JP2012112906A - Spr方式旋光測定装置および光ファイバ共鳴光学系ならびにそれを用いた旋光測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】複屈折や旋光性をもつ生体の組織、血液、分子などの物質の微小な旋光特性を無侵襲で高精度に測定できるSPR方式旋光測定装置を提供する。
【解決手段】リング光干渉計のループ光路の途中に対向する偏光変換コリメータセットを設けそれに用いる偏光子12、波長板およびファラデー回転素子15−1,15−2などの厚さをできるだけ薄型化することによって被測定検体内で散乱する散乱光を十分な信号対雑音比で受光するようにした。
【選択図】図2
【解決手段】リング光干渉計のループ光路の途中に対向する偏光変換コリメータセットを設けそれに用いる偏光子12、波長板およびファラデー回転素子15−1,15−2などの厚さをできるだけ薄型化することによって被測定検体内で散乱する散乱光を十分な信号対雑音比で受光するようにした。
【選択図】図2
Description
本発明はSPR方式旋光測定装置および光ファイバ共鳴光学系ならびにそれを用いた旋光測定方法に関し、例えば,被検体の旋光特性を解析することにより旋光性を持つ生体や組織、血液、分子などの存在やその含有量を高精度に検出することができるSPR方式旋光測定装置および旋光測定システムに使用することができる光ファイバ共鳴光学系ならびにそれを用いた旋光測定方法に関し、例えばさらに具体的に言えば、表面プラズモン共鳴(SPR)を利用して、被検者から採血することなく人体の血液、唾液や特定の生体組織に含まれる旋光性の物質の旋光度を高精度に測定できるSPR方式旋光測定装置および旋光測定システムに使用することができる光ファイバ共鳴光学系ならびにそれを用いた旋光測定方法に関する。
現行の血糖値の測定方法はグルコースオキシダーゼ(GOD)法と呼ばれるもので、試薬の中にGODとフェリシアン化カリウムを含ませ血液中のブドウ糖と特異的に反応させグルコン酸と電子を発生させる。これに一定の電圧を加えると電流が発生し、この電流が血液中のブドウ糖濃度に比例することを応用した血糖値の測定方法である。
しかし、患者によっては試薬や針などのランニングコストが年間10万円以上必要であることや試験後の採血針の処理や採血を嫌がる患者がいることなどの問題がある。
このような背景から、採血せずに血糖値を測定するいわゆる無侵襲の血糖値測定法が永らく求められている。
従来の光方式の無侵襲血糖値測定方法は特許文献1に記載があるような、指などの生体の一部に赤外レーザ光を照射し、血管からの散乱光を分光し、血液に含まれるグルコースを測定するものである。これはグルコース濃度に比例して散乱光が低減する原理を利用している。この方法は散乱光の光強度が体温や皮膚の水分や油成分量などに依存し測定値がばらつくことから実際には実用化されていない。
侵襲方式で血糖値を高精度に測定する方法は特許文献2に示す複屈折率測定装置で測定する方法がある。この方法は干渉計のリングに非相反光学系を設け、被検体をその内部において検体の旋光度を計測するもので、その実施例に波長800nm帯の光源が使用されている。この方法では健常者の血糖値レベルである0.1g/dLと同等の濃度のグルコース溶液を厚さ10mm程度の検体で十分な精度で測定することができるが、検体が生体の場合には生体内の光の散乱損失の影響で無侵襲では十分なグルコース濃度の測定精度が得られない。
生体の血糖値の測定は極めて難しい課題で、これまで多くの試みがなされてきたが、特許文献2に記載の方法の他には全く実用レベルの測定精度が得られず、果物の糖度の測定には実用化されても、生体の血糖値の測定は無理と思われてきた。
特許文献2に記載の方法の提案で、ようやく健常者の血糖値レベルである0.1g/dLと同等の濃度のグルコース溶液のグルコース濃度を厚さ10mm程度の検体で十分な精度で測定することができるようになった。しかし、この方法でさえも生体の血糖値を無侵襲で測定できず、糖尿病の患者は毎日採血して測定しなければならないという苦痛を強いられているのが現状である。
血糖値の測定装置の開発には多大な費用と努力を必要とする。現在の技術水準から、人の血糖値を無侵襲で測定できる可能性は極めて低いとみなされているのが実状であり、測定装置の開発発表も測定方式の提案もない。
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、従来の光方式旋光測定装置の感度を大幅に改善した血液、血管、組織、分子などに含まれる旋光物質の存在やその含有量を無侵襲で高精度に検出することができる旋光測定装置を提供することにある。
係る課題を解決するためになされた本発明に係る一発明の実施の形態例の旋光測定装置の特筆すべき特徴は、金属と誘電体の界面に存在する電子の粗密波である表面プラズモンの共鳴(SPR)の原理を応用し、入射する直交円偏光の共鳴条件の違いをリング干渉系の出力変化として測定する新規の測定方法を創出したところにある。以下、本発明に係る一発明の実施の形態例を具体的に説明する。
