0.5×10-2、2.5×10-2、5×10-2、7.5×10-2、10×10-2)を用意し、6つの実験系について同じ条件で後述の手順を実施した。なお、以下の説明においては、AZO析出反応液におけるモル比(Al/Zn)を「Al/Znモル比」として参照する。
超純水25mlに対して硝酸亜鉛6水和物0.0025molを加えてなる硝酸亜鉛水溶液(0.05M)と超純水25mlにアンモニア水0.0375molを加えてなるアンモニア水溶液(0.75M)を混合し、300rpmで攪拌した。この混合溶液に対して、硝酸アルミニウム9水和物を加えて攪拌し、AZO析出反応液を得た。なお、本実験においては、モル比(Al/Zn)を異ならしめた6種類のAZO析出反応液(Al/Zn = 0、0.5×10-2、2.5×10-2、5×10-2、7.5×10-2、10×10-2)を用意し、6つの実験系について同じ条件で後述の手順を実施した。なお、以下の説明においては、AZO析出反応液におけるモル比(Al/Zn)を「Al/Znモル比」として参照する。
(AZOナノロッドの成長)
ZnOシード層が形成されたITO基板を裏向きに取付けたステージを調整したAZOナノロッド成長用溶液の入った反応容器の中に浸漬して蓋をした。この反応容器を大気雰囲気下100℃の電気炉にセットし、2時間かけて結晶成長させた。その後、基板を取り出して超純水で十分に洗浄し、100℃のホットプレートに乗せて乾燥してAZOナノロッド電極基板を得た。
ZnOシード層が形成されたITO基板を裏向きに取付けたステージを調整したAZOナノロッド成長用溶液の入った反応容器の中に浸漬して蓋をした。この反応容器を大気雰囲気下100℃の電気炉にセットし、2時間かけて結晶成長させた。その後、基板を取り出して超純水で十分に洗浄し、100℃のホットプレートに乗せて乾燥してAZOナノロッド電極基板を得た。
(AZOナノロッドの構造観察)
図3は、ITO基板上に形成されたAZOナノロッドのSEM画像をAl/Znモル比(Al/Zn = 0、0.5×10-2、2.5×10-2、5×10-2、7.5×10-2、10×10-2)ごとに示す。なお、図3(a)はAZOナノロッドの表面画像を示し、図3(b)はAZOナノロッドの断面画像を示す。また、各SEM画像上でAZOナノロッドの長さを測定した結果を下記表1に示す。
図3は、ITO基板上に形成されたAZOナノロッドのSEM画像をAl/Znモル比(Al/Zn = 0、0.5×10-2、2.5×10-2、5×10-2、7.5×10-2、10×10-2)ごとに示す。なお、図3(a)はAZOナノロッドの表面画像を示し、図3(b)はAZOナノロッドの断面画像を示す。また、各SEM画像上でAZOナノロッドの長さを測定した結果を下記表1に示す。
図4、図5、図6は、AZOナノロッドのTEM画像をAl/Znモル比(Al/Zn = 0、0.5×10-2、5×10-2)ごとに示す。各TEM画像上でAZOナノロッドの直径を測定したところ、Al/Zn = 0および Al/Zn = 5×10-2の試料は、いずれもナノロッドの直径が50nm程であったが、Al/Zn = 0.5×10-2の試料のナノロッドの直径は、先端部分で50nm程あり、最も太い根本部分に至っては、100nm程度まで成長していた。以上の観察結果から、Al/Znモル比 = 0.5×10-2のAZOナノロッドが最も長く、且つ、太い構造を備えていることがわかった。
さらに、各AZOナノロッドについてEDX測定を行い、AZOナノロッド結晶に含有されるアルミニウム原子(Al)と亜鉛原子(Zn)のモル比(Al/Zn)を調べた。なお、以下の説明においては、AZOナノロッド結晶に含有されるAlとZnのモル比(Al/Zn)を「Al/Zn含有モル比」として参照する。Al/Znモル比とAl/Zn含有モル比の関係を下記表2および図7に示す。
上述した手順で作製した6種類のAZOナノロッド電極基板を用い、以下の手順で色素増感型太陽電池を作製した。
(AZOナノロッド電極基板への色素吸着)
超純水で十分に洗浄し100℃のホットプレート上で乾燥させたAZOナノロッド電極基板を5mMの増感色素溶液(エタノール溶媒)に遮光条件下で4時間浸漬した。その後、エタノールで余分な色素を落とし、大気中で乾燥した。なお、増感色素(Dye)として、N719(製品名: Ruthenizer 535 bis-TBA 、Solaronix社製)を使用した。
