JP2012152453A - 人工関節 - Google Patents

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Abstract

【課題】摩耗粉の発生や異物の混入を防止することができ、かつ、耐荷重性に優れる人工関節を提供する。
【解決手段】硬質材料層とエラストマー層とが交互に積層、接着してなる多層構造体を有する弾性可動部を有する人工関節。
【選択図】図1

Description

本発明は、摩耗粉の発生や異物の混入を防止することができ、かつ、耐荷重性に優れる人工関節に関する。
高齢者が独立した生活を営むため、変形関節症等の加齢に伴う変成疾患や骨粗鬆症等の運動器疾患の治療の重要性がますます高まっている。運動器疾患の治療には、人工関節、義肢、運動補助ロボット等が利用されている。人工関節においては、80歳を越える健康高齢者の増加とともに、再置換手術を必要とする症例が増加傾向にあり、緩みがなく再置換手術を必要としない人工関節の研究、開発が進められている。
人工関節には、生体適合性、機械的強度、弾性、耐久性等の特性が要求される。人工関節では、可動部を関節の自由度に応じて球面、円柱面、円錐面、鞍形面等の形状を有する摺動構造としたり、可動部における一方の軸と他方の軸の間を可撓性の材料で接続したりすることにより可動部に可動性が付与されている。
例えば、特許文献1には、摺動部に超高分子量ポリエチレンを使用した人工関節が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示されているようなポリエチレンを用いた人工関節は、摺動部における摺動によって摺動面が摩耗し、生じた摩耗粉が摺動面上に混入して摩耗が更に進行し、摺動機能が損なわれるという問題があった。摩耗粉の発生は、人工関節の摺動機能に悪影響を及ぼすという問題だけでなく、バルク状態では生体適合性が良好な材料であっても、摩耗粉のように微細化された粉末ではマクロファージによる貧食を経て線維腫発生の原因になるという問題もあった。
摺動部における摩耗による摩耗量は、用いる材料の組み合わせによって異なる。例えば、特許文献2、特許文献3には、摺動部にアルミナ、ジルコニア等のセラミック材料や金属材料を使用した人工関節が開示されている。しかしながら、セラミック材料は破壊靭性値が低いという問題があった。また、摺動部が金属同士を組み合わせた構造を有する場合にも摩耗粉の発生が問題となっていた。
特許文献4、特許文献5には、可動部を構成する一方の軸と他方の軸との間を可撓性の材料で接続した人工関節が開示されているが、これらは単に可動部が柔軟な材料で接続されているだけであるため、変形量が大きくなる形状を必要とする人工関節の場合、可撓性の材料の部分を大きくする必要があり、大きな荷重が掛かった際に挫屈することがあるという問題があった。
特開平9−122222号公報 特開平5−168691号公報 特開平3−186272号公報 国際公開第97/040786号パンフレット 国際公開第05/117764号パンフレット
本発明は、摩耗粉の発生や異物の混入を防止することができ、かつ、耐荷重性に優れる人工関節を提供することを目的とする。
本発明は、硬質材料層とエラストマー層とが交互に積層、接着してなる多層構造体を有する弾性可動部を有する人工関節である。
以下に本発明を詳述する。
本発明者は、人工関節の可動部を、硬質材料層と、エラストマー層とが交互に積層、接着してなる多層構造体を有する弾性可動部とすることにより、摩耗粉の発生や異物の混入を防止することができ、かつ、耐荷重性に優れる人工関節を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の人工関節は、摺動構造によって可動性を有する人工関節と異なり、可動部が多層構造体による中実構造を有するため、摩耗粉の発生や異物の混入を防止することができる。また、剪断変形が可能であるため、平面と平面とを接続する形状のみでなく、凸球面と凹球面、凸円柱面と凹円柱面、凸円錐面と凹円錐面、凸鞍形面と凹鞍形面といった組み合わせの二つの面を接続することにより変形量が大きくなる形状であっても耐荷重性に優れ、エラストマー層の凝集力により関節の引っ張り方向にも抵抗力を有する。
本発明の人工関節は弾性可動部を有する。
