JP2012156144A - 燃料電池システム及びその制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】負荷変動時においても燃料電池の安定した運転状態を維持することができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池2と、燃料電池2に燃料ガスを供給するとともに燃料電池2から排出されたガスを循環させるための燃料ガス系4と、燃料ガス系4からガスを排出するためのパージ弁29と、パージ弁29の開閉動作を制御する制御手段6と、を備えた燃料電池システム1であって、制御手段6は、全負荷領域において、燃料ガス系4内における不純物分圧が一定となるように、パージ弁29の開閉動作を制御する。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池システム及びその制御方法に関する。
従来より、反応ガス(燃料ガス及び酸化ガス)の供給を受けて発電を行う燃料電池を備えた燃料電池システムが実用化されている。かかる燃料電池システムの燃料電池の内部や燃料オフガスの循環流路には、発電に伴って窒素ガス等の不純物が経時的に蓄積することが知られている。現在においては、燃料電池の運転状態を安定化させる目的で、循環流路に接続した排出流路にパージ弁を設け、パージ弁の開閉制御を行って不純物を外部に排出する(パージを行う)燃料電池システムが提案されている。
また、近年においては、燃料ガス系(燃料ガス供給流路や循環流路)内における窒素濃度を略一定に保つように、パージ弁の開度を調整する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかる技術を採用すると、窒素ガスと同時に排出される燃料ガスの排出量を抑制することが可能となる。
特開2004−185974号公報
ところで、従来の燃料電池システムは、燃料電池への負荷や燃料電池の運転温度等に伴って、燃料ガス系内の不純物分圧(窒素ガスや水蒸気の分圧の総和)が変化するように設計されている。このような従来の燃料電池システムにおいては、負荷変動時に燃料ガスのストイキ比不足が生じ、燃料電池の運転状態が不安定になる可能性がある。前記した特許文献1に記載された技術においては、燃料電池の運転状態の安定化を図るためにパージ弁の制御を行っているが、燃料ガス系内における飽和水蒸気を考慮していないため、負荷変動時における運転状態の安定性に改善の余地があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、負荷変動時においても燃料電池の安定した運転状態を維持することができる燃料電池システムを提供すること目的とする。
前記目的を達成するため、本発明に係る燃料電池システムは、燃料電池と、この燃料電池に燃料ガスを供給するとともに燃料電池から排出されたガスを循環させるための燃料ガス系と、この燃料ガス系からガスを排出するためのパージ弁と、このパージ弁の開閉動作を制御する制御手段と、を備えた燃料電池システムであって、制御手段は、全負荷領域において、燃料ガス系内における不純物分圧が一定となるように、パージ弁の開閉動作を制御するものである。
また、本発明に係る燃料電池システムの制御方法は、燃料電池と、この燃料電池に燃料ガスを供給するとともに燃料電池から排出されたガスを循環させるための燃料ガス系と、この燃料ガス系からガスを排出するためのパージ弁と、を備えた燃料電池システムの制御方法であって、全負荷領域において、燃料ガス系内における不純物分圧が一定となるように、パージ弁の開閉動作を制御する工程を備えるものである。
かかる構成及び方法を採用すると、全負荷領域において(低負荷領域から高負荷領域にいたるまで)、燃料ガス系内における不純物分圧が一定となるように、パージ弁の開閉動作を制御することができる。従って、負荷の変動に伴う不純物分圧の変動に起因した燃料ガスのストイキ比不足を抑制することができる。この結果、負荷変動時においても燃料電池の安定した運転状態を維持することが可能となる。
前記燃料電池システムにおいて、燃料電池の運転温度が上昇するほど、燃料ガス系からのガスの排出量を増大させるように、パージ弁の開閉動作を制御する制御手段を採用することができる。