超純水で十分に洗浄し100℃のホットプレート上で乾燥させたAZOナノロッド電極基板を5mMの増感色素溶液(エタノール溶媒)に遮光条件下で4時間浸漬した。その後、エタノールで余分な色素を落とし、大気中で乾燥した。なお、増感色素(Dye)として、N719(製品名: Ruthenizer 535 bis-TBA 、Solaronix社製)を使用した。
(太陽電池セルの組み立て)
アセトニトリル(10ml)に対して、ヨウ素(0.05M)、ヨウ化リチウム(0.1M)、DMPII(0.6M)、4-TBP(0.5M)を加えて攪拌し、電解液を調整した。また、洗浄したITO基板上に白金をスパッタして対極(counter electrode)を作製した。次に、増感色素を吸着させたAZOナノロッド電極基板の上にスペーサー(大きさ:1.5cm×1.5cm, 開口部:1cm×1cm, 厚さ50μm、ハイミラン、三井化学社製)をのせ、ホットプレートで100℃に加熱した後、マイクロシリンジで電解液をスペーサー開口部に2滴垂らし、その上から対極を被せた。電解液を十分に馴染ませた後、AZOナノロッド電極基板と対極基板をクリップで固定して、色素増感型太陽電池のサンプルとした。なお、本実験においては、セルの組み立ては後述する測定の直前に行い、セルを密封しないオープンセルとした。
アセトニトリル(10ml)に対して、ヨウ素(0.05M)、ヨウ化リチウム(0.1M)、DMPII(0.6M)、4-TBP(0.5M)を加えて攪拌し、電解液を調整した。また、洗浄したITO基板上に白金をスパッタして対極(counter electrode)を作製した。次に、増感色素を吸着させたAZOナノロッド電極基板の上にスペーサー(大きさ:1.5cm×1.5cm, 開口部:1cm×1cm, 厚さ50μm、ハイミラン、三井化学社製)をのせ、ホットプレートで100℃に加熱した後、マイクロシリンジで電解液をスペーサー開口部に2滴垂らし、その上から対極を被せた。電解液を十分に馴染ませた後、AZOナノロッド電極基板と対極基板をクリップで固定して、色素増感型太陽電池のサンプルとした。なお、本実験においては、セルの組み立ては後述する測定の直前に行い、セルを密封しないオープンセルとした。
(電気的特性の評価)
上述した手順で作製した色素増感型太陽電池について、ソーラーシュミレーター(山田光学システム社製)および解析ソフト( W32-R6224SOL2、システムハウスサンライズ社製)を使用して、下記表3に示す条件でI-V測定を行った。なお、ソーラーシュミレーターの光源としてキセノンランプを使用し、光強度: 2000 W m-2、照度: 120000 Luxの照射条件で測定を行った。
上述した手順で作製した色素増感型太陽電池について、ソーラーシュミレーター(山田光学システム社製)および解析ソフト( W32-R6224SOL2、システムハウスサンライズ社製)を使用して、下記表3に示す条件でI-V測定を行った。なお、ソーラーシュミレーターの光源としてキセノンランプを使用し、光強度: 2000 W m-2、照度: 120000 Luxの照射条件で測定を行った。
図8は、光照射時の各サンプル(Al/Znモル比 = 0〜10×10-2)のI-V特性図を示す。また、図9は、各サンプルのAl/Zn含有モル比と開放電圧Voc [V]ならびに短絡電流Isc [mA/cm2]の関係を示す。図8に示すように、短絡電流Iscは、Al/Znモル比 = 0.5×10-2のAZOナノロッド電極基板を使用した色素増感型太陽電池で最も大きい値となり、Al/Znモル比が0.5×10-2より大きいAZOナノロッド電極基板を使用した色素増感型太陽電池については、Al/Znモル比が大きくなるにつれて、短絡電流Iscが減少した。一方、開放電圧Vocは、Al/Znモル比が大きくなるにつれて増大し、Al/Znモル比 = 5×10-2 のAZOナノロッド電極基板を使用した色素増感型太陽電池の開放電圧Vocが最大の0.73Vとなった。下記表4は、AZOナノロッド電極基板のAl/Znモル比およびそのナノロッド長[μm]に対応する色素増感型太陽電池の開放電圧Voc [V]、短絡電流Isc [mA/cm2]、FF(フィルターファクタ) [%]、および変換効率η[%]を一覧にして示す。
なお、上記変換効率η[%]は、下記式(1)によって求めた(以下、同様)。
上記表4が示すように、Al/Znモル比 = 0.5×10-2のAZOナノロッド電極基板を使用した色素増感型太陽電池の変換効率ηが0.298[%]となり、最も大きい値を達成した。
