JP2012191878A - 糖液の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
廃糖蜜から糖液を得るとともに、廃糖蜜由来の発酵阻害物質を除去することを課題とする。
【解決手段】
以下の工程(1)〜(4)を含む、糖液の製造方法。
工程(1):廃糖蜜に加水し、希釈糖液を調整する工程、
工程(2):前記希釈糖液を固液分離し、溶液成分を得る工程、
工程(3):前記溶液成分を限外濾過膜にてろ過し、透過液として糖液を得る工程、
工程(4):前記糖液をナノろ過膜および/または逆浸透膜に通じてろ過し、非透過液として濃縮糖液を得る工程。
【選択図】図1

Description

本発明は、廃糖蜜から発酵原料等で使用可能な糖液を製造する方法に関する。
糖を原料とした化学品の発酵生産プロセスは、種々の工業原料生産に利用されている。この発酵原料となる糖として、現在、さとうきび、澱粉、テンサイなどの食用原料に由来するものが工業的に使用されているが、今後の世界人口の増加による食用原料価格の高騰、あるいは食用と競合するという倫理的な側面から、再生可能な非食用資源、すなわちセルロース含有バイオマスより効率的に糖液を製造するプロセス、あるいは得られた糖液を発酵原料として、効率的に工業原料に変換するプロセスの構築が今後の課題となっている。
こうした化学品の発酵生産プロセスにおいて、安価な糖原料あるいは発酵原料として、廃糖蜜が利用されている。廃糖蜜とは、サトウキビあるいは甜菜の絞り汁からの精糖過程で生成する副産物であり、糖成分を結晶化(晶析)した後に残る褐色液体である。廃糖蜜は、スクロース、グルコースなどの糖成分を含み、一部は発酵原料として利用されている。但し廃糖蜜中には、糖以外の成分として、加熱過程で生じるヒドロキシメチルフルフラールなどの発酵阻害物質が含まれおり、発酵に使用する微生物あるいは生産する化学品によっては、発酵収率が低下することが課題であった。こうした廃糖蜜の発酵阻害成分を除去する手法として、いくつかの手法が開示されているが、廃糖蜜を精製するために一度多量の水を投入し希釈する必要があること(特許文献1、特許文献2)、あるいは精製のための分離カラム、電気透析など効果な設備、あるいは、その精製処理に高いランニングコストを要すこと(特許文献3、特許文献4)が技術課題としてあった。
また、発酵阻害物質を糖液より除去する方法として、ナノろ過膜および/または逆浸透膜による発酵阻害物質の除去方法が開示されているが(特許文献5)、廃糖蜜をナノ濾過膜処理および/または逆浸透膜処理に供するための前処理方法については知られていなかった。
特開2009−95282号公報 特開平4−131100号公報 特開2009−95282号公報 特表2009−520484号公報 WO2009/110374
本発明では、廃糖蜜から糖液を得るとともに、廃糖蜜由来の発酵阻害物質を除去することを課題とする。
本発明は以下の[1]〜[4]の構成を有する。
[1]以下の工程(1)〜(4)を含む、糖液の製造方法。
工程(1):廃糖蜜に加水し、希釈糖液を調整する工程、
工程(2):前記希釈糖液を固液分離し、溶液成分を得る工程、
工程(3):前記溶液成分を限外濾過膜にてろ過し、透過液として糖液を得る工程、
工程(4):前記糖液をナノろ過膜および/または逆浸透膜に通じてろ過し、非透過液として濃縮糖液を得る工程。
[2]工程(1)において希釈糖液の糖濃度を10〜80g/Lの範囲に調整する、[1]記載の糖液の製造方法。
[3]工程(3)の前工程として、溶液成分にインベルターゼ処理を行う工程を含む、[1]または[2]に記載の糖液の製造方法。
[4][1]から[3]のいずれかに記載の糖液の製造方法で得られる糖液を発酵原料として化学品を生産する能力を有する微生物を発酵培養する、化学品の製造方法。
本発明では、廃糖蜜から発酵阻害物質の少ない糖液を製造することができる。
本発明の工程概略フロー図である。
本発明を実施するための形態に関し、工程ごとに詳細に説明する。
[工程(1)]