かかる構成を採用すると、燃料電池の運転温度の上昇に起因して燃料ガス系内の水蒸気が増加した場合においても、その増加した水蒸気を効果的に排出することができる。
また、前記燃料電池システムにおいて、燃料供給源から供給される燃料ガスを燃料電池へと流すための燃料ガス供給流路と、燃料電池から排出されたガスを燃料ガス供給流路に循環させるための循環流路と、を有する燃料ガス系を採用するとともに、燃料ガス供給流路の上流側におけるガス圧力を調整して下流側に供給する開閉弁と、循環流路を流通するガスを燃料ガス供給流路へと強制的に送る循環ポンプと、を採用することができる。かかる場合において、燃料ガス系からの燃料ガスの排出量が最小になるように、パージ弁からのガスの排出量と、開閉弁から燃料電池へと供給される燃料ガスの圧力と、循環ポンプにより燃料ガス供給流路へと送られるガスの流量と、を設定する制御手段を採用することができる。
かかる構成を採用すると、燃料ガス系からの燃料ガスの排出量が最小になるように、パージ弁からのガスの排出量(パージ量)と、開閉弁から燃料電池へと供給される燃料ガスの圧力(調圧値)と、循環ポンプにより燃料ガス供給流路へと送られるガスの流量(循環量)と、を設定することができる。従って、燃料ガスの損失を低減させることができ、燃料を節減することが可能となる。
また、前記燃料電池システムにおいて、開閉弁としてインジェクタを採用することができる。
インジェクタとは、弁体を電磁駆動力で直接的に所定の駆動周期で駆動して弁座から離隔させることによりガス状態(ガス流量やガス圧力)を調整することが可能な電磁駆動式の開閉弁である。所定の制御部がインジェクタの弁体を駆動して燃料ガスの噴射時期や噴射時間を制御することにより、燃料ガスの流量や圧力を精度良く制御することが可能となる。
本発明によれば、負荷変動時においても安定した運転状態を維持することができる燃料電池システムを提供することが可能となる。
本発明の実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。 図1に示す燃料電池システムのマップの設計方法(常温:低負荷領域)を説明するためのフローチャートである。 図1に示す燃料電池システムのマップの設計方法(常温:低負荷領域)を説明するためのグラフである。 図1に示す燃料電池システムのマップの設計方法(常温:中〜高負荷領域)を説明するためのフローチャートである。 図1に示す燃料電池システムのマップの設計方法(常温:中〜高負荷領域)を説明するためのグラフである。 図1に示す燃料電池システムの制御パラメータの設定に用いられるマップであり、(A)は負荷とパージ量との関係を示すマップ、(B)は負荷と水素調圧値との関係を示すマップ、(C)は負荷と循環量との関係を示すマップである。 図1に示す燃料電池システムの全負荷領域における不純物分圧を示すグラフである。 図1に示す燃料電池システムのマップの設計方法(高温:全負荷領域)を説明するためのフローチャートである。 図1に示す燃料電池システムの制御方法を説明するためのフローチャートである。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1について説明する。本実施形態においては、本発明を燃料電池車両の車載発電システムに適用した例について説明することとする。
まず、図1を用いて、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1の構成について説明する。
本実施形態に係る燃料電池システム1は、図1に示すように、反応ガス(酸化ガス及び燃料ガス)の供給を受けて電力を発生する燃料電池2を備え、酸化ガスとしての空気を燃料電池2に供給しかつ燃料電池2から酸化オフガスを排出するための酸化ガス系3と、燃料ガスとしての水素ガスを燃料電池2に供給しかつ燃料オフガスとしての水素オフガスを水素ガスとともに燃料電池2に循環させる燃料ガス系4と、が燃料電池2に接続されている。燃料ガス系4は、その内部のガスを外部に排出可能な排気排水弁29を有し、排気排水弁29から排出されるガス(水素オフガス)が希釈部5において酸化ガス系3から排出される酸化オフガス(空気)と混合されて外部に排出可能となっている。そして、システム全体が制御部6により統括制御されている。
