JP2012096981A - 抗ウイルス性塗材組成物原料、抗ウイルス性塗材組成物及びその製造方法 - Google Patents

抗ウイルス性塗材組成物原料、抗ウイルス性塗材組成物及びその製造方法 Download PDF

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幸雄 伊奈
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Abstract

【課題】炭酸化が進行しても、塗工後も長期にわたって抗ウイルス性が維持されると共に、壁材として具備すべき下地との付着強度及び耐クラック性に優れ、かつ、VOC(揮発性有機化合物)を含まずシックハウス症候群への配慮がなされた、抗ウイルス性塗材組成物、その原料及び製造方法を提供すること。
【解決手段】水酸化カルシウムと、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムの少なくともいずれかと、漆喰用増粘材と、漆喰用亀裂防止材とを含有し、かつ、前記水酸化マグネシウム及び前記水酸化マグネシウムの含有量合計が、酸化マグネシウムで換算した乾燥固形分として、3.0質量%以上15%未満とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、抗ウイルス性塗材組成物原料、抗ウイルス性塗材組成物及びその製造方法に関し、特に炭酸化が進行しても、抗ウイルス性を損なうことなく、壁材として具備すべき下地との付着強度、耐クラック性に優れ、VOC(揮発性有機化合物)を含まず、シックハウス症候群への配慮がなされた、抗ウイルス性塗材組成物原料、抗ウイルス性塗材組成物及びその製造方法に関する。
近年の住環境において、建材には、省力化・省コストの追求により合板や壁紙、樹脂系塗料が多く使われている。その結果、これらに含まれているホルムアルデヒドをはじめとする揮発性有機溶剤が室内に揮散して、シックハウス症候群を引き起こす要因となっている。このような問題を解決する手段として、VOC(揮発性有機化合物)を含まず、シックハウス症候群に配慮した自然素材の建材、無機材料で構成される建材が見直されるようになった。
無機材料で構成される建材のうち、一般に普及しているものとしては、漆喰及びドロマイトプラスターが挙げられる。漆喰は、水酸化カルシウムの工業製品である消石灰を主成分として、更に海藻糊などの増粘材と植物繊維などの亀裂防止材とを混合した後、水を加えて混練することで塗材として用いられる。
また、ドロマイトプラスターは、ドロマイト鉱石を焼成し、水和して得られる焼成ドロマイト水和物であり、水を加えて混練することで塗材として用いられる。建材材料としてのドロマイトプラスターは、JIS A 6903において、「苦灰石その他マグネシア(MgO)を含有するものを焼いて酸化カルシウム(CaO)とマグネシア(MgO)とにした後、それに水を注ぎ、水酸化カルシウム[Ca(OH)]と水酸化マグネシウム[Mg(OH)]となるまで十分に消化したものをボールミルその他で粉砕して、エアセパレーターなどで粉末を調整したものである」とされ、更に、上塗用として、カルシウムを酸化カルシウム(CaO)換算で42%以上、マグネシウムを酸化マグネシウム(MgO)換算で20%以上、下塗用として、カルシウムを酸化カルシウム(CaO)換算で37%以上、マグネシウムを酸化マグネシウム(MgO)換算で15%以上含んでいることが規定されている。
なお、ドロマイトプラスターは上述のとおり、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムを主成分として含有するものであるが、一般的な製造工程においては酸化マグネシウムは完全には消化(水和)されないため、通常、酸化マグネシウムも含有する。また、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムとの比率は、製造条件によって左右されるため一定ではない。
これらの漆喰及びドロマイトプラスターは日本に古来よりある左官材料で、使用に際し、上述のとおり水を加えて混練されたものが塗材として用いられるものであり、熟練した左官により、コテとコテ板を用いて壁、天井などに塗り付ける建築用仕上塗材である。
漆喰及びドロマイトプラスターは、平滑仕上げ、立体模様仕上げ、等の施工方法によって独特の重厚感と高級感が得られ、多様な意匠の表現が可能であることに加えて、シックハウス症候群の原因物質とされるVOC(揮発性有機化合物)を含まず、更に、ノドの痛みやアレルギー症状に影響を及ぼすといわれているホルムアルデヒドに対する吸着分解機能といった空気浄化性、調湿性、防カビ性等の環境浄化機能を有することから、「環境共生住宅」に適した建材と位置付けられている。
一方、近年では、鳥インフルエンザや新型インフルエンザなどの発生・流行が引き金となり、病原性ウイルスの感染によって引き起こされる感染症は、現在でも依然として、人類にとっての脅威であることが再認識されてきている。
例えば、インフルエンザの大流行は、毎年マスメディアを介して報道されているとおりである。季節性のヒトインフルエンザウイルスについては、感染・重症化を予防することのできるワクチンが普及しているとはいえ、予め接種したワクチンと流行しているウイルスの型が異なれば、ワクチンの効果は期待できない。
また、鳥インフルエンザウイルスは、一般的にヒトに直接感染する能力は低いとされるが、ヒトインフルエンザウイルスと混じり合い、ヒトの間で感染する能力を持つウイルスが生まれる懸念が指摘されている。さらに、2009年には、A型のH1N1亜型に属するウイルスを起源とされる新型のインフルエンザウイルスが、豚を経由してヒトの間で感染し、流行した。
新型のインフルエンザウイルスは、いつ出現するのか予測が困難であり、人間界にとっては未知のウイルスである。ほとんどのヒトは、新型インフルエンザウイルスの免疫を持っていないため、容易にヒトからヒトへ感染して広がり、急速な世界的大流行(パンデミック)を起こす危険性がある。
そのため、このような病原性ウイルスによる感染リスクを低減させたり、流行を未然に防ごうとの衛生観念が高まるとともに、病院、医療施設に限らず、公共施設や一般住宅においてもウイルス対策が講じられるようになってきており、抗菌性、抗ウイルス性を謳う生活雑貨品も広く普及するようになった。
例えば、抗ウイルス性金属成分を含有する無機酸化物微粒子からなる抗ウイルス剤(例えば、下記特許文献1参照)や、ドロマイト鉱石由来抗ウイルス剤をプラスチック、繊維、等へ添加し、マスク、フィルター、塗料、等に適用した例が挙げられる(例えば、下記特許文献2及び3参照)。
特開2003−221304号公報 国際公開第2005/013695号パンフレット 特開2007−106876号公報 特許第4169329号公報
宮澤清著「ドロマイトとその利用」(昭和55年6月25日版)P.3 表1.3
このような背景から、建材分野においても抗ウイルス性を有する建材が求められるようになり、低い環境負荷と安全性の両立が必要とされる「環境共生住宅」用の建材としても抗ウイルス性を備えたものの開発が期待されている。
漆喰及びドロマイトプラスターは、上述のとおり、「環境共生住宅」に適する建材であると共に、それらの主成分である水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムは、上記特許文献2において抗ウイルス性を有することが示唆されていることから、「環境共生住宅」に適すると共に抗ウイルス性を有する塗材としての有用性が期待される。
しかしながら、漆喰は、塗り付けた後に、経時的に空気中の炭酸ガスを取り込むことによって硬化するものであり、これは、主成分である水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素と反応することで炭酸カルシウムとなる反応に基づく。すなわち、塗り付け前に漆喰に含まれている水酸化カルシウムは、炭酸化反応によって炭酸カルシウムに変化してしまう。従って、漆喰は、時間が経って硬化していくにつれ水酸化カルシウムに由来する抗ウイルス性が減少してしまうため、長期にわたる抗ウイルス作用は期待できない。