課題を解決するためになされた本発明に係る一発明の例としての第1の発明(以下、発明1という)は、光ファイバリング干渉計のリング光路内に配置した被測定物質配置部の表面に配置する被測定物質の円複屈折率を測定することができるSPRを起こすことができる共鳴光学系を備え、SPRによるリング干渉計出力の変化を測定することによって該被測定物質の円複屈折率を測定することを特徴とするSPR方式旋光測定装置の発明である。
発明1を展開してなされた本発明の他の一例としての第2の発明(以下、発明2という)は、発明1に記載のSPR方式旋光測定装置において、前記被測定物質配置部が金属薄膜であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置の発明である。
発明2を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第3の発明(以下、発明3という)は、発明2に記載のSPR方式旋光測定装置において、前記金属薄膜が孔を周期的に配置してある金属膜であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置の発明である。
発明3を展開してなされた本発明の他に一例としての第4の発明(以下、発明4という)は、発明3に記載のSPR方式旋光測定装置において、前記金属薄膜の孔が円孔であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置の発明である。
発明1〜4を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第5の発明(以下、発明5という)は、発明1〜4のいずれかに記載のSPR方式旋光測定装置において、前記リング干渉計出力の変化が被測定物質の旋光度の変化に基づく変化であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置の発明である。
発明1〜5を展開してなされた本発明の他の一例としての第6の発明(以下、発明6という)は、発明1〜5のいずれかに記載のSPR方式旋光測定装置において、前記リング干渉計出力の変化が被測定物質配置部の表面に配置した被測定物質に入射する直交円偏光の共鳴条件の違いに基づく変化であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置の発明である。
発明1〜6を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第7の発明(以下、発明7という)は、発明1〜6のいずれかに記載のSPR方式旋光測定装置において、前記リング干渉計出力の変化が被測定物質配置部の表面に配置した被測定物質に入射する直交円偏光の波長の違いに基づく変化であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置の発明である。
発明1〜7を展開してなされた本発明の他の一例としての第8の発明(以下、発明8という)は、発明1〜7のいずれかに記載のSPR方式旋光測定装置において、前記共鳴光学系が、信号光の光路において、前記被測定物質配置部およびその表面に配置される被測定物質と、前記被測定物質配置部およびその表面に配置される被測定物質を挟んで配置される偏光変換光学系を有する光学系であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置の発明である。
発明8を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第9の発明(以下、発明9という)は、発明8に記載のSPR方式旋光測定装置において、前記偏光変換光学系が前記リング光路を構成する偏光保持光ファイバの端部近傍にレンズと偏光板と偏光面回転非相反素子と偏光変換素子を配置した光学系であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置の発明である。
発明9を展開してなされた本発明の他の一例としての第10の発明(以下、発明10という)は、発明9に記載のSPR方式旋光測定装置において、前記偏光面回転非相反素子が当該偏光面回転非相反素子の一方の側から信号光としての直線偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって時計回りまたは反時計回りに所定角度だけ回転させ、当該偏光面回転非相反素子の他方の側から信号光としての直線偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって前記一方の側から入射させた場合とは逆方向に所定角度だけ回転させるように作用する偏光面回転素子であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置の発明である。