燃料電池2は、例えば固体高分子電解質型で構成され、多数の単電池(セル)を積層したスタック構造を備えている。燃料電池2の単電池(セル)は、固体高分子電解質膜の一方の面に空気極(カソード)を有し、他方の面に燃料極(アノード)を有し、さらに空気極及び燃料極を両側から挟みこむように一対のセパレータを有している。アノード側のセパレータの流路に燃料ガスが供給されるとともに、カソード側のセパレータの流路に酸化ガスが供給されることにより、燃料電池2は電力を発生する。燃料電池2には、その運転温度を検出する温度センサ2aが設けられている。温度センサ2aで検出された燃料電池2の運転温度に係る情報は、制御部6に伝送されて、水素循環系の制御に用いられる。
酸化ガス系3は、燃料電池2に供給される酸化ガスが流れる空気供給流路11と、燃料電池2から排出された酸化オフガスが流れる排気流路12と、を有している。空気供給流路11は、酸化ガスを取り込むコンプレッサ14と、コンプレッサ14により圧送される酸化ガスを加湿する加湿器15と、を備えている。排気流路12は、背圧調整弁16を備えるとともに加湿器15に接続されており、排気流路12を流れる酸化オフガスが、背圧調整弁16を通って加湿器15で水分交換に供された後、希釈部5に移送される。
燃料ガス系4は、高圧の水素ガスを貯留した燃料供給源としての水素タンク21と、水素タンク21の水素ガスを燃料電池10に供給するための燃料ガス供給流路としての水素供給流路22と、燃料電池2から排出された水素オフガスを水素供給流路22に戻すための循環流路23と、を備えている。なお、水素タンク21に代えて、炭化水素系の燃料から水素リッチな改質ガスを生成する改質器と、この改質器で生成した改質ガスを高圧状態にして蓄圧する高圧ガスタンクと、を燃料供給源として採用することもできる。また、水素吸蔵合金を有するタンクを燃料供給源として採用してもよい。
水素供給流路22には、水素タンク21からの水素ガスの供給を遮断又は許容する遮断弁24と、水素ガスの圧力を調整するレギュレータ25と、インジェクタ26と、が設けられている。また、インジェクタ26の下流側であって水素供給流路22と循環流路23との合流部の上流側には、水素供給流路22内の水素ガスの圧力を検出する圧力センサ27が設けられている。圧力センサ27で検出された水素ガスの圧力に係る情報は、制御部6に伝送されて、水素循環系の制御に用いられる。
レギュレータ25は、その上流側圧力(一次圧)を、予め設定した二次圧に調圧する装置である。本実施形態においては、一次圧を減圧する機械式の減圧弁をレギュレータ25として採用している。機械式の減圧弁の構成としては、背圧室と調圧室とがダイアフラムを隔てて形成された筺体を有し、背圧室内の背圧により調圧室内で一次圧を所定の圧力に減圧して二次圧とする公知の構成を採用することができる。
インジェクタ26は、弁体を電磁駆動力で直接的に所定の駆動周期で駆動して弁座から離隔させることによりガス流量やガス圧を調整することが可能な電磁駆動式の開閉弁である。本実施形態においては、図1に示すように、水素供給流路22と循環流路23との合流部より上流側にインジェクタ26を配置している。インジェクタ26は、水素ガス等の気体燃料を噴射する噴射孔を有する弁座を備えるとともに、その気体燃料を噴射孔まで供給案内するノズルボディと、ノズルボディに対して軸線方向(気体流れ方向)に移動可能に収容保持され噴射孔を開閉する弁体と、を備えている。本実施形態においては、インジェクタ26の弁体は電磁駆動装置であるソレノイドにより駆動され、このソレノイドに給電されるパルス状励磁電流のオン・オフにより、噴射孔の開口面積を2段階又は多段階に切り替えることができるようになっている。制御部6から出力される制御信号によってインジェクタ26のガス噴射時間及びガス噴射時期が制御されることにより、水素ガスの流量及び圧力が高精度に制御される。インジェクタ26は、弁(弁座及び弁体)を電磁駆動力で直接開閉駆動するものであり、その駆動周期が高応答の領域まで制御可能であるため、高い応答性を有する。
