JP2012103168A - レーダ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】PRIを変えることなく、目標相対速度および所望のクラッタ抑圧性能に応じて、送信波形諸元を適応的に変化させるレーダ装置を得る。
【解決手段】目標相対速度情報取得手段1と、パルス繰返し周期を変えることなく、目標相対速度Vdに対するクラッタ抑圧処理損失を低減するための送信波形諸元を生成する送信波形制御器2と、任意周波数発振器3と、90度ハイブリッド器8と、送信機4と、送信機からの信号を目標に照射して反射された信号を受信するアンテナ5と、分配器6と、位相検波器7a、7bと、低域通過フィルタ9a、9bと、A/D変換器10a、10bと、ビデオ信号記憶手段11と、MTI処理器12と、目標相対速度Vdを用い、クラッタ抑圧処理された信号を補正する相対速度補正処理器13と、合成帯域処理器14と、目標距離Rを計測する目標検出処理器15とを備える。
【選択図】図1

Description

この発明は、受信信号からクラッタと呼ばれる目標以外の不要反射波を抑圧し、目標からの反射信号に合成帯域処理を施すことによって高距離分解能化を行い、目標までの距離(以下、「目標距離」という)を計測するレーダ装置に関するものである。
従来から、レーダ装置においては、クラッタと呼ばれる目標以外の不要反射波を抑圧する技術として、MTI(Moving Target Indicator)処理がよく用いられている。
一方、レーダ装置の主諸元である距離分解能を向上する処理として、合成帯域処理が知られており、MTI処理および合成帯域処理を同時に用いる技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
図9は特許文献1に記載の従来のレーダ装置による処理技術を示す説明図である。
図9において、横軸は時刻、縦軸は送信周波数を示し、横軸の1マスがPRI(Pulse Repetition Interval:パルス繰返し周期)、縦軸の1マスがステップ周波数Δfを示している。
また、図9中の黒丸は、各PRIでの送信周波数を示し、TPRI1、TPRI2は各合成帯域処理区間Z1、Z2(合成帯域処理を行う区間)でのPRIを示している。
図9に示すように、従来のレーダ装置においては、各合成帯域処理区間Z1、Z2で異なるPRI(TPRI1、TPRI2)を用いてパルス信号の送受信を行い、その後、合成帯域処理区間Z1、Z2での同じ送信周波数同士の受信信号を用いてMTI処理を行い、合成帯域処理を行う。
このとき、各合成帯域処理区間Z1、Z2のPRI(TPRI1、TPRI2)は、あらかじめ想定する相対速度の範囲のMTIフィルタ損失を一定以上するように設定する。
通常、合成帯域処理を行うレーダ装置においては、PRI(TPRI1、TPRI2)を、最大観測距離で決定される時間よりも短くすることができない。
すなわち、MTI処理と合成帯域処理とを同時に適用するレーダ装置において、PRIを変えることなく、所望のクラッタ抑圧性能を満たし目標相対速度に応じてMTIフィルタ損失を低減する技術は、まだ提供されていない。
特開2009−264788号公報
従来のレーダ装置は、最大観測距離で決定される値よりも長いPRIを用いるので、目標距離計測結果などの出力レートが低下するという課題があった。
また、特許文献1においては、PRIを変えることなく、MTIおよび合成帯域処理を同時に用いる方法も開示されているが、この場合、MTIフィルタ特性が一意的に決定され、目標の相対速度(以下、「目標相対速度」という)によっては、大きなMTIフィルタ損失が発生するという課題があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、PRI(パルス繰返し周期)を変えることなく、所望のクラッタ抑圧性能を満たしつつ、MTIフィルタ損失を低減し、MTI処理および合成帯域処理を同時に用いて高距離分解能化を行い、目標距離を計測する優れたレーダ装置を得ることを目的とする。