発明9または10を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第11の発明(以下、発明11という)は、発明9または10に記載のSPR方式旋光測定装置において、前記偏光面回転非相反素子が45度ファラデー回転素子であり、前記偏光変換素子が4分の1波長板であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置の発明である。
発明1〜11を展開してなされた本発明の他の一例としての第12の発明(以下、発明12という)は、発明1〜11のいずれかに記載のSPR方式旋光測定装置において、前記リング光路を構成する光ファイバ部分には同一の固有偏光モードの信号光が左右両方向に伝搬し、前記被測定物質の部分には前記SPRを起こす共鳴光学系の両端の光ファイバ部分から出射した信号光が互いに直交する円偏波状態で該SPR部分に入射および反射することを特徴とするSPR方式旋光測定装置の発明である。
発明1〜12を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第13の発明(以下、発明13という)は、発明1〜12のいずれかに記載のSPR方式旋光測定装置において、前記SPRを発生させる部分が石英基板上に厚さ50nmの金を蒸着しその金属膜に入射信号光の波長の数分の1の円孔を波長オーダの周期で正方格子状に配置した金属膜であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置の発明である。
発明1〜13を展開してなされた本発明の他の一例としての第14の発明(以下、発明14という)は、発明1〜13のいずれかに記載のSPR方式旋光測定装置において、前記リング光路の入射部に光ファイバ型光位相変調器を設け、変調周波数に同期した光干渉系の出力を検出することによって当該SPR部の表面に接触させた物質の旋光度を測定することを特徴とするSPR方式旋光度測定装置の発明である。
課題を解決するためになされた本発明の他の一例としての第15の発明(以下、発明15という)は、被測定物質の旋光度を測定する旋光測定システムに使用することができる光ファイバ共鳴光学系の発明で、前記光ファイバ共鳴光学系は、被測定物質配置部と前記被測定物質配置部の表面に配置した被測定物質に互いに異なる方向から互いに直交する円偏光を入射させることができる偏光変換光学系を有する光学系であることを特徴とする光ファイバ共鳴光学系である。
発明15を展開してなされた本発明の他の一例としての第16の発明(以下、発明16という)は、発明15に記載の光ファイバ共鳴光学系において、前記偏光変換光学系が偏光保持光ファイバの端部近傍にレンズと偏光板と偏光面回転非相反素子と偏光変換素子を配置した光学系であることを特徴とする光ファイバ共鳴光学系の発明である。
発明16を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第17の発明(以下、発明17という)は、発明16に記載の光ファイバ共鳴光学系において、前記偏光面回転非相反素子が当該偏光面回転非相反素子の一方の側から信号光としての直線偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって時計回りまたは反時計回りに所定角度だけ回転させ、当該偏光面回転非相反素子の他方の側から信号光としての直線偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって前記一方の側から入射させた場合とは逆方向に所定角度だけ回転させるように作用する偏光面回転素子であることを特徴とする光ファイバ共鳴光学系の発明である。
発明16または17を展開してなされた本発明の一例としての第18の発明(以下、発明18という)は、発明16または17に記載の光ファイバ共鳴光学系において、前記偏光面回転非相反素子が45度ファラデー回転素子であり、前記偏光変換素子が4分の1波長板であることを特徴とする光ファイバ共鳴光学系の発明である。
課題を解決するためになされた本発明の他の一例としての第19の発明(以下、発明19という)は、光ファイバリング干渉計のリング光路内に配置した被測定物質配置部の表面に配置する被測定物質の円複屈折率を測定することができるSPRを起こすことができる光ファイバ共鳴光学系を用いて該被測定物質のSPRによるリング干渉計出力の変化を測定することによって該被測定物質の円複屈折率を測定することを特徴とする旋光測定方法の発明である。
発明19を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第20の発明(以下、発明20という)は、発明19に記載の旋光測定方法において、前記偏光変換光学系が偏光保持光ファイバの端部近傍にレンズと偏光板と偏光面回転非相反素子と偏光変換素子を配置した光学系であることを特徴とする旋光測定方法の発明である。
