JP2012154662A - プラント計装系のノイズ耐性評価方法および評価装置 - Google Patents

プラント計装系のノイズ耐性評価方法および評価装置 Download PDF

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Abstract

【課題】インバータなどの動力機器が実プラントに据え付けられた状態で発生するノイズの計装系に与える影響を事前に評価することのできる評価装置及び評価方法を提供する。
【解決手段】動力ケーブルから計装ケーブルに伝わるコモンモード電流の伝達関数測定手段16と、動力ケーブル10で発生するノイズ波形を発生する任意信号発生器20、この任意信号を入力とし、測定した伝達関数の出力として計算する伝達特性演算器21、コモンモード-ノーマルモード変換器22、閾値余裕演算器23、総合閾値余裕演算器24、総合閾値余裕表示器25からなるノイズ耐性評価装置を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、原子力発電プラント等に用いる電動機システムなどの動力系でのノイズや計測制御システム等の計装系の誤動作に至るノイズの制御技術に係わる。本発明は、特に動力系発生ノイズが計装系側に与える影響の評価技術に関し、プラントに設置した動力系の発生ノイズの影響による計装系の誤動作の発生の可能性を評価するプラント計装系のノイズ耐性評価方法およびノイズ耐性評価装置に関する。
近年の原子力発電プラントでは、運転効率向上のために動力機器の電源としてインバータを用いる割合が高まりつつある。また、信頼性向上のため無停電電源装置も多数導入されてきている。このような電源装置は、スイッチングと平滑化により所望の振幅、周波数の電圧を生成して負荷に供給している。特に、最近のスイッチング素子は、効率向上のために非常に高速にスイッチングすることができ、その結果生じる電磁ノイズは振幅が大きく周波数が高くなる傾向がある。
例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子では、スイッチング時間が数百ナノ秒程度まで短くなっており、MHzオーダーの高周波ノイズが発生する。また、従来から電動弁などのオンオフ制御に利用されているリレー装置であるコンタクタも、周波数が高く振幅の大きなノイズ電流を発生することが知られている。このような使用動力機器の変遷により、原子力発電プラント内の電磁ノイズのバックグランドレベルが高くなってきている。
一方、原子力発電プラント内には、種々の微弱信号を計測する計装システムが設けられている。例えば、中性子計装システムは、原子炉に燃料が装荷されている全期間にわたって、原子炉内の中性子束及び出力を計測するために、中性子検出器として中性子源領域モニタ、中間領域モニタ、出力領域モニタを設置し、これら中性子検出器からの非常に微弱な信号を扱っている。特に、原子炉内の出力を監視する核計装系のうち定期検査中などの停止時及び起動時に使用する中性子源領域モニタは、1μA以下の微弱信号を扱っているため高周波ノイズの影響を受けやすい。
このような核計装系は、原子炉安全保護系に指示値を出力するため、万一、その中性子検出器からの信号にノイズが重畳されると、誤警報や誤スクラムを引き起こす可能性がある。
そこで、特許文献1では電動機などの動力系システム発生ノイズが計装システムに与える影響を評価するノイズ影響評価装置が提案されている。特許文献1においては、ノイズ影響評価のために動力系システムにノイズ電流を注入し、動力ケーブルに流れるコモンモード電流と計装ケーブルに流れるコモンモード電流を測定し、測定した2つのコモンモード電流の比率(伝達率)から、動力ケーブルから計装ケーブルへのノイズの伝わりやすさを示す技術を開示している。特許文献1では、さらにプラント運転時は注目動力系以外のノイズも大きいため、伝達率測定のために注入したノイズの影響を選択的に抽出して評価する方法に注目して複数の伝達率測定手段を開示している。
