JP2012120090A - 無線通信装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】受信専用アンテナにも適用でき、外部への不要波発射を低減し、かつ、簡単な構成でも運用中に使用できるアンテナ障害診断方法を提供する。
【解決手段】OFDMA方式を利用して通信を行う無線通信装置であって、アンテナ障害診断に利用される試験信号を生成する試験信号生成部と、アンテナの順方向経路及び反射方向経路に前記試験信号を挿入する結合部と、前記試験信号が挿入された受信信号から、サイクリックプリフィックスを分離するCP分離部と、前記CP分離部によって分離されたサイクリックプリフィックスから前記試験信号を抽出し、各経路通過後の前記試験信号の電力を測定する電力測定部と、前記測定された各経路の電力の差からリターンロスを計算し、前記計算されたリターンロスを用いてアンテナ障害を診断する診断部と、を備える。
【選択図】図2

Description

本発明は無線通信装置に関し、特に送受信共用アンテナの他、受信専用アンテナに適用可能な障害診断方法に関する。
近年の移動体通信システムは、音声通信の他、データ通信にも多く用いられ、データ通信利用者の増加に伴ってデータ通信の高速化が求められている。現在ではIEEEにて標準化作業中のMobile WiMAX 802.16e規格に準拠したサービスが日本国内の他、全世界で開始されている。また、3GPPにて標準化作業中のLTE規格に準拠したサービスも一部の国では既に開始されており、日本国内でも今年中の開始が見込まれている。いずれの規格も次世代通信方式としてOFDMA方式を採用しており、これはIMT−Advancedに対応したそれぞれの後継規格についても同様であり、今後移動体通信システムとしてはOFDMA方式が主要な通信方式となっていくと考えられる。
前述のように、データ通信の高速化が進む一方、携帯電話のサービスエリア拡大も進められおり、日本国内では人口カバー率が100%近くにまでサービスエリアが広がっている。このため、携帯電話が使用できない場所の不便さが際立つようになっており、携帯電話事業者各社が、携帯電話の使用できない不感地帯を減らす努力をしている。このように携帯電話は日本全国どこでも使用できることが当然となっており、基地局の故障等によってあるエリアで一時的に携帯電話が使えない、又はデータ通信速度が低下する等の障害があった場合、ユーザは大きな不便さを感じることとなる。従って、今後も携帯電話システムの運用において、システムの安定性は重要であり、障害を発生しにくくすると共に、発生した障害を迅速に検出し、復旧させることが求められる。
しかし、携帯電話システムには、無線という不確かなインタフェースが関わる場合、即座に故障を検出することが困難な場合がある。例えば、通信不通やスループット低下の現象が見られた場合でも、基地局装置の故障だけでなく、アンテナ故障、ケーブル接続不良、外来妨害波による影響など様々な要因が考えられる。従って、障害を迅速に復旧するためには、障害箇所の切り分けができることが望ましい。このため、アンテナ障害診断などの、無線基地局の障害診断機能が重要となっており、その方法も様々なものが提案されている。
図6Aに、アンテナ障害検出機能の第一の従来例の構成を示す。本従来例では、無線基地局100の送信回路部105から出力され、デュプレクサ104を通過し、アンテナ101へ出力される電力のうち、順方向電力(アンテナへの送信電力)109と反射方向電力(アンテナからの反射電力)110を方向性結合器103で抽出し、スイッチ111を介して電力検波回路部112で、それぞれの電力を検波する。そして、検波された電力の差分から電圧定在波比(VSWR、Voltage Surface Wave Ratio)の劣化の有無を検出し、アンテナ故障を検出する方法がある。ここで反射方向については方向性結合器ではなく、アイソレータを用いてもよい(例えば、特許文献1参照。)。
本方法は簡易に実現可能であり、現在、アンテナ故障検出方法としてよく用いられる方法の一つである。
図6Bに、アンテナ障害検出機能の第二の従来例の構成を示す。本従来例では、無線基地局120に設けられた端末機能部130が、スイッチ131、132、133を介して方向性結合器123、127より、アンテナを介さず受信機へ入力される経路である順方向経路134、136と、アンテナを介しアンテナからの反射波が受信機へ入力される経路である反射方向経路135、137とへそれぞれ信号を入力する。端末機能部130は、各経路でエラー率が測定可能な受信感度点となるように送信電力を調整する。そして、端末機能部130の送信電力の差分から各アンテナのリターンロスを求め、さらに、VSWRを計算し、アンテナ障害を診断する方法がある(例えば、特許文献2参照。)。
