以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施の形態におけるデジタル放送用の限定受信システム全体の概略構成を表したブロック図である。この限定受信システムは、デジタル放送視聴用ICカードを用いたデジタルテレビ受信機における特定の放送コンテンツ、特に以下の例では特定のチャンネルの放送の視聴制限を行う限定受信システムであり、特定の施設、ここではホテル館内における例を説明する。
ホテル館内の管理室等に設置される放送配信システム10は、各客室に設置される放送受信システム20と、同軸ケーブル等の高周波伝送インタフェースを介して接続される。
放送配信システム10は、特定のチャンネルで放送する有料放送の放送コンテンツを所定のデータ放送とともに送出する送出装置14、有料放送コンテンツの視聴のためのパスワードを対価の支払いと交換にユーザに知らしめるための発券機18、送出装置14および発券機18を制御する制御装置16、無料放送コンテンツ源11、この無料放送コンテンツ源11からのRF信号と送出装置14からのRF出力とを混合して各放送受信システム20へ送信する混合器12を備えて構成される。無料放送コンテンツ源11は、ここでは、地上デジタル放送受信アンテナ11aおよび衛星放送受信アンテナ11b等により構成されている。
本明細書における「有料放送」とは、ホテル等の施設が有料で自主的に行う特定のチャンネルにおける放送(自主放送)を意味する。契約者のみが視聴できる衛星放送やケーブルテレビの番組にも「有料」のものが存在するが、そのような放送は本発明の「有料放送」には含まないものとする。「放送コンテンツ」とは、典型的には、放送波を利用して視聴者へ送出される映像および音声を含む情報であるが、放送波ではなく通信を介して送出されるものであってもよい。また、本明細書における「限定受信」とは、暗号化された自主放送コンテンツの受信者を限定することを意味し、本実施の形態では、既存の限定受信システムにおいて放送コンテンツの視聴に必要なICカードとは別に本発明のカードアダプタを利用することを視聴の条件とすることである。本実施の形態では、さらに、自主放送の視聴を有料とするために有料チャンネルの視聴制限を行う簡便な方策として、データ放送を利用したBMLスクリプトによるパスワード判定を併用する。
送出装置14には、地上デジタル放送のSI情報送出機能、BMLストリーム生成機能、映像・音声の圧縮機能、映像・音声のスクランブル機能、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調機能、RFアップコンバータ機能を実装している。より具体的には、送出装置14は、地上デジタルテレビジョン放送に準拠した有料放送の放送コンテンツを当該暗号方式によるスクランブル鍵で暗号化し、このスクランブル鍵を独自ECM(Entitlement Control Message)に含めて、暗号化された放送コンテンツを送出するとともに、データ放送コンテンツを送出する。このデータ放送コンテンツは、有料の放送コンテンツを選択するためのメニュー画面構成データ、その視聴制限を解除するためのパスワード、パスワード入力画面構成データ、放送コンテンツの視聴制限およびその解除のためのBMLスクリプトを含むBMLデータである。BS放送および地上デジタル放送の信号はアンテナ11a,11bで受信され、有料チャンネルの信号と混合器12で一緒に館内に送出される。送出装置14の詳細な内部構成については後述する。
制御装置16は、送出装置14および発券機18を制御するための装置であり、本例ではPCにより構成される。具体的には、発券機18に与える視聴制限解除のためのパスワードを一日ごとに更新する。また、パスワードの更新と同時に限定受信のためのBML(Broadcast Markup Language)データを生成し、TSストリームファイル(BMLファイル)に変換して送出装置14に設定する。一般に、TS(Transport Stream)は放送や通信で使用することを目的として標準化された188バイト単位の固定長パケットデータであり、通常、映像、音声、データを含む。パスワードはLAN等の通信インタフェースを介して制御装置16から発券機18へ送信され、設定される。1日あたりのパスワードは単一であってもよいが、券売機18に複数設定しておき、順次またはランダムに切り替えて出力するようにしてもよい。このようなパスワードを含むデータ放送コンテンツはLAN等の通信インタフェースを介して制御装置16から送出装置14へ送信される。