発明20を展開してなされた本発明の他の一例としての第21の発明(以下、発明21という)は、発明20に記載の旋光測定方法において、前記光ファイバ共鳴光学系が、被測定物質配置部と前記被測定物質配置部の表面に配置した被測定物質に互いに異なる方向から互いに直交する円偏光を入射させることができる偏光変換光学系を有する光学系であることを特徴とする旋光測定方法の発明である。
発明21を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第22の発明(以下、発明22という)は、発明21に記載の旋光測定方法において、前記偏光面回転非相反素子が当該偏光面回転非相反素子の一方の側から信号光としての直線偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって時計回りまたは反時計回りに所定角度だけ回転させ、当該偏光面回転非相反素子の他方の側から信号光としての直線偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって前記一方の側から入射させた場合とは逆方向に所定角度だけ回転させるように作用する偏光面回転素子であることを特徴とする旋光測定方法の発明である。
発明21または22を展開してなされた本発明の他の一例としての第23の発明(以下、発明23という)は、発明21または22に記載の旋光測定方法において、前記偏光面回転非相反素子が45度ファラデー回転素子であり、前記偏光変換素子が4分の1波長板であることを特徴とする旋光測定方法の発明である。
発明19〜23を展開してなされた本発明の他の一例としての第24の発明(以下、発明24という)は、発明19〜23のいずれかに記載の旋光測定方法において、前記被測定物質配置部が金属薄膜であることを特徴とする旋光測定方法の発明である。
発明24を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第25の発明(以下、発明25という)は、発明24に記載の旋光測定方法において、前記金属薄膜が孔を周期的に配置してある金属膜であることを特徴とする旋光測定方法の発明である。
発明25を展開してなされた本発明の他の一例としての第26の発明(以下、発明26という)は、発明25に記載の旋光測定方法において、前記金属薄膜の孔が円孔であることを特徴とする旋光測定方法の発明である。
発明19〜26を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第27の発明(以下、発明27という)は、発明19〜26のいずれかに記載の旋光測定方法において、前記リング光路を構成する光ファイバ部分には同一の固有偏光モードの信号光が左右両方向に伝搬させ、前記被測定物質の部分には前記SPRを起こす共鳴光学系の両端の光ファイバ部分から出射した信号光が互いに直交する円偏波状態で該SPR部分に入射および反射させることを特徴とする旋光測定方法の発明である。
発明19〜27を展開してなされた本発明の他の一例としての第28の発明(以下、発明28という)は、発明19〜27のいずれかに記載の旋光測定方法において、前記SPRを発生させる部分が石英基板上に厚さ50nmの金を蒸着しその金属膜に入射信号光の波長の数分の1の円孔を波長オーダの周期で正方格子状に配置した金属膜であることを特徴とする旋光測定方法の発明である。
発明19〜28を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第29の発明は、発明19〜28のいずれかに記載の旋光測定方法において、前記リング光路の入射部に光ファイバ型光位相変調器を設け、変調周波数に同期した光干渉系の出力を検出することによって当該SPR部の表面に接触させた物質の旋光度を測定することを特徴とする旋光測定方法の発明である。
本発明の第1の効果は、その原理が光の干渉とSPRを利用しているので、非常に高精度に生体の表面部分の旋光度を無侵襲で測定でき、被検者の血糖値が推定することができることである。
第2の効果は、従来の光方式の無侵襲方式血糖値測定が生体からの散乱光、すなわち光の強度のスペクトルを解析するため温度や水分や油などの含有量に影響されるのに対し、本発明の方法では光の偏光面の回転に依存する光の位相変化に依存するため安定した測定ができ、測定精度を大幅に向上させることができることである。
第3の効果は、いつでもどこでも簡単に血糖値が測定でき、従来の採血方式で必要であった針や試薬などの消耗品が必要なく、採血の苦痛から解放される上にランニングコストが不要になることである。第4の効果は、採血針などの医療廃棄物を処理する必要がなくなることである。
1:プリズム
2−1,2−2:金属膜
3:被測定物質
4−1:入射P偏光
4−2:入射右円偏光
4−3:入射左円偏光
2−1,2−2:金属膜
3:被測定物質
4−1:入射P偏光
4−2:入射右円偏光
4−3:入射左円偏光
5:入射角度
6:表面プラズモン電界
7:反射光
8−1,8−2,8−3:受光器
9:波長可変光源
6:表面プラズモン電界