この発明に係るレーダ装置は、目標相対速度を取得する目標相対速度情報取得手段と、パルス繰返し周期を変えることなく、目標相対速度情報取得手段で得た目標相対速度に対するクラッタ抑圧処理損失を低減するための送信波形諸元を生成する送信波形制御器と、送信波形制御器により指示された送信波形諸元を発振する任意周波数発振器と、任意周波数発振器で発振された信号の位相を90度回転させる90度ハイブリッド器と、任意周波数発振器で発振された信号をパルス化する送信機と、送信機によりパルス化された信号を目標に照射して、目標から反射された信号を受信するアンテナと、アンテナで受信された信号を分配する分配器と、分配器で分配された信号に対して、任意周波数発振器で発振された信号および90度ハイブリッド器で90度回転させた信号を用いて、周波数変換を行う位相検波器と、位相検波器で周波数変換された信号のうち、所望の周波数帯以外の周波数成分を遮断する低域通過フィルタと、低域通過フィルタの出力信号をアナログ信号からディジタル信号に変換するA/D変換器と、A/D変換器でディジタル化された信号を記憶するビデオ信号記憶手段と、送信波形制御器で生成された送信波形諸元に基づき、ビデオ信号記憶手段内の同一周波数で送受信された信号に対して、クラッタ抑圧処理を行うMTI処理器と、目標相対速度情報取得手段で得た目標相対速度を用いて、MTI処理器でクラッタ抑圧処理された信号に対して相対速度補正を行う相対速度補正処理器と、相対速度補正処理器で相対速度補正された信号に対して距離高分解能化処理を行う合成帯域処理器と、合成帯域処理器で距離高分解能化された信号から目標信号を検出して、目標距離を計測する目標検出処理器と、を備えたものである。
この発明によれば、MTI処理と合成帯域処理を同時に用いるレーダ装置において、PRIを変えることなく、所望のクラッタ抑圧性能を満たしつつ、目標相対速度Vdに応じてMTIフィルタ損失を低減することができる。
この発明の実施の形態1に係るレーダ装置を示すブロック図である。 この発明の実施の形態1による送信周波数列の一例を示す説明図である。 この発明の実施の形態1によるMTIフィルタ特性を示す説明図である。 図3のフィルタ特性の0[m/s]付近を拡大して示す説明図である。 この発明の実施の形態2に係るレーダ装置を示すブロック図である。 この発明の実施の形態2による送信周波数列F、Gを交互に用いた場合の一例を示す説明図である。 この発明の実施の形態2による目標相対速度計測処理器の処理概要を示す説明図である。 この発明の実施の形態3に係るレーダ装置を示すブロック図である。 従来のレーダ装置を示すブロック図である。
実施の形態1.
以下、図1〜図4を参照しながら、この発明の実施の形態1について説明する。
図1はこの発明の実施の形態1に係るレーダ装置を示す構成図である。
図1において、レーダ装置は、目標相対速度情報取得手段1と、送信波形制御器2と、任意周波数発振器3と、送信機4と、アンテナ5と、分配器6と、位相検波器7a、7bと、90度ハイブリッド器8と、低域通過フィルタ9a、9bと、A/D変換器10a、10bと、ビデオ信号記憶手段11と、MTI処理器12と、相対速度補正処理器13と、合成帯域処理器14と、目標検出処理器15と、を備えている。
目標相対速度情報取得手段1は、追尾フィルタ、または、相対速度計測モードや他の計測モードのセンサなど(図示せず)を含み、追尾フィルタまたはセンサなどで得た目標相対速度Vdを示す相対速度情報を、送信波形制御器2および相対速度補正処理器13に入力する。
送信波形制御器2は、所望のクラッタ抑圧性能を満たしながら、目標相対速度VdにおけるMTIフィルタ損失を低減するための送信波形諸元を、任意周波数発振器3およびMTI処理器12に入力する。
以下、送信波形制御器2の具体的な処理について説明する。
なお、ここでは、説明を簡略化するために、2個のパルスを用いたMTI処理(単一消去器)を前提に説明する。
単一消去器の場合、合成帯域数NSBRに対し、HIT数NHITは、NHIT=2NSBRとなる。
ここで、送信最小周波数f、ステップ周波数Δfを用いて、周波数列fをf=f+nΔf(ただし、n=0、1、・・・、NSBR−1)とすれば、送信周波数列Fは、以下の式(1)で定義される。
Figure 2012103168
ただし、式(1)において、変数mは、m=0、1、・・・、NHIT−1の値をとり、変数Mは、M=1、2、・・・、NSBRの値をとる。
送信波形制御器2は、PRIごとに式(1)の送信周波数列Fを用いてパルス信号を送信する。また、任意周波数発振器3で発振される送信波形諸元を、以下のように制御する。
図2は送信周波数列Fの一例を示す説明図である。
図2において、前述(図9)と同様に、横軸は時刻、縦軸は送信周波数を示し、横軸の1マスがPRI、縦軸の1マスがステップ周波数Δfを示している。
また、図2(a)はM=2の場合、図2(b)はM=4の場合を示している。
MTI処理は、同一周波数の信号の差を取ることに相当するので、PRIをTPRIとすると、式(1)で示した送信周波数列Fにおいて、同一周波数の信号間隔は、MTPRIで表される。