本実施の形態における発券機18は、自動販売機と同様の課金システムによりユーザの利用料の支払いを受けて、6桁のパスワードを紙片等の印刷媒体である帳票に印刷出力する電子機器である。本実施の形態における発券機18は、LAN等の通信インタフェースを介して制御装置16に接続され、パスワードの設定・更新を受ける。このような発券機18は少なくとも館内に1台設置されれば足りるが、複数階に客室がある場合には、各階に少なくとも1台設置してもよい。発券機18に必要な機能としては、制御装置16との通信機能、受信したパスワードの保存・更新機能、パスワードを帳票に印刷出力する印刷機能があれば足りる。従来技術のような比較的コストの高いPETカードおよびその発券機は不要であり、各客室におけるPETカードのカードリーダを備えた端末装置も不要である。
放送受信システム20は、リモコン22付のデジタルテレビ受信機21と、カードアダプタ24と、ICカード26とを備えて構成される。
ICカード26は、B−CASカードと呼ばれるような既存のデジタル放送視聴用ICカードであり、デジタル放送の受信機(デジタルテレビ受信機)に装着され、暗号化された(スクランブルされた)放送コンテンツを視聴可能にする。B−CASカードは、そのID番号およびマスター鍵が格納された接触型ICカードである。
カードアダプタ24は、そのようなデジタル放送視聴用ICカードとデジタルテレビ受信機(テレビ本体)との間に実装される、本発明により提供されるアダプタ装置である。より具体的には、カードアダプタ24は、デジタルテレビ受信機から受信したECMが独自ECMであるかどうかを識別する機能を有し、独自ECMを受信したとき独自ECMから当該スクランブル鍵を抽出してデジタルテレビ受信機へ送出し、独自ECM以外のECM(非独自ECM)を受信したときはICカード26からデジタルテレビ受信機21に対して送出されるスクランブル鍵を導通させるよう機能する。カードアダプタ24の具体的な構成例については後述する。
放送配信システム10から伝送されたRF信号は各客室にあるテレビ受信機21で受信される。ユーザは、リモコン22を使って、通常のテレビ放送(非自主放送の)チャンネルと自主放送のチャンネル(有料チャンネル)とを選局することができる。リモコンとしては、テレビ受信機のリモコン22をそのまま使うことができ、使い勝手が良好となる。また、データ放送を利用した有料チャンネルメニューも、既存のテレビ受信機と同様に、リモコン22によるチャンネル選局で選択することができる。
無料のデジタル放送チャンネルはMULTI2と呼ばれる暗号方式で暗号化(スクランブル)されており、その暗号鍵(スクランブル鍵)はICカード26から取り込むことができるようになっている。本実施の形態において、ユーザが有料チャンネルを購入したときには、ICカード26ではなく、カードアダプタ24からスクランブル鍵を取り込み、放送コンテンツを復号(デスクランブル)することができる。但し、有料チャンネルの放送コンテンツにはデータ放送により受信したBMLスクリプトにより別途、視聴制限が掛けられており、その解除にはユーザによるパスワードの入力が必要となる。
図2に、本実施の形態におけるカードアダプタ24の外観構成例を示す。この例におけるカードアダプタ24は、ICカード26を収納するスロット24gおよび必要な回路を構成する電子部品を搭載した回路基板(図示せず)を内蔵したアダプタ本体部24aと、デジタルテレビ受信機21の同様なスロット21aに装着されるカード状接続部材24dとにより構成される。本来であれば、スロット21aにはICカード26が直接実装されるが、本発明ではICカード26はカードアダプタ24を介してデジタルテレビ受信機21に実装される。)アダプタ本体部24aには、電源コンセントに接続可能なプラグ付き電源ケーブル24fを介して電源が供給される。カード状接続部材24dとアダプタ本体部24aとはケーブル24bで相互に接続される。この例では、ケーブル24bにはコネクタ24cが付属し、このコネクタを介してカード状接続部材24dに接続されるようになっている。但し、コネクタ24cは必須ではなく、ケーブル24bはカード状接続部材24dに直付けされてもよい。カード状接続部材24dには、ICカード26と同じ箇所に同じ電気接点24eが形成されている。アダプタ本体部24aにカード状接続部材24dを直結することによりケーブル24bをなくした構成であってもよい。