インジェクタ26は、その下流に要求されるガス流量を供給するために、インジェクタ26のガス流路に設けられた弁の開口面積(開度)及び開放時間の少なくとも一方を変更することにより、下流側(燃料電池2側)に供給されるガス流量(又は水素モル濃度)を調整する。なお、インジェクタ26の弁の開閉によりガス流量が調整されるとともに、インジェクタ26下流に供給されるガス圧力がインジェクタ26上流のガス圧力より減圧されるため、インジェクタ26を調圧弁(減圧弁、レギュレータ)と解釈することもできる。また、本実施形態では、ガス要求に応じて所定の圧力範囲の中で要求圧力に一致するようにインジェクタ26の上流ガス圧の調圧量(減圧量)を変化させることが可能な可変調圧弁と解釈することもできる。
循環流路23には、気液分離器28及び排気排水弁29を介して、排出流路30が接続されている。気液分離器28は、水素オフガスから水分を回収するものである。排気排水弁29は、制御部6からの指令によって作動することにより、気液分離器28で回収した水分と、循環流路23内の不純物を含む水素オフガス(燃料オフガス)と、を外部に排出(パージ)するものであり、本発明におけるパージ弁の一実施形態として機能する。かかるパージを実行することにより、不純物分圧が低下し、燃料電池2に供給される水素ガスの濃度が上昇する。また、循環流路23には、循環流路23内の水素オフガスを加圧して水素供給流路22側へ送り出す循環ポンプ31が設けられている。なお、排気排水弁29及び排出流路30を介して排出される水素オフガスは、希釈器5で排気流路12内の酸化オフガスと合流して希釈されるようになっている。
制御部6は、車両に設けられた加速用の操作部材(アクセル等)の操作量を検出し、加速要求値(例えばトラクションモータ等の負荷装置からの要求発電量)等の制御情報を受けて、システム内の各種機器の動作を制御する。なお、負荷装置とは、トラクションモータのほかに、燃料電池2を作動させるために必要な補機装置(例えばコンプレッサ14のモータや循環ポンプ31のモータ等)、車両の走行に関与する各種装置(変速機、車輪制御部、操舵装置、懸架装置等)で使用されるアクチュエータ、乗員空間の空調装置(エアコン)、照明、オーディオ等を含む電力消費装置を総称したものである。
制御部6は、図示していないコンピュータシステムによって構成されている。かかるコンピュータシステムは、CPU、ROM、RAM、HDD、入出力インタフェース及びディスプレイ等を備えるものであり、ROMに記録された各種制御プログラムをCPUが読み込んで所望の演算を実行することにより、後述するパージ制御など種々の処理や制御を行う。
具体的には、制御部6は、負荷(負荷装置からの要求発電量)に応じて、排気排水弁29から排出されるガスの排出量の目標値(パージ量)と、インジェクタ26から燃料電池2へと供給される水素ガスの圧力の目標値(水素調圧値)と、循環流路23から水素供給流路22へと送られるガスの流量の目標値(循環量)と、を所定のマップ(図6)に基づいて設定する。この際、制御部6は、全負荷領域において(低負荷領域から高負荷領域にいたるまで)、燃料ガス系4内における不純物分圧が一定となるように、かつ、燃料ガス系4からの水素ガスの排出量が最小になるように、各制御パラメータ(パージ量、水素調圧値及び循環量)を設定する。そして、制御部6は、設定した各制御パラメータに基づいて、排気排水弁29、インジェクタ26及び循環ポンプ31の動作を制御する。すなわち、制御部6は、本発明における制御手段の一実施形態として機能する。また、制御部6は、燃料電池2の運転温度が上昇するほど、燃料ガス系4からのガスの排出量を増大させるようにパージ量を設定し、この設定したパージ量に基づいて排気排水弁29の開閉動作を制御する。
ここで、図2〜図8を用いて、本実施形態に係る燃料電池システム1の制御パラメータの設定に用いられるマップ(図6)の設計方法について説明する。
<常温:低負荷領域における設計>
最初に、燃料電池2の運転温度が常温(T1)の場合において、代表的な低負荷領域(燃料電池2への要求発電電流値AL)における設計を行う。低負荷領域においては、図2のフローチャートに示すように、まず水素ストイキ比Rを設定する(ストイキ比設定工程:S1)。ここで、水素ストイキ比とは、供給水素ガス量と消費水素ガス量との比(供給水素ガス量を消費水素ガス量で除した値)である。ストイキ比設定工程S1で水素ストイキ比Rを設定した後、パージの際に排出される水素ガスの濃度が所定の環境基準値未満になるように、パージ量ELを設定する(パージ量設定工程:S2)。