本従来例によれば、他にもデュプレクサ124、送信回路部125等で構成される送信機や、受信回路126、129、フィルタ128等で構成される受信機の障害診断も可能である。また、第一の従来例で課題となっていた受信専用アンテナ122の診断に対しても適用でき、無線部の各種障害を包括的に試験することが可能である。
但し、アンテナ障害診断の際に反射方向経路135、137へ入力される信号のうち、反射波以外の信号は、アンテナより外部へ出力される。特に、アンテナが正常である場合、受信感度点となる電力からリターンロスの分だけ大きな電力が、アンテナより不要波として外部へ出力されるという問題がある。本不要波は、他の基地局に対する妨害波となり、運用中の通信が途切れたり、一時的に通信速度が低下したりする可能性がある。従って、システム全体にとっては不要波を極力低減することが望ましい。
また、本従来例では、端末機能を基地局に搭載して呼接続をしているため、入力される試験信号も他端末が発信する信号と同様のものであり、自基地局が受信する主信号には影響を与えず運用中の障害診断が可能となっている。
特開平5−14291号公報 特開2005−151189号公報
前述したように、無線通信装置の無線部、特に、アンテナの障害を診断するための多くの従来の方式は、第一の従来例のように、受信専用アンテナや、受信回路部106、108、受信側のフィルタ107の障害検出には適用できないという課題がある。
受信専用アンテナにも適用できる障害診断方法としては、第二の従来例のような方法も提案されているが、不要波が外部へ出力されるという課題があった。
また、第二の従来例においては、無線部の障害診断のために、大がかりな構成が必要であり、装置の価格も高くなり、ハードウェア及びソフトウェアの開発工数も大きくなるという課題があった。無線部の障害診断を目的とするのであれば、端末機能部を搭載せずに、無線受信部、アンテナの障害診断の構成を簡素にすることも可能であるが、運用中の障害診断ができないという課題があった。
本発明は、受信専用アンテナにも適用でき、外部への不要波発射を低減し、かつ、簡単な構成でも運用中に使用できるアンテナ障害診断方法を提供することを目的とする。
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、OFDMA方式を利用して通信を行う無線通信装置であって、アンテナ障害診断に利用される試験信号を生成する試験信号生成部と、アンテナの順方向経路及び反射方向経路に前記試験信号を挿入する結合部と、前記試験信号が挿入された受信信号から、サイクリックプリフィックスを分離するCP分離部と、前記CP分離部によって分離されたサイクリックプリフィックスから前記試験信号を抽出し、各経路通過後の前記試験信号の電力を測定する電力測定部と、前記測定された各経路の電力の差からリターンロスを計算し、前記計算されたリターンロスを用いてアンテナ障害を診断する診断部と、を備える。
本発明の代表的な実施の形態によれば、送受信用アンテナだけでなく、受信専用アンテナの故障を診断することができる。
本発明の実施の形態の無線基地局の構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態の無線基地局の無線アナログ部及びデジタル信号処理部の詳細な構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態におけるアンテナ障害診断方法のシーケンス図である。 本発明の実施の形態の基地局において除去されるサイクリックプリフィックスを説明する図である。 本発明の実施の形態の基地局において分割されたPN信号が挿入されたCP部を説明する図である。 従来例の構成を示すブロック図である。 従来例の構成を示すブロック図である。
まず、本発明の実施の形態の概要について説明する。
本発明の実施の形態では、今後の移動体通信システムにおいて主要な通信方式となると考えられるOFDMA方式の無線基地局において、簡単な構成で、かつ、運用中にも使用できるアンテナの障害診断方法及び装置を提案する。