計装系のノイズによる誤動作の有無を考える場合に特に重要なのは、動力系の発生ノイズ波形に対して計装系にどのようなノイズ影響が現れるかを知ることである。特許文献1では、動力系のノイズ波形をサンプリングしてノイズ注入器で実機動力系に注入し、誤動作が発生するかどうかを調べている。この方法では、注入ノイズ波形の影響をどの程度受けているのか、他系統からのノイズに対しどの程度余裕があるのかが明確にならない可能性があり、この解決方法については特に開示されていない。
特開2009−293931号公報
近年、既設の電源設備を高効率のインバータに更新する等の改良工事がさまざまなプラントで実施されている。その際、インバータなどの新しい設備の稼動前に、この設備が与えるノイズ影響を確認しておくことは、例えば核計装系のような微弱信号システムを有する原子力発電プラントなどではとりわけ重要である。
動力系からのノイズの計装系への影響を正確に知るには、注入信号として動力系から注入されるコモンモード電流をあらかじめ測定して計装系へ注入する必要がある。動力ケーブルに注入したコモンモード電流が原因で計装ケーブルに現れるノイズ電流成分を測定できれば、その影響の大きさが評価できる。
一般的には、動力ケーブルに発生するコモンモード電流と計装ケーブルのコモンモード電流間の伝達率や、動力ケーブルに発生するノイズの周波数成分、もしくはノイズ波形の測定は簡単ではない。これは、プラント内の種々の高周波数ノイズ源ノイズが対象とする計測系や制御系にバックグランドノイズとして混入して、計装系において検出した信号の発生源を特定できないためである。
一方、他のノイズ源と区別できるように本来の運転条件よりも大きなノイズを発生するような運転は不可能である。つまり、動力系のノイズに変換されるエネルギーが大きくこれを超えた振幅のノイズ注入が実際には難しいことによる。
このように、通常のプラント運転状態では、対象とする計測系や制御系に生じたノイズの波形を観測し、あるいは周波数特性を利用しても、注目する動力ケーブルからのノイズの寄与分を抽出することができない。また、通常のプラント運転時、影響評価のために実ノイズを超えるレベルの模擬ノイズを注入するには、大掛かりな設備が必要になる可能性がある。
本発明は上述の従来技術の課題を解決すべくなされたもので、その目的は、インバータなど特定の機器が、実プラントに据え付けられた状態で発生するノイズの影響を、事前に評価することのできる評価方法および評価装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明においては、プラント起動前の各種動力機器からの発生ノイズが小さい状態のときに、動力系から計装系へのコモンモードノイズの伝播特性を測定する。
本発明では従来の伝達率に加えて、ゲイン及び位相からなる伝達関数を測定する。つまり複数の周波数成分が重なった信号でも、その影響評価が可能な特性、すなわち伝達関数を用いる。
また、計装系のノイズ耐性評価は、実測した伝搬特性や、その他の必要な特性を元に計算により算出する。その他の必要な特性とは、ひとつは、動力系運転時のノイズ電流であるコモンモード電流波形とその振幅であり、測定もしくは推定により求めておく。また、計装系ケーブルを流れるコモンモード電流が信号レベルに変換されるノーマルモード変換率に関する特性も実測もしくは推定しておく。
さらに、誤作動が発生する信号の閾値レベルの周波数特性も実測もしくは推定しておく。各特性の推定は工場試験時のデータ等を用いて行う。