本発明でいう廃糖蜜とは、サトウキビまたは甜菜の絞り汁あるいは粗糖より、製糖の過程で生成する副産物である。すなわち、製糖過程における結晶化工程で結晶化の後に残った糖成分を含む溶液のことを指す。一般的に、結晶化工程は、複数回行うことが通常であり、1回目の結晶化を行い得た結晶成分である1番糖、さらに1番糖の残り液(1番糖蜜)の結晶化を行い得た結晶成分である2番糖、さらに2番糖の残り液(2番糖蜜)の結晶化を行い得た3番糖、のように結晶化を繰り返し行い、その残り液として得た最終段階の糖蜜のことを廃糖蜜という。結晶化の回数が多くなるに伴い、糖成分以外の無機塩が廃糖蜜中に濃縮される。本発明で使用する廃糖蜜としては、結晶化回数が多く経た後の糖蜜であることが好ましく、少なくとも2回以上、さらに好ましくは3回以上結晶化を行った後に残る廃糖蜜であることが好ましい。廃糖蜜に含まれる糖成分としては、スクロース、グルコース、フルクトースを主成分として含んでおり、キシロース、ガラクトースなどのその他の糖成分も若干含まれる場合がある。廃糖蜜中の糖濃度は、一般的に200〜800g/L程度である。廃糖蜜中の糖濃度は、HPLCなどの公知の測定手法によって定量することができる。
こうした廃糖蜜に含まれる発酵阻害成分としては、酢酸、ギ酸、ヒドロキシメチルフルフラール、フルフラール、バニリン、アセトバニロン、グアイヤコール、各種無機成分などを例示することができる。但し、廃糖蜜に含まれる糖および発酵阻害物質の成分あるいは量に関しては、特に限定されるものではない。
廃糖蜜は、インベルターゼ処理を行ったものでもよい。インベルターゼとは、別名β−フルクトフラノシダーゼといい、スクロースをグルコースとフルクトースに加水分解する酵素のことを指す。特に後段発酵で使用する微生物の種類によっては、スクロースの利用効率が低い微生物が存在しており、こうした微生物を化学品等の製造に使用する際、予めインベルターゼ処理を行っておくことが効果的である。使用するインベルターゼに関しては特に限定されないが、酵母由来のインベルターゼが日本バイオコン(株)、三菱化学フーズ(株)から市販されており、これらを購入使用することができる。インベルターゼ処理の処理条件は、効率的な作用条件であればよい。また、インベルターゼ処理は、工程(1)の前であっても、工程(1)の最中であっても、工程(1)の後段であってもよい。
工程(1)では、まず前述した廃糖蜜に水を添加し希釈する。廃糖蜜を水で希釈することにより、廃糖蜜粘度を低下させ後段固液分離を容易にすることが可能になる。加水に使用する水は、井戸水、河川水、水道水、工業用水、再生水、湧水、膜処理水、RO水、イオン交換水などを使用することができる。なお、工程(1)で加水された水のうち、その一部は後段ナノ濾過膜の透過液として各種発酵阻害物質を含む余剰水として除去される。
使用する水は、懸濁物質が極力少ない方が好ましく、濁度として0〜10NTUの範囲であることが好ましい。また使用する水は、溶質成分が少ない方が好ましく、0.1g/L以下であることが好ましい。仮に溶質成分が、0.1g/Lを上回る水を使用すると糖液の不純物になるとともに、後段ナノ濾過膜濃縮時の操作圧力が上昇することがある。
水の添加量は、希釈糖液の糖濃度が、10〜80g/Lの濃度になるように添加することが好ましい。ここで言う糖濃度とは、フルクロース、グルコース、スクロースの3種の糖の総量のことであり、糖濃度が、80g/Lを超える場合、希釈糖液の粘度が高くなり、後段固液分離においてファウリングの要因となるため好ましくない。一方で、希釈糖液の糖濃度が10g/L未満であると、後段ナノ濾過膜による濃縮倍率が増大するため経済的に不利となることがある。
[工程(2)]
工程(2)においては、工程(1)で得られた希釈糖液を固液分離し、溶液成分を得る。固液分離は、スクリューデカンタなどの遠心分離法、プレス濾過などの濾過法、精密濾過などの膜分離法により固液分離を行うことができる。こうした固液分離は複数手法組み合わせて実施してもよく、効率的に固形物を除去する手段であれば限定されない。但し、後段限外濾過膜のファウリングを抑制するという観点において、固液分離後の溶液成分には固形物が含まれないことが好ましい。すなわち、遠心分離法もしくは濾過法にて、1回目の固液分離した後、得られた溶液成分を、さらに精密濾過膜によって濾過することで、完全に固形物を除去することが好ましい。