具体的には、基地局内に受信機の障害診断試験用の送信機を設け、本送信機内にはPN符号を用いた試験信号を生成するPN信号発生器と、運用中の受信信号のサイクリックプリフィックスのタイミングと試験信号の送信タイミングを一致させるタイミング制御部と、二つの経路(順方向経路、反射方向経路)を選択できるスイッチを設ける。受信回路には、障害診断試験用の送信機より出力された試験信号を順方向経路と反射方向経路へ注入可能にする方向性結合器と、受信信号よりサイクリックプリフィックスを除去するCP除去部と、CP除去部にて取り除かれた試験信号を抽出し、元のPN信号との相関を取り、同相加算処理によってノイズフロア以下の電力でも測定可能にする相関部と、相関部の出力からSIRを計算するSIR測定部と、各経路のSIRの測定結果からアンテナのVSWRを計算するVSWR測定部を設ける。ここで試験信号の電力は、順方向経路及び反射方向経路共に、アンテナ端で、例えば熱雑音程度の電力に調整するとよい。
本発明の実施の形態では、前述した構成を用いることによって、受信専用アンテナの障害診断にも適用することができる。また、各経路のSIR測定において試験信号の電力はアンテナ端で熱雑音程度の低電力に抑えられているため、外部へ発射される不要波を低減することができ。さらに、受信主信号のサイクリックプリフィックスのタイミングに試験信号が挿入されるため、端末機能部を搭載しない簡単な構成であっても、受信主信号に影響を与えずに運用中に障害を診断することができる。
次に、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
以下に開示される実施の形態では、今後の移動体通信システムにおいて主要な通信方式となると考えられるOFDMA方式の無線基地局において、簡単な構成で、かつ、運用中にも使用できるアンテナの障害診断方法及び装置を提案する。
図1は、本発明の実施の形態の無線基地局の構成を示すブロック図である。無線基地局202は、無線アナログ部203と、デジタル信号処理部215と、回線インタフェース部216と、基地局制御部217とを備える。また、本実施の形態では、送信一系統及び受信二系統を備える無線基地局202の例を説明する。
無線アナログ部203は、送受信共用アンテナ200(アンテナ0系)と受信専用アンテナ201(アンテナ1系)とが接続される。各アンテナ端には試験信号を順方向経路と反射方向経路へ注入するための方向性結合器204、205を有する。無線アナログ部203は、アンテナ0系では、下り無線信号と上り無線信号を分離するデュプレクサ209と、無線送信部212と、無線受信部0(213)とを有し、アンテナ1系では、上り無線信号の周波数帯域幅を制限するフィルタ210と、無線受信部1(214)とを有する。
さらに、無線アナログ部203は、障害の診断時に使用する試験信号送信部211と、その試験信号をアンテナ0系又はアンテナ1系に注入するかを選択するスイッチ208と、各アンテナ系で試験信号を順方向経路又は反射方向経路へ注入するかを選択するスイッチ206、207とを有する。これらスイッチ206、207、208は、1対4のスイッチを用いることによって、一つのスイッチに纏めることができる。また、各スイッチに終端経路を追加し、通常運用中は試験信号送信部211が終端され、試験信号送信部211が主信号回路と完全に切り離される構成としてもよい。
デジタル信号処理部215は、データの変復調と、無線信号、試験信号のデジタル信号処理を行う。回線インタフェース部216は、無線基地局202とネットワーク221とのインタフェースである。基地局制御部217は、CPU218、メモリ(例えば、RAM219、ROM220)を有し、無線基地局202の動作を監視及び制御する。
保守端末222はネットワーク221、回線インタフェース部216を経由し、基地局制御部217に接続され、無線基地局202の監視及び制御をリモートにて行う機能を有する。
なお、無線基地局202は、MIMOに対応するために送受共に複数系統(2系統、4系統又はそれ以上)備わっていても、送受信の系統数が同一でもよく、また複数セクタを有してもよい。
本実施の形態において、無線基地局202はOFDMA方式を利用する。OFDMA方式では、マルチパス遅延拡散の影響を低減するために、サイクリックプリフィックス(CP)が設けられる。サイクリックプリフィックスは、各シンボルの先頭にシンボルの後ろの方のコピーが追加されたガード・インターバルである。
サイクリックプリフィックスは、受信機側で取り除かれてFFT処理がされる。この際、取り除かれる信号のタイミングは受信機側で決められる。移動体通信システムの上り回線では、基地局側がタイミングのマスタであり、端末側は適当なタイミングで信号が受信されるようにタイミングを調整することが一般的である。すなわち、基地局側では特定のタイミングの情報をCP長分の窓だけ除去し、残ったFFT長の情報をFFTに入力することによって、周波数領域の信号を取得する。