動力ケーブルに、電流注入手段によって外部から高周波数のコモンモード電流を注入し、動力ケーブルに設けた第1電流測定手段によって、前記動力ケーブルに流れる第1コモンモード電流i1を計測し、計装システムの信号ケーブルに設けた第2電流測定手段によって、前記第1コモンモード電流i1により誘起された第2コモンモード電流i2を計測し、第1コモンモード電流i1と第2コモンモード電流値に基づき、その間の伝達関数を算出し、あらかじめ測定してある動力系動作時の代表的なノイズ電流波形を前記で算出した伝達関数の入力として用いて計装系のコモンモード電流を算出し、このコモンモード電流と、あらかじめ算出してあるコモンモード-ノーマルモード変換特性を用いてノーマルモード信号レベルを算出し、このノーマルモード信号レベルとあらかじめ求めてある計装系の誤動作の閾値レベルを元に計装系の誤動作の閾値レベルに達するまでの余裕を計算して示すことで、プラント計装系のノイズ耐性をモニタする。
本発明によれば、動力ケーブルに設けた第1電流測定手段によって動力ケーブルに流れる第1コモンモード電流i1を計測するステップと、計装系の計装ケーブルに設けた第2電流測定手段によって計装ケーブルに誘起された第2コモンモード電流i2を計測するステップと、第1コモンモード電流値と第2コモンモード電流値に基づき両コモンモード電流間の伝達関数を算出するステップと、動力系動作時の代表的ノイズ電流波形を伝達関数に入力して計装系の第2コモンモード電流i2を算出するステップと、算出した計装系の第2コモンモード電流i2を、あらかじめ算出したコモンモード-ノーマルモード変換特性をもつコモンモード-ノーマルモード変換器に入力してノーマルモード信号に変換するステップと、ノーマルモード信号レベルが計装系の誤動作の閾値レベルに達するまでの余裕を評価する閾値余裕を算出するステップとにより、プラント運転直前のノイズが少ないタイミングで動力系から計装系に伝搬するコモンモード電流の伝達関数を測定するため、広い周波数範囲に渡って正確な伝達関数を求めることができ、この伝達関数を用いることで複数の周波数成分を有する動力系で発生するコモンモードノイズに対する計装系側の応答を正確に求めることができる。従って、計装系の耐ノイズ性を定量的に表す指標の閾値余裕を計算できるようになる。
また、閾値余裕を用いることで、計装系の耐ノイズ性能管理が容易になり、必要に応じてノイズ抑制回路の付加やその効果の評価が可能になり、誤作動が発生しにくい計装系を実現することにより、プラント運転の信頼性向上や稼働率向上に優れた効果がある。
本発明の実施例1を適用したプラント計装系の構成を示すブロック図である。 本発明の実施例1のノイズ耐性評価装置の誤動作閾値余裕演算部を示すブロック図である。 本発明の実施例1の動力ケーブルのコモンモードノイズ電流波形を示すグラフである。 本発明の実施例1の計装ケーブルに現れたコモンモードノイズ電流を示すグラフである。 本発明の実施例1のコモンモードノイズ電流の周波数分析結果を示すスペクトル図である。 本発明の実施例1の周波数に対するノーマルモード電圧閾値特性を示すグラフである。 本発明の実施例2のノイズ耐性評価装置の誤動作閾値余裕演算部を示すブロック図である。
以下に、本発明の実施の形態を実施例および図面を用いて説明する。
〔制御対象プラントの基本構成〕
図1は、本発明の実施例1において、動力機器を有する動力系から発生するノイズに対する原子力発電プラントの核計装系へのノイズの影響を評価するために、ノイズ耐性評価装置100を適用した例を示すブロック図である。ここでは動力機器が電動機システムの場合を示す。
図1において、原子力発電プラント内には、原子炉圧力容器1内に挿入された核計装管2と、核計装管2に収納されて原子炉圧力容器1内の熱中性子による電離作用によって微弱電流を発生させる中性子検出器3と、中性子検出器3の出力である微弱電流信号を伝達する核計装ケーブル4と、微弱電流信号を増幅する前置増幅器5を有する。さらに前置増幅器5の出力信号は中性子監視装置6に伝送される。