一方、ドロマイトプラスターは、塗り付けた後、水酸化カルシウムについては漆喰と同様、経時的に炭酸化してしまうが、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムは、いずれも炭酸ガスによってほとんど炭酸化しないため、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムに基づく抗ウイルス性が長期にわたって維持されることが期待される。
しかし、ドロマイトプラスターは、壁材として必要な下地との付着強度が小さく、また、乾燥による収縮が激しいのでひび割れを生じやすい(耐クラック性に乏しい)ことにより扱い難さが課題として挙げられており、塗材としてより扱い易い材料が求められている。
本発明者は、上述のような知見を基に、より機能性の高い環境共生住宅用塗材を開発すべく鋭意検討を重ねた結果、漆喰原料に水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムの少なくとも1種の粉末を混ぜてから水で混練することで、塗工後も長期にわたって抗ウイルス性が維持される共に、壁材として具備すべき下地との付着強度、耐クラック性に優れた塗材が得られることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
すなわち本発明は、炭酸化が進行しても、塗工後も長期にわたって抗ウイルス性が維持されると共に、壁材として具備すべき下地との付着強度及び耐クラック性に優れ、かつ、VOC(揮発性有機化合物)を含まず、シックハウス症候群への配慮がなされた、抗ウイルス性塗材組成物、その原料及び製造方法の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の塗材組成物は、水酸化カルシウムと、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムから選択される少なくとも1種と、漆喰用増粘材と、漆喰用亀裂防止材とを含有し、かつ、前記水酸化マグネシウム及び前記酸化マグネシウムの含有量合計が、酸化マグネシウムで換算した乾燥固形分として、3.0質量%以上15質量%未満であることを特徴とする。
本発明の塗材組成物によれば、VOCフリーで、塗工後も長期にわたって抗ウイルス性が維持される共に、壁材として具備すべき下地との付着強度、耐クラック性に優れた塗材組成物となる。
なお、本発明の塗材組成物としては、既に水と混練されたペースト状の形態としても良く、もしくは、塗工直前に水と混練して用いる、いわゆる即調合漆喰と同様な粉末状の形態としても良い。
ペースト状塗材組成物の場合は、塗工の際の調合操作が不要となるため、すぐに塗り付け作業を行うことが可能となる。また、粉末状塗材組成物の場合は、塗工前の加水混練操作が必要となるが、ペースト状のものと比べて重量が軽いため運搬性に優れる。
また、本発明の塗材組成物においては、前記水酸化カルシウムは水に分散し得る程度の粒子であれば別段限定されるものではない。例えば、粉末状として得られる水酸化カルシウムとしては、工業的に生産されている消石灰である、工業用石灰、工業用特号消石灰、工業用1号消石灰、工業用2号消石灰、左官用消石灰等を、1種もしくは適宜混合して使用することができる。中でも、JIS A 6902 左官用消石灰を用いると、よりコテ塗り作業性に優れた塗材組成物が得られるため好ましい。
また、上記粉末状の消石灰を直接用いる以外にも、最大粒子径を0.3mm以下に調整した粉末状生石灰100質量%に対し、水を外比で100〜200質量%添加し、過剰量の水で生石灰を水和させて(「湿式消化」と呼ばれる)得られるペースト状の消石灰も使用できる。
このような湿式消化によって得られたペースト状消石灰は、生石灰を乾式消化設備により水和反応させた(「乾式消化」と呼ばれる)後、分級操作によって得られる上記粉末状消石灰を用いる場合と比べ、より粒度分布が狭く、粒径が整ったものとして得られ、コテ塗り作業性が大幅に向上するため、より好適に使用できる。
なお、本発明の塗材組成物においては、前記水酸化カルシウムとして、石灰石を焼成して生石灰を得た後、該生石灰を水和させることで得られる水酸化カルシウムを用いる場合は、石灰石を900℃以上1,300℃以下の範囲で焼成して得たものを用いることが好ましい。
石灰石の焼成温度が、900℃より低い場合、石灰石を形成する炭酸塩の脱炭酸反応が進み難く、1,300℃より高い場合、脱炭酸反応によって生成する酸化カルシウムが結晶成長(ガラス化)し、安定相を形成してしまうため、水和反応性が著しく低下し、焼成物に水を加えても水和物が生成される反応が進み難い。
また、本発明の塗材組成物においては、前記水酸化マグネシウム及び前記酸化マグネシウムの少なくとも1種は、BET比表面積(1点法)が10m/g以上であり、且つレーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した平均粒子径が10μm以下であることが好ましい。
前記水酸化マグネシウム及び前記酸化マグネシウムの少なくとも1種のBET比表面積(1点法)が10m/gよりも大きい場合、ウイルスとの接触効率が高まり、抗ウイルス性が高まる。また、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した平均粒子径が10μmより小さい場合、水に均一に分散させることが容易となり、安定した抗ウイルス性をより容易に発現させやすくなる。
また、焼成ドロマイト水和物は、これらBET比表面積や平均粒子径の物性を満たした水酸化マグネシウムないし酸化マグネシウムを含有しているため、本発明の塗材組成物における、前記水酸化マグネシウム及び前記酸化マグネシウムの少なくとも1種を含有するものとして、好適である。
なお、焼成ドロマイト水和物は、ドロマイト(鉱物としてのドロマイト:Ca・Mg(CO)を焼成した後水和することで得られ、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムを主成分とし、水和の条件によって、マグネシウム化合物として水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムを含有する場合と、水酸化マグネシウムのみを含有する(酸化マグネシウムを実質的に含まない)場合とに分かれるが、本発明においては特にことわりを入れない限り、両者を区別しない。
水和条件と焼成ドロマイト水和物に含まれるマグネシウム化合物の関係は、以下のとおりである。すなわち、ドロマイトを焼成して得られる焼成ドロマイト(CaO・MgO)に対し、充分量の水や反応時間といった条件を整えることによって焼成ドロマイトに含まれる酸化マグネシウムを完全に水和させた場合は後者の水酸化マグネシウムのみを含むものとなり、水和する際に加える水分量を減じたりすることにより焼成ドロマイトに含まれる酸化マグネシウムの一部を水和した場合は、前者の水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムを含むものとなる。なお、酸化マグネシウムと共に焼成ドロマイトに含まれる酸化カルシウムは、その水和速度が酸化マグネシウムの水和速度よりも極めて早いため、焼成ドロマイトを水和する際には、酸化マグネシウムよりも酸化カルシウムの方が先に水和される。