図3は、送出装置14の内部構成を表したブロック図である。この送出装置14は、主として、BMLストリーム送出と、映像・音声ストリームの独自暗号化および送出という2つの機能を有している。
送出装置14は、地上デジタル放送SI情報生成部140、BMLストリーム生成部141、映像・音声エンコーダ142、独自ECMパケット生成部143、スクランブル鍵生成部144、タイミング制御部145、マルチプレクサ146、スクランブラ147、OFDM変調器148、およびRFアップコンバータ149を備える。
地上デジタル放送SI情報生成部140は、地上デジタル放送に必要なPAT,PMT,SDT,BIT、TOT,NITなどのSI情報(付帯情報)を生成する回路である。このようなSI情報は制御装置16から設定することができる。SI情報は、地上デジタル放送SI情報生成部140からARIBに準拠したタイミングでTSパケットとして送出される。
制御装置16から出力されたBMLファイルをTSストリームに変換したデータはBMLストリーム生成部141に記録され、設定したレート(周期)で連続再生される。自主放送の映像・音声は映像・音声エンコーダ142で圧縮され、TSストリームに変換される。自主放送の映像・音声はDVDプレーヤ等、任意の映像・音声源から得られるものである。暗号化(スクランブル)された映像・音声ストリームを復号(デスクランブル)するには、ECMパケットが必要となる。
ここで、限定受信システム(CAS)について簡単に説明する。CASでは、放送コンテンツを視聴する際に、マスター鍵と、ワーク鍵と、スクランブル鍵の3つの鍵が用いられる。マスター鍵はユーザ毎に配布される鍵であり、ICカードなどの情報媒体を用いてユーザに配布される。放送波にはEMM(Entitlement Management Message)と呼ばれる情報が定期的に出力される。EMMは、契約者としてのユーザ毎の契約情報、ワーク鍵等が含まれている。EMM内のユーザ毎の個別情報は暗号化され、マスター鍵で復号される。放送コンテンツは、ECM(Entitlement Control Message)と呼ばれる共通情報とともに送信される。ECMには、番組に関する情報(視聴に必要な契約情報)やスクランブル鍵等が含まれている。ECMも所定の暗号方式で暗号化されており、ワーク鍵で復号することができる。ICカード側では、ECMをワーク鍵で復号し、EMMに含まれる契約情報とECM内の情報とを照合し、視聴可能であればECM内のスクランブル鍵を用いてコンテンツが復号(デスクランブル)される。
図4に、ECMセクションの構造を示す。ECMセクションは、1つのTSパケットに1つ含まれ、ECMセクションヘッダと、ECM本体と、セクションCRCからなる。ECM本体は、固定部と可変部と、改ざん検出部からなる。この「改ざん検出部」が本実施の形態における後述する「改ざん検出用のCRC32」に該当する。固定部には、プロトコル番号、事業者識別情報、ワーク鍵識別情報、スクランブル鍵(ODD)、スクランブル鍵(EVEN)、判定タイプ、日時、録画制御情報が含まれる。プロトコル番号は、共通情報を処理するプロトコル番号である。事業者識別情報は、限定受信方式運用上の事業体を識別するコードであり、ワーク鍵識別情報と併せて、参照する個別情報を指定する情報である。ワーク鍵識別情報は、共通情報を復号化するためのワーク鍵を指定する情報である。スクランブル鍵(ODD)、スクランブル鍵(EVEN)は、ペアで送出される現在と次の2つのスクランブル鍵である。判定タイプは、無料、ディア、PPVなどの視聴判定のタイプを示す。日時は、視聴判定に使用する現在の年月日時分を示す。録画制御情報は、この番組の録画条件(録画可、不可、購入者のみ録画可)を示す情報である。ECMの可変部には、その共通情報の送信目的に応じた必要な機能情報が含まれる。本実施の形態の独自ECMでは、「プロトコル番号」は非独自ECMパケットのプロトコル番号と同じに設定するが事業体識別情報は任意でよい。ワーク鍵識別情報は、カードアダプタ内に複数のワーク鍵を保存してある場合にそのいずれを使用するかを指定するために用いられ、暗号化の対象とならない。なお、本発明においてカードアダプタ内に保存するワーク鍵は単一個でよく、複数個である必要はない。