図2は、本発明の実施の形態の無線基地局の無線アナログ部203及びデジタル信号処理部215の詳細な構成を示すブロック図である。特に、図2には、アンテナ障害診断に関する構成を示す。なお、説明の単純化のため、図2では無線アナログ部のアンテナ1系について説明するが、アンテナ0系も同様に構成される。
デジタル信号処理部215は、PN信号発生部300、CP除去部307、相関部308、タイミング制御部309、SIR測定部310及びVSWR測定部311を備える。
PN信号発生器300は、本実施の形態における障害診断用試験信号の発生源であり、PN符号を用いた試験信号が無線アナログ部203の試験信号送信部211へ出力される。この時、図5に示すように、PN信号発生器300は、時間的にある程度長い(例えば、5ms程度の)PN信号系列600をCP長(4.69μs)以下毎に分解し、タイミング制御部309よって指定されたタイミングで、分解された試験信号601を出力する。この構成によって、後の受信回路で受信する主信号602のサイクリックプリフィックスのタイミングに、これら分割された試験信号が挿入されている。
PN信号発生器300は、ミキサ、NCOを有し、周波数を可変にしてもよい。また、PN信号発生器300が、ゲインブロックを有し、出力信号のレベルを可変とすれば、以降のアナログ部の利得ばらつきも調整することができる。但し、本実施の形態のアンテナ障害診断機能において、出力レベルは可変である必要はない。このため、DAコンバータ301のダイナミックレンジは大きい必要がなく、安価なDAコンバータを採用することができる。
無線アナログ部203の試験信号送信部211は、DAコンバータ301及びアップコンバータ303を備える。まず、DAコンバータ301がデジタル信号からアナログ信号へ変換し、アップコンバータ303が、シンセサイザ302からのローカル信号によって、無線周波数帯へ周波数変換する。なお、DAコンバータ301、シンセサイザ302、アップコンバータ303等が1チップ化された集積回路を利用し、部品点数を削減することができる。
その後、スイッチ207は、無線周波数帯へ周波数変換された試験信号を、順方向に注入するか、反射方向に注入するかを選択する。順方向が選択された場合、試験信号は、方向性結合器205を介し、フィルタ210を通過後、無線受信部1(214)へ入力さる。一方、反射方向が選択された場合、試験信号は、方向性結合器205を介し、アンテナから外部へ出力されるが、アンテナで反射した試験信号の一部が再度方向性結合器205及びフィルタ210を通過後、無線受信部1(214)へ入力される。ここで、試験信号のレベルが、アンテナ端(方向性結合器205の出力端)で、ある一定のレベル(例えば、熱雑音程度)になるように設定し、製造時等に予めアナログ部品の利得ばらつきを調整することによって、より精度の高い障害診断が可能となる。
無線受信部1(214)は、低雑音増幅器304、ダウンコンバータ305及びADコンバータ306を備える。低雑音増幅器304によって増幅された試験信号は、無線周波数帯から元のベースバンド周波数へ変換され、ADコンバータ306によってデジタル信号へ変換後、デジタル信号処理部215へ入力される。デジタル信号処理部215では、まず、CP除去部307がサイクリックプリフィックスを分離し、サイクリックプリフィックスが分離された信号は主信号復調処理へ送られる。この後の処理は、本実施の形態と関係が無いため説明を省略する。
一方、CP除去部307によって抽出されたサイクリックプリフィックスには、前述の通りPN信号発生器300で生成された試験信号が挿入されている。このサイクリックプリフィックスは、相関部308へ送られる。相関部308では、送られてきた信号の受信タイミングを、相関演算によって求める。相関部308は、例えば、スライディング相関器によって最も相関値のピークが高くなるタイミングを検出する。
この相関値の検出結果はタイミング制御部309へ送られ、PN信号発生器300が送信する信号のタイミングの調整に用いられる。例えば、期待するサイクリックプリフィックスの窓位置に対して、検出された信号が先行している場合、信号送信のタイミングを遅らせるようにPN信号発生器300に指示する。一方、検出された信号が遅延している場合、信号送信タイミングを早めるようにPN信号発生器300に指示する。
PN信号発生器300は、信号送信タイミングを早める指示があれば、現在のタイミングに比べて所定の値だけ信号の生成タイミングを早めるように、タイミングを制御する。この調整によって、常に、サイクリックプリフィックスとして基地局が信号復調に利用せずに除去するタイミングに、PN信号発生器300が送信する試験信号を挿入することができる。