ドロマイト鉱物を含有するドロマイト鉱石は、マグネシウムのMgO換算含有量によって、ドロマイト質石灰岩(MgO換算で2.1〜10.8%)、方解石質ドロマイト(MgO換算で10.8〜19.5%)、苦灰岩(狭義の意味での「ドロマイト(鉱石)」:MgO換算で19.5〜21.6%)に分類されるが、いずれのドロマイト鉱石を原料としても本発明において好適に使用できる焼成ドロマイト水和物を得ることができる。中でも、工業的に安定的に入手可能であることから、マグネシウムをMgO換算で10.8〜21.6質量%含む方解石質ドロマイト、および苦灰岩を原料とすることが好ましい。
なお、鉱物学上の分類におけるドロマイト鉱石としては、マグネシウム含有量がMgO換算で2.1質量%より少ないものは存在せず、また、マグネシウム含有量がMgO換算で21.6質量%より多いものは存在しない(上記非特許文献1参照)。
また、ドロマイト鉱石を焼成する際の温度は、ドロマイト鉱石を形成する炭酸塩(ドロマイト(Ca・Mg(CO)及び炭酸カルシウム(CaCO))の脱炭酸反応が進行する温度であれば、別段限定されないが、800℃以上1,300℃以下の範囲で焼成することが好ましい。
ドロマイト鉱石の焼成温度が800℃より低い場合、ドロマイト鉱石を形成する炭酸塩の脱炭酸反応が進み難いものとなる。また、ドロマイト鉱石の焼成温度が1,300℃より高い場合、脱炭酸反応によって生成する酸化カルシウム及び酸化マグネシウムが結晶成長(ガラス化)し、安定相を形成してしまうため、水和反応性が著しく低下し、焼成物に水を加えても水和物が生成される反応が進み難いものとなる。
また、本発明における塗材組成物における前記漆喰用増粘材としては、天然海藻を溶解してなる糊、天然海藻を乾燥してなる粉末海藻糊、水溶性粉末樹脂、カラギーナンの中から選ばれた1種もしくは2種以上を含有させることが好ましく、下地との付着強度の増加、コテ塗り作業性の向上効果を期待できる。
工業的に流通している天然海藻を溶解してなる糊としては、つのまた、ふのり、ぎんなんそう、等の天然海藻を溶解してなるものが挙げられ、好適に使用できる。また、工業的に流通している天然海藻を乾燥してなる粉末海藻糊としては、つのまた、ふのり、ぎんなんそう、などの天然海藻を乾燥してなる海藻粉末が挙げられ、好適に使用できる。また、工業的に流通している水溶性粉末樹脂としては、メチルセロースやエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、等が挙げられ、好適に使用できる。
また、カラギーナンとしては、上記特許文献4に記載された六員環ガラクトース骨格に硫酸エステル基(−OSO )ならびに水酸基(−OH)が、エカトリアル配座したカラギーナンであるラムダ(λ)カラギーナンが、より好適に使用できる。また、上記以外の糊として、デンプン、稲藁発酵糊も使用してもよい。
また、本発明における塗材組成物における漆喰用亀裂防止材としては、植物繊維、繊維状の無機化合物の中から選ばれた1種又は2種以上を含有するものを用いることができ、工業的に流通している植物繊維としては、麻すさ、ジュートすさ、マニラ麻、和紙、しゅろ、パルプ、ケナフ、等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種以上を使用できる。また、繊維状の無機化合物としては、特許第4335568号に記載された平均繊維径10〜70μm、且つ平均繊維長140〜500μmの繊維状となっているウォラストナイトが挙げられ、好適に使用できる。
また、上記目的を達成するため、本発明の塗材組成物原料は、水酸化カルシウムの粒子と、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムの少なくとも1種の粒子とを含有し、かつ、前記水酸化マグネシウム及び前記酸化マグネシウムの含有量合計が、酸化マグネシウムで換算した乾燥固形分として、3.0質量%以上15質量%未満であることを特徴とする。
本発明の塗材組成物原料によれば、従来から知られている漆喰用混和材(増粘材及び亀裂防止材)と混合することで、VOCフリーで、塗工後も長期にわたって抗ウイルス性が維持される共に、壁材として具備すべき下地との付着強度、耐クラック性に優れた塗材組成物を、容易に得ることができる。
なお、本発明の塗材組成物原料としては、粉末状の形態としても、水が加えられて混練されたペースト状の形態としても良く、混和剤としてアクリル系高分子エマルジョン、酢酸ビニル高分子エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル系高分子エマルジョン、SBR系高分子エマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、等の中から選ばれる1種以上を添加してもよい。また、骨材として、川砂、山砂、珪砂、寒水砂、軽量骨材、合成繊維(ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、炭素繊維など)、等の中から選ばれる1種以上を添加してもよい。
また、本発明の塗材組成物原料においては、前記水酸化カルシウムは水に分散し得る程度の粒子であれば別段限定されるものではない。例えば、粉末状として得られる水酸化カルシウムとしては、工業的に生産されている消石灰である、工業用石灰、工業用特号消石灰、工業用1号消石灰、工業用2号消石灰、左官用消石灰等を、1種もしくは適宜混合して使用することができる。中でも、JIS A 6902 左官用消石灰を用いると、よりコテ塗り作業性に優れた塗材組成物が得られるため好ましい。
また、上記粉末状の消石灰を直接用いる以外にも、最大粒子径を0.3mm以下に調整した粉末状生石灰を湿式消化することで得られるペースト状の消石灰も使用できる。
このような湿式消化によって得られたペースト状消石灰は、生石灰を乾式消化した後、分級操作によって得られる上記粉末状消石灰を用いる場合と比べ、より粒度分布が狭く、粒径が整ったものとなるため、得られる塗材組成物のコテ塗り作業性が大幅に向上するため、より好ましい。
なお、本発明の塗材組成物原料において、前記水酸化カルシウムとして、石灰石を焼成して生石灰を得た後、該生石灰を水和させることで得られる水酸化カルシウムを用いる場合は、本発明の塗材組成物における水酸化カルシウムについて述べたのと同様の理由により、石灰石を900〜1,300℃の範囲で焼成して得たものを用いることが好ましい。
また、本発明の塗材組成物原料においては、本発明の塗材組成物において述べたのと同様の理由により、前記水酸化マグネシウム及び前記酸化マグネシウムの少なくとも1種は、BET比表面積(1点法)が10m/g以上であり、且つレーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した平均粒子径が10μm以下であることが好ましい。また、前記水酸化マグネシウム及び前記酸化マグネシウムの少なくとも1種を含有するものとしては、焼成ドロマイト水和物が好適である。
また、焼成ドロマイト水和物の原料であるドロマイト鉱石としては、本発明の塗材組成物において述べたのと同様の理由により、ドロマイト質石灰岩、方解石質ドロマイト、苦灰岩のいずれをも使用することができるが、焼成の際には温度を800℃以上1,300℃以下の範囲とすることが好ましい。
また、本発明の塗材組成物の製造方法は、水酸化カルシウムと、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムの少なくとも1種と、漆喰用増粘材と、漆喰用亀裂防止材と、水とを混合することを特徴とする。
本発明の塗材組成物の製造方法によれば、VOCフリーで、塗工後も長期にわたって抗ウイルス性が維持される共に、壁材として具備すべき下地との付着強度、耐クラック性に優れた塗材組成物を、容易に得ることができる。
また、本発明の塗材組成物の製造方法においては、前記水酸化カルシウムは水に分散し得る程度の粒子であれば別段限定されるものではない。例えば、粉末状として得られる水酸化カルシウムとしては、工業的に生産されている消石灰である、工業用石灰、工業用特号消石灰、工業用1号消石灰、工業用2号消石灰、左官用消石灰等を、1種もしくは適宜混合して使用することができる。中でも、JIS A 6902 左官用消石灰を用いると、よりコテ塗り作業性に優れた塗材組成物が得られるため好ましい。