精密濾過膜とは、メンブレンフィルトレーションと呼ばれ、圧力差を駆動力として、微粒子懸濁液から0.01〜10μm程度の粒子を分離除去できる分離膜である。すなわち精密濾過膜の表面には0.01〜10μmの範囲の細孔を有し、その細孔以上の微粒子成分は膜側に分離除去することができる。精密濾過膜の材質は、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、セラミック、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))などが例示できるが特に限定されるものではないが、対汚性、薬品耐性、強度、濾過性といった観点において、ポリフッ化ビニリデン製の精密ろ過膜であることが好ましい。工程(2)の固液分離を行った溶液成分は、廃糖蜜に含まれる固形分を除去されているため、工程(3)の限外濾過膜に通じて処理することができる。
なお、工程(1)における廃糖蜜がインベルターゼ処理を行っていないものである場合、工程(2)の固液分離を行った後工程として、インベルターゼ処理を行うことが好ましい。廃糖蜜には、前述の通り固形物が含まれているため、固液分離の前段階としてインベルターゼ処理を行った場合、固形物によりインベルターゼ活性が阻害されることがある。また、後段工程(3)の限外濾過膜において、非透過液としてインベルターゼの回収を行う場合、工程(2)の固液分離を行った後にインベルターゼ処理を行った方が、その回収率が向上するため好ましい。
[工程(3)]
工程(3)で使用する限外濾過膜とは、一般的に細孔径1.5ナノメートルから250ナノメートルの範囲であって、分子量1,000〜200,000の範囲の水溶性高分子を非透過液として阻止することが可能な分離膜のことを指す。限外濾過膜の分画分子量は1,000Da〜100,000Da、さらに好ましくは、10,000Da〜30,000Daを好ましく使用することができる。使用する限外濾過膜の素材としては、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)、再生セルロースなどの素材の膜を使用することができるが、セルロースは、糸状菌由来セルラーゼによる分解を受けるため、PES、PVDFなどの合成高分子を素材とした限外濾過膜を使用することが好ましい。限外濾過膜形状は、チューブラー式、スパイラルエレメント、平膜などが好ましく使用できる。限外濾過膜の濾過は、クロスフロー方式、デッドエンド濾過方式が挙げられるが、ファウリングあるいはフラックスの面でクロスフロー濾過方式が好ましい。
本発明では、前記限外濾過膜の透過液として、糖液を得ることができる。本発明の糖液は、廃糖蜜に本来含まれている固形物が固液分離によって、完全に除去された液体である。さらに廃糖蜜は、限外濾過膜に通じて濾過処理することで、廃糖蜜中の着色物質、水溶性高分子を非透過液として除去されている。特に、インベルターゼ処理した廃糖蜜を使用した場合、限外濾過膜の非透過液としてインベルターゼを回収することができる。回収したインベルターゼ成分は、前段工程のインベルターゼ処理に再利用することで、その使用量を削減できるため経済的である。
[工程(4)]
本発明の工程(3)で得られた糖液は、さらにWO2010/067785号に記載されるナノ濾過膜および/または逆浸透膜に通じて濾過することにより、非透過液として、糖成分が濃縮された濃縮糖液を得ることができる。
本発明で使用するナノ濾過膜とは、ナノフィルター(ナノフィルトレーション膜、NF膜)とも呼ばれるものであり、「一価のイオンは透過し、二価のイオンを阻止する膜」と一般に定義される膜である。数ナノメートル程度の微小空隙を有していると考えられる膜で、主として、水中の微小粒子や分子、イオン、塩類等を阻止するために用いられる。
本発明で使用する逆浸透膜とは、RO膜とも呼ばれるものであり、「一価のイオンを含めて脱塩機能を有する膜」と一般に定義される膜である。数オングストロームから数ナノメートル程度の超微小空隙を有していると考えられる膜で、主として海水淡水化や超純水製造などイオン成分除去に用いられる。