このように、核計装系は微弱信号を用いて原子炉圧力容器1内の中性子を計測している。そこで、他の動力機器等からのノイズの影響を受けにくくするために、中性子検出器3、核計装ケーブル4、前置増幅器5および中性子監視装置6からなる核計装系は、接地線7により接地幹線8へ一点で接地されている。
また、原子力発電プラント内には、動力機器として電動機9と、動力ケーブル10と、出力フィルタ11と、インバータ電源12とからなる電動機システムを有する。電動機システムは、電動機9が接地線7を介して接地幹線8へ接地され、インバータ電源12も接地線7を介して接地幹線8に接地されている。このため、インバータ電源12、出力フィルタ11、動力ケーブル10、電動機9、接地線7および接地幹線8で形成された大きなループにインバータ電源で発生した高周波ノイズ電流が重畳されることによって、コモンモード電流(第1コモンモード電流i1)が流れる。
本発明における第1コモンモード電流i1とは、上記のように電動機9とインバータ電源12を接続する動力ケーブル10と、接地幹線8と、接地線7とによって形成されたループに流れるノイズ電流を意味する。
第1コモンモード電流i1は、ケーブル間の電磁誘導または共通の接地幹線を経由して、僅かではあるが核計装系に伝搬され、核計装系にコモンモード電流(第2コモンモード電流i2)を生じさせる。
本発明における第2コモンモード電流i2とは、上記のように第1コモンモード電流i1により生じ、計装システムの信号ケーブルまたは制御ケーブルからなる核計装ケーブル4と、接地線7と接地幹線8との間で構成されるループに流れるノイズ電流を意味する。
〔ノイズ耐性評価装置〕
ノイズ耐性評価装置100は、電流注入器13、第1電流測定器14、第2電流測定器15、伝達関数測定装置16、任意信号発生器20、伝達特性演算器21、コモンモード-ノーマルモード変換器22、ノイズ最大値推定器23、総合閾値余裕演算器24および総合閾値余裕表示器25からなる。
伝達関数測定器16には、図示しない信号発生器及び2つの信号レベル測定器が内蔵されている。内蔵している信号発生器から正弦波信号を発生して電流注入器13に信号を供給し、供給信号により動力ケーブル10に発生する電流を第1電流測定器14で測定し、その出力を伝達関数測定器16の一方の信号レベル測定器入力に接続する。
また、同時に計装ケーブル4に流れる電流を第2電流測定器15で測定し、その出力を伝達関数測定器16の他方の信号レベル測定器入力に接続する。伝達関数測定器16の信号発生器では、動力ケーブル10を流れる電流と計装ケーブル4間を流れる電流の伝達関数を把握するに充分な範囲で周波数の走査を行う。また、信号発生器からの信号注入レベルは、外乱ノイズより充分大きくなるように、第1電流測定器14、第2電流測定器15の測定値を確認しながら調整する。
伝達関数測定器16はいわゆる同期検波で第1電流測定器14と第2電流測定器15の測定値振幅比率と位相とを測定し、伝達関数を決定する。測定した2つの電流信号の同一周波数成分のみの振幅と位相測定をするため、極めて雑音に強い。
次に,伝達関数測定器16で測定し決定した伝達関数を伝達関数演算器21にセットする。一方、動力系運転時に、動力ケーブルを流れるノイズ電流波形の代表的波形をあらかじめ準備してノイズ電流波形発生手段としての任意信号発生器20にセットしておく。コモンモード-ノーマルモード変換器22は、計装ケーブル4に流れるコモンモード電流のうちの一部をノーマルモードに変換する場合の周波数特性をセットした演算器であり、第2のコモンモード電流からノーマルモード電圧を算出する機能を有する。ここで言うノーマルモード電圧とは、前置増幅器5の出力電圧である。
ノイズ最大値推定器23は、ノーマルモード電圧Vn(f)から時間領域のノーマルモード電圧の最大値を推定する機能を有する。