また、上記粉末状の消石灰を直接用いる以外にも、最大粒子径を0.3mm以下に調整した粉末状生石灰を湿式消化することで得られるペースト状の消石灰も使用できる。
このような湿式消化によって得られたペースト状消石灰は、生石灰を乾式消化した後、分級操作によって得られる上記粉末状消石灰を用いる場合と比べ、より粒度分布が狭く、粒径が整ったものとして得られ、得られる塗材組成物のコテ塗り作業性が大幅に向上するため、より好ましい。
なお、湿式消化の工程においては、粉末状生石灰100質量%に対し、水を外比で100〜200質量%添加することで湿式消化すると、より粒径の整った消石灰粒子が得られるため、より好ましい。
また、本発明の塗材組成物の製造方法においては、本発明の塗材組成物において述べたのと同様の理由により、前記水酸化マグネシウム及び前記酸化マグネシウムの少なくとも1種としては、BET比表面積(1点法)が10m/g以上であり、且つレーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した平均粒子径が10μm以下であるものを用いることが好ましい。また、前記水酸化マグネシウム及び前記酸化マグネシウムの少なくとも1種を含有するものとしては、焼成ドロマイト水和物を好適に使用できる。また、焼成ドロマイト水和物の原料であるドロマイト鉱石としては、ドロマイト質石灰岩、方解石質ドロマイト、苦灰岩のいずれをも使用することができるが、焼成の際には温度を800℃以上1,300℃以下の範囲とすることが好ましい。
また、本発明の塗材組成物の製造方法においては、本発明の塗材組成物において述べたのと同様の理由により、石灰石を900℃以上1,300℃以下の温度で焼成して生石灰を得たのち、該生石灰を水和させることで得られる水酸化カルシウム100質量%に対して、ドロマイト鉱石を800℃以上1,300℃以下の温度で焼成した後水和して得られる焼成ドロマイト水和物を、外比で10質量%以上40質量%以下の割合で混合することが好ましい。
また、本発明における塗材組成物の製造方法においては、前記漆喰用増粘材として、天然海藻を溶解してなる糊、天然海藻を乾燥してなる粉末海藻糊、水溶性粉末樹脂、カラギーナンの中から選ばれた1種もしくは2種以上を含有させることが好ましく、得られる塗材組成物の下地との付着強度の増加や、コテ塗り作業性の向上が期待できる。
工業的に流通している天然海藻を溶解してなる糊としては、つのまた、ふのり、ぎんなんそう、等の天然海藻を溶解してなるものが挙げられ、好適に使用できる。また、工業的に流通している天然海藻を乾燥してなる粉末海藻糊としては、つのまた、ふのり、ぎんなんそう、などの天然海藻を乾燥してなる海藻粉末が挙げられ、好適に使用できる。また、工業的に流通している水溶性粉末樹脂としては、メチルセロースやエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、等が挙げられ、好適に使用できる。
また、カラギーナンとしては、上記特許文献4に記載された六員環ガラクトース骨格に硫酸エステル基(−OSO )ならびに水酸基(−OH)が、エカトリアル配座したカラギーナンであるラムダ(λ)カラギーナンが、より好適に使用できる。また、上記以外の糊として、デンプン、稲藁発酵糊も使用してもよい。
また、本発明における塗材組成物の製造方法においては、漆喰用亀裂防止材として、植物繊維、繊維状の無機化合物の中から選ばれた1種又は2種以上を含有するものを用いることができ、工業的に流通している植物繊維としては、麻すさ、ジュートすさ、マニラ麻、和紙、しゅろ、パルプ、ケナフ、等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種以上を使用できる。また、繊維状の無機化合物としては、特許第4335568号に記載された平均繊維径10〜70μm、且つ平均繊維長140〜500μmの繊維状となっているウォラストナイトが挙げられ、好適に使用できる。
以下、本発明を実施するための形態を、実施例及び比較例を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための、抗ウイルス性塗材組成物原料、抗ウイルス性塗材組成物及びその製造方法を示すものであって、本発明をこの実施例に限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
[マグネシウム化合物]
マグネシウム化合物源としては、実施例1〜4及び比較例2〜5においては焼成ドロマイト水和物を、実施例5においては酸化マグネシウム粉末を、実施例6においては水酸化マグネシウム粉末をそれぞれ用いた。
<焼成ドロマイト水和物>
焼成ドロマイト水和物は、以下のように調製した。
すなわち、国内で採取したマグネシウム含有量がMgO換算で19.3%であるドロマイト鉱石を、1250℃で焼成し、乾式消化により水和物とすることで、実施例1〜3及び比較例2、3、5で使用する焼成ドロマイト水和物(「焼成ドロマイト水和物A」)を得た。焼成ドロマイト水和物Aの化学分析結果は、酸化物換算でCaO:47.19%、MgO:23.41%であり、BET比表面積(1点法)は20.3m/gであり、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した平均粒子径は0.5μm以下であった。
また、上記ドロマイト鉱石を、1350℃で焼成し、乾式消化により水和物とすることで、比較例4で使用する焼成ドロマイト水和物(「焼成ドロマイト水和物B」)を得た。焼成ドロマイト水和物Bの化学分析結果は、酸化物換算でCaO:47.49%、MgO:23.48%であり、BET比表面積(1点法)は20.3m/gであり、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した平均粒子径は0.5μm以下であった。
また、実施例4では、焼成ドロマイト水和物として、工業的に流通している「バリエールBR−p」(登録商標 株式会社モチガセ)を用いた。なお、上記ドロマイト鉱石を750℃で焼成したものについて、粉末X線回折測定を行った結果、酸化カルシウム、及び酸化マグネシウムの回折ピークは検出されず、本発明で用いる焼成ドロマイト水和物の原料としては適さないものであることが分かった。これは脱炭酸反応が生じるのに十分な条件(温度、時間など)とならなかったものと推測される。
<酸化マグネシウム粉末>
MgOで86.78%、BET比表面積(1点法)が34.0m/gであり、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した平均粒子径が0.5μm以下である工業用酸化マグネシウムを、実施例5におけるマグネシウム化合物源として用いた。
<水酸化マグネシウム粉末>
MgOで66.84%、BET比表面積(1点法)が46.0m/gであり、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した平均粒子径が0.5μm以下である試薬水酸化マグネシウムを、実施例6におけるマグネシウム化合物源として用いた。
[水酸化カルシウム]
各実施例及び比較例で使用する水酸化カルシウムとしては、生石灰を消化することで得られる消石灰を使用することとし、それぞれ以下の方法で調製した。
<粉末状消石灰>
実施例1、2及び比較例1、4、6で使用する消石灰としては、JIS A 6902に合格する左官用消石灰を用意した。なお、この左官用消石灰は粉末状のものであり、化学分析結果は、酸化物換算でCaO:71.61%、MgO:1.41%であった。
<ペースト状消石灰>