上記弾性可動部は、硬質材料層とエラストマー層とが交互に積層、接合してなる多層構造体を有する。本発明の人工関節は上記多層構造体を、可動部を構成する軸となる部材と接合し、該軸同士を接続することにより、可動性を付与することができる。
上記硬質材料層を構成する硬質材料としては、生体適合性に優れる材料であれば特に限定されず、例えば、シリコーンレジン、ポリウレタンレジン、ポリウレタン尿素ゴム、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン等の樹脂材料や、ステンレス、チタン、チタン合金、コバルト・クロム合金等の金属材料や、セラミック材料等が挙げられる。また、上記硬質材料は繊維を含む材料であってもよく、多穴板や多孔質材料であってもよい。これらの硬質材料は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
JIS K6253(タイプA)に準拠して測定した、上記硬質材料の硬度の好ましい下限は50である。上記硬質材料の硬度が50未満であると、耐荷重性が低下することがある。
上記硬質材料の硬度のより好ましい下限は65である。
上記硬質材料層はエラストマーにより接着されていることが好ましいが、硬質材料層とエラストマー層は接着剤により接合することもできる。上記接着剤は生体適合性に優れる材料から適宜選定される。
上記硬質材料層は、上記エラストマー層や接着剤との密着性を向上させるため、粗化、カップリング、コーティング等の表面処理をしていることが好ましい。
上記硬質材料層の1層の膜厚は特に限定されないが、好ましい下限は20μm、好ましい上限は3mmである。上記硬質材料層の1層の膜厚が20μm未満であると、製造が困難になることがある。上記硬質材料層の1層の膜厚が3mmを超えると、例えば、球関節、円柱関節等の場合、多層化した際に最外層と最内層の面積が大きく異なり外層と内層の変形量が異なり内層部分が弱くなることがある。
上記硬質材料層の1層の膜厚のより好ましい下限は50μm、より好ましい上限は2mmである。
上記エラストマー層を構成するエラストマーとしては、柔軟で生体適合性に優れ、かつ、上記硬質材料との密着性に優れる材料であれば特に限定されず、例えば、シリコーンゲル、シリコーンゴム、ポリジメチルシリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ポリウレタン尿素ゴム、アクリルエラストマー、ポリウレタン、ニトリル系ゴム、水素添加ニトリル系ゴム、天然ゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、熱可塑性エラストマー、ポリフッ化ビニリデンに由来するセグメントを有する共重合体、フルオロエラストマー、シロキサン結合及びアクリロイルオキシ基を有する共重合体等が挙げられる。これらのエラストマーは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
特に柔軟なエラストマーとしては、破断時伸び率が900%を超え、引っ張り強度が0.03〜2MPaのシリコーンゲルやウレタンゲルが開発されている。
上記エラストマーは、生体適合性に劣るモノマー、オリゴマー成分を不純物として含有しないことが好ましい。
また、多層構造体の側面をより生体適合性の良いエラストマーでコーティングすることが好ましい。
また、得られる人工関節の関節を折り曲げる枢動の変形量を大きくしたい場合は、上記エラストマーとして、シリコーンゲルを用いたり、架橋点が滑車構造である架橋ポリロタキサン構造にしたりする等の方法を用いることができる。
本発明の人工関節において、関節を折り曲げる枢動時の変形抵抗を小さくするためには剛性の小さなエラストマーを使用することが好ましい。上記剛性の小さなエラストマーは、ポリマーの分子量を小さくする、ポリマーの架橋点を少なくする、ポリマーの絡み合いを少なくする、滑車効果を持つポリロタキサン構造にする、主鎖のポリマーの剛直性を小さくする等の従来公知の方法を用いて得ることができる。