総合閾値余裕演算部24は、あらかじめ測定もしくは推定した計装が誤動作にいたる閾値とノーマルモード電圧の最大値を比較して、その閾値までの余裕を算出する機能を有する。ここで、閾値余裕に総合という名称を付加したのは、単一の周波数の評価ではなく、注目すべき全周波数の閾値余裕であることを示すためである。演算の結果は、総合閾値余裕表示器25に表示される。
〔閾値余裕演算プロセス〕
図2にノイズ耐性評価装置100の閾値余裕演算装置の動作を説明するためのブロック図を示す。任意信号発生器20には、動力ケーブル10に現れる第1コモンモード電流i1波形の観測時間中の最大振幅からなる代表的な波形の周波数領域表現のS1(f)が記録されている。以下では一般的に用いられる(f)を周波数領域、(t)を時間領域として用いる。次段の伝達関数演算器21が周波数領域で演算するため、任意信号発生器20でも周波数領域表現をしている。
任意信号発生器20の出力と、動力ケーブル10と計装ケーブル4間のコモンモードノイズ電流の伝達関数G1(f)との積を計算することで、計装ケーブル4上の第2コモンモード電流i2(f)を求めることができる。言うまでもなく、S1(f)、G1(f)はともに振幅と位相を含む複素表現である。よって、S1(f)、G1(f)それぞれの各周波数ごとの複素数の積がi2(f)の各周波数ごとの値となる。ここで計装ケーブル4上に第2コモンモード電流i2(f)が流れることで、計装ケーブル4の芯線とシールド間にわずかのノーマルモード電圧が現れる。
このコモンモード電流からノーマルモードに変換する特性をCN(f)と表記する。あらかじめ計装ケーブル4にコモンモード電流が流れたとき現れるノーマルモード電圧の周波数ごとの振幅と位相を測定しておくことで、コモンモード-ノーマルモード変換器22に変換特性CN(f)を得ることができる。
コモンモード-ノーマルモード変換器22により、第1のコモンモード電流のS1(f)によって生じる計装ケーブル4上の第2コモンモード電流i2(f)からノーマルモード電圧Vn(f)が計算できる。
次に、ノイズ最大値推定器23は、ノーマルモード電圧Vn(f)から時間領域のノーマルモード電圧の最大値を推定する機能を有する。ノイズ最大値推定器23はフーリエ逆変換部と最大値検出部からなる。内蔵するフーリエ逆変換部でVn(f)から時間領域信号のVn(t)に変換し、最大値検出部でVn(t)の最大値Vn_max1を算出する。
総合閾値余裕演算部24は、あらかじめ測定もしくは推定した計装が誤動作にいたる閾値とノーマルモード電圧の最大値を比較して、その閾値までの余裕を算出する機能を有する。図2に示すように、誤動作閾値設定部と差演算部からなる。ノーマルモード電圧の最大値Vn_max1と、誤動作閾値Vthとの差を演算して出力する。総合閾値余裕演算部24の出力Vmargin1は、ノーマルモード電圧の最大値Vn_max1が誤動作に達するまでの余裕を示している。
総合閾値余裕演算部24の演算結果である総合閾値余裕Vmargin1は、総合閾値余裕演算器25で表示する。
〔検出ノイズ電流波形〕
図3は、動力ケーブル10の第1コモンモード電流i1波形の例である。また図4は、同一タイミングで観察した計装ケーブル4上の第2コモンモード電流波形である。図3と図4では、全く違った周波数が観測されているように見える。
それぞれのコモンモード電流の周波数成分を確認した結果を、図5の周波数分析スペクトル図に示す。図3、図4からは、図3の波形に起因して図4の波形が現れることが直感的に理解しにくい。しかし、図5のスペクトル図において周波数分析して比較すると、低周波成分も高周波成分も、第1コモンモード電流i1波形Aにも第2コモンモード電流波形Bにも存在し、より低周波の減衰が大きいものの、図3の動力ケーブルの第1コモンモード電流i1(ノイズ)が図4の計装ケーブルに伝播している可能性が高いことが分る。