石灰石を1,280℃で焼成して得られた生石灰を粉砕し、最大粒子径を0.3mm以下に調整した粉末状生石灰100質量%に対し、水を外比で180質量%添加する湿式消化により、実施例3及び4で用いるペースト状消石灰(「ペースト状消石灰A」)を得た。ペースト状消石灰Aの固形分は50%(内比)、化学分析結果は酸化物換算でCaO:72.12%、MgO:2.00%であった。
また、石灰石を1,350℃で焼成して得られた生石灰を粉砕し、最大粒子径を0.3mm以下に調整した粉末状生石灰100質量%に対し、水を外比で180質量%添加する湿式消化により、比較例5で用いるペースト状消石灰(「ペースト状消石灰B」)を得た。ペースト状消石灰Bの固形分は50%(内比)、化学分析結果は酸化物換算でCaO:72.51%、MgO:2.15%であった。
なお、上記石灰石を850℃で焼成したものについて、粉末X線回折測定を行った結果、石灰石の主成分である炭酸カルシウムが検出され、且つ酸化カルシウムは検出されず、本発明で用いるペースト状消石灰の原料として適さないものであることが分かった。これは脱炭酸反応が生じるのに十分な条件(温度、時間など)とならなかったものと推測される。
各実施例及び比較例における焼成ドロマイト水和物及び消石灰の混練物の調製は、JIS R 5201に規定するビカー針装置を用いて一定の標準軟度に調整したものを使用し、標準軟度の混水量を標準混水量(%)とした。
焼成ドロマイト水和物A40質量部、生石灰を消化することで得られる消石灰として、左官用消石灰100質量部、麻すさ3質量部、ウォラストナイト20質量部、ラムダ(λ)カラギーナン0.6質量部を均一に混合し、水で練って、実施例1にかかる塗材組成物である混練物を得た。標準混水量は89.0質量%であった。なお、混練物の乾燥固形分中のマグネシウムはMgO換算で6.73質量%であった。
焼成ドロマイト水和物A20質量部、生石灰を消化することで得られる消石灰として、左官用消石灰100質量部、麻すさ3質量部、ウォラストナイト20質量部、ラムダ(λ)カラギーナン0.6質量部を均一混合し、水で練って、実施例2にかかる塗材組成物である混練物を得た。標準混水量は91.0質量%であった。なお、混練物の乾燥固形分中のマグネシウムはMgO換算で質量4.35%であった。
焼成ドロマイト水和物A10質量部、生石灰を消化することで得られる消石灰として、ペースト状消石灰A200(消石灰固形分100質量部)質量部、麻すさ3質量部、ウォラストナイト20質量部、ラムダ(λ)カラギーナン0.6質量部を均一混合し、実施例3にかかる塗材組成物である混練物を得た。標準混水量は88.5質量%であった。なお、混練物の乾燥固形分中のマグネシウムはMgO換算で3.34質量%であった。
バリエールBR−p10質量部(固形換算)、生石灰を消化することで得られる消石灰として、ペースト状消石灰A200(消石灰固形分100質量部)質量部、麻すさ3質量部、ウォラストナイト20質量部、ラムダ(λ)カラギーナン0.6質量部を均一混合し、実施例4にかかる塗材組成物である混練物を得た。標準混水量は118.0質量%であった。なお、混練物の乾燥固形分中のマグネシウムはMgO換算で3.34質量%であった。
工業用酸化マグネシウム3質量部、生石灰を消化することで得られる消石灰として、ペースト状消石灰A200(消石灰固形分100質量部)質量部、麻すさ3質量部、ウォラストナイト20質量部、ラムダ(λ)カラギーナン0.6質量部を均一混合し、実施例5にかかる塗材組成物である混練物を得た。標準混水量は92.5質量%であった。なお、混練物の乾燥固形分中のマグネシウムはMgO換算で3.26質量%であった。
試薬水酸化マグネシウム22質量部、生石灰を消化することで得られる消石灰として、ペースト状消石灰A200(消石灰固形分100質量部)、麻すさ3質量部、ウォラストナイト20質量部、ラムダ(λ)カラギーナン0.6質量部を均一混合し、実施例6にかかる塗材組成物である混練物を得た。標準混水量は93.5質量%であった。なお、混練物の乾燥固形分中のマグネシウムはMgO換算で14.85質量%であった。
比較例1
生石灰を消化することで得られる消石灰として、左官用消石灰100質量部、麻すさ3質量部、ウォラストナイト20質量部、ラムダ(λ)カラギーナン0.6質量部を均一混合し、水で練って、比較例1にかかる塗材組成物である混練物を得た。標準混水量は92.4質量%であり、混練物の乾燥固形分中のマグネシウムはMgO換算で1.18質量%であった。なお、比較例1にかかる塗材組成物は従来の漆喰に相当する。
比較例2
焼成ドロマイト水和物A100質量部を水で練って、比較例2にかかる塗材組成物である混練物を得た。標準混水量は90.4質量%であり、混練物の乾燥固形分中のマグネシウムはMgO換算で23.41質量%であった。
比較例3
焼成ドロマイト水和物A100質量部、麻すさ3質量部、ウォラストナイト20質量部、ラムダ(λ)カラギーナン0.6質量部を均一混合し、比較例3にかかる塗材組成物である混練物を得た。標準混水量は92.0質量%であり、混練物の乾燥固形分中のマグネシウムはMgO換算で19.51質量%であった。
比較例4
焼成ドロマイト水和物B40質量部、生石灰を消化することで得られる消石灰として、左官用消石灰100質量部、麻すさ3質量部、ウォラストナイト20質量部、ラムダ(λ)カラギーナン0.6質量部を均一に混合し、水で練って、比較例4にかかる塗材組成物である混練物を得た。標準混水量は91.2%であり、混練物の乾燥固形分中のマグネシウムはMgO換算で6.75質量%であった。
比較例5
焼成ドロマイト水和物A10質量部、生石灰を消化することで得られる消石灰として、ペースト状消石灰B200(消石灰固形分100質量部)質量部、麻すさ3質量部、ウォラストナイト20質量部、ラムダ(λ)カラギーナン0.6質量部を均一混合し、比較例5にかかる塗材組成物である混練物を得た。標準混水量は89.3%であり、混練物の乾燥固形分中のマグネシウムはMgO換算で3.45質量%であった。
[抗ウイルス性評価1]
実施例1〜6及び比較例1、2については、下記のようにして鳥インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス性評価を行った。
抗ウイルス性評価に供するための試料調製は、以下の方法で行なった。
まず、各実施例及び比較例にかかる塗材組成物としての混練物を調製後、減圧乾燥により、乾燥粉体を得た。これを炭酸化前試料とし、抗ウイルス性評価及びpH測定を行った。
次に、上記乾燥粉体をデシケータ内に静置し、定量用標準炭酸ガス(99.9%)を流量1mL/secとし、デシケータ内の炭酸ガス圧が常におおむね1気圧になるように調整し、炭酸ガスを14日間フローし、炭酸化後試料とした。炭酸化後試料について粉末X線回折測定を行い、消石灰に起因する18°付近のピークの消失を確認することにより炭酸化が完了したと判定し、抗ウイルス性評価及びpH測定を行った。
各実施例及び比較例における抗ウイルス性評価は、以下の方法で行なった。
すなわち、炭酸化前試料及び炭酸化後試料を2mLプラスチックチューブに6μgずつ加え、その後、鳥インフルエンザH5N3亜型のウイルス液を994μLずつ加え、ボルテックスでよく攪拌した。37℃、18時間後に90μLずつ回収し、PBS(pH7.2リン酸緩衝食塩液)により10倍希釈を繰り返し、各希釈段の0.2mLを10日齢発育鶏卵に接種した。3日間培養後、赤血球凝集反応によりウイルス増殖の有無を確認し、ウイルス力価(log EID50/0.2mL:50%組織培養感染量)を算出した。
これは、インフルエンザウイルスが鶏赤血球凝集能を有しており、各接種発育鶏卵の鶏赤血球凝集能の有無を調べることによって抗ウイルス性を評価することができる。ウイルス力価は、Reed and Muenchの方法に従って算出した(参照文献:Reed,L,J,.Muench,H.:A simple method of estimating fifty per cent endpoints.Am.J.Hyg.27,493−497(1938))。