したがって、目標相対速度Vd、光速cを用いると、MTIフィルタ特性FMTI(Vd)は、以下の式(2)で表される。
Figure 2012103168
ただし、式(2)において、fMMは送信周波数のうちの中間周波数である。
図3はMTIフィルタ特性(応答特性)を示す説明図であり、横軸は目標相対速度Vd[m/s]、縦軸MTIフィルタ応答[dB]である。
図3において、パラメータは、PRI=150μs、fMM=1GHzであり、実線はM=2の場合のMTIフィルタ特性を示し、破線はM=4の場合のMTIフィルタ特性を示している。
図3から明らかなように、変数Mを変化させることにより、MTI処理を行うパルス間隔を変化させることが可能となり、MTIフィルタ特性が変化する。
送信波形制御器2は、目標相対速度情報取得手段1から得られる目標相対速度Vdにおいて、式(2)で表されるMTIフィルタ特性FMTI(Vd)が最大になるように、変数Mを決定することにより、任意周波数発振器3で発振される送信波形諸元を制御する。
たとえば、図3のように、目標相対速度Vd=125[m/s]の場合、M=4(破線)でMTIフィルタ特性が最大となるので、任意周波数発振器3に対して、図2(b)で示した送信波形諸元を送信するように命令する。
ただし、変数Mを大きく設定すると、クラッタ抑圧性能が劣化するので、以下のようにMTIフィルタ特性FMTI(Vd)が最大となるMを求める。
図4は図3のフィルタ特性の0[m/s]付近を拡大して示す説明図である。
図4内の両方向矢印で参照されるように、M=4(破線)は、M=2(実線)と比較して、相対速度4[m/s]において、クラッタ抑圧性能が6[dB]程度劣化する。
したがって、送信波形制御器2は、所望のクラッタ抑圧性能を満たしながら、目標相対速度Vdに対するMTIフィルタ特性FMTI(Vd)が最大になる変数Mを求め、任意周波数発振器3で発振される送信波形諸元を制御してもよい。
たとえば、所望のクラッタ抑圧能力を、所定の目標相対速度σにおいて、X(>0)[dB]抑圧すると定義すると、クラッタ抑圧の力を満たすためには、以下の式(3)を満たす必要がある。
Figure 2012103168
ただし、MTIフィルタ特性は、目標相対速度σ=0[m/s]で対称になるので、式(3)においては、正の目標相対速度σのみを考慮している。
式(3)を満たし、目標相対速度Vdに対するMTIフィルタ特性FMTI(Vd)が最大となるMを求め、任意周波数発振器3で発振される送信波形諸元を制御することにより、所望のクラッタ抑圧性能も満たすことができる。
上記説明では、PRIを一定としていたが、目標距離計測結果の出力レートTCPIなどが許容できる範囲内でPRIを変えることができる場合には、送信波形諸元制御の自由度が増え、さらに最適な送信波形諸元制御が可能となる。
ここで、レーダの最大観測距離Rmaxを用いれば、PRIは、以下の式(4)を満たす必要がある。
Figure 2012103168
また、許容可能な目標距離計測結果の出力レートTCPIを用いれば、PRIは、以下の式(5)を満たす必要がある。
Figure 2012103168
式(3)、式(4)、式(5)を満たし、目標相対速度Vdに対するMTIフィルタ特性FMTI(Vd)(式(2))が最大になるMおよびPRI(=TPRI)を求め、任意周波数発振器3で発振される送信波形諸元を制御することにより、所望のクラッタ抑圧性能も満たすことができる。
以上のように、送信波形制御器2による処理が行われる。
以下、任意周波数発振器3は、送信波形制御器2で命令された送信周波数を発振し、送信機4、位相検波器7aおよび90度ハイブリッド器8に入力する。
90度ハイブリッド器8は、任意周波数発振器3からの入力信号の位相を90度回転させて、位相検波器7bに入力する。
送信機4は、任意周波数発振器3から入力された信号を、パルス化してアンテナ5に入力する。アンテナ5は、送信機4から入力された信号を目標(図示せず)に照射し、目標からの反射信号を受信して、分配器6に入力する。
分配器6は、アンテナ5で受信された信号を位相検波器7a、7bに分配する。
位相検波器7aは、分配器6および任意周波数発振器3からの各入力信号を用いて周波数変換を行い、周波数変換された信号を低域通過フィルタ9aに入力する。
位相検波器7bは、分配器6および90度ハイブリッド器8からの各入力信号を用いて周波数変換を行い、周波数変換された信号を低域通過フィルタ9bに入力する。