7:反射光
8−1,8−2,8−3:受光器
9:波長可変光源
10−1:シングルモード光ファイバ
10−2:偏光保持光ファイバ
11−1,11−2:方向性結合器
12:偏光子
13:位相変調器
13−1,13−2:レンズ
14:信号処理部
14−1,14−2:偏光板
15:変調信号
15−1,15−2:偏光面回転非相反素子としての45度ファラデー回転素子
16−1,16−2:4分の1波長板
17:電気信号出力
10−2:偏光保持光ファイバ
11−1,11−2:方向性結合器
12:偏光子
13:位相変調器
13−1,13−2:レンズ
14:信号処理部
14−1,14−2:偏光板
15:変調信号
15−1,15−2:偏光面回転非相反素子としての45度ファラデー回転素子
16−1,16−2:4分の1波長板
17:電気信号出力
以下、図面を参照して本発明に係る一実施の形態の例について説明する。なお、説明に用いる各図は本発明に係る一発明の実施の形態例を理解できる程度に各構成成分の寸法、形状、配置関係などを概略的に示してある。
そして以下の説明の都合上、部分的に拡大率を変えて図示する場合もあり、本発明にかかる一発明の実施の形態例の説明に用いる図は、必ずしも実際の実施例などの実物や記述と相似形でない場合もある。また、各図において、同様な構成成分については同一の番号を付けて示し、重複する説明を省略することもある。
また、本発明の説明では、旋光測定装置および旋光測定方法ならびに旋光度測定システムに使用することができる光学系それぞれの説明で重複する部分がかなり多い。そこで、説明の重複を避けるため、誤解を生じないようにしつつ、特に言及せずに、光学系の説明で旋光度測定装置や旋光度測定方法の部分的説明を兼ねたり、その逆のこともある。
はじめに図1に従来のSPR測定装置の原理図を示す。SPR装置は、プリズム1の上に40〜50nmの厚さの金(Au)の膜2−1を蒸着し、その上に被測定物質3を乗せ、プリズム1の下の方からP偏光4−1を角度θで入射し、入射角度または波長を変化させるとある入射角度または波長で共鳴電界(表面プラズモン電界)6が発生し、この時エバネッセント波が被測定物質3の方向に抜けていくため、反射光7を受光器8−1で受けると角度対反射光量の特性にディップが発生する。
このディップの位置で物質3の円複屈折率を測定することができる。この方法では入射光はP偏光が望ましく、また、物質3の屈折率の実数部、すなわち通常の屈折率が測定できる。しかし、従来のSPR方式では物質の旋光度は測れない。
これに対して、本発明に係る一実施の形態例としてのSPR方式旋光測定装置は、光ファイバリング干渉計のリング光路内に表面に設置する被測定物質の円複屈折率を測定できる表面プラズモン共鳴(SPR)を起こす共鳴光学系を備え、該SPRによるリング干渉系出力の変化を測定することによって該被測定物質の旋光度を測定することを特徴としている。
図2は本発明に係る一実施の形態例としてのSPR方式旋光測定装置の全体構成図である。図2と図1の従来のSPR方式との第1の違いは、図1の従来のSPR方式では被測定物質に1つの方向からP偏光が入射して生じるSPR現象を測定するのに対して、図2の本発明に係る一実施の形態例としてのSPR方式旋光測定装置では信号光のリング光路上において被測定物質に両方向から右円偏光4−2と左円偏光4−3とを入射させて被測定物質における旋光を測定すること、第2の違いは入射光4−2、4−3がリング干渉系を両方向に伝搬するということ、第3の違いは図2の本発明に係る一実施の形態例における金属膜2−2が単なるフラットな金属膜ではなく厚さが40nmで半径350nmの円孔を周期1300nmで正方格子状に配置されている金属膜であることなどである。金属膜2−2に周期構造の円孔を設けることによって円偏光が金属膜を透過しやすく、また光の進行方向の直角方向の電界と透過光との共鳴を起こしやすくした。本発明の実施の形態例では波長可変光源9から出射したレーザ光はシングルモード光ファイバ10−1に入射され、第1の方向性結合器11−1、偏光子12、第2の方向性結合器11−2を経て分岐され、リング光路を両方向に伝搬する。
該方向性結合器およびリング光路の光ファイバは偏光保持光ファイバ10−2から構成される。2つに分岐された光は各偏光保持光ファイバから共鳴光学系を構成する各偏光変換光学系に導かれ、それぞれ前記各偏光変換光学系を構成するレンズ13−1,13−2でコリメートされ、偏光板14−1,14−2で直線偏光の純度を高め、偏光面回転非相反素子としての45度ファラデー回転素子15−1,15−2および偏光変換素子としての4分の1波長板16−1,16−2によってそれぞれ直交する円偏光に変換されてプリズム1に入射する。
金属膜2−2で反射された光は、前記第2の方向性結合器11−2で半分が受光器8−2に導かれ、残り半分が前記第1の方向性結合器11−1で受光器8−3に導かれる。リング光路の入射端には光ファイバ型の位相変調器13が設置され、正弦波状の変調信号15が信号処理部14から印加される。この例で、変調周波数は20KHzとした。なお、リング光路の光ファイバ長は100mとした。