ECMパケットは所定の暗号方式(第1の暗号方式)で暗号化されているが、本発明では有料放送に利用するECMパケット(独自ECMパケット)の暗号化に前記所定の暗号方式と異なる暗号方式(第2の暗号方式)で暗号化を行う。第2の暗号方式はブロック暗号方式であるが、その具体的な暗号方式は特に限定するものではない。
独自ECMパケット生成部143は、暗号化した独自ECMパケットを生成し、TSストリームとして、一定時間間隔(例えば100msec間隔)で出力する機能を有する。この独自ECMパケットは図4に示したECMセクションの全体に相当する。スクランブル鍵ひいてはECMパケットは、より長い一定時間間隔(ここでは2秒)毎に更新される。そのために、図5に示すように、本実施の形態では予め所定時間分(本例では1日分)の時系列のECMパケットの列を生成してメモリにデータテーブル50として記憶しておく。そのようなメモリとして、本実施の形態ではフラッシュメモリ(例えばSDメモリ)等の不揮発性の記憶媒体を利用する。この記憶媒体には、スクランブル鍵生成部144として、各ECMパケットに対応するスクランブル鍵(ODD/EVENキー)も併せて(スクランブル鍵と独自ECMとの対を時系列で)データテーブルとして記憶する。ECMパケットが188バイト、ODD/EVENキーが16バイトなので、1時点のデータ量は204バイトとなり、2秒毎の場合の1分のデータ量は6120バイト、1日のデータ量は8.8MBとなる。このメモリは、BMLストリーム生成部141が利用するBMLファイルを制御装置16が生成した際に、そのBMLファイルを格納するエリアとして利用することも可能である。記憶媒体に記憶するデータ量は、1日分としたが、必ずしも1日分に限るものではない。記憶する時間長は長いほど、セキュリティ上有効と考えられるが、本発明は1日より短い時間を排除するものではない。
このようなECMパケット列はランダム自動生成により行うことも可能である。但し、その場合、送出装置におけるECMパケット列の生成アルゴリズムから、その復号のアルゴリズムが解明される危険性がある(例えば送出装置が盗難にあったような場合)。暗号化したECMパケットをメモリに記憶して用いる場合には、暗号化の結果データのみの利用なのでそのような危険性が解消される。
タイミング制御部145は、ECMパケットおよびスクランブル鍵の送出のタイミングを制御する。具体的には、2秒毎の時刻に対応して定義されたテーブルの中からある時間のEVEN/ODDキーを取り出し、それをスクランブラ147に設定するようにスクランブル鍵生成部144を制御する。同時に、EVEN/ODDキーと対の形で定義されたECMパケットを取り出し、TSストリームとして出力するよう独自ECMパケット生成部143を制御する。前述のようにECMパケットは100mSごとに繰り返し出力する。
各部で生成されたTSストリームはマルチプレクサ146で多重化される。多重化されたストリームのうち、映像・音声・データのストリームはスクランブラ147で暗号化される。SI情報やECMはスクランブラ147による暗号化(スクランブル)の対象とはならない。スクランブラ147は、MULT2と呼ばれる暗号方式でスクランブルを行う。MULTI2は、日本のデジタル放送用限定受信方式(B−CAS)の標準暗号として採用された暗号方式である。暗号化されたストリームを含むTSストリームはOFDM変調器148で地上デジタル放送信号として変調され、RFアップコンバータ149によりUHF信号に変換され、RF出力される。このRF出力するチャンネルとしては、地上デジタル放送の空きチャンネルを選択する。
図6は、図3の放送受信システム20に対応し、本実施の形態におけるデジタルテレビ受信機21とカードアダプタ24の内部構成例を示す図である。
デジタルテレビ受信機21は、チューナ部211、デスクランブラ212、デマルチプレクサ213、映像・音声デコーダ214、入出力(I/O)部215、制御部216、CAS処理部217、表示処理部218、赤外線受信部219、表示制御部220、表示部221、音声処理部222、およびスピーカ223を備えて構成される。
チューナ部211は、デジタルテレビ受信機21が受信したRF信号の中から選択したチャンネルの放送コンテンツを抽出する部位である。デスクランブラ212は、MULTI2暗号方式による暗号化(スクランブル)された放送コンテンツを復号(デスクランブル)する部位である。この復号のための鍵は、後述するCAS処理部217から与えられる。