一方、色素増感型太陽電池の各サンプルにつき、交流インピーダンス測定を行った。交流インピーダンス測定は、開放電圧状態で実施し、測定周波数を0.05 Hz 〜 1 MHzとした。交流インピーダンス測定の結果をインピーダンス解析ソフト(Z-View)で解析し、各サンプルにつき、電極抵抗rwおよび再結合抑制抵抗rkを算出した。図10は、各サンプルのAZOナノロッド電極のAl/Znモル比と電極抵抗rwならびに再結合抑制抵抗rkの関係を示す。また、下記表5は、各サンプルのAZOナノロッド電極のAl/Znモル比およびそのロッド長[μm]に対応する色素増感型太陽電池の電極抵抗rw [Ω/μm]および再結合抑制抵抗rk [Ωμm]を一覧にして示す。
図10および上記表5に示すように、Al/Znモル比 = 0.5×10-2のサンプルの電極抵抗rwは、Al/Znモル比 = 0のサンプルに比べ半減した。しかしAl/Znモル比 = 2.5×10-2のサンプルでは電極抵抗rwがわずかに増加し、Al/Znモル比 = 5×10-2以上のサンプルにおいては、その電極抵抗rwがAl/Znモル比 = 0のサンプルの抵抗値とほぼ同じになった。一方、再結合抑制抵抗rwは、Al/Znモル比が大きくなるにつれて向上し、Al/Znモル比 = 7.5×10-2のサンプルで最大値を示した。
(色素吸着量の測定)
各サンプルのAZOナノロッド電極についた電解液をエタノールで洗い流した後、AZOナノロッド電極をKOH水溶液に浸漬して吸着した増感色素を解離させ、KOH水溶液中に含まれる増感色素の量を紫外−可視分光光度計により測定した。この測定結果に基づき、色素の最大吸光波長を510nm とする適切な標準曲線を使用して、実際の色素の吸着量をサンプル毎に計算した。図11は、各サンプルのAZOナノロッド電極におけるAl/Zn含有モル比と増感色素の吸着量 [×10-3 mol/cm2]の関係を示す。
各サンプルのAZOナノロッド電極についた電解液をエタノールで洗い流した後、AZOナノロッド電極をKOH水溶液に浸漬して吸着した増感色素を解離させ、KOH水溶液中に含まれる増感色素の量を紫外−可視分光光度計により測定した。この測定結果に基づき、色素の最大吸光波長を510nm とする適切な標準曲線を使用して、実際の色素の吸着量をサンプル毎に計算した。図11は、各サンプルのAZOナノロッド電極におけるAl/Zn含有モル比と増感色素の吸着量 [×10-3 mol/cm2]の関係を示す。
図11に示されるように、Al/Zn含有モル比 = 0.32×10-2のサンプルの色素吸着量は、Al/Zn含有モル比 = 0のサンプルのそれに比較して減少しており、それ以降のサンプル(Al/Zn含有モル比 = 1.016×10-2 〜3.11×10-2 )については、再び増加傾向に転じていることから、Al/Zn含有モル比が0.32×10-2の段階で、一旦、表面積が小さくなっており(すなわち、ロッド径が大きくなっており)、これ以降、Al/Zn含有モル比が大きくなるにつれて、表面積が大きくなっている(すなわち、ロッド径が小さくなっている)ことが推察される。この推察は、先に述べたSEM画像およびTEM画像の観察結果と符合する。
<実施例2>
実施例1において、最も長くて太いナノロッド構造を備えていたAl/Znモル比 = 0.5×10-2のAZOナノロッド電極について、さらに、そのナノロッドを成長させ、表面積を増大させることによって、色素増感型太陽電池のさらなる高効率化を図った。具体的には、Al/Znモル比 = 0.5×10-2のAZO析出反応液にポリエチレンイミン(5〜7mM、Aldrich社製)を添加し、それ以外は、実施例1と同様の条件で、2時間ごとにAZO析出反応液を取り換えつつ、計6時間に渡ってAZOナノロッドをITO基板上に成長させた。
実施例1において、最も長くて太いナノロッド構造を備えていたAl/Znモル比 = 0.5×10-2のAZOナノロッド電極について、さらに、そのナノロッドを成長させ、表面積を増大させることによって、色素増感型太陽電池のさらなる高効率化を図った。具体的には、Al/Znモル比 = 0.5×10-2のAZO析出反応液にポリエチレンイミン(5〜7mM、Aldrich社製)を添加し、それ以外は、実施例1と同様の条件で、2時間ごとにAZO析出反応液を取り換えつつ、計6時間に渡ってAZOナノロッドをITO基板上に成長させた。
図12は、ITO基板上に成長したAZOナノロッドの断面のSEM画像を成長時間(2H,4H,6H)毎に示す。図12に示されるように、成長時間の増加とともに、ナノロッドが基板に対してほぼ垂直方向に伸長していることが確認された。
