JP2012149550A - 多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガスセンサの出力値のバラツキを考慮して、気筒間インバランス割合が異常であるか否かをオンボードで検知する多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法を提供すること。
【解決手段】多気筒内燃機関の運転条件が所定条件を満たすか否かが判断される(S110)。所定条件を満たすと判断された場合に(S110:YES)、ガスセンサの出力値が取得される(S130)。多気筒内燃機関と、ガスセンサとを用いて予め実測された変化の割合であって、気筒間インバランス割合の特定量変化に対するガスセンサの出力値の振幅の変化の割合に基づき設定された補正量を用いてガスセンサの出力値が補正された場合の、ガスセンサの出力値の振幅が取得される(S140からS180)。振幅に基づいて、気筒間インバランス割合が、基準閾値よりも大きいと判断される場合が、気筒間インバランス異常として検知される(S190:YES)。
【選択図】図9
【解決手段】多気筒内燃機関の運転条件が所定条件を満たすか否かが判断される(S110)。所定条件を満たすと判断された場合に(S110:YES)、ガスセンサの出力値が取得される(S130)。多気筒内燃機関と、ガスセンサとを用いて予め実測された変化の割合であって、気筒間インバランス割合の特定量変化に対するガスセンサの出力値の振幅の変化の割合に基づき設定された補正量を用いてガスセンサの出力値が補正された場合の、ガスセンサの出力値の振幅が取得される(S140からS180)。振幅に基づいて、気筒間インバランス割合が、基準閾値よりも大きいと判断される場合が、気筒間インバランス異常として検知される(S190:YES)。
【選択図】図9
Description
本発明は、複数の気筒を備える内燃機関である多気筒内燃機関において、気筒間インバランス割合が過大となっている場合を検知する、多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法に関する。
従来、自動車に搭載されている内燃機関では、内燃機関で燃焼される混合気の空気と燃料との混合割合、すなわち、空燃比の制御が行われている。具体的には、内燃機関では、内燃機関の排気通路に設けられたガスセンサの出力値に基づき空燃比が検知され、検知された空燃比が目標とする空燃比に一致するようにフィードバック制御が実施されている。
多気筒内燃機関では、通常全気筒に対し同一の制御量を用いて空燃比制御が実行される。ところが、多気筒内燃機関では、空燃比制御が実行された場合にも、種々の理由によって、実際の空燃比が気筒間でばらつくことがある。実際の空燃比が気筒間でばらつく理由としては、例えば、一部の気筒でのインテークマニフォールドのリーク、一部の気筒の燃料噴射系の異常、が挙げられる。多気筒内燃機関において、気筒間における空燃比のバラツキの度合い(以下、「気筒間インバランス割合」ともいう。)が過大になった場合、排気エミッションを悪化させてしまう可能性がある。特に、自動車に搭載されている多気筒内燃機関では、排気エミッションが悪化した車両の走行を未然に防止するため、気筒間インバランス割合が過大となっていることが、車載状態(オンボード)で検知されることが求められている。そこで、気筒間インバランス割合が過大になったか否かを判断する機能を備えた多気筒エンジンの空燃比制御装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
一般に、同じ構成を有するガスセンサ(換言すれば、同一品番のガスセンサ)であっても、製造誤差及び排気管に対するガスセンサの装着方向等に起因して、ガスセンサの出力値にはバラツキが生じることがある。一方、同じ構成を有する多気筒内燃機関であっても、製造誤差に起因して、気筒間インバランス割合にはバラツキがあることがある。したがって、多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常をオンボードで検知する場合には、以下のような問題がある。すなわち、気筒間インバランス割合の検知に用いられるガスセンサのバラツキが大きいほど、気筒間インバランス割合が過大になっているか否かを判断するのに用いる閾値を設定することが困難である。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ガスセンサの出力値のバラツキを考慮しつつ、気筒間インバランス割合が異常であるか否かをオンボードで検知する多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、第1態様の多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法は、複数の気筒を備える内燃機関である多気筒内燃機関の排気通路に配置されたガスセンサの出力値に基づき、前記複数の気筒間の空燃比のバラツキの度合いである気筒間インバランス割合が過大となっている場合を、気筒間インバランス異常として検知する多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法であって、前記多気筒内燃機関の運転条件が所定条件を満たすか否かを判断する判断工程と、前記判断工程において、前記多気筒内燃機関の前記運転条件が前記所定条件を満たすと判断された場合に、前記ガスセンサの出力値を取得する出力値取得工程と、前記多気筒内燃機関と、前記ガスセンサとを用いて予め実測された変化の割合であって、前記気筒間インバランス割合の特定量変化に対する前記ガスセンサの前記出力値の振幅の変化の割合に基づき設定された補正量を用いて前記ガスセンサの前記出力値を補正した場合の、前記ガスセンサの前記出力値の振幅を取得する振幅取得工程と、前記振幅取得工程において取得された前記振幅に基づいて、前記気筒間インバランス割合が、前記気筒間インバランス割合に関する基準となる閾値である基準閾値よりも大きいと判断される場合を、前記気筒間インバランス異常として検知する異常検知工程と
を備えている。
を備えている。
インバランス割合の変化に対するガスセンサの出力値の振幅の変化は、原点を通る1次直線に近似可能である。したがって、ガスセンサの出力値の振幅から、気筒間インバランス割合を推定可能である。しかし、インバランス割合の変化に対するガスセンサの出力値の振幅の変化の割合は、同一の構成を有するガスセンサ間でバラツキがあることがある。これに対し、第1態様の多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法では、ガスセンサの出力値の振幅に含まれる、ガスセンサ個体間の出力値のバラツキの影響を、ガスセンサ個体の変化の割合を用いて算出された補正量を用いて低減させる。ガスセンサ個体の変化の割合とは、ガスセンサと、内燃機関とを用いて予め実測したインバランス割合の特定量変化に対するガスセンサの出力値の振幅の変化の割合である。したがって、第1態様の多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法によれば、ガスセンサ個体間の出力値のバラツキを考慮しつつ、気筒間インバランス割合が異常であるか否かをオンボードで検知することができる。
第2態様の多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法は、複数の気筒を備える内燃機関である多気筒内燃機関の排気通路に配置されたガスセンサの出力値に基づき、前記複数の気筒間の空燃比のバラツキの度合いである気筒間インバランス割合が過大となっている場合を、気筒間インバランス異常として検知する多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法であって、前記多気筒内燃機関の運転条件が所定条件を満たすか否かを判断する判断工程と、前記判断工程において、前記多気筒内燃機関の前記運転条件が前記所定条件を満たすと判断された場合に、前記ガスセンサの出力値の振幅を取得する振幅取得工程と、前記多気筒内燃機関と、前記ガスセンサとを用いて予め実測された変化の割合であって、前記気筒間インバランス割合の特定量変化に対する前記ガスセンサの前記出力値の振幅の変化の割合及び当該変化の割合に基づき設定された値の少なくともいずれかと、前記振幅取得工程で取得された前記振幅とに基づき、前記気筒間インバランス割合が、前記気筒間インバランス割合が異常であるか否かを判断する基準となる前記気筒間インバランス割合に関する閾値である基準閾値よりも大きいと判断される場合を、前記気筒間インバランス異常として検知する異常検知工程とを備えている。
ガスセンサの出力値の振幅には、複数のガスセンサ間の出力値のバラツキの影響が含まれる。第2態様の多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法では、このバラツキの影響を、ガスセンサ個体の変化の割合及び変化の割合に基づき設定された値を用いて考慮して、気筒間インバランス割合に異常があるか否かを判断する。したがって、第2態様の多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法によれば、ガスセンサの出力値のバラツキを考慮して、気筒間インバランス割合が異常であるか否かをオンボードで検知することができる。
第2態様の多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法において、前記異常検知工程では、前記基準閾値及び前記基準閾値に対応する閾値であって、前記ガスセンサの前記出力値の振幅に関する閾値である対応閾値の少なくともいずれかを、前記変化の割合に基づき補正した値である補正閾値の少なくともいずれかと、前記振幅取得工程で取得された前記振幅とに基づき、前記気筒間インバランス割合が、前記基準閾値よりも大きいと判断される場合を、前記気筒間インバランス異常として検知してもよい。
この場合の多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法では、ガスセンサの出力値の振幅に含まれる、複数のガスセンサ間の出力値のバラツキの影響を、ガスセンサ個体の変化の割合を用いて補正閾値を算出することによって低減させる。したがって、多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法によれば、ガスセンサの出力値のバラツキを考慮して、気筒間インバランス割合が異常であるか否かをオンボードで検知することができる。
以下、本発明を具体化したセンサ制御装置の第1及び第2の実施形態について、図面を参照して順に説明する。参照する図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いるものであり、記載している装置の構成及びフローチャート等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。以下の説明において、図2の上下方向、左右方向をそれぞれ、ガスセンサ1の左右方向、上下方向として説明する。
第1及び第2の実施形態のセンサ制御装置4は、物理的構成と電気的構成が同じである。まず、図1を参照して、多気筒内燃機関(以下、単に「内燃機関」という。)100と、内燃機関100に取り付けられるセンサ制御装置4との概略的な構成について説明する。内燃機関100は、直列に配置された4つの気筒111から114を備え、ガソリンを燃料として用いて駆動するエンジンである。内燃機関100には、内燃機関100から排出される排気ガスを車外に放出するための排気管102が接続されている。センサ制御装置4は、ガスセンサ1と、ECU3とを備える。ガスセンサ1は、排気管102の経路上に取り付けられる。ガスセンサ1は、排気管102に流通するガスを検知対象ガスとする全領域空燃比センサ(酸素センサ)である。
ECU3は、ガスセンサ1とは離れた位置に配置されており、バッテリ80から電力の供給を受けて駆動する。ガスセンサ1と、ECU3とは、ハーネス91(信号線)を介して電気的に接続されている。ガスセンサ1は、ECU3によって通電制御されるとともに、ECU3に対して検知対象ガス中の酸素濃度に応じた電気信号を出力する。ECU3は、ガスセンサ1の出力に基づき空燃比を算出し、内燃機関100の空燃比のフィードバック制御を実行する。また、ECU3は、内燃機関100を駆動するための各種制御を実行する。
次に、図2を参照して、ガスセンサ1について説明する。ガスセンサ1は、検知素子10と、ヒータ素子40と、ハウジング(図示省略)とを備える。検知素子10は、固体電解質体11,13と、絶縁基体12,24とを、固体電解質体13,絶縁基体12,固体電解質体11,絶縁基体24の順に積層した構造を有する。固体電解質体11,13と、絶縁基体12,24と、後述する絶縁基体17,18とは、いずれも細長い板状に形成されており、図2ではガスセンサ1の長手方向と直交する断面を模式的に示している。固体電解質体11,13は、イットリアを安定化剤に用いた部分安定化ジルコニアを主成分とする材料によって形成され、酸素イオン伝導性を有する。絶縁基体12,24は、アルミナを主成分とする材料によって形成される。ヒータ素子40は、固体電解質体11,13の早期活性化と、固体電解質体11,13の活性の安定性維持とのために、固体電解質体13に積層されている。ハウジングは、検知素子10と、ヒータ素子40とを内部に保持し、排気管102(図1参照)に取り付けられる。以下、ガスセンサ1が備える検知素子10と、ヒータ素子40とについて詳述する。
まず、図2を参照して、検知素子10の構成を説明する。検知素子10は、検知室23と、拡散律速部15と、酸素ポンプセル27(以下、「Ipセル27」という。)と、酸素分圧検知セル28(以下、「Vsセル28」という。)と、絶縁基体12,24とを備える。検知室23は、排気管102(図1参照)内を流通する排気ガスが導入される小空間である。検知室23は、固体電解質体11と、固体電解質体13と、拡散律速部15と、絶縁基体12とによって囲まれている。拡散律速部15は、検知室23の幅方向(図1の紙面左右方向)の両端にある。拡散律速部15は、多孔質状の部材(例えば、アルミナ)によって形成され、検知室23内に検知対象ガスを導入する際の流入量を規制する。
Ip1セル27は、固体電解質体11と、多孔質性の電極19,20とを備える。電極19,20は、Ptを主成分とする材料によって形成される。Ptを主成分とする材料としては、例えば、Ptと、Pt合金と、Pt及びセラミックスを含むサーメットとが挙げられる。電極20は、固体電解質体11の面のうち、検知室23側の面に設けられている。電極19は、固体電解質体11の面のうち、検知室23側の面とは反対側の面に設けられている。すなわち、検知素子10の積層方向において、一対の電極19,20は、固体電解質体11を挟むように配置されている。固体電解質体11の上面には、絶縁基体24が積層されている。絶縁基体24は、電極19の上部となる位置に開口29を有し、開口29には保護層25が設けられている。保護層25は、セラミックス(例えば、アルミナ)からなる多孔質性の部材によって形成され、電極19が検知対象ガスに含まれるシリコン等の被毒成分によって劣化しないように、電極19の上面を覆っている。
Ip1セル27は、電極19,20間に電流が供給されることで、電極19が接する雰囲気(検知素子10の外部の雰囲気)と電極20が接する雰囲気(検知室23内の雰囲気)との間で、酸素の汲み出し及び汲み入れ(いわゆる酸素ポンピング)を行う。
Vsセル28は、固体電解質体13と、多孔質性の電極21,22とを備える。固体電解質体13は、検知室23を挟んで固体電解質体11と対向するように配置されている。電極21は、固体電解質体13の面のうち、検知室23側の面に設けられている。電極22は、固体電解質体13の面のうち、検知室23側の面とは反対側の面に形成されている。すなわち、検知素子10の積層方向において、一対の電極21,22は、固体電解質体13を挟むように配置されている。電極21,22は、上述のPtを主成分とする材料によって形成される。
Vsセル28は、主として、固体電解質体13によって隔てられた2つの雰囲気(電極21と接する検知室23内の雰囲気と、電極22と接する雰囲気)間の酸素分圧差に応じて起電力を発生する。また、電極22は、絶縁基体17によって排気管102(図1参照)を流通するガスと接触しないように閉塞されている。そして、電極22は、詳細は後述するが、検知室23内の酸素濃度の検知のための基準となる酸素濃度を維持する酸素基準電極として機能する。
次に、図2を参照して、ヒータ素子40の構成を説明する。ヒータ素子40は、検知素子10(特に、固体電解質体11,13)を加熱して活性化させる。ヒータ素子40は、発熱抵抗体26と、絶縁基体17,18とを備える。発熱抵抗体26は、白金を主成分とする材料によって構成され、絶縁基体17と絶縁基体18との間に挟まれている。絶縁基体17,18は、アルミナを主成分とする材料によって形成される。
次に、図2を参照して、ECU3の構成について説明する。ECU3は、自動車に搭載された内燃機関100と、ガスセンサ1とを制御する。図2のように、ECU3は、マイクロコンピュータ9と、センサ制御回路としてのASIC(特定用途向け集積回路)30と、ヒータ電圧供給回路50とを構成主体としている。マイクロコンピュータ9は、公知の構成のCPU6と、ROM7と、RAM8と、EEPROM5とを搭載したマイコンチップである。ROM7には、CPU6が実行する各種制御プログラムと、制御プログラム実行時に参照される各種パラメータとが記憶されている。
図2のように、ASIC30は、Ip検知回路31と、Ip駆動回路32と、抵抗検知回路33と、電圧出力回路34と、基準電圧比較回路35と、Icp供給回路36とを備える。
Ip検知回路31は、Ipセル27の電極19,20間に流れる電流Ipを電圧変換し、変換した電圧を検知信号としてマイクロコンピュータ9に出力する。抵抗検知回路33は、定期的に、予め規定された値の電流をVsセル28に通電し、その通電に応答して得られる電圧変化量(電圧Vsの変化量)を検知するための回路である。抵抗検知回路33によって検知された電圧Vsの変化量を示す値は、マイクロコンピュータ9に出力される。マイクロコンピュータ9では、抵抗検知回路33から出力された値と、ROM7に記憶されている電圧Vsの変化量とVsセル28のインピーダンスRiとが予め関連付けられたテーブルとに基づいて、Vsセル28のインピーダンスRiが求められる。Vsセル28のインピーダンスRiは、Vsセル28の温度、すなわち、検知素子10全体の温度と相関があり、マイクロコンピュータ9は、Vsセル28のインピーダンスRiに基づいて、ガスセンサ1(検知素子10)の温度を検知する。
電圧出力回路34は、Vsセル28の電極21,22間に生ずる起電力Vsを検知する。基準電圧比較回路35は、予め定められた基準電圧と、電圧出力回路34において検知された起電力Vsとの比較を行い、比較結果をIp駆動回路32に出力する。Ip駆動回路32は、基準電圧比較回路35から出力された比較結果に基づき、Ipセル27の電極19,20間に供給する電流Ipの大きさ及び向きを制御する。Icp供給回路36は、Vsセル28の電極22から電極21へ向かって流れる微小電流Icpを供給する。
ヒータ電圧供給回路50は、CPU6から指示に応じて、発熱抵抗体26の両端に印加される電圧Vhを公知のPI制御のもと生成したり、発熱抵抗体26の両端に一定の電圧(例えば、12V)を印加したりすることで、発熱抵抗体26を発熱させる。
図2に示すように、ECU3には、内燃機関100を制御するための各種センサと、各種装置とが電気的に接続されている。各種センサには、例えば、内燃機関100のクランク角(クランク軸の回転状態であるクランク角)を検知するクランク角度センサ104と、冷却水の温度を検知する水温センサ106とがある。各種装置には、例えば、ECU3から指示された量の燃料を、ECU3から指示された気筒に供給する燃料噴射装置103がある。ECU3には、さらに、内燃機関100のインバランス割合の異常を報知する故障警告灯105が電気的に接続されている。
次に、図2を参照して、ガスセンサ1を用いて検知対象ガスの酸素濃度(排気ガスの空燃比)を検知する動作について簡単に説明する。なお、検知対象ガスの酸素濃度を検知する際には、基準電圧比較回路35で比較対象となる基準電圧(例えば450mV)が設定される。まず、Icp供給回路36は、Vsセル28の電極22から固体電解質体13を介して電極21に向けて微小電流Icpを供給する。この通電により、検知対象ガス中の酸素は、酸素イオンとなって、固体電解質体13を介して電極21側から電極22側に移動する(汲み込まれる)。Vsセル28に電流Icpが供給されると、酸素イオンは電極21側から電極22側に移動して電極22自身及び周囲に酸素が蓄積され、検知対象ガス中の酸素濃度に応じた起電力Vsを発生させるための基準となる酸素濃度雰囲気が生成される。電圧出力回路34は、両電極21,22間の起電力Vsを検知し、検知した起電力Vsを基準電圧比較回路35に出力する。基準電圧比較回路35は、起電力Vsと基準電圧とを比較し、比較結果をIp駆動回路32に出力する。Ip駆動回路32は、基準電圧比較回路35による比較結果に基づいて、起電力Vsが基準電圧となるように、Ipセル27の電極19,20間に供給する電流Ipの大きさ及び向きを制御する。これにより、Ipセル27による検知室23内への酸素の汲み入れ又は検知室23からの酸素の汲み出しが行われる。
なお、検知室23内に流入した排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチであった場合、Ipセル27において外部から検知室23内に酸素を汲み入れるように、電極19,20間に供給される電流Ipの大きさや向きが制御される。一方、検知室23内に流入した排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであった場合、Ipセル27において検知室23から外部へ酸素を汲み出すように、電極19,20間に供給される電流Ipの大きさ及び向きが制御される。このときの電流Ipは、Ip検知回路31において電圧変換され、電圧変換された信号は、検知信号としてマイクロコンピュータ9に出力される。マイクロコンピュータ9(CPU6)は、検知信号に基づいて検知対象ガス中に含まれる酸素濃度対応値、ひいては空燃比を算出する。
次に、図3を参照して、第1の実施形態の内燃機関100の異常検知処理の原理について概説する。気筒間インバランス割合(以下、単に「インバランス割合」ともいう。)(%)が増減する理由には、上述のように、内燃機関での燃焼に関わる種々の要因が挙げられる。本実施形態では特に、燃料供給量に着目し、インバランス割合を、燃料供給量ズレを起こしている1つの気筒の燃料供給量Qiと、燃料供給量ズレを起こしていないその他の気筒の燃料供給量Qsとの差を、燃料供給量Qsで除した値の百分率であると定義する。
インバランス割合が0(%)であり、且つ、ガスセンサ1の出力値のバラツキが0である場合、内燃機関100の1燃焼サイクル(本実施形態では、クランク角720度サイクル)での空燃比の変動は0である。インバランス割合が大きくなると、インバランス割合が小さい場合に比べ、1燃焼サイクルでの空燃比の変動は大きくなる。すなわち、インバランス割合に対するガスセンサ1の出力値の振幅は、図3の直線202のように、原点を通る一次直線に近似される。
同じ構造を有する複数のガスセンサ1であっても、製造誤差及び排気管102に対するガスセンサ1の装着方向等に起因して、ガスセンサ1の出力値にバラツキが生じることがある。例えば、同じ構造を有する複数のガスセンサ1間には、個体差があることがある。また、排気管102に対するガスセンサ1の装着方向が複数のガスセンサ1間で異なると、ガスセンサ1のハウジング(図示省略)の外部から検知素子10周囲に排気ガスが到達するのに要する時間(排気ガスの到達速度)も複数のガスセンサ1間で異なることがある。このため、複数のガスセンサ1間でガス応答性にバラツキが生じることがある。ガス応答性とは、検知対象ガス(例えば、排気ガス)中の特定ガス(例えば、酸素)の濃度が変化してから、実際にガスセンサによってその変化が検知されるまでの時間に関する指標である。ガス応答性が高いガスセンサほど、ガス応答性が低いガスセンサに比べ、上記時間が短い。同じインバランス割合を有する内燃機関100から排出される排気ガスを検知対象ガスとした場合、一般に、ガス応答性が高いガスセンサ1では、ガス応答性が低いガスセンサ1に比べ、ガスセンサ1の出力値の振幅は大きくなる。このため、ガスセンサ1個体の変化の割合を表す直線の傾きは、ガスセンサ1のガス応答性に応じて、複数のガスセンサ1間で異なる。具体的には、図3のように、ガス応答性が高いガスセンサ1に対応する直線201の傾きは、ガス応答性が低いガスセンサ1に対応する直線203の傾きに比べ急である。したがって、複数のガスセンサ1において、出力値の振幅が同じであったとしても、複数のガスセンサ1個体間の出力値のバラツキに起因して、各出力値の振幅から推定されるインバランス割合は異なることがある。
一方、内燃機関100の空燃比が予め設定された目標値となるように制御される場合(以下、「通常制御時」ともいう。)のインバランス割合は、製造誤差等に起因して、0(%)よりも大きい内燃機関100個体毎に異なる値を示す。しかし、ECU3は、通常制御時のインバランス割合の内燃機関100個体間のバラツキを認識できない。このため、以下のような問題が生じることがある。複数の内燃機関100において同じ目標値を用いて通常制御が実行された場合の平均的なインバランス割合がJ(%)であるとする。ECU3は、点204及び点206のように、通常制御時におけるインバランス割合がJ(%)からズレてしまっていたとしても、直接そのズレ量を認識することができない。ズレ量が許容量ではない場合は、インバランス割合に異常がある場合であり、排気エミッションが悪化した車両の走行を未然に防止するため、オンボードで検知されることが好ましい。
そこで、本実施形態の異常検知処理では、上述のようなガスセンサ1個体間の出力値のバラツキと、内燃機関100のインバランス割合のバラツキとを考慮して、以下のように内燃機関100のインバランス割合の異常を検知する。まず、本実施形態の異常検知処理に先立って、補正量算出処理が実行される。補正量算出処理は、例えば、ガスセンサ1と内燃機関100とを備える自動車の製造検査時または出荷検査時に実行される。補正量算出処理では、ガスセンサ1個体の変化の割合と、ROM7に記憶された基準割合とに基づき、ガスセンサ1の出力値の補正量が算出される。
ガスセンサ1個体の変化の割合は、インバランス割合の異なる2つの条件を意図的に作り出し、各条件で得られる出力値の振幅に基づき算出される。本実施形態の補正量算出処理では、2つの条件として、インバランス割合が互いに異なる第1条件と、第2条件とが設定される。インバランス割合が異なる条件は、複数の気筒のうちの特定の気筒である特定気筒に供給される燃料の供給条件を意図的に変えることによって設定される。特定気筒は、複数の気筒のうちの予め任意に選択された1つの気筒であればよく、例えば、4つの気筒111から114のうち、気筒111が特定気筒として特定される。第1条件は、内燃機関100の空燃比が予め設定された目標値となるように内燃機関100の運転条件が制御される場合の燃料の供給条件である。第1条件では、通常、すべての気筒に対して同じ供給量の燃料が供給されるように燃料噴射装置103が制御されるが、実際には各気筒に供給される供給量にバラツキがあり得る。第2条件は、特定気筒に対しては、第1条件で内燃機関100が制御された場合の燃料の供給量を特定割合変化させた量の燃料を供給する条件であり、複数の気筒のうちの特定気筒以外の気筒に対しては、第1条件で内燃機関100が制御された場合に供給される量の燃料を供給する条件である。
ROM7に記憶された基準割合は、基準となる変化の割合である。基準割合は、例えば、複数のガスセンサ1のそれぞれの変化の割合を考慮して予め設定されればよい。本実施形態の基準割合は、同じ構成を有する複数のガスセンサ1と、テスト用の内燃機関100とを用いて、各ガスセンサ1について算出した上記変化の割合の平均値である。基準割合は、例えば、図3の直線202の傾きで示される。
ガスセンサ1の出力値の補正量は、ガスセンサ1の出力値のバラツキを低減させるために設定される。本実施形態の補正量は、基準割合をガスセンサ1個体の変化の割合で除した値である。本実施形態の異常検知処理では、ガスセンサ1の出力値と、補正量との積を算出することによって、ガスセンサ1の出力値を補正する。前述のように、インバランス割合に対するガスセンサ1の出力値の振幅は、原点を通る一次直線に近似可能であるので、補正後のガスセンサ1の出力値は、基準割合を有するガスセンサ1の出力値とほぼ等しい。すなわち、上述のように算出した補正量を用いてガスセンサ1の出力値が補正されることによって、補正前のガスセンサ1の出力値に比べ、ガスセンサ1の出力値のバラツキが低減される。補正量算出処理において算出された補正量は、EEPROM5に記憶される。
本実施形態の異常検知処理は、製造検査または出荷検査後に(つまり、実走行時に)内燃機関100が駆動され、且つ、内燃機関100の運転条件が所定条件を満たす場合に実行される。異常検知処理では、第1条件で内燃機関を運転させた場合のガスセンサ1の出力値を補正量を用いて補正した場合の振幅が、線分208で表す閾値TH2よりも大きい場合を、インバランス割合が異常であると判断する。第1条件は、上述の通常制御時の内燃機関100の燃料供給条件である。閾値TH2は、基準閾値TH1に対応する閾値であって、ガスセンサ1の出力値の振幅に関する閾値である。基準閾値TH1は、インバランス割合に異常があるか否かの基準となる、インバランス割合に関する閾値である。閾値TH2は、基準閾値TH1と、基準割合と、補正後のガスセンサ1の出力値のバラツキとを含む条件を考慮して設定される。本実施形態では、閾値TH2を表す線分208は、基準閾値TH1を表す線分209と、直線202との交点を通る。以下、閾値TH2を対応閾値TH2ともいう。本実施形態では、補正後の振幅が、対応閾値TH2よりも大きいか否かが判断されることによって、間接的に、通常制御時のインバランス割合が、基準閾値TH1よりも大きいか否かが判断される。
次に、図3から図6を参照して、第1の実施形態の補正量算出処理について説明する。第1の実施形態の補正量算出処理は、例えば、内燃機関100と、センサ制御装置4とを備える自動車の製造検査時または出荷検査時に、作業者によって開始の指示が入力された場合に起動される。図4のフローチャートに示す各処理を実行させるプログラムは、図2のROM7に記憶されており、CPU6によって実行される。具体例として、インバランス割合に対するガスセンサ1の出力値の振幅が図3の直線201の関係となるガスセンサ1(以下、「ガスセンサA」ともいう。)及び内燃機関100(以下、「内燃機関A」ともいう。)の組み合わせと、図3の直線203の関係となるガスセンサ1(以下、「ガスセンサB」ともいう。)及び内燃機関100(以下、「内燃機関B」ともいう。)の組み合わせとのそれぞれで、補正量算出処理が実行された場合について説明する。
図4に示すように、補正量算出処理が起動された場合、まず、作業者によって内燃機関100を始動させる指示が入力されたか否かが判断される(S5)。内燃機関100を始動させる指示が入力されていない場合(S5:NO)、CPU6は指示が入力されるまで待機する。内燃機関100を始動させる指示が入力された場合(S5:YES)、内燃機関100及びガスセンサ1が始動される(S10)。
次に、作業者によって第1条件での内燃機関100の運転を開始させる指示が入力されたか否かが判断される(S15)。第1条件での内燃機関100の運転を開始させる指示が入力されていない場合(S15:NO)、CPU6は指示が入力されるまで待機する。第1条件での内燃機関100の運転を開始させる指示が入力された場合(S15:YES)、内燃機関100の運転条件に第1条件が設定され、第1条件での内燃機関100の運転が開始される(S20)。ステップS20では、例えば、燃料噴射装置103が制御され、内燃機関100が備える4つの気筒のそれぞれに第1条件に従って燃料が供給される。第1条件における、燃料供給条件以外の条件は、基準割合を求めた条件と同じ条件であることが好ましい。第1条件における、燃料供給条件以外の条件としては、例えば、内燃機関100の冷却水の温度が80(℃)以上になる条件が挙げられる。冷却水の温度は、水温センサ106によって検知される。
次に、内燃機関100の冷却水の温度が80(℃)以上となり、且つ、ガスセンサ1が活性化して、内燃機関100の空燃比を検出可能な状態になった後、振幅取得処理が実行される(S30)。ステップS30では、第1条件で内燃機関100が制御された場合の、ガスセンサ1の出力値の振幅AM1が算出される。図5を参照して、振幅取得処理の詳細を説明する。図5に示すように、振幅取得処理ではまず、所定長さのサンプリング期間中、所定のサンプリング周期でガスセンサ1の出力値と、内燃機関100のクランク角度とが取得され、取得された出力値は、出力値の取得時間及びクランク角度と対応付けられてRAM8に記憶される(S32)。サンプリング期間及びサンプリング周期は適宜設定されればよい。本実施形態では、サンプリング期間を40(sec)とし、サンプリング周期を1(msec)とする。クランク角度は、クランク角度センサ104から出力される。ガスセンサ1の出力値の取得時間は、少なくとも、ガスセンサ1の出力値の取得順序を示す。N番目(Nは自然数)に取得されたガスセンサ1の出力値をIp(N)とし、Ip(N)と対応付けられるクランク角度をCA(N)とする。サンプリング期間、サンプリング周期、及び出力値の取得時間は、例えば、図示しないタイマ回路によって管理される。ガスセンサ1の出力値Ip(N)は、必要に応じてローパスフィルタ(Low−pass filter)に供され、ノイズが除去される。
次に、ガスセンサ1の出力値の移動平均が算出され、算出された移動平均はRAM8に記憶される(S34)。ステップS34では、ガスセンサ1の出力値の移動平均として、順次、1燃焼サイクル単位期間に含まれるガスセンサ1の出力値を対象にして、当該単位期間の出力値の平均値が算出される。1燃焼サイクル単位期間にM個(Mは自然数)のガスセンサ1の出力値が含まれる場合、N番目の移動平均Ipv(N)は、式(1)によって表される。
Ipv(N)={Ip(N)+Ip(N+1)+Ip(N+2)+・・・+Ip(N+M−1)}/M ・・・式(1)
Ipv(N)は、クランク角度CA(N)と対応付けられてRAM8に記憶される。
Ipv(N)={Ip(N)+Ip(N+1)+Ip(N+2)+・・・+Ip(N+M−1)}/M ・・・式(1)
Ipv(N)は、クランク角度CA(N)と対応付けられてRAM8に記憶される。
次に、ステップS34で算出された移動平均を用いて、内燃機関100の燃焼要因のバラツキに起因すると推定される、ガスセンサ1の出力値のバラツキが補正される(S36)。内燃機関100の燃焼要因のバラツキとしては、例えば、吸気装置によって吸入される空気量と、気筒間に分配される空気量と、燃料噴射装置103によって供給される燃料の量とのそれぞれの、燃焼サイクル毎のバラツキが挙げられる。ステップS36では、例えば、前述のようにN番目の移動平均Ipv(N)が算出された場合、補正後のN番目のガスセンサ1の出力値C(N)は式(2)に従って算出される。
C(N)=Ip(N+L)−Ipv(N) ・・・式(2)
Lは、Mよりも小さい自然数である。Ip(N+L)は、N番目のガスセンサ1の出力値Ip(N)が取得されてから、1/2燃焼サイクル後に取得されるガスセンサ1の出力値である。すなわち、クランク角度CA(N)と、クランク角度CA(N+L)とは、約360度異なる。補正後のN番目のガスセンサ1の出力値C(N)は、クランク角度CA(N+L)と対応付けられる。
C(N)=Ip(N+L)−Ipv(N) ・・・式(2)
Lは、Mよりも小さい自然数である。Ip(N+L)は、N番目のガスセンサ1の出力値Ip(N)が取得されてから、1/2燃焼サイクル後に取得されるガスセンサ1の出力値である。すなわち、クランク角度CA(N)と、クランク角度CA(N+L)とは、約360度異なる。補正後のN番目のガスセンサ1の出力値C(N)は、クランク角度CA(N+L)と対応付けられる。
次に、補正後のN番目のガスセンサ1の出力値C(N)について、燃焼サイクル毎に振幅が算出され、算出された振幅はRAM8に記憶される(S38)。図6に示すように、ガスセンサ1の出力値の経時変化は、1燃焼サイクルを1周期として変動する波形を示す。ステップS38では、1燃焼サイクル毎に、出力値の最大値と最小値とが取得される。図6において、クランク角度が0度である場合を1燃焼サイクルの開始点とし、クランク角度が720度である場合を終了点とした場合、矢印231から233で示す期間のそれぞれが、1燃焼サイクルに対応する。矢印231に示す期間では、最大値として出力値211が、最小値として出力値221がそれぞれ取得される。矢印232に示す期間では、最大値として出力値212が、最小値として出力値222がそれぞれ取得される。矢印233に示す期間では、最大値として出力値213が、最小値として出力値223がそれぞれ取得される。以下、同様である。次に、同一の燃焼サイクルに含まれる最大値と最小値との差が燃焼サイクル毎のガスセンサ1の出力値の振幅として算出される。
次に、ステップS38で算出された燃焼サイクル毎の出力値の振幅の平均値が算出され、算出された平均値は、現在の内燃機関100の運転条件(第1条件)に対応する振幅AMn(図4のステップ30で実行される振幅処理では、n=1)としてRAM8に記憶される(S40)。ガスセンサ1がガスセンサAである場合、振幅AM1として図3の点204で示される振幅が取得され、ガスセンサ1がガスセンサBである場合、振幅AM1として点206で示される振幅が取得されたものとする。前述のように、同じ条件で内燃機関100が制御された場合にも、内燃機関100個体間で実際のインバランス割合が異なるため、この時点では、AM1に基づき第1条件に対応するインバランス割合を推定することはできない。振幅取得処理は以上で終了する。
図4の補正量算出処理の説明に戻り、ステップS30の次に、第1条件に対応する振幅が取得されたか否かが判断される(S45)。第1条件に対応する振幅が取得されていない場合(S45:NO)、CPU6は、振幅が取得されるまで待機する。第1条件に対応する振幅が取得された場合(S45:YES)、作業者によって第2条件での内燃機関100の運転を開始させる指示が入力されたか否かが判断される(S48)。第2条件での内燃機関100の運転を開始させる指示が入力されていない場合(S48:NO)、CPU6は指示が入力されるまで待機する。第2条件での内燃機関100の運転を開始させる指示が入力された場合(S48:YES)、内燃機関100の運転条件に第2条件が設定され、第2条件での内燃機関100の運転が開始される(S50)。
ステップS50では、特定気筒(例えば、気筒111)に対しては、第1条件における燃料の供給量(以下、「第1供給量FS1」ともいう。)を特定割合変化させた量(以下、「第2供給量FS2」ともいう。)の燃料を供給するための指示が燃料噴射装置103に出力される。特定割合の変化は、予め任意に設定された変化であればよく、例えば、10%の増加である。複数の気筒のうちの特定気筒以外の気筒(例えば、気筒112から114)に対しては、第1条件における燃料の供給量を供給するための指示が燃料噴射装置103に出力される。第1供給量FS1及び第2供給量FS2は、内燃機関100の燃焼要因のバラツキに起因して、実際に気筒に供給される量とは等しいとは限らない。複数の気筒のそれぞれに同じ量の燃料を供給するための指示が出力されたとしても、実際に各気筒に供給される量が等しいとは限らない。第2条件における、燃料供給量以外の条件は、基準割合を求めた条件と同じ条件であることが好ましい。
次に、振幅取得処理が実行され、第2条件で内燃機関100が制御された場合の、ガスセンサ1の出力値の振幅AM2が算出される(S60)。ステップS60の処理は、基本的にステップS30と同様であるので説明を省略する。ガスセンサ1がガスセンサAである場合、第2条件に対応する振幅AM2として図3の点205で示される振幅が取得され、ガスセンサ1がガスセンサBである場合、振幅AM2として点207で示される振幅が取得されたものとする。この時点では、第2条件に対応するインバランス割合は推定できない。
次に、インバランス割合の変化に対するガスセンサ1の出力値の振幅の変化の割合(傾き)が算出され、算出された変化の割合はRAM8及びEEPROM5に記憶される(S70)。変化の割合は、振幅AM1と、振幅AM2とを用いた、式(3)に基づき算出される。
変化の割合=(AM2−AM1)/{(第2条件でのインバランス割合)−(第1条件でのインバランス割合)} ・・・式(3)
式(3)において、分母は、燃料の供給量の特定割合変化させた量に実質的に起因するインバランス割合の差に該当する。したがって、式(3)の分母は、特定割合K(例えば、10%)に等しい。ガスセンサ1個体の変化の割合を算出することによって、ガスセンサ1に固有なインバランス割合に対するガスセンサ1の出力値の振幅を表す一次直線式が得られる。したがって、この時点では、ガスセンサ1の出力値の振幅と、直線式とに基づき、出力値の振幅に対応するインバランス割合を推定可能である。
変化の割合=(AM2−AM1)/{(第2条件でのインバランス割合)−(第1条件でのインバランス割合)} ・・・式(3)
式(3)において、分母は、燃料の供給量の特定割合変化させた量に実質的に起因するインバランス割合の差に該当する。したがって、式(3)の分母は、特定割合K(例えば、10%)に等しい。ガスセンサ1個体の変化の割合を算出することによって、ガスセンサ1に固有なインバランス割合に対するガスセンサ1の出力値の振幅を表す一次直線式が得られる。したがって、この時点では、ガスセンサ1の出力値の振幅と、直線式とに基づき、出力値の振幅に対応するインバランス割合を推定可能である。
次に、ROM7に記憶されている基準割合が取得され、取得された基準割合はRAM8に記憶される(S80)。本実施形態の基準割合は、上述のように複数のガスセンサ1を用いて予め設定され、ROM7に記憶されている。次に、基準割合を、ガスセンサ1個体の変化の割合で除した値が補正量として算出され、算出された補正量はEEPROM5に記憶される(S90)。補正量算出処理は以上で終了する。以上のように、CPU6は、補正量算出処理を実行する。
[評価試験]
第1の実施形態の補正量算出処理に従って算出される補正量を用いてガスセンサ1の出力値を補正した場合に、ガスセンサ1の出力値のバラツキが低減されるか否かを確認する評価試験を行った。評価試験方法は以下の通りである。上記の同じ構成を有する12個のガスセンサ1のそれぞれを、直列4気筒のテストエンジン(図示省略)の排気管(図示省略)の経路上に取りつけた。排気管には、テストエンジンの各気筒から排出される排気ガスが流通する。テストエンジンが備える4つの気筒をそれぞれ#1から#4で表す。
第1の実施形態の補正量算出処理に従って算出される補正量を用いてガスセンサ1の出力値を補正した場合に、ガスセンサ1の出力値のバラツキが低減されるか否かを確認する評価試験を行った。評価試験方法は以下の通りである。上記の同じ構成を有する12個のガスセンサ1のそれぞれを、直列4気筒のテストエンジン(図示省略)の排気管(図示省略)の経路上に取りつけた。排気管には、テストエンジンの各気筒から排出される排気ガスが流通する。テストエンジンが備える4つの気筒をそれぞれ#1から#4で表す。
テストエンジンの運転条件は、以下の条件とした。試験1では、テストエンジンの回転数を1000(rpm)、インテークマニフォールド(図示省略)の圧力を−40(kPa)、テストエンジンの冷却水の温度を80(℃)以上とした。試験2では、テストエンジンの回転数を1500(rpm)、インテークマニフォールドの圧力を−40(kPa)、テストエンジンの冷却水の温度を80(℃)以上とした。
試験1及び2における各気筒に対する燃料の供給条件に関して、以下のように、第1条件及び第2条件を設定した。第1条件では、#1で表される気筒に対しては、通常制御時の燃料供給条件における燃料の供給量の120%の量を供給するための指示が燃料噴射装置103に出力される。また、第1条件では、#2から#4のそれぞれで表される気筒に対しては、通常制御時の燃料供給条件における燃料の供給量を供給するための指示が燃料噴射装置103に出力される。#1で表される気筒と、#2から#4のそれぞれで表される気筒とで燃料の供給量を変えているのは、以下の理由による。すなわち、複数の気筒のそれぞれに対して、同じ第1供給量の燃料を供給する指示が出力されても、内燃機関100の製造誤差等に起因して、実際に各気筒に供給される燃料にはバラツキがあり得る。したがって、現実には第1条件に対応するインバランス割合は0(%)ではないため、現実の条件に近づけるため、上述のように第1条件を設定した。
一方、第2条件では、#1で表される気筒に対しては、通常制御時の燃料供給条件における燃料の供給量の130%の量を供給するための指示が燃料噴射装置103に出力される。また、第2条件では、#2から#4のそれぞれで表される気筒に対しては、通常制御時の燃料供給条件における燃料の供給量を供給するための指示が燃料噴射装置103に出力される。したがって、評価試験における特定割合は8.3%である。
試験1及び2の各条件で、補正量算出処理を行い、12個のガスセンサ1のそれぞれについてガスセンサ1個体の変化の割合を算出した。12個の変化の割合の平均値を基準割合として求めた。補正量を用いて補正した場合のガスセンサ1の出力値の振幅に基づき、インバランス割合に対するガスセンサ1の出力値の振幅を再計算した。試験1の結果を図7に示し、試験2の結果を図8に示す。図7及び図8において、補正前のインバランス割合に対するガスセンサ1の出力値の振幅を、黒い四角及び実線で示し、補正後のインバランス割合に対するガスセンサ1の出力値の振幅を、白丸及び破線で示す。図7及び図8に示すように、テストエンジンの回転数が異なる試験1及び試験2の条件ではいずれも、直線の分布範囲は、実線で示す補正前に対応する直線に比べ、破線で示す補正後に対応する直線の方が狭かった。
より具体的には、試験1及び試験2において、第1条件における振幅の最大値と平均値との差を平均値で除した値の百分率+Δ(%)と、第1条件における振幅の最小値と平均値との差を平均値で除した値の百分率−Δ(%)とはそれぞれ次の値であった。試験1では、補正前の+Δ(%)は22.8であり、−Δ(%)は−21.0であったのに対し、補正後の+Δ(%)は5.3であり、−Δ(%)は−6.5であった。試験2では、補正前の+Δ(%)は28.1であり、−Δ(%)は−28.6であったのに対し、補正後の+Δ(%)は12.6であり、−Δ(%)は−13.1であった。以上より、第1の実施形態の補正量算出処理に従って算出される補正量でガスセンサ1の出力値を補正した場合に、ガスセンサ1の出力値のバラツキが低減されることが確認された。
次に、図9を参照して、第1の実施形態の異常検知処理を説明する。第1の実施形態の異常検知処理は、例えば、内燃機関100と、センサ制御装置4とが起動された場合に起動され、内燃機関100と、センサ制御装置4とのいずれかの駆動が終了される場合に終了する。図9のフローチャートに示す各処理を実行させるプログラムは、図2のROM7に記憶されており、CPU6によって実行される。具体例として、上述のガスセンサA及び内燃機関Aの組み合わせと、ガスセンサB及び内燃機関Bの組み合わせとのそれぞれで、異常検知処理が実行された場合について説明する。
図9に示すように、異常検知処理ではまず、内燃機関100の運転条件が所定条件を満たすか否かが判断される(S110)。所定条件は、予め設定されROM7に記憶されている。所定条件は、ガスセンサ1の出力値に基づき算出される空燃比の値が安定した値となる条件であることが好ましい。具体的には、所定条件として、内燃機関100の回転数に関する条件と、吸入空気量に関する条件と、インテークマニフォールドの圧力に関する条件と、冷却水の温度に関する条件とから選択された1つ以上の条件が挙げられる。内燃機関100の回転数に関する条件は、例えば、内燃機関100の回転数が2000から3000(rpm)の範囲にあることである。吸入空気量に関する条件は、例えば、吸入空気量が0.2から0.3(g/str)(str:ストローク)の範囲にあることである。インテークマニフォールドの圧力に関する条件は、例えば、インテークマニフォールドの圧力が−60から−40(kPa)の範囲にあることである。冷却水の温度に関する条件は、例えば、冷却水の温度が80(℃)以上であることである。冷却水の温度に関する条件は、所定の運動条件に含まれることが好ましい。
内燃機関100の運転条件が、所定条件を満たす場合(S110:NO)、CPU6は、内燃機関100の運転条件が、所定条件を満たすまで待機する。内燃機関100の運転条件が、所定条件を満たす場合(S110:YES)、EEPROM5に記憶されている補正量が取得され、RAM8に記憶される(S120)。補正量は、前述の補正量算出処理で予め実測された値である。次に、図5のステップS32と同様に、ガスセンサ1の出力値が順次取得され、取得された出力値は、出力値の取得時間及びクランク角度と対応付けられてRAM8に記憶される(S130)。次に、ステップS130で取得された出力値が、ステップS120で取得された補正量を用いて補正され、補正後の出力値はRAM8に記憶される(S140)。ステップS140では、出力値と、補正量との積が補正後の出力値として算出される。
次に、図5のステップS34及びステップS36と同様に、1燃焼サイクル単位期間の移動平均が順次算出され(S150)、算出された移動平均を用いて、内燃機関100の燃焼要因のバラツキに起因すると推定される、ガスセンサ1の出力値のバラツキが補正される(S160)。次に、図5のステップS38及びステップS40と同様に、燃焼サイクル毎に、ガスセンサ1の補正後の出力値の振幅が算出され(S170)、振幅の平均値がガスセンサ1の振幅として算出される(S180)。ステップS180において、ガスセンサAの振幅として、図3の点251で表される値が算出され、ガスセンサBの振幅として図3の点252で表される値が算出されたものとする。補正量を用いて補正しない場合のガスセンサAの振幅は、点241で表される値であり、補正量を用いて補正しない場合のガスセンサBの振幅は点242で表される値である。
次に、ステップS180で算出されたガスセンサ1の振幅が、対応閾値TH2よりも大きいか否かが判断される(S190)。図3の点251で表されるガスセンサAの振幅は、対応閾値TH2以下である(S190:NO)。この場合、故障警告灯105が点灯されることなく、ステップS210の処理が実行される。図3の点252で表されるガスセンサBの振幅は、対応閾値TH2よりも大きい(S190:YES)。この場合、内燃機関Bにインバランス割合の異常があることを報知するために、故障警告灯105が点灯された後(S200)、ステップS210の処理が実行される。ステップS210では、センサ制御装置4を終了させる指示が入力されたか否かが判断される(S210)。センサ制御装置4を終了させる指示は、例えば、自動車のユーザによって入力させる内燃機関100を停止させる指示である。センサ制御装置4を終了させる指示が入力されていない場合(S210:NO)、処理はステップS110に戻る。センサ制御装置4を終了させる指示が入力された場合(S210:YES)、異常検知処理は以上で終了する。
上記異常検知処理において、図9のステップS110は、本発明の「判断工程」に相当する。ステップS130は、本発明の「出力値取得工程」に相当する。ステップS140と、ステップS150と、ステップS160と、ステップS170と、ステップS180は、本発明の「振幅取得工程」に相当する。ステップS190と、ステップS200とは、「異常検知工程」に相当する。
第1の実施形態の異常検知処理によれば、下記の効果が得られる。第1の実施形態の異常検知処理では、ガスセンサの出力値の振幅に含まれる、ガスセンサ個体間の出力値のバラツキの影響を、ガスセンサ1個体の変化の割合を用いて算出した補正量を用いて低減させる。具体的には、ガスセンサ1の出力値を補正量算出処理において予め算出(実測)した補正量を用いて補正した後のガスセンサの出力値は、基準割合を示すガスセンサの出力値とほぼ一致する。
例えば、図3に示す例において、内燃機関Aが所定条件で運転されているときのインバランス割合はTH1よりも小さい正常範囲の値であり、内燃機関Bが所定条件で運転されているときのインバランス割合はTH1よりも大きい異常範囲の値であるとする。点241で示されるガスセンサAの出力値の振幅は、点242で示されるガスセンサBの出力値の振幅よりもわずかに大きい。すなわち、ガスセンサA及びガスセンサBの振幅の大小関係は、対応するインバランス割合の大小関係と同じではない。上記の振幅に基づき内燃機関100に異常があるか否かを判断する場合、ガスセンサAの出力値の振幅と、ガスセンサBの出力値の振幅とを区別する閾値を設定することは困難である。
これに対し、補正量を用いてガスセンサ1の出力値を補正した場合のガスセンサA及びガスセンサBの振幅の大小関係は、対応するインバランス割合の大小関係と同じとなる。このため、補正量を用いてガスセンサ1の出力値を補正した場合の振幅に基づき内燃機関100が正常であるか否かを判断する場合、補正前の振幅に基づきインバランス割合が正常であるか否かを判断する場合に比べ、基準閾値TH1(対応閾値TH2)の設定が容易である。すなわち、第1の実施形態の異常検知処理によれば、ガスセンサ1個体間の出力値のバラツキを考慮しつつ、インバランス割合が異常であるか否かをオンボードで検知することができる。
次に、図10から図12を参照して、第2の実施形態の異常検知処理について説明する。第1の実施形態では、異常検知処理に先立って、補正量算出処理が実行され、ガスセンサ1個体の変化の割合と、基準割合とから、ガスセンサ1の出力値の補正量を算出していた。第2の実施形態では、異常検知処理に先立って、閾値補正処理が実行され、ガスセンサ1個体の変化の割合と、基準割合とに基づき、対応閾値TH2が補正される。まず、図10を参照して、第2の実施形態において実行される閾値補正処理について説明する。第2の実施形態の閾値補正処理は、例えば、内燃機関100と、センサ制御装置4とを備える自動車の製造検査時または出荷検査時に、作業者によって開始の指示が入力された場合に起動される。図10のフローチャートに示す各処理を実行させるプログラムは、図2のROM7に記憶されており、CPU6によって実行される。以下、図11に示す第1の実施形態と同様の具体例を用いて、第2の実施形態の閾値補正処理を説明する。
図10において、図4に示す第1の実施形態の補正量算出処理と同様の処理を行うステップには、同じステップ番号を付与している。図10に示すように、第2の実施形態の閾値補正処理は、ステップS80に代えてステップS85が実行され、ステップS90に代えてステップS95が実行される点で、第1の実施形態の補正量算出処理とは異なる。第1の実施形態の補正量算出処理と同様な処理については説明を省略し、以下、第1の実施形態の補正量算出処理と異なる、ステップS85及びステップS95の処理について説明する。
ステップS85では、ROM7に記憶されている基準割合と対応閾値TH2とが取得され、RAM8に記憶される(S85)。ステップS95では、ステップS70で算出された変化の割合と、ステップS85で取得された基準割合とにもとづき、対応閾値TH2が補正され、補正後の閾値である補正閾値TH2´は、EEPROM5に記憶される(S95)。ステップS95では、例えば、式(4)に従って、補正閾値TH2´が算出される。
補正閾値TH2´=対応閾値TH2*(ステップS70算出された変化の割合)/(ステップS85で取得された基準割合) ・・・式(4)
ステップS95の処理によって、ガスセンサAに対する補正閾値TH2´に、図11の線分308で示される値が設定される。ガスセンサBに対する補正閾値TH2´に、線分318で示される値が設定される。本実施形態では、線分308は、線分209と、直線201との交点を通る。線分318は、線分209と、直線203との交点を通る。
補正閾値TH2´=対応閾値TH2*(ステップS70算出された変化の割合)/(ステップS85で取得された基準割合) ・・・式(4)
ステップS95の処理によって、ガスセンサAに対する補正閾値TH2´に、図11の線分308で示される値が設定される。ガスセンサBに対する補正閾値TH2´に、線分318で示される値が設定される。本実施形態では、線分308は、線分209と、直線201との交点を通る。線分318は、線分209と、直線203との交点を通る。
次に、図12を参照して、第2の実施形態の異常検知処理を説明する。第2の実施形態の異常検知処理は、例えば、内燃機関100と、センサ制御装置4とが起動された場合に起動され、センサ制御装置4の駆動が終了される場合に終了する。図12のフローチャートに示す各処理を実行させるプログラムは、図2のROM7に記憶されており、CPU6によって実行される。具体例として、上述のガスセンサA及び内燃機関Aの組み合わせと、ガスセンサB及び内燃機関Bの組み合わせとのそれぞれで、異常検知処理が実行された場合について説明する。
図12において、図9に示す第1の実施形態の異常検知処理と同様の処理を行うステップには、同じステップ番号を付与している。図12に示すように、第2の実施形態の異常検知処理は、ステップS120及びステップS140が省略される点と、ステップS150に代えてステップS155が実行される点と、ステップS160に代えてステップS165が実行される点と、ステップS170に代えてステップS175が実行される点と、ステップS180に代えてステップS185が実行される点と、ステップS190に代えてステップS195が実行される点とにおいて、第1の実施形態の異常検知処理とは異なる。第1の実施形態と同様な処理については説明を簡略化又は省略して説明する。
第2の実施形態の異常検知処理では、ステップS130で取得された出力値に対して、ステップS150と、ステップS160と、ステップS170と、ステップS180と同様の処理が実行される(S155,S165,S175,S185)。ステップS185において、ガスセンサAの振幅として、図11の点241で表される値が算出され、ガスセンサBの振幅として図11の点242で表される値が算出されたものとする。
ステップS195では、ステップS185で算出されたガスセンサ1の出力値の振幅が、EEPROM5に記憶された補正閾値TH2´よりも大きいか否かが判断される(S195)。補正閾値TH2´は、前述の閾値補正処理によって算出された値である。図11の点241で示されるガスセンサAの出力値の振幅は、線分308で表されるガスセンサAに対する補正閾値TH2´以下である(S195:NO)。この場合、故障警告灯105が点灯されずに、ステップS210の処理が実行される。図11の点242で示されるガスセンサBの出力値の振幅は、線分318で表されるガスセンサBに対する補正閾値TH2´よりも大きい(S195:YES)。したがって、内燃機関Bにインバランス割合の異常があることを報知するために、故障警告灯105が点灯された後(S200)、ステップS210の処理が実行される。
上記第2の実施形態の異常検知処理において、図12のステップS110は、本発明の「判断工程」に相当する。ステップS130と、ステップS155と、ステップS165と、ステップS175と、ステップS185とは、本発明の「振幅取得工程」に相当する。ステップS195と、ステップS200とは、本発明の「異常検知工程」に相当する。
第2の実施形態の異常検知処理によれば、下記の効果が得られる。第2の実施形態の異常検知処理では、内燃機関100が正常であるか否かを判断するためのガスセンサ1の出力値の振幅に関する閾値として、ガスセンサ1毎に設定された補正閾値TH2´を用いる。したがって、振幅と補正閾値TH2´とを比較して内燃機関100が正常であるか否かを判断する場合、振幅と対応閾値TH2とを比較して内燃機関100が正常であるか否かを判断する場合に比べ、閾値の設定が容易である。
本発明は、以上詳述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の(1)及び(2)の変形が適宜加えられてもよい。
(1)本発明は空燃比を検知可能な種々のガスセンサに適用可能である。インバランス割合の異常の検知対象となる多気筒内燃機関の用途、気筒数及び形式は、適宜変更されてよい。上記実施形態では、ECU3において、補正量算出処理と、閾値補正処理と、異常検知処理とが実行されていたが、各処理の一部又は全部は、ECU3とは別途設けられた制御装置において実行されてもよい。ECU3は、ASIC30を備えていたが、ECU3と、ASIC30とは別々に設けられてもよい。上記実施形態の異常検知処理に先だって実行される処理において算出される補正量、閾値、ガスセンサ1個体の変化の割合等を記憶する記憶手段は、不揮発性の記憶手段であればよい。
(2)異常検知処理の各処理は、必要に応じて適宜変更されてもよい。同様に、異常検知処理に先立って実行される、補正量算出処理及び閾値補正処理は適宜変更されてよい。例えば、特徴的な部分が組み合わされて実行されてもよい。具体的には、以下の(2−1)から(2−4)の変形が適宜加えられてもよい。
(2−1)異常検知処理において、ガスセンサ1と内燃機関100とを用いて予め実測されたガスセンサ1個体の変化の割合に基づき、ガスセンサ1の出力値を補正する補正量が算出されてもよい。この場合、ガスセンサ1個体の変化の割合はEEPROM5等の記憶手段に記憶された値が参照されればよい。同様に、異常検知処理において、ガスセンサ1個体の変化の割合に基づき、閾値が補正されてもよい。
(2−2)ガスセンサ1個体の変化の割合を算出するための、内燃機関100の運転条件は、インバランス割合の異なる複数の条件であればよく、条件の数は、上記実施形態の2に限定されない。同様に、内燃機関100のインバランス割合異常を検知する処理に用いる、ガスセンサ1の出力値の振幅の数は、1以上であればよい。
(2−3)第2の実施形態では、図10のステップS95において対応閾値TH2を補正し、図12のステップS195において、振幅と、補正閾値TH2´とが比較されていたが、これに限定されない。より具体的には、例えば、内燃機関100のインバランス割合が異常であるか否かは、ガスセンサ1の出力値の振幅と、ガスセンサ1個体の変化の割合と、インバランス割合の異常があるか否かとの対応を記憶したマップを用いて判断されてもよい。この場合、例えば、次のようにインバランス割合の異常があるか否かが判断されればよい。まず、異常検知処理に先立って実行される処理において、図4のステップS5からステップS70までの処理が実行され、ガスセンサ1個体の変化の割合がEEPROM5等の不揮発性の記憶手段に記憶されればよい。異常検知処理では、図12のステップS195において、記憶手段に記憶されたガスセンサ1個体の変化の割合と、ステップS185で算出された出力値の振幅と、マップに記憶された対応関係とに基づき、インバランス割合が異常であるか否かが判断されればよい。
他の例では、例えば、内燃機関100のインバランス割合が異常であるか否かは、ガスセンサ1の出力値の振幅と、ガスセンサ1個体の変化の割合とから推定されるインバランス割合と基準閾値とを比較して判断されてもよい。この場合、例えば、次のようにインバランス割合の異常があるか否かが判断されればよい。まず、異常検知処理に先立って実行される処理において、図4のステップS5からステップS70までの処理が実行され、ガスセンサ1個体の変化の割合がEEPROM5等の不揮発性の記憶手段に記憶されればよい。異常検知処理では、図12のステップS195において、記憶手段に記憶されたガスセンサ1個体の変化の割合と、ステップS185で算出された出力値の振幅とから推定されるインバランス割合と、基準閾値とを比較される。推定されるインバランス割合が基準閾値よりも大きい場合にインバランス割合が異常であると判断されればよい。
他の例では、補正閾値は、基準閾値及対応閾値の少なくともいずれかを、変化の割合に基づき補正した値であればよい。したがって、例えば、内燃機関100のインバランス割合が異常であるか否かは、ガスセンサ1の出力値の振幅と、基準割合とから推定されるインバランス割合と、ガスセンサ1個体の変化の割合に基づき補正された基準閾値(補正閾値)とを比較して判断されてもよい。この場合、例えば、次のようにインバランス割合の異常があるか否かが判断されればよい。まず、異常検知処理に先立って実行される図10の閾値補正処理において、ステップS5からステップS70までの処理が実行され、ステップS85では基準割合及び基準閾値TH1が取得される。ステップS95では、ステップS70で取得されたガスセンサ1個体の変化の割合と、基準割合とに基づき、基準閾値TH1が補正され、補正された基準閾値TH1は、補正閾値TH1´としてEEPROM5等の不揮発性の記憶手段に記憶される。図11に例示するガスセンサAについての具体例では、例えば、線分308と、直線202との交点を通り縦軸に平行な線分309で表される値が、ガスセンサAの補正閾値TH1´として取得される。異常検知処理では、図12のステップS195において、記憶手段に記憶されたガスセンサ1個体の変化の割合と、ステップS185で算出された出力値の振幅と、基準割合とから推定されるインバランス割合と、補正閾値とを比較される。推定されるインバランス割合が補正閾値よりも大きい場合にインバランス割合が異常であると判断されればよい。図11に示すガスセンサAについての具体例では、点304で表されるインバランス割合と、線分309で表される補正閾値TH1´とが比較され、インバランス割合は異常ではないと判断される。
(2−4)基準閾値は、インバランス割合の異常を検知する精度を考慮して適宜設定されればよい。また、基準閾値は、内燃機関100の運転条件に応じて異なる値が設定されてもよい。より具体的には、内燃機関100の冷却水の温度が80(℃)以上であり、且つ、内燃機関100の回転数(rpm)が1000以上1500未満の範囲である第1の運転条件である場合と、内燃機関100の冷却水の温度が80(℃)以上であり、且つ、内燃機関100の回転数(rpm)が1500以上から2000未満の範囲である第2の運転条件である場合とで異なる基準閾値が設定されてもよい。この場合、例えば、次のように図9に例示する異常検知処理を変形して処理が実行されればよい。ステップS110では、内燃機関100が第1の運転条件又は第2の運転条件で運転されているか否かが判断される。ステップS190では、内燃機関100の運転条件に応じた基準閾値に対応する閾値と、ステップS180とが比較される。
1 ガスセンサ
3 ECU
4 センサ制御装置
6 CPU
7 ROM
8 RAM
9 マイクロコンピュータ
100 多気筒内燃機関
103 燃料噴射装置
104 クランク角度センサ
106 水温センサ
3 ECU
4 センサ制御装置
6 CPU
7 ROM
8 RAM
9 マイクロコンピュータ
100 多気筒内燃機関
103 燃料噴射装置
104 クランク角度センサ
106 水温センサ
Claims (3)
- 複数の気筒を備える内燃機関である多気筒内燃機関の排気通路に配置されたガスセンサの出力値に基づき、前記複数の気筒間の空燃比のバラツキの度合いである気筒間インバランス割合が過大となっている場合を、気筒間インバランス異常として検知する多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法であって、
前記多気筒内燃機関の運転条件が所定条件を満たすか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程において、前記多気筒内燃機関の前記運転条件が前記所定条件を満たすと判断された場合に、前記ガスセンサの出力値を取得する出力値取得工程と、
前記多気筒内燃機関と、前記ガスセンサとを用いて予め実測された変化の割合であって、前記気筒間インバランス割合の特定量変化に対する前記ガスセンサの前記出力値の振幅の変化の割合に基づき設定された補正量を用いて前記ガスセンサの前記出力値を補正した場合の、前記ガスセンサの前記出力値の振幅を取得する振幅取得工程と、
前記振幅取得工程において取得された前記振幅に基づいて、前記気筒間インバランス割合が、前記気筒間インバランス割合に関する基準となる閾値である基準閾値よりも大きいと判断される場合を、前記気筒間インバランス異常として検知する異常検知工程と
を備えることを特徴とする多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法。 - 複数の気筒を備える内燃機関である多気筒内燃機関の排気通路に配置されたガスセンサの出力値に基づき、前記複数の気筒間の空燃比のバラツキの度合いである気筒間インバランス割合が過大となっている場合を、気筒間インバランス異常として検知する多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法であって、
前記多気筒内燃機関の運転条件が所定条件を満たすか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程において、前記多気筒内燃機関の前記運転条件が前記所定条件を満たすと判断された場合に、前記ガスセンサの出力値の振幅を取得する振幅取得工程と、
前記多気筒内燃機関と、前記ガスセンサとを用いて予め実測された変化の割合であって、前記気筒間インバランス割合の特定量変化に対する前記ガスセンサの前記出力値の振幅の変化の割合及び当該変化の割合に基づき設定された値の少なくともいずれかと、前記振幅取得工程で取得された前記振幅とに基づき、前記気筒間インバランス割合が、前記気筒間インバランス割合が異常であるか否かを判断する基準となる前記気筒間インバランス割合に関する閾値である基準閾値よりも大きいと判断される場合を、前記気筒間インバランス異常として検知する異常検知工程と
を備えることを特徴とする多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法。 - 前記異常検知工程では、前記基準閾値及び前記基準閾値に対応する閾値であって、前記ガスセンサの前記出力値の振幅に関する閾値である対応閾値の少なくともいずれかを、前記変化の割合に基づき補正した値である補正閾値の少なくともいずれかと、前記振幅取得工程で取得された前記振幅とに基づき、前記気筒間インバランス割合が、前記基準閾値よりも大きいと判断される場合を、前記気筒間インバランス異常として検知することを特徴とする請求項2に記載の多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法。
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JP2011007683A JP2012149550A (ja) | 2011-01-18 | 2011-01-18 | 多気筒内燃機関の気筒間インバランス異常検知方法 |
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