なお、相関部308部がPN信号発生器300で生成された試験信号のズレ量を測定し、PN信号発生器300に信号送信タイミングの制御量を指示してもよい。
但し、本実施の形態における方式によるタイミング調整前には、試験信号の挿入タイミングがサイクリックプリフィックスから外れ、主信号の品質に影響を与える可能性がある。この場合を考慮して、システムの起動時又は通信が閑散な時に、前述したタイミングを調整する。また、保守端末222より指定したタイミングに試験信号の挿入タイミングを調整してもよい。基地局の設置後、運用中において、基地局やケーブル等の遅延量は大きく変化しないため、前述したタイミングに試験信号の挿入タイミングを調整すれば十分であるが、遅延量が多少変化する可能性を考えると、挿入される試験信号をCP長に対してマージンを持つように多少短くすれば、通信に使われている主信号の品質に影響を与えない。従って、本実施の形態の構成によれば、端末機能を搭載することなく運用中のアンテナ障害診断において、システムへの影響を減少させることができる。
また、複数の端末からの信号を受信している場合、端末から基地局の距離及び伝搬経路(マルチパス)の違いによって、各端末から送信された信号の受信タイミングがずれる場合がある。その様子を図4に示す。図4において、縦軸は周波数、横軸は時間を示す。信号500、501、502は、それぞれ異なる端末から受信された信号を示す。基地局は、端末に対して、上り信号の送信タイミングを制御しているが、各端末からの信号の受信タイミングを完全に同期させることは困難である。従って、図4に示すように、許容される時間差において、サイクリックプリフィックスの受信タイミングは、ある程度ずれが生じる。
この時、例えば、信号502のように大きく遅延した場合、サイクリックプリフィックスに挿入された試験信号が、主信号に対してノイズになることがある。しかし、基地局では、図4の破線間のタイミングをサイクリックプリフィックスと判断する。本実施の形態では、試験信号の挿入タイミングを調整することによって、試験信号が点線間のタイミングに挿入され、CP除去部307が試験信号を正しく分離することができる。従って、このような、端末からの信号に遅延が生じた場合でも、主信号へ影響を与えずに、障害を診断することができる。
前述したタイミング調整の後、アンテナの障害診断時には、同様にPN信号発生器300から試験信号が出力され、温度変化による遅延量の変化も考慮して、周期的に(例えば、所定時間間隔で)、試験信号の挿入タイミングを調整する。CP除去部307によって抽出されたサイクリックプリフィックスには、分割されたPN信号系列が挿入されているため、相関部308が相関演算によって試験信号を抽出した後、抽出された試験信号の断片が合成され元の一つのPN信号系列が復元される。そして、相関部308は、I成分の相関結果の振幅を平均したIaveと、Q成分の相関結果の振幅を平均したQaveと、各成分の振幅の二乗を平均したI2ave及びQ2aveの値とをSIR測定部310へ出力する。ここで試験信号の強度がノイズフロア以下であっても、試験信号は同相加算処理によって拡散利得が得られるため、各値を正確に測定することができる。
SIR測定部310では入力された値から、以下の計算式を用いてSIRを計算する。以下の式において、Wは試験信号の帯域幅、TはPN信号系列の長さである。なお、本SIR計算を複数回行って、その結果の平均を求めることによって、ばらつきを抑制した値を以降の計算に使用してもよい。
N = W×T
AI = (Iave/N)2
BI = I2ave/N
S2I = AI−BI/N
N2I = BI−AI
AQ = (Qave/N)2
BQ = Q2ave/N
S2Q = AI−BI/N
N2Q = BI−AI
SIR = 10log{(S2I+S2Q)/(N2I+N2Q)} [dB]
以上の手順によるSIRの測定は、スイッチ207を切り替えることによって、順方向経路、反射方向経路共に行われる。SIR測定部310は、各経路のSIR測定結果を、VSWR測定部312へ出力する。VSWR測定部312は、以下の計算式を用いて、アンテナの異常有無の判断の指標となるVSWRを計算する。ここで、SIR_Fは順方向経路において測定されたSIRであり、SIR_Rは反射方向経路において測定されたSIRである。
RL(リターンロス)=SIR_F−SIR_R [dB]
VSWR ={1+10(-RL/20)}/{1−10(-RL/20)
なお、本実施の形態では、各経路のSIRの差分よりリターンロスを求めているが、順方向経路及び反射方向経路のいずれにおいてもノイズの電力は等しいと推定し、各経路の信号成分電力のみに着目すれば以下式よりリターンロスを計算できる。