また、各実施例及び比較例1〜2については、下記のようにして付着強度、耐クラック性及びコテ塗り作業性を評価した。
[付着強度の評価]
付着強度の評価は、以下の方法で行なった。
すなわち、コンクリート板に下地調整材として、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂エマルジョン(村樫石灰工業株式会社製、商品名:フジプライマーF−45、樹脂固形分:45%)の3倍清水希釈液を刷毛で塗布後、十分に乾燥させてから抗ウイルス性組成物を2mm厚で塗った。室内で静置、養生し、28日後、建研式接着力試験機を用いて接着力試験(付着強度試験)を行なった。測定に際し、表面に速乾性エポキシ樹脂で鋼製アタッチメント(接着面積:40mm×40mm)を接着し、電動カッターで鋼製アタッチメント四辺に切り込みを入れ、試験に供した。
[耐クラック性の評価]
各実施例及び比較例における塗材組成物の耐クラック性の評価は、以下の方法で行なった。
すなわち、18cm×18cmの石膏ボードに下地調整材として、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂エマルジョン(村樫石灰工業株式会社製、商品名:フジプライマーF−45、樹脂固形分:45%)の3倍清水希釈液を刷毛で塗布後、十分に乾燥させてから抗ウイルス性組成物を2mm厚で塗り、室内で静置、養生し、7日後に塗材表面を目視観察した。耐クラック性評価基準は3段階(◎:亀裂なし、○:亀裂小さい、△:亀裂大きい)にて評価した。
[コテ塗り作業性の評価]
各実施例及び比較例における塗材組成物のコテ塗り作業性の評価は、コテ塗りによる官能試験で、3段階(◎:良い、○:普通、△:悪い)にて評価した。
各実施例及び比較例にかかる各塗材組成物の配合割合を表1に、抗ウイルス性評価1、付着強度、耐クラック性、コテ塗り作業性の結果を表2に、それぞれ纏めて示した。
Figure 2012096981
Figure 2012096981
表1及び2の結果より以下のことが分かる。
比較例1においては、付着強度、耐クラック性、コテ塗り作業性は優れるが、抗ウイルス性が不充分となっており、炭酸ガスによる炭酸化の進行に伴って抗ウイルス性が失われていっているものと推測される。
また、比較例2においては、炭酸化後においてもウイルス力価は1.0未満であり抗ウイルス性に優れることが確認できるが、付着強度、耐クラック性、コテ塗り作業性に問題がある。
一方、各実施例は、比較例1と同等以上の付着強度と実用上十分な耐クラック性及びコテ塗り作業性を備えながらも、比較例1に対して炭酸化後のウイルス力価が向上しており、壁材としての実用性と長期にわたった抗ウイルス性の維持との両立が実現されている。
このことから、水酸化カルシウムと共にマグネシウム化合物を含有させることで、壁材としての実用性と長期にわたった抗ウイルス性の維持とが両立された塗材組成物が得られることがわかる。なお、実施例5及び6の結果から、本発明におけるマグネシウム化合物としては、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムのどちらかであれば良く、実施例1〜4の結果からそれらが混合されていても良いことがわかる。
これらの結果と各実施例及び比較例にかかる塗材組成物のマグネシウム化合物含有量との関係から、塗材組成物のマグネシウム化合物含有量は、少な過ぎると抗ウイルス性を損ない、多過ぎると付着強度、耐クラック性、コテ塗り作業性が損なわれることがわかる。
マグネシウム化合物含有量としては、酸化マグネシウムで換算した乾燥固形分として3.0質量%以上15.0質量%未満であることが好ましく、3.0質量%以上8.0質量%以下であることがより好ましい。
また、焼成ドロマイト水和物と生石灰を消化することで得られる消石灰とを、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムの供給源とする場合、焼成ドロマイト水和物の含有量が少な過ぎると、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムの含有量が不足するため、長期にわたる抗ウイルス性が得られなくなる虞があり、焼成ドロマイト水和物の含有量が多過ぎると、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムの含有量が過剰となり具備すべき下地との付着強度、耐クラック性が得られない虞がある。
焼成ドロマイト水和物と生石灰を消化することで得られる消石灰との混合比率としては、消石灰100質量%に対して、焼成ドロマイト水和物を外比で10質量%以上40質量%以下とすると、塗材組成物が含有する水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムの量が適量となるため好ましい。
なお、実施例1、2及び5においては、コテ塗り作業性が比較例1よりは劣るものであるが、十分実用上に耐えられるものであった。また、実施例2〜6については、焼成ドロマイト水和物を含まない比較例1よりも付着強度の増進が確認できた。恐らく、水酸化マグネシウムまたは、酸化マグネシウムの硬化反応と水酸化カルシウムの硬化反応との相乗効果であると推測される。
また、比較例3においては、比較例2に対して麻すさ、ウォラストナイト、ラムダ(λ)カラギーナン等の各種混和材を添加することで、付着強度の増進、及び耐クラック性の改善を試みたが、改善効果が認められなかったため、ウイルス力価、pHの測定を行わなかった。
また、実施例1における焼成ドロマイト水和物Aに替えて、焼成ドロマイト水和物Bを用いた比較例4では、混練物を壁に塗り付けた後、1時間経過した段階で、クラックや剥離が生じ、著しく仕上がりを損ねた。これは、ドロマイト鉱石の焼成温度が1,300℃より高い場合、脱炭酸反応によって生成する酸化カルシウム及び酸化マグネシウムが結晶成長(ガラス化)し、安定相を形成してしまうため、水和反応性が著しく低下し、焼成物に水を加えても水和物が生成される反応が進み難いものとなることから、焼成ドロマイト水和物Bでは水和反応が殆ど進行しなかったものと推測される。
また、実施例3におけるペースト状消石灰Aに替えて、ペースト状消石灰Bを用いた比較例5では、混練物を壁に塗り付けた後、1時間経過した段階で、クラックや剥離が生じ、著しく仕上がりを損ねた。これは、石灰石の焼成温度が1,300℃より高い場合、脱炭酸反応によって生成する酸化カルシウムが結晶成長(ガラス化)し、安定相を形成してしまうため、水和反応性が著しく低下し、焼成物に水を加えても水和物が生成される反応が進み難いものとなることから、ペースト状消石灰Bでは水和反応が殆ど進行しなかったものと推測される。
なお、比較例4及び5においては、上述のとおり仕上がりが実用に耐えないものであったため、ウイルス力価、pH、付着強度、耐クラック性及びコテ塗り作業性についていずれも測定を行わなかった。
[抗ウイルス性評価2]
実施例3及び比較例1においては、更に、抗ウイルス性評価2としてネコカリシウイルスに対する抗ウイルス性を評価した。
<ウイルス原液の調製>
ネコカリシウイルスF9株を、ネコ肝臓細胞由来CRFK細胞に接種し、2日間培養した後、培養液を採取し、4℃、3,000rpm、10分遠心分離した上清をウイルス原液とした。
上記ウイルス原液については、感染価測定用細胞としてネコ肝臓細胞由来CRFK細胞を用いて下記のようにして感染価を測定した。
すなわち、12穴プレートにネコ肝臓細胞由来CRFK細胞を植え込み、翌日単層を形成させた後、ウイルス原液を0.1mL接種し、37℃、60分間吸着させた後、0.8%アガロースを含む培養液を加え48時間培養した。培養48時間後に10%ホルマリンを重層しウイルス及び細胞を固定した後、0.1%クリスタルバイオレットを含む20%エタノール液を加え感染価(PFU/mL)を算出した。