図3〜5から、単に動力ケーブルのノイズ信号をサンプリングして印加しても、計装ケーブルのコモンモード電流波形を直接観察する方法では、その影響評価が困難なことがわかる。つまり、動力ケーブルの第1コモンモード電流i1で支配的な周波数成分のみに注目し、他の周波数成分が計装ケーブル上の第2コモンモード電流i2に現れても、動力ケーブルに注入した信号によるとは判然としないからである。
注目動力系統以外の系統のノイズが混入する状況ではなおさら判然としないことは明らかである。当然、閾値余裕のような定量評価も困難である。なお、図5のパワースペクトルは、それぞれのコモンモード電流の周波数分布が見やすいように、縦軸のレベルを変更して分離して示してある。
〔コモンモード-ノーマルモード変換特性〕
図2の説明で示したように、ノイズ耐性を評価する指標として本発明では閾値余裕を用いている。閾値余裕は任意信号発生器20、伝達特性演算器21、コモンモード-ノーマルモード変換器22に設定されている特性、および総合閾値余裕演算器24に設定されている特性から明らかになる。
図6はコモンモード-ノーマルモード変換特性22の一例であり、周波数依存性があることが分る。計装の種類によるが、一般的に感度の高い周波数域で誤動作に対する感度が高くなる。同じコモンモード信号の振幅でも、ノーマルモードに変換しやすい周波数としにくい周波数があるのが分る。当然、複数の周波数成分が存在すれば、誤動作もそれらの成分の重ねあわせで生じることになるので、この特性も考慮して誤動作の有無を評価すべきことが分る。
図2の構成において、周波数領域で議論したが、任意信号発生器20ではサンプリングした時間領域の信号のうちの振幅の大きな信号を発生させ、伝達特性演算器21では測定した振幅と位相からなる伝達関数を実数と虚数からなる複素数に変換して用い、同様にコモンモード-ノーマルモード変換器22では、測定もしくは実測した振幅と位相からなるコモンモード-ノーマルモード変換特性を複素数に変換した特性を用いてノーマルモード電圧Vn(f)を算出し、ノイズ最大値推定器23では前述したように計算機上実行可能なIFFTいわゆるフーリエ逆変換によりVn(f)を時間領域信号Vn(t)に変換する。総合閾値余裕演算器24では時間領域信号の最大振幅と、実測等で得た誤動作閾値レベルVthとの差から閾値余裕を計算する。
図7は本発明の実施例2を示す。実施例2は、実施例1に比較して計算を簡易化してある。すなわち、実施例1では全ての特性を振幅と位相の複素数で表現していたが、実施例2では、各周波数ごとの伝達率のみを用いているため、個々の計算や、あらかじめ準備必要な特性測定が簡易となっている。任意信号発生器20等の実現形態は実施例1と違っているため、相違することを示すためサフィックスaをつけて表現する。
実施例2では、実施例1に比べて振幅の伝達率のみの計算を行う点が相違する。大きな相違点はノイズ最大値推定器23aであり、周波数ごとの振幅の2乗和の平方根で最大値を求めている。これにより、実施例1に比べて簡易な装置の実現が可能となる。
なお、本発明においては、インバータ電源を備えた電動機システムをノイズ源と想定した場合について説明したが、ノイズ源はこれに限定されない。本実施形態は、動力ケーブルと接地線、接地幹線によりループが構成される動力システムと計装システムのつながりを評価するのに適用可能な方式である。
3:中性子検出器
4:核計装ケーブル
5:前置増幅器
6:中性子監視装置
7:接地線
8:接地幹線
9:電動機
10:動力ケーブル
11:出力フィルタ
12:インバータ電源
13:電流注入器
14:第1電流測定器
15:第2電流測定器
16:伝達関数測定装置
20:任意信号発生器
21:伝達特性演算器
22:コモンモード-ノーマルモード変換器
23:ノイズ最大値推定器
24:総合閾値余裕演算器
25:総合閾値余裕表示器
100:ノイズ耐性評価装置

Claims (5)

  1. プラント内の動力ケーブルを有する動力系の発生するノイズ電流が、前記プラント内の計装ケーブルを有する計装系へ与える影響を評価するプラント計装系ノイズ耐性評価方法において、