Spow_F:順方向経路の(S2I+S2Q)
Spow_R:反射方向経路の(S2I+S2Q)
RL(リターンロス)= 10log(Spow_F/Spow_R) [dB]
また、VSWRを計算せず、リターンロスによってアンテナの障害有無を判断してもよい。
図3は、本実施の形態における障害診断方法のシーケンス図である。以下、図1及び図2の構成を有する無線基地局のアンテナ障害検出処理について説明する。なお、システムの起動時に一度、本処理が行われて、試験信号の挿入タイミング調整がされているものとする。
障害診断は、例えば、保守作業者が保守端末222に障害診断実行の指示を入力することにより開始する。この障害診断実行指示は、試験をする基地局の指定及び診断する受信機の指定(例えば、セクタ、系の識別子)、及び、障害診断に用いるチャネル(試験信号の周波数)の指定を含む。なお、診断開始の契機は、予め定められた診断スケジュールに従い、所定の時刻になると診断を開始してもよい。
保守端末222は、指定された無線基地局202の基地局制御部217に、受信機の識別情報(例えば、セクタ、系の識別子)と試験対象となるチャネル情報との指定を含む診断開始指示を通知する(400)。なお、保守端末222は、周期的に(例えば、所定時間間隔で)診断開始指示を通知してもよい。
基地局制御部217は、スイッチ207を順方向経路へ切り替え、デジタル信号処理部215のPN信号発生器300に、事前に調整されたタイミングの設定(必要であれば、周波数、出力レベル等の設定)を指示し、試験信号の出力を指示する。PN信号発生器300は、指定された設定によって動作を開始する(401)。
PN信号発生器300は、試験信号を出力する(402)。その後、出力された試験信号は、無線アナログ部203の方向性結合器205から無線受信部1(214)へ入力される。そして、デジタル信号処理部215が試験信号を受信し(403)、タイミング制御部309がPN信号発生器300からの信号の出力タイミングを微調整し(404)、SIR測定部310が、受信した試験信号を用いて順方向のSIRを測定する(405)。
その後、デジタル信号処理部215は、基地局制御部217に、スイッチ207の切り替えを要求し(406)、基地局制御部217は、スイッチ207を反射方向経路に切り替え(407)、反射方向のSIRの測定を要求する(408)。
反射方向経路においても、タイミング制御部309がPN信号発生器300からの信号の出力タイミングを微調整し(409)、SIR測定部310が反射方向のSIRを測定する(410)。デジタル信号処理部215は、反射方向のSIRを測定結果とステップ405で測定した順方向SIRの測定結果とに基づいて、VSWRを計算する(411)。デジタル信号処理部215は、計算されたVSWRを基地局制御部217へ報告し(412)、試験信号の出力を停止する(413)。
基地局制御部217は、測定されたVSWR値を診断結果として保守端末222へ報告し(414)、故障診断を終了する(415)。
なお、基地局制御部217内のROM220に障害の有無を判断するためのVSWRの閾値を格納しておき、この閾値と測定結果とを比較することによって、障害の有無を判定し、測定されたVSWR値と共に、障害の有無を診断結果に含めて保守端末222へ報告してもよい。
なお、本実施の形態では、デジタル信号処理部215のVSWR測定部311がVSWRを計算しているが、ファームウエアによる処理によってVSWRを計算してもよい。この場合、ステップ405及び410で測定された各経路のSIR測定結果は、基地局制御部217のRAM219に保存され、ROM220に格納されているプログラムが、RAM219に保存された値からVSWRを計算する。
以上説明したように、本発明の実施の形態によると、受信回路を利用してVSWR測定をしているため、送受信供用アンテナの他、受信専用アンテナに対してもVSWRを測定することができる。
また、試験信号の電力は順方向経路、反射方向経路共にアンテナ端で同一レベルとし、各経路でのSIRの差分からアンテナのリターンロスを求めVSWRを計算している。PN符号を用いた試験信号は同相加算処理によって、信号がノイズフロア以下であってもSIR測定が可能である。このため、反射方向経路においてSIRを測定する際にも、アンテナ端電力(アンテナから出力される電力)を低減することができる。すなわち、障害診断時に発射される不要波のレベルを低減することができ、障害診断中に発射される不要波によるシステム(例えば、他基地局)への影響を排除し、システム全体のパフォーマンスへの影響を低減することができる。