本発明で使用されるナノ濾過膜あるいは逆浸透膜の素材には、酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマー、ポリサルホンなどの高分子素材を使用することができるが、前記1種類の素材で構成される膜に限定されず、複数の膜素材を含む膜であってもよい。
本発明で用いるナノ濾過膜は、スパイラル型の膜エレメントが好ましく使用される。好ましいナノ濾過膜エレメントの具体例としては、例えば、酢酸セルロース系のナノ濾過膜エレメントであるGE Osmonics社製GEsepa、ポリアミドを機能層とするアルファラバル社製ナノ濾過膜エレメントのNF99またはNF99HF、架橋ピペラジンポリアミドを機能層とするフィルムテック社製ナノ濾過膜エレメントのNF−45、NF−90、NF−200、NF−270またはNF−400、あるいは架橋ピペラジンポリアミドを主成分とする東レ株式会社製ナノ濾過膜のUTC60を含む同社製ナノ濾過膜エレメントSU−210、SU−220、SU−600またはSU−610が挙げられ、より好ましくはNF99またはNF99HF、NF−45、NF−90、NF−200またはNF−400、あるいはSU−210、SU−220、SU−600またはSU−610であり、さらに好ましくはSU−210、SU−220、SU−600またはSU−610である。
本発明で使用される逆浸透膜の具体例としては、例えば、東レ株式会社製ポリアミド系逆浸透膜モジュールである超低圧タイプのSUL−G10、SUL−G20、低圧タイプのSU−710、SU−720、SU−720F、SU−710L、SU−720L、SU−720LF、SU−720R、SU−710P、SU−720Pの他、逆浸透膜としてUTC80を含む高圧タイプのSU−810、SU−820、SU−820L、SU−820FA、同社酢酸セルロース系逆浸透膜SC−L100R、SC−L200R、SC−1100、SC−1200、SC−2100、SC−2200、SC−3100、SC−3200、SC−8100、SC−8200、日東電工株式会社製NTR−759HR、NTR−729HF、NTR−70SWC、ES10−D、ES20−D、ES20−U、ES15−D、ES15−U、LF10−D、アルファラバル製RO98pHt、RO99、HR98PP、CE4040C−30D、GE製GE Sepa、Filmtec製BW30−4040、TW30−4040、XLE−4040、LP−4040、LE−4040、SW30−4040、SW30HRLE−4040、KOCH製TFC−HR、TFC−ULP、TRISEP製ACM−1、ACM−2、ACM−4などが挙げられる。
ナノ濾過膜および/または逆浸透膜を使用して、糖液を濃縮する効果として、糖液中の糖濃度を高めるとともに、透過液として発酵阻害物質を除去できるという利点を有する。ここでいう発酵阻害物質とは、後段発酵工程で発酵を阻害する糖以外の成分のことを指し、具体的には、芳香族化合物、フラン系化合物、有機酸、1価無機塩などを例示することができる。こうした代表的な、芳香族化合物およびフラン系化合物の例としては、フルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール、バニリン、バニリン酸、シリンガ酸、コニフェリルアルデヒド、クマル酸、フェルラ酸などを例示できる。有機酸、無機塩としては、酢酸、ギ酸、乳酸、カリウム、ナトリウムなどを例示することができる。濃縮糖液の糖濃度は、ナノ濾過膜および/または逆浸透膜の処理条件によって、50g/L〜400g/Lの範囲で任意に設定することができ、濃縮糖液の用途等に応じて任意に設定すればよい。また前述した発酵阻害物質をより除去したい場合、糖液あるいは濃縮糖液に加水し、ナノ濾過膜および/または逆浸透膜で目的の糖濃度となるまで濃縮すればよく、この際、透過液として発酵阻害物質を除去することができる。