デマルチプレクサ213は、多重化されたストリームを分離し、復号された放送コンテンツの中の映像・音声と、データ放送コンテンツとを抽出する部位である。映像・音声デコーダ214は、分離された映像および音声をデコードして復元するMPEG2デコーダ等のデコーダである。デマルチプレクサ213で抽出されたSI情報は制御部216に送出される。次に、SI情報のうち、カードアクセスに使われるEMMとECMパケットなどがCAS処理部217に送出される。ECMパケットはSI情報の1パケットである。制御部216からCAS処理部217へは、図4に示したECMパケットの本体部のみが送出される。
CAS処理部217は、カードアダプタ24およびICカード26との間でコマンドおよびレスポンスの処理を入出力(I/O)部215を介して行うとともに、デスクランブラ212に与えるスクランブル鍵の抽出処理を行う部位である。
制御部216は、デマルチプレクサから抽出したセクション情報とBMLデータの取り込み、ならびに デジタルテレビ受信機21の各部の制御および必要な処理を実行する部位であり、周辺回路を内蔵したCPUおよびメモリ等により構成される。
表示処理部218は、制御部216の制御下で、デマルチプレクサ213で分離されたBMLデータストリームに基づくデータ放送表示画面および映像・音声デコーダ214から得られた映像信号を合成して表示する処理を行う部位である。表示処理部218は、より具体的にはBMLデータの表示、EPG表示、チャンネル、音量などを含むメニュー表示を行う。
表示制御部220は、映像・音声デコーダ214からの映像信号に基づく映像および表示処理部218からの表示信号に基づく画像の表示を行うよう表示部221を制御する部位である。表示部221は液晶、プラズマ、有機EL等の表示デバイスである。
赤外線受信部219は、リモコン22からの赤外線コマンドを受信して制御部216へ送る部位である。
音声処理部222は、映像・音声デコーダ214から得られた音声信号に基づいてスピーカ223を駆動する部位である。
なお、このようなデジタルテレビ受信機21の構成は既知のものである。
カードアダプタ24は、アナログスイッチ241、アナログスイッチ242、アダプタ制御部243を備えて構成される。特許文献1に記載の端末装置のようなLANへの接続機能は不要である。
アナログスイッチ241は、デジタルテレビ受信機21のI/O部215とICカード26との間の通信経路を選択的に導通/遮断する第1のスイッチである。アナログスイッチ242は、アナログスイッチ241と相補的に導通/遮断する第2のスイッチである。アダプタ制御部243は、ICカード26とデジタルテレビ受信機21のI/O部215との間の通信経路、より具体的にはアナログスイッチ241とICカード26の間の通信経路に接続される。通常のデジタル放送(非自主放送)を受信しているときには、アナログスイッチ241が接続状態でアナログスイッチ242は切断状態にあり、テレビ受信機21とICカード26との間は導通している。
アダプタ制御部243は、プロセッサ(およびEEPROM等の不揮発性メモリ)244を内蔵し、上述したように、デジタルテレビ受信機から受信したECMが独自ECMであるかどうかを識別する機能を有する。すなわち、プロセッサは、常時、テレビ受信機21とICカード26の間で授受される信号を監視し、ICカード26へ出力される暗号化されたECMパケットを傍受する。プロセッサ244は例えば8ビットマイコンで比較的簡素かつ安価に実現することができる。
通常のデジタル放送で使われるECMパケットは、B−CAS標準規格における所定の暗号方式で暗号化されているので、アダプタ制御部243のプロセッサ244は理解できないため、何も反応しない。理解できないというのは、ECMパケットの暗号をカードアダプタ24の独自の暗号で解こうとするが、改ざん検出用CRC32(図4のECM本体の「改ざん検出」)の判定値が非改ざんを示す所定値(例えば0)と一致しないため、自身が処理するECMパケットではないと判断するということである。もし、独自暗号のECMパケットを含むデータがICカード26への通信経路に送出されると、同様に暗号を解いて、改ざん検出用CRC32判定値をチェックする。この場合はCRC32判定値が上記所定値に合致するので、独自暗号であると判断する。
図7により、ECMの処理およびスクランブル鍵の生成の動作について説明する。