さらに、受信回路へ入力される試験信号はサイクリックプリフィックスに挿入され、サイクリックプリフィックスは主信号の復調の際に除去されるため、受信主信号への影響を排除することができ、運用中でも自基地局に接続中の端末の通信に影響を与えることなく、アンテナの障害を診断することができる。
従って、本実施の形態によって送受信供用アンテナ、受信専用アンテナのいずれにも適用可能で、システム全体に(自システムの自他基地局だけでなく、他システムへも)影響を与えず、運用中に診断可能なアンテナ障害診断方法を提供し、システムの安定的な運用に役立つ。また、本発明の実施の形態によって、簡単な構成によって無線部の障害を診断することができるため、基地局装置へ無線部障害診断機能を搭載しやすくなる。
101、121、200 送受供用アンテナ
102、122、201 受信専用アンテナ
103、123、127、204、205 方向性結合器
104、124、209 デュプレクサ(DUP)
107、128、210 フィルタ(FIL)
111、131、132、133、206、207、208 スイッチ
109 順方向電力
110 反射方向電力
134、136 順方向経路
135、137 反射方向経路
301 DAコンバータ(DAC)
302 シンセサイザ
303 アップコンバータ
304 低雑音増幅器(LNA)
305 ダウンコンバータ
306 ADコンバータ(ADC)

Claims (5)

  1. OFDMA方式を利用して通信を行う無線通信装置であって、
    アンテナ障害診断に利用するためにサイクリックプリフィックスに挿入される試験信号を生成する試験信号生成部と、
    アンテナの順方向経路及び反射方向経路に前記試験信号を挿入する結合部と、
    前記試験信号が挿入された受信信号から、サイクリックプリフィックスを分離するCP分離部と、
    前記CP分離部によって分離されたサイクリックプリフィックスから前記試験信号を抽出し、各経路通過後の前記試験信号の電力を測定する電力測定部と、
    前記測定された各経路の電力の差からリターンロスを計算し、前記計算されたリターンロスを用いてアンテナ障害を診断する診断部と、を備えることを特徴とする無線通信装置。
  2. 前記電力測定部は、
    前記CP分離部によって分離された複数のサイクリックプリフィックスに挿入された試験信号を合成し、
    前記合成された試験信号に同相加算処理をし、
    前記同相加算処理がされた信号を用いてリターンロスを計算することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
  3. 前記CP分離部によって分離されたサイクリックプリフィックスから抽出された試験信号の受信タイミングを測定する相関部と、
    前記試験信号発生部は、前記相関部による測定結果に基づいて、前記試験信号がサイクリックプリフィックスのタイミングに挿入されるように、前記試験信号の発生タイミングを制御することを特徴とする請求項1又は2の記載の無線基地局装置。
  4. 前記診断部は、前記計算されたリターンロスから、VSWRを計算することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の無線通信装置。
  5. 前記試験信号生成部は、所定のPN信号を生成するPN信号発生器と、前記PN信号発生器によって生成されたPN信号をアナログ信号に変換するDAコンバータと、前記変換されたアナログ信号を無線周波数に変換して、前記試験信号を生成する周波数変換器と、を有し、
    前記結合部は、前記試験信号が前記順方向経路又は前記反射方向経路のいずれに挿入されるかを切り替えるスイッチと、前記スイッチによって切り替えられた試験信号を、前記順方向経路又は前記反射方向経路のいずれかに加える方向性結合器と、を有し、
    前記無線通信装置は、前記試験信号を受信する受信部を備え、
    前記受信部は、前記試験信号をベースバンド信号に変換する周波数変換器と、前記変換されたベースバンド信号をデジタル信号に変換するADコンバータと、を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の無線通信装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014192581A (ja) * 2013-03-26 2014-10-06 Toshiba Denpa Products Kk プリセレクタ及びプリセレクタ診断システム

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