低域通過フィルタ9aは、位相検波器7aからの入力信号の低周波成分のみをA/D変換器10aに入力する。同様に、低域通過フィルタ9bは、位相検波器7bからの入力信号の低周波成分のみをA/D変換器10bに入力する。
低域通過フィルタ9a、9bとしては、たとえば信号対雑音比を最大にする整合フィルタが用いられる。
A/D変換器10a、10bは、低域通過フィルタ9a、9bから入力される各アナログ信号をディジタル信号に変換して、ビデオ信号記憶手段11に入力する。
ビデオ信号記憶手段11は、A/D変換器10a、10bでディジタル変換されたディジタル信号を記憶して、MTI処理器12に入力する。
MTI処理器12は、送信波形制御器2から入力された送信波形諸元から、ビデオ信号記憶手段11に記憶されている同一周波数同士のビデオ信号に対してMTI処理を行い、MTI処理後の信号を相対速度補正処理器13に入力する。
相対速度補正処理器13は、目標相対速度情報取得手段1から得た目標相対速度Vdを用いて、MTI処理器12からの信号に対して相対速度補正を行い、相対速度補正後の信号を合成帯域処理器14に入力する。
合成帯域処理器14は、相対速度補正後の信号に対して合成帯域処理を行い、合成帯域処理結果を目標検出処理器15に入力する。
目標検出処理器15は、たとえばCFAR(Constant False Alarm Rate)に基づく検出法を用いて、合成帯域処理結果から目標を検出し、目標距離Rを得る。
以上のように、この発明の実施の形態1(図1〜図4)に係るレーダ装置は、目標相対速度Vdを取得する目標相対速度情報取得手段1と、パルス繰返し周期を変えることなく、目標相対速度情報取得手段1で得た目標相対速度Vdに対するクラッタ抑圧処理損失を低減するための送信波形諸元を生成する送信波形制御器2と、送信波形制御器2により指示された送信波形諸元を発振する任意周波数発振器3と、任意周波数発振器3で発振された信号の位相を90度回転させる90度ハイブリッド器8と、任意周波数発振器3で発振された信号をパルス化する送信機4と、送信機4によりパルス化された信号を目標に照射して、目標から反射された信号を受信するアンテナ5と、アンテナ5で受信された信号を分配する分配器6と、分配器6で分配された信号に対して、任意周波数発振器3で発振された信号および90度ハイブリッド器8で90度回転させた信号を用いて、周波数変換を行う位相検波器7a、7bと、を備えている。
また、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置は、位相検波器7a、7bで周波数変換された信号のうち、所望の周波数帯以外の周波数成分を遮断する低域通過フィルタ9a、9bと、低域通過フィルタ9a、9bの出力信号をアナログ信号からディジタル信号に変換するA/D変換器10a、10bと、A/D変換器10a、10bでディジタル化された信号を記憶するビデオ信号記憶手段11と、を備えている。
また、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置は、送信波形制御器2で生成された送信波形諸元に基づき、ビデオ信号記憶手段11内の同一周波数で送受信された信号に対して、クラッタ抑圧処理を行うMTI処理器12と、目標相対速度情報取得手段1で得た目標相対速度Vdを用いて、MTI処理器12でクラッタ抑圧処理された信号に対して相対速度補正を行う相対速度補正処理器13と、相対速度補正処理器13で相対速度補正された信号に対して距離高分解能化処理を行う合成帯域処理器14と、合成帯域処理器14で距離高分解能化された信号から目標信号を検出して、目標距離Rを計測する目標検出処理器15と、を備えている。
送信波形制御器2は、パルス繰返し周期を変えることなく、目標相対速度Vdに対するクラッタ抑圧処理損失を低減し、所望のクラッタ抑圧性能を満足するための送信波形諸元を生成する。
また、送信波形制御器2は、所望の目標距離計測結果の出力レートTCPIと、最大観測距離Rmaxで決定されるPRI(パルス繰返し周期)と、所望のクラッタ抑圧性能とを満足するように、目標相対速度Vdに対するクラッタ抑圧処理損失を低減するための送信波形諸元を生成する。
これにより、MTI処理と合成帯域処理を同時に用いるレーダ装置において、PRIを変えることなく、所望のクラッタ抑圧性能を満たしつつ、目標相対速度Vdに応じてMTIフィルタ損失を低減することが可能となる。
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1(図1)では、センサ機能を含む目標相対速度情報取得手段1を用いたが、図5のように、MTI処理器12Aの出力信号をフィードバック情報として目標相対速度Vdを生成する目標相対速度計測処理器1Aを用いてもよい。