上述したように、カードアダプタ24のアダプタ制御部243は、独自ECM判定処理244bにより、独自ECMを受信したと判断したとき、復号処理244aによりこの独自ECMを、内部に予め保持したワーク鍵(Kw)により復号して当該スクランブル鍵(Ks)を抽出して、第2のスイッチであるアナログスイッチ242を介してデジタルテレビ受信機21へ送出する。このとき、第1のスイッチであるアナログスイッチ241は切断する。独自ECM以外のECMを受信したと判断したときは、第1のスイッチであるアナログスイッチ241を介してICカード26からデジタルテレビ受信機21に対して送出されるスクランブル鍵(Ks)を導通させる。このとき第2のスイッチであるアナログスイッチ242は遮断状態のままとする。
ICカード26側では、また、復号処理262によりEMMをマスター鍵(Km)で復号してワーク鍵(Kw)と契約情報とを出力する。また、復号処理261によりECMをワーク鍵(Kw)で復号してスクランブル鍵(Ks)と番組属性情報を出力する。視聴条件判定処理263により、EMMに含まれていた契約情報とECM内の番組属性情報とを照合し、照合の結果、視聴可能と判定されればスイッチ264を閉じて、ECMから得られたスクランブル鍵(Ks)をデスクランブラ212へ出力する。なお、ICカード26が、本発明における独自ECMを復号したときは、その改ざん検出により正規のECMではないと判断され、有効なスクランブル鍵は抽出されない。(有効なEMMも存在しないので、有効なワーク鍵も抽出されない。)
このように、本発明では放送コンテンツのストリームに対して独自のスクランブル鍵で暗号を掛ける。その際、既存のICカード26と共存するような構成のアダプタを追加することにより、鍵管理が不要となりシステムが簡略化される。
次に、図8を参照して、本実施の形態におけるデータ放送によるBMLデータによる有料チャンネルのメニュー画面の表示例およびBMLスクリプトによる視聴制限処理について説明する。
図8のデジタルテレビ受信機21の画面は、ホテルでの有料チャンネルの選択画面例を示している。この例では、BMLデータに有料チャンネル(の選択ボタン25a,25b,25c)が3つある場合を示している。リモコン22でカーソルを操作して希望する有料チャンネルを選択してリモコン22の決定ボタン(図示せず)を押すと、画面上でパスワード入力欄25dが表示され、ユーザにパスワード入力が要求される。このパスワードは、ユーザが、発券機18で当日購入した有料チャンネル視聴権を行使するための、帳票に印刷された6桁の数値である。パスワードはすべての有料チャンネルに共通であって、いずれかの有料チャンネルについて1回パスワードが入力されれば、当日中は、有効となる場合を想定している。但し、各有料チャンネルで異なってもよい。各有料チャンネルで異なる場合には、発券機18においてチャンネル単位の課金およびパスワード発行を行う。発行される帳票には、購入したチャンネルを特定する情報(例えば有料チャンネル番号とそのパスワードとが対で印刷される。BMLデータ内には有料チャンネル毎に異なるパスワードを含めて、テレビ受信機へ送出する。
テレビ受信機21の制御部216は、受信したBMLデータにより当日のパスワードを受領し、メモリ内に保存している。ユーザから入力されたパスワードは、保存されているパスワードと照合される。複数のパスワードを保存しておき、入力パスワードがそれらの複数のパスワードのいずれかと合致するか否かをチェックする構成でもよい。パスワードが合致するとその旨が記憶され、当日中は、有料放送の視聴の終了後の再視聴時に再度の入力を不要とすることができる。「当日」とは例えば、各日のチェックアウト時間までとする。そのために、一日に1回、決まった時間(例えば正午12時)にBMLスクリプトを変更する。同時に、発券機18には制御装置16から当該更新後のパスワードを設定する。
BMLスクリプトによる有料チャンネルの(放送コンテンツの)視聴制限の仕組みとしては、ARIB規格に規定されている、映像の非表示(全画面オーバーレイ)および音声のミュートを利用することができる。このBMLデータにより視聴制限は、放送コンテンツの映像・音声の暗号化とは直接関係のないものであるが、本発明による有料放送コンテンツの独自のスクランブル鍵によるスクランブルと組み合わせることにより堅牢な視聴制限を実現することができる。
図9に、本実施の形態におけるデジタルテレビ受信機21と、カードアダプタ24とICカード26の間の通信シーケンスを示す。この図の処理は、非自主放送のチャンネルが選択されている場合のシーケンスである。