JIS K2207(針入度)に準拠して測定した上記エラストマーの硬度の好ましい下限は140、JIS K6253(タイプA)に準拠して測定した上記エラストマーの硬度の好ましい上限は30である。JIS K2207(針入度)に準拠して測定した上記エラストマーの硬度が針入度140未満であると、耐荷重によりエラストマーを挟んだ硬質材料層同士が接触し易くなることがある。また、JIS K6253(タイプA)に準拠して測定した上記エラストマーの硬度が30を超えると、関節を可動する際に大きな力が必要になることがある。JIS K2207(針入度)に準拠して測定した上記エラストマーの硬度のより好ましい下限は針入度90、JIS K6253(タイプA)に準拠して測定した上記エラストマーの硬度のより好ましい上限は20である。
上記多層構造体が曲面を有する形状を有し、外側の層と内側の層との面積が大きく異なる場合は、小面積側のエラストマー層の剛性を大面積側のエラストマー層より大きくすることが好ましい。
また、本発明の人工関節において、関節を折り曲げる枢動時の変形抵抗の大きさは、弾性可動部の多層構造体の面積を変更したり、多層構造体のエラストマー層の膜厚や層数を変更したりすることによっても調節できる。
上記エラストマー層の1層の膜厚は特に限定されないが、好ましい下限は30μm、好ましい上限は3mmである。上記エラストマー層の1層の膜厚が30μm未満であると、耐荷重によりエラストマーを挟んだ硬質材料層同士が接触し易くなることがある。上記エラストマー層の1層の膜厚が3mmを超えると、例えば、球関節、円柱関節等の場合、多層化した際に最外層と最内層の面積が大きく異なり外層と内層の変形量が異なり内層部分が弱くなることがある。上記エラストマー層の1層の膜厚のより好ましい下限は100μm、より好ましい上限は1000μmである。
上記多層構造体における上記エラストマー層の層数は特に限定されないが、好ましい下限は2層、好ましい上限は75層である。上記エラストマー層の層数が2層未満であると耐荷重性が低下することがある。上記エラストマー層の層数が75層を超えると、多層構造体を適正な厚さで製造することが困難になることがある。上記エラストマー層の層数のより好ましい下限は3層、より好ましい上限は50層である。
上記多層構造体全体の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は0.1mm、好ましい上限は30mmである。上記多層構造体全体の厚さが0.1mm未満であると、上記エラストマー層を挟んだ上記硬質材料層同士が接触し易くなることがある。上記多層構造体全体の厚さが30mmを超えると、得られる人工関節の強度を確保できないことがある。上記多層構造体全体の厚さのより好ましい下限は0.2mm、より好ましい上限は24mm、更に好ましい下限は0.3mm、更に好ましい上限は21mm、更により好ましい下限は0.4mm、更により好ましい上限は19mm、特に好ましい下限は0.5mm、特に好ましい上限は17mm、特により好ましい下限は0.6mm、特により好ましい上限は15mmである。
上記多層構造体は、接合部が平面からなる形状であってもよいが、曲面を有する形状であることが好ましく、球面、円柱面、円錐面、又は、鞍形面を有する形状であることがより好ましい。本発明の人工関節は、単に可動部を柔軟な材料で接続しただけの構造を有する人工関節と異なり、剪断変形が可能な上記多層構造体で可動部を接続することにより、可動部が曲面を有することにより変形量が大きくなる形状である場合であっても大きな荷重に耐えることができる。
上記多層構造体が球面を有する形状である場合の本発明の人工関節の一例を模式的に示した断面図を図1に示した。図1において、骨頭1とソケット2とは、硬質材料層3と、エラストマー層4とが交互に積層してなる多層構造体によって接続されている。また、本発明の人工関節は、図1に示すように剪断変形が可能である。このように、上記多層構造体が球面を有する形状である場合、二軸(二方向)の自由度に加えて、軸の回転の自由度の三つの自由度を有する人工関節となる。
また、上記多層構造体が円錐面や円柱面を有する形状である場合、一軸(一方向)の自由度を有する人工関節となる。この際、骨頭やソケットを支える土台であるステムを、上記多層構造体の円錐面や円柱面の中心軸に垂直となるように取り付ければ、蝶番関節やラセン関節になる。
上記多層構造体が鞍形面を有する形状である場合、二方向の自由度を有する人工関節となる。
上記多層構造体は、軸と接合する面を平面とすることもできる。
本発明の人工関節は、継手として使用することもできる。本発明の人工関節を継手として使用する場合において、上記多層構造体と軸とが接合する面を平面とすることにより、継手自体を回転する際の軸の芯ズレを解消することができる。