以下、図5〜図7を参照しながら、この発明の実施の形態2について説明する。
図5はこの発明の実施の形態2に係るレーダ装置を示す構成図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「A」を付して詳述を省略する。
図5において、レーダ装置は、前述(図1)の目標相対速度情報取得手段1に代えて、目標相対速度計測処理器1Aを備えている。なお、前述の目標相対速度情報取得手段1の機能として、目標相対速度計測処理器1Aを含むように構成してもよい。
また、この場合、送信波形制御器2AおよびMTI処理器12Aの処理の一部が、前述(図1)とは異なる。
以下、この発明の実施の形態2による目標相対速度計測処理器1Aおよび前述と異なる処理について説明する。
まず、送信波形制御器2Aによる送信周波数列の交互処理について説明する。
ここでは説明の簡略化のため、前述と同様に、2個のパルスを用いたMTI処理(単一消去器)を前提に説明する。単一消去器の場合、HIT数NHITは、合成帯域数NSBRを用いて、NHIT=2NSBRで表される。
また、周波数列f、gが、送信最小周波数fおよびステップ周波数Δfを用いて、それぞれ、f=f+nΔf、g=f+Δf(NSBR−1)−nΔf(ただし、n=0、1、・・・、NSBR/2−1)で与えられるものとする。
さらに、送信周波数列F、G(ただし、m=0、1、・・・、NHIT/2−1)を、それぞれ以下の式(6)、式(7)で定義する。
Figure 2012103168
ただし、式(6)、式(7)において、変数Mは、M=1、2、・・・、NSBR/2の値をとる。
送信波形制御器2Aは、PRIごとに、式(6)、式(7)の送信周波数列F、Gを交互に用いて、パルス信号を送信する。
図6は送信周波数列F(黒丸参照)、G(白丸参照)を交互に用いた場合の一例を示す説明図である。
図6において、前述(図2)と同様に、横軸は時刻、縦軸は送信周波数を示し、横軸の1マスがPRI、縦軸の1マスがステップ周波数Δfを示している。
また、図6(a)はM=1の場合、図6(b)はM=2の場合を示している。
MTI処理は、同一周波数の信号の差を取ることに相当するので、PRIをTPRIとすると、式(6)、式(7)で示した送信周波数列F、Gの交互使用において、同一周波数の信号間隔は、2MTPRIで表される。
したがって、目標相対速度Vd、光速cを用いると、前述の式(2)内のTPRIが2TPRIに置き換えられて、MTIフィルタ特性FMTI(Vd)は、以下の式(8)で表される。
Figure 2012103168
ただし、式(8)において、fMMは、前述の式(2)と同様に、送信周波数のうちの中間周波数である。
送信波形制御器2Aは、目標相対速度計測処理器1Aから得た目標相対速度Vdおよび式(8)を用いて、前述と同様に、所望のクラッタ抑圧性能を満たし、目標相対速度Vdに対するMTIフィルタ特性FMTI(Vd)が最大になる変数Mを求め、任意周波数発振器3で発振される送信波形諸元を制御する。
また、言うまでもなく、前述と同様に、PRIを変えることができる場合には、条件を満たす変数MおよびPRI(=TPRI)を求め、任意周波数発振器3で発振される送信波形諸元を制御することも可能である。
式(8)は、前述の式(2)から、TPRI=2TPRIに変形したのみであり、前述と同様の手順で送信波形諸元を求めることができる。
MTI処理器12Aは、送信波形制御器2Aから入力された送信波形諸元に基づき、ビデオ信号記憶手段11に記憶されている同一周波数同士のビデオ信号に対して、MTI処理を行い、MTI処理後の信号を相対速度補正処理器13および目標相対速度計測処理器1Aに入力する。
相対速度補正処理器13は、目標相対速度計測処理器1Aから得た目標相対速度Vdを用いて、MTI処理器12Aからの信号に対して相対速度補正を行い、相対速度補正後の信号を合成帯域処理器14に入力する。
次に、目標相対速度計測処理器1Aの処理について説明する。
図7は目標相対速度計測処理器1Aの処理概要を示す説明図であり、M=2、NSBR=12の場合の計測処理を示している。
目標相対速度計測処理器1Aは、MTI処理器12AによりMTI処理された信号を複素乗算し、2次元フーリエ変換を用いて目標相対速度Vdを計測する。
以下、目標相対速度Vdの計測処理について、数式を用いて詳細に説明する。
MTI処理器12Aにより、同一周波数同士のビデオ信号に対してMTI処理が行われた信号は、以下の式(9)、式(10)で表される。