光源9は1300nm〜1600nmの波長帯が選択できる波長可変光源を用いたが、SLD(Super Luminescent Diord)などの広帯域光源と波長可変フィルタを用いてもよい。入射角度θは20度とした。
ここで、前記偏光面回転非相反素子は当該偏光面回転非相反素子の一方の側から信号光としての直線偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって時計回りまたは反時計回りに所定角度だけ回転させ、当該偏光面回転非相反素子の他方の側から信号光としての直線偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって前記一方の側から入射させた場合とは逆方向に所定角度だけ回転させるように作用する偏光面回転素子である。前記偏光変換素子は直線偏光を円偏光に変換する素子である。
前記各偏光変換光学系はそれぞれ各偏光保持光ファイバの端部に配置されたレンズ13−1,13−2、偏光板14−1,14−2、45度ファラデー回転素子15−1,15−2、4分の1波長板16−1,16−2を有している。リング光路を構成する各前記偏波面保存光ファイバ内では同一の偏光モードで伝搬する右回り信号光と左回り信号光が、前記各偏光変換光学系部分に置かれた被測定物質の部分においては互いに直交する円偏光状態で伝搬するように各偏波面保存光ファイバ、偏光回転非相反素子、偏光変換素子相互の固有偏光軸が調整されている。前記共鳴光学系は、前記リング光路に挿入された前記各偏光変換光学系と光路においてその間に配置された前記金属薄膜ならびに被測定物質を含む光学系である。
つぎに、金属膜2−2の上に被測定物質3としての指を乗せた場合の本発明SPR方式旋光測定装置で検出される原理を説明する。
金属膜2−2に入射した左右円偏光は、該金属膜2−2を透過しエバネッセント波として金属表面の電界と共鳴する。これらのエバネッセント波は指の表皮に侵入し、生体に特有の散乱を受け、一部は反射し金属膜表面に戻ってくる。
ここで波長可変レーザ9の波長をスキャンすると、ある波長1で右回り円偏光が共鳴し、ある波長2で左回り円偏光が共鳴する。したがって、波長1と波長2が異なる波長の場合、波長1と波長2とでは左右両周り光の強度が異なってくる。この干渉バランスの崩れを信号処理部14によって出力電気信号17に変換する。
指に旋光性の物質があれば指の誘電率が左右円偏光に対して異なった特性を有するので波長1と波長2で干渉系の出力に変化が発生する。
本発明に係る一実施の形態例におけるSPR方式旋光測定装置のもう一つの信号検出原理は、金属表面の横方向に発生する電界と左右円偏光の共鳴によって左右伝搬光に位相差が発生することである。
本発明に係る一実施例では信号光の波長を1500nm近傍に固定し、金属膜2−2の上に指を乗せた場合と空気の場合の左右両周り光に1x10-4度程度の位相差が発生した。これは指の表皮に含まれる旋光物質の影響であると推測できる。したがって本発明によるSPR方式旋光測定値と従来の血糖値測定方法で測定した血糖値を比較することによって無侵襲に血糖値が測定できるものと推測できる。
以上、本発明に係る一実施の形態例としての旋光度測定装置、光学系、その光学系を用いた旋光度測定方法を図を参照しながら説明したが、本発明に係る一実施の形態例の前記各構成は、それぞれ単独で用いても本発明の効果を発揮することができ、種々組み合わせても本発明の効果を発揮することができるものであるのみならず、本発明はこれに狭く限定されるものでなく、本発明の技術思想に基づいて多くのバリエーションを可能とするものである。
本実施の形態例の旋光測定装置は、複屈折や旋光性を有する被測定物の状態を高精度に調べることができるもので、特に、生体や組織、血液、分子などの存在やその含有量を無侵襲に高精度に検出することができ、医療分野や健康分野などにおいて広く利用できるものである。本発明の旋光測定のように無侵襲で血糖値を測定できれば、第1に、被検者が採血の痛みから解放されること、第2に、採血しないので衛生的であることに加えて採血器具等を介する病気の感染が防げること、第3に、酵素を使わないので経済的であること、第4に、注射針や酵素などの廃棄物がでないこと等の極めて大きな効果がもたらされるので、本発明は前記例示に限らず、極めて広い分野で利用され得るものである。
Claims (29)
- 光ファイバリング干渉計のリング光路内に配置した被測定物質配置部の表面に配置する被測定物質の円複屈折率を測定することができる表面プラズモン共鳴(SPR)を起こすことができる共鳴光学系を備え、
SPRによるリング干渉計出力の変化を測定することによって該被測定物質の円複屈折率を測定することを特徴とするSPR方式旋光測定装置。 - 請求項1に記載のSPR方式旋光測定装置において、
前記被測定物質配置部が金属薄膜であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置。 - 請求項2に記載のSPR方式旋光測定装置において、