また、本発明の人工関節は、義肢に使用することができる。更に、人工筋肉と組み合わせて自然な外観を呈するロボットに使用することができる。
上記弾性可動部は、可動部における軸となる一対の部材の平面と平面、凸球面と凹球面、凸半円柱面と凹半円柱面、凸円錐面と凹円錐面、凸鞍形面と凹鞍形面といった組み合わせの面を上記多層構造体により接続された構造であってもよいし、例えば、平面と平面との接続と、凸半円柱面と凹半円柱面との接続のように、二種類の面の接続を組み合わせた構造であってもよい。また、上記多層構造体は、プレス等により、形状を連続的に変化させてもよい。例えば、平面から凹半円柱面に連続的に変化させた多層構造体を用いれば、可動部における軸となる一対の部材の一方の平面と他方の凸半円柱面とを接続することができる。
本発明によれば、摩耗粉の発生や異物の混入を防止することができ、かつ、耐荷重性に優れる人工関節を提供することができる。
多層構造体が球面を有する形状である場合の本発明の人工関節の一例を模式的に示した断面図である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1)
エッチングにより表面を粗化した厚さ200μmのSUS316合金シートに液状のシリコーンゴムを500μmの膜厚となるように塗布した。エッチングにより表面を粗化した径50mmのSUS316合金の円筒も同様に液状のシリコーンゴムを500μmの膜厚となるように塗布した。次いで、液状のシリコーンゴムを塗布したSUS316合金の円筒に、液状のシリコーンゴムを塗布したSUS316合金シートを20回巻き付け、150℃で30分間加熱処理することによりシリコーンゴムを硬化させ、表面に多層の硬質材料層とエラストマー層とが積層された円柱を作製した。得られた円柱を直径方向に半分に切断し半円筒状の骨頭を作製した。得られた骨頭と、径80mmのかまぼこ状の凹形状を持つSUS316合金からなるソケットとを、骨頭の凸部とソケットの凹部とが重なるように半円柱状のシリコーンゴムで接着した。その後、50mmの長さに切断し径80mm長さ50mmの半円筒状の人工関節を作製し、骨頭側とソケット側とにステムを接続した。
得られた関節は110度の枢動が可能であり、20kgの引っ張り荷重によっても破損しなかった。また、枢動や荷重を加えた際のシリコーンゴムの変形は均一であった。このようにして、半円柱面を有する形状の多層構造体を作製し、一軸(一方向)に自由度を有し、圧縮に対する抗力と引っ張りに対する抵抗力を有し、かつ、なめらかな動きをする関節が得られた。
(比較例1)
径50mmの半円柱状の骨頭と径80mmのかまぼこ状の凹形状を有したソケットを作製し、その間を内径50mm外径80mmの半円筒状のシリコーンゴムで接続したこと以外は実施例1と同様にして、多層構造体を有さない関節を作製した。得られた関節に実施例1と同様にして荷重を加えると、実施例1と比較して大きく変形した。また、枢動や荷重を加えた際のシリコーンゴムの変形は部位によって不均一であった。そのため、比較例1で作製した関節は、繰り返しの枢動や荷重を加えた際に変形の大きな部位からの早期の破断が発生することが考えられる。
本発明によれば、摩耗粉の発生や異物の混入を防止することができ、かつ、耐荷重性に優れる人工関節を提供することができる。
1 骨頭
2 ソケット
3 硬質材料層
4 エラストマー層

Claims (3)

  1. 硬質材料層とエラストマー層とが交互に積層、接着してなる多層構造体を有する弾性可動部を有することを特徴とする人工関節。
  2. 多層構造体は、曲面を有する形状であることを特徴とする請求項1記載の人工関節。
  3. 多層構造体は、球面、円柱面、円錐面、又は、鞍形面を有する形状であることを特徴とする請求項2記載の人工関節。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017002223A1 (ja) * 2015-07-01 2017-01-05 株式会社ナントー インプラント、フィクスチャー、アバットメント、基端側骨コンポーネント、先端側骨コンポーネント

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