テレビ受信機21は、ICカード26の装着を検出すると(S11)、ICカード26に電源を供給する(S12)。同時に、所定の周波数(例えば4MHz)のクロックを供給し(S13)、ICカード26の回路が安定化するための時間(安定時間)の経過後に、ICカード26のリセットを解除する(S14)。
ICカード26は、リセット解除後、ATR(Answer To Resete)S31として、ボードレート、クロック周波数、タイムアウトなどの基本通信情報をテレビ受信機に返答する(S31)。テレビ受信機21は、ATRの応答を受信し(S15)、それに基づいたフォーマットでシリアルデータのやり取りを開始する。B−CASの場合は、最初にバッファーサイズの設定変更をする。
その後、テレビ受信機21は、初期設定コマンドを発行する(S16)。これに対して、ICカード26は、自身のカードID、および、MULTI2暗号に使うシステムキーやイニシャルデータを返信する(S32)。
テレビ受信機21は、有効チャンネルに同調して、ECMパケットを受信すると、一定間隔で、ICカード26に対して、暗号化されたECMパケットを含むECMコマンドを発行する(S17)。このECMコマンドは、当該ECMの復号により抽出されたスクランブル鍵の返送を要求するコマンドである。ICカード26は、ECMコマンドを受領し、番組再生がイネーブルされている場合(すなわち図7で説明した視聴条件判定処理263の判定条件が満足された場合)には、MULTI2暗号に必要なスクランブル鍵として、ODD/EVENキーを返送する(S34)。番組再生が禁止されているとODD/EVENキーを全て0にして返送する。このようなスクランブル鍵はアナログスイッチ241を経由してテレビ受信機21へ伝達される。
カードアダプタ24は、ECMパケットを傍受してその復号を行う(S21)が、上述したCRC32判定値が上記所定値に合致しないので、アナログスイッチ241,242の切替は行わない。
以後、ECMコマンドが発行される毎に(S18,…)、同様の処理が繰り返し実行される(S22,S35,S36,…)。
図10は、図9と同様、本実施の形態におけるデジタルテレビ受信機21と、カードアダプタ24とICカード26の間の通信シーケンスを示す。しかし、この図の処理は、自主放送のチャンネルが選択されている場合のシーケンスである。図9に示したステップと同様のステップには同じ参照番号を付して、重複した説明は省略する。すなわち、ステップS12〜S18、S21〜S22、S31〜S32は図9の場合と同様である。
自主放送のチャンネルが選択されている場合、テレビ受信機21から発行されたECMコマンドは独自の暗号方式により暗号化されているため、ICカード26は自身の暗号方式で復号しても(S33、S35)、有効なスクランブル鍵は得られない。一方、カードアダプタ24はそのECMパケットを復号したとき(S21,S22)、CRC32判定値が上記所定値に合致する。そこで、アナログスイッチ242を接続し、アナログスイッチ241を遮断するよう、スイッチの切替を行う(S211)。これにより、ICカード26からの返答は遮断され、代わりにカードアダプタ24が独自のスクランブル鍵を返信する。すなわち、この復号により得られたスクランブル鍵(ODD/EVENキー)がテレビ受信機21へ返送される(S212)。その後、アナログスイッチ241を接続し、アナログスイッチ242を遮断するよう、スイッチの切替を行う(S213)。
以後、ECMコマンドが発行される毎に(S18,…)、同様の処理が繰り返し実行される(S22,S221〜S223,…)。
図11は、カードアダプタ24の処理フローを表したフローチャートである。この処理は、カードアダプタ24のプロセッサ244が実行する。
電源とクロックが供給されて、リセット解除になると、すぐに、ICカード26のシリアルI/Oの監視を開始し、シリアルメッセージを取得、すなわちシリアルデータを受信する(S41)。メッセージの長さが正しいものを受信すると(S42,Yes)、そのメッセージを解析する(S43)。そのメッセージがECMコマンドの場合には(S44,Yes)、受領したデータの暗号を解読し(S45)、改ざん検出用CRC32ビットをチェックする(S46)。
その暗号が独自暗号の場合にはCRC32判定値が0すなわち「改ざんなし」となり(S47,Yes)、自身宛のECMコマンドであると判断する。そうでない場合は、ICカード26に対するECMコマンドなので、以降のステップを実行することなく最初のステップS41へ戻る。