<供試体の作成>
抗ウイルス性評価に供するための試料調製は、以下の方法で行なった。
上記のようにして得られた実施例3及び比較例1の塗材組成物である混練物を、デシケーター内に移動し減圧乾燥することにより未炭酸化試料を得た。次いで、未炭酸化試料を供試体として10mm×10mm×2mmのサイズに成型し、炭酸化前の供試体とした。
上記のようにして得られた炭酸化前の供試体に、炭酸ガスを1mL/secの流量で42日間フローさせることで炭酸化処理を行った。容器内の炭酸ガス圧については、常時おおむね1気圧になるように調整した。炭酸化処理終了後の供試体については、粉末X線回折測定を行い、消石灰に起因する18°付近のピークの消失を確認することにより炭酸化が完了したと判定し、抗ウイルス性評価を行った。
<抗ネコカリシウイルス試験>
1cm角に裁断した炭酸化前ないし炭酸化後の供試体をオートクレーブで15分処理した後、滅菌チューブに入れ、0.2%BSAを含むPBSを90μL滴下し、5分後にウイルス液を含む0.2%BSA添加PBSを10μL滴下して室温で1時間接触処理した。その後、0.2%BSA加PBSを900μL加え、ガラス棒で粉砕し、4,000rpm、10分遠心分離し、上清を回収した。得られた上清のウイルス感染価を、上記ウイルス原液と同様に測定した。また、ウイルス感染価の減衰率を下記の式に基づき算出した。結果を纏めて表3に示す。
減衰率(%) =
(1−(上清のウイルス感染価/ウイルス原液のウイルス感染価))×100
Figure 2012096981
比較例3においては炭酸化前及び炭酸化後においていずれもウイルス感染価の減衰が認められるが、炭酸化後のウイルス減衰率は炭酸化前よりも減少しており、炭酸化処理によって抗ウイルス性が低下していることがわかる。
一方、実施例1においては、比較例3と同様に炭酸化後のウイルス減衰率が炭酸化前よりも減少しているが、減衰率の減少幅がより小さくなっており、炭酸化処理による抗ウイルス性の低下が抑制されていることがわかる。
ネコカリシウイルスは人に感染するウイルスではないが、ノロウイルスと同じカリシウイルス科に属し、物理的性質(耐性)がノロウイルスとほぼ同等であると考えられている。そのため、現在培養技術が確立していないためウイルス感染価の測定を直接行うことができないノロウイルスの代替実験系として、ネコカリシウイルスを用いた実験系は従来から採用されているものである。
従って、本発明にかかる抗ウイルス性塗材組成物は、ノロウイルスに対しても抗ウイルス活性を有していることが示唆される。
なお、本発明においては、水酸化マグネシウムないし酸化マグネシウムの供給源として、実施例1〜4で用いた焼成ドロマイト水和物の他、実施例5及び6で用いたような工業製品である酸化マグネシウムないし水酸化マグネシウムを使用することが可能である。
工業製品である水酸化マグネシウムのその他の例としては、天然鉱石ブルーサイトを粉砕して得られた水酸化マグネシウム、海水から抽出して得られた海水由来の水酸化マグネシウム、軽焼マグネシアを水和して得られた水酸化マグネシウム等が挙げられ、工業製品である酸化マグネシウムのその他の例としては、海水由来水酸化マグネシウムの焼成物、天然鉱石マグネサイトの焼成物等が挙げられ、本発明においてはこれらの中から選ばれる1種又は2種以上を任意に混合した混合物を水酸化マグネシウムないし酸化マグネシウムの供給源として使用できる。
また、焼成ドロマイト水和物は、カルシウムとマグネシウムを原子レベルで均一に含有しているドロマイト鉱石を焼成し、水和して得られるため、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムが材料に非常に均一に含まれていることから、抗ウイルス性の発現性に優れているため、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムの供給源として好ましい。
しかしながら、比較例4の結果及び、上述したドロマイト鉱石を750℃で焼成したものでは酸化カルシウム及び酸化マグネシウムが検出されなかった点とをあわせると、本発明で用いる焼成ドロマイト水和物を効率よく得るには、ドロマイト鉱石の焼成温度を750℃よりも高くかつ、1300℃よりも低くすることが好ましいことがわかる。
また、上記実施例においては、焼成ドロマイト水和物Aとして、BET比表面積が20.3m/gであり、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した平均粒子径が0.5μm以下であるものを用いたが、BET比表面積が小さ過ぎる場合は、ウイルスとの接触効率が悪化するため好ましくなく、平均粒子径が大きすぎる場合、水に均一に分散させることが困難となるため、好ましくない。
なお、安定的に流通し、且つ安価に入手できる焼成ドロマイト水和物としては、焼成ドロマイトを乾式消化設備により水和反応させた後、分級操作することによって得られる、粉末状のドロマイトプラスターや実施例4で用いたバリエールBR−pが挙げられる。
また、本発明における水酸化カルシウムは、水に分散し得る程度の粒子であれば別段限定されるものではなく、粉末状のもの及びペースト状のものでも使用できる。例えば、工業的に生産されている消石灰である、工業用石灰、工業用特号消石灰、工業用1号消石灰、工業用2号消石灰、左官用消石灰等を、1種もしくは適宜混合して使用することができるが、JIS A 6902 左官用消石灰を用いると、よりコテ塗り作業性に優れた塗材組成物が得られるため、好ましい。なお、工業的に製造される消石灰は、生石灰を乾式消化した後分級操作によって得られるものであり、その一般的な形状は粉末状である。
また、粉末状の消石灰以外にも、最大粒子径を0.3mm以下に調整した粉末状生石灰100質量%に対し、水を外比で100〜200質量%添加し、過剰量の水で生石灰を水和させて(湿式消化とよぶ)得られるペースト状消石灰も使用できる。
このような湿式消化によって得られたペースト状の消石灰は、工業的に乾式消化で製造される粉末状消石灰を用いる場合と比べ、より粒度分布が狭く、粒径が整ったものとして得られ、コテ塗り作業性が大幅に向上するため、より好適に使用できる。
また、混和剤としてアクリル系高分子エマルジョン、酢酸ビニル高分子エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル系高分子エマルジョン、SBR系高分子エマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、等の中から選ばれる1種以上を添加してもよい。また、骨材として、川砂、山砂、珪砂、寒水砂、軽量骨材、合成繊維(ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、炭素繊維など)、等の中から選ばれる1種以上が添加されたものであっても良い。
なお、水酸化カルシウムの供給源として、石灰石を焼成して得られる生石灰を水和することで生成される消石灰を用いる場合は、比較例5の結果及び、上述した石灰石を850℃で焼成したものでは酸化カルシウムが検出されなかった点とをあわせると、本発明における水酸化カルシウムとして、石灰石を焼成したのち水和することで得られる消石灰を用いる場合は、焼成温度を850℃よりも高くかつ、1350℃よりも低くすることが好ましいことがわかる。
また、上記実施例においては、麻すさ、ウォラスナイト、ラムダカラギーナンを混和材として用いたが、本発明においてはそれ以外にも、従来から一般的に用いられている漆喰用増粘材、漆喰用亀裂防止材を適宜使用することができる。
例えば漆喰用増粘材としては、天然海藻を溶解してなる糊、天然海藻を乾燥してなる粉末海藻糊、水溶性粉末樹脂、カラギーナンの中から選ばれた1種もしくは2種以上を含有させることが好ましく、下地との付着強度の増加、コテ塗り作業性の向上効果を期待できる。