前記金属薄膜が孔を周期的に配置してある金属膜であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置。 - 請求項3に記載のSPR方式旋光測定装置において、
前記金属薄膜の孔が円孔であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載のSPR方式旋光測定装置において、
前記リング干渉計出力の変化が被測定物質の旋光度の変化に基づく変化であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載のSPR方式旋光測定装置において、
前記リング干渉計出力の変化が被測定物質配置部の表面に配置した被測定物質に入射する直交円偏光の共鳴条件の違いに基づく変化であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載のSPR方式旋光測定装置において、
前記リング干渉計出力の変化が被測定物質配置部の表面に配置した被測定物質に入射する直交円偏光の波長の違いに基づく変化であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置。 - 請求項1〜7のいずれか1項に記載のSPR方式旋光測定装置において、
前記共鳴光学系が、信号光の光路において、前記被測定物質配置部およびその表面に配置される被測定物質と、前記被測定物質配置部およびその表面に配置される被測定物質を挟んで配置される偏光変換光学系を有する光学系であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置。 - 請求項8に記載のSPR方式旋光測定装置において、
前記偏光変換光学系が前記リング光路を構成する偏光保持光ファイバの端部近傍にレンズと偏光板と偏光面回転非相反素子と偏光変換素子を配置した光学系であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置。 - 請求項9に記載のSPR方式旋光測定装置において、
前記偏光面回転非相反素子が当該偏光面回転非相反素子の一方の側から信号光としての直線偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって時計回りまたは反時計回りに所定角度だけ回転させ、当該偏光面回転非相反素子の他方の側から信号光としての直線偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって前記一方の側から入射させた場合とは逆方向に所定角度だけ回転させるように作用する偏光面回転素子であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置。 - 請求項9または10に記載のSPR方式旋光測定装置において、
前記偏光面回転非相反素子が45度ファラデー回転素子であり、前記偏光変換素子が4分の1波長板であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置。 - 請求項1〜11のいずれか1項に記載のSPR方式旋光測定装置において、
前記リング光路を構成する光ファイバ部分には同一の固有偏光モードの信号光が左右両方向に伝搬し、前記被測定物質の部分には前記SPRを起こす共鳴光学系の両端の光ファイバ部分から出射した信号光が互いに直交する円偏波状態で該SPR部分に入射および反射することを特徴とするSPR方式旋光測定装置。 - 請求項1〜12のいずれか1項に記載のSPR方式旋光測定装置において、
前記SPRを発生させる部分が石英基板上に厚さ50nmの金を蒸着しその金属膜に入射信号光の波長の数分の1の円孔を波長オーダの周期で正方格子状に配置した金属膜であることを特徴とするSPR方式旋光測定装置。 - 請求項1〜13のいずれか1項に記載のSPR方式旋光測定装置において、
前記リング光路の入射部に光ファイバ型光位相変調器を設け、変調周波数に同期した光干渉系の出力を検出することによって当該SPR部の表面に接触させた物質の旋光度を測定することを特徴とするSPR方式旋光度測定装置。 - 被測定物質の旋光度を測定する旋光測定システムに使用することができる光ファイバ共鳴光学系であって、
前記光ファイバ共鳴光学系は、被測定物質配置部と前記被測定物質配置部の表面に配置した被測定物質に互いに異なる方向から互いに直交する円偏光を入射させることができる偏光変換光学系を有する光学系であることを特徴とする光ファイバ共鳴光学系。 - 請求項15に記載の光ファイバ共鳴光学系において、
前記偏光変換光学系が偏光保持光ファイバの端部近傍にレンズと偏光板と偏光面回転非相反素子と偏光変換素子を配置した光学系であることを特徴とする光ファイバ共鳴光学系。 - 請求項16に記載の光ファイバ共鳴光学系において、