次いで、パージ量設定工程S2で設定したパージ量ELにおいて、水素損失が最小となるような水素調圧値を設定する(水素調圧値設定工程:S3)。ここで、水素損失とは、クロスリーク損失(水素透過係数とアノード側水素分圧とセル枚数と電極面積とを乗じた値)と、水素排出損失(排気排水弁29からのガス排出量に燃料電池2の出口における水素濃度を乗じた値)と、循環ポンプ動力損失(循環ポンプ31の動力に基づいて推定される理論水素消費量)と、を加算した値である。低負荷領域においては、水素圧力(水素供給流路22内における水素ガスの供給圧力)と水素損失との関係は、図3のグラフに示すように略線形となる。このため、図3のグラフにおける水素圧力の最小値PLを水素調圧値として設定する。
次いで、ストイキ比設定工程S1で設定した水素ストイキ比Rと、パージ量設定工程S2で設定したパージ量ELと、水素調圧値設定工程S3で設定した水素調圧値PLと、に基づいて、循環量CLを設定する(循環量設定工程:S4)。なお、水素ストイキ比、パージ量、水素調圧値及び循環量の各パラメータは、燃料電池システム1の水素循環系の運転条件に関するパラメータであり、何れか3つのパラメータが決定されると、残り1つのパラメータが自動的に決定されるような関係にあるものとする。
次いで、ストイキ比設定工程S1〜循環量設定工程S4で設定した各パラメータに基づいて運転した場合における燃料電池2の出口の不純物分圧PNHを算出する(不純物分圧算出工程:S5)。ここで、不純物分圧とは、例えば、水素タンク21から供給される水素ガス中に含まれる窒素ガス、酸化ガス系3から固体高分子電解質膜を透過して燃料ガス系4に供給される窒素ガス、燃料電池2の発電により生じた水蒸気、等の水素ガス以外の気体の分圧の総和を意味する。不純物分圧は、主として窒素ガス分圧と水蒸気分圧とに基づいて算出することができる。窒素ガス分圧は、主に水素タンク21から供給される水素ガス中に含まれる窒素分と、カソード側からアノード側へ透過する窒素分と、から算出することができ、水蒸気分圧は、燃料電池2の温度における飽和水蒸気圧により算出することができる。
以上の手順により、常温時の代表的な低負荷領域(燃料電池2への要求発電電流値AL)における設計が終了する。パージ量設定工程S2で設定したパージ量ELは図6(A)のマップに、水素調圧値設定工程S3で設定した水素調圧値PLは図6(B)のマップに、循環量設定工程S4で設定した循環量CLは図6(C)のマップに、各々プロットされることとなる。
<常温:中〜高負荷領域における設計>
次に、代表的な低負荷領域を超える負荷領域、すなわち、燃料電池2への要求発電電流値が中負荷領域に相当する値AM1、AM2、…を経て高負荷領域に相当する値AHにいたるまでの負荷領域における設計を行う。これらの負荷領域(中〜高負荷領域)においては、図4のフローチャートに示すように、まず、低負荷領域における不純物分圧算出工程S5で設定した不純物分圧PNHを維持するように、パージ量EM1、EM2、…、EHを設定する(パージ量設定工程:S11)。
次いで、パージ量設定工程S11で設定したパージ量EM1、EM2、…、EHにおいて、水素損失が最小となるような水素調圧値を設定する(水素調圧値設定工程:S12)。中負荷領域〜高負荷領域においては、水素圧力と水素損失との関係は、図5(A)〜(G)のグラフに示すように略線形ないし非線形の関係となる。このため、図5(A)〜(G)のグラフにおいて水素損失が最小となる水素圧力(PM1、PM2、…、PH)を水素調圧値として設定する。次いで、パージ量設定工程S11で設定したパージ量EM1、EM2、…、EHと、水素調圧値設定工程S12で設定した水素調圧値PM1、PM2、…、PHと、(さらにストイキ比設定工程S1で設定した水素ストイキ比Rと、)に基づいて、循環量CM1、CM2、…、CHを設定する(循環量設定工程:S13)。