前述した本発明の糖液は、発酵原料として微生物を生育させることで、各種化学品を製造することができる。ここでいう発酵原料として微生物を生育させるとは、糖液に含まれる糖成分あるいはアミノ源を微生物の栄養素として利用し、微生物の増殖、生育維持を行うことを意味している。化学品の具体例としては、アルコール、有機酸、アミノ酸、核酸など発酵工業において大量生産されている物質を挙げることができる。こうした化学品は、糖液中の糖成分を炭素源として、その代謝の過程において生体内外に化学品として蓄積生産する。微生物によって生産可能な化学品の具体例として、エタノール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセロールなどのアルコール、酢酸、乳酸、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、クエン酸などの有機酸、イノシン、グアノシンなどのヌクレオシド、イノシン酸、グアニル酸などのヌクレオチド、カダベリンなどのアミン化合物を挙げることができる。さらに、本発明の糖液は、酵素、抗生物質、組換えタンパク質などの生産に適用することも可能である。こうした化学品の製造に使用する微生物に関しては、目的の化学品を効率的に生産可能な微生物であればよく、大腸菌、酵母、糸状菌、担子菌などの微生物を使用することができる。
[化学品製造工程]
本発明により得られた糖液を発酵原料として化学品を生産する能力を有する微生物を生育させることで、各種化学品を製造することができる。ここでいう発酵原料として微生物を生育させるとは、糖液に含まれる糖成分あるいはアミノ源を微生物の栄養素として利用し、微生物の増殖、生育維持を行うことを意味している。化学品の具体例としては、アルコール、有機酸、アミノ酸、核酸など発酵工業において大量生産されている物質を挙げることができる。こうした化学品は、糖液中の糖成分を炭素源として、その代謝の過程において生体内外に化学品として蓄積生産する。微生物によって生産可能な化学品の具体例として、エタノール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセロールなどのアルコール、酢酸、乳酸、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、クエン酸などの有機酸、イノシン、グアノシンなどのヌクレオシド、イノシン酸、グアニル酸などのヌクレオチド、カダベリンなどのアミン化合物を挙げることができる。さらに、本発明の糖液は、酵素、抗生物質、組換えタンパク質などの生産に適用することも可能である。こうした化学品の製造に使用する微生物に関しては、目的の化学品を効率的に生産可能な微生物であればよく、大腸菌、酵母、糸状菌、担子菌などの微生物を使用することができる。
本発明により得られた糖液を化学品製造のための発酵原料に使用する場合、必要に応じて、窒素源、無機塩類、及び必要に応じてアミノ酸、ビタミンなどの有機微量栄養素を適宜含有させてもよい。さらに場合によっては、キシロースに加え、炭素源として、グルコース、スクロース、フラクトース、ガラクトース、ラクトース等の糖類、これら糖類を含有する澱粉糖化液、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、あるいは酢酸等の有機酸、あるいはエタノールなどのアルコール類、グリセリンなどを追加して、発酵原料として使用してもよい。窒素源としては、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類、各種発酵菌体およびその加水分解物などが使用される。無機塩類としては、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等を適宜添加することができる。
微生物の培養方法は、バッチ培養、フェドバッチ培養、連続培養など公知の発酵培養方法が利用できる。特に本発明の糖液および/または濃縮糖液は、限外濾過膜等によって固形物が完全に除去されているという特徴を有しており、発酵に使用した微生物を遠心分離、膜分離などの手法により分離回収し、再利用を行うことができる。こうした微生物の分離回収および再利用は、培養期間中に新たな糖液および/または濃縮糖液を添加しながら、連続的に微生物を分離回収してもよく、また、培養終了後に微生物を分離回収し、次バッチの培養に再利用してもよい。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