Figure 2012103168
ここで、式(9)は送信周波数列Fを用いた場合を示し、式(10)は送信周波数列Gを用いた場合を示している。
また、式(9)、式(10)において、変数kは、k=0、1、・・・、M−1、の値をとり、変数lは、l=0、1、・・・、NSBR/2M−1、の値をとる。
式(9)、式(10)を要素ごとに複素乗算を行うと、以下の式(11)となる。
Figure 2012103168
ただし、式(11)において、Pは送信周波数列F、Gの和(F+G)を示しており、実際には、P=F+G=2f+Δf(NSBR−1)で表される。
なお、式(11)の正弦関数(sin)の周期は、指数関数と比較して短いので無視することができる。
式(11)の指数関数を変数k、lについてまとめると、以下の式(12)となる。
Figure 2012103168
ただし、式(12)において、変数k、lとは無関係の位相はθにまとめている。
式(12)を変数k、l方向に2次元フーリエ変換を行い、そのピーク値から目標相対速度Vdを計測することが可能である。
フーリエ変換手段としては、たとえばFFT(Fast Fourier Transform)などが適用され得る。
変数k方向にFFT処理を施した場合の速度分解能ΔVdおよび最大観測速度ΔVd1,maxは、それぞれ、以下の式(13)、式(14)で表される。
Figure 2012103168
また、変数l方向にFFT処理を施した場合の速度分解能ΔVdおよび最大観測速度ΔVd2,maxは、それぞれ、以下の式(15)、式(16)で表される。
Figure 2012103168
通常は、変数Mと合成帯域数NSBRとの大小関係は、M<<NSBRであることから、変数Mを用いた式(13)の速度分解能ΔVdよりも、変数NSBRを用いた式(15)の速度分解能ΔVdの方が高分解能である。
一方、変数Mを用いた式(16)の最大観測速度Vd2、maxよりも、変数Mを用いない式(14)の最大観測速度Vd1、maxの方が速く、且つ曖昧性を含むことなく測速度可能な範囲が広いことになる。
したがって、変数k方向にFFT処理を施した結果である式(14)から曖昧性を解き、変数l方向にFFT処理を施した結果である式(15)から高精度な相対速度計測を行うことができる。
ただし、ΔVd/Vd2、max=2の関係があるので、変数k方向のFFT処理の際に、FFT点数を、「0」詰めして「2M」とする必要がある。
以上のように、この発明の実施の形態2(図5〜図7)によれば、送信波形制御器2Aは、所定の周波数列fと、所定の周波数列fとは異なる周波数列gとを、所定の間隔2MTPRIで交互に並び替えた送信周波数列F、Gを生成し、PRI(パルス繰返し周期)を変えることなく、目標相対速度に対するクラッタ抑圧処理損失を低減するための送信波形諸元を生成する。
また、目標相対速度情報取得手段は、目標相対速度計測処理器1Aを含み、MTI処理器12Aでクラッタ抑圧処理された信号の複素乗算結果から、2次元フーリエ変換を用いて目標相対速度Vdを計測し、計測結果となる目標相対速度Vdを送信波形制御器2Aおよび相対速度補正処理器13に入力する、
また、送信波形制御器2Aは、所定の周波数列fと、所定の周波数列fとは異なる周波数列gとを、所定の間隔2MTPRIで交互に並び替えた送信周波数列F、Gを生成し、PRI(パルス繰返し周期)を変えることなく、目標相対速度Vdに対するクラッタ抑圧処理損失を低減し、所望のクラッタ抑圧性能を満足するための送信波形諸元を生成する。
さらに、前述と同様に、送信波形制御器2Aは、所定の周波数列fと、所定の周波数列fとは異なる周波数列gとを、所定の間隔2MTPRIで交互に並び替えた送信周波数列F、Gを生成し、目標相対速度Vdに対するクラッタ抑圧処理損失を低減し、所望の目標距離計測結果の出力レートTCPIと、最大観測距離Rmaxで決定されるPRI(パルス繰返し周期)と、所望のクラッタ抑圧性能とを満足するように、送信波形諸元を生成する。
これにより、MTI処理と合成帯域処理を同時に用いるレーダ装置において、PRIを変えることなく、所望のクラッタ抑圧性能を満たしながら、目標相対速度Vdに応じてMTIフィルタ損失を低減することが可能となる。
また、目標相対速度計測処理器1Aにおいて、アンテナ5からの受信信号に基づいて目標相対速度Vdを計測することが可能なので、前述(図1)の目標相対速度情報取得手段1で必要としていた相対速度情報取得用の追尾フィルタ、相対速度計測モードまたは他のセンサなどが不要となり、装置の小型化を実現することができる。
実施の形態3.