また、実施例1と同様の手順で、ナノロッドを伸長させたAZOナノロッド電極を使用して色素増感型太陽電池サンプルを作製し、各サンプル(成長時間:2H,4H,6H)につき、I-V測定を行った。図13は、各サンプル(成長時間:2H,4H,6H)のI-V特性図を示す。下記表6は、各サンプルにつき、成長時間[h]およびロッド長[μm]に対応する色素増感型太陽電池の開放電圧Voc [V]、短絡電流Isc [mA/cm2]、FF [%]、および変換効率η[%]を一覧にして示す。
図13および上記表6に示されるように、成長時間(6H)のサンプルの短絡電流Isc [mA/cm2]の値は、成長時間(2H)のサンプルのそれに比較して約2.5倍の値となり、大幅に向上した。これは、ナノロッドの伸長に伴う表面積の拡大により色素吸着量が増加したことによるものと推察される。その結果、成長時間(6H)のサンプルの変換効率ηは、0.96%という高い値を達成した。
Claims (8)
- 亜鉛源を含有するアルカリ性水溶液にアルミウム源を添加してなる析出反応液であって、アルミニウム原子と亜鉛原子のモル比(Al/Zn)が0.0001×10−2 〜 10×10−2の範囲にある析出反応液に、加熱条件下、基板を浸漬し、該基板上にアルミニウムドープ酸化亜鉛半導体のナノロッド結晶を成長させることによって製造されうる酸化亜鉛半導体材料。
- 酸化亜鉛半導体材料を製造する方法であって、
亜鉛源を含有するアルカリ性水溶液に対してアルミウム源を添加してなる析出反応液であって、アルミニウム原子と亜鉛原子のモル比(Al/Zn)が0.0001×10−2 〜 10×10−2の範囲にある析出反応液を調整する工程と、
加熱条件下、基板を前記析出反応液に浸漬し、該基板上にアルミニウムドープ酸化亜鉛半導体のナノロッド結晶を成長させる工程と
を含む、製造方法。 - 前記亜鉛源は、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛および塩化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1つの亜鉛塩である、請求項2に記載の製造方法。
- 前記アルミウム源は、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび塩化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1つのアルミニウム塩である、請求項2または3に記載の製造方法。
- 前記アルカリ性水溶液は、アンモニア水である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記析出反応液がポリエチレンイミンを含有する、請求項2〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
- 亜鉛源を含有するアルカリ性水溶液にアルミウム源を添加してなる析出反応液であって、アルミニウム原子と亜鉛原子のモル比(Al/Zn)が0.0001×10−2 〜 10×10−2の範囲にある析出反応液に、加熱条件下、透明電極基板を浸漬し、該透明電極基板上にアルミニウムドープ酸化亜鉛半導体のナノロッド結晶を成長させる工程と、前記ナノロッド結晶に増感色素を吸着させる工程とから製造されうる色素増感型太陽電池用電極材料。
- 色素増感型太陽電池用電極材料を製造する方法であって、
亜鉛源を含有するアルカリ性水溶液にアルミウム源を添加してなる析出反応液であって、アルミニウム原子と亜鉛原子のモル比(Al/Zn)が0.0001×10−2 〜 10×10−2の範囲にある析出反応液を調整する工程と、
加熱条件下、透明電極基板を前記析出反応液に浸漬し、該透明電極基板上にアルミニウムドープ酸化亜鉛半導体のナノロッド結晶を成長させる工程と、
前記ナノロッド結晶に増感色素を吸着させる工程と
を含む、製造方法。
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JP2011068147A JP2012201556A (ja) | 2011-03-25 | 2011-03-25 | 酸化亜鉛半導体材料および製造方法 |
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-
2011
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