以上の手順により、常温時の中〜高負荷領域における設計が終了する。パージ量設定工程S11で設定したパージ量EM1、EM2、…、EHは図6(A)のマップに、水素調圧値設定工程S3で設定した水素調圧値PM1、PM2、…、PHは図6(B)のマップに、循環量設定工程S4で設定した循環量CM1、CM2、…、CHは図6(C)のマップに、各々プロットされ、これにより、全負荷領域におけるマップの設計が完了することとなる。なお、全負荷領域における不純物分圧PNHは、図7のグラフに示すように一定とされる。
<高温:全負荷領域における設計>
続いて、燃料電池2の運転温度が常温(T1)より高い温度(T2)になった場合における設計を行う。かかる高温時においては、まず、常温時の代表的な低負荷領域において設定した各パラメータ(パージ量EL、水素調圧値PL、循環量CL)に基づいて運転した場合における燃料電池2の出口の不純物分圧PNH´を算出する(不純物分圧算出工程:S21)。高温時の不純物分圧算出工程S21で算出される不純物分圧PNH´は、燃料電池2の運転温度が上昇している分だけ水蒸気分圧が増大しているため、常温時の不純物分圧算出工程S5で算出される不純物分圧PNHよりも高くなる。
次いで、不純物分圧算出工程S21で設定した不純物分圧PNH´を維持するように、パージ量EM1´、EM2´、…、EH´を設定する(パージ量設定工程:S22)。この後、パージ量設定工程S22で設定したパージ量EM1´、EM2´、…、EH´と、水素調圧値PM1、PM2、…、PHと、(さらにストイキ比設定工程S1で設定した水素ストイキ比Rと、)に基づいて、循環量CM1´、CM2´、…、CH´を設定する(循環量設定工程:S23)。なお、本実施形態においては、設計の簡素化のため、高温時においても常温時の水素調圧値PM1、PM2、…、PHを採用している。
以上の手順により、高温時の全負荷領域における設計が終了する。パージ量設定工程S22で設定したパージ量EM1´、EM2´、…、EH´を図6(A)のマップにプロットすると、高温時におけるパージ量(T2:破線)は、常温時におけるパージ量(T1:実線)よりも増大していることがわかる。
次に、図9のフローチャートを用いて、本実施形態に係る燃料電池システム1の制御方法について説明する。
まず、燃料電池システム1の制御部6は、車両に設けられたアクセルセンサ等からの信号を受けて、燃料電池2への負荷(要求発電電流値)を算出する(負荷算出工程:S31)。また、制御部6は、温度センサ2aを用いて、燃料電池2の運転温度を検出する(温度検出工程:S32)。
次いで、制御部6は、負荷算出工程S31で算出した負荷と、温度検出工程S32で検出した温度と、図6のマップと、に基づいて、パージ量と、水素調圧値と、循環量と、を設定する(制御パラメータ設定工程:S33)。例えば、算出した負荷がAMであり、検出した温度がT1である場合には、図6(A)〜(C)に示すように、パージ量はEM、水素調圧値はPM、循環量はCMに各々設定される。また、算出した負荷がAMであり、検出した温度がT2である場合には、図6(A)に示すように、パージ量はEM´に設定される。
続いて、制御部6は、制御パラメータ設定工程S33で設定した各制御パラメータ(パージ量、水素調圧値、循環量)に基づいて、インジェクタ26、排気排水弁29及び循環ポンプ31の動作を制御する(循環制御工程:S34)。循環制御工程S34において、制御部6は、排気排水弁29を開放した時点からのガス排出量を算出し、この算出したガス排出量が設定したパージ量に到達した時点で、排気排水弁29を閉鎖する。また、循環制御工程S34において、制御部6は、圧力センサ27で検出した水素ガスの圧力値と、設定した水素調圧値と、の偏差を算出し、この偏差を低減させるようにインジェクタ26のフィードバック制御を行う。また、循環制御工程S34において、制御部6は、循環ポンプ31から水素供給流路22に送られるガスの流量が設定した循環量になるように、循環ポンプ31の回転数を制御する。
以上説明した実施形態に係る燃料電池システム1においては、全負荷領域において、燃料ガス系4内における不純物分圧が一定となるように、排気排水弁29の開閉動作を制御することができる。従って、負荷の変動に伴う不純物分圧の変動に起因した水素ガスのストイキ比不足を抑制することができる。この結果、負荷変動時においても燃料電池2の安定した運転状態を維持することが可能となる。