前記偏光面回転非相反素子が当該偏光面回転非相反素子の一方の側から信号光としての直線偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって時計回りまたは反時計回りに所定角度だけ回転させ、
当該偏光面回転非相反素子の他方の側から信号光としての直線偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって前記一方の側から入射させた場合とは逆方向に所定角度だけ回転させるように作用する偏光面回転素子であることを特徴とする光ファイバ共鳴光学系。 - 請求項16または17に記載の光ファイバ共鳴光学系において、
前記偏光面回転非相反素子が45度ファラデー回転素子であり、前記偏光変換素子が4分の1波長板であることを特徴とする光ファイバ共鳴光学系。 - 光ファイバリング干渉計のリング光路内に配置した被測定物質配置部の表面に配置する被測定物質の円複屈折率を測定することができる表面プラズモン共鳴(SPR)を起こすことができる光ファイバ共鳴光学系を用いて該被測定物質のSPRによるリング干渉計出力の変化を測定することによって該被測定物質の円複屈折率を測定することを特徴とする旋光測定方法。
- 請求項19に記載の旋光測定方法において、
前記偏光変換光学系が偏光保持光ファイバの端部近傍にレンズと偏光板と偏光面回転非相反素子と偏光変換素子を配置した光学系であることを特徴とする旋光測定方法。 - 請求項20に記載の旋光測定方法において、
前記光ファイバ共鳴光学系が、被測定物質配置部と前記被測定物質配置部の表面に配置した被測定物質に互いに異なる方向から互いに直交する円偏光を入射させることができる偏光変換光学系を有する光学系であることを特徴とする旋光測定方法。 - 請求項21に記載の旋光測定方法において、
前記偏光面回転非相反素子が当該偏光面回転非相反素子の一方の側から信号光としての直線偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって時計回りまたは反時計回りに所定角度だけ回転させ、当該偏光面回転非相反素子の他方の側から信号光としての直線偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって前記一方の側から入射させた場合とは逆方向に所定角度だけ回転させるように作用する偏光面回転素子であることを特徴とする旋光測定方法。 - 請求項21または22に記載の旋光測定方法において、
前記偏光面回転非相反素子が45度ファラデー回転素子であり、前記偏光変換素子が4分の1波長板であることを特徴とする旋光測定方法。 - 請求項19〜23のいずれか1項に記載の旋光測定方法において、
前記被測定物質配置部が金属薄膜であることを特徴とする旋光測定方法。 - 請求項24に記載の旋光測定方法において、
前記金属薄膜が孔を周期的に配置してある金属膜であることを特徴とする旋光測定方法。 - 請求項25に記載の旋光測定方法において、
前記金属薄膜の孔が円孔であることを特徴とする旋光測定方法。 - 請求項19〜26のいずれか1項に記載の旋光測定方法において、
前記リング光路を構成する光ファイバ部分には同一の固有偏光モードの信号光が左右両方向に伝搬させ、前記被測定物質の部分には前記SPRを起こす共鳴光学系の両端の光ファイバ部分から出射した信号光が互いに直交する円偏波状態で該SPR部分に入射および反射させることを特徴とする旋光測定方法。 - 請求項19〜27のいずれか1項に記載の旋光測定方法において、
前記SPRを発生させる部分が石英基板上に厚さ50nmの金を蒸着しその金属膜に入射信号光の波長の数分の1の円孔を波長オーダの周期で正方格子状に配置した金属膜であることを特徴とする旋光測定方法。 - 請求項19〜28のいずれか1項に記載の旋光測定方法において、
前記リング光路の入射部に光ファイバ型光位相変調器を設け、変調周波数に同期した光干渉系の出力を検出することによって当該SPR部の表面に接触させた物質の旋光度を測定することを特徴とする旋光測定方法。
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JP2010264352A JP2012112906A (ja) | 2010-11-26 | 2010-11-26 | Spr方式旋光測定装置および光ファイバ共鳴光学系ならびにそれを用いた旋光測定方法 |
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CN106461538A (zh) * | 2014-06-06 | 2017-02-22 | 国立大学法人筑波大学 | 偏振敏感光学图像测量系统以及搭载于该系统上的程序 |
CN106770032A (zh) * | 2016-12-07 | 2017-05-31 | 大连理工大学 | 相位探测型光纤spr生化传感系统 |
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