なお、上記実施の形態2(図5)では、目標相対速度計測処理器1Aからの目標相対速度Vdを送信波形制御器2Aおよび相対速度補正処理器13に直接入力したが、図8のように、追尾フィルタ処理器16を介した推定目標相対速度Vd’を送信波形制御器2Aおよび相対速度補正処理器13に入力してもよい。
以下、図8を参照しながら、この発明の実施の形態3について説明する。
図8はこの発明の実施の形態3に係るレーダ装置を示す構成図であり、前述(図5参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
図8において、レーダ装置は、目標相対速度計測処理器1Aの出力側に挿入された追尾フィルタ処理器16を備えている。
追尾フィルタ処理器16は、目標検出処理器15で観測された目標距離Rと、目標相対速度計測処理器1Aで計測された目標相対速度Vdとを入力情報として、追尾フィルタ処理を行い、推定目標相対速度Vd’を生成する。なお、追尾フィルタとしては、たとえばカルマンフィルタなどが適用され得る。
追尾フィルタ処理器16で推定された推定目標相対速度Vd’は、送信波形制御器2Aおよび相対速度補正処理器13に入力される。
以下、送信波形制御器2Aは、追尾フィルタ処理器16から入力される推定目標相対速度Vd’に基づいて送信波形制御を行う。
また、相対速度補正処理器13は、追尾フィルタ処理器16からの推定目標相対速度Vd’を用いて、MTI処理器12Aからの信号に対して相対速度補正を行い、相対速度補正後の信号を合成帯域処理器14に入力する。
以上のように、この発明の実施の形態3(図8)に係るレーダ装置は、目標相対速度計測処理器1Aで計測された目標相対速度Vdと、目標検出処理器15で計測された目標距離Rとを入力情報として、追尾フィルタ処理を行う追尾フィルタ処理器16を備えている。
追尾フィルタ処理器16は、目標相対速度Vdおよび目標距離Rから推定された推定目標相対速度Vd’を、送信波形制御器2Aおよび相対速度補正処理器13に入力する、
これにより、MTI処理と合成帯域処理を同時に用いるレーダ装置において、PRIを変えることなく、所望のクラッタ抑圧性能を満たしながら、目標相対速度Vdに応じてMTIフィルタ損失を低減することが可能となる。
また、前述の実施の形態2と同様に、アンテナ5からの受信信号に基づいて目標相対速度Vdを計測することが可能なので、相対速度情報取得用の追尾フィルタ、相対速度計測モードまたは他のセンサなどが不要となり、装置の小型化を実現することができる。
さらに、追尾フィルタ処理器16により正確に推定された推定目標相対速度Vdに基づき、正確な目標の諸元に基づいて送信波形制御することが可能となる。
この発明のレーダ装置は、たとえば、目標とする航空機を追尾する装置や航空管制レーダなどに利用可能である。
1 目標相対速度情報取得手段、1A 目標相対速度計測処理器、2、2A 送信波形制御器、3 任意周波数発振器、4 送信機、5 アンテナ、6 分配器、7a、7b 位相検波器、8 度ハイブリッド器、9a、9b 低域通過フィルタ、10a、10b A/D変換器、11 ビデオ信号記憶手段、12、12A MTI処理器、13 相対速度補正処理器、14 合成帯域処理器、15 目標検出処理器、16 追尾フィルタ処理器、R 目標距離、Vd 目標相対速度、Vd’ 推定目標相対速度。

Claims (7)

  1. 目標相対速度を取得する目標相対速度情報取得手段と、
    パルス繰返し周期を変えることなく、前記目標相対速度情報取得手段で得た目標相対速度に対するクラッタ抑圧処理損失を低減するための送信波形諸元を生成する送信波形制御器と、
    前記送信波形制御器により指示された送信波形諸元を発振する任意周波数発振器と、
    前記任意周波数発振器で発振された信号の位相を90度回転させる90度ハイブリッド器と、
    前記任意周波数発振器で発振された信号をパルス化する送信機と、
    前記送信機によりパルス化された信号を目標に照射して、目標から反射された信号を受信するアンテナと、
    前記アンテナで受信された信号を分配する分配器と、
    前記分配器で分配された信号に対して、前記任意周波数発振器で発振された信号および前記90度ハイブリッド器で90度回転させた信号を用いて、周波数変換を行う位相検波器と、
    前記位相検波器で周波数変換された信号のうち、所望の周波数帯以外の周波数成分を遮断する低域通過フィルタと、
    前記低域通過フィルタの出力信号をアナログ信号からディジタル信号に変換するA/D変換器と、