独自暗号のECMコマンドの場合には、アナログスイッチ241を遮断するとともにアナログスイッチ242を接続して、当該ECMからの抽出した自前のスクランブル鍵のシリアルTX出力を可能とする。次に、所定時間待機する(S49)。この例では、ICカード26からの返答を2キャラクタ分待つ。所定時間待機する理由は、返答するキャラクタのタイミングを間違ったり、アナログスイッチ241,242の遮断・接続タイミングによる無意味なデータの返答をしないためである。その後、自前のスクランブル鍵としてのODD/EVENキーをシリアル出力する(S50)。独自のスクランブル鍵の出力を終了すると、アナログスイッチ241,242の状態を元に戻して(S51)、テレビ受信機21とICカード26のシリアルI/O経路を接続する。
図12は、本実施の形態における有料チャンネルに関するデータ放送におけるBMLスクリプトで実行される処理例を示したフローチャートである。この処理は、図6に示したテレビ受信機21内の制御部216が実行する。
このBMLスクリプトにより、有料チャンネルについては初期的には放送コンテンツの視聴制限が掛けられた状態となっている。ユーザにより有料チャンネルの選択が行われたとき、制御部216は、図8の表示画面例に示したように、ユーザに対してパスワードの入力を促す(S61)。初期的に、有料チャンネルについては、視聴制限として、ARIB規格に規定されているような映像の非表示および音声のミュートが行われている。ついで、入力されたパスワードと、既にBMLデータで受信済の、保存されているパスワードと比較する(S62)。複数の有料チャンネルの各チャンネル(選択ボタン25a,25b,25c)毎に異なるパスワードが設定されている場合には、BMLスクリプトは選択されたチャンネルに応じて保存されているパスワードを用いて比較を行う。入力されたパスワードが、保存されているパスワードと一致しなければ(S63,No)、エラーメッセージ25eを出力(表示)し(S64)、ステップS61に戻る。両パスワードが一致すれば(S63,Yes)、当該有料チャンネルの視聴制限を解除する(S65)。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記で言及した以外にも、種々の変形、変更を行うことが可能である。例えば、パスワードによる視聴制限は、チャンネル単位としたが、データ放送画面において有料の放送コンテンツ(番組タイトル)の指定ができる場合にはそのような放送コンテンツ単位にパスワードを設定することも可能である。パスワードの桁数は6桁の数値としたが、これに限るものではない。有料チャンネルの個数は3としたが、1以上であればよい。有料チャンネルまたはコンテンツの個数が単一個の場合、上述したデータ放送コンテンツのメニュー画面における選択ボタンはなくてもよい。
発券機は、本発明において必須の要素ではない。例えば、ホテルのフロント等で係員から利用者にパスワードを伝えることも可能である。
また、本発明の限定受信システムが導入される施設としてホテルを挙げたが、ホテル以外の任意の施設、例えば、病院、老人ホーム、教育施設等であってもよい。
図3のスクランブラ147がスクランブルする対象としては、データ放送コンテンツを含む必要はなく、少なくとも映像および音声を含めれば足りる。
上記の実施の形態ではデータ放送コンテンツによる視聴制限が備わったものとして説明したが、データ放送コンテンツによる視聴制限は本発明に必須の要素ではない。自主放送を有料とすることも必ずしも必要ではない。
特定の施設の館内での放送について説明したが、必ずしも、館内に限るものではない。本発明は、ある地点で暗号化されていないデジタル放送コンテンツを独自のスクランブル鍵で暗号化して、その暗号化されたデジタル放送コンテンツを他の地点へ伝送するシステムに適用することができる。
図10は、図9と同様、本実施の形態におけるデジタルテレビ受信機21と、カードアダプタ24とICカード26の間の通信シーケンスを示す。しかし、この図の処理は、自主放送のチャンネルが選択されている場合のシーケンスである。図9に示したステップと同様のステップには同じ参照番号を付して、重複した説明は省略する。すなわち、ステップS11〜S18、S21〜S22、S31〜S33、S35は図9の場合と同様である。