    前記動力系の動力ケーブルに外部から高周波数の第1コモンモード電流i1を注入するステップと、
    前記動力ケーブルに設けた第1電流測定手段によって、前記動力ケーブルに流れる第1コモンモード電流を計測するステップと、
    前記計装系の計装ケーブルに設けた第2電流測定手段によって、前記第1コモンモード電流により前記計装ケーブルに誘起された第2コモンモード電流を計測するステップと、
    前記第1コモンモード電流値と前記第2コモンモード電流値に基づき、第1コモンモード電流を入力とし第2コモンモード電流を出力とした両コモンモード電流間の伝達関数を算出するステップと、
    あらかじめ準備した動力系動作時の代表的ノイズ電流波形を前記伝達関数に入力して前記計装系の第2コモンモード電流を算出するステップと、
    動力系動作時の代表的ノイズ電流波形を用いて算出した前記計装系の第2コモンモード電流を、あらかじめ算出したコモンモード-ノーマルモード変換特性をもつコモンモード-ノーマルモード変換器に入力してノーマルモード信号に変換するステップと、
    前記ノーマルモード信号レベルが計装系の誤動作の閾値レベルに達するまでの余裕を評価する閾値余裕を算出するステップと
    からなることを特徴とするプラント計装系のノイズ耐性評価方法。
  2. 請求項1に記載されたプラント計装系のノイズ耐性評価方法において、
    前記コモンモード-ノーマルモード変換特性の測定ステップにおいて、前記計装ケーブルをループに配置してコモンモード電流を注入し、注入した前記コモンモード電流と該コモンモード電流に対応する変換されたノーマルモード信号の関係をコモンモード-ノーマルモード変換特性とすることを特徴とするプラント計装系のノイズ耐性評価方法。
  3. 請求項1に記載されたプラント計装系のノイズ耐性評価方法において、
    前記ノーマルモード信号レベルと計装系の誤動作の閾値レベルに達するまでの閾値余裕を算出するステップは、各周波数ごとのノーマルモード信号レベルを分子とし閾値レベルを分母とした比率の2乗和の平方根を、閾値余裕として算出することを特徴とするプラント計装系のノイズ耐性評価方法。
  4. プラント内に設置された動力ケーブルを有する動力系が発生するノイズ電流が、計装ケーブルを有する計装系へ与える影響を評価するプラント計装系のノイズ耐性評価装置において、
    前記動力系の動力ケーブルに、外部から高周波数のコモンモード電流を注入する電流注入手段と、前記動力ケーブルに設けた第1コモンモード電流を測定する第1電流測定手段と、計装系の前記計装ケーブルに設けた第2コモンモード電流を測定する第2電流測定手段と、前記第1電流測定手段と前記第2電流測定手段のコモンモード電流測定結果に基づいて前記第1コモンモード電流と前記第2コモンモード電流間の伝達関数を演算する伝達関数測定手段を有し、
    あらかじめ準備した前記動力ケーブルを流れるノイズ電流波形を発生する任意信号発生手段と、前記伝達関数を用いてあらかじめ準備した前記動力ケーブルを流れるノイズ電流を前記計装ケーブル上のコモンモード電流に変換する伝達特性演算手段と、あらかじめ準備したコモンモード電流-ノーマルモード電圧変換特性を基に計装システムのノーマルモード電圧を算出するコモンモード/ノーマルモード変換手段を備え、あらかじめ準備した誤動作閾値特性を基に閾値余裕を演算する閾値余裕演算手段を備えたことを特徴とするプラント計装系のノイズ耐性評価装置。
  5. 請求項4に記載されたプラント計装系のノイズ耐性評価装置において、前記閾値余裕演算手段は各周波数毎の閾値余裕を演算する閾値余裕演算器と、全周波数の閾値余裕を演算する総合閾値余裕演算器を有することを特徴とするプラント計装系のノイズ耐性評価装置。
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