    前記A/D変換器でディジタル化された信号を記憶するビデオ信号記憶手段と、
    前記送信波形制御器で生成された送信波形諸元に基づき、前記ビデオ信号記憶手段内の同一周波数で送受信された信号に対して、クラッタ抑圧処理を行うMTI処理器と、
    前記目標相対速度情報取得手段で得た目標相対速度を用いて、前記MTI処理器でクラッタ抑圧処理された信号に対して相対速度補正を行う相対速度補正処理器と、
    前記相対速度補正処理器で相対速度補正された信号に対して距離高分解能化処理を行う合成帯域処理器と、
    前記合成帯域処理器で距離高分解能化された信号から目標信号を検出して、目標距離を計測する目標検出処理器と、
    を備えたことを特徴とするレーダ装置。
  2. 前記送信波形制御器は、
    パルス繰返し周期を変えることなく、前記目標相対速度に対するクラッタ抑圧処理損失を低減し、所望のクラッタ抑圧性能を満足するための送信波形諸元を生成する、
    ことを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
  3. 前記送信波形制御器は、
    所望の目標距離計測結果の出力レートと、最大観測距離で決定されるパルス繰返し周期と、所望のクラッタ抑圧性能とを満足するように、前記目標相対速度に対するクラッタ抑圧処理損失を低減するための送信波形諸元を生成する、
    ことを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
  4. 前記送信波形制御器は、
    所定の周波数列と、前記所定の周波数列とは異なる周波数列とを、所定の間隔で交互に並び替えた送信周波数列を生成し、
    パルス繰返し周期を変えることなく、前記目標相対速度に対するクラッタ抑圧処理損失を低減するための送信波形諸元を生成し、
    前記目標相対速度情報取得手段は、目標相対速度計測処理器を含み、前記MTI処理器でクラッタ抑圧処理された信号の複素乗算結果から、2次元フーリエ変換を用いて前記目標相対速度を計測し、
    計測結果となる前記目標相対速度を前記送信波形制御器および前記相対速度補正処理器に入力する、
    ことを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
  5. 前記送信波形制御器は、
    所定の周波数列と、前記所定の周波数列とは異なる周波数列とを、所定の間隔で交互に並び替えた送信周波数列を生成し、
    パルス繰返し周期を変えることなく、前記目標相対速度に対するクラッタ抑圧処理損失を低減し、
    所望のクラッタ抑圧性能を満足するための送信波形諸元を生成する、
    ことを特徴とする請求項4に記載のレーダ装置。
  6. 前記送信波形制御器は、
    所定の周波数列と、前記所定の周波数列とは異なる周波数列とを、所定の間隔で交互に並び替えた送信周波数列を生成し、
    前記目標相対速度に対するクラッタ抑圧処理損失を低減し、所望の目標距離計測結果の出力レートと、最大観測距離で決定されるパルス繰返し周期と、所望のクラッタ抑圧性能とを満足するように、前記送信波形諸元を生成する、
    ことを特徴とする請求項5に記載のレーダ装置。
  7. 前記目標相対速度計測処理器で計測された目標相対速度と、前記目標検出処理器で計測された目標距離とを入力情報として、追尾フィルタ処理を行う追尾フィルタ処理器を備え、
    前記追尾フィルタ処理器は、前記目標相対速度および前記目標距離から推定された推定目標相対速度を、前記送信波形制御器および前記相対速度補正処理器に入力する、
    ことを特徴とする請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載のレーダ装置。
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JP2016050789A (ja) * 2014-08-29 2016-04-11 古野電気株式会社 クラッタ抑圧装置及びそれを備えたレーダ装置
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JPWO2018220825A1 (ja) * 2017-06-02 2019-11-07 三菱電機株式会社 レーダ装置

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