(参考例1)糖濃度の測定
糖液に含まれるスクロース、グルコースおよびキシロース濃度は、下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。
カラム:Luna NH(Phenomenex社製)
移動相:ミリQ:アセトニトリル=25:75(流速0.6mL/分)
反応液:なし
検出方法:RI(示差屈折率)
温度:30℃。
(参考例2)無機イオン濃度の測定
糖液に含まれるカチオンおよびアニオン濃度は、下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。
1)カチオン分析
カラム:Ion Pac AS22(DIONEX社製)
移動相:4.5mM NaCO/1.4mM NaHCO(流速1.0mL/分)
反応液:なし
検出方法:電気伝導度(サプレッサ使用)
温度:30℃。
2)アニオン分析
カラム:Ion Pac CS12A(DIONEX社製)
移動相:20mMメタンスルホン酸(流速1.0mL/分)
反応液:なし
検出方法:電気伝導度(サプレッサ使用)
温度:30℃。
(参考例3)発酵阻害物質の分析
芳香族化合物・フラン系化合物は下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。なお各分析サンプルは、3500Gで10分間遠心分離を行い、その上清成分を下記分析に供した。
カラム:Synergi HidroRP 4.6mm×250mm(Phenomenex製)
移動相:アセトニトリル−0.1% HPO(流速1.0mL/min)
検出方法:UV(283nm)
温度:40℃。
酢酸、ギ酸は下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。なおなお各分析サンプルは、3500Gで10分間遠心分離を行い、その上清成分を下記分析に供した。
カラム:Shim−PackとShim−Pack SCR101H(株式会社島津製作所製)の直列
移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
検出方法:電気伝導度
温度:45℃。
(参考例4)エタノール濃度分析
エタノール蓄積濃度の測定には、ガスクロマトグラフ法により定量した。Shimadzu GC−2010キャピラリーGC TC−1(GL science) 15 meter L.*0.53mm I.D.,df1.5μmを用いて、水素塩イオン化検出器により検出・算出して評価した。
(実施例1)廃糖蜜の分析
廃糖蜜として、“廃糖蜜(Molasses Agri)”(製造元:オーガニックランド株式会社)を使用した。本廃糖蜜の原料は、サトウキビ由来粗糖である。廃糖蜜の糖成分、有機酸、芳香族・フラン系化合物、無機イオンの分析を参考例1〜4の手順で実施した分析結果を表1〜4に示す。また前記各成分に関し、成分別で累計した濃度を表5に示す。
Figure 2012191878
Figure 2012191878
Figure 2012191878
Figure 2012191878
Figure 2012191878
(実施例2)廃糖蜜からの糖液の製造(工程(1)〜(4))
実施例1で分析した廃糖蜜を使用して、以下手順で工程(1)〜(4)を実施した。
工程(1):
廃糖蜜0.2kgに対して、RO水を添加し、希釈糖液4kgを調整した。
工程(2):
工程(1)の希釈糖液の固液分離を行った。固液分離は、遠心分離(3000g、10分)を行った後、上澄み成分を回収した。上済み成分は、さらに精密濾過膜として、マイレクスHVフィルターユニット(33mm、PVDF製、細孔径0.45μm)を使用して濾過し、溶液成分を得た。
工程(3):工程(2)の溶液成分の限外濾過を行った。限外濾過は、分画分子量10000の限外濾過膜(GE製 SEPA PWシリーズ 機能面材質:ポリエーテルスルホン)平膜をセットした小型平膜濾過装置(GE製 Sepa(登録商標) CF II Med/High Foulant System)を使用して実施した。原水側流速2.5L/分、膜フラックスが0.1m/Dと一定になるように操作圧力を制御しながら5Lのうち4Lを濾過し、糖液を得た。