工業的に流通している天然海藻を溶解してなる糊としては、つのまた、ふのり、ぎんなんそう、等の天然海藻を溶解してなるものが挙げられ、好適に使用できる。また、工業的に流通している天然海藻を乾燥してなる粉末海藻糊としては、つのまた、ふのり、ぎんなんそう、などの天然海藻を乾燥してなる海藻粉末が挙げられ、好適に使用できる。また、工業的に流通している水溶性粉末樹脂としては、メチルセロースやエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、等が挙げられ、好適に使用できる。
また、カラギーナンとしては、上記特許文献4に記載された六員環ガラクトース骨格に硫酸エステル基(−OSO )ならびに水酸基(−OH)が、エカトリアル配座したカラギーナンであるラムダ(λ)カラギーナンが、より好適に使用できる。また、上記以外の糊として、デンプン、稲藁発酵糊も使用してもよい。
また、漆喰用亀裂防止材としては、植物繊維、繊維状の無機化合物の中から選ばれた1種又は2種以上を含有するものを用いることができ、工業的に流通している植物繊維としては、麻すさ、ジュートすさ、マニラ麻、和紙、しゅろ、パルプ、ケナフ、等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種以上を使用できる。また、繊維状の無機化合物としては、特許第4335568号に記載された平均繊維径10〜70μm、且つ平均繊維長140〜500μmの繊維状となっているウォラストナイトが挙げられ、好適に使用できる。
なお、本発明において各種材料を混合する手段としては、各材料を均一に混合攪拌できる方法であれば、別段限定されるものではなく、工業分野、建築分野、等で一般に用いられている材料混合装置、及び材料混合方法であれば良く、装置の種類を問わず利用できる。
また、本発明の塗材組成物は、使用に際し、適宜水で混練して、施工に適したペースト状として使用することが可能である。また、本発明の抗ウイルス性塗材組成物は、ペースト状として長期間保存できるので、予め水で混練して、施工に適したペースト状とし、水分が蒸発しないように缶、ポリ容器等に密封保管しておくことも可能である。いずれの場合も、施工方法は問わず、例えば鏝塗り、吹き付け、ローラー工法、等を採用できる。
本発明の抗ウイルス性塗材組成物を内壁等へ塗工することにより、高価な材料や特殊な製造方法を必要とせず、抗ウイルス性を有する建材として利用でき、VOCフリーで、シックハウス症候群への配慮がなされていると共に、炭酸ガスにより炭酸化が進行しても、抗ウイルス性を損なうことなく、下地との付着強度、耐クラック性に優れた建材が得られるという顕著な効果を奏するため、本発明は産業上の利用価値が高いものである。

Claims (16)

  1. 水酸化カルシウムと、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムの少なくとも1種と、漆喰用増粘材と、漆喰用亀裂防止材とを含有し、かつ、
    前記水酸化マグネシウム及び前記酸化マグネシウムの含有量合計が、酸化マグネシウムで換算した乾燥固形分として、3.0質量%以上15質量%未満であることを特徴とする塗材組成物。
  2. 前記水酸化カルシウムは、石灰石を900℃以上1,300℃以下の温度で焼成して生石灰を得たのち、該生石灰を水和させることで得られる水酸化カルシウムを含有していることを特徴とする、請求項1に記載の塗材組成物。
  3. 前記水酸化マグネシウム及び前記酸化マグネシウムの少なくとも1種は、BET比表面積(1点法)が10m/g以上であり、且つレーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した平均粒子径が10μm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の塗材組成物。
  4. 前記水酸化マグネシウム及び前記酸化マグネシウムの少なくとも1種は、ドロマイト鉱石を800℃以上1,300℃以下の温度で焼成した後、水和して得られることを特徴とする、請求項3に記載の塗材組成物。
  5. 前記漆喰用増粘材は、天然海藻を溶解してなる糊、天然海藻を乾燥してなる粉末海藻糊、水溶性粉末樹脂、カラギーナンの中から選ばれた少なくとも1種を含有するものであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の塗材組成物。
  6. 漆喰用亀裂防止材は、植物繊維、繊維状の無機化合物の中から選ばれた少なくとも1種を含有するものであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の塗材組成物。
  7. 水酸化カルシウムの粒子と、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムの少なくとも1種の粒子とを含有し、かつ、
    前記水酸化マグネシウム及び前記酸化マグネシウムの含有量合計が、酸化マグネシウムで換算した乾燥固形分として、3.0質量%以上15質量%未満であることを特徴とする塗材組成物原料。
  8. 前記水酸化カルシウムは、石灰石を900℃以上1,300℃以下の温度で焼成して生石灰を得たのち、該生石灰を水和させることで得られる水酸化カルシウムを含有していることを特徴とする、請求項7に記載の塗材組成物原料。
  9. 前記水酸化マグネシウム及び前記酸化マグネシウムの少なくとも1種の粒子は、BET比表面積(1点法)が10m/g以上であり、且つレーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した平均粒子径が10μm以下であることを特徴とする、請求項7又は8に記載の塗材組成物原料。
  10. 前記水酸化マグネシウム及び前記酸化マグネシウムは、ドロマイト鉱石を800℃以上1,300℃以下の温度で焼成した後、水和して得られることを特徴とする、請求項7〜9のいずれかに記載の塗材組成物原料。
  11. 水酸化カルシウムと、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムの少なくとも1種と、漆喰用増粘材と、漆喰用亀裂防止材と、水とを混合することを特徴とする塗材組成物の製造方法。
  12. 前記水酸化カルシウムとして、石灰石を900℃以上1,300℃以下の温度で焼成して生石灰を得たのち、該生石灰を水和させることで得られる水酸化カルシウムを用いることを特徴とする、請求項11に記載の塗材組成物の製造方法。
  13. 前記水酸化カルシウムとして、前記生石灰を過剰の水で湿式消化することで得られる、ペースト状の水酸化カルシウムを用いることを特徴とする、請求項11又は12に記載の塗材組成物の製造方法。
  14. 前記ペースト状の水酸化カルシウムは、前記生石灰を粉砕してその最大粒子径を0.3mm以下に調整した後、得られた粉末状生石灰100質量%に対し、水を外比で100〜200質量%添加して混練することで得られるものであることを特徴とする、請求項13に記載の塗材組成物の製造方法。
  15. 前記水酸化マグネシウム及び前記酸化マグネシウムの少なくとも1種として、ドロマイト鉱石を800℃以上1,300℃以下の温度で焼成した後、水和して得られる焼成ドロマイト水和物を用いることを特徴とする、請求項11〜14のいずれかに記載の塗材組成物の製造方法。
  16. 前記石灰石を900℃以上1,300℃以下の温度で焼成して生石灰を得たのち、該生石灰を水和させることで得られる水酸化カルシウム100質量%に対して、
    前記ドロマイト鉱石を800℃以上1,300℃以下の温度で焼成した後水和して得られる焼成ドロマイト水和物を、外比で10質量%以上40質量%以下の割合で混合することを特徴とする、請求項12及び15に記載の塗材組成物の製造方法。
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