また、以上説明した実施形態に係る燃料電池システム1においては、燃料電池2の運転温度が上昇するほど、燃料ガス系4からのガスの排出量(パージ量)を増大させるように、排気排水弁29の開閉動作を制御することができる。従って、燃料電池2の運転温度の上昇に起因して燃料ガス系4内の水蒸気が増加した場合においても、その増加した水蒸気を効果的に排出することができる。
また、以上説明した実施形態に係る燃料電池システム1においては、燃料ガス系4からの水素ガスの排出量が最小になるように、排気排水弁29からのガスの排出量(パージ量)と、インジェクタ26から燃料電池2へと供給される水素ガスの圧力(水素調圧値)と、循環ポンプ31により水素供給流路22へと送られるガスの流量(循環量)と、を設定することができる。従って、水素ガスの損失を低減させることができ、燃料を節減することが可能となる。
なお、以上の実施形態においては、排気と排水との双方を実現させる排気排水弁29をパージ弁として採用した例を示したが、気液分離器28で回収した水分を外部に排出する排水弁と、循環流路23内のガスを外部に排出するための排気弁(パージ弁)と、を別々に設け、制御部6で排気弁を制御することもできる。
また、以上の実施形態においては、本発明に係る燃料電池システムを燃料電池車両に搭載した例を示したが、燃料電池車両以外の各種移動体(ロボット、船舶、航空機等)に本発明に係る燃料電池システムを搭載することもできる。また、本発明に係る燃料電池システムを、建物(住宅、ビル等)用の発電設備として用いられる定置用発電システムに適用してもよい。
1…燃料電池システム、2…燃料電池、4…燃料ガス系、6…制御部(制御手段)、22…水素供給流路(燃料ガス供給流路)、23…循環流路、26…インジェクタ(開閉弁)、29…排気排水弁(パージ弁)、31…循環ポンプ。

Claims (5)

  1. 燃料電池と、前記燃料電池に燃料ガスを供給するとともに前記燃料電池から排出されたガスを循環させるための燃料ガス系と、前記燃料ガス系からガスを排出するためのパージ弁と、前記パージ弁の開閉動作を制御する制御手段と、を備えた燃料電池システムであって、
    前記制御手段は、全負荷領域において、前記燃料ガス系内における不純物分圧が一定となるように、前記パージ弁の開閉動作を制御するものである、
    燃料電池システム。
  2. 前記制御手段は、前記燃料電池の運転温度が上昇するほど、前記燃料ガス系からのガスの排出量を増大させるように、前記パージ弁の開閉動作を制御するものである、
    請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記燃料ガス系は、燃料供給源から供給される燃料ガスを前記燃料電池へと流すための燃料ガス供給流路と、前記燃料電池から排出されたガスを前記燃料ガス供給流路に循環させるための循環流路と、を有し、
    前記燃料ガス供給流路の上流側におけるガス圧力を調整して下流側に供給する開閉弁と、
    前記循環流路を流通するガスを前記燃料ガス供給流路へと強制的に送る循環ポンプと、を備え、
    前記制御手段は、前記燃料ガス系からの燃料ガスの排出量が最小になるように、前記パージ弁からのガスの排出量と、前記開閉弁から前記燃料電池へと供給される燃料ガスの圧力と、前記循環ポンプにより前記燃料ガス供給流路へと送られるガスの流量と、を設定するものである、
    請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
  4. 前記開閉弁は、インジェクタである、
    請求項3に記載の燃料電池システム。
  5. 燃料電池と、前記燃料電池に燃料ガスを供給するとともに前記燃料電池から排出されたガスを循環させるための燃料ガス系と、前記燃料ガス系からガスを排出するためのパージ弁と、を備えた燃料電池システムの制御方法であって、
    全負荷領域において、前記燃料ガス系内における不純物分圧が一定となるように、前記パージ弁の開閉動作を制御する工程を備える、
    燃料電池システムの制御方法。
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