工程(4):
工程(3)の糖液をナノ濾過膜に通じて濾過し、濃縮糖液を製造した。ナノ濾過膜はDESAL−5L(デザリネーション社製)を小型平膜濾過装置(GE製 Sepa(登録商標) CF II Med/High Foulant System)にセットし、原水温度を25℃、高圧ポンプの圧力を3〜5MPaで濾過処理を行った。この処理により、0.2Lの濃縮糖液および0.8Lの透過液を得た(4倍濃縮)。ナノ濾過膜を使用して得た濃縮糖液を表6に示す。
Figure 2012191878
(実施例3)廃糖蜜からの糖液の製造(工程(4)に逆浸透膜を使用した場合)
実施例1で分析した廃糖蜜を使用して、実施例2と同じ手順で工程(1)〜工程(3)を実施した。工程(4)は、逆浸透膜を使用して濃縮糖液の製造を行った。濃縮糖液の製造は、架橋全芳香族系逆浸透膜“UTC80”(東レ株式会社製)を小型平膜濾過装置(GE製 Sepa(登録商標) CF II Med/High Foulant System)にセットし、原水温度を25℃、高圧ポンプの圧力を3〜6MPaで濾過処理を行った。その結果、表7に示すとおり、工程(4)でナノ濾過膜を使用した場合に比べ発酵阻害物質が濃縮されてしまうことが判明した。
Figure 2012191878
(実施例4、比較例1)糖液を発酵原料とするエタノール発酵試験
実施例2および3記載の濃縮糖液を発酵原料として使用して、酵母(Saccharomycecs cerevisiae OC−2:ワイン酵母)によるエタノール発酵試験を行った。また本発明の糖液との比較のため、廃糖蜜の5倍希釈液(スクロース72g/L、グルコース30g/L、キシロース1.2g/L)も使用した(比較例1)。前述酵母をYPD培地(2% グルコース、1% 酵母エキス(Bacto Yeast Extract/BD社)、2% ポリペプトン(日本製薬株式会社製)にて、1日間25℃で前培養を行った。次に、得られた培養液を、実施例2の濃縮糖液、実施例3の濃縮糖液、比較例1の廃糖蜜希釈液、それぞれに対し、1%(20mL)となるように添加した。微生物を添加後、25℃で2日間インキュベートした。この操作で得られた培養液を参考例4の手順でエタノール蓄積濃度を分析した。その結果、実施例2のナノ濾過膜濃縮した濃縮糖液を発酵原料として使用した場合が、最もエタノール蓄積濃度が優れることが判明した。これに対して逆浸透膜処理(実施例3)に関しては、エタノール蓄積濃度は低いものの、廃糖蜜を希釈しただけの希釈廃糖蜜(比較例1)と比べるとエタノール蓄積濃度は優れることが判明した。
Figure 2012191878
本発明における糖液の製造方法は、廃糖蜜を原料として発酵阻害の低減した糖液を製造でき、各種化学品の発酵原料として使用することができる。

Claims (4)

  1. 以下の工程(1)〜(4)を含む、糖液の製造方法。
    工程(1):廃糖蜜に加水し、希釈糖液を調整する工程、
    工程(2):前記希釈糖液を固液分離し、溶液成分を得る工程、
    工程(3):前記溶液成分を限外濾過膜にてろ過し、透過液として糖液を得る工程、
    工程(4):前記糖液をナノろ過膜および/または逆浸透膜に通じてろ過し、非透過液として濃縮糖液を得る工程。
  2. 工程(1)において希釈糖液の糖濃度を10〜80g/Lの範囲に調整する、請求項1記載の糖液の製造方法。
  3. 工程(3)の前工程として、溶液成分にインベルターゼ処理を行う工程を含む、請求項1または2に記載の糖液の製造方法。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の糖液の製造方法で得られる糖液を発酵原料として化学品を生産する能力を有する微生物を発酵培養する、化学品の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017029799A1 (ja) * 2015-08-18 2017-02-23 日東電工株式会社 イネ科又はウリ科の草本植物由来化合物の製造方法

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