JP2012136444A - 乳癌耐性蛋白質に選択的な核医学診断薬 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記式で表される化合物FUN−4を18Fで標識したPET薬剤[18F]FUN−4を開発することに成功し、この化合物を用いることにより、化合物FUN−4がBCRPに選択的な基質化合物であることを見いだした。
【選択図】なし
Description
近年では、BBBにおけるPgpやBCRPの機能を評価できる放射薬剤開発が数多く報告されており、代表的なものとして、[11C]loperamide、[11C]verapamil、[11C]gefitinib、[11C]GF120918等が報告されている。これらの分子プロープの多くは、PgpだけでなくBCRPに対しても親和性があるものの、Pgpへの選択性がより強いことから、Pgpの機能評価に使用されている。
一方、BCRPの阻害剤として、例えばKo143等が報告されている(非特許文献4参照)。しかしながら、BCRPに対して強い選択性を持ち、更に、核医学診断薬として用いることができる薬剤は未だ開発されていない。
また、本発明の目的は、BCRPに選択的な親和性を有する新規の核医学診断薬を提供することである。
本発明の他の目的は、BCRPの機能に選択的な親和性を有する化合物、あるいは生体におけるBCRPの薬剤排出機能を評価出来る核医学診断薬を提供する。
本発明の更なる目的は、BCRPに選択的な新規な化合物を用いて、生体におけるBCRPに依存した薬剤排出機構の評価法を提供することである。
前記式中、Xはハロゲン原子である。
また、BCRPに対して選択的な阻害剤であるKo143および非標識FUN−4を[I8F]FUN−4と同時にマウスに投与したところ、いずれも、非投与群と比較して[I8F]FUN−4の脳移行性が約2倍増加した。
これらの結果から、FUN−4はBCRPに対して選択的な基質であることが明らかになった。また、[I8F]FUN−4はBCRPの機能に依存して脳内移行する分子プロープであることが明らかとなり、BCRPの機能を測定する核医学診断薬として用いることができることが示された。
(1)下記式で表される化合物:
前記式中、Xはハロゲン原子その放射性同位元素である。
(2)Xが、ハロゲン原子の放射性同位元素である、上記(1)記載の化合物。
(3)上記(1)または(2)に記載の化合物を含む、核医学診断薬。
(4)核医学診断がPET画像診断である、上記(3)記載の核医学診断薬。
(5)上記(1)または(2)に記載の化合物を含む、乳癌耐性蛋白質(BCRP)選択的競合阻害剤。
(6)上記(1)または(2)に記載の化合物を用いることを特徴とする、乳癌耐性蛋白質(BCRP)の機能の測定方法。
(7)下記工程(A)及び(B)を含む上記(1)または(2)に記載の化合物の製造方法。
(A)下記式で表される2−ハロゲン置換ピリジン化合物(1)の3位にアジド基を挿入して、3−アジド−2−ハロゲン−ピリジン(2)を製造し、これに、トリブチル(1−プロピニル)チンを加えて、溶媒中で加熱還流を行い、下記式で表される1−(2−ハロゲン−3−ピリジル)−5−メチル−4−トリブチルスタニル−1H−1,2,3−トリアゾール化合物(3)を製造する。
(B)工程(A)により得られたトリアゾール(3)化合物、7−キノリニルトリフレート、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、フッ化セシウム、ヨウ化銅を溶媒に溶解し、加熱することにより、下記式で表される7−[1−(2−ハロゲン−3−ピリジル)−5−メチル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル]キノリン(4)を製造する。
更に本発明のBCRPに選択的な基質化合物を用いることにより、BCRPの機能を選択的に競合阻害することができる。
前記式中、Xはハロゲン原子である。ハロゲン原子は、好ましくは、Cl、F、BrおよびI並びにこれらの放射性同位元素からなる群より選択される。
Xとして好ましいハロゲン原子は、BrまたはFである。
放射性同位元素として18F、123I、124I、76Br、34Clが挙げられ、特に18Fが好ましい。
(A)下記式で表される2−ハロゲン置換ピリジン化合物(1)の3位にアジド基を挿入して、3−アジド−2−ハロゲン−ピリジン類(2)を製造し、これに、トリブチル(1−プロピニル)チンを加えて、溶媒中で加熱還流を行い、1−(2−ハロゲン−3−ピリジル)−5−メチル−4−トリブチルスタニル−1H−1,2,3−トリアゾール化合物(3)を製造する。
ジイソプロピルアミンに対し等モルのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液を加え、−78℃〜室温の範囲で、数分〜1時間程度反応させて、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)を調製する。
LDA溶液に、等モルの2−ハロゲン置換ピリジンのTHF溶液を添加する。その後、アルキルベンゼンスルホンアジドのTHF溶液を滴下し、−78℃で30分〜2時間攪拌する。反応液に水を加えて反応を停止し、その後、反応液を酢酸エチルなどの有機溶媒で抽出し、溶媒を留去し、3−アジド−2−ハロゲン−ピリジン(2)を得る。アジド化合物は不安定であるため、精製せず、そのまま使用することが好ましい。
3−アミノ−2−ハロゲン−ピリジンをテトラフルオロホウ酸水溶液に溶解し、反応溶液を0℃に冷却後、亜硝酸ナトリウム水溶液をゆっくり滴下する。0℃で1〜3時間反応させた後、アジ化ナトリウム水溶液をゆっくりと滴下し、0℃でさらに1〜3時間撹拌する。飽和炭酸ナトリウム水溶液で中和し、有機溶媒で抽出し、溶媒を留去して、3−アジド−2−ハロゲン−ピリジン(2)を得る。アジド化合物は不安定であるため、精製せず、そのまま使用することが好ましい。
例として、下記工程(C)を例示する。
(C)K18Fの水溶液を4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8,8,8]ヘキサコサンのアセトニトリル溶液に溶解し、溶液中の水とアセトニトリルを真空下で留去する。工程(C)により得られた7−[1−(2−ブロモ(あるいはヨウ素)−3−ピリジル)−5−メチル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル]キノリン(1mg)のDMSO溶液をヘリウムガスにより[18F]フッ化物イオンなどの放射性同位元素イオンの入った容器内へ圧送し、加熱下反応させる。
従って、本発明の新規な化合物のうち、放射性同位元素で標識された化合物を、上記核医学診断薬として用いることができる。特にPET画像診断に用いることができる。
また、BCRP機能の阻害剤の候補薬について、その機能を診断することができる。
更に、本発明の新規な化合物は、BCRPに選択的な基質であるため、BCRPの競合阻害剤として使用することができる。
工程(A)
1−(2−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−4−トリブチルスタニル−1H−1,2,3−トリアゾールの製造
7−[1−(2−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル]キノリンの製造
工程(A)
1−(2−ブロモ−3−ピリジル)−5−メチル−4−トリブチルスタニル−1H−1,2,3−トリアゾールの製造
7−[1−(2−ブロモ−3−ピリジル)−5−メチル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル]キノリンの製造
7−[1−(2−[ 18 F]フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル]キノリン([ 18 F]FUN−4)の製造
1.使用動物
FVB(♂、27〜28g、10〜12週令、タコニック社),Mdr1a/b(/)(Pgp発現遺伝子ノックアウトマウス)(♂、27〜32g、10〜12週令、タコニック社)Bcrp1(/)(BCRP発現遺伝子ノックアウトマウス)(♂、25〜30g、10〜12週令、タコニック社),Mdr1a/b(/)Bcrp1(/)(Pgp及びBCRP発現遺伝子ノックアウトマウス(♂、25〜28g、10〜12週令、タコニック社)、ddY(♂、33〜37g、8週令、日本SLC)を用いた。すべてのマウスは、当研究所にて12H light/darkサイクル(12時間明暗サイクル)下で25℃にて飼育された。本項目にある動物実験は、当研究所における実験動物倫理委員会の許可を得て実験を行い、苦痛軽減や最小限の個体数を考慮し、行った。
上記により合成された本発明の化合物[18F]FUN−4を用いて、ノックアウトマウスにおけるPET撮像を行った。小動物PETスキャナーはシーメンス社(Knoxville,TN,USA)のものを使用した。
マウスを1.5%濃度のイソフルランで麻酔し、尾静脈より29Gのカテーテル付き針によってルートを確保した。その後、40℃の温水マットが敷かれてあるPETの台座に麻酔をしたまま固定し、撮像の適した位置に移動した。[18F]FUN−4を、マウスの尾静脈より3.7〜7.4 MBq/0.2mLで投与した。ダイナミックスキャンは3Dモードで60分間行った(1分×4フレーム、2分×8フレーム、5分×8フレーム)。
BCRPの選択的阻害剤であるKo143及び非標識FUN−4を用いて[18F]FUN−4の脳の集積に変化が見られるか、小動物PETによって評価した。
Ko143及び非標識FUN−4は10mg/kgの濃度で0.1mL DMSOに溶解し、PET撮像開始5分前にマウス尾静脈より、それぞれ投与した。
小動物PETにより得られた画像から、ASIPro(シーメンス社)を用いて参照領域(ROI)における時間放射能曲線(TAC)を描いた。放射能は減衰補正し、%SUVによって示す。
%SUV=(参照領域の放射能(Bq/cc)/投与された放射能)×マウス体重(g)×100
得られた結果を図1及び2に示す。
図1に示すように、本発明の化合物[18F]FUN−4は野生型(wild type)の脳においては集積が殆どみられなかったが、Pgp及びBCRPのノックアウトマウス(Mdr1a/b-/-Bcrp1-/-)では、2〜3倍に集積が増加した。更に、Pgp単独欠損マウス(Mdr1a/b-/-)の脳では、殆ど集積が見られなかったが、BCRP単独欠損マウス(Bcrp1-/-)の脳で、2倍程度に集積が増加した。
この結果より、本発明の化合物[18F]FUN−4はBCRPによって、より選択的に脳侵入を制限されている事が推測された。
図2に、BCRPに特異的な阻害剤で知られるKo143と非標識FUN−4を投与したPET実験結果を示す。コントロール(vehicle)の脳では、[18F]FUN−4の集積は殆ど見られなかったが、阻害剤であるKo143投与群では、2〜3倍程度増加した。同様に非標識FUN−4投与群においても、[18F]FUN−4の脳集積は2倍程度増加した。
上記のノックアウトマウスや阻害剤を用いたPET実験によって、[18F]FUN−4はPgpよりもBCRPに選択的に排出を受ける核医学診断薬であることが判明した。同様に、非標識FUN−4についてもBCRPに選択的な阻害効果を持つ薬剤として期待できる。
Claims (7)
- 下記式で表される化合物:
前記式中、Xはハロゲン原子あるいはその放射性同位元素である。 - Xが、ハロゲン原子の放射性同位元素である、請求項1記載の化合物。
- 請求項1または2に記載の化合物を含む、核医学診断薬。
- 核医学診断がPET画像診断である、請求項3記載の核医学診断薬。
- 請求項1または2に記載の化合物を含む、乳癌耐性蛋白質(BCRP)選択的競合阻害剤。
- 請求項1または2に記載の化合物を用いることを特徴とする、乳癌耐性蛋白質(BCRP)の機能の測定方法。
- 下記工程(A)及び(B)を含む請求項1または2に記載の化合物の製造方法。
(A)下記式で表される2−ハロゲン置換ピリジン化合物(1)の3位にアジド基を挿入して、3−アジド−2−ハロゲン−ピリジン(2)を製造し、これに、トリブチル(1−プロピニル)チンを加えて、溶媒中で加熱還流を行い、下記式で表される1−(2−ハロゲン−3−ピリジル)−5−メチル−4−トリブチルスタニル−1H−1,2,3−トリアゾール化合物(3)を製造する。
(B)工程(A)により得られたトリアゾール(3)化合物、7−キノリニルトリフレート、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、フッ化セシウム、ヨウ化銅を溶媒に溶解し、加熱することにより、下記式で表される7−[1−(2−ハロゲン−3−ピリジル)−5−メチル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル]キノリン